JP2007126691A - 複合型無機金属化合物ナノ粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】中心部を保護する有機物を該中心部から脱離させて該中心部を金属化させる温度を大幅に低減させて、はんだによる接合の代替に応用できるようにする。
【解決手段】本発明の複合型無機金属化合物ナノ粒子10は、無機金属化合物を含み、表面の略大部分が該無機金属化合物12からなる中心部16の該表面を有機物18で取囲んでいる。
【選択図】図5
【解決手段】本発明の複合型無機金属化合物ナノ粒子10は、無機金属化合物を含み、表面の略大部分が該無機金属化合物12からなる中心部16の該表面を有機物18で取囲んでいる。
【選択図】図5
Description
本発明は、複合型無機金属化合物ナノ粒子及びその製造方法に係り、特に半導体装置の電極間等を接合するのに使用される接合材料の主材として用いられる複合型無機金属化合物ナノ粒子及びその製造方法に関する。
半導体装置や電気・電子部品装置の小型化に伴い、粒径が100nm程度以下の金属粒子、所謂、金属ナノ粒子をこれらの装置の製造に応用することが注目を集めている。例えば、金属ナノ粒子を含む微量液体を用いた回路基板上への配線形成・パターン描画への応用や、導電性ペースト製造への利用が有力視されている。
このため、各社・各機関等から金属ナノ粒子の開発状況や用途等が種々公表されている。これらの公表されている金属ナノ粒子の用途の半分以上は、微細回路のための印刷・描画である。一方、上記とは全く異なり、例えば銀ナノ粒子を主体とし、これに適当な分散媒等を混合して調整した材料を、大電力制御用のパワー半導体の電極要素等の接合に用いるという着想が2002年頃に急浮上している。
従来、半導体装置の実装工程等で広く用いられてきたSn−Pb系のはんだは、環境保全の観点から、鉛(Pb)を含まないもので代替することが求められている。Sn−Pb系はんだのうち、通常の60%Sn−40%Pb系等の低温はんだは、主としてSn−Ag系またはSn−Ag−Cu系の無鉛はんだによって、これを代替する技術がほぼ確立されている。しかしながら、融点が300℃程度の95%Pb−Sn系の高温はんだは、鉛の含有率が著しく高いにも拘わらず、これを代替する無鉛組成のはんだ材料開発の目途が未だ立っていないのが現状である。したがって、上記高温はんだを代替し得る新しい接合材料・技術の開発に対するニーズが近年特に高まっている。
以上の背景から、95%Pb−Sn系の高温はんだを、ナノ粒子を核とした金属成分からなる中心部を有し、金属部分(中心部)の周囲を有機物で取囲んだ形態を持つ、所謂、複合型金属ナノ粒子を主材とする接合材料で代替するということが提案されている。これは、極めて微小なナノ粒子が低温でも容易に焼結を起こす現象を利用している。つまり、微小なナノ粒子は焼結によって低温で接合が出来、一旦接合が完成すれば、接合部は連続体の金属と化すので、温度がその金属固有の融点(温度)に達するまでは、融解を生じることなく接合が維持される。
この複合型金属ナノ粒子を主材とする接合材料は、パワー半導体のように、大電流の頻繁なスイッチングや変動に伴って発熱を生じるものや、車載半導体のように、周囲温度が上昇しやすいものに特に有効に使用される。
一般的に金属ナノ粒子は、その粒径が小さくなるにしたがって、バルクの材料とは異なる性質を帯びることが知られている。これは、金属ナノ粒子の場合、1個の金属ナノ粒子に含まれる原子のうち表面に露出しているものの割合が、バルクの場合に比べて遥かに大きいためであると考えられる。この金属ナノ粒子の代表的な性質の一つとして、焼結の起る温度がある。表1は、20〜50nm程度の粒径の各種金属ナノ粒子の焼結開始温度を示す(一ノ瀬昇、尾崎義治、賀集誠一郎、「超微粒子技術入門」(1988.7 オーム社)参照)。
表1で明らかなように、金属ナノ粒子は、通常、工業的に用いられる粉体よりも著しく低い温度で焼結を開始することがわかる。このような金属ナノ粒子の低温焼結性を利用して、低温での部材の接合に金属ナノ粒子を応用することで、電気部品や半導体装置等の接合材料として多用されている鉛入りはんだを代替する可能性が大きいと考えられる。
一方、金属ナノ粒子は、一般に表面の活性が著しく高いので、常温でも金属ナノ粒子同士が接近して引合い、凝集してしまう傾向を持っている。そして、金属ナノ粒子が一旦凝集を起こせば、粒子は粗大化してしまうので、金属ナノ粒子としてのユニークな特性は急速に失われる。このため、金属ナノ粒子を半導体の微細配線形成や極細径ビアの埋込み等に応用することは、一般に困難であると考えられていた。
このため、個々の金属ナノ粒子(中心部)の周囲を有機物からなる被覆で囲んで保護するようにした複合型金属ナノ粒子が開発されている。この有機物で金属ナノ粒子の表面を被覆して保護する方法としては、(1)物理的手段によって、金属ナノ粒子を形成する途中で、粒子同士が衝突して凝集を起こす前に、個々の粒子表面に溶剤被覆膜を形成する方法、及び(2)液相系内に溶媒、金属塩、保護剤及び還元剤などを共存させ、これを加熱することによる方法の2つの方法が一般に知られている。
(1)の物理的手段による金属ナノ粒子の生成を経由する方法では、主として減圧したガス中で、原料金属を蒸発させる必要があり、このため生産性が低く、コストの高いプロセスにつながりやすいという欠点がある。一方、(2)の液相法では、大気圧下での粒子原料の液状化を伴いながら、複合型金属ナノ粒子を形成するので、(1)の方法に比べ、安価で量産性のあるプロセスを容易に構築出来る利点がある。
(2)の方法を使用したものとして、例えばステアリン酸銀を原料とし、これを窒素ガス雰囲気中で250℃に加熱することによって複合型銀ナノ粒子を生成するようにした方法が提案されている(特許文献1参照)。この場合、図1に示すように、例えば平均粒径d3が5nm程度の金属(銀)成分からなる金属核22を中心部として、この周りを、厚さh3が1.5nm程度の有機物24で被覆した複合型銀ナノ粒子20が生成される。
この複合型銀ナノ粒子20は、金属成分からなる金属核(中心部)22の表面から有機物24を脱離させて、金属核22同士を均一に焼結させるのに、少なくとも250℃以上の温度が必要で、これを主材とした接合材料の接合温度も250℃以上となることが判っている。これは、有機物24が金属核22と反応し、金属(銀)を内部に取込んだ金属有機化合物を介して、有機物24が金属核22の表面に化学的に結合しており、このため、結合エネルギーも大きく、この結合を解いて有機物24を金属核22から脱離させるのに、高い温度(エネルギー)を必要とするためであると考えられる。
また、金属塩とアルコール系有機物とを共存させて、アルコール系有機物の分解開始温度以上の加熱を行うことによって、前述と同様に、複合型銀ナノ粒子を生成することが提案されている(特許文献2参照)。この場合、例えば平均粒径7〜10nm程度の金属(銀)成分からなる金属核(中心部)の周りを厚さ1.5nm程度の有機物で被覆した複合型銀ナノ粒子が生成される。この複合型銀ナノ粒子も、前述と同様に、金属核の表面から有機物を脱離させて、金属核を均一に焼結させるのに、少なくとも250℃以上の温度が必要で、これを主材とした接合材料も250℃以上となることが判っている。これも、前述と同様に、有機物が金属核の表面に金属有機化合物を介して化学的に結合しているためであると考えられる。
特開平10−183207号公報
国際公開第01/70435号パンフレット
以上のように、従来の複合型金属ナノ粒子にあっては、金属核(中心部)から有機物を脱離させて、金属核を均一に焼結させるのに、少なくとも約250℃以上の温度が必要であり、必然的にこの複合型金属ナノ粒子を主材とした接合材料の接合温度も約250℃以上となる。すなわち、有機物の脱離に必要な最低温度が250℃の場合、実用的な接合温度は、所要の昇温時間や、脱離反応に必要な時間の要因から250℃よりも遥かに高い温度にすることが必要となる。
半導体装置や電気部品の接合等で多用されている、はんだ接合に必要とされる加熱温度(接合温度)が200℃内外の現状からの判断、及び半導体装置の耐熱限度からの判断によって、従来の複合型金属ナノ粒子を主材とした接合材料では、接合に要する温度が250℃以上と高過ぎると考えられる。したがって、既存のはんだ接合の温度との整合性及び/または半導体装置自体の健全性保持の観点から、接合温度を200℃前後に低く抑えることが求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、中心部を保護する有機物を該中心部から脱離させて該中心部を金属化させる温度を大幅に低減させて、はんだによる接合の代替に応用できるようにした複合型無機金属化合物ナノ粒子及びその製造方法を提案することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、無機金属化合物を含み、表面の略大部分が該無機金属化合物で覆われている中心部の該表面を有機物で取囲んだことを特徴とする複合型無機金属化合物ナノ粒子である。
ナノ粒子の中心部の少なくとも表面の略大部分を、従来の金属から無機金属化合物とすることによって、中心部の表面を取囲んでいる有機物の該中心部との結合力は極端に弱くなる。すなわち、銀は、金属銀よりも、例えば炭酸銀などのような化合物の形態をとる方が一般に遙かに安定な状態に置かれる。これは、金属銀の場合は、銀単独の化学的に不安定な状態に置かれているため、有機物が金属銀に強く結合する傾向にあるのに対し、炭酸銀では、逆に有機物が炭酸銀に非常に弱く吸着する傾向があること意味している。要するに、金属単体よりも、無機金属化合物の方が表面の化学的活性が大幅に低くなり、その結果、有機物と主に無機金属化合物からなる中心部表面との間の結合力の方が、有機物と金属成分からなる中心部表面との間の結合よりも格段に弱まり、結合の解消、すなわち有機物の無機金属化合物からなる中心部表面からの脱離も極端に容易となる。
換言すると、従来の表面が金属成分からなる金属ナノ粒子の場合は、裸のままでは化学的に極めて活性なため、金属ナノ粒子(中心部)の表面を有機物で強固に被覆することによって金属ナノ粒子を安定化させる必要がある。これに対して、本発明の複合型無機金属化合物ナノ粒子の場合は、中心部が主として無機金属化合物からなっているので、物理吸着程度の弱い結合力で該中心部(無機金属化合物)の表面を有機物で被覆するだけで安定な状態となる。このため、従来の複合型金属ナノ粒子より低い、例えば200℃前後の温度で有機物を無機金属化合物からなる中心部表面から脱離させて除去することが出来る。
これによって、接合施工の際の金属焼結に先立つ有機物の除去を低温で、かつ迅速に行うことが出来る。また、実験検証によって、中心部に主成分として含まれる無機金属化合物は、接合時の昇温によって熱分解(還元)され、金属以外の無機成分は中心部表面を取囲む有機物と同様に、金属成分から脱離することが判っている。
前述のように、無機金属化合物として、容易に熱分解(還元)して、金属以外の無機成分を金属成分から脱離するものを用いることで、金属成分間の焼結(金属化)は、中心部が単体金属から構成される場合と全く同様に実施出来る。これにより、本発明の複合型無機金属化合物ナノ粒子は、上述したはんだ接合のうち、特に高温はんだを用いる接合の代替手段として応用出来る。
前述のように、表面の略大部分を無機金属化合物で覆った中心部の該表面を有機物で取囲んだ構造にあっては、有機物は、化学的な結合とは異なり、無機金属化合物の表面に緩く結合されている。このため、有機物が金属有機化合物を介して化学的に金属成分(金属核)の周囲に強固に結合した従来の複合型金属ナノ粒子に比べ、遙かに低い温度で、かつ低いエネルギーで有機物を無機金属化合物の表面から脱離させることが出来る。
有機物の全体と主に無機金属化合物からなる中心部表面との結合の強さは、中心部表面のうち、無機金属化合物で覆われていない部分の比率が多いほど大きくなる。もし仮に、中心部表面のうち、1ヶ所でも金属成分が露出していれば、その部分の表面の活性が高まるので、局所的なレベルで有機物との結合が強くなる部分を有することになる。
一方、中心部の表面全体が無機金属化合物からなるときは、中心部表面と有機物の結合は全体で緩くなる。すなわち、中心部の表面全体にわたって有機物の弱い結合が実現される。この場合、中心部表面と有機物との結合が弱いので、前述の理由によって、有機物の中心部からの脱離に必要な温度・エネルギーが低くてすむ。したがって、中心部の表面全体を、例えば1分子層の無機金属化合物で覆うことが好ましい。
請求項2に記載の発明は、前記有機物は前記中心部の表面に物理吸着的に結合しているか、または中心部の表面に面積当り4eV/nm2以下の脱離エネルギーで結合していることを特徴とする請求項1記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子である。
これにより、有機物が金属有機化合物を介して化学的に金属成分(金属核)の周囲に結合した従来の複合型金属ナノ粒子に比べ、遥かに低いエネルギーで有機物を中心部の表面から脱離させることが出来る。
これにより、有機物が金属有機化合物を介して化学的に金属成分(金属核)の周囲に結合した従来の複合型金属ナノ粒子に比べ、遥かに低いエネルギーで有機物を中心部の表面から脱離させることが出来る。
請求項3に記載の発明は、前記中心部は、前記無機金属化合物の他に、金属成分を含むことを特徴とする請求項1または2記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子である。
中心部が無機金属化合物の他に少量の金属成分を含む場合、従来の複合型金属ナノ粒子と異なり、中心部の大半を無機金属化合物で占めているので、有機物の熱脱離の容易性は中心部に金属を含まない場合と同様に維持されている。更に、実質的に金属有機化合物を含むことなく、無機金属化合物を中心部の主体として構成しているため、中心部と該中心部を取囲む有機物との間に弱い結合を保っている。これは、本発明の差別性・優位性の根幹をなすものであって、最大の特徴をなしている。
請求項4に記載の発明は、前記有機物の前記中心部の表面から熱脱離を開始する熱脱離開始温度が140℃以上で190℃未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子である。
このように、中心部の表面を取囲む有機物の該中心部表面からの熱脱離開始温度を140℃以上で、190℃未満とすることで、この複合型無機金属化合物ナノ粒子を、例えば接合材料の主材として使用した場合、接合温度を200℃内外とすることが出来る。これによって、前記高温はんだによる接合を代替出来るだけでなく、半導体装置や電気部品の接合等で多用されている、加熱温度(接合温度)が200℃内外のはんだによる接合等を、この複合型無機金属化合物ナノ粒子を応用した方法で代替することが出来る。
このように、中心部の表面を取囲む有機物の該中心部表面からの熱脱離開始温度を140℃以上で、190℃未満とすることで、この複合型無機金属化合物ナノ粒子を、例えば接合材料の主材として使用した場合、接合温度を200℃内外とすることが出来る。これによって、前記高温はんだによる接合を代替出来るだけでなく、半導体装置や電気部品の接合等で多用されている、加熱温度(接合温度)が200℃内外のはんだによる接合等を、この複合型無機金属化合物ナノ粒子を応用した方法で代替することが出来る。
請求項5に記載の発明は、前記中心部の表面を取囲んでいる有機物は、炭素、水素及び酸素のみからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子である。
中心部の表面を取囲む有機物は、物理吸着程度の弱い結合力で無機金属化合物を主体とする中心部表面に結合すれば足りるので、窒素や硫黄などのような金属元素に対して強い結合力を有する元素を含む官能基を持つ必要はない。炭素、水素、酸素の3元素だけから構成される有機物で中心部を被覆することによって、金属有機化合物のような複雑な錯体を形成する確率が小さくなって、中心部と有機物との結合は弱くなるという利点が生じる。
また、従来の複合型ナノ粒子のように、炭素(C)、水素(H)または酸素(O)以外の窒素(N)や硫黄(S)等からなる有機物を含む場合、有機物の中心部からの脱離操作を行っても、有機物中に含まれるNまたはS成分が金属成分を焼結させた焼結金属中に残留し、その結果、導電性等に悪影響を及ぼす場合がある。無機金属化合物ナノ粒子を構成する有機物にNやSが含まれないものを使用することによって、有機物の脱離後や、無機金属化合物を金属化させた際に、NやSが残留する現象をなくし、これによって、NやS成分の残留による接合部の導電率の低下等の悪影響をなくすことが出来る。したがって、中心部表面を取囲む有機物は、炭素、水素、及び酸素のみからなることが望ましい。
請求項6に記載の発明は、前記無機金属化合物は、Cu,Ag,Pt,Pd,Ni,Au,Ru及びRhのうちの少なくとも1種からなる金属の酸化物、炭化物、窒化物、塩化物、硫化物、ケイ化物、硝酸塩または炭酸塩からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子である。
無機金属化合物は、Cu,Ag,Pt,Pd,Ni,Au,Ru及びRhのうちの少なくともいずれかの金属の無機化合物、すなわち酸化物、炭化物、窒化物、塩化物、硫化物、ケイ化物、硝酸塩または炭酸塩からからなることが好ましい。金属元素としては、ここに挙げたもののうちのどれか一種類であってもよいが、場合によってはこれらの混合物であってもよい。また無機化合物の形態としては、金属単体よりも化学的に安定な状態にあって、低温で熱分解するものであればどのようなものであってもよいが、分解する際に残留などの問題を起こさない炭酸塩や酸化物などが好ましい。
請求項7に記載の発明は、前記中心部の平均粒径が1〜100nmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子である。
このように、複合型無機金属化合物ナノ粒子の中心部の平均粒径を1〜100nmとすることで、低温での焼結性を実現することが可能となり、この性質を接合に応用することが出来る。
このように、複合型無機金属化合物ナノ粒子の中心部の平均粒径を1〜100nmとすることで、低温での焼結性を実現することが可能となり、この性質を接合に応用することが出来る。
複合型無機金属化合物ナノ粒子の中心部の粒径が変化しても、これを取囲む有機物の厚さは基本的に同じであり、このため、無機金属化合物と有機物との重量比は、中心部の粒径によって変化する。すなわち、中心部の粒径が小さ過ぎると、全体に占める有機物の比率が相対的に高まり、その結果、焼成した場合に有機物の中心部からの脱離を速やかに行うことは困難となる。一方、中心部の粒径が大きくなり過ぎれば、ナノ粒子としての特徴は急速に失われ、例えば接合で不可欠の低温焼結性を維持することが困難となる。実際に中心部の焼結開始温度は粒径が小さくなると低下することが知られているが、その効果が現れ始めるのは100nm以下である。20nm以下になるとその効果が顕著となり、特に10nm以下になると焼結開始温度が大きく低下する。したがって、利用面を考えると、中心部の平均粒径は、1〜20nmであるのが好ましく、5〜15nmであるのが特に好ましい。
請求項8に記載の発明は、前記無機金属化合物は炭酸銀であり、前記有機物は高級アルコールであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子である。
高級アルコールからなる有機物は無機金属化合物と物理吸着的に弱く結合している状態にある。したがって、有機物(高級アルコール)は、通常は粒子同士の凝集を回避する作用を有するが、熱などのエネルギーを外部から供給された場合に、極めて容易に中心部から解離し、更に蒸散する。
高級アルコールからなる有機物は無機金属化合物と物理吸着的に弱く結合している状態にある。したがって、有機物(高級アルコール)は、通常は粒子同士の凝集を回避する作用を有するが、熱などのエネルギーを外部から供給された場合に、極めて容易に中心部から解離し、更に蒸散する。
請求項9に記載の発明は、前記高級アルコールは、ミリスチルアルコールであることを特徴とする請求項8記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子である。
請求項10に記載の発明は、前記中心部に含まれる無機金属化合物が炭酸銀であって、該炭酸銀の含有率が炭酸分−CO3換算重量比で該中心部の重量の5.44〜21.54重量%の範囲内にあることを特徴とする請求項8または9記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子である。
前述のように、中心部の表面全体を、例えば1分子層の無機金属化合物で覆うことが好ましい。これを無機金属化合物が炭酸銀の場合について考察する。図2(a)は、炭酸銀(Ag2CO3)の分子構造の単位格子の形態を3次元的に示し、図2(b)は、炭酸銀の周期的な配列を3次元的に示す。図2(a)において、それぞれの方向における格子の軸長a,b,c=4.851,9.544,3.253オングストロームとなっている。
図3に模式図として示すように、ナノ粒子の中心部30の形態を、銀の微小な粒子32の表面に1分子層の厚さで炭酸銀34が結合して、銀の微小な粒子32の全表面を炭酸銀34で覆いつくした状態にあると仮定する。この場合、炭酸銀34の含有比率を最小とするため、炭酸銀34の結合面は銀の微小な粒子32の表面であるとすると、例えば、図3の中心部30の直径が10nmのときは、少なくとも25重量%の炭酸銀34が必要となることが算出される。
つまり、炭酸銀34の含有比率がこの値よりも小さい場合には、銀の微小な粒子32が部分的に外部に露出するので、前記の弱い吸着の可能な領域が減少し始める。銀の微小な粒子32の表面での炭酸銀34の比率が減少すればするほど、強い吸着面が増加するので、本特許の利点が急速に失われることになる。
以上述べたようにして、任意の中心部直径に対して、銀の微小な粒子の全面を少なくとも1分子層の炭酸銀で結合・被覆するのに必要な炭酸銀の含有率が算出される。
以上述べたようにして、任意の中心部直径に対して、銀の微小な粒子の全面を少なくとも1分子層の炭酸銀で結合・被覆するのに必要な炭酸銀の含有率が算出される。
図4は、1分子層の炭酸銀によって銀の微小な粒子の全面が被覆された中心部を有する複合型無機金属化合物ナノ粒子における中心部の直径(粒径(nm))と炭酸銀の最小必要含有率(重量(wt)%)の関係を示す。複合型無機金属化合物ナノ粒子を構成する金属や無機金属化合物の種類によって、図4に相当する、それぞれ特有のグラフが作成出来、上記の概念は他の材料についても成り立つことは勿論である。図4は、中心部の直径(粒径)が1〜20nmについて示しており、中心部の直径によって、炭酸銀の含有率を、図4に示す曲線より上の値とすることが好ましい。また、この値の範囲を炭酸分−CO3に換算すると、5.44〜21.54重量%となる。
なお、図4の曲線よりも上側の領域に相当するが、実験によると、中心部に占める炭酸銀の含有量は、約86重量%であることが好ましい。この場合に、有機物は約160℃の低温で脱離することを確認している。
なお、図4の曲線よりも上側の領域に相当するが、実験によると、中心部に占める炭酸銀の含有量は、約86重量%であることが好ましい。この場合に、有機物は約160℃の低温で脱離することを確認している。
請求項11に記載の発明は、無機金属塩と有機物を有する系内で固相/液相混合状態の原料を所定時間、所定温度に加熱・保持し、その後、温度保持を停止し、系外への取出し温度及び/または冷却時間を制御しつつ、系内の物質を系外に取出すことを特徴とする複合型無機金属化合物ナノ粒子の製造方法である。
このように、温度保持を停止後、系外への取出し温度及び/または冷却時間を制御しつつ、系内の物質を系外に取出すことにより、無機金属化合物を含み、表面の略大部分が該無機金属化合物で覆われている中心部の該表面を、熱分解温度を種々に調整した有機物で取囲んだ複合型無機金属化合物ナノ粒子を製造することができる。
このように、温度保持を停止後、系外への取出し温度及び/または冷却時間を制御しつつ、系内の物質を系外に取出すことにより、無機金属化合物を含み、表面の略大部分が該無機金属化合物で覆われている中心部の該表面を、熱分解温度を種々に調整した有機物で取囲んだ複合型無機金属化合物ナノ粒子を製造することができる。
請求項12に記載の発明は、原料としての無機金属塩と有機物とを系内で共存させ、前記無機金属塩に由来する無機金属化合物ナノ粒子が生成され、かつ無機金属化合物ナノ粒子と有機物が反応を起こして金属有機化合物が生成されることなく、無機金属化合物ナノ粒子の周りに有機物が物理吸着的に結合されるように前記金属塩と有機物を所定の温度に加熱し一定時間保持し、その後、温度保持を停止し、系外への取出し温度及び/または冷却時間を制御しつつ、系内の物質を系外に取出すことを特徴とする複合型無機金属化合物ナノ粒子の製造方法である。
この複合型無機金属化合物ナノ粒子の製造方法によると、中心部と該中心部の表面を取囲む有機物相互間に金属有機化合物が存在することはない。これは、原料として用いた無機金属塩と有機物の少なくとも一部が、例えば特有の反応を起こして、金属有機化合物を生成するというような挙動を生じることがないことによる。この結果、中心部と該中心部の表面を取囲む有機物が単に物理吸着的等の弱い結合を保った状態の複合型無機金属化合物ナノ粒子が生成される。
請求項13に記載の発明は、前記系内の物質を加熱し所定温度で保持する期間に、原料1mLに対し5〜2,500mWの動力を投入して前記物質を攪拌することを特徴とする請求項11または12記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子の製造方法である。
このような攪拌は、例えば、系内に設けた回転羽根を利用して行うが、原料1mLに対し5〜2,500mWの動力を用いて系内の流動を促進することによって原料の混合状態が改善され、所望の複合型無機金属化合物ナノ粒子の生成がより活発に行われる。
ここで、攪拌のために前記回転羽根を利用した場合に、攪拌動力を限定する理由に触れる。攪拌動力が原料1mL当り5mWを下回ると、液全体の流動作用がほとんど消失するので、静止液と同様の状態となる。その結果、目的とする複合型無機金属化合物ナノ粒子の生成は著しく遅くなるか、又は不可能となる。したがって、仮に生成出来たとしても、極端に不経済なプロセスと化す。
ここで、攪拌のために前記回転羽根を利用した場合に、攪拌動力を限定する理由に触れる。攪拌動力が原料1mL当り5mWを下回ると、液全体の流動作用がほとんど消失するので、静止液と同様の状態となる。その結果、目的とする複合型無機金属化合物ナノ粒子の生成は著しく遅くなるか、又は不可能となる。したがって、仮に生成出来たとしても、極端に不経済なプロセスと化す。
他方、攪拌動力が原料1mL当り2,500mW=2.5Wを超えると、(1)液体の流動が激しくなり、液面の揺動が極めて大きくなる結果、一部の液滴は液面から飛散して、上部内壁面に付着・固化する現象を呈する。また、(2)液の旋回が非常に活発になり(強制渦)、遠心力によって大部分の液体が容器壁面に貼付いた状態となって、液内部の混合状態は、却って不均一なものとなる。以上(1)、(2)の要因から、攪拌動力を原料1mL当り2,500mW(2.5W)以下に抑えることが必要である。
したがって、回転羽根等による攪拌動力を原料1mL当り5〜2,500mWとすることが望ましい。
したがって、回転羽根等による攪拌動力を原料1mL当り5〜2,500mWとすることが望ましい。
請求項14に記載の発明は、前記無機金属塩は炭酸銀で、前記有機物質は高級アルコールであることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の複合型無機金属ナノ粒子の製造方法である。
請求項15に記載の発明は、前記高級アルコールはミリスチルアルコールで、前記加熱温度は70℃以上、140℃未満であることを特徴とする請求項14記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子の製造方法である。
これによって、中心部/有機物相互間の結合を弱くした複合型無機金属ナノ粒子を製造することが出来る。なお、炭酸銀(無機金属塩)とミリスチルアルコール(有機物質)を、上記限界範囲を超える140℃の温度で2h加熱・保持した場合には、原料中の有機物が金属成分(銀)、または無機金属化合物(炭酸銀)と反応して金属有機化合物が生成され、金属成分、または無機金属化合物からなる中心部を金属有機化合物を介して化学的に強固に結合された有機物が取囲んだ複合型ナノ粒子が生成されるという不都合な結果が生じる。
これによって、中心部/有機物相互間の結合を弱くした複合型無機金属ナノ粒子を製造することが出来る。なお、炭酸銀(無機金属塩)とミリスチルアルコール(有機物質)を、上記限界範囲を超える140℃の温度で2h加熱・保持した場合には、原料中の有機物が金属成分(銀)、または無機金属化合物(炭酸銀)と反応して金属有機化合物が生成され、金属成分、または無機金属化合物からなる中心部を金属有機化合物を介して化学的に強固に結合された有機物が取囲んだ複合型ナノ粒子が生成されるという不都合な結果が生じる。
請求項16に記載の発明は、前記加熱温度をT(℃)、この温度での保持時間をt(h)としたとき、下記の式(1)が成立することを特徴とする請求項11乃至15のいずれかに記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子の製造方法である。
7.85≦(T+273)(20+logt)×10−3≦8.22 (1)
式(1)のような条件を設定することによって、主成分が無機金属化合物の中心部と該中心部の表面を取囲む有機物の間に弱い結合(物理吸着的)を保持する状態を生起することが出来る。
7.85≦(T+273)(20+logt)×10−3≦8.22 (1)
式(1)のような条件を設定することによって、主成分が無機金属化合物の中心部と該中心部の表面を取囲む有機物の間に弱い結合(物理吸着的)を保持する状態を生起することが出来る。
本発明の複合型無機金属化合物ナノ粒子によれば、中心部(無機金属化合物)を取囲んで保護する有機物は、中心部の表面に、化学的な結合とは異なり緩く結合されている。このため、有機物が化学的に金属成分(金属核)の周囲に結合した従来の複合型金属ナノ粒子に比べ、遙かに低い温度で、例えば140℃以上、190℃未満の加熱で有機物を中心部から脱離させることが出来る。これによって、半導体装置や電気部品の接合等で多用されている、加熱温度(接合温度)が200℃内外、及びそれ以上の融点のはんだによる接合を、この複合型無機金属化合物ナノ粒子を応用した方法で代替することが出来る。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
<複合型無機金属化合物ナノ粒子の想定形態>
図5(a)は、本発明の実施の形態の複合型無機金属化合物ナノ粒子の一例を模式的に示す。図5(a)に示すように、この複合型無機金属化合物ナノ粒子10は、無機金属化合物12からなる中心部16の表面を有機物18で取囲んだ構成をしている。図5(b)は、本発明の実施の形態の複合型無機金属化合物ナノ粒子の他の例を模式的に示す。図5(b)に示すように、この複合型無機金属化合物ナノ粒子10aは、無機金属化合物12aと少量の微小な粒子状の金属成分14からなる中心部16aの表面を有機物18で取囲んだ構成をしている。有機物18は、中心部16(または16a)の表面に物理吸着的に結合しているか、または面積当り4eV/nm2程度以下の脱離エネルギーで結合している。この有機物18は、中心部16(または16a)の保護皮膜としての役割を果たすもので、このように、中心部16(または16a)の周囲を有機物18で被覆することにより、中心部16を構成する無機金属化合物12(または中心部16aを主に構成する無機金属化合物12a)同士が凝集する傾向が小さく、分散安定性が優れた複合型無機金属化合物ナノ粒子10(または10a)が構成される。
図5(a)は、本発明の実施の形態の複合型無機金属化合物ナノ粒子の一例を模式的に示す。図5(a)に示すように、この複合型無機金属化合物ナノ粒子10は、無機金属化合物12からなる中心部16の表面を有機物18で取囲んだ構成をしている。図5(b)は、本発明の実施の形態の複合型無機金属化合物ナノ粒子の他の例を模式的に示す。図5(b)に示すように、この複合型無機金属化合物ナノ粒子10aは、無機金属化合物12aと少量の微小な粒子状の金属成分14からなる中心部16aの表面を有機物18で取囲んだ構成をしている。有機物18は、中心部16(または16a)の表面に物理吸着的に結合しているか、または面積当り4eV/nm2程度以下の脱離エネルギーで結合している。この有機物18は、中心部16(または16a)の保護皮膜としての役割を果たすもので、このように、中心部16(または16a)の周囲を有機物18で被覆することにより、中心部16を構成する無機金属化合物12(または中心部16aを主に構成する無機金属化合物12a)同士が凝集する傾向が小さく、分散安定性が優れた複合型無機金属化合物ナノ粒子10(または10a)が構成される。
このように、中心部16(または16a)を構成する無機金属化合物12(または中心部16aを主に構成する無機金属化合物12a)の表面を、物理吸着的または面積当り4eV/nm2程度以下の脱離エネルギーで結合した有機物18で取囲んだ構造にあっては、有機物18は、化学的な結合とは異なり、中心部16(または16a)の表面に緩く結合されている。このため、図1に示す、有機物24が、金属有機化合物を介して化学的に金属核(金属成分)22の周囲に強固に結合した従来の複合型金属ナノ粒子20に比べ、遥かに低い温度で、かつ低いエネルギーで有機物18を中心部16(または16a)の表面から脱離させることが出来る。
図5(a)に示す複合型無機金属化合物ナノ粒子10における有機物18の該中心部16の表面からの熱脱離開始温度は、140℃以上、190℃未満である。更に通常、無機金属化合物12自体の熱分解(還元)が比較的容易に生じるので、前述のように中心部16の表面を取囲む有機物18の該中心部16からの熱脱離開始温度を140℃以上で、190℃未満とすることによって、この複合型無機金属化合物ナノ粒子10を、例えば接合材料の主材として使用した場合、この接合温度を約200℃とすることが出来る。これは、無機金属化合物12が金属に還元されるとすぐに、金属ナノ粒子同士、及び金属ナノ粒子と被接合部材間で焼結が起ることに起因している。この結果、半導体装置や電気部品の接合等で多用されている、加熱温度(接合温度)が200℃内外のはんだ、及び更に高温で施工するはんだによる接合を、この複合型無機金属化合物ナノ粒子10を応用した方法で代替することが出来る。
また、この複合型無機金属化合物ナノ粒子10の有機物18の中心部16表面からの脱離エネルギーを、面積当り4eV/nm2程度以下とすることによって、この脱離エネルギーを、図1に示す、従来の複合型金属ナノ粒子20における有機物24の金属核(金属成分)22の表面からの脱離エネルギーに比べ、著しく小さくすることが出来る。
有機物18は、炭素(C)、水素(H)及び酸素(O)のみからなる。このように、複合型無機金属化合物ナノ粒子10の有機物18に窒素(N)や硫黄(S)等が含まれないようにすることによって、有機物18を中心部16から脱離させた後、金属部分にNやSが残留し、これによって、中心部16の無機金属化合物12を還元させ焼結することによって得られる焼結金属の導電率が、残留するNやS成分によって低下してしまうことを防止することが出来る。
中心部16を構成する無機金属化合物12は、Cu,Ag,Pt,Pd,Ni,Au,Ru及びRhのうちの少なくとも1種を含む化合物、つまり酸化物、炭化物、窒化物、塩化物、硫化物、ケイ化物、硝酸塩または炭酸塩からなる。中心部16の平均粒径d1は一般的には、1〜100nmである。
<粒径の作用>
ここで、複合型無機金属化合物ナノ粒子10の中心部16の粒径d1が変化しても、中心部16を取囲む有機物18の被覆厚さh1は基本的に同じであり、このため、中心部16を構成する無機金属化合物12と有機物18の重量比は、中心部16の粒径d1によって変化する。すなわち、中心部16の粒径d1が小さ過ぎると、全体に占める有機物18の比率が相対的に高まり、その結果、焼成した場合に有機物18の中心部16からの脱離を速やかに行うことは困難となる。一方、中心部16の粒径d1が大きくなり過ぎれば、ナノ粒子としての特徴は急速に失われ、接合で不可欠の低温焼結性も維持することが困難となるので、粒径d1は、出来るだけ小さくする必要がある。ここで、一般に小粒子の焼結開始温度は、粒径d1が小さくなると低下することが知られているが、その効果が現れ始める粒径d1は100nm以下である。粒径が20nm以下になるとその効果が顕著となり、特に10nm以下になると焼結開始温度が大きく低下する。したがって、利用面を考えると、中心部16の平均粒径d1は、1〜20nmであるのが好ましく、5〜15nmであるのが特に好ましい。
ここで、複合型無機金属化合物ナノ粒子10の中心部16の粒径d1が変化しても、中心部16を取囲む有機物18の被覆厚さh1は基本的に同じであり、このため、中心部16を構成する無機金属化合物12と有機物18の重量比は、中心部16の粒径d1によって変化する。すなわち、中心部16の粒径d1が小さ過ぎると、全体に占める有機物18の比率が相対的に高まり、その結果、焼成した場合に有機物18の中心部16からの脱離を速やかに行うことは困難となる。一方、中心部16の粒径d1が大きくなり過ぎれば、ナノ粒子としての特徴は急速に失われ、接合で不可欠の低温焼結性も維持することが困難となるので、粒径d1は、出来るだけ小さくする必要がある。ここで、一般に小粒子の焼結開始温度は、粒径d1が小さくなると低下することが知られているが、その効果が現れ始める粒径d1は100nm以下である。粒径が20nm以下になるとその効果が顕著となり、特に10nm以下になると焼結開始温度が大きく低下する。したがって、利用面を考えると、中心部16の平均粒径d1は、1〜20nmであるのが好ましく、5〜15nmであるのが特に好ましい。
前述のように、図5(a)に示す複合型無機金属化合物ナノ粒子10は、中心部16が無機金属化合物12からなり、この中心部(無機金属化合物)16の表面を、例えば物理吸着的に結合した有機物18で取囲んだ構成をしている。この有機物18は、保護皮膜としての役割を果たすもので、このように、中心部16の周囲を有機物18で被覆することにより、互いに凝集する傾向が小さく、分散安定性が優れた複合型無機金属化合物ナノ粒子10が構成される。
図5(a)の例にあっては、中心部16の全体を無機金属化合物12で構成した例を示しているが、図5(b)に示すように、中心部16aの組成の一部に、無機金属化合物12aの他に金属成分14を含んでいてもよい。このような場合でも、無機金属化合物12aの組成の方が多く、中心部16aの表面の略大部分が無機金属化合物12aで覆われていればよい。これにより、金属成分14よりも無機金属化合物12aの方が表面の活性は低いので、化学的に安定な状態が保持される。その結果、図5(b)に示す有機物18は、中心部16aの表面に緩く結合される。このため、従来の複合型金属ナノ粒子20(図1参照)に比べ、遥かに低い温度で、かつ低いエネルギーで有機物18を中心部16aの表面から脱離させることが出来る。
この複合型無機金属化合物ナノ粒子10aの有機物18の中心部16a表面からの熱脱離開始温度、及び中心部16aを主に構成する無機金属化合物12aの熱分解開始温度は、140℃以上、190℃未満である。このように、有機物18の中心部16a表面からの熱脱離開始温度、及び中心部16aを主に構成する無機金属化合物12aの熱分解開始温度を140℃以上で、190℃未満とすることで、複合型無機金属化合物ナノ粒子10aを、例えば接合材料の主材として使用した場合、これによる接合温度を約200℃とすることが出来る。
有機物18は、前述と同様に、炭素(C)、水素(H)、及び酸素(O)からなる。
有機物18は、前述と同様に、炭素(C)、水素(H)、及び酸素(O)からなる。
中心部16aを主に構成する無機金属化合物12aは、Cu,Ag,Pt,Pd,Ni,Au,Ru及びRhのうちの少なくともいずれかの金属の無機化合物からなる。金属元素としては、ここに掲げたもののうちのどれか一種類であってもよいが、場合によってはこれらの混合物であってもよい。また、無機金属化合物には上記金属からなる合金を含んでいてもよい。また無機化合物の形態としては低温で熱分解するものであればどのようなものであってもよいが、分解する際に残留などの問題を起こしにくい炭酸塩や酸化物などが好ましい。
ここで、複合型無機金属化合物ナノ粒子10aの中心部16aの粒径d2は、前述の例と同様に、一般には100nm以下であるが、1〜20nmであるのが好ましく、5〜15nmであるのが特に好ましい。
図5(b)に示すように、複合型無機金属化合物ナノ粒子10aの中心部16aに一定割合で金属成分14を含む場合、該金属成分14の存在形態としては、無機金属化合物12a中に金属成分14が単原子の状態で均一に分散している場合もあれば、金属成分14が一定の大きさの粒子状態となって分散している場合、更にそれ以外の形状で存在している場合もありうる。いずれにしても、中心部16aの表面の大部分は無機金属化合物12aで占められているので、周囲の有機物18による被覆は弱い結合を維持出来る。
<複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子の生成>
図6は、図5(a)または(b)に示す、本発明の実施の形態に係る複合型無機金属化合物ナノ粒子10または10aの生成反応の想定モデルの一例を示す。この例では、中心部が無機銀化合物(炭酸銀)からなる複合型無機銀化合物(炭酸銀)ナノ粒子の場合について、以下に詳述する。なお、無機金属化合物の組成は、無機銀化合物に特定する必要はなく、製造方法としては、銀以外を基本成分とする無機金属化合物の場合についても、類似の過程を経て行うことが出来ることは勿論である。
図6は、図5(a)または(b)に示す、本発明の実施の形態に係る複合型無機金属化合物ナノ粒子10または10aの生成反応の想定モデルの一例を示す。この例では、中心部が無機銀化合物(炭酸銀)からなる複合型無機銀化合物(炭酸銀)ナノ粒子の場合について、以下に詳述する。なお、無機金属化合物の組成は、無機銀化合物に特定する必要はなく、製造方法としては、銀以外を基本成分とする無機金属化合物の場合についても、類似の過程を経て行うことが出来ることは勿論である。
先ず、原料たる金属塩としての炭酸銀(粉体)と有機物としてのミリスチルアルコールとを均一に混合する。このミリスチルアルコールの融点は、36.4℃であり、常温では固体である。そして、この炭酸銀とミリスチルアルコールの混合物を、炭酸銀が所定のプロセスを経て無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子が生成され、無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子と有機物が反応を起こして金属有機化合物が生成されることなく、無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子の周りに有機物が物理吸着的に結合されるように、所定の温度、例えば70℃以上で、140℃未満の所定の温度に加熱して、この温度を一定時間保持する。例えば、炭酸銀とミリスチルアルコールの混合物を120℃で2h加熱・保持する。
これによって、この例によれば、図5(a)において、無機金属化合物(炭酸銀)12からなる中心部16の平均粒径d1が約9nm、有機物18の被覆厚さh1が約1.5nmで、この有機物18が中心部(無機金属化合物)16の周りに物理吸着等によって結合した複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子10が生成されるか、または図5(b)において、無機金属化合物(炭酸銀)12a及び金属成分(金属銀)14からなる中心部16aの平均粒径d2が約9nm、有機物18の被覆厚さh2が約1.5nmで、この有機物18が中心部16aの周りに物理吸着等によって結合した複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子10aが生成される。複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子の生成機構は、以下のように考えられる。
<複合型無機金属化合物ナノ粒子の生成機構>
複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子が生成する詳細な過程はほとんど未解明であるが、1つの可能性のあるモデルとして図6のプロセスを想定している。
ミリスチルアルコールは36.4℃で融解し、原料の炭酸銀(粉体)はこの溶融したミリスチルアルコール中に分散する。この状態が継続するのに伴い、大部分の炭酸銀は徐々に超微粒子化するか、更に一部は分子状態にまで微細化して、系内に均一に分散する。また、操作条件によっては、炭酸銀の一部は、次式(2)に示す反応によって分解して酸化銀と二酸化炭素を生成する。更に、酸化銀の一部はその後容易に原子状銀にまで還元される。
Ag2CO3 → Ag2O+CO2 (2)
複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子が生成する詳細な過程はほとんど未解明であるが、1つの可能性のあるモデルとして図6のプロセスを想定している。
ミリスチルアルコールは36.4℃で融解し、原料の炭酸銀(粉体)はこの溶融したミリスチルアルコール中に分散する。この状態が継続するのに伴い、大部分の炭酸銀は徐々に超微粒子化するか、更に一部は分子状態にまで微細化して、系内に均一に分散する。また、操作条件によっては、炭酸銀の一部は、次式(2)に示す反応によって分解して酸化銀と二酸化炭素を生成する。更に、酸化銀の一部はその後容易に原子状銀にまで還元される。
Ag2CO3 → Ag2O+CO2 (2)
上述の超微細化された炭酸銀は、ミリスチルアルコール中で一旦、過飽和状態にまで分散するが、その後、短時間で再凝集して一定サイズ、例えば9nm程度の炭酸銀ナノ粒子にまで成長する。つまり、超微細化した炭酸銀は、活性が高いため、単独で分散した状態では不安定であり、このため、複数の分子または超微細炭酸銀粒子同士が凝集して一定のサイズの凝集体に成長する。これは、系を加熱していることによって、ミリスチルアルコールが常時蒸発しているため、時間の経過と共に炭酸銀濃度が高まり、いずれ系内に炭酸銀濃度が高い状態、すなわち炭酸銀の過飽和状態が生じ、その結果、不可避的に系内で均一核生成を起こすためである。これは、冷却中に溶融金属中で凝固の核生成が起る均一核生成と類似の現象と考えられる。
ここで、超微細化された炭酸銀が一定数凝集することによって、一定サイズの粒子の核が形成される。熱活性化過程によって核の大きさが一定の臨界値以上に到達したものは、その後安定的に凝集・成長を続け、ある平衡的な大きさ(例えば9nm)の炭酸銀ナノ粒子に到達する。
炭酸銀ナノ粒子が凝集するのは、系全体の表面エネルギーの総和を減少させるためであるが、一定の大きさに成長した時点で、周囲に存在する有機物の作用によって成長が停止し、炭酸銀ナノ粒子の表面が有機物で覆われた状態となる。これによって、分子状の炭酸銀や超微細炭酸銀粒子同士の凝集・合体は停止し、ミリスチルアルコール中に独立に分散した複合型炭酸銀ナノ粒子が生成される。
すなわち、ナノ粒子が小さい場合、系全体の巨大な表面エネルギーによって、即座に高速度でナノ粒子の凝集が開始されるが、一定のサイズまでナノ粒子の成長が進むと、成長速度は相対的に低下(安定成長)し、周囲の有機物との間の相互作用の方が活発に起るようになり、ナノ粒子の表面は、有機物によって被覆・保護される。こうして出来た複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子は、独立・分散した形態で、ミリスチルアルコール中に存在する。
実際の製造例として、液面上の空間容積V=40cm3となる密閉容器内に30gの炭酸銀と適量のミリスチルアルコールを投入し、これを120℃で2h加熱・保持したところ、プロセス終了時の圧力(絶対圧)Pが1.26MPaまで上昇した。この圧力上昇を、式(2)に示した二酸化炭素ガスの発生だけによって生じたものと仮定する。空間部分の気体には次式(3)に示す状態方程式が成り立つ。
ここで、nは気体のモル数、Rはガス定数、Tは温度(絶対温度K)=(120+273)K=393Kとする。
式(3)に夫々の数値を代入すると、n=0.01542molを得る。一方、原料として投入した炭酸銀の全てが式(2)の反応を生じて、二酸化炭素を生じたとすると、式(2)から炭酸銀当量、すなわち30/275.77=0.1088molの二酸化炭素が発生することになる。したがって、今回式(2)の反応を生じた炭酸銀の割合は0.01542/0.1088=0.14=14%となることが明らかになる。
すなわち炭酸銀原料の14%が分解して二酸化炭素を発生し、残りの86%は炭酸銀の状態を保持している。
すなわち炭酸銀原料の14%が分解して二酸化炭素を発生し、残りの86%は炭酸銀の状態を保持している。
なお、本考察は、現時点での最適粒子製造手順に関するものであって、これ以外の実験条件(例えば異なる温度、配合比、攪拌等)で生成すれば、圧力上昇挙動が変化して、生成する複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子に占める炭酸銀の組成も変動する。
そして、その後、温度保持を停止し、系外への取出し温度及び/または冷却時間を制御しつつ、系内の物質を系外に取出す。
そして、その後、温度保持を停止し、系外への取出し温度及び/または冷却時間を制御しつつ、系内の物質を系外に取出す。
このように、温度保持を停止後、系外への取出し温度及び/または冷却時間を制御しつつ、系内の物質を系外に取出すことにより、無機金属化合物12(または12a)を含み、表面の略大部分が該無機金属化合物12(または12a)で覆われている中心部16(または16a)の該表面を、熱分解温度を種々に調整した有機物18で取囲んだ複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子10(または10a)が製造される。
<粒子成長の温度依存性>
ここで、加熱温度と粒子成長の関係を考察する。粒子生成を熱活性化過程によると考えれば、加熱温度が高いと、無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子の核発生頻度が増大するので、核発生はより多くの場所で起る。その結果、核は多数個形成され、夫々が周囲の超微小粒子、又は分子等を取込んで成長していくので、周囲の粒子や分子は、早期に減少・枯渇し、無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子の成長は早期に停止してしまう。したがって、工程終了時に生成完了する夫々の無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子の大きさは小さくなる。つまり、多数の核が成長を始めるので、成長停止後の粒子サイズは低温の場合よりも小さくなる。
ここで、加熱温度と粒子成長の関係を考察する。粒子生成を熱活性化過程によると考えれば、加熱温度が高いと、無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子の核発生頻度が増大するので、核発生はより多くの場所で起る。その結果、核は多数個形成され、夫々が周囲の超微小粒子、又は分子等を取込んで成長していくので、周囲の粒子や分子は、早期に減少・枯渇し、無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子の成長は早期に停止してしまう。したがって、工程終了時に生成完了する夫々の無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子の大きさは小さくなる。つまり、多数の核が成長を始めるので、成長停止後の粒子サイズは低温の場合よりも小さくなる。
逆に低い温度で加熱・保持を行う場合は、粒子の核発生頻度が低くなり、系内に発生する核数は相対的に少なくなる。このため、少ない核が周囲の無機金属化合物(ここでは炭酸銀に相当する)を大量に取込み、この結果、夫々の粒子は大きなサイズになるまで成長出来ることになる。この現象を、図7の該ナノ粒子の生成温度と粒径(平均値)の相関(アレニウス(Arrhenius)の式による計算値と実測値を併記)として示す。
以上のように、この方法によって製造される複合型無機金属化合物ナノ粒子の粒径は、加熱・保持温度が高いほど小さくなる。これは、前述のように液中に過飽和状態で存在する超微小粒子(核)が熱活性化過程によって生成・成長して行く機構が働くことと符合している。
実際に使う粒子の粒径をどの程度にするかは、粒子を適用する分野や用途によって決める必要がある。例えば、触媒を目的として使う場合、表面積の合計が多いほど効果が大きいので、粒径は小さいほどよい。一方、接合部材として本粒子を用いる場合、接合時に有機物の殻を効率よく分解・除去し、更に金属成分焼結を迅速に起こす必要がある。このため、粒子サイズを極度に小さくするのは不都合である。これは、有機物を分解し脱離させるためには、これと反応する酸素との結合を起こすことが必要であって、この酸素の供給及び反応で生じたガスを拡散させるための流路を確保することが不可欠なためである。すなわち、粒子サイズが過度に小さいと粒間の隙間も小さくなるので、気体の出入りが困難になるという弊害を生む。したがって、適度な粒子サイズを選択しなければならない。
<有機物による保護被覆の機構>
前述のように、無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子の周囲が有機物によって被覆されて保護された状態になると、ナノ粒子としての成長は停止する。
図8は、本発明の方法によって製造した複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子を供試体として、この供試体をFTIR(フーリエ赤外分光分析法)によって同定した結果得られたスペクトラムを示す。
前述のように、無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子の周囲が有機物によって被覆されて保護された状態になると、ナノ粒子としての成長は停止する。
図8は、本発明の方法によって製造した複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子を供試体として、この供試体をFTIR(フーリエ赤外分光分析法)によって同定した結果得られたスペクトラムを示す。
図8では供試体の厚さが本発明粒子からなる薄層(厚さ2μm程度)のため、通常のFTIR測定とは差異を生じるものの、図8から明らかなように、本発明の複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子供試体のスペクトラムでは、少なくとも明瞭な−OH基、−CH2−基のピークを観察することが出来る。
一般にFTIRでは外側に露出した有機物を同定することが出来、供試体の内部に含む物質を検出することが困難とされている。したがって、図8の供試体に含まれる有機物は粒子の表面上に存在すると判断される。
この有機物は、C−H−Oからなる直鎖型の構造をとっており、有機物が無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子(中心部)に、例えば物理吸着的に結合した形態をとっている。つまり、この例によれば、例えば炭酸銀とミリスチルアルコールの混合物を120℃で2h加熱・保持することによって、図5(a)に示す、無機金属化合物(炭酸銀)12からなる中心部16の周りを物理吸着的に結合した有機物18で取囲んだ複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子10、または図5(b)に示す、無機金属化合物(炭酸銀)12a及び金属成分(銀)14からなる中心部16aの周りを物理吸着的に結合した有機物18で取囲んだ複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子10aを生成することが出来る。
図5(a)または(b)に示す複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子10または10aは、原料の炭酸銀の大部分が化学的分解されること無く超微細粒子化することによって生成される。また、原料の炭酸銀の一部は式(2)に示す化学反応を経て、最終的には原子状の銀にまで還元され、複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子が形成されるときに、粒子内にこの金属銀が侵入した形をとる。金属銀の含有量は、製造条件(温度、配合比、攪拌等)が変化するのに伴って変化する。
上記金属銀14の含有率に拘わらず、図5(b)に示す複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子10aの中心部16aの周りを常に物理吸着的に結合した有機物18が被覆した構造をとることは同じである。つまり、無機金属塩と有機物質とを共存させ、無機金属塩の少なくとも一部が有機物質と反応を起こして金属有機化合物が生成されることなく、無機金属塩、乃至その熱分解により生成された無機金属化合物を含む中心部の周りに有機物質が物理吸着的に結合されるように無機金属塩と有機物質を所定の温度に加熱し一定時間保持することによって、少なくとも無機金属化合物を含む中心部の周りを、化学的結合ではなく、物理吸着的に結合した有機物で取囲んだ構造の複合型無機金属化合物ナノ粒子を生成することが出来る。
これに対して、例えば炭酸銀とミリスチルアルコールの混合物を上記よりも高温の140℃で2h加熱・保持すると、有機物は徐々に変化する。すなわち、有機物は、前述のように、生成当初、C−H−Oからなる直鎖型の構造をとっているが、所定温度より高い温度に一定時間以上保持されることによって、有機物と金属との相互作用が進行し、金属有機化合物が支配的に存在するようになると考えられる。すなわち、元来物理吸着していた有機物が、金属有機化合物を介した強い結合状態をとる有機物へと変質してしまう。
言い換えると、炭酸銀とミリスチルアルコールの混合物を120℃で2h加熱・保持するだけでは、金属有機化合物の生成に至ることはなく、有機物は弱く吸着した物理吸着状態を維持する。これに対し、温度を20℃上昇して140℃×2hの加熱・保持を行えば、吸着した有機物と金属が反応を起こして一部が金属有機化合物を生成し、これにより有機物を強固に結合した形態の被覆を持つ複合型ナノ粒子を生成することになる。以上の機構によって、120℃×2hの加熱・保持と、140℃×2hの加熱・保持とでは全く異なる複合型ナノ粒子が生成される。
図9(a)及び(b)は、夫々120℃×2hの加熱・保持によって生成した複合型無機銀化合物(炭酸銀)ナノ粒子(本発明)と、140℃×2hの加熱・保持によって生成したそれ(比較例)の熱分解曲線(DTA曲線及びTG曲線)を示す。なお、図9(a)及び(b)に示す熱分解曲線を求めたときの昇温速度は、5℃/minとしている。
図9(a)及び(b)で明らかなように、DTA曲線では、図9(a)に示す本発明では、約180℃で、図9(b)に示す比較例では、約220℃でピーク(発熱反応)が夫々生じており、この温度付近で有機物の中心部表面からの脱離及び/または分解が生じていると考えられる。つまり、本発明にあっては、比較例に比べて、ピーク温度が約40℃も低い。しかも、本発明では、ピークが非常にシャープに生じているが、比較例にあっては、ピークの幅が広範囲に拡がっている。
これにより、120℃×2hの加熱・保持によって生成した本発明は、140℃×2hの加熱・保持によって生成した比較例に比べ、有機物が遥かに低温で分解・蒸散され、中心部から脱離する。また、そのために必要な脱離エネルギーが中心部表面の単位面積(1nm2)当り、4eVと極めて小さく、従来例のそれの1/8程度となっている。しかも、粒子特性の均一度が高い(曲線のピークがシャープに発現しているため)ということが明らかとなっている。これは、複合型無機銀化合物(炭酸銀)ナノ粒子の低温焼結性を応用する接合には極めて好都合な特性と言える。
また、TG曲線では、図9(a)に示す本発明の方が、図9(b)に示す比較例に比べて、重量減少が遥かに急激に生じており、有機物の脱離が急速に生じることを示している。これは、本発明による複合型無機銀化合物(炭酸銀)ナノ粒子の粒子径を含む粒子特性の均一度が高く、系内が所定の温度に到達した瞬間に殆ど全ての粒子で一斉に有機物の脱離が始まることを示している。これに対して、比較例の複合型金属ナノ粒子では、少なくとも粒子特性の均一度が本発明のそれより劣っており、このために、全ての有機物が中心部から脱離を開始するのに余計な時間がかかることを示している。
有効な金属焼結を起こすためには、有機物が短時間で中心部から脱離することが必須条件なので、本発明の複合型無機銀化合物ナノ粒子は、比較例のそれを接合に応用する上での不都合を解消し、良好な接合を起こすために好適なものとなっている。
本発明の製造方法で、保持温度の精度を特に高めた場合の効果について触れる。
図10は、図9(a)と同じ120℃×2hの加熱・保持条件で、かつ通常の温度管理レベルより遥かに厳しく、±0.1℃以内の制御偏差となるような温度管理を行って生成した複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子の熱分解曲線を示す。なお、図9(a)の場合、120℃×2hの加熱・保持条件で、通常の温度管理レベル、つまり保持温度の制御偏差を±0.5℃以内として複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子を生成している。
図10は、図9(a)と同じ120℃×2hの加熱・保持条件で、かつ通常の温度管理レベルより遥かに厳しく、±0.1℃以内の制御偏差となるような温度管理を行って生成した複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子の熱分解曲線を示す。なお、図9(a)の場合、120℃×2hの加熱・保持条件で、通常の温度管理レベル、つまり保持温度の制御偏差を±0.5℃以内として複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子を生成している。
図10から明らかなように、DTA曲線におけるピーク温度は、約178℃で、図9(a)に示すそれとほぼ同じであるにも拘わらず、曲線のピークは著しく幅が狭くなっており、その温度でのTG曲線の変化挙動も極めて急激なものとなっている。これは、厳密な保持温度管理を行うことによって生成した複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子は、その粒子特性の均一度が極めて高くなることに起因すると考えられ、高品質の接合に使用するのに好適な粒子材料を提供出来ることを示す。
図11は、図10に示すのと同様に、120℃×2hの加熱・保持条件で、±0.1℃以内の制御偏差となるような厳密な温度管理を行って生成した複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子を供試材として、この供試材の構成物質をX線回折法によって定性的に分析・同定したときのスペクトラムを示す。
図11から、分析対象(供試材)は、少なくとも炭酸銀と金属銀を共に含む、複合型無機金属化合物ナノ粒子の形態を有していることがわかる。なお、エネルギーレベルの違いがあるため、X線回折法では有機物の検出は不可能である。
<有機物の組成>
図12は、本発明の複合型無機金属化合物ナノ粒子の中心部を取囲む有機物を調べるため、本発明の複合型無機金属化合物ナノ粒子を試料として、この試料の加熱によるGC(ガスクロマトグラフィー)−質量分析・同定を行って得たスペクトラムの例を示す。
図12は、本発明の複合型無機金属化合物ナノ粒子の中心部を取囲む有機物を調べるため、本発明の複合型無機金属化合物ナノ粒子を試料として、この試料の加熱によるGC(ガスクロマトグラフィー)−質量分析・同定を行って得たスペクトラムの例を示す。
図12から明らかなように、有機物の主成分は、分子式中にCを14個有するアルコール=テトラデカノールである。テトラデカノール(ミリスチルアルコールの別称)は、有機物全体の60重量%程度を占めており、これは原料として用いたミリスチルアルコールから由来したものであると考えられる。また、上記ミリスチルアルコール以外のCが14以下の有機物は、いずれも一旦ガス化したテトラデカノールが分解して二次的に生じたものと考えられる。
更に、有機物に関する特異な事項として以下を指摘し得る。本発明の複合型無機金属化合物ナノ粒子と従来の複合型金属ナノ粒子との間の大きな違いとして、有機物質に対する分散性の違いに注目する必要がある。すなわち、従来の複合型金属ナノ粒子は、トルエン等の溶剤に均一に分散させることが出来る。ところが、本発明の複合型無機金属化合物ナノ粒子は、有機物質に対する分散性が極めて低いことを特徴としている。なお、本発明の複合型無機金属化合物ナノ粒子は、界面活性剤を加えた水に限って分散可能性を持っている。
有機物質に対して本発明粒子が分散性をほとんど有しない要因は、現時点では未解明であるが、中心部とこれを取囲む有機物の結合が弱いことに起因して、帯電の状況が従来粒子と異なっている可能性があり、これが前記分散性の低さと関係していることも考えられる。
<温度×時間効果>
以上述べたように、製造条件における保持時間を2hで一定とした場合、加熱・保持温度が120℃(本発明)と140℃(比較例)では全く異なる性質の複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子が生じる。これは主として中心部の周囲に存在する有機物の被覆形態が保持温度によって本質的に違うことに基づくと考えられる。つまり、このように、わずか20℃の温度の違いで大きく性状の異なる結果を得られるのは、主に有機物の被覆形成機構が熱活性化過程によって引き起こされるためと考えられる。
以上述べたように、製造条件における保持時間を2hで一定とした場合、加熱・保持温度が120℃(本発明)と140℃(比較例)では全く異なる性質の複合型無機金属化合物(炭酸銀)ナノ粒子が生じる。これは主として中心部の周囲に存在する有機物の被覆形態が保持温度によって本質的に違うことに基づくと考えられる。つまり、このように、わずか20℃の温度の違いで大きく性状の異なる結果を得られるのは、主に有機物の被覆形成機構が熱活性化過程によって引き起こされるためと考えられる。
そこで、熱活性化過程の効果を定量的に記述する温度時間パラメータ(ラーソン・ミラーパラメータ:λ)による検討を行った。原子の熱拡散を典型例とする熱活性化過程が根底にある現象においては、反応の進行量がT1(C+logt)の形のパラメータで表示されることが判っており、この値が同じならば、同じ性質、状態に到達しているという一般的法則が成り立っている。そこで、式(4)に示すラーソン・ミラーパラメータ、λを熱活性化による反応量の指標として用いることが多い。
λ=T1(20+logt)×10−3 (4)
ここで、T1:加熱温度K、t:保持時間(h)
λ=T1(20+logt)×10−3 (4)
ここで、T1:加熱温度K、t:保持時間(h)
表2で明らかなように、100℃で24.8hと、120℃で2hの加熱・保持を行った場合のラーソン・ミラーパラメータλは、夫々共に7.98と等しい値を示すが、140℃で2hの加熱・保持をした場合、ラーソン・ミラーパラメータλは、8.38と前者よりも遥かに大きな値を示しており、このように大きな加熱・保持時間効果によって金属有機化合物の生成が進行したものと考えられる。
その結果、前述のように、後者の場合、有機物の熱分解温度が40℃も上昇し、発熱曲線のピークもブロードなものへと変化している。
その結果、前述のように、後者の場合、有機物の熱分解温度が40℃も上昇し、発熱曲線のピークもブロードなものへと変化している。
一方、表2以外の加熱温度・時間の組み合わせで粒子生成実験を行ったところ、同じ120℃でも保持時間を1h未満と短時間で生成すると系内の反応が不十分にしか起こらず、目的とする有機物による中心部の被覆が未完了な状態の粒子が生成されてしまうことを確認した。具体的には、熱分析において発熱ピークや重量減が予期した温度に加え、更に高い温度においても生じる(この現象には酸化銀の反応が絡んでいるとする見方もある)。
以上の観察所見から判断すると、加熱温度・時間の関係で、好ましい生成条件は、温度120℃で1〜8h(λ:7.86〜8.21)の範囲であり、特に3〜6h(λ:8.05〜8.17)の範囲が好ましいことがわかった。
以上の観察所見から判断すると、加熱温度・時間の関係で、好ましい生成条件は、温度120℃で1〜8h(λ:7.86〜8.21)の範囲であり、特に3〜6h(λ:8.05〜8.17)の範囲が好ましいことがわかった。
加熱温度が140℃の場合、好ましい保持時間は当然のことながら上記よりも著しく短く、0.1〜0.8h(λ:7.85〜8.22)、更に好ましくは0.3〜0.6h(λ:8.04〜8.17)を見出している。
したがって、本発明による複合型無機金属化合物ナノ粒子の生成のために加熱温度・保持時間をラーソン・ミラーパラメータ、λが大略7.85〜8.22の範囲に収まるように選定するのが望ましい。
したがって、本発明による複合型無機金属化合物ナノ粒子の生成のために加熱温度・保持時間をラーソン・ミラーパラメータ、λが大略7.85〜8.22の範囲に収まるように選定するのが望ましい。
なお、式(4)では、定数Cの値として、金属の高温変形でよく使われる20を用いているが、原子の拡散が素過程になるという点で金属有機化合物形成の場合も類似の扱いが出来ると想定している。表2のλと実際の有機物の脱離温度の差異との対応がとれているので、前述の仮定は合理的と判断される。
実用的な加熱操作(昇温・保持)としては、例えば加熱温度120℃で2h保持の処理を行うのが適当であり、140℃以上では、現象の進行速度が高まるので、金属有機化合物を生成するリスクが大きくなる。
一方、表2から明らかなように、加熱温度が100℃のように低くなると、保持時間を著しく長くとる必要を生じるので、製造時間が長引くことになり、不経済なプロセスとなりやすい。したがって、本発明の方法としては、現実的・工業的に実行容易な温度・保持時間を選定して行うことが望ましい。
次に、本発明の実施例と比較例の差違について言及する。
表3は、前述のように、炭酸銀とミリスチルアルコールに120℃×2hの加熱・保持を施すことによって生成した複合型無機銀化合物(炭酸銀)ナノ粒子(本発明)と、同じく140℃×2hの加熱・保持することによって生成した複合型ナノ粒子(比較例1)と、ステアリン酸銀を原料とし、これを窒素ガス雰囲気中で250℃に加熱することによって生成した複合型ナノ粒子(比較例2)の製造条件、特性、及びこれらを接合材料の主材として使用したときの接合温度下限を示す。
表3は、前述のように、炭酸銀とミリスチルアルコールに120℃×2hの加熱・保持を施すことによって生成した複合型無機銀化合物(炭酸銀)ナノ粒子(本発明)と、同じく140℃×2hの加熱・保持することによって生成した複合型ナノ粒子(比較例1)と、ステアリン酸銀を原料とし、これを窒素ガス雰囲気中で250℃に加熱することによって生成した複合型ナノ粒子(比較例2)の製造条件、特性、及びこれらを接合材料の主材として使用したときの接合温度下限を示す。
本発明と比較例1の結果から明らかなように、わずか20℃の生成温度の違いによって、有機物の熱脱離開始温度、及び接合温度下限が大きく異なっており、本発明による複合型無機銀化合物(炭酸銀)ナノ粒子の優位性が明らかとなっていることがわかる。
表4は、本発明の実施にあたり加熱温度と保持時間を変化して製造する場合の比較を示す。
表4は、本発明の実施にあたり加熱温度と保持時間を変化して製造する場合の比較を示す。
表4の製造条件は、いずれもラーソン・ミラーパラメータλ=8.10(一定)としている。表4に示すように、製造時の加熱温度、保持時間が異なっても、ラーソン・ミラーパラメータλが等しいので、同じ形態の粒子が生成し、有機物の熱脱離終了温度が160℃程度と、互いに等しくなっていると解釈している。
10,10a 複合型無機金属化合物ナノ粒子
12,12a 無機金属化合物
14 金属成分
16,16a 中心部
18 有機物
12,12a 無機金属化合物
14 金属成分
16,16a 中心部
18 有機物
Claims (16)
- 無機金属化合物を含み、表面の略大部分が該無機金属化合物で覆われている中心部の該表面を有機物で取囲んだことを特徴とする複合型無機金属化合物ナノ粒子。
- 前記有機物は前記中心部の表面に物理吸着的に結合しているか、または中心部の表面に面積当り4eV/nm2以下の脱離エネルギーで結合していることを特徴とする請求項1記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子。
- 前記中心部は、前記無機金属化合物の他に、金属成分を含むことを特徴とする請求項1または2記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子。
- 前記有機物の前記中心部の表面から熱脱離を開始する熱脱離開始温度が140℃以上で190℃未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子。
- 前記中心部の表面を取囲んでいる有機物は、炭素、水素及び酸素のみからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子。
- 前記無機金属化合物は、Cu,Ag,Pt,Pd,Ni,Au,Ru及びRhのうちの少なくとも1種からなる金属の酸化物、炭化物、窒化物、塩化物、硫化物、ケイ化物、硝酸塩または炭酸塩からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子。
- 前記中心部の平均粒径が1〜100nmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子。
- 前記無機金属化合物は炭酸銀であり、前記有機物は高級アルコールであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子。
- 前記高級アルコールは、ミリスチルアルコールであることを特徴とする請求項8記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子。
- 前記中心部に含まれる無機金属化合物が炭酸銀であって、該炭酸銀の含有率が炭酸分−CO3換算重量比で該中心部の重量の5.44〜21.54重量%の範囲内にあることを特徴とする請求項8または9記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子。
- 無機金属塩と有機物を有する系内で固相/液相混合状態の原料を所定時間、所定温度に加熱・保持し、
その後、温度保持を停止し、系外への取出し温度及び/または冷却時間を制御しつつ、系内の物質を冷却して系外に取出すことを特徴とする複合型無機金属化合物ナノ粒子の製造方法。 - 原料としての無機金属塩と有機物とを系内で共存させ、
前記無機金属塩に由来する無機金属化合物ナノ粒子が生成され、かつ無機金属化合物ナノ粒子と有機物が反応を起こして金属有機化合物が生成されることなく、無機金属化合物ナノ粒子の周りに有機物が物理吸着的に結合されるように前記金属塩と有機物を所定の温度に加熱し一定時間保持し、
その後、温度保持を停止し、系外への取出し温度及び/または冷却時間を制御しつつ、系内の物質を冷却して系外に取出すことを特徴とする複合型無機金属化合物ナノ粒子の製造方法。 - 前記系内の物質を加熱し所定温度で一定時間に保持する期間に、原料1mLに対し5〜2,500mWの動力を投入して前記物質を攪拌することを特徴とする請求項11または12記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子の製造方法。
- 前記無機金属塩は炭酸銀で、前記有機物質は高級アルコールであることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子の製造方法。
- 前記高級アルコールはミリスチルアルコールで、前記加熱温度は70℃以上、140℃未満であることを特徴とする請求項14記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子の製造方法。
- 前記加熱温度をT(℃)、この温度での保持時間をt(h)としたとき、下記の式(1)が成立することを特徴とする請求項11乃至15のいずれかに記載の複合型無機金属化合物ナノ粒子の製造方法。
7.85≦(T+273)(20+logt)×10−3≦8.22 (1)
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