JP2007119762A - 染料インキ及び熱転写シート - Google Patents

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Abstract

【課題】 染料含有量が高く、熱転写シートの染料層として適用可能な染料インキ及び画像が高濃度で耐光性が高い熱転写シートの提供。
【解決手段】 下記式(I)で表されるイエロー染料をバインダー及び溶剤中に分散させ染料の含有量a質量%と、染料の溶剤に対する20℃での溶解度s質量%とが、式a>sで表される染料インキ。
Figure 2007119762

【選択図】 なし

Description

本発明は、染料インキ、及び熱転写シートに関する。
熱転写を利用した画像の形成方法として、記録材としての熱拡散型染料(昇華型染料)からなる染料層をプラスチックフィルム等の基材上に担持させた熱拡散型熱転写シートと、紙やプラスチックフィルム等の別の基材上に該染料の受容層を設けた熱転写受像シートとを互いに重ね合わせてフルカラー画像を形成する熱拡散型転写方式(昇華型熱転写方式)が知られている。
熱拡散型熱転写シートにおける染料層は、染料インキを塗工することにより形成される。この染料インキは、一般に、染料の結晶化による塗工面の品質悪化を防止するため、染料及びバインダー樹脂をトルエン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解させてインキ化している。このインキ化において、溶剤に対する溶解性が充分でない染料は、インキ中での染料含有量を高くすることができず、実用的な濃度を有するインキを形成することができない問題があった。また、溶剤に対する溶解性が充分な染料であっても、バインダー樹脂に対する溶解性が充分でない場合、乾燥塗膜中で染料の結晶生成等によるブリードアウトが生じ、結果として印画時に未印画部の地肌汚れを生じたり、リボンの背面側への裏写り及びオーバーコート層へのキックバックが生じる等の問題が発生し、染料インキに使用できなかった。
染料の溶解度を向上させうる方法として、構造の類似した複数種の染料を混合する手法が知られている。
例えば、特許文献1の実施例1には、染料が溶剤に対して、3.8%の割合で溶解している染料インキが示されているが、用いられている染料のトルエン/メチルエチルケトン=1/1(質量比)混合溶剤に対する20℃での溶解性は、MS−RED−G(三井東圧製、ディスパースレッド60)がそれぞれ1.0%、0.9%であり、マクロレックスバイオレットR(バイエル製、ディスパースバイオレット26)ではそれぞれ3.0%、2.7%であった。特許文献1の実施例1で示されている染料インキは、ディスパースレッド60が溶剤に対して2.15%、ディスパースバイオレット26は1.61%溶解していることになる。ディスパースレッド60は染料自体の溶解度を上回る量でインキ中に存在できているが、これは溶剤が混合溶剤であることによる染料の溶解性の向上、構造の異なる複数の染料を同時に存在させたことによる溶解性の向上、バインダー樹脂の存在によりインキ粘度が調整されているため、染料が沈殿しにくくなっていること等の理由が挙げられる。この染料インキは、溶剤に対する溶解性に対して約2倍程度の染料を含有させることができているものの、この方法を使った場合でも、実際に得られる溶解度はたかだか元の2倍程度である。また、この染料インキに使用する染料は、トルエン等の溶剤に対する20℃の温度下における溶解性が1.0wt%程度と実用できる範囲内にあり、更に樹脂バインダーに対する溶解性も実用に耐え得る範囲内にある。このため、この染料インキでは、使用できる染料の選択範囲は限定されており、所望の色相を有し、高濃度且つ高耐久性である印画物を得ることが出来ないといった場合がある。溶剤に対する溶解性が実用困難な範囲内にある染料を材料とする実用可能な染料インキは、未だ開示されていない。
特開平9−30138号公報(実施例1)
本発明の目的は、上記現状に鑑み、溶剤溶解性が低い染料を含有するにもかかわらず染料含有量が高く、熱転写シートの染料層として適用可能な染料インキ及び高濃度であり耐光性が良い印画物を得ることができる熱転写シートを提供することにある。
本発明は、染料、バインダー樹脂及び溶剤からなる昇華型熱転写シート用染料インキにおいて、前記染料インキは、少なくとも一種の下記式(I)で表されるイエロー染料を前記バインダー樹脂及び前記溶剤中に分散させてなるものであり、前記染料インキにおける前記イエロー染料の含有量a質量%と、前記イエロー染料の前記溶剤に対する20℃での溶解度s質量%とが、式a>sで表される関係を満たすものであることを特徴とする染料インキである。
Figure 2007119762
(式中、Xは、水素原子又はハロゲン原子を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基若しくはその誘導体、又は、アルキル基若しくはベンゼン環を含む総炭素数6〜10のアシル基を表す。)
本発明は、基材シートと、前記基材シートに積層している染料層とを有する昇華型熱転写シートにおいて、前記染料層は、前記本発明の染料インキを基材シートに塗工したのち乾燥させることより形成したことを特徴とする熱転写シートである。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の染料インキは、染料、バインダー樹脂及び溶剤からなる昇華型熱転写シート用染料インキである。
上記染料インキにおける染料は、上記一般式(I)で表されるイエロー染料及び/又はその互変異性形を有してなるものであれば特に限定されず、溶剤への溶解度が1wt%未満であってもよい。
上記一般式(I)において、Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。
上記ハロゲン原子としては、F、Cl、Br、I等が挙げられるが、中でも、Cl、Brが好ましい。
上記一般式(I)において、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基若しくはその誘導体、又は、アルキル基若しくはベンゼン環を有する総炭素数6〜10のアシル基を表す。
上記Rとしてのアルキル基は、直鎖又は分岐鎖の何れであってもよく、炭素数1〜5であればよい。
上記Rとしてのアルキル基の誘導体としては、例えば、水素原子の一部が窒素、上述のハロゲン原子で置換された炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。
上記Rとしてのアシル基は、ベンゾイル基等のアロイル基をも含む概念である。上記アロイル基としては、芳香環における1〜5個の水素原子が独立して炭素数1〜3のアルキル基により置換されたものであってもよく、アロイル基を構成する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられるが、ベンゼン環が好ましい。
上記Rとしては、水素原子等が好ましい。
上記一般式(I)としては、下記一般式(Ia)で表されるものが好ましい。
Figure 2007119762
(式中、X及びRは、上記と同じ。)
上記一般式(I)の染料は、発色性の点で、トルエン中の吸光係数が1000000〜150000ml/g・cmであることが好ましい。
本明細書において、上記吸光係数は染料をトルエン中0.0002wt%の溶液を作製し、(株)島津製作所 UV−3100PCにて最大吸収波長λmax時の吸光係数を測定した値である。
本発明の染料インキは、上記一般式(I)で表される染料及びその互変異性形を少なくとも1種含有するものであればよいが、本願発明者らは、鋭意検討の結果、上記一般式(I)で表される染料及びその互変異性形のうちで構造の異なる2種以上を含むことで転写感度が更に向上することを見出した。
本発明の染料インキは、上記一般式(I)で表される染料及びその互変異性形のうちで構造の異なる2種以上を含む場合、低エネルギーで所望の印画濃度を得ることが可能となり、プリンタの電源容量を低下させることにつながるため更に好適である。
上記染料インキは、上記一般式(I)で表される染料を2種以上含有する場合、該染料の何れもが低溶解性であっても、上記染料を1種のみ含有する場合より感度が良い。上記染料インキは、また、任意の色相に調整するために、染料として、溶剤に対する溶解度が1wt%以上となるものを必要に応じて加えることが出来る。
上記一般式(I)で表される染料としては、例えば、Disperse Yellow 54、Disperse Yellow 64、Disperse Yellow 149、更に特開平10−287818号公報記載のキノフタロン染料等が挙げられる。
本発明の染料インキは、染料として、下記式(II)で表される染料と下記式(III)で表される染料とを含有することが好ましい。
Figure 2007119762
Figure 2007119762
本発明におけるバインダー樹脂は、上記染料を担持するものである。
上記バインダー樹脂としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂;ポリエステル系樹脂;フェノキシ樹脂;等が挙げられる。
上記樹脂バインダーとしては、更に、離型性グラフトコポリマーも挙げられる。上記離型性グラフトコポリマーは、離型剤として、上記樹脂バインダーとともに配合することもできる。
上記離型性グラフトコポリマーは、ポリシロキサンセグメント、フッ化炭素セグメント、フッ化炭化水素セグメント及び長鎖アルキルセグメントから選択された少なくとも1種の離型性セグメントを、上述の樹脂バインダーを構成するポリマー主鎖にグラフト重合させてなるものである。
上記離型性グラフトコポリマーとしては、なかでも、ポリビニルアセタールからなる主鎖にポリシロキサンセグメントをグラフトさせて得られるグラフトコポリマーが好ましい。
本発明における溶剤としては、染料インキの材料として従来公知のものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メタノール、水、メチルエチルケトン、トルエン、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、酢酸エチル、これらの溶剤の混合溶剤等が使用できる。
本発明において、上記溶剤として、沸点が低い溶剤と沸点がやや高い溶剤との混合溶剤を使用することは、得られる染料インキについて塗工中に溶剤が蒸発して粘度アップするのを防止することができるので、塗工適性の点で好ましい。
本発明において、溶剤は、染料インキに使用されるバインダー樹脂を溶解するものが好ましく、該バインダー樹脂を20℃において該溶剤の1wt%に相当する量以上溶解できるものが特に好ましい。
上記バインダー樹脂の溶解度は、上記範囲内であれば20℃において実用上該溶剤の50wt%に相当する量程度以下であってもよい。
上記溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤がより好ましい。
本発明の染料インキは、上記染料、上記バインダー樹脂及び溶剤に加え、更に、従来公知の各種添加剤を配合してなるものであってもよい。
上記添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、ポリエチレンワックス、有機微粒子、無機微粒子、染料の分散性を安定させる為に添加する分散剤等も挙げられる。
上記分散剤としては、例えば、常温液体の界面活性剤や常温固体の高分子界面活性剤等が挙げられる。
本発明の染料インキは、上記分散剤を1〜10wt%の量で含有するものであってもよい。
本発明の染料インキは、前記染料として少なくとも一種の下記式(I)で表されるイエロー染料を前記バインダー樹脂及び前記溶剤中に分散させてなるものである。
上記染料インキにおいて、上記染料は、上述の一般式(I)で表されるイエロー染料及び/又はその互変異性形を前記溶剤に対する溶解度を超えた量で含有することができる。
本発明の染料インキは、一般に、上記イエロー染料を溶解度の許す限り溶剤に溶解し、更に、上記染料をバインダー樹脂及び溶剤に分散させてなるものである。
本発明の染料インキは、染料が溶剤中に溶解することに加え、バインダー樹脂及び溶剤中に分散されているものであるので、所望の濃度、色相及び耐久性を有した印画物を形成するのに充分な量の染料を含有することが可能である。
上記染料インキは、上記イエロー染料の含有量a質量%と、上記イエロー染料の前記溶剤に対する20℃での溶解度s質量%とが、式a>sで表される関係を満たすものである。
本発明の染料インキにおいて、上記染料は、溶剤に溶解する限度以上の量で存在することが可能であるし、バインダー樹脂の溶剤溶解液に溶解する限度を超えた量で存在することも可能である。
本明細書において、「分散」とは、染料インキを20〜25℃の温度下に168時間(7日間)静置後、染料粒子の沈降を目視で確認できない状態であることを意味する。
上記染料に関し、溶剤に溶解する限度とは、染料が溶剤100g中に20℃の温度下で最大限に溶解する場合における該染料の質量を意味し、バインダー樹脂の溶剤溶解液に溶解する限度とは、染料がバインダー樹脂1wt%を溶解させた溶剤100g中に20℃の温度下で染料が最大限に溶解する場合における該染料の質量を意味する。
本発明の染料インキは、上記バインダー樹脂が上述の溶剤中に溶解するものであり、染料の粒度分布が0.1μm≦D50粒径≦5.0μm、及び、0.3μm≦D90粒径≦10.0μmであることが好ましい。
上記染料の平均粒径は、より好ましい下限が0.3〜1.0μmであり、より好ましい上限が0.8〜3.0μmである。
上記D50粒径、D90粒径は、固形分濃度8.75質量%(このうち染料濃度5.25質量%、バインダー樹脂濃度3.5質量%)に調整した染料インキについて日機装(株)製マイクロトラック粒度分布計UPA−150を用いて測定して得られる粒度分布において、累積体積50%となる粒径をD50粒径とし、累積体積90%となる粒径をD90粒径として算出した。D50粒径は平均粒径を、D90粒径は粗大粒子の存在状態を理解するための指標とした。
(測定条件)
・測定原理:動的光散乱法
・光源:半導体レーザ
・波長:780nm
・サンプルセル:SUS316
D50粒径が0.1μm未満であると染料が溶解している状態と同じ性質を有してしまい、その結果、地肌汚れ等が起こる場合があり、D50粒径が5.0μmを超えると転写感度不足が起こり所望の濃度が得られないことがある。
D90粒径が0.3μm未満であるとD50粒径同様、染料が溶解している状態と同じ性能を有することがあり、D90粒径が10.0μmを超えると染料をバインドしきれないことがあり、地汚れ(サーマルヘッドで加熱しなくても着色する現象)や、熱転写シートを高温保存すると染料が析出してしまい、品質が劣ってしまうことがある。
本発明の染料インキは、イエロー染料の含有量(a)が1wt%以上であることが好ましく、上記範囲内であれば20wt%程度以下であってもよい。上記染料インキにおける染料の含有量は、より好ましい下限が1wt%であり、より好ましい上限が15wt%である。
本発明の染料インキは、染料とバインダー樹脂との合計量、すなわち固形分が質量基準で2〜30wt%程度であることが好ましい。
上記固形分の好ましい含有量は、使用するコーティング方式により任意に選定できる。例えば、グラビアコーティングではインキを塗布するにあたって適した粘度範囲とする点で、固形分としては10wt%前後が好適である。よって、その場合の染料含有量は1〜10wt%となる。
本明細書において、本発明の染料インキが一般式(I)の染料を2種以上有するものである場合、上記染料及び固形分の各含有量は、何れも各染料の合計に関する範囲を表す。
本発明の染料インキは、例えば、ペイントシェーカー、プロペラ型攪拌機、ディゾルバー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、2本ロールミル、3本ロールミル、超音波分散機、ニーダー、ラインミキサー、2軸押出機等を用いる従来公知の製造方法により製造することが出来る。
本発明の染料インキを製造する1つの手法として、ビーズミル、ボールミルを用いる場合、用いるビーズ、ボールとしては、ガラス、セラミック、スチール、ジルコニア等が挙げられ、なかでもジルコニアビーズは特に硬度、耐磨耗性及び粒径の点から好適である。
ビーズ径としては0.05〜2.0mmのものが好ましく、特に染料の初期粒径に応じてビーズ径を選定すればよい。
本発明の染料インキを製造する別の1つの手法として、高シェアレートで染料/バインダー樹脂の塊を混練し、それに溶剤を加えペイントシェーカーにて溶解・分散させる手法がある。
例えば、アイメックス(株)製 ウルトラビスコミル UVM−2を用いてジルコニアビーズ(平均直径0.3mm)、回転数1000rpmで10時間分散処理した染料インキと、関西ロール(株)製 2本ロールミルを用いてロール温度20℃、ロール回転数を前ロール20rpm、後ロール24rpmの条件にて染料:バインダー樹脂:溶剤=3:3:4の割合で混練し、それに溶剤を加えペイントシェーカーにて溶解・分散させることにより調製できる。
上記2つの手法で作製した染料インキの粒度分布は、両者とも前記粒度分布測定において所望の染料粒径範囲が達成されることが確認できている。
従来、溶剤への溶解度が1wt%未満である等、溶剤に対する溶解性が低い染料を含有する染料インキ、及び、そのような染料インキを乾燥固化させた染料層を持った熱転写シートは実用化されていなかった。これに対し、本発明の染料インキは、上述の一般式(I)で表される染料を1種又は2種以上選択することにより、溶剤溶解性が低い染料を熱転写シートにおける染料層の材料として実用的なレベルで含有することができる。
ゆえに、本発明の染料インキは、熱転写シートにおける染料層の材料として使用する場合、得られる熱転写シートは、塗工面のムラ等がなく、高濃度で優れた品質の印画物を形成することができる。
本発明の熱転写シートは、基材シートと、前記基材シートに積層している染料層とを有する昇華型熱転写シートであって、該染料層は、上述の本発明の染料インキを基材シートに塗工したのち乾燥させることより形成したものである。
本発明における基材シートとしては、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであれば、いずれのものでもよい。
上記基材シートとしては、例えば、グラシン紙、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレンの誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、アイオノマー等のプラスチック等が挙げられる。
上記基材シートとしてのプラスチックは、延伸フィルムであってもよいし、未延伸フィルムであってもよい。
本発明における基材シートは、上述の紙類、プラスチック等を積層したものであってもよい。
本発明の熱転写シートにおいて、基材シートの厚さは、強度、耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度が好ましい。
本発明の熱転写シートにおける染料層は、上述の本発明の染料インキから得られるものである。
本発明の熱転写シートは、上述の本発明の染料インキから得られる染料層を1種のみ有するものであってもよいし、該染料層を2種以上有するものであってもよい。
本発明の熱転写シートは、染料層として、上述の本発明の染料インキから得られる染料層を少なくとも1つ有するものであれば、他の種類の染料インキから形成された染料層を有するものであってもよい。
本発明の熱転写シートは、更に、上述の染料層を形成する面と反対側の基材シート面上に、耐熱滑性層を設けてなるものであってもよい。
上記耐熱滑性層は、ステッキングや印画しわ等、熱転写時にサーマルヘッドの熱が原因で生じる問題を防止するために設けるものである。
上記耐熱滑性層は、主に耐熱性樹脂からなるものである。
上記耐熱性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン又はエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
上記耐熱滑性層は、耐熱性樹脂に加え、滑り性付与剤、架橋剤、離型剤、有機粉末、無機粉末等の添加剤を配合してなるものであってもよい。
本発明の熱転写シートは、上述のように、本発明の染料インキを基材シートの一方の面に塗工し乾燥して染料層を形成することができ、例えば、(1)基材の一方の面に、耐熱滑性層塗工液を塗工し、乾燥することにより耐熱滑性層を形成し、(2)得られた耐熱滑性層を有する基材シートに対し、該耐熱滑性層と反対側の面に、上記染料インキを塗工し乾燥して染料層を形成することができる。
上記耐熱滑性層は、通常、上述の耐熱性樹脂、並びに、所望により添加する上記滑り性付与剤及び添加剤を適当な溶剤中に加えて、各成分を溶解又は分散させて耐熱滑性層塗工液を調製し、その後、該耐熱滑性層塗工液を基材の上に塗工し、乾燥させて形成することができる。
上記耐熱滑性層塗工液の塗工法としては、例えば、ワイヤーバーコーティング、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等が挙げられるが、なかでもグラビアコーティングが好ましい。
上記耐熱滑性層塗工液は、乾燥塗布量が好ましくは0.1〜3g/m、より好ましくは1.5g/m以下となるよう塗布すればよい。
上記染料層は、上述の本発明の染料インキを基材シート上に塗工し、乾燥させて形成することができる。
上記染料層の塗工法としては、例えば、ワイヤーバーコーティング、グラビア印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等が挙げられるが、なかでもグラビアコーティングが好ましい。
なお、上記染料インキの乾燥が不充分であると、地汚れや巻取りにした際に染料インキが裏移りし、更にその裏移りした染料インキが巻き返した際に異なる色相である染料層に再移転する、いわゆるキックバックが生じることがあるので、該乾燥は60〜120℃の温度にて1秒〜5分程度行うことが好ましく、上記問題の発生しない範囲で任意に選択できる。
上記染料インキは、乾燥塗布量が好ましくは0.2〜3g/m程度、より好ましくは0.4〜1.0g/m程度となるよう塗布すればよい。
本発明の染料インキは、上記構成からなるものであるので、溶剤溶解性の低い染料であっても熱転写シートにおける染料層の材料として実用的なレベルで含有することができる。更に、上記構成のとおり、2種以上の染料を混合することで、各々1種で構成した場合よりも転写感度の高い染料層を形成できる。従って、上記染料インキは、熱転写シートにおける染料層の材料として使用する場合、得られる熱転写シートは、塗工面のムラ等がなく、高濃度で耐光性等に優れた印画物を形成することができる。
本発明の熱転写シートは、上記構成からなるものであるので、塗工面のムラ等がなく、高濃度で優れた品質の印画物を形成することができる。
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳述する。なお、文中、部又は%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
実施例1
以下の手順に従って、染料インキ及び熱転写シートを作成した。
(染料インキの作製)
200mlカップサイズのガラス瓶に、下記量の染料、バインダー樹脂及び溶剤、更に平均粒径0.3mmのジルコニアビーズを約250部投入し、ペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)で3時間染料を分散させた。
<染料インキ組成>
Disperse Yellow 54(以下、「染料1」とする)5.25部
ポリビニルアセタール樹脂(エスレックKS−5、積水化学工業社製)3.5部
メチルエチルケトン 45.625部
トルエン 45.625部
染料1の化学式(式(II))を下記に示す。
Figure 2007119762
(熱転写シートの作成)
基材シートとして、厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルム〔PET〕上に、上記染料インキをグラビアコーティングにより、乾燥塗布量が0.6g/mになるように塗布、80℃2分乾燥して染料層を形成し、熱転写シートを作製した。
尚、上記基材シートの他方の面に、予め下記組成の耐熱滑性層塗工液をワイヤーバーにより、乾燥塗布量が1.0g/mになるように塗布、乾燥して、耐熱滑性層を形成しておいた。
<耐熱滑性層塗工液組成>
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBX−1、積水化学工業社製)13.6部
ポリイソシアネート硬化剤(タケネートD218、武田薬品工業社製) 0.6部
リン酸エステル(プライサーフA208S、第一工業製薬社製) 0.8部
メチルエチルケトン 42.5部
トルエン 42.5部
実施例2
染料インキにおいて染料を下記式(III)で表される「染料2」に変える以外は実施例1と同様にして、実施例2の熱転写シートを作製した。
Figure 2007119762
実施例3
染料インキにおいて、実施例1の染料1及び実施例2の染料2を染料1:染料2=4:1(質量比)の割合で混合したもの染料として使用する以外は実施例1と同様にして、染料インキを作製した。
比較例
染料インキとして下記組成のものを使用する以外は実施例1と同様にして、比較例の熱転写シートを作製した。
<染料インキ組成>
Solvent Yellow 93(下記式の染料) 7.0部
ポリビニルアセタール樹脂(エスレックKS−3、積水化学工業社製)3.5部
メチルエチルケトン 44.75部
トルエン 44.75部
Figure 2007119762
試験例
下記手順にて、各実施例及び比較例に使用した各染料について染料溶解性を評価し、各実施例及び比較例の各熱転写シートについて反射濃度及び耐光性を評価した。
<染料溶解性>
トルエン/メチルエチルケトン=1/1(質量比)に各染料を1wt/v%となるよう添加し、50℃にて加熱攪拌した。続いて、20℃にて60時間放置した後、目視にて染料の溶解性を判断した。
<イエロー染料溶解度>
20℃の温度下で5質量%の染料をメチルエチルケトン/トルエン=1/1でイエロー溶液20gを作製後40℃で2時間攪拌し、72時間放置した後、溶液の上積み部分を5g採取して直径185mmのフィルターペーパー(東洋濾紙(株)製)でろ過した溶液を60℃、5時間乾燥することにより溶剤を揮発させて、残った染料の量から溶解度を算出した。
<粒度分布測定>
日機装(株)製マイクロトラック粒度分布計UPA−150を用いて測定した。
また、測定用の染料インキは実施例1、2の染料インキ組成で作製したものである。
<反射濃度>
OLYMPUS社製P−400プリンター専用のA4サイズスタンダードペーパーを被転写体として用いた。各熱転写シートの染料層と上記被転写体の染料受容面とを対向させて重ね合わせ、熱転写シートの裏面からサーマルヘッドを用いて熱転写記録を行い、イエローの階調画像を形成し、各階調ごとの反射濃度を測色した。
(印字条件)
・サーマルヘッド:F3598(東芝ホクト電子株式会社製)
・発熱体平均抵抗値:5176(Ω)
・主走査方向印字密度:300dpi
・副走査方向印字密度:300dpi
・印字電力:0.12(W/dot)
・1ライン周期:2(msec.)
・パルスDuty:85%
・印字開始温度:35.5(℃)
(測色条件)
・測色器:分光測定器SpectroLino(Gretag Macbeth社製)
・光源:D65
・フィルター:ANSI Status A
・視野角:2°
<耐光性>
上記反射濃度試験の印加により得られたイエロー画像をキセノンウェザオメター(アトラス社製、Ci4000:ブラックパネル温度45℃、フィルターCIRA,ソーダライム)にて96時間照射を行い、照射前後の色相変化(照射前OD=1付近のΔE*ab=((照射後L*−照射前L*)+(照射後a*−照射前a*)+(照射後b*−照射前b*)1/2;(式中、L*、a*及びb*は、CIE1976L*a*b*表色系に基づくものであり、L*は明度を、a*及びb*は、知覚明度指数を表す。)を確認した。
比較例2
実施例1にて使用した染料、バインダー樹脂及びトルエン/MEK=1/1混合溶剤を用いたものと同じものを用意し、同じ重量部の染料インキを作製した。その際の分散方法としては、ジルコニアビーズを100部、分散時間を30分とした。その染料インキを使用して実施例1と同じく基材シートに染料層を形成して熱転写シートを作製した。
その結果、この熱転写シートには所々濃淡が生じ、印画ムラが多く正確な反射濃度を測定することが出来なかった。更にフィルム表面に凹凸が見られ、手でこすると染料の大粒子がぼろ落ちした。
また、この染料インキを20〜25℃の温度下に168時間(7日間)静置後、目視観察した結果、染料粒子の沈降が確認された。
各結果を表1、2及び図1に示す。
Figure 2007119762
Figure 2007119762
各実施例の熱転写シートは、使用した染料の染料溶解性が低いにも関わらず、最大反射濃度を2.0以上確保していることと、耐光性が比較例より優れていることにより実用レベル上問題ないことが分かった。また、各階調ごとの反射濃度は、実施例1、2よりも染料1、2を混合した実施例3の方が優れていた。
本発明の染料インキは、上記構成からなるものであるので、溶剤溶解性の低い染料であっても熱転写シートにおける染料層の材料として実用的なレベルで含有することができる。更に、上記構成のとおり、2種以上の染料を混合することで、各々1種で構成した場合よりも転写感度の高い染料層を形成できる。従って、上記染料インキは、熱転写シートにおける染料層の材料として使用する場合、得られる熱転写シートは、塗工面のムラ等がなく、高濃度で耐光性等に優れた印画物を形成することができる。
本発明の熱転写シートは、上記構成からなるものであるので、塗工面のムラ等がなく、高濃度で優れた品質の印画物を形成することができる。
各実施例及び比較例の熱転写シートに関する反射濃度の測定結果を表す。

Claims (5)

  1. 染料、バインダー樹脂及び溶剤からなる昇華型熱転写シート用染料インキにおいて、
    前記染料インキは、少なくとも一種の下記式(I)で表されるイエロー染料を前記バインダー樹脂及び前記溶剤中に分散させてなるものであり、前記染料インキにおける前記イエロー染料の含有量a質量%と、前記イエロー染料の前記溶剤に対する20℃での溶解度s質量%とが、式a>sで表される関係を満たすものである
    ことを特徴とする染料インキ。
    Figure 2007119762
    (式中、Xは、水素原子又はハロゲン原子を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基若しくはその誘導体、又は、アルキル基若しくはベンゼン環を含む総炭素数6〜10のアシル基を表す。)
  2. 染料として、一般式(I)で表される染料及びその互変異性形のうちで構造の異なる2種類以上を含有していることを特徴とする請求項1記載の染料インキ。
  3. 染料として、下記式(II)で表される染料と下記式(III)で表される染料とを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の染料インキ。
    Figure 2007119762
    Figure 2007119762
  4. バインダー樹脂は、溶剤中に溶解するものであり、
    染料インキ中の染料の粒度分布が0.1μm≦D50粒径≦5.0μm、及び、0.3μm≦D90粒径≦10.0μmであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の染料インキ。
  5. 基材シートと、前記基材シートに積層している染料層とを有する昇華型熱転写シートにおいて、
    前記染料層は、請求項1〜4の何れか1項に記載の染料インキを基材シートに塗工したのち乾燥させることより形成した
    ことを特徴とする熱転写シート。
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