本発明によるエネルギ回収装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本発明によるエネルギ回収装置の第一実施形態について、以下に説明する。本第一実施形態におけるエンジンシステムの概念を図1に示す。本第一実施形態におけるエンジン10は、燃料であるガソリンを燃料噴射弁12から燃焼室14内に直接噴射し、点火プラグ16によって着火させる筒内噴射型式のものである。
燃焼室14にそれぞれ臨む吸気ポート18および排気ポート20が形成されたシリンダヘッド22には、吸気バルブ24および排気バルブ26を駆動する動弁機構28と、燃焼室14内の混合気を着火させる前述の点火プラグ16とが組み込まれ、さらにこの点火プラグ16に火花を発生させるイグナイタ30が搭載されている。
動弁機構28は、吸気バルブ24および排気バルブ26の作用角(作動角)の位相およびリフト量を自由に可変、すなわちそれらのバルブタイミングを自由に可変とすると共に、それらのリフト量を自由に可変とする可変動弁機構である。図示しないが、動弁機構28は、電磁コイルの電磁力により吸気バルブ24および排気バルブ26を動かすものであり、それら吸排気バルブ24、26は電磁駆動弁とされている。それ故、吸気バルブ24および排気バルブ26の各電磁コイルの、制御される通電駆動による電磁力により、それらの作用角の位相やリフト量は自由に変えられる。
吸気ポート18に連通するようにシリンダヘッド22に連結されて吸気ポート18と共に吸気通路32を区画形成する吸気管34の上流端側には、大気中に含まれる塵埃などを除去して吸気通路32に導くためのエアクリーナ36が設けられている。このエアクリーナ36よりも下流側に位置すると共に、サージタンク38よりも上流側に位置する吸気管34の部分には、運転者によって操作されるアクセルペダル40の踏み込み量に基づき、スロットルアクチュエータ42によって開度が調整される吸気絞り弁、すなわち電子制御式の吸気スロットルバルブ(以下、「スロットルバルブ」と称する。)44が組み込まれている。ただし、アクセルペダル40の踏み込み動作と、スロットルバルブ44の開閉動作とを切り離して電子的に制御できるようにしている。
排気ポート20に連通するようにシリンダヘッド22に連結されて排気ポート20と共に排気通路46を区画形成する排気管48の途中には、排気通路46の閉塞を可能にする排気絞り弁50が配置されている。排気絞り弁50は、排気ガスの流れの向きに可動である傘状の弁体50aが環状の弁座50bに直角方向に移動するポペット式バルブである。それ故、弁体50aが弁座50bに着座することにより、排気絞り弁50の閉弁時において排気通路46の優れた閉塞性が確保される。排気絞り弁50の弁体50aは、空圧式のアクチュエータ52によって作動され、弁座50bに着座する閉位置と、弁座50bに所定の間隔を開けて保持される開位置とを有する。排気絞り弁50よりも上流側の排気通路46の部分には、制御弁54を有し、回収管56により区画形成される回収通路57が連通され、この回収通路57を介して蓄圧タンク58が接続されている。なお、蓄圧タンク58には、回収管56とは別に、蓄圧タンク58内の圧力を利用可能にするために、制御弁60を有する放出管62が接続されている。
エンジン10は、各種値を検出してこれを電子制御装置(以下、ECUと称する。)64に出力する各種センサ類を備えている。具体的には、吸気管34内の空気の圧力、すなわち吸気圧を検出する吸気圧センサ66を備えている。また運転者によって操作されるアクセルペダル40の踏み込み量に対応する位置を検出するアクセルポジションセンサ68を備えている。また、スロットルバルブ44の開度を検出するスロットルポジションセンサ69を備えている。また、ピストン70が往復動するシリンダブロック72には、連接棒74を介してピストン70が連結されるクランク軸76のクランク回転信号を検出するクランクポジションセンサ78が取り付けられている。本第一実施形態においては、このクランクポジションセンサ78をエンジン回転数センサとしても利用している。さらに、排気絞り弁50よりも上流側の排気管48内の排気ガスあるいは空気である流体の圧力を検出する圧力センサ80を備えている。また、蓄圧タンク58内の圧力を検出する圧力センサ82も備えられている。さらには、ブレーキペダル84の踏み込みに基づく信号を出力するストップランプスイッチ86を備えている。さらに、車速を検出する車速センサ88も備えられている。
ECU64は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器、入力インタフェース、出力インタフェース等を含むマイクロコンピュータで構成されている。入力インタフェースには、上記各種センサ類などが電気的に接続されている。これらの各種センサ類などからの検出信号に基づき、予め設定されたプログラムにしたがって円滑なエンジン10の運転がなされるように、ECU64は出力インタフェースから電気的に信号を出力して、燃料噴射弁12、動弁機構28、イグナイタ30、スロットルアクチュエータ42、アクチュエータ52、制御弁54、制御弁60などの作動を制御するようになっている。
エンジン10では、通常の運転時、吸気圧センサ66からの出力値に基づく吸気圧や、クランクポジションセンサ78からの出力値に基づくエンジン回転数など、すなわちエンジン負荷およびエンジン回転数で表される運転状態に基づいて燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期等が設定される。その際、アクセルポジションセンサ68からの出力値に基づくアクセルペダル40の踏み込み量などに応じてそれらの補正がなされ、これらの補正された燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期に基づいて、燃料噴射弁12や点火プラグ16などが制御される。
なお、エンジン10では、クランクポジションセンサ78により検出される値を用いて導かれるエンジン回転数が所定回転数(以下、「燃料カット回転数」と称する。)以上であり、且つアクセルポジションセンサ68により検出されるアクセルペダル40の踏み込み量が「0」、すなわちアクセルペダル40が踏み込まれていないときに、燃料噴射弁12からの燃料噴射が停止(以下、「燃料カット」と称する。)されるように設定されている。ただし、このような燃料カットの状態が続いて、エンジン回転数が低下して別の所定回転数(以下、「燃料カット復帰回転数」と称する。)に達すると、燃料噴射は再開される。なお、燃料カットが行われているときは、概ね減速時に対応する。
また、エンジン10では、通常の運転時においてそのエンジン回転数が高いとき、吸気バルブ24と排気バルブ26とのオーバーラップ量が所定量生じるように、ECU64により、動弁機構28が制御されている。これにより、空気を効果的に燃焼室14内に導くことにしている。一方、通常の運転時であって、エンジン回転数が低いときは、排気通路46から燃焼室14内に排気ガスが逆流して燃焼が不安定になるのを防止すべく、エンジン回転数が高いときに比してオーバーラップ量が少なくなるように、あるいはオーバーラップが生じないように動弁機構28が制御される。このように吸排気バルブ24、26が制御されるのは、予めROMに記憶されている通常の運転時のためのバルブタイミング(以下、「通常バルブタイミング」と称する。)が設定されているからである。
本第一実施形態では、この通常バルブタイミングに対して、後述するエネルギ回収を行っているときのバルブタイミング(以下、「回収バルブタイミング」と称する。)がある。エネルギ回収を行うときには、通常バルブタイミングに代えて、同じくROMに記憶されている回収バルブタイミングが設定されて、吸排気バルブ24、26のバルブタイミングが規定されて、動弁機構28の制御が行われる。後述するように、回収バルブタイミングとは、燃焼室14、すなわち筒内への吸入空気量を多くするのを可能にするバルブタイミングである。これは、エネルギ回収を行うとき、すなわち燃料カットをしているときに用いられるバルブタイミングなので、燃焼を考慮する必要がなく、特に望ましくは、可能な限り多くの空気を取り込むようなバルブタイミングである。換言すると、実圧縮比を大きくするバルブタイミングである。なお、実圧縮比 とは、見かけ上の幾何学的圧縮比にその体積効率を乗じたものであり、吸入空気量が多くなることは、実圧縮比が高くなることに相当する。
ところで、エンジン10において、排気通路46を流れる排気ガスは、通常の運転時、排気絞り弁50が全開にされていて、最終的には大気に放出されている。これに対して、減速時であって燃料カットがされている上記状態のとき、排気通路46を流れる流体を有効に活用することでエネルギが取り出されて、それが回収されるように設定されている。以下にそのエネルギの回収について詳細に説明する。なお、後述するように、排気通路46に燃料カットによる新気を流しつつ(ただし、一部排気ガスが混ざり得る。)、それら排気通路46に至った流体をせき止めてそれら流体の圧力を高めて、エネルギとして圧力を回収することにしているが、そのような排気通路46の流体の圧力をより効率よく高めるべく、圧力上昇促進手段が設けられている。本第一実施形態では、吸気バルブ24、動弁機構28、スロットルアクチュエータ42、スロットルバルブ44、ECU64などが圧力上昇促進手段の一部を構成している。
以下に、本第一実施形態の圧力上昇促進手段を含めて、本第一実施形態のエネルギの回収について、図2の制御フローチャートに基づいて詳細に説明する。なお、図2の制御フローチャートは、およそ20ms毎に繰り返されるものである。
まず、ECU64は、ステップS201において、減速時か否かを判定する。具体的には、減速条件でブレーキペダル84の踏み込み量が「1」であるか否か、すなわちストップランプスイッチ86がONになっているか否かで判定される。ここで、減速時であると判断されると、ステップS203へ進む。なお、このステップS201で否定されると、ステップS217以下へ進むが、これに関しては後述する。
そして、ステップS203では、燃料カット中か否かが判定される。「燃料カット中」ということは、上述の如く、アクセルペダルの踏み込み量が「0」であり、走行中でかつエンジン回転数が燃料カット回転数以上のときに対応している。具体的には、燃料カット中か否かは、燃料噴射量が「0」とされているか否かで判定される。なお、通常の運転時では、エンジン10により所定出力を生み出すべく、「0」より大きな燃料噴射量が上述の如く導かれて燃料噴射が行われているので、ステップS203において否定されて、ステップS217以下へ進むが、これに関しては後述する。
ステップS201およびステップS203で共に肯定されると、ステップS205へ進み、通常開度マップを検索することで規定されていた所定開度、ここでは全閉にされているスロットルバルブ44が、それよりも大きな所定開度に開かれるように、回収開度がまず設定される。このスロットルバルブ44の回収開度は、所定開度であって、スロットルバルブ44を全閉と全開との間の一定の開度(全開も含む。)に規定する規定値である。そして、この回収開度になるようにスロットルアクチュエータ42へ作動信号が出力されることになる。それに伴い、ステップS207で、排気絞り弁50が全閉にまで閉じられる。具体的には、排気絞り弁50が閉じられるように、アクチュエータ52へ作動信号が出力される。次いで、ステップS209では、上記回収バルブタイミングが設定される。なお、回収バルブタイミングが設定されているときには、吸排気バルブ24、26に対してこの回収バルブタイミングを実行するべく、ECU64は動弁機構28を制御する。なお、回収バルブタイミングは、好ましくは、その時々のエンジン回転数に基づいて変化する。
ここで、本第一実施形態の回収バルブタイミングを、図3のバルブタイミングダイヤグラムに基づいて説明する。図3(a)は、エンジン回転が低速回転のときのバルブタイミングを表していて、図3(b)は、エンジン回転が高速回転のときのバルブタイミングを表している。なお、エンジン回転が、高速回転か低速回転かの閾値は、例えば4000rpmである。
図3(a)のエンジン回転が低速回転のときのバルブタイミングは、排気バルブ26が下死点前45°(45°BBDC)で開き、上死点後3°(3°ATDC)で閉じ、吸気バルブ24が上死点後90°(90°ATDC)で開き、下死点後30°(30°ABDC)で閉じるバルブタイミングである。すなわち、エネルギ回収をしていないときの通常バルブタイミングの開弁時期よりも吸気バルブ24の開弁時期が遅くなるように、排気バルブ26が閉弁してから、ある程度の期間経過後に吸気バルブ24が開弁されるので、いわゆる吸排気バルブ24、26間のオーバーラップは生じず、「負」のオーバーラップが生じる。それ故、吸気行程初期では、排気バルブ26も吸気バルブ24も閉じられた状態でピストン70が下降するので、筒内の負圧が上昇する。その後、吸気行程後期では、吸気バルブ24が開かれるので、その負圧の影響を受けて空気が勢い良く筒内に至ることになる。一方、その負圧に伴う振動波が吸気通路32の空気に生じる。すなわち吸気脈動が生じる。そして、その振動波は、大気開放端で反射されて、正弦波であるその振動波が気筒内に到達するタイミングで、上記吸気バルブ24が閉弁されるべく、吸気バルブ24の閉弁時期が設定されている。それ故、いわゆる慣性効果により、過給が実現できる。このようにして、より多くの空気を筒内に取り込むことが可能になる。したがって、より多くの流体を排気通路46に送ることが可能になる。なお、図3に示した吸気バルブ24の遅開きのこの開弁時期、およびその閉弁時期は、上述の如く吸気バルブ24の閉弁時期と、吸気脈動の正弦波の到達時期との同期を図るために設定されているので、吸気管長、気筒容積、気筒形状等により独自のタイミングが設定されるのが望ましい。
一方、図3(b)のエンジン回転が高速回転のときのバルブタイミングは、排気バルブ26が下死点前45°(45°BBDC)で開き、上死点後3°(3°ATDC)で閉じ、吸気バルブ24が上死点前10°(10°BTDC)で開き、下死点後40°(40°ABDC)で閉じるバルブタイミングである。すなわち、正のオーバーラップが生じるように、規定されている。これにより、吸気通路32の空気が排出される流体に引っ張られて、素早く筒内の流体が入れ替えられると共に、より早い流速で空気が筒内に吸入されることとなり、より多くの空気を筒内に取り込み、排気通路46に送ることが可能になる。
このように、減速時であって、燃料カット中であると判断されると、スロットルバルブ44の開度が大きくなる方向に制御され、排気絞り弁50が閉じられ、且つ回収バルブタイミングが設定されて動弁機構28が制御されるので、吸気通路32からの十分な空気が燃焼室14へ流れ込み、その流れ込んだ空気がそのままピストン70の上下動で排気通路46に押し流されて、排気絞り弁50でそれがせき止められることになり、排気絞り弁50よりも上流側の排気通路46の圧力が上昇することになる。特に本第一実施形態では、排気通路46の圧力を高めるこのようなときに、上述の如く回収バルブタイミングが設定されて、吸排気バルブ24、26が作動されるので、より多くの空気が筒内に吸入される。したがって、排気通路46に、より多くの空気が流されて排気通路46の圧力上昇が促進される。その結果、燃料カットをしている時間が短いがゆえに、エネルギ回収に割くことが出来る時間がわずかの場合にも、短時間で排気絞り弁50よりも上流側の排気通路46の圧力を十分に高めることが可能になる。ただし、燃料噴射量が「0」であるので、排気通路46に至る流体は、排気絞り弁50を閉じた当初は排気ガスである可能性もあるが、概ね空気、すなわち新気である。なお、これは新気のみであることが望ましい。
ここで、排気通路46の圧力が高くなっていくと、排気絞り弁50よりも上流側の排気通路46の圧力が上昇して、蓄圧タンク58内の圧力を超えるようになり、エネルギとしての圧力が回収可能になる。そこで、この圧力の回収が可能であるかの判定を行うべく、ステップS211で、排気絞り弁50よりも上流側の排気通路46の圧力が蓄圧タンク58内の圧力(図2における「タンク内圧」)以上であるか否かが判定される。そして、排気絞り弁50を閉じた当初などは排気通路46のその部分の圧力が蓄圧タンク58内の圧力よりも低い場合があり、この場合には否定されて、ステップS213へ進み、制御弁54が閉じたままにされる。一方、排気通路46のその部分の圧力が蓄圧タンク58内の圧力以上の圧力に至るとステップS211で肯定されて、ステップS215へ進み、制御弁54が開かれることになる。これにより、排気絞り弁50よりも上流側の排気通路46の高められた圧力により、排気通路46のその部分の流体が回収通路57を介して蓄圧タンク58内へ流れることになり、その排気通路46の圧力が高まるにつれて、蓄圧タンク58内の圧力が高まることになる。すなわち、これにより蓄圧タンク58内の圧力が上昇して、蓄圧タンク58へエネルギとしての圧力が回収されることになる。
これは、本第一実施形態では、基本的には、上記ステップS201やステップS203で否定されるまで、継続して行われる。
なお、上記ステップS201で減速時でない、あるいはステップS203で燃料カット中でないとして、否定されると、上記の如く、共にステップS217へ進み、エネルギ回収を行わないときである通常の運転時のための制御、あるいはエネルギ回収を終了するための制御がなされる。まず、ステップS217で制御弁54が閉じられ、ステップS219で上記通常バルブタイミングが設定されて、これに基づいて吸排気バルブ24、26が作動される。また、ステップS221で、排気絞り弁50が開かれる。すなわち、排気絞り弁50が開かれるように、アクチュエータ52へ作動信号が出力されることになる。さらに、ステップS223で、スロットルバルブ44の開度調整用に通常開度マップが設定される。これによりアクセルペダル40の踏み込み量およびエンジン回転数に基づいて通常開度マップを検索することでスロットルバルブ44の開度が規定され、この開度になるようにスロットルアクチュエータ42へ作動信号が出力されることになる。
本第一実施形態では上記のように、エネルギの回収に際しては、回収バルブタイミングが設定されて、筒内により多くの空気を吸入することが行われる。これは、排気絞り弁50を閉じることやスロットルバルブ44の開度を回収開度にすることと共に行われるので、エネルギ回収を行う、燃料カットを伴う減速運転をしているときであっても、排気絞り弁50よりも上流側の排気通路46の圧力を迅速に高めて、効率よくエネルギ回収を行うことが可能になる。
以上、本発明を上記第一実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記制御フローチャートにおいて、ステップS205、S207、S209の順番は、相互に入れ替えられても良い。また、ステップS217、S219、S221、S223の順番は、相互に入れ替えられても良い。また、上記ステップS201の前に別のステップを設けて、そのステップで、蓄圧タンク58内の圧力を、蓄圧タンク58に許容される圧力であって、所定圧力である予め決められてROMに記憶されている上限値と比較するようにしても良い。これにより、蓄圧タンク58内の圧力が十分であるときに、さらにエネルギ回収を行うことを確実に防ぐことが可能になる。そして、蓄圧タンク58内の圧力が上限値以下であると判断されると、上記ステップS201へ進むのが好ましい。
また、上記第一実施形態では、本発明を筒内噴射型式のエンジンに適用して説明したが、これに限定されず、ポート噴射型式のエンジン、ディーゼルエンジン等の各種のエンジンに適用可能である。また、用いられる燃料は、ガソリンに限らず、アルコール燃料、液化天然ガス等でも良い。また、上記第一実施形態では、吸気絞り弁として、スロットルバルブ44を用いたが、それ以外であっても良い。例えば、吸気絞り弁は、スロットルバルブ44と並行に設けられ、それを迂回するように吸気通路32から分岐して、合流する通路を開閉するアイドル制御用のアイドル・スピード・コントロール・バルブ(ISCV)が備えられているエンジンでは、そのISCVであり得る。なお、これらの吸気絞り弁は、設けられていなくても良い。
また、排気絞り弁50は、上記ポペット式バルブに限定するものではなく、バタフライ式バルブ、シャッター式バルブ、軸を基準として弁体が回動して開閉するバルブ等、如何なるバルブであっても良い。そして、排気絞り弁50を作動させるアクチュエータ52は、空圧式のアクチュエータに限らず、油圧式あるいは電子制御式のアクチュエータであっても良い。
さらに、制御弁54は、排気通路46の圧力が規定圧以上になったときに自動的に開弁する逆止弁であっても良い。
さらに、上記第一実施形態では、蓄圧タンク58を一つとしたが、複数有するようにしても良い。さらには、複数の蓄圧タンクをエンジンルーム、車体床下等に分割配置しても良い。なお、蓄圧タンク58には、新気である空気のみならず、排気ガスが一部流入する可能性もあるので、蓄圧タンク58は排気管48と同様に耐腐食性に優れる材料から作製されると良い。なお、回収管56や放出管62も同様に耐腐食性に優れる材料から作製されると良い。
また、上記吸気バルブ24および排気バルブ26を電磁駆動弁とする動弁機構28を用いたが、それ以外の動弁機構、例えばカムやカムシャフトを有する吸排気バルブ24、26の動弁機構を排除するものではない。バルブタイミングやオーバーラップ量を変えるためには、吸気バルブ24や排気バルブ26の少なくともいずれかの作用角の位相を可変にする機構であればよい。そのようなものとしては、可変バルブタイミング機構や、可変バルブタイミング−リフト機構がある。そして、ECU64によって制御される油圧等により、吸気バルブ24や排気バルブ26の作用角の位相が可変とされるのが好ましい。例えば、カムを複数有していて、そのカムを切り換えることで、吸気バルブ24や排気バルブ26の作用角の位相を連続的に変えるものがある。他には、タイミングチェーンにより回動されるカムシャフトに可変タイミングコントローラーを設けて、そのハウジング内の進角室などの油圧を調整することで、吸気バルブ24や排気バルブ26の作用角の位相を連続的に変えるものがある。
また、燃料カットをしているときに、エンジン10に効率よくエンジンブレーキの効果が及ぼされるべく、燃料カット中であるが、エネルギ回収が不可能、あるいは不要のときに、専用のバルブタイミングを設定することとしても良い。
なお、蓄圧タンク58内に回収されたエネルギとしての圧力は、ECU64からの作動信号により制御弁60が開弁されることによって利用される。その用途としては、図示しないが、例えばターボチャージャの初期駆動がある。タービンの手前に蓄圧タンク58内の圧縮空気が噴射されることで、ターボラグが改善されることになる。
ところで、上記第一実施形態では、エネルギ回収に際して回収バルブタイミングを設定し、エンジン回転数が低速回転のとき慣性過給効果を最大限に得られるように吸気バルブ24を遅開きにするなどし、それが高速回転のときある程度のオーバーラップ量を実現することにより吸入空気量を多くした。しかしながら、本発明では、このような回収バルブタイミングに限定されるものではない。以下に、その他の回収バルブタイミングなどの一例を図に基づいて説明する。
図4に、バルブオーバーラップを零にした場合の回収バルブタイミングの一例を示す。上記第一実施形態では、エンジン回転が高速回転のときにオーバーラップを用いて、吸入空気量を多くするようにしたが、排気通路46の圧力がある程度以上にまで高くなると、オーバーラップによる吸入空気量増大は有効でなくなる場合がある。例えば、排気通路46の圧力がそのような程度にまで高い状態で、吸排気バルブ24、26を共に開けた状態、すなわちオーバーラップが生じるようにすると、排気通路46の高圧により排気通路46側から筒内へ流体が押し戻されて、逆流が生じることになり、結果として排気通路46の圧力の低下がもたらされる場合がある。それ故、この場合には、図4(a)に示すように、吸気バルブの開弁時期を遅らせてバルブオーバーラップは生じないようにして、一旦、排気通路46に至った流体の逆流を防止することが有効である。なお、エンジン回転が、低速回転である場合にも、このように、オーバーラップが生じないようにするのは有効であり、エネルギ回収において、オーバーラップを零、あるいは負にすることで、排気通路46から吸気通路32側への流体の逆流が防止される。これらの結果として排気通路46の圧力上昇が促進されて、排気絞り弁50よりも上流側の圧力をより効率よく迅速に高めることが可能になる。なお、図4(a)に示す回収バルブタイミングを実現するには、図4(b)に模式的に示すように、吸気バルブ24の開弁期間全体を通常時よりも回収時には遅らせるのが好ましい。
上記第一実施形態では、吸気バルブ24の開弁時期を遅らせるなどして、慣性過給効果により吸入空気量を増大させることとした。とはいえ、慣性過給効果にとらわれないならば、一旦、筒内に至った空気が筒内に閉じ込められてこそ、吸入空気量の増大が図れる。そこで、より効果的なタイミングで、吸気バルブ24が閉じられるのが望ましい。そのためには、エネルギ回収に際して、吸気バルブ24の閉弁時期を早くすることが有効であり、下死点付近で吸気バルブ24が閉じられると良い。具体的には、ピストン70が上昇する前に、換言すると圧縮行程に至る前に吸気バルブ24が閉じられるのが好ましい。これにより、ピストン70により、筒内の空気が押されて筒内から吸気通路32へ至るのを防止することが可能になる。このような回収バルブタイミングを実現するためには、図5に模式的に示されているように、吸排気バルブ24、26の動きを制御すると良い。図5において、細線で表したのが吸排気バルブ24、26の通常バルブタイミングの一例であり、太線で表したのが吸気バルブ24における通常バルブタイミングとは異なる回収バルブタイミングの一例である。図5(a)、(b)共に、吸気バルブ24の開弁に伴うリフト量の軌跡は、略台形状であり、エネルギ回収に際して吸気バルブ24の閉弁時期のみを早めることを表している。なお、図5(a)は、吸排気バルブ24、26共に、上記第一実施形態の如く、電磁駆動弁である場合に有効な一例であり、図5(b)は、少なくとも吸気バルブ24が同様に電磁駆動弁である場合の有効な一例である。図5(a)、(b)に示したように、吸気バルブ24の閉弁時期のみを早めることで、吸排気バルブ24、26のオーバーラップ量の増加を防ぐことも可能になるが、上述の如く、オーバーラップが生じないようにするとなお好ましい。
ところで、吸気バルブ24の閉弁時期を早めることは、図5にて示した以外に、リフト量を変えることでも実現可能である。図6に、吸気バルブ24のリフト量を小さくすることで吸気バルブ24の閉弁時期を早める回収バルブタイミングの一例を模式的に示している。図6において、細線で表したのが吸排気バルブ24、26の通常バルブタイミングの一例であり、太線で表したのが吸気バルブ24における通常バルブタイミングとは異なる回収バルブタイミングの一例である。図6(a)には、吸気バルブ24のリフト量を小さくすることで、吸気バルブ24の遅開きならびに早閉じを実現することを表している。このように吸気バルブ24の小リフト化を図る回収バルブタイミングとすることで、吸気バルブ24の遅開きもなされて、バルブオーバーラップの低減を図ることも可能になる。また、図6(b)、(c)には、吸気バルブ24のリフト量を小さくするのみならず、吸気バルブの開弁期間を早めたバルブタイミングの一例が模式的に表されている。これら図6(a)から(c)に示した回収バルブタイミングは、上記第一実施形態の如く、少なくとも吸気バルブ24が電磁駆動弁である場合に有効であり、図6(b)に示した回収バルブタイミングは、吸排気バルブ24、26共に電磁駆動弁である場合に有効である。なお、以上のように吸気バルブ24を早閉じにすべく、リフト量を小さくしても、主として低負荷運転時であれば、十分な吸入空気量を実現できる。したがって、排気絞り弁50よりも上流側の排気通路46の圧力上昇を促進することが可能になる。
また、図7には、吸気バルブ24および排気バルブ26のリフト量を共に大きくして、吸入空気量を多くする回収バルブタイミングが模式的に示されている。なお、図7において、細線で表したバルブタイミングは通常バルブタイミングであり、太線で表したのが通常バルブタイミングとは異なる回収バルブタイミングである。このバルブタイミングでは、吸気バルブ24および排気バルブ26のリフト量を共に大きくしつつ、排気バルブ26の開弁期間は進められ、且つ吸気バルブ24の開弁期間は遅らされるので、オーバーラップ量は変わらず、大きくなることはない。このようにすることで、排気絞り弁50よりも上流側の排気通路46の圧力上昇を促進することが可能である。なお、上述の如く、オーバーラップは生じないのが好ましい。ただし、図7に示した回収バルブタイミングは、リフト量とバルブタイミングとの両方を可変させるので、吸排気バルブ24、26共に電磁駆動弁である場合に有効である。
次に、本発明の第二実施形態について説明する。本発明の第二実施形態では、上記第一実施形態やその回収バルブタイミングの変形例とは異なり、エンジンの幾何学的圧縮比そのものを代えて、吸気通路46の圧力上昇を促進することにしている。すなわち、本第二実施形態では、圧力上昇促進手段として、エンジンの幾何学的圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構を備え、エネルギ回収をしていないときの幾何学的圧縮比よりも、エネルギ回収を行うとき幾何学的圧縮比を高くすることにしている。これを以下に図8から図10に基づいて説明するが、上記第一実施形態のエンジンシステムの構成要素と同じものに関しては同一の符号を用いて説明を省略する。
図8は、第二実施形態のエンジンシステムの概念図であり、図9は、図8のエンジンシステムにおいて、圧縮比(幾何学的圧縮比)を変更可能とするエンジン(以下、圧縮比可変エンジンと称する。)110の機構の構成を示す図であり、図10は、圧縮比が変更される推移を概略的に示す図である。可変圧縮比エンジン110は、気筒を有するシリンダブロック112を、ピストン70が連結されたクランクケース114に対して気筒の軸方向に移動させることによって圧縮比を変更するものである。なお、圧縮比可変エンジン110の圧縮比を可変とする機構は、本出願人が出願人である特開2005−69179号公報にて開示されていて、この圧縮比可変エンジン110の概略を述べると、シリンダブロックの一部とクランクケースの一部との嵌合部に形成され、該嵌合部において該シリンダブロックと該クランクケースとの間に気筒の軸線方向に沿った隙間を設けることにより、該シリンダブロックと該クランクケースとの相対移動を該軸線方向に導くガイド部と、このガイド部にしたがって、前記シリンダブロックと前記クランクケースとを相対移動させてエンジン(内燃機関)の圧縮比を変更する圧縮比制御手段と、を有するエンジンである。
図9に示されるように、シリンダブロック112の両側下部に複数の隆起部116が形成されており、この各隆起部116にカム収納孔118が形成されている。カム収納孔118は、円形をしており、気筒の軸方向に対して直角に、かつ複数の気筒の配列方向に平行になるようにそれぞれ形成されている。片側の複数のカム収納孔118はすべて同一軸線上に位置している。そして、シリンダブロック112の両側のカム収納孔118の一対の軸線は平行である。
クランクケース114には、上述したカム収納孔118が形成された複数の隆起部116の間に位置するように、立壁部120が形成されている。各立壁部120のクランクケース114外側に向けられた表面には、半円形の凹部が形成されている。また、各立壁部120には、ボルト122によって取り付けられるキャップ124が用意されており、キャップ124も半円形の凹部を有している。また、各立壁部120にキャップ124を取り付けると、円形の軸受収納孔126が形成される。軸受収納孔126の形状は、上述したカム収納孔118と同一である。
複数の軸受収納孔126は、カム収納孔118と同様に、シリンダブロック112をクランクケース114に取り付けたときに気筒の軸方向に対して直角に、且つ、複数の気筒の配列方向に平行になるようにそれぞれ形成されている。これらの複数の軸受収納孔126も、シリンダブロック112の両側に形成されることとなり、片側の複数の軸受収納孔126はすべて同一軸線上に位置している。そして、シリンダブロック112の両側の軸受収納孔126の一対の軸線は平行である。また、両側のカム収納孔118の間の距離と、両側の軸受収納孔126との間の距離は同一である。
交互に配置される二列のカム収納孔118と軸受収納孔126には、それぞれ制御軸128が挿通される。制御軸128は、図9に示されるように、軸部128aと、軸部128aの中心軸に対して偏心された状態で軸部128aに固定された正円形のカムプロフィールを有するカム部128bと、カム部128bと同一外形を有し軸部128aに対して回転可能に取り付けられた可動軸受部128cとが交互に配置されている。この可動軸受部128cには、軸収納孔128eが設けられており、その中を制御軸128の軸部128aが挿通される構成をとることにより、可動軸受部128cは軸部128aに対して回動可能となっている。そして、これら一対の制御軸128は鏡像の関係を有している。また、制御軸128の端部には、後述するウォームホイール130の取り付け部128dが形成されている。軸部128aの中心軸と取り付け部128dの中心とは偏心しており、カム部128bの中心と取り付け部128dの中心とは一致している。
可動軸受部128cも、軸部128aに対して偏心されておりその偏心量はカム部128bと同一である。また、各制御軸128において、複数のカム部128bの偏心方向は同一である。また、可動軸受部128cの外形は、カム部128bと同一正円であるので、可動軸受部128cを回転させることで、複数のカム部128bの外表面と複数の可動軸受部128cの外側面とを一致させることができる。
各制御軸128の軸部128aの一端にはウォームホイール130が取り付けられている。一対の制御軸128の端部に固定された一対のウォームホイール130には、それぞれをウォームギア132a、132bがかみ合っている。ウォームギア132a、132bはモータ134の一本の出力軸にとりつけられている。ウォームギア132a、132bは、互いに逆方向に回転する螺旋溝を有している。このため、モータ134を回転させると、一対の制御軸128は、ウォームホイール130を介して逆方向に回転する。モータ134は、シリンダブロック112に固定されており、シリンダブロック112と一体的に移動する。
次に、上述した構成の可変圧縮比エンジン110において圧縮比を制御する方法について、図10に基づいて説明する。図10(a)から図10(c)にシリンダブロック112と、クランクケース114と、これら両者の間に構築された制御軸128との関係を示した断面図を示す。図10(a)から図10(c)において、軸部128aの中心軸をa、カム部128bの中心をb、可動軸受部128cの中心をcとして示す。図10(a)は、軸部128aの延長線上から見て全てのカム部128bおよび可動軸受部128cの外周が一致した状態である。このとき、ここでは一対の軸部128aは、カム収納孔118および軸受収納孔126の中で外側に位置している。
図10(a)の状態から、モータ134を駆動して軸部128aを矢印方向に回転させると、図10(b)の状態となる。このとき、軸部128aに対して、カム部128bと可動軸受部128cの偏心方向にずれが生じるので、クランクケース114に対してシリンダブロック112を上死点側にスライドさせることができる。そして、そのスライド量は図10(c)のような状態となるまで制御軸128を回転させたときが最大となり、カム部128bや可動軸受部128cの偏心量の2倍となる。カム部129bおよび可動軸受部128cは、それぞれカム収納孔118および軸受収納孔126の内部で回転し、それぞれカム収納孔118および軸受収納孔126の内部で軸部128aの位置が移動するのを許容している。
上述したような機構を用いることによって、シリンダブロック112をクランクケース114に対して、気筒の軸線方向に相対移動させることが可能となり、その結果、可変圧縮比エンジン110の燃焼室14の容積が変更され、以て圧縮比を可変制御することができる。
図8を参照して、可変圧縮比エンジン110は、クランク軸76に連結され、気筒内を往復運動するピストン70を備える。なお、図8において、記載を簡便とするため、図9に示した制御軸128やウォームホイール130の記載はウォームギア132aが備えられている片側のみとし、残りのウォームギア132b側の制御軸128等の記載は省略されている。
本第二実施形態における可変圧縮比エンジン110は、モータ134の駆動により、シリンダブロック112がクランクケース114に対して、気筒の軸線方向に相対移動することで、圧縮比が変更される。ここで、シリンダブロック112のクランクケース114側の一端であるシリンダブロック側ガイド部112aと、クランクケース114のシリンダブロック側の一端であるクランクケース側ガイド部114aとが、隙間嵌め状態となっている。そのため、シリンダブロック112のクランクケース114に対する相対移動は、シリンダブロック側ガイド部112aとクランクケース側ガイド部114aによって拘束され、その結果、相対移動の方向は気筒の軸線方向となる。
このような構成の圧縮比可変エンジンを備えたエンジンシステムにおける、第二実施形態におけるエネルギ回収のための制御は、上記第一実施形態における制御とほぼ同じである。そこで、相違点のみを記して、他の制御に関する説明を省略する。本第二実施形態では、上記第一実施形態の制御フローチャート(図2参照)で回収バルブタイミングが設定(ステップS209)されて、次に通常バルブタイミングが設定(ステップS219)されるまで、回収バルブタイミングの設定および実行に代えて、圧縮比可変エンジン110の幾何学的圧縮比を高く変更することが相違する。これにより、エネルギ回収に際しては、排気通路46への流体の送出圧力が大きくなり、排気絞り弁50よりも上流側の排気通路46の圧力上昇を促進させることが可能になる。
上記第二実施形態のように、エネルギ回収に際して、その最初から終わりまで幾何学的圧縮比を高く変更することとしても良いが、例えばエネルギ回収を始めた当初は、より多くの流体を排気通路46に送出するように、図10(c)に示すように、燃焼室14の容積を増大させることにしても良い。これに対して、排気絞り弁50よりも上流側の排気通路46の圧力がある程度まで高くなってくると、流体を筒内から排気通路46に押し出すのにより多くの力が必要となるので、このときは、図10(a)に示すように幾何学的圧縮比を高く変更して、高い圧縮力で排気通路46に流体を押し流すこととすると良い。このように幾何学的圧縮比を切り替え制御する場合には、エネルギ回収をしていない通常の運転時において、幾何学的圧縮比を図10(b)のようにしておき、エネルギ回収に際しては、図10(a)、(c)のいずれかにその時々の要求に応じて、幾何学的圧縮比を変えるのが望ましい。
ところで、上記圧縮比可変エンジン110では、シリンダブロック112とクランクケース114との相対移動をその軸線方向に導くガイド部112a、114aにしたがって、シリンダブロック112とクランクケース114とを相対移動させて内燃機関の圧縮比を変更するようにしているが、ここにおける隙間が大きいとシリンダブロック112に振動が発生する虞があり、好ましくない。そこで、シリンダブロック112とクランクケース114との相対移動が円滑に行われることを確保しつつも、より安定的にシリンダブロック112を固定するべく、本第二実施形態では、ECU64を含む圧縮比制御手段によるエンジンの圧縮比の変更動作に基づいて、ガイド部112a、114aにおけるシリンダブロック112とクランクケース114との隙間距離、またはガイド部112a、114aにおけるシリンダブロック112とクランクケース114との間の作用力を制御する安定化手段を備えている。
具体的には、第二実施形態の安定化手段としては、隙間嵌め状態にあるシリンダブロック側ガイド部112aとクランクケース側ガイド部114aとの間の隙間(以下、「ガイド部隙間」と称する。)に、圧電素子から構成され、該圧電素子に印加される電圧によって、形状が変化する圧電変形部材136が設けられている。圧電変形部材136は、バッテリ138から電圧が印加されることによって、その形状がガイド部隙間における気筒の径方向に収縮するように変化する。
したがって、バッテリ138から電圧が印加されていないときは、圧電変形部材136はクランクケース側ガイド部114aとシリンダブロック側ガイド部112aの両側に接触し、その結果両ガイド部112a、114aに対して押圧力がかかり、クランクケース114に対してシリンダブロック112が固定されている。一方で、バッテリ138から電圧が印加されると、圧電変形部材136は収縮変形し、クランクケース側ガイド部114aにのみ接触し、クランクケース114に対してシリンダブロック112は気筒の軸線方向に自在に相対移動が可能となる。
なお、上記の如き安定化手段に、安定化手段は制限されない。例えば、前述した可変圧縮比エンジン110において、クランクケース114に固定され且つガイド部112a、114aにおけるシリンダブロック112とクランクケース114との隙間距離もしくはガイド部112a、114aのシリンダブロック112の一部に対して作用する押圧力を制御する油圧シリンダ、またはシリンダブロック112に固定され且つガイド部112a、114aにおけるシリンダブロック112とクランクケース114との隙間距離もしくはガイド部112a、114aのクランクケース114の一部に対して作用する押圧力を制御する油圧シリンダを、備えるようにしても良い。そして、安定化手段は、圧縮比制御手段によるエンジン110の圧縮比の変更動作に基づいて、油圧シリンダに供給する潤滑油の油圧を制御することで、ガイド部112a、114aにおけるシリンダブロック112とクランクケース114との隙間距離、またはガイド部112a、114aにおけるシリンダブロック112とクランクケース114との間の作用力を制御するのが望ましい。なお、油圧シリンダへの潤滑油の供給は、クランク軸76に連結され、エンジンの出力を動力源としてオイルパンに貯留されている潤滑油を圧送するポンプによって行われると良い。
あるいは、可変圧縮比エンジンにおいて、ガイド部112a、114aにおけるシリンダブロック112とクランクケース114との間の隙間に、弾性変形部材を設けるようにしても良い。これにより、シリンダブロック112とクランクケース114とが近接する方向に相対移動をするときに、ガイド部112a、114aにおけるシリンダブロック112とクランクケース114との間の隙間に設けられた弾性変形部材が、シリンダブロック112およびクランクケース114によって押しつぶされ、圧縮変形する。その結果、圧縮変形した弾性変形部材の弾性エネルギによって、シリンダブロック112およびクランクケース114に対して押圧力が発生し、シリンダブロック112とクランクケース114との連結力が増大することになる。
以上、本発明を上記第一および第二実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、第一実施形態およびその変形例で示したようにバルブタイミングやリフト量を変えつつ、第二実施形態およびその変形例で示したように幾何学的圧縮比をも変えることを本発明は含むものである。
以上のようにして、エネルギ回収に際して排気通路46の圧力が高圧にされると、これに対応して蓄圧タンク58内の圧力も高めることが可能になる。したがって、そのように蓄えられたエネルギの用途が拡大することになる。
なお、上記の如くして排気通路46の圧力が上昇すると、筒内から排気通路に流体を流すのにより大きな力が要るので、いわゆる排気ブレーキの利きがよくなる。したがって、ブレーキの使用頻度やブレーキにかかる負荷を低減することも可能になる。