JP2007133097A - 光学素子および光学素子の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】使用光の波長よりも短い周期の周期構造体を有する光学素子を、つぎのように構成する。
前記周期構造体が複数の段より構成されており、少なくともそのうち一つの段の周期構造体と、その上段或いは下段の周期構造体が、それぞれ同一の周期ベクトルを有する構成とする。
【選択図】 図1
Description
これらの提案の中には、少なくともその一部に微細ピッチでかつ微細スペース幅の高アスペクト比構造とすることが、機能上望ましいとされているものがある。なお、本明細書において、アスペクト比とは、構造体における高さとスペース幅の比(アスペクト比=高さ/スペース幅)を意味している。
例えば、特許文献1では、光学素子構造の一部として、図9(a)あるいは図9(c)に示すような構造が提案されている。
すなわち、図9(a)に示される構造は、160nmピッチ、32nmスペース幅、アスペクト比30の構造であり、図9(c)に示される構造は、160nmピッチでスペース幅が24nmと非常に狭く、かつアスペクト比20程度の構造とされている。
しかしながら、これらの作製手法では、上記構造を歩留まり良く簡便に作製することは困難である。
例えば、これをエッチングによって、レジストパターン等のマスク形状を元に所望の材料を加工する場合等には、微細パターンを精度良く光学材料に転写するに際し、プロセス条件の最適化に非常に手間がかかる。
特に、高アスペクト比構造を作製する場合には手間を要する。
これらは、概ねつぎのような理由による。
それは形成したい材料にもよるが、一般的にマスクのスペース幅が狭い場合には、マスクのスペース幅が広い場合と比較してドライエッチングレートがドライエッチング深さに依存して遅くなったり、エッチングが進行しなくなったりすることがある。
これに伴い、スループットが低下するという問題が生じる。
また、ドライエッチング時のマスクとなる材料の変形や、エッチングがマスク下横方向に広がるサイドエッチング現象が見られるなど、微細スペース部の、断面形状の所望の条件とのずれが顕著になってくる。
本発明は、使用光の波長よりも短い周期の周期構造体を有する光学素子を、つぎのように構成したことを特徴としている。
本発明では、前記周期構造体が複数の段より構成されており、少なくともそのうち一つの段の周期構造体と、その上段或いは下段の周期構造体が、それぞれ同一の周期ベクトルを有することを特徴としている。
また、本発明においては、前記複数の段における周期構造体が、それぞれ高さに対するスペース幅の大きさが小さい周期構造体で構成されていることを特徴としている。
また、本発明においては、前記複数の段における周期構造体が、それぞれの構造体の並進位置間に相関関係を有さずに積層されていることを特徴としている。
また、本発明においては、前記複数の段における周期構造体が、下段の周期構造体とその上段の周期構造体との間に、周期構造をもたない中間層を有することを特徴としている。
また、本発明においては、前記中間層が、前記使用光を透過する材料で構成されていることを特徴としている。
また、本発明においては、前記中間層の厚さが、前記使用光の波長よりも薄いことを特徴としている。
また、本発明においては、使用光の波長よりも短い周期の周期構造体を有する光学素子を、つぎのように構成したことを特徴としている。
本発明では、前記周期構造体を、第1の方向に周期を有する周期構造体に対し、前記第1の方向と直交する第2の方向に周期を有する周期構造体が対向して配置された構成とする。
そして、前記第1の方向に周期を有する周期構造体を、上記したいずれかに記載の光学素子の周期構造体によって構成するようにしたことを特徴としている。
また、本発明は、使用光の波長よりも短い周期の周期構造体を有する光学素子の作製方法を、つぎのように構成したことを特徴としている。
本発明の方法においては、前記周期構造体を、基板上に積層された複数の段による周期構造体によって形成する工程を有する構成とする。
そして、前記工程において、下段の周期構造体の周期ベクトルの方向と、その上段の周期構造体の周期ベクトルの方向とを、一致させるようにして位置合わせをするようにしたことを特徴としている。
また、本発明の方法では、前記工程において、前記複数の段による周期構造体を、それぞれ高さに対するスペース幅の大きさが小さい周期構造体で形成することを特徴としている。
また、本発明の方法では、前記工程において、前記複数の段に積層するに際しその並進位置については各段の位置合わせを行うことなく積層することを特徴としている。
また、本発明の方法では、前記工程において、前記複数の段に積層するに際し下段の周期構造体とその上段の周期構造体との間に、周期構造をもたない中間層を形成することを特徴としている。
また、本発明の方法では、前記中間層が、前記使用光を透過する材料で形成することを特徴としている。
また、本発明の方法では、前記中間層の厚さを、前記使用光の波長よりも薄くすることを特徴としている。
それは、本発明者らが、鋭意研究した結果によるつぎのような知見に基づくものである。
すなわち、本発明者らは、上記した従来例の作製が困難である微細ピッチでかつ微細スペース幅の高アスペクト比構造に代え、アスペクト比のより小さい周期構造体を複数の段に積層した構成とした。
これにより、光学素子としての機能が略同等なものを安価に、高スループットで、容易に作製することができるということを見出した。
まず、本実施の形態の光学素子である、複数の段に積層させた構成について、従来例と比較し説明する。
上記特許文献1において、光学素子の一部に、図9(a)に示すような、基板1101上の面内方向に、誘電体と空気層が交互に並んだ周期構造1100の形状が記載されている。ピッチが160nmと小さく、更にスペース幅は32nmと非常に小さい。
しかも、高さは900nmと、アスペクト比が非常に高い構成となっている。
これに対して、本実施の形態では光学素子の構成を、上記従来例の構造に代えて、アスペクト比が上記よりも小さい周期構造体を、多段に重ねた構成とした。
図1に、本実施の形態における光学素子の構造を示す。
図1に示されるように、本実施の形態の光学素子では、断面形状において垂直性が良い微細構造が作製できる厚さに分割された段を、複数積層することによって形成された構成とされている。
図1に示されるように、本実施の形態の構造では5つの段より光学素子が形成されている。図1において、101は基板、100は高屈折率材料による微細パターン構造である。
また、図1において、矢印で示された103は周期ベクトルを示している。
ここで、周期構造の並進対称性に相当するベクトル群の中で、絶対値最小のものを周期ベクトルと呼ぶこととする。
本実施の形態では、上下の段において、ラインの長手方向が平行であれば、スペース位置は図1のように一致していなくても良い。つまり、上下の段において、周期ベクトルが同一であればよい。
図6に、厚さ180nmのTiO2膜700に、ピッチ160nm、スペース幅16nmのスリット701を形成したものを2枚重ねてモデルとした場合の計算結果を示す。
本モデルにおいて、周期ベクトルとは、x方向(図中左右方向)向きで長さ160nmのベクトルである。
スペース部分及びTiO2膜の上下は真空とした。
z方向(図中上下方向)に、波長450nmの光を入射させたときの、TiO2膜700を透過する透過率を図6(b)に示す。
図6(b)では、上下の段のスペース位置がx座標において完全に一致したところをシフト量0nmとし、そこから上下の段の位置関係をx方向(図中左右方向)にずらしていったときのずれ量を横軸、それに対応する透過率を縦軸とした。図6(b)において、Ex成分の最大値と最小値はそれぞれ、0.971、0.959であり、Ey成分の最大値と最小値は、0.727、0.722であった。透過率のずれ量依存性は、殆ど見られなかった。
ここでは、スペース幅を32nmとした。図6と同様、ピッチは160nm、1段の厚さは180nmとした。
本モデルにおいて、周期ベクトルは先ほどと同様、x方向(図中左右方向)向きで長さ160nmのベクトルである。
5段それぞれのスペース位置のずれ量は乱数を発生させることでランダムに決定し、計算を行った(モンテカルロシミュレーション、計算回数は68回)。
図7(b)のグラフにおいて、横軸を計算した回数、縦軸を透過率としている。図7(b)より、5段ランダムに重ねても、透過率に対する構造依存は殆どないことがわかる。
また、図7(c)に、上記条件にて透過するEx偏光の光とEy偏光の光の位相差を示す。
横軸は、図7(b)同様計算した回数、縦軸は位相差(Δφ。単位は、πラジアン。位相差なしのときはゼロ、位相差がπの時は−1。)とした。
図7(c)において、Δφの最大値、最小値はそれぞれ−0.912,−0.864であった。
また、スペース位置をずらさないで5段全てずれ量ゼロで積層させた場合のΔφは、−0.8740であった。位相差は、各段の間の位置ずれにほとんど依存しないことがわかる。
このことは、入射波長に対して周期構造のピッチが小さいときに生じる現象である。
本実施の形態によれば、上記従来例による高アスペクト比な構造を作製することなく、図1のようにアスペクト比のより小さい複数の段に分割して作製することで、光学素子としての機能が略同等なものを、安価に、高スループットで、容易に作製可能となる。
図2に、本実施の形態における上記の複数の段に積層させた構造を有する光学素子の作製方法を説明する図を示す。
ここで、所望の光学素子構造において、スペース幅をS、ライン幅をL、ピッチをP(=L+S、P<使用光波長)、高さをTとする。
本実施の形態における光学素子の作製方法が特に有効となるのは、PやSが小さく、Tが大きい値の時である。
特に、PやSが可視光の波長程度かそれ以下の時、更に、Sが100nm以下で、T/S>8の時に非常に有効な手段となる。
上記条件のとき、所望の構造を一度に作製することは容易ではない。
そこで、この構造と略同等の光学特性を示す構造を、各段の高さがTよりも低い複数の段を積層させることによって作製する方法を、以下に述べる。
まず、基板101上に所望の材料による微細パターン構造102を作製する。
ここで、スペース幅はS、ライン幅はL、ピッチはP、パターン高さはT1となるようにする(図2(a))。
パターン高さT1においては、微小スペースの断面形状において、垂直性良く加工ができる膜厚となるよう、最終的デバイス高さTよりも低く作製する(T1<T)。なお、T1の設定の詳細については、後の実施例において説明する。
このパターン作製の方法としては、レジストパターンニングとリフトオフ法を用いることができ、またレジストパターニングとドライエッチングを用いることができ、さらにはFIBやEBやレーザ等による直接加工等を用いることができる。
どれを用いるかは、作製したいものの材料、形状等の設計条件と、加工方法等のプロセス条件によって選択する。
レジストパターニングについては、EB露光、EUV露光、X線露光、DUV露光、エキシマレーザ露光、近接場露光、など微小パターンが良好に形成できるものであればよい。
また、レジストに関して、微小パターンが良好に形成できるものであればポジ型、ネガ型を問わない(ネガ型の場合は本実施の形態に記述しているライン幅とスペース幅を、所望のパターンに合わせて再設定する)。
レジストプロセスについて、単層レジスト法、表面イメージング法など微小パターンが良好に形成できるものであれば良い。全体の工程数を減らすためには、できるだけ高アスペクト比なパターンが形成できる簡便なプロセスを選択することが好ましい。
2段目のパターンを、1段目の上に形成する。
ここで、スペース幅はS、ライン幅はL、ピッチはP、パターン高さはT2となるようにする(図2(b))。
パターン高さT2においては、微小スペースの断面形状が垂直性良く加工できる膜厚となるよう、最終的なデバイス高さTよりも低く作製する(T2<T)。
プロセスの条件だしなど、作業の効率化の点から、T2はT1と同じにするとスループットの向上となる。
ここで、上述のように、スペース幅が一致しており、周期ベクトルの大きさ(=P=L+S)と向きが同じであれば、1段目と2段目のスペース位置が一致していなくても良い。
つまり、1段目と2段目とのアライメントが簡便となる。なお、設定の詳細については、後の実施例において説明する。
T<T1+T2の場合は、
T=T1+T2+・・・+Tn
となるようにする。
すなわち、n番目の段を(n−1)番目の段の上に積層することを、最終的なデバイス高さTとなるまで繰り返す(図2(c))。
上述したように、図2(c)のように、微細スペース位置が図の上下方向に揃っていなくても、透過率や位相差の光学的性質は殆ど変わらないが、作製の方法は非常に簡便とすることができる。
積層させる方法としては、1段目を作製した後、その上に2段目以降を順次積層して加工を行う方法、あるいは2段目以降を1段目の基板とは異なる基板に作製し、順次はりあわせていく、等の方法がある。
積層方法は、ドライエッチング、リフトオフ等のパターン加工方法に応じて選択する。
ここで、積層構造を作製する際に、下の段のスペースによってその上段の構造の作製が難しくなる場合には、各段の間に周期構造を有さず、使用光を透過する材質のスペーサ層を挿入してもよい。その際、スペーサ層の厚さを、使用光の波長よりも薄い厚さとしてもよい。
図8(b)に、それぞれの段のx方向ずれをランダムに変えたときの透過率依存性を示す。
また、図8(c)に、Ex偏光の光とEy偏光の光の位相差を示す。
これらより、透過率、位相差ともに、各段の間の位置ずれと依存性は見られなかった。
位相差に関しては、68回の計算で、最大値と最小値はそれぞれ−0.8789、−0.925であった。また、スペースの位置を5段揃えて積層させた場合の位相差量は−0.8748であった。
これらの結果から、各段の間にスペーサ層があっても光学特性には影響しないことがわかった。
従って、プロセスによって、2段目以降の膜形成のために平坦化処理をし、あるいは2段目以降の微細パターン作製のためにドライエッチングの際のエッチスストップ層を形成する、等必要に応じてスペーサ層を挿入することができる。
[実施例1]
実施例1では、本発明を適用した光学素子の構造と、その作製方法について説明する。
なお、本実施例で作製する光学素子は、可視領域でλ/4板として機能するよう設計されている。
本実施例では、プロセス条件の最適化に非常に手間がかかる従来例に代え、4回に分けて作製、積層する方法を用いた。
例えば図9(c)に示される従来例では、ピッチ160nm、スペース幅24nm(ライン幅136nm)、高さ390nmのTa2O5200微細構造の上に、つぎのような微細構造が形成されている。
すなわち、ピッチ160nm、スペース幅24nm(ライン幅136nm)、高さ100nmのSiO2211微細構造が形成されている。
そのため、スペース幅が非常に狭く、それに対して高さが高いため、上記パターンを一度に作製することはプロセス条件の最適化に非常に手間がかかる。
これに対して、本実施例では高さ100nm程度ずつ4回に分けて作製、積層する方法により、作製の容易化が図られている。
本実施例では、露光方法、レジストプロセスとして、近接場マスク露光法と3層レジスト法、リフトオフ法、等が用いられる。
しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではなく、同様の構造が作製できるものであれば、他のプロセスでもよい。
図3において、201は下層レジスト層、202はSOG層、203は上層レジスト層、204は近接場露光用マスク、205は露光用光である。
本実施例では、レジストプロセスとして3層レジスト法を用いる。
そこで、まず3層構造を形成する。
基板101の上に、下層レジスト層201を120nm厚形成する。その上に中間層となるSOG層202を20nm厚形成する。更にその上に上層レジスト層203を30nm厚形成する(図3(a))。
これらの膜厚は、ピッチ160nm、スペース幅24nm程度のパターンが近接場露光と3層レジスト法プロセスによって再現性良く良好に作製可能な膜厚として選択した。
下層レジスト層の膜厚を厚くすると、パターン断面形状において、垂直性の良い加工が難しくなる。
ドライエッチング時間が長くなるため、下層レジスト層の上部(SOG層側)ではサイドエッチング量が多くなりスペース幅が24nmよりも広がってしまう。また、エッチング時間を長くしても下部(基板側)までなかなかエッチングできない、という現象が起きやすくなる。
一方、下層レジスト層の膜厚を120nmよりも薄くすれば、断面形状が良好なパターンが得られやすくなるが、素子全体を作製するまでのプロセス回数が多くなってしまうため、スループットが低下する。
ピッチ160nm、遮光膜部の幅120nmの近接場露光用マスク204を用いて、上層レジスト層203を露光する(図3(b))。
これを現像することにより、上層レジスト層203に、ピッチ160nmのパターンを形成する(図3(c))。
近接場露光、現像により作製された上層レジストパターン高さを、3層レジスト法を用いることによって、Ta2O5やSiO2の材料の加工に耐えられる程度に高くする。
上層レジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系のガスを用いてSOG層202をドライエッチングすることで、上層レジストパターンをSOG202層に転写する。
更に、このSOG層のパターンをエッチングマスクとして、酸素系のガスを用いて下層レジスト層201をドライエッチングすることで、SOG層のパターンを下層レジスト層に転写する。
このようにして、高さ120nm、ピッチ160nm、パターン幅24nm程度のレジスト構造を作製する(図3(d))。
これに、Ta2O5200膜を厚さ100nm成膜する(図3(e))。
その後レジストを取り除くことで、高さ100nm、ピッチ160nm、スペース幅24nmのTa2O5構造を作製する(図3f))。
1段目の微細構造206の上に、下層レジスト層201をスピンコートにて120nm厚成膜する。
1層目のスペース幅が非常に小さいため、このスペースに下層レジストは埋まらない。その上に中間層となるSOG層202を20nm厚、更にその上に上層レジスト層203を30nm厚形成する(図4(a))。
1段目のラインの長手方向と2段目のラインの長手方向が平行となるよう、近接場露光を行う。その後現像を行ってピッチ160nmのパターンを作製し(図4(b))、Ta2O5200層を100nm高さ形成し(図4(c))、レジスト層を取り除く。
このようにして、1段目の微細構造上に、1段目の周期ベクトルと同一の周期ベクトル構造を持つ、高さ100nm、ピッチ160nm、スペース幅24nmによるパターンをTa2O5200層に形成する(図4(d))。
上記したように、各段のスペース幅の位置が各段において図中左右方向に揃っていなくても、周期ベクトルの方向と大きさが同一であれば、透過率、複屈折率性の光学特性は殆ど変わらない。
2段目形成と同様に、3段目を形成することによって、3段の積層構造の高さは300nmとなる。
同様に、4段目を90nm厚形成する。これで積層構造の高さは390nmとなる。
つぎに、5段目として、高さ100nm、ピッチ160nm、スペース幅24nmのSiO2211パターンを形成する(図4(e))。
また、各段同士のアライメントは一軸方向のみで良いため、容易に作製することができる。
以上の本実施例の方法によれば、従来の方法では作製に非常に手間がかかった、微細ピッチかつ微細スペース幅の高アスペクト比構造とほぼ同じ透過率、複屈折率の光学的性質を有する光学素子を、容易に、また安価に作製することができる。
実施例2では、本発明を適用した光学素子の一部の構造と、その作製方法について、更にそれを含む光学素子と作製方法について説明する。
なお、本実施例で作製する光学素子は、可視領域でλ/4板として機能するよう設計されている。
従来例の図10に示すような、素子Aと素子Bを対向させて配置して構成した光学素子を作製するに際し、その素子Aを作製する場合にプロセス条件の最適化に非常に手間がかかる。
そのため、本実施例では上記従来例の構成に代え、素子Aを5回に分けて作製、積層する方法を用いた。
なお、図10において、素子Aは前述した図9(a)に示されている光学素子に対応するものであり、また、素子Bは前述した図9(b)に示されている光学素子に対応するものであり、これらの周期構造体が直交する方向に対向して配置されている。
この従来例においては、これら高屈折材料100による光素子Aと素子B同士が接するよう対向させて構成されている。
この従来例においては、ピッチ160nm、スペース幅32nm(ライン幅128nm)、高さ900nmの五酸化タンタル(Ta2O5)による微細構造200を有している。
そのため、スペース幅が非常に狭く、それに対して高さが高いため、上記パターンを一度に作製することは非常に難しい。
これに対して、本実施例では高さ180nmずつ五段階に分けて作製、積層する方法により、作製の容易化が図られている。
本実施例では、露光方法、レジストプロセスとして、近接場マスク露光法と3層レジスト法、リフトオフ法、等が用いられる。
しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではなく、同様の構造が作製できるものであれば、他のプロセスでもよい。
その上に中間層となるSOG層202を20nm厚形成する。更にその上に上層レジスト層203を30nm厚形成する(図3(a))。
これらの膜厚は、ピッチ160nm、スペース幅32nm程度のパターンが近接場露光と3層レジスト法プロセスによって再現性良く良好に作製可能な膜厚として選択した。
ピッチ160nm、遮光膜部の幅120nmの近接場露光用マスク204を用いて、上層レジスト層203を露光する(図3(b))。
これを現像することにより、上層レジスト層203に、ピッチ160nmのパターンを形成する(図3(c))。
この上層レジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系のガスを用いてSOG層202をドライエッチングすることで、上層レジストパターンをSOG層に転写する。
更に、このSOG層のパターンをエッチングマスクとして、酸素系のガスを用いて下層レジスト層201をドライエッチングすることで、SOG層のパターンを下層レジスト層に転写する。
このようにして、高さ220nm、ピッチ160nm、パターン幅30nm程度のレジスト構造を作製した(図3(d))。
これに、Ta2O5200膜を厚さ180nm成膜する(図3(e))。
その後レジストを取り除くことで、高さ180nm、ピッチ160nm、スペース幅32nmのTa2O5構造を作製する(図3(f))。
1段目の微細構造206の上にSOG層をスピンコートにて成膜することで10nm厚のスペーサ207を形成する。
1段目のスペース幅が小さいことと、粘性の高いSOGを用いることで、このスペースにSOGは埋まらない。
その上に、下層レジスト層201を220nm厚、その上に中間層となるSOG層202を20nm厚、更にその上に上層レジスト層203を30nm厚形成する(図5(a))。
1段目の周期ベクトルと同一の周期ベクトルを有するように近接場露光、現像を行ってピッチ160nmのパターンを作製し(図5(b))、Ta2O5層200を180nm高さ形成する(図5(c))。
つぎに、レジスト層を取り除くことで、1段目の微細構造上に、高さ180nm、ピッチ160nm、スペース幅32nmのTa2O5パターンを形成する(図5(d))。
2段目形成と同様に、3段目を形成することによって高さ560nmの構造を作製することができる。このうち20nm厚はSiO2分である。
同様に、4段目、5段目を形成する。
これにより、図9(a)に示されている、ピッチ160nm、スペース幅32nm(ライン幅128nm)、高さ900nmの微細構造と光学特性が殆ど変わらない光学素子の構造を、微細スペースの断面形状良く、簡便に作製することができる。
これは、ピッチ160nm、スペース幅64nm(ライン幅96nm)、高さ250nmの五酸化タンタル(Ta2O5)構造である。
スペース幅が比較的広く、アスペクト比が低いため、この構造は上記述べた近接場マスク露光、3層レジスト法、リフトオフ法を用いて一度に作製することができる。また、ドライエッチング法を用いても作製することができる。
上述のようにして作製された素子Aと素子Bを、図10のように対向させて配置することで、可視光領域の広範囲(0.40μm〜0.70μmの全域)に亙ってほぼλ/4板として機能する光学素子を作製することができる。
すなわち、本実施例の方法によれば、一度に作製する厚さを薄くしたことで、微細スペースの断面形状性が良いまま歩留まり良く加工することができる。
また、各段同士のアライメントは一軸方向のみで良いため、容易に作製することができる。
101:基板
102:所望材料による微細パターン構造
103:周期ベクトル
200:Ta2O5層
201:下層レジスト層
202:SOG層
203:上層レジスト層
204:近接場露光用マスク
205:露光用光
206:1段目の微細構造
207:スペーサ層
211:SiO2
700:TiO2膜
701:スリット
702:SiO2膜
Claims (13)
- 使用光の波長よりも短い周期の周期構造体を有する光学素子であって、
前記周期構造体が複数の段より構成されており、少なくともそのうち一つの段の周期構造体と、その上段或いは下段の周期構造体が、それぞれ同一の周期ベクトルを有することを特徴とする光学素子。 - 前記複数の段における周期構造体は、それぞれ高さに対するスペース幅の大きさが小さい周期構造体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 前記複数の段における周期構造体は、それぞれの構造体の並進位置間に相関関係を有さずに積層されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学素子。
- 前記複数の段における周期構造体は、下段の周期構造体とその上段の周期構造体との間に、周期構造をもたない中間層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子。
- 前記中間層が、前記使用光を透過する材料で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の光学素子。
- 前記中間層の厚さが、前記使用光の波長よりも薄いことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の光学素子。
- 使用光の波長よりも短い周期の周期構造体を有する光学素子であって、
第1の方向に周期を有する周期構造体に対し、前記第1の方向と直交する第2の方向に周期を有する周期構造体が対向して配置された構成を備え、
前記第1の方向に周期を有する周期構造体が、少なくとも請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学素子の周期構造体によって構成されていることを特徴とする光学素子。 - 使用光の波長よりも短い周期の周期構造体を有する光学素子の作製方法であって、
前記周期構造体を、基板上に積層された複数の段による周期構造体によって形成する工程を有し、
前記工程において、下段の周期構造体の周期ベクトルの方向と、その上段の周期構造体の周期ベクトルの方向とを、一致させるようにして位置合わせをすることを特徴とする光学素子の作製方法。 - 前記工程において、前記複数の段による周期構造体を、それぞれ高さに対するスペース幅が小さい周期構造体で形成することを特徴とする請求項8に記載の光学素子の作製方法。
- 前記工程において、前記複数の段に積層するに際しその並進位置については各段の位置合わせを行うことなく積層することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の光学素子の作製方法。
- 前記工程において、前記複数の段に積層するに際し下段の周期構造体とその上段の周期構造体との間に、周期構造をもたない中間層を形成することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の光学素子の作製方法。
- 前記中間層が、前記使用光を透過する材料で形成することを特徴とする請求項11に記載の光学素子の作製方法。
- 前記中間層の厚さを、前記使用光の波長よりも薄くすることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の光学素子の作製方法。
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