JP6040547B2 - 繊維強化プラスチックの製造方法 - Google Patents

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本発明は、バッグ材内部を真空吸引して強化繊維材料を金型に押し付けて成形する、繊維強化プラスチックの製造方法に関し、特に金型が湾曲または屈曲形状を有する複雑形状の繊維強化プラスチックの製造方法に関する。
近年、地球環境問題への関心の高まりから、部品を軽量化することができる繊維強化プラスチックが材料として広く使用されるようになってきた。繊維強化プラスチックの製造方法は、強化繊維材料を所望の形状の金型の上に沿わせて配置し、強化繊維材料に含浸させたマトリックス樹脂を硬化させて強化繊維とマトリクス樹脂を一体化する方法が一般的である。
繊維強化プラスチックの製造方法としては、所望の形状の下型と上型を用いて強化繊維基材を上下金型で加圧プレスして成形するRTM(ResinTransfer Molding)法やSMC(Sheet Molding Compaund)法などの加圧成形法と、所望の形状の下型の上に強化繊維材料を配置し、強化繊維材料の上側はフィルム材などのバッグ材で覆って、バッグ材内部を真空吸引して強化繊維材料を金型に押し付けて成形するプリプレグ法やVaRTM(Vacuumassisted ResinTransfer Molding)法などのバギング成形法がある。
加圧成形法は、成形品の両面側に金型が接触するため、寸法精度が高く、かつ、成形品表面の平滑性に優れると言うメリットがある。しかしながら、上型と下型の2つの高精度な金型が必要であり、かつ、加圧するためのプレス装置が必要になることから、設備が大規模かつ複雑であり、また設備費用が高価であると言うデメリットがあった。
一方で、バギング成形法においては、下型のみで製造することが可能であり、かつ、大型設備が不要と言うメリットがある。しかし、可撓性のあるバッグ材が成形品の表面に当たるため、バギングしにくい形態であると、成形品の表面に沿ってバッグ材の凸凹が転写されることがあり、高精度の表面平滑性が実現困難になる場合もあった。
上記問題を解決するために、特許文献1の如く、押圧板(簡易上型、プレッシャープレート、カウルプレートと呼ばれる場合もある)を用いる方法が知られている。表面が平滑な押圧板を使用し、その表面が成形品に転写することにより、成形品の表面平滑性が改善される。しかしながら、特許文献1の如く、平板に適用する場合は、板状の押圧板を用いれば良いが、複雑形状に適用するためには、加圧成形法の上型と同じように押圧板を予め製品形状に加工する必要がある。例えば、図1の如く、凸状の金型を使用する場合には、押圧板を予め製品形状(本例では円弧形状)に加工する必要があり、形状固定された押圧板で強化繊維基材を押さえつけると、平面部が先に押さえられるため、コーナー部にしわが生じて、繊維強化プラスチックの強度が低下する場合もあった。
また、特許文献2の如く、従来のVaRTM方法においては、表面方向への樹脂拡散を目的に配置されたメディア(樹脂拡散媒体とも呼ばれる)の凹凸が成形品に転写することがあった。この凹凸を解消するために、嵩密度が高い(目の細かい)パスメディアを使用する方法により表面品位の改善がなされているが、依然パスメディア模様の転写を完全に除去するには至っていない。また、特許文献3の如く、樹脂拡散媒体の凹凸が成形品へ転写することを防止するために、平板上のプリフォームと樹脂拡散媒体の間に多孔性シートを適用することが例示されている。しかしながら、特許文献1と同様に、当該多孔性シートを複雑形状に沿わせるためには、加圧成形法の上型と同じように多孔性シートを予め製品形状に加工する必要がある。もしくは、複雑形状に沿いやすくするために、薄い多孔性シートを用いることも考えられるが、複雑形状に容易に沿うまでシートを薄くすると剛性が不足して(結局バッグ材と同等レベルとなり)、表面平滑性が改善しないことが考えられる。
特開2003−048223号公報 特許3986426号公報 特許4104422号公報
本発明は、従来技術の問題を解決し、金型とバッグ材を用いた繊維強化プラスチックの製造方法において、金型が湾曲または屈曲形状を有する複雑形状であっても、予め製品形状に形成した上型もしくは押圧板を準備することなく、表面平滑性に優れた複雑形状の繊維強化プラスチックを製造する方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る繊維強化プラスチックの製造方法は、以下の手段をとる。
(1)以下の(a)〜(d)の工程を含むことを特徴とする繊維強化プラスチックの製造方法。
(a)湾曲または屈曲形状を有する金型の上に、少なくとも、ドライの強化繊維基材、最終製品に要求される表面粗さと同等以上の平滑性を有し、3mm以下の複数個の貫通孔が穿孔された樹脂製シート材、樹脂拡散媒体の順に配置されたものを含む成形材を配置する配置工程
(b)前記成形材をバッグ材で覆い、前記樹脂製シート材を構成する樹脂材料のガラス転移温度(Tg)がT1であり、(T1−20)℃以上前記樹脂材料の融点を超えない加熱温度として、前記バッグ材内部を真空吸引することにより、前記バッグ材で前記成形材を金型に押圧して沿わせて賦形および加熱する賦形・加熱工程
(c)ドライの強化繊維基材にマトリックス樹脂を注入・含浸さ後、マトリックス樹脂を加熱硬化する硬化工程
(d)樹脂製シート材を繊維強化プラスチック材から除去する除去工程
)前記硬化工程(c)において、ドライの強化繊維基材を含む成形材をバッグ材で覆い、バッグ材内部を真空吸引することにより、差圧でマトリックス樹脂を注入することを特徴とする(1)に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
)前記樹脂製シート材の厚みが0.1mm以上、1mm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
)前記強化繊維基材の表面に、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂材料が塗布されていることを特徴とする(1)〜()のいずれかに繊維強化プラスチックの製造方法。
最終製品が湾曲または屈曲形状を有する複雑な形状であっても、予め製品形状に形成した上型もしくは押圧板を準備することなく簡易に、表面平滑性に優れた繊維強化プラスチックを製造することが出来る。
従来の繊維強化プラスチックの製造方法を示す概略断面図である。 本発明に係る繊維強化プラスチックの製造方法において、配置工程を示す概略断面図である。 本発明に係る繊維強化プラスチックの製造方法において、賦形・加熱工程を示す概略断面図である。 本発明に係る繊維強化プラスチックの製造方法において、硬化工程を示す概略断面図である。 本発明に係る繊維強化プラスチックの製造方法において、除去工程を示す概略断面図である。 本発明をVaRTM法に適用した場合における繊維強化プラスチックの製造方法を示す概略断面図である。 本発明を他のVaRTM法に適用した場合における繊維強化プラスチックの製造方法を示す概略断面図である。 本発明に用いる樹脂製シート材を示す概略図である。 本発明に係る繊維強化プラスチックの製造方法における賦形・加熱工程の実施形態を示す概略断面図である
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、図面に記載された具体的な態様に限定されるものではない。
図2は、本発明に係る繊維強化プラスチックの製造方法の流れを示した断面図である。図3は本発明をVaRTM法に適用した場合の繊維強化プラスチックの製造方法の断面図である。
本発明の一つの実施形態は、金型1とバッグ材5を用いた繊維強化プラスチックの製造方法において、図2の通り、湾曲または屈曲形状を有する所望の形状をした金型1上に、少なくとも強化繊維基材2と樹脂製シート材4を含む成形材31を配置する(配置工程)。その後、バッグ材5で成形材31を覆って周囲をシーリング6でシールし、バッグ材5内部を真空ポンプ7で真空吸引することにより成形材31を金型1に押し付けて賦形し、成形材31を加熱する(賦形加熱工程)。その後、強化繊維基材に含浸されたマトリックス樹脂を硬化し(硬化工程)、最後に硬化した繊維強化プラスチック材9から樹脂製シート材を除去する(除去工程)。
本発明は最終製品が複雑形状の場合に好適であり、金型1は曲面または屈曲形状を有している。本発明に係る曲面または屈曲形状とは、具体的には、少なくとも一部に平面以外の曲面を有する形状、あるいは、互いに交わる少なくとも2つの平面方向に屈曲した形状のことをいう。
以下、各工程順に、本発明を詳細に説明する。
(a)配置工程
図2の通り、円弧状の曲面のコーナー部8を有する凸型形状の金型の上に、少なくとも強化繊維基材と樹脂製シート材を含む成形材を配置する。
強化繊維基材は、強化繊維に樹脂が予め含浸されているシート状のプリプレグ材であっても良いし、樹脂が含浸されていないドライの織物または編物状の強化繊維基材であっても良い。ドライの強化繊維基材の場合には、当該基材の表面に熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂材料が塗布されていることが、賦形加熱工程の後に、強化繊維基材の形状が固定される点で好ましい。
樹脂製シート材は、材質を樹脂にすることで、賦形時には変形しやすく金型の形状に沿わせることができ、さらに加熱によって軟化する特性を利用して、複雑な金型の形状に沿わせて、その後、冷却すればそのまま形状を固定することが出来る。また、最終製品に要求される表面粗さと同等以上の平滑性を有する樹脂製シート材を用いることにより、シート材の表面が成形品に転写し、所望の表面性状に優れる繊維強化プラスチックを得ることが出来る。本発明における表面粗さとは、JIS0601−1976規格で定義された表面凹凸のサイズのことを言う。また、同等以上の平滑性とは、最終製品と同じか、より平滑であること、すなわち、表面粗さRa、Rmaxの値としては、同じか、より小さい値を示す。
樹脂製シート材の材質は、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であっても良い。具体的には、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂などを使用しても良い。当該シート材の厚みは、表面平滑性を維持するために0.1mm以上あることがのぞましく、賦形時に形状に沿いやすくするためには1mm以下であることが好ましい。
除去工程(d)において、容易に樹脂製シート材を剥離するために、樹脂製シート材に液状の離型剤を塗布しておいても良いし、樹脂製シート材と強化繊維基材の間に、ピールプライと呼ばれる剥離用の織布を配置しても良い。離型剤としては、例えばシリコン系の剥離成分が付与された液状の有機溶剤を使用することができ、また、ピールプライとしては例えばナイロン製やポリエステル製のタフタなどを使用することが出来る。
(b)賦型・加熱工程
その後、前記成形材を金型に押圧して沿わせて賦形し、加熱して、所望の形状に成形する。
図6は本発明の繊維強化プラスチックの製造方法における賦形・加熱工程の実施形態の例を示す概略断面図である。金型に沿わせる方法については特に限定しないが、図6(a)に示すとおり加圧ローラー61で成形材31を金型1に押圧しながら、加圧ローラーを金型の上面部65から立ち面部66の方向62に移動させつつ、成形材を金型に沿わせて賦形しても良いし、図6(b)に示す通り成形材31をプレス金型63のプレス荷重64で金型1に押圧して賦形しても良い。プレスを用いる場合は、シワ防止の観点から、コーナー部と平板部分が分割されており、上面部65、コーナー部、立ち面部66の順に押圧されることが好ましい。また、図2(b)に示すように、バッグ材で成形材を覆って、バッグ材内部を真空吸引することにより強化繊維基材を下型に押し付けながら沿わせて賦形し、成形材を加熱することも出来る。前記バッグ材は、金型の形状に沿うことができ、不浸透性のシートであれば特に限定されないが、樹脂製のフィルムまたはゴム状シートなどを用いることができる。前記樹脂製のフィルムとしては、例えば厚みが0.1mm未満のナイロンフィルムや、シリコンゴムシートなどを使用することが出来る。バッグ材を用いて金型に沿わせて賦形する点では、凸型形状をした金型に特に好適である。
図1の通り、金型1が凸型である場合には、従来技術の如く、予め形状付与された押圧板3を使用すると、平面部21が先に押さえられてしまうため、コーナー部の強化繊維基材にシワ22が生じることがあり、このようなシワが発生すると部品の強度低下につながるおそれがあった。一方、本発明においては、図3の通り、成形材は金型の上面から下面に向かって順に押さえられるため、強化繊維基材と樹脂製シート材は同時に凸型の金型に沿ってシワ無く賦形される。本発明により、コーナー部のシワを抑えることが出来るため、部品の強度低下の問題を解決することが出来る。
樹脂製シート材は、例えば図2(b)の通り熱風23などで加熱することにより軟化させて金型の形状に簡単に沿わせることが出来る。加熱のタイミングは、金型の形状の複雑さに対応させて、賦形後に加熱しても良いし、加熱しながら同時に賦形しても良い。また、図6の通り、ローラー61やプレス金型63を用いる場合には、ローラーやプレス金型自体を加熱することにより、賦形と加熱を同時に実施することが出来る。加熱しながら同時に賦形させる場合には、樹脂製シート材を軟化させた状態で簡単に金型の形状に沿わせることが出来る。本工程の後に、樹脂製シート材を冷却し硬くすれば、樹脂製シート材を所望の形状に沿ったまま形状固定することが出来る。
前述の通り、本発明の一つの特徴は、樹脂製シート材を用いて加熱により複雑形状に沿わせることである。例えば、金属性のシート材を用いた場合は、材料が硬く伸びにくいため、複雑形状に沿い難い問題がある。さらに、シート材の変形が弾性域ではバッグ材内部の真空度が低くなると形状がシート状に戻ってしまう問題があり、一方、塑性域まで変形させるためには、相当の荷重が必要であり本発明の如く簡易な設備で実現できるものでは無い。本発明は樹脂製シートの軟らかさ(しなやかさ)を利用することにより、シート材の表面性を維持した上で複雑形状に沿わせ、さらに加熱して軟化させることにより完全に金型形状にフィットさせることを可能にしたものである。
ここで、樹脂製シート材を構成する樹脂材料のガラス転移温度(Tg)をT1とした時、賦形・加熱工程(b)における加熱温度は、(T1−20)℃以上であることが好ましく、T1以上であることがさらに好ましい。加熱温度を(T1−20)℃以上のガラス転移温度(Tg)近傍とすることにより、樹脂製シート材は弾性域から外れるため、金型の形状に沿い易く、かつ、冷却すれば所定の形状に固定することが出来る。また、融点を超えなければ、シート状態は維持されるため、シート表面の平滑状態は保持され、繊維強化プラスチックの表面平滑性を保持することが出来る。ガラス転移温度(Tg)は、例えばDSC法、DMA法により測定することが出来る。
なお、金型の形状が3次元的に変化するような特に複雑な形状の場合には、樹脂製シート材には適宜切れ目を入れて、シワを防止しても良い。
(c)硬化工程
強化繊維基材が、予め樹脂が含浸されたプリプレグの場合には、賦形加熱工程の後に加熱加圧が可能なオートクレーブ内で、強化繊維基材に含浸されたマトリックス樹脂を加熱硬化する。
図4は、本発明を他のVaRTM法に適用した場合における繊維強化プラスチックの製造方法を示す概略断面図である。また、図5は、本発明に用いる樹脂製シート材を示す概略図である。
また、図4の通り、本発明はマトリックス樹脂の加熱硬化の前に、ドライの強化繊維基材にマトリックス樹脂11を注入・含浸させるVaRTM法にも好適である。ドライの強化繊維基材としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維などを強化繊維とした織物や編物などを用いることが出来る。VaRTM法は表面方向に素早く樹脂を拡散させるために樹脂拡散媒体10を用いることが好ましい。樹脂拡散媒体10は、樹脂の流路となる空隙を有するシートであれば特に限定はしないが、メッシュ材や繊維織物などを用いることが出来る。しかし、樹脂拡散媒体と用いると、その模様が成形品の表面に転写し、製品表面の意匠性を低下させる問題があった。その問題を解決するために、成形材が強化繊維基材、樹脂製シート材、樹脂拡散媒体の順に配置されていることが好ましい。
また、図5の通り、樹脂製シート材には複数個の貫通孔12が穿孔されていることが好ましい。シート材に複数個の貫通孔を穿孔しておくことにより、樹脂拡散媒体に拡散した樹脂が貫通孔を通して、強化繊維基材に浸透させることが出来る。また、貫通孔を例えば3mm以下の小径にすれば、成形品の表面平滑性を維持することが出来る。
なお、樹脂の硬化温度は、使用するマトリックス樹脂の種類に応じて適宜設定すれば良いが、シート材を構成する樹脂材料の融点以下で設定することが好ましい。
前記賦形・加熱工程の後に、成形材を冷却して、別の金型に移動させてから、強化繊維基材に含浸されたマトリックス樹脂を加熱硬化しても良い。成形材を冷却すれば、樹脂製シート材は硬くなるため、所望の形状に沿ったまま形状固定され、移動することが可能となる。その場合、樹脂製シート材のみ分離させて、持ち運ぶことも可能となる。
(d)除去工程
最後にマトリックス樹脂が硬化した成形材から樹脂製シートを除去することにより、表面平滑性に優れる繊維強化プラスチックを得ることが出来る。除去した樹脂製シートは再利用しても良い。
得られた繊維強化プラスチックは、複雑な金型形状に沿った所望の形状であり、かつ、樹脂製シート材の平滑な表面が転写した表面平滑性に優れるものである。また、樹脂製シート材が金型形状にしっかりと沿っているため、コーナー部分の断面には強化繊維のしわなどの不具合が無く、強度低下の無い品質が良好な製品を得る事ができる。
前述の通り、本発明に係る繊維強化プラスチックの製造方法によれば、所望の形状の押圧板を準備することなく、樹脂製シート材を配置し、加熱するだけの簡易な方法で、品位に優れた繊維強化プラスチックを得ることが出来る。
図2に示すとおり、半径5mmの1/4円弧断面を有したスチール製の金型1の上に、製品のサイズに合わせて裁断された強化繊維基材2と樹脂製シート4からなる成形材31を配置した。強化繊維基材2は、東レ株式会社製炭素繊維T800S(PAN系炭素繊維、24,000フィラメント)の一方向織物(目付190g/m)に熱可塑性樹脂を分散付与した一方向性炭素繊維織物(東レ株式会社製、品名CZ8433DP)を24枚積み重ねて製作した。また、樹脂製シート材として、東レ株式会社製ポリエステルフィルム「ルミラー(登録商標)」350S10(表面粗さ25S以下)を用いた。なお、樹脂製シート材には、マトリックス樹脂通過用の、孔径0.5mm/孔ピッチ5mmの貫通孔を穿孔した。
成形材の上に、2mm厚のシリコン製ラバーシートからなるバッグ材5を被せて真空吸引し、成形材を金型1の形状に押さえつけながら沿わせて賦形した。その後、オーブンの中に入れて、熱風23により、80℃で1時間加熱し、室温まで冷却した。冷却後、ラバーシートを除去した結果、強化繊維基材と樹脂製シート材は、金型の形状に追従し賦形されていることを確認した。
次に、図4の通り、樹脂製シート材4の上に、東京ネトロン製TSX−400Pからなる樹脂拡散媒体10を配置し、マトリックス樹脂11と連通させて、RICHMOND社製HS−800からなるバッグ材で覆って、真空ポンプ7により、バッグ材内部を0.1kPaまで減圧した。真空吸引力により、東レ株式会社製エポキシ樹脂TR−A37からなるマトリックス樹脂11を樹脂拡散媒体10で表面方向に拡散させて、強化繊維基材内部に浸透させた。強化繊維基材全体にマトリックス樹脂が浸透した後、金型を120℃に加熱して5時間保持して、マトリックス樹脂を硬化させた。
その後、図2(d)の通り、樹脂拡散媒体(図示省略)とともに樹脂シート材を除去して、繊維強化プラスチック材9を得た。
繊維強化プラスチックの品質を確認した結果、金型側面・バッグ側面ともに金型に沿った所望の寸法に仕上がっており、かつ、バッグ側面の表面粗さは25S以下と良好な状態であった。また、繊維強化プラスチックを切断して断面観察した結果、内部の強化繊維に顕著なシワが無いことが確認出来た。以上の如く、本発明により、良好な品質の強化繊維プラスチックを得ることが出来た。
本発明は、あらゆる強化繊維プラスチックの製造方法に適用することができ、とくに、表面平滑性を要求される複雑な形状の部材の製造に好適であり、例えば、車両、船舶、航空機、建築部材などの産業用途、あるいはスポーツ用途など、種々の分野に用いられる広範囲な繊維強化プラスチックの製造方法に適用が可能である。
1:金型
2:強化繊維基材
3:押圧板
4:樹脂製シート
5:バッグ材
6:シーリング
7:真空ポンプ
8:コーナー部
9:繊維強化プラスチック材
10:樹脂拡散媒体
11:マトリックス樹脂
12:貫通孔
21:平面部
22:シワ
23:熱風
31:成形材
61:加圧ローラー
62:ローラーの移動方向
63:プレス金型
64:プレス荷重
65:上面部
66:立ち面部

Claims (4)

  1. 以下の(a)〜(d)の工程を含むことを特徴とする繊維強化プラスチックの製造方法。
    (a)湾曲または屈曲形状を有する金型の上に、少なくとも、ドライの強化繊維基材、最終製品に要求される表面粗さと同等以上の平滑性を有し、3mm以下の複数個の貫通孔が穿孔された樹脂製シート材、樹脂拡散媒体の順に配置されたものを含む成形材を配置する配置工程
    (b)前記成形材をバッグ材で覆い、前記樹脂製シート材を構成する樹脂材料のガラス転移温度(Tg)がT1であり、(T1−20)℃以上前記樹脂材料の融点を超えない加熱温度として、前記バッグ材内部を真空吸引することにより、前記バッグ材で前記成形材を金型に押圧して沿わせて賦形および加熱する賦形・加熱工程
    (c)ドライの強化繊維基材にマトリックス樹脂を注入・含浸さ後、マトリックス樹脂を加熱硬化する硬化工程
    (d)樹脂製シート材を繊維強化プラスチック材から除去する除去工程
  2. 前記硬化工程(c)において、ドライの強化繊維基材を含む成形材をバッグ材で覆い、バッグ材内部を真空吸引することにより、差圧でマトリックス樹脂を注入することを特徴とする請求項に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  3. 前記樹脂製シート材の厚みが0.1mm以上、1mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  4. 前記強化繊維基材の表面に、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂材料が塗布されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに繊維強化プラスチックの製造方法。
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