JP2007137756A - 太陽電池用シリコン単結晶基板および太陽電池素子、並びにその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】単結晶を基板とする太陽電池素子において、変換効率をより高くすることのできる太陽電池用シリコン単結晶基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】(1)ゲルマニウムの含有量が0.1モル%以上、1.0モル%未満とし、さらに望ましくはゲルマニウムの含有量を0.1モル%以上、0.6モル%以下する太陽電池用シリコン単結晶基板である。この基板は、CZ法で引き上げられたシリコン単結晶から切り出して作製することができ、さらに、表面を研磨後、所定の処理を施工して電池素子を構成することができる。(2)CZ法によりシリコン単結晶を育成するに際し、ルツボ内でゲルマニウムを添加させたシリコン融液の表面に種結晶を接触させて馴染ませた後、回転させながら引き上がられてゲルマニウムを含有した単結晶から切り出す太陽電池用シリコン単結晶基板の製造方法である。
【選択図】図1
【解決手段】(1)ゲルマニウムの含有量が0.1モル%以上、1.0モル%未満とし、さらに望ましくはゲルマニウムの含有量を0.1モル%以上、0.6モル%以下する太陽電池用シリコン単結晶基板である。この基板は、CZ法で引き上げられたシリコン単結晶から切り出して作製することができ、さらに、表面を研磨後、所定の処理を施工して電池素子を構成することができる。(2)CZ法によりシリコン単結晶を育成するに際し、ルツボ内でゲルマニウムを添加させたシリコン融液の表面に種結晶を接触させて馴染ませた後、回転させながら引き上がられてゲルマニウムを含有した単結晶から切り出す太陽電池用シリコン単結晶基板の製造方法である。
【選択図】図1
Description
本発明は、ゲルマニウムを含有する太陽電池用シリコン単結晶基板および太陽電池素子に関し、さらに詳しくは、チョクラルスキー法(以下、「CZ法」という)により製造されたシリコン単結晶から得られた太陽電池用シリコン単結晶基板、およびそれを用いた太陽電池素子、並びにこれらの製造方法に関するものである。
太陽電池素子の基板材料として、大きく分けてアモルファスシリコン系、シリコン結晶系、化合物半導体系、および有機物系などがある。太陽電池の最も重要な特性である変換効率は、太陽電池に当たった光エネルギーのうち、電気エネルギーに変換されて取り出すことができたエネルギーの比率として示されるが、現状では、この変換効率が最大のものは化合物半導体系にて得られる。
ところが、高効率の化合物半導体系太陽電池を製造する場合には、その材料となる化合物半導体を安定して製造することが困難であり、太陽電池用基板の製造コストが高くなることから、化合物半導体系は限られた用途にしか適用されていない。
現状において、化合物半導体系には及ばないが安定して高い変換効率が得られる太陽電池用の基板材料として、シリコン結晶系が広く適用されており、年間出荷量の85%以上を占めている。この基板用のシリコン結晶には単結晶と多結晶とがあり、一般に単結晶を基板に用いた方が高い変換効率の太陽電池素子が得られる。
これらシリコン結晶系ではより高い変換効率を得るため、いずれも不純物の極めて少ない高純度のシリコンが用いられ、単結晶を適用する場合には、半導体集積回路の基板材料として利用されている、溶融シリコンから直接引き上げ育成するCZ法にて製造された単結晶が用いられる。一方、CZ法による単結晶の育成では製造コストが嵩むことから、より低コストで得られる鋳造法による多結晶も、変換効率はやや劣るが多く利用されている。
CZ法または鋳造法により得られたシリコン結晶は、300〜400μm程度の薄片(ウェーハ)に切断され、これを基板として、表面を研磨後、ドープ剤の拡散処理を施してpn接合面を形成させ、表裏面に電極を取り付け、さらに太陽光入射面に反射防止膜を施工して電池素子とされる。
半導体集積回路のシリコン結晶基板には、p型とn型とがありいずれも用いられるが、太陽電池素子の基板では、キャリア(マイノリティキャリア:光照射により生じた正孔または電子)のライフタイムが長いほど変換効率向上に好ましいことから、導伝型としてライフタイムの長いp型が用いられるのが一般である。
太陽電池素子はその変換効率向上のため、構造や形態などに様々な技術開発がなされてきたが、シリコン結晶系の基板材料に関連した従来技術として、基板のドープ剤にガリウム(Ga)を用いた技術が提案されている。例えば、特許文献1ではGa添加シリコン単結晶の製造方法を開示しており、CZ法にて基板用のシリコン単結晶を育成する際に、ドープ剤としてGaを添加し、抵抗率を0.1〜5Ωcmとしている。
通常、太陽電池用のシリコン結晶基板では、導電性を持たせるためのドープ剤としてボロン(B)が用いられるが、基板の抵抗率が高い場合に、キャリアのライフタイムが低下することがある。特許文献1のシリコン単結晶では、ドープ剤としてボロンに替えてガリウムを用いることにより、酸素が存在していても、キャリアのライフタイムが短くなることがなく抵抗率を下げることができ、高変換効率が得られるとしている。
また、多結晶を基板に用いる場合、低コストであることに着目して、特にその変換効率を高める改良が数多くなされている。それらの中で、特許文献2では、同じIV族のゲルマニウムを50モル%添加し、溶融した融液を特定速度で冷却して、全体のマクロ的な組成は均一であるが、結晶内のミクロ的な部分のシリコンの濃度分布が5〜80モル%に分散した多結晶とすることにより、この基板を用いた太陽電池の変換効率を、シリコンのみの多結晶基板より大きく向上させることができるとしている。
さらに、非特許文献1では、多結晶のシリコンにゲルマニウムを少量添加した基板を用いて太陽電池を試作し調査した結果、変換効率の向上が見出され、約3モル%で最大に達することが報告されている。このような多結晶基板へのゲルマニウム添加による変換効率の向上の理由は必ずしもあきらかではないが、素子の太陽光の吸収係数を向上させることが推測される。
前述の通り、実用性に優れ高い変換効率を得ている太陽電池素子として、シリコン単結晶の基板が用いられている。しかし、従来技術では、太陽電池用として基板材料の性能を向上させるために、ドープ剤にガリウムを用いた単結晶の提案が僅かにあるが(例えば、特許文献1)、太陽電池用に採用される単結晶基板は、半導体集積回路用として製造されているシリコン単結晶をそのまま利用する場合が多い。
本発明は、単結晶を基板とする太陽電池素子において、特に太陽電池用として基板材料そのものの性能を向上させることにより、変換効率をより高くすることのできるシリコン単結晶基板、およびその製造方法を提供することを目的としている。
太陽電池素子に用いられるシリコン結晶の基板は単結晶と多結晶とが用いられ、一般に、単結晶を基板に用いる場合には変換効率は高くなり、多結晶を基板に用いる場合には変換効率は劣るが低コストになる。しかしながら、単結晶を基板に用いることにより、相対的に太陽電池素子のコストは高くなっても、より高い変換効率が得られれば、発電コストは低減されることになる。このような視点から、シリコン単結晶基板に用いた太陽電池素子の変換効率向上を目的とし、単結晶基板材料の検討をおこなった。
本発明者らは、シリコン多結晶を基板に用いた太陽電池素子において、ゲルマニウムを含有させた基板を用いると素子の変換効率が向上することを見出した(前記特許文献2および非特許文献1)。この場合に、ゲルマニウムはシリコン中に全率固溶するが、シリコン結晶内でミクロ的には不均一に分布しており、これが太陽光の吸収係数を増大させていると考えられた。
本発明者らは、シリコン多結晶を基板に用いた太陽電池素子において、ゲルマニウムを含有させた基板を用いると素子の変換効率が向上することを見出した(前記特許文献2および非特許文献1)。この場合に、ゲルマニウムはシリコン中に全率固溶するが、シリコン結晶内でミクロ的には不均一に分布しており、これが太陽光の吸収係数を増大させていると考えられた。
シリコン単結晶では、このようなミクロ的な不均一分布は生じないと予想されるので、ゲルマニウムの添加は効果がないと思われた。ところが、ゲルマニウムを添加したシリコン単結晶をCZ法にて育成し、基板として太陽電池素子に用いてみると、従来の単結晶基板に比して変換効率が大幅に増大することが見出されたのである。
そこで、ゲルマニウムの添加量やCZ法による単結晶の育成条件等をさらに検討し、その効果の限界を明かにして本発明を完成させた。したがって、本発明は、下記(1)の太陽電池用シリコン単結晶基板、および(2)の製造方法を要旨としている。
(1)ゲルマニウムの含有量が0.1モル%以上、1.0モル%未満であることを特徴とする太陽電池用シリコン単結晶基板である。さらに望ましくは、ゲルマニウムの含有量が0.1モル%以上、0.6モル%以下であることを特徴とする太陽電池用シリコン単結晶基板である。
(1)ゲルマニウムの含有量が0.1モル%以上、1.0モル%未満であることを特徴とする太陽電池用シリコン単結晶基板である。さらに望ましくは、ゲルマニウムの含有量が0.1モル%以上、0.6モル%以下であることを特徴とする太陽電池用シリコン単結晶基板である。
本発明の太陽電池用シリコン単結晶基板は、CZ法で引き上げられたシリコン単結晶から切り出して作製することができる。
さらに、本発明の太陽電池用シリコン単結晶基板は、表面を研磨後、pn接合面を形成させ表裏面に電極を取り付け、さらに太陽光入射面に反射防止膜を施工して電池素子を構成することができる。
(2)CZ法によりシリコン単結晶を育成するに際し、ルツボ内でゲルマニウムを添加させたシリコン融液の表面に種結晶を接触させて馴染ませた後、回転させながら引き上げられてゲルマニウムを含有した単結晶から切り出すことを特徴とする太陽電池用シリコン単結晶基板の製造方法である。
(2)CZ法によりシリコン単結晶を育成するに際し、ルツボ内でゲルマニウムを添加させたシリコン融液の表面に種結晶を接触させて馴染ませた後、回転させながら引き上げられてゲルマニウムを含有した単結晶から切り出すことを特徴とする太陽電池用シリコン単結晶基板の製造方法である。
本発明の太陽電池用シリコン単結晶基板の製造方法では、前記単結晶の育成長さに応じて、ゲルマニウムの含有量を0.1モル%以上、1.0モル%未満の範囲で調整することが望ましい。さらに望ましくは、ゲルマニウムの含有量を0.1モル%以上、0.6モル%以下の範囲で調整することである。
本発明の太陽電池用シリコン単結晶基板によれば、ゲルマニウムの含有量を0.1モル%以上、1.0モル%未満の範囲とし、さらに望ましくはゲルマニウムの含有量を0.1モル%以上、0.6モル%以下の範囲で調整することにより、従来のシリコン単結晶基板を用いた場合に比べ、変換効率を大きく向上させることができ、それにより太陽電池の発電コストを低減できる。
本発明の太陽電池用シリコン単結晶基板は、ゲルマニウムの含有量が0.1モル%以上、1.0モル%未満であることを特徴としている。さらに、本発明の太陽電池用シリコン単結晶基板は、ゲルマニウムの含有量が0.1モル%以上、0.6モル%以下であることを望ましい特徴としている。したがって、本発明の太陽電池用シリコン単結晶基板は、通常の単結晶基板と同様、導電性を持たせるためのドープ剤を含むが、ゲルマニウムを含有させたことが、従来の単結晶基板と大きく異なることである。
本発明の太陽電池用シリコン単結晶基板のゲルマニウムの含有量の下限を限定するのは、含有量が0.1モル%に達しない場合には、変換効率向上の効果が十分でないことによる。
一方、本発明の太陽電池用シリコン単結晶基板がゲルマニウムを1.0モル%以上含有すると、引き上げ中に多数の転位や多結晶化が生じて健全な単結晶の育成が困難となり、その結晶から採取した基板を用いて太陽電池素子を作製しても、変換効率の高い素子が得られないことから、ゲルマニウムの含有量を1.0モル%未満とする。
さらに望ましくは、後述する図1〜図4に示すように、単結晶基板の抵抗率の広い範囲に亘って、安定した変換効率を確保するにはゲルマニウム含有量の上限を0.6モル%にすることができる。
本発明の太陽電池用シリコン単結晶基板がゲルマニウムを含有することにより、変換効率が向上する理由は必ずしも明かではないが、同一条件で作製したゲルマニウムを添加しないシリコン単結晶基板と比較すると、キャリアのライフタイムが長くなっており、それによって変換効率が向上したものと想定される。
本発明の太陽電池用シリコン単結晶基板では、p型半導体とするために、ドープ剤として通常利用されるボロンを用いてもよいが、ガリウムを採用することができる。ドープ剤にガリウムを用いると、長時間に亘る使用時や酸素の存在による変換効率の低下を軽減できることが予測される。
また、本発明の太陽電池用シリコン単結晶基板では、変換効率の低下を防止するため、抵抗率を0.5〜10Ωcmにするのが望ましい。抵抗率が0.5Ωcm未満ではキャリアのライフタイムが短くなり、一方、10Ωcmを超えるようになると、内部抵抗が大きくなり過ぎ、フィルファクタが小さくなるからである。望ましい範囲は1〜5Ωcmであり、さらに望ましくは1〜2Ωcmである。
ゲルマニウムを含有するシリコン単結晶基板の製造は、一般に半導体集積回路のシリコン単結晶基板の製造に用いられるCZ法を適用して単結晶を育成すればよく、それによって得られた単結晶を切り出して基板とする。
本発明で適用するCZ法においては、シリコン多結晶、ゲルマニウムまたはゲルマニウム含有シリコン母合金、およびドープ剤等の原料を所要量ルツボ内にて溶解して融液とし、得られた融液の表面に種結晶を接触させて馴染ませた後、回転させながら引き上げてゲルマニウムを含有する単結晶を育成する。
シリコンに対するゲルマニウムの偏析係数は0.43であり、管理目標とする単結晶のゲルマニウム含有量から融液の濃度を調整する。なお、このような偏析係数であるため、単結晶引き上げによる育成長さに応じて、融液中のゲルマニウム濃度が上昇していくが、単結晶のゲルマニウム含有量が1%に近づくと多結晶化し易いので、残存融液の濃度を配慮して、初期の融液量、ゲルマニウム濃度、および育成単結晶長さ等を選定する必要がある。
(実施例1)
実施例1では、CZ法にて、口径350mmの石英るつぼに合計25kgの多結晶シリコンの溶解原料、ゲルマニウム、ドープ剤等を装入し、加熱溶解後融液から直径106mm(4インチ)の単結晶の引き上げ育成をおこなった。育成条件は、引き上げ速度1.2mm/min、結晶回転数25rpm、るつぼ回転数10rpm、および炉内アルゴン圧2667Pa(20Torr)とした。また、引き上げ過程での融液表面から100mmにおける単結晶の温度勾配が平均で2.5℃/mmとなるホットゾーンを用いた。
実施例1では、CZ法にて、口径350mmの石英るつぼに合計25kgの多結晶シリコンの溶解原料、ゲルマニウム、ドープ剤等を装入し、加熱溶解後融液から直径106mm(4インチ)の単結晶の引き上げ育成をおこなった。育成条件は、引き上げ速度1.2mm/min、結晶回転数25rpm、るつぼ回転数10rpm、および炉内アルゴン圧2667Pa(20Torr)とした。また、引き上げ過程での融液表面から100mmにおける単結晶の温度勾配が平均で2.5℃/mmとなるホットゾーンを用いた。
単結晶の抵抗率は1〜2Ωcmとなるように、いずれもp型のドープ剤であるボロン(B)またはガリウム(Ga)を添加して、比較用のゲルマニウムを含有しない単結晶と、ゲルマニウムを含有させた単結晶を作製した。
ゲルマニウムを含有させた単結晶の場合、当初の融液の目標濃度を1モル%として育成をおこなったところ、単結晶の胴頂部ではゲルマニウムの濃度は0.43モル%であったが、200mm育成した位置で0.49モル%になり、370mm育成した位置では、0.55モル%になっていた。
そして、単結晶の育成長さが500mmを超える辺りから多結晶化がはじまることから、それ以上の引き上げはおこなわなかった。育成長さが500mmを超える辺りから多結晶化が生じるのは、引き上げによる融液の減少に伴ってゲルマニウム濃度が高くなり、育成長さが長くなると、単結晶のゲルマニウム含有量が1モル%以上になるためと思われる。
得られた単結晶をスライスして厚さ400μmのウェーハとし、これから基板とする1辺15mmの正方形試片を切り出し、表面を研磨して、化学研磨後リンドープによりn層を形成させ、反射防止膜、電極の焼き付け等をおこなって太陽電池素子を作製した。
太陽電池素子の性能は、JASCO社の試験装置(YQ−250BX)を用い、AM1.5のソーラーシミュレータ(100mW/cm2)を光源として測定した。素子の特性の測定結果を表1に示すが、これらの値はいずれもウェーハの中心部および端部より採取した試片による素子の測定値の平均値である。また、p型のドープ剤としてボロン(B)を645g投入した測定値である。
表1の試験No.1は、ゲルマニウムを含まない単結晶から作製した基板による素子の結果である。試験No.2は融液のゲルマニウム濃度を1モル%として育成した単結晶の頂部から採取した基板による素子、試験No.3は、同じ単結晶の胴頂部から190mm下の評価位置から採取した基板による素子、さらに試験No.4は、同じ単結晶の胴頂部から370mm下の評価位置から採取した基板による素子の測定結果である。
これらの結果から明らかなように、試験No.1のゲルマニウムを含有しない通常のシリコン単結晶による素子に比較し、単結晶基板にゲルマニウムを含有させた試験No.2〜4の素子では、変換効率が大きく向上している。
表1に示す測定に加え、ドープ剤にガリウムを用いた単結晶を用いて太陽電池素子を作製し、同じ条件で素子特性の測定することにより、p型ドープ剤としてガリウムを用いれば、より一層変換効率が安定化することを確認した。
(実施例2)
実施例2では、CZ法にて、口径350mmの石英るつぼに25kgの多結晶シリコンの溶解原料、およびそれに加えるゲルマニウムの添加量を変化させて装入し、加熱溶解後の融液から直径106mm(4インチ)の単結晶の引上げ育成をおこなった。育成条件は、実施例1の場合と同様として、ゲルマニウムの添加量が異なる結晶A〜Gの7種の単結晶の育成を行った。
(実施例2)
実施例2では、CZ法にて、口径350mmの石英るつぼに25kgの多結晶シリコンの溶解原料、およびそれに加えるゲルマニウムの添加量を変化させて装入し、加熱溶解後の融液から直径106mm(4インチ)の単結晶の引上げ育成をおこなった。育成条件は、実施例1の場合と同様として、ゲルマニウムの添加量が異なる結晶A〜Gの7種の単結晶の育成を行った。
結晶A〜Gにおけるゲルマニウムの添加量は表2に示すように0〜645gとし、加熱溶解後の融液から引上げ育成された単結晶インゴットの長さはいずれも1200mmとした。このとき、結晶F、Gの育成において、25kgの多結晶シリコン溶解原料に対し645gのゲルマニウムの添加し加熱溶解後に、初めに結晶Fを引き上げて炉外に取り出し、次いで炉内を安定させて結晶Gを引き上げた。単結晶インゴットの抵抗率は、p型のドープ剤であるボロン(B)を添加し1〜3Ωcmとなるように調整した。
得られた結晶A〜Gは、所定の評価位置においてスライスし厚さ400μmのウェーハとした。評価位置は育成された単結晶インゴットの胴頂部からの距離で管理し、評価位置におけるゲルマニウムの含有量、抵抗率およびライフタイムの測定を行った。ライフタイムの測定には、得られたウェーハを研磨した後、フッ硝酸で表面ダメージ層をエッチングし、バッファードフッ酸(BHF)で表面酸化膜を除去して、μ−PCD法を用いた。
さらに、スライスされたウェーハから1辺15mmの正方形試片を切り出し、表面を研磨して、化学研磨後リンドープによりn層を形成させ、反射防止膜、電極の焼き付け等をおこなって太陽電池素子を作製した。太陽電池素子の性能は、実施例1の場合と同様の条件で測定した。
評価位置での結晶特性および太陽電池素子の特性の測定結果を表3および表4に示した。これらに示す値はいずれもウェーハの中心部および端部より採取した試片による測定値を平均した値である。
図1は、全抵抗値の範囲におけるゲルマニウム含有量と太陽電池素子の変換効率との関係を示す図である。図1に示す結果から明らかなように、ゲルマニウムを含有しないシリコン単結晶による素子に比較し、単結晶基板にゲルマニウムを0.1モル%以上、1.0モル%未満の範囲で含有させた素子では、変換効率が向上している。さらに、ゲルマニウムの含有量を0.1モル%以上、0.6モル%以下とした素子では、一層、安定して変換効率が向上することが分かる。
図2は、抵抗値が1.0Ωcmである場合のゲルマニウム含有量と太陽電池素子の変換効率との関係を示す図である。図3は、抵抗値が1.5Ωcmである場合のゲルマニウム含有量と太陽電池素子の変換効率との関係を示す図である。さらに、図4は、抵抗値が2.0〜2.7Ωcmである場合のゲルマニウム含有量と太陽電池素子の変換効率との関係を示す図である。
図2〜図4に示すように、ゲルマニウムの含有量を0.1モル%以上、0.6モル%以下とした素子によれば、いずれの抵抗値の範囲においても、ゲルマニウムを含有しないシリコン単結晶による素子に比べ、変換効率が向上している。しかも、前記表3および表4に示す測定結果から、安定した素子特性を確保できることが分かる。
したがって、本発明のゲルマニウム含有基板を用いて、従来より開発されてきたシリコン単結晶基板による変換効率の向上を図る技術を適用すれば、より一層変換効率の高い太陽電池が得られることが期待される。
本発明の太陽電池用シリコン単結晶基板によれば、ゲルマニウムの含有量を0.1モル%以上、1.0モル%未満の範囲とし、さらに望ましくはゲルマニウムの含有量を0.1モル%以上、0.6モル%以下の範囲で調整することにより、従来のシリコン単結晶基板を用いた場合に比べ、変換効率を大きく向上させることができ、それにより太陽電池の発電コストを低減できるので、今後ますます高効率化を要望される太陽電池用基板として、広く利用することができる。
Claims (7)
- ゲルマニウムの含有量が0.1モル%以上、1.0モル%未満であることを特徴とする太陽電池用シリコン単結晶基板。
- ゲルマニウムの含有量が0.1モル%以上、0.6モル%以下であることを特徴とする太陽電池用シリコン単結晶基板。
- チョクラルスキー法で引き上げられたシリコン単結晶から切り出されたことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池用シリコン単結晶基板。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のシリコン単結晶基板を用いたことを特徴とする太陽電池素子。
- チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を育成するに際し、ルツボ内でゲルマニウムを添加させたシリコン融液の表面に種結晶を接触させて馴染ませた後、回転させながら引き上げられてゲルマニウムを含有した単結晶から切り出すことを特徴とする太陽電池用シリコン単結晶基板の製造方法。
- 前記単結晶の育成長さに応じて、ゲルマニウムの含有量を0.1モル%以上、1.0モル%未満の範囲で調整することを特徴とする請求項5に記載の太陽電池用シリコン単結晶基板の製造方法。
- 前記単結晶の育成長さに応じて、ゲルマニウムの含有量を0.1モル%以上、0.6モル%以下の範囲で調整することを特徴とする請求項5に記載の太陽電池用シリコン単結晶基板の製造方法。
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