JP2007148192A - 積層体、それを用いた定着部材、定着装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基体23a上に、耐熱性ゴム(例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フロロシリコーンゴム等)からなる第1の層23b、フッ素樹脂を主成分とする接着樹脂と有機磁性体(例えば、高スピン有機分子系磁性体、有機金属錯体系磁性体、有機熱処理物系磁性体等)を含有してなる第2の層23c、及びフッ素系樹脂からなる第3の層23dを順次設けた積層体(ロール形状またはベルト形状)とする。これを用いて定着装置、画像形成装置に配備する。
【選択図】図6
Description
その積層体の構成として、例えば、基体上に、第1の層(耐熱合成ゴムからなる弾性層)と、第2の層(第1の層と第3の層を接合するフッ素樹脂を主成分とする接着層:プライマー層)、第3の層(フッ素樹脂からなる離型層)を設けたものが知られている。
この離型層を設ける場合、弾性層の表面にプライマー層を形成し、更にその上に上述したようなフッ素樹脂の分散塗料や粉体塗料、もしくはフッ素樹脂チューブを積層し、これらフッ素樹脂の融点以上の温度で加熱して層形成することが知られている。
しかし、焼成温度は300℃という高温処理であり、耐熱合成ゴムの劣化を必ずしも充分に抑制できるものとは言い難いものであった(例えば、特許文献3参照。)。
すなわち、特許文献5においては、発熱層を定着ベルト内に設けず、定着ベルトは、加熱ローラとの接触により電磁誘導による発熱材料層からの熱を熱伝導によって受ける構成となっている。更に加熱ローラは、非発熱体と発熱材料層との間に磁性体層を設けており、励磁コイルにより発生する磁場Eが集中しやすい構成とし、励磁コイルと非発熱体とのギャップから漏れ難くして加熱性を高める構成となっている。
このような構成によって、発熱層以外の層が加熱されることに伴う不具合(例えば、破損、層間剥離など)を解消することができる。しかし、励磁コイルと非発熱体とのギャップは構成上、定着ベルトの厚みと励磁コイルとのギャップの影響を受けてしまう可能性がある。
前記第2の層が、少なくとも有機磁性体を含有していることを特徴とする積層体である。
前記定着部材は、前記何れかに記載の積層体からなることを特徴とする定着部材に係るものである。
前記定着部材は、上記に記載の定着部材からなることを特徴とする定着装置に係るものである。
該加熱ローラに平行配置される定着ローラと、
該加熱ローラと定着ローラとに掛け回される電磁誘導加熱に対して非発熱性のベルトと、
該ベルトを介して定着ローラに圧接すると共に該ベルトとの間で定着ニップ部を形成する加圧ローラと、
前記加熱ローラをその外周側から電磁誘導により加熱する加熱手段と、
を備えた定着装置であって、前記何れかに記載の積層体からなるベルトであることを特徴とする定着装置に係るものである。
前記定着手段は、前記何れかに記載の定着装置により構成されたことを特徴とする画像形成装置に係るものである。
このため、例えば、複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置として用いることができる。
本発明に係る定着部材によれば、フッ素系樹脂からなる第3の層を表面に有するため、オイルレスでのトナー離型性がある。そして、柔軟性、弾力性などを有し、定着性能及び耐久性の優れた定着部材が提供される。
本発明に係る定着装置によれば、画像汚れ、画像ムラ、光沢ムラ、画像定着不良等の発生のない高品質定着を行うことができる。
また、加熱ローラと定着ローラとに掛け回されるベルト構成とした電磁誘導加熱方式の定着装置とすれば、電磁誘導加熱の加熱効率が更に向上し、画像形成装置の高速化要求を満たすことができる。
本発明に係る画像形成装置によれば、経時においても、画像汚れ、画像ムラ、光沢ムラ、画像定着不良等のない定着がなされ、高品質の画像形成を行うことができる。
図1の構成では、基体51上に、耐熱性ゴムからなる第1の層(弾性層)52、フッ素樹脂を主成分とする接着樹脂と有機磁性体を含有する第2の層(プライマー層)53、及びフッ素系樹脂からなる第3の層(離型層)54が順次設けられている。
本発明における積層体50は、シート形状、ローラ形状、あるいはベルト形状であっても構わない。そして、後述のように画像形成装置における定着装置の定着部材のほか、加圧部材や搬送部材(搬送ベルトやローラ)として有用であるばかりではなく、画像形成装置以外の用途、例えば、汚れ防止、離型性、耐熱性などが必要とされる部材として使用可能である。
有機磁性体を例示すると、例えば、1,4−ビス(2,2’,6,6’−テトラメチル−1−オキシル)ブタインを加熱または紫外線照射することによって製造された黒色粉末状ポリマー〔Nature, 326,370(1987)〕、1,3,5−トリアミノベンゼンを沃素によって重合した黒色不溶性ポリマー〔Synth.Metal, 19,709(1987)〕、ポリカルベン(日本化学学会誌、1987,No.4,595)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
例えば、ポリカルベン、ポリフェニルアセチレン、COPNA樹脂(縮合芳香族多環化合物樹脂)系材料等が挙げられる(高スピン有機分子系磁性体例:日本化学会誌、595(1987)、J.Am.Chem.Soc,109,1266(1987)、第9回基礎有機化学連合討論会要旨集P-60(1988),Mol.Cryst,Liq.Cryst,176,125(1987),日本化学会春季,142,34(1991)、日本化学会第57回3D410-413(1988)等)が、これらに限定されるものではない。
例えば、デカメチルフェロセン/TCNQ電荷移動錯体、オキサイドビスベンゾアト錯体、ポリフィリン錯体、フタロシアニン錯体担持ポリマー、フェロセン錯体担持ポリマー等が挙げられる(有機金属錯体系磁性体例:J.Am.Chem.Soc.109,769(1987),J.Am.Chem.Soc.108,3143(1986)、特開昭62-192383、Chem.Lett,2331(1987)等)が、これに限定されるものではない。
例えば、ポリアクリル二トリル熱処理物、オクタシアノフタロシアニン化合物熱処理物、インダンスロン熱処理物、アダマンタン熱処理物や上記高スピン有機分子系磁性体や有機金属錯体系磁性体の熱処理物などが挙げられる(有機熱処理物系磁性体例:Synth,Metals,27.B615(1988)IUPAC,CHEMRAWNVI,Tokyo,1C05(1987),Synth,Metals,27,B625(1988)、Chem,Express,5,597,601,605(1990)、特開平5−114508等)が、これらに限定されるものではない。
すなわち、電子スピン共鳴(ESR)法により測定される有機磁性体のスピン濃度が、少なくとも1×1017/g以上、更に好ましくは1×1018/g以上であることが好ましい。1×1017/g以上のスピン濃度であると、強磁性を発現する可能性が高くなり、電磁誘導加熱方式において磁束を集中させるのに有効な磁性材料となる。 なお、スピン濃度が1×1017/g未満であると強磁性発現の可能性が乏しくなり、電磁誘導加熱方式において磁束を集中させることが難しくなる。
以下、本発明における定着部材の構成を説明する。
図2は、ローラ形状(a)及びベルト形状(b)の定着部材の構成例を示す概略断面図である。
図2(a)において、Aは定着部材(ローラ)である。定着部材(ローラ)Aは、基体A1上に、耐熱性合成ゴム等の耐熱性弾性体(ゴム)(以降、「耐熱性合成ゴム」と称することがある。)で構成される第1の層(弾性層)A2、第2の層(プライマー層)A3、及び第3の層(フッ素系樹脂で構成される離型層)A4を順次備えている。そして、前記プライマー層A3には、有機磁性体が含有されている。
図2(b)において、Bは定着部材(無端ベルト)である。定着部材(無端ベルト)Bは、基体B1上に、耐熱性合成ゴムで構成される第1の層(弾性層)B2、第2の層(プライマー層)B3、及び第3の層(フッ素系樹脂で構成される離型層)B4を順次備えている。そして、前記プライマー層B3には、有機磁性体が含有されている。
なお、基体A1と弾性層A2との間、または基体B1と弾性層B2との間に接着強度を高めるためにシリコーン系プライマーを使用してもよい。
また、プライマー層の作製方法としては、フッ素樹脂を主成分とするプライマー分散液(水系フッ素樹脂ディスパージョンなど)を弾性層と同様に塗布し、乾燥してプライマー層とすることができる。
更に離型層の作製方法としては、前記弾性層上のプライマー層上にフッ素系樹脂分散液(水系フッ素樹脂ディスパージョンなど)を弾性層と同様に、スプレー塗装、ブレードコート、またはディピングなどによる塗装や、フッ素樹脂系粉体塗料を静電塗装、流動浸漬、または回転ライニング法などによってフッ素系樹脂塗布膜を形成し、そのフッ素系樹脂塗膜を焼成して離型層とすることができる。
すなわち、有機磁性体の有する磁性発現に関わるフリーラジカル/スピンが、離型層を形成する際のフッ素系樹脂塗膜焼成時における耐熱合成ゴムの熱劣化、主鎖断裂や側鎖酸化劣化などに伴う発生するラジカルを捕捉し、耐熱合成ゴムへのダメージを抑制すると推測される。そのため、焼成時の劣化が少なくなり、定着装置稼動の高温経時においても、界面劣化が抑制され、離型層剥がれや弾性層の表面硬度変化やクラックが抑制されるものと考えられる。
本発明の積層体からなるローラ形状もしくはベルト形状の定着部材とすることにより、オイルレスでのトナー離型性、柔軟性、弾力性などの要求を達成することができ、画像汚れ、画像ムラ、光沢ムラ、画像定着不良等の発生のない高品質の画像が定着できる。すなわち、定着性能及び耐久性に優れる。従って、定着手段として上記定着装置が配備された画像形成装置は、常に安定した高品質の画像が形成される。
図3において、画像形成装置100は、静電潜像が形成される感光体ドラム101、感光体ドラム101に接触して帯電処理を行う帯電ローラ102、レーザビーム等の露光手段103、感光体ドラム101の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ104、帯電ローラ102にDC電圧を印加するためのパワーパック105、感光体ドラム101上のトナー像を記録紙107に転写処理する転写ローラ106、転写処理後の感光体ドラム101をクリーニングするためのクリーニング装置108、感光体ドラム101の表面電位を測定する表面電位計109、並びに定着ローラ111及び加圧ローラ112からなる定着装置110によって構成されている。
この場合の定着ローラ111として、本発明の積層体からなる定着部材が好適に用いられる。図3の構成では定着部材は、いわゆるローラ形状であるが、定着部材がベルト形状でも構わない。ベルト方式の定着装置について下記に説明する。
図4に示した定着装置117は、加熱ローラ115と、加熱ローラ115に平行配置される定着ローラ114と、前記加熱ローラ115と定着ローラ114とによって掛け回される、回転可能に設けた定着ベルト113と、前記ベルト113を介して定着ローラ114に圧接すると共に、前記ベルト113との間で定着ニップ部を形成する加圧ローラ116から構成されている。この場合のベルト113として、本発明の積層体からなる定着部材が好適に用いられる。
図1に示したように 積層体からなる定着部材の構成は、基体と、この基体の上に第1の層として耐熱性ゴム(耐熱合成ゴム)からなる弾性層と、第2の層として、第1の層と第3の層を接合するフッ素樹脂を主成分とする接着樹脂と有機磁性体を含有するプライマー層と、この第2の層の上に第3の層としてフッ素樹脂からなる離型層を設けた構成になっている。
以後、「第1の層」を「弾性層」、「第2の層」を「プライマー層」、及び「第3の層」を「離型層」と表現することがある。
ここで、フッ素樹脂系プライマーは、官能基を有するフッ素樹脂からなり、弾性層を形成する材料の種類、その表面の性質、及びフッ素樹脂系プライマーを介して形成する離型層(フッ素樹脂、いわゆるトップコートの種類)などにより適宜選択される。
また、塗膜の最表面に官能基を含まないフッ素樹脂を用いて離型層を形成しても、優れた耐熱性、耐薬品性、非粘着性、及び低摩擦性をより効果的に発揮することができる。
なお、フッ素樹脂系プライマーの層厚は0.01〜5μmであることが好ましい。この範囲を逸脱していると、接着強度が低下したり、プライマー自身にクラックや凝集破壊が起き、所望の性能が得られない場合がある。
なお、上記スピン濃度は、磁束集中に着目した場合のものであり、このスピン濃度範囲以外でも耐熱性ゴムの熱劣化防止には有効であるので、このスピン濃度に限定されるものではない。従って、本発明記載のような電磁誘導方式の定着ベルトの場合であっても、上記スピン濃度範囲以外の有機磁性体を、耐熱性ゴムの熱劣化防止を目的としたプライマー添加材料として使用しても何ら差し支えない。
フェロ磁性体としては、Fe、Ni、Co及びその合金、CrO2等の酸化物が、フェリ磁性体としては、スピネル型フェライト(MnFe2O4、Fe3O4、γ−Fe2O3、NiZnFe4O8、ZnFe2O4等)、ガーネット(Y3Fe6O12等)等が、それぞれ挙げられる。
なお、前記プライマー分散液への添加方法としては、超音波やホモジナイザー等、一般的な方法で分散させることができる。
また、前記加熱定着部材Bにおける基体B1は、ステンレススチール、ニッケル等の金属材料で構成される無端ベルト、ポリイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂材料で構成される無端ベルト、あるいは、これらの積層無端ベルトである。
なお、定着部材がローラ形状、ベルト形状(無端ベルト)であるものについて記載したが、目的、用途に応じて上記材料から構成される(積層構成も含む)シート形状であるものを用いても構わない。
先ず、実施例と比較例において用いる有機磁性体、及びフッ素系樹脂含有プライマーを以下により合成した。
有機磁性体の合成(I)(高スピン有機分子系磁性体:COPNA樹脂系材料)
ピレン20.2gとベンズアルデヒド10.6gを充分撹拌混合した後、p−トルエンスルホン酸5重量%を加えて、アルゴン気流中、撹拌しながら160℃、共沸脱水により1時間加熱した。得られた固体をクロロホルムに溶解し、メタノールに再沈精製し、トリアリールメタン構造を有する化合物(I)を28.9g(収率93.9%)得た。
有機磁性体の合成(II)(有機金属錯体系磁性体:フェロセンポリマー系材料[フェロセン−ケイ皮アルデヒド縮合ポリマー])
フェロセン200gとケイ皮アルデヒド80gと無水塩化第2鉄25.8gとジメチルホルムアミド150mlを混合し、窒素気流下で撹拌しつつ140℃に加熱した。次に、キシレン375mlに溶解したケイ皮アルデヒド100gを1時間かけて滴下した。キシレンとの反応により生成した水は、共沸により系外に溜出した。更に150℃まで昇温し、2時間反応させた。反応終了後、室置まで放冷し、生じた樹脂を濾別精製した。褐色樹脂281g(収率86.5%)を得た。
この樹脂について、VSM(振動式試料磁力計)を用いて磁化特性を測定したところ、Is(飽和磁化)=0.09emu/g、Hc(保持力)=200Oeが得られた。 ESRにより求めたスピン濃度は3.0×1018/gであった。
有機磁性体の合成(III)(有機熱処理物系磁性体:熱処理インダントロン材料)
インダントロン(東京化成製)10gをガラスチューブアルゴン封入下、常圧で500℃にて加熱処理を所定時間行ない、インダントロンの加熱処理物を得た。VSM(振動式試料磁力計)を用いて磁化特性を測定したところ、Is(飽和磁化)=0.25emu/g、Hc(保持力)=60Oeが得られた。ESRにより求めたスピン濃度は2.5×1018/gであった。
プライマー分散液の合成(IV)(水性フッ素樹脂ディスパージョン)
攪拌機、バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた3リットルガラスライニング製オートクレーブに純水1500ml、パーフルオロオクタン酸アンモニウム9.0gを入れ、窒素ガスで充分置換した後、真空にし、エタンガス20mlを仕込んだ。次いで、ヒドロキシル基を有する含フッ素エチレン性単量体として、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン−1−オール)3.8g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)18gを窒素ガスを用いて圧入し、系内の温度を70℃に保った。攪拌を行いながらテトラフルオロエチレンガスを内圧が8.5kgf/cm2Gとなるように圧入した。次いで、過硫酸アンモニウム0.15gを水5.0gに溶かした溶液を窒素を用いて圧入して反応を開始した。
以下の工程を順次経て、実施例1の積層体を作製した。
〈a−1〉工程:40μm厚のシート状のステンレススチール(SUS)製基体上にプライマー(東レダウコーニングシリコーン社製、DY39−051)を塗布し乾燥してシリコーンプライマー層を形成した。
〈b−1〉工程:形成したシリコーンプライマー層の上に耐熱性シリコーン樹脂(東レダウコーニングシリコーン社製、DY35−2083)の溶液を塗布して300μmの塗布層を形成し、シリコーンゴムを120℃×15分間の1次加硫後、200℃×4時間の2次加硫を経て弾性層を形成した。
〈c−1〉工程:形成した弾性層の上に、合成例4で合成したプライマー分散液(水性フッ素樹脂ディスパージョン)に0.1重量部の合成例1で合成した高スピン有機分子系磁性体(COPNA樹脂系材料)を分散させたプライマーをスプレー塗装して厚さ2μmのプライマー層を形成した。
〈d−1〉工程:形成したプライマー層の上に、PFA(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA340−J)を20μmの膜厚になるように粉体塗布してフッ素樹脂塗布層を形成し、この塗布層を340℃で30分間焼成して離型層を形成した。
実施例1の(c−1)工程において用いた、0.1重量部の高スピン有機分子系磁性体に替えて0.1重量部の合成例2で合成した有機金属錯体系磁性体(フェロセンポリマー系材料)を分散させたプライマーを用いた以外は、実施例1と同様の工程を順次経て実施例2の積層体を作製した。
実施例1の(c−1)工程において用いた、0.1重量部の高スピン有機分子系磁性体に替えて0.1重量部の合成例3で合成した有機熱処理物系磁性体(熱処理インダントロン材料)を分散させたプライマーを用いた以外は、実施例1と同様の工程を順次経て実施例3の積層体を作製した。
実施例1の(c−1)工程において用いた、0.1重量部の高スピン有機分子系磁性体を含まず、合成例4で合成したプライマー分散液(水性フッ素樹脂ディスパージョン)のみのプライマーを用いた以外は、実施例1と同様の工程を順次経て比較例1の積層体を作製した。
<剥離試験法>
試験巾10mm、引張り速度約50mm/minで、90度剥離試験を行った。剥離場所が弾性層とプライマー、あるいはゴム層とプライマーの間のものを×とし、ゴム層での破壊より強い接着強度が出たものを○として表1に示した。
一方、比較例1については、プライマー層とゴム層間で剥離することが観察され、接着力不足であることが認められた。このことから、積層体形成工程での焼成によりゴム層が硬化劣化し、非常に硬くなったため層界面間で剥がれたものと考えられる。
以下の工程を順次経て、実施例4の定着ローラを作製した。
〈a−2〉工程:直径40mmのアルミニウムで構成される芯金上にプライマー(東レダウコーニングシリコーン社製、DY39−051)を塗布し乾燥してシリコーンプライマー層を形成した。
〈b−2〉工程:形成したシリコーンプライマー層の上に耐熱性シリコーン樹脂(東レダウコーニングシリコーン社製、DY35−2083)溶液を250μmの塗布層を形成し、シリコーンゴムを120℃×15分間の1次加硫後、200℃×4時間の2次加硫を経て弾性層を形成した。
〈c−2〉工程:形成した弾性層の上に、合成例4で合成したプライマー分散液(水性フッ素樹脂ディスパージョン)に0.1重量部の合成例2で合成した有機金属錯体系磁性体(フェロセンポリマー系材料)を分散させたプライマーをスプレー塗装して厚さ2μmのプライマー層を形成した。
〈d−2〉工程:形成したプライマー層の上に、プライマー層の上にPFA分散液(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA945HP−Plus)をスプレー塗装して30μm厚の塗布層を形成し、この塗布層を340℃で30分間焼成して離型層を形成した。
実施例4の(c−2)工程において用いた、0.1重量部の合成例2で合成した有機金属錯体系磁性体(フェロセンポリマー系材料)に替えて0.1重量部の合成例3で合成した有機熱処理物系磁性体(熱処理インダントロン材料)を分散させたプライマーを用いた以外は、実施例4と同様の工程を順次経て実施例5の定着ローラを作製した。
実施例4の(c−2)工程において用いた、0.1重量部の有機金属錯体系磁性体(フェロセンポリマー系材料)を含まず、合成例4で合成したプライマー分散液(水性フッ素樹脂ディスパージョン)のみのプライマーを用いた以外は、実施例4と同様の工程を順次経て比較例2の定着ローラを作製した。
以下の工程を順次経て、実施例6の定着ベルトを作製した。
〈a−3〉工程:直径60mm、幅400mm、厚さ0.1mmのポリイミド樹脂製シームレスベルトの表面にシリコーンゴム用プライマー(東レダウコーニング社製、DY39−067)をスプレー塗装して厚さ1μmのシリコーンプライマー層を形成した。
〈b−3〉工程:このシリコーンプライマー層の上に耐熱性シリコーンゴム(東レダウコーニング社製、DY35−2083)のトルエン溶液をスプレー塗装して200μmの塗布層を形成し、シリコーンゴムを120℃×15分間の1次加硫後、200℃×4時間の2次加硫を経て弾性層を形成した。
〈c−3〉工程:形成した弾性層の上に、合成例4で合成したプライマー分散液(水性フッ素樹脂ディスパージョン)に0.1重量部の合成例2で合成した有機金属錯体系磁性体(フェロセンポリマー系材料)を分散させたプライマーをスプレー塗装して厚さ2μmのプライマー層を形成した。
〈d−3〉このフッ素系樹脂含有プライマー層の上にPFA分散液(三井・デュポンフロロケミカル社製、PFA945HP−Plus)をスプレー塗装して30μm厚の塗布層を形成し、この塗布層を340℃で30分間焼成して離型層を形成した。
実施例6の(c−3)工程において用いた、0.1重量部の合成例2で合成した有機金属錯体系磁性体(フェロセンポリマー系材料)に替えて0.1重量部の合成例3で合成した有機熱処理物系磁性体(熱処理インダントロン材料)を分散させたプライマーを用いた以外は、実施例6と同様の工程を順次経て実施例7の定着ベルトを作製した。
実施例6の(c−3)工程において用いた、0.1重量部の有機金属錯体系磁性体(フェロセンポリマー系材料)を含まず、合成例4で合成したプライマー分散液(水性フッ素樹脂ディスパージョン)のみのプライマーを用いた以外は、実施例6と同様の工程を順次経て比較例3の定着ベルトを作製した。
「部材作製後の外観」を目視により観察した。次いで、それぞれの定着部材を用いて複写を行い、複写枚数が「1枚」、「10万枚」及び「20万枚」に達した時点での「画質(ベタ地)」を観察し、定着部材(定着ローラ及び定着ベルト)の表面における「複写後の外観」について異常の有無を目視により確認し、下記評価基準により評価した。評価結果を下記表2に示す。
○:実用上、問題とならないレベル
△:若干の異変や劣化が認められるレベル
×:著しい異変や劣化が認められるレベル
ここでいう画質の劣化とは、ゆず肌や光沢ムラのことを意味する。これは定着部材の弾性層が劣化することで、部材表面の平滑性が失われ、あるいは定着時の圧力が不均一になったことに起因するものである。
本発明の積層体からなる定着部材を備えた定着装置を組み込んで画像形成装置を構成した。
図5は、本発明における定着装置を組み込んだ画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図中1は像担持体、2は帯電手段、3はレーザ書き込みユニット、4は現像装置、5は転写ローラ、6はクリーニング装置である。また図中7は給紙部、8は給紙ローラ、9はレジストローラ対、10は定着装置、11は排紙部、12は画像形成装置本体を示す。なお、定着装置10の定着ベルトは、例えば、実施例6、7のようなベルト構成からできている。
像担持体1は、図示しない駆動手段により図中矢印方向に回転駆動され、帯電手段2によりその表面を一様に帯電させ、ついでレーザ書き込みユニット3からの露光により表面に潜像を形成する。この潜像は、現像装置4によって可視像化し、給紙部7から給紙ローラ8やレジストローラ対9等を介して供給する紙等の転写体Pに転写ローラ5によってトナー像を転写する。トナー像転写後に像担持体1表面上に残留するトナーはクリーニング装置6によって除去する。 画像を転写された転写体Pは、定着装置10へ導入し、加熱、加圧によってトナー像を転写体Pに定着させ、その後排紙部11へと排紙する。
上記構成の画像形成装置を用いて複写した結果、オイルレスでも画像汚れ、画像ムラ、光沢ムラ、画像定着不良等の発生のない高品質の画像が形成された。なお、本発明の画像形成装置は図5に示す構成に限定されない。
本発明の積層体からなる定着部材を配備して電磁誘導加熱方式の定着装置を構成した。
図6は、本発明における電磁誘導加熱方式の定着装置の一構成例(A)と、定着ベルトの拡大断面(B)を示す概略図である。
この定着装置は、誘導加熱手段20の電磁誘導により加熱される加熱ローラ21と、加熱ローラ21と軸線が平行となるように配置され定着ローラ22と、加熱ローラ21と定着ローラ22とに掛け回した無端状の本発明の積層体からなる定着部材(定着ベルト)23と、定着ベルト23を介して定着ローラ22に圧接して回転する加圧ローラ24とから構成されている。
すなわち、定着ベルト23は、基体23a上に、耐熱性合成ゴムで構成される弾性層23b、プライマー層23c及び、フッ素系樹脂で構成される離型層23dを順次有している。そして、前記プライマー層23cは、有機磁性体を含有した構成となっており、励磁コイル25により発生する磁場Eが集中しやすい構成とし、発熱材料層31への磁束集中を可能とし、励磁コイル25と非発熱体30とのギャップから漏れ難くして加熱性を高めることを可能とした構成となっている。
上記構成の電磁誘導加熱方式の定着装置を配備した画像形成装置を用いて複写した結果、定着ベルトの層間剥離やクラックの発生、あるいは表面硬度の変化などがなく、初期特性の改善はもとより経時耐久性に優れ、画像ムラ、光沢ムラ、画像定着不良等の発生のない高品質の画像が形成された。なお、本発明の定着装置は図6及び7に示す構成に限定されない。
B 定着部材(無端ベルト)
A1、B1 基体
A2、B2 第1の層(弾性層)
A3、B3 第2の層(プライマー層)
A4、B4 第3の層(離型層)
1 像担持体
2 帯電手段
3 レーザ書き込みユニット
4 現像装置
5 転写ローラ
6 クリーニング装置
7 給紙部
8 給紙ローラ
9 レジストローラ対
10 定着装置
11 排紙部
12 画像形成装置本体
20 誘導加熱手段
21 加熱ローラ
22 定着ローラ
23 定着ベルト
23a 基体
23b 弾性層
23c プライマー層
23d 離型層
24 加圧ローラ
25 励磁コイル
26 コイルガイド板
27 励磁コイルコア
28 励磁コイルコア支持部材
30 非発熱体
31 発熱材料層
40 温度センサ
P 転写体
T トナー
50 積層体
51 基体
52 第1の層(弾性層)
53 第2の層(プライマー層)
54 第3の層(離型層)
Claims (6)
- 基体上に、耐熱性ゴムからなる第1の層、フッ素樹脂を主成分とする接着樹脂からなる第2の層、及びフッ素系樹脂からなる第3の層が順次設けられた積層体において、
前記第2の層が、少なくとも有機磁性体を含有していることを特徴とする積層体。 - 前記有機磁性体が、高スピン有機分子系磁性体、有機金属錯体系磁性体、有機熱処理物系磁性体から選ばれる何れか一種もしくはそれらを組み合せたものであることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
- 画像形成プロセスにおいて転写体上のトナー像を定着させるローラ形状もしくはベルト形状を有する定着部材であって、
前記定着部材は、請求項1または2に記載の積層体からなることを特徴とする定着部材。 - 画像形成プロセスにおいて転写体上のトナー像を定着させる定着部材を備えた定着装置であって、
前記定着部材は、請求項3に記載の定着部材からなることを特徴とする定着装置。 - 電磁誘導加熱により発熱する加熱ローラと、
該加熱ローラに平行配置される定着ローラと、
該加熱ローラと定着ローラとに掛け回される電磁誘導加熱に対して非発熱性のベルトと、
該ベルトを介して定着ローラに圧接すると共に該ベルトとの間で定着ニップ部を形成する加圧ローラと、
前記加熱ローラをその外周側から電磁誘導により加熱する加熱手段と、
を備えた定着装置であって、
前記ベルトは、請求項1または2に記載の積層体からなるベルトであることを特徴とする定着装置。 - 少なくとも像担持体、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段、定着手段、除電手段、及びクリーニングを有する画像形成装置であって、
前記定着手段は、請求項4または5に記載の定着装置により構成されたことを特徴とする画像形成装置。
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