JP2007126423A - エマルション並びにそれを用いた目的物質粒子の製造方法及び医薬品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 水及び水溶性有機溶媒を含み、当該水又は水溶性有機溶媒に対して難溶性の目的物質を微小化して分散させることができる新規なエマルションを提供する。
【解決手段】 水溶性有機溶媒と、水と、水溶性有機溶媒又は水に混和しうる目的物質と、界面活性剤とを含有し、水溶性有機溶媒濃厚相からなる液滴1が水濃厚相からなる連続相2中に分散しているエマルションを提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、目的物質を含有するエマルション、並びに、それを用いた目的物質粒子の製造方法及び医薬品に関する。
工業や医療等の様々な場面において、連続相に難溶性の物質を分散させた組成物を用いることがある。例えば、水に溶けがたい物質を微粒子化して、水中に分散させる場合がある。具体例を挙げると、難水溶性薬剤、即ち、水に溶けがたい薬剤を医療用に使用する場合などがこれに当たる。
特に、医薬製剤の分野に関して言えば、上記のように、難水溶性の薬剤を人体に投与する場合に薬剤を水に分散させて投与することがしばしばなされている。難水溶性の薬剤は、投与後に循環系に吸収されにくいため、薬効が開始されるまでに長時間を要するか、若しくは、循環系に吸収される前に体外に排出され、十分薬効を得られない虞がある。したがって、近年の医薬製剤の分野において、難水溶性の医薬の実用化に関する研究では、体内への送薬方法として、薬剤の微粒子化方法が広く検討されている。薬剤を微粒子化することにより、水中への薬剤の分散安定性が向上し、さらに、体内への吸収が促され、薬効を高めることが可能となると考えられる。
このような難水溶性薬剤の微粒子化方法は、従来さまざまに検討されてきた。例えば、界面活性剤などの表面改質剤を用いて難水溶性薬剤の大きな固体を機械的手法により粉砕する方法、有機溶剤に溶解した難水溶性薬剤をスプレーなどで噴射する方法、水溶性有機溶剤に難水溶性薬剤を溶解させ水中に展開することによって難水溶性薬剤を貧溶媒析出させる方法、非水溶性有機溶剤に難水溶性薬剤を溶解させて界面活性剤等でエマルションを形成させた後、非水溶性有機溶剤を除去する方法(液中乾燥法)などが挙げられる(特許文献1〜8)。
一方、本来相溶する水溶性有機溶媒と水との相分離は、水に電解質を添加することで引き起こされ、学術的視点から研究が続けられている(非特許文献1)。
米国特許第5145684号明細書 特開昭63−232840号公報 特開昭57−27128号公報 特開昭63−122620号公報 特許第3244502号公報 特開平1−156912号公報 特表昭61−63613号公報 特表平4−46115号公報 J. Phys. Chem. B, 105, 10101−10110 (2001).
ところで、産業上の各分野において、連続相に難溶性の物質を微小化して水中に分散させる場合、その用途等に応じて更なる性能改善が求められ、その改善要求を満たす新たな技術が希求されていた。例えば、上述した難水溶性の薬剤の事例を例に挙げると、従来の方法では、微小化に大きなエネルギーを要する点、微小化した薬剤の粒径が依然として大きい点等が改善点として挙げられる。
したがって、例えば、医療分野においては、充分に微小化を行なわれた難水溶性薬剤を安価に得る方法が要望されていた。特に、非水溶性有機溶剤を用いた液中乾燥法により薬剤を微小化した場合に、目的物が必ずしも非水溶性有機溶媒に対して十分な溶解性を持たず生産性に課題が残る点を解決することが求められていた。
さらに、近年の医薬の進歩に伴い、医薬分子は構造の複雑化や高分子量化が図られてきた結果、難水溶性かつ難油溶性の性質を有するもの、つまり、限られた溶媒にしか溶解しないものが現れており、これらに対応しうる微小化手法の開発も望まれている。
また、上記の液中乾燥法による微小化を行なう場合、適用できる非水溶性有機溶媒として、クロロホルムやジクロロメタンなどのハロゲン系有機溶媒を用いることがある。しかし、その場合にはハロゲン系有機溶媒が残留する虞があり、好ましくない。
本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたもので、水及び水溶性有機溶媒を含み、当該水又は水溶性有機溶媒に対して難溶性の目的物質を微小化して分散させることができる新規なエマルション、並びに、それを用いた目的物質粒子の製造方法及び医薬品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、所定の水溶性有機溶媒と、所定の目的物質と、水との混合物が、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相とに相分離するとの知見を得た。そして、この混合物に界面活性剤を加えることで、微小化した目的物質を含有する、水溶性有機溶媒を用いたエマルションを作製できることを見出し、本発明を完成させた。
これにより、例えば、従来難水溶性かつ難油溶性の性質を有する薬剤を水溶性有機溶媒に溶解し、この溶液と該薬剤が溶解できない難溶性の連続相とを用いてエマルションを調製することにより、難溶性の連続相内であっても、該薬剤を混和状態(即ち、分散状態又は溶解状態)で微小化し、該連続相内に分散させることが可能となる。
即ち、本発明の要旨は、常温常圧で水に対して5重量%以上の溶解度を有する水溶性有機溶媒と、水と、該水溶性有機溶媒又は水に混和しうる目的物質と、界面活性剤とを含有し、水溶性有機溶媒濃厚相からなる液滴が水濃厚相からなる連続相中に分散していることを特徴とする、エマルションに存する(請求項1)。
本発明の別の要旨は、常温常圧で水に対して5重量%以上の溶解度を有する水溶性有機溶媒と、水と、該水溶性有機溶媒又は水に混和しうる目的物質と、界面活性剤とを含有し、水濃厚相からなる液滴が水溶性有機溶媒濃厚相からなる連続相中に分散していることを特徴とする、エマルションに存する(請求項2)。
このとき、該液滴の平均粒径は10μm以下であることが好ましい(請求項3)。
また、水に電解質が0.1重量%以上溶解していることが好ましい(請求項4)。
さらに、該目的物質は薬剤であることが好ましい(請求項5)。
また、該目的物質は、難水溶性であることが好ましく(請求項6)、難油溶性であっても好ましい(請求項7)。
さらに、該液滴が、該目的物質を含有することが好ましい(請求項8)。
また、上記の水溶性有機溶媒及び水の一方の中における該目的物質の濃度は、0.005mg/mL以上であることが好ましい(請求項9)。
本発明の更に別の要旨は、上記のエマルションから、上記水溶性有機溶媒及び該水の少なくとも一方を除去する除去工程を有することを特徴とする、目的物質粒子の製造方法に存する(請求項10)。
このとき、該除去工程の後、目的物質粒子の洗浄を行なうことが好ましい(請求項11)。
本発明の更に別の要旨は、上記のエマルションを含有することを特徴とする、医薬品に存する(請求項12)。
本発明の更に別の要旨は、上記の目的物質粒子の製造方法により形成された目的物質粒子を有することを特徴とする、医薬品に存する(請求項13)。
本発明のエマルションによれば、従来には無い新たな態様で、水及び水溶性有機溶媒を含み、当該水又は水溶性有機溶媒に対して難溶性の目的物質を微小化して分散させることができる新規なエマルションを提供することができる。また、本発明のエマルションによれば、自発的にマイクロエマルション(熱力学的に安定なエマルション)を形成することができる。
また、本発明の目的物質粒子の製造方法によれば、粒子の大きさが小さい目的物質粒子を簡単に製造することができる。
さらに、本発明の医薬品によれば、医薬品を適切に治療対象に投与しやすくすることができる。
以下、本発明について例事物等を示して説明するが、本発明は以下の例事物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
[I.エマルション]
[I−1.概要]
本発明のエマルションは、常温常圧(即ち、25℃,1013hPa)で水に対して5重量%以上の溶解度を有する水溶性有機溶媒と、水と、該水溶性有機溶媒又は水に混和しうる目的物質と、界面活性剤とを含有する。そして、図1に模式的に示すように、水溶性有機溶媒濃厚相もしくは水濃厚相からなる液滴1が連続相2中に分散している。この際、液滴1が水溶性有機溶媒濃厚相である場合には連続相2は水濃厚相により形成され、液滴1が水濃厚相である場合には連続相2は水溶性有機溶媒濃厚相により形成される。また、液滴1は、連続相2中に、該連続相2とは相分離して分散している。そして、界面活性剤3が液滴1を安定化させている。
即ち、本発明のエマルションでは、水溶性有機溶媒と水とが二液相分離した状態から成る。この際、それぞれの相は、水溶性有機溶媒が濃厚な相(相1;以下、適宜「水溶性有機溶媒濃厚相」という)と、水溶性有機溶媒が希薄な相(相2;以下、適宜「水濃厚相」という)とに分かれる。ここで、水溶性有機溶媒濃厚相は、水濃厚相に比べて水溶性有機溶媒の含有率が高い相であることを意味し、水濃厚相は、水溶性有機溶媒濃厚相に比べて水の含有率が高い(即ち、水溶性有機溶媒の含有率が低い)相であることを意味する。
したがって、水溶性有機溶媒濃厚相とは、含有する水溶性有機溶媒の比率(組成;通常は、「(相内の水溶性有機溶媒の重量)/{(相内の水の重量)+(相内の水溶性有機溶媒重量)}」)が、水濃厚相よりも大きい相であれば、水をまったく含まない相でも良い。一方、水濃厚相とは、含有する水溶性有機溶媒の比率が、水濃厚相よりも小さい相であれば、水溶性有機溶媒をまったく含まない相でも良い。また、後述するように、水溶性有機溶媒濃厚相内において、必ずしも、水溶性有機溶媒の比率が水に比べて多い必要はない。同様に、水濃厚相内においても、水の比率が水溶性有機溶媒に比べて多い必要はない。
そして、水溶性有機溶媒濃厚相及び水濃厚相の一方が液滴1を形成し、水溶性有機溶媒濃厚相及び水濃厚相の他方が連続相2を形成することによって、連続相2中に液滴1を分散させたエマルションが形成されている。さらに、相分離した水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相の何れか一方には、目的物質が混和しているのである。
[I−2.水溶性有機溶媒]
本発明に用いる水溶性有機溶媒は、水に対して溶解しやすい有機溶媒である。具体的には水に対して、常温常圧の条件下において、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上の溶解度を有する有機溶媒を指す。特に好ましくは水と自由混合する有機溶媒である。ここで、自由混合とは任意の割合で水と混合できることを示す。
また、この水溶性有機溶媒としては、使用状態の条件(通常は、常温常圧)において、以下の条件(S1)又は条件(S2)を満たすものを用いる。
条件(S1):目的物質を混和させうると共に、目的物質を混和させた場合には水濃厚相と相分離できる。なお、水濃厚相には、適宜、電解質が溶解していてもよい。
条件(S2):水に目的物質を混和させた場合には水濃厚相と相分離できる。なお、水濃厚相には、適宜、電解質が溶解していてもよい。
上記の条件(S1)を満たすためには、例えば、水溶性有機溶媒には次に挙げる条件(i)、(ii)等が求められる。ただし、次に挙げる条件(i)、(ii)を満たさなくとも、上記の条件を満たすことはありえる。
(i)水溶性有機溶媒は、目的物質の飽和混和度(飽和溶解度)として通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上であることが好ましい。これは、目的物質が水溶性有機溶媒に分子レベルで相互作用して、水溶性有機溶媒の水との水素結合に影響を与え、相分離を進行させやすくするためである。つまり、水溶性有機溶媒への水の溶解度を下げるように目的物質が働くようにするためである。なお、上限に特に制限は無いが、通常90重量%以下である。
なお、飽和混和度(飽和溶解度)を調べるためには、水溶性有機溶媒に目的物質の所定量を混和(分散または溶解)させた時に、沈殿物が存在しないことで判断することができる。ただし、ここでは、目的物質と水溶性有機溶媒とが分子レベルで相互作用していることを示せればよく、必ずしも、本発明のエマルションを作製する時に、前述の飽和混和度(飽和溶解度)を水溶性有機溶媒が保持する必要はない。
(ii)水溶性有機溶媒は、比誘電率が、通常1.8以上、好ましくは1.9以上、より好ましくは2.0以上、また、通常40以下、好ましくは30以下、より好ましくは25以下の範囲であることが望ましい。水溶性有機溶媒の比誘電率が40より大きいと、該水溶性有機溶媒と水との水素結合が強すぎて水溶性有機溶媒と水とが相分離しにくくなる虞がある。逆に、比誘電率が1.8未満では水溶性有機溶媒に目的物質(難油溶性)が混和しにくくなる虞があり、そのため、効果的に該水溶性有機溶媒と水との水素結合に影響を与えることができず、該水溶性有機溶媒と水とが相分離しにくくなるばかりでなく、本発明のエマルションに目的物質が保持されず、沈殿する虞がある。
一方、上記の条件(S2)を満たすためには、例えば、水溶性有機溶媒には次に挙げる条件(iii)、(iv)等が求められる。ただし、次に挙げる条件(iii)、(iv)を満たさなくとも、上記の条件を満たすことはありえる。
(iii)水溶性有機溶媒は、目的物質の飽和混和度(飽和溶解度)として通常5重量%以下、好ましくは3%重量以下、さらに好ましくは1重量%以下であることが好ましい。この際、通常は、目的物質は水濃厚相側に存在することになるが、これ以上の混和飽和度(飽和溶解度)を持つと、目的物質が水溶性有機溶媒側に溶出し、効果的に、水の水溶性有機溶媒に対する溶解度を低下させることができず、水と水溶性有機溶媒の相分離を起こさせることができなくなる虞がある。
(iv)水溶性有機溶媒は、その比誘電率が、通常40以下、好ましくは30以下、より好ましくは25以下であることが好ましい。比誘電率が40より大きいと、該水溶性有機溶媒と水との水素結合が強すぎて、水溶性有機溶媒と水とが相分離しにくくなる。同様に、水に混和している目的物質が、水溶性有機溶媒濃厚相側に混和し始め、十分に水の水溶性有機溶媒に対する溶解度を低下させることができず、該水溶性有機溶媒と水との相分離がおきにくくなる。なお、下限値に特に制限は無いが、通常1.8以上である。
さらに、水溶性有機溶媒の好ましい例を挙げると、アルコール類、エーテル類、ケトン類などが挙げられる。中でも、特に好ましくは、環状エーテル類である。このような溶媒は、水との水素結合により水に溶解するため、目的物質の混和及び溶解、及び/又は、水への電解質の溶解によって、該水素結合に影響を与えやすく、さらには相分離を引き起こさせやすいからである。したがって、上記の条件(S1)及び条件(S2)のいずれの場合においても、水溶性有機溶媒としては、上記のような水溶性有機溶媒を用いることが好ましい。
また、水溶性有機溶媒の沸点は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下である。これよりも沸点が高いものは、エマルションを乾燥させて粉末粒子(目的物質粒子。後述する)を生成させる際に溶媒の除去に複雑な操作を必要となる不都合がある。なお、沸点の下限に制限は無いが、通常25℃以上である。
また、水溶性有機溶媒の凝固点は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常−180℃以上、好ましくは−150℃以上、より好ましくは−120℃以上である。これらを下回ると、エマルションを凍結乾燥によって目的物質粒子を生成させる際に溶媒の除去に複雑な操作を必要となる不都合がある。なお、凝固点の上限に制限は無いが、通常100℃以下である。
また、通常、水溶性有機溶媒は、液滴にも、連続相にも含有される。上述のように、液滴と連続相で水溶性有機溶媒がより多く含まれる方を水溶性有機溶媒濃厚相と呼び、少ないほうを水濃厚相と呼ぶ。ここで、液滴の中の水溶性有機溶媒の含有量が、連続相にくらべて多い場合には、このエマルションの状態を適宜「Solvent in Water」という。逆の場合の状態を適宜「Water in Solvent」という。
液滴界面の強さを保つためには、液滴内部の液体組成と連続相の液体組成とは大きく異なることが望ましい。その場合の組成の差は、例えば、液滴内部の水溶性有機溶媒の組成と連続相の水溶性有機溶媒の組成との差で表わすことができる。その具体的な例は、液滴内部の水溶性有機溶媒の組成(含有率)Caから連続相の水溶性有機溶媒の組成(含有率)Cbを引いた絶対値の値C*の値が、通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であることが望ましい。
ここで、組成Ca、組成Cb、及び、その差の絶対値C*は、それぞれ以下の通りである。
〔Caの定義〕
Ca=(液滴内部の水溶性有機溶媒の重量)/{(液滴内部の水溶性有機溶媒の重量)+(液滴内部の水の重量)}
〔Cbの定義〕
Cb=(連続相の水溶性有機溶媒の重量)/{(連続相の水溶性有機溶媒の重量)+(連続相の水の重量)}
〔C*の定義〕
*=|Ca−Cb|
なお、水溶性有機溶媒濃厚相および水濃厚相それぞれにおける水溶性有機溶媒および水の含有率は、界面活性剤を添加しない組成において、上相と下相に相分離させ、それぞれの相に含有される水溶性有機溶媒の量を、クロマトグラフィーにより測定することができる。
また、さらに好ましくは、上記要件に加えて、水溶性有機溶媒濃厚相においては、水溶性有機溶媒と水との合計重量に対する水溶性有機溶媒の比率が通常30重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。また水濃厚相においては、水溶性有機溶媒と水との合計重量に対する水溶性有機溶媒の比率が、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下であることが好ましい。これにより、液滴内部に多くの目的物質を保持することができ、連続相側への溶出を妨げることができるという利点を得ることができる。
水溶性有機溶媒の具体例を挙げると、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−アミルアルコール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド類のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールの低級ジエルキルエーテル類;グリセリン、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
この中で好ましくはアルコール類、エーテル類およびケトン類が挙げられ、より好ましくは環状エーテル類が挙げられる。その具体例としては、テトラヒドロフラン、1,4ジオキサンが挙げられる。
また、これらの水溶性有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の水溶性有機溶媒を混合して用いることもできる。
さらに、本発明のエマルションにおいて、水溶性有機溶媒の存在状態は本発明の趣旨に著しく反しない限り任意である。したがって、水溶性有機溶媒は、液体状態であっても良く、固体状態であっても良い。具体例を挙げると、水溶性有機溶媒が使用時に液体状態であるが保存時には固体状態(例えば水の場合は凍って氷となる)になっていたとしても、本発明のエマルションは、水溶性有機溶媒の状態によって、その権利範囲が左右されるものではなく、いずれの状態の組成物であっても本発明のエマルションである。
[I−3.水]
水は、本発明のエマルション内において、液滴及び連続相の少なくとも他方に含有される。この場合、上述したように、液滴及び連続相の一方が水溶性有機溶媒濃厚相になり、液滴及び連続相の他方が水濃厚相になる。
さらに、本発明のエマルションにおいて、水の存在状態は本発明の趣旨に著しく反しない限り任意である。したがって、水は、液体状態であっても良く、固体状態であっても良い。具体例を挙げると、水が使用時に液体状態であるが保存時には凍って氷となっていたとしても、本発明のエマルションは、水の状態によって、その権利範囲が左右されるものではなく、いずれの状態の組成物であっても本発明のエマルションである。
[I−4.目的物質]
目的物質は、本発明のエマルション内に微小化して分散させる物質である。また、目的物質としては、水溶性有機溶媒又は水に混和することにより、使用状態の条件(通常は、常温常圧)において、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相とを相分離させて、液滴と連続相とを相分離させることができる物質を用いるようにすることが望ましい。そのためには、目的物質は、例えば、以下のような性質を有することが求められる。
(a)目的物質が水溶性有機溶媒に混和しうるものである場合、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相とを相分離させて液滴と連続相とを相分離させるためには、[I−2.水溶性有機溶媒]で説明した条件(i)と同様の条件を満たすことが好ましい。即ち、目的物質の水溶性有機溶媒に対する飽和混和度(飽和溶解度)が、通常0.1重量%以上、好ましくは1%重量以上、さらに好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上であることが望ましい。これは、目的物質が水溶性有機溶媒に分子レベルで相互作用して、水溶性有機溶媒の水との水素結合に影響を与え、相分離を進行させやすくするためである。つまり、水溶性有機溶媒への水の溶解度を下げるように目的物質が働くようにするためである。なお、上限に特に制限は無いが、通常90重量%以下である。
なお、飽和混和度(飽和溶解度)を調べるためには、所定量を混和(分散または溶解)させた時に、沈殿物が存在しないことで判断することができる。ただし、ここでは、目的物質と水溶性有機溶媒とが分子レベルで相互作用していることを示せればよく、必ずしも、本発明のエマルションを作製する時に、前述の飽和混和度(飽和溶解度)を水溶性有機溶媒が保持する必要はない。
(b)目的物質が水溶性有機溶媒に混和しうるものである場合、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相とを相分離させて液滴と連続相とを相分離させるためには、目的物質が、その分子内に極性基を少なくとも1つ以上有することが好ましい。これは、目的物質の水溶性有機溶媒への混和(分散もしくは溶解)によって、水溶性有機溶媒と水との水素結合の影響を弱め、相分離させやすくするためである。
ここで極性基とは、水溶性有機溶媒と水との水素結合を弱める官能基であれば、どのようなものでも良く、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、アミノ基、酸化エチレン基などが挙げられる。
この際、通常は、目的物質は水溶性有機溶媒濃厚相に存在することなる。そこで、水濃厚相側に目的物質が移行しないためには、目的物質には、少なくとも、その分子内に非極性基を少なくとも1つ以上持つことが好ましい。ここで、非極性基とは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基などがあげられるが、これに限定されるわけではない。
(c)目的物質が水に混和しうるものである場合、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相とを相分離させて液滴と連続相とを相分離させるためには、[I−2.水溶性有機溶媒]で説明した条件(iii)と同様の条件を満たすことが好ましい。即ち、目的物質の水溶性有機溶媒に対する飽和混和度(飽和溶解度)が、通常5重量%以下、好ましくは3%重量以下、さらに好ましくは1重量%以下という性質を目的物質が有することが好ましい。この際、通常は、目的物質は水濃厚相側に存在することになるが、これ以上の混和飽和度(飽和溶解度)を持つと、目的物質が水溶性有機溶媒濃厚相側に溶出し、効果的に、水の水溶性有機溶媒に対する溶解度を低下させることができず、水と水溶性有機溶媒の相分離を起こさせることができなくなる虞がある。
ただし、目的物質が上記のような性質を有さない場合でも、本発明のエマルション内において水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相とを相分離させることができる場合がある。例えば、後述する電解質を使用する場合などがこれに該当する。したがって、電解質を使用する場合などにおいては、目的物質は上記の条件を必ずしも満たさなくても構わない。
また、エマルション内において目的物質は、液滴及び連続相のいずれに存在していてもよい。ただし、従来微小化して分散させることが困難であった物質を微小化して分散させるという本発明の利点の一つを有効に活用するためには、目的物質は液滴中に分散させるようにすることが望ましい。即ち、液滴が目的物質を含有することが望ましい。
さらに、目的物質は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、液滴中に目的物質が存在する本発明のエマルションを得るには、エマルションの状態がSolvent in Waterである場合とWater in Solventである場合とでそれぞれ適切な目的物質を選択するようにすべきである。以下、各場合について説明する。
[I−4−1.Solvent in Waterの場合]
本発明のエマルションがSolvent in Waterである場合、液滴中に目的物質が存在するようにするためには、目的物質として、水溶性有機溶媒に混和しうるものを用いる。混和の状態としては、溶解でもよく分散でもよいが、通常は、溶解するほうが好ましい。ここで、目的物質が水溶性有機溶媒に対して溶解可能(可溶)であるとは、本発明のエマルションを製造できる程度に目的物質が水溶性有機溶媒に溶解しうることを表わす。具体的には、常温常圧の条件下において、目的物質が水溶性有機溶媒に、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上溶解しうることを表わす。
また、本発明のエマルションがSolvent in Waterである場合には、目的物質として難水溶性のものを用いる。ここで、目的物質が難水溶性であるとは、本発明のエマルションが形成できる程度に目的物質が水に溶けないことを意味する。具体的には、目的物質として、常温常圧の条件化において、水に対する溶解度が通常100g/リットル以下、好ましくは50g/リットル以下、より好ましくは10g/リットル以下であることを表わす。
さらに、本発明のエマルションがSolvent in Waterである場合には、目的物質として難油溶性のものを用いることが好ましい。目的物質が難油溶性であるとは、具体的には、大豆油に対する溶解性が、常温常圧の条件下において、通常100g/リットル以下、好ましくは50g/リットル以下、より好ましくは10g/リットル以下であることを表わす。従来のOil in Water型のエマルション(即ち、水相からなる連続相に油相からなる液滴が分散したエマルション)において、その液滴(油相)に目的物質を内包するときには、親油性あるいは油溶性の目的物質で無ければ、所望のエマルションが形成できなかった。しかし、本発明のエマルションでは、水溶性有機溶媒を液滴に含むSolvent in Water型のエマルションを作製することができるので、水溶性有機溶媒に混和しうるものであれば、油に対する溶解性にかかわらず目的物質を液滴に含有させることができる。したがって、目的物質として難油溶性のものを用いれば、従来の方法では可溶化若しくは分散できない目的物質を、新たな態様で微小化して分散させることができるという本発明の利点をより有効に発揮することができ、好ましい。
また、目的物質として、難水溶性且つ難油溶性のものを用いることは、さらに好ましい。従来は微小化して分散させることが困難であった難水溶性且つ難油溶性の物質であっても、本発明のエマルションでは、それを目的物質として使用することができる。即ち、難水溶性かつ難油溶性である目的物質に対しても、液滴(Solvent相)に内包することができる。したがって、従来の方法では可溶化若しくは分散できない目的物質を、新たな態様で微小化して分散させることができるという本発明の利点を、更に有効に発揮することができる。
さらに、結晶性化合物や常温で固体となる化合物などは、目的物質として好適である。これは、従来の方法では可溶化若しくは分散が困難な目的物質を、新たな態様で微小化して分散させることができるという本発明の利点を、有効に発揮することができるからである。
本発明のエマルションがSolvent in Waterである場合の目的物質の例を挙げると、難水溶性薬剤等の薬剤、難水溶性染料、顔料、無機物質(金属コロイドを含む)などが挙げられる。
目的物質として使用できる薬剤としては、生理活性を有する化合物などが挙げられる。例えば、鎮痛薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗不整脈薬、抗生物質(ペニシリン類を含む)、抗凝固薬、抗降圧薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、降圧薬、抗ムスカリン薬、抗ミコバクテリア薬、抗新生物薬、免疫抑制薬、抗甲状腺薬、抗ウイルス薬、不安解消薬(催眠薬および神経弛緩薬)、アストリンゼント、アドレナリン性β受容体遮断薬、血液製剤および代用血漿、心筋変性力薬、コントラスト媒質、コルチコステロイド、咳抑制薬(去痰薬および粘液破壊薬)、診断薬、診断像形成薬、利尿薬、ドパーミン作用薬(抗パーキンソ氏病薬)、止血薬、免疫薬、リピッド調節薬、筋肉弛緩薬、副交感神経刺激興奮薬、副甲状腺カルシトニンおよびビホスホネート類、プロスタグランジン、放射性医薬、性ホルモン(ステロイド類を含む)、抗アレルギー薬、興奮薬および食欲減退物質、交感神経興奮薬、甲状腺薬、血管拡張剤およびキサンチン類を含む各種既知薬物類などが挙げられる。
薬剤の中でも特に好適なものを具体的に例示すると、17−α−プレグノ−2,4−ジエン−20−イノ−[2,3−d]−イソキサゾール−17−オール(ダナゾール)、5α,17α,−1′−(メチルスルホニル)−1′Hプレグノ−20−イノ−[3,2−c]−ピラゾール−17−オール(ステロイドA)、〔6−メトキシ−4−(1−メチルエチル)−3−オキソ−1,2−ベンズイソチアゾール−2(3H)−イル〕メチル2,6−ジクロロベンゾエート−1,1−ジオキシド、3−アミノ−1,2,4−ベンゾトリアジン−1,4−ジオキシド、ピポサルファム、ピポサルファン、カプトテシン、アセトミノフェン、アセチルサリチル酸、アミオダロン、コレスチフミン、コレスチポール、クロモリンナトリウム、アルブテロール、スクラルフェート、スルファサラジン、ミノキシジル、テンパゼパム、アルブラゾラム、プロポキシフェン、オーラノフィン、エリスロマイシン、サイクロスポリン、アシクロビア、ガンシクロビア、エトポサイド、メファラン、メトトリキセート、ミノキサントロン、ダウノルビシン、メガステロール、タモキシフェン、メドロキシプロゲステロン、ナイスタチン、テルブタリン、アンホテリシンB、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ジクロフェナック、ケトプロフェン、フルピプロフェン、ジフロミサール、エチル−3,5−ジアセトアミド−2,4,6−トリヨードベンゾエート、エチル(3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)アセテートおよびエチル−2−(3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシアセテート)などが挙げられる。中でも、特に好ましくは、ナプロキセン、インドメタシン等が挙げられる。これにより、薬剤を本発明のエマルションの液滴に含有させて用いることができる。
また、目的物質として使用できる染料の例としては、筆記記録液に通常使用されている染料、例えば、クマリン系、ペリレン系、ジシアノピニル系、アゾ系(例えば、ピリドンアゾ系、ジスアゾ系、トリスアゾ系、ベンゼンアゾ系、ヘテロ環アゾ系など)、キノフタロン系、アミノピラゾール系、メチン系、ジシアノイミダゾール系、インドアニリン系、フタロシアニン系などが挙げられる。これらの中では、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系などが好ましいものとして挙げられる。これにより、染料を本発明のエマルションの液滴に含有させて用いることができる。
さらに、目的物質として使用できる顔料の例としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、金属錯体系顔料、アゾメチン系顔料、アゾ系顔料などが挙げられる。このうち好ましくは、フタロシアニン系又はジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。これにより、顔料を本発明のエマルションの液滴に含有させて用いることができる。
また、目的物質の一例である無機物質の例としては、金等の金属、シリカ、酸化チタン、クレイ、タルクなどが挙げられる。これにより、金コロイド等の金属粒子や無機微粒子を本発明のエマルションの液滴に含有させて用いることができる。
[I−4−2.Water in Solventの場合]
本発明のエマルションがWater in Solventである場合、液滴中に目的物質が存在するようにするためには、目的物質として、水に混和しうるものを用いる。混和の状態としては、溶解でもよく分散でもよいが、通常は、溶解するほうが好ましい。ここで、目的物質が水に対して溶解可能(可溶)であるとは、本発明のエマルションを製造できる程度に目的物質が水に溶解しうることを表わす。具体的には、常温常圧の条件下において、目的物質が水に、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上溶解しうることを表わす。
また、本発明のエマルションがWater in Solventである場合には、目的物質として水溶性有機溶媒に対して難溶性のものを用いる。ここで、目的物質が水溶性有機溶媒に対して難溶性であるとは、本発明のエマルションが形成できる程度に目的物質が水溶性有機溶媒に溶けないことを意味する。具体的には、目的物質として、常温常圧の条件化において、水溶性有機溶媒に対する溶解度が通常100g/リットル以下、好ましくは50g/リットル以下、より好ましくは10g/リットル以下であることを表わす。
さらに、本発明のエマルションがWater in Solventである場合にも、Solvent in Waterである場合と同様に、目的物質として難油溶性のものを用いることが好ましい。更に、目的物質として、水溶性有機溶媒及び油の両方に難溶性のものを用いることは、Solvent in Waterの場合に難水溶性且つ難油溶性の目的物質を使用することがより好ましいのと同様に、より好ましい。
また、結晶性化合物や常温で固体となる化合物などは、本発明のエマルションがSolvent in Waterである場合と同様、本発明のエマルションがWater in Solventである場合にも、好適である。
本発明のエマルションがWater in Solventである場合の目的物質の例を挙げると、水溶性薬剤等の薬剤、水溶性染料、顔料、無機物質などがあげられる。
目的物質として使用できる水溶性薬剤の例としては、生理活性を有する化合物などが挙げられる。具体例を挙げると、抗生物質、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、ステロイド、免疫抑制剤、美白剤、抗炎症剤、抗菌剤、ホルモン剤、ビタミン類、酵素、抗酸化剤、血行促進剤、アミノ酸類、育毛用薬剤などが挙げられる。これにより、水溶性薬剤を本発明のエマルションの液滴に含有させて用いることができる。
目的物質として使用できる水溶性染料の例としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料等が挙げられる。詳しくは、例えばアゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができる。これにより、水溶性染料を本発明のエマルションの液滴に含有させて用いることができる。
さらに、目的物質として使用できる顔料及び無機物質としては、本発明のエマルションがSolvent in Waterである場合の例として説明した顔料及び無機物質と同様のものが挙げられる。これにより、顔料及び無機物質を本発明のエマルションの液滴に含有させて用いることができる。
[I−5.電解質]
本発明のエマルションは、適宜、電解質を含有していてもよい。ここで、電解質とは、溶液中でイオンに解離する物質をいう。この電解質は、通常は水濃厚相に溶解して存在する。また、この際、電解質の水に対する溶解度は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上である。
また、電解質を水濃厚相に溶解させることにより、水への水溶性有機溶媒の溶解度を低下を促すことができ、水濃厚相と水溶性有機溶媒濃厚相との相分離(塩析)が促進する。
また、電解質の中には、水溶性有機溶媒と水との水和を遮蔽して、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相との相分離を生ぜしめる作用、又は、促進する作用を有するものもある。したがって、そのような電解質を用いれば、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相との相分離を促進させ、エマルションを形成させやすくすることができる。
電解質の種類は、本発明のエマルションを形成させることができれば、いかなる電解質を用いても良いが、好ましくは無機塩を用いる。
電解質の例を挙げると、アルカリ金属水酸化物[水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等]、アルカリ金属炭酸塩[炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム等]、アルカリ金属硫酸塩[硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等]、アルカリ金属硝酸塩[硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等]、アルカリ金属リン酸塩[リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸カリウム等]、アルカリ金属亜硫酸塩[亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム等]、アルカリ金属ハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素もしくはフッ素)化物[塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、フッ化カリウム等]などのアルカリ金属塩;アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム、バリウムおよびストロンチウムなど)水酸化物[水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム等]、アルカリ土類金属炭酸塩[炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等]、アルカリ土類金属硫酸塩[硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等]、アルカリ土類金属硝酸塩[硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等]、アルカリ土類金属リン酸塩[リン酸水素カルシウム、リン酸水素マグネシウム等]、アルカリ土類金属亜硫酸塩[亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム等]、アルカリ土類金属ハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素もしくはフッ素)化物[塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、フッ化マグネシウム等]などのアルカリ土類金属塩;ハロゲン化物[塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等]などのアンモニウム塩などが挙げられる。また、高分子電解質としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリスルホン酸、ポリスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
なお、これらの電解質は、1種類を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[I−6.界面活性剤]
本発明のエマルションに用いる界面活性剤は、本発明のエマルションを形成できればいかなる界面活性剤を用いても良い。例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などを用いることができる。このうち、電解質を用いる場合はノニオン系界面活性剤が好ましい。また、界面活性能を有する高分子も、界面活性剤として用いることができる。
アニオン系界面活性剤の具体例としては、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸並びにこれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩などが挙げられる。
さらに、カチオン系界面活性剤の具体例としては、セチルトリメチルアンモニウムプロミド、塩化ヘキサデシルピリジニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
また、ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(具体的にはポリソルベート80、ポリソルベート20等の市販品)、ポリオキシエチレン硬化ひまし油(具体的にHCO60等の市販品)、エチレングリコール・プロピレングリコールブロックコポリマー(具体的にはプルロニックF68等の市販品)などが挙げられる。
さらに、界面活性能を有する高分子としては、デキストラン、ペクチン、デキストリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、アラビアゴム、アルブミン、カゼイン、ゼラチン、コラーゲン等の天然高分子、及び、ポリアミノ酸や合成たんぱく質などが挙げられる。また、スチレン−アクリル酸共重合体等の、親水基及び疎水基を有する合成高分子も界面活性剤として使用することができる。
なお、界面活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[I−7.その他の添加物]
本発明のエマルションは、本発明の効果を著しく損なわない限り、その他の成分(添加剤)を含有していても良い。したがって、水溶性有機溶媒濃厚相や水濃厚相の中に、上述したもの以外の成分が含有されていても良い。そのような添加剤に制限はなく、本発明の趣旨に著しく反しない限り公知の物質を任意に用いることができる。なお、これらの添加剤は、適宜、本発明のエマルションから連続相成分を除去した後の分散物もしくは紛体に含有されていても良い。
例えば、添加剤として、非水溶性有機溶媒を用いることが可能である。ここで、非水溶性有機溶媒とは、上記水溶性有機溶媒以外の有機溶媒、即ち、常温常圧で水に対する溶解度が5重量%未満の有機溶媒を意味する。ただし、本発明の趣旨から、その使用量は水溶性有機溶媒の量を超えない程度で使用することができる。
この非水溶性有機溶媒として、例えば、油を用いることができる。油の具体例を挙げると、大豆油、ゴマ油、オリーブ油、綿実油などに代表される植物油や、獣脂などの動物油、カカオ脂、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコールのジ脂肪酸エステル、中鎖または高級脂肪酸アルキルエステル、乳酸アルキルエステル、芳香族モノマー、ジカルボン酸アルキルエステルなどを用いることができる。
また、その他の非水溶性有機溶媒の例として、具体例を挙げると、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;エチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪酸エステル;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、オクタノール等のアルコール類などが用いられる。
これらの非水溶性有機溶媒の役割は、特に限定されないが、エマルションの形態及び物理的/化学的安定性に寄与し、さらに、目的物質の形態および物理的/化学的安定性に寄与する。
これらの非水溶性有機溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、例えば添加剤として、ポリマーを用いることができる。例を挙げると、本発明のエマルションを医療用途等に用いる場合であれば、ポリマーとしては、例えば生体内分解性の高分子化合物が挙げられる。生分解性の高分子化合物の具体例を挙げると、脂肪族ポリエステル、ポリ−α−シアノアクリル酸エステル、ポリアミノ酸、無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
これらのうち、代表的なものを挙げると、脂肪族ポリエステルの例としては、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、2−ヒドロキシカプリル酸等のα−ヒドロキシ酸類、グリコリド、ラクチド等のα−ヒドロキシ酸の環状二量体類、リンゴ酸等のヒドロキシジカルボン酸類、クエン酸等のヒドロキシトリカルボン酸等の単独重合体、共重合体、単独重合体及び/又は共重合体の混合物などが挙げられる。なお、重合体の例を挙げると、単独重合体としては乳酸重合体等が挙げられ、共重合体の例としては乳酸/グリコール酸共重合体、2−ヒドロキシ酪酸/グリコール酸共重合体等が挙げられ、単独重合体及び/又は共重合体の混合物としては乳酸重合体と2−ヒドロキシ酪酸/グリコール酸共重合体との混合物等が挙げられる。
また、ポリアミノ酸の例としてはポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸、ポリ−L−アラニン、ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸等が挙げられる。
さらに、無水マレイン酸系共重合体の例としてはスチレン/マレイン酸共重合体等が挙げられる。
また、添加剤として使用しうるポリマーとしては、生体適合性高分子化合物も好ましく使用することができる。その例としては、ポリスチレン、ポリメタアクリル酸、アクリル酸とメタアクリル酸との共重合体、ポリアミノ酸、デキストランステアレート、エチルセルロース、アセチルセルロース、ニトロセルロース、無水マレイン酸系共重合物、エチレンビニルアセテート系共重合物、ポリビニルアセテート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリエチレンなどが用いられる。
なお、ポリマーは、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、水濃厚相と水溶性有機溶媒濃厚相との相分離を誘起させる添加物として、スクロース、マルトース、デキストラン等の糖や多糖;ポリエチレングリコール等の水溶性高分子;たんぱく質等の水溶性生体高分子等の水溶性物質を用いてもよい。これらは、水に溶解させることにより、水への水溶性有機溶媒の溶解度を低下させることができ、相分離を誘起させることができる。
また、その他、添加物として使用できるものの例としては、緩衝液、pH調整剤、粘度調整剤、着色剤、防腐剤、防カビ剤、蒸発防止剤、香料などが挙げられる。なお、これら添加剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[I−8.相分離の条件]
本発明のエマルションは、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相を相分離させることが基本であり、それら相分離ドメインを界面活性剤で覆うことにより、エマルションとしている。通常、水溶性有機溶媒と水とは相溶するが、水溶性有機溶媒に上述の目的物質を混和(溶解又は分散)させることで、相分離を生じさせることができる。また、別の視点から、水に電解質を含有させることによっても、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相との相分離を生じさせる、又は、促進することができる。これらの相分離現象は、水と水溶性有機溶媒との水和を、目的物質若しくは電解質が遮蔽することにより、引き起こされるものと考えられる。
上記の相分離は、通常、上述した各構成要素の説明で述べた各条件を、各構成要素が適宜満たすことによって生じる。ただし、本発明のエマルションが相分離する条件は、本発明のエマルションを得ることができる限り任意であり、上述した条件に限定されるものではない。
水溶性有機溶媒、目的物質及び電解質を実験的に選択する場合には、例えば、以下のような操作を行ない、その際に2液相分離が生じるか否かで判断することができる。
例えば、Solvent in Water型エマルションの場合、常温常圧で、目的物質を含有した水溶性有機溶媒と同体積の水とを混合すればよい。一方、Water in Solvent型エマルションの場合、常温常圧で目的物質を含有した水と同体積の水溶性有機溶媒とを混合すればよい。なお、これらの混合の際には、調製しようとするエマルションと同様の条件(使用量、濃度、組成比など)で混合を行なうようにする。これらの混合を行なったとき、2液相分離を起こせば、その混合の操作に用いた目的物質及び水溶性有機溶媒は、本発明のエマルションの構成要素として適している。
ここで2液相分離とは、液体状態の界面を有することである。この時、沈殿物(固体)が発生してもかまわない。
さらに、上記の混合操作を行なう場合、相分離を引き起こしやすくするために、電解質を水に含有さることが好ましい。この際、相分離が生じれば、当該電解質は本発明のエマルションに好適に用いることができる。
[I−9.エマルションの組成]
[I−9−1.目的物質の量]
本発明のエマルションにおける目的物質の量は、本発明の趣旨に著しく反しない限り任意であるが、本発明のエマルションに対して、通常0.005mg/mL以上、好ましくは0.01mg/mL以上、より好ましくは0.05mg/mL以上、また、通常500mg/mL以下、好ましくは400mg/mL以下、より好ましくは300mg/mL以下である。この範囲の下限を下回ると、液滴中に目的物質を存在させる場合に目的物質が連続相側に漏出する虞がある。また、上限を上回ると本発明のエマルションの安定性が保たれず、目的物質が析出する虞がある。
また、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相とを相分離させる場合に水溶性有機溶媒又は水に含有させる目的物質の量は、本発明の趣旨に著しく反しない限り任意である。ただし、水溶性有機溶媒及び水のうち、目的物質を含有させる方の媒体(即ち、水溶性有機溶媒濃厚相に目的物質を含有させる場合には水溶性有機溶媒、水濃厚相に目的物質を含有させる場合には水)の中における目的物質の濃度は、通常0.01mg/mL以上、好ましくは0.05mg/mL以上、より好ましくは0.1mg/mL以上、また、通常800mg/mL以下、好ましくは700mg/mL以下、より好ましくは600mg/mL以下である。この範囲の下限を下回ると水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相とが十分に相分離せず、安定なエマルションを得ることができない虞があると共に、生産性が低下する虞がある。また、上限を上回るとエマルションの安定性が保たれず、目的物質が析出する虞があるためである。
[I−9−2.液滴を形成する媒体の量]
本発明のエマルションがSolvent in Waterである場合には、水溶性有機溶媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、この場合、本発明のエマルション中における水溶性有機溶媒の量は、本発明のエマルションに対して、通常0.5重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、さらに好ましくは5.0重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。この範囲の下限を下回ると相分離せず、エマルションは形成されなくなる虞があり、上限を上回るとWater in Solvent型のエマルションとなってしまう虞がある。
一方、本発明のエマルションがWater in Solventである場合、水の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、この場合、本発明のエマルション中における水の量は、本発明のエマルションに対して、通常0.5重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、さらに好ましくは5.0重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。この範囲の下限を下回ると相分離せず、エマルションは形成されなくなる虞があり、上限を上回るとSolvent in Water型のエマルションとなってしまう液滴を形成しない虞がある。
[I−9−3.界面活性剤の量]
本発明のエマルションにおける界面活性剤の量は、臨界ミセル濃度以上であれば任意であるが、本発明のエマルションに対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、また、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。この範囲の下限を下回るとエマルションが安定しなくなる虞があり、さらにこの上限を上回ると、界面活性剤がラメラ構造などの構造を形成し、目的のエマルションを得られない虞がある。
[I−9−4.電解質の量]
本発明のエマルションにおける電解質の量は、本発明のエマルションを形成できれば、本発明の趣旨に著しく反しない限り任意である。ただし、電解質を使用する場合には、本発明のエマルションに対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、また、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。この範囲の下限を下回ると水溶性有機溶媒と水との水和を有効に遮蔽することができなくなる虞があり、この上限を上回ると界面活性剤が有効に働かず、エマルションを形成できない虞がある。
なお、本発明のエマルションに含まれる上記の各成分の濃度は、例えば、液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
[I−10.エマルションの物性]
本発明のエマルションにおいて、液滴の大きさは、本発明の趣旨に著しく反しない限り任意である。ただし、液滴の平均粒径は、通常10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下、特に好ましくは500nm以下である。この上限を上回ると、エマルションが不安定になり、合一しやすくなる虞がある。なお、上記の平均粒径は、例えば、大塚電子社製「FPAR−1000」やマイクロトラック社製「Microtrack UPA」等の動的光散乱装置を用いて測定することができる。また、例えば堀場製作所社製「LA920」等のレーザー回折法を用いた装置で測定することもできる。この中でも、好ましくは動的光散乱法を用いた測定である。
また、本発明のエマルションは、静置しておいても目的物質が析出せず安定である。具体的には、本発明のエマルションは、常温常圧下で、通常12時間以上、好ましくは1日以上、より好ましくは2週間以上、さらに好ましくは1ヶ月以上静置した後でも、目的物質が析出しない程度に安定である。このように、熱力学的に安定なエマルション(マイクロエマルション)を自発的に形成させることができる点も、本発明の利点の一つである。
[II.本発明のエマルションの製造方法]
本発明のエマルションの製造方法は、本発明の趣旨を著しく反しない限り任意である。以下に好ましい製造方法を例示する。
まず、液滴及び連続相を形成する媒体、即ち、水溶性有機溶媒及び水をそれぞれ用意する。この際、目的物質を含有させる方の相により多く含まれる媒体には、予め、目的物質を混和させておく。したがって、液滴中に目的物質を含有させようとすれば、Solvent in Water型のエマルションを製造する場合には水溶性有機溶媒に目的物質を混和させておき、Water in Solvent型のエマルションを製造する場合には水に目的物質を混和させておく。
そして、液滴により多く含まれる媒体に対して、連続相により多く含まれる媒体を加える。これは、逆に連続相により多く含まれる媒体に液滴により多く含まれる媒体を加えると、液滴により多く含まれる媒体が急激に希釈され、目的物質が貧溶媒析出を引き起こす虞があるためである。つまり、例えばSolvent in Water型のエマルションを製造する場合には、水溶性有機溶媒に水を加えるようにする。一方、Water in Solvent型のエマルションを製造する場合には、水に水溶性有機溶媒を加える。
また、界面活性剤は、上記の混合の前、最中、後のどの工程において水溶性有機溶媒及び/又は水に混合してもよい。例えば、上記の混合前に予め水溶性有機溶媒及び/又は水に含有させておいてもよく、上記の混合後に水溶性有機溶媒及び/又は水に混合するようにしてもよい。
さらに、本発明のエマルションに電解質や添加剤を含有させる場合には、電解質や添加剤も、上記の混合の前、最中、後のどの工程において水溶性有機溶媒及び/又は水混合してもよい。ただし、電解質として、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相との相分離をさせる、又は、促進させる作用を有するものを用いる場合には、上記の混合の前に電解質を予め水に含有させておくことが好ましい。
次いで、水溶性有機溶媒と水とを混合して液滴を生じさせ、本発明のエマルションを形成させる。この時、水溶性有機溶媒と水とを混合させるときに自発的にエマルションを形成させてもよいが、エマルション中の液滴の粒径を小さくし、目的物質の微小化を促進する観点からは、エマルションの形成を促進させるために混合装置等を用いて攪拌等の微小化を行なうことが好ましい。
混合装置を用いる場合、この混合装置が行なう混合の具体的手法に制限はなく任意である。例えば、混合装置に攪拌等の微小化処理を行ない、エマルション化を進行させることができる操作を行なわせるようにすれば良い。混合装置の例を挙げると、ビーズミル、ロールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロ流動化装置、高圧ホモジナイザー等の分散機が挙げられる。この中でも、特に超音波分散機を用いるのが好ましい。
なお、上記の操作を行なう際の温度条件や圧力条件は、本発明のエマルションが得られる限り特に制限は無い。
温度条件に関して言えば、水溶性有機溶媒及び水が共に液体である温度範囲が好ましい。具体的には、通常0℃以上、好ましくは5℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下である。
また、圧力条件に関して言えば、減圧、常圧又は加圧の何れの条件下でもよい。取り扱いやすさからいえば、大気圧下で行うのが好ましい。ただし、高圧ホモジナイザーを分散機として用いる場合は、この限りではない。
以上の操作により、本発明のエマルションを得ることができる。
[III.目的物質粒子の製造方法]
本発明のエマルションが液滴内に目的物質を含有する場合、液滴から、液滴により多く含まれる媒体(即ち、水溶性有機溶媒及び/又は水)を除去することにより、目的物質の粒子(目的物質粒子)を得ることができる。また、除去工程の後、目的物質粒子の洗浄を行なう洗浄工程を行なうようにしても良い。以下、この目的物質粒子の製造方法について説明する。
[III−1.除去工程]
除去工程では、本発明のエマルション中の液滴から、液滴により多く含まれる媒体、即ち、上記水溶性有機溶媒及び水の一方を除去する。したがって、本発明のエマルションがSolvent in Water型である場合には少なくとも水溶性有機溶媒を除去するようにし、Water in Solvent型である場合には少なくとも水を除去するようにする。これにより、目的物質が連続相中に分散した分散液を得ることもできる。更に、液滴により多く含まれる媒体に加えて、連続相により多く含まれる媒体も除去するようにすれば、粉体として目的物質を含んだ粒子を得ることができる。
なお、上述のように、本発明のエマルションにおいては、通常は、水溶性有機溶媒濃厚相に水が混和している場合や、水濃厚相に水溶性有機溶媒が混和している場合がある。したがって、通常は、液滴内に水溶性有機溶媒及び水が両方とも含有されている。しかし、この場合でも、液滴により多く含まれる媒体(即ち、Solvent in Waterのエマルションでは水溶性有機溶媒、Water in Solventのエマルションでは水)を除去すれば、エマルションが二相系から一相系に変化するために、液滴内に含まれていた目的物質を連続相内で析出させて粒子を形成させることができる。連続相により多く含まれる媒体には目的物質が溶解できないからである。
ただし、除去工程において水溶性有機溶媒を除去する場合には、本発明のエマルションに用いる水溶性有機溶媒としては、乾燥除去ができる程度の沸点を有するものを使用することが好ましい。具体的は、水溶性有機溶媒として、沸点が、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下のものを用いることが好ましい。この上限を上回ると、水溶性有機溶媒を乾燥させて除去することが困難となる虞がある。
水溶性有機溶媒及び/又は水を除去する方法に制限は無い。例えば、プロペラ型撹拌機やマグネチックスターラー等の攪拌装置で撹拌しながら常圧若しくは徐々に減圧にして水溶性有機溶媒及び/又は水を蒸発させる方法、ロータリーエバポレーター等を用いて真空度を調節しながら水溶性有機溶媒及び/又は水を蒸発させる方法、凍結乾燥法などを用いることができる。このうち、好ましくは凍結乾燥法を用いることが望ましい。
ところで、凍結乾燥法により水溶性有機溶媒及び/又は水の除去を行なった場合でも、条件によっては、目的物質の合一が起こることがある。これを防止するため、上述の電解質を本発明のエマルションに含有させておくことが好ましい。電解質を含有させておけば、水溶性有機溶媒及び/又は水を取り除く際に、電解質の微結晶がこれらの目的物質の合一を妨げて、効果的に微粒子を作製することができるからである。
さらに、本発明のエマルションに、連続相により多く含まれる媒体(即ち、Solvent in Waterのエマルションでは水、Water in Solventのエマルションでは水溶性有機溶媒)を追加することにより、液滴から、液滴により多く含まれる媒体を除去して目的物質粒子を製造することも可能である。上記のように、本発明のエマルションは、目的物質、及び、適宜使用する電解質を用いることにより、水溶性有機溶媒の水和を遮蔽して、水溶性有機溶媒と水との相分離を誘起させて形成したものである。このため、エマルションに、連続相により多く含まれる媒体を所定量以上用いることにより、液滴中の媒体(水溶性有機溶媒及び/又は水)を連続相に溶解させ、結果的に液滴内の媒体を取り除き、目的物質の粒子化を行なうことができる。
この方法の具体例を挙げる。例えばSolvent in Water型のエマルションの場合、エマルションに水(連続相により多く含まれる媒体)を加えることで、エマルション内の系を二液相分離領域から一相均一領域に系を移行させ、液滴中の水溶性有機溶媒を除去する。これにより、目的物質の微粒化を行ない、連続相内に目的物質粒子を得ることができる。また、Water in Solvent型のエマルションでも、同様にして目的物質粒子を得ることができる。なお、目的物質粒子は、連続相中に分散した分散液(組成物)の状態で用いることもできるし、連続相の一部又は全部を除去して用いることもできる。
[III−2.洗浄工程]
洗浄工程では、除去工程の後、目的物質粒子の洗浄を行なう。具体的には、目的物質以外の電解質、界面活性剤及びその他の添加物を洗浄・除去する。
洗浄方法の具体的な方法は、本発明の趣旨に著しく反しない限り任意である。例えば、例えばSolvent in Water型のエマルションの場合、目的物質に連続相を形成する連続相を加え、遠心分離、透析、濾過等の方法で、電解質、界面活性剤及びその他の添加物を取り除くことができる。これは、連続相により多く含まれる媒体に、目的物質が混和しにくく、電解質及び界面活性剤が混和しやすいという性質を利用している。
さらに洗浄後の目的物質を公知の乾燥方法で乾燥させ、連続相により多く含まれる媒体を取り除いてもよい。ただし、目的物質が合一することや、結晶成長を生じることを抑制するために、乾燥には凍結乾燥法を用いて連続相により多く含まれる媒体を取り除くことが好ましい。
[III−3.目的物質粒子の物性]
本発明の目的物質粒子の製造方法で得られる目的物質粒子の粒径は、乾燥状態では、通常10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。なお、目的物質粒子の粒径の測定方法は、上述のエマルションの粒径を測定する方法を用いることができるが、好ましくは動的光散乱である。また、SEM(走査型電子顕微鏡)により測定することもできる。なお、動的光散乱で粒径を測定した場合、平均粒径が上記の範囲となる。
[III−4.収率]
本発明の目的物質粒子の製造方法によれば、本発明のエマルションに含有させた目的物質のうちの、通常1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは10%以上を乾燥状態で得ることができる。なお、この収率は、液体クロマトグラフィー等で分析することにより測定することができる。
[IV.効果]
以上、詳細に説明したように、本発明のエマルションによれば、従来にはない新たな態様で、水及び水溶性有機溶媒を含み、当該水又は水溶性有機溶媒に対して難溶性の目的物質を微小化して分散させることができる新規なエマルションを提供することができる。さらに、これに加えて、適宜、従来は微小化が困難であった目的物質を連続相中で微小化して分散させること、使用する連続相や目的物質の選択範囲を従来よりも広げられること、自発的にマイクロエマルション(熱力学的に安定なエマルション)を形成させることができること、などの利点を得ることもできる。
さらに、本発明の目的物質粒子の製造方法によれば、粒子の大きさが小さい目的物質粒子を簡単に製造することができる。また、本発明の目的物質粒子の製造方法によれば、製造方法が簡単であるため、目的物質粒子の生産コストを下げることができるという利点を得ることもできる。
[V.利用分野]
本発明のエマルション、並びに、本発明の目的物質粒子の製造方法及びその製造方法により得られる目的物質微粒子は、水溶性有機溶媒を用いることができる点、目的物質を多くエマルションに保持させることができる点、液滴や目的物質粒子の粒径が小さい点などを活かし、産業上のさまざまな分野において用いることができる。
例えば、本発明のエマルションや、本発明の目的物質粒子の製造方法で得られた目的物質粒子を医薬品に用いることができる。具体例としては、本発明のエマルション、又は、本発明の目的物質粒子の製造方法で得られた目的物質粒子を有する医薬品を用いることができる。これにより、当該医薬品を適切に治療対象に投与しやすくすることができるようになる。
また、これに関連して、例えば、本発明のエマルションが薬剤を目的物質として含有するように形成すれば、例えその薬剤が水に難溶性であったとしても、薬剤を水に安定して分散させることができ、且つ、薬剤を微小化することができる。したがって、薬剤の投与を必要とする生体に対して、適切に投与することができるようになる。
ただし、本発明のエマルション又は目的物質粒子を医療分野に用いる場合、水、目的物質、界面活性剤、電解質及びその他の添加剤等の、本発明のエマルション又は目的物質粒子を構成する各要素には、医薬品として認可されているものを用いることが好ましい。
さらに、上記のように薬剤を目的物質として用いた場合には、本発明のエマルション及び目的物質粒子は、その比表面積増大により、薬物の体内への吸収を助け、さらにその微小化により、薬物の送達及びその貯蔵に大きな利点を有する。
また、本発明の目的物質粒子の製造方法を難水溶性薬剤の製造に適用することにより、大きなエネルギーを要することなく、また、薬剤の特性に大きく影響されること無く、薬剤を微粒子化することができる一般的な手法として取り入れることができる。
さらに、本発明の目的物質粒子の製造方法は、非常に微小な粒径の液滴から、目的物質粒子を簡単に製造することができることを利点の一つとしている。したがって、画像形成装置のトナー等のように、粒径を小さくすることが望まれる顔料や染料などを目的物質に用いて目的物質粒子を製造すれば、非常に小さい粒径を有する良質の目的物質粒子を簡単に得ることができる。
また、本発明のエマルション及び目的物質微粒子は、上記のような分野以外にも、幅広い分野に用いることができる。例えば、目的物質として染料や顔料を用いた場合、インクジェットプリンタ用インク、トナー、カラーフィルタ用レジスト、その他のインク又は塗料として用いることができる。
以下、本発明について実施例を示して更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
[実施例1]
(1)エマルションの調製
50mLのバイアル瓶に、薬剤(目的物質)であるs−ナプロキセン((S)-(+)-6-Methoxy-α-methyl-2-naphthaleneacetic-acid、ALDRICH:シグマ社製)0.06gをTHF(テトラヒドロフラン:純正化学株式会社製)5.04gに溶解した。別の容器に、10重量%NaCl水溶液26.7gに界面活性剤プルロニックF68(旭電化工業社製)0.3gを溶解し、先に調製した薬剤含有THF溶液にこの界面活性剤/NaCl水溶液を添加した。
その後、超音波分散機(STM社製ULTRA SONIC HOMOGENIZER UH−600S)を用いてエマルションを分散した。分散させる際、超音波分散機の設定は、出力チップは7φを使用し、出力レベルは5とし、超音波照射間隔レベルは50%とし、超音波照射時間は15分とした。こうして、わずかに白濁した薬剤含有エマルションAを得た。
得られた薬剤含有エマルションAの粒度分布を、大塚電子社製の粒度分布計FPAR−1000(濃厚用プローブ使用)にて測定した。測定結果を図2に示す。この結果より、薬剤含有エマルションA内の液滴の平均粒径は約275nmであることが分かった。
さらに、薬剤含有エマルションAを2mLとり、100mLのナスフラスコに入れ、−40℃の冷媒に30分間、ローターにてまわしながら凍結した。凍結した薬剤含有エマルションAを減圧しながら、凍結乾燥を行なった。この時、薬剤含有エマルションAを溶解させないように、−40℃の冷媒を保温ステンレス瓶につめ、このナスフラスコごと浸した。4時間ほど放置し、THFおよび水を取り除いた。こうして得られた粉体を、薬剤含有粉体Aとする。
<薬剤含有粉体Aの洗浄>
この薬剤含有粉体Aを100mgとり、脱塩水にて5mLにメスアップした。超音波洗浄機にて、よく分散し、1mLずつエッペンドルフチューブにわけ、遠心分離機にて10000回転、30分間処置し、上清をすて、沈殿物を得た。得られた沈殿物にさらに1mLずつ脱塩水を添加し、超音波洗浄機にてよく分散した。こうして得られた分散液を、薬剤含有分散液Aとする。その粒径をFPAR−1000にて測定した。その結果を図3に示す。
さらに薬剤含有分散液Aを遠心分離機にて10000回転、30分処置し、上清をすて、沈殿物を得た。得られた沈殿物にさらに1mLずつ脱塩水を添加し、超音波洗浄機にてよく分散した。この分散液5mLを、100mLのナスフラスコにいれ、凍結乾燥を行なった。得られた粉体を薬剤微粒子Aとする。
<SEM観察>
薬剤含有粉体A及び薬剤微粒子AのSEM写真を図4および図5に示す。図5において、粒径200〜300nm程度の微粒子が確認された。
<HPLC分析>
薬剤微粒子Aの中に含まれる薬剤を分析した。分析には、凍結乾燥前のエッペンドルフチューブ1本を用い、HPLC測定を行なった。サンプルにエタノールを加えて、10mLにメスアップし、0.45μmのフィルターでろ過して、分析に用いた。下にHPLC分析条件を示す。
<HPLC条件>
カラム:TSKgel superODS(4.6×50mm)、40℃
溶離液:0.1%リン酸水溶液/アセトニトリル=60/40、0.8mL/min
検出:272nm
注入量:5μL
測定の結果、エッペンドルフチューブ1本あたり、180μgのナプロキセンが観測された。仕込みから計算すると収率100%であれば約400μgのナプロキセンがあると推測される。よって、本実施形態で得たナプロキセンの収率は45%であった。
[実施例2:PLAおよび油を含んだエマルション]
薬剤をインドメタシン(SIGMA社製)0.3gとし、添加物として、ポリ−L−乳酸(分子量10000、ナカライテスク株式会社製)0.15g、大豆油(和光純薬工業株式会社製)0.15gを加えた以外は、実施例1と同様にして、エマルションを作製した。
エマルションの粒径評価を実施例1と同様にして行なった。その結果、得られたエマルション内の液滴の平均粒径は、252nmと見積もられた。
さらに1週間後の測定でも、平均粒径は249nmと見積もられ、経時変化がほとんど見られないことが確認された。
[実施例3:その他の薬剤含有マイクロエマルション]
薬剤(目的物質)であるs−ナプロキセン0.3gをTHF5.7gに溶解した。別の容器に、NaCl 0.41g、界面活性剤HCO60(日本サーファクタント工業株式会社製)1.1gを脱塩水に溶解させた。これら2液をマグネチックスターラーにて攪拌しながら混合した。
得られた薬剤含有エマルション内の液滴の粒径をHPPS3.3(Malvern社製)にて測定した。結果を図6に示す。その結果、液滴の平均粒径が39nmであることが示された。
また、得られた薬物含有エマルションを3日間静置したところ、析出物は観測されなかった。
[実施例4:その他の薬剤含有マイクロエマルション]
薬剤(目的物質)であるs−ナプロキセン0.1gを1.4ジオキサン(和光純薬工業株式会社製)1.9gに溶解させ、薬物ジオキサン溶液とした。別の容器にNaCl 4.0g、界面活性剤F68(SIGMA社製)を脱塩水15.2gに溶解させた。この水溶液6gを先に調製した薬物ジオキサン溶液に滴下し、マグネチックスターラーにて混合した。
得られた薬剤含有エマルションの液滴の粒径をHPPS3.3にて測定した。結果を図7に示す。その結果、液滴の平均粒径が43.7nmであることが示された。
本発明は、産業上の任意の分野に広く用いることができ、特に、薬剤等の医薬品や、画像形成装置のトナーなどに用いて好適である。
本発明のエマルションの一実施形態の概要について模式的に示す図である。 本発明の実施例1で測定した薬剤含有エマルションA内の液滴の粒径の分布を表わすグラフである。 本発明の実施例1で測定した薬剤含有粉体Aの粒径の分布を表わすグラフである。 本発明の実施例1でSEMにて撮影した薬剤含有粉体Aの図面代用写真である。 本発明の実施例1でSEMにて撮影した薬剤微粒子Aの図面代用写真である。 本発明の実施例3で調整した薬剤含有エマルション内の液滴の粒径の分布を表わすグラフである。 本発明の実施例4で調整した薬剤含有エマルション内の液滴の粒径の分布を表わすグラフである。
符号の説明
1 液滴
2 連続相
3 界面活性剤

Claims (13)

  1. 常温常圧で水に対して5重量%以上の溶解度を有する水溶性有機溶媒と、
    水と、
    該水溶性有機溶媒又は水に混和しうる目的物質と、
    界面活性剤とを含有し、
    水溶性有機溶媒濃厚相からなる液滴が水濃厚相からなる連続相中に分散している
    ことを特徴とする、エマルション。
  2. 常温常圧で水に対して5重量%以上の溶解度を有する水溶性有機溶媒と、
    水と、
    該水溶性有機溶媒又は水に混和しうる目的物質と、
    界面活性剤とを含有し、
    水濃厚相からなる液滴が水溶性有機溶媒濃厚相からなる連続相中に分散している
    ことを特徴とする、エマルション。
  3. 該液滴の平均粒径が10μm以下である
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエマルション。
  4. 水に電解質が0.1重量%以上溶解している
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエマルション。
  5. 該目的物質が薬剤である
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエマルション。
  6. 該目的物質が難水溶性である
    ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエマルション。
  7. 該目的物質が難油溶性である
    ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエマルション。
  8. 該液滴が、該目的物質を含有する
    ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のエマルション。
  9. 上記の水溶性有機溶媒及び水の一方の中における該目的物質の濃度が、0.005mg/mL以上である
    ことを特徴とする、請求項8に記載のエマルション。
  10. 請求項8又は請求項9に記載のエマルションから、上記水溶性有機溶媒及び該水の少なくとも一方を除去する除去工程を有する
    ことを特徴とする、目的物質粒子の製造方法。
  11. 該除去工程の後、目的物質粒子の洗浄を行なう
    ことを特徴とする、請求項10に記載の目的物質粒子の製造方法。
  12. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のエマルションを含有する
    ことを特徴とする、医薬品。
  13. 請求項10又は請求項11に記載の目的物質粒子の製造方法により形成された目的物質粒子を有する
    ことを特徴とする、医薬品。
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