JP2007116905A - 放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドおよび放射線治療における副作用発症予測方法 - Google Patents

放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドおよび放射線治療における副作用発症予測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】オーダーメイド放射線治療を具現化するために、癌患者の放射線に対する感受性の程度を予め予測することのできるDNA配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドである、放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドを提供する。
【解決手段】本発明の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドは、特定な配列で示される、二種類のDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドであって、一方の塩基配列の121番目の塩基がTであり、他方の塩基配列の121番目の塩基がGであることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドであって、特に遺伝子の一塩基多型を判定の指標として、特定のDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドに存在する複数の一塩基多型を組み合わせることにより、放射線治療における副作用の発症を予測するポリヌクレオチドに関する。
年間約50万人が罹患すると言われている癌は、日本人の死亡原因の1位であり、その克服は国民の悲願である。
放射線治療は、癌に対する有効な局所療法の一つであるが、外科手術と異なり、病巣部を切除せずに治療することが可能であるため、身体機能や形態の温存の観点から優れた治療方法であるということができる。すなわち、外科手術のように身体にメスを入れないことから、患者の精神的な負担も軽く、手術後の社会復帰も容易であるので、患者のQOL(Quality of Life)を高めることができるという利点もあって、今後、大いに発展が望まれる治療方法である。
また、放射線治療は患者への負担も軽く、合併症を有する患者や高齢者にも適応することができる利点もある。さらに、近年では、CTやMRIなどの画像情報をもとに病巣の位置・形状・大きさを3次元座標上で正確に決定し、病巣へ線量を集中できる定位(的)放射線治療の技術も確立されている。
このように、放射線治療は癌の治療において非常に有用な治療方法であるが、照射した放射線により皮膚に潰瘍が生じたり、腸穿孔や肺炎を合併するなどの重篤な副作用を伴ったり、場合によっては放射線治療を中断しなければならない放射線感受性の高い癌患者がいる。
このような放射線に対する感受性の違いの一因には遺伝的な個人差もあり、それぞれの癌患者が有するDNA塩基配列の相違に関連していると考えられる。このようなDNA塩基配列の相違は一般には多型(ポリモルフィズム)と呼ばれ、以下のように分類することができる。すなわち、(1)1から数十塩基が欠失や挿入をしている多型(挿入/欠失多型)、(2)2塩基から数十塩基を1単位とする配列が繰り返されている多型(VNTRやマイクロサテライト多型)、そして、(3)1個の塩基が他の塩基に置き換わっている多型(一塩基多型)、である。
これらの中でも(3)の一塩基多型(SNP;Single Nucleotide Polymorphism)は、数百塩基対から1000塩基対に1箇所の割合で存在していると推測され、ヒトの全ゲノム中には300万〜1000万のSNPがあると考えられている。そして、このSNPが各人の顔立ちや性格、医薬品に対する応答性などの、いわゆる“個性”に強い影響を及ぼしていると考えられている(非特許文献1参照)。
監修・松原謙一、榊佳之、編集・中村祐輔「ポストシークエンスのゲノム科学(1) SNP遺伝子多型の戦略」、中山書店、2頁および3頁、2000年6月出版
放射線に対する感受性の個人差にも、SNPをはじめとする遺伝子のDNA塩基配列の相違が大きく影響していると考えられる。これはすなわち、放射線治療前にDNA塩基配列を調べることによって、癌患者の放射線に対する感受性の程度を予め知ることができれば、オーダーメイド放射線治療を実現することが可能になると考えられる。
しかしながら、どのような遺伝子が放射線の感受性に関与し、また、どのSNPが放射線の感受性に影響を与えているのかということに関しては、ほとんど研究が進んでいない状況であった。
ここで、放射線治療前に遺伝子のDNA塩基配列を調べるためには、SNPを含むDNA塩基配列を増幅しなければならない。増幅方法としては、ポリアクリルアミドゲルに抽出した染色体を埋め込み、TaqDNAポリメラーゼを用いてPCRでDNA塩基配列を増幅し、DNA塩基配列を決定する方法が従来から知られている(Mitra RD., et al., Proc Natl Acad Sci USA, 100, 581-584(2003))。
しかしながら、ポリアクリルアミドゲルはゲル化の際にラジカル産生が不可欠であり、埋め込まれる染色体へのダメージが避けられない。また、未重合アクリルアミドによってTaqDNAポリメラーゼが化学修飾を受け、安定した増幅反応効率が得られないことが多く、ゲル中での蛍光標識したジデオキシ塩基(ddNTPs)を用いての一塩基伸長反応と、蛍光スキャナーによる蛍光イメージの解析を何度も繰り返さなければならないなどの問題があった。
本発明の課題は前記問題に鑑みてなされたものであり、オーダーメイド放射線治療を具現化するために、癌患者の放射線に対する感受性の程度を予め予測することのできるDNA配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドおよび副作用発症予測方法を提供することを目的とする。
発明者らは、cSNP(coding SNP)やrSNP(regulatory SNP)、iSNP(intron SNP)を中心にSNPタイピングを行えば、前記課題が解決でき、オーダーメイド放射線治療の実現を図ることができると考え、鋭意研究に励んだ。その結果、放射線治療後、副作用を発症した患者(以下、発症群という)と副作用を発症しなかった、あるいは軽微な発症であった患者(以下、非発症群という)の遺伝子のDNA塩基配列の決定を行った結果、発症群のアレル(allele;対立遺伝子)の出現頻度と、非発症群のアレルの出現頻度との間に統計学的に有意な差を見出すことができ、本発明を完成するに至った。
また、その発明を完成するに当たって、人為的な剪断を極力抑制しつつ、染色体DNAを鋳型として好適に遺伝子解析を行なうことのできる染色体DNAの調製方法を見出した。
請求項1記載の発明は、配列表の配列番号1および配列番号2に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドであって、前記配列番号1の121番目の塩基がTであり、前記配列番号2の121番目の塩基がGであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド、を提供するものである。
請求項2記載の発明は、配列表の配列番号3から配列番号7に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドであって、前記配列番号3の121番目の塩基がTであり、前記配列番号4の121番目の塩基がTであり、前記配列番号5の121番目の塩基がTであり、前記配列番号6の121番目の塩基がGであり、前記配列番号7の121番目の塩基がTであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド、を提供するものである。
請求項3記載の発明は、配列表の配列番号8から配列番号10に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドであって、前記配列番号8の121番目の塩基がAであり、前記配列番号9の121番目の塩基がCであり、前記配列番号10の121番目の塩基がGであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド。
請求項4記載の発明は、配列表の配列番号11および配列番号12に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドであって、前記配列番号11の121番目の塩基がCであり、前記配列番号12の121番目の塩基がTであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド、を提供するものである。
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドにおいて、121番目の塩基以外の塩基が1個若しくは数個欠失、置換若しくは付加しているひとつながりのポリヌクレオチド、または、これらの相補的なDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド、を提供するものである。
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド、または、この放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするひとつながりのポリヌクレオチドであることを特徴とする放射線治療における副作用発症用ポリヌクレオチド。
請求項7記載の発明は、配列表の配列番号13から配列番号36に示されるDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドのうち、配列番号13から順次2つのポリヌクレオチドを1セットとして用いることを特徴とする増幅用プライマーセット、を提供するものである。
請求項8記載の発明は、配列表の配列番号13から配列番号36に示されるDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドのうち、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加したことを特徴とする請求項7に記載の増幅用プライマーセット、を提供するものである。
請求項9記載の発明は、配列表の配列番号37から配列番号48のいずれかに示されるDNA塩基配列からなることを特徴とする検出用プライマー、を提供するものである。
請求項10記載の発明は、配列表の配列番号37から配列番号48に示されるDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドのうち、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加したことを特徴とする請求項9に記載の検出用プライマー、を提供するものである。
請求項11記載の発明は、配列表の配列番号1および配列番号2に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを利用する放射線治療における副作用発症予測方法であって、
前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号1の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号2の121番目の位置に相当する塩基と、を解析するステップと、前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号1の121番目の位置に相当する塩基がT、前記配列番号2の121番目の位置に相当する塩基がGである場合に、副作用発症の危険性が高いと予測するステップと、を含むことを特徴とする放射線治療における副作用発症予測方法、を提供するものである。
請求項12記載の発明は、配列表の配列番号3から配列番号7に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを利用する放射線治療における副作用発症予測方法であって、前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号3の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号4の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号5の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号6の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号7の121番目の位置に相当する塩基と、を解析するステップと、前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号3の121番目の位置に相当する塩基がT、前記配列番号4の121番目の位置に相当する塩基がT、前記配列番号5の121番目の位置に相当する塩基がT、前記配列番号6の121番目の位置に相当する塩基がG、前記配列番号7の121番目の位置に相当する塩基がTである場合に、副作用発症の危険性が高いと予測するステップと、を含むことを特徴とする放射線治療における副作用発症予測方法、を提供するものである。
請求項13記載の発明は、配列表の配列番号8から配列番号10に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを利用する放射線治療における副作用発症予測方法であって、前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号8の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号9の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号10の121番目の位置に相当する塩基と、を解析するステップと、前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号8の121番目の位置に相当する塩基がA、前記配列番号9の121番目の位置に相当する塩基がC、前記配列番号10の121番目の位置に相当する塩基がGである場合に、副作用発症の危険性が高いと予測するステップと、を含むことを特徴とする放射線治療における副作用発症予測方法、を提供するものである。
請求項14記載の発明は、配列表の配列番号11および配列番号12に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを利用する放射線治療における副作用発症予測方法であって、前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号11の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号12の121番目の位置に相当する塩基とを解析するステップと、前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号11の121番目の位置に相当する塩基がC、前記配列番号12の121番目の位置に相当する塩基がTである場合に、副作用発症の危険性が高いと予測するステップと、を含むことを特徴とする放射線治療における副作用発症予測方法、を提供するものである。
さらに、請求項15記載の発明は、(a)生体から採取した試料をもとに、配列表の配列番号1および配列番号2に示されるDNA塩基配列、配列表の配列番号3から配列番号7に示されるDNA塩基配列、配列表の配列番号8から配列番号10に示されるDNA塩基配列、または、配列表の配列番号11および配列番号12に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを調製する工程と、(b)前記(a)の工程で調製したひとつながりのポリヌクレオチドをもとにDNA増幅産物を増幅して得る工程と、(c)前記(b)の工程で増幅したDNA増幅産物と、配列表の配列番号37から配列番号48に示されるいずれかの検出用プライマーと、を用いて伸長反応を行ない、DNA伸長反応生成物を得る工程と、(d)前記(c)の工程で得られたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列を解析する工程と、(e)前記(d)の工程で解析されたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列のうち、配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示される121番目の位置に相当する塩基と、配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示されるDNA塩基配列の121番目の塩基と、が一致する場合に、前記(c)の工程で得られたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列を有するアレルが指標となるアレルであるか否かを判定した結果であって、前記(a)の工程で得られたポリヌクレオチドに存在する複数のSNPサイトの塩基種を組み合わせて判定・解析した結果に基づいて、前記生体が放射線によって副作用を発症する危険性が高いかまたは低いかを予測する工程と、を含むことを特徴とする放射線治療における副作用発症予測方法、を提供するものである。
本発明の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドによれば、DNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドに存在する複数のSNPサイトの塩基種を組み合わせて判定・解析することにより、放射線治療による副作用を発症する危険性が高いか低いかを予測することができる。したがって、本発明によれば、オーダーメイド放射線治療の実現に資することとなる。
本発明の放射線治療における副作用発症予測方法によれば、生体から採取したDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドに含まれるSNPサイトの塩基種の情報から、放射線による副作用を発症する危険性が高いか低いかを予測することができる。すなわち、オーダーメイド放射線治療を行うことが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明の内容は以下に説明する内容に限定されるものではない。
〔1.放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド〕
本発明における「放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド」とは、配列表の(1)配列番号1および配列番号2、(2)配列番号3から配列番号7、(3)配列番号8から配列番号10、(4)配列番号11および配列番号12の4種類の組合せのうち、いずれかを組合せたDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドである。
ただし、本発明においては、配列表の配列番号1から配列番号12に示されるDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドは、121番目の塩基を有していればよく、DNA塩基配列の長短について特に限定されるものではない。すなわち、これらのポリヌクレオチドは、配列表の配列番号1から配列番号12に示されるDNA塩基配列のうち、121番目の塩基を含む10塩基以上241塩基以下のDNA塩基配列であってもよく、また、241塩基を超えるものであっても構わない。
また、DNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドにおいても、前記組合せにおける配列表の各配列番号が、121番目の塩基を含むDNA塩基配列を有していればよく、DNA塩基配列の長短について特に限定されるものではない。
本発明においては、配列表の配列番号1から配列番号12に示されるDNA塩基配列のうち、121番目に示す塩基(SNPサイト)を含むひとつながりのポリヌクレオチドを指標となるアレル(以下、「指標アレル」)という。「指標アレル」とは、当該SNPサイトにおいて、放射線治療を行った後に副作用(障害)を発症する危険性が高い者の有するアレル(allele;対立遺伝子)中の塩基と、副作用を発症する危険性が低い者の有するアレル中の塩基と、が異なるアレルのことである。言い換えれば、当該副作用を発症する危険性が高いか低いかを予測(判断)できるアレルをいう。したがって、SNPタイピングを行ってこの指標アレルを認識することができれば、放射線治療による副作用の発症の危険性を予測することが可能となる。
なお、本発明で規定する配列表の配列番号1から配列番号12に示される121番目の塩基種を認識することができれば、DNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドにおける位置は限定されない。すなわち、当該指標アレルとなるSNPサイトがDNA塩基配列およびポリヌクレオチド中の中ほどに位置するようにすることができるほか、5′末端や3′末端に位置するようにすることも可能である。
これに対し、本発明の配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかと同一または実質的に同一であるDNA塩基配列において、前記の指標アレルに相当するSNPサイトに存在する指標アレルとは異なる塩基であって、指標とはならないアレルを、本発明では「非指標アレル」と呼ぶこととする。
配列表の配列番号1から配列番号12に示すDNA塩基配列は、そのDNA塩基配列中における特定のSNPサイトの塩基を確認することによって、指標アレルであるか非指標アレルであるかを判定し、さらにDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドに存在する複数のSNPサイトの塩基種を組み合わせて判定・解析することで、癌の放射線治療において副作用が発症する危険性が高いか低いかを予測するために用いることができる。特に、乳癌の放射線治療開始から早期のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号1から配列番号12に示すDNA塩基配列(121番目の塩基(SNPサイト))を用いて好適に予測することができる。
本発明で用いるSNPサイトを含んだ配列表の配列番号1から配列番号12に示すDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドは、121番目の塩基(指標アレル)を含んで任意の長さの連続したポリヌクレオチド(例えば、前記したように10塩基以上241塩基以下、または241塩基を超える(数千から数万塩基)長さのポリヌクレオチド)として用いることができる。つまり、配列表の配列番号1から配列番号12に示すDNA塩基配列のうち121番目の塩基を含むポリヌクレオチドを標識プローブなどの遺伝子マーカーとして用いることができる。
適切な長さを選択すれば、特異的なハイブリダイズを行うことができるほか、例えば染色体DNA(制限酵素処理あるいは物理的切断を行なったものも含む)と、かかる遺伝子マーカーと、をハイブリダイズさせた状態で電気泳動し、その泳動度の差異を利用することで、適切にSNPタイピングを行うことが可能である。つまり、配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示すDNA塩基配列のうち121番目の塩基を塩基種ごとに違えて作成した遺伝子マーカー(1つの遺伝子マーカーであってもよく、複数の遺伝子マーカーを用いたひとつながりの遺伝子マーカーであってもよい)を用いて染色体DNAとハイブリダイズさせることによってSNPタイピングを行うことが可能である。
本発明は、前記で説明したように、配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示すDNA塩基配列のうち121番目の塩基を照合・判定し、組み合わせることで、放射線治療における副作用の発症のしやすさに影響する遺伝的素因を有するか否かを解析し、その結果から放射線による副作用を発症する危険性が高いか低いかを予測するためになされたものである。
したがって、解析したひとつながりのポリヌクレオチドのDNA塩基配列と、配列表の配列番号1から配列番号12のうちのいずれかのDNA塩基配列と、を対比することで、本発明で特定されている指標アレルに該当するか、あるいは、非指標アレルに該当するかを判定する。そして、解析したひとつながりのポリヌクレオチドに存在する複数のSNPサイトの塩基種を組み合わせることで、放射線に対して副作用を発症する危険性が高い型の塩基種を有する者(危険群)であるか、副作用を発症する危険性が低い型の塩基種を有する者(非危険群)であるかを判定することができる。すなわち、指標アレルを有する者は、非指標アレルを有する者よりも放射線治療における副作用を発症する危険性が高い遺伝的素因を有している、と判断することができる。
ここで、本発明に係る放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドは、当該121番目の塩基以外の塩基が、1個または複数個欠失、置換若しくは付加していてもよく、また、その相補鎖であっても構わない。すなわち、本発明の特許請求の範囲と配列表で特定するSNPサイトを含むものであれば、それ以外の箇所に塩基の置換、欠失、挿入等が起こっていても、実質的に同一またはこれと相補的なDNA塩基配列を有しているひとつながりのポリヌクレオチドであれば本発明の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドと同等のものである。
さらに、このような放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドは、DNAポリメラーゼ、特に耐熱性ポリメラーゼ(例えばTaqDNAポリメラーゼ)などの種々のポリメラーゼによって複製あるいは増幅されたDNA産物を好適に用いることができる。
そして、本発明の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドは、それが有するDNA塩基配列を直接解析するために好適に用いることができる。この放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドのDNA塩基配列の直接的な解析には、従来公知のDNAシーケンサーや質量分析機などを好適に用いることができる。
本発明の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドを遺伝子マーカーとして用いる場合は、DNA塩基配列の末端、または、DNA塩基配列中のいずれかの塩基を蛍光色素や放射性同位元素などで標識化した遺伝子マーカー(標識プローブ)とするのがより好ましい。標識遺伝子マーカーとすれば、蛍光強度や放射線量を測定することによって容易に検出可能となるほか、例えば、X線フィルムを蛍光で感光させる、あるいは、放射線で感光させるなどして、容易に検出することも可能となる。なお、放射線量や蛍光強度の測定は、従来公知の放射線検出装置や蛍光測定装置などを好適に用いることができる。また、このように蛍光色素を標識化しておけば、DNAシーケンサーによって適切に解析することもできる。
標識化するために用いる放射性同位元素としては、例えば、32Pや35Sなどの通常用
いられる放射性同位元素を挙げることができる。また、標識化するために用いる蛍光色素としては、例えば、FAMTM、Yakima YellowTM、VICTM、TAMRATM、ROXTM、Cy3TM、Cy5TM、HEXTM、TETTM、FITCなどの通常用いられる蛍光色素を挙げることができる。
以上説明したように、本発明の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドは、そのDNA塩基配列を直接解析することや、当該放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドを遺伝子マーカーとして用いることにより、好適に一塩基多型の検出、すなわちSNPタイピングを好適に行うことができる。なお、「多型」とは、人口中1%以上の頻度で存在している塩基の変化と一般的に定義されているが、本発明における「多型」は、この定義に限定されず、1%未満の塩基の変化も「多型」に含めることとする。
〔2.プライマー〕
配列表の配列番号13から配列番号36に示すDNA塩基配列は、配列番号13から順次2つのDNA塩基配列を1セットとするプライマーセット、として用いるのが好ましい。
かかるプライマーセットの中から適宜適切な1セットのプライマーを選択してDNAの増幅に用いれば、配列表の配列番号1から配列番号12に示す任意のDNA塩基配列を特異的に増幅することができる。なお、このプライマーセットのうち、配列番号の小さいDNA塩基配列がフォワードプライマーであり、配列番号の大きいDNA塩基配列がリバースプライマーに該当する。これら2種類のプライマーに対応する配列に挟まれた部分がPCR増幅反応によって増幅される対象となる。
このように、配列表の配列番号13から配列番号36に示すプライマーセットは、特にPCRを行う際に好適に用いることができることから、本発明の配列表の配列番号13から配列番号36に示すDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドは、PCR増幅用のプライマーセットとして用いることが好ましい。したがって、このPCR増幅用のプライマーセットを用いれば、特定のDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチド、すなわち、配列表の配列番号1から配列番号12の特定のSNPサイト(本発明においては121番目の塩基が特定のSNPサイトである。)を含む前記4種類の組合せのうち、いずれかの組合せを含むDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドのDNA塩基配列を確実、簡便かつ特異的に増幅することが可能である。
なお、このプライマーセットを構成するそれぞれのDNA塩基配列は、それが有するDNA塩基配列のうち、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加したものであってもよい。また、配列番号13から配列番号36に示すプライマーには、必要に応じて適宜の制限酵素認識配列(例えば「5’-ACGTTGGATG-3’」(配列番号49)のような10塩基程度のDNA配列)を、各プライマーの5′上流側に付加して用いてもよい。このように付加した配列は、PCRによる増幅反応を安定化させる効果を有する。なお、付加する塩基配列はこれに限られることはなく、同様の効果を奏するものであればどのような配列でも用いることができる。
〔3.SNPタイピング〕
SNPタイピングを行う手法としては、プライマー伸長に基づく手法、ハイブリダイゼーションに基づく手法、DNAの切断に基づく手法、ライゲーションに基づく手法などがある。
(3−1.SNPタイピングの手法)
プライマーエクステンションに基づく手法としては、例えば、1塩基プライマー伸長法(Syvanen, A.C. et al., Genomics, 8, 684-692(1990))や、これを用いたMALDI−TOF/MS法(Ross, P., et al. Nat Biotechnol, 16, 1347-1351(1998);Buetow, K.H. et al., Proc Natl Acad Sci USA, 98, 581-584(2001);SNP遺伝子多型の戦略、松原謙一・榊佳之、中山書店、106〜117頁)のほか、アレル特異的プライマーエクステンション法(Uggozzoli, L. et al., Genet Anal Tech Appl, 9, 107-112(1992))、APEX法(in the arrayed primer extension, Shumaker, J.M. et al., Hum Mutat, 7, 346-354(1996))などを挙げることができる。これらの中でも、MALDI−TOF/MS法を用いれば、簡易かつ大量のサンプルのSNPタイピングを同時に行うことが可能であるので特に好適である。
このMALDI−TOF/MS法(matrix assisted laser desorption ionization time-of-flight/mass spectrometry)は、DNA試料から得られたDNA産物のDNA塩基配列を直接決定して比較することができる、非常に効率的な手法である。
MALDI−TOF/MS法は、前記したように大量のサンプルを高速度で処理するジェノタイピング法の一つである。この方法は、以前から生物学・化学の分野で使用されてきた質量分析機をSNPタイピングに適用したものである。質量分析機による方法であるので、多型による差異を何らかの形で分子の違いに対応させ、その分子の質量の差を検出することで塩基の配列を決定することを基本原理としている。すなわち、MALDI−TOF/MS法は、質量分析機とプライマー伸長法とを組み合わせ、SNPサイトにおける塩基の違いを判定する。
具体的には、まず、生体からDNA試料を抽出する。この際、本発明の配列表の配列番号1から配列番号12に示されるSNPサイトに相当する部位の塩基を含むDNAを、PCRなどを使用して増幅することで調製する。次いで、PCR産物を鋳型として、ジェノタイピングプライマー(配列表の配列番号1から配列番号12で示されるSNPサイトに相当する部位における塩基の1塩基3′側の塩基から3′側の塩基配列に相補的な配列を有するプライマー、または、配列表の配列番号1から配列番号12の相補鎖の場合は、その相補鎖と相補的な配列を有するプライマー(本発明においては配列表の配列番号37から配列番号48に示す検出用プライマーがこれに相当する))のddNTPプライマー伸長反応を行い、1個から数個の塩基を伸長する。なお、この反応に用いるPCR産物は、PCR増幅用のプライマーを除去するための精製が行われていることが好ましく、ジェノタイピングプライマー(検出用プライマー)は、通常、15bp以上の長さを有するのが好ましい。また、プライマー伸長反応においては、通常、PCR産物に対して10倍以上の過剰のジェノタイピングプライマーを加えるが、本発明はこれに制限されるものではない。PCRを行うためのサーマルサイクルの条件は適宜選択し得るが、ジェノタイピングプライマーのうち30〜60%程度が伸長する条件が好適である。例えば、94℃と37℃の2温度間で25回程度行うことで適当な伸長効率を得ることができる。次いで、プライマー伸長反応産物のMALDIプレートへのスポットを行い、次いで、質量測定を行って、マススペクトログラムを作成する。そして、作成されたマススペクトログラムを解析することでDNA塩基配列を判定し、本発明の配列表の配列番号1から配列番号12に示されるSNPサイトに相当する部位の塩基が放射線に対して副作用を発症しやすい型の塩基種である場合と、副作用を発症しにくい型の塩基種である場合を1回の反応で判別することが可能である。
このように、MALDI−TOF/MS法では質量分析機を用いてDNA塩基配列を直接判定し、大量かつ高速でSNPタイピングを実現することができるが、本発明におけるDNA塩基配列を決定する手段としてはこれに限定されない。DNA試料を用いてDNAの塩基配列の決定を行う手段として、例えば、スラブゲルあるいはマルチキャピラリーを用いたDNAシーケンサー等によってもSNPタイピングを行うことができる。
(3−2.その他のSNPタイピングの手法)
その他の手法として、例えば、TaqMan PCR法(Livak, K.J. et al., PCR Methods Appl., 4, 357-362(1995);SNP遺伝子多型の戦略、松原謙一・榊佳之、中山書店、94-105頁)、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO:Allele Specific Oligonucleotide)ハイブリダイゼーション法(Baner, J. et al., Nucleic Acids Res, 26, 5073-5078(1998))、Invader法(Lyamichev, V. et al., Nat Biotechnol, 17,292-296(1999);SNP遺伝子多型の戦略、松原謙一・榊佳之、中山書店、94〜105頁、RCA法(rolling circle amplification, Lizardi, P.M et al., Nat Genet, 19, 225-232(1998);Magnus J., TECHNOLOGY DEVELOPMENT FOR GENOME AND POLYMORPHISM ANALYSIS, 23-24(2003), Karolinska University Press, Stockholm, Sweden;SNP遺伝子多型の戦略、松原謙一・榊佳之、中山書店、118〜127頁)、PCR−SSCP法(single-strand conformation polymorphism;一本鎖高次構造多型, Genomics, 12, 139-146(1992);Oncogene, 6, 1313-1318(1991);PCR Methods Appl, 4, 275-282(1995))、制限酵素断片長多型(RFLP:Restriction Fragment Length Polymorphism)を利用した方法やPCR−RFLP法、DNAチップを用いる方法などを挙げることができる。
〔4.放射線治療に用いる放射線〕
本発明において、放射線治療に用いることのできる放射線としては、X線、γ線、重粒子線を好適に用いることができるが、これに限定されることはなく、陽子線、中性子線といった放射線のほか、電子線も用いることができる。
〔5.SNP情報〕
SNPタイピングを行うための情報は、例えば、NCBIのdbSNP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/)や種々の文献情報等に記載されている各遺伝子の情報、およびJSNP DB(http://snp.ims.u-tokyo.ac.jp/)に登録された情報からSNPに関する情報を得ることができる。
〔6.放射線治療における副作用発症予測方法〕
次に、図1を参照して、生体から試料を採取・調製した、配列表の配列番号1から配列番号12に示されるいずれかのDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドのDNA塩基配列を直接解析して、ポリヌクレオチド中に存在する複数のSNPサイトの塩基種を照合し、さらにそのポリヌクレオチドに存在する複数のSNPサイトの塩基種を組み合わせて、放射線によって副作用を発症する危険性が高いか低いかを予測する、放射線治療における副作用発症予測方法について説明する。図1は、本発明の放射線治療における副作用発症予測方法を説明するためのフローチャートである。
本発明に係る放射線治療における副作用発症予測方法は、配列表の配列番号1から配列番号12に示すポリヌクレオチドを用いて判定を行う、下記(a)〜(e)の工程を含むものである。すなわち、(a)生体から採取した試料をもとに、配列表の配列番号1および配列番号2に示されるDNA塩基配列、配列表の配列番号3から配列番号7に示されるDNA塩基配列、配列表の配列番号8から配列番号10に示されるDNA塩基配列、または、配列表の配列番号11および配列番号12に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを調製する工程(ステップS11)と、(b)前記(a)の工程で調製したひとつながりのポリヌクレオチドをもとにDNA増幅産物を増幅して得る工程(ステップS12)と、(c)前記(b)の工程で増幅したDNA増幅産物と、配列表の配列番号37から配列番号48に示されるいずれかの検出用プライマーと、を用いて伸長反応を行ない、DNA伸長反応生成物を得る工程(ステップS13)と、(d)前記(c)の工程で得られたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列を解析する工程(ステップS14)と、(e)前記(d)の工程で解析されたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列のうち、配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示される121番目の位置に相当する塩基と、配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示されるDNA塩基配列の121番目の塩基と、が一致する場合に、前記(c)の工程で得られたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列を有するアレルが指標となるアレルであるか否かを判定した結果であって、前記(a)の工程で得られたポリヌクレオチドに存在する複数のSNPサイトの塩基種を組み合わせて判定・解析した結果に基づいて、前記生体が放射線によって副作用を発症する危険性が高いかまたは低いかを予測する工程(ステップS15)と、を含んでなる。
以下、本発明の放射線治療における副作用発症予測方法の各工程について詳細に説明する。
まず、(a)の工程では、生体から採取した試料をもとに、配列表の配列番号1および配列番号2に示されるDNA塩基配列、配列表の配列番号3から配列番号7に示されるDNA塩基配列、配列表の配列番号8から配列番号10に示されるDNA塩基配列、または、配列表の配列番号11および配列番号12に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを調製する(ステップS11)。
このとき、採取した試料としては、血液を用いるのが好ましいが、これに限定されず、例えば、皮膚、口腔粘膜、毛髪、手術等によって切除された組織など、DNAを含む試料であればどのようなものでも用いることができる。かかる試料を用いれば、染色体DNAなどのDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを好適に抽出することができる。
この工程において、例えば、放射線治療が施行される予定の癌患者から採取した血液(試料)からDNA試料を抽出するには、前記した染色体DNAの調製方法が好適である。しかし、この方法以外に、血液から自動的にDNAを抽出する、自動DNA抽出装置を用いてもよい。大量のサンプルのDNAを抽出する時間を節約することができるうえに操作が簡便だからである。
また、簡便にDNA試料を抽出する他の方法として、各社から販売されている簡易なシステムまたはキットを用いてDNA試料の抽出を行ってもよい。
次に、(b)の工程では、前記(a)の工程で調製したひとつながりのポリヌクレオチドをもとにDNA増幅産物を増幅して得る(ステップS12)。
この工程でポリヌクレオチドのDNA塩基配列を増幅する方法としては、PCR法を好適に用いることができる。PCRに用いるプライマーとしては、例えば、配列表の配列番号13から配列番号36に示すプライマーセットを、配列番号13から順次2つのポリヌクレオチドを1セットとしたPCR増幅用のプライマーセットを用いるのが好ましい。そして、PCRの反応条件としては、例えば、94℃で2分間の熱変性の後、94℃で40秒間の熱変性と、50℃で1分間のアニーリングと、72℃で2分間の伸長反応と、を行なうサイクルを30回繰り返した後、72℃で5分間の最終伸長反応を行うことを好適に示すことができるがこれに限定されることはなく、適宜に条件を変更することも可能である。また、PCR法によらないでもDNA産物を増幅できる場合には、DNAポリメラーゼ等を用いてDNAの増幅を行ってもよい。
次に、(c)の工程では、前記(b)の工程で増幅したDNA増幅産物と、配列表の配列番号37から配列番号48に示されるいずれかの検出用プライマーと、を用いて伸長反応を行ない、DNA伸長反応生成物を得る(ステップS13)。
このとき用いるDNA塩基配列を解析するための伸長用(検出用)のプライマーとしては、本発明の配列表の配列番号37から配列番号48に示すプライマーを用いるのが好ましい。また、伸長反応の条件は、適宜に設定・変更することが可能であるが、各伸長用のキットで指定されている条件とするのが好ましい。
次に、(d)の工程では、前記(c)の工程で得られたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列を解析する(ステップS14)。
ここで、DNA伸長反応生成物のDNA塩基配列を解析する方法としては、前記で詳述したDNA塩基配列を直接解析する方法である、MALDI−TOF/MS法を好適に用いることができるが、これに限定されることはなく、前述した適宜の手法を用いてDNA塩基配列の解析、すなわち、SNPタイピングを行うことができる。
次に、(e)の工程では、前記(d)の工程で解析されたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列のうち、配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示される121番目の位置に相当する塩基と、配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示されるDNA塩基配列の121番目の塩基と、が一致する場合に、前記(c)の工程で得られたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列を有するアレルが指標となるアレルであるか否かを判定した結果であって、前記(a)の工程で得られたポリヌクレオチドに存在する複数のSNPサイトの塩基種を組み合わせて判定・解析した結果に基づいて、前記生体が放射線によって副作用を発症する危険性が高いかまたは低いかを予測する(ステップS15)。
〔7.染色体DNAの調製方法〕
ところで、従来用いられている生体から試料を採取・調製方法には、以下の問題があった。
すなわち、DNA塩基配列に存在する複数のSNPサイトの塩基種を組み合わせて判断することで確実な予測が可能と考えられる。しかしながら、1回のPCR(Polymerase Chain Reaction)反応で増幅できるDNA塩基配列の長さには限りがあり、ひとつながりの染色体DNAを得ることができなかった。そのため、例えば、ひとつながりの染色体DNAに存在する複数のSNPサイトの塩基種を組合せた統計的解析による推定は可能であるが、実際に個人のSNPサイトの塩基種の組合せを知ることは困難であり、SNPサイトの塩基種の組合せによる正確な放射線治療における副作用発症予測ができなかった。
したがって、オーダーメイド放射線治療を具現するためのより正確な指標を設定することができないという問題があった。
さらに、細胞内の染色体は、両親からそれぞれ由来した染色体DNAから構成されているために、画像解析などによって得られるデータは、それぞれの染色体DNAに由来したものとなる。そのため、従来の増幅方法に従って得られたSNPサイトの塩基種は、それぞれの染色体DNA由来のSNPサイトの塩基種が混ざり合うことが多く、染色体DNAごとのSNPを決定することができないという問題があった。
そこで、SNPサイトの塩基種を確実に決定するための染色体DNAの調製方法の実現が望まれている。
そこで、発明者らは、鋭意研究した結果、SNPサイトの塩基種を確実に決定するための染色体DNAの調製方法を完成するに至った。
次に、図2を参照して、生体(例えば、癌患者など)から採取した細胞から人為的な剪断を極力抑制しつつ、できるだけ長鎖の染色体DNA(ひとつながりのポリヌクレオチド)を得るための方法について説明する。図2は、染色体DNAの調製方法を説明するためのフローチャートである。
染色体DNAの調製方法は、生体から採取した試料をもとに、下記(イ)〜(ト)の工程を含むものである。すなわち、(イ)生体から採取した細胞と、界面活性剤およびタンパク質分解酵素を含むアガロースゲル溶液とを混合し、ゲル混合溶液とする工程(ステップS21)と、(ロ)前記(イ)の工程で得られたゲル混合溶液を、細胞一個あたりに含まれる染色体数に相当する容量に分注し、固化してゲルを得る工程(ステップS22)と、(ハ)前記(ロ)の工程で得られたゲルを、タンパク質分解酵素阻害剤溶液内に浸す工程(ステップS23)と、(ニ)前記(ハ)の工程でタンパク質分解酵素阻害剤溶液内に浸したゲルを、アルカリ溶液に浸し、染色体を変性させてから中和する工程(ステップS24)と、(ホ)前記(ニ)の工程で中和がされたゲルを、DNAポリメラーゼ、プライマーおよび基質を含む溶液に浸し、増幅反応または複製反応を行ない、増幅反応産物または複製反応産物を含んだゲルを得る工程(ステップS25)と、(ヘ)前記(ホ)の工程で得られた増幅反応産物または複製反応産物を含んだゲルを、断片化し、加熱しながらゲル断片を溶解して、ゲル断片溶解液とする工程(ステップS26)と、(ト)前記(ヘ)の工程で得られたゲル断片溶解液から抽出された増幅反応産物または複製反応産物から、目的とするアレルを含む染色体DNAを選別する工程(ステップS27)と、を含んでなる。
以下、細胞から染色体DNAを調製する方法の各工程について詳細に説明する。
まず、(イ)の工程では、生体から採取した細胞数十個を、界面活性剤とタンパク質分解酵素(例えば、トリプシン等)が入ったアガロースゲルに加える(ステップS21)。このとき、採取した試料としては、血液を用いるのが好ましいが、これに限定されず、例えば、皮膚、口腔粘膜、手術等によって切除された組織など、DNAを含む試料であればどのようなものでも用いることができる。かかる試料を用いれば、染色体DNAを好適に抽出することができる。
なお、界面活性剤としては、例えば、Triton X-100, Digitonin, n-Octyl-b-D-gulcoside, Sodium chorate, Sodium deoxychorate等のタンパク質分解酵素活性に影響を与えずに効率よく細胞膜および核膜を溶解する性質を有するものを使用するのがよい。
また、タンパク質分解酵素としては、プロティナーゼK、トリプシン、キモトリプシン、リシルエンドぺプチダ−ゼ、ペプシン、V8エンドプロティナーゼ、Arg-C、Glu-C等の界面活性剤により影響を受けないタンパク質分解酵素を使用するのが好ましい。
この工程において、界面活性剤で細胞膜および核膜を破壊し、染色体をゲル溶液中に剥きだしの状態にする。なお、染色体を剥きだしの状態にしておくと、細胞内に含まれる各種酵素などにより、染色体が剪断される可能性がある。そこで、タンパク質分解酵素を加えることで、細胞内に含まれる各種酵素を分解し、酵素による染色体の剪断を防ぐことができる。
また、アガロースは低融解温度アガロースが好ましく、濃度は1%以上、好ましくは3.5%であるほうが処理しやすい。アガロース濃度を3.5%とすることで、最適増幅効率と非鋳型依存増幅の最適抑制効率を得ることができる。ただし、濃度は設計事項であり、適宜設定することができる。
次に、(ロ)の工程では、前記(イ)の工程で得られたゲル混合溶液を、細胞一個あたりに含まれる染色体数に相当する容量に分注し、固化してゲルを得る(ステップ22)。
この工程において、おおよそ細胞一個に含まれる染色体をシリコンチューブなどの容器内にゲルごと閉じ込めることができる。また固化させることで、以降の取り扱いが行ないやすくなる。シリコンチューブの径は設計事項であり、適宜設定できる。なお、細胞一個あたりに含まれる染色体数に相当する量を取り分ける際には、染色体が陰圧などで剪断されないように、ピペットマン等で勢いよく吸い上げるのではなく、非常にゆっくりと吸い上げるか、または先端口径が、直径約1.8mm以上のチップ(例えば、#118-N-MC-Q,Quality Scientific Plastics Inc.製)等を用いるのがよい。
また、ゲルの固定は室温で最低でも10分以上放置し、固化させるのがよい。
次に、(ハ)の工程では、前記(ロ)の工程で得られたゲルを、タンパク質分解酵素阻害剤溶液内に浸す(ステップS23)。
この工程において、染色体を含むゲル混合溶液中のタンパク質分解酵素の反応を止めることができる。浸漬時間はタンパク質分解酵素阻害剤溶液の濃度にもよるが、おおよそ10〜30分間である。ただし、浸漬時間はこれに限られるものではなく、タンパク質分解酵素の反応を止めるだけの時間浸漬していれば十分である。
ここで、タンパク質分解酵素阻害剤としては、Antipain dihydrochloride, (4-Amidinophenyl)-methanesulfonyl fluoride, Aprotinin, Bestatin, Calpain inhibitor I, Calpain inhibitor II, Chymostatin, E-64, Leupeptin, α2-macroglobulin, Pefabloc SC AEBSF, Pepstatin, Phosphoramidon, PMSF, TLCK, TPCK, Trypsin inhibitor等を用いることができる。
次に、(ニ)の工程では、前記(ハ)の工程でタンパク質分解酵素阻害剤溶液内に浸したゲルを、アルカリ溶液に浸し、染色体を変性させてから中和する(ステップS24)。
この工程において、ゲルをアルカリ溶液(例えば、1.5M NaCl,0.5N NaOH)に浸すことで、不要なRNAや細胞内のタンパク質をゲルから取り除き、染色体のクロマチン構造を変性させることができる。アルカリ溶液で染色体を変性させた後に中和溶液で(例えば、1M Tris−HCl(pH7.4),1.5M NaCl)中和することで、変性した染色体のクロマチン構造を元に戻すことができる。
さらに、前記工程で、後記する増幅反応用または複製反応用のプライマーが、鋳型となる染色体DNAと結合しやすい状態にすることができる。
次に、(ホ)の工程では、前記(ニ)の工程で中和がされたゲルを、DNAポリメラーゼ、プライマーおよび基質を含む溶液に浸し、増幅反応または複製反応を行ない、増幅反応産物または複製反応産物を含んだゲルを得る(ステップS25)。
この工程において、30℃で12時間以上、より好ましくは48時間反応をさせることで、ゲル内において、染色体DNAを鋳型として、ほぼ70kbpごとに分けて染色体DNAを増幅または複製することで、全長鎖を増幅または複製することができる。なお、従来のTaqDNAポリメラーゼでは増幅または複製できる長さが限られていたが、Phi29バクテリオファージ由来のDNAポリメラーゼを用いることで、より長くより精確に染色体DNAを増幅または複製することができる。
次に(ヘ)の工程では、前記(ホ)の工程で得られた増幅または複製反応産物を含んだゲルを、断片化し、加熱しながらゲル断片を溶解して、ゲル断片溶解液とする(ステップS26)。
この工程において、反応終了後にゲルをTris−EDTA溶液または純水で洗浄し、ゲルに残っていた余分な基質やプライマーを取り除く。そして、後記する工程のために、ゲルを断片化し、各ゲル断片を反応チューブに移し、以降の工程のためにTris−EDTA溶液または純水を加えて、65℃以上で加熱してゲル断片溶解液とする。
なお、ゲル断片の溶融を確実に行ない、かつ、均一な溶液を得るために、好ましくは94℃で行ったほうがよい。
次に、(ト)の工程では、前記(ヘ)の工程で得られたゲル断片溶解液から抽出された増幅反応産物または複製反応産物から、目的とするアレルを含む染色体DNAを選別する(ステップS27)
この工程においては、前記したプライマーセットを用いて、ゲル断片溶解液に、配列表の(1)配列番号1および配列番号2、(2)配列番号3から配列番号7、(3)配列番号8から配列番号10、(4)配列番号11および配列番号12の4種類の組合せのうち、いずれかの組合せを有する指標アレルを含む染色体DNAが含まれているかを、PCR法および電気泳動法を用いて選別する。選別する手段としては、リアルタイムPCR法によって好適に行なうことができるが、これに制限されることはなく、単にPCR法で増幅したものを、電気泳動法などによって選別しても良い。
この染色体DNAの調製方法によれば、生体から採取した細胞から人為的な剪断を極力抑制しつつ、ひとつながりの染色体DNA(ポリヌクレオチド)を得ることができる。そして、当該染色体DNAを鋳型として好適に遺伝子解析を行なうことができる。また、相同染色体ではなく、染色体DNAごとで増幅反応および遺伝子解析が行なえるので、SNPサイトの塩基種の決定を確実かつ迅速に行なうことができる。
なお、本出願においては、本実施形態で説明した染色体DNAの調製方法は、配列表の配列番号1から配列番号12に示されるいずれかのDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドの抽出およびSNPサイトの塩基種を決めるために用いられたが、これに限られるものではない。すなわち、染色体DNAを用いる実験、例えば遺伝子解析などにも応用可能である。
以上、本発明に係る放射線治療における副作用発症予測方法、および染色体DNAの調製方法について詳細に説明してきたが本発明はこれらの内容に限定して解してはならず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で広く変更・改変して行うことができることはいうまでもない。
(1)本発明の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドに、例えば、蛍光色素、放射性同位元素、蛍光色素発光用酵素、または、特定の物質との結合能を有するタンパク質のうちの少なくとも一つを付加した構成とすることができる。
(2)本発明の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドは、例えば、指標アレルと相補的なDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドと、非指標アレルと相補的なDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドとを、異なる種類の蛍光色素、放射性同位元素、蛍光色素発光用酵素、または、特定の物質との結合能を有するタンパク質、を用いてそれぞれ付加した構成とすることができる。
本発明の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドは、請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド、または、請求項7または請求項8に記載の増幅用プライマーに、蛍光色素、放射性同位元素、蛍光色素発光用酵素、または、特定の物質との結合能を有するタンパク質、を付加した構成とすることができる。
例えば、(3)本発明の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドは、指標アレルと相補的なDNA塩基配列を有する放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドと、非指標アレルと相補的なDNA塩基配列を有する放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドを、異なる種類の蛍光色素、放射性同位元素、蛍光色素発光用酵素、または、特定の物質との結合能を有するタンパク質、を用いてそれぞれ付加した構成とすることができる。
例えば、(4)本発明の放射線治療における副作用発症予測方法は、配列表の配列番号1から配列番号12に示す塩基配列を用いて判定を行う下記(a)〜(e)の工程を含むものであってもよい。
すなわち、(a)生体から採取した試料をもとに配列表の配列番号1および配列番号2に示されるDNA塩基配列、配列表の配列番号3から配列番号7に示されるDNA塩基配列、配列表の配列番号8から配列番号10に示されるDNA塩基配列、または、配列表の配列番号11および配列番号12に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを調製する工程、(b)前記(a)の工程で調製したひとつながりのポリヌクレオチドをもとにDNA増幅産物を増幅して得る工程、(c)前記(b)の工程で増幅したDNA増幅産物と、配列表の配列番号37から配列番号48のうちいずれかに示される検出用プライマーと、をハイブリダイズさせる工程、(d)前記(c)の工程でハイブリダイズした前記検出用プライマーを、ddNTPを用いてアレル特異的に1塩基伸長反応を行ない、伸長産物であるDNA伸長反応生成物を得る工程、(e)前記(d)の工程で得られたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列を解析する工程、(f)前記(e)の工程で解析されたDNA塩基配列のうち配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示される121番目の位置に相当する塩基と、配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示されるDNA塩基配列の121番目の塩基と、が一致する場合に、前記(d)の工程で得られたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列を有するアレルが指標アレルであるか否かを判定した結果であって、前記(a)の工程で得られたDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドに存在する複数のSNPサイトの塩基種を組み合わせて判定・解析した結果に基づいて、前記生体が放射線によって副作用を発症する危険性が高いかまたは低いかを予測する工程、としてもよい。
そして(5)前記のddNTPが、蛍光色素、放射性同位元素、蛍光色素発光用酵素、または、特定の物質との結合能を有するタンパク質、を付加したものとすることができる。
次に、本発明に係る放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド、および放射線治療における副作用発症予測方法を、実施例を参考にしてさらに具体的に説明する。
副作用を発症する危険性を予測するためのSNPの検討は、(1)ヒト培養細胞株における放射線感受性の遺伝子の解析と、(2)マウス系統差における放射線感受性の遺伝子の解析と、(3)文献調査を行い、(4)放射線による副作用の発症に関連した遺伝統計学的解析を行った。
まず、〔1〕ヒト培養細胞株における放射線感受性の遺伝子については、放射線感受性に関わる遺伝子についてこれまでにも多くの報告がある。それらは一部のDNA修復遺伝子など、特定の機能を持った遺伝子に焦点が当てられたものであった。本発明においては、これらの遺伝子についても検討を加えているが、ヒトゲノムの全DNA塩基配列が決定されたことを受けてそのDNA塩基配列情報の解析から遺伝子または遺伝子候補と考えた21,000種類を選択し、Agilent社(CA,USA)に委託してこれらの遺伝子特異的な60塩基のDNA塩基配列を持ったオリゴアレイを作製して、独自に放射線感受性の分類に有効な遺伝子の検索を行った。
まず60種類のヒト培養細胞株の線量−生存率曲線を求め、感受性の異なる32細胞株を選択してX線照射前後の遺伝子発現プロファイルを細胞間で比較し、D10、D、α/βなどの複数のモデルのパラメータ別に細胞株の分類に有効な遺伝子を同定し、放射線感受性遺伝子候補とした。この中には細胞増殖、細胞周期調節、レドックス、DNA損傷修復などに関わると考えられる遺伝子が含まれていた。
次に、〔2〕マウス系統差の解析については、放射線感受性の異なるA/J,C3H/HeMs,C57BL6Jの3系統のマウスに関して、皮膚・肺・腸管等各種臓器における放射線照射後の損傷/修復過程を判定した(M. Iwakawa et al., Radiation Res., 44, 7-13 (2003))。また同時に、マイクロアレイを用いて対象臓器での放射線照射後の遺伝子発現プロファイルを比較し、系統差に関連すると考えられる遺伝子群を抽出した。そして、これら遺伝子のヒトホモログを感受性遺伝子候補とした。この中には、シグナルトランスダクション、アポトーシス、免疫関連の遺伝子が含まれていた。
〔3〕放射線による副作用の発症に関連した遺伝統計学的解析では、候補遺伝子上の多型マーカー(SNPサイト)に関するDNA塩基配列情報は、UCSC Genome Bioinformatics(バージョン:UCSC Human April 2003(http://genome.ucsc.edu/))、JSNP DB(http://snp.ims.u-tokyo.ac.jp/)、dbSNP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/)から得た。収集した健常人集団(SNPサイトの塩基種が非発症群の塩基種である集団)を用いてこれらのアレルの多型頻度を解析し、解析するアレルの選択を行った。
次に、放射線による副作用の発症の判定などによって分類した集団に対してSNPタイピングを行った。研究の対象は、2001年4月から2004年8月までに当該研究を行うことについてのインフォームド・コンセントを取得するとともに血液および診療情報の提供を受けた乳癌患者284人についてまず診療データ解析を行い、多型頻度解析のために層別化を行った。放射線による副作用(障害)の発症は、乳癌患者は皮膚障害を対象とした。そして、各障害別に放射線治療開始から3ヶ月未満(早期のステージ)での判定結果により2群に分類した。
表1は、DNAを採取し、SNPタイピングを行うことについてインフォームド・コンセントを得た乳癌患者について、それぞれ放射線治療開始から早期のステージにおける、DNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドに存在する複数のSNPサイトの塩基種の組合せにおけるアレル頻度を統計学的に求めて示した表である。
すなわち、表1は、乳癌の放射線治療開始から早期のステージにおける乳癌患者群における、DNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドに存在する複数のSNPサイトの塩基種を組合せた場合におけるアレル頻度(例えば、オッズ比や95%信頼区間など)をそれぞれ表す。
なお、表1に記載の二つの集団、すなわち、有害反応なしとありのグループの患者数は、それぞれ140人と44人である。人は両親から染色体DNAを1本づつ受け取り、2本有しているので、表1でハプロタイプについて述べるときには、染色体の数は人数の2倍となる。また、ハプロタイプをもつ人数は統計学的な推定値であり、必ずしも全部足すと総数に等しくなるわけではない。計算上、別の頻度が非常に少ないハプロタイプの人数が1以下の数で存在する、と計算されることもありうる。
そして、表1および表2のA欄からJ欄は、以下の内容を示す。
A欄:各SNPに割り当てられている公共データバンク(NCBIやJSNP(IMS−JST SNP))に登録されているSNP IDとSNPサイトの塩基種の組合せ、つまり、確認できたアレル頻度を示すものである。なお、乳癌については皮膚障害を調査対象とした。
ここで、C−GやT−G−Gは、DNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドに存在する複数のSNPサイトの塩基種の組合せが、C(シトシン)とG(グアニン)、または、T(チミン)とG(グアニン)とG(グアニン)であることを示している。
B欄:障害が認められない(Grade0)か、障害が軽微であった(Grade1(表1中、これらを「Grade≦1」で表す))症例数(n)とその割合を示す。
C欄:放射線治療を行った後に障害が認められた症例数(n)とその割合、そのグレード(Grade2〜4(表1中、これらを「Grade≧2」で表す))を示す。
副作用の度合いは、Grade0,1,2,3,4と、数字が大きくなる程重症であることを示す。早期のステージにおける副作用に対する判定は、国際的な判定基準であるNCI/CTC(National Cancer Institute, Common Toxicity Criteria)に従った。また、放射線治療開始から3ヶ月のステージにおける副作用(障害)に対する判定は、国際的な判定基準であるRTOG(Radiation Therapy Oncology Group)に従った。なお、取得した臨床情報から、癌種に応じて項目を選択し、例えば乳癌では年齢、喫煙、飲酒、合併症、家族病歴、TNM分類、病理検査、化学療法、照射方法、再燃・転移等に関する38項目について解析し、標準化を行い、条件に合致しない症例は多型頻度解析から除外した。
D欄:スコア検定によるP値を示す。生物学における統計学的にはP値が0.05以下である場合、それらには有意な差があるとして評価することができる。なお、本発明では、自由度は全て1としている。また、表1のP値は、ハプロタイプの統計学的推定を行った計算(10000回繰り返して確からしいか計算を行なう)に対するP値である。
E欄:オッズ比を表す。オッズ比は、リスク比または危険率ともいわれ、要因を有する場合(指標アレルの組み合わせによる判定から、放射線感受性である(すなわち、副作用を発症する危険性が高い)と判定されること)に副作用(障害)を発症する危険性を、要因を有さない場合(ほとんど副作用を発症せず、放射線非感受性である(すなわち、副作用を発症する危険性が低い)と判定されること)に副作用を発症する危険性で除算した値である。このオッズ比は、その値が高いほど副作用を発症する危険が高いアレルであることを示す。なお、本実施例においては、各表の最上段のSNPサイトの塩基種の組合せを基準として、他の組合せのオッズ比を算出している。
F欄:95%信頼区間を示す。なお、サンプルの一部のアレル頻度が「0」、または、比較の基準としているために、95%信頼区間が求めることができないデータもある(表1中において「−」で示す)。
具体的に一例をもってその説明を行うと、例えば、表1の一番上に示すSNP ID:rs1926261とrs2296620は、どちらもTGFBR3の遺伝子上に存在するSNPサイトであり、本発明であるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドに存在する複数のSNPサイトに該当する。そして、そのSNPサイトの塩基種の組合せは、C−G,T−A,T−Gのいずれかである。
より詳細に見ていくと、放射線治療開始から早期に皮膚に障害が認められなかった(Grade0,1(Grade≦1))乳癌患者の染色体数の総計は280本(B欄)、皮膚に障害が認められた(Grade2,3,4(Grade≧2))乳癌患者の染色体数の総計は88本であった(C欄)。
ここで、放射線治療開始から早期に皮膚に障害が認められた乳癌患者において、SNPサイトの塩基種の組合せがC−Gであった染色体の本数は40本であるのに対し、放射線治療開始から早期に皮膚に障害が認められなかった乳癌患者の染色体の本数は172本であった。
一方、SNPサイトの塩基種の組合せがT−Gであった染色体の本数は40本であるのに対して、放射線治療開始から早期に皮膚に障害が認められなかった乳癌患者の染色体の本数は83本であった(B,C欄)。
これらの結果をスコア検定により統計学的に解析した結果、乳癌患者において、SNPサイトの塩基種の組合せがC−Gである者のP値は0.0209であり、SNPサイトの塩基種の組合せがT−Gである者のP値は0.0033であった(D欄)。また、SNPサイトの塩基種の組合せがC−Gである者を基準とした場合のSNPサイトの塩基種の組合せがT−Gである者のオッズ比は2.72であり(E欄)、その95%信頼区間は1.25〜5.93であった(F欄)。
また、注目すべきは、表3に示すオッズ比(E欄)である。SNPサイトの組み合わせる塩基種の数を増やせば(A欄)、その分、信憑性が増し、実に基準となる組合せの6.90倍放射線による副作用を発症する危険性が高いと判断できる。
次に表2について説明する。表2は、試験No.1〜4においてスコア検定のP値が0.05より低く、かつオッズ比が高いSNPサイトの組合せであるものと、配列表の配列番号との対応表である。
すなわち、各SNPサイトのSNP ID、SNP allele、SNPサイトを含むDNA塩基配列や各プライマーのDNA塩基配列に対応する配列表の配列番号に対応している。
I欄:本発明のDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドにおいて、含まれるSNPサイト名を示している。
J欄:I欄に示すSNPサイトのアレルを示す。スラッシュ「/」の左が指標アレルであり、右が非指標アレルである。
K欄:本発明のDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドにおいて、I欄に示すSNPサイトを含む各DNA塩基配列の配列番号を示す。
L欄:K欄に示す配列番号のDNA塩基配列をPCRで増幅する際に用いたプライマー(フォワードプライマー)の配列番号を示す。
M欄:K欄に示す配列番号のDNA塩基配列をPCRで増幅する際に用いたプライマー(リバースプライマー)の配列番号を示す。
N欄:K欄に示す配列番号のDNA塩基配列のSNPタイピングを行った際に使用したプライマー(検出用プライマー)の配列番号をそれぞれ示す。なお、本発明の検出用プライマーの中には、配列番号1から配列番号12に示すDNA塩基配列と同じ向きのストランドのDNA塩基配列を有するものと、これと逆向きのストランドのDNA塩基配列を有するものがある。逆向きのストランドである検出用プライマーの場合は、これの3′下流側に付加される塩基と相補的な塩基が、配列番号1から配列番号12のいずれかに示す121番目の塩基(指標アレル)に該当する。
表1と表2の左に記載してある試験No.はそれぞれ対応している。つまり、表1におけるアレル頻度を統計学的に求めるために使用したDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチド(例えば試験No.1)において、SNPサイトを含むDNA塩基配列は、表2の試験No.1のK欄に記載されている配列表の配列番号(この場合は、配列番号1と配列番号2)ということになる。そしてK欄に記載されている配列表の配列番号をPCRで増幅する際には、L欄とM欄に記載されている配列表の配列番号のポリヌクレオチドまたはプライマー(配列番号1に示すDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドを増幅するためには、配列番号13のプライマーと配列番号14のプライマー)を用いることを示している。同様にSNPタイピングを行なった際に使用した検出用プライマーはN欄に記載されている配列表の配列番号のプライマー(配列番号1に示すDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドのSNPタイピングを行なう場合には、配列表の配列番号37のプライマー)を用いることを示している。
以上、本発明で示した表についていくつか説明を行ったが、これは、表1と表2で示すSNP全てに共通するものである。
Figure 2007116905
Figure 2007116905
次に、本発明において行ったSNPタイピングの方法について説明する。SNPタイピングは、染色体DNAの調製と、DNAの増幅と、質量分析によるDNAの塩基配列の決定とで行われる。以下に、SNPタイピングについて詳細に説明する。
(染色体DNAの調製)
まず、放射線治療を施行する癌患者および健常人からインフォームド・コンセントを取得した上で血液を採取した。採取した血液1μlを999μl PBS(−)に加えピペッティングにより懸濁後、血球計算盤により細胞数を計測した。そして、細胞13個に相当する容量を取り、界面活性剤(10%SDS:50μl)とタンパク質分解酵素(1mg/mlプロティナーゼK:1μl)を添加した3.5%アガロース(Nusieve(登録商標) GTG Agarose、TaKaRa社製)ゲル溶液1mlの入った1.5mlのエッペンチューブに加え、42℃で1時間穏やかに撹拌した。
次に、細胞一個あたりに含まれる染色体数に相当する容量の前記ゲル混合溶液を、φ2mmのシリコンチューブに充填し、室温で15分放置し固化させた。シリコンチューブから固化したゲルを取り出し、タンパク質分解酵素阻害剤溶液(コンプリートプロテアーゼインヒビターカクテル(Cat No.#1697498、Roche社製)1錠/50ml Tris−EDTA溶液)に10分間浸し、酵素活性を失活させた。
次に、固化したゲルをアルカリ溶液(1.5M NaCl,0.5N NaOH)に浸し、複製反応用のプライマーが鋳型となる染色体DNAと結合しやすい状態にするために、染色体を変性させた後、中和溶液(1M Tris−HCl,(pH7.4),1.5M NaCl)で中和した。
次に、固化したゲルを反応溶液(DNAポリメラーゼ、プライマー及び基質を含む溶液)100μlに浸し、30℃で48時間増幅反応を行なわせた。反応溶液の組成は、6μlのPhi29バクテリオファージ由来のDNAポリメラーゼ(0.1unit/μl;New England Biolab社製)、24μlの3′末端2塩基をフォスフォチオエステル化したランダムオリゴヌクレオチドヘキサマープライマー(250mM)、5μlの基質25mMdNTPs(TaKaRa社製)、10μlの10×緩衝液(500mM Tris−HCl(pH 7.5)、100mM MgCl2、100mM (NHSO、40mM DTT)、55μlの純水を加えて全量で100μlとした。
次に、増幅反応を済ませたゲルをTris−EDTA溶液で洗浄し、10等分した。各ゲル断片を個別の1.5mlのエッペンチューブに移し、Tris−EDTA緩衝溶液をゲル片の20倍容量加え、94℃で加熱してゲルを溶解させた。
次に、前記ゲルを溶解させたTris−EDTA緩衝溶液を5μlとり、10μlの2×iQ SYBR Green Supermixと、配列表の配列番号13と配列番号14の0.4μlの各10μM 増幅用プライマー(配列表の配列番号1に示すDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドの場合)と、4.2μlの純水を加え、全量で20μlのPCR反応溶液を調製した。
このPCR反応溶液を96ウェルプレートに分注し、サーマルサイクラーにより以下のプログラムでPCR反応を行った。95℃で15分間のHotStar Taqポリメラーゼの活性化を行った後、(a)二本鎖DNAの熱変性条件:95℃で20秒間、(b)アニール条件:60℃で1分間、(c)伸長条件:72℃で3分間という、(a)〜(c)の順に行う反応を50サイクル行い、最後に72℃で3分間の伸長反応を行い、増幅反応産物を得た。
反応溶液中のSYBR Green Iが2本鎖DNAと結合して生じる蛍光シグナルを測定し、シグナル強度の対数的増加(標的遺伝子の対数的増幅)を示すゲル片のスクリーニングを行った。
(プライマーの選択と作製)
SNPタイピングに用いた各フォワードプライマーおよびリバースプライマー、並びに検出用プライマーは、前記〔3〕で述べたSNPに関する情報をもとに、プライマー3.0(http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi)を用いて適宜適切な範囲を選択して作製した。各プライマーは、SIGMA GENOSYS社(シグマアルドリッチジャパン株式会社)またはPROLIGO社(プロリゴ・ジャパン株式会社)に委託して合成した。
(SNPタイピング)
抽出したDNA試料を用いて、MALDI−TOF/MS法によりSNPタイピングを行った。なお、質量分析機はSEQUENOM社製のMassARRAY systemを用いた。MALDI−TOF/MS法によるSNPタイピングは、下記の(1)〜(3)の手順で行われる。
(1)DNAの増幅:
DNA試料を用いて目的とする塩基配列を増幅するため、配列表の配列番号13から配列番号36の奇数番号に示すフォワードプライマー(forward primer)、および、偶数番号に示すリバースプライマー(reverse primer)の中から適宜選択したプライマーセットを用いてPCR反応を行った。
PCRの反応条件としては以下の通りである。0.5μlの10×HotStar Taq緩衝液と、0.2μlのMgClと、0.04μlの25mM dNTPsと、1μlの各1μM PCR プライマーと、0.02μlのHotStar Taq溶液と、1μlのDNA溶液(2.5ng/μl)と、2.24μlの純水を加え、全量で5μlのPCR反応溶液を調製した。
このPCR反応溶液を384ウェルプレートに分注し、サーマルサイクラーにより以下のプログラムでPCR反応を行った。95℃で15分間のHotStar Taqポリメラーゼの活性化を行った後、(a)二本鎖DNAの熱変性条件:95℃で20秒間、(b)アニール条件:56℃で30秒間、(c)伸長条件:72℃で1分間という、(a)〜(c)の順に行う反応を55サイクル行い、最後に72℃で3分間の伸長反応を行った。
(2)SAP反応:
DNAの脱リン酸化反応のために、SAP(Shrimp Alkaline Phosphatase)反応を行った。SAP反応溶液として、0.17μlのhME緩衝液と、0.3μlのSAP溶液と、1.53μlの純水を加えて全量2μlとしたSAP反応溶液を、先のPCR反応を行った後のPCR反応溶液に加え、37℃で20分間の反応を行った後、85℃で5分間の反応を行った。
(3)伸長反応:
次いで、配列表の配列番号37から配列番号48に示す検出用プライマーを用いてPCR反応を行った。SNPとなるDNAの塩基種を決定するためである。反応溶液の組成としては、0.2μlのdNTPs/ddNTPsミックスと、0.054μlの100μM検出用プライマーと、0.018μlのThermo Sequenaseと、1.728μlの純水を加えて全量2μlとした伸長反応溶液を、先のPCR反応溶液とSAP反応溶液とを混合した反応溶液(7μl)に加え、以下のPCR反応条件でPCR反応を行うことでSNPを解析するためのPCR産物を得た。まず、サーマルサイクラーにより94℃で2分間の二本鎖DNAの熱変性を行った後、(a)二本鎖DNAの熱変性条件:94℃で5秒間、(b)アニール条件:52℃で5秒間、(c)伸長条件:72℃で5秒間という、(a)〜(c)の順に行う反応を55サイクル行った。
(4)脱塩処理:
その後、反応溶液9mlあたり脱塩樹脂であるSpectroCLEAN 3mgと、純水16μlを加え、室温で10分間インキュベートして反応溶液を脱塩した。
(5)質量分析:
こうして得られた全量25μlのSNPタイピング用の反応溶液の内、約0.01μlを質量分析用Spectro Chipにスポットし、質量分析を行い、配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示すDNA塩基配列を有する指標アレル(121番目の塩基)のSNPタイピングを行った。
(臨床への応用)
本発明に係るDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチド(放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド)、増幅用プライマーセット、検出用プライマーおよび放射線治療における副作用発症予測方法の臨床における応用は以下の如くである。
例えば、放射線治療をこれから受けようとする癌患者からSNPタイピングによるDNA診断についてのインフォームド・コンセントを取得した後、患者から採取した血液等の試料から配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示すDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを抽出し、プライマーセットを用いて増幅、解析、SNPサイトにおける塩基種を判定・解析するか、または、蛍光標識等を行ったポリヌクレオチドを用いてSNPのタイピングを行う。前述した該当するSNPの塩基種の組み合わせをもとに、この癌患者の放射線治療後による副作用の発症の危険性を算出する。そして、当該癌患者の放射線治療担当医は、算出された危険性を指標として、その癌患者に対する治療後の管理(care)計画に活かしてQOLを高めるなどの治療計画を適切に行うことができる。
このように、本発明に係るDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチド(放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド)、増幅用プライマーセット、検出用プライマーおよび放射線治療における副作用発症予測方法を用いることによって、現在、何ら予測手段をもたない放射線による副作用の発症のリスクに対し、科学的根拠をもった予測を行うことが可能となる。
本発明の放射線治療における副作用発症予測方法を説明するためのフローチャートである。 本発明の細胞からのDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを調製する方法を説明するためのフローチャートである。

Claims (15)

  1. 配列表の配列番号1および配列番号2に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドであって、
    前記配列番号1の121番目の塩基がTであり、
    前記配列番号2の121番目の塩基がGであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド。
  2. 配列表の配列番号3から配列番号7に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドであって、
    前記配列番号3の121番目の塩基がTであり、
    前記配列番号4の121番目の塩基がTであり、
    前記配列番号5の121番目の塩基がTであり、
    前記配列番号6の121番目の塩基がGであり、
    前記配列番号7の121番目の塩基がTであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド。
  3. 配列表の配列番号8から配列番号10に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドであって、
    前記配列番号8の121番目の塩基がAであり、
    前記配列番号9の121番目の塩基がCであり、
    前記配列番号10の121番目の塩基がGであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド。
  4. 配列表の配列番号11および配列番号12に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドであって、
    前記配列番号11の121番目の塩基がCであり、
    前記配列番号12の121番目の塩基がTであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド。
  5. 請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドにおいて、121番目の塩基以外の塩基が1個若しくは数個欠失、置換若しくは付加しているひとつながりのポリヌクレオチド、または、これらの相補的なDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド。
  6. 請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチド、または、この放射線治療における副作用発症予測用ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするひとつながりのポリヌクレオチドであることを特徴とする放射線治療における副作用発症用ポリヌクレオチド。
  7. 配列表の配列番号13から配列番号36に示されるDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドのうち、配列番号13から順次2つのポリヌクレオチドを1セットとして用いることを特徴とする増幅用プライマーセット。
  8. 配列表の配列番号13から配列番号36に示されるDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドのうち、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加したことを特徴とする請求項7に記載の増幅用プライマーセット。
  9. 配列表の配列番号37から配列番号48のいずれかに示されるDNA塩基配列からなることを特徴とする検出用プライマー。
  10. 配列表の配列番号37から配列番号48に示されるDNA塩基配列を有するポリヌクレオチドのうち、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加したことを特徴とする請求項9に記載の検出用プライマー。
  11. 配列表の配列番号1および配列番号2に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを利用する放射線治療における副作用発症予測方法であって、
    前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号1の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号2の121番目の位置に相当する塩基と、を解析するステップと、
    前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号1の121番目の位置に相当する塩基がT、前記配列番号2の121番目の位置に相当する塩基がGである場合に、副作用発症の危険性が高いと予測するステップと、
    を含むことを特徴とする放射線治療における副作用発症予測方法。
  12. 配列表の配列番号3から配列番号7に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを利用する放射線治療における副作用発症予測方法であって、
    前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号3の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号4の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号5の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号6の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号7の121番目の位置に相当する塩基と、を解析するステップと、
    前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号3の121番目の位置に相当する塩基がT、前記配列番号4の121番目の位置に相当する塩基がT、前記配列番号5の121番目の位置に相当する塩基がT、前記配列番号6の121番目の位置に相当する塩基がG、前記配列番号7の121番目の位置に相当する塩基がTである場合に、副作用発症の危険性が高いと予測するステップと、
    を含むことを特徴とする放射線治療における副作用発症予測方法。
  13. 配列表の配列番号8から配列番号10に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを利用する放射線治療における副作用発症予測方法であって、
    前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号8の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号9の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号10の121番目の位置に相当する塩基と、を解析するステップと、
    前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号8の121番目の位置に相当する塩基がA、前記配列番号9の121番目の位置に相当する塩基がC、前記配列番号10の121番目の位置に相当する塩基がGである場合に、副作用発症の危険性が高いと予測するステップと、
    を含むことを特徴とする放射線治療における副作用発症予測方法。
  14. 配列表の配列番号11および配列番号12に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを利用する放射線治療における副作用発症予測方法であって、
    前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号11の121番目の位置に相当する塩基と、前記配列番号12の121番目の位置に相当する塩基とを解析するステップと、
    前記ポリヌクレオチドのうち、前記配列番号11の121番目の位置に相当する塩基がC、前記配列番号12の121番目の位置に相当する塩基がTである場合に、副作用発症の危険性が高いと予測するステップと、
    を含むことを特徴とする放射線治療における副作用発症予測方法。
  15. (a)生体から採取した試料をもとに、配列表の配列番号1および配列番号2に示されるDNA塩基配列、配列表の配列番号3から配列番号7に示されるDNA塩基配列、配列表の配列番号8から配列番号10に示されるDNA塩基配列、または、配列表の配列番号11および配列番号12に示されるDNA塩基配列を有するひとつながりのポリヌクレオチドを調製する工程と、
    (b)前記(a)の工程で調製したひとつながりのポリヌクレオチドをもとにDNA増幅産物を増幅して得る工程と、
    (c)前記(b)の工程で増幅したDNA増幅産物と、配列表の配列番号37から配列番号48に示されるいずれかの検出用プライマーと、を用いて伸長反応を行ない、DNA伸長反応生成物を得る工程と、
    (d)前記(c)の工程で得られたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列を解析する工程と、
    (e)前記(d)の工程で解析されたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列のうち、配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示される121番目の位置に相当する塩基と、配列表の配列番号1から配列番号12のいずれかに示されるDNA塩基配列の121番目の塩基と、が一致する場合に、前記(c)の工程で得られたDNA伸長反応生成物のDNA塩基配列を有するアレルが指標となるアレルであるか否かを判定した結果であって、前記(a)の工程で得られたポリヌクレオチドに存在する複数のSNPサイトの塩基種を組み合わせて判定・解析した結果に基づいて、前記生体が放射線によって副作用を発症する危険性が高いかまたは低いかを予測する工程と、
    を含むことを特徴とする放射線治療における副作用発症予測方法。
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