JP2007169814A - 微細炭素繊維およびそれを用いたバイオデバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】 熱伝導度と電気伝導度が大きく、酸化雰囲気や高温環境下で安全使用でき、生体高分子にダメージを与えず、かつ細胞組織に損傷を与えない微細炭素繊維を提供する。
【解決手段】 上記課題は、複数の筒状グラフェンが入れ子状になって構成された直径100nm未満の微細炭素繊維において、長さ方向に直角の筒状グラフェンの断面形状が概ね多角形状を有しており、かつ鉄族元素を含有しないことを特徴とする微細炭素繊維によって解決される。
【選択図】 図3
【解決手段】 上記課題は、複数の筒状グラフェンが入れ子状になって構成された直径100nm未満の微細炭素繊維において、長さ方向に直角の筒状グラフェンの断面形状が概ね多角形状を有しており、かつ鉄族元素を含有しないことを特徴とする微細炭素繊維によって解決される。
【選択図】 図3
Description
この発明は、広くは炭素繊維に関し、特にカーボンナノチューブ等微細炭素繊維に関するものである。さらには、微細炭素繊維を用いたバイオデバイスに関するものである。
カーボンナノチューブは、炭素原子が六角形に規則正しく並んだ六角網目状のグラフェンシートが円筒状に丸まったものであり、グラフェンシートの筒が一重のものを単層カーボンナノチューブ、グラフェンシートの筒が同心状に幾重にも存在しているものを多層カーボンナノチューブと称している。
この多層カーボンナノチューブの構造については、特許文献1に、「約3.5nm〜70nmの範囲の実質的に一定の直径を持ち、直径の約100倍以上の長さを持ち、規則的に配列した炭素原子の実質的に連続な層の多層から成る外部領域と内部コア領域とを有しており、各層とコアがフィブリルの円柱軸の周囲に実質的に同心的に配置されていることを特徴とする実質的に円柱状の炭素フィブリル。」と、「コアが中空であることを特徴とする前記フィブリル」の記載があるように、同軸円筒状にグラフェンが積層されたもの、特許文献2に、「グラフェン一枚を継目のない円筒状に丸く閉じたグラファイト筒が、複数個同芯円筒状に筒中心部まで密に積層してなることを特徴とするグラファイト質ナノ繊維」の記載があるように、グラフェンが複数個同芯円筒状に筒中心部まで密に積層してなるもの、特許文献3に「重ねて巻回された複数のグラフェン層を有し、少なくとも2つの前記グラフェン層の終端部が最外周部に露出して成ることを特徴とするナノ炭素物質。」と、「前記各グラフェン層は多角形状に巻回されていることを特徴とするナノ炭素物質。」との記載があるように、多角形状に重ねて巻回された複数のグラフェン層を有するもの、さらには、カップ状のグラフェンを重ねた形状等、種々形態がある。この多角形状に巻回されたグラフェンの終端は最外周部に露出している。
一方、直径100nm以上の炭素繊維においては、熱処理により多角形状の閉じた断面を有したグラフェンが複数個重なり炭素繊維を構成した例があるが(非特許文献1)、このものが例え外周部の外側を囲むように多角形状の断面を持つグラフェンが存在したとしても、直径10nm以下ではグラフェン層は多角形の断面にならないとの記載がある(非特許文献2)。
前述のように、カーボンナノチューブには様々な形態があるが、グラフェンが円筒状に巻かれたカーボンナノチューブでは、本来、平面状の形態を有する各グラフェンが円筒状に丸まっているために、細かく見れば、各グラフェンを構成する炭素原子の結合状態に歪みを生じている。この歪みは、カーボンナノチューブ単体の熱伝導性、電気伝導性に影響を与え、歪みが大きくなるに従い、すなわち、円筒状グラフェンの直径が小さくなるに従い、熱伝導度、電気伝導度を悪化させる。熱伝導度、電気伝導度の悪化はカーボンナノチューブを製品として用いた場合、例えば、電子回路や電極、導電性を付加するための樹脂混合用材料として用いた場合、電気抵抗値の増大を招き、エネルギーのロスや極端な場合には発熱を起こすという問題を引き起こす。また、加熱材や熱伝達のための混合材料として用いた場合には、本来グラフェンが有する熱伝導を確保できないという問題がある。
これに対して、特許文献3のように、重ねて多角形状に巻回された複数のグラフェン層を有し、グラフェン層の終端部が最外周部に露出しているカーボンナノチューブでは、多角形状のグラフェンが平面部を有しているために、前述の熱伝達度と電気伝導度の悪化の問題は回避される。しかしながら、炭素原子同士の結合状態が不連続、不安定なグラフェンの終端部が最外周部に露出しているために、熱的、化学的に不安定であり、例えば、酸化雰囲気における使用、あるいは、高温環境下における使用では、カーボンナノチューブの燃焼、分解等が起りやすく、耐久性に問題がある。
また、カーボンナノチューブを電極として、電極にDNA,RNA、タンパク質等の生体高分子を接触させ、電極と生体高分子との間に電流を流した生体高分子検出デバイスにおいて、カーボンナノチューブに鉄、ニッケル、コバルトまたはそれらの化合物が存在した場合、それらの金属が溶解してラジカルを生成し、このラジカルがDNA,RNA、タンパク質等の生体高分子にダメージを与えることになり、精度良く検出することができないという問題がある。
さらに、カーボンナノチューブとマトリックス樹脂とからなる複合材料をバルーンカテーテルとした医療デバイスにおいて、カーボンナノチューブに鉄、ニッケル、コバルトまたはそれらの化合物が存在した場合、生体内にそれらの金属が溶解してラジカルを生成し、このラジカルが血管内壁の細胞組織を損傷するという問題がある。
以上の課題を解決するためには、本発明者らは、カーボンナノチューブを構成するグラフェンに歪みが持たない平面部を持ち、かつ、グラフェンの終端が最外周部に露出しない構造とし、しかも鉄族元素を含有しないカーボンナノチューブが有効であると考えた。
そこで、本発明は、直径が100nm未満、特に10nm以下で断面形状が多角形の筒状グラフェンを有し、かつ、鉄族元素を含有しない微細炭素繊維を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の微細炭素繊維を組込んだバイオデバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは、カーボンナノチューブの研究を続けているなかで、偶々、アーク放電法を用いて複数の筒状グラフェンが入れ子状になったカーボンナノチューブを合成している際に、合成物の時間的温度変化を急峻にし、かつ最高到達温度を高くしたところ、断面形状が多角形で、かつ鉄族元素を含有しないカーボンナノチューブを得ることができた。そして、このカーボンナノチューブには、全体的に多角形状になっているものと、多角形状のものと同心円状のものが長手方向に交互に配置されているものがあることを見出した。そして、これらのカーボンナノチューブが新規であることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、複数の筒状グラフェンが入れ子状になって構成された直径100nm未満の微細炭素繊維において、長さ方向に直角の筒状グラフェンの断面形状が概ね多角形状を有しており、かつ鉄族元素を含有しないことを特徴とする微細炭素繊維に関するものである。
本発明の第2の態様は、上記の微細炭素繊維において、長さ方向に直角の筒状グラフェンの断面形状がさらに同心円である部分を有し、概ね多角形状である部分と、同心円状である部分とが繊維長手方向に交互存在することを特徴とするものである。
本発明の第3の態様は、上記の各微細炭素繊維において、少なくとも最外郭における前記筒状グラフェンが部分的に欠落した部分を有し、および/または、ホウ素原子の部分的置換が存在することを特徴とするものである。
本発明の第4の態様は、上記の各微細炭素繊維を電極として用い、生体高分子に接触させることを特徴とする生体高分子検出デバイスである。
本発明の第5の態様は、上記の各微細炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる複合材料をバルーンカテーテルとする医療デバイスである。
本発明の多角形の断面形状を有し、かつ鉄族元素を含有しない微細炭素繊維により、熱的、電気的、機械的特性に優れ、かつ、熱的、化学的、機械的に安定な微細炭素繊維を提供できる。
また、本発明の微細炭素繊維を用いることにより、従来のカーボンナノチューブに比べ、生体高分子を損傷することなく、また、細胞組織の損傷をもたらすことなく、安全でかつ高性能なバイオデバイスを提供することができる。
カーボンナノチューブの利用分野は、電子放出源や二次電池の電極のように、カーボンナノチューブ繊維直径の細さを活かしたものが多く、そのため、用いられる微細炭素繊維は用途によるが、直径が100nm未満、好ましくは40nm未満、さらに好ましくは直径が15nm未満であることが望ましい。
この好ましい微細炭素繊維の直径は以下の理由によるものが有効である。
例えば、熱伝導、電気伝導を活かす用途においては、カーボンナノチューブの断面積が大きい方が熱輸送量、電流容量とも大きく取れるので有効であるが、炭素原子間の結晶格子の連続性、樹脂や金属への分散性を考慮すると、カーボンナノチューブの利用分野として工業的に利用できる微細炭素繊維直径はおおよそ100nm未満である。
次に、電界放出特性を活かした電子源(フィールドエミッター)を考えると、微細炭素繊維の直径が細い方が電子放出特性(電子放出に必要な平均電界強度)が向上するため、工業的には直径30nm未満、好ましくは直径15nm未満であることが望ましいことによる。
単層カーボンナノチューブ直径の下限値は0.4nmであるが、カーボンナノチューブの熱伝導性、電気伝導性を活かした利用分野も多いことから、複数のグラフェンが入れ子状になって構成された微細炭素繊維であることが好ましい。このため、2層以上のグラフェンにより構成されている微細炭素繊維を考慮し、微細炭素繊維の直径は0.7nm以上、好ましくは3層以上のグラフェンを有する直径1nm以上の微細炭素繊維が工業的には有利である。
カーボンナノチューブの長さは特に制限されないが、通常0.05〜50μm程度、特に0.1〜5μm程度である。
本発明の微細炭素繊維は、複数の筒状グラフェンが入れ子状になって構成された直径100nm未満の微細炭素繊維において、長さ方向に直角の筒状グラフェンの断面形状が概ね多角形状を有していることを特徴とするものである。
これは、炭素繊維を構成するグラフェンが長さ方向に向いた平面を有することで、円筒状のグラフェンに対して炭素原子の結合歪みを抑え、グラファイト本来の熱伝導、電気伝導特性を発揮できるようになる。さらに、カーボンナノチューブの利用分野では、炭素原子結合の強固さ、換言すれば、熱的、化学的安定性を要求される場合も多く、微細炭素繊維を構成するグラフェンに端部を有しない、換言すれば、閉じた筒状の形状を有することが好ましい。
ここで、閉じた筒状のグラフェンとは、連続的な炭素結晶格子を有する一枚のグラフェンが筒状に閉じ、断面の円周方向にグラフェンの端部を有しないことを意味している。
多角形の角数は特に制限されないが、通常5〜16角形程度、多くは6〜10角形程度である。また、入れ子状になった筒状グラフェンの数も特に制限されないが、通常2〜50層程度、特に5〜20層程度である。
なお、本明細書に記載の「概ね多角形」と言う表現は、本発明の微細炭素繊維の断面に複数の頂点を有することを意味しており、例えば直線と円弧の組み合わせであっても良いことを意味するものである。
また、本発明の入れ子状筒状グラフェンは、概ね多角形状を有するものであるが、同心円状部分も含む、つまり部分的に多角形化しているものも含まれる。典型的な例は、概ね多角形状である部分と同心円状である部分が繊維の長手方向に交互に現われるものである。なお、多角形と同心円状が交互に現れると表現しているが、本発明の微細炭素繊維の断面が完全な多角形や同心円である必要は無く、本発明の微細炭素繊維断面にある1つの角に注目した場合、長さ方向に進むに従い角が消失し、円弧状となる区間が存在しても構わないことを表現しているものである。
これは断面が多角形状に成っている場合の多角形の角に相当する部分は、炭素原子間の結合に大きな歪みを有している。このため、微細炭素繊維断面角の頂点に相当する部分の、炭素原子間の結合歪みが微細炭素繊維の長さ方向に対して変化し、角から円弧へと変化する個所が生じる場合がある。無論、断面が円弧になった部分は、円弧を構成している炭素原子結合全体に歪みがあるわけであるから、連続的な角柱形状の本発明の微細炭素繊維に比べると、熱的および電気的伝導性は劣る。しかしながら、炭素繊維全体を考慮すれば、円筒状のグラフェンのみで構成されているカーボンナノチューブに対して、繊維長さ方向の熱的および電気的導電性が劣っている個所はないので、従来のカーボンナノチューブに対して、優れた熱的および電気的伝導性を有することは変わりはない。
また、従来のカーボンナノチューブは、凝集性が強く、溶液等に分散しにくい性質があった。本発明では、少なくとも最外郭における前記筒状グラフェンが部分的に欠落した部分を有することにより、結合手の余った、活性な炭素原子の数を増加させて、溶媒などの分子と結合しやすいカーボンナノチューブを得ることができる。また、少なくとも最外郭の前記筒状グラフェンにおいて、ホウ素原子を部分的に置換させることにより、最外郭電子の過不足を生じさせ結合性の高いカーボンナノチューブを得ることができる。他分子との結合性を高めることにより、溶液等への分散性が高いカーボンナノチューブを得ることができる。よって、溶液や樹脂等に混合した場合、均一に分散させることが可能で、より少ない量にて高い性能を発現するものとなる。また、従来、得られなかった高性能プラスチックや他分子と結合した機能性新物質を得ることができる。
本発明の微細炭素繊維は鉄族元素を含有しないものである。鉄族元素は鉄、ニッケル、コバルトであり、これらは単体、化合物のいずれの形態であってもよい。含有しないとは、含有量が0.5ppm以下、好ましくは0.1ppm以下である。この含有量は2以上の鉄族元素を含んでいる場合にはその合計である。鉄族元素の検出方法には、例えば、X線光電子分光(XPS)を用いることができ、含有しないとは、その検出限界以下でもある。
本発明の、多角形状の筒状グラフェンが入れ子状になり、鉄族元素を含有しない微細炭素繊維は、アーク放電法を用いて、炭素繊維合成場の時間的温度変化を急峻にし、かつ最高到達温度を高くすることで、前記炭素繊維の合成が可能である。時間的温度変化を急峻にする方法としては、アーク放電の際の放電電流や放電時間等がある。アークの放電電流が小さすぎると炭素繊維合成場の温度が高くならず、また、放電電流が大きすぎるとアーク放電が不安定となり、加えて、放電時間が短すぎると炭素繊維の合成量が少なく、放電時間が長すぎると炭素陰極全体が加熱されることにより、冷却時間が短くなり炭素繊維合成場の時間的温度変化が急峻とならない。
従来の多くのカーボンナノチューブは、数100℃〜1200℃程度に加熱した電気炉に炭化水素ガスをアルゴンガスや水素ガスなどのキャリアーガスとともに供給し、さらに鉄、ニッケルまたはコバルトなどの触媒を添加して合成する気相成長法(CVD法)が用いられていた。この方法では、合成されたカーボンナノチューブに数〜数十重量%程度の鉄、ニッケルまたはコバルトが存在する。さらに、塩酸や硝酸等を用いて酸処理を行っても、最終的には数十ppm程度の鉄、ニッケルまたはコバルトが残る。このようなカーボンナノチューブを電極として、電極に生体高分子を接触させ、電極と生体高分子との間に電流を流して生体高分子検出デバイスを作製した場合、残存した触媒が溶解してラジカルを生成することになる。このラジカルが生体高分子にダメージを与えるため、精度良く検出することができない。
本発明の微細炭素繊維は、従来のカーボンナノチューブに比べて、鉄、ニッケル、コバルトまたはそれらの化合物を含有していないため、ラジカルの生成もなく、生体高分子にダメージを与えることもない。したがって、生体高分子検出デバイスとして利用することができる。ここで、生体高分子とはDNA、RNA、タンパク質等、生体に存在する高分子をいうが、近年DNAやタンパク質等を人工的にも合成することが可能となってきており、これらの人工の生体高分子を適用することも当然可能である。また、生体高分子は、複数種類の生体高分子が一体となったものであってもよい。
さらに、従来のカーボンナノチューブとマトリックス樹脂とからなる複合材料をバルーンカテーテルとして用いた場合、鉄、ニッケルまたはコバルトのような残存した触媒が生体内にて溶解し、血管内壁の細胞組織を損傷するラジカルを生成する。本発明の微細炭素繊維は、従来のカーボンナノチューブに比べて、鉄、ニッケル、コバルトおよびそれらの化合物を含有していないため、ラジカルの生成もなく、細胞組織の損傷をもたらすこともない。したがって、医療デバイスとして利用することができる。
マトリックス樹脂の構成材料としては、ある程度の可撓性を有する一般的なプラスチックである熱可塑性樹脂や、ゴムなどの熱硬化性樹脂または熱架橋性樹脂を用いることができる。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステルやそれらをハードセグメントとしたポリエステルエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンおよびポリオレフィンエラストマー、ポリ塩化ビニル、PVDC,PVDFなどのビニル系ポリマー、ナイロンを含むポリアミドおよびポリアミドエラストマー、ポリイミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、セルロースアセテート、ビニルポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィドなどの各種熱可塑性樹脂やその高分子誘導体のほか、加硫ゴム、シリコン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化または架橋性樹脂が挙げられる。さらに、上記の熱可塑性樹脂および熱硬化・架橋性樹脂のうちいずれかを含むポリマーアロイも利用可能であり、成形材料として溶媒に樹脂を溶解した樹脂溶液を用いても良い。
本発明の微細炭素繊維の合成
本発明の微細炭素繊維を製造するための設備は、図1に示したように、アーク溶接用電源1と、アーク溶接電源の+極に接続された中空炭素陽極2と、アーク溶接電源の−極に接続された炭素陰極3、中空炭素陽極2に放電用ガスを供給するための放電用ガス供給装置4から構成される。
中空炭素陽極2は外径6〜50mm、内径2〜40mmで、任意の長さの筒状炭素陽極ならば使用可能であるが、本実施例においては、外径10mm、内径4mm、長さ40mmの炭素電極を用いた。炭素陰極3については特に形状を問わないが、本実施例においては、100mm×100mm×40mmの炭素ブロックを用いた。放電用ガス供給装置4は、ガスボンベ、圧力レギュレータ、流量調整器、およびこれらと中空炭素陽極2を接続する配管より構成され、使用する放電用ガスは不活性ガス、具体的にはAr、He、もしくは不活性ガスにH2を添加した混合ガスを用いることができるが、本実施例においては工業用純アルゴンを用いた。放電ガスの流量は、使用する中空炭素陽極2の形状および放電条件により変化させるが、本実施例においては、1リットル/分にて、中空炭素陽極2の中空孔に供給した。
ここで、中空炭素陽極2と炭素陰極3を対向配置させる。この状態で、アーク溶接電源1より、両炭素電極2、3間に電圧を印加させてアーク放電を行った。
放電終了後、図2に示したように、炭素陰極3の放電発生部(中空炭素陽極中空孔の対面に当たる部分)に黒色の堆積物が生じ、この部分を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、直径5〜35nm、長さ1μm以上の微細炭素繊維が合成されていた。
この微細炭素繊維を取り出し、透過電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、図3に示したように、断面が多角形であり、複数の筒状グラフェンが入れ子状になって構成された直径10nmの微細炭素繊維が観察された。
また、得られた微細炭素繊維をX線光電子分光(XPS)分析した結果、鉄、ニッケルおよびコバルトの存在は認められなかった。
本発明の微細炭素繊維を製造するための設備は、図1に示したように、アーク溶接用電源1と、アーク溶接電源の+極に接続された中空炭素陽極2と、アーク溶接電源の−極に接続された炭素陰極3、中空炭素陽極2に放電用ガスを供給するための放電用ガス供給装置4から構成される。
中空炭素陽極2は外径6〜50mm、内径2〜40mmで、任意の長さの筒状炭素陽極ならば使用可能であるが、本実施例においては、外径10mm、内径4mm、長さ40mmの炭素電極を用いた。炭素陰極3については特に形状を問わないが、本実施例においては、100mm×100mm×40mmの炭素ブロックを用いた。放電用ガス供給装置4は、ガスボンベ、圧力レギュレータ、流量調整器、およびこれらと中空炭素陽極2を接続する配管より構成され、使用する放電用ガスは不活性ガス、具体的にはAr、He、もしくは不活性ガスにH2を添加した混合ガスを用いることができるが、本実施例においては工業用純アルゴンを用いた。放電ガスの流量は、使用する中空炭素陽極2の形状および放電条件により変化させるが、本実施例においては、1リットル/分にて、中空炭素陽極2の中空孔に供給した。
ここで、中空炭素陽極2と炭素陰極3を対向配置させる。この状態で、アーク溶接電源1より、両炭素電極2、3間に電圧を印加させてアーク放電を行った。
放電終了後、図2に示したように、炭素陰極3の放電発生部(中空炭素陽極中空孔の対面に当たる部分)に黒色の堆積物が生じ、この部分を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、直径5〜35nm、長さ1μm以上の微細炭素繊維が合成されていた。
この微細炭素繊維を取り出し、透過電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、図3に示したように、断面が多角形であり、複数の筒状グラフェンが入れ子状になって構成された直径10nmの微細炭素繊維が観察された。
また、得られた微細炭素繊維をX線光電子分光(XPS)分析した結果、鉄、ニッケルおよびコバルトの存在は認められなかった。
実施例1で合成した微細炭素繊維を、数%の水素を含有した窒素雰囲気中にて、酸化硼素(B2O3)と約1000℃の高温下で、数十秒間反応させた。得られた微細炭素繊維は、エタノールなどの低級アルコールによく分散した。図4に示したように、TEM観察の結果、これらの処理を行った微細炭素繊維は、最外郭または最外郭から数層の筒状グラフェンに欠落部分が多く存在することがわかった。また、XPS分析の結果、これらの微細炭素繊維からホウ素原子が検出されたものも存在した。これらのホウ素原子は、微細炭素繊維の最外郭付近で炭素原子に代わり置換配置したものと考えられる。
DNAとして天然のサケの精子から分離したDNAを使用し、公知の方法により精製したDNA分子を酸化シリコン基板上に展開した。マルチローブ原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、DNA分子上に電極として実施例1で合成した本発明の微細炭素繊維を2本接触させた。2本の微細炭素繊維の間隔は20nmとした、この状態で、DNA分子と微細炭素繊維の付着力、すなわちAFMのカンチレバーを試料に付着させ、引き上げるときに作用する力を測定した。DNAを試料とし、プローブを本発明の微細炭素繊維とし、付着量の変化を測定した結果、付着力は35〜45nNであった。一方、CVD法にて合成したカーボンナノチューブ(鉄触媒を10重量%含有)をプローブとした場合には、付着力は10〜15nNであった。
以上の結果より、本発明の微細炭素繊維とDNA分子との力学的接合は従来のカーボンナノチューブより強く、DNA分子との電気伝導性が優れており、生体高分子検出デバイスとして利用できることがわかる。
以上の結果より、本発明の微細炭素繊維とDNA分子との力学的接合は従来のカーボンナノチューブより強く、DNA分子との電気伝導性が優れており、生体高分子検出デバイスとして利用できることがわかる。
熱可塑性ポリイミド樹脂に対して、実施例1で合成した本発明の微細炭素繊維を15重量%配合させた。この微細炭素繊維配合熱可塑性ポリイミド樹脂を常法どおり押出成形により、肉厚0.025mmのバルーン成形用元チューブを作製した。この元チューブを、バルーン成形金型を使用して定法の二軸延伸ブロー成形によりバルーン(外径3.0mm)に成形し、定法にしたがい、経皮的冠動脈形成術(PTCA)バルーンカテーテルに組み立てた。このPTCAバルーンカテーテルをラットの冠動脈血管に挿入し、数分間放置した後、PTCAバルーンカテーテルを取り出して、血管内壁の細胞組織切片の所見を行った。その結果、細胞組織に損傷等の異常は認められなかった。一方、CVD法にて合成したカーボンナノチューブ(鉄触媒を10重量%含有)を用いて、上記の方法と同様にPTCAバルーンカテーテルを作製し、血管内壁の細胞組織切片の所見を行った結果、細胞組織の一部に損傷が観察された。
以上の結果より、本発明の微細炭素繊維を用いたバルーンカテーテルは医療デバイスとして利用できることがわかる。
以上の結果より、本発明の微細炭素繊維を用いたバルーンカテーテルは医療デバイスとして利用できることがわかる。
本発明の微細炭素繊維は、従来のカーボンナノチューブと比較して、電気伝導性、熱伝導性、機械特性、化学反応性、生物化学反応性に優れていることから、生体高分子検出デバイス、医療デバイス等のバイオデバイスとして利用することができる。
1 アーク溶接電源
2 中空炭素陽極
3 炭素陰極
4 放電用ガス供給手段
5 微細炭素繊維
2 中空炭素陽極
3 炭素陰極
4 放電用ガス供給手段
5 微細炭素繊維
Claims (5)
- 複数の筒状グラフェンが入れ子状になって構成された直径100nm未満の微細炭素繊維において、長さ方向に直角の筒状グラフェンの断面形状が概ね多角形状を有しており、かつ鉄族元素を含有しないことを特徴とする微細炭素繊維。
- 長さ方向に直角の筒状グラフェンの断面形状がさらに同心円である部分を有し、概ね多角形状である部分と、同心円状である部分とが繊維長手方向に交互存在することを特徴とする請求項1記載の微細炭素繊維。
- 少なくとも最外郭における前記筒状グラフェンが部分的に欠落した部分を有し、および/または、ホウ素原子の部分的置換が存在することを特徴とする請求項1または2に記載の微細炭素繊維。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の微細炭素繊維を電極として用い、生体高分子に接触させて使用される生体高分子検出デバイス。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の微細炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる複合材料をバルーンカテーテルとする医療デバイス。
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