JP2006015871A - 反力制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ブレーキ圧制御装置が作動していないときの操舵フィーリングを良好にしつつ、ブレーキ圧制御装置の作動が終了したときに生じ得る車両の不整挙動を抑制する。
【解決手段】 車両の運転者により操作されるステアリングホイールに作用させるべき反力成分を制御する反力制御装置において、ステアリングホイールに作用する操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ16と、車両の車速を検出する車速センサ19と、少なくとも操舵トルクセンサ16,車速センサ19,及び転舵輪に加えるブレーキ圧を制御可能なブレーキ圧制御装置からの信号に応じて、反力成分を設定する反力補正部33とを備え、この反力補正部33は、ブレーキ圧制御装置が作動しているときは、非作動時よりも反力成分を大きくする。
【選択図】 図3

Description

この発明は、車両の操舵系において操作子に作用させるべき反力成分を制御する反力制御装置に関するものである。
車両用操舵装置として電動式パワーステアリング装置が知られている。電動式パワーステアリング装置は、ステアリングホイール(以下、ステアリング)に結合されたステアリングシャフトと転舵輪を転舵させる転舵機構とが機械的に連結されるとともに、操舵力を補助するための電動機が前記転舵機構に連係されていて、一般に、ステアリングシャフトに作用する操舵トルクが大きいほど補助操舵力が大きくなるように前記電動機の駆動トルク指令値(駆動電流値)を制御している。
また、この種の電動式パワーステアリング装置では、極低車速時に運転者がステアリングを切って中立位置へ戻すときの戻り性を良くするため、ステアリングの操舵角に応じて前記電動機に与える駆動トルク指令値(駆動電流値)を減衰補正する、いわゆるハンドル戻し制御を行うものもある(例えば、特許文献1参照)。
このように構成した場合、駆動トルク指令値に対する減衰補正値は、操舵アシスト力に対する反力成分と言える。
特開平09−277950号公報
電動式パワーステアリング装置の操舵トルクは、転舵輪からのセルフアライニングトルクと、運転者がステアリングに入力したトルクの差として検出されている。
このため、ブレーキ操作時に各転舵輪がロック状態に陥ることを防止するアンチロックブレーキ制御(いわゆる、ABS)や、オーバーステアまたはアンダーステア時に旋回外輪側または旋回内輪側の前輪にブレーキ圧を加える方向安定性制御等を行えるブレーキ圧制御装置を備えた車両において、該ブレーキ圧制御装置が車両旋回中に作動した場合には、転舵輪から発生する力のほとんどが制動力に使われてしまう結果、セルフアライニングトルクが出ず、操舵トルクが発生し難い状況となる。この傾向は、例えば雪上等のように路面が低摩擦状態(低μ状態)のときに顕著となる。
そのような状況では、転舵輪を中立位置に戻そうとする力が出ず、また、操舵トルクもほとんど発生しないため、運転者はどちらにステアリングを切れば中立位置に戻るのか、わかり難い状況になっている。このため、ブレーキ圧制御装置の作動が終了したときに、転舵輪が予期せぬ角度に切れていることがあり、車両挙動が不安定となる場合がある。
他方、上記特許文献1記載のハンドル戻し制御を行えば、ステアリングは中立位置まで戻るものの、通常の走行状態であっても、操舵角に応じてハンドル戻し制御が介入してしまうため、運転者はそれを違和感として感じることがある。
そこで、この発明は、ブレーキ圧制御装置が作動していないときの操舵フィーリングを良好にしつつ、ブレーキ圧制御装置の作動が終了したときに生じ得る車両の不整挙動を抑制することのできる反力制御装置を提供するものである。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の運転者により操作される操作子(例えば、後述する実施例におけるステアリングホイール3)に作用させるべき反力成分を制御する反力制御装置において、前記操作子に作用する操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段(例えば、後述する実施例における操舵トルクセンサ16)と、前記車両の車速を検出する車速検出手段(例えば、後述する実施例における車速センサ19)と、少なくとも前記操舵トルク検出手段,前記車速検出手段,及び車輪(例えば、後述する実施例における転舵輪9,9)に加えるブレーキ圧を制御可能なブレーキ圧制御装置(例えば、後述する実施例におけるブレーキ圧制御装置100)からの信号(例えば、後述する実施例における作動信号、作動量信号)を用いて、前記反力成分を設定する反力成分制御手段(例えば、後述する実施例における反力補正部33)とを備え、前記反力成分制御手段は、前記ブレーキ圧制御装置が作動しているときは、非作動時よりも前記反力成分を大きくすることを特徴とする。
このように構成することにより、ブレーキ圧制御装置が作動しているとき、つまり、セルフアライニングトルクが低下しているときであっても、操作子を中点位置に戻そうとする反力成分が大きめに設定されるので、運転者にとっては、どちらに操作子を操作すれば中立位置に戻るのかの判断が容易となる。また、操作子を中点位置に戻そうとする反力成分は、ブレーキ圧制御装置の作動時のみに限定され、非作動時には無効とされる。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明において、前記反力成分制御手段は、前記ブレーキ圧制御装置の制御量(例えば、後述する実施例における前輪ブレーキ加圧手段64A,64Bの作動量や、加圧弁80A,80Bと解放弁81A,81Bの作動量)が大きいほど前記反力成分を大きくすることを特徴とする。
このように構成することにより、セルフアライニングトルクが低くなるほど、操作子を中点位置に戻そうとする反力成分が大きくなるので、運転者にとっては、どちらに操作子を操作すれば中立位置に戻るのかの判断が極めて困難な状況下においても、その判断が容易となる。
請求項3に係る発明は、請求項1記載の発明において、前記反力成分制御手段は、前記車速が大きいほど前記反力成分を大きくすることを特徴とする。
このように構成することにより、高車速での車両旋回時には、操作子に作用させるべき反力成分が大きくなり、車両の安定感が増す。
請求項4に係る発明は、請求項1記載の発明において、運転者による前記操作子の操作量(例えば、後述する実施例における操舵角δ)を検出する操作量検出手段(例えば、後述する実施例における操舵角センサ15)を備え、前記反力成分制御手段は、前記操作量が大きいほど前記反力成分を大きくすると共に、前記反力成分の設定に影響を与えない操作量領域(例えば、後述する実施例における不感帯)を有し、該操作量領域は車速が小さいほど大きいことを特徴とする。
このように構成することにより、ブレーキ圧制御装置の作動が終了したときに、車輪が予期せぬ角度に転舵されていることを効果的に抑制することができる。また、低車速では比較的操舵角が大きくなるまで反力成分を付与しないことが可能になる。
請求項1に係る発明によれば、ブレーキ圧制御装置の作動が終了した時に生じ得る車両の不整挙動を効果的に抑制することができる。しかも、ブレーキ圧制御装置が作動していていないときは、良好な操舵フィーリングを得ることができる。
請求項2に係る発明によれば、ブレーキ圧制御装置の作動が終了した時に生じ得る車両の不整挙動をより一層効果的に抑制することができる。
請求項3に係る発明によれば、高車速時における車両の安定感が増すので、操舵フィーリングが向上し、商品性も増す。
請求項4に係る発明によれば、ブレーキ圧制御装置の作動が終了した時に生じ得る車両の不整挙動をより一層効果的に抑制することができる。また、車速に応じた反力成分のきめ細かな設定が可能になるので、操舵フィーリングが更に向上する。
以下、この発明に係る反力制御装置の一実施例を図1から図4の図面を参照して説明する。なお、以下の実施例においては、この発明を電動パワーステアリング装置に適用した態様で説明する。
初めに、図1を参照して、電動式パワーステアリング装置の構成を説明する。電動式パワーステアリング装置は手動操舵力発生機構1を備えており、この手動操舵力発生機構1は、ステアリングホイール(操作子)3に一体結合されたステアリングシャフト4が、ユニバーサルジョイントを有する連結軸5を介してラック&ピニオン機構のピニオン6に連結されて構成されている。ピニオン6は、車幅方向に往復動し得るラック軸7のラック7aに噛合し、ラック軸7の両端には、タイロッド8,8を介して転舵輪としての左右の前輪9,9が連結されている。この構成により、ステアリングホイール3の操舵時に通常のラック&ピニオン式の転舵操作が可能であり、前輪9,9を転舵させて車両の向きを変えることができる。ラック軸7とタイロッド8,8は転舵機構を構成する。
また、ラック軸7と同軸上に、手動操舵力発生機構1による操舵力を軽減するための補助操舵力を供給する電動機10が配設されている。この電動機10により供給される補助操舵力は、ラック軸7に対してほぼ平行に設けられたボールねじ機構12を介して推力に変換され、ラック軸7に作用せしめられる。そのために、ラック軸7を挿通させた電動機10のロータに駆動側ヘリカルギヤ11を一体的設け、この駆動側ヘリカルギヤ11に噛合する従動側ヘリカルギヤ13を、ボールねじ機構12のスクリューシャフト12aの一端に設け、ボールねじ機構12のナット14をラック7に固定している。
ステアリングシャフト4には、ステアリングシャフト4の回転角度に対応したステアリングホイール3の操舵角δを検出するための操舵角センサ15が設けられ、前記ラック&ピニオン機構(6,7a)を収容するステアリングギアボックス(図示略)内には、ピニオン6に作用する操舵トルクを検出するための操舵トルクセンサ(操舵トルク検出手段)16が設けられている。操舵角センサ15は検出した操舵角δに対応する電気信号を、操舵トルクセンサ16は検出した操舵トルクに対応する電気信号を、それぞれステアリング制御装置20に出力する。
また、車体の適所には、車両の横加速度を検出するための横加速度センサ17と、車両のヨーレートγを検出するためのヨーレートセンサ18と、車速に対応した電気信号を出力する車速センサ(車速検出手段)19とが取り付けられている。
横加速度センサ17は検出した横加速度αに対応する電気信号を、ヨーレートセンサ18は検出したヨーレートγに対応する電気信号を、後述するブレーキ圧制御装置100における方向安定性制御部(図示略)に出力する。一方、車速センサ19は車速に対応した電気信号を、ステアリング制御装置20に出力する。
次に、図2を参照して、上記実施例に係る反力制御装置と協調するブレーキ圧制御装置の一実地例の構成を説明する。同図に示すように、左右の前車輪WFL,WFRには左右の前輪ブレーキBFL,BFRが装着され、従動輪である左後輪WRLおよび右後輪WRRには左右の後輪ブレーキBRL,BRRが装着され、各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRは、たとえばディスクブレーキである。
タンデム型のマスタシリンダMが備える第1および第2出力ポート2A,2BからはブレーキペダルPの踏込み操作に応じたブレーキ液圧が出力され、両出力ポート2A,2Bはブレーキ液圧回路50に接続され、該ブレーキ液圧回路50からのブレーキ液圧が各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRに作用する。
このブレーキ液圧回路50では、図示しない方向安定性制御部で制御されることにより各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRに作用するブレーキ液圧が調節され、該方向安定性制御部には、各車輪WFL,WFR,WRL,WRRの車輪速度、操舵角δ、車両のヨーレートγ、ならびに車両の横加速度αがそれぞれ入力される。
ブレーキ液圧回路50は、リザーバRを備えるマスタシリンダMの第1出力ポート2Aおよび右後輪ブレーキBRR間に設けられる右後輪ブレーキ調圧手段60Aおよび比例減圧弁61Aと、マスタシリンダMの第2出力ポート2Bおよび左後輪ブレーキBRL間に設けられる左後輪ブレーキ調圧手段60Bおよび比例減圧弁61Bと、第1出力ポート2Aおよび左前輪ブレーキBFL間に設けられる左前輪ブレーキ液圧制御装置62Aと、第2出力ポート2Bおよび右前輪ブレーキBFR間に設けられる右前輪ブレーキ液圧制御装置62Bとを備える。
左前輪ブレーキ加圧手段64Aは、マスタシリンダMのリザーバRならびに左右の前輪ブレーキ調圧手段63A,63Bのリザーバ68A,68Bとは独立したリザーバ77と、該リザーバ77から制御液を汲上げる第2ポンプ78と、第1液圧路69AならびにマスタシリンダMの第1出力ポート2Aに連なる第2液圧路84A間に設けられる制御アクチュエータ79Aと、該制御アクチュエータ79Aの作動を制御するための制御液圧を導く制御液圧路85Aおよび第2ポンプ78間に設けられる加圧弁80Aと、制御液圧路85Aおよびリザーバ77間に設けられる解放弁81Aとを備え、加圧弁80Aおよび解放弁81Aはともに常開型電磁弁である。
右前輪ブレーキ加圧手段64Bは、左前輪ブレーキ加圧手段64Aと共通なリザーバ77および第2ポンプ78と、第1液圧路69BならびにマスタシリンダMの第2出力ポート2Bに連なる第2液圧路84B間に設けられる制御アクチュエータ79Bと、該制御アクチュエータ79Bの作動を制御するための制御液圧を導く制御液圧路85Bおよび第2ポンプ78間に設けられる加圧弁80Bと、制御液圧路85Bおよびリザーバ77間に設けられる解放弁81Bとを備えて、左前輪ブレーキ加圧手段64Aと同様に構成される。
そして、左右の前輪ブレーキBFL,BFRに個別に通じ得る第1液圧路69A,69Bと、マスタシリンダMの両出力ポート2A,2Bに個別に通じる第2液圧路84A,84Bとの間にそれぞれ設けられた両前輪ブレーキ加圧手段64A,64Bにより、旋回走行状態でのオーバーステア時に旋回外輪側の前輪に対応する左右の前輪ブレーキ加圧手段64A,64Bを作動させるとともにアンダーステア時に旋回内輪側の前輪に対応する左右の前輪ブレーキ加圧手段64A,64Bを作動させる方向安定性制御が実施される。
このとき、方向安定性制御部は、車輪速度、横加速度α、ヨーレートγ等に基づいて、ブレーキ加圧手段64A,64Bの制御量を算出し、各弁80A,80B,81A,81Bの開閉作動を制御するための制御信号を出力している。
ブレーキ加圧手段64A,64Bの制御量は、ブレーキ圧制御装置100の作動量に対応する電気信号(以下、作動量信号)として、当該ブレーキ加圧手段64A,64Bが作動したことを示す作動信号と共に、制御装置間の通信を担うCAN等の通信手段110を介して、ステアリング制御装置20に出力される。
すなわち、ステアリング制御装置20は、操舵角センサ15,操舵トルクセンサ16,車速センサ19からの入力信号と、ブレーキ圧制御装置100からの作動信号及び作動量信号とを処理して得られる制御信号により、電動機10に供給すべき目標電流を決定し、これを駆動回路21を介して電動機10に供給することにより、電動機10の出力トルクを制御し、ステアリング操作における操作補助力を制御する。
次に、図3の制御ブロック図を参照して、この実施例における電動機10に対する電流制御を説明する。
ステアリング制御装置20は、ベース電流決定部31、イナーシャ補正部32、反力補正部(反力成分制御手段)33を備えている。
ベース電流決定部31においては、操舵トルクセンサ16および車速センサ19の出力信号に基づき、ベース電流テーブル(図示略)を参照して、操舵トルクと車速に応じたベース電流値が決定される。ここで、ベース電流テーブルは、操舵トルクが大きくなるにしたがってベース電流が大きくなり、車速が大きくなるにしたがってベース電流が小さくなるように設定されている。
イナーシャ補正部32においては、ベース電流決定部31で決定したベース電流に対し、電動機10の慣性マス補償が行われる。
反力補正部33は、前記慣性マス補償後の電流から反力成分に応じた補正電流を減算して、電動機10に対する目標電流を算出し、この目標電流を駆動回路21に出力する。駆動回路21は、電動機10への供給電流が目標電流となるように制御して、電動機10に電流供給を行い、電動機10の出力トルクを制御する。
したがって、この実施例の電動パワーステアリング装置においては、反力補正部33で設定される補正電流は操舵アシスト力に対する反力成分ということができ、ベース電流決定部31で設定されるベース電流はこの反力成分を相殺する前の操舵アシスト力ということができる。
反力補正部33は、ダンパ補正部34と操舵角反力補正部35とからなる。
ダンパ補正部34は、操舵回転速度に基づいて第1反力補正電流を算出し、前記慣性マス補償後の電流から第1反力補正電流を減算する。
操舵角反力補正部35は、車速と、操舵角δと、ブレーキ圧制御装置100からの作動信号及び作動量信号とに基づいて第2反力補正電流Im2を算出し、ダンパ補正部34から出力される電流から第2反力補正電流Im2を減算して、目標電流を算出する。
操舵角反力補正部35における第2反力補正電流Im2の算出について詳述する。
操舵角反力補正部35は、ステア戻し制御電流算出部36において、車速センサ19と操舵角センサ15からの各出力信号に基づいて、車速と操舵角δに応じたステア戻し制御電流Imbを作成する。すなわち、まず、車速センサ19の出力信号に基づき、オフセットテーブル38を参照して、車速に応じたオフセット量を算出する。オフセットテーブル38は、車速が低い領域ではオフセット量が所定プラス値で一定で、所定の車速以上になると、車速の増大にしたがってオフセット量が徐々に減少していき、最終的には「0」になるように設定されている。
そして、ステア戻し制御電流算出部36は、操舵角センサ15で検出された操舵角δからオフセットテーブル38で算出されたオフセット量を減算して得たオフセット操舵角δ’に基づいて、補正電流テーブル39を参照し、基準ステア戻し制御電流(言い換えれば、基準反力成分)Imaを算出する。なお、オフセット操舵角δ’が負になった場合は、オフセット操舵角δ’を「0」とする。
ここで、補正電流テーブル39は、オフセット操舵角δ’が「0」のときに基準ステア戻し制御電流Imaが「0」に設定されていて、オフセット操舵角δ’が大きくなるにしたがって基準ステア戻し制御電流Imaが徐々に大きくなっていき、オフセット操舵角δ’が所定値以上になると基準ステア戻し制御電流Imaは上限値で一定となるように設定(リミット処理)されている。
操舵角センサ15で検出した操舵角δからオフセット量を減算して得たオフセット操舵角δ’に基づいて基準ステア戻し制御電流Imaを算出するようにした理由は、次の通りである。
オフセットテーブル38によれば、車速が高いときにはオフセット量は「0」であり、その場合にはオフセット量を加味した補正電流テーブルは図4(A)に示すようになり、操舵角センサ15からの操舵角δをそのまま補正電流テーブル39におけるオフセット操舵角δ’に対応させて基準ステア戻し制御電流Imaを算出することになる。
一方、車速が低い領域ではプラス値のオフセット量が設定されるため、操舵角δがオフセット量を超えるまでは、オフセット操舵角δ’≦0となり、この場合、オフセット量を加味した補正電流テーブルは図4(B)に示すようになり、「δ’≦0」の間は基準ステア戻し制御電流Imaは「0」に設定されることになる。
つまり、操舵角センサ15からの操舵角δがオフセット量以下となる領域(以下、この領域を不感帯と称す)、言い換えれば、反力成分(第2反力補正電流Im2)の設定に影響を与えない領域では、基準ステア戻し制御電流Ima(基準反力成分)が「0」に設定される。そして、オフセットテーブル38では車速が高くなるほどオフセット量が小さくなることから、車速が小さいほど不感帯が大きくなることとなる。なお、図4(A)に示す補正電流テーブルの場合は、不感帯がゼロになったときと考えることができる。
このように車速に応じて不感帯を可変にしたことにより、高車速では操舵角δが比較的小さいときから反力成分を発生させることが可能になり、低車速では操舵角δが比較的大きくなるまで反力成分の発生を抑制することが可能になるので、車速が高いほど生じ易い車両の不整挙動を確実に抑制することができる。
その結果、車速に応じた反力成分のきめ細かな設定が可能になり、高車速時の操舵安定性を向上することができると共に、操舵フィーリングの向上を図ることができる。
さらに、ステア戻し制御電流算出部36は、車速センサ19の出力信号に基づき、車速レシオテーブル40を参照して、車速に応じたレシオ(増幅率)R1を算出する。
ここで、車速レシオテーブル40は、車速が「0」のときにレシオR1が所定値(<1)に設定されていて、車速が大きくなるにしたがってレシオR1が徐々に大きくなっていき、車速が所定値以上になるとレシオR1は上限値(例えば、「1.0」)で一定となるように設定されている。
そして、補正電流テーブル39で算出した基準ステア戻し制御電流Imaに、車速レシオテーブル40から算出したレシオR1を乗じて得た積(Ima・R1)を、ステア戻し制御電流Imbとする(Imb=Ima・R)。これにより、高車速での車両旋回時に、ステアリングホイール3に作用させるべき反力成分が大きくなり、車両の安定感が増す。
操舵角反力補正部35は、ステア戻し制御電流Imbにブレーキ圧制御装置100の作動量に基づくレシオ(増幅率)R2を乗算して第2反力補正電流Im2を算出し、ダンパ補正部34から出力される電流から第2反力補正電流Im2を減算して、目標電流を算出する。ただし、ダンパ補正部34から出力される電流に対する減算処理は、通信手段110を介してブレーキ圧制御装置100から作動信号が入力されたときのみ、つまり、ブレーキ圧制御装置100が作動したときのみ行い、作動信号が未入力のとき、つまり、ブレーキ圧制御装置100が作動していないときは行わない。
このような減算処理の有無は、ブレーキ圧制御装置100からの作動信号に基づき開閉するスイッチング手段111により切り替えられる。
このような構成により、ステアリングホイール3を中点位置に戻そうとする反力成分は、ブレーキ圧制御装置100が作動しているときにのみ付与され、ブレーキ圧制御装置100が作動していないときには無効となる。
したがって、ブレーキ圧制御装置100が作動しているとき、つまり、セルフアライニングトルクが低下しているときであっても、ステアリングホイール3を中点位置に戻そうとする反力成分が大きめに設定されることになり、運転者にとっては、どちらにステアリングホイール3を操作すれば中立位置に戻るのかの判断が容易となる結果、ブレーキ圧制御装置100の作動が終了した時に生じ得る車両の不整挙動を効果的に抑制することができる。一方、ブレーキ圧制御装置100が未作動の際には、ステアリングホイール3を中点位置に戻そうとする反力成分の付与は無効となるので、良好な操舵フィーリングを得ることができる。
ブレーキ圧制御装置100の作動量に基づくレシオR2は、ブレーキ圧制御装置100からの作動量信号に基づいて、作動量レシオテーブル41を参照して算出する。ここで、作動量レシオマップ41は、ブレーキ圧制御装置100の作動量が所定値以下のときは最小値で一定であり、ブレーキ圧制御装置100の作動量が前記所定値を超えると、該作動量の増大にしたがってレシオR2が徐々に増大していくように設定されている。
レシオR2の最小値は、例えば「1.0」に設定されている。このように設定しておけば、ブレーキ圧制御装置100の作動量が所定範囲内で増減するような場合においても、それに伴う第2反力補正電流Im2の増減は発生しないので、良好な操舵フィーリングが維持される。
また、ブレーキ圧制御装置100の作動量が大きいほど大きいレシオR2に設定し、このレシオR2をステア戻し制御電流Imbに乗じて第2反力補正電流Im2を設定しているので、ブレーキ圧制御装置100が作動しているために、転舵輪9,9から発生する力のほとんどが制動力に使われてしまっている結果、セルフアライニングトルクが出ず、つまり、転舵輪9,9を中立位置に戻そうとする力が出ず、また、操舵トルクもほとんど発生しない状況であっても、ステアリング3を中点位置に戻そうとする反力成分を大きくし得て、運転者にとっては、どちらにステアリング3を操作すれば中立位置に戻るのかの判断が極めて困難な状況下においても、その判断が容易となる。
このため、ブレーキ圧制御装置100の作動が終了したときに、転舵輪が予期せぬ角度に切れているといった状況が効果的に回避され、ブレーキ圧制御装置100の作動が終了した時に生じ得る車両の不整挙動を効果的に抑制することができる。
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、前述したオフセットテーブル38によるオフセット処理や、車速レシオテーブル40によるレシオ処理は、この発明に係る反力制御装置において必須構成ではなく、これら処理を行わずに、ステア戻し制御電流算出部36で算出した基準ステア戻し制御電流Imaに、作動量レシオテーブル41を参照して得たレシオR2を乗算して補正電流Im2を算出するようにしてもよい。
また、ブレーキ圧制御装置の作動量としては、図2のブレーキ油圧回路において、アンチロックブレーキシステム(ABS)を構成している後輪ブレーキ調圧手段60A,60B、比例減圧弁61A,61B,前輪ブレーキ液圧制御装置62A,62Bの各作動量や、これらに対する制御指令値を使用してもよい。
さらに、この発明に係る反力制御装置は、前述した実施例の電動パワーステアリング装置への適用に限るものではなく、ステアリング・バイ・ワイヤ・システムの車両用操舵装置(SBW)、アクティブ・ステアリング・システムの車両用操舵装置、バリアブル・ギヤ・レシオ・ステアリング・システムの車両用操舵装置(VGS)にも適用可能である。
なお、ステアリング・バイ・ワイヤ・システムとは、操作子と転舵機構とが機械的に分離されていて、操作子に反力を作用させる反力モータと、転舵機構に設けられて転舵輪を転舵させる力を発生させるステアリングモータとを備えた操舵システムである。
アクティブ・ステアリング・システムとは、前輪舵角および後輪舵角を運転者のステアリング操作や車両の運動状況に応じて制御する操舵システムである。
バリアブル・ギヤ・レシオ・ステアリング・システムとは、操舵角の大きさに応じてステアリング・ギヤ・レシオを変更可能な操舵システムである。
この発明に係る反力制御装置を備えた電動パワーステアリング装置の一実施例における構成図である。 この発明に係る反力制御装置と協調するブレーキ圧制御装置の一実施例を示す油圧回路図である。 図1に示す電動機に対する電流制御のブロック図である。 図1の実施例において不感帯を説明するための車速特性図である。
符号の説明
3 ステアリングホイール(操作子)
15 操舵角センサ(操作量検出手段)
16 操舵トルクセンサ(操舵トルク検出手段)
19 車速センサ(車速検出手段)
33 反力補正部(反力成分制御手段)
100 ブレーキ圧制御装置

Claims (4)

  1. 車両の運転者により操作される操作子に作用させるべき反力成分を制御する反力制御装置において、
    前記操作子に作用する操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
    前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
    少なくとも前記操舵トルク検出手段,前記車速検出手段,及び車輪に加えるブレーキ圧を制御可能なブレーキ圧制御装置からの信号を用いて、前記反力成分を設定する反力成分制御手段とを備え、
    前記反力成分制御手段は、前記ブレーキ圧制御装置が作動しているときは、非作動時よりも前記反力成分を大きくすることを特徴とする反力制御装置。
  2. 前記反力成分制御手段は、前記ブレーキ圧制御装置の制御量が大きいほど前記反力成分を大きくすることを特徴とする請求項1記載の反力制御装置。
  3. 前記反力成分制御手段は、前記車速が大きいほど前記反力成分を大きくすることを特徴とする請求項1記載の反力制御装置。
  4. 運転者による前記操作子の操作量を検出する操作量検出手段を備え、
    前記反力成分制御手段は、前記操作量が大きいほど前記反力成分を大きくすると共に、前記反力成分の設定に影響を与えない操作量領域を有し、該操作量領域は車速が小さいほど大きいことを特徴とする請求項1記載の反力制御装置。
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