JP2007119811A - 溶接継手及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】母材が、C:0.01〜0.2%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ni:6.0〜10.0%及びAl:0.005〜0.1%を含有し、残部はFeと不純物からなる溶接継手であって、オーステナイト系の溶加材を用いてガスメタルアーク溶接又はエレクトロガスアーク溶接によって接合され、溶接金属の組織がオーステナイトで、且つ、HVWMを溶接金属のビッカース硬さ、HVHAZを溶接熱影響部のビッカース硬さとして、「HVWM≦250」及び「0≦HVHAZ−HVWM≦200」を満足する溶接継手。母材はFeの一部に代えて、(1)Cu≦1%、Cr≦1%、Mo≦1%、B≦0.005%、(2)V≦1%、Nb≦1%、Ti≦1%、Zr≦1%、(3)Ca≦0.005%から選択される1種以上の元素を含有してもよい。
【選択図】図1
Description
HVWM≦250・・・・・(1)、
0≦HVHAZ−HVWM≦200・・・・・(2)。
ここで、HVWMは溶接金属のビッカース硬さ、HVHAZは溶接熱影響部のビッカース硬さを表す。
C:0.01〜0.2%
Cは、強度確保の観点から0.01%以上含有させる必要がある。しかしながら、Cの含有量が多くなると靱性の低下をきたし、特に、0.2%を超えると靱性の低下が著しくなる。したがって、Cの含有量を0.01〜0.2%とした。なお、優れた靱性の確保という点からは、C含有量の上限は0.1%とすることが好ましい。
Siは、脱酸作用を有するほか、強度を向上させる元素であり、0.01%以上の含有量が必要である。しかしながら、その含有量が多すぎると溶接継手靱性などの低下をきたす。特に、Siの含有量が1.0%を超えると、溶接継手の靱性低下が著しくなる。したがって、Siの含有量を0.01〜1.0%とした。なお、良好な溶接継手靱性確保という点からは、Si含有量の上限は0.50%とすることが好ましい。
Mnは、強度及び靱性を向上させる元素であり、0.1%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が多すぎると溶接性の低下をきたし、また、母材及び溶接継手の特性が不均一になる。特に、Mnの含有量が2.0%を超えると、溶接性の低下が顕著になり、また、母材及び溶接継手の特性の不均一化が著しくなる。したがって、Mnの含有量を0.1〜2.0%とした。なお、Mnの含有量の上限は1.0%とすることが好ましい。
Niは、強度及び靱性を同時に向上させる作用を有し、低温の液体を貯蔵するためのタンク、なかでも−165℃という極低温のLNGを貯蔵するLNGタンクを製造するための母材に欠かせない元素であり、6.0%以上の含有量が必要である。しかしながら、10.0を超えて含有させてもその効果は飽和しコストが嵩むばかりである。したがって、Niの含有量を6.0〜10.0%とした。
Alは、脱酸元素であり、鋼の清浄性を確保するために0.005%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が多すぎると、粗大なAl2O3を生成したり、溶接継手のCTOD特性が低下する。特に、Alの含有量が0.1%を超えると、粗大なAl2O3の生成が顕著になり、また、溶接継手の靱性低下が著しくなる。したがって、Alの含有量を0.005〜0.1%とした。なお、Alの含有量が低いほど溶接継手の靱性面で有利であるので、溶接継手の靱性をより重視する場合には、Al含有量の上限は0.05%とすることが好ましい。Al含有量の上限を0.05%と低く抑えれば、AlNに起因する連続鋳造時のスラブ表面品質の劣化を防止することもできる。
Cuは、強度を高める作用を有する。しかしながら、Cuの含有量が1%を超えると、溶接性が損なわれる。したがって、Cuの含有量を1%以下とした。なお、前記したCuの効果を確実に得るためには、その含有量を0.1%以上とすることが好ましい。したがって、より望ましいCuの含有量は0.1〜1%である。
Vは、組織を微細化して靱性を高める作用を有し、特に、オンラインでの加速冷却によって母材を製造する際の組織微細化に効果を発揮する。しかしながら、Vの含有量が多すぎると溶接継手の靱性低下をきたし、特に、0.1%を超えると、溶接継手の靱性低下が著しくなる。したがって、Vの含有量を0.1%以下とした。なお、前記したVの効果を確実に得るためには、その含有量を0.005%以上とすることが好ましい。したがって、より望ましいVの含有量は0.005〜0.1%である。
Caは、MnSの生成を防止して母材の板厚方向特性を向上させる作用、なかでも母材の板厚方向のシャルピー吸収エネルギー値を増大させる作用を有する。しかしながら、Caの含有量が0.005%を超えると、鋼の清浄性が損なわれる。したがって、Caの含有量を0.005%以下とした。なお、前記したCaの効果を確実に得るためには、その含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。したがって、より望ましいCaの含有量は0.0005〜0.005%である。
(A)項で述べた化学組成を有する母材(9%Ni鋼)とオーステナイト系の溶加材を組み合わせて、例えば、後述の条件で、GMAWやEGWによって溶接された本発明の溶接継手における溶接金属の組織はオーステナイトになる。溶接金属の延性破壊抵抗を改善するためには、強度を低く抑える必要がある。つまり、良好なCTOD特性を確保するためには、ビッカース硬さを250以下とする必要がある。
脆性破壊に対する抵抗性を表す尺度であるCTOD値はマクロな変形レベルから算出される量である。溶接金属が脆性破壊しにくいオーステナイト組織の場合、前述のように、一般には、HAZの耐脆性破壊特性が極端に悪くない限り、CTOD試験は脆性破壊で終了することはない。脆性破壊で終了させないためには、溶接金属部の硬さがHAZの硬さに比べて低いことが必要である。つまり、「HVWM≦HVHAZ」、したがって、前記(2)式のうちの「0≦HVHAZ−HVWM」を満たす必要がある。
・シールドガス:Heガス単体(100%He)、
・パス数:1。
本発明の溶接継手は、常温で使用できる他、低温においても破壊靭性特性が良好であることから、LPGやLNGなどを貯蔵する低温用タンクを製造するのに用いる溶接継手としても使用することができる。より具体的には、−60℃以下といった低温環境下でも使用することが可能である。
極低温下で用いられる鋼の溶接法として従来行われていたSAWは多電極化による大入熱溶接が可能であるが、立て向き溶接が可能ではない。したがって、本発明においては、大入熱溶接方法のうちでも立て向き溶接が可能なGMAW又はEGWによって溶接することと規定する。
〈2〉厚板工場へ到着したスラブを加熱炉で、例えば、1050℃に再加熱する。
〈3〉加熱炉から抽出したスラブを熱間圧延機でリバース圧延して、所定の板厚に仕上げる。
〈4〉圧延を終えた鋼板を、成品サイズにシャー切断する。
〈5〉切断した鋼板を、例えば、焼入れ(Q)温度を810℃、2相域焼き入れ(L)温度を580℃、焼戻し(T)温度を500℃として、Q−L−Tの所謂「3段熱処理」を行う。あるいは、焼入れ(Q)温度を810℃、焼戻し(T)温度を500℃としたQ−T処理を行う。
表1に示す化学組成及び表2に示す機械的性質を有する板厚25mmの鋼板を用いて、開先角度が片側5°でルートギャップが5mmのV開先加工を施し、GMAW及びEGWによって溶接して溶接継手性能を調査した。
板厚1/4の位置から、圧延方向に平行にJIS Z 2201(1998)に規定された4号引張試験片を採取し、室温にて引張試験を実施して、降伏強度(YS)及び引張強度(TS)を求めた。
板厚1/4の位置から、圧延方向に平行にJIS Z 2202(1998)に規定された幅10mmのVノッチ試験片を採取し、−196℃でシャルピー衝撃試験を実施して、吸収エネルギー(vE-196)を求めた。
BS 7448-part1(1991)に規定された全厚をBとした標準の「B×2B」タイプの曲げ試験片を採取し、−165℃で3点曲げCTOD試験を実施して、限界CTOD値δcとCTOD試験のタイプを調査した。
板厚の約1/4の位置から、平行部の直径が6mm、標点距離が25mmで掴み部がM10の平滑丸棒引張試験片を採取し、室温にて引張試験を実施して、0.2%耐力(0.2%PS)及び引張強度(TS)を求めた。
余盛り切削を行った後、JIS Z 3121(1993)に規定された1A号引張試験片を採取し、室温で引張試験を実施して、引張強度(TS)を求めた。
ノッチを所謂「フュージョンライン」であるボンド部に導入し、母材と同様に、BS 7448-part1(1991)に規定された全厚をBとした標準の「B×2B」タイプの曲げ試験片を採取し、−165℃で3点曲げCTOD試験を実施して、限界CTOD値δcとCTOD試験のタイプを調査した。なお、良否の判定基準は、これまでのTIG溶接継手のCTOD試験結果などから限界CTOD値で0.8mmとした。
前記の表1に示す化学組成及び表2に示す機械的性質を有する板厚25mmの鋼板のうち、鋼1及び鋼3の鋼板を母材として、開先角度が片側5°でルートギャップが5mmのV開先加工を施し、表5に示す化学組成を有する溶加材の直径1.6mmのソリッドワイヤを用いて溶接した。
Claims (6)
- 母材が、質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ni:6.0〜10.0%及びAl:0.005〜0.1%を含有し、残部はFe及び不純物からなる溶接継手であって、オーステナイト系の溶加材を用いてガスメタルアーク溶接又はエレクトロガスアーク溶接によって接合され、溶接金属の組織がオーステナイトで、且つ、下記(1)式及び(2)式を満足することを特徴とする溶接継手。
HVWM≦250・・・・・(1)
0≦HVHAZ−HVWM≦200・・・・・(2)
ここで、HVWMは溶接金属のビッカース硬さ、HVHAZは溶接熱影響部のビッカース硬さを表す。 - 母材が、Feの一部に代えて、Cu:1%以下、Cr:1%以下、Mo:1%以下及びB:0.005%以下のうちから選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶接継手。
- 母材が、Feの一部に代えて、V:0.1%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.1%以下及びZr:0.05%以下のうちから選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接継手。
- 母材が、Feの一部に代えて、Ca:0.005%以下を含有することを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の溶接継手。
- −60℃以下の低温環境下で使用することを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の溶接継手。
- 請求項1から4までのいずれかに記載の母材とオーステナイト系の溶加材を用いて、溶接時の入熱量を4.0kJ/mm以上、シールドガス中のCO2及びO2の分率をいずれも20%以下として、ガスメタルアーク溶接又はエレクトロガスアーク溶接を行うことを特徴とする溶接継手の製造方法。
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