JP2007118577A - 繊維強化樹脂部材の製造方法および製造装置 - Google Patents

繊維強化樹脂部材の製造方法および製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】強化繊維基材を所定の形状に賦形し、該形状を維持したまま成形型に移載し、成形型上で強化繊維基材の形状を修正することなく、樹脂を強化繊維基材に含浸して、繊維強化樹脂部材を安定的に製造することのできる、信頼性の高い繊維強化樹脂部材の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】搬送具を具備する賦形型上の該搬送具上で、強化繊維基材を賦形した後、該強化繊維基材を搬送具ごと賦形型から分離して、成形型に移載し、続いて、該成形型内で強化繊維基材に樹脂を注入し、硬化させることを特徴とする繊維強化樹脂部材の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車などの輸送機器、スポーツ用具に広く用いられている繊維強化プラスチック部材を再現性良く製造することができる繊維強化樹脂部材の製造方法および製造装置に関する。
エポキシ樹脂やポリプロピレン樹脂などの樹脂(プラスチック)を、ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維で強化した、繊維強化プラスチックは、軽量、高強度、高剛性であるため、自動車などの輸送機器の部材、テニスラケットやスキー板などのスポーツ用具に広く用いられている。
これらの部材や用具の製造方法としては、大別して、オートクレーブ成形法とレジントランスファー成形法がある。
オートクレーブ成形法とは、プリプレグと称される強化繊維基材に樹脂を予め含浸させた粘着性のシート状材料を、成形型上で、所定の形状に賦形した後、成形型上に載置したまま、オートクレーブと称される炉中で、加熱、加圧して部材を製造する方法である。
本オートクレーブ成形法による製造方法は、成形型上に、粘着性のプリプレグを重ねていくため、プリプレグを所定の形状に賦形した後も、プリプレグが移動しない、形状変化しないというメリットがあるが、賦形や積層作業中も成形型を占有するため、生産性に劣るというデメリットがある。複数の型を準備して大量生産するという対策もあるが、成形型は高価であり、コスト高となる。
一方、樹脂とは別に、強化繊維基材だけを予め所定の形状に賦形し、その後、強化繊維基材に樹脂を含浸させるというレジントランファー成形法(RTM成形法と称される)が、自動車部材やスポーツ用具の低コスト成形法として注目されている。
本レジントランファー成形法による製造方法は、賦形型と称される、成形型とは別の型上で、樹脂が含浸されていない強化繊維基材(ドライの強化繊維基材と称する)を所定の形状に賦形するため、強化繊維基材が変形しやすく、成形型の占有時間が大幅に短縮でき、大量生産が可能となる。ただし、賦形型上で所定の形状に賦形した強化繊維基材は、樹脂を注入、硬化させる成形型上に、移動して配置(移載)させる必要があり、移載の際に、強化繊維基材の形状が変化して、成形型上で強化繊維基材を再度賦形しなくてはならなくなり、折角の賦形工程が無駄になるというばかりではなく、最終部材の性能が部材毎に異なるという、再現性が確保できないという製品安全上の決定的な問題を孕んでいる。
このため、強化繊維基材を賦形した後、固着材とよばれる樹脂や粘着性物質を付与して、強化繊維基材の形状を安定化する技術が提案されている。しかしなから、固着材の種類や量によっては、吸湿や温度により、強化繊維基材の形状が崩れるといった問題や、強化繊維基材に注入する樹脂との相溶性が悪く、樹脂の硬化を阻害したり、樹脂および繊維強化プラスチック部材の機械物性を低下させるという問題が生じる場合がある。特に、強化繊維基材の形状を安定化させるために、固着材を大量に付与すると、強化繊維基材間の隙間が減少し、レジントランスファー成形における樹脂が、強化繊維基材間に入らず(含浸性が低下すると称する)、ボイドなどの欠陥が生じて、部材の機械物性を低下させるという新たな製品安全上の問題も発生する可能性がある。
従来、強化繊維基材の形状を安定化させるために、固着材としてバインダーを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このときバインダーの使用量は使用する強化繊維基材100質量部に対して、40〜70質量部にものぼり、バインダーによる成形品の機械物性への悪影響が懸念される。
また、薄いトレーを使って搬送するという技術が提案されているが(例えば、特許文献2参照)、この方法ではトレーに直接強化繊維基材を賦形するため、成形品形状が大型化、複雑化してくると、薄いトレーに強化繊維基材を賦形する工程でトレーが変形を起こし、成形型にセットできなくなったり、強引に成形型にセットしても型の間に噛みこんで、型閉じができない事態が生じる。あるいは、形状の崩れを抑制するために固着材を大量に付与しなくてはならず、上記した問題発生の可能性を孕んでいるのが現実である。
このような状況の下、強化繊維基材を所定の形状に賦形するのは勿論のこと、固着材などの第三物質を大量に使うことなく、賦形した強化繊維基材の形状を変化させることなく成形型上に搬送、配置して、最終部材を再現性よく製造可能とする信頼性の高い製造方法が必要とされていた。
さらに、プリプレグ成形と同様、成形型を複数準備し、成形型自体を搬送してプリフォームのズレをなくす方法も提案されているが(例えば、特許文献3参照)、この方法では高重量の成形型を動かすため非常に大きな労力が必要となり、また、広い作業スペースが必要となることから、実用的な解決法とはなっていない。
特開2003−268126号公報 特開平10−15970号公報 特開平10−193388号公報 特開2003−211447号公報
本発明の課題は、上記した従来技術の問題点に鑑み、強化繊維基材を所定の形状に賦形し、該形状を維持したまま成形型に移載し、成形型上で強化繊維基材の形状を修正することなく、樹脂を強化繊維基材に含浸して、繊維強化樹脂部材を安定的に製造することのできる、信頼性の高い繊維強化樹脂部材の製造方法および製造装置を提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)搬送具を具備する賦形型上の該搬送具上で、強化繊維基材を賦形した後、該強化繊維基材を搬送具ごと賦形型から分離して、成形型に移載し、続いて、該成形型内で強化繊維基材に樹脂を注入し、硬化させることを特徴とする繊維強化樹脂部材の製造方法。
(2)前記搬送具の下面形状と、賦形型の上面の形状が一致していることを特徴とする前記(1)に記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
(3)前記搬送具がフィルム状であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
(4)前記搬送具が開口部を有するフィルム状であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
(5)前記搬送具が、前記成形型内に樹脂を注入する開口部と、該開口部に樹脂を流通させる樹脂流動通路を有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
(6)前記搬送具が複数の層から構成され、前記成形型内に樹脂を注入する開口部を有する層を含むことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
(7)前記搬送具を繊維強化部材の一部を構成する部品とすることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
(8)強化繊維基材が、炭素繊維クロスからなることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
(9)賦形型上に、該賦形型上に装着および取り外し可能に載置される搬送具を具備するとともに、該搬送具上に載置された強化繊維基材を賦形する手段を備え、さらに該賦形型から取り外しされた搬送具上に載置された強化繊維基材に樹脂を注入し、硬化させるための成形型を備えることを特徴とする繊維強化樹脂部材の製造装置。
本発明によれば、強化繊維基材を所定の形状を保持したまま成形型に移載させることが可能であるため、強化繊維基材の形状は崩れることなく、形状を修正することも不要であるため、再現性のある、信頼性の高い繊維強化樹脂部材が製造可能となる。加えて、強化繊維基材の形状修正などの作業が不要となるので、生産性が向上し、低コストな実用性の高い製造方法および製造装置が可能となる。
以下に本発明を図1に示す一実施態様に基づいて説明する。
まず、本発明で用いる賦形型1は、図1(A)に示すように、搬送具2を具備している。賦形型1の上に搬送具2が載せられており、脱着が可能である。賦形型1、搬送具2は、金属、FRP、樹脂、紙、木材などの材料からなり、搬送具2は、賦形面3を有する。賦形面3は、製造する最終の繊維強化プラスチック部材と実質的に同一の形状を有しており、賦形面3上に、後述する強化繊維基材4を配して、該強化繊維基材4を賦形面と同一形状に賦形して製品形状のプリフォーム11とする。強化繊維基材4は、搬送具2より小さく形成されている。
賦形は、後述するように、強化繊維基材4に各種手段により力を作用させるため、賦形面3、および搬送具2にも力が作用するので、搬送具2と賦形型1は賦形に伴う力で分離しないように、嵌合されていたり、ピンなどで固定されていることが好ましい。また、賦形型1より、搬送具2の方が軽い方が両者の位置がずれ難いので、賦形工程で大きな力を作用させることが可能となり好ましい。搬送具2の下面5と賦形型の上面6とは、全面で接触していると、搬送具2を薄くしても搬送具2の形状が変化しにくいので賦形面3の形状が一定に保たれるので最も好ましい。
次に、本発明の強化繊維基材4は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、玄武岩繊維などの連続繊維や不連続(短)繊維からなる、織物、不織布、マットなどの布帛形態を有している。布帛形態を有しているので、搬送具2上で、自動車部材やスポーツ用具といった3次元形状への賦形が容易となる。
自動車やスポーツ用具としては、軽量性、強度、剛性に優れる連続の炭素繊維からなる織物が最も好ましい。また、耐衝撃性を付与するためにガラス繊維を併用した布帛も好ましい実施態様の一つである。
連続の炭素繊維からなる平織り織物(クロス)などからなる強化繊維基材4は、図1(B)に示されるように、搬送具2上で、賦形面3の形状に賦形されてプリフォーム11にされる。賦形は、手、ローラーやヘラなどの治具で、織物を賦形面に押しつけて行われるが、特許文献4にあるように、水枕や、振動によっても賦形が可能である。
炭素繊維織物は、複数枚重ねて同時に賦形することも、一枚ずつ賦形して重ねていくことも可能である。通常、織物などの強化繊維基材4には、樹脂は付与されていないため、変形が容易で、僅かの力で賦形可能であるが、粘着剤を予め、あるいは、賦形工程中に付与して、織物などの強化繊維基材4同士を粘着させても差し支えない。この場合、粘着剤には、後述する樹脂と同じ成分を有する材料で粘着性を付与することが好ましい。さらに、強化繊維基材中に熱可塑樹脂からなる繊維を付与して、賦形工程で加熱してこの繊維を溶融させ、その後冷却して、賦形形状を安定化させることも好ましい実施態様である。また、賦形工程において、織物が突っ張って賦形できない場合(ブリッジングと称する)は、織物の一部を切断したり、切れ目を入れたりすることが有効である。賦形面の3次元形状データを基に、2次元形状への展開図データを作成し、織物などの強化繊維基材4を添加図の形状に裁断してから搬送具2にセットして、賦形することも有効である。
次に、搬送具の賦形面3上で賦形されたプリフォーム11は、図2(A)〜(C)に示すように、必要に応じて、周囲をトリムして、搬送具2ごと、成形型下型7に移載する。搬送具ごと強化繊維基材(プリフォーム)を移動させるので、搬送の際に繊維の脱落、目ズレ、歪み等が起こらず、再現性のある、信頼性に優れる部材の製造が可能となる。
搬送具2は、賦形型1から分離して、成形型7、9に移動させるが、搬送具が数kgと軽量な場合は、手や簡易ロボットで移動が可能である。実際の製造工程においては、賦形された強化繊維基材が載置された搬送具は、重ねて仮置きしておくと生産効率上有利であり、搬送具2には、搬送具同士を積み重ね、あるいは嵌め合わすことができる機能、例えば、搬送具の下面に嵌合溝などを形成しておくことが好ましい。また、移載には、空気吸引や磁力を用いても差し支えない。
成形型は、いわゆる金型と称され、スチールやアルミニウムなどの金属からなる。図3に示すように、通常、下型7、上型9からなり、上下型の間で形成されるキャビティー中に樹脂10を注入して搬送具2に載置された強化繊維基材(プリフォーム11)に樹脂を含浸させて繊維強化樹脂部材を製造する。
本発明では、下型7と上型9のキャビティー中に、搬送具2と強化繊維基材(プリフォーム11)を移載し、樹脂10を注入、硬化する。通常、注入には、樹脂を加圧し、硬化には、樹脂を加熱する。樹脂が硬化した後は、成形型を開けて、成形部材を取り出す。
樹脂10は、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましいが、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリアミド等の熱可塑性樹脂であっても、さらにはこれら樹脂の混合樹脂であっても差し支えない。炭素繊維を使った自動車部材やスポーツ用具に好ましいのは、接着性に優れるエポキシ樹脂である。
なお、搬送具2は、強化繊維基材(プリフォーム11)と共に、成形型7、9中に配置しておくことが好ましいが、この場合、搬送具2の下面5と、該搬送具2の下面5と接触する成形型下型7の上面8の形状は一致していることが好ましい。一致していることで、樹脂を注入した際の圧力による賦形面の変形を抑制できるからである。
また、搬送具2に、樹脂を注入する機能を付与しておくことも好ましい実施態様である。具体的には、搬送具を数十μm〜数mmのフィルムで形成して、フィルムには円孔などの開口部を形成した、いわゆる穴あきフィルムとしたものを用いることが好ましい。また、金属メッシュやパンチングメタルなどを用いてもよい。こうすることで、搬送具は、軽量となり、人力や、簡易ロボットで移動が可能となると同時に、樹脂を開口部を通じて強化繊維基材に含浸可能となる。そのほか、樹脂流動溝あるいは樹脂流動孔を備えた成形型下型を用い、さらにフィルムの開口部をより多くすることで、樹脂の注入時間が短縮できる。あるいは、樹脂が含浸し難い箇所に開口部を設けることで、不良品の少ない生産が可能となるなどのメリットがある。
なお、搬送具をフィルム状とする場合、材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール(ノボラック型など)フェノキシ樹脂、フッ素樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、飽和ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。中でも、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂やシリコンといった離型性、耐熱性に優れる樹脂を材料とすると、再利用が可能となり、製造工程で発生するゴミの減量や、部材の製造コスト削減上好ましい。
また、搬送具の厚みを数mm〜数十mmの厚みとして、搬送具中に、樹脂流動溝(ランナーとも称する)および/または樹脂流動孔などの樹脂流動通路、および該樹脂流動通路に連通する前記成形型内に樹脂を注入する開口部を形成して、樹脂を短時間で強化繊維基材(プリフォーム)に含浸させることも可能である。
樹脂流動通路は、孔状(樹脂流動孔)および/または溝状(樹脂流動溝)のものを用いることができるが、樹脂流動溝であることが好ましい。この樹脂流動溝および開口部を有する搬送具の一例を図4に示す。
搬送具2の厚みは1mm〜50mmであることが好ましい。厚みが1mmを下回る場合、搬送具に樹脂流動溝を設けることが困難となる。また、厚みが50mmを越える場合、搬送具の重量が重くなるため搬送に支障をきたす恐れがある。より好ましくは2mm〜20mmである。
開口部12の寸法は、注入した樹脂を効率よく強化繊維基材(プリフォーム)へ含浸させるために、直径0.5mm〜15mmの円形状であることが好ましい。開口部寸法が直径0.5mmを下回る場合、注入した樹脂が開口部を通りにくくなり、強化繊維基材への樹脂含浸が不十分になる恐れがある。一方、開口部寸法が15mmを越える場合、注入した樹脂が硬化した後、硬化した開口部部分の樹脂が搬送具と成形品を強固に結び付けて、搬送具を取り外せなくなる恐れがある。
開口部12の形状は加工性の観点から円形状が好ましいが、三角形状、四角形状など他の形状であっても何ら差し支えない。
開口部12の配置位置は、隣り合う開口部との距離が30mm〜500mmとなるように配置することが好ましい。開口部同士の距離が30mmを下回る場合、隣り合う開口部が近すぎるため、各開口部から樹脂を含浸させられる領域が重なってしまい含浸効率が悪くなる。一方、開口部同士の距離が500mmを越える場合、隣り合う開口部の間に未含浸部分を生じる恐れがある。効率よく樹脂を含浸させるためには、隣り合う開口部との距離が50mm〜200mmであることがより好ましい。
樹脂流動溝13は、樹脂注入口14と各開口部12をつなぐように配置される。
樹脂流動溝13の配置は、図4に示すように、樹脂注入口14からのびた樹脂流動溝13が分岐して各開口部12をつなぐような配置にするのが樹脂流動溝長さを短くするためには好ましいが、複数の分岐をもつ配置、あるいは分岐せずに樹脂注入口14と各開口部12を直接つなぐような配置であっても差し支えない。
また、樹脂流動溝13は全ての開口部をつなぐように配置されるのが好ましいが、一部つながっていない開口部が存在しても、全体の半数以上の開口部がつながっていれば差し支えない。
樹脂流動溝13の寸法は注入する樹脂を効率よく流すために、溝幅1〜30mm、溝深さ0.5mm〜15mmであることが好ましい。溝幅が1mmを下回る場合、あるいは溝深さが0.5mmのを下回る場合、樹脂流動溝の断面積が小さくなり、樹脂が流動しにくくなるため、樹脂を一定時間内に強化繊維基材へ含浸させることができなくなる恐れがある。また、溝幅が30mmを越える場合、あるいは溝深さが15mmを越える場合、樹脂注入後に樹脂流動溝内に大量の樹脂が残ることとなり、生産性の観点から好ましくない。より好ましい樹脂流動溝寸法は溝幅2〜20mm、溝深さ1〜10mmである。
樹脂流動溝の断面形状は半円形状が加工性の観点から好ましいが、U字状、V字状、四角形状など半円形状以外の形状であっても特に差し支えない。
樹脂流動孔は、樹脂流動溝と同様に、樹脂注入口から注入した樹脂を開口部まで流すために設けられる。樹脂流動孔の寸法は、特に制限されないが、注入した樹脂を効率よく流すために、直径1mm〜30mmの円形状であることが好ましい。また、樹脂流動孔は樹脂流動溝と併せて使用することが多いため、樹脂流動溝幅と等しい寸法であることが好ましいが、異なる寸法であっても差し支えない。
樹脂流動孔の形状は加工性の観点から円形状が好ましいが、三角形状、四角形状など他の形状であっても何ら差し支えない。
また、搬送具は複数の層から構成され、樹脂流動溝、樹脂流動孔、開口部の機能を各層が分割して有する形態としても差し支えない。こうすることで搬送具の製作が容易になり、1体の搬送具に複数の機能を付与しやすくなるという利点も得られる。
複数の層から成り立っている搬送具の一例を図5に示す。
図5では開口部を有する層15および樹脂流動溝を有する層16の2層を重ねることで、1体の搬送具としている。そのほか、樹脂流動層を2層にする、あるいは搬送具補強層など異なる機能を有する層を重ねるなど、3層以上から構成される搬送具としても差し支えない。
複数の層から構成される搬送具の各層の厚みは0.1mm〜50mmであることが好ましい。層の厚みが0.1mmを下回る場合、十分な耐久性が得られない恐れがある。また、層の厚みが50mmを越える場合、搬送具の重量が重くなるため搬送に支障をきたす恐れがある。
なお、搬送具は、繊維強化樹脂部材とともに成形型から取りはずして、繊維強化樹脂部材と分離して再使用するが、搬送具に離型処理せずに、繊維強化樹脂部分と一体化させた部材としても差し支えない。例えば、アウターパネルとインナーパネルの2部品で構成される自動車のトランクリッドの製造において、射出成形やプレス成形で予め成形しておいたインナーパネルを搬送具とし、その上でアウターパネルとなる強化繊維基材を賦形した後、成形型に移載し、成形型キャビティー中に樹脂を注入、硬化させて、インナーパネル(搬送具)と繊維強化樹脂からなるアウターパネルが一体化したトランクリッドが製造できる。搬送具が紙製の場合には、内装材としての役割を持たせることもできる。
もちろん、搬送具には、離型処理を施しておいて、樹脂が硬化したあと、繊維強化樹脂部材と分離させても差し支えない。搬送具に開口部がある場合は、縁切りをして搬送具と繊維強化樹脂部材を分離することもできる。
なお、以上は、搬送具をプリフォームとともに成形型のキャビティー内に入れたまま樹脂注入して部材を製造したが、樹脂注入前に、搬送具をプリフォームと分離して、キャビティー中から取り除いておくことも可能である。
実施例1
図1〜3に示す装置を用いて、寸法約1200mm×700mm×100mmのドアパネルを以下のように成形した結果、安定して再現性の良い繊維強化樹脂部材を得ることができた。
強化繊維基材4として、炭素繊維クロス(東レ(株)製“トレカ(登録商標)織物”CO6343、織り組織:平織り、織物目付:200g/m、強化繊維:T300−3K)8枚を成形品の展開図形状に裁断した。裁断したクロスを搬送具2を取り付けた賦形型1の上にセットし、人の手でクロスを押さえつけて賦形型形状に沿わせることで製品形状のプリフォーム11を作成した。
搬送具2には図4に示すような、軽量で搬送しやすく、成形後の離型性の良い厚さ5mmのポリエチレン製のものを用いた。本搬送具には直径5mmの円形状の開口部12を200mm間隔で23個設け、搬送具下面には、樹脂注入口から6本に分岐した樹脂流動溝13を、樹脂注入口14と各開口部をつなぐように配置した。樹脂流動溝の断面形状は、幅6mm×深さ3mmの半円形状とした。
搬送具2の下面と賦形型上面6は形状が一致しており、さらに搬送具は中央が大きく突き出す凸形状となっているため、搬送具は賦形型の上に置くだけで十分に固定することができ、問題なくクロスを押さえつけることができた。
クロスを製品形状に固定するために、各クロスの表面には固着材としてスプレーのり(3M(株)製スプレーのり55)を吹きつけた後、クロス同士を密着させることで層間を固着した。
搬送具2を製品形状に固定したプリフォーム11ごと取り外し、成形型下型7へと搬送した。このとき、強化繊維基材4は搬送具2に支えられたまま移動させることができたので、形状の崩れやクロスの目ズレ等の不具合を起こすことなく成形型内へセットすることができた。
そして、成形型上型9を閉じて密閉した後、樹脂を成形型内に注入した。樹脂を注入して100℃で40分間加熱し、樹脂を硬化させた後、成形品を脱型した。
樹脂は主剤として“エピコート”828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ樹脂)、硬化剤は東レ(株)でブレンドしたTR−C35H(イミダゾール誘導体)を混合して得た液状エポキシ樹脂を使用した。
脱型した成形品から搬送具を取り外すことで、所望の繊維強化樹脂部材を得た。
実施例2
搬送具以外は実施例1と同様の手法で繊維強化樹脂部材を成形した。搬送具には図5に示す2枚のフィルムを重ねたものを用いた。
上層15には厚さ0.5mmのポリプロピレン製フィルムを用い、直径5mmの円形状の開口部を200mm間隔で23個設けた。
下層16には厚さ4mmのポリプロピレン製フィルムを用い、下面には、樹脂注入口から6本に分岐した樹脂流動溝が、2層のフィルムを重ねたときに、樹脂注入口と各開口部をつなぐように配置した。樹脂流動溝の断面形状は、幅6mm×深さ3mmの半円形状とした。
本搬送具を用いて実施例1と同様に成形した結果、安定して再現性の良い繊維強化樹脂部材を得ることができた。
実施例3
搬送具以外は実施例1と同様の手法で繊維強化樹脂部材を成形した。
搬送具には2枚のフィルムを重ねたものを用いた。
上層のフィルムには厚さ1mmのポリエチレン製フィルムを用い、直径5mmの円形状の開口部を200mm間隔で23個設けた。
下層のフィルムには厚さ1mm、メッシュ間隔10mmで樹脂の流動性の良いメッシュ状ポリエチレン製フィルムを用いた。
本搬送具を用いて実施例1と同様に成形した結果、安定して再現性の良い繊維強化樹脂部材を得ることができた。
実施例4
搬送具、成形型以外は実施例1と同様の手法で繊維強化樹脂部材を成形した。
搬送具は厚さ1mmのポリエチレン製フィルムを用い、直径5mmの円形状の開口部を200mm間隔で23個設けた。また、成形型下型の搬送具と接する面には、搬送具を成形型下型にセットしたときに樹脂注入口と各開口部をつなぐように樹脂注入口から6本に分岐した樹脂流動溝を配置した。樹脂流動溝の断面形状は、幅6mm×深さ3mmの半円形状とした。
本搬送具、成形型を用いて実施例1と同様に成形した結果、安定して再現性の良い繊維強化樹脂部材を得ることができた。
実施例5
搬送具、成形型以外は実施例1と同様の手法で繊維強化樹脂部材を成形した。
搬送具は開口部を有しない厚さ1mmのポリカーボネート製フィルムを用いた。また、成形型の搬送具と接しない面には樹脂流動溝を100mm間隔で11本を設け、注入した樹脂が搬送具を通らずにクロスに含浸されるようにした。樹脂流動溝の断面形状は幅2mm深さ1mmの半円形状とした。
本搬送具、成形型を用いて実施例1と同様に成形した結果、搬送具が一体となった繊維強化樹脂部材を得ることができた。
比較例1
実施例1と同様の方法で、賦形型上にセットした搬送具上にプリフォームを作成した。搬送具はそのままにして、プリフォームのみを取り外して成形型へと搬送したところ、搬送中にプリフォーム形状が崩れ、クロスの目ずれを起こしたため、そのままでは成形型に収まらなかった。
成形型上でプリフォーム形状の修正をして成形を実施したが、実施例1と比べてより長く作業時間がかかり、出来上がった成形品も繊維乱れが多く場所によってムラのある成形品となった。
本発明の製造フローの賦形工程の一実施態様を示す図であり、(A)は賦形前、(B)は賦形後の工程図である。 本発明の製造フローの移載工程の一実施態様を示す図であり、(A)は賦形型、(B)は賦形型より取り外された搬送具、(C)は成形型をそれぞれ示す工程図である。 本発明の部材製造の樹脂注入の一実施態様を示す図である。 本発明の搬送具の一実施態様を示す図である。 本発明の搬送具の他の一実施態様を示す図である。
符号の説明
1:賦形型
2:搬送具
3:賦形面
4:強化繊維基材
5:搬送具の下面
6:賦形型の上面
7:成形型下型
8:成形型の下型の上面
9:成形型上型
10:樹脂
11:プリフォーム
12:開口部
13:樹脂流動溝
14:樹脂注入口
15:開口部を有する層
16:樹脂流動溝を有する層

Claims (9)

  1. 搬送具を具備する賦形型上の該搬送具上で、強化繊維基材を賦形した後、該強化繊維基材を搬送具ごと賦形型から分離して、成形型に移載し、続いて、該成形型内で強化繊維基材に樹脂を注入し、硬化させることを特徴とする繊維強化樹脂部材の製造方法。
  2. 前記搬送具の下面形状と、賦形型の上面の形状が一致していることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
  3. 前記搬送具がフィルム状であることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
  4. 前記搬送具が開口部を有するフィルム状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
  5. 前記搬送具が、前記成形型内に樹脂を注入する開口部と、該開口部に樹脂を流通させる樹脂流動通路を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
  6. 前記搬送具が複数の層から構成され、前記成形型内に樹脂を注入する開口部を有する層を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
  7. 前記搬送具を繊維強化部材の一部を構成する部品とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
  8. 強化繊維基材が、炭素繊維クロスからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
  9. 賦形型上に、該賦形型上に装着および取り外し可能に載置される搬送具を具備するとともに、該搬送具上に載置された強化繊維基材を賦形する手段を備え、さらに該賦形型から取り外しされた搬送具上に載置された強化繊維基材に樹脂を注入し、硬化させるための成形型を備えることを特徴とする繊維強化樹脂部材の製造装置。
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