JP2007145938A - エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置 - Google Patents

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幸典 武田
Toshimitsu Fukase
利光 深瀬
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Abstract

【課題】 成形時の流動性が良好であり、硬化物におけるガラス転位温度が高く、添加剤等のブリードアウトもなく、耐半田性に優れたエポキシ樹脂組成物及びこれを用いた電子部品装置を提供する。
【解決手段】 エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び、下記一般式(1)で表されるポリエーテル系化合物(C)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物。
X−(−Y−Z)n (1)
(式(1)中、Xはポリエーテルユニットを示す。Zは芳香環を有するユニットを示し、複数有する場合、互いに同一であてっも、異なってもよい。Yは結合基を示し、複数有する場合、互いに同一であっても、異なってもよい。nは1以上の整数である。)

Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた電子部品装置に関する。
近年の電子機器の市場動向としては、小型化、軽量化及び高性能化がなされ、半導体素子は高集積化が年々進んで来ていることから、半導体素子のサイズは大きくなり配線は微細化している。この様な半導体素子をエポキシ樹脂組成物で封止する場合、半導体素子に直接エポキシ樹脂組成物の硬化物が接触するため、温度サイクルによるエポキシ樹脂組成物の硬化物の膨張と収縮によって、硬化物内に、ひずみ応力が発生し、半導体素子における配線のずれやボンディングワイヤーの切断、半導体素子の破壊等の問題が生じている。これらの問題に対して、エポキシ樹脂組成物の硬化物の弾性率を低減し、エポキシ樹脂組成物の硬化物に、柔軟性を付与することにより対応することが考えられる。
又、半導体装置の表面実装化が一般的になってきている現状では、半導体装置が半田処理時に高温にさらされるときに、前記半導体装置における硬化物が吸湿していると、気化した水蒸気の爆発的応力により、半導体装置にクラックが発生したり、或いは半導体素子やリードフレームと、エポキシ樹脂組成物の硬化物との界面に、剥離が発生することにより、電気的信頼性を大きく損なう不良が生じ、これらの不良の防止、即ち耐半田性の向上も、大きな課題となっている。
この耐半田性の向上のために、エポキシ樹脂組成物は、無機質充填材を多量に配合することにより、半導体装置の低吸湿化、低熱膨張化及び高強度化を図ってきている。しかし、無機充填材を多量に配合すると、エポキシ樹脂組成物の成形時の流動性が低下し、成形性に難を生じることがあることから、樹脂成分としては、低粘度型のものや、常温では結晶性の固体であり融点を越えると極めて低粘度の液状となる樹脂を使用するなどして、流動性の低下を防止する手法が提案されている。ところが、各成分を加熱混練して製造されるエポキシ樹脂組成物において、無機質充填材を多量に配合したエポキシ樹脂組成物の硬化物では、強度の増加と共に弾性率も増大してしまうため、温度サイクルによるひずみ応力が増大してしまい、耐温度サイクル性に問題が生じていた。
この様に、耐温度サイクル性と耐半田性の両立を達成するためには、無機質充填材を多量に配合した系においても、弾性率の増大を押さえる必要がある。その具体的な手法の一つとして、従来から低応力特性を付与するために、種々のエラストマー成分を添加するという方法が知られている。例えば、特許文献1においては、ポリウレタンエラストマーの添加により、耐熱衝撃が改善することが示されている。また、特許文献2においては、分子末端に水酸基を有するポリエーテルポリオールを添加することにより、低応力化が図れることが示されている。しかしながら、従来のポリウレタンエラストマーでは、溶融状態での粘度が増大し流動性が低下したり、硬化物のガラス転移温度の低下を招く傾向にあった。また、特許文献2に示されるような分子末端に水酸基を有するポリウレタンポリオールでは、分子量が小さく相溶する場合にはガラス転位温度の低下を招き、分子量が大きく相溶しない場合にはブリードアウトする傾向にあった。
このような問題の改善方法として、エポキシ樹脂と相溶する部分と非相溶なエラストマ部分とを有する熱可塑性エラストマを添加する方法が特許文献3に示されている。しかしながら、特許文献3に示されているポリエステルエラストマやポリアミドエラストマを用いた場合でも、溶融状態での粘度が増大し流動性が低下する傾向にある。このため、成形時の流動性の低下がなく、硬化物におけるガラス転位温度の低下、並びにブリードアウトがなく、耐温度サイクル性及び耐半田性の要求を満たすエポキシ樹脂組成物の開発が望まれていた。
特開昭62−181322号公報 特開昭63−33416号公報 特開平5−175371号公報
本発明は、成形時の流動性が良好であり、硬化物におけるガラス転位温度が高く、添加剤等のブリードアウトもなく、耐半田性に優れたエポキシ樹脂組成物及びこれを用いた電子部品装置を提供するものである。
即ち、本発明は、
(1)エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び、下記一般式(1)で表されるポリエーテル系化合物(C)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物、
X−(−Y−Z)n (1)
(式(1)中、Xはポリエーテルユニットを示す。Zは芳香環を有するユニットを示し、複数有する場合、互いに同一であてっも、異なってもよい。Yは結合基を示し、複数有する場合、互いに同一であっても、異なってもよい。nは1以上の整数である。)、
(2)前記ポリエーテル系化合物(C)の数平均分子量が10000以下である第(1)項記載のエポキシ樹脂組成物、
(3)前記ポリエーテル系化合物(C)の25℃におけるコーンプレート粘度が、100Pa・s以下である第(1)項又は第(2)項記載のエポキシ樹脂組成物、
(4)前記ポリエーテル系化合物(C)を構成するポリエーテルユニット(X)が、前記エポキシ樹脂(A)と非相溶性を示すポリエーテルユニットである第(1)項〜第(3)項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(5)前記ポリエーテル系化合物(C)を構成するポリエーテルユニット(X)の数平均分子量が、1000以上である第(1)項〜第(4)項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(6)前記ポリエーテル系化合物(C)を構成するポリエーテルユニット(X)が、プロピレングリコールの繰り返し単位を有する第(1)項〜第(5)項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(7)前記ポリエーテル系化合物(C)を構成する結合基Yが、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合及びアセタール結合から選ばれた1種以上である第(1)項〜第(6)項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(8)前記ポリエーテル化合物(C)は、前記エポキシ樹脂(A)と前記硬化剤(B)との合計100重量部に対して、1〜40重量部含有するものである第(1)項〜第(7)項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(9)前記エポキシ樹脂(A)は、下記一般式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂である第(1)項〜第(8)項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、
Figure 2007145938
(式(2)中、R1〜R7、及びR8は、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びフェニル基の中から選ばれる1種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただしaは1以上の整数である。)
(10)前記硬化剤(B)は、フェノール樹脂である第(1)項〜第(9)項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(11)前記フェノール樹脂は、下記一般式(3)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂である第(10)項記載のエポキシ樹脂組成物、
Figure 2007145938
(式(3)中、R9〜R15、及びR16は、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びフェニル基の中から選ばれる1種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、bは、1以上の整数である。)
(12)前記エポキシ樹脂組成物は、無機充填材(D)を含むものである第(1)項〜第(11)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(13)前記無機充填材(D)は、溶融シリカである第(12)項記載エポキシ樹脂組成物、
(14)前記無機充填材(D)は、70〜95重量%含有するものである第(12)項又は第(13)項記載のエポキシ樹脂組成物、
(15)第(1)項〜第(14)項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により電子部品を封止してなる電子部品装置、
である。
本発明によれば、成形時の流動性が良好であり、硬化物とした場合に、ガラス転移温度が高く、ブリードアウトすることなく、耐半田性を改良したエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を用いて得た電子部品装置は、耐熱性を有し、耐半田性も良好なことから、耐クラック性にも優れるものとなる。
本発明は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び下記一般式(1)で表されるポリエーテル系化合物(C)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であり、これによれば、成形時の流動性が良好であり、硬化物とした場合に、ガラス転移温度が高く、ブリードアウトすることなく、耐半田性を改良したエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
X−(−Y−Z)n (1)
(式(1)中、Xはポリエーテルユニットを示す。Zは芳香環を有するユニットを示し、複数有する場合、互いに同一であてっも、異なってもよい。Yは結合基を示し、複数有する場合、互いに同一であっても、異なってもよい。nは1以上の整数である。)
本発明に用いるエポキシ樹脂(A)としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー及びポリマー全般を言い、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂及びトリアジン核含有エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
これらの内で、一般式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が好ましく、これを用いた樹脂組成物の硬化物は、吸湿性が低く、高温領域での弾性率が低いことから、耐半田性がより優れたものとなると共に、リードフレームなどの基材との密着性にも優れたものとなる。
Figure 2007145938
一般式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の置換基R1〜R8は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、及びハロゲン原子から選択される1種を表し、これらは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
これらの置換基R1〜R8の具体例としては、それぞれ、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びフェニル基などが挙げられるが、これらの中でも、特に、水素原子又はメチル基であるビス(メトキシメチル)ビフェニル・フェノール重縮合物型エポキシ化合物が好ましい。
本発明に用いる硬化剤(B)としては、エポキシ樹脂と反応して硬化させるものであれば、特に限定されず、エポキシ樹脂の硬化剤として一般的な硬化剤である、フェノール樹脂、酸無水物及び芳香族ジアミンなどを挙げることができ、特に半導体封止材用途として用いる場合には、フェノール樹脂が好ましい。
前記フェノール樹脂としては、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー及びポリマー全般を言い、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂及びトリフェノールメタン型フェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
これらの内で、一般式(3)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂が好ましい。これを用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は、吸湿率が低く、高温領域での弾性率が低いことから、耐半田性に優れるものとなると共に、リードフレームなどの基材との密着性に優れるものとなる。
Figure 2007145938
一般式(3)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂の置換基R9〜R15は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、及びハロゲン原子から選択される1種を表し、これらは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
これらの置換基R9〜R15の具体例としては、それぞれ、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びフェニル基などが挙げられるが、これらの中でも、特に、水素原子又はメチル基であるビス(メトキシメチル)ビフェニル・フェノール重縮合物が好ましい
本発明において、硬化剤(B)の含有量としては、例えば、フェノール樹脂の場合、全エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数の比が0.7〜1.5であることが好ましく、この範囲を外れると、エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下、或いは硬化物のガラス転移温度の低下、耐湿信頼性の低下等が生じる可能性がある。
本発明において、前記硬化剤としてフェノール樹脂を用いる場合には、前記エポキシ樹脂におけるエポキシ基と前記フェノール樹脂におけるフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるための硬化促進剤を用いることが好ましい。そのような硬化促進剤としては、例えば1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、2−メチルイミダゾール、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、ベンゾキノンをアダクトしたトリフェニルホスフィン等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。硬化促進剤の添加量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
本発明に用いるポリエーテル系化合物(C)は、一般式(1)で表されるものである。
X−(−Y−Z)n (1)
一般式(1)中、Xはポリエーテルユニットを、Zは芳香環を有するユニットを、Yは結合基を示す。Z及びYは、複数有する場合、互いに同一であてっも、異なってもよい。また、nは1以上の整数である。
本発明に用いるポリエーテル系化合物(C)の数平均分子量は、10000以下であることが好ましく、8000以下がより好ましく、7000以下が最も好ましい。また、ポリエーテル系化合物(C)の数平均分子量は、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。数平均分子量が10000以下であることによりエポキシ樹脂との混合が容易となり、さらにエポキシ樹脂組成物の溶融時の流動性低下も抑制できる。ここで、数平均分子量は、分子量既知の標準ポリエチレングリコールで検量線を作成したゲール浸透クロマトグラフィーで求めることができる。
本発明に用いるポリエーテル系化合物(C)の25℃におけるコーンプレート粘度が100Pa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以下であることがより好ましく、20Pa・sであることが最も好ましい。また、ポリエーテル系化合物(C)の25℃におけるコーンプレート粘度は、0.1Pa・s以上であることが好ましい。25℃におけるコーンプレート粘度を100Pa・s以下とすることで、エポキシ樹脂との混合が容易となり、さらにエポキシ樹脂組成物の溶融時の流動性低下も抑制できる。
本発明におけるコーンプレート粘度とは、円錐状のコーンと平板状のヒーター付きプレートの間に測定試料をはさんで、コーンを回転させ発生されるトルクから求める粘度である。例えば、エム・エス・ティー エンジニアリング社製コーンプレート粘度計MODEL CV−1Sによって測定することができる。
本発明に用いるポリエーテル系化合物(C)を構成するポリエーテルユニット(X)としては、構造中に複数のエーテル結合を有するものであれば特に限定されないが、エポキシ樹脂(A)と非相溶性を示すことがより好ましい。エポキシ樹脂(A)と非相溶性を示すポリエーテルユニット(X)を有するポリエーテル系化合物(C)を用いることにより、ポリエーテルユニットが硬化したエポキシ樹脂組成物中で相分離し、その硬化物は、ガラス転位温度を低下させることなく、低弾性化が図れ、耐半田性に優れたものを得ることができる。
ここで、ポリエーテルユニット(X)がエポキシ樹脂(A)と非相溶性を示すとは、エポキシ樹脂(A)とポリエーテルユニット(X)のみを溶融混合した場合に相分離する、ポリエーテルユニットのみを配合したエポキシ樹脂(A)を硬化した場合にブリードもしくは相分離構造を形成するなどの現象によって確認できる。
本発明に用いるポリエーテル系化合物(C)を構成するポリエーテルユニット(X)の数平均分子量は、1000以上が好ましく、1500以上がより好ましく、2000以上が最も好ましい。また、ポリエーテルユニット(X)の数平均分子量は、10000以下が好ましく、7000以下がより好ましく、5000以下が最も好ましい。ポリエーテルユニット(X)の数平均分子量が1000以下の場合には、ポリエーテルユニット(X)がエポキシ樹脂に相溶して硬化物のガラス転位温度を低下させる場合がある。
本発明に用いるポリエーテル系化合物(C)を構成するポリエーテルユニット(X)の構造としては、構造中にエーテル結合を複数有する種々のものが適用でき、具体的にはエチレングリコールを繰り返し単位として有するもの、プロピレングリコールを繰り返し単位として有するもの、テトラメチレングリコールを繰り返し単位として有するものなどが挙げられる。中でも、エポキシ樹脂(A)との相溶性や低弾性化の効果からプロピレングリコールを繰り返し単位として有するものが好ましい。これらポリエーテルユニット(X)は、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのアルコール類に、アルカリ触媒のもとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどを開環重合させることによって合成できる。
本発明に用いるポリエーテル系化合物(C)は、少なくとも1つ以上の末端に芳香環を有するユニット(Z)を構成成分として含むものであり、このような芳香環を有するユニット(Z)としては、芳香族環を1つ以上有すものであれば特に限定されないが、エポキシ樹脂(A)との相溶性が高いものがより好ましい。芳香環を有するユニット(Z)を構成成分として含むことにより、このユニットがエポキシ樹脂(A)と相溶し、硬化時のブリードを抑制することができる。芳香環を有するユニット(Z)の好ましい例としては、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基などが挙げられ、エポキシ基やフェノール性水酸基などの官能基を有していても良い。
本発明に用いるポリエーテル系化合物(C)を構成する結合基(Y)としては、ポリエーテルユニット(X)と芳香環を有するユニット(Z)とを結び付けるものであれば、特に限定されない。好ましい結合基の例としては、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合及びアセタール結合などが挙げられる。
本発明に用いるポリエーテル系化合物(C)は、ポリエーテルと芳香族環を有する化合物とを反応させることによって合成できる。例えば水酸基を有するポリエーテルとイソシアネートを有する芳香族化合物との反応、水酸基を有するポリエーテルとカルボキシル基を有する芳香族化合物との反応、ビニルエーテル基有するポリエーテルと水酸基を有する芳香族化合物との反応などが挙げられる。中でも、反応が容易であることから水酸基を有するポリエーテルとイソシアネートを有する芳香族化合物との反応が好ましい。イソシアネートを有する芳香族化合物としては、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート、ビフェニルイソシアネートなどを挙げることができる。
本発明において、ポリエーテル系化合物(C)の含有量としては、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の合計100重量部に対して、1〜40重量部であることが好ましく、より好ましくは2〜30重量部、最も好ましくは5〜25重量部である。1重量部以下では添加効果が認められない可能性があり、40重量部を超えると耐熱性が低下する可能性がある。
本発明において、任意に用いる無機充填材(D)としては、一般に半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ及び窒化珪素等が挙げられ、最も好適に使用されるものとしては、球状の溶融シリカである。これらの無機充填材は、単独でも混合して用いても差し支えない。無機充填材は、予めシランカップリング剤等で表面処理されているものを用いても良い。無機充填材(D)の含有量としては、特に限定されないが、下限値としては20重量%が好ましく、60重量%以上がより好ましく、上限値としては95重量%以下がより好ましい。特に電子部品封止用として用いる場合は、全配合成分の合計量に対して60重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上が最も好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記以外の成分として、必要に応じて、硬化促進剤、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン等の難燃剤、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン及びビニルシラン等のシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等のカップリング剤、カルナバワックス等の天然ワックス及びポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類若しくはパラフィン等の離型剤、シリコーンオイル及びシリコーンゴム等の低応力化成分、カーボンブラック等の着色剤、酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、ポリエーテル系化合物(C)、任意に無機充填材(D)、及びその他の添加剤等をミキサー等を用いて混合後、加熱ニーダや熱ロール等を用いて加熱混練し、冷却、粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、硬化成形することにより、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で硬化成形すればよい。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
合成例1
フェニルイソシアネート末端封止ポリプロピレングリコール(変性PPG−1)の合成
冷却管及び撹拌装置付きの1Lのセパラブルフラスコに、数平均分子量3000のトリオール型ポリプロピレングリコール(PPG−1)300g(0.1mol)を入れ、窒素気流下、80℃で撹拌しながらジブチルスズラウレート1.68gを滴下した。その後フェニルイソシアネート35.7g(0.3mol)を加え、80℃で90分間撹拌して、フェニルイソシアネートで末端封止したポリプロピレングリコール(変性PPG−1)を合成した。合成したフェニルイソシアネート末端封止ポリプロピレングリコールの構造は、FT−IR、1H−NMRで確認した。数平均分子量:3350、コーンプレート粘度:3.3Pa・s。
合成例2
フェニルイソシアネート末端封止ポリプロピレングリコール(変性PPG−2)の合成
冷却管及び撹拌装置付きの1Lのセパラブルフラスコに、数平均分子量2000のジオール型ポリプロピレングリコール(PPG−2)200g(0.1mol)を入れ、窒素気流下、80℃で撹拌しながらジブチルスズラウレート1.12gを滴下した。その後フェニルイソシアネート23.8g(0.2mol)を加え、80℃で90分間撹拌して、フェニルイソシアネートで末端封止したポリプロピレングリコール(変性PPG−2)を合成した。合成したフェニルイソシアネート末端封止ポリプロピレングリコールの構造は、FT−IR、1H−NMRで確認した。数平均分子量:2240、コーンプレート粘度:2.9Pa・s
実施例1
前記式(2)で表される構造を有するビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(軟化点60℃、エポキシ当量275)6.8重量部、前記式(3)で表される構造を有するビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(軟化点65℃、エポキシ当量200)4.5重量部、前記合成例−1で得たフェニルイソシアネート末端封止ポリプロピレングリコール(変性PPG−1)2.0重量部、溶融球状シリカ86.0重量部、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)0.2重量部、カルナバワックス0.2重量部、カーボンブラック0.3重量部をミキサーを用いて混合した後、表面温度が90℃と45℃の2本ロールを用いて混練し、冷却後粉砕して、エポキシ樹脂組成物を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表−1に示す。
評価方法
(1)スパイラルフロー
EMMI−I−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力6.8MPa、硬化時間2分で測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。
(2)ブリード性
金型温度175℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間2分の条件で、トランスファー成形機を用いて成形したときのブリードの状態を目視評価した。表面に少しでも滲み出しがあった場合を×、滲み出しがない場合を○とした。
(3)弾性率及びガラス転位温度
トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.86MPa、硬化時間120秒で、試験片(幅2mm×長さ30mm×厚さ1.0mm)を成形し、175℃、4時間で後硬化したものを用いた。
測定には、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメント社製 DMS6100)を用い5℃/分の割合で昇温しながら、周波数10Hzの歪みを与えて動的粘弾性の測定を行ない、tanδのピーク値からガラス転移温度(Tg)を判定した。また、25℃と260℃の弾性率を求めた。
(4)耐半田クラック性
100ピンTQFP(Thin Quad Flat Package)(パッケージサイズは14×14mm、厚み1.4mm、シリコンチップサイズは8.0×8.0mm、リードフレームは42アロイ製)を、金型温度175℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間2分の条件で、トランスファー成形機を用いて成形し、175℃、8時間で後硬化させた。得られた半導体パッケージを、85℃、相対湿度85%の環境下で、168時間放置し、その後、IRリフロー処理(260℃)を行った。IRリフロー処理後の内部の剥離とクラックの有無を超音波探傷装置で観察し、不良パッケージの個数を数えた。不良パッケージの個数がn個であるとき、n/10と表示する。
実施例2
実施例1において、式(2)で表されるエポキシ樹脂(軟化点60℃、エポキシ当量275)7.4重量部、式(3)で表されるフェノール樹脂(軟化点65℃、エポキシ当量200)4.9重量部、前記合成例−1で得たフェニルイソシアネート末端封止ポリプロピレングリコール(変性PPG−1)1.0重量部とした以外は、すべて実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物を作成し、特性を評価した。
実施例3
実施例1において、合成例1で得たフェニルイソシアネート末端封止ポリプロピレングリコール(変性PPG−1)の代えて、合成例2で得たフェニルイソシアネート末端封止ポリプロピレングリコール(変性PPG−2)にした以外は、すべて実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物を作成し、特性を評価した。
比較例1
実施例1においてフェニルイソシアネート末端封止ポリプロピレングリコール(変性PPG−1)を除いた以外は、すべて実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作成し、特性を評価した。
比較例2
実施例1において、合成例1で得たフェニルイソシアネート末端封止ポリプロピレングリコール(変性PPG−1)に代えて、末端封止していない数平均分子量3000のトリオール型ポリプロピレングリコール(PPG−1)にした以外は、すべて実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物を作成し、特性を評価した。
比較例3
実施例1において、合成例1で得たフェニルイソシアネート末端封止ポリプロピレングリコール(変性PPG−1)に代えて、末端封止していない数平均分子量1000のジオール型ポリプロピレングリコール(PPG−3)にした以外は、すべて実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物を作成し、特性を評価した。
Figure 2007145938
本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、流動性に優れ、ガラス転位温度の低下なく熱時低弾性化を図ったものであり、これを用いた硬化物により封止した電子部品装置は、耐半田性に優れるもので、表面実装型の半導体装置にも有用である。

Claims (15)

  1. エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び、下記一般式(1)で表されるポリエーテル系化合物(C)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物。
    X−(−Y−Z)n (1)
    (式(1)中、Xはポリエーテルユニットを示す。Zは芳香環を有するユニットを示し、複数有する場合、互いに同一であてっも、異なってもよい。Yは結合基を示し、複数有する場合、互いに同一であっても、異なってもよい。nは1以上の整数である。)
  2. 前記ポリエーテル系化合物(C)の数平均分子量が、10000以下である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 前記ポリエーテル系化合物(C)の25℃におけるコーンプレート粘度が、100Pa・s以下である請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記ポリエーテル系化合物(C)を構成するポリエーテルユニット(X)が、前記エポキシ樹脂(A)と非相溶性を示すポリエーテルユニットである請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 前記ポリエーテル系化合物(C)を構成するポリエーテルユニット(X)の数平均分子量が、1000以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 前記ポリエーテル系化合物(C)を構成するポリエーテルユニット(X)が、プロピレングリコールの繰り返し単位を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 前記ポリエーテル系化合物(C)を構成する結合基Yが、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合及びアセタール結合から選ばれた1種以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  8. 前記ポリエーテル化合物(C)は、前記エポキシ樹脂(A)と前記硬化剤(B)との合計100重量部に対して、1〜40重量部含有するものである請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. 前記エポキシ樹脂(A)は、下記一般式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂である請求項1〜8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2007145938
    (式(2)中、R1〜R7、及びR8は、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びフェニル基の中から選ばれる1種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただしaは1以上の整数である。)
  10. 前記硬化剤(B)は、フェノール樹脂である請求項1〜9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  11. 前記フェノール樹脂は、下記一般式(3)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂である請求項10記載のエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2007145938
    (式(3)中、R9〜R15、及びR16は、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びフェニル基の中から選ばれる1種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、bは、1以上の整数である。)
  12. 前記エポキシ樹脂組成物は、無機充填材(D)を含むものである請求項1〜11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  13. 前記無機充填材(D)は、溶融シリカである請求項12記載のエポキシ樹脂組成物。
  14. 前記無機充填材(D)は、70〜95重量%含有するものである請求項12又は13記載のエポキシ樹脂組成物。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物により電子部品を封止してなる電子部品装置。
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