JP2007129154A - 軟磁性圧粉体、磁性粉および軟磁性体の処理液ならびに処理方法、圧粉体を用いたモータ - Google Patents

軟磁性圧粉体、磁性粉および軟磁性体の処理液ならびに処理方法、圧粉体を用いたモータ Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性のある絶縁被膜を有する磁性粉および比抵抗が高く、鉄損等の少ない圧粉磁心の圧粉成形体を提供すること。
【解決手段】鉄粉末または鉄を主成分とする合金粉末の表面に形成された絶縁膜を有する磁性粉の圧粉成形体であって、密度が7.5g/cm以上で、上記磁性粉の平均粒径が30〜200μmであって、上記絶縁膜の平均厚さが1〜700nmであって、ヒステリシス損Wh1T/400Hzが45W/kg以下であり、比抵抗が1000μΩ・cm以上であり、渦電流損We1T/400Hzが510W/kg以下であり、鉄損W1T/400Hzが50W/kg以下であることを特徴とする圧粉磁心、およびその磁心を得るための磁性粉、ならびに処理液。
【選択図】図4

Description

本発明は、軟磁性圧粉体、磁性粉および軟磁性体の処理液ならびに処理方法、圧粉体を用いたモータに関する。
上記のような用途に用いられる圧粉磁心は、低鉄損でかつ高磁束密度であることは勿論のこと、それらの磁気特性が低周波から高周波の領域においても低下しないことが求められている。鉄損には磁心の比抵抗と関係の大きい渦電流損と鉄粉の製造の過程およびその後のプロセス履歴から生じる鉄粉内の歪に影響を受けるヒステリシス損とがある。そして、鉄損(W)は下記(式1)のように渦電流損(We)とヒステリシス損(Wh)の和で示すことができる。(式1)中、fは周波数、Bmは励磁磁束密度、ρは比抵抗、tは材料の厚さ、kとkは係数である。
W=We+Wh=(kBm/ρ)f+kBm1.6f・・・・(式1)
(式1)から、渦電流損(We)は周波数fの二乗に比例して大きくなるので、特に、高周波での磁気特性を低下させないためには、その渦電流損(We)の抑制が不可欠である。圧粉磁心の渦電流の発生を抑えるためには、用いる磁粉のサイズを小さくし、かつ、磁粉一つ一つの表面に絶縁膜を形成させ、その磁粉を用い圧縮成形した圧粉磁心を用いる必要がある。
このような圧粉磁心において、絶縁が不十分であると比抵抗ρが低下して、渦電流損(We)が大きくなる。一方、絶縁性を高めるために絶縁被膜を厚くすると、磁心中の軟磁性粉の占める容積の割合が低下し、磁束密度が低下する。また、磁束密度を向上させるために、軟磁性粉の圧縮成形を高圧で行って、軟磁性粉の密度を増加させると、成形時の軟磁性粉の歪が避けられず、ヒステリシス損(Wh)が大きくなるため、結果として鉄損(W)の抑制は難しい。特に、低周波領域においては渦電流損(We)が小さいため、鉄損(W)中のヒステリシス損(Wh)の影響が大きくなる。
従来の圧粉磁心の製造方法として、軟磁性粉と絶縁性粒子を混合して軟磁性粉粒子の表面に絶縁層を形成する方法(特許文献1)がある。また、絶縁層が形成された軟磁性粉に結着剤として樹脂を混合後、圧縮成形により圧粉磁心を製造する方法(特許文献2)が知られている。
特開2003−332116号公報 特開2004−288983号公報
しかしながら、上記のような製造方法では、絶縁層による絶縁が不十分であると、渦電流損(We)が大きくなるという欠点がある。絶縁性を良くするために絶縁層を厚くすることが考えられるが、絶縁層が厚くなると軟磁性粉の占積率が低下し、上記したように磁束密度が低下してしまう。また、磁束密度を向上させるために密度を上げようとして、高圧力で圧縮成形すると、形成された絶縁層が破壊されて渦電流損(We)が増加したり、軟磁性粉に残留する成形時の歪が大きくなり、ヒステリシス損(Wh)が大きくなるため、最終的に鉄損(W)が増加する。
一方、通常信頼性の高い絶縁層は無機物であり、無機物は硬度が高いため、無機絶縁層を磁粉表面に形成した磁粉を用いた圧縮成形による磁心は空隙率が高く、磁心の磁束密度は低下し易い。その際、磁心中の軟磁性粉の密度を向上させるために、圧縮成形の圧力を大きくすると、成形時の磁粉の歪が大きくなり、ヒステリシス損(Wh)の増大を招くため、鉄損(W)の抑制は難しくなる。特に、低周波領域においては渦電流損(We)が小さいため、鉄損(W)中のヒステリシス損(Wh)の影響が大きくなる。そのため、広い周波数帯で用いる磁心は渦電流損(We)とヒステリシス損(Wh)の両方を小さくすることが必要不可欠となる。しかし、このヒステリシス損(Wh)の低減については絶縁層の耐熱性向上の対策が難しく、良好な解決法がなかったのが現状である。
本発明は、軟磁性粉の占積率を高めて磁束密度を向上させるとともに、軟磁性粉表面の絶縁層による被覆を良好なものとし、渦電流損(We)を抑制しつつ、軟磁性粉中の圧縮残留歪によるヒステリシス損(Wh)を抑えた圧粉磁心用軟磁性粉を提供することが目的である。またそれを用いて得られる圧粉成形体ならびに磁性紛の絶縁層の形成処理液とそれを用いて絶縁層を形成した磁粉を用いて形成した圧粉磁心とその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、高密度で、抵抗値が高く、磁気特性に優れた圧粉磁心とそれを得るのに適した磁性粉を提供するものである。
本発明による圧粉磁心は、鉄粉末または鉄を主成分とする合金粉末の表面に形成された絶縁膜を有する磁性粉の圧粉成形体であって、密度が7.5g/cm以上で、上記磁性粉の平均粒径が30〜200μmであって、上記絶縁膜の平均厚さが1〜700nmであって、実質的に残留応力が認められず、ヒステリシス損Wh1T/400Hzが45W/kg以下であり、比抵抗が1000μΩ・cm以上であり、渦電流損We1T/400Hzが510W/kg以下であり、鉄損W1T/400Hzが50W/kg以下であることを特徴とするものである。
また、本発明による磁性粉は、鉄粉末または鉄を主成分とする合金粉末の表面に形成された絶縁膜を有する磁性粉であって、上記磁性粉の平均粒径が30〜200μmであって、上記絶縁膜の平均厚さが1〜700nmであって、密度が7.5g/cmの圧粉成形体を製造したときに、ヒステリシス損Wh1T/400Hzが45W/kg以下であり、比抵抗が1000μΩ・cm以下であり、渦電流損We1T/400Hzが10W/kg以下であり、鉄損W1T/400Hzが50W/kg以下である特性を与えることができることを特徴とするものである。この磁性粉は、上記圧粉磁心を得るのに適している。
上記の磁気特性は、圧粉磁心を製造するのに最も標準的であると考えられる600℃で圧粉成形体を焼鈍した時の磁気特性を基準として示した。従って、焼鈍温度が変われば磁気的特性も当然変わり得るが、本発明はこれらを排除するものではないことは当然である。例えば、表1に示した本発明の実施例のデータに拠れば、焼鈍温度が700℃、800℃、900℃と上昇するにつれて、ヒステリシス損は減少する傾向にあり、比抵抗も同様である。渦電流損および鉄損は温度の上昇とともにやや増加する傾向にある。しかし、600℃での特性が上記の特性を満足するならば、本発明の目的を達成することができる。従って本発明の範囲内である。
本発明において、磁性粉の絶縁膜が3〜500nmの時に600℃で焼鈍して得られる圧粉磁心(焼成体)の残留応力は実質的に認められず、ヒステリシス損Wh1T/400Hzが、45W/kg以下であり、比抵抗は1000〜5000μΩ・cmであり、渦電流損We1T/400Hzが510W/kg以下であり、鉄損W1T/400Hzが4550W/kg以下であることが望ましい。
本発明による圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成処理液は、アルコキシシランおよびその誘導体から選ばれる1種以上と、アルコールおよび水を含有するものである。
本発明によれば、耐熱性が高く、比抵抗の高い高密度圧粉成形体およびそれを得ることができる磁性粉ならびにその磁性粉を製造するのに好適な処理剤を得ることができる。
最初に本発明に磁性粉と公知の磁性粉との相違点について図面を用いて説明する。図4は本発明による圧粉磁心の断面構造を模式的に示し、5は絶縁被覆6を有する磁性粉5である。図1は本発明による磁性粉の断面構造を模式的に示すものであって、鉄または鉄を主体とする合金の粉末の粒子1の表面に、酸化物などの絶縁性膜2が形成されている。この絶縁性磁性粉の平均粒径は30〜200μmが好ましく、特に40〜100μmがより好ましい。絶縁性膜2は磁性粉を製造した際は、実質的に連続している。その理由は後で説明する処理液中で金属粉(軟磁性粉)を処理するいわば、湿式法をとるためである。しかしこの磁性粉を成形し焼鈍すると、図2に示すように、金属粉と絶縁膜の熱膨張係数の違いにより、絶縁膜2’に亀裂が入り、図1の絶縁膜と比べると、絶縁膜の連続性または被覆率は低下する。
図1および図2における絶縁性膜2、2’の平均厚さは1〜700nmで、好ましくは30〜200nm、特に好ましくは40〜100nmである。この絶縁膜の厚さは、処理時間、温度、処理液の組成などにより調節することができる。
しかし、図3の公知の方法による絶縁粒子4が金属粒子3に付着しているものとは異なり、本発明の磁性粉には実質的に絶縁膜の連続性があり、従って抵抗値が高くなる。また、絶縁膜の連続性あるいは被覆率が図3のものよりもはるかに優れているために、漏れ磁束が少なく、圧粉磁心の磁気特性が優れているのである。
図3の磁性粉の構造は、特許文献1に記載した方法によるもので、金属粉3と酸化物粒子4をいわば乾式方法で混合して、金属粉粒子の表面に酸化物粒子を付着させたものであり、従って、本発明の磁性粉よりも絶縁膜の連続性は明らかに劣るのである。
また、特許文献2においては、シリコーン樹脂を金属粒子に被覆して熱処理する技術が開示されているが、シリコーン樹脂の炭素分が磁性粉の粒子内に拡散するため、磁性粉の磁気特性が低下することが懸念される。本発明で好適な処理液はそのような問題が無い。しかも公知の燐酸成分含有液で処理して得られる絶縁性被膜の耐熱性が低いという問題があるが、本発明の処理液を用いて得られる絶縁膜は、耐熱性があり、従って十分高い温度で焼鈍または熱処理することができるので、圧粉磁心の磁気特性が優れている。
本発明の磁性粉は、樹脂を含有しない無機物からなる絶縁層で表面が絶縁被覆処理された軟磁性粉末粒子であり、かつ軟磁性粉末粒子に圧縮残留歪がないことを特徴としている。上記構成の圧粉磁心にあっては、樹脂を含有しない無機物からなる被覆の平均厚さが1〜700nmの絶縁層で表面が絶縁被覆処理された軟磁性粉末粒子のみで構成されている。従って、絶縁層の絶縁性が高く、結果として、軟磁性粉の占積率を高めて磁束密度を向上させることができ、渦電流損(We)を小さく抑えることができる。また、絶縁層が600℃以上の耐熱性を有するSiOであるため、上記構成の圧粉磁心は600℃以上の温度で焼鈍が可能であり、軟磁性粉の圧縮残留歪を減少させることが可能である。更に、ヒステリシス損(Wh)を小さく抑えることができ、結果として極めて低く抑えた鉄損(W)を実現することができる。
ここで、上記圧粉磁心は、望まれる磁気特性を確実に得るために、密度比が95%以上であり、かつ圧粉磁心中の軟磁性粉の占積率が90%以上であることが望ましく、これまで多用されている珪素鋼板の飽和磁束密度1.8〜1.9T(テスラ)程度の飽和磁束密度が得られる。なお、この場合の占積率は、絶縁層を除いた軟磁性粉そのものの占積率である。
軟磁性粉末表面の絶縁層であるSiOの平均厚さは1〜700nmが好ましい。絶縁層が1nm以下の厚さになるとトンネル電流が発生し、絶縁性を低下させる。一方、絶縁層が700nmになると圧粉磁心中のSiOの占積率が無視できなくなり、さらに硬度の高い絶縁層を表面に有する軟磁性粉末は圧縮成形による軟磁性粉の高密度化が困難となり、結果的に高磁束密度を得ることが出来ない。
尚、圧粉磁心に対して機械的強度が必要な場合は、SiOによる表面処理後の軟磁性粉末の表面に無機バインダーとして使用可能な水に溶解したNaO/SiO系水ガラスまたは燐酸/硼酸/マグネシア系の溶液を用いた表面処理を行い、圧縮成形後に焼鈍を実施すれば良い。600℃以上の温度での焼鈍の際に前記無機バインダーは軟化し、SiOによる表面処理後の軟磁性粉末の表面に前記無機バインダー材は濡れ拡がり、焼鈍終了後に前記無機バインダー材は固化し、圧粉磁心の強度は確保される。その際、固化した無機バインダー材の圧粉磁心中の体積分率は磁気特性を確保するため3vol%以下である必要がある。
本発明の圧粉磁心は低鉄損を目的とした磁心であることから、使用する軟磁性粉末は平均で30〜200μmの粒径サイズを有することが望ましい。圧粉磁心を使用する周波数領域に依存するが、軟磁性粉末の平均粒径サイズが200μmより大きくなると、軟磁性粉末内で発生する粒内渦電流の値が大きくなる。一方、軟磁性粉末の平均粒径サイズが30μmより小さくなると軟磁性粉末に対する絶縁層の厚さが無視できなくなり、圧粉磁心における絶縁層の占積率を小さくすることが難しくなると同時に、硬度の高い絶縁層により軟磁性粉末の圧縮性が著しく低下し、高磁束密度を得ることが出来なくなる。
本発明の代表的な実施形態は次の通りである。圧粉磁心用軟磁性粉の表面に絶縁層を形成する絶縁層形成処理液が、アルコキシシランおよびその誘導体の少なくとも一種を含み、アルコールと水、更には必要な場合加水分解用触媒を含有してなることを特徴とする圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成処理液である。
また、本発明は軟磁性粉の表面に絶縁層を形成する圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成方法を提供するものである。すなわち、絶縁層形成処理液がアルコキシシランおよびその誘導体の少なくとも一種を含み、アルコールと水、更には必要な場合加水分解用触媒を含み、前記軟磁性粉に絶縁層形成処理液を混合し、所定温度で熱処理することにより平均厚さが1〜700nmの絶縁層を形成することができる。アルコキシシランの誘導体とは、上記のようにアルコキシシランの加水分解生成物、その脱水縮合物およびアルコキシシロキサンを含む。
また、軟磁性粉の表面に絶縁層を形成する圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成処理液が、アルコキシシランおよびその誘導体の少なくとも一種と、アルコールおよび水、更には必要な場合加水分解用触媒を含むものである。これにより、前記軟磁性粉に絶縁層形成処理液を混合し、所定温度で熱処理することにより平均厚さが1〜700nmの絶縁層を形成することができる。
絶縁膜の平均厚さが1〜700nmの絶縁層を表面に有する圧粉磁心用軟磁性粉を用いて加圧成形した圧粉磁心は600〜900℃の熱処理を施すことで、鉄損、特にヒステリシス損の低減化を可能にした。本発明の圧粉磁心はより高い磁束密度が必要なモータ用鉄心やディーゼルエンジンおよびガソリンエンジンの電子制御式燃料噴射装置に組み込まれる電磁弁用のソレノイドコア(固定鉄心)及びプランジャ、その他各種アクチュエータ用のコア部品として適用できる。
絶縁層形成処理液中のアルコキシシロキサンおよびアルコキシシランの一般式はそれぞれ(式1)および(式2)で表され、それぞれに示すような末端基及び側鎖にアルコキシ基を有する化合物が挙げられる。
Figure 2007129154
Figure 2007129154
また、溶媒のアルコールにはアルコキシシロキサン、アルコキシシラン中のアルコキシ基と同じ骨格の化合物が好ましいがこれらに限られるものではない。具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
また、加水分解及び脱水縮合用触媒としては酸触媒、塩基触媒、中性触媒のいずれでも良いが中性触媒が金属の腐食を最小限に抑えられるので最も好ましい。中性触媒としては、オルガノスズ触媒が効果的で、具体的にはビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、n−ブチルトリス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ジ−n−ブチルビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジ−n−ブチルジラウリルスズ、ジメチルジネオデカノエートスズ、ジオクチルジラリル酸スズ、ジオクチルジネオデカノエートスズ等が挙げられるがこれらに限られるものではない。また、酸触媒としては希塩酸、希硫酸、希硝酸、蟻酸、酢酸等が、塩基触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等が挙げられるがこれらに限られるものではない。
絶縁層形成処理液中の、アルコキシシロキサン、アルコキシシラン、その加水分解生成物、及びその脱水縮合物総量の含有量は体積分率として0.2〜60vol%が好ましい。アルコキシシロキサン、アルコキシシラン、その加水分解生成物、及びその脱水縮合物総量の含有量が0.2vol%以下になると、加水分解時にアルコキシシロキサン、アルコキシシランに対する水の添加量の制御が難しくなる。即ち、アルコール中の水及び絶縁層形成処理時の水の混入量が処理液中の水に対して無視できなくなるからである。一方、アルコキシシロキサン、アルコキシシラン、その加水分解生成物、及びその脱水縮合物総量の含有量が60vol%以上になると、絶縁層形成処理時に軟磁性粉が凝集し易くなり、その後の圧粉磁心製造時に、圧粉磁心中の軟磁性粉の占める容積の割合に低下が生じる。
絶縁層形成処理液中のアルコキシシロキサンと水とは化学反応式(1)に示した加水分解反応を生じ、アルコキシシランと水とは化学反応式(2)に示した加水分解反応を生じる。
Figure 2007129154
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この際、水の添加量がアルコキシシロキサン又はアルコキシシランの加水分解反応の進行度を支配する因子の一つとなる。加水分解反応は軟磁性粉の表面処理を行う上で必要である。それはシラノールのOH基が軟磁性粉表面のO原子又はOH基と相互作用が強いからである。しかしながら、加水分解反応が進みシラノール基の濃度が高くなるとシラノール基を含む有機ケイ素化合物(アルコキシシロキサン又はアルコキシシランの加水分解生成物)同士の脱水縮合反応が進行し、有機ケイ素化合物の分子量が大きくなる。その結果、処理液による軟磁性粉表面の被覆率の低下、軟磁性粉同士の凝集が発生し易くなる。これは表面処理液としては適正な状態ではない。従って、絶縁層形成処理液中のアルコキシシロキサン又はアルコキシシランに対する適正な水の添加量が必要となる。ここで、絶縁層形成処理液中の水の添加量として、化学反応式(2)に示した加水分解反応における反応当量の1/10〜11/10が好ましい。
水の添加量が化学反応式(2)に示した加水分解反応における反応当量の1/10以下では、有機ケイ素化合物のシラノール基の濃度が低いため、有機ケイ素化合物と軟磁性粉表面との相互作用が低く、軟磁性粉に対する適切な絶縁処理が難しい。一方、水の添加量が化学反応式(2)に示した加水分解反応における反応当量の11/10以上では、有機ケイ素化合物の分子量が大きくなるため、処理液による軟磁性粉表面の被覆率の低下、軟磁性粉同士の凝集が発生し易くなる。
絶縁層形成処理液の添加量は、軟磁性粉1kgに対して25〜200mlが望ましく、200mlより多いと軟磁性粉表面の絶縁被膜が厚くなり過ぎるのと、軟磁性粉同士の凝集が発生し易くなるために圧粉磁心作製時の磁束密度の低下又はヒステリシス損の増加を招く。また、25mlより少ないと絶縁性が悪く、処理液で軟磁性粉が濡れない部分が生じ、磁心中での渦電流損の増加が生じる。
また、軟磁性粉としては純鉄、Fe−Si合金、Fe−Al合金、パーマロイ、センダストなどの鉄系合金粉末であれば良いが、磁束密度が高く、成形性が良好で価格の安い純鉄が望ましい。
[実施例]本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
[実施例1]
軟磁性粉として平均粒径が58μmの鉄粉を用いた。絶縁層形成処理液にはCHO−(Si(CHO)−O)−CH(mは3〜5、平均は4)を2.5ml、水0.48ml、脱水メチルアルコール47.5ml、ジラウリン酸ジブチル錫0.025mlを混合し、1昼夜25℃の温度で放置した溶液を用いた。
(1)鉄粉1kgに対し、50mlの絶縁層形成処理液を添加し、攪拌した。その処理磁粉に対し、真空中で攪拌しながら150℃、1時間の熱処理を行った。尚、平均絶縁被膜厚さは40nmであった。
(2)(1)で作製した処理鉄粉を成形型に充填し、圧粉磁心の密度比が95%になるように、7〜20t/cmの圧力で縦20mm、横30mm、厚さ5mmの試験片を得た。
(3)(2)で作製した試験片について400から1000℃の熱処理を不活性雰囲気中で2時間実施した。
得られた試験片について、1T、400Hzの条件下で各種磁気特性を測定した。尚、試験片の外周面は、成形時において成形型と接触し、加圧による歪を受けて最も残留応力が高い部分を含んでいる。各試験片の熱処理温度、残留応力および磁気特性の測定結果を表1に示した。
この結果、500℃以下の熱処理では鉄粉の残留応力の開放は不充分であるが、600℃以上の熱処理では鉄粉の残留応力は小さくなり、その結果ヒステリシス損を低減することができた。一方、試験片の比抵抗は熱処理温度の増加と伴に減少する傾向にあった。しかし、900℃以下の熱処理では試験片の渦電流損は一定値であるため、絶縁性に問題はない。従って、600〜900℃の熱処理を施した試験片は鉄損の低減化に関して良好であることが確認できた。
Figure 2007129154
[実施例2]
軟磁性粉として平均粒径が58μmの鉄粉を用いた。絶縁層形成処理液にはCHO−(Si(CHO)−O)−CH(mは3〜5、平均は4)を25ml、水4.8ml、脱水メチルアルコール20.2ml、ジラウリン酸ジブチル錫0.025mlを混合し、1昼夜25℃の温度で放置した溶液を用いた。
(1)鉄粉1kgに対し、50mlの絶縁層形成処理液を添加し、攪拌した。その処理磁粉に対し、真空中で攪拌しながら150℃、1時間の熱処理を行った。尚、平均絶縁被膜厚さは500nmであった。
(2)(1)で作製した処理鉄粉を成形型に充填し、圧粉磁心の密度比が95%になるように、7〜20t/cmの圧力で縦20mm、横30mm、厚さ5mmの試験片を得た。
(3)(2)で作製した試験片について400から1000℃の熱処理を不活性雰囲気中で2時間実施した。
得られた試験片について、1T、400Hzの条件下で各種磁気特性を測定した。尚、試験片の外周面は、成形時において成形型と接触し、加圧による歪を受けて最も残留応力が高い部分を含んでいる。各試験片の熱処理温度、残留応力および磁気特性の測定結果を表1に示した。
この結果、500℃以下の熱処理では鉄粉の残留応力の開放は不充分であるが、600℃以上の熱処理では鉄粉の残留応力は小さくなり、その結果ヒステリシス損を低減することができた。一方、試験片の比抵抗は熱処理温度の増加とともに減少する傾向にあった。しかし、1000℃以下の熱処理で試験片の渦電流損は一定値であるため、絶縁性に問題はない。従って、600〜1000℃の熱処理を施した試験片は鉄損の低減化に関して良好であることが確認できた。
[実施例3]
軟磁性粉として平均粒径が58μmの鉄粉を用いた。絶縁層形成処理液にはCHO−(Si(CHO)−O)−CH(mは3〜5、平均は4)を0.25ml、水0.048ml、脱水メチルアルコール49.8ml、ジラウリン酸ジブチル錫0.025mlを混合し、1昼夜25℃の温度で放置した溶液を用いた。
(1)鉄粉1kgに対し、50mlの絶縁層形成処理液を添加し、攪拌した。その処理磁粉に対し、真空中で攪拌しながら150℃、1時間の熱処理を行った。尚、平均絶縁被膜厚さは3nmであった。
(2)(1)で作製した処理鉄粉を成形型に充填し、圧粉磁心の密度比が95%になるように、7〜20t/cmの圧力で縦20mm、横30mm、厚さ5mmの試験片を得た。
(3)(2)で作製した試験片について400から1000℃の熱処理を不活性雰囲気中で2時間実施した。
得られた試験片について、1T、400Hzの条件下で各種磁気特性を測定した。尚、試験片の外周面は、成形時において成形型と接触し、加圧による歪を受けて最も残留応力が高い部分を含んでいる。各試験片の熱処理温度、残留応力および磁気特性の測定結果を表1に示した。
この結果、500℃以下の熱処理では鉄粉の残留応力の開放は不充分であるが、600℃以上の熱処理では鉄粉の残留応力は小さくなり、その結果ヒステリシス損を低減することができた。一方、試験片の比抵抗は熱処理温度の増加と伴に減少する傾向にあった。しかし、900℃以下の熱処理では試験片の渦電流損は一定値であるため、絶縁性に問題はない。従って、600〜900℃の熱処理を施した試験片は鉄損の低減化に関して良好であることが確認できた。
[実施例4]
軟磁性粉として平均粒径が58μmの鉄粉を用いた。絶縁層形成処理液にはSi(CHO)を2.5ml、水0.59ml、脱水メチルアルコール47ml、ジラウリン酸ジブチル錫0.025mlを混合し、1昼夜25℃の温度で放置した溶液を用いた。
(1)鉄粉1kgに対し、50mlの絶縁層形成処理液を添加し、攪拌した。その処理磁粉に対し、真空中で攪拌しながら150℃、1時間の熱処理を行った。尚、平均絶縁被膜厚さは25nmであった。
(2)(1)で作製した処理鉄粉を成形型に充填し、圧粉磁心の密度比が95%になるように、7〜20t/cmの圧力で縦20mm、横30mm、厚さ5mmの試験片を得た。
(3)(2)で作製した試験片について400から1000℃の熱処理を不活性雰囲気中で2時間実施した。
得られた試験片について、1T、400Hzの条件下で各種磁気特性を測定した。尚、試験片の外周面は、成形時において成形型と接触し、加圧による歪を受けて最も残留応力が高い部分を含んでいる。各試験片の熱処理温度、残留応力および磁気特性の測定結果を表1に示した。
この結果、500℃以下の熱処理では鉄粉の残留応力の開放は不充分であるが、600℃以上の熱処理では鉄粉の残留応力は小さくなり、その結果ヒステリシス損を低減することができた。一方、試験片の比抵抗は熱処理温度の増加と伴に減少する傾向にあった。しかし、600℃以下の熱処理では試験片の渦電流損は一定値であるため、絶縁性に問題はない。従って、600℃の熱処理を施した試験片は鉄損の低減化に関して良好であることが確認できた。
[比較例1]
軟磁性粉として平均粒径が58μmの鉄粉を用いた。絶縁層形成処理液にはリン酸1g、ほう酸0.2g、酸化マグネシウム0.2g、パーフルオロ系界面活性剤0.05g、水49gを混合した溶液を用いた。
(1)鉄粉1kgに対し、50mlの絶縁層形成処理液を添加し、攪拌した。その処理磁粉に対し、真空中で攪拌しながら150℃、1時間の熱処理を行った。尚、平均絶縁被膜厚さは40nmであった。
(2)(1)で作製した処理鉄粉を成形型に充填し、圧粉磁心の密度比が95%になるように、7〜20t/cmの圧力で縦20mm、横30mm、厚さ5mmの試験片を得た。
(3)(2)で作製した試験片について400から1000℃の熱処理を不活性雰囲気中で2時間実施した。
得られた試験片の外周面について、1T、400Hzの条件下で各種磁気特性を測定した。尚、試験片の外周面は、成形時において成形型と接触し、加圧による歪を受けて最も残留応力が高い部分を含んでいる。各試験片の熱処理温度、残留応力および磁気特性の測定結果を表2に示した。
この結果、500℃以下の熱処理では鉄粉の残留応力の開放は不充分であるが、600℃以上の熱処理では鉄粉の残留応力は小さくなり、その結果ヒステリシス損を低減することができた。一方、試験片の比抵抗は熱処理温度の増加と伴に減少する傾向にあり、500℃以上の熱処理で試験片の渦電流損は上昇するため、ヒステリシス損および渦電流損の低減可能な熱処理温度が見出せない。従って、本比較例の作製法では鉄損を低減化した試験片の作製が困難であることが分かった。
[比較例2]
軟磁性粉として平均粒径が58μmの鉄粉を用いた。絶縁層形成処理液にはCHO−(Si(CHO)−O)−CH(mは3〜5、平均は4)を40ml、水7.7ml、脱水メチルアルコール2.3ml、ジラウリン酸ジブチル錫0.025mlを混合し、1昼夜25℃の温度で放置した溶液を用いた。
(1)鉄粉1kgに対し、50mlの絶縁層形成処理液を添加し、攪拌した。その処理磁粉に対し、真空中で攪拌しながら150℃、1時間の熱処理を行った。尚、鉄粉は凝集がひどく、また平均絶縁被膜は1000nmより厚く観測された。
(2)(1)で作製した処理鉄粉を成形型に充填し、20t/cmの圧力で圧粉磁心の成形を試みたが密度比が76%の試験片しか得られなかった。また、その試験片は機械強度に乏しく各種磁気特性の評価は困難であった。
従って、本比較例のように絶縁層形成処理液中のアルコキシシロキサンの加水分解生成物、及びその脱水縮合物総和の体積分率が70vol%以上になると表面鉄粉の凝集の程度が大きく、圧粉磁心の密度比が95%以上の試験片の作製が困難であることが分かった。
[比較例3]
軟磁性粉として平均粒径が58μmの鉄粉を用いた。絶縁層形成処理液にはCHO−(Si(CHO)−O)−CH(mは3〜5、平均は4)を0.025ml、水0.0048ml、脱水メチルアルコール50ml、ジラウリン酸ジブチル錫0.025mlを混合し、1昼夜25℃の温度で放置した溶液を用いた。
(1)鉄粉1kgに対し、50mlの絶縁層形成処理液を添加し、攪拌した。その処理磁粉に対し、真空中で攪拌しながら150℃、1時間の熱処理を行った。尚、平均絶縁被膜厚さは観測が難しく1nm未満であった。
(2)(1)で作製した処理鉄粉を成形型に充填し、圧粉磁心の密度比が95%になるように、7〜20t/cmの圧力で縦20mm、横30mm、厚さ5mmの試験片を得た。
(3)(2)で作製した試験片について400から1000℃の熱処理を不活性雰囲気中で2時間実施した。
得られた試験片について、1T、400Hzの条件下で各種磁気特性を測定した。尚、試験片の外周面は、成形時において成形型と接触し、加圧による歪を受けて最も残留応力が高い部分を含んでいる。各試験片の熱処理温度、残留応力および磁気特性の測定結果を表2に示した。
この結果、500℃以下の熱処理では鉄粉の残留応力の開放は不充分であるが、600℃以上の熱処理では鉄粉の残留応力は小さくなり、その結果ヒステリシス損を低減することができた。一方、試験片の比抵抗は熱処理温度の増加と伴に減少する傾向にあり、400℃以上の熱処理で試験片の渦電流損は上昇するため、ヒステリシス損および渦電流損の低減可能な熱処理温度が見出せない。従って、本比較例のように鉄粉表面の絶縁被膜厚さが1nm未満になると渦電流損の上昇を抑えることが難しく、鉄損を低減化した試験片の作製が困難であることが分かった。
[実施例5]
軟磁性粉として平均粒径が58μmの鉄粉を用いた。絶縁層形成処理液にはCHO−(Si(CHO)−O)−CH(mは3〜5、平均は4)を2.5ml、水0.048ml、脱水メチルアルコール47.5ml、ジラウリン酸ジブチル錫0.025mlを混合し、1昼夜25℃の温度で放置した溶液を用いた。
(1)鉄粉1kgに対し、50mlの絶縁層形成処理液を添加し、攪拌した。その処理磁粉に対し、真空中で攪拌しながら150℃、1時間の熱処理を行った。尚、平均絶縁被膜厚さは20nmであった。
(2)(1)で作製した処理鉄粉を成形型に充填し、圧粉磁心の密度比が95%になるように、7〜20t/cmの圧力で縦20mm、横30mm、厚さ5mmの試験片を得た。
(3)(2)で作製した試験片について400から1000℃の熱処理を不活性雰囲気中で2時間実施した。
得られた試験片について、1T、400Hzの条件下で各種磁気特性を測定した。尚、試験片の外周面は、成形時において成形型と接触し、加圧による歪を受けて最も残留応力が高い部分を含んでいる。各試験片の熱処理温度、残留応力および磁気特性の測定結果を表1に示した。
この結果、500℃以下の熱処理では鉄粉の残留応力の開放は不充分であるが、600℃以上の熱処理では鉄粉の残留応力は小さくなり、その結果ヒステリシス損を低減することができた。一方、試験片の比抵抗は熱処理温度の増加と伴に減少する傾向にあった。しかし、900℃以下の熱処理では試験片の渦電流損は一定値であるため、絶縁性に問題はない。従って、600〜900℃の熱処理を施した試験片は鉄損の低減化に関して良好であることが確認できた。比較例において得られた磁性粉を用いた圧粉成形体の特性を表2に示す。
Figure 2007129154
[実施例6]
軟磁性粉として平均粒径が58μmの鉄粉を用いた。絶縁層形成処理液にはCHO−(Si(CHO)−O)−CH(mは3〜5、平均は4)を2.5ml、水0.96ml、脱水メチルアルコール47.5ml、ジラウリン酸ジブチル錫0.025mlを混合し、1昼夜25℃の温度で放置した溶液を用いた。
(1)鉄粉1kgに対し、50mlの絶縁層形成処理液を添加し、攪拌した。その処理磁粉に対し、真空中で攪拌しながら150℃、1時間の熱処理を行った。尚、平均絶縁被膜厚さは50nmであった。
(2)(1)で作製した処理鉄粉を成形型に充填し、圧粉磁心の密度比が95%になるように、7〜20t/cmの圧力で縦20mm、横30mm、厚さ5mmの試験片を得た。
(3)(2)で作製した試験片について400から1000℃の熱処理をフッ化英雰囲気中で2時間実施した。
得られた試験片について、1T、400Hzの条件下で各種磁気特性を測定した。尚、試験片の外周面は、成形時において成形型と接触し、加圧による歪を受けて最も残留応力が高い部分を含んでいる。各試験片の熱処理温度、残留応力および磁気特性の測定結果を表1に示した。
この結果、500℃以下の熱処理では鉄粉の残留応力の開放は不充分であるが、600℃以上の熱処理では鉄粉の残留応力は小さくなり、その結果ヒステリシス損を低減することができた。一方、試験片の比抵抗は熱処理温度の増加と伴に減少する傾向にあった。しかし、900℃以下の熱処理では試験片の渦電流損は一定値であるため、絶縁性に問題はない。従って、600〜900℃の熱処理を施した試験片は鉄損の低減化に関して良好であることが確認できた。
〔実施例7〕
図5は、本発明の中空軸となる永久磁石モータの断面図を示す。図において、101は回転子バックヨークコア(圧粉磁心成形体)、102は回転子磁石、103はシャフト、104は固定子バックヨークコア、105は固定子コイルである。この例は回転子磁極数110、固定子コイル数112の3相ブラシレスモータである。固定子側は、固定子ヨークを実施例1〜6に示した高密度な圧粉磁心とし、径方向に極めて薄いコイル成形体で固定子側を構成している。
この固定子に圧粉磁心を用いる理由としては、このモータが多極であり、回転磁界によって発生する渦電流を小さくするために必須となっているためである。回転子側は、粉末材料を成形して構成し、その成形体は結合材および磁石粉末を主とするボンド磁石部と、結合材および軟磁性粉末を主とする軟磁性部とを有し、圧縮成形手段を用いて形成された永久磁石型のロータであって、前記ボンド磁石部は磁極の少なくとも1面が前記軟磁性部に機械的に結合されていることを特徴とするロータ構造とすることで課題を解決しようとするものである。また、そのボンド磁石はセグメント毎に仮成形によって製作されるもので、仮成形時に異方性を付与し、その異方性を付与された仮成形体を、複数極を有するロータとして本成形により成形してロータを得た後に、着磁磁界によって着磁される構造のモータ用ロータとなることを特徴とする。
図6には回転子磁石の仮成形方法を示す。図において、108は磁石粉末、109はバインダー(樹脂)、111は仮成形金型(ダイ)、112は磁界発生用コイル、113は仮成形金型(パンチ)、115はコイルの電源である。図6(a)は磁性紛とバインダー樹脂との混合工程を示し、図6(b)は圧粉成形体の成形工程を示す。
磁石の仮成形は、磁場配向可能な金型を用いて行なう。磁石粉末と熱可塑性、または熱硬化性の結合材とでなる材料を必要な磁気特性を得ることが可能な適正配合量でブレンドし、金型内に充填し、圧縮成形、または、射出成形などの手段を用いて成形する。その際、金型内に配置した、磁場配向用のコイルに通電しながら成形を行なうことにより、磁石の磁場を精度良く配向させることができる。次に磁場配向を精度良くした仮成形体は、圧粉磁心ヨークと一体成形(本成形)する。
図7に本成形のイメージを示す。図において、101aは圧粉磁心材料、102aは磁石仮成形体、103はシャフト、121は本成形金型(下型)である。
また、図8には圧縮成形金型構造を示す。図において、121は本成形金型(下型)、122は本成形金型(中子)、123は本成形金型(上プレート)、124は本成形金型(シャフト押えプレート)、125は本成形金型(第1パンチ)、126は本成形金型(第2パンチ)である。
図9は、圧縮成形状態の金型の位置関係を示す。図8と同じ符号は同じ意味である。図9(a)は成形工程を示し、図9(b)は本発明によって製造されたロータの斜視図を示し、図9(c)は圧粉粒子の結合状態を説明する図である。
まず、金型中へ、シャフト103、圧粉磁心材料粉101a、ボンド磁石仮成形体102aをそれぞれ必要な位置に配置する。このとき、仮成形体は、周方向には充分な隙間を空けて簡単に配置でき、かつ、しっくりと配置される寸法関係となっている。シャフトは、外径部分を下型121によって保持し、内径を中子122によって保持する。シャフト103と磁石の間には圧粉磁心材料粉101aを配置し、成形後に所定の密度となるような量を計量して挿入する。
シャフトは上部より押えプレート124によって軸方向に固定された状態で、上パンチの独立して上下する第1パンチ125と第2パンチ126がそれぞれ圧縮力を伝える構造とする。例には、上プレート23からバネを介して圧縮力を伝える構造を示す。この構造は、それぞれが独立した圧縮機構となっていても良い。上プレートがプレス等の圧縮駆動源によって下降すると、バネ力によって中子と第2パンチ126へそのバネたわみ量分の加圧力が加わる。第1パンチは上プレートと直接結合され、上プレートの圧縮応力を直接圧粉磁心の圧縮成形力として伝え、その必要寸法での圧縮を行なう。その際、第2プレートにも、充分な圧縮力がかかるものとし、もとの仮成形体の軸方向寸法を縮める寸法関係までの圧縮を行なうものとする。圧縮後のパンチの位置関係は図9に示すとおりとなり、シャフトを金型内に挿入した状態で圧粉磁心ヨーク1とボンド磁石成形体2を一体成形(2色成形と呼ぶ)するものである。
図9(b)に金型から取り出した成形体の斜視図を示す。シャフト103、圧粉磁心ヨーク部101,ボンド磁石成形体102が強固に結合した成形体を得ることができる。その結合部分をミクロに見た状態を図9(c)に示す。圧粉磁心粉と磁石仮成形体の磁石粉は、その結合面で、バインダー(樹脂材料)による接着効果での結合のほかに、機械的に圧縮成形時の塑性変形による、粉粒子同士の絡みつきが発生し、その結合面の機械的強度を高くすることができる。
従来、焼結で得られる焼結希土類リング磁石、セグメント磁石や射出成形で得られるボンド磁石を接着によってシャフトに結合する場合には、ガラス、炭素繊維入りのバインドテープなどでの表面側保護が必要であったが、本方法によれば、その保護が必要ない程度の引張り強さ(40〜60MPa)を得ることができる。これにより、ガラス、炭素繊維入りのバインドテープなどでの表面側保護の不要な回転子を得ることが可能となる。
図11にはこの回転子構造を採用した中空軸コアレスモータの構造例を示す。まず、固定子側には、珪素鋼板積層、圧粉磁心などを用いたリング状のバックヨークに径方向に非常に薄いコイルを円周状に配置する。そのコイル、コアをモールド、あるいは接着などの手段によって、コイルが電磁力で動くことがないように一体化して固定する。回転子側では、前述の2色成形により径寸法、軸方向、同心度などの精度の非常に良い回転子を得る。このとき、固定子と回転子の機械的空隙寸法は、少ない組立公差を考慮した設計とすることができる。
この回転子磁石は、希土類ボンド磁石のため、焼結希土類磁石に比べて磁石の最大エネルギー積が小さい。このため、出来るかぎり磁石の外径部を大きくして有効な誘起電圧を大きくする設計とすることが望ましい。このため、内径部分は不要な部分となるため、図示するようにシャフト103の内径は中空とする設計となる。これらの固定子と回転子を組立して得られるモータ構造を図11(c)に示す。固定子コアはハウジングによって保持され、ハウジングの両端には、インロー部分によってエンドブラケット(軸受保持部)が配置される。そのエンドブラケットには、軸受が保持され、軸受を介してシャフトが保持される構造となっている。前述したとおり、回転子磁石の径を大きくして、固定子コイルを薄くしているため、シャフトは中空構造となる。
図10には、本発明のモータと従来構造のモータの構造比較を示す。固定子の外径寸法と軸方向長さを固定して検討した例を示す。(a)図には本発明のコアレス方式、2色成形回転子を備える中空軸モータを示す。固定子の内径は58mmとし、回転子外径を57.2mmとした。0.4mmの空隙寸法は、2色成形することによるシャフトからの磁石表面寸法公差を考慮しても充分達成可能な空隙寸法である。磁石の残留磁束密度はBr=0.88Tとし、図示する方向の異方性を設けた2色成形で製作するものとした。
(b)図には、従来のスロット型コア付モータを示す。固定子の内径寸法は、34.8mm、回転子外径を34mmとし、空隙寸法は0.4mmと(a)の構造のものと同じとした。磁石の残留磁束密度はBr=1.2Tであり、焼結のリング磁石で厚さ3mmを採用した。小径のリング磁石の場合、内径側に0.1mm程度の接着領域を設け、粘性の高い接着剤にて接着することにより充分な接着強度を得られるため、よほど過酷な温度条件で用いないかぎりギャップは0.4mmで構わない為、本発明のギャップ寸法と同程度に設定した。この構造は従来モータとして多い構造であるが、中空軸とならない。
(c)図には、コアレス方式で焼結希土類ラジアルリング磁石を用いる場合の構造を示す。この場合には、トルク伝達径が大きくなっているため、磁石の厚みを4mmまで大きくした。磁石の厚みを大きくすることで、磁束量増加、機械的強度は増すが、磁石の成形時に精度の良いラジアル配向を得ることが困難となるため、残留磁束密度を1.05Tと設定した。また、ラジアル異方性を有する場合、径方向と周方向に著しく熱膨張係数が異なる為、径の大きい本構造では磁石の強度確保が必須となる。このため、磁石の組立時の内径側の接着領域103と磁石の表面のガラス、炭素繊維入りのバインドテープ、またはステンレスなどの薄い非磁性体による表面保護領域が必要となる。このため、磁気回路的に見た空隙寸法は(a)の構造に比べて大きくなり、固定子内径を同一の58mmとした場合の回転子外径は、56mmとせざるを得ないことになる。
本実施例の2色成形回転子を有するモータは磁石の残留磁束密度が小さいにも関わらず、大きい出力を得ながら中空軸構造とすることができる。
本実施例では内転形モータの例を示したが、回転子が外側となる外転形のモータにおいても同様の結果となる。
〔実施例8〕
次に第8の実施例を説明する。本発明の中空軸永久磁石モータの圧粉磁心と磁石は、成形密度が高く、かつ、絶縁性に優れているほどモータとしての特性が向上する。成形密度を向上するためにはプレス成形する圧力を高くする必要があるが、圧力が高すぎると磁性粉表面の絶縁被膜が破壊され、渦電流損が増加する。絶縁性保護の為に絶縁被膜を厚めに設定すると磁石のエネルギー積の低下や、密度不足による透磁率低下となり、モータ特性が著しく低下してしまう。この相反する特性を同時に満足する為に磁性粉の被膜を強化する方法が考えられる。
絶縁膜を形成する方法として、粒界に板状のフッ素化合物を形成しフッ素化合物と主相との界面を増やすこと、フッ素化合物の厚さを薄くすること、あるいはフッ素化合物を強磁性相にすることが挙げられる。前者はフッ素化合物の粉末形成の際に板状あるいは扁平状になるような手法を採用することが有効である。従来例である特開2003−282312にはNdFの場合平均粒径0.2μmのNdF粉末とNdFeB合金粉末を自動乳鉢を使用して混合しており、フッ化物の形状についての記載はなく、焼結後のフッ化物の形状は塊状になっている。
これに対し本手法の一例は、フッ化物の粉末の形状を磁石形成後に層状にしている。磁石形成後にフッ素化合物粉の形状を層状にするために、使用するフッ素化合物の粉末形状を板状にしている。板状にするためにフッ化物を溶解急冷することがその手法の一例である。溶解温度は約2000℃で真空溶解後、急冷速度は10℃/秒で急冷する。急冷することで厚さ10μm以下でアスペクト比2以上の板状を得ることが可能となる。
このような板状粉を使用すること以外に、主相とフッ素化合物を加熱加圧してフッ素化合物が粒界に沿って層状になるように成形する手法もある。フッ素化合物が成形後に層状になっていれば、塊状あるいは粒状になっているよりもフッ素化合物と主相との界面積は増加し、成形後の粒界に沿って形成される。フッ化物が層状になることにより、塊状よりもフッ化物の混合量が少なくともフッ化物による磁気特性向上が達成される。
また、フッ素化合物の強磁性化については、フッ素化合物にFeあるいはCoを添加し急冷プロセスを経て粉体あるいは薄帯を形成する。フッ素化合物は、常磁性であり室温での磁化が小さい。そのため、フッ化物を主相に混合すれば残留磁束密度が混合量にほぼ比例して残留磁束密度が減少する。残留磁束密度の減少は、エネルギー積の著しい低下につながる。したがって磁石の磁束密度を高く設計している磁気回路においては、従来のフッ素化合物を含む磁石の形成は困難であったがフッ素化合物を強磁性化できれば、フッ素化合物の添加量が同じ場合でも飽和磁束密度及び残留磁束密度の値が強磁性フッ化物の添加により増加させることが可能である。またフッ素化合物が強磁性を示していても、フッ素化合物自身の保磁力が高くならないと、主相の保磁力あるいは角形性に悪影響を及ぼす。
主相保磁力を保持しながら角形性も確保して残留磁束密度を高めるには、フッ素化合物の保磁力を高くする必要がある。フッ素化合物自身の保磁力を1kOe以上にすることにより、主相保磁力や角形性を確保して残留磁束密度の減少を低減することが可能である。このような保磁力をもったフッ素化合物の形成には、フッ素化合物と強磁性体を溶解急冷する手法を適用する。急冷には単ロール法、双ロール法がある。
具体的な製作例を以下に示す。NdFeB合金は水素化脱水素処理を施した粒径約100μmの粉であり、この粉末の保磁力は16kOeである。このNdFeB粉末に混合するフッ素化合物はNdFである。NdF原料粉を急冷装置を用いて急冷し、板状あるいはリボン状粉末を形成する。原料粉102をタングステン電極103によるアーク溶解で不活性ガス雰囲気101中にて溶解し、ノズル104からシャッタ107を開けてロール105上に溶解したNdFを吹き付ける。不活性ガスにはArガスを、単ロール105にはCuあるいはFe系材料を使用し、500から5000rpmで回転した単ロールの上にArガスで加圧し差圧を利用して吹きつける。
得られるNdF3粉末は板状となり、このNdF粉末とNdFeB粉末をNdFが約10wt%となるように混合した。この混合粉末を10kOeの磁界で配向、圧縮し、Arガス中で加熱圧縮成形した。成形条件は、加熱温度700℃、圧縮圧力3〜5t/cmであり7mm×7mm×5mmの異方性磁石を作製した。作製した成形体の密度はいずれも7.4g/cm以上であった。成形した異方性磁石の異方性方向に30kOe以上のパルス磁界を印加し、減磁曲線を20℃で測定した。NdF厚さは主相のNdFe14B粒子の粒界にあるNdF層の平均の厚さである。NdF厚さは、NdF粉末形成条件や加熱圧縮成形条件及びNdFeB粉末形状などにより異なる。NdF厚さを変えるために、NdF粉末作製時のロール回転数を500から5000rpmに変えて作製し、粉砕した粉をさらにメッシュなどにより分級している。
回転数が高く圧縮成形圧力が大きい方がNdF厚さを薄くすることができる。NdFが0.01μmから厚くなるとBr(残留磁束密度)、iHc(保磁力)及びBhmax(エネルギー積)の値が増加する傾向にある。NdF3厚さが0.1から10μmの範囲でiHcが顕著に増加し、Brも増加している。NdFが界面に存在することにより保磁力が増加するが、厚くなると減少するのはNdFが常磁性体のため、粒子間の強磁性結合が弱くなるためと推定される。Brが増加するのは、低磁界での磁束密度が増加しているためである。
NdF厚さが1.0μmとなった磁石の保磁力の温度依存性を大気中加熱で測定した結果、保磁力の温度係数はNdF無添加磁石の場合5.0%/℃である。NdF厚さを厚くすることにより保磁力の温度係数が小さくなる。その効果はNdF厚さが0.1μmから10μmであり、保磁力の温度係数は最小で3.4%/℃になる。これは、NdFが主相の酸化を防止していること、高保磁力化による磁区安定化に関係していると推定される。フッ化物の主相に対する平均被覆率が約50%の結果は、NdF厚さが0.1−10μmの時、被覆率が変化した場合は被覆率依存性を示す。被覆率は、フッ化物粉末の混合状態、フッ化物粉末の粒度、NdFeB粉末の粒度、NdFeB粉末の形状、配向磁界、配向時の圧力、加熱条件などのパラメータ及び条件が関係する。被覆率が増加すると、保磁力は増加する傾向にある。
上記の方法で作成した磁性粉を用いて中空軸モータ用回転子を作成することにより、回転子は熱減磁しにくく、保磁力の温度係数が小さい硬質磁性材料の適用により、逆磁界に強く、誘起電圧の温度依存性が小さく、高温まで安定した出力を得ることが可能である。
〔実施例9〕
次に本発明の中空軸モータを利用したシステムについて説明する。図12には、本発明の中空軸モータを利用することで効果の期待できるシステムの例を示す。図9(a)は自動車用のステアリング装置をモデル化して示した図を示す。自動車用のパワーステアリング装置は、従来は油圧駆動であったが、モータの高性能化が進み、電動で駆動するシステムも出始めてきている。このステアリング装置を駆動するモータは、人がハンドル操作をするとそれをアシストするように回転し、駆動力を発生してタイヤの向きを変える役割を果たす。しかし、モータのハンドル操作によって、モータが回されるときの重みを除去する為に、モータ自体のロストルクを小さくしておく必要がある。
このため、コアを有しないモータはコアのヒステリシス損を無くすることができるため、その目的を達成することができる。また、一定出力領域での効率が珪素鋼板を用いる場合よりも高くできる為、自動車のようなバッテリーから電力を供給され、燃費を考慮しなければならない用途に最適なシステムといえる。また、コアを必要としないため、巻線の占積率も向上でき、モータの体格(体積)も小さく出来る。また、(b)図に示すように、中空部分を利用して遊星ギア143や、(c)図に示すようなボールネジ機構144などの機構部品を内部に配置可能なため、自動車の限られた車載スペースへの実装も容易になる。
[比較例4]
軟磁性粉として平均粒径が58μmの鉄粉を用いた。絶縁層形成処理液にはCHO−(Si(CHO)−O)−CH(mは3〜5、平均は4)を2.5ml、水1.92ml、脱水メチルアルコール47.5ml、ジラウリン酸ジブチル錫0.025mlを混合し、1昼夜25℃の温度で放置した溶液を用いた。
(1)鉄粉1kgに対し、50mlの絶縁層形成処理液を添加し、攪拌した。その処理磁粉に対し、真空中で攪拌しながら150℃、1時間の熱処理を行った。尚、平均絶縁被膜厚さは80nmであるが、鉄粉に凝集が認められた。
(2)(1)で作製した処理鉄粉を成形型に充填し、20t/cmの圧力で圧粉磁心の成形を試みたが密度比が89%の試験片しか得られなかった。また、その試験片は機械強度に乏しく各種磁気特性の評価は困難であった。
従って、本比較例のようにアルコキシシロキサンの総量に対して、水の添加量が加水分解反応当量の11/10以上になると磁性鉄粉同士の凝集の程度が大きく、圧粉磁心の密度比が95%以上の試験片の作製が困難であることが分かった。
[比較例5]
軟磁性粉として平均粒径が58μmの鉄粉を用いた。絶縁層形成処理液にはCHO−(Si(CHO)−O)−CH(mは3〜5、平均は4)を2.5ml、水0.0096ml、脱水メチルアルコール47.5ml、ジラウリン酸ジブチル錫0.025mlを混合し、1昼夜25℃の温度で放置した溶液を用いた。
(1)鉄粉1kgに対し、50mlの絶縁層形成処理液を添加し、攪拌した。その処理磁粉に対し、真空中で攪拌しながら150℃、1時間の熱処理を行った。尚、平均絶縁被膜厚さは15nmであり、絶縁膜には多数のクラックが認められた。
(2)(1)で作製した処理鉄粉を成形型に充填し、圧粉磁心の密度比が95%になるように、7〜20t/cmの圧力で縦20mm、横30mm、厚さ5mmの試験片を得た。
(3)(2)で作製した試験片について400から1000℃の熱処理を不活性雰囲気中で2時間実施した。
得られた試験片の外周面について、1T、400Hzの条件下で各種磁気特性を測定した。尚、試験片の外周面は、成形時において成形型と接触し、加圧による歪を受けて最も残留応力が高い部分を含んでいる。各試験片の熱処理温度、残留応力および磁気特性の測定結果を表2に示した。
この結果、500℃以下の熱処理では鉄粉の残留応力の開放は不完全であるが、600℃以上の熱処理では鉄粉の残留応力は小さくなり、その結果ヒステリシス損を低減することがでた。一方、試験片の比抵抗は熱処理温度の増加と伴に減少する傾向にあり、600℃以上の熱処理で試験片の渦電流損は上昇するため、ヒステリシス損および渦電流損の低減可能な熱処理温度が見出せない。従って、本比較例のようにアルコキシシロキサンの総量に対して、水の添加量が加水分解反応当量の1/10未満になると鉄粉表面の絶縁被膜の膜質が低下し渦電流損の上昇を抑えることが難しく、鉄損を低減化した試験片の作製が困難であることが分かった。
本発明は、成形時の磁気特性の劣化について渦電流損を抑えながら加熱処理することができ、ヒステリシス損あるいは渦電流損の小さなコア部品さらには高い磁束密度が必要なモータ用鉄心やディーゼルエンジンおよびガソリンエンジンの電子制御式燃料噴射装置に組み込まれる電磁弁用のソレノイドコア(固定鉄心)及びプランジャ、その他各種アクチュエータ用のコア部品として利用される。
本発明の磁成粉の断面模式図。 本発明の焼鈍後の磁性粉の断面模式図。 公知の磁性粉の断面模式図。 本発明による圧粉磁心の断面模式図。 本発明の中空軸となる永久磁石モータの断面図である。 本発明の回転子磁石の仮成形方法を示す図面である。 本発明の2色成形のイメージを説明する図面である。 本発明の2色成形の圧縮成形金型構造を示す図面である。 本発明の2色成形の圧縮成形時の金型位置関係を示す図面である。 本発明のモータと従来構造のモータの構造比較を示す図面である。 本発明の2色成形回転子構造を採用した中空軸モータの構造例を示す。 自動車用パワーステアリングシステムに本発明のモータを使用したシステムを示した説明図である。
符号の説明
1、3…軟磁性粉、2、2’…酸化膜、4…酸化物粒子、5…軟治性粉、6…SiO処理膜、101…回転子バックヨークコア(圧粉磁心成形体)、101a…圧粉磁心材料、102…回転子磁石、102a…磁石仮成形体、103…シャフト、104…固定子バックヨークコア、105…固定子コイル、106…固定子コア、108…磁石粉末、109…バインダー(樹脂)、111…仮成形金型(ダイ)、112…磁界発生用コイル、113…仮成形金型(パンチ)、121…本成形金型(下型)、122…本成形金型(中子)、123…本成形金型(上プレート)、124…本成形金型(シャフト押えプレート)、125…本成形金型(第1パンチ)、126…本成形金型(第2パンチ)、131…接着層、132…バインド層(炭素繊維,ガラス繊維)、133…モールド材、134…ベアリング(軸受)、135,136…エンドブラケット、137…ハウジング、141…ハンドル、142…パワーステアリング用モータ、143…遊星ギア、144…ボールネジ。

Claims (23)

  1. 鉄粉末または鉄を主成分とする合金粉末の表面に、アルコキシシランおよびその誘導体から選ばれる1種以上と、アルコールおよび水を含有する処理液を用いて形成された絶縁膜を有する磁性粉の圧粉成形体であって、密度が7.5g/cm以上で、上記磁性粉の平均粒径が30〜200μmであって、上記絶縁膜の平均厚さが1〜700nmであって、比抵抗が1000μΩ・cm以上であることを特徴とする圧粉磁心。
  2. 上記絶縁膜の平均厚さが30〜200nmであることを特徴とする請求項1記載の圧粉磁心。
  3. 上記絶縁膜の平均厚さが40〜100nmであることを特徴とする請求項1記載の圧粉磁心。
  4. 鉄粉末または鉄を主成分とする合金粉末の表面に、アルコキシシランおよびその誘導体から選ばれる1種以上と、アルコールおよび水を含有する処理液を用いて形成された絶縁膜を有する磁性粉であって、上記磁性粉の平均粒径が30〜200μmであって、上記絶縁膜の平均厚さが1〜700nmであって、密度が7.5g/cmの圧粉成形体を製造したときに、比抵抗が1000μΩ・cm以上である特性を与えることができることを特徴とする磁性粉。
  5. 上記磁性粉の平均粒径が40〜100μmであることを特徴とする請求項4記載の磁性粉。
  6. アルコキシシランおよびその誘導体から選ばれる1種以上と、アルコールおよび水を含有してなることを特徴とする圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成処理液。
  7. 更に加水分解用触媒を含有してなることを特徴とする請求項6記載の圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成処理液。
  8. 上記加水分解用触媒が中性触媒であることを特徴とする請求項7記載の圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成処理液。
  9. 上記中性触媒が錫触媒であることを特徴とする請求項8記載の圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成処理液。
  10. アルコキシシランの誘導体は、その加水分解生成物、その脱水縮合物およびアルコキシシロキサンのいずれかである請求項6記載の圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成処理液。
  11. 上記アルコキシシランおよびその誘導体の体積分率が、処理液の0.2〜60vol%であることを特徴とする請求項6記載の圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成処理液。
  12. 絶縁層形成処理液中の水の含有量が、加水分解反応当量の1/10〜11/10であることを特徴とする圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成処理液。
  13. 軟磁性粉の表面に絶縁層を形成する圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成方法において、絶縁層形成処理液がアルコキシシランおよびその誘導体の少なくとも一種を含み、アルコールと水、更には必要な場合加水分解用触媒を含み、前記軟磁性粉に絶縁層形成処理液を混合し、所定温度で熱処理することにより平均厚さが1〜700nmの絶縁層を形成することを特徴とする圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成方法。
  14. 上記加水分解用触媒として中性触媒を含有してなることを特徴とする圧粉磁心用軟磁性粉の請求項13に記載の絶縁層形成方法。
  15. 中性触媒が錫触媒であることを特徴とする請求項13記載の圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成方法。
  16. 絶縁層形成処理液中のアルコキシシランおよびその誘導体総和の体積分率が0.2〜60vol%であることを特徴とする請求項13に記載の圧粉磁心用軟磁性粉の絶縁層形成方法。
  17. 固定子と回転子を備え、回転子に請求項1に記載の圧粉磁心を用いたことを特徴としたモータ。
  18. 固定子として円周上に配置された空芯コイルを有する中空軸のモータにおいて、回転子は請求項1に記載の圧粉磁心と磁石で構成され、その圧粉磁心と磁石を同時に圧縮成形することにより得られる成形体を採用することを特徴としたモータ。
  19. 請求項18のモータにおいて、前記磁石、圧粉磁心、シャフトを同一の金型内において、少なくとも圧粉磁心、または磁石部分に軸方向に同時に圧縮方向圧力を加えて一体成形して製作される回転子を備えたことを特徴としたモータ。
  20. 請求項18のモータにおいて、前記磁石は、磁石磁化方向の形成と所定の初期形状を得るためにあらかじめ仮成形される磁石仮成形体を磁石部分に用いて圧粉磁心または、圧粉磁心、シャフトと一体成形して製作される回転子を備えたことを特徴としたモータ。
  21. 請求項18のモータにおいて、前記磁石は、1極あたりが複数の仮成形体に分割され、その磁化配向方向が、一点集中型の磁場配向となるように磁石磁化方向を仮成形時に仮成形される磁石仮成形体を磁石部分に用いて圧粉磁心または、圧粉磁心、シャフトと一体成形して製作される回転子を備えたことを特徴としたモータ。
  22. 請求項18のモータにおいて、回転子の表面に機械的強度部材のガラスあるいは炭素繊維バインド材の補強がなされない回転子を用いたモータ。
  23. 請求項18のモータにおいて、回転子の磁石と圧粉磁心、またはシャフトと圧粉磁心などの界面において、圧縮応力による粉の元の形状からの塑性変形による結合により結合された部分を有する回転子を備えたことを特徴としたモータ。
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