以下に、各発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、本発明はこれらの実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる様態で実施しうる。
以下で説明する実施形態1は主に請求項1に関する。また、実施形態2は主に請求項2に関する。さらに、実施形態3は主に請求項3に関する。また、実施形態4は主に請求項4に関する。そして、実施形態5は主に請求項5に関する。
<<実施形態1>>
<実施形態1:概要>実施形態1について説明する。本実施形態は板状本体からなり、その表面に退避状況が表示された表示部を有する退避表示板に関する。
図1は本実施形態の概念の一例である。この図では各戸の玄関口横の壁に設置された表札ボードに予め退避表示板取り付け箇所が設置されている場合を示している。平常時にはこの箇所に何も取り付けられていない。しかし、避難勧告の発令後に巡回者がこの家の退避状況を確認し、住人が既に退避済みの場合は、表示部に退避済みが表示された退避表示板が取り付けられる。逆にまだ避難していない場合には、表示部に未退避が表示された退避表示板が取り付けられる。これによって再度巡回に来た巡回者は、この家の中まで確認することなく、当該家の住人が既に退避していることを瞬時に把握することができる。
<実施形態1:構成>実施形態1の構成について説明する。本実施形態の退避表示板は、図1にも示したように表示部(0101)を有する。
「表示部」(0101)は、板状本体である退避表示板の表面に構成されている。また、当該表示部には退避状況が表示されている。
「板状」とは、薄く平たい状態であって、いわゆる板の形状が該当する。つまり、本発明における「板状本体」とは、退避表示板の基礎を成す領域がボード、プレート、又はパネル等で構成されていることを意味している。ただし、表示部の形状の項で後述するように、表面が必ずしもフラットな形状である必要はない。すなわち、表面に多少の凹凸部があっても全体として平らな状態であればよい。
「表面」とは、退避表示板の板状本体のうちで最も広い二面を意味し、表側、裏側は問わない。例えば、表側に未退避を示す「未」の文字を記し、裏側に退避済みを示す「済」の文字を記した場合、状況に応じてどちらか一方の面が使用されることから、表側、裏側の両面とも表面となり得る。
「退避」とは、前述した自然災害や人為的災害による災難を避けることであり、本発明においては特に避難対象地域における個人住居(家)、宿泊施設、オフィス、店舗、工場等の建物(以下「住居等」とする。)からの脱出を意味する。
「表示された」とは、印刷、貼付、焼付、若しくは刻印されたこと、手書きによって書き記されたこと、又は液晶パネル等の電子機器の表示画面等に出力されたことを言う。ここで、表示されたの「された」とは退避表示板が住居等に取り付けられた時であって、取り付け前には必ずしも表示されていることを要しない。しかし、本発明の趣旨は作業上の無駄を省き時間的な効率を向上させることであるため、当然に予想される表示事項は可能な限り事前に表示されていることが望ましい。例えば、後述する「退避状況」は本発明上必須の情報である。したがって、退避済・未退避は当然に予想される表示事項である。両者ともに事前に表示されていれば取り付け時に該当事項を丸で囲む等の簡単な作業だけで済む。つまり、該当事項をその度に記入する必要はないため所要時間は大幅に削減できる。また、避難先住所等を表示する場合にも、その避難対象地域の避難場所も各自治体ごとに事前に決められていることが一般的である。したがって、事前に印刷しておくか、巡回前に災害本部等において多人数で書き記しておけば、現地で記入する必要はなくなる。ただし、表示部が後述する電子表示板の場合であれば、当然に予想される表示事項を事前に記録媒体に入力しておくだけでよく、必ずしも事前に表示されている必要はない。取り付け時に表示画面出力するだけで済むためである。
「退避状況」とは、退避表示板が取り付けられる住居等から当該住人が退避したか否かの状況を示す情報である。それ以外にも当該住人の避難先住所や避難先電話番号、当該住人の氏名や構成人数、当該退避表示板の整理番号(登録番号)等、必要な情報が表示されていてもよい(以下これらの情報をまとめて「付加情報」とする。)。また、当該退避状況や付加情報の一部は文字や数字で構成されるだけでなくマークであってもよい。
表示部に記される退避状況が文字である場合、文字は平仮名、片仮名、平易な常用漢字、外字、又はそれらの結合等、いずれであってもよい。わが国においては何人もが瞬時に単語の意味を把握できると言う点から平易な常用漢字と平仮名を中心に使用すると便利である。ただし、漢字の構成が複雑な場合には後述するように潰れて不明瞭となる可能性がある。このような場合には構成が単純な平仮名、片仮名等を使用するとよい。当該文字の形態は好ましくは約4m、より好ましくは約10m離れた位置からでも容易に視認できるサイズ、フォント(手書きを除く。)、色等であれば特に限定はしない。例えば、文字サイズであれば1字の縦横幅はいずれも4cm以上30cm以下がよい。好ましくは6cm以上、より好ましくは10cm以上がよい。4cmよりも小さい場合は視認性が悪くなり、また30cmを超えた場合はそれに伴って退避表示板も当該サイズ以上のサイズにせねばならず、運搬性を考慮した場合には好ましくない。フォントであれば、例えばゴシックのように文字を構成する線がほぼ同幅であるものが好ましい。遠方からでも文字全体が明瞭に視認できるからである。フォントのスタイルは太字が好ましい。ただし、文字が明瞭な太字でなければならない。文字線が潰れて文字自体を把握できなくなっては意味がないからである。文字色であれば、鮮明に浮かび上がる色が好ましいが、これは後述する表示部の背景色に大きく左右される。例えば、表示部の背景色と文字色のいずれか一方が白、黄、オレンジ、淡青、黄緑等の明色の場合は、他方は黒、紺、茶、深緑等の暗色であることが好ましい。両者がお互いに補色の関係にあってもよい。また、文字色ではないが、文字部分に反射フィルム等を用いることで夜間灯火の照射により文字が反射して見えるようにしてもよい。
退避状況が文字である場合、当該退避状況のフレーズやその種類は、何人もがその意味を即座に把握できるものであれば特に限定しない。言語はその国の公用語(自国語)が好ましい。国民の多くが瞬時に意味を把握できるからである。ただし、外国語であっても「YES」「NO」「OK」のように平易かつ国際的に周知の語句であればこの限りでない。文字数は少ないほどよい。視覚的に瞬時に認識できるからである。好ましくは5字以内、より好ましくは1字である。したがって、当該避難状況のフレーズは、例えば、住人が退避済みの場合には「退避済み」「退避済」「済み」「すみ」「スミ」「済」「了」等、また住人が未退避の場合には「未退避」「未退」「未了」「マダ」「未」等を使用すると便利である。
付加情報については、文字言語を除けば必ずしも上記退避状況の文字と同一の条件を課す必要はない。付加情報の目的は詳細な情報を伝達することであり、退避状況の目的である瞬時の視認と瞬時の情報把握とは異なるからである。したがって、例えば、文字サイズは小さくてもよいし、文字数は多くてもよい。必要に応じて至近距離で時間をかけて確認すればよいからである。ただし、付加情報は主たる情報である退避状況の視認性を阻害する形態でないことが望ましい。例えば、退避状況の文字よりも大きなサイズや派手で目立つ色彩等が該当する。
表示部に記される退避状況がマークである場合、当該マークの形態はそれが意味する情報を容易に判断できるデザインであって、好ましくは約4m、より好ましくは約10m離れた位置からでも容易に認識できるサイズ、色等であれば特に限定はしない。ここで、「それが意味する情報を容易に判断できるデザイン」とは、例えば、図2で示すように住人が退避済の場合には「済」を四角で囲んだデザイン(0201)で、住人が未退避の場合には「未」を丸で囲んだデザイン(0202)のように退避状況等を図案化したマーク等が該当する。
表示部の材質は、プラスチック、金属、セラミックス、木材、紙(強化加工耐水紙等)、繊維、ガラス、又はそれらの結合のいずれであってもよい。表示部が退避表示板と一体成型されている場合には、後述する退避表示板の材質と同一となる。また、表示部が退避表示板と別個独立に作製されたものである場合には、表示部の材質は退避表示板の材質と異なっていてもよい。例えば、金属で構成される退避表示板の表面に、薄膜プラスチックフィルムで構成される表示部を貼付した場合等が該当する。さらに、表示部がラミネート構造を成し、二以上の層から構成されている場合には、各層の材質は異なっていてもよい。例えば、二層からなる表示部において下層が紙で構成され、上層がプラスチックフィルムである場合が該当する。
表示部のサイズは、後述する退避表示板の表面のサイズと同一、又は小さいサイズとなる。表示部は退避表示板の全部、または一部を占める領域だからである。
表示部の形状は、当該表示部が退避表示板の板状本体表面を構成していることから、通常はフラットである。しかし、表示部に記す退避状況の視認性を向上させる等の目的から一部を立体形状にしたり、表面に凹凸を設けても構わない。例えば、退避状況の文字がレリーフ状に浮き出ている場合やレンチキュラーレンズを表面に貼付した場合等が該当する。
表示部の背景色は、特に限定はしない。本発明の性質上、一般的には視認性の高い色であることが好ましい。例えば、黄、赤、青のような鮮やかで派手な色等が該当する。ただし、前述のように表示部の色の選択は退避状況の文字色と関係してくる。少なくとも両者は同系色でないことが望ましい。これは、例え表示部の視認性が高い色であっても、退避状況が同系色の場合は、退避状況を瞬時に視認できないからである。逆に、退避状況を瞬時に視認できるのであれば、表示部の色は必ずしも視認性の高い色である必要はない。例えば、表示部が黒、又は紺で退避状況の文字が白、黄、又は淡青の場合等が該当する。なお、夜間に表示部を発見しやすいように、表示部の背景に巡回者の照らす懐中電灯等の光を反射する反射フィルムを使用してもよい。
また、表示部は退避表示板本体から着脱可能であってもよい。図3に一例に挙げて説明する。この図の退避表示板(0301)は後述する実施形態3を基本としているため裏面に固着部(0303)を有し、ドア壁面等に固着されている。表示部(0302)は退避表示板本体から横スライド式に取外し可能となっている。まず、最初の巡回で住居等の住人が未退避であった場合、未退避を意味する退避状況「未」が表示された側の表示部(0304)を表面にして当該退避表示板に取り付けられる。次に、再巡回の際に当該住人が退避していた場合には、退避状況の変更のため表示部を一旦退避表示板本体から取外して反転させ、裏側の退避状況「済」が表示された側の表示部(0305)を表側にして再度当該退避表示板に取り付けられる。これによって再巡回者は変更用の退避表示板を持ち回る必要はなく、また、一旦固着された退避表示板を剥離することなしに退避状況のみを容易、かつ迅速に変更することができる。この時、表示部の取外しを容易にするために指穴(0306)のような凹部等を有していてもよい。また、逆に風雨等によって表示部のみが退避表示板から容易に滑り落ちることの無いように、スライド部には小突起(0307)のようなストッパー、これに対応する表示部の位置に小窪(0308)等を有していてもよい。
さらに、表示部は一部を持ち出し可能にしてもよい。これは、退避表示板に付加情報として避難先等が表示されていた場合に起こり得る状況に対処するものである。勤務先等から自宅に戻った者が家族の避難先等の情報が表示された退避表示板を発見した場合、家族の安否を案じ一刻を急ぐ者としては当該情報を書き写すような時間的、かつ精神的余裕はない。したがって、退避表示板ごと外して持ち出す可能性が多分に考えられる。避難先等の情報を伝達することは本発明の目的の一つではあるが、退避表示板ごと外されて持ち出された場合、本発明の本来の機能を果たし得ない。そこで、表示部に表示された付加情報等の情報の一部を持ち出し可能にすることによりこの問題を解決することができる。図4と図5に具体例を挙げて説明する。
図4は退避済の退避状況が表示されている表示部の一部に付加情報が記されたシール(0401)が貼付されている例である。当該シール部分が剥離できることから持ち出し可能となっている。シールに剥離開始部位(0402)を示しておけば容易に剥離できるので便利である。また、確実にシール部分を剥離させて、その部分のみを持ち出させるために図4で示すようにシール裏面に避難先地図(0403)等の重要な情報を記してもよい。シールの材質は問わないが、プラスチックフィルム、金属箔、紙(強化加工耐水紙等)、又は金属蒸着させたプラスチックフィルム等が好ましい。シール裏面に付加情報を記すためには不透過性のものが好ましい。また、接着剤は剥離容易なものであれば特に限定はしない。再接着性は要しない。むしろ、剥離後接着両面に粘着性の残らない、あるいは退避表示板のシール剥離後の表示部側に残るようなものが好ましい。
図5は付加情報が表示されている表示部の一部領域(0505:以下「取外し部」とする。)をスライドして取外しができる例である。特に図5は前述の表示部(0506)が着脱可能な場合であり、かつ取外し部を有する例を示している。付加情報の構成は前述した表示部の着脱方法と同様にすればよいが、表示部が着脱可能な場合は取外し部を配置した表示部領域を多層構造(0507)にすることが好ましい。取外し部を取外しても退避表示板本体における表示部全体の配置は変わらず、残された表示部に何ら影響を与えないからである。また、取外し部の取外し方向が表示部の着脱方向と同方向の場合は、誤って表示部ごと取外してしまうことも考えられる。この問題は、取外し部の取外し方向を表示部の着脱方向と異なる方向にすることで解決できる。例えば、図5で示すように表示部はA方向にのみスライドさせることで着脱できる。一方取外し部はB方向のみにスライドさせることで取外すことができる。本例の場合も確実に取外し部のみを持ち出させるために取外し後のプレート裏面に避難先地図等の重要な情報を記してもよい。なお、0501は退避表示部正面図を、0502は退避表示部左側面図を、0503は表示部正面図を、0504は表示部左側面図をそれぞれ示している。
表示部は、コスト面での問題が解決できるのであれば液晶パネル、又は有機若しくは無機ELパネル等のような電子表示板で構成されていてもよい。図6に一例に挙げて説明する。この図に示す退避表示板(0601)は後述する実施形態2を基本としているため引掛部(0603)を有し、ドアノブ(0604)に引掛けられている。また、本体の一部には液晶パネルである表示部(0602)の操作を行うボタン(0605)や電力を自動供給するソーラー電池(0606)が組み込まれている。まず、最初の巡回の取り付け時に電源が入れられ、住居等の住人が未退避であった場合、未退避を意味する退避状況「未」をボタン操作で表示部に出力させドアノブに取り付ける。次に、再巡回の際に当該住人が退避していた場合には、ボタン操作で退避済みを意味する退避状況「済」の表示に切り替える。表示部に出力される退避状況等のフレーズや文字色等は予め内蔵記録媒体等に入力されていてもよいし、新たに入力できるようにしてもよい。これによって、再巡回者は変更用の退避表示板を持ち回る必要はなくなり、またその場の状況に合わせた2以上の退避状況に迅速に切り替えることができる。当該退避表示板は、風雨に晒される可能性が少なからずあるため防水処理を施されていることが望ましい。
また、表示部が前記液晶パネル等で構成されている場合、当該表示部は玄関用多機能パネル等のように玄関周辺の壁面に予め設置されていてもよい。特にマンションやホテル等の集合住宅では建築時、若しくは改装時に全戸に設置すれば便利である。この場合、板状の本体は同時に壁面に設置、若しくは埋設されていても良いし、あるいは表示部が板状本体そのものであってもよい。災害時には電力供給が途絶する可能性がある。したがって、電力供給が途絶された場合には非常用バッテリー、若しくはソーラー電池からの電力供給に切り替わるようにしてもよい。表示部が壁面に設置されている場合には住人等が退避状況を表示することになるが、後述するように実際の災害時には住人にそのような余裕は無いと予想される。したがって、巡回者が戸外から退避状況を操作できるようにするとよい。例えば、後述するICタグを当該表示部に埋設する等すればよい。
次に、退避表示板に関して説明をする。退避表示板の材質は、一定の形状を保持できる素材で構成されていれば特に限定はしない。例えば、プラスチック、金属、セラミックス、木材、紙(強化加工耐水紙等)、繊維、ガラス、又はそれらの結合のいずれであってもよい。予備として保管可能か、若しく即時入手が可能であれば、災害状況に応じた材質の退避表示板を適宜選択することが好ましい。例えば、風水害時のように耐水性、耐久性等が必要な場合には、当該表示部はプラスチック、金属、セラミックス、木材、強化加工耐水紙等を基礎とするものが好ましい。また、避難対象地域で火災等の発生により耐熱性が必要である場合には、表示部の材質はセラミックス等を基礎とするものが好ましい。さらに、高層マンションのように退避表示板を大量運搬する必要がある場合には、軽量性の面からプラスチックや強化加工耐水紙等を基礎とするものが好ましい。
退避表示板の形状は、視認上支障を来たさない範囲であれば特に限定はしない。例えば、方形、楕円形、円形、三角形、それらに類似する形状、又はそれらの結合等が該当する。好ましくは方形若しくはそれに類似する形状である。加工が容易であり、また運搬上の整理面を考慮した場合に都合がよいためである。また、即認識性を考慮した場合、各退避表示板の形状は次で説明するサイズと共に統一性があることが好ましい。もしも、形状を違える場合には退避状況に応じた変更程度の数種に留めたほうが良い。住居ごとに形状が異なっていては、巡回者が退避表示板を即座に発見、又は認識できないためである。
退避表示板のサイズは、好ましくは約4m、より好ましくは約10m離れた位置からでも容易に視認できるサイズであれば特に限定はしない。サイズは大きいほど遠方からの視認性は高くなるが、重量がかさみ運搬性が悪くなる上、取扱いが困難になる等の問題が生じることから長幅、短幅共に10cm〜30cmの範囲内が適当である。ただし、退避表示板が実施形態2で詳述する引掛部を有する場合であって、かつ引掛部が退避表示板本体と一体形状をなす場合には当該引掛部のサイズを加味する必要があるため、上記の限りではない。退避表示板の長幅、短幅は等しくてもよいし、いずれか一方が長くてもよい。また、前記形状の項で述べたように、各退避表示板のサイズは巡回者等が直ちに認識できることを考慮した場合、統一性があることが望ましい。前述の形状と同様の理由による。
続いて、退避表示板の使用方法に関して説明する。まず、退避表示板の取り付け場所は、その住居等における主たる出入り口であることが好ましい。例えば、一般住宅であれば玄関、オフィスであればメインドア、店舗であれば店舗入り口、工場であれば事務所入り口等が該当する。ただし、住居等が全壊、又は半壊している場合はこの限りではない。また、退避表示板の取り付け位置は、前記主たる出入り口、若しくはその周辺であって、当該出入り口前の通路、又は通りから容易に視認できる位置であればよい。例えば、取り付ける高さであれば当該出入り口に面する通路、又は通りから高さ50cm〜3mの範囲内である。好ましくは成人の目線周辺に当たる1m〜2mの範囲内である。ただし、住居等が全壊、半壊、水没、又は埋没している場合はこの限りではない。このような場合には再巡回者が当該住所等前の通り等から容易に発見できる適当な位置に取り付けられていればよい。
次に、退避表示板を取り付ける者は特に限定しない。例えば、自治体等が各住居等の住人に平常時に予め配布しておき、災害時に避難勧告等が発令された際に各自で取り付けるようにしてもよい。しかし、この場合、紛失、保管場所の忘却等の可能性がある。また、例え取り付けが義務化されていたとしても、実際の災害時には住人にそのような余裕はないことが予測される。したがって、現実的には最初の巡回者が各戸を確認しながらその都度その結果に応じた退避表示板を取り付けていくことが最も確実であり、望ましいと考えられる。巡回者が取り付ける場合、例えば、災害時に即時に対応できるように退避表示板は各地域で予め準備しておき役所や消防署等で保管しておけばよい。
<実施形態1:効果> 本実施形態によれば、巡回の際に未退避の住居等を容易に把握できる。また、退避済みの家を再確認すると言う無駄を無くすことができるため、巡回作業効率を大幅に向上させることが可能となる。また勤務先等から自宅に戻った家族等に避難先等の情報表示をすることができる。
<<実施形態2>>
<実施形態2:概要>実施形態2について説明する。本実施形態はドアの把手等に引掛けるための引掛部と当該引掛部に連なる板状本体とからなる退避表示板であって、前記板状本体はその表面に退避状況を記すための表示部とを有する退避表示板に関する。
図7は本実施形態の概念の一例である。この図では、退避表示板がフック状の引掛部で玄関のドアノブに引掛けられている。巡回者は避難勧告発令後、この家の退避状況を確認し、既に退避済みの場合にはその旨を表示部に記した退避表示板を引掛ける。逆に未だ避難していない場合には、表示部に未退避であることを記した退避表示板を引掛ける。これによって前記実施形態1のように退避表示板取り付け箇所が予め設置されていない住宅等であっても、容易に退避表示板を取り付けることができる。
<実施形態2:構成> 実施形態2の構成について説明する。本実施形態は、前記実施形態1の構成を基本としている。すなわち、板状本体からなる表示部に加えてさらに引掛部を有する。したがって、表示部については実施形態1と同様であることからその説明を省略し、ここでは図7で示す本実施形態に特徴的な引掛部(0701)について以下で詳細に説明をする。
「引掛部」(0701)は、板状本体に連なり、退避表示板をドアの把手等に引掛けることができるように構成されている。
「ドアの把手」とは、主として開き戸の開閉を容易に行うために取り付けられた持ち手であって、ドアノブやドアハンドル等が該当する。
「ドアの把手等」とは、ドアの把手、又はドア周辺にあって引掛部を引掛け可能な突出部等を指す。引掛部を引掛け可能な突出部とは、例えば柄付ポーチライトの柄の部等が該当する。
「引掛ける」とは、突出部等に物を掛けて支え止める、若しくは吊り下げることである。
「連なる」とは、繋がっていることである。繋がりの形態は特に限定しない。例えば、図8のAで示すように板状本体(0801)と引掛部(0802)とが完全明瞭に区別可能な形態であってもよいし、図8のBで示すように板状本体(0801)と引掛部(0802)とが一体化した形態であってもよい。また、図8のCやDで示すように板状本体(0801)と引掛部(0802)との間には間接部材(0803)や連結部材(0804)等の接合部があってもよい。
引掛部の形状は、ドアの把手等に引掛けることができる形状であれば特に限定はしない。例えば、図9のAで示すようにフック(鉤)のように環状部の一部が開いた形状であってもよいし、図9のBで示すように閉じた環状形状であってもよい。また、通常は図9のCで示すように閉じた環状形状で取り付け時のみ、一部領域(0901)に力を加えることで図9のDで示すように環状部の一部(0902)が開くようにしてもよい。ここで言う環状とは、必ずしも円形である必要はない。例えば、図9のBのような変形楕円形、三角形、方形等であってもよい。さらに、図8のDのように引掛部が紐であってもよい。ところで、環状部の一部が開いた形状では風等で煽られて外れてしまう可能性がある。そこで、開口部分の全部又は一部に「外れ防止部」を有していてもよい。図10に、外れ防止部の具体例を挙げる。図10のAは管状の引掛け部内部に外れ防止部を一時収納できる例である。通常は引掛け部内部に配置されたスプリング等のバネ力によって外れ防止部が引掛け部の開口部分を塞いでいる(1001:破線部)。ドアハンドル等の目的のものに引掛ける場合には、つまみ(1002)を矢印方向に移動させることによって同時に外れ防止部を引掛け部内部に収納し、開口部を開くことができる。つまみは力を加えなければ外れ防止部と共に元の位置に戻る。図10のBは外れ防止部が環状部の一部(1003)をなし、環の内部方向に力を加えた時のみに押し開くことができる例である。カラビナに用いられている構成と同様である。力を加えない場合には外れ防止部と共に元の位置に戻る。また、環の内部から外部へ力を加えても通常の力では開口しない。
引掛部のサイズは、ドアの把手等に引掛けることができれば特に限定はしない。環状部の一部が開いた形状であればドアノブ基部やドアハンドルの直径を考慮し、環状部の内径、又は内幅が3cm〜5cmの範囲にあることが好ましい。開口部分はドアノブ基部やドアハンドルを通す必要性からドアノブ基部やドアハンドルの直径よりも広く、かつ風等で煽られて容易に外れない幅であることが好ましい。例えば、3cm〜5cmの範囲内が好ましい。ただし、引掛部がプラスチックのように柔軟性に富む材質で構成されている場合であれば、ねじりながら取り付けることが可能なことから必ずしもドアノブ基部やドアハンドルの直径よりも広い必要はない。また、閉じた環状形状であれば環状部をドアノブ等に通し、かつ風に煽られて容易に外れないために直径5.5cm〜8cmの範囲内が好ましい。図9のBで示したように環状部の下方はドアノブを通せるようにドアノブ直径よりも広くして、逆に上方はドアノブから外れないようにドアノブ直径よりも狭くすると、迅速な取り付けと落下防止が可能となるので便利である。
<実施形態2:効果>
本実施形態によれば、各戸が予め退避表示板取り付け部等を設置していない場合であっても、多くの住居等の出入り口に見られるドアの把手等に、手間をかけることなく退避表示板を取り付けることができる
<<実施形態3>>
<実施形態3:概要>実施形態3について説明する。本実施形態は、板状本体とその裏面にドア壁面等に固着するための固着部とからなる退避表示板であって、前記板状本体はその表面に退避状況を記すための表示部と、を有する退避表示板に関する。
図11は本実施形態の概念の一例である。この図に示す退避表示板は前記実施形態2を基本としている。即ち、退避表示板がフック状の引掛部を有し、かつ裏面にドア壁面等に固着するための固着部を有している。巡回者は避難勧告発令後、各住居の退避状況を確認し、既に退避済みの場合にはその旨を表示部に記した退避表示板を入り口周辺に取り付ける。ところが、当該入り口が引戸や自動ドアのような場合には把手等がないのがほとんどである。このように引掛部で引掛ける場所がない場合には、当該退避表示板の裏面に粘着層等の固着部を有することで、退避表示板をドアの任意の場所に取り付け可能なことを特徴とする。
<実施形態3:構成>実施形態3の構成について説明する。本実施形態は、前記実施形態1、又は2の構成を基本としている。すなわち、実施形態2を基本とする場合であれば、図11のように表示部と引掛部に加えてさらに固着部を有している。したがって、表示部と引掛部については実施形態1、及び2と同様であることからその説明を省略し、ここでは本実施形態に特徴的な固着部(1101)について以下で詳細に説明をする。
「固着部」(1101)とは、退避表示板の裏面にあって、ドア壁面等に固着可能なように構成されている。
「裏面」とは、退避表示板の表面において表示部のある面と反対側の面を言う。したがって、本実施形態で表示部が着脱できず退避表示板と一体化されている場合には、退避表示板の両面を表示部として使用することはできない。
「ドア壁面等」とは、ドアの壁面、ドア周辺の壁面、又は門の壁面を意味する。ただし、住居等が全壊、若しくは半壊の場合であって、前記壁面が存在しない場合には固着可能で、かつ巡回時に通り等から発見され易い場所であればいずれでもよい。
「固着する」とは、接着すること、又は固定して付けることである。着脱可能か否かは問わない。
固着部の構成は、退避表示板の裏面の全面又は一部のいずれでもよい。また、ドア壁面等に固着可能であれば材質は特に限定はしない。例えば、磁石、粘着層、吸盤それらの組み合わせ等が該当する。
図12で固着部が磁石の場合を例示して説明する。図12のAで示すように板状磁石(1201)を退避表示板の裏面(1202)に固定したものであってもよいし、図12のBで示すように複数の粒子状磁石(1203)を袋(1204)等に充填したものを退避表示板の裏面に固定したものであってもよい。後者は被着金属面に凹凸がある場合でも対応できるように、固着部表面の自由度を高めたものである。被着面が鉄製ドア等のように強磁性体で構成されている場合には、固着部が磁石であると便利である。
図13で固着部が粘着層の場合を例示して説明する。図13のAで示すように固着部は接着剤等の粘着層(1301)によって構成される。接着剤の種類は瞬時に接着が可能な性質であって、固着後に風や水で容易に剥離しない程度の固着力のあるものであれば特に限定はしない。例えば、シアノアクリレート系、合成ゴム系等が該当する。接着剤がゲル状であれば多少の凹凸面にも対応できるためより好ましい。また、図13のBで示すように粘着層(1301)が剥離膜(1302)や粘着支持層(1303)を有していてもよい。剥離膜は粘着層の表面で粘着層の目的外箇所への接着を防止する薄膜であって、退避表示板の取り付け時には粘着層を露出させるために剥離して使用する。また、粘着支持層は粘着層の下層に位置する層であって、スポンジや弾性ゴム等弾性を有する材質で構成される。粘着支持層はドア壁面等に凹凸がある場合に粘着層の固着面を大きくすることができる。被着面が木製、コンクリートのような細かい凹凸面があるもので構成されている場合には、固着部が粘着層であると便利である。
固着部が吸盤の場合は、風雨や振動によって、また乾燥によって容易に被着面から剥離しない吸着力を有していれば吸盤の大きさや数は特に限定しない。例えば、大型吸盤を一つで有していてもよいし、小型の吸盤を複数有していてもよい。吸盤の材質は、プラスチックや合成ゴム等で構成されていればよい。ガラスドアや大理石の壁のように被着面がフラットな材質の場合には、固着部が吸盤であると便利である。
<実施形態3:効果>本実施形態によれば、引き戸等のように把手のないドアの場合であっても当該退避表示板を手間をかけることなく即座に各戸に取り付けることができる。
<<実施形態4>>
<実施形態4:概要>実施形態4について説明する。本実施形態は、表示部が蓄光材をその一部に含む退避表示板に関する。
図14は本実施形態の概念の一例である。この図では、災害による停電で通路灯が点灯していないマンションの夜間の状態を示している。地震や台風等の災害時には送電線の断線や停電等により照明が機能不全を起こす可能性が高い。このような時、夜間に再巡回者が外部照明のない中で退避表示板を発見するのは容易なことではない。そこで、本実施形態は退避表示板の一部に蓄光材を含ませることを特徴としている。これによって図12のように日中、太陽光の照射を受けた表示部が夜間に発光することから退避表示板の位置確認を容易に行うことができる。
<実施形態4:構成>実施形態4の構成について説明する。本実施形態は、前記実施形態1から3のいずれか一の構成を基本としており、その構成要素はそれぞれの実施形態と同様である。例えば、実施形態2を基本とする場合には表示部、引掛部、固着部を有している。本実施形態で特徴的な点は、本実施形態の表示部が蓄光材をその一部に含んでいる点である。そこで、ここでは本実施形態に特徴的な蓄光材を含む表示部について以下で詳細に説明をする。
「蓄光材」とは、太陽光や電灯からの光を照射された後、暗闇においてもエネルギーの供給を受けることなく長時間にわたって可視光を発する性質(蓄光性)を有する物質をいう。蓄光材として代表的なものとしては、硫化亜鉛(ZnS)を母結晶とするものと、ストロンチウムアルミン酸塩(SrAl2O4、Sr4Al14O25等)を母結晶とするものとがある。ここで「母結晶」とは、蓄光材の結晶構造を特定する物質を言う。蓄光材は、当該母結晶のみでは蓄光性がなく、Cu、Eu、Dy、B等の元素を微量に混入させることで蓄光性を発揮する。
蓄光材は材質によって発光色(特定の波長帯の光)、発光輝度、残光時間(光の照射を止めてから光り続ける時間)等が異なる。例えば、硫化亜鉛を母結晶とするものは黄緑色の光を発し、残光時間は0.5時間程度であるが、ストロンチウムアルミン酸塩を母結晶とするものは緑色の光を発し、残光時間は5時間以上である。本実施形態で使用する蓄光材は特に限定はしないが、本発明の趣旨を考慮した場合には残光時間が5時間以上ある蓄光材が好ましい。発光色は暗闇でも容易に視認できる波長の発光色であれば特に限定はしない。黄色光や緑色光は目立つので好ましい。
「表示部が蓄光材をその一部に含む」とは、表示部の全部又は一部の表面に蓄光材が配置されている、表示部の全部又は一部を構成する材質に蓄光材が混入されている、又はその組み合わせを意味する。
表示部の表面に蓄光材を配置する場合は、蓄光材と樹脂等からなる蓄光充填材を表面に塗布してもよいし、蓄光材を含む薄膜フィルム等を貼付してもよい。蓄光充填材を表示部の表面に容易に塗布するためには、例えば、樹脂を常温で硬化させる硬化剤を加えて当初ゼリー状のものが塗付後に固まるようにすればよい。また、蓄光充填材を表示部の表面に塗布する場合、塗布する層の厚さは0.05mm以上2mm以下であるのが好ましい。これは、0.05mmよりも薄い場合蓄光充填材が表面部から剥離しやすくなり、2mmよりも厚い場合蓄光充填材の量が多くなり、コストがかかる上に重量も増すためである。蓄光材を含む薄膜フィルム等は表示部の最表面部に配置されるが、表示部が二層以上のラミネート構造を成す場合には、この限りではない。例えば、蓄光充填材を塗布した層の上にさらに励起光を遮断しない透明フィルム等を剥離防止に貼付しても良い。この場合、蓄光充填材を塗布する層の厚さは0.05mm以下も可能である。
表示部に含まれる蓄光材は、退避状況によって発光色の異なる材質を用いてもよい。この場合、各退避状況に使用する蓄光材の残光時間をほぼ等しくする必要がある。これは残光時間の短い蓄光材の使用量を当該長い蓄光材のそれよりも多くすることで達成できる。この方法によれば退避状況を文字で確認せずとも発光する色のみで即座に認識できるので非常に便利である。
<実施形態4:効果>本発明の退避表示板によれば、電力供給されない災害時の夜間であっても容易に視認できる。また、退避状況によって発光色を変える事により対比状況を確認せずとも発光する色のみで即座に認識できる。
<<実施形態5>>
<実施形態5:概要>実施形態5について説明する。本実施形態は、板状本体が退避状況を記すためのICタグを含む退避表示板に関する。
図15は本実施形態の概念の一例である。この図は、高層ホテルの客室の退避状況を、ICタグリーダーライター機能を備えたPDA(携帯情報端末)で確認している場面を示している。大型ホテルや高層住宅等は客室数や戸数が多く、どの階も造りが同じため再巡回者は退避確認作業の際に混乱を起こしやすい。また、ホテルの客室入り口は日中でも太陽光が当たらないこと場合が多いため、停電時の夜間巡回では前記実施形態4の蓄光材を含む退避表示板でも効果がなく、一層混乱を起こす結果となる。さらに前記実施形態の退避表示板はいずれも各戸(若しくは各客室)の入り口付近に行かなければ退避状況を確認できなかった。しかし、既に全戸(若しくは全客室)が退避済のフロアにまで立ち寄ることは作業上非効率的である。そこで、本実施形態では、退避表示板にICタグを含み、退避済、未退避のそれぞれの情報を記録した退避表示板を各戸に取り付ける。各退避表示板のICタグと各地域の災害対策本部に設けられた管理システムとの間で、若しくは管理機能を備えたPDA間で、情報を送受信することにより未退避の場所を特定し、モニタ等の表示画面に映し出すことで作業効率を大幅に向上させることを特徴としている。例えば、図15ではPDAのモニタに銀座キングホテルの宿泊客の退避状況が表示されている。これによれば、1、2階は既に退避済みであることから巡回者は3階に直行すればよいことがわかる。また、3階では302号室と307号室が未退避だが、他は退避済みであることことがホテル建物内に入る前から判断できるため、予め効率的な巡回コース等を計画し易い。再巡回時に未退避であった客室宿泊客が退避したことを確認した場合には、当該客室の退避表示板に埋設されたICタグを退避済に記録し直せば良い。それによって、当該客室は未退避リストから退避済リストへ移行される事になる。
<実施形態5:構成>実施形態5の構成について説明する。本実施形態は、前記実施形態1から4のいずれか一の構成を基本としており、その構成要素はそれぞれの実施形態と同様である。例えば、実施形態2を基本とする場合には表示部、引掛部、固着部を有している。本実施形態で特徴的な点は、本実施形態の板状本体がICタグを含んでいる点である。そこで、ここでは本実施形態に特徴的なICタグとそれを含む板状本体について以下で詳細に説明をする。
「ICタグ」とは、無線ICタグ、RFID(Radio Frequency Identification)タグとも呼ばれ、識別データ等を記録するためのICチップと無線を送受信するための小型アンテナとが一体化したものである。本実施形態のICタグは、電池を持たずに管理システム等のアンテナから非接触電力伝送される受動型ICタグであることが好ましい。ICタグには、退避状況の他にも住所(マンションやホテルであれば号数を含む。)、住居者氏名、退避先、設置場所の緯度経度等の付加情報を記録されていることが好ましい。
「ICタグを含む」とは、ICタグを埋設する、又は貼付することを意味する。
以下で本実施形態の使用例について説明する。ICタグとの無線通信が可能な中央管理システムや大型アンテナが災害時も使用可能であれば、最初の巡回者はICタグを含む退避表示板を各戸に取り付けながら担当地区を巡回すればよい。この場合、中央管理システムが各戸の退避状況を把握できることから未退避の箇所を再巡回者に無線にて連絡する、又は位置データを送信する等すればよい。しかし、震災時等には中央管理システムや大型アンテナも機能不全に陥る可能性がある。そのような場合は、地域ごとに設置される災害対策本部に仮設管理システムを設置し、巡回者が携帯するICタグリーダーライター、又はその機能を有するPDA等他の携帯端末(以下携帯端末とする。)との間でデータの授受を行うようにすればよい。後者の場合、避難対象地域の住居等のマップを予め入力した地域マップデータファイルが必要となる。最初の巡回者はICタグを含む退避表示板と地域マップデータファイルを予め入力した、若しくは他の記憶装置から取得した携帯端末を用いて各戸を巡回し、退避表示板を取り付けるごとにその退避状況と位置情報を携帯端末に入力する。巡回後に仮設管理システムは各携帯端末から巡回データを取得し、巡回データに基づいて再巡回コースの割り出しを行う等の情報処理を行う。再巡回の際には新たな巡回データを入力された携帯端末を持って巡回を行う。その際、前回未退避の住居等が退避済になっていた場合には、ICタグライター機能によって当該退避表示板の退避状況を退避済に変換し、携帯端末にその旨が記録されるようにすれば良い。
<実施形態5:構成>本実施形態によれば、退避表示板に含まれるICタグ通信を利用した情報処理に基づき、巡回作業効率をより一層向上させることが可能となる。