本発明に係る車輌挙動制御装置の実施例1を図1から図3に基づいて説明する。
ここで、本実施例1における車輌挙動制御装置とは、ヨーレートセンサ等の各種センサの検出信号などから車輌の挙動を検知し、その際、その挙動が不安定にならないように制御対象に対してスピンやドリフトアウト等に対する抑制制御を実行させるものである。
例えば、この車輌挙動制御装置の制御対象としては、夫々の車輪に対して個別に制動力を発生させる制動力発生装置、原動機、ステアリングホイールの操舵角度と操舵輪の転舵角度との間のギヤ比を調節するステアリングギヤ比可変装置、操舵輪(前輪)に加えて後輪も転舵させる4輪操舵装置、操舵輪に付与する操舵アシスト力を制御する操舵アシスト制御装置、乗員の操舵操作に拘わらず操舵輪の転舵角度を制御するアクティブ操舵制御装置などが知られており、その夫々が検知された車輌の挙動に応じて制御される。
この車輌挙動制御装置は、制動力発生装置が制御対象の場合には各車輪の制動力を各々調節させてスリップの抑制などを行わせることにより、また、原動機が制御対象の場合にはその出力トルクを低下させて駆動輪に掛かる駆動力を減少させることにより、車輌の挙動の安定化を図る。また、この車輌挙動制御装置は、ステアリングギヤ比可変装置が制御対象の場合にはギヤ比を高ギヤ比側へと変更させて、ステアリングホイールの操舵角度に対する操舵輪の転舵角度を基本状態よりも小さくさせることにより車輌の急激な挙動変化を抑制する。更に、この車輌挙動制御装置は、4輪操舵装置が制御対象の場合には全輪の転舵角度や転舵方向を各々調節させることにより車輌の挙動の安定化を図る。
この車輌挙動制御装置は、そのような夫々の制御対象を別個に制御して車輌の挙動の安定化を図ってもよく、また、その各制御対象の内の少なくとも2つ以上に対する制御を組み合わせて統合制御を行い、車輌の挙動の安定化を図ってもよい。
以下に、本実施例1の車輌挙動制御装置が適用される車輌の一例について図1を用いて説明する。
ここで例示する車輌は、所謂FR(Front engine Rear drive)車であって、左右の前輪10FL,10FRを操舵輪とし、左右の後輪10RL,10RRを原動機(図示略)の動力が伝達される駆動輪としたものである。
先ず、本実施例1の車輌においては、その夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRの制動力を個別に制御する制動力発生装置20が設けられている。例えば、本実施例1の制動力発生装置20は、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに配設したキャリパーやディスクロータ等からなる制動手段21FL,21FR,21RL,21RRと、これら各制動手段21FL,21FR,21RL,21RRのキャリパーに夫々油圧を供給する油圧配管22FL,22FR,22RL,22RRと、これら各油圧配管22FL,22FR,22RL,22RRの油圧を制御する油圧制御手段23と、運転者が制動力発生時に操作するブレーキペダル24と、運転者によるブレーキペダル24の踏み込み操作に応じて駆動されるマスタシリンダ25とを備えている。
ここで、その油圧制御手段23は、オイルリザーバ,オイルポンプ,夫々の油圧配管22FL,22FR,22RL,22RRの油圧を各々に増減する為の増減圧制御弁の如き種々の弁装置等を含み構成されている。その本実施例1の増減圧制御弁は、通常時にはマスタシリンダ25により制御されて各制動手段21FL,21FR,21RL,21RRにおけるキャリパーの油圧を夫々調節する。一方、この増減圧制御弁は、必要に応じて後述する電子制御装置(ECU)40によりデューティ比制御され、各制動手段21FL,21FR,21RL,21RRにおけるキャリパーの油圧の調節を夫々に行う。
更に、本実施例1の車輌には、操舵輪(左右の前輪)10FL,10FRを転舵させる操舵装置30が設けられている。この操舵装置30は、運転者が操作するステアリングホイール31と、このステアリングホイール31に連結されたステアリングシャフト32と、このステアリングシャフト32の操舵トルクを操舵輪10FL,10FR側へと伝達する操舵トルク伝達手段33及びタイロッド34L,34Rとを備えている。
ここで、その操舵トルク伝達手段33としては、ステアリングシャフト32の先端に配設されたピニオンギヤ33aと当該ピニオンギヤ33aに噛み合うラックギヤ33bとで構成された所謂ラック&ピニオン機構を例示する。この操舵装置30においては、そのラックギヤ33bの両端に左右のタイロッド34L,34Rが連結されており、運転者によるステアリングホイール31の操舵操作に伴い操舵トルク伝達手段33を駆動させ、その各タイロッド34L,34Rに連結された夫々の操舵輪10FL,10FRをラックギヤ33bの移動と共に転舵させる。
また、この操舵装置30には、ステアリングホイール31の操舵角度に対する操舵輪10FL,10FRの転舵角度のギヤ比の調節を行うステアリングギヤ比可変装置35が設けられている。本実施例1にあっては、ステアリングシャフト32を入力軸32a,中間軸32b及び出力軸32cに分割し、ステアリングホイール31に連結された入力軸32aの回転を任意のギヤ比で中間軸32bに伝達する可変ギヤ比アクチュエータ35aと、その中間軸32bの回転を固定のギヤ比で出力軸32cに伝達する固定ギヤ比機構35bとによってステアリングギヤ比可変装置35を構成している。
このステアリングギヤ比可変装置35は、少なくとも車速がある所定速度を超えた際にその車速に応じて可変ギヤ比アクチュエータ35aのギヤ比の変更を行う。具体的には、基本ギヤ比に設定されている所定の車速よりも低速であれば、その基本ギヤ比よりも高い範囲内のギヤ比を選択して設定する。これにより、ステアリングホイール31の操舵角度に対する操舵輪10FL,10FRの転舵角度が大きくなるので、運転者の操舵量を低減させることができると共に、車輌の回頭性能を向上させることができる。一方、その所定の車速よりも高速であれば、基本ギヤ比よりも低い範囲内のギヤ比を選択して設定する。これにより、ステアリングホイール31の操舵角度に対する操舵輪10FL,10FRの転舵角度が小さくなるので、高速走行時の走行安定性能を高めることができる。
また更に、本実施例1の車輌には以下の如き各種センサが設けられており、その各種センサの検出信号が電子制御装置(ECU)40に入力される。
例えば、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRには各々の車輪速度を検出する車輪速度センサ51FL,51FR,51RL,51RRが配設されており、また、ステアリングホイール31が連結されたステアリングコラム(図示略)にはステアリングホイール31の操舵角度を検出する操舵角センサ52が配設されている。また、この車輌には、車輌のヨーレートを検出するヨーレートセンサ53,車輌のロールレートを検出するロールレートセンサ54,車輌の前後加速度を検出する前後加速度センサ55,車輌の横加速度を検出する横加速度センサ56及び車輌の車速を検出する車速センサ57が設けられている。
尚、その操舵角センサ52,ヨーレートセンサ53及び横加速度センサ56は、車輌の左旋回方向を正として夫々に操舵角度,ヨーレート及び横加速度を検出する。
ここで、電子制御装置40は、図示しないが、例えばCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のマイクロコンピュータを有するものであり、上述した各種センサの検出信号等に基づいて種々の制御を実行する。
例えば、本実施例1の電子制御装置40には、その制御機能の1つとして、上述した各種センサの検出信号などに基づいて車輌の挙動を判定する車輌挙動判定手段41が設けられている。この車輌挙動判定手段41は、当該技術分野において周知の判定方法により車輌の挙動の判定を行う。そして、この電子制御装置40は、車輌が好ましからざる動きを示したときに、上述した油圧制御手段23の増減圧制御弁や原動機、ステアリングギヤ比可変装置35の可変ギヤ比アクチュエータ35aなどの制御対象に対して指示を行い、車輌の挙動を安定方向へと導くべく車輌挙動制御を実行する。
ところで、車輌の挙動が不安定方向へと変化する要因の1つには、運転者によるステアリングホイール31の操舵操作が挙げられる。例えば、ステアリングホイール31を急激に操舵することにより車輌に突発的な挙動変化が起こり、車速などの他の要因が絡み合うことで車輌は不安定な挙動を示す。
ここで、運転者によるステアリングホイール31の持ち位置は運転者毎に様々であり、また、同じ運転者であっても例えば道路状況等の周辺環境や気分に応じてステアリングホイール31の持ち位置を変える場合がある。そして、そのステアリングホイール31の持ち位置によって操舵性の善し悪しがあり運転者の操舵操作に影響を与えるので、その持ち位置如何で車輌が異なる挙動を示してしまう。
即ち、ステアリングホイール31の持ち位置には操舵性の良い位置と操舵性の好ましくない位置とがあり、一般に、ステアリングホイール31の左右を両手で保持している状態であれば操舵性が良く、ステアリングホイール31の左右何れか一方を片手で保持している状態やステアリングホイール31の上下何れか一方を両手又は片手で保持している状態であれば操舵性が好ましくないものとなる。そして、運転者が操舵性の好ましくない位置を持っている場合には、操舵性の良い位置を持っているときと比して操舵力や操舵角度が変化するので、ステアリングホイール31の持ち位置に応じて車輌の挙動が異なるものとなる。
従って、操舵性の良い位置を基準に設定された制御条件(制御開始閾値や制御量)を用いて制御対象を制御しても、車輌の挙動を適切に安定方向へと導くことができなくなる。
そこで、本実施例1にあっては、運転者によるステアリングホイール31の持ち位置を検出し、その検出結果に応じて制御対象の制御条件を適切な車輌挙動制御が可能な制御条件へと補正させる。
先ず、本実施例1の車輌には、運転者のステアリングホイール31の持ち位置を検出する持ち位置検出手段が設けられている。この持ち位置検出手段は、図1に示す持ち位置検出部58と、この持ち位置検出部58の検出信号に基づいてステアリングホイール31の持ち位置を判定する電子制御装置40の持ち位置判定手段42により構成される。
例えば、その持ち位置検出部58としては、運転者がステアリングホイール31を握った際の電気抵抗の変化を検出する電気抵抗方式のもの、その際の磁力の変化を検出する電磁誘導方式のもの、その際の電気容量の変化を検出する電気容量方式のもの、その際の圧力の変化を電気信号として検出する圧電方式のもの、撮像装置等で実際の持ち位置を撮影する光学方式のものなどが考えられる。
また、その電子制御装置40には、油圧制御手段23に対しての制動制御条件を設定する制動制御条件設定手段43と、その制動制御条件に基づいて油圧制御手段23を制御する制動制御手段44とを設けている。ここで、その制動制御条件としては、増減圧制御弁に制動制御を実行させる際の制動制御開始閾値や増減圧制御弁の制御量(各々の制動手段21FL,21FR,21RL,21RRへの油圧発生量)などがある。
その制動制御条件設定手段43は、車輌の挙動状態に応じて制動制御条件を設定する一方で、運転者のステアリングホイール31の持ち位置に応じてその制動制御条件を適切なものへと補正するよう構成されている。
例えば、この制動制御条件設定手段43は、操舵性の好ましくない位置を保持している場合に、操舵性の良い位置を保持しているときよりも早期に又は遅らせて車輌挙動制御を開始させるよう制動制御開始閾値の補正を行う。また、この制動制御条件設定手段43は、かかる場合に、操舵性の良い位置を保持しているときよりも大きな又は小さな制御量で車輌挙動制御を実行させるよう増減圧制御弁の制御量の補正を行う。
具体的には、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が大きくなる位置を保持している場合、運転者の操舵操作に伴う車輌の挙動変化が大きくなってしまうので、早期に車輌挙動制御を介入させて早い段階で車輌の挙動を安定化させる為に、制動制御開始閾値を操舵性の良い位置が保持されているときのものよりも低く設定する。また、かかる場合には、その大きな挙動変化を適切に安定方向へと導く為に、増減圧制御弁の制御量を操舵性の良い位置が保持されているときの制御量よりも増加させる(即ち、制動力を操舵性の良い位置が保持されているときよりも増加させる)。ここで、その操舵力などが大きくなる場合とは、例えば、ステアリングホイール31の操舵力に腕の重力が加わって過大な操舵トルクが入力されてしまうステアリングホイール31の上側のみを保持している状態のことをいう。
一方、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が小さくなる位置を保持している場合には、運転者の操舵操作に伴う車輌の挙動変化が小さく、その挙動が急激に不安定になる可能性が低いので、無用な車輌挙動制御の介入を避けるべく、制動制御開始閾値を操舵性の良い位置が保持されているときのものよりも高く設定する。また、かかる場合には、車輌の挙動変化が小さいので、過大な制御量での車輌挙動制御を回避すべく、増減圧制御弁の制御量を操舵性の良い位置が保持されているときの制御量よりも減少させる(即ち、制動力を操舵性の良い位置が保持されているときよりも減少させる)。ここで、その操舵力などが小さくなる場合とは、例えば、運転者の腕が胴体等と干渉して操舵操作が妨げられるステアリングホイール31の下側のみを保持している状態のことをいう。かかる持ち位置においては、腕の重力がステアリングホイール31の回転の復元トルクとして働くことによっても操舵力などが小さくなってしまう。また、操舵角度が小さくなる場合としては、更に、ステアリングホイール31の左右何れか一方を片手で保持している状態も含まれる。
ここで、この制動力発生装置20を制御対象とした際の車輌挙動制御時における対象の車輪(以下、「制御輪」という。)は、以下の如く設定される。
例えば、車輌の挙動がスピンであるときには旋回外側前輪10FL(又は10FR)が制御輪となり、この制御輪10FL(又は10FR)に対して制動力を与えることによって、車輌が減速されると共に車輌にスピン抑制方向のヨーモーメントが付与されてスピンが抑制される。また、車輌の挙動がドリフトアウトであるときには左右の後輪10RL,10RR又は左右の後輪10RL,10RR及び旋回外側前輪10FL(又は10FR)が制御輪となり、この制御輪に対して制動力を与えることによって、車輌が減速されると共に車輌に旋回補助方向のヨーモーメントが付与されてドリフトアウトが抑制される。また、車輌の挙動が過剰ロールであるときには左右の後輪10RL,10RR及び旋回外側前輪10FL(又は10FR)が制御輪となり、この制御輪10RL,10RR,10FL(又は10FR)に対して制動力を与えることによって、車輌が減速されると共に車輌の旋回半径が増大されることにより車輌に作用する遠心力が低減されて車体のロールが抑制される。
更にまた、その電子制御装置40には、原動機に対しての出力トルク制御条件を設定する出力トルク制御条件設定手段45と、その出力トルク制御条件に基づいて原動機の出力トルクを制御する出力トルク制御手段46とを設けている。ここで、その出力トルク制御条件としては、車輌挙動制御時の出力トルク制御を実行させる際の出力トルク制御開始閾値や原動機の制御量(出力トルクの低下量、厳密には、燃料噴射量や吸入空気量、点火時期など)などがある。
その出力トルク制御条件設定手段45は、上述した制動制御条件設定手段43と同様に、車輌の挙動状態に応じて出力トルク制御条件を設定する一方で、運転者のステアリングホイール31の持ち位置に応じてその出力トルク制御条件を適切なものへと補正するよう構成されている。
例えば、この出力トルク制御条件設定手段45は、操舵性の好ましくない位置を保持している場合に、操舵性の良い位置を保持しているときよりも早期に又は遅らせて車輌挙動制御を開始させるよう出力トルク制御開始閾値の補正を行う。また、この出力トルク制御条件設定手段45は、かかる場合に、操舵性の良い位置を保持しているときよりも大きな又は小さな制御量で車輌挙動制御を実行させるよう原動機の制御量の補正を行う。
具体的には、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が大きくなる位置を保持している場合、上述した制動制御条件設定手段43と同様の観点に基づいて早期に車輌挙動制御を介入させるべく、出力トルク制御開始閾値を操舵性の良い位置が保持されているときのものよりも低く設定し、また、大きな挙動変化を適切に安定方向へと導く為に原動機の制御量を操舵性の良い位置が保持されているときの制御量よりも増加させる(即ち、出力トルクを操舵性の良い位置が保持されているときよりも低下させる)。
一方、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が小さくなる位置を保持している場合についても、上述した制動制御条件設定手段43と同様の観点に基づいて無用な車輌挙動制御の介入を避ける為に、出力トルク制御開始閾値を操舵性の良い位置が保持されているときのものよりも高く補正し、また、原動機の制御量を操舵性の良い位置が保持されているときの制御量よりも減少させる(即ち、出力トルクを操舵性の良い位置が保持されているときよりも低下させない)。
更に、この電子制御装置40には、ステアリングギヤ比可変装置35に対してのギヤ比制御条件を設定するステアリングギヤ比制御条件設定手段47と、そのギヤ比制御条件に基づいてステアリングギヤ比可変装置35を制御するステアリングギヤ比制御手段48とを設けている。ここで、そのギヤ比制御条件としては、ギヤ比制御を実行させる際のギヤ比制御開始閾値や可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量(可変ギヤ比アクチュエータ35aが電動モータなどにより駆動されるものであればモータ出力)などがある。
そのステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、上述した制動制御条件設定手段43などと同様に、車輌の挙動状態に応じてギヤ比制御条件を設定する一方で、運転者のステアリングホイール31の持ち位置に応じてそのギヤ比制御条件を適切なものへと補正するよう構成されている。
例えば、このステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、操舵性の好ましくない位置を保持している場合に、操舵性の良い位置を保持しているときよりも早期に又は遅らせて車輌挙動制御を開始させるようギヤ比制御開始閾値の補正を行う。また、このステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、かかる場合に、操舵性の良い位置を保持しているときよりも大きな又は小さな制御量で車輌挙動制御を実行させるよう可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量の補正を行う。
具体的には、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が大きくなる位置を保持している場合、操舵角度に対する操舵輪10FL,10FRの転舵角度が大きくなり車輌の挙動を大きく変化させてしまうので、早い段階でギヤ比を高ギヤ比側へと変更させて操舵角度に対する操舵輪10FL,10FRの転舵角度を小さくさせるべく、ギヤ比制御開始閾値を操舵性の良い位置が保持されているときのものよりも低く設定する。また、かかる場合には、その大きな挙動変化を適切に安定方向へと導く為に、可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量(モータ出力)を操舵性の良い位置が保持されているときの制御量よりも増加させる(即ち、ギヤ比を操舵性の良い位置が保持されているときのギヤ比よりも高ギヤ比側へと変更させて、操舵角度に対する操舵輪10FL,10FRの転舵角度を小さくする。)。尚、本実施例1にあっては、便宜上、その制御量の増加に伴いギヤ比が高ギヤ比側へと変更されるよう定義する。
一方、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が小さくなる位置を保持している場合については、上述した制動制御条件設定手段43などと同様の観点に基づいて無用な車輌挙動制御(ギヤ比の可変制御)の介入を避ける為に、ギヤ比制御開始閾値を操舵性の良い位置が保持されているときのものよりも高く設定する。また、かかる場合には、可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量を操舵性の良い位置が保持されているときの制御量よりも減少させる。これにより、操舵角度に対する操舵輪10FL,10FRの転舵角度が大きくなるので、ステアリングホイール31の持ち位置により運転者が操舵角度を大きくすることができなくても、少ない操舵角度で大きな転舵角度を操舵輪10FL,10FRに対して与えることができ、運転者自身の修正舵による車輌の挙動の安定化も可能になる。
ここで、上述した各種制御条件の補正は、補正係数を求めて基準となる制御条件に乗算させるものであってもよく、補正項を求めて基準となる制御条件に加算するものであってもよい。
このように、本実施例1の車輌においては、上述した電子制御装置40の各手段や各種センサなどにより車輌挙動制御装置が構成される。
以下に、本実施例1の車輌挙動制御装置の動作について図2及び図3のフローチャートに基づき説明する。
先ず、本実施例1の電子制御装置40は、図2のフローチャートに示す如く、上述した持ち位置判定手段42により、持ち位置検出部58の検出信号から運転者のステアリングホイール31の持ち位置を検出し、その持ち位置がステアリングホイール31上の一部分に集中しているか否か判定する(ステップST1)。
ここで、このステップST1にて肯定判定が為された場合には操舵性の好ましくない持ち位置であることを意味しているので、その持ち位置判定手段42は、ステアリングホイール31の左右何れか一方を保持しているか否かの判定を行い(ステップST2)、否定判定が為されたときはステアリングホイール31の下側のみを保持しているか否か判定する(ステップST3)。
そして、そのステップST2又はステップST3にて肯定判定が為された場合、電子制御装置40は、制御対象の制御開始閾値を高くする為の補正量を算出する(ステップST4)。例えば、その際の補正量としては、補正係数X1(>1)又は補正項P1(>0)が求められる。この補正量は、ステアリングホイール31の持ち位置に応じて制御対象毎に予め設定されているものとする。
更に、本実施例1の電子制御装置40は、制御対象の制御量を減少させる為の補正量を算出する(ステップST5)。例えば、その際の補正量としては、補正係数Y1(<1)又は補正項Q1(<0)が求められる。この補正量についても、ステアリングホイール31の持ち位置に応じて制御対象毎に予め設定されているものとする。
また、上記ステップST3にて否定判定が為された場合、電子制御装置40は、制御対象の制御開始閾値を低くする為の補正量{例えば、補正係数X2(<1)又は補正項P2(<0)}を算出し(ステップST6)、更に、制御対象の制御量を増加させる為の補正量{例えば、補正係数Y2(>1)又は補正項Q2(>0)}を算出する(ステップST7)。この夫々の補正量についても、ステアリングホイール31の持ち位置に応じて制御対象毎に予め設定されているものとする。
上述した補正量の算出処理は、常時又は所定時間毎に繰り返し実行され、その都度、夫々の補正量が電子制御装置40の一時記憶装置等に記録されて更新される(ステップST8)。尚、この補正量の算出処理は、運転者による正確な持ち位置に基づいた補正量を求めさせる為に、ステアリングセンタにおいて実行させることが好ましい。
また、上記ステップST1にて否定判定が為された場合には、ステアリングホイール31の左右を両手で保持しているなどのように操舵性の良い持ち位置であることを意味しているので、制御条件の補正は行わない。従って、そのような判定が為された場合には、補正量として補正係数を用いるのであれば補正係数X,Y(=1)を算出し、補正量として補正項を用いるのであれば補正項P,Q(=0)を算出して(ステップST9)、電子制御装置40の一時記憶装置等に記録する。
次に、車輌挙動制御を実行する際の動作について図3のフローチャートに基づき説明する。
先ず、電子制御装置40は、その車輌挙動判定手段41により車輌の挙動が安定しているか否か判定し(ステップST11)、その挙動が安定していれば再びこのステップST11の判定処理を繰り返す。
一方、車輌の挙動が不安定との判定が為された場合、この電子制御装置40は、その挙動に応じた制御対象の制御条件(制御開始閾値及び制御量)を当該技術分野にて周知の方法により算出する(ステップST12)。その際に求められる制御条件は、ステアリングホイール31の操舵性の良い位置が保持されているときを基準にして設定されたものである。
続いて、この電子制御装置40は、電子制御装置40の一時記憶装置等から制御開始閾値及び制御量に対応する夫々の補正量を読み込み、車輌挙動制御時に用いる制御開始閾値と制御量の設定を行う(ステップST13)。
そして、この電子制御装置40は、その設定した制御開始閾値と制御量に基づき制御対象を制御して車輌挙動制御を実行する(ステップST14)。
上述した本実施例1の車輌挙動制御装置の制御動作について制御対象毎に具体的に説明する。
先ず、制御対象が制動力発生装置20である場合について詳述する。
かかる場合、上記ステップST2又はステップST3にて肯定判定が為されたときに、制動制御条件設定手段43は、上記ステップST4にて増減圧制御弁の制動制御開始閾値が高くなる補正量を算出する。更に、この制動制御条件設定手段43は、上記ステップST5にて増減圧制御弁の制御量(油圧発生量)を減少させる補正量を算出する。そして、この制動制御条件設定手段43は、その夫々の補正量を上記ステップST8にて電子制御装置40の一時記憶装置等に記録する。その際、その夫々の補正量は、一時記憶装置等に記録されている制動力発生装置20に関わるものと置き換えられる。
このような補正量が記録されている場合とは、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が小さくなる位置を運転者が保持している状態を指す。そして、かかる場合に車輌挙動制御が必要とされた際、その制動制御条件設定手段43は、上記ステップST13において、制動制御開始閾値の補正量と上記ステップST12で求めた操舵性の良い位置が保持されているときの制動制御開始閾値(以下、「基本制動制御開始閾値」という。)とに基づいて増減圧制御弁の制動制御開始閾値を設定する。この制動制御開始閾値は、その基本制動制御開始閾値よりも高い値のものである。これが為、上記ステップST14においては、操舵性の良い位置が保持されているときよりも遅れて車輌挙動制御(制御輪への制動力付与)が実行されるようになるので、無用な車輌挙動制御の介入を回避することができる。
また、そのステップST13においては、増減圧制御弁の制御量に対する補正量と上記ステップST12で求めた操舵性の良い位置が保持されているときの制御量(以下、「基本制御量」という。)とに基づいて増減圧制御弁の制御量を設定する。この制御量は、その基本制御量よりも小さい値のものである。これが為、上記ステップST14においては、増減圧制御弁から制御輪に対して操舵性の良い位置が保持されているときよりも少ない油圧が供給される。従って、その制御輪には、操舵性の良い位置が保持されているときよりも低い制動力が発生し、ステアリングホイール31の持ち位置に応じた(即ち、小さな車輌の挙動変化に対応させた)適切な車輌挙動制御が実行される。
一方、上記ステップST3にて否定判定が為されたときには、その制動制御条件設定手段43により、上記ステップST6,ST7にて増減圧制御弁の制動制御開始閾値が低くなる補正量と増減圧制御弁の制御量を増加させる補正量を算出し、一時記憶装置等に記録されているものと置き換える。
このような補正量が記録されている場合とは、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が大きくなる位置を運転者が保持している状態を指す。そして、かかる場合に車輌挙動制御が必要とされた際、その制動制御条件設定手段43は、上記ステップST13において、制動制御開始閾値の補正量と上記ステップST12で求めた基本制動制御開始閾値とに基づいて、その基本制動制御開始閾値よりも低い値の増減圧制御弁の制動制御開始閾値を設定する。これが為、上記ステップST14においては、操舵性の良い位置が保持されているときよりも早い段階で車輌挙動制御が実行される。従って、この際には、早期に車輌の挙動を安定化させることが可能になる。
また、そのステップST13においては、増減圧制御弁の制御量に対する補正量と上記ステップST12で求めた基本制御量とに基づいて、その基本制御量よりも大きい値の増減圧制御弁の制御量を設定する。これが為、上記ステップST14においては、増減圧制御弁から制御輪に対して操舵性の良い位置が保持されているときよりも大きな油圧が供給される。従って、その制御輪には、操舵性の良い位置が保持されているときよりも高い制動力が発生し、ステアリングホイール31の持ち位置に応じた(即ち、大きな車輌の挙動変化に対応させた)適切な車輌挙動制御が実行される。
続いて、制御対象が原動機である場合について詳述する。
かかる場合、上記ステップST2又はステップST3にて肯定判定が為されたときに、出力トルク制御条件設定手段45は、上記ステップST4にて出力トルク制御開始閾値が高くなる補正量を算出する。更に、この出力トルク制御条件設定手段45は、上記ステップST5にて原動機の制御量(出力トルクの低下量)を減少させる補正量を算出する。そして、この出力トルク制御条件設定手段45は、その夫々の補正量を上記ステップST8にて電子制御装置40の一時記憶装置等に記録する。その際、その夫々の補正量は、一時記憶装置等に記録されている原動機に関わるものと置き換えられる。
このような補正量が記録されている場合とは、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が小さくなる位置を運転者が保持している状態を指す。そして、かかる場合に車輌挙動制御が必要とされた際、その出力トルク制御条件設定手段45は、上記ステップST13において、出力トルク制御開始閾値の補正量と上記ステップST12で求めた操舵性の良い位置が保持されているときの出力トルク制御開始閾値(以下、「基本出力トルク制御開始閾値」という。)とに基づいて、その基本出力トルク制御開始閾値よりも高い値の出力トルク制御開始閾値を設定する。これが為、上記ステップST14においては、操舵性の良い位置が保持されているときよりも遅れて車輌挙動制御(出力トルクの低下)が実行されるので、無用な車輌挙動制御の介入を回避することができる。
また、そのステップST13においては、原動機の制御量に対する補正量と上記ステップST12で求めた基本制御量とに基づいて、その基本制御量よりも小さい値の原動機の制御量を設定する。これが為、上記ステップST14においては、原動機の出力トルクの低下量が操舵性の良い位置が保持されているときよりも小さくさせられる。従って、必要以上の駆動力の低下を抑えつつ、ステアリングホイール31の持ち位置に応じた(即ち、小さな車輌の挙動変化に対応させた)適切な車輌挙動制御が実行される。
一方、上記ステップST3にて否定判定が為されたときに、その出力トルク制御条件設定手段45は、上記ステップST6,ST7にて、出力トルク制御開始閾値が低くなる補正量と原動機の制御量を増加させる補正量を算出し、一時記憶装置等に記録されているものと置き換える。
このような補正量が記録されている場合とは、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が大きくなる位置を運転者が保持している状態を指す。そして、かかる場合に車輌挙動制御が必要とされた際、その出力トルク制御条件設定手段45は、上記ステップST13において、出力トルク制御開始閾値の補正量と上記ステップST12で求めた基本出力トルク制御開始閾値とに基づいて、その基本出力トルク制御開始閾値よりも低い値の出力トルク制御開始閾値を設定する。これが為、上記ステップST14においては、操舵性の良い位置が保持されているときよりも早い段階で車輌挙動制御が実行される。従って、この際には、早期に車輌の挙動を安定化させることが可能になる。
また、そのステップST13においては、原動機の制御量に対する補正量と上記ステップST12で求めた基本制御量とに基づいて、その基本制御量よりも大きい値の原動機の制御量を設定する。これが為、上記ステップST14においては、原動機の出力トルクの低下量が操舵性の良い位置が保持されているときよりも大きくさせられる。従って、駆動力が操舵性の良い位置が保持されているときよりも低下するので、ステアリングホイール31の持ち位置に応じた(即ち、大きな車輌の挙動変化に対応させた)適切な車輌挙動制御が実行される。
続いて、制御対象がステアリングギヤ比可変装置35である場合について詳述する。
かかる場合、上記ステップST2又はステップST3にて肯定判定が為されたときに、ステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、上記ステップST4にてギヤ比制御開始閾値が高くなる補正量を算出する。更に、このステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、上記ステップST5にて可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量(モータ出力)を減少させる補正量を算出する。そして、このステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、その夫々の補正量を上記ステップST8にて電子制御装置40の一時記憶装置等に記録する。その際、その夫々の補正量は、一時記憶装置等に記録されているステアリングギヤ比可変装置35に関わるものと置き換えられる。
このような補正量が記録されている場合とは、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が小さくなる位置を運転者が保持している状態を指す。そして、かかる場合に車輌挙動制御が必要とされた際、そのステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、上記ステップST13において、ギヤ比制御開始閾値の補正量と上記ステップST12で求めた操舵性の良い位置が保持されているときのギヤ比制御開始閾値(以下、「基本ギヤ比制御開始閾値」という。)とに基づいて、その基本ギヤ比制御開始閾値よりも高い値のギヤ比制御開始閾値を設定する。これが為、上記ステップST14においては、操舵性の良い位置が保持されているときよりも遅れて車輌挙動制御(ギヤ比の高ギヤ比化)が実行されるので、無用な車輌挙動制御の介入を回避することができる。
また、そのステップST13においては、可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量に対する補正量と上記ステップST12で求めた基本制御量とに基づいて、その基本制御量よりも小さい値の可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量を設定する。これが為、上記ステップST14においては、ギヤ比が操舵性の良い位置が保持されているときのギヤ比よりも低ギヤ比側へと変更される。従って、運転者は少ない操舵角度で大きな転舵角度を操舵輪10FL,10FRに対して与えることができるようになり、運転者自身が修正舵を与えることによって車輌の挙動の安定化を図ることができる。
一方、上記ステップST3にて否定判定が為されたときに、そのステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、上記ステップST6,ST7にて、ギヤ比制御開始閾値が低くなる補正量と可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量を増加させる補正量を算出し、一時記憶装置等に記録されているものと置き換える。
このような補正量が記録されている場合とは、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が大きくなる位置を運転者が保持している状態を指す。そして、かかる場合に車輌挙動制御が必要とされた際、そのステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、上記ステップST13において、ギヤ比制御開始閾値の補正量と上記ステップST12で求めた基本ギヤ比制御開始閾値とに基づいて、その基本ギヤ比制御開始閾値よりも低い値のギヤ比制御開始閾値を設定する。これが為、上記ステップST14においては、操舵性の良い位置が保持されているときよりも早い段階で車輌挙動制御が実行される。従って、この際には、早期に操舵角度に対する操舵輪10FL,10FRの転舵角度を小さくすることができるので、運転者の操舵操作による車輌の挙動の更なる不安定化が回避される。
また、そのステップST13においては、可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量に対する補正量と上記ステップST12で求めた基本制御量とに基づいて、その基本制御量よりも大きい値の可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量を設定する。これが為、上記ステップST14においては、ギヤ比が操舵性の良い位置が保持されているときのギヤ比よりも高ギヤ比側へと変更される。従って、操舵角度に対する操舵輪10FL,10FRの転舵角度が操舵性の良い位置が保持されているときよりも小さくなり、運転者の操舵操作による車輌の挙動の更なる不安定化が回避される。
ここで、上記ステップST9の補正量が記録されている場合には、制動力発生装置20が車輌挙動制御の制御対象であれば、電子制御装置40の制動制御手段44は、制動制御条件設定手段43が車輌の挙動状態に応じて設定した制動制御条件を補正することなく、操舵性の良い位置が保持されているときの制動制御開始時期に、操舵性の良い位置が保持されているときの制御量(油圧発生量)で制御輪に対して車輌の挙動状態に応じた制動力を発生させる。また、原動機が制御対象であれば、出力トルク制御手段46は、出力トルク制御条件設定手段45が車輌の挙動状態に応じて設定した出力トルク制御条件を補正することなく、操舵性の良い位置が保持されているときの出力トルク制御開始時期に、操舵性の良い位置が保持されているときの制御量で車輌の挙動状態に応じて出力トルクを減少させる。また、ステアリングギヤ比可変装置35が制御対象であれば、ステアリングギヤ比制御手段48は、ステアリングギヤ比制御条件設定手段47が車輌の挙動状態に応じて設定したギヤ比制御条件を補正することなく、操舵性の良い位置が保持されているときのギヤ比制御開始時期に、操舵性の良い位置が保持されているときの制御量で車輌の挙動状態や車速に応じてギヤ比の変更を行う。
以上示した如く、本実施例1の車輌挙動制御装置は、運転者によるステアリングホイール31の持ち位置に応じた適切な開始時期に適切な制御量で車輌挙動制御を実行することができる。これが為、この本実施例1の車輌挙動制御装置によれば、ステアリングホイール31の持ち位置に応じて適切に車輌の挙動を安定化させることが可能になる。
ところで、上述した本実施例1にあっては、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が小さくなってしまう位置を保持している場合、無用な車輌挙動制御の介入を避けるべく制御開始閾値(制動制御開始閾値、出力トルク制御開始閾値、ギヤ比制御開始閾値)を高く補正している。また、かかる場合には、車輌挙動制御の介入後の挙動変化が必要以上に大きくならないよう制御対象の制御量(増減圧制御弁の制御量、原動機の制御量、可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量)を減少させている。
しかしながら、かかる場合を異なった観点から考察してみると、運転者は修正舵を行うなどして自力で車輌の挙動を修正させ難いので、運転者は強引に操舵操作を行い、車輌の挙動を更に不安定にさせてしまう虞がある。従って、かかる場合には、早い段階で電子制御装置40による車輌挙動制御を介入させて、早期に車輌の挙動を安定化させることが好ましい、との考えに立つこともできる。また、かかる場合には、その車輌挙動制御を実行させる際に、運転者の強引な操舵操作に伴い大きく不安定方向へと変化する車輌の挙動を適切に安定方向へと導く為、制御対象の制御量を増加することが好ましい、との考えに立つこともできる。
そこで、制動制御条件設定手段43,出力トルク制御条件設定手段45及びステアリングギヤ比制御条件設定手段47については、かかる場合に制御開始閾値を低く補正すべく構成してもよく、また、制御対象の制御量を増加させるべく構成してもよい。
次に、本発明に係る車輌挙動制御装置の実施例2を図4及び図5に基づいて説明する。
ここで、運転者によるステアリングホイール31の持ち位置が同じであっても、その操舵方向(即ち、押し舵か引き舵か)によっては運転者の操舵力や操舵角度に違いが生じてしまう。これが為、運転者が操舵性の好ましくない位置を保持しているときには、その際の操舵方向如何で車輌が更に異なる挙動を示してしまう。このことは、特に、片手でステアリングホイール31を保持しているときに顕著に表れる。例えば、ステアリングホイール31の左右何れか一方又は上側を片手で保持している場合には、押し舵よりも引き舵の方が腕の重力などにより操舵力や操舵角度が大きくなる。また、ステアリングホイール31の下側を片手で保持している場合には、引き舵よりも押し舵の方が操舵力や操舵角度が大きくなる。
従って、本実施例2にあっては、ステアリングホイール31の操舵方向も考慮して制御対象の制御条件を補正する。
そこで、本実施例2の車輌には、ステアリングホイール31の操舵方向を検出するステアリングホイール操舵方向検出手段を設けている。このステアリングホイール操舵方向手段は、ステアリングホイール31の回転方向を検出するステアリングホイール回転方向検出部と、その検出結果に基づいてステアリングホイール31の操舵方向を判定する電子制御装置40の図4に示すステアリングホイール操舵方向判定手段49とで構成される。例えば、本実施例2にあっては、そのステアリングホイール回転方向検出部として操舵角センサ52を利用する。
更に、本実施例2の制動制御条件設定手段43,出力トルク制御条件設定手段45及びステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、運転者のステアリングホイール31の持ち位置と操舵方向に応じて制動制御条件,出力トルク制御条件及びギヤ比制御条件を適切なものへと補正するよう構成されている。
具体的に、その制動制御条件設定手段43,出力トルク制御条件設定手段45及びステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が大きくなる位置(ステアリングホイール31の上側)を保持している場合、実施例1と同様に、制御開始閾値(制動制御開始閾値,出力トルク制御開始閾値及びギヤ比制御開始閾値)を操舵性の良い位置が保持されているときのものよりも低く設定し、また、制御量(増減圧制御弁の制御量,原動機の制御量及び可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量)を操舵性の良い位置が保持されているときの制御量よりも増加させる。
そして、本実施例2の制動制御条件設定手段43,出力トルク制御条件設定手段45及びステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、その持ち位置での操舵方向が引き舵の場合には押し舵のときよりも操舵力や操舵角度が大きくなるので、引き舵のときには、押し舵のときよりも更に制御開始閾値(制動制御開始閾値,出力トルク制御開始閾値及びギヤ比制御開始閾値)を低く設定し、また、押し舵のときよりも更に制御量(増減圧制御弁の制御量,原動機の制御量及び可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量)を増加させる。
一方、その制動制御条件設定手段43,出力トルク制御条件設定手段45及びステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、操舵性の良い位置よりも操舵力や操舵角度が小さくなる位置(ステアリングホイール31の左右何れか一方又は下側)を保持している場合、実施例1と同様に、制御開始閾値(制動制御開始閾値,出力トルク制御開始閾値及びギヤ比制御開始閾値)を操舵性の良い位置が保持されているときのものよりも高く設定し、また、制御量(増減圧制御弁の制御量,原動機の制御量及び可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量)を操舵性の良い位置が保持されているときの制御量よりも減少させる。
そして、この制動制御条件設定手段43,出力トルク制御条件設定手段45及びステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、その持ち位置がステアリングホイール31の左右何れか一方で且つ操舵方向が押し舵の場合には引き舵のときよりも操舵力や操舵角度が小さくなるので、押し舵のときには、引き舵のときよりも更に制御開始閾値(制動制御開始閾値,出力トルク制御開始閾値及びギヤ比制御開始閾値)を高く設定し、また、引き舵のときよりも更に制御量(増減圧制御弁の制御量,原動機の制御量及び可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量)を減少させる。また、この制動制御条件設定手段43,出力トルク制御条件設定手段45及びステアリングギヤ比制御条件設定手段47は、その持ち位置がステアリングホイール31の下側で且つ操舵方向が引き舵の場合には押し舵のときよりも操舵力や操舵角度が小さくなるので、引き舵のときには、押し舵のときよりも更に制御開始閾値(制動制御開始閾値,出力トルク制御開始閾値及びギヤ比制御開始閾値)を高く設定し、また、押し舵のときよりも更に制御量(増減圧制御弁の制御量,原動機の制御量及び可変ギヤ比アクチュエータ35aの制御量)を減少させる。
以下に、本実施例2の車輌挙動制御装置の動作について図3及び図5のフローチャートに基づき説明する。
尚、本実施例2のステップST1からステップST3及びステップST9は、前述した実施例1のステップST1からステップST3及びステップST9と同じであるので、ここでの説明は省略する。また、以下の何れの補正量についても、ステアリングホイール31の持ち位置に応じて制御対象毎に予め設定されているものとする。
本実施例2の電子制御装置40は、図5のフローチャートに示す如く、ステップST2にてステアリングホイール31の左右何れか一方を保持していると判定された場合、次に押し舵か否かを判定する(ステップST21)。
そして、そのステップST21にて否定判定が為された場合、電子制御装置40は、制御対象の制御開始閾値を高くする為の補正量{例えば、補正係数X1(>1)又は補正項P1(>0)}を算出する(ステップST22)。更に、この電子制御装置40は、制御対象の制御量を減少させる為の補正量{例えば、補正係数Y1(<1)又は補正項Q1(<0)}を算出する(ステップST23)。
一方、上記ステップST21にて肯定判定が為された場合、電子制御装置40は、制御対象の制御開始閾値を上記ステップST22よりも高くする為の補正量{例えば、補正係数X3(>X1)又は補正項P3(>P1)}を算出する(ステップST24)。更に、この電子制御装置40は、制御対象の制御量を上記ステップST23よりも減少させる為の補正量{例えば、補正係数Y3(<Y1)又は補正項Q3(<Q1)}を算出する(ステップST25)。
また、本実施例2の電子制御装置40は、ステップST3にてステアリングホイール31の下側を保持していると判定された場合、次に押し舵か否かを判定する(ステップST26)。
そして、そのステップST26にて肯定判定が為された場合、電子制御装置40は、上記ステップST22にて制御対象の制御開始閾値を高くする為の補正量を算出する。更に、この電子制御装置40は、上記ステップST23にて制御対象の制御量を減少させる為の補正量を算出する。
一方、そのステップST26にて否定判定が為された場合、電子制御装置40は、上記ステップST24にて制御対象の制御開始閾値を上記ステップST22よりも高くする為の補正量を算出する。更に、この電子制御装置40は、上記ステップST25にて制御対象の制御量を上記ステップST23よりも減少させる為の補正量を算出する。
また、本実施例2の電子制御装置40は、ステップST3にてステアリングホイール31の上側を保持していると判定された場合にも、次に押し舵か否かを判定する(ステップST27)。
そして、そのステップST27にて肯定判定が為された場合、電子制御装置40は、制御対象の制御開始閾値を低くする為の補正量{例えば、補正係数X2(<1)又は補正項P2(<0)}を算出する(ステップST28)。更に、この電子制御装置40は、制御対象の制御量を増加させる為の補正量{例えば、補正係数Y2(>1)又は補正項Q2(>0)}を算出する(ステップST29)。
一方、そのステップST27にて否定判定が為された場合、電子制御装置40は、制御対象の制御開始閾値を上記ステップST28よりも低くする為の補正量{例えば、補正係数(X4<X2)又は補正項P4(<P2)}を算出する(ステップST30)。更に、この電子制御装置40は、制御対象の制御量を上記ステップST29よりも増加させる為の補正量{例えば、補正係数Y4(>Y2)又は補正項Q4(>Q2)}を算出する(ステップST31)。
本実施例2にあっても、上記の補正量は算出される度に電子制御装置40の一時記憶装置等に記録されて更新される(ステップST32)。
ここで、操舵性の良い位置が保持されているときに対しての制御開始閾値の高低の違いによる夫々の制御対象の作用効果、操舵性の良い位置が保持されているときに対しての制御量の増減による夫々の制御対象の作用効果については、前述した実施例1と同様である。従って、以下においては、制御対象が制動力発生装置20である場合を代表して上述した本実施例2の車輌挙動制御装置の制御動作について具体的に説明する。
先ず、制御対象が制動力発生装置20である場合について詳述する。制動制御条件設定手段43は、求めた補正量を上記ステップST32にて電子制御装置40の一時記憶装置等に記録する際、その補正量を一時記憶装置等に記録されている制動力発生装置20に関わるものと置き換える。
かかる場合、上記ステップST2で肯定判定が為された後上記ステップST21にて否定判定が為されたとき(ステアリングホイール31の左右何れか一方を保持して引き舵が行われている場合)に、制動制御条件設定手段43は、上記ステップST22にて増減圧制御弁の制動制御開始閾値が高くなる補正量を算出する。更に、この制動制御条件設定手段43は、上記ステップST23にて増減圧制御弁の制御量(油圧発生量)を減少させる補正量を算出する。
そして、かかる場合に車輌挙動制御が必要とされた際、その制動制御条件設定手段43は、図3のステップST13において、制動制御開始閾値の補正量とステップST12で求めた基本制動制御開始閾値とに基づいて、その基本制動制御開始閾値よりも高い値の増減圧制御弁の制動制御開始閾値を設定する。これが為、図3のステップST14においては、操舵性の良い位置が保持されているときよりも遅れて車輌挙動制御(制御輪への制動力付与)が実行される。
また、そのステップST13においては、増減圧制御弁の制御量に対する補正量とステップST12で求めた基本制御量とに基づいて、その基本制御量よりも小さい値の増減圧制御弁の制御量を設定する。これが為、ステップST14においては、増減圧制御弁から制御輪に対して操舵性の良い位置が保持されているときよりも少ない油圧が供給される。従って、その制御輪には、操舵性の良い位置が保持されているときよりも低い制動力が発生する。
一方、上記ステップST2で肯定判定が為された後上記ステップST21にて肯定判定が為されたとき(ステアリングホイール31の左右何れか一方を保持して押し舵が行われている場合)に、制動制御条件設定手段43は、上記ステップST24にて増減圧制御弁の制動制御開始閾値が上記ステップST21で否定判定されたときよりも高くなる補正量を算出する。更に、この制動制御条件設定手段43は、上記ステップST25にて増減圧制御弁の制御量(油圧発生量)を上記ステップST21で否定判定されたときよりも減少させる補正量を算出する。
そして、かかる場合に車輌挙動制御が必要とされた際、その制動制御条件設定手段43は、ステップST13において、制動制御開始閾値の補正量とステップST12で求めた基本制動制御開始閾値とに基づいて、その基本制動制御開始閾値よりも高く且つ上記ステップST21で否定判定されたときよりも高い値の増減圧制御弁の制動制御開始閾値を設定する。これが為、ステップST14においては、引き舵のときよりも更に遅れて車輌挙動制御が実行されるようになる。
また、そのステップST13においては、増減圧制御弁の制御量に対する補正量とステップST12で求めた基本制御量とに基づいて、その基本制御量よりも小さく且つ上記ステップST21で否定判定されたときよりも小さい値の増減圧制御弁の制御量を設定する。これが為、ステップST14においては、増減圧制御弁から制御輪に対して引き舵のときよりも少ない油圧が供給される。従って、その制御輪には、引き舵のときよりも低い制動力が発生する。
このように、ステアリングホイール31の左右何れか一方を保持している場合でも、その操舵方向に応じて制動制御開始閾値の上昇代を変えているので、無用な車輌挙動制御の介入をステアリングホイール31の持ち位置と操舵方向に応じて効果的に回避することができる。また、ステアリングホイール31の左右何れか一方を保持している場合でも、その操舵方向に応じて増減圧制御弁の制御量の減少代を変えているので、ステアリングホイール31の持ち位置と操舵方向に応じた適切な車輌挙動制御を実行することができる。
また、上記ステップST3で肯定判定が為された後上記ステップST26にて肯定判定が為されたとき(ステアリングホイール31の下側を保持して押し舵が行われている場合)に、制動制御条件設定手段43は、上記ステップST22にて増減圧制御弁の制動制御開始閾値が高くなる補正量を算出し、更に、上記ステップST23にて増減圧制御弁の制御量(油圧発生量)を減少させる補正量を算出する。
そして、かかる場合に車輌挙動制御が必要とされた際、その制動制御条件設定手段43は、ステップST13において基本制動制御開始閾値よりも高い値の増減圧制御弁の制動制御開始閾値を設定する。これが為、ステップST14においては、操舵性の良い位置が保持されているときよりも遅れて車輌挙動制御(制御輪への制動力付与)が実行される。
また、そのステップST13においては、基本制御量よりも小さい値の増減圧制御弁の制御量を設定する。これが為、ステップST14においては、増減圧制御弁から制御輪に対して操舵性の良い位置が保持されているときよりも少ない油圧が供給される。従って、その制御輪には、操舵性の良い位置が保持されているときよりも低い制動力が発生する。
一方、上記ステップST3で肯定判定が為された後上記ステップST26にて否定判定が為されたとき(ステアリングホイール31の下側を保持して引き舵が行われている場合)に、制動制御条件設定手段43は、上記ステップST24にて増減圧制御弁の制動制御開始閾値が上記ステップST26で肯定判定されたときよりも高くなる補正量を算出する。更に、この制動制御条件設定手段43は、上記ステップST25にて増減圧制御弁の制御量を上記ステップST26で肯定判定されたときよりも減少させる補正量を算出する。
そして、かかる場合に車輌挙動制御が必要とされた際、その制動制御条件設定手段43は、ステップST13において、基本制動制御開始閾値よりも高く且つ上記ステップST26で肯定判定されたときよりも高い値の増減圧制御弁の制動制御開始閾値を設定する。これが為、ステップST14においては、押し舵のときよりも更に遅れて車輌挙動制御が実行されるようになる。
また、そのステップST13においては、基本制御量よりも小さく且つ上記ステップST26で肯定判定されたときよりも小さい値の増減圧制御弁の制御量を設定する。これが為、ステップST14においては、増減圧制御弁から制御輪に対して押し舵のときよりも少ない油圧が供給される。従って、その制御輪には、押し舵のときよりも低い制動力が発生する。
このように、ステアリングホイール31の下側を保持している場合でも、その操舵方向に応じて制動制御開始閾値の上昇代を変えているので、無用な車輌挙動制御の介入をステアリングホイール31の持ち位置と操舵方向に応じて効果的に回避することができる。また、ステアリングホイール31の下側を保持している場合でも、その操舵方向に応じて増減圧制御弁の制御量の減少代を変えているので、ステアリングホイール31の持ち位置と操舵方向に応じた適切な車輌挙動制御を実行することができる。
また、上記ステップST3で否定判定が為された後上記ステップST27にて肯定判定が為されたとき(ステアリングホイール31の上側を保持して押し舵が行われている場合)に、制動制御条件設定手段43は、上記ステップST28にて増減圧制御弁の制動制御開始閾値が低くなる補正量を算出し、更に、上記ステップST29にて増減圧制御弁の制御量(油圧発生量)を増加させる補正量を算出する。
そして、かかる場合に車輌挙動制御が必要とされた際、その制動制御条件設定手段43は、ステップST13において基本制動制御開始閾値よりも低い値の増減圧制御弁の制動制御開始閾値を設定する。これが為、ステップST14においては、操舵性の良い位置が保持されているときよりも早期に車輌挙動制御(制御輪への制動力付与)が実行される。
また、そのステップST13においては、基本制御量よりも大きい値の増減圧制御弁の制御量を設定する。これが為、ステップST14においては、増減圧制御弁から制御輪に対して操舵性の良い位置が保持されているときよりも大きな油圧が供給される。従って、その制御輪には、操舵性の良い位置が保持されているときよりも高い制動力が発生する。
一方、上記ステップST3で否定判定が為された後上記ステップST27にて否定判定が為されたとき(ステアリングホイール31の上側を保持して引き舵が行われている場合)に、制動制御条件設定手段43は、上記ステップST30にて増減圧制御弁の制動制御開始閾値が上記ステップST27で肯定判定されたときよりも高くなる補正量を算出する。更に、この制動制御条件設定手段43は、上記ステップST31にて増減圧制御弁の制御量を上記ステップST27で肯定判定されたときよりも増加させる補正量を算出する。
そして、かかる場合に車輌挙動制御が必要とされた際、その制動制御条件設定手段43は、ステップST13において、基本制動制御開始閾値よりも低く且つ上記ステップST27で肯定判定されたときよりも低い値の増減圧制御弁の制動制御開始閾値を設定する。これが為、ステップST14においては、押し舵のときよりも更に早い段階で車輌挙動制御が実行されるようになる。
また、そのステップST13においては、基本制御量よりも大きく且つ上記ステップST27で肯定判定されたときよりも大きい値の増減圧制御弁の制御量を設定する。これが為、ステップST14においては、増減圧制御弁から制御輪に対して押し舵のときよりも大きな油圧が供給される。従って、その制御輪には、押し舵のときよりも高い制動力が発生する。
このように、ステアリングホイール31の上側を保持している場合でも、その操舵方向に応じて制動制御開始閾値の下降代を変えているので、車輌挙動制御の早い段階での介入時期をステアリングホイール31の持ち位置と操舵方向に応じて効果的に設定することができる。また、ステアリングホイール31の上側を保持している場合でも、その操舵方向に応じて増減圧制御弁の制御量の増加代を変えているので、ステアリングホイール31の持ち位置と操舵方向に応じた適切な車輌挙動制御を実行することができる。
以上示した如く、本実施例2の車輌挙動制御装置は、運転者によるステアリングホイール31の持ち位置とその際の操舵方向に応じた適切な開始時期に適切な制御量で車輌挙動制御を実行することができる。これが為、この本実施例2の車輌挙動制御装置によれば、実施例1のようなステアリングホイール31の持ち位置だけでなく、その持ち位置での操舵方向をも考慮して適切に車輌の挙動を安定化させることができる。