JP2007162718A - 磁気軸受装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 圧力検出センサで検出できるスラスト力以外の軸方向外乱力を補償して、電磁石による支承力を制御できる転がり軸受を併用した磁気軸受装置を提供する。
【解決手段】 磁気軸受17を構成する電磁石17A,17Bは、主軸13に垂直かつ同軸に設けられた強磁性体からなるフランジ状のスラスト板13aに非接触で対向するように、スピンドルハウジング14に取付けられる。一方の電磁石17Aのヨーク17a内には永久磁石20が配置され、アキシアル方向の力を検出するセンサとしての圧力検出センサ61〜64と電磁石17Aの磁極表面またはヨーク17a内の磁束密度を測定する磁束密度検出センサ18の出力に応じて、電磁石17A,17Bを制御するコントローラ19を有し、転がり軸受15,16と転がり軸受の支持系とで形成される合成バネの剛性値が、電磁石17A,17Bの負の剛性値よりも大である関係を有するように設定される。
【選択図】 図1

Description

この発明は、転がり軸受と磁気軸受を併用し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持するようにした磁気軸受装置に関し、例えば空気サイクル冷凍冷却システムにおけるタービンユニット等に用いられる磁気軸受装置に関する。
空気サイクル冷凍冷却システムは、冷媒として空気を用いるため、フロンやアンモニアガス等を用いる場合に比べてエネルギー効率が不足するが、環境保護の面では好ましい。また、冷凍倉庫等のように、冷媒空気を直接に吹き込むことができる施設では、庫内ファンやデフロストの省略等によってトータルコストを引下げられる可能性があり、このような用途で空気サイクル冷凍冷却システムが提案されている(例えば特許文献1)。
また、−30℃〜−60℃のディープ・コール領域では、空気冷却の理論効率は、フロンやアンモニアガスと同等以上になることが知られている。ただし、上記空気冷却の理論効率を得ることは、最適に設計された周辺装置があって、始めて成り立つとも述べられている。周辺装置は、圧縮機や膨張タービン等である。
圧縮機,膨張タービンとしては、コンプレッサ翼車および膨張タービン翼車を共通の主軸に取付けたタービンユニットが用いられている(特許文献1)。
なお、プロセスガスを処理するタービン・コンプレッサとしては、主軸の一端にタービン翼車、他端にコンプレッサ翼車を取付け、前記主軸を電磁石の電流で制御するジャーナルおよびスラスト軸受で支承した磁気軸受式タービン・コンプレッサが提案されている(特許文献2)。
また、ガスタービンエンジンにおける提案ではあるが、主軸支持用の転がり軸受に作用するスラスト荷重が軸受寿命の短縮を招くことを回避するため、転がり軸受に作用するスラスト荷重をスラスト磁気軸受により低減することが提案されている(特許文献3)。
特許第2623202号公報 特開平7−91760号公報 特開平8−261237公報
上記のように、空気サイクル冷凍冷却システムとして、ディープ・コール領域で高効率となる空気冷却の理論効率を得るためには、最適に設計された圧縮機や膨張タービンが必要となる。
圧縮機,膨張タービンとしては、上記のようにコンプレッサ翼車および膨張タービン翼車を共通の主軸に取付けたタービンユニットが用いられている。このタービンユニットは、膨張タービンの生じる動力によりコンプレッサ翼車を駆動できることで空気サイクル冷凍機の効率を向上させている。
しかし、実用的な効率を得るためには、各翼車とハウジングとの隙間を微小に保つ必要がある。この隙間の変動は、安定した高速回転の妨げとなり効率の低下を招く。
また、コンプレッサ翼車やタービン翼車に作用する空気により、主軸にスラスト力が作用し、主軸を支持する軸受にスラスト荷重が荷される。空気サイクル冷凍冷却システムにおけるタービンユニットの主軸の回転速度は、1分間に8万〜10万回転であり、一般的な用途の軸受に比べて非常に高速となる。そのため、上記のようなスラスト荷重は、主軸を支持する軸受の長期耐久性の低下、寿命低下を招き、空気サイクル冷凍冷却用タービンユニットの信頼性を低下させる。このような軸受の長期耐久性の課題を解消しなくては、空気サイクル冷凍冷却用タービンユニットの実用化が難しい。しかし、上記特許文献1に開示の技術は、この高速回転下におけるスラスト荷重の負荷に対する軸受の長期耐久性の低下については解決されるに至っていない。
特許文献2の磁気軸受式タービン・コンプレッサのように、主軸を磁気軸受からなるジャーナル軸受およびスラスト軸受で支承したものでは、ジャーナル軸受にアキシアル方向の規制機能がない。そのため、スラスト軸受の制御の不安定要因等があると、上記翼車とハウジング間の微小隙間を保って安定した高速回転を行うことが難しい。磁気軸受の場合は、電源停止時における接触の問題もある。
そこで、本発明者等は、上記課題を解決するものとして、先に図4に示すような構成の空気サイクル冷凍冷却用タービンユニットを提案した(特願2005−243546)。このタービンユニットは、コンプレッサ86および膨張タービン87を有する。主軸93の両端にはコンプレッサ翼車86aおよびタービン翼車87aがそれぞれ取付けられ、タービン翼車87aで発生した動力によりコンプレッサ翼車86aが駆動される。主軸93は、ラジアル方向に対し転がり軸受95,96で支承し、主軸93にかかるスラスト力を電磁石97により支承する。膨張タービン87の出力側圧、タービン翼車87aの背面圧、コンプレッサ86の入力側圧、およびコンプレッサ翼車86aの背面圧を測定する圧力検出センサ101〜104を設け、これら複数の圧力検出センサ101〜104の出力から主軸93にかかるスラスト力の推定値を演算する。具体的には、膨張タービン87の出力側圧とタービン翼車87aの背面圧との圧力差、およびコンプレッサ86の入力側圧とコンプレッサ翼車86aの背面圧との圧力差から、主軸93にかかるスラスト力を演算回路で推定する。また、前記各圧力検出センサ101〜104の付近には温度センサ105〜108を設け、この温度センサ105〜108の出力によって圧力検出センサ101〜104の出力を補正する。さらに、演算されたスラスト力の推定値に応じて、前記電磁石95,96による支承力をコントローラ99で制御する。
しかし、上記タービンユニットの磁気軸受装置では、前記圧力差によるスラスト力以外の要因による軸方向外乱力が作用した場合に、転がり軸受95,96に作用する力をフィードバック制御することができないという問題がある。
この発明の目的は、転がり軸受と磁気軸受を併用した磁気軸受装置において、圧力検出センサで検出できるスラスト力以外の軸方向外乱力を補償して、電磁石による支承力を制御できるものを提供することである。
この発明の磁気軸受装置は、転がり軸受と磁気軸受を併用し、転がり軸受がラジアル負荷を支持し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持し、電磁石は主軸に垂直かつ同軸に設けられた強磁性体からなるフランジ状のスラスト板に非接触で対向するように、スピンドルハウジングに取付けられており、一方の電磁石のヨーク内には永久磁石が配置され、アキシアル方向の力を検出するセンサの出力に応じて、電磁石を制御するコントローラを有し、転がり軸受と転がり軸受の支持系とで形成される合成バネの剛性値が、電磁石の負の剛性値よりも大である関係を有し、前記アキシアル方向の力を検出するセンサが、コンプレッサ側の入力部およびコンプレッサ翼車の背面、並びにタービン側の出力部およびタービン側翼車の背面の各圧力を測定する圧力検出センサと、電磁石の磁極表面またはヨーク内の磁束密度を測定する磁束密度検出センサとから構成されていることを特徴とする。
この構成によると、転がり軸受と磁気軸受を併用し、転がり軸受がラジアル負荷を支持し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持するものであるため、アキシアル方向の精度の良い支持が行え、また転がり軸受の長期耐久性が確保でき、磁気軸受のみの支持の場合における電源停止時の損傷も回避される。
また、アキシアル方向の力を検出するセンサとして、コンプレッサ側の入力部およびコンプレッサ翼車の背面の圧力、並びにタービン側の出力部およびタービン翼車の背面の各圧力を測定する圧力検出センサのほかに、永久磁石が内蔵された一方の電磁石の磁極表面またはヨーク内の磁束密度を測定する磁束密度検出センサが配置されている。
また、転がり軸受とこれら軸受の支持系とで形成される合成バネの剛性値が、電磁石の負の剛性値よりも大である関係を設定しているので、過大なアキシアル荷重が作用した場合でも、制御帯域において機械システムの位相が180°遅れとなることを防止できて、コントローラの制御対象を安定なものとでき、コントローラの回路構成を比例もしくは比例積分で簡略化できる。
また、前記一方の電磁石のヨーク内に永久磁石を配置することで電磁石ギャップを広げて、電磁石の負の剛性値を小さくするようにしているので、高速回転領域で好適な軽負荷の軸受予圧条件下でも、前記合成バネの剛性値と電磁石の負の剛性値との間の前記大小関係を保つことができ、高速回転領域でも制御対象を安定なものとすることができる。
この発明の磁気軸受装置において、前記圧力センサの出力に対応する軸推力が記憶されている軸推力記憶テーブル、および前記軸推力に対応する磁極表面ないしヨーク内の磁束密度が記憶されている磁束密度記憶テーブルを有するものとしても良い。これら各記憶テーブルが設けられていると、圧力センサの出力から軸推力やヨーク内の磁束密度を容易に知ることができる。
このように前記各記憶テーブルを設けた場合に、前記圧力検出センサのセンサ出力を基に、前記軸推力記憶テーブルから前記センサ出力に対応する軸推力を算出し、前記軸推力を目標値として電磁石の支持力を開ループ制御する手段を有するものとしても良い。
この開ループ制御手段を有するものとする場合に、前記圧力検出センサのセンサ出力から算出された軸推力を基に、前記磁束密度記憶テーブルから前記軸推力に対応する磁極表面ないしはヨーク内の磁束密度を算出し、前記軸推力に対応した磁極表面ないしはヨーク内の磁束密度を目標値とし、前記磁束密度検出センサのセンサ出力と比較演算して、磁束密度のフィードバック制御を行う磁束密度フィードバック制御手段を設けても良い。
このように磁束密度のフィードバック制御等による閉ループの制御を行うことにより、圧力差による軸推力以外の要因による軸方向外乱力を良好に補償することができる。
この発明において、前記磁束密度を検出するセンサは、ホール効果を利用した磁束密度検出センサ、または磁束密度変化による透磁率変化を検出する磁気誘導型センサで構成されたものであっても良い。
この場合に、前記磁束密度検出センサは、電磁石の磁極表面と電磁石ヨーク内のどちらか一方または両方に複数個形成されたものとしても良い。
この発明の磁気軸受装置は、コンプレッサ側翼車およびタービン側翼車が、前記スラスト板と共通の主軸に嵌合し、タービン側翼車で発生した動力により、コンプレッサ側翼車を駆動させる圧縮膨張タービンシステムにおいて、前記主軸の支持に適用されたものであっても良い。この構成の場合、各翼車の適切な隙間を保って主軸の安定した高速回転が得られ、かつ軸受の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られる。
この発明において、前記磁気軸受装置を適用した圧縮膨張タービンシステムが、吸入空気に対して、予圧縮手段による圧縮、熱交換器による冷却、タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、を順次行う空気サイクル冷凍冷却システムに適用されたものであっても良い。 前記磁気軸受装置を適用した圧縮膨張タービンシステムを、このような空気サイクル冷凍冷却システムに適用した場合、圧縮膨張タービンシステムにおいて、各翼車の適切な隙間を保って主軸の安定した高速回転が得られ、かつ軸受の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られることから、圧縮膨張タービンシステムの全体として、しいては空気サイクル冷凍冷却システムの全体としての信頼性が向上する。また、空気サイクル冷凍冷却システムのネックとなっている圧縮膨張タービンシステムの主軸軸受の安定した高速回転、長期耐久性、信頼性が向上することから、空気サイクル冷凍冷却システムの実用化が可能となる。
この発明の磁気軸受装置は、転がり軸受と磁気軸受を併用し、転がり軸受がラジアル負荷を支持し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持し、電磁石は主軸に垂直かつ同軸に設けられた強磁性体からなるフランジ状のスラスト板に非接触で対向するように、スピンドルハウジングに取付けられており、一方の電磁石のヨーク内には永久磁石が配置され、アキシアル方向の力を検出するセンサの出力に応じて、電磁石を制御するコントローラを有し、転がり軸受と転がり軸受の支持系とで形成される合成バネの剛性値が、電磁石の負の剛性値よりも大である関係を有し、前記アキシアル方向の力を検出するセンサが、コンプレッサ側の入力部およびコンプレッサ翼車の背面、並びにタービン側の出力部およびタービン側翼車の背面の各圧力を測定する圧力検出センサと、電磁石の磁極表面またはヨーク内の磁束密度を測定する磁束密度検出センサとから構成されていることとしたため、圧力検出センサで検出できるスラスト力以外の軸方向外乱力を補償して、電磁石による支承力を制御できる。
この発明の一実施形態を図1および図2と共に説明する。図1は、この実施形態の磁気軸受装置を組み込んだタービンユニット5の断面図を示す。このタービンユニット5は圧縮膨張タービンシステムを構成するものであり、コンプレッサ6および膨張タービン7を有し、コンプレッサ6のコンプレッサ翼車6aおよび膨張タービン7のタービン翼車7aが主軸13の両端にそれぞれ取付けられている。また、タービン翼車7aで発生した動力によりコンプレッサ翼車6aが駆動されるものとされており、別の駆動源は設けられていない。
図1において、コンプレッサ6は、コンプレッサ翼車6aと微小な隙間d1を介して対向するディフューザ6bを有し、中心部の吸込口6cから軸方向に吸入した空気を、コンプレッサ翼車6aで圧縮し、外周部の出口(図示せず)から矢印6dで示すように排出する。
膨張タービン7は、タービン翼車7aと微小な隙間d2を介して対向するタービンハウジング7bを有し、外周部から矢印7cで示すように吸い込んだ空気を、タービン翼車7aで断熱膨張させ、中心部の排出口7dから軸方向に排出する。
このタービンユニット5における磁気軸受装置は、主軸13をラジアル方向に対し複数の軸受15,16で支承し、主軸13にかかるスラスト力を磁気軸受17を構成する電磁石17A,17Bにより支承するものとされる。このタービンユニット5は、コンプレッサ6および膨張タービン7内の空気により主軸13に作用するスラスト力を検出する空気圧検出手段として、後述の圧力検出センサ61〜64を設け、この圧力検出センサ61〜64のセンサ出力を演算して求めたスラスト力の推定値に応じて前記電磁石17A,17Bによる支承力を制御するコントローラ19を設けている。電磁石17A,17Bは、主軸13の中央で主軸13に垂直かつ同軸に設けられた強磁性体からなるフランジ状のスラスト板13aの両面に非接触で対向するように、スピンドルハウジング14に設置されている。
主軸13を支承する軸受15,16は、転がり軸受であって、アキシアル方向位置の規制機能を有するものであり、例えば深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受が用いられる。深溝玉軸受の場合、両方向のスラスト支持機能を有し、内外輪のアキシアル方向位置を中立位置に戻す作用を持つ。これら2個の軸受15,16は、それぞれスピンドルハウジング14におけるコンプレッサ翼車6aおよびタービン翼車7aの近傍に配置されている。
主軸13は、中央部の大径部13bと、両端部の小径部13cとを有する段付き軸とされている。両側の軸受15,16は、その内輪15a,16aが小径部13cに圧入状態に嵌合し、片方の幅面が大径部13bと小径部13c間の段差面に係合する。
スピンドルハウジング14における両側の軸受15,16よりも各翼車6a,7a側の部分は、内径面が主軸13に近接する径に形成され、この内径面に非接触シール21,22が形成されている。この実施形態では、非接触シール21,22は、スピンドルハウジング14の内径面に複数の円周溝を軸方向に並べて形成したラビリンスシールとしているが、その他の非接触シール手段でも良い。
前記各軸受15,16のうち、タービン翼車7a側の軸受16は、その外輪16bがスピンドルハウジング14に対してアキシアル方向に移動不能に設置されている。コンプレッサ翼車6a側の軸受15は、スピンドルハウジング14に対してアキシアル方向に移動自在に設置され、かつ軸受予圧ばね26によって弾性支持されている。この例では軸受15の外輪15bが、スピンドルハウジング14の内径面にアキシアル方向移動自在に嵌合していて、軸受予圧ばね26は、外輪15bとスピンドルハウジング14との間に介在している。軸受予圧ばね26は、内輪15aの幅面が係合した主軸13の段面に対向して外輪15bを付勢するものとされ、軸受15に予圧を与えている。軸受予圧ばね26は、主軸13回りの円周方向複数箇所に設けられたコイルばね等からなり、それぞれスピンドルハウジング14に設けられた収容凹部内に収容されている。
前記各圧力検出センサ61〜64は、膨張タービン7の出力側圧、そのタービン翼車7aの背面圧、コンプレッサ6の入力側圧、およびコンプレッサ翼車6aの背面圧をそれぞれ検出するものである。これら圧力検出センサ61〜64は、スピンドルハウジング14の内部または外部に設置され各検出部位の空気圧を各圧力検出センサ61〜64に導くパイプ等の空気圧導入路61a〜64aが設けられている。
圧力検出センサ61の空気圧導入路61aは膨張タービン7の排出口7dに開口し、圧力検出センサ62の空気圧導入路62aは、タービン翼車7aの背面に対向するスピンドルハウジング14の内面に開口している。
圧力検出センサ63の空気圧導入路63aはコンプレッサ6の吸入口6cに開口し、圧力検出センサ64の空気圧導入路64aは、コンプレッサ翼車6aの背面に対向するスピンドルハウジング14の内面に開口している。
なお、上記4箇所の圧力検出センサ61〜64は、必ずしも全て設けなくても良く、少なくともいずれか1箇所の圧力検出センサ61〜64を設ければ良い。
各圧力検出センサ61〜64の付近には、温度センサ65〜68がそれぞれ設けられている。上記各圧力検出センサ61〜64および温度センサ65〜68の出力は、コントローラ19に入力される。コントローラ19は、各圧力検出センサ61〜64の出力を温度センサ65〜68の出力に基づいて補償し、その出力からアキシアル方向の力を算出し、その算出値に応じて電磁石17A,17Bを制御するものである。
上記タービンユニット5における磁気軸受装置の力学モデルは簡単なバネ系で構成することができる。すなわち、このバネ系は、軸受15,16とこれら軸受の支持系とで構成される合成バネと、電磁石17A,17Bのバネとが並列となった構成である。このバネ系において、軸受15,16とこれら軸受の支持系とで構成される合成バネは、変位した方向と逆の方向に変位量に比例して作用する剛性となるのに対し、電磁石17A,17Bのバネは、変位した方向に変位量に比例して作用する負の剛性となる。
このため、上記した合成バネの剛性と電磁石17A,17Bのバネの負の剛性との大小関係を、
合成バネの剛性値<電磁石の負の剛性値……(1)
とした場合、機械システムの位相は180°遅れとなり不安定な系となることから、電磁石17A,17Bを制御するコントローラ19において、予め位相補償回路を付加する必要が生じ、コントローラ19の構成が複雑なものになる。
そこで、この実施形態の磁気軸受装置では、上記した合成バネの剛性と電磁石17A,17Bのバネの負の剛性との大小関係を、
合成バネの剛性値>電磁石の負の剛性値……(2)
としている。
一方、上記磁気軸受装置の構成において、高速回転(8万〜10万rpm)領域では、軸受予圧ばね26で付与される軸受15の軸受予圧は軽荷重のほうが好ましいが、軸受予圧を軽荷重にすると軸受15,16のアキシアル剛性が小さくなり、軸受15,16とこれら軸受の支持系とで形成される合成バネの剛性も小さくなる。その結果、過大なアキシアル荷重が作用した場合に、合成バネの剛性値と電磁石17A,17Bのバネの負の剛性値との間での上記した(2)式の大小関係を保つためには、電磁石17A,17Bの負の剛性を小さくする必要がある。また、電磁石17A,17Bの負の剛性を低減するためには、電磁石ギャップを広げる必要がある。
そこで、この磁気軸受装置では、上記(2)式の大小関係を保つために、スラスト板13aを挟む両電磁石17A,17Bのうち、片側の電磁石17Aのヨーク17a内に永久磁石20を配置することで、その電磁石ギャップを広げている。
そして、この磁気軸受装置では、前記電磁石17Aに、その磁極表面またはヨーク17a内の磁束密度を測定する磁束密度検出センサ18を設け、この磁束密度検出センサ18の出力に応じて、永久磁石20の漏れ磁束に起因する主軸13の軸方向外乱力を補償するようにしている。磁束密度検出センサ18は、ホール効果を利用したセンサ、あるいは磁束密度変化による透磁率変化を検出する磁気誘導型センサで構成される。磁束密度検出センサ18は、電磁石17Aの磁極表面とヨーク17a内のどちらか一方、または両方に複数個形成される。これにより、磁極表面ないし磁路中の磁束分布を考慮した検出が可能である。
図2は、図1のタービンユニット5におけるコントローラ19のブロック図である。図1の各圧力検出センサ61〜64のセンサ出力P61〜P64および温度センサ65〜68のセンサ出力T65〜T68を温度補償回路74A〜74Dに入力し、各圧力検出センサ61〜64のセンサ出力P61〜P64が温度補償された後にスラスト力推定演算回路71に入力する。このスラスト力推定演算回路71は、温度補償された圧力検出センサ61〜64のセンサ出力P61〜P64に対応するスラスト力が記憶されている軸推力記憶テーブル69と、前記スラスト力に対応する前記電磁石17Aの磁極表面ないしはヨーク17a内の磁束密度が記憶されてる磁束密度記憶テーブル70とを有する。
前記スラスト力推定演算回路71では、温度補償された圧力検出センサ61〜64のセンサ出力P61〜P64を基に、前記軸推力記憶テーブル69から前記センサ出力P61〜P64に対応すスラスト力を算出する。具体的には、膨張タービン7の出力側圧P61とタービン翼車7aの背面圧P62との圧力差、およびコンプレッサ6の入力側圧P63とコンプレッサ翼車6aの背面圧P64との圧力差を基に、前記軸推力記憶テーブル69から前記センサ出力P61〜P64に対応するスラスト力を算出し、スラスト力を補償するための指令値が演算される。
また、このスラスト力推定演算回路71では、前記軸推力記憶テーブル69から算出されたスラスト力を基に、前記磁束密度記憶テーブル70から前記スラスト力に対応する磁束密度を算出し、前記磁束密度検出センサ35のセンサ出力Bと比較器73で比較演算して、磁束密度のフィードバック制御を行う。具体的には、演算器75で、比較器73で演算される偏差分だけ、軸推力記憶テーブル69から算出されたスラスト力を補償するための指令値を補正する。
コントローラ19では、この後、演算器75からの出力を基に、電磁石17A,17Bの支持力を開ループ制御する。
演算器75からの出力は、PI補償回路(もしくはP補償回路)76により、タービンユニット5に応じて適宜設定される比例積分(もしくは比例)動作による処理が行われる。PI補償回路76の出力は、ダイオード77,78を介して各方向の電磁石17A,17Bを駆動するパワー回路79,80に入力される。電磁石17A,17Bは吸引力しか作用しないため、予めダイオード77,78で電流の向きを決め、2個の電磁石17A,17Bを選択的に駆動するようにしている。
このように、この磁気軸受装置では、アキシアル方向の力を検出するセンサとして、
コンプレッサ6側の入力およびコンプレッサ翼車6aの背面、並びにタービン7側の出力およびタービン翼車7aの背面の各圧力P61〜P64を測定する圧力検出センサ61〜64のほかに、永久磁石20が内蔵された一方の電磁石17Aの磁極表面またはヨーク17a内の磁束密度を測定する磁束密度検出センサ18を用いているので、磁束密度検出センサ18の出力に応じて、永久磁石20の漏れ磁束に起因する主軸13の軸方向外乱力を補償することができる。
また、転がり軸受15,16とこれら軸受の支持系とで形成される合成バネの剛性値が、電磁石17A,17Bの負の剛性値よりも大である関係を設定しているので、過大なアキシアル荷重が作用した場合でも、制御帯域において機械システムの位相が180°遅れとなることを防止できて、コントローラ19の制御対象を安定なものとでき、コントローラ19の回路構成を比例もしくは比例積分で簡略化できる。
また、前記一方の電磁石17Aのヨーク17a内に永久磁石20を配置することで電磁石ギャップを広げて、電磁石17A,17Bの負の剛性値を小さくするようにしているので、高速回転領域で好適な軽負荷の軸受予圧条件下でも、前記合成バネの剛性値と電磁石17A,17Bの負の剛性値との間の前記大小関係を保つことができ、高速回転領域でもコントローラ19の制御対象を安定なものとできる。
この実施形態では、電磁石17Aに永久磁石20を配置した構成について説明しているが、電磁石17Aは、永久磁石20を配置しない構成でも良い。永久磁石を配置しない構成の場合には、電磁石ギャップが、転がり軸受と転がり軸受の支持系とで形成される合成バネの剛性値をKbgr、最大負荷をFmax、電磁石ギャップをd、比例定数をkとした場合に、
d>k*Fmax/Kbrg
で示される条件式を満足するように設定されている構成でも良い。
図1に示すタービンユニット5は、例えば空気サイクル冷凍冷却システムに適用されて、冷却媒体となる空気を後段の熱交換器(ここでは図示せず)により効率良く熱交換できるように、コンプレッサ6で圧縮して温度上昇させ、さらに後段の前記熱交換器で冷却された空気を、膨張タービン7により、目標温度、例えば−30℃〜−60℃程度の極低温まで断熱膨張により冷却して排出するように使用される。
このような使用例において、このタービンユニット5は、コンプレッサ翼車6aおよびタービン翼車7aを共通の主軸13に取付け、タービン翼車7aで発生した動力によりコンプレッサ翼車6aを駆動するものであるため、動力源が不要であり、コンパクトな構成で効率良く冷却できる。
また、この実施形態では、コンプレッサ翼車6aおよびタービン翼車7aが、スラスト板13aと共通の主軸13に嵌合し、タービン翼車7aで発生した動力により、コンプレッサ翼車6aを駆動させる圧縮膨張タービンシステムを構成するタービンユニット5において、主軸13の支持に上記構成の磁気軸受装置を適用したので、各翼車6a,7aの適切な隙間d1,d2を保って主軸13の安定した高速回転が得られ、かつ軸受15,16の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られる。
すなわち、タービンユニット5の圧縮,膨張の効率を確保するためには、各翼車6a,7aとハウジング6b,7bとの隙間d1,d2を微小に保つ必要がある。例えば,このタービンユニット5を空気サイクル冷凍冷却システムに適用する場合には、この効率確保が重要となる。これに対して、主軸13を転がり形式の軸受15,16により支承するため、転がり軸受の持つアキシアル方向位置の規制機能により、主軸13のアキシアル方向位置がある程度規制され、各翼車6a,7aとハウジング6b,7b間の微小隙間d1,d2を一定に保つことができる。
しかし、タービンユニット5の主軸13には、各翼車6a,7aに作用する空気の圧力等でスラスト力がかかる。また、空気冷却システムで使用するタービンユニット5では、1分間に例えば8万〜10万回転程度の非常に高速の回転となる。そのため、主軸13を回転支承する転がり軸受15,16に上記スラスト力が作用すると、軸受15,16の長期耐久性が低下する。
この実施形態は、上記スラスト力を電磁石17A,17Bで支承するため、非接触でトルクの増大を抑えながら、主軸13の支持用の転がり軸受15,16に作用するスラスト力を軽減することができる。この場合に、コンプレッサ6および膨張タービン7内の空気により主軸13に作用するスラスト力を検出するセンサ18,61〜64と、これらセンサ18,61〜64の出力に応じて前記電磁石17A,17Bによる支承力を制御するコントローラ19とを設けたため、転がり軸受15,16を、その軸受仕様に応じてスラスト力に対し最適な状態で使用することができる。
図3は、上記タービンユニット5を用いた空気サイクル冷凍冷却システムの全体の構成を示す。この空気サイクル冷凍冷却システムは、冷凍庫等の被冷却空間10の空気を直接に冷媒として冷却するシステムであり、被冷却空間10にそれぞれ開口した空気の取入口1aから排出口1bに至る空気循環経路1を有している。この空気循環経路1に、予圧縮手段2、第1の熱交換器3、空気サイクル冷凍冷却用タービンユニット5のコンプレッサ6、第2の熱交換器8、中間熱交換器9、および前記タービンユニット5の膨張タービン7が順に設けられている。中間熱交換器9は、同じ空気循環経路1内で取入口1aの付近の流入空気と、後段の圧縮で昇温し、冷却された空気との間で熱交換を行うものであり、取入口1aの付近の空気は熱交換器9a内を通る。
予圧縮手段2はブロア等からなり、モータ2aにより駆動される。第1の熱交換器3および第2の熱交換器8は、冷却媒体を循環させる熱交換器3a,8aをそれぞれ有し、熱交換器3a,8a内の水等の冷却媒体と空気循環経路1の空気との間で熱交換を行う。各熱交換器3a,8aは、冷却塔11に配管接続されており、熱交換で昇温した冷却媒体が冷却塔11で冷却される。
この空気サイクル冷凍冷却システムは、被冷却空間10を0℃〜−60℃程度に保つシステムであり、被冷却空間10から空気循環経路1の取入口1aに0℃〜−60℃程度で1気圧の空気が流入する。なお、以下に示す温度および気圧の数値は、一応の目安となる一例である。取入口1aに流入した空気は、中間熱交換器9により、空気循環経路1中の後段の空気の冷却に使用され、30℃まで昇温する。この昇温した空気は1気圧のままであるが、予圧縮手段2により1.4気圧に圧縮させられ、その圧縮により、70℃まで昇温する。第1の熱交換器3は、昇温した70℃の空気を冷却すれば良いため、常温程度の冷水であっても効率良く冷却することができ、40℃に冷却する。
熱交換により冷却された40℃,1.4気圧の空気が、タービンユニット5のコンプレッサ6により、1.8気圧まで圧縮され、この圧縮により70℃程度に昇温した状態で、第2の熱交換器8により40℃に冷却される。この40℃の空気は、中間熱交換器9で−30℃の空気により−20℃まで冷却される。気圧はコンプレッサ6から排出された1.8気圧が維持される。
中間熱交換器9で−20℃まで冷却された空気は、タービンユニット5の膨張タービン7により断熱膨張され、−55℃まで冷却されて排出口1bから被冷却空間10に排出される。この空気サイクル冷凍冷却システムは、このような冷凍サイクルを行う。
この空気サイクル冷凍冷却システムでは、タービンユニット5において、各翼車6a,7aの適切な隙間d1,d2を保って主軸13の安定した高速回転が得られ、かつ軸受15,16の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られることで、軸受15,16の長期耐久性が向上することから、タービンユニット5の全体として、しいては空気サイクル冷凍冷却システムの全体としての信頼性が向上する。このように、空気サイクル冷凍冷却システムのネックとなっているタービンユニット5の主軸軸受15,16の安定した高速回転、長期耐久性、信頼性が向上するため、空気サイクル冷凍冷却システムの実用化が可能となる。
この発明の一実施形態にかかる磁気軸受装置が組み込まれたタービンユニットの断面図である。 同タービンユニットに用いられるコントローラの一例を示すブロック図である。 同タービンユニットを適用した空気サイクル冷凍冷却システムの系統図である。 提案例の断面図である。
符号の説明
2…予圧縮手段
3…第1の熱交換器
6…コンプレッサ
6a…コンプレッサ翼車
7…膨張タービン
7a…タービン翼車
8…第2の熱交換器
13…主軸
13a…スラスト板
14…スピンドルハウジング
15,16…転がり軸受
17…磁気軸受
17A,17B…電磁石
17a…ヨーク
18…磁束密度検出センサ
19…コントローラ
20…永久磁石
61〜64…圧力検出センサ
69…軸推力記憶テーブル
70…磁束密度記憶テーブル
73…比較器

Claims (8)

  1. 転がり軸受と磁気軸受を併用し、転がり軸受がラジアル負荷を支持し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持し、電磁石は主軸に垂直かつ同軸に設けられた強磁性体からなるフランジ状のスラスト板に非接触で対向するように、スピンドルハウジングに取付けられており、一方の電磁石のヨーク内には永久磁石が配置され、アキシアル方向の力を検出するセンサの出力に応じて、電磁石を制御するコントローラを有し、転がり軸受と転がり軸受の支持系とで形成される合成バネの剛性値が、電磁石の負の剛性値よりも大である関係を有し、
    前記アキシアル方向の力を検出するセンサが、コンプレッサ側の入力部およびコンプレッサ翼車の背面、並びにタービン側の出力部およびタービン側翼車の背面の各圧力を測定する圧力検出センサと、電磁石の磁極表面またはヨーク内の磁束密度を測定する磁束密度検出センサとから構成されていることを特徴とする磁気軸受装置。
  2. 請求項1において、前記圧力センサの出力に対応する軸推力が記憶されている軸推力記憶テーブル、および前記軸推力に対応する磁極表面ないしヨーク内の磁束密度が記憶されている磁束密度記憶テーブルを有する磁気軸受装置。
  3. 請求項2において、前記圧力検出センサのセンサ出力を基に、前記軸推力記憶テーブルから前記センサ出力に対応する軸推力を算出し、前記軸推力を目標値として電磁石の支持力を開ループ制御する手段を有する磁気軸受装置。
  4. 請求項3において、前記圧力検出センサのセンサ出力から算出された軸推力を基に、前記磁束密度記憶テーブルから前記軸推力に対応する磁極表面ないしはヨーク内の磁束密度を算出し、前記軸推力に対応した磁極表面ないしはヨーク内の磁束密度を目標値とし、前記磁束密度検出センサのセンサ出力と比較演算して、磁束密度のフィードバック制御を行う磁束密度フィードバック制御手段を設けた磁気軸受装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、磁束密度を検出するセンサが、ホール効果を利用した磁束密度検出センサ、または磁束密度変化による透磁率変化を検出する磁気誘導型センサで構成されている磁気軸受装置。
  6. 請求項5において、前記磁束密度検出センサは、電磁石の磁極表面と電磁石ヨーク内のどちらか一方または両方に複数個形成されている磁気軸受装置。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記磁気軸受装置は、コンプレッサ側翼車およびタービン側翼車が、前記スラスト板と共通の主軸に嵌合し、タービン側翼車で発生した動力により、コンプレッサ側翼車を駆動させる圧縮膨張タービンシステムにおいて、前記主軸の支持に適用されたものである磁気軸受装置。
  8. 請求項7において、前記磁気軸受装置を適用した圧縮膨張タービンシステムが、吸入空気に対して、予圧縮手段による圧縮、熱交換器による冷却、タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、を順次行う空気サイクル冷凍冷却システムに適用されたものである磁気軸受装置。
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