JP2007146062A - 速乾性の遮熱水性塗料組成物及びその組成物で処理された道路面構造及び建築物屋上構造 - Google Patents

速乾性の遮熱水性塗料組成物及びその組成物で処理された道路面構造及び建築物屋上構造 Download PDF

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Abstract

【課題】 常乾型で極めて速乾性であり、優れた遮熱性を持ち、塗膜物性は従来の溶剤系に匹敵する水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】 速乾性の水性樹脂組成物と1種または2種以上の赤外線反射顔料とを含有し、波長350〜2100nmの波長域における塗膜の日射反射率が30%以上であることを特徴とする速乾性の遮熱水性塗料組成物。用途は主として建物の外装および内装用途、フロア用途、鉄部材用途、道路用途等に供せられる。

Description

本発明は、速乾性の遮熱水性塗料組成物に関するものであり、特に速乾性と遮熱性を有し、アスファルト密着性をはじめ塗膜性能にも優れる、常乾型の遮熱水性塗料組成物、およびその組成物で処理された通路面構造及び建築物屋上構造に関するものである。
建物の外装および内装用途、フロア用途、あるいは道路用途等に使用される常乾型の塗料は、従来は溶剤タイプの塗料が一般的に用いられて来た。溶剤タイプの塗料は、性能面においては問題となるところはないが、溶剤の毒性あるいは引火性の問題があり、特に前記の用途においては、使用する溶剤を回収することが不可能なため、溶剤は最終的には大気中に揮散し、地球資源の無駄使い、環境汚染問題等の要因になっている。
このようなことから、近年代替技術として、エマルジョンを主体とした水性タイプの塗料が使用されつつある。水性タイプの塗料は、安全面および環境面において有機溶剤タイプの塗料よりも格段に好ましいが、乾燥に長時間を必要とし、実際の塗装施工に当っては大きな問題となっている。特に外部塗装の用途においては、乾燥時において、雨、雪、風、ダスト、その他の汚染物質にさらされて、塗膜が損傷を受ける機会も多く、できるだけ乾燥速度の速い塗料が求められている。また水性タイプの塗料は、環境条件、特に低温でかつ湿度の高い条件で、乾燥性が遅れることが一般的であり、環境条件に左右されず、常に高い乾燥性を有する塗料が求められている。乾燥性は塗料の安定性と相反する関係にあり、塗料の安定性を確保しながら、乾燥性を高める必要があることは言うまでも無い。
上記の課題を満足させる技術として、本発明者らは既に特許文献1を提案しており、そこでは(1)アクリル酸もしくはメタクリル酸エステルを50重量%以上含有するα、β―エチレン性不飽和単量体を重合して得られる水性分散基剤樹脂、(2)アリル基含有の二級あるいは三級アミンを重合して得られるアミンポリマー、および(3)(2)のアミノ基より過剰量の揮発性塩基を必須成分とする速乾性の水性塗料組成物が開示されている(特許文献1参照)。
一方、夏期、日中に太陽光の照射を受けた道路や建築物は、そのエネルギーを吸収し、温度が上昇して夜間に放熱することによって、都市部の温度がその周辺部と比較して上昇する、いわゆるヒートアイランド現象を引き起こす一因になっていると言われている。これを防ぐために、太陽光中の赤外線を反射し、道路や建築物、特に屋上の温度の上昇を防ぐための方法として、遮熱塗料を適用することが検討されている。温度の上昇率の指標として日射反射率があり、赤外線反射率が高い程、日射反射率が高く、温度上昇の抑制効果がある(非特許文献1参照)。
一般的な塗料は色調整を行うためのカーボンブラックや黒色酸化鉄などの赤外線反射率の低い顔料を使用している。しかし、これらの顔料は赤外線を吸収しやすいため、これらの塗料を塗装した建築物などの構造物あるいは道路などは赤外線の吸収により構造物や道路の温度が上昇し、前述のヒートアイランド現象を引き起こす可能性が指摘されている。
そこで、最近は太陽光線中の赤外領域の波長780nm〜2100nmの光線を反射する効果の高い塗料が検討されている。このような遮熱塗料は着色顔料の一部として赤外線を反射する複合金属顔料を使用しており、上記のようなカーボンブラックや黒色酸化鉄などを含有する塗料よりは若干赤外線反射の効果が期待できるが、まだまだ性能は不十分であり、また、顔料の組成にクロムなどが含まれているものがあり、安全衛生面においても問題が残っている。
一方、赤外線吸収率が50%以下の顔料を使用して赤外線吸収を低くした赤外線透過層形成用の組成物が提案され、当該組成物を利用する赤外線反射体ならびに処理物も同時に提案されている(特許文献2参照)。そこでは赤外線反射体の上に被覆層として赤外線透過層を形成する2層構成が用いられている。
しかしながら、この層構成では内容組成の異なる塗料を最低でも2回塗装することが必要であり、塗料替えのため塗装機の洗浄等に手間がかかり、作業工程が繁雑である。また、上層塗膜が劣化のために剥がれた際、上層塗膜と異なる色の下層塗膜が露出し、まだら模様になってしまう問題がある。さらには、道路等で塗装・乾燥を短時間にて処理し、道路開放のための時間をできるだけ短くする必要がある場合などには、1回の塗装で完結させることが必要である。
特開2004−168998号公報 特開2002−60698号公報 月刊建築仕上技術2002年8月号光反射・熱放射機能形エネルギー節減塗料の開発
本発明は上記従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は建物の外装および内装用途、フロア用途、鉄部材用途または道路用途に好適な速乾性の常乾型遮熱水性塗料組成物、およびその組成物で処理された道路面構造および建築物屋上構造を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、速乾性の水性樹脂と1種または2種以上の赤外線反射顔料とを含有させて塗膜の日射反射率を制御することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は速乾性の水性樹脂組成物と1種または2種以上の赤外線反射顔料とを含有し、波長350〜2100nmの波長域における塗膜の日射反射率が30%以上であることを特徴とする速乾性の遮熱水性塗料組成物である。
本発明の遮熱水性塗料組成物の好ましい態様では、速乾性の水性樹脂組成物が(i)アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを50重量%以上含有するα、β―エチレン性不飽和単量体を重合して得られる水性分散基剤樹脂であって、平均粒径が50〜200nm、かつ粒径の標準偏差が100nm以下である水性分散基剤樹脂、(ii)アリル基含有の二級または三級アミンを重合して得られるアミンポリマー、および(iii)(ii)アミンポリマーのアミノ基より過剰量の揮発性塩基を含有し、前記(ii)アミンポリマーが2個のアリル基を含有するアミンを重合して得られ、有機酸、特に蟻酸または酢酸で中和され、赤外線反射顔料が酸化チタン、酸化亜鉛顔料、マンガンイットリウムブラック顔料、アゾ系顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、キナクリドン顔料、銅フタロシアニンブルー顔料からなる群から選択される1種または2種以上の顔料を含有し、速乾性がJIS K5665のタイヤ付着性試験で15分以内である。
また、本発明は上記速乾性の遮熱水性塗料組成物で処理されていることを特徴とする道路面構造及び建築物屋上構造である。
本発明の水性塗料組成物は、常乾型かつ極めて速乾性であり、遮熱性に優れ、塗膜物性も優れている。そのため、主として建物の外装および内装用途、フロア用途、鉄部材用途あるいは道路用途に使用でき、特にアスファルト密着性に優れるため、道路用途に好適に使用できる。
以下、本発明の速乾性の遮熱水性塗料組成物について詳細に説明する。
本発明の速乾性の遮熱水性塗料組成物は、速乾性の水性樹脂組成物と1種または2種以上の赤外線反射顔料とを含有するものであり、波長350〜2100nmの波長域における塗膜の日射反射率が30%以上である。
本発明で使用する速乾性の水性樹脂組成物は、例えば(i)アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを50重量%以上含有するα、β―エチレン性不飽和単量体を重合して得られる水性分散基剤樹脂であって、平均粒径が50〜200nm、かつ粒径の標準偏差が100nm以下である水性分散基剤樹脂、(ii)アリル基含有の二級または三級アミンを重合して得られるアミンポリマー、および(iii)(ii)アミンポリマーのアミノ基より過剰量の揮発性塩基を含有する樹脂であることができる。以下、水性樹脂組成物の(i)〜(iii)の成分について説明する。
(i)水性分散基剤樹脂について
水性分散基剤樹脂は、本発明において塗料の基剤樹脂(バインダー)としての成分であり、代表的な製造方法としては、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを50重量%以上含有するα、β―エチレン性不飽和単量体を、公知のエマルジョン重合法、懸濁重合法、溶液重合後後乳化する方法等が用いられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の水性分散基剤樹脂を製造するに際して、目標とする樹脂粒子の平均粒径および粒径分布を得るため、アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤を併用する。アニオン界面活性剤を例示すると、ラウリル硫酸ナトリウムのような高級アルキル硫酸のアルカリ塩、ドデシルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸のナトリウムのようなアルキルアリールスルホン酸のアルカリ塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸のナトリウムのようなアルキルナフタレンスルホン酸のアルカリ塩、ノニルフェノールのポリエトキシエタノール硫酸ナトリウムのようなアルキルアリールポリエトキシエタノール硫酸または同スルホン酸のアルカリ塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルまたは同スルホン酸のナトリウム、あるいはアンモニウム塩、さらには親水性−疎水性のバランスを有するカルボキシル基含有共重合体のアルカリ塩等が挙げられる。
また、ノニオン界面活性剤を例示すると、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルのようなポリオキシエチンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエートのようなポリオキシエチレン誘導体類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートのようなソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンがブロック共重合したいわゆるプルロニックタイプ、その他ポリオキシエチレンアルキルアミン類、アルキルアルカノールアミド類、プロペニル基あるいはその他の重合性不飽和基、およびポリオキシエチレン基を含有する反応性乳化剤等が挙げられる。
界面活性剤の使用方法は、単量体の重合時点から使用する方法、あるいは重合後水分散化を行う時点で使用する方法があり、どちらの方法でも問題はない。また、界面活性剤の使用量については全単量体に対して重量で1.5〜5%が好ましい。
また、界面活性剤の分散効果を助けるために、本発明の水性分散基剤樹脂において酸基を含有する単量体を共重合することが好ましい。かかる単量体を例示すると、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、プロペニル基あるいはその他の重合性不飽和基、および硫酸エステル基あるいはスルホン酸基を含有する反応性乳化剤等の酸基含有単量体が挙げられる。その使用量としては樹脂固形分当たりの酸価が0.5〜40KOHmg/gになる量が好ましい。
水性分散基剤樹脂の平均粒径および粒径の標準偏差の測定については、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置が好適に使用できるが、他の方法での測定も可能である。例えば、(株)堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910を用い、統計処理で一般的な下記の数式から平均粒径および粒径の標準偏差を求めることができる。
平均粒径:X X=ΣXi/n
粒径の標準偏差:σ σ=Σ(Xi−X)/n
以上述べたように、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤を併用し、さらに水性分散基剤樹脂に酸基を有する単量体を導入し、粒径および粒径分布の調整を図ることにより、アスファルト密着性に優れた水性分散基剤樹脂が得られる。水性分散基剤樹脂の平均粒径は50〜200nm、粒径の標準偏差は100nm以下であるが、より好ましい範囲はそれぞれ50〜180nm、70nm以下である。また、このように粒子径をコントロールすることにより、塗料の安定性を十分確保することも可能になる。平均粒径および粒径の標準偏差が上記範囲より大きい場合は、塗料のアスファルトへの浸透性が抑制され密着性が低下する。また塗料が経時で凝集し易く安定性も低下する。
水性分散基剤樹脂の好ましい分子量は5000〜500000である。必要に応じて連鎖移動剤を使用し分子量を調整することができる。また塗膜形成の面から樹脂のTgは−10〜60℃が好ましいが、高温時の乾燥性および低温時の造膜性を考慮すると、特に15〜35℃が好ましい。
酸基を含有する単量体以外に使用される単量体としては、全単量体の中で50重量%以上のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを含有している。アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを具体的に例示すると、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヘプチルアクリレート、ヘプチルメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、さらには水酸基含有の2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート等、およびこれらのラクトン変性物等が挙げられる。
また、50重量%を超えない範囲でアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル以外の単量体が使用可能であり、かかる単量体を例示すると、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、n−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド等のアミド系単量体が挙げられる。
(ii)アミンポリマーについて
アミンポリマーはアリル基含有の二級あるいは三級アミンを重合して得られるポリマーであり、酸が共存しない領域あるいは塩基が存在する領域においては基本的に水不溶性である。従って、本発明のようにアンモニアあるいは有機アミン等の揮発性塩基が存在する系においては、水性分散基剤樹脂とアミンポリマーは水中に分散された状態で互いに独立に存在し、さらには水性分散基剤樹脂の粒径および粒径分布が所定範囲にあるため、安定した状態が確保されている。しかしながら、揮発性塩基が揮散すると、系中には水性分散基剤樹脂とアミンポリマーのみが存在する結果となり、互いに相互作用を開始し、アミンポリマーが水不溶性であるが故に、水性分散基剤樹脂が効果的に凝集する。この急速な凝集により、水性塗料でありながら分オーダーの乾燥性を達成することができる。繰り返すと、本発明の塗料組成物において、塗料の形態では、凝集に必要充分な量のアミンポリマーを使用しても安定であり、塗装後の塗膜形成過程において、揮発性塩基が揮散して初めて水性分散基剤樹脂が効果的に凝集し、従来技術では得られない分オーダーの乾燥性が達成される。
アミンポリマーの中で、特にアリル基を2個有するアミンから得られるアミンポリマーは、一般的に下記の化学式1に示すような環構造を有し、そのポリマー鎖は剛直であるため、水性分散基材樹脂との凝集において極めて効果的に機能を発揮するので好ましい。
Figure 2007146062
このようにして、本発明において、従来技術にない超速乾性の水性塗料組成物を提供することができるが、また着色についても、アミンポリマーは二級あるいは三級アミノ基のみを有し、一級アミノ基を有していないため全く問題はない。
使用されるアミンポリマーを例示すると、ジアリルアミン、メチルアリルアミン、エチルアリルアミン等のアリル基含有二級アミンの単独重合体、他の単量体との共重合体、ジメチルアリルアミン、ジエチルアリルアミン、メチルジアリルアミン、エチルジアリルアミン等の三級アミンの単独重合体、他の単量体との共重合体等が挙げられる。アリル基を2個有するジアリルアミン、メチルジアリルアミン、エチルジアリルアミン等から得られる重合体が特に好ましい。共重合する他の単量体について特に限定はないが、二酸化硫黄はその代表である。共重合体の場合、アリル基含有の二級あるいは三級アミンの共重合量は20重量%以上が好ましい。
アミンポリマーの分子量は特に限定はないが、水性分散基剤樹脂の凝集性、塗料の乾燥性、安定性の観点から500〜50000が好ましい。特に1000〜20000、さらには1000〜10000がより好ましい。またその使用量については、水性分散基剤樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましい。
アミノポリマーの具体的な製造方法について例示すると、ジアリルアミンあるいはメチルジアリルアミンの塩酸塩を極性溶媒中で過硫酸アンモニウムあるいは水溶性のアゾ化合物等を開始剤として重合する方法があり、他の単量体との共重合としては、例えば二酸化硫黄を使用して1:1の交互共重合体を得る方法があるが、特にこれらに限定されない。具体的に入手可能な商品としては、日東紡績株式会社のPAS−92、PAS−M−1等がある。前記商品は通常塩酸塩の形で供給されるが、具体的な使用方法としては、そのまま使用することができ、また添加前にあらかじめ塩酸をアルカリで中和したり、イオン交換樹脂で塩酸を除去したり、蟻酸塩、酢酸塩、その他の有機酸塩に交換したりして、使用することも可能である。特に被塗装物が鉄、アルミニウム等の金属材料である場合、塩酸塩においては塗装後に錆の発生、材の腐蝕が起こり易く、防錆剤、防錆顔料等の併用で抑制されるものの、蟻酸、酢酸等の有機酸の塩として使用するのがより好ましい。具体的に入手可能な商品としては、日東紡績株式会社のPAS−92Aが挙げられる。また蟻酸、酢酸以外の有機酸としては、乳酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、リンゴ酸等を例示することができる。
(iii)揮発性塩基について
揮発性塩基は、揮発性であれば特に限定はないが、アンモニアが特に好ましい。アンモニア以外の塩基については、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等のアルカノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアルキレンポリアミン、エチレンイミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等が例示される。揮発性塩基の使用量については、アミンポリマーのアミノ基より過剰量が必要であるが、塗料の乾燥性と安定性を考慮して、アミンポリマーのアミノ基に対して2〜40倍過剰量がより好ましい。
本発明の塗料組成物において、塗料のPH安定性を確保するためPH緩衝剤を使用することができる。PH緩衝剤を例示すると、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明で使用する赤外線反射顔料としては、塗膜において波長350〜2100nmの波長域における日射反射率が30%以上になるようなものであれば特に限定はない。具体例を挙げるならば、白色顔料については、酸化チタン、酸化亜鉛顔料が好ましく、酸化チタンがより好ましく、黒色顔料については、マンガンイットリウムブラック顔料が好ましく、黄色顔料については、アゾ系顔料、ベンゾイミダゾロン顔料が好ましく、赤色顔料については、キナクリドン顔料が好ましく、青色顔料については、銅フタロシアニンブルー顔料が好ましく、銅フタロシアニンブルー顔料β型がより好ましく、これらの顔料から選択される1種または2種以上の顔料を含有することが好ましい。具体的に入手可能な商品としては、タイピユアR706(酸化チタン、デュポン製)、LPZINC−2(酸化亜鉛顔料、堺化学工業(株))、ブラック6303(マンガンイットリウムブラック顔料、アサヒ化成工業製)、SYMULER FAST YELLOW4192(ベンゾイミダゾロン顔料、大日本インキ化学工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW 2080(ベンゾイミダゾロン系顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW 2081(ベンゾイミダゾロン系顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW 2085(ベンゾイミダゾロン系顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW 3700LD(ベンゾイミダゾロン系顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW 3701(ベンゾイミダゾロン系顔料、大日本精化工業(株)製)、SYMULER FAST YELLOW10GH(アゾ系顔料、大日本インキ化学工業(株)製)、SYMULER FAST YELLOW8GTF(アゾ系顔料、大日本インキ化学工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW 5910(アゾ系顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW 2700L(アゾ系顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW 2054(アゾ系顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW 2700(アゾ系顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW 2035(アゾ系顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE YELLOW A−3(アゾ系顔料、大日本精化工業(株)製)、SYMULER SUPER RED7100Y(キナクリドン顔料、大日本インキ化学工業(株)製)、SYMULER SUPER MAGENTA R(キナクリドン顔料、大日本インキ化学工業(株)製)、SYMULER SUPER MAGENTA RH(キナクリドン顔料、大日本インキ化学工業(株)製)、CHOMOFINE RED 6820(キナクリドン顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE RED 6821(キナクリドン顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE RED 6830(キナクリドン顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE MAGENTA 6891N(キナクリドン顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE MAGENTA 6887(キナクリドン顔料、大日本精化工業(株)製)、SYMULER BULE RS(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本インキ化学工業(株)製)、SYMULER BULE RSK(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本インキ化学工業(株)製)、SYMULER BULE 5380(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本インキ化学工業(株)製)、SYMULER BULE 5485(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本インキ化学工業(株)製)、CHOMOFINE BULE S−2100(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE 4927B(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE 4940(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE 4930PK(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE 4982(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE 4966(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE 5191(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE 5192(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE 5195N(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本精化工業(株)製)、CHOMOFINE BULE 5165(銅フタロシアニンブルー顔料、大日本精化工業(株)製)等が挙げられる。なお、塗膜の日射反射率30%を下回らない範囲であれば他の着色顔料を用いることができる。
さらに、本発明の塗料組成物においては、体質顔料を含有することができる。具体的には、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、タルク、クレー、カオリン、マイカ、中空顔料等を挙げることができるが特に限定はない。
さらに、本発明の塗料組成物においては、塗料に通常用いられる種々の添加剤を含有することができる。具体的には、色分れ防止剤、沈殿防止剤、表面調整剤、可塑剤、消泡剤、防腐剤、凍結防止剤、硬化剤、顔料分散剤、界面活性剤、乾燥剤、紫外線吸収剤、防カビ剤等を挙げることができるが特に限定はない。
本発明の塗料組成物の用途は鉄部材、外装の壁材、フロー床材、道路塗装等特に限定はなく幅広く使用することができるが、道路面構造及び建築物屋上構造が特に好ましい。道路面構造に使用される場合は、塗料の速乾性はJIS K5665のタイヤ付着性試験で15分以内であることが好ましい。なお、特に鉄部材においては、錆防止のため公知の防錆顔料あるいは防錆剤としての亜硝酸ナトリウム等を併用することができる。
以下に、本発明の塗料組成物の優位性を示すために実施例と比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表中の配合割合を示す数値は特別な記載がない限り重量部を表す。
[水性分散基剤樹脂の製造]
[製造例]
温度計、コンデンサー、撹拌装置を備えた反応容器に、表1に示す(1)〜(4)を仕込み80℃まで昇温する。昇温後(5)を仕込み、あらかじめプレ乳化した(6)〜(11)を3時間かけて滴下する。滴下終了後1時間保温して反応を終了する。その後40℃以下まで冷却し、(12)を添加して水性分散基剤樹脂(A)、(B)を得た。
Figure 2007146062
(註1) 第一工業製薬(株)社製のアニオン界面活性剤
(註2) 花王(株)社製のノニオン界面活性剤
(註3) (株)堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910を用いて測定
[塗料組成物の配合および評価]
[実施例1〜8および比較例1〜5]
表2に示す配合で、(1)〜(13)についてディスパー分散を行い、その後(14)〜(19)を添加して各塗料を作製し、塗料物性および塗膜試験結果をまとめた。
Figure 2007146062
(註4) サンノプコ(株)社製顔料分散剤(濃度40%)
(註5) 丸尾カルシウム(株)社製 スーパーSS
(註6) デュポン(株)社製 R−706
(註7) 三菱化学(株)社製 MA−100
(註8) アサヒ化成工業(株)社製 ブラック6303
(註9) 大日精化工業(株)社製 CHOMOFINE YELLOW 3701
(註10)戸田工業(株)社製 B−30S
(註11)大日精化工業(株)社製 CHOMOFINE RED 6830
(註12)大日精化工業(株)社製 CHOMOFINE BULE 5191
(註13)大日本インキ化学工業(株)社製FASTONGN GREEN MY
(註14)PAS−92 日東紡績(株)社製のジアリルアミン、二酸化硫黄との共重合
物の塩酸塩(濃度20%)
(註15)PAS−92A 日東紡績(株)社製のジアリルアミン、二酸化硫黄との共重
合物の酢酸塩(濃度20%)
(註16)PAS−92B 製法については、日東紡績(株)社製のジアリルアミン、二
酸化硫黄との共重合物の塩酸塩であるPAS−92を、蟻酸塩で中和されたア
ニオン交換樹脂で処理してPAS−92の蟻酸塩を得た(濃度20%)
(註17)PAS−M−1 日東紡績(株)社製のメチルジアリルアミン重合物の塩酸塩
(濃度60%)
(註18) 各塗料を50℃、1週間の条件で安定性を評価する。
○:初期と性状変化なし ×:凝集物発生
(註19) 試験材:ガラス板にウエット膜厚250μmの塗膜を形成させ、温度23℃
、湿度50%の条件で乾燥させる。
試験法:JIS―K5665で規定された合成ゴム製の柔らかいタイヤを有
する、重さ15.8kgの試験ロールを使用して塗膜上を転がし、塗装後タ
イヤに塗膜が付着しなくなるまでの乾燥時間を試験する。乾燥時間としては
15分以内が好ましい。
(註20) 試験材:ガラス板にウエット膜厚125μmの塗膜を形成させ、温度23℃
、湿度50%の条件で1週間乾燥させる。
試験法:JIS−K5665の黄色度試験方法に準じ、分光測定器を使用し
て測定する。数値としては0.1以下が好ましく、0.1を○ 0.1を越
えるものを×として表示した。
(註21) 試験材:ガラス板にウエット膜厚125μmの塗膜を形成させ、温度23℃
、湿度50%の条件で72時間乾燥させる。
試験法:温度20℃、24時間の水浸漬試験で評価する。良好なものを○で
表示した。
(註22) 試験材:註9と同じ。
試験法:温度20℃、水酸化カルシウム飽和水溶液18時間浸漬で評価する
。良好なものを○で表示した。
(註23) 試験材:アスファルトフェルト紙上に塗料を、乾燥膜厚500μmの塗膜を
形成させ、温度23℃、湿度50%の条件で72時間乾燥させる。
測定方法:乾燥塗膜の350nm〜2100nmにおける日射反射率を、分
光光度計(日本分光製:V−570)を用いて測定し、JIS A 575
9に準じた方法にて日射反射率を算出する。
本発明の水性塗料組成物は、常乾型かつ極めて速乾性であり、遮熱性に優れ、塗膜物性も優れている。そのため、主として建物の外装用途、フロア用途、鉄部材用途あるいは道路用途に使用でき、特にアスファルト密着性に優れるため、道路用途に特に好適である。

Claims (8)

  1. 速乾性の水性樹脂組成物と1種または2種以上の赤外線反射顔料とを含有し、波長350〜2100nmの波長域における塗膜の日射反射率が30%以上であることを特徴とする速乾性の遮熱水性塗料組成物。
  2. 速乾性の水性樹脂組成物が(i)アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを50重量%以上含有するα、β―エチレン性不飽和単量体を重合して得られる水性分散基剤樹脂であって、平均粒径が50〜200nm、かつ粒径の標準偏差が100nm以下である水性分散基剤樹脂、(ii)アリル基含有の二級または三級アミンを重合して得られるアミンポリマー、および(iii)(ii)アミンポリマーのアミノ基より過剰量の揮発性塩基を含有することを特徴とする請求項1に記載の速乾性の遮熱水性塗料組成物。
  3. 水性樹脂組成物の(ii)アミンポリマーが2個のアリル基を含有するアミンを重合して得られることを特徴とする請求項2に記載の速乾性の遮熱水性塗料組成物。
  4. 水性樹脂組成物の(ii)アミンポリマーが有機酸で中和されていることを特徴とする請求項1または2に記載の速乾性の遮熱水性塗料組成物。
  5. 有機酸が蟻酸または酢酸であることを特徴とする請求項4に記載の速乾性の遮熱水性塗料組成物。
  6. 赤外線反射顔料が酸化チタン、酸化亜鉛顔料、マンガンイットリウムブラック顔料、アゾ系顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、キナクリドン顔料、銅フタロシアニンブルー顔料からなる群から選択される1種または2種以上の顔料を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の速乾性の遮熱水性塗料組成物。
  7. 速乾性がJIS K5665のタイヤ付着性試験で15分以内であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の速乾性の遮熱水性塗料組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の速乾性の遮熱水性塗料組成物で処理されていることを特徴とする道路面構造及び建築物屋上構造。
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