JP2007126423A - エマルション並びにそれを用いた目的物質粒子の製造方法及び医薬品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 水溶性有機溶媒と、水と、水溶性有機溶媒又は水に混和しうる目的物質と、界面活性剤とを含有し、水溶性有機溶媒濃厚相からなる液滴1が水濃厚相からなる連続相2中に分散しているエマルションを提供する。
【選択図】 図1
Description
また、上記の液中乾燥法による微小化を行なう場合、適用できる非水溶性有機溶媒として、クロロホルムやジクロロメタンなどのハロゲン系有機溶媒を用いることがある。しかし、その場合にはハロゲン系有機溶媒が残留する虞があり、好ましくない。
これにより、例えば、従来難水溶性かつ難油溶性の性質を有する薬剤を水溶性有機溶媒に溶解し、この溶液と該薬剤が溶解できない難溶性の連続相とを用いてエマルションを調製することにより、難溶性の連続相内であっても、該薬剤を混和状態(即ち、分散状態又は溶解状態)で微小化し、該連続相内に分散させることが可能となる。
また、水に電解質が0.1重量%以上溶解していることが好ましい(請求項4)。
さらに、該目的物質は薬剤であることが好ましい(請求項5)。
さらに、該液滴が、該目的物質を含有することが好ましい(請求項8)。
また、上記の水溶性有機溶媒及び水の一方の中における該目的物質の濃度は、0.005mg/mL以上であることが好ましい(請求項9)。
このとき、該除去工程の後、目的物質粒子の洗浄を行なうことが好ましい(請求項11)。
本発明の更に別の要旨は、上記の目的物質粒子の製造方法により形成された目的物質粒子を有することを特徴とする、医薬品に存する(請求項13)。
また、本発明の目的物質粒子の製造方法によれば、粒子の大きさが小さい目的物質粒子を簡単に製造することができる。
さらに、本発明の医薬品によれば、医薬品を適切に治療対象に投与しやすくすることができる。
[I−1.概要]
本発明のエマルションは、常温常圧(即ち、25℃,1013hPa)で水に対して5重量%以上の溶解度を有する水溶性有機溶媒と、水と、該水溶性有機溶媒又は水に混和しうる目的物質と、界面活性剤とを含有する。そして、図1に模式的に示すように、水溶性有機溶媒濃厚相もしくは水濃厚相からなる液滴1が連続相2中に分散している。この際、液滴1が水溶性有機溶媒濃厚相である場合には連続相2は水濃厚相により形成され、液滴1が水濃厚相である場合には連続相2は水溶性有機溶媒濃厚相により形成される。また、液滴1は、連続相2中に、該連続相2とは相分離して分散している。そして、界面活性剤3が液滴1を安定化させている。
本発明に用いる水溶性有機溶媒は、水に対して溶解しやすい有機溶媒である。具体的には水に対して、常温常圧の条件下において、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上の溶解度を有する有機溶媒を指す。特に好ましくは水と自由混合する有機溶媒である。ここで、自由混合とは任意の割合で水と混合できることを示す。
条件(S1):目的物質を混和させうると共に、目的物質を混和させた場合には水濃厚相と相分離できる。なお、水濃厚相には、適宜、電解質が溶解していてもよい。
条件(S2):水に目的物質を混和させた場合には水濃厚相と相分離できる。なお、水濃厚相には、適宜、電解質が溶解していてもよい。
(i)水溶性有機溶媒は、目的物質の飽和混和度(飽和溶解度)として通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上であることが好ましい。これは、目的物質が水溶性有機溶媒に分子レベルで相互作用して、水溶性有機溶媒の水との水素結合に影響を与え、相分離を進行させやすくするためである。つまり、水溶性有機溶媒への水の溶解度を下げるように目的物質が働くようにするためである。なお、上限に特に制限は無いが、通常90重量%以下である。
(iii)水溶性有機溶媒は、目的物質の飽和混和度(飽和溶解度)として通常5重量%以下、好ましくは3%重量以下、さらに好ましくは1重量%以下であることが好ましい。この際、通常は、目的物質は水濃厚相側に存在することになるが、これ以上の混和飽和度(飽和溶解度)を持つと、目的物質が水溶性有機溶媒側に溶出し、効果的に、水の水溶性有機溶媒に対する溶解度を低下させることができず、水と水溶性有機溶媒の相分離を起こさせることができなくなる虞がある。
〔Caの定義〕
Ca=(液滴内部の水溶性有機溶媒の重量)/{(液滴内部の水溶性有機溶媒の重量)+(液滴内部の水の重量)}
〔Cbの定義〕
Cb=(連続相の水溶性有機溶媒の重量)/{(連続相の水溶性有機溶媒の重量)+(連続相の水の重量)}
〔C*の定義〕
C*=|Ca−Cb|
また、これらの水溶性有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の水溶性有機溶媒を混合して用いることもできる。
水は、本発明のエマルション内において、液滴及び連続相の少なくとも他方に含有される。この場合、上述したように、液滴及び連続相の一方が水溶性有機溶媒濃厚相になり、液滴及び連続相の他方が水濃厚相になる。
目的物質は、本発明のエマルション内に微小化して分散させる物質である。また、目的物質としては、水溶性有機溶媒又は水に混和することにより、使用状態の条件(通常は、常温常圧)において、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相とを相分離させて、液滴と連続相とを相分離させることができる物質を用いるようにすることが望ましい。そのためには、目的物質は、例えば、以下のような性質を有することが求められる。
ここで極性基とは、水溶性有機溶媒と水との水素結合を弱める官能基であれば、どのようなものでも良く、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、アミノ基、酸化エチレン基などが挙げられる。
また、液滴中に目的物質が存在する本発明のエマルションを得るには、エマルションの状態がSolvent in Waterである場合とWater in Solventである場合とでそれぞれ適切な目的物質を選択するようにすべきである。以下、各場合について説明する。
本発明のエマルションがSolvent in Waterである場合、液滴中に目的物質が存在するようにするためには、目的物質として、水溶性有機溶媒に混和しうるものを用いる。混和の状態としては、溶解でもよく分散でもよいが、通常は、溶解するほうが好ましい。ここで、目的物質が水溶性有機溶媒に対して溶解可能(可溶)であるとは、本発明のエマルションを製造できる程度に目的物質が水溶性有機溶媒に溶解しうることを表わす。具体的には、常温常圧の条件下において、目的物質が水溶性有機溶媒に、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上溶解しうることを表わす。
本発明のエマルションがWater in Solventである場合、液滴中に目的物質が存在するようにするためには、目的物質として、水に混和しうるものを用いる。混和の状態としては、溶解でもよく分散でもよいが、通常は、溶解するほうが好ましい。ここで、目的物質が水に対して溶解可能(可溶)であるとは、本発明のエマルションを製造できる程度に目的物質が水に溶解しうることを表わす。具体的には、常温常圧の条件下において、目的物質が水に、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上溶解しうることを表わす。
また、結晶性化合物や常温で固体となる化合物などは、本発明のエマルションがSolvent in Waterである場合と同様、本発明のエマルションがWater in Solventである場合にも、好適である。
目的物質として使用できる水溶性薬剤の例としては、生理活性を有する化合物などが挙げられる。具体例を挙げると、抗生物質、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、ステロイド、免疫抑制剤、美白剤、抗炎症剤、抗菌剤、ホルモン剤、ビタミン類、酵素、抗酸化剤、血行促進剤、アミノ酸類、育毛用薬剤などが挙げられる。これにより、水溶性薬剤を本発明のエマルションの液滴に含有させて用いることができる。
本発明のエマルションは、適宜、電解質を含有していてもよい。ここで、電解質とは、溶液中でイオンに解離する物質をいう。この電解質は、通常は水濃厚相に溶解して存在する。また、この際、電解質の水に対する溶解度は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上である。
また、電解質の中には、水溶性有機溶媒と水との水和を遮蔽して、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相との相分離を生ぜしめる作用、又は、促進する作用を有するものもある。したがって、そのような電解質を用いれば、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相との相分離を促進させ、エマルションを形成させやすくすることができる。
電解質の種類は、本発明のエマルションを形成させることができれば、いかなる電解質を用いても良いが、好ましくは無機塩を用いる。
なお、これらの電解質は、1種類を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明のエマルションに用いる界面活性剤は、本発明のエマルションを形成できればいかなる界面活性剤を用いても良い。例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などを用いることができる。このうち、電解質を用いる場合はノニオン系界面活性剤が好ましい。また、界面活性能を有する高分子も、界面活性剤として用いることができる。
さらに、カチオン系界面活性剤の具体例としては、セチルトリメチルアンモニウムプロミド、塩化ヘキサデシルピリジニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
なお、界面活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明のエマルションは、本発明の効果を著しく損なわない限り、その他の成分(添加剤)を含有していても良い。したがって、水溶性有機溶媒濃厚相や水濃厚相の中に、上述したもの以外の成分が含有されていても良い。そのような添加剤に制限はなく、本発明の趣旨に著しく反しない限り公知の物質を任意に用いることができる。なお、これらの添加剤は、適宜、本発明のエマルションから連続相成分を除去した後の分散物もしくは紛体に含有されていても良い。
これらの非水溶性有機溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、無水マレイン酸系共重合体の例としてはスチレン/マレイン酸共重合体等が挙げられる。
なお、ポリマーは、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明のエマルションは、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相を相分離させることが基本であり、それら相分離ドメインを界面活性剤で覆うことにより、エマルションとしている。通常、水溶性有機溶媒と水とは相溶するが、水溶性有機溶媒に上述の目的物質を混和(溶解又は分散)させることで、相分離を生じさせることができる。また、別の視点から、水に電解質を含有させることによっても、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相との相分離を生じさせる、又は、促進することができる。これらの相分離現象は、水と水溶性有機溶媒との水和を、目的物質若しくは電解質が遮蔽することにより、引き起こされるものと考えられる。
例えば、Solvent in Water型エマルションの場合、常温常圧で、目的物質を含有した水溶性有機溶媒と同体積の水とを混合すればよい。一方、Water in Solvent型エマルションの場合、常温常圧で目的物質を含有した水と同体積の水溶性有機溶媒とを混合すればよい。なお、これらの混合の際には、調製しようとするエマルションと同様の条件(使用量、濃度、組成比など)で混合を行なうようにする。これらの混合を行なったとき、2液相分離を起こせば、その混合の操作に用いた目的物質及び水溶性有機溶媒は、本発明のエマルションの構成要素として適している。
さらに、上記の混合操作を行なう場合、相分離を引き起こしやすくするために、電解質を水に含有さることが好ましい。この際、相分離が生じれば、当該電解質は本発明のエマルションに好適に用いることができる。
[I−9−1.目的物質の量]
本発明のエマルションにおける目的物質の量は、本発明の趣旨に著しく反しない限り任意であるが、本発明のエマルションに対して、通常0.005mg/mL以上、好ましくは0.01mg/mL以上、より好ましくは0.05mg/mL以上、また、通常500mg/mL以下、好ましくは400mg/mL以下、より好ましくは300mg/mL以下である。この範囲の下限を下回ると、液滴中に目的物質を存在させる場合に目的物質が連続相側に漏出する虞がある。また、上限を上回ると本発明のエマルションの安定性が保たれず、目的物質が析出する虞がある。
本発明のエマルションがSolvent in Waterである場合には、水溶性有機溶媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、この場合、本発明のエマルション中における水溶性有機溶媒の量は、本発明のエマルションに対して、通常0.5重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、さらに好ましくは5.0重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。この範囲の下限を下回ると相分離せず、エマルションは形成されなくなる虞があり、上限を上回るとWater in Solvent型のエマルションとなってしまう虞がある。
本発明のエマルションにおける界面活性剤の量は、臨界ミセル濃度以上であれば任意であるが、本発明のエマルションに対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、また、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。この範囲の下限を下回るとエマルションが安定しなくなる虞があり、さらにこの上限を上回ると、界面活性剤がラメラ構造などの構造を形成し、目的のエマルションを得られない虞がある。
本発明のエマルションにおける電解質の量は、本発明のエマルションを形成できれば、本発明の趣旨に著しく反しない限り任意である。ただし、電解質を使用する場合には、本発明のエマルションに対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、また、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。この範囲の下限を下回ると水溶性有機溶媒と水との水和を有効に遮蔽することができなくなる虞があり、この上限を上回ると界面活性剤が有効に働かず、エマルションを形成できない虞がある。
本発明のエマルションにおいて、液滴の大きさは、本発明の趣旨に著しく反しない限り任意である。ただし、液滴の平均粒径は、通常10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下、特に好ましくは500nm以下である。この上限を上回ると、エマルションが不安定になり、合一しやすくなる虞がある。なお、上記の平均粒径は、例えば、大塚電子社製「FPAR−1000」やマイクロトラック社製「Microtrack UPA」等の動的光散乱装置を用いて測定することができる。また、例えば堀場製作所社製「LA920」等のレーザー回折法を用いた装置で測定することもできる。この中でも、好ましくは動的光散乱法を用いた測定である。
本発明のエマルションの製造方法は、本発明の趣旨を著しく反しない限り任意である。以下に好ましい製造方法を例示する。
まず、液滴及び連続相を形成する媒体、即ち、水溶性有機溶媒及び水をそれぞれ用意する。この際、目的物質を含有させる方の相により多く含まれる媒体には、予め、目的物質を混和させておく。したがって、液滴中に目的物質を含有させようとすれば、Solvent in Water型のエマルションを製造する場合には水溶性有機溶媒に目的物質を混和させておき、Water in Solvent型のエマルションを製造する場合には水に目的物質を混和させておく。
さらに、本発明のエマルションに電解質や添加剤を含有させる場合には、電解質や添加剤も、上記の混合の前、最中、後のどの工程において水溶性有機溶媒及び/又は水混合してもよい。ただし、電解質として、水溶性有機溶媒濃厚相と水濃厚相との相分離をさせる、又は、促進させる作用を有するものを用いる場合には、上記の混合の前に電解質を予め水に含有させておくことが好ましい。
温度条件に関して言えば、水溶性有機溶媒及び水が共に液体である温度範囲が好ましい。具体的には、通常0℃以上、好ましくは5℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下である。
また、圧力条件に関して言えば、減圧、常圧又は加圧の何れの条件下でもよい。取り扱いやすさからいえば、大気圧下で行うのが好ましい。ただし、高圧ホモジナイザーを分散機として用いる場合は、この限りではない。
以上の操作により、本発明のエマルションを得ることができる。
本発明のエマルションが液滴内に目的物質を含有する場合、液滴から、液滴により多く含まれる媒体(即ち、水溶性有機溶媒及び/又は水)を除去することにより、目的物質の粒子(目的物質粒子)を得ることができる。また、除去工程の後、目的物質粒子の洗浄を行なう洗浄工程を行なうようにしても良い。以下、この目的物質粒子の製造方法について説明する。
除去工程では、本発明のエマルション中の液滴から、液滴により多く含まれる媒体、即ち、上記水溶性有機溶媒及び水の一方を除去する。したがって、本発明のエマルションがSolvent in Water型である場合には少なくとも水溶性有機溶媒を除去するようにし、Water in Solvent型である場合には少なくとも水を除去するようにする。これにより、目的物質が連続相中に分散した分散液を得ることもできる。更に、液滴により多く含まれる媒体に加えて、連続相により多く含まれる媒体も除去するようにすれば、粉体として目的物質を含んだ粒子を得ることができる。
洗浄工程では、除去工程の後、目的物質粒子の洗浄を行なう。具体的には、目的物質以外の電解質、界面活性剤及びその他の添加物を洗浄・除去する。
洗浄方法の具体的な方法は、本発明の趣旨に著しく反しない限り任意である。例えば、例えばSolvent in Water型のエマルションの場合、目的物質に連続相を形成する連続相を加え、遠心分離、透析、濾過等の方法で、電解質、界面活性剤及びその他の添加物を取り除くことができる。これは、連続相により多く含まれる媒体に、目的物質が混和しにくく、電解質及び界面活性剤が混和しやすいという性質を利用している。
本発明の目的物質粒子の製造方法で得られる目的物質粒子の粒径は、乾燥状態では、通常10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。なお、目的物質粒子の粒径の測定方法は、上述のエマルションの粒径を測定する方法を用いることができるが、好ましくは動的光散乱である。また、SEM(走査型電子顕微鏡)により測定することもできる。なお、動的光散乱で粒径を測定した場合、平均粒径が上記の範囲となる。
本発明の目的物質粒子の製造方法によれば、本発明のエマルションに含有させた目的物質のうちの、通常1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは10%以上を乾燥状態で得ることができる。なお、この収率は、液体クロマトグラフィー等で分析することにより測定することができる。
以上、詳細に説明したように、本発明のエマルションによれば、従来にはない新たな態様で、水及び水溶性有機溶媒を含み、当該水又は水溶性有機溶媒に対して難溶性の目的物質を微小化して分散させることができる新規なエマルションを提供することができる。さらに、これに加えて、適宜、従来は微小化が困難であった目的物質を連続相中で微小化して分散させること、使用する連続相や目的物質の選択範囲を従来よりも広げられること、自発的にマイクロエマルション(熱力学的に安定なエマルション)を形成させることができること、などの利点を得ることもできる。
本発明のエマルション、並びに、本発明の目的物質粒子の製造方法及びその製造方法により得られる目的物質微粒子は、水溶性有機溶媒を用いることができる点、目的物質を多くエマルションに保持させることができる点、液滴や目的物質粒子の粒径が小さい点などを活かし、産業上のさまざまな分野において用いることができる。
ただし、本発明のエマルション又は目的物質粒子を医療分野に用いる場合、水、目的物質、界面活性剤、電解質及びその他の添加剤等の、本発明のエマルション又は目的物質粒子を構成する各要素には、医薬品として認可されているものを用いることが好ましい。
また、本発明の目的物質粒子の製造方法を難水溶性薬剤の製造に適用することにより、大きなエネルギーを要することなく、また、薬剤の特性に大きく影響されること無く、薬剤を微粒子化することができる一般的な手法として取り入れることができる。
(1)エマルションの調製
50mLのバイアル瓶に、薬剤(目的物質)であるs−ナプロキセン((S)-(+)-6-Methoxy-α-methyl-2-naphthaleneacetic-acid、ALDRICH:シグマ社製)0.06gをTHF(テトラヒドロフラン:純正化学株式会社製)5.04gに溶解した。別の容器に、10重量%NaCl水溶液26.7gに界面活性剤プルロニックF68(旭電化工業社製)0.3gを溶解し、先に調製した薬剤含有THF溶液にこの界面活性剤/NaCl水溶液を添加した。
得られた薬剤含有エマルションAの粒度分布を、大塚電子社製の粒度分布計FPAR−1000(濃厚用プローブ使用)にて測定した。測定結果を図2に示す。この結果より、薬剤含有エマルションA内の液滴の平均粒径は約275nmであることが分かった。
この薬剤含有粉体Aを100mgとり、脱塩水にて5mLにメスアップした。超音波洗浄機にて、よく分散し、1mLずつエッペンドルフチューブにわけ、遠心分離機にて10000回転、30分間処置し、上清をすて、沈殿物を得た。得られた沈殿物にさらに1mLずつ脱塩水を添加し、超音波洗浄機にてよく分散した。こうして得られた分散液を、薬剤含有分散液Aとする。その粒径をFPAR−1000にて測定した。その結果を図3に示す。
薬剤含有粉体A及び薬剤微粒子AのSEM写真を図4および図5に示す。図5において、粒径200〜300nm程度の微粒子が確認された。
薬剤微粒子Aの中に含まれる薬剤を分析した。分析には、凍結乾燥前のエッペンドルフチューブ1本を用い、HPLC測定を行なった。サンプルにエタノールを加えて、10mLにメスアップし、0.45μmのフィルターでろ過して、分析に用いた。下にHPLC分析条件を示す。
カラム:TSKgel superODS(4.6×50mm)、40℃
溶離液:0.1%リン酸水溶液/アセトニトリル=60/40、0.8mL/min
検出:272nm
注入量:5μL
薬剤をインドメタシン(SIGMA社製)0.3gとし、添加物として、ポリ−L−乳酸(分子量10000、ナカライテスク株式会社製)0.15g、大豆油(和光純薬工業株式会社製)0.15gを加えた以外は、実施例1と同様にして、エマルションを作製した。
エマルションの粒径評価を実施例1と同様にして行なった。その結果、得られたエマルション内の液滴の平均粒径は、252nmと見積もられた。
さらに1週間後の測定でも、平均粒径は249nmと見積もられ、経時変化がほとんど見られないことが確認された。
薬剤(目的物質)であるs−ナプロキセン0.3gをTHF5.7gに溶解した。別の容器に、NaCl 0.41g、界面活性剤HCO60(日本サーファクタント工業株式会社製)1.1gを脱塩水に溶解させた。これら2液をマグネチックスターラーにて攪拌しながら混合した。
得られた薬剤含有エマルション内の液滴の粒径をHPPS3.3(Malvern社製)にて測定した。結果を図6に示す。その結果、液滴の平均粒径が39nmであることが示された。
また、得られた薬物含有エマルションを3日間静置したところ、析出物は観測されなかった。
薬剤(目的物質)であるs−ナプロキセン0.1gを1.4ジオキサン(和光純薬工業株式会社製)1.9gに溶解させ、薬物ジオキサン溶液とした。別の容器にNaCl 4.0g、界面活性剤F68(SIGMA社製)を脱塩水15.2gに溶解させた。この水溶液6gを先に調製した薬物ジオキサン溶液に滴下し、マグネチックスターラーにて混合した。
得られた薬剤含有エマルションの液滴の粒径をHPPS3.3にて測定した。結果を図7に示す。その結果、液滴の平均粒径が43.7nmであることが示された。
2 連続相
3 界面活性剤
Claims (13)
- 常温常圧で水に対して5重量%以上の溶解度を有する水溶性有機溶媒と、
水と、
該水溶性有機溶媒又は水に混和しうる目的物質と、
界面活性剤とを含有し、
水溶性有機溶媒濃厚相からなる液滴が水濃厚相からなる連続相中に分散している
ことを特徴とする、エマルション。 - 常温常圧で水に対して5重量%以上の溶解度を有する水溶性有機溶媒と、
水と、
該水溶性有機溶媒又は水に混和しうる目的物質と、
界面活性剤とを含有し、
水濃厚相からなる液滴が水溶性有機溶媒濃厚相からなる連続相中に分散している
ことを特徴とする、エマルション。 - 該液滴の平均粒径が10μm以下である
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエマルション。 - 水に電解質が0.1重量%以上溶解している
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエマルション。 - 該目的物質が薬剤である
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエマルション。 - 該目的物質が難水溶性である
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエマルション。 - 該目的物質が難油溶性である
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエマルション。 - 該液滴が、該目的物質を含有する
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のエマルション。 - 上記の水溶性有機溶媒及び水の一方の中における該目的物質の濃度が、0.005mg/mL以上である
ことを特徴とする、請求項8に記載のエマルション。 - 請求項8又は請求項9に記載のエマルションから、上記水溶性有機溶媒及び該水の少なくとも一方を除去する除去工程を有する
ことを特徴とする、目的物質粒子の製造方法。 - 該除去工程の後、目的物質粒子の洗浄を行なう
ことを特徴とする、請求項10に記載の目的物質粒子の製造方法。 - 請求項1〜9のいずれか1項に記載のエマルションを含有する
ことを特徴とする、医薬品。 - 請求項10又は請求項11に記載の目的物質粒子の製造方法により形成された目的物質粒子を有する
ことを特徴とする、医薬品。
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