JP2007116983A - 組換えアプロチニンの生産方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニン産生酵母及びその調製方法を提供する。
【解決手段】 PRB1プロモーターの下流にプレα−接合因子シグナル配列、アプロチニン構造遺伝子及びADH1ターミネーターを連結させた核酸断片からなる、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニンを産生させるための発現カセット、該発現カセットが組み込まれた組換えアプロチニン産生酵母及び該酵母を用いた組換えアプロチニンの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 PRB1プロモーターの下流にプレα−接合因子シグナル配列、アプロチニン構造遺伝子及びADH1ターミネーターを連結させた核酸断片からなる、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニンを産生させるための発現カセット、該発現カセットが組み込まれた組換えアプロチニン産生酵母及び該酵母を用いた組換えアプロチニンの製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニン産生酵母及びその調製方法に関する。詳細には、PRB1プロモーターの下流にプレα−接合因子シグナル配列、アプロチニン構造遺伝子及びADH1ターミネーターを連結させた発現カセットを有する発現プラスミドにより形質転換された、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニン産生酵母に関する。また、本発明は、該組換えアプロチニン産生酵母を用いた組換えアプロチニンの製造方法に関する。
アプロチニンは、“ウシ膵臓トリプシン・インヒビター”(BPTI)とも呼ばれ、Kunitz型インヒビターの系統に属する。阻害されるセリンプロテアーゼには、トリプシン、カリクレイン、プラスミン、キモトリプシンなどがある(例えば、非特許文献1参照)。
アプロチニンは、58個のアミノ酸からなる分子量6512ダルトンの1本鎖ポリペプチドである。そのタンパク質の立体構造は、X線構造解析およびNMR分光法を用いて明らかにされた(例えば、非特許文献2参照)。
ウシ肺から抽出、精製された天然型のアプロチニンは、生体組織接着剤の構成成分の一部として使用されている(商品名ボルヒール)。アプロチニンには、生成したフィブリン塊を線溶系酵素から防御する作用があるため、心臓血管外科等の手術の際の血液/体液等の漏出を防ぐ「組織の接着・閉鎖」を目的とした生体組織接着剤の成分として広く使用されてきた。しかしながら、血液由来の製品は、ウイルスやプリオン等の混在を完全には否定することが非常に難しく、これに代わる製品の開発が望まれる。
斯かる対策の一つとして遺伝子組換え技術による組換えアプロチニンの生産が試みられている。これまでに、大腸菌や酵母を用いて組換えアプロチニンの発現が検討されてきた。酵母発現系においては、例えば、α−接合因子のような分泌性酵母タンパク質のシグナル配列を、天然型アプロチニンのN末端部に連結した報告がある。この場合、プレプロα−接合因子シグナル配列/アプロチニン融合タンパク質のプロセッシングには、酵母小胞体に存在するシグナルペプチダーゼによる「プレα−接合因子シグナル配列」の切断、及び、“Lys−Arg”配列を特異的に認識するKexIIエンドペプチダーゼによる「プロα−接合因子シグナル配列」の切断の2種類の異なるタンパク質分解酵素が必要とされ、最終的に、遊離したアプロチニンが分泌すると考えられている(例えば、非特許文献3参照)。
しかし、組換えアプロチニンの場合においては、天然型アプロチニンのN末端配列が“Arg−Pro−Asp”であるために、KexIIエンドペプチダーゼは均質及び正確に切断することができず、分泌されるタンパク質は、天然型アプロチニンのN末端に「プロα−接合因子シグナル配列」由来のアミノ酸残基が付加したアプロチニン類似体となる(例えば、非特許文献4参照)。
一方、KexIIエンドペプチダーゼの認識切断に関与するプロ配列を除き、「プレα−接合因子シグナル配列」を直接、天然型アプロチニンのN末端に連結させた場合では、プレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン融合タンパク質のシグナルペプチダーゼによる均一及び正確なプロセッシングにより、天然型と同じN末端配列をもつアプロチニンが分泌発現する(例えば、非特許文献5参照)。
一方、KexIIエンドペプチダーゼの認識切断に関与するプロ配列を除き、「プレα−接合因子シグナル配列」を直接、天然型アプロチニンのN末端に連結させた場合では、プレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン融合タンパク質のシグナルペプチダーゼによる均一及び正確なプロセッシングにより、天然型と同じN末端配列をもつアプロチニンが分泌発現する(例えば、非特許文献5参照)。
従来の技術では、酵母(Pichia Pastris)を用いたプレプロα−接合因子シグナル配列/アプロチニン融合タンパク質の発現系における不均一なアプロチニン類似体の発現量は930mg/Lであったのに対し(例えば、非特許文献6参照)、酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いたプレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン融合タンパク質の発現系における天然型と同じN末端配列をもつアプロチニンの発現量は約10mg/Lであった(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、医薬品となりうる組換え品の生産にあたっては、いかなるN末端修飾アプロチニンも、免疫応答を引き起こす可能性があるために望ましくなく、天然型と同じN末端配列をもつ組換えアプロチニンを、より大量に生産する必要がある。
しかしながら、医薬品となりうる組換え品の生産にあたっては、いかなるN末端修飾アプロチニンも、免疫応答を引き起こす可能性があるために望ましくなく、天然型と同じN末端配列をもつ組換えアプロチニンを、より大量に生産する必要がある。
上述したように、これまで、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニンを大量に生産できる系は確立されていない。したがって、本発明の目的は、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニンを、商業生産レベルで製造する方法を提供することにある。
本発明者等は、「天然のN末端配列をもつ組み換えアプロチニンおよび組み換えアプロチニン変異体の調製方法」(特開平8-163988)に開示のプレα−接合因子のシグナル配列(以下、「αFL Pre」又は「alphaFL Pre」と称することもある)の下流にアプロチニン構造遺伝子を結合し、これをPRB1プロモーターとADH1ターミネーターの間に挿入した発現カセットを有する発現ベクターで酵母(Saccharomyces cerevisiae)を形質転換し、得られた天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニン産生酵母を培養したところ、当該組換えアプロチニンの発現量は、従来の発現量(約10mg/L)(特開平8-163988)をはるかに上回る約350mg/Lに達することを見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明は、以下に示す、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニンを産生させるための発現カセット、該発現カセットが組み込まれた組換えアプロチニン産生酵母及びその調製方法、並びに該組換えアプロチニン産生酵母を用いた組換えアプロチニンの製造方法を提供するものである。
1.天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニンを酵母で産生させるための発現カセットであって、プロモーターの下流にプレα−接合因子シグナル配列、アプロチニン構造遺伝子及びターミネーターを連結させた核酸断片からなる、前記発現カセット。
2.プロモーターが、PRB1、NCE102、GAPDH、PGK1、MFα1、TEF1、ADH1、GAL1、GAL4、GAL10及びCUP1からなる遺伝子群のプロモーター及びターミネーターより選択されることを特徴とする、上記1の発現カセット。
3.プロモーターがPRB1遺伝子、ターミネーターがADH1遺伝子由来である、上記1の発現カセット。
4.プレα−接合因子シグナル配列とアプロチニン構造遺伝子の塩基配列が、酵母のCodon-Usageである、上記1ないし3の何れかの発現カセット。
5.プレα−接合因子シグナル配列とアプロチニン構造遺伝子の塩基配列が、配列番号3である、上記4の発現カセット。
6.上記1ないし5の何れかの発現カセットを有する発現プラスミド。
7.上記6の発現プラスミドで酵母細胞を形質転換することを特徴とする、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニン産生酵母の調製方法。
8.酵母が、Saccharomyces cerevisiaeである、上記7の調製方法。
9.上記1ないし5の何れかの発現カセットが組み込まれた、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニン産生酵母。
10.酵母が、Saccharomyces cerevisiaeである、上記9の組換えアプロチニン産生酵母。
11.上記9又は10の何れかの組換えアプロチニン産生酵母を用いることを特徴とする、組換えアプロチニンの製造方法。
したがって、本発明は、以下に示す、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニンを産生させるための発現カセット、該発現カセットが組み込まれた組換えアプロチニン産生酵母及びその調製方法、並びに該組換えアプロチニン産生酵母を用いた組換えアプロチニンの製造方法を提供するものである。
1.天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニンを酵母で産生させるための発現カセットであって、プロモーターの下流にプレα−接合因子シグナル配列、アプロチニン構造遺伝子及びターミネーターを連結させた核酸断片からなる、前記発現カセット。
2.プロモーターが、PRB1、NCE102、GAPDH、PGK1、MFα1、TEF1、ADH1、GAL1、GAL4、GAL10及びCUP1からなる遺伝子群のプロモーター及びターミネーターより選択されることを特徴とする、上記1の発現カセット。
3.プロモーターがPRB1遺伝子、ターミネーターがADH1遺伝子由来である、上記1の発現カセット。
4.プレα−接合因子シグナル配列とアプロチニン構造遺伝子の塩基配列が、酵母のCodon-Usageである、上記1ないし3の何れかの発現カセット。
5.プレα−接合因子シグナル配列とアプロチニン構造遺伝子の塩基配列が、配列番号3である、上記4の発現カセット。
6.上記1ないし5の何れかの発現カセットを有する発現プラスミド。
7.上記6の発現プラスミドで酵母細胞を形質転換することを特徴とする、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニン産生酵母の調製方法。
8.酵母が、Saccharomyces cerevisiaeである、上記7の調製方法。
9.上記1ないし5の何れかの発現カセットが組み込まれた、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニン産生酵母。
10.酵母が、Saccharomyces cerevisiaeである、上記9の組換えアプロチニン産生酵母。
11.上記9又は10の何れかの組換えアプロチニン産生酵母を用いることを特徴とする、組換えアプロチニンの製造方法。
本発明に従えば、医薬品として好ましい天然型と同じ性状をもつ組換えアプロチニンを生産する酵母細胞及び当該細胞を用いた組換えアプロチニンの製造方法が提供される。本発明の組換えアプロチニン産生酵母細胞は、組換えアプロチニンを大量に生産するため、商業生産レベルで低コストの製造を実現できる。
本発明は、PRB1遺伝子のプロモーターの下流にプレα−接合因子シグナル配列、アプロチニン構造遺伝子及びADH1遺伝子のターミネーターを連結させた核酸断片からなる発現カセット、該発現カセットが挿入された発現プラスミドにより形質転換された天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニン産生酵母によって特徴付けられる。
本発明の発現カセット又は発現プラスミドの構築には、Roche Diagnostics社、New England Biolabs社及びTAKARA BIO社から購入された酵素(制限酵素、子牛腸アルカリフォスファターゼ、T4 DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ及びPyrobest DNAポリメラーゼ)が用いられる。反応溶液の調製、反応条件は、各製品使用マニュアルに記載の方法に従えば良い。
DNA断片の増幅には、Sigma Genosys社から購入したオリゴヌクレオチド及びPyrobest DNAポリメラーゼ、Applied Biosystems社のGeneAmp PCR System 9700が使用される。DNA断片末端の平滑化には、T4 DNAポリメラーゼ、また、DNA断片5'末端の脱リン酸化には子牛腸アルカリフォスファターゼが使用される。アガロースゲルからDNA断片を抽出及び精製する際には、Gene Clean Kit(Q BIO GENE社)が使用される。二本鎖DNA形質転換には、主にTAKARA社のコンピテントセルDH5αが用いられる。大腸菌からのプラスミドDNAの単離にはQIAGEN社のMiniPrep Kit又はMaxiPrep Kitが使用される。
酵母で異種タンパク質を発現させるときに使用されるプロモーターとしては、PRB1、NCE102、GAPDH、PGK1、MFα1、TEF1及びADH1などの恒常的な転写能力をもつ遺伝子と、GAL1、GAL4、GAL10及びCUP1などの誘導系による転写能力をもつ遺伝子に由来するプロモーターを挙げることができる。誘導系による転写能力を持つプロモーターを使用する場合は、例えば、プロモーターが化学物質により誘導される場合、その化学物質の使用による安全性及び製造コストが問題となることがある。したがって、医薬品の製造には、恒常的な転写能力を持つプロモーターを使用するのが好ましい。更に、好ましくは、PRB1遺伝子由来のプロモーター(以下、単に「PRB1プロモーター」又は「PRB1p」と称することもある)である。
DNA断片の増幅には、Sigma Genosys社から購入したオリゴヌクレオチド及びPyrobest DNAポリメラーゼ、Applied Biosystems社のGeneAmp PCR System 9700が使用される。DNA断片末端の平滑化には、T4 DNAポリメラーゼ、また、DNA断片5'末端の脱リン酸化には子牛腸アルカリフォスファターゼが使用される。アガロースゲルからDNA断片を抽出及び精製する際には、Gene Clean Kit(Q BIO GENE社)が使用される。二本鎖DNA形質転換には、主にTAKARA社のコンピテントセルDH5αが用いられる。大腸菌からのプラスミドDNAの単離にはQIAGEN社のMiniPrep Kit又はMaxiPrep Kitが使用される。
酵母で異種タンパク質を発現させるときに使用されるプロモーターとしては、PRB1、NCE102、GAPDH、PGK1、MFα1、TEF1及びADH1などの恒常的な転写能力をもつ遺伝子と、GAL1、GAL4、GAL10及びCUP1などの誘導系による転写能力をもつ遺伝子に由来するプロモーターを挙げることができる。誘導系による転写能力を持つプロモーターを使用する場合は、例えば、プロモーターが化学物質により誘導される場合、その化学物質の使用による安全性及び製造コストが問題となることがある。したがって、医薬品の製造には、恒常的な転写能力を持つプロモーターを使用するのが好ましい。更に、好ましくは、PRB1遺伝子由来のプロモーター(以下、単に「PRB1プロモーター」又は「PRB1p」と称することもある)である。
PRB1プロモーターは、PCRにより酵母ゲノムからクローニングすることができる。PCRは、酵母Saccharomyces cerevisiae S288Cより抽出したゲノムDNAを鋳型とし、PRB1プロモーターの上流にアニールするプライマーとしてFG029(配列番号1)、PRB1プロモーターの下流にアニールするプライマーとしてFG030(配列番号2)を用いて行なわれる。FG029及びFG030には、それぞれ制限酵素NotI切断配列及びPstI切断配列が配置される。
プレα−接合因子シグナル配列及びその下流に結合されたアプロチニン構造遺伝子は、組換えタンパク質の発現量向上のために、アミノ酸配列を変更することなしに、宿主で良く利用される塩基配列に変換されることがある。しかしながら、何れの塩基配列をどの程度変換すれば高発現が得られるかという一定の法則は見出されていない。本発明では、プレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子の全塩基配列を、酵母のCodon-Usageに変換した塩基配列、好ましくは、Saccharomyces cerevisiaeの塩基配列が使用される(配列番号3)。
天然型と同じN末端配列をもつ組換えアプロチニンを分泌発現させるためのシグナル配列として、プレα−接合因子シグナル配列及びインベルターゼ(SUC2)等のシグナル配列が使用可能であり、アプロチニン構造遺伝子に直接結合される。これらの構築物のプロセッシングは、シグナルペプチダーゼのみを使用し、KexIIエンドペプチダーゼによるプロセッシングを必要としない。用いるシグナル配列によって、目的タンパク質の発現量に差が生じることもあり、プレα−接合因子シグナル配列使用時の10mLフラスコ培養における組換えアプロチニン発現量は、トリプシン阻害活性における換算で、約30mg/Lであったのに対し、SUC2シグナル配列使用時の発現量は約3mg/Lであった。したがって、天然型と同じN末端配列をもつ組換えアプロチニンを、医薬品として商業的に大量生産するためには、プレα−接合因子のシグナル配列を使用するのが好ましい。プレα−接合因子のシグナル配列領域は、一本鎖オリゴヌクレオチドAP023(配列番号4)及びAP038(配列番号5)を直接アニール及び伸張させるPCRにより合成される。AP023には、プレα−接合因子シグナル配列をPRB1プロモーターの下流に連結させるために制限酵素PstI切断配列が付加される。また、AP038は、プレα−接合因子シグナル配列の下流領域が平滑末端となるように設計される。
アプロチニン構造遺伝子は、一本鎖オリゴヌクレオチドAP018(配列番号6)、AP019(配列番号7)、AP020(配列番号8)及びAP021(配列番号9)を用いたPCRにより合成することができる。すなわち、AP018/AP019、AP019/AP020、AP020/AP021のそれぞれが直接アニールすることで、結果的に、PCRによってアプロチニンをコードする2本鎖DNAとなる。上流は平滑末端となるように、下流は制限酵素HindIII切断配列を含むように設計される。また、AP019の5'末端には、PCR産物の上流側の平滑末端でのライゲーションが可能となるように、リン酸化したオリゴヌクレオチドが使用される。
プレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子は、以下のようにして調製される。まず、上記のプレα−接合因子シグナル配列とアプロチニン構造遺伝子を平滑末端でライゲーションし、そのライゲーション産物を鋳型として、AP021及びAP022(配列番号10)を用いたPCRが行なわれる。AP022には、制限酵素PstI切断配列が付加される。
プレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子は、以下のようにして調製される。まず、上記のプレα−接合因子シグナル配列とアプロチニン構造遺伝子を平滑末端でライゲーションし、そのライゲーション産物を鋳型として、AP021及びAP022(配列番号10)を用いたPCRが行なわれる。AP022には、制限酵素PstI切断配列が付加される。
酵母で異種タンパク質を発現させるときに使用されるターミネーターとしては、プロモーターに使用される遺伝子、すなわち、PRB1、NCE102、GAPDH、PGK1、MFα1、TEF1、ADH1、GAL1、GAL4、GAL10及びCUP1などの遺伝子由来のターミネーターが用いられる。本発明では、例えば、ADH1遺伝子由来のターミネーター(以下、単に「ADH1ターミネーター」又は「ADH1t」と称することもある)が構成ターミネーターとして用いられる。酵母Saccharomyces cerevisiaeに由来するADH1ターミネーターは、PRB1プロモーターと同様に、PCRにより酵母ゲノムからクローニングすることができる。PCRは、酵母Saccharomyces cerevisiae S288Cより抽出したゲノムDNAを鋳型とし、プライマーにはFG016(配列番号11)およびFG017(配列番号12)が用いられる。ADH1ターミネーターの上流にアニールするFG016には、HindIII切断配列、一方、ADH1ターミネーターの下流にアニールするFG017には、NotI切断配列が配置される。
PRB1プロモーター、プレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子及びADH1ターミネーターを順に連結した発現カセット(1.40kbp)が組み込まれたプラスミドは以下のようにして調製することができる。すなわち、プラスミドpBluescript II SK(+)(STRATAGENE社)をKpnI及びSacI消化した後、ここにDNAリンカーHA003(配列番号13)/HA004(配列番号14)を挿入し、リンカー中央にNotI切断配列を付加したプラスミドpKHA001を構築する。このとき、両端のKpnIサイト及びSacIサイトの糊しろ部分はライゲーション後に欠失するように設計される。得られたプラスミドのNotIに、PRB1プロモーターの下流側PstIサイト、プレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子の上流側PstIサイト及び下流側HindIIIサイト、ADH1ターミネーターの上流側HindIIIサイトの3つの断片を各制限酵素サイトで連結した組換えアプロチニン発現カセットを挿入することで、組換えアプロチニン発現カセットが組み込まれたプラスミドpKAP027が得られる。斯かる発現カセットの塩基配列は、Beckman Coulter社のCEQ2000XLを用いたDye Terminator法により決定される。
次に、発現カセットは、酵母に導入する為のベクターに組み込まれる。酵母で一般的に用いられるベクターは次の2つに大別される。即ち、(i)DNA複製を有しているために、染色体DNAに依存することなく自己を維持することが出来る複製ベクターと(ii)染色体DNAと組換えを起こし、宿主細胞中の組換えDNAとして複製し自己を維持するインテグレイトベクターの2つである。複製ベクターは更に、(a)酵母の同種2μmプラスミドから得られるDNA複製起点を含む2μm由来プラスミドベクター、(b)酵母の染色体DNAから得られる見かけの複製起点を含む自己複製ベクター及び(c)上記のDNA複製起点の1つと更にセントロメアを含むことが知られている酵母染色体DNA配列を有するセントロメアプラスミド(CEN)に分けられる。
上記したベクターで有効に酵母を形質転換するためには、組換えDNAを保持する形質転換体を同定して選択することが必要である。この選択はベクターDNA内に識別可能な表現型を有する遺伝子を導入することによって達成される。実験室で酵母を形質転換するのに使用するベクターの場合には、LEU2、URA3、TRP1などの栄養性機能遺伝子が通常使用され、これらは宿主の栄養要求性における欠損を補填するように作用する。
インテグレートベクターは、閉環状を開裂し、線状DNAとすることで、酵母を高い効率で形質転換し(閉鎖環状の100-1000倍)、開裂部位に対して相同性を有する染色体の配列中に組込まれる。通常、インテグレートは、染色体の一箇所で部位特異的に行われ、導入したインテグレートベクターは、選択を受けずに、遺伝的に高度に安定継承される。ただし、導入されるベクターは相同配列につき1分子であるため、導入される発現カセットも1コピーとなる。高コピー数とするためには、1つのベクター中に、数コピーの発現カセットを挿入することで、染色体に一度に数コピーの発現カセットを導入することも可能であるが、同じ配列が染色体の近傍に位置することは、逆に、遺伝的な不安定要因を招くことになる。
一方、2μmプラスミドの複製系に基づいた酵母ベクターは、2μmプラスミドの複製に必須ではない領域に異種DNA配列を挿入することによって構築される。このようなベクターには基本的に2つのタイプがある。即ち、(i)全2μmベクター及び(ii)2μm複製起点組込みベクターである。前者の場合には、2μmプラスミドの全長を有しており、そこにE.coliプラスミドDNAなどの各種の異種配列が挿入されている。このように挿入されたプラスミドは、Cir+(2μmプラスミド含有)及びCir-(2μmプラスミド欠損)宿主のいずれにおいても、高い遺伝的安定性を有しており高いコピー数で維持される。他方後者の2μm複製起点組込みベクターは、通常、2μmのDNA複製起点と2μmの599塩基対反復配列の単一コピーを有する最少DNA配列を持つのみであって、このようなベクターはCir+宿主株でしか維持できない。何故なら、安定に維持されるためには、これらのベクターは、内因性のプラスミドのREP1及びREP2遺伝子によってコードされるタンパク質をトランス作用タンパク質として用いる必要があるためである。2μmプラスミドは、酵母Saccharomyces cerevisiaeのほとんどの株の核に細胞1個当たり約数十コピー以上存在すると言われ、2μmプラスミドに含まれる4つの遺伝子、即ちREP1、REP2、REP3(STB)及びFLPが、細胞1個当たりのコピー数を高く安定に維持するために必要とされている。
したがって、天然型と同じN末端配列をもつ組換えアプロチニンを商業的に高レベルで産生するために、遺伝子的に改変された酵母を構築する場合には、高コピー数の酵母ベクターを選択することが好ましく、2μmベクターを発現プラスミドとして選択することが可能である。好ましくは、pSAC35(Sleep, D. et al., Bio/Technology, 9, 183-187, 1991およびEP431880号)である。具体的には、pKAP027からのNotI発現カセットが、pSAC35のNotIサイトに挿入される。発現カセットの挿入は、正逆何れの方向でもよい。
このプラスミドベクターは、崩壊ベクターpSAC3(Chinery, S.A. and Hinchliffe, E., Current Genetics, 16, 21-25, 1989)から誘導され、2μmプラスミド、宿主leu2の成熟を補足し、プラスミド存続に必須であるLEU2遺伝子、及び細菌プラスミドpUC9を含んで構成される。宿主酵母に、このプラスミドベクターが導入されると、プラスミドの安定維持に不必要なpUC9由来の約2.73kbpは脱落し、プラスミドは宿主酵母内で安定的に保持される(WO88/08027号)。
上記したベクターで有効に酵母を形質転換するためには、組換えDNAを保持する形質転換体を同定して選択することが必要である。この選択はベクターDNA内に識別可能な表現型を有する遺伝子を導入することによって達成される。実験室で酵母を形質転換するのに使用するベクターの場合には、LEU2、URA3、TRP1などの栄養性機能遺伝子が通常使用され、これらは宿主の栄養要求性における欠損を補填するように作用する。
インテグレートベクターは、閉環状を開裂し、線状DNAとすることで、酵母を高い効率で形質転換し(閉鎖環状の100-1000倍)、開裂部位に対して相同性を有する染色体の配列中に組込まれる。通常、インテグレートは、染色体の一箇所で部位特異的に行われ、導入したインテグレートベクターは、選択を受けずに、遺伝的に高度に安定継承される。ただし、導入されるベクターは相同配列につき1分子であるため、導入される発現カセットも1コピーとなる。高コピー数とするためには、1つのベクター中に、数コピーの発現カセットを挿入することで、染色体に一度に数コピーの発現カセットを導入することも可能であるが、同じ配列が染色体の近傍に位置することは、逆に、遺伝的な不安定要因を招くことになる。
一方、2μmプラスミドの複製系に基づいた酵母ベクターは、2μmプラスミドの複製に必須ではない領域に異種DNA配列を挿入することによって構築される。このようなベクターには基本的に2つのタイプがある。即ち、(i)全2μmベクター及び(ii)2μm複製起点組込みベクターである。前者の場合には、2μmプラスミドの全長を有しており、そこにE.coliプラスミドDNAなどの各種の異種配列が挿入されている。このように挿入されたプラスミドは、Cir+(2μmプラスミド含有)及びCir-(2μmプラスミド欠損)宿主のいずれにおいても、高い遺伝的安定性を有しており高いコピー数で維持される。他方後者の2μm複製起点組込みベクターは、通常、2μmのDNA複製起点と2μmの599塩基対反復配列の単一コピーを有する最少DNA配列を持つのみであって、このようなベクターはCir+宿主株でしか維持できない。何故なら、安定に維持されるためには、これらのベクターは、内因性のプラスミドのREP1及びREP2遺伝子によってコードされるタンパク質をトランス作用タンパク質として用いる必要があるためである。2μmプラスミドは、酵母Saccharomyces cerevisiaeのほとんどの株の核に細胞1個当たり約数十コピー以上存在すると言われ、2μmプラスミドに含まれる4つの遺伝子、即ちREP1、REP2、REP3(STB)及びFLPが、細胞1個当たりのコピー数を高く安定に維持するために必要とされている。
したがって、天然型と同じN末端配列をもつ組換えアプロチニンを商業的に高レベルで産生するために、遺伝子的に改変された酵母を構築する場合には、高コピー数の酵母ベクターを選択することが好ましく、2μmベクターを発現プラスミドとして選択することが可能である。好ましくは、pSAC35(Sleep, D. et al., Bio/Technology, 9, 183-187, 1991およびEP431880号)である。具体的には、pKAP027からのNotI発現カセットが、pSAC35のNotIサイトに挿入される。発現カセットの挿入は、正逆何れの方向でもよい。
このプラスミドベクターは、崩壊ベクターpSAC3(Chinery, S.A. and Hinchliffe, E., Current Genetics, 16, 21-25, 1989)から誘導され、2μmプラスミド、宿主leu2の成熟を補足し、プラスミド存続に必須であるLEU2遺伝子、及び細菌プラスミドpUC9を含んで構成される。宿主酵母に、このプラスミドベクターが導入されると、プラスミドの安定維持に不必要なpUC9由来の約2.73kbpは脱落し、プラスミドは宿主酵母内で安定的に保持される(WO88/08027号)。
このようにして得られた組換えアプロチニン発現プラスミド(pKAP028)で、酵母の形質転換が行なわれる。宿主酵母として、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Pichia pastorisなどの株を使用できるが、Saccharomyces cerevisiae AH22由来leu2欠損株〔Cir-〕が好ましい。酵母細胞の増殖には、通常用いられる培地、例えば、YEPD液体培地(1%(w/v)酵母エキス;2%(w/v)ペプトン;2%(w/v)グルコース)が使用される。
酵母への遺伝子導入方法として、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法などの方法が挙げられるが何れの方法を用いても良い。本発明では、エレクトロポレーション法(Hinnen, A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75(4), 1929-1933, 1978)が用いられる。酵母の培養に用いる培地としては、培養目的や培養段階に応じて適宜選択すれば良い。実際には、それぞれの培地のプロトコールに従って、アミノ酸、ビタミン、糖、アルコール、酵母抽出物、抗生物質、pH調整用緩衝液などを添加したものが使用される。培地のpHは5〜8、培養温度は25℃〜30℃の範囲が設定される。培地の量、添加物及び培養時間は、培養スケールに合わせて適宜調節される。組換えアプロチニン産生酵母のクローニングは、組換えアプロチニン発現プラスミド導入の結果、栄養要求性マーカーが非要求性に形質転換し、最小寒天培地上で生育したシングルコロニーを複数ピックアップし、炭素源としてグルコースを加えた最小寒天培地及びメタノールを炭素源として加えた最小寒天培地に植え継ぎ、前者の培地では通常速度で生育するが後者では生育速度が極度に低下するクローンをスクリーニングする。こうして、組換えアプロチニンの安定発現細胞が樹立される。
具体的には、AH22由来leu2欠損株を、YEPD液体培地(1%(w/v)酵母エキス;2%(w/v)ペプトン;2%(w/v)グルコース)200mL中で、30℃にて一晩振とう培養した後、その培養液50mLから回収した酵母細胞を、2mLの蒸留水に再懸濁し、氷上で冷却する。この冷却細胞液(100μL)に、プラスミドDNA(1μg)、40%(w/v)ポリエチレングリコール4000溶液(50μL)を混和し、エレクトロポレーションにて、宿主酵母細胞を形質転換する方法が取られる。形質転換した酵母細胞は、ロイシン選択マーカーを指標とする方法で選択される。例えば、BMMD最小寒天培地(0.15%(w/v)アミノ酸・硫酸アンモニウム不含酵母ニトロゲンベース;0.5%(w/v)硫酸アンモニウム;36mMクエン酸;126mMリン酸水素二ナトリウム;2%(w/v)グルコース;1%(w/v)バクトアガー)上で増殖してくる細胞が選択される。BMMD最小寒天培地上に増大した形質転換体のシングルクローンを、200mLのBMMD最小液体培地(0.15%(w/v)アミノ酸・硫酸アンモニウム不含酵母ニトロゲンベース;0.5%(w/v)硫酸アンモニウム;36mMクエン酸;126mMリン酸水素二ナトリウム;2%(w/v)グルコース)中で培養し、細胞乾燥重量(CDW)が1.6(±0.1)mg/mLに達した時点で、最終濃度20%(w/v)トレハロースになるように2mLずつバイアルに分注し、セルバンクが作製される。このセルバンク細胞は、大量生産に使用されるまでの間、-70℃以下で凍結保存される。
酵母への遺伝子導入方法として、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法などの方法が挙げられるが何れの方法を用いても良い。本発明では、エレクトロポレーション法(Hinnen, A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75(4), 1929-1933, 1978)が用いられる。酵母の培養に用いる培地としては、培養目的や培養段階に応じて適宜選択すれば良い。実際には、それぞれの培地のプロトコールに従って、アミノ酸、ビタミン、糖、アルコール、酵母抽出物、抗生物質、pH調整用緩衝液などを添加したものが使用される。培地のpHは5〜8、培養温度は25℃〜30℃の範囲が設定される。培地の量、添加物及び培養時間は、培養スケールに合わせて適宜調節される。組換えアプロチニン産生酵母のクローニングは、組換えアプロチニン発現プラスミド導入の結果、栄養要求性マーカーが非要求性に形質転換し、最小寒天培地上で生育したシングルコロニーを複数ピックアップし、炭素源としてグルコースを加えた最小寒天培地及びメタノールを炭素源として加えた最小寒天培地に植え継ぎ、前者の培地では通常速度で生育するが後者では生育速度が極度に低下するクローンをスクリーニングする。こうして、組換えアプロチニンの安定発現細胞が樹立される。
具体的には、AH22由来leu2欠損株を、YEPD液体培地(1%(w/v)酵母エキス;2%(w/v)ペプトン;2%(w/v)グルコース)200mL中で、30℃にて一晩振とう培養した後、その培養液50mLから回収した酵母細胞を、2mLの蒸留水に再懸濁し、氷上で冷却する。この冷却細胞液(100μL)に、プラスミドDNA(1μg)、40%(w/v)ポリエチレングリコール4000溶液(50μL)を混和し、エレクトロポレーションにて、宿主酵母細胞を形質転換する方法が取られる。形質転換した酵母細胞は、ロイシン選択マーカーを指標とする方法で選択される。例えば、BMMD最小寒天培地(0.15%(w/v)アミノ酸・硫酸アンモニウム不含酵母ニトロゲンベース;0.5%(w/v)硫酸アンモニウム;36mMクエン酸;126mMリン酸水素二ナトリウム;2%(w/v)グルコース;1%(w/v)バクトアガー)上で増殖してくる細胞が選択される。BMMD最小寒天培地上に増大した形質転換体のシングルクローンを、200mLのBMMD最小液体培地(0.15%(w/v)アミノ酸・硫酸アンモニウム不含酵母ニトロゲンベース;0.5%(w/v)硫酸アンモニウム;36mMクエン酸;126mMリン酸水素二ナトリウム;2%(w/v)グルコース)中で培養し、細胞乾燥重量(CDW)が1.6(±0.1)mg/mLに達した時点で、最終濃度20%(w/v)トレハロースになるように2mLずつバイアルに分注し、セルバンクが作製される。このセルバンク細胞は、大量生産に使用されるまでの間、-70℃以下で凍結保存される。
組換えアプロチニン産生酵母細胞の大量培養による組換えアプロチニンの大量生産は、種培養後、バッチ培養、フェドバッチ培養又はこの2つの増殖段階を組合わせた方法により行うことができるが、目的に合わせて適宜選択される。好ましくは、何れの場合も高密度培養が行なわれる。該高密度培養は、WO96/37515号公報およびUS5728553号公報に記載されている方法に従えば良い。例えば、種培養の場合、200mL BMMD最小液体培地を入れた1L振とうフラスコに、セルバンク酵母(2mL)を接種し、30℃、撹拌数200rpmで振とう培養する。該種培養は、光学密度600nm換算で細胞乾燥重量(CDW)が1.6g/L以上になるまで行う。この種培養の細胞は、生産培養スケールのバッチ培養又はフェドバッチ培養に供される。
バッチ培養は、以下のとおり行なわれる。培養温度は、30±1℃、最小撹拌速度は、典型的には200〜400rpmに調節される。pHは5.5〜7.0の範囲に調節される。pHの調節には17%(v/v)アンモニア溶液、2M H2SO4が使用される。撹拌時に生じる泡を消す為に消泡剤が添加されることもある(例えば、Breox FMT30を0.125g/Lまで)。溶解酸素分圧(DOT)は、撹拌速度を変えることにより、20〜100% DOTで制御する。
バッチ培養は、以下のとおり行なわれる。培養温度は、30±1℃、最小撹拌速度は、典型的には200〜400rpmに調節される。pHは5.5〜7.0の範囲に調節される。pHの調節には17%(v/v)アンモニア溶液、2M H2SO4が使用される。撹拌時に生じる泡を消す為に消泡剤が添加されることもある(例えば、Breox FMT30を0.125g/Lまで)。溶解酸素分圧(DOT)は、撹拌速度を変えることにより、20〜100% DOTで制御する。
フェドバッチ培養は、以下のとおり行なわれる。培養条件は、バッチ培養と同じ条件を使用すれば良い。すなわち、培養温度30±1℃、pH5.5〜7.0、溶存酸素(DOT)15〜100%、撹拌数200〜1000rpm、培地流加速度9〜150mL/時間、通気量3L/分、及び、呼吸商(RQ)0.95〜1.20(好ましくは、RQ=1.00)で行なわれる。培地添加は、エタノールおよび酢酸の蓄積を最少にして、細胞および産物収率を最大に持っていくように行なわれる。
培養液中の組換えアプロチニンは、以下のようにして精製される。細胞と培養液の分離は、遠心分離により行なわれる。好ましくは、遠心分離後の上清を孔径0.45μmまたは孔径0.22μmのメンブレンフィルターによる濾過が行なわれる。これにより細胞破砕物や蛋白その他の不十分物の微粒子が除去される。更に、濾過液中に溶解した不純物から組換えアプロチニンを分離・精製する際には、一般的に、タンパク質質化学において使用される精製方法、例えば、塩析法、限外濾過法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換クロマト法、ゲル濾過クロマト法、アフィニティークロマト法、疎水クロマト法、ハイドロキシアパタイトクロマト法などの方法が用いられる。以下の精製工程は、周囲温度(20±5℃)で行うことができる。また、本発明では、高密度培養後の全ての精製工程における組換えアプロチニンの含量は、280nmでのUV吸光度を測定することによって追跡される。
本発明では、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化した陽イオン交換カラム(SP-Sepharose XL-FF、100mL;Amersham Bioscience社)に、上記の濾過液を直接供し、同緩衝液で洗浄後、0.4M塩化ナトリウム含有リン酸緩衝液(pH7.0)で吸着した組換えアプロチニンの溶出が行なわれる。280nmで追跡したピーク画分を回収し、分子量50.000カットオフの限外濾過膜(例えば、Amicon Ultra-15 50,000MWCO)に供する。更に、分子量5,000カットオフの限外濾過膜(例えば、Amicon Ultra-15 5,000MWCO)に供し、組換えアプロチニンを濃縮する。この操作で、緩衝液の生理食塩水への置換が行なわれる。更に、孔径0.22μmのメンブレンフィルターに通すことで無菌濾過し、周囲温度(20±5℃)、冷房(10℃以下)、又は、冷凍状態で保存される。
こうして得られる組換えアプロチニン含有溶液の精製度は、一般に、タンパク質の分析に使用される方法、例えば、特異抗体を用いるEIA及びウェスタンブロット、還元・非還元状態におけるSDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、吸光度測定、等電点電気泳動、デンシトメトリーなどの分析にかけることにより測定される。本発明では、SDS-PAGE、ゲル濾過HPLC、質量分析に加えてアプロチニンの生物活性を利用したトリプシン阻害活性の測定が行なわれる。最終工程を経た組換えアプロチニン溶液は、ゲル濾過HPLC及び質量分析の結果、並びにSDS-PAGE後のゲルのクーマシーブリリアントブルー染色を行った結果、何れも目的物以外の他のバンドは確認されず、検出限界以下の純度を有する。エドマン分解法に基づくプロテインシーケンサーを用いて組換えアプロチニンのN末端側10個のアミノ酸配列を分析した結果、ウシ由来アプロチニンと全く同じ配列であった。また、SDS-PAGE、ゲル濾過HPLC、質量分析およびトリプシン阻害活性において、ウシ由来のアプロチニンと全く同じ挙動を示し、本発明の組換えアプロチニンは、天然型のアプロチニンと同等であると言える。
以下、本発明をより詳細に説明するため、実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
以下、本発明をより詳細に説明するため、実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
組換えアプロチニンを発現させるための発現カセットの構築
以下の方法に従って、PRB1プロモーター/プレα−接合因子シグナル配列シグナルペプチド/アプロチニン構造遺伝子/ADH1ターミネーターからなる発現カセットを構築した。
(1)pKHA001の構築
DNAリンカー(HA003/HA004)は、一本鎖オリゴヌクレオチドHA003及びHA004をアニールさせることで調製した。リンカー中央にはNotIサイトをもち、両端にKpnIサイト及びSacIサイトの糊しろをもつが、ライゲーション後、KpnIサイト及びSacIサイトは欠失するように設計した:
HA003: 5'-gcggccgcagct-3'
HA004: 5'-gcggccgcgtac-3'
プラスミドpBluescript II SK(+)(STRATAGENE社)をKpnI及びSacI消化し、大きな断片を抽出した。この断片とDNAリンカー(HA003/HA004)をライゲーションし、プラスミドpKHA001を得た。
以下の方法に従って、PRB1プロモーター/プレα−接合因子シグナル配列シグナルペプチド/アプロチニン構造遺伝子/ADH1ターミネーターからなる発現カセットを構築した。
(1)pKHA001の構築
DNAリンカー(HA003/HA004)は、一本鎖オリゴヌクレオチドHA003及びHA004をアニールさせることで調製した。リンカー中央にはNotIサイトをもち、両端にKpnIサイト及びSacIサイトの糊しろをもつが、ライゲーション後、KpnIサイト及びSacIサイトは欠失するように設計した:
HA003: 5'-gcggccgcagct-3'
HA004: 5'-gcggccgcgtac-3'
プラスミドpBluescript II SK(+)(STRATAGENE社)をKpnI及びSacI消化し、大きな断片を抽出した。この断片とDNAリンカー(HA003/HA004)をライゲーションし、プラスミドpKHA001を得た。
(2)PRB1プロモーターのクローニング
PRB1プロモーターは、酵母Saccharomyces cerevisiae S288Cより抽出したゲノムDNAを鋳型とし、プライマーにはFG029及びFG030を用いたPCRによりクローニングした:
FG029: 5'-aaggaaaaaagcggccgcacgtaatgcggtatcgtgaaagcgaa-3'
FG030: 5'-gtttcctgcagctttgcttgttagaattaggtttagt-3'
FG029は、PRB1プロモーターの上流にアニールするプライマーであり、NotIサイトを配置した。一方、FG030は、PRB1プロモーターの下流にアニールするプライマーであり、PstIサイトを配置した。PCRは94℃で20秒間、52℃で20秒間、72℃で60秒間の3ステップからなるサイクルを30回繰り返し、最後に72℃で1分間保温する条件で行った。このPCRにより、アガロースゲル電気泳動上約0.85kbpの大きさと考えられる位置に確認されるPCR産物を抽出した(PRB1プロモーター)。
PRB1プロモーターは、酵母Saccharomyces cerevisiae S288Cより抽出したゲノムDNAを鋳型とし、プライマーにはFG029及びFG030を用いたPCRによりクローニングした:
FG029: 5'-aaggaaaaaagcggccgcacgtaatgcggtatcgtgaaagcgaa-3'
FG030: 5'-gtttcctgcagctttgcttgttagaattaggtttagt-3'
FG029は、PRB1プロモーターの上流にアニールするプライマーであり、NotIサイトを配置した。一方、FG030は、PRB1プロモーターの下流にアニールするプライマーであり、PstIサイトを配置した。PCRは94℃で20秒間、52℃で20秒間、72℃で60秒間の3ステップからなるサイクルを30回繰り返し、最後に72℃で1分間保温する条件で行った。このPCRにより、アガロースゲル電気泳動上約0.85kbpの大きさと考えられる位置に確認されるPCR産物を抽出した(PRB1プロモーター)。
(3)プレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子の構築
一本鎖オリゴヌクレオチドAP023及びAP038を直接アニール及び伸張させるPCRにより、プレα−接合因子シグナル配列領域を合成した:
AP023: 5'-acaaactgcagatgagattcccatccattttcaccgctgtcttgttcgct-3'
AP038: 5'-agccaaagcggaggaagcagcgaacaagacagcggtgaaaatgg-3'
AP023は、プレα−接合因子シグナル配列をPRB1プロモーターの下流に連結させるためのプライマーであり、AP038は、プレα−接合因子シグナル配列の下流領域を含むプライマーである。PCRにより得られる産物は、Codon-Usageを変更したプレα−接合因子シグナル配列の全塩基配列であり(図1)、上流にはPstIサイトを含み、下流は平滑末端となるように設計した。PCRは95℃で15秒間、55℃で15秒間、72℃で15秒間の3ステップからなるサイクルを5回繰り返す条件で行った。このPCRにより、アガロースゲル電気泳動上約0.07kbpの大きさと考えられる位置に確認されるPCR産物を抽出した(プレα−接合因子シグナル配列)。
一本鎖オリゴヌクレオチドAP023及びAP038を直接アニール及び伸張させるPCRにより、プレα−接合因子シグナル配列領域を合成した:
AP023: 5'-acaaactgcagatgagattcccatccattttcaccgctgtcttgttcgct-3'
AP038: 5'-agccaaagcggaggaagcagcgaacaagacagcggtgaaaatgg-3'
AP023は、プレα−接合因子シグナル配列をPRB1プロモーターの下流に連結させるためのプライマーであり、AP038は、プレα−接合因子シグナル配列の下流領域を含むプライマーである。PCRにより得られる産物は、Codon-Usageを変更したプレα−接合因子シグナル配列の全塩基配列であり(図1)、上流にはPstIサイトを含み、下流は平滑末端となるように設計した。PCRは95℃で15秒間、55℃で15秒間、72℃で15秒間の3ステップからなるサイクルを5回繰り返す条件で行った。このPCRにより、アガロースゲル電気泳動上約0.07kbpの大きさと考えられる位置に確認されるPCR産物を抽出した(プレα−接合因子シグナル配列)。
次に、一本鎖オリゴヌクレオチドAP018、AP019、AP020及びAP021を用いたPCRにより、アプロチニン構造遺伝子を合成した;
AP018: 5'-agaccagacttctgtttggaaccaccatacaccgg-3'
AP019: 5'-agacgaaggtttgacacaaaccagccttagcgttgtagaagtatctaataattctagccttacatggaccggtgtatggtggttccaaac-3'
AP020: 5'-ggtttgtgtcaaaccttcgtctacggtggttgtagagctaagagaaacaacttcaagtccgctgaagactgtatgagaacctgtggtggtgc-3'
AP021: 5'-aagaattaagcttattaagcaccaccacaggttctcat-3'
これらの一本鎖オリゴヌクレオチドは、AP018/AP019、AP019/AP020、AP020/AP021のそれぞれが直接アニールすることで、結果的に、PCRによってアプロチニンをコードする2本鎖DNAとなる。PCRにより得られる産物は、Codon-Usageを変更したアプロチニン構造遺伝子の全塩基配列であり(図1)、上流は平滑末端となり、下流にはHindIIIサイトを含むように設計した。なお、AP019の5'末端はリン酸化したオリゴヌクレオチドを使用するようにしたため、PCR産物の上流側は平滑末端でのライゲーションが可能となる。PCRは95℃で15秒間、60℃で15秒間、72℃で20秒間の3ステップからなるサイクルを25回繰り返す条件で行った。このPCRにより、アガロースゲル電気泳動上約0.19kbpの大きさと考えられる位置に確認されるPCR産物を抽出した(アプロチニン構造遺伝子)。
AP018: 5'-agaccagacttctgtttggaaccaccatacaccgg-3'
AP019: 5'-agacgaaggtttgacacaaaccagccttagcgttgtagaagtatctaataattctagccttacatggaccggtgtatggtggttccaaac-3'
AP020: 5'-ggtttgtgtcaaaccttcgtctacggtggttgtagagctaagagaaacaacttcaagtccgctgaagactgtatgagaacctgtggtggtgc-3'
AP021: 5'-aagaattaagcttattaagcaccaccacaggttctcat-3'
これらの一本鎖オリゴヌクレオチドは、AP018/AP019、AP019/AP020、AP020/AP021のそれぞれが直接アニールすることで、結果的に、PCRによってアプロチニンをコードする2本鎖DNAとなる。PCRにより得られる産物は、Codon-Usageを変更したアプロチニン構造遺伝子の全塩基配列であり(図1)、上流は平滑末端となり、下流にはHindIIIサイトを含むように設計した。なお、AP019の5'末端はリン酸化したオリゴヌクレオチドを使用するようにしたため、PCR産物の上流側は平滑末端でのライゲーションが可能となる。PCRは95℃で15秒間、60℃で15秒間、72℃で20秒間の3ステップからなるサイクルを25回繰り返す条件で行った。このPCRにより、アガロースゲル電気泳動上約0.19kbpの大きさと考えられる位置に確認されるPCR産物を抽出した(アプロチニン構造遺伝子)。
プレα−接合因子シグナル配列の下流にアプロチニン構造遺伝子が結合したプレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子は、プレα−接合因子シグナル配列とアプロチニン構造遺伝子を平滑末端でライゲーションし、そのライゲーション産物を鋳型とし、AP021及びAP022をプライマーとしてPCRを行うことにより構築した。
AP022: 5'-acaaactgcagatgagattcccatccattttcaccgctgtcttgttcgct-3'
AP022は、ライゲーション産物であるプレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子の上流にアニールし、PstIサイトを形成するプライマーである。一方、AP021は、その下流にアニールし、HindIIIサイトを形成するするプライマーである。PCRは95℃で15秒間、54℃で15秒間、72℃で60秒間の3ステップからなるサイクルを30回繰り返す条件で行った。このPCRにより、アガロースゲル電気泳動上約0.26kbpの大きさと考えられる位置に確認されるPCR産物を抽出した(プレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子)。
AP022: 5'-acaaactgcagatgagattcccatccattttcaccgctgtcttgttcgct-3'
AP022は、ライゲーション産物であるプレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子の上流にアニールし、PstIサイトを形成するプライマーである。一方、AP021は、その下流にアニールし、HindIIIサイトを形成するするプライマーである。PCRは95℃で15秒間、54℃で15秒間、72℃で60秒間の3ステップからなるサイクルを30回繰り返す条件で行った。このPCRにより、アガロースゲル電気泳動上約0.26kbpの大きさと考えられる位置に確認されるPCR産物を抽出した(プレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子)。
(4)ADH1ターミネーターのクローニング
酵母Saccharomyces cerevisiae S288Cより抽出したゲノムDNAを鋳型とし、プライマーFG016及びFG017を用いてPCRを行い、ADH1ターミネーターをクローニングした。
FG016: 5'-aggactgcagaagcttaattcttatgatttatgatttttattattaaataag-3'
FG017: 5'-aaggaaaaaagcggccgcgatccgtgtggaagaacgattacaacaggtgttg-3'
FG016は、ADH1ターミネーターの上流にアニールするプライマーであり、HindIIIサイトを配置した。一方、FG017は、ADH1ターミネーターの下流にアニールするプライマーであり、NotIサイトを配置した。PCRは94℃で20秒間、50℃で20秒間、72℃で30秒間の3ステップからなるサイクルを30回繰り返し、最後に72℃で1分間保温する条件で行った。このPCRにより、アガロースゲル電気泳動上約0.36kbpの大きさと考えられる位置に確認されるPCR産物を抽出した(ADH1ターミネーター)。
酵母Saccharomyces cerevisiae S288Cより抽出したゲノムDNAを鋳型とし、プライマーFG016及びFG017を用いてPCRを行い、ADH1ターミネーターをクローニングした。
FG016: 5'-aggactgcagaagcttaattcttatgatttatgatttttattattaaataag-3'
FG017: 5'-aaggaaaaaagcggccgcgatccgtgtggaagaacgattacaacaggtgttg-3'
FG016は、ADH1ターミネーターの上流にアニールするプライマーであり、HindIIIサイトを配置した。一方、FG017は、ADH1ターミネーターの下流にアニールするプライマーであり、NotIサイトを配置した。PCRは94℃で20秒間、50℃で20秒間、72℃で30秒間の3ステップからなるサイクルを30回繰り返し、最後に72℃で1分間保温する条件で行った。このPCRにより、アガロースゲル電気泳動上約0.36kbpの大きさと考えられる位置に確認されるPCR産物を抽出した(ADH1ターミネーター)。
(5)pKAP027の構築
実施例1−(2)で得たPRB1プロモーターの下流側PstIサイト、実施例1−(3)で得たプレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子の上流側PstIサイト及び下流側HindIIIサイト、実施例1−(4)で得たADH1ターミネーターの上流側HindIIIサイトの3つの断片を各制限酵素サイトで連結し、PRB1プロモーター/プレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子/ADH1ターミネーターの組換えアプロチニン発現カセットを得た。この発現カセットの両端をNotIで消化し、実施例1−(1)で構築したプラスミドpKHA001のNotIサイトに挿入することで、プラスミドpKAP027を構築した(図2)。得られたプラスミドpKAP027に含まれる組換えアプロチニン発現カセットの塩基配列は、Beckman Coulter社のCEQ2000XLを用いたDye Terminator法により決定した。その結果、設計時の配列と同じ配列であった。
実施例1−(2)で得たPRB1プロモーターの下流側PstIサイト、実施例1−(3)で得たプレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子の上流側PstIサイト及び下流側HindIIIサイト、実施例1−(4)で得たADH1ターミネーターの上流側HindIIIサイトの3つの断片を各制限酵素サイトで連結し、PRB1プロモーター/プレα−接合因子シグナル配列/アプロチニン構造遺伝子/ADH1ターミネーターの組換えアプロチニン発現カセットを得た。この発現カセットの両端をNotIで消化し、実施例1−(1)で構築したプラスミドpKHA001のNotIサイトに挿入することで、プラスミドpKAP027を構築した(図2)。得られたプラスミドpKAP027に含まれる組換えアプロチニン発現カセットの塩基配列は、Beckman Coulter社のCEQ2000XLを用いたDye Terminator法により決定した。その結果、設計時の配列と同じ配列であった。
組換えアプロチニンを分泌発現させるための発現プラスミドの構築
実施例1の発現カセットを酵母に導入し、分泌発現させる為の発現ベクターは、以下の通り構築した。
実施例1の発現カセットを酵母に導入し、分泌発現させる為の発現ベクターは、以下の通り構築した。
すなわち、実施例1−(5)で得たプラスミドpKAP027をNotIで消化し、発現カセットを、予め同じ酵素で消化したプラスミドベクターpSAC35に挿入し、組換えアプロチニンを分泌発現させるための発現プラスミドpKAP028を構築した(図3)。
組換えアプロチニン産生酵母の調製
発現プラスミドpKAP028を、宿主酵母Saccharomyces cerevisiae AH22由来leu2欠損株〔Cir-〕にエレクトロポレーションにて導入し、得られた形質転換体を30℃において10Lスケール規模で高密度培養した。フェドバッチ培地供給速度は、RQが一貫して>1.2となった場合、その期間中は、RQコントロールなしに手動で調整した。供給速度は、下記アルゴリズムに従い、コンピューターコントロールを介して増加させた:供給速度(FR)=ke(μt)の数式において、kは初期供給速度、μは指数増殖速度、tは時間である。k値は、エタノールおよび酢酸の蓄積を最少にする増殖速度を達成させる上で必要な初期供給速度として経験的に決定される。この例では、kはMW11E供給培地9mL/hの値を有するものとして決定された。μ値は、十分に呼吸性の生物の最大増殖速度、この例だと0.06/hであった。tは0(ゼロ)で始まるカウンター変数であり、RQ>1.2またはDOT<15%でない限り、毎分1ずつ増加させた。ただし、RQ>1.2またはDOT<15%の場合、tの値を1ずつ減少させた。10Lタンクでの生産培養は、フェドバッチ培地の供給が終了するまでの合計約130時間行った。培養の終点で到達した細胞乾燥重量(CDW)は、70.1g/Lであった。培養液中の組換えアプロチニンの濃度はトリプシン阻害活性試験での活性換算で、約350mg/Lであった。
発現プラスミドpKAP028を、宿主酵母Saccharomyces cerevisiae AH22由来leu2欠損株〔Cir-〕にエレクトロポレーションにて導入し、得られた形質転換体を30℃において10Lスケール規模で高密度培養した。フェドバッチ培地供給速度は、RQが一貫して>1.2となった場合、その期間中は、RQコントロールなしに手動で調整した。供給速度は、下記アルゴリズムに従い、コンピューターコントロールを介して増加させた:供給速度(FR)=ke(μt)の数式において、kは初期供給速度、μは指数増殖速度、tは時間である。k値は、エタノールおよび酢酸の蓄積を最少にする増殖速度を達成させる上で必要な初期供給速度として経験的に決定される。この例では、kはMW11E供給培地9mL/hの値を有するものとして決定された。μ値は、十分に呼吸性の生物の最大増殖速度、この例だと0.06/hであった。tは0(ゼロ)で始まるカウンター変数であり、RQ>1.2またはDOT<15%でない限り、毎分1ずつ増加させた。ただし、RQ>1.2またはDOT<15%の場合、tの値を1ずつ減少させた。10Lタンクでの生産培養は、フェドバッチ培地の供給が終了するまでの合計約130時間行った。培養の終点で到達した細胞乾燥重量(CDW)は、70.1g/Lであった。培養液中の組換えアプロチニンの濃度はトリプシン阻害活性試験での活性換算で、約350mg/Lであった。
組換えアプロチニンの精製
実施例3の培養物(培養液と細胞を含有)を遠心分離(30分、5,000×G、4℃)にかけ、次いで孔径0.45μmによるフィルター濾過することにより細胞を除去した。該培養液について以下のクロマトグラフを行い、組換えアプロチニンの精製を行なった。
SP-Sepharose XL-FF(Amersham Bioscience社)100mLを蒸留水で洗浄し、50mMリン酸バッファー(pH7.0)で平衡化し、XK50カラム(Amersham Bioscience社)に充填した。以下、全てのクロマトグラフィーの流速は50mL/分で行った。約4.2Lの培養上清を供し、50mMリン酸バッファー(pH7.0)でカラムを洗浄した。斯かる洗浄は、吸光度280nmでのピークが完全にゼロに戻るまで行った。組換えアプロチニンを主として含む吸着画分タンパク質の溶出には、0.4M NaCl/50mMリン酸バッファー(pH7.0)を用い、UVモニターでのピーク画分を回収した。
次に、クロマトグラフィー工程での溶出画分を、分子量50,000カットオフの限外濾過膜(Amicon Ultra-15 50,000MWCO)に供給し、遠心分離にて、組換えアプロチニンを濾過した。この操作により、SDS-PAGE試験での分子量約80kDaに確認できる酵母由来タンパク質と組換えアプロチニンとを分離することができる。
最後の精製工程として、分子量5,000カットオフの限外濾過膜(Amicon Ultra-15 5,000MWCO)に供給し、遠心分離にて、組換えアプロチニンを濃縮する。同時に、生理食塩水(大塚製薬)と置換した。この濃縮液を、孔径0.22μmのメンブレンフィルターに通すことで無菌濾過し、最終産物とした。
実施例3の培養物(培養液と細胞を含有)を遠心分離(30分、5,000×G、4℃)にかけ、次いで孔径0.45μmによるフィルター濾過することにより細胞を除去した。該培養液について以下のクロマトグラフを行い、組換えアプロチニンの精製を行なった。
SP-Sepharose XL-FF(Amersham Bioscience社)100mLを蒸留水で洗浄し、50mMリン酸バッファー(pH7.0)で平衡化し、XK50カラム(Amersham Bioscience社)に充填した。以下、全てのクロマトグラフィーの流速は50mL/分で行った。約4.2Lの培養上清を供し、50mMリン酸バッファー(pH7.0)でカラムを洗浄した。斯かる洗浄は、吸光度280nmでのピークが完全にゼロに戻るまで行った。組換えアプロチニンを主として含む吸着画分タンパク質の溶出には、0.4M NaCl/50mMリン酸バッファー(pH7.0)を用い、UVモニターでのピーク画分を回収した。
次に、クロマトグラフィー工程での溶出画分を、分子量50,000カットオフの限外濾過膜(Amicon Ultra-15 50,000MWCO)に供給し、遠心分離にて、組換えアプロチニンを濾過した。この操作により、SDS-PAGE試験での分子量約80kDaに確認できる酵母由来タンパク質と組換えアプロチニンとを分離することができる。
最後の精製工程として、分子量5,000カットオフの限外濾過膜(Amicon Ultra-15 5,000MWCO)に供給し、遠心分離にて、組換えアプロチニンを濃縮する。同時に、生理食塩水(大塚製薬)と置換した。この濃縮液を、孔径0.22μmのメンブレンフィルターに通すことで無菌濾過し、最終産物とした。
組換えアプロチニンの特性
実施例5の最終産物を、SDS-PAGE試験(図4)、ゲル濾過HPLC試験(図5)、トリプシン阻害試験(表1)、N末端アミノ酸配列分析(表2)及び質量分析(図6)に供した。これらの試験及び分析において、得られた組換えアプロチニンは、ウシ由来アプロチニン(BAYER社、製品名:トラジロール)と同じ物性を示した。表1のa)は、アプロチニン活性の単位(KIE:Kallikrein Inactivator Unit)、表2のXは、同定できなかったアミノ酸を示す。
実施例5の最終産物を、SDS-PAGE試験(図4)、ゲル濾過HPLC試験(図5)、トリプシン阻害試験(表1)、N末端アミノ酸配列分析(表2)及び質量分析(図6)に供した。これらの試験及び分析において、得られた組換えアプロチニンは、ウシ由来アプロチニン(BAYER社、製品名:トラジロール)と同じ物性を示した。表1のa)は、アプロチニン活性の単位(KIE:Kallikrein Inactivator Unit)、表2のXは、同定できなかったアミノ酸を示す。
天然型と同じ性状をもつ組換えアプロチニンを大量に生産し、既存のウシ由来品にかわる医薬品として使用することができる。
Claims (11)
- 天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニンを酵母で産生させるための発現カセットであって、プロモーターの下流にプレα−接合因子シグナル配列、アプロチニン構造遺伝子及びターミネーターを連結させた核酸断片からなる、前記発現カセット。
- プロモーター及びターミネーターが、PRB1、NCE102、GAPDH、PGK1、MFα1、TEF1、ADH1、GAL1、GAL4、GAL10及びCUP1からなる遺伝子群由来のプロモーター及びターミネーターより選択されることを特徴とする、請求項1記載の発現カセット。
- プロモーターがPRB1遺伝子、ターミネーターがADH1遺伝子由来である、請求項1記載の発現カセット。
- プレα−接合因子シグナル配列とアプロチニン構造遺伝子の塩基配列が、酵母のCodon-Usageである、請求項1ないし3の何れか一項記載の発現カセット。
- プレα−接合因子シグナル配列とアプロチニン構造遺伝子の塩基配列が、配列番号3である、請求項4記載の発現カセット。
- 請求項1ないし5の何れか一項記載の発現カセットを有する発現プラスミド。
- 請求項6記載の発現プラスミドで酵母細胞を形質転換することを特徴とする、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニン産生酵母の調製方法。
- 酵母が、Saccharomyces cerevisiaeである、請求項7記載の調製方法。
- 請求項1ないし5の何れか一項記載の発現カセットが組み込まれた、天然型のN末端側アミノ酸配列を有する組換えアプロチニン産生酵母。
- 酵母が、Saccharomyces cerevisiaeである、請求項9記載の組換えアプロチニン産生酵母。
- 請求項9又は10の何れか一項記載の組換えアプロチニン産生酵母を用いることを特徴とする、組換えアプロチニンの製造方法。
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JP2005313509A JP2007116983A (ja) | 2005-10-27 | 2005-10-27 | 組換えアプロチニンの生産方法 |
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Cited By (3)
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---|---|---|---|---|
WO2008096900A1 (ja) * | 2007-02-06 | 2008-08-14 | The Yokohama Rubber Co., Ltd. | 空気透過防止層の表面に遮光性保護層を有する空気入りタイヤの製造方法 |
WO2008139591A1 (ja) * | 2007-05-11 | 2008-11-20 | Juridical Foundation The Chemo-Sero-Therapeutic Research Institute | 組換えアプロチニンの生産方法 |
JP2014039533A (ja) * | 2012-03-15 | 2014-03-06 | Toyota Central R&D Labs Inc | 酵母における外来遺伝子の発現産物の生産方法、酵母における発現調節剤及びその利用 |
-
2005
- 2005-10-27 JP JP2005313509A patent/JP2007116983A/ja not_active Abandoned
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