JP2007153810A5 - - Google Patents

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経皮的散逸水分量(TEWL)の著しい亢進を伴う皮膚の不調は近年急激に増加しつつある現象の一つであり、TEWLの著しい亢進に伴い、皮膚バリア機能が著しく低下し、これにより皮膚自体が更に過敏さを増すという現象である。近年増加している敏感肌、化学物質過敏症の中には、前記のバリア機能の低下を発端に、これが悪循環を繰り返して症状が重篤になったものが少なくないと言われている。又、この発端となる皮膚バリア機能の低下の原因の一つに過剰に負荷されたストレスに対する生体側の交感神経の著しい亢進があるとも言われている。TEWLの亢進は、更なる交感神経の亢進も招くので、この悪循環を絶ちきることが皮膚改善に肝要であり、この様な技術の開発が望まれていた。この様な皮膚バリア機能の低下に対して有用な技術として、有機変性粘土鉱物を利用した油中水乳化剤形の皮膚外用剤を用いる方法が存する(例えば、特許文献1を参照)この様な剤形を用いることにより、亢進したTEWLを抑制することは出来るが、かかる剤形のみでは充分な効果が得られない場合が存した。
一方、オオシマザクラなどのバラ科サクラ属の植物には、「ネオサクラニン」の様に紫外線吸収能に優れる成分が含有されていること(例えば、特許文献2を参照)、フィラグリン分解促進作用を有する成分を含有すること(例えば、特許文献3を参照)は知られているが、亢進したTEWLとの関係については全く知られていない。又、ダイマー酸のジエステルは、感作性発現可能性等の問題で使用しにくくなったラノリンに代わる油性成分
として開発された粘ちょうな油性成分であり、抱水性にも優れる成分である(例えば、特許文献4、特許文献5を参照)かかる成分は、オイルゲル化粧料や乳化化粧料の密着感としっとり感を向上せしめ、優れた感触を化粧料剤形に付加する作用を有する。他方、1)バラ科サクラ属の植物のエキスと、2)ダイマー酸のジエステルとを組み合わせて皮膚外用剤に含有させる技術は全く知られていないし、この様な組合せにより、亢進したTEWLを抑制する作用に優れる皮膚外用剤が得られることも全く知られていない。
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、有機変性粘土鉱物のTEWL抑制作用を更に高め、ストレスに起因する皮膚バリア機能低下に対処する技術を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、1)バラ科サクラ属の植物のエキスと、2)ダイマー酸のジエステルとを組み合わせて含有させた皮膚外用剤がこの様な特性を有していることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
(1)1)バラ科サクラ属の植物のエキスと、2)ダイマー酸のジエステルとを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
(2)前記バラ科サクラ属の植物のエキスが、バラ科サクラ属オオシマザクラ(Prunus lannesiana var speciosa)の葉部の極性溶媒抽出物であることを特徴とする、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3)前記バラ科サクラ属の植物のエキスが、下記に構造を示す、2,4,6,10−テトラヒドロキシカルコン及び/又はその塩を0.01質量%以上含有するものであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
(4)前記ダイマー酸のジエステルが、ダイマージノール酸ダイマージリノレイルであることを特徴とする、(1)〜(3)何れかに記載の皮膚外用剤。
(5)更に、有機変性粘土鉱物を含有することを特徴とする、(1)〜(4)何れかに記載の皮膚外用剤。
(6)ストレスにより、経皮的水分散逸量(TEWL)が増加した人のためのものであることを特徴とする、(1)〜(5)何れかに記載の皮膚外用剤。
(7)抗炎症作用を訴求した医薬部外品であることを特徴とする、(1)〜(6)何れかに記載の皮膚外用剤。
(2)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるダイマー酸のジエステル
本発明の皮膚外用剤は、ダイマー酸のジエステルを必須成分として含有することを特徴とする。ダイマー酸は、炭素数18の不飽和脂肪酸を2量化して得られる炭素数36の(二重結合を持った)脂肪族2塩基酸である。炭素数18の不飽和脂肪酸は、大豆等の植物から得られるオレイン酸、リノール酸を主体とするものが好ましく、ダイマー酸の構造とし
ては、ダイマージオレイン酸、ダイマージリノール酸である。ダイマー酸は、「ダイマー酸」として市販されており、本発明では市販品を用いることができる市販品はかなり多くの化合物の混合物であるが、分子構造中に1個の環状構造を有した炭素数36の脂肪族2塩基酸を主成分としている。かかるダイマー酸は、そのままジエステルへ誘導することも出来るし、不飽和結合を一部乃至は全部の水素添加で飽和結合へ部分的或いは完全に誘導して水素添加物に変えた形で使用することも出来る。ダイマー酸のジエステルを構成するアルコール部分としては、通常化粧料で使用されている高級アルコール、ダイマー酸を還元して得られるダイマーアルコールなどが好適に例示できる。前記高級アルコールにはコレステロールや、フィトステロールなどの脂肪族環状アルコールも包含する。ダイマー酸とアルコールを縮合しジエステルへ誘導する方法としては、ダイマー酸を塩化チオニルなどでハロゲン化し、しかる後にアルカリ存在下縮合することにより製造できる。この様なダイマー酸のジエステルの内、好ましいものを例示すれば、例えば、ダイマージリノール酸ジイソステアリル、水添ダイマージリノール酸ジイソステアリル、ダイマージリノール酸ジフィトステリル、水添ダイマージリノール酸ジフィトステリル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、水添ダイマージリノール酸ジベヘニル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、水添ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル等が例示できるし、混合アルコールエステル、例えば、ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル・イソステアリル・セチル・ステアリル・ベヘニル)の様な形態を取ることも好ましい。この様なダイマー酸のジエステルには市販品も存し、かかる市販品を購入して使用することも出来る。この様な市販品としては、例えば、ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル・イソステアリル・セチル・ステアリル・ベヘニル)である、プランドゥール(日本精化社製;Plandool−S、Plandool−H)、水添ダイマージリノール酸イソステアリル/フィトステリルであるラスプランPI−DA(LUSPLAN PI−DA;日本精化株式会社製)、水添ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルであるラスプランDD−DA5(LUSPLAN DD−DA5;日本精化株式会社製)、水添ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルである、ラスプランDD−DA7(LUSPLANDD−DA7;日本精化株式会社製)等が好適に例示できる。
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分は0.5〜10質量%好ましく含有され、より好ましくは1〜5質量%含有される。かかる成分は、前記の含有量の範囲において、乳化剤として働くと同時に、その塗布時の使用感において、その延展塗擦時の摩擦係数の変化パターンにより、塗布されている人に心地よさを感じせしめ、以て、リラックスさせ、ストレスを緩和する作用を有する。これにより、ストレスによるTEWLの亢進とTEWLの亢進によるストレスの産生の悪循環を緩和することが出来る。
本発明の皮膚外用剤においては、前記の成分以外に通常皮膚外用剤で使用されている任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノ
リン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシ
ロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤桂皮酸系紫外線吸収剤ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4'−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。これらの成分を常法に従って処理することにより、製造することが出来る。
<試験例1>
医薬部外品1について、ストレス負荷下、TEWLに対する作用を調査した。即ち、早朝(午前6時)の招集したパネラー5名に2時間帳簿計算をさせた後、前腕内側部に設けた2cm×4cmの部位を4つ作成し5回粘着テープでストリッピングした後に5%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液を2時間貼付し肌荒れを作成し、TEWLをテヴァメータ(インテグラル社製)で測定し、1つの部位は医薬部外品1を50μl塗布し、1つの部位は医薬部外品1の「ラスプランPI−DA」を水に置換した比較例1を50μl塗布し、1つの部位は医薬部外品1のサクラエキスを水に置換した比較例2を50μl塗布し、残りの1部位はなにも塗布しないで対照とした。塗布後2時間に部位を水洗し、タオルで水を拭って10分静置した後に再度TEWLを測定した。各サンプルのTEWL抑制率((1回目のTEWLの測定値−2回目のTEWL)/1回目のTEWL×100)を求めた。結果を表2に示す。これより、本発明の皮膚外用剤である医薬部外品1は、サクラエキスと「ラスプランPI−DA」の相乗作用により優れたTEWL抑制を示していることが判る。又、水洗工程を入れていることから、これは皮膚外用剤による閉塞効果ではないことも明らかである。

Claims (1)

  1. 前記バラ科サクラ属の植物のエキスが、下記に構造を示す、2,4,6,10−テトラヒドロキシカルコン及び/又はその塩を0.01質量%以上含有するものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
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