JP2007167754A - 無機系塗装膜を備える物体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 屈曲部7、9を有するアルミ板1と、前記屈曲部7、9の表面に形成された無機系塗装膜3とを備えた物体5の製造方法であって、前記アルミ板1の表面に、(a)アルカリ金属シリケートと、(b)ケイ酸カルシウム及び/又はリン酸亜鉛と、(c)コレマイト及び/又はウレキサイトを主成分とした天然ガラスを鱗片状としたものとを含む無機系塗装膜3を設ける工程と、前記アルミ板1において前記無機系塗装膜3を形成した部分7、9を屈曲する工程と、を有する物体の製造方法。
【選択図】 図2
Description
また、塗装膜を、金属から成る基体の表面に形成し、その基体を屈曲させたとき、一連な硬い塗装膜のため、その屈曲部において塗装膜が基体から剥離してしまうことがあった。
屈曲加工を施す部位を有する基体と、前記屈曲加工を施す部位の表面に形成された無機系塗装膜とを備える物体を要旨とする。
無機系塗料としては、上記a、b、d成分を含むもの、上記a、c、e成分を含むもの、上記a、b、d、f成分を含むもの、上記a、b、d、g成分を含むもの、a、b、d、h、i成分を含むもの等が好適である。これらの3成分以上を含む無機系塗料において、b〜j成分の配合量は、a成分100重量部に対する配合量として上述した範囲が好適である。
(2)請求項2の発明は、
前記無機系塗装膜が、ホウ素イオンを含有するガラス構造を備えることを特徴とする請求項1記載の物体を要旨とする。
(3)請求項3の発明は、
前記無機系塗装膜が、(a)アルカリ金属シリケートと、(b)ケイ酸カルシウム及び/又はリン酸亜鉛と、(c)コレマイト及び/又はウレキサイトを主成分とした天然ガラスを鱗片状としたものと、を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の物体を要旨とする。
(4)請求項4の発明は、
屈曲部を有する基体と、前記屈曲部の表面に形成された無機系塗装膜とを備えた物体の製造方法であって、前記基体の表面に無機系塗装膜を設ける工程と、前記基体において前記無機系塗装膜を形成した部分を屈曲する工程と、を有する物体の製造方法を要旨とする。
(5)請求項5の発明は、
前記無機系塗装膜が、ホウ素イオンを含有するガラス構造を備えることを特徴とする請求項4記載の物体の製造方法を要旨とする。
(6)請求項6の発明は、
前記無機系塗装膜が、(a)アルカリ金属シリケートと、(b)ケイ酸カルシウム及び/又はリン酸亜鉛と、(c)コレマイト及び/又はウレキサイトを主成分とした天然ガラスを鱗片状としたものと、を含むことを特徴とする請求項4又は5記載の物体の製造方法を要旨とする。
以下の原料をボールミルで10分間混合し、無機系塗料を製造した。
ケイ酸ナトリウム:100重量部
硬化剤(ケイ酸カルシウム):5重量部
硬化剤(リン酸亜鉛):10重量部
平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の鱗片状としたコレマナイト:80重量部
平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の鱗片状としたウレキサイト:20重量部
顔料(酸化チタン):33重量部
顔料(チタン黄):1重量部
平均粒径30μm以下の微粉状絹雲母:25重量部
極薄フレーク状をした厚み0.5μm以下のガラスフレーク:10重量部
水:50重量部
(ii) 無機系塗装膜の形成
図1に示すように、アルミ板(基体)1の片方の面全体に、上記(i)で製造した無機系塗料をスプレーを用いて塗布し、無機系塗装膜3を形成した。
(iii) 無機系塗装膜の乾燥工程
無機系塗装膜3を乾燥させ、アルミ板1と、その表面に形成された無機系塗装膜3とを備える物体5を製造した。乾燥方法としては、温度230℃の熱風を無機系塗装膜3に35分間吹き付ける方法とした。乾燥後の無機系塗装膜3の厚みは30μmであった。
(iv)物体5の屈曲加工
図2に示すように、物体5の左端から略1/3の部分(屈曲部7、屈曲加工を施す部位)において、無機系塗装膜3が外側となるように、物体5を屈曲させた。また、物体5の右端から略1/3の部分(屈曲部9、屈曲加工を施す部位)において、無機系塗装膜3が内側となるように、物体5を屈曲させた。
(v)密着性の評価
屈曲部7、9における無機系塗装膜3とアルミ板1との密着性を評価した。密着性の評価方法は、クラックによる判定、密着による判定、塩水による判定の3つの方法で行った。
◎:目視観察において、全くクラックが見られない。
△:目視観察において、全体の50%未満の部分に、部分的にクラックがみられる。
×:目視観察において、全体の50%以上の部分にクラックが見られる。
◎:カット縁が完全に滑らかでどの格子の目にも塗膜の剥がれがない。
△:カット縁全体のうち、50%未満に、塗膜の部分的な剥がれがある。
塩水による評価とは、JISK5600-7-1 塩水噴霧試験(100時間)による評価である。その評価基準は、以下の通りである。
〇:全体の20%以下の部分に、わずかにサビが発生した。
△:全体の50%以下の部分に、部分的なサビが発生した。
(vi)無機系塗装膜3の硬度の評価
無機系塗装膜3の硬度を鉛筆硬度試験(JIS K7125準拠)により評価したところ、「9H」以上であり、非常に硬いことが確認できた。
(vii) 無機系塗装膜3の表面状態の評価
無機系塗装膜3の表面は親水性を示した。
ケイ酸ナトリウム:100重量部
硬化剤(ケイ酸カルシウム):7重量部
硬化剤(リン酸亜鉛):3重量部
平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の鱗片状としたコレマナイト:110重量部
顔料(酸化チタン):28重量部
平均粒径30μm以下の微粉状絹雲母:17重量部
微粉金属粉:11重量部
水:50重量部
本実施例2の物体5は、前記実施例1と同様の作用効果を奏する。
ケイ酸ナトリウム:70重量部
ケイ酸カリウム:30重量部
硬化剤(ケイ酸カルシウム):11重量部
硬化剤(リン酸亜鉛):1重量部
平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の鱗片状としたコレマナイト:90重量部
顔料(酸化チタン):36重量部
顔料(チタン黄):1重量部
平均粒径30μm以下の微粉状絹雲母:21重量部
水:50重量部
本実施例3の物体5は、前記実施例1と同様の作用効果を奏する。
ケイ酸カリウム:70重量部
ケイ酸リチウム:30重量部
硬化剤(ケイ酸カルシウム):1重量部
硬化剤(リン酸亜鉛):9重量部
平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の鱗片状としたコレマナイト:110重量部
平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の鱗片状としたウレキサイト:10重量部
顔料(酸化チタン):28重量部
平均粒径30μm以下の微粉状絹雲母:23重量部
厚み0.5μm以下のガラスフレーク:15重量部
微粉金属粉:5重量部
水:50重量部
本実施例4の物体5は、前記実施例1と同様の作用効果を奏する。
ケイ酸ナトリウム:50重量部
ケイ酸カリウム:50重量部
硬化剤(ケイ酸カルシウム):6重量部
硬化剤(リン酸亜鉛):5重量部
平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の鱗片状としたコレマナイト:25重量部
平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の鱗片状としたウレキサイト:110重量部
顔料(酸化チタン):26重量部
顔料(チタン黄):2重量部
厚み0.5μm以下のガラスフレーク:9重量部
平均粒径30μm以下の微粉状絹雲母:18重量部
水:50重量部
本実施例5の物体5は、前記実施例1と同様の作用効果を奏する。
上記表1に示すように、物体5において、屈曲度が120度以下では、無機系塗装膜3が全く剥離していなかった。特に、無機系塗装膜3が内側となるように屈曲された場合(屈曲部7)は、屈曲度が180度となっても、無機系塗装膜3が全く剥離していなかった。また、無機系塗装膜3の表面は親水性を示した。
ケイ酸ナトリウム:100重量部
ホウ酸カルシウム:11重量部
厚み0.01〜0.5μm、面径2〜5μmの鱗片状の透明シリカ(サンラブリー(登録商標)LFS):48重量部(乾燥シリカとして7.2重量部)
水:適量
本実施例12の物体5は、前記実施例1と同様の作用効果を奏する。
(参考例1)
市販の無機系塗料である、(株)日興製のHEATLESS GLASSを、アルミ板(基体)1の片方の面全体にスプレーを用いて塗布し、乾燥させることで、アルミ板1と無機系塗装膜3とを備える物体5を製造した。次に、物体5に屈曲加工を施した。そして、無機系塗装膜3の密着性、硬度、親水性/撥水性を評価した。なお、無機系塗料の塗布方法、乾燥方法、屈曲加工の方法、密着性及び硬度の評価方法は前記実施例1と同様とした(ただし、無機系塗料の塗布前に、アルミ板1の表面に予めプライマーを塗布し、無機系塗装膜3の膜厚は7μmとした)。密着性の評価結果を表8に示す。
(参考例2)
市販の無機系塗料(グリーンケミーインターナショナル製のカイケツ.eco−TiAg)を、アルミ板(基体)1の片方の面全体にスプレーを用いて塗布し、乾燥させることで、アルミ板1と無機系塗装膜3とを備える物体5を製造した。次に、物体5に屈曲加工を施した。そして、無機系塗装膜3の密着性、硬度、親水性/撥水性を評価した。なお、無機系塗料の塗布方法、乾燥方法、屈曲加工の方法、密着性及び硬度の評価方法は前記実施例1と同様とした(ただし、無機系塗料の塗布前に、アルミ板1の表面に予めプライマーを塗布し、無機系塗装膜3の膜厚は10μmとした)。
表8に示すように、本参考例2で形成した無機系塗装膜3の密着性は、前記実施例1に比べて遙かに劣っていた。また、無機系塗装膜3の硬度は6〜7Hであり、前記実施例1における硬度よりも低かった。また、本参考例2で形成した無機系塗装膜3は撥水性を示した。
(参考例3)
市販のポリエステル樹脂系の有機系塗料(川上塗料(株)製のポーセラック3000)を、アルミ板(基体)1の片方の面全体にスプレーを用いて塗布し、乾燥させることで、アルミ板1と有機系塗装膜とを備える物体5を製造した。次に、物体5に屈曲加工を施した。そして、有機系塗装膜の硬度、及び親水性/撥水性を評価した。なお、有機系塗料の塗布方法、乾燥方法、屈曲加工の方法、硬度の評価方法は前記実施例1と同様とした(ただし、有機系塗料の塗布前に、アルミ板1の表面に予めプライマーを塗布し、有機系塗装膜の膜厚は30μmとした)。
(参考例4)
市販のカラー鋼板(有機系塗料を30μmの厚みで塗布した鋼板)に屈曲加工を施した。次に、有機系塗装膜の硬度、及び親水性/撥水性を評価した。なお、屈曲加工の方法、及び硬度の評価方法は前記実施例1と同様とした。
(参考例5)
市販のメラミン樹脂系の有機系塗料(ナトコ(株)製のマイルドメリット)を、アルミ板(基体)1の片方の面全体にスプレーを用いて塗布し、乾燥させることで、アルミ板1と有機系塗装膜とを備える物体5を製造した。次に、物体5に屈曲加工を施した。そして、有機系塗装膜の硬度、及び親水性/撥水性を評価した。なお、有機系塗料の塗布方法、乾燥方法、屈曲加工の方法、硬度の評価方法は前記実施例1と同様とした(ただし、有機系塗料の塗布前に、アルミ板1の表面に予めプライマーを塗布し、有機系塗装膜の膜厚は30μmとした)。
(参考例6)
市販のアクリル樹脂系の有機系塗料(エーエスペイント(株)製のサンメラーマックスホワイト)を、アルミ板(基体)1の片方の面全体にスプレーを用いて塗布し、乾燥させることで、アルミ板1と有機系塗装膜とを備える物体5を製造した。次に、物体5に屈曲加工を施した。そして、有機系塗装膜の硬度、及び親水性/撥水性を評価した。なお、有機系塗料の塗布方法、乾燥方法、屈曲加工の方法、硬度の評価方法は前記実施例1と同様とした(ただし、有機系塗料の塗布前に、アルミ板1の表面に予めプライマーを塗布し、有機系塗装膜の膜厚は30μmとした)。
(参考例7)
市販のシリコンアクリル樹脂系の有機系塗料(ナトコ(株)製のアルコSP)を、アルミ板(基体)1の片方の面全体にスプレーを用いて塗布し、乾燥させることで、アルミ板1と有機系塗装膜とを備える物体5を製造した。次に、物体5に屈曲加工を施した。そして、有機系塗装膜の硬度、及び親水性/撥水性を評価した。なお、有機系塗料の塗布方法、乾燥方法、屈曲加工の方法、硬度の評価方法は前記実施例1と同様とした(ただし、有機系塗料の塗布前に、アルミ板1の表面に予めプライマーを塗布し、有機系塗装膜の膜厚は30μmとした)。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
3・・・無機系塗装膜
5・・・物体
7、9・・・屈曲部
Claims (6)
- 屈曲加工を施す部位を有する基体と、
前記屈曲加工を施す部位の表面に形成された無機系塗装膜とを備える物体。 - 前記無機系塗装膜が、ホウ素イオンを含有するガラス構造を備えることを特徴とする請求項1記載の物体。
- 前記無機系塗装膜が、
(a)アルカリ金属シリケートと、
(b)ケイ酸カルシウム及び/又はリン酸亜鉛と、
(c)コレマイト及び/又はウレキサイトを主成分とした天然ガラスを鱗片状としたものと、
を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の物体。 - 屈曲部を有する基体と、前記屈曲部の表面に形成された無機系塗装膜とを備えた物体の製造方法であって、
前記基体の表面に無機系塗装膜を設ける工程と、
前記基体において前記無機系塗装膜を形成した部分を屈曲する工程と、を有する物体の製造方法。 - 前記無機系塗装膜が、ホウ素イオンを含有するガラス構造を備えることを特徴とする請求項4記載の物体の製造方法。
- 前記無機系塗装膜が、
(a)アルカリ金属シリケートと、
(b)ケイ酸カルシウム及び/又はリン酸亜鉛と、
(c)コレマイト及び/又はウレキサイトを主成分とした天然ガラスを鱗片状としたものと、
を含むことを特徴とする請求項4又は5記載の物体の製造方法。
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