JP2007135602A - L−グルタミン酸の製造法 - Google Patents

L−グルタミン酸の製造法 Download PDF

Info

Publication number
JP2007135602A
JP2007135602A JP2007037777A JP2007037777A JP2007135602A JP 2007135602 A JP2007135602 A JP 2007135602A JP 2007037777 A JP2007037777 A JP 2007037777A JP 2007037777 A JP2007037777 A JP 2007037777A JP 2007135602 A JP2007135602 A JP 2007135602A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
amino acid
dna
glutamic acid
protein
dtsr
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2007037777A
Other languages
English (en)
Inventor
Eiichiro Kimura
英一郎 木村
Chizu Yakoshi
知津 矢越
Jun Nakamura
純 中村
Takeshi Osumi
剛 大住
Wataru Nakamatsu
亘 中松
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ajinomoto Co Inc
Original Assignee
Ajinomoto Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ajinomoto Co Inc filed Critical Ajinomoto Co Inc
Priority to JP2007037777A priority Critical patent/JP2007135602A/ja
Publication of JP2007135602A publication Critical patent/JP2007135602A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】発酵法によるL−グルタミン酸の優れた製造法を提供する。
【解決手段】界面活性剤に対する耐性を付与するタンパク質(DTSRタンパク質)の温度感受性変異体をコードするDNAを保持し、野生型DTSRタンパク質を保持せず、L−グルタミン酸生産能を有するコリネ型細菌を、液体培地で培養し、培地中にL−グルタミン酸を生成蓄積させ、L−グルタミン酸を該培地から採取することを含む、L−グルタミン酸の製造方法であって、前記コリネ型細菌の生育至適温度で培養を開始し、培養の途中で培養温度を33〜40℃に上昇させることを特徴とする前記製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、温度感受性dtsR遺伝子に関し、詳しくは、コリネ型細菌の界面活性剤に対する耐性に関与するタンパク質であって、温度感受性変異を有するタンパク質をコードする遺伝子に関する。また、この遺伝子を保持し、L−リジン及びL−グルタミン酸の生産能を有するコリネ型細菌及びこのコリネ型細菌を用いる発酵法によるL−リジン及びL−グルタミン酸の製造方法に関する。
従来、L−リジン及びL−グルタミン酸は、これらのアミノ酸生産能を有するブレビバクテリウム属やコリネバクテリウム属に属するコリネ型細菌を用いて発酵法により工業生産されている。この方法では、コリネ型細菌は生育にビオチンを要求する一方、培地中に過剰量のビオチンが存在すると、L−グルタミン酸が蓄積しないことが知られている。従って、従来のL−グルタミン酸の製造法においては、ビオチン濃度を制限した培地で培養するか、あるいはビオチンを充分量含有する培地を用いる場合には、培養の初発または途上でビオチン作用抑制物質として界面活性剤またはラクタム系抗生物質を培地に含有させて培養するかのいずれかの方法が採用されている。しかしながら、特に培地の炭素源として廃糖蜜等の安価ではあるが過剰量のビオチンを含有する原料を使用する場合、培地に添加することが必要なビオチン作用抑制物質が製造コスト高の原因となっていた。
これに対し、本発明者らは、コリネバクテリウム属細菌に由来し、該細菌に界面活性剤に対する耐性を付与するタンパク質(DTSR蛋白)をコードする遺伝子(dtsR遺伝子)の存在を突き止め、この遺伝子が破壊されたコリネ型L−グルタミン酸生産菌は、野生株がほとんどL−グルタミン酸を生成しない量のビオチンが存在する条件においても著量のL−グルタミン酸を生成すること、及び、L−リジン生産能を有するコリネ型L−グルタミン酸生産菌は、dtsR遺伝子を増幅するとL−リジンを生産する能力が増強されることを見出している(特許文献1)。
また、本発明者らは、コリネ型L−グルタミン酸生産菌に、ビオチン作用抑制物質に対する温度感受性を付与することにより、ビオチン存在下でも安定してL−グルタミン酸を発酵生産することができること、及び、このようなビオチン作用抑制物質に対する温度感受性株にL−リジン生産性を付与することにより、ビオチン存在下でも、安定してL−リジンとL−グルタミン酸を同時に発酵生産することができることを見出している。そして、コリネ型細菌にビオチン作用抑制物質に対する温度感受性を付与する手段の一つとして、温度感受性変異型DTSR蛋白をコードする変異型dtsR遺伝子を用いた遺伝子置換を開示している(特許文献2)。
WO95/23224号国際公開パンフレット WO96/06180号国際公開パンフレット
上記したように、コリネ型細菌を用いた発酵法によるアミノ酸の製造において、dtsR遺伝子の有効な利用法が開発されている。本発明は、さらにdtsR遺伝子を有効に利用するために、温度感受性変異型DTSR蛋白をコードする新規な変異型dtsR遺伝子を提供することを課題とする。
本発明者は、すでに取得されているdtsR遺伝子に変異処理を行い、温度感受性変異
を有するDTSR蛋白をコードする新規な変異型dtsR遺伝子を取得することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記(A)又は(B)に示すタンパク質をコードするDNAを提供する。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列、または配列番号2記載のアミノ酸配列の139番目のLeu残基がProを除く他のアミノ酸残基に変化した配列を有し、温度感受性DTSR活性を有するタンパク質。
(B)配列番号2記載のアミノ酸配列、または配列番号2記載のアミノ酸配列の139番目のLeu残基がProを除く他のアミノ酸残基に変化した配列において、さらに、139番目のアミノ酸残基以外の位置における1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、温度感受性DTSR活性を有するタンパク質。
上記DNAとして具体的には、下記(a)又は(b)に示すDNAが挙げられる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号359〜1987からなる塩基配列を含むDNA。
(b)配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号359〜1987からなる塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつ、温度感受性DTSR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
以下、上記のいずれかのDNAを、「本発明の遺伝子」又は「変異型dts遺伝子」、これらのDNAがコードするタンパク質を「変異型DTSRタンパク質」ということがある。
また、本発明は、本発明の遺伝子を保持し、野生型DTSRタンパク質を保持せず、L−グルタミン酸生産能を有するコリネ型細菌、及び、このコリネ型細菌を、液体培地で培養し、培地中に、L−グルタミン酸を生成蓄積させ、L−グルタミン酸を該培地から採取することを特徴とするL−グルタミン酸の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、L−リジン生産能をさらに有する上記コリネ型細菌、並びに、このコリネ型細菌を、液体培地で培養し、培地中に、L−リジン及びL−グルタミン酸を生成蓄積させ、L−リジン及びL−グルタミン酸を該培地から採取することを特徴とするL−リジン及びL−グルタミン酸の製造方法を提供する。
尚、本発明においてDTSR活性とは、DTSRタンパク質が有する活性であって、具体的には、コリネ型細菌細胞中で界面活性剤に対する耐性に関与する活性をいう。DTSRタンパク質は、例えば、コリネ型細菌の界面活性剤変異株(野生型のコリネ型細菌の生育に影響を与えない濃度の界面活性剤が存在する培地中で、生育が悪くなったコリネ型細菌に属する変異株)の細胞中に存在させたときに、界面活性剤に対する感受性を失わせる活性を有する。
また、温度感受性DTSR活性とは、コリネ型細菌の最適生育温度(31.5℃)ではDTSR活性を示すが、33ないし37℃以上、好ましくは34℃以上ではDTSR活性が低下する性質をいう。
また、本発明にいうコリネ型細菌とは、バージーズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ・バクテリオロジー(Bargey's Manual of Determinative Bacteriology)第8版599頁(1974)に定義されている一群の微生物であり、好気性、グラム陽性、非抗酸性、胞子形成能を有しない桿菌であり、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが
現在コリネバクテリウム属細菌として統合されたブレビバクテリウム属細菌(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255 (1981))を含み、またコリネバクテリウム属細菌と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌及びミクロバテリウム属細菌を含む。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の遺伝子は、野生型コリネ型細菌由来のdtsR遺伝子を含む組換えDNAを変異剤処理し、これをコリネ型細菌に属する界面活性剤感受性変異株に導入し、組換えDNAが導入されていない変異株が生育できない濃度の界面活性剤を含む培地において、31.5℃では生育するが、これよりも高い温度、例えば35℃では生育しない株を選択し、得られた株より前記組換えDNAを回収することによって得られる。
野生型コリネ型細菌由来のdtsR遺伝子は、WO95/23224号国際公開パンフレットに記載されている方法にしたがって取得することができる。以下に、コリネ型細菌の界面活性剤感受性変異株を利用して野生型dtsR遺伝子を取得する方法、及びこの野生型dtsR遺伝子を用いて変異型dtsR遺伝子を取得する方法を説明する。
コリネ型細菌の野生株から、例えば斎藤らの方法(H. Saito and K. Miura Biochem. Biophys. Acta 72, 619 (1963))に従い染色体DNAを回収する。回収した染色体DNAを制限酵素を用いて切断し、コリネ型細菌で機能するベクターに連結し、各種組換えDNAを得る。
前記コリネ型細菌で機能するベクターとは、例えばコリネ型細菌で自律複製できるプラスミドである。具体的に例示すれば、以下のものがあげられる。
(1)pAM 330 特開昭58−67699号公報参照
(2)pHM 1519 特開昭58−77895号公報参照
(3)pAJ 655 特開昭58−192900号公報参照
(4)pAJ 611 同 上
(5)pAJ 1844 同 上
(6)pCG 1 特開昭57−134500号公報参照
(7)pCG 2 特開昭58−35197号公報参照
(8)pCG 4 特開昭57−183799号公報参照
(9)pCG 11 同 上
界面活性剤感受性変異株としては、例えば界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテートの場合、0.1〜1mg/dlの濃度のポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート添加された培地で、生育が野生株と比較して悪い変異株が挙げられる。尚、野生型のコリネ型細菌は0.1〜1mg/dlの濃度の上記界面活性剤が添加された培地中でも生育に大きな変化はみられない。このような界面活性剤感受性変異株としては、具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカム AJ11060が挙げられる。同株は通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(郵便番号305-0046 日本国茨城県つくば市東一丁目1番3号)に寄託されており、受託番号FERM P−3678が付与されている。
上記のようにして得られる各種組換えDNAをコリネ型細菌の界面活性剤感受性変異株に導入するには、これまでに報告されている形質転換法に従って行えばよい。例えば、エシェリヒア・コリ K−12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel, M. and Higa, A., J. Mol. Biol., 53, 159 (1970))があり、バチルス・ズブチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法(Duncan, C.H., Wilson,
G.A. and Young, F.E., Gene, 1, 153 (1977))がある。あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法(Chang, S. and Choen, S.N., Molec. Gen. Genet., 168, 111 (1979); Bibb, M.J., Ward, J.M. and Hopwood, O.A., Nature, 274, 398 (1978); Hinnen, A., Hicks, J.B. and Fink, G.R., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1929 (1978))も応用できる。本発明の実施例で用いた形質転換の方法は、電気パルス法(特開平2−207791号公報参照)である。
次に、形質転換株を、一旦、界面活性剤を含まないM−CM2G寒天プレート(グルコース5g、ポリペプトン10g、酵母エキス10g、NaCl5g、DL−メチオニン0.2g、寒天15g及びクロラムフェニコール4mgを純水1Lに含む。pH7.2)に塗布して数万個のコロニーを形成させる。当該コロニーを30mg/Lの界面活性剤(Tween 40)を含むM−CM2Gプレートにレプリカし、界面活性剤含有M−CM2Gプレート上で良好な生育を示すものを取得することにより、界面活性剤感受性を失った株を取得できる。
界面活性剤感受性が失われた形質転換株より組換えDNAを、野生型コリネ型細菌の染色体DNAと同様にして調製、ベクターに連結されている野生型コリネ型細菌の染色体DNA断片の塩基配列を決定し、dtsR遺伝子が含まれていることを確認する。
以上のようにして、dtsR遺伝子を取得することができる。
また、dtsR遺伝子は、すでに報告されているdtsR遺伝子の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、コリネ型細菌染色体DNAを鋳型とするPCRによってdtsR遺伝子を含むDNA断片を増幅することによっても、取得することができる。さらに、dtsR遺伝子の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプローブとするハイブリダイゼーションによって、コリネ型細菌染色体ライブラリーをスクリーニングすることによっても、dtsR遺伝子を取得することができる。
なお、dtsR遺伝子を含むプラスミドpDTR6を保持するエシェリヒア・コリJM109/pDTR6(プライベートナンバーAJ12967)株は、1994年2月22日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(郵便番号305-0046 日本国茨城県つくば市東一丁目1番3号)に受託番号FERM P−14168として寄託され、1995年2月9日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−4994が付与されている。
変異型dtsR遺伝子は、野生型dtsR遺伝子を含むDNAに変異処理を施すことによって得ることができる。具体的には、野生型dtsR遺伝子を含む組換えDNAを、次亜硫酸ナトリウム、ヒドロキシルアミン等の化学薬剤によって変異処理する(Shortle, D. and Nathans, D., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 75, 270(1978))。変異処理した組換えDNAを、上記と同様にしてコリネ型細菌の界面活性剤感受性変異株に導入し、形質転換体を得る。この形質転換体から、形質転換されていない変異株が生育できない濃度の界面活性剤、例えば30mg/Lのポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテートを含む培地において、31.5℃では生育するが33ないし37℃以上では生育しない株を選択する。選択された株より前記組換えDNAを回収すれば、変異型dtsR遺伝子を得ることができる。
上記のようにして得られる本発明の遺伝子の例として、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869株由来のdtsR遺伝子に変異処理を施して得られた変異型dtsR遺伝子の塩基配列を、配列表の配列番号1に示す。また、変異型dtsR
遺伝子がコードする変異型DTSRタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。尚、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869株由来の野生型DTSRタンパク質は、配列番号2に示すアミノ酸配列において139番目のアミノ酸残基がPro残基であるアミノ酸配列を有する。また、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869株の野生型dtsR遺伝子は、配列番号1において774番目の塩基がCである塩基配列を有する。
本発明により、温度感受性を有する変異型DTSRタンパク質のアミノ酸配列、及び変異型DTSRタンパク質をコードする変異型dtsR遺伝子の塩基配列が明らかとなったので、野生型dtsR遺伝子に、部位特異的変異法(Kramer, W. and Frits, H. J., Methods in Enzymology, 154, 350 (1987))によって変異を導入することによっても、変異型dtsR遺伝子を取得することができる。すなわち、野生型dtsR遺伝子では、配列番号1に示すアミノ酸配列において、139番目のコドンはPro残基をコードしているが、これを、Pro以外のアミノ酸残基、好ましくはLeu残基をコードするコドンに置換すればよい。Pro以外のアミノ酸残基としては、139番目のPro残基をそのアミノ酸残基に変化させたときに、変異型DTSRタンパク質が温度感受性DTSR活性を有するものであれば特に制限されないが、好ましくはLeu残基が挙げられる。
本発明の遺伝子は、配列番号1に示す塩基配列において塩基番号359〜1987で表される塩基配列を有するDNAの他に、配列番号2に示すアミノ酸配列をコードするDNA、及び配列番号2に示すアミノ酸配列において、139番目のLeu残基が、Proを除く他のアミノ酸残基に変化した配列をコードするDNAを含む。また、上記DNAに、配列番号2に記載のアミノ酸配列における139番目のアミノ酸残基以外の位置において、1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を生じる変異が加わっても、コードされるタンパク質が温度感受性DTSR活性を有する限り、そのようなDNAは本発明の遺伝子に含まれる。
配列番号2に記載のアミノ酸配列における139番目のアミノ酸残基以外の位置において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAは、例えば、139番目のアミノ酸残基がPro以外のアミノ酸残基に変化したDTSRタンパク質をコードするdtsR遺伝子、具体的には配列番号1に示す塩基配列を有するdtsR遺伝子を保持するコリネ型細菌を突然変異処理し、得られる変異株から、配列表の配列番号1に示す塩基配列において塩基番号359〜1987で表される塩基配列の少なくとも一部を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを単離することによって、取得され得る。また、同種変異体または対立遺伝子変異体としても単離され得る。
突然変異処理としては、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常人工突然変異に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。
上記の「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは温度が完全にマッチしたハイブリッドのTm〜(Tm−30)℃、好ましくはTm〜(Tm−20)℃の範囲で、かつ1×SSC、好ましくは0.1×SSCに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
また、139番目のアミノ酸残基以外の位置における1若しくは数個のアミノ酸残基の
置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むDTSRタンパク質をコードするDNAは、部位特異的変異法によって、特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、付加又は逆位を起こすように塩基配列を改変することによって得られる。
上記のようにして得られるDNAのうち、温度感受性DTSR活性を有し、かつ、139番目のアミノ酸残基以外の部位において変異が生じたDTSRタンパク質をコードするものを選択することによって、変異を導入することができる位置、又は変異が生じた位置を決定することができる。導入される変異の位置は、温度感受性DTSR活性に実質的に影響のない限り、特に制限されない。また、導入される変異の数は、タンパク質の立体構造における変異されるアミノ酸の位置や種類によっても異なり、温度感受性DTSR活性に実質的に影響のない限り、特に制限されないが、通常、1〜20個、好ましくは1〜10個である。
本発明の遺伝子は、L−グルタミン酸の製造に好適に利用することができる。例えば、本発明の遺伝子を保持し、野生型DTSRタンパク質を保持せず、かつ、L−グルタミン酸生産能を有するコリネ型細菌は、界面活性剤に対する温度感受性を有する。このようなコリネ型細菌は、31.5℃程度で培養して生育させた後に、培養温度を33ないし37℃以上にシフトさせると、過剰量のビオチンを含有する培地中にて界面活性剤の非存在下でも、L−グルタミン酸を生産することができる。
従って、本発明により、本発明の遺伝子を保持し、野生型DTSRタンパク質を保持せず、L−グルタミン酸生産能を有するコリネ型細菌(以下、本発明のL−グルタミン酸生産菌ともいう)、及び、このコリネ型細菌を、液体培地で培養し、培地中に、L−グルタミン酸を生成蓄積させ、L−グルタミン酸を該培地から採取することを特徴とするL−グルタミン酸の製造方法も提供される。
本発明のL−グルタミン生産菌は、本発明の遺伝子を含む組換えDNAを、既に確立している相同組換えの手法(Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory press (1972); Matsuyama, S. and Mizushima, S., J. Bacteriol., 162, 1196(1985))等により、L−グルタミン酸生産能を有するコリネ型細菌の染色体上の野生型dtsR遺伝子と置換することによって、取得することができる。L−グルタミン酸生産能を有するコリネ型細菌は、公知のものを使用できる(例えば、WO96/06180号国際公開パンフレット参照)。
本発明において上記L−グルタミン酸生産菌の培養に用いられる液体培地としては、炭素源、窒素源、無機塩類、生育因子等を含有する通常の栄養培地が用いられる。上記L−グルタミン生産菌は、過剰量のビオチンを含有する液体培地で培養してもビオチン作用抑制物質を培地に含有させることなくL−グルタミン酸を生産する能力を有する。
炭素源としては、グルコース、フラクトース、シュクロース、廃糖蜜、澱粉加水分解物等の炭水化物、エタノール、グリセロール等のアルコール類、酢酸等の有機酸類が使用される。窒素源としては、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、アンモニア、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー等が使用される。栄養要求性を有するL−グルタミン生産菌を用いる場合には、それらの要求物質を標品もしくはそれを含有する天然物として添加する。
発酵は、振とう培養、通気撹拌培養等による好気条件下にて、培養液のpHを5〜9の間に保持しつつ2〜7日間行う。pHの調節には、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアガス、アンモニア水等を用いる。培養温度は24〜37℃であるが、31.5℃付近で培養
を開始し、培養の途中で33〜40℃、好ましくは37℃付近に温度を上昇させることによりさらに良好な結果が得られる。すなわち、生育至適温度付近にて菌を十分増殖させた後、培養途中で温度を上昇させることにより、ビオチン作用抑制物質を添加することなく、L−グルタミン酸の生産が開始され、培養液中にL−グルタミン酸が著量、生成蓄積される。
培養液中に生成蓄積したL−グルタミン酸を採取する方法は常法によって行えばよく、例えばイオン交換樹脂法、晶析法等によることができる。具体的には、L−グルタミン酸を陰イオン交換樹脂により吸着、分離させるか、または中和晶析させればよい。
上記L−グルタミン酸生産菌は、さらにL−リジン生産能を有するものであってもよい。このようなコリネ型細菌(以下、本発明のL−リジン生産菌ともいう)を、液体培地で培養し、培地中に、L−リジン及びL−グルタミン酸を生成蓄積させ、L−リジン及びL−グルタミン酸を該培地から採取することによりL−リジン及びL−グルタミン酸を製造できる。
本発明のL−リジン生産菌は、上記のように相同組換えの手法等により、本発明の遺伝子を含む組換えDNAを、L−リジン及びL−グルタミンの両方の生産能を有するコリネ型細菌の染色体上の野生型dtsR遺伝子と置換することによって、取得することができる。L−リジン及びL−グルタミン酸の生産能を有するコリネ型細菌は、公知のものを使用できる(例えば、WO96/06180号国際公開パンフレット参照)。あるいは、本発明のL−グルタミン生産菌に、特公昭48−28078号公報などに記載の方法に従ってL−リジン生産能を付与することによっても本発明のL−リジン生産菌を取得することができる。
本発明のL−リジン生産菌の培養に用いられる液体培地としては、本発明のL−グルタミン酸生産菌の培養に用いられるのと同様の炭素源、窒素源、無機塩類、生育因子等を含有する通常の栄養培地が用いられる。本発明のL−リジン生産菌は、過剰量のビオチンを含有する液体培地で培養してもビオチン作用抑制物質を培地に含有させることなくL−リジン及びL−グルタミン酸を生産する能力を有する。
発酵は、振とう培養、通気撹拌培養等による好気条件下にて、培養液のpHを5〜9の間に保持しつつ2〜7日間行う。pHの調節には、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアガス、アンモニア水等を用いる。培養温度は24〜37℃であるが、31.5℃付近で培養を開始し、培養の途中で33〜40℃、好ましくは34℃付近に温度を上昇させることによりさらに良好な結果が得られる。すなわち、31.5℃付近では主としてL−リジンを生成するが、培養途中で温度を上昇させることによりL−グルタミン酸の生成される割合が増加する。これを利用して最終的に得られる培養液中のL−リジンとL−グルタミン酸の比率を望ましいものに制御することができる。
培養液中に生成蓄積したL−リジンとL−グルタミン酸を採取する方法は常法でよく、例えばイオン交換樹脂法、晶析法等によることができる。イオン交換樹脂法では、培養液からまず陽イオン交換樹脂によりL−リジンを吸着、分離させ、ついでL−グルタミン酸は陰イオン交換樹脂により吸着、分離させるかまたは中和晶析させる。L−リジンとL−グルタミン酸を混合物として用いる場合にはもちろんこれらのアミノ酸を相互に分離することは不要である。
本発明のL−グルタミン酸生産菌及びL−リジン生産菌においては、グルタミン酸生合成系遺伝子の発現を強化することにより、L−グルタミン酸生産性を向上させることができる。細胞中で強化されたグルタミン酸生合成系遺伝子の例としては、解糖系のホスフォ
フルクトキナーゼ(PFK、特開昭63−102692号)、アナプレロティック経路のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC、特開昭60−87788号、特開昭62−55089号)、TCA回路のクエン酸合成酵素(CS、特開昭62−201585号、特開昭63−119688号)、アコニット酸ヒドラターゼ(ACO、特開昭62−294086号)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(ICDH、特開昭62−166890号、特開昭63−214189号)、アミノ化反応を触媒するグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH、特開昭61−268185号)等の遺伝子がある。
さらに、本発明のL−リジン生産菌においては、リジン生合成系遺伝子を強化することによって、L−リジン生産性を向上させることができる。細胞中で強化されたリジン生合成系遺伝子の例としては、L−リジン及びL−スレオニンによる相乗的なフィードバック阻害が実質的に解除されたアスパルトキナーゼαサブユニット蛋白質又はβサブユニット蛋白質をコードする遺伝子(WO94/25605国際公開パンフレット)、コリネホルム細菌由来の野生型ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(特開昭60-87788号公報)、コリネホルム細菌由来の野生型ジヒドロジピコリン酸合成酵素をコードする遺伝子(特公平6-55149号公報)等が知られている。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
<1>ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869(コリネバクテリウム属細菌の野生株)の染色体DNAの調製
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869をT−Y培地(Bacto−trypton(Difco)1%、Bacto−yeast extract(Difco)0.5%、NaCl0.5%(pH7.2))100mlに接種し、温度31.5℃で8時間培養し、培養物を得た。この培養物を3,000r.p.m.で15分間、遠心分離処理し湿潤菌体0.5gを得た後、該菌体から斎藤、三浦の方法(Biochem. Biophys. Acta., 72, 619 (1963))により染色体DNAを得た。次いで、この染色体DNA 60μg 及び制限酵素 Sau3AI、3ユニットを10mMトリス−塩酸緩衝液(50mM NaCl、10mM MgSO4及び1mM ジチオスレイトール含有(pH 7.4))におのおの混合し、温度37℃で30分間反応させた。反応終了液を常法により、フェノール抽出処理し、エタノール沈澱処理してSau3AIで消化されたブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869の染色体DNA断片 50μg を得た。
<2>プラスミドベクターDNAを利用したブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム
ATCC13869の遺伝子ライブラリーの作製
エシェリヒア・コリとコリネバクテリウム属細菌の双方の菌体内で自律複製可能なプラスミドベクターDNA(pSAC4)20μg 及び制限酵素BamHI200ユニットを50mMトリス−塩酸緩衝液(100mM NaCl及び10mM硫酸マグネシウム含有(pH7.4))に混合し、温度37℃で2時間反応させて消化液を得、該液を常法によりフェノール抽出及びエタノール沈澱処理した。この後、プラスミドベクター由来のDNAフラグメントが再結合することを防止するため、Molecular Cloning 2nd edition(J.Sambrook, E.F.Fritsch and T.Maniatis, Cold Spring Harbor Laboratory Press, p1.56 (1989))の方法で バクテリアルアルカリホスファターゼ(Bacterial Alkaline Phosphatase)処理により、DNA断片の脱リン酸化を行い、常法によりフェノール抽出処理し、更にエタノール沈澱処理を行った。
このBamHIで消化されたpSAC4を1μg、<1>で得られたSau3AIで消化されたブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869の染色体DNA断片を1μg、及び2ユニットのT4DNAリガーゼ(宝酒造(株)製)を、66mM塩化マグ
ネシウム、10mMジチオスレイトール及び10mM ATPを含有する66mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に添加し、温度16℃で16時間反応し、DNAを連結させた。次いで該DNA混合物で、常法によりエシェリヒア・コリ DH5を形質転換し、これを170μg/mlのクロラムフェニコールを含むL寒天培地上にまき、約20,000個のコロニーを得、遺伝子ライブラリーとした。
<3>遺伝子ライブラリーDNAによるブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ11060の形質転換
上記で述べた約20,000個のコロニーより、組換えDNAの回収を行なった。回収の方法は上記に示した斎藤、三浦の方法に従った。
50のバッチに分けた組換えDNA混合物を電気パルス法を用いた形質転換の常法(特開平2−207791号公報)に従い、界面活性剤に対する感受性が上昇した変異株AJ11060株に導入した。形質転換体をグルコース添加寒天L培地上に接種し、31.5℃で静置培養を行ない、約20,000個の形質転換体を出現させた。次にこれらの形質転換体を界面活性剤30mg/lを含む同プレートにレプリカし、この中で界面活性剤に対して耐性を示し上記プレート上で生育可能であった株を数株得た。
上記で得られた数株からそれぞれ組換えDNAを抽出し、同DNAを用いてAJ11060株を再形質転換した。ここでも界面活性剤に対して耐性を示した株を得た。これらの株の1株が保持していた組換えDNAをpDTR6と命名した。pDTR6を導入したAJ11060菌は、3g/Lの界面活性剤を添加した液体培地での生育阻害が抑制されていた(WO95/23224号国際公開パンフレット参照)。
<4>変異型dtsR遺伝子の取得
pDTR6プラスミドを、文献 Shortle, D. and Nathans, D., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 75, 270(1978)に記載の方法に従い、試験管内でヒドロキシルアミン処理し、これをAJ11060に上記の電気パルス法を用いて導入した。形質転換体約20000株をM−CM2G寒天培地に25℃にて30時間培養しコロニーを形成させた。これを30mg/lの界面活性剤を含む同プレート培地に2枚ずつレプリカし31.5℃および35℃において20時間培養した。その後、31.5℃では生育するが35℃では生育しなかった株を1株取得した。この1株から常法によりプラスミドを抽出し、pDTR−117を取得した。
<5>変異型dtsR遺伝子の塩基配列決定
上記で得られたpDTR−117をエシェリヒア・コリ JM109に導入した。得られたエシェリヒア・コリJM109/pDTR−117をトリプトン1%、酵母エキス0.5%及びNaCl 0.5%からなる培地20mlに温度37℃で24時間前培養し、得られた培養液20mlを上記と同じ組成の培地1lに接種し、温度37℃で3時間培養したのち、0.2gのクロラムフェニコールを添加し、更に同一温度で20時間培養を行い、培養液を得た。次いで、この培養液を3,000r.p.m.で10分間遠心処理して湿潤菌体2gを得、これを20mlの25%ショ糖を含有する350mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁したのち、更にこれにリゾチーム(シグマ社製)10mg、0.25M
EDTA溶液(pH8.0)8ml及び20%ドデシル硫酸ナトリウム溶液8mlを各々添加し、温度60℃で30分間保温処理し、溶菌液を得た。この溶菌液に、5M NaCl溶液13mlを添加し、温度4℃で16時間処理した後、15,000r.p.m.で30分間遠心分離した。得られた上清液を、常法によりフェノール抽出処理及びエタノール沈澱処理を行いDNAを沈澱させた。
この沈澱物を減圧乾燥処理した後、1mM EDTAを含有する10mMトリス−塩酸
緩衝液(pH7.5)6mlに溶解し、さらにこれに塩化セシウム6g及びエチジウムブロマイド(19mg/ml)0.2mlを添加し、39,000r.p.m.で42時間超遠心分離機を用いて平衡密度勾配遠心分離処理を行い、DNAを単離した。又更に、n−ブタノールを使用してエチジウムブロマイドを除去した後、1mM EDTAを含有する10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に対して透析を行い純化された組換えDNA pDTR−117を約500μgを得た。
pDTR−117のクローン化断片の塩基配列の決定を行った。塩基配列の決定は、Taq DyeDeoxy Terminator Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオケミカル社製)を用い
Sangerの方法に従って行った。決定された塩基配列およびそれから推定されるアミノ酸配列を配列表配列番号1に示す。アミノ酸配列は配列番号2にも示す。
その結果、このクローン化DNA断片は、dtsR遺伝子のコード領域全長を含み、野生型dtsR遺伝子ではC(シトシン)である774番目の塩基がT(チミン)に置換されていることが判明した。この塩基の置換により、コードされるDTSRタンパク質は、野生型ではPro残基である139番目のアミノ酸残基が、Leu残基に置換されている。
<6>遺伝子置換による変異型dtsR遺伝子導入株の作製
変異型dtsR遺伝子置換株は特開平5−7491号に示される温度感受性プラスミドを用いた相同組換え法により取得した。具体的には上記のpDTR−117をXbaI及びKpnIにより消化してdtsR遺伝子を含む断片を取得し、pHSG398(宝酒造(株)製)をXbaIおよびKpnI切断処理したものと、上記の方法で結合させ、pHSGX−K−117を取得した。
次に、コリネ型細菌で自己複製可能なプラスミドから取得した自己複製能が温度感受性になった変異型の複製起点を持つプラスミドpHSC4(特開平5−7491号)を制限酵素BamHI及びKpnIで消化し、複製起点を含む遺伝子断片を取得し、得られたDNA断片をDNA平滑末端化キット(宝酒造(株)製、Blunting kit)を用いて平滑末端化した後、KpnIリンカー(宝酒造(株)製)を用いて、pHSGX−K−117のKpnI認識部位に導入し、プラスミドpKTCX−K−117を作製した。尚、pHSC4を保持するエシェリヒア・コリ AJ12571は、1990年10月11日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(郵便番号305-0046 日本国茨城県つくば市東一丁目1番3号)に受託番号FERM P−11763として寄託され、1991年8月26日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP−3524の受託番号で寄託されている。
この2つのプラスミドを、各々ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869に電気パルス法を用いて導入し、特開平5−7491号に記載の方法で染色体上のdtsR遺伝子を変異型に置換した。具体的にはブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869/pKTCX−K−117をM−CM2G液体培地で25℃にて6時間振とう培養した後、5μg/mlのクロラムフェニコールを含むM−CM2G培地上に撒き、34℃でコロニーを形成した株をプラスミド組み込み株として取得した。次にこの株から34℃でクロラムフェニコールに対して感受性になった株をレプリカ法により取得した。この感受性株から34℃において界面活性剤に対する耐性を失った株としてNo.117株を取得した。この株は染色体上のdtsR遺伝子が変異型に置換されている。
<7>No.117株のL−グルタミン酸生産性
上記項目<6>で取得したNo.117株、並びに、WO96/06180号国際公開
パンフレットに記載のNo.11株、No.77株及びNo.21株について、WO96/06180号国際公開パンフレットに記載の実施例2と同様にしてL−グルタミン酸の生産性を評価した。具体的には、以下の様に評価を行った。
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム ATCC13869または上記各株を表1に示す組成の種培養培地に接種し、31.5℃で24時間振とう培養して種培養を得た。表1に示す組成の本培養培地を500ml容ガラス製ジャーファーメンターに300mlずつ分注し加熱殺菌した後、上記種培養を40ml接種した。撹拌速度を800〜1300rpm、通気量を1/2〜1/1vvmとし、培養温度31.5℃にて培養を開始した。培養液のpHはアンモニアガスで7.5に維持した。培養を開始してから8時間後に培養温度を37℃にシフトした。培養温度のシフトを行わず、31.5℃のまま培養を継続した場合を比較対象とした。
Figure 2007135602
いずれも20〜40時間でグルコースが完全に消費された時点で培養を終了し、培養液中に生成蓄積されたL−グルタミン酸の量を測定した。
その結果、表2に示すようにNo.117株のL−グルタミン酸収率は特に上昇していた。
Figure 2007135602
本発明により、界面活性剤に対する温度感受性変異を有する変異型DTSRタンパク質をコードする変異型dtsR遺伝子が提供される。この変異型DTSRタンパク質を保持し、野生型DTSRタンパク質を保持しないコリネ型細菌は、界面活性剤に対する温度感受性を有し、L−グルタミン酸の生産等に利用できる。

Claims (3)

  1. 下記(A)又は(B)に示すタンパク質をコードするDNAを保持し、野生型DTSRタンパク質を保持せず、L−グルタミン酸生産能を有するコリネ型細菌を、液体培地で培養し、培地中にL−グルタミン酸を生成蓄積させ、L−グルタミン酸を該培地から採取することを含む、L−グルタミン酸の製造方法であって、前記コリネ型細菌の生育至適温度で培養を開始し、培養の途中で培養温度を33〜40℃に上昇させることを特徴とする前記製造方法。
    (A)配列番号2に記載のアミノ酸配列、または配列番号2記載のアミノ酸配列の139番目のLeu残基がProを除く他のアミノ酸残基に変化した配列を有し、温度感受性DTSR活性を有するタンパク質。
    (B)配列番号2記載のアミノ酸配列、または配列番号2記載のアミノ酸配列の139番目のLeu残基がProを除く他のアミノ酸残基に変化した配列において、139番目のアミノ酸残基以外の位置における1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、温度感受性DTSR活性を有するタンパク質。
  2. 前記DNAが、下記(a)又は(b)に示すDNAである請求項1記載の製造方法。
    (a)配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号359〜1987からなる塩基配列を含むDNA。
    (b)配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号359〜1987からなる塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつ、温度感受性DTSR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  3. 前記DNAが、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする請求項1記載の製造方法。
JP2007037777A 1997-07-09 2007-02-19 L−グルタミン酸の製造法 Withdrawn JP2007135602A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007037777A JP2007135602A (ja) 1997-07-09 2007-02-19 L−グルタミン酸の製造法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP18417697 1997-07-09
JP2007037777A JP2007135602A (ja) 1997-07-09 2007-02-19 L−グルタミン酸の製造法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP50843399A Division JP4495788B2 (ja) 1997-07-09 1998-07-03 温度感受性dtsR遺伝子

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2007135602A true JP2007135602A (ja) 2007-06-07

Family

ID=38199189

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007037777A Withdrawn JP2007135602A (ja) 1997-07-09 2007-02-19 L−グルタミン酸の製造法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2007135602A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3692538B2 (ja) 新規リジンデカルボキシラーゼ遺伝子及びl−リジンの製造法
KR100337959B1 (ko) 돌연변이체포스포에놀피루베이트카복실라제,이의유전자및아미노산의제조방법
US11421200B2 (en) Microorganism of the genus Corynebacterium producing purine nucleotide and a method for producing purine nucleotide by using the same
JP3783065B2 (ja) L−リジンの製造法
KR100671785B1 (ko) 신규한 탈감작형 아스파르토키나아제
EP0931833B1 (en) Method of producing L-serine by fermentation
KR100575403B1 (ko) 세포 nadph를 증가시켜 l-아미노산을 생산하는 방법
US20030148474A1 (en) New mutant glutamine synthetase and method for producing amino acids
JP3738449B2 (ja) コリネバクテリウム属細菌由来の新規遺伝子及びその利用
JP2926991B2 (ja) 発酵法によるl−リジン及びl−グルタミン酸の製造方法
KR102035844B1 (ko) L-트립토판을 생산하는 재조합 코리네형 미생물 및 이를 이용한 l-트립토판을 생산하는 방법
JP2001046067A (ja) 好熱性バチルス属細菌由来のl−リジン生合成系遺伝子
KR102143964B1 (ko) 신규한 분지쇄 아미노산 아미노트랜스퍼라제 변이체 및 이를 이용한 류신 생산방법
JP7295276B2 (ja) L-トレオニン排出タンパク質の変異体及びそれを用いたl-トレオニン生産方法
EP1786899A2 (en) L-glutamic acid-producing microorganism and a method for producing l-glutamic acid
KR20190065984A (ko) L-히스티딘 생산능이 강화된 미생물 및 이를 이용한 히스티딘 생산방법
JP4495788B2 (ja) 温度感受性dtsR遺伝子
KR102126951B1 (ko) 디하이드로디피콜린산 리덕타제 변이형 폴리펩티드 및 이를 이용한 l-쓰레오닌 생산방법
US10597686B2 (en) Polypeptide having the activity of exporting O-acetyl-homoserine
KR102527895B1 (ko) GlxR 단백질 변이체 또는 이를 이용한 쓰레오닌 생산방법
CN116917473A (zh) 预苯酸脱水酶变体以及使用其生产支链氨基酸的方法
WO1997048790A1 (fr) Procede de production de substance-cible par fermentation
JP2007135602A (ja) L−グルタミン酸の製造法
JP3767066B2 (ja) 新規遺伝子
KR102377745B1 (ko) 신규 프로모터 및 이의 용도

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20070219

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070522

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070703

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20070703

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20080318

AA91 Notification of revocation by ex officio

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971091

Effective date: 20080408

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20080422

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20080522