JP2007113778A - 流体軸受装置およびこれを備えたモータ - Google Patents
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Abstract
【課題】高い回転性能を安定して発揮し得る流体軸受装置を低コストに提供する。
【解決手段】 流体軸受装置1は、小径部10aとその軸方向両側に配置された第1大径部10bおよび第2大径部10cとを一体成形した樹脂部10、および小径部10aの外周に配置された芯部11からなる軸受部材7と、第1大径部10bの内径側に配置されたシール部材9と、小径部10aとの間でラジアル軸受隙間を形成する軸部材2と、ラジアル軸受隙間に満たされた潤滑油の油膜で軸部材2をラジアル方向に回転自在に支持するラジアル軸受部R1、R2とを備える。樹脂部10の肉厚、具体的には、小径部10aと大径部10b、10c、連結部10d、10eの肉厚は、芯部11の存在により全体として略均一に形成される。
【選択図】図2
【解決手段】 流体軸受装置1は、小径部10aとその軸方向両側に配置された第1大径部10bおよび第2大径部10cとを一体成形した樹脂部10、および小径部10aの外周に配置された芯部11からなる軸受部材7と、第1大径部10bの内径側に配置されたシール部材9と、小径部10aとの間でラジアル軸受隙間を形成する軸部材2と、ラジアル軸受隙間に満たされた潤滑油の油膜で軸部材2をラジアル方向に回転自在に支持するラジアル軸受部R1、R2とを備える。樹脂部10の肉厚、具体的には、小径部10aと大径部10b、10c、連結部10d、10eの肉厚は、芯部11の存在により全体として略均一に形成される。
【選択図】図2
Description
本発明は、流体軸受装置およびこれを備えたモータに関するものである。流体軸受装置は、情報機器、例えばHDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等のスピンドルモータ用、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイール、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用の軸受装置として好適である。
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化などが求められている。これらの要求性能を決定付ける構成要素の一つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、この種の軸受として、上記要求性能に優れた特性を有する流体軸受装置の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
この種の流体軸受装置は、軸受隙間内の潤滑油に動圧を発生させるための動圧発生部を備えた動圧軸受と、動圧発生部を備えていない、いわゆる真円軸受(軸受断面が真円形状である軸受)とに大別される。
流体軸受装置の一例として、軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部およびスラスト方向に支持するスラスト軸受部の双方を動圧軸受で構成する場合がある(いわゆる動圧軸受装置)。この種の流体軸受装置として、例えば軸受部材(文献中では「回転体」と称されている)の内周面とラジアル軸受隙間を介して対向する軸部材(文献中では「ラジアル軸受」と称されている)の外周面に動圧発生部としての動圧溝を形成し、ラジアル軸受部を動圧軸受で構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平8−93750号公報
近年、この種の流体軸受装置が組み込まれる情報機器等は低価格化の傾向を強めており、これに伴い流体軸受装置に対する低コスト化の要求が益々厳しくなっている。かかる要求に対応するため、例えば上記特許文献1に示す流体軸受装置では、軸受部材を金属製のものから樹脂製のものに置き換えることで、流体軸受装置の低コスト化を図っている。
一般的に、樹脂成形品は成形コストを考慮して射出成形される場合が多い。射出成形による成形品では、樹脂材料が固化する際の収縮による形状(肉厚)変化が避けられず、特に薄肉に成形された部分よりも厚肉に成形された部分ではその傾向が顕著になる。ところで、軸受装置のラジアル軸受部では、ラジアル軸受隙間を介して対向する二面(例えば、軸受部材の内周面と軸部材の外周面)間の距離を高精度かつ均一に形成することが軸受性能を維持するために必要不可欠である。したがって、ラジアル軸受隙間を介して対向する二面は、非常に高い円筒度等の精度を要求される。
上記特許文献1に示す流体軸受装置において、ラジアル軸受隙間と対向する軸受部材は、全て樹脂で形成されており、かつ軸方向で極端な肉厚差を有する構造となっている。この構造では、厚肉部分と薄肉部分における収縮量の差により、軸受部材内周面の円筒度や真円度等の悪化を招く恐れがある。したがって、この軸受部材をそのまま軸受装置に用いた場合、ラジアル軸受隙間の幅は軸方向で不均一となる恐れがあり、かかるラジアル軸受隙間幅の不均一化はラジアル軸受部における軸受性能の低下を招く。射出成形後に、例えば研磨・切削加工等の仕上げ加工を行うことで上記各種精度を確保することも考えられるが、別工程を設ける必要があるため高コスト化を招く。
また、上述のように極端な肉厚差を有する軸受部材では、温度変化時、例えば高温時における熱変形量(膨張量)が厚肉部分と薄肉部分とで大きく異なる。そのため、これらの膨張差に起因して内周面の形状精度が低下する恐れがある。これでは、優れた回転性能を安定的に発揮することは難しい。
そこで、本発明は、高い回転性能を安定して発揮し得る流体軸受装置を低コストに提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は、軸受部材と、軸受部材の内周に挿入される軸部材と、軸受部材と軸部材との間に形成されるラジアル軸受隙間とを備え、ラジアル軸受隙間に形成された流体の潤滑膜で軸部材をラジアル方向に相対回転自在に支持するものにおいて、軸受部材が、小径部とその軸方向両側もしくは一方側に配置された大径部とを一体成形した樹脂部、および小径部の外周に配置された芯部からなり、小径部の内周面と軸部材の外周面との間でラジアル軸受隙間を形成することを特徴とする流体軸受装置を提供する。
上記構成によれば、厚肉となっていた軸受部材の一部軸方向領域(小径部)の一部が芯部で置き換えられるので、軸受部材を構成する樹脂部の、大径部と小径部との間の肉厚差を小さくすることができる。完成品としての樹脂部の肉厚差が小さいということは、成形時における樹脂部の収縮差を樹脂部全体で小さくできることを意味する。そのため、軸部材の真円度等を高めておけば、小径部の内周面と軸部材の外周面との間に形成されるラジアル軸受隙間幅を軸方向でばらつきなく形成することができる。この他にも、例えば、大径部の内径側にシール部材を配置する場合であれば、シール部材の固定(配置)精度を高め、当該シール部材と軸部材との間に形成されるシール空間(シール空間の容積)を高精度に管理することもできる。
また、樹脂部の大径部と小径部との間の肉厚差を小さくすることで、例えば高温時においても、半径方向への熱変形量(熱膨張量)は大径部と小径部とでそれほど変わらない。そのため、これら大径部と小径部とで構成される樹脂部の内周面の形状精度を維持して、ラジアル軸受隙間幅の変動を極力小さく抑えることができる。
また、樹脂部の小径部外周に芯部を配置しているので、芯部が金属材料など樹脂材料よりも線膨張係数が小さい材料で形成されていれば、例えば軸受運転中のように軸受装置の内部温度が上昇する時でも小径部の径方向への膨張、すなわちラジアル軸受隙間幅の拡大を抑制することができ、ラジアル軸受の剛性低下を抑制することができる。
以上の作用は、芯部をスリーブ状に形成することで、すなわち、芯部を小径部の外周にかつ全周に亘って配置することでより一層顕著に得ることができる。
あるいは、芯部の肉厚を円周方向で異ならせることで、円周方向で肉厚差を有する軸受部材に対しても上記と同様の作用を得ることができる。
例えば、この種の流体軸受装置において、小径部と大径部とを連結する連結部の端面と、軸部材の端面との間にスラスト軸受隙間を形成することで、軸部材を、ラジアル方向に加えスラスト方向でも流体の潤滑膜で回転自在に支持できるようになるが、この場合には、スラスト軸受隙間をシール空間と連通するための流体流路を設ける必要が生じる場合が多い。そのため、例えば軸受部材に、流体を軸方向に流通可能とするための複数の貫通孔を設けることで、貫通孔を介して、スラスト軸受隙間とシール空間との間で流体を流通可能としている。しかしながら、かかる場合には、貫通孔を設けた箇所と設けない箇所とで樹脂部の肉厚が大きく異なり、これが原因で成形時の収縮量が一定しない恐れがある。
これに対して、相対的に肉厚を異ならせた芯部の厚肉部と薄肉部のうち、厚肉部を、貫通孔と円周方向で交互に配置されるよう小径部の外周に設ければ、貫通孔を設けた箇所と設けない箇所との間で樹脂部の肉厚差を極力小さくすることができる。そのため、肉厚差(成形時収縮量の差)に起因するラジアル軸受隙間の周方向でのばらつきを小さく抑えることができる。
貫通孔は、実際には、樹脂部の成形と同時に成形され、また、その際には、樹脂部(軸受部材)の成形型に、貫通孔に対応した形状の型(成形ピンなど)が設けられる。そのため、貫通孔を、その断面積を軸方向で異ならせた形状とすることで、成形ピンの、貫通孔の大径部に対応する箇所で、小径部に比べて成形ピンの剛性あるいは強度を高めることができる。また、貫通孔の一部を大径部とすることで小径部の軸方向幅を軸受部材の軸方向寸法に比べて小さくすることができるので、かかる小径部に対応する成形ピンの剛性や強度を改善することができる。従って、軸受部材(樹脂部)の軸方向寸法に比べて貫通孔の径が小さい場合であっても、成形ピンの剛性や強度を確保して、かかる成形ピンの折損を極力防ぐことができ、これにより貫通孔の成形性を高めることができる。また、この種の軸受部材を備えた流体軸受装置においては、軸受内部の含油量がどうしても不足しがちになるが、上述のように、貫通孔の断面積を軸方向で異ならせることで、大径部における流体の保持量が増すので、これにより軸受装置全体の含油量(あるいは循環油量)の向上を図ることが可能となる。
上記構成の軸受部材は、例えば芯部を成形型に保持した状態で樹脂を射出し、樹脂部を成形することにより形成することができる(アウトサート成形あるいはインサート成形)。射出成形であれば、型精度を高めておくだけで軸受部材に要求される各種精度(例えば、円筒度や真円度等)を容易かつ高精度に管理することができる。したがって、高精度に形成された樹脂部を一体に有する軸受部材が低コストに量産可能となる。
ところで、上記射出成形時、樹脂部の肉厚が厚すぎると、固化時の収縮に伴うヒケの発生や熱膨張量のばらつきが発生し、軸受性能の低下を招く恐れがある。その一方、樹脂部の肉厚が薄すぎると、樹脂の流動性が低下、つまり成形性が低下する恐れがある。従って、樹脂部の肉厚は0.1mm〜2.0mmの範囲内、より好ましくは0.25mm〜1.2mmの範囲内に定めるのが望ましい。ただし、樹脂部の肉厚は、固化時の収縮等に問題がない場合には2.0mmよりも厚く、また、成形時の流動性に問題がない場合には0.1mm未満に形成することもできる。
樹脂部の小径部内周面には、ラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させるための動圧発生部を形成することができる。この構成であれば、射出成形型に当該動圧発生部に対応した形状を形成しておくだけで、射出成形と同時に動圧発生部が形成されるので、別途動圧発生部を形成する手間を省き製造コストの低減を図ることができる。また、同様にして、樹脂部の連結部端面には、スラスト軸受隙間に流体動圧を発生させるための動圧発生部を形成することもできる。もちろん、動圧発生部の形状やその寸法よっては、対向する軸部材の側に動圧発生部を設けたほうが好ましい場合もあるため、動圧発生部の形成箇所は軸受部材の側に限らない。
軸受隙間に流体動圧を発生させるための動圧発生部は、軸受隙間に流体動圧を発生させることができれば特にその形態を問わず、例えば、例えば複数の溝(ヘリングボーン状溝、スパイラル状溝、軸方向溝等)を有するもの、あるいは、軸受隙間を円周方向の一方または双方にくさび状に縮小させる複数の円弧面を有するもの等が含まれる。
通常、軸受部材(流体軸受装置)は、例えば接着等の手段により、その外周の軸方向一部あるいは全領域がブラケット(保持部材)に保持、固定される。ここで例えば、軸受部材の外周が全て樹脂材料で形成されている場合、一般的に樹脂―金属間の接着強度は金属同士のそれよりも著しく劣るため、使用条件等によっては軸受装置がブラケットから脱落する恐れがある。これに対して、芯部の外周面のうち全面あるいは一部を樹脂部から露出させた構成とすることで、芯部の外周面が保持部材との固定面として使用できるので、上記のような不具合の発生を防止することができる。この場合、芯部は、ブラケットと同材料あるいは接着剤との親和性に優れた材料(例えば金属)で形成されることが望ましく、また、接着面積をなるべく多くとるため、スリーブ状とするのがよい。
芯部は、上述のように外周面を露出させる他、芯部の端面のうち全面あるいは一部を樹脂部から露出させた構成を採ることもできる。この場合には、芯部の端面を、樹脂部成形時の位置決め面として使用することができ、これにより、樹脂部の大径部および小径部の肉厚をより一層高精度に管理することができる。
以上の構成を有する流体軸受装置は、ロータマグネットと、ステータコイルとを有するモータ、例えば情報機器用のスピンドルモータ等に好ましく用いることができる。
以上のように、本発明によれば、高い回転性能を安定して発揮し得る流体軸受装置を低コストに提供することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明における『上下』方向は単に各図における上下方向を便宜的に示すもので、流体軸受装置の設置方向や使用態様等を特定するものではない。後述する他実施形態の説明についても同様である。
図1は、本発明の一実施形態に係る流体軸受装置を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。この情報機器用スピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、流体軸受装置(動圧軸受装置)1と、流体軸受装置1の軸部材2に取り付けられたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、ブラケット(保持部材)6とを備えている。ステータコイル4はブラケット6の外周に取り付けられ、ロータマグネット5は、ディスクハブ3の内周に取り付けられている。ディスクハブ3は、その外周に磁気ディスク等のディスクDを一枚または複数枚保持する。ブラケット6の内周に流体軸受装置1の軸受部材7が装着されている。ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する励磁力でロータマグネット5が回転し、それに伴ってディスクハブ3およびディスクハブ3に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
図2に示すように、本実施形態にかかる流体軸受装置1は、軸受部材7と、軸受部材7の内周に挿入された軸部材2と、軸受部材7の一端開口側に固定されたシール部材9と、軸受部材7の他端側に設けられた蓋部材8とを主要な構成部材として備える。
軸部材2は、例えばステンレス鋼等の金属材料で形成された軸部2aと、軸部2aの外径側に張り出し軸部2aと一体又は別体のフランジ部2bとで構成される。また、軸部材2は金属部分と樹脂部分からなるハイブリッド構造とすることもできる(例えば、軸部2aを金属材料で形成し、フランジ部2bを樹脂材料で形成する)。軸部2aの外周面2a1は、この実施形態では動圧発生部としての動圧溝等を有さない真円状に形成される。同様に、フランジ部2bの両端面2b1、2b2は、動圧発生部としての動圧溝等を有さない平滑な平坦面に形成される。
軸受部材7は、樹脂部10と、樹脂部10を構成する小径部10aの外周に配置された芯部11とからなる樹脂と金属の複合体である。
芯部11は、この実施形態では金属材料でスリーブ状に形成される。この芯部11は、例えば切削やプレス加工等に代表される機械加工、あるいは鍛造加工で形成可能である。この他、例えば金属粉末とバインダー(ワックスと樹脂の混合材料)を用いた金属粉末射出成形(MIM成形)や、低融点金属材料を用いた溶融金属の射出成形で形成することもできる。あるいは、後述するブラケット6との接着性に支障を来さないのであれば、芯部11を形成する材料として焼結金属を用いることも可能である。なお、本実施形態において、芯部11の内周面11aは平滑な円筒面として、また両端面は平滑な平坦面として形成されている。
樹脂部10は、例えば上記のようにして形成された芯部11を成形型に保持した状態で樹脂を射出することにより、芯部11と一体に形成される(アウトサート成形、あるいはインサート成形)。射出成形であれば、成形型を高精度に形成しておくだけで高精度な軸受部材7を安定して量産可能である。
樹脂部10は、軸部2aの外周面2a1とラジアル軸受隙間を介して対向する円筒状の小径部10aと、小径部10aの一端側に位置し、小径部10aと一体に形成される第1大径部10b、および小径部10aの他端側に位置し、小径部10aと一体に形成される第2大径部10cとを有する。この実施形態では、樹脂部10は、小径部10aと第1大径部10bとの間に設けられ、両者10a、10bを連結する第1連結部10dと、小径部10aと第2大径部10cとの間に設けられ、両者10a、10cを連結する第2連結部10eとをさらに有する。双方の連結部10d、10eはそれぞれ、小径部10aの両端から外径側に延び、かつ円盤状をなしている。
樹脂部10を形成する樹脂材料としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えばLCP(液晶ポリマー)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の結晶性樹脂が使用可能である。また、耐油性に関し特に問題がないのであれば、例えばポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)等の非晶性樹脂を使用することもできる。これら樹脂材料には、機械的強度をはじめ様々な特性を付与するため、例えばガラス繊維、炭素繊維等の充填材を適宜配合することができる。なお、充填材は一種だけでなく、二種以上を混合して配合することもできる。
軸受部材7(小径部10a)の内周面10a1には、図3に示すように、2つの動圧発生部A、Aが軸方向に離隔して設けられている。この実施形態では、上側の動圧発生部Aが、複数の動圧溝10a11をヘリングボーン形状に配列してなる。また、下側の動圧発生部Aも、複数の動圧溝10a12をヘリングボーン形状に配列してなる。これら動圧溝10a11、10a12および溝間領域はインサート成形時に型成形される。上側の動圧溝10a11は、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。そのため、軸部材2と軸受部材7との相対回転時、上側の動圧溝10a11による流体(例えば、潤滑油)の引き込み力(ポンピング力)は下側の対称形の動圧溝10a12に比べ相対的に大きくなる。
また、第2連結部10eの下側端面10e1の全面あるいは一部環状領域には、動圧発生部Bが設けられている。動圧発生部Bは、この実施形態では、図4に示すように、複数の動圧溝10e11をスパイラル形状に配列してなる。これら動圧溝10e11も、上記小径部10aの内周面10a1に形成された動圧溝と同様、インサート成形と同時に型成形可能であるため、別途動圧溝を形成する手間を省いて、製造コストの低減を図ることができる。
この実施形態では、軸受部材7とは別体の蓋部材8が軸受部材7の下端側に配置される。この蓋部材8は、円筒状の側部8aと、側部8aの下端開口を封口する底部8bとを一体に備えた有底円筒状に形成される。底部8bの上側端面8b1の全面あるいは一部環状領域には、図示は省略するが、例えば複数の動圧溝をスパイラル状に配列した領域(動圧発生部C)が形成される。
上記構成の蓋部材8は、側部8aの外周面8a1が軸受部材7(樹脂部10)の第2大径部10cの内周面10c1に接着等の適宜の手段で固定される。この際、軸部材2のフランジ部2bは、軸受部材7の樹脂部10の下側端面10e1と蓋部材8の底部8bの上側端面8b1との間に形成された空間に収容される。そのため、側部8aの上側端面8a2と底部8bの上側端面8b1との間の軸方向間隔を予め高精度に形成しておけば、蓋部材8の固定時、後述する双方のスラスト軸受部T1、T2のスラスト軸受隙間幅の総和が高精度に管理される。
軸受部材7の開口部、すなわち樹脂部10の第1大径部10bの内周には、金属材料や樹脂材料で形成された環状のシール部材9が配置され、本実施形態では、例えば接着等の手段で第1大径部10bの内周面10b1に固定される。本実施形態においてシール部材9は、ステンレス鋼や黄銅等の金属材料で形成されている。シール部材9の内周面9aは上方に向かうにつれてテーパ状に拡径しており、軸部2aの外周面2a1と所定のシール空間Sを介して対向する。シール部材9で密封された流体軸受装置1の内部空間には、流体として例えば潤滑油が充満される。この状態で、潤滑油の油面はシール空間Sの範囲内に維持される。
上記構成の流体軸受装置1において、軸受部材7と軸部材2とが相対回転すると(この実施形態では、軸部材2が回転すると)、軸部2aの外周面2a1のラジアル軸受面となる上下2つの領域は、それぞれ軸受部材7を構成する樹脂部10の小径部10aの内周面10a1とラジアル軸受隙間を介して対向する。軸部材2の回転に伴い、ラジアル軸受隙間に満たされた潤滑油が動圧発生部A、Aによる動圧作用を生じ、これにより生じた高圧の油膜で軸部材2がラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが形成される。
また、軸受部材7(樹脂部10)の第2連結部10eの下側端面10e1に形成されたスラスト軸受面(動圧発生部B形成領域)は、フランジ部2bの上側端面2b1とスラスト軸受隙間を介して対向する。軸部材2が回転すると、スラスト軸受隙間に満たされた潤滑油が動圧発生部Bによる動圧作用を生じ、これにより生じた高圧の油膜で軸部材2をスラスト方向に回転自在に非接触支持する第1スラスト軸受部T1が形成される。同様に、蓋部材8の底部8bの上側端面8b1に形成されたスラスト軸受面(動圧発生部C形成領域)は、フランジ部2bの下側端面2b2とスラスト軸受隙間を介して対向する。軸部材2が回転すると、スラスト軸受隙間に満たされた潤滑油が動圧発生部Cによる動圧作用を生じ、これにより生じた高圧の油膜で軸部材2をスラスト方向に回転自在に非接触支持する第2スラスト軸受部T2が形成される。
なお、軸部材2の回転中、何らかの理由でスラスト軸受部T1、T2のスラスト軸受隙間における圧力が極端に高まり、あるいは低下する事態が想定され、これに起因する潤滑油中での気泡の発生や潤滑油の漏れ、あるいは振動の発生等が懸念される。この場合、例えば図2に示すように、潤滑油を、シール空間Sとスラスト軸受隙間との間で流通可能とする流体流路12を設けることで、スラスト軸受隙間とシール空間Sとの圧力差を早期に解消して、上記の弊害を防止することができる。この図示例では、軸受部材7に、樹脂部10)の第1連結部10dの上側端面10d1と第2連結部10eの下側端面10e1とを連通させる軸方向の貫通孔12aが設けられる。また、第1連結部10dの上側端面10d1に径方向の溝12b、および蓋部材8の上側端面8a2に径方向の溝12cがそれぞれ複数本設けられている。この場合、スラスト軸受隙間→径方向溝12c→貫通孔12a→シール部材9の面取り部9b1→径方向溝12bという経路を経てシール空間Sとスラスト軸受隙間との間で潤滑油が流動する。なお、図2では一例として、径方向溝12bを第1連結部10dの上側端面10d1に形成する場合を例示しているが、かかる径方向溝12bをシール部材9の下側端面9bに形成することもできる。
ここで、従来のように、軸方向で極端に肉厚が異なる構造の樹脂製の軸受部材では、固化時における厚肉部分と薄肉部分での収縮量の違いにより、軸受部材に要求される高い円筒度や真円度を得ることができず、その結果、ラジアル軸受部における軸受性能の低下を招く恐れがあった。これに対し、当該実施形態における流体軸受装置1の軸受部材7では、ラジアル軸受隙間と対向し、最も厚肉となっている軸方向領域(最大肉厚部)を、樹脂部10と、樹脂部10(小径部10a)の外周に配置された金属製の芯部11とで形成したため、最大肉厚部における小径部10aの肉厚の一部を芯部11に置き換えることができる。
そのため、樹脂部10全体の肉厚がなるべく均一となるように樹脂部10(軸受部材7)を形成することができ、この実施形態でいえば、各大径部10b、10cや連結部10d、10eの肉厚を小径部10aの肉厚と略等しくすることができ、これにより小径部10aとの肉厚差に起因した固化時の収縮による大径部10b、10cにおける円筒度や真円度、および連結部10d、10eにおける平面度の悪化等を防止することができる。従って、ラジアル軸受隙間幅を高精度に管理することができるだけでなく、シール部材9の固定を高精度に行い、シール空間Sの幅(容積)を高精度に管理することができる、蓋部材8の固定を高精度に行うことができる、スラスト軸受隙間幅を高精度に管理することができる等多くのメリットを享受することができる。
ところで、樹脂部10の肉厚が厚すぎる場合、具体的には樹脂部10の肉厚を2.0mmよりも厚く形成する場合、固化時の収縮によるヒケが発生する恐れがあるばかりでなく、成形後の温度変化による寸法変化の発生が懸念される。樹脂部10は上述のとおり軸受面となる場合や、他部材の固定面となる場合もあるから、この種の現象は軸受性能の低下を招く要因となる。そのため、樹脂部10の肉厚は2.0mm以下、より好ましくは1.2mm以下であるのが望ましい。一方、樹脂部10の肉厚が薄すぎる場合、具体的には樹脂部10の肉厚を0.1mm未満に形成する場合、成形時における成形型内での樹脂の流動性悪化に伴う成形精度の悪化が懸念される。そのため、樹脂部10の肉厚は0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上であるのが望ましい。なお、樹脂部10の肉厚は、成形時の流動性が問題とならない場合には0.1mm未満に、また、固化時の収縮等が問題とならない場合には2.0mmより厚く形成することもできる。なお、図面上では樹脂部10の肉厚が全体的に略均一幅に描かれているが、軸受部材7を樹脂部10と芯部11とで構成することによる上述のメリットが享受し得る限りにおいて、樹脂部10の肉厚を一部異ならせて形成することも可能である。
また、上記構成によれば、金属製の芯部11が樹脂部10の補強部材として機能する。すなわち、金属材料は樹脂材料よりも線膨張係数が小さく、さらに、高い剛性を有するため、樹脂部10の小径部10aの外径側に配置された金属製の芯部11が小径部10aの外径寸法を拘束する。このとき、特に流体軸受装置1の運転時のように装置内部が高温になる場合でも小径部10aの径方向への膨張が抑制される。したがって、軸部2aの外周面2a1と軸受部材7(小径部10a)の内周面10a1との間に形成されるラジアル軸受隙間の隙間幅を常時一定に保つことができ、高温時におけるラジアル軸受剛性の低下を抑制することができる。
流体軸受装置1(軸受部材7)は、モータに組み込まれる際、その外周面の軸方向領域の一部又は全部を金属製のブラケット(保持部材)6に接着、圧入接着等の手段で保持される。このとき、例えば特許文献1のように軸受部材7が全て樹脂材料で形成されていると、ブラケット6との固定面は全て樹脂材料となる。しかしながら、一般的に樹脂―金属材料間での接着強度は、金属材料同士でのそれと比べて著しく劣るため、使用状況によっては流体軸受装置1がブラケット6から脱落する恐れがある。これに対し本発明では、軸受部材7を構成する金属製の芯部11を金属製のスリーブ状に形成し、かつその外周面11bを樹脂部10から露出させたので、かかる外周面11bをブラケット6の内周面との接着固定面として使用することができる。これにより両者間での十分な接着強度を得ることができ、耐久性に優れたモータを提供することができる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、以下示すような流体軸受装置(動圧軸受装置)1においても好ましく用いることができる。なお、以下の説明では、基本的に図2に示す実施形態と同一の構成、作用を有する部材および要素には共通の参照番号を付して重複説明を省略する。
図5は、他の実施形態に係る流体軸受装置(動圧軸受装置)1を示している。この実施形態に係る流体軸受装置1では、蓋部材8が有底筒状ではなく、円盤状に形成されている。これに伴い、樹脂部10における第2連結部10eと第2大径部10cの境界内径側には段部10hが形成され、当該段部10hに蓋部材8の上側端面8b1を当接させることで、両スラスト軸受隙間幅の総和が所定値に規定される。
図6は、他の実施形態に係る流体軸受装置(動圧軸受装置)1を示している。この実施形態に係る流体軸受装置1では、スラスト軸受部が軸部材2を非接触支持する動圧軸受ではなく、接触支持するいわゆるピボット軸受で構成されている。そのため、軸部2aの下側端面2a2が凸球状に形成されている。樹脂部10は、小径部10aの下端開口を封口する底部10fを一体に備える有底筒状に形成され、併せて芯部11も有底筒状に形成されている。そして、軸部材2の回転に伴い、樹脂部10の底部10fの上側端面10f1で軸部材2の下側端面2a2が接触支持される。
以上の実施形態では、シール部材9を樹脂部10の第1大径部10bの内周面10b1に固定し、シール空間Sを軸部2aの外周面2a1との間に形成する形態を示したが、シール部材9を軸部2aの外周面2a1に固定し、シール空間Sをシール部材9の外周に形成することもできる。図7はその一例を示すもので、同図における流体軸受装置1は、外径寸法が略一定の軸部2aの一端外周に、シール部材9(第1シール部材9)を固定すると共に、軸部2aの他端外周に、別のシール部材13(第2シール部材13)を固定してなる軸部材2を備える点で、先に示した(図2や図5に示した)流体軸受装置1と構成を異にする。また、この図示例では、第1シール部材9の外周面9cと第1大径部10bの内周面10b1との間、および第2シール部材13の外周面13cと第2大径部10cの内周面10c1との間にそれぞれテーパ形状を有するシール空間Sが形成される。第1連結部10dの上側端面10d1には、例えば図4に示す形状(スパイラルの向きは逆)の動圧発生部Cが形成され、この領域と対向する第1シール部材9の下側端面9bとの間に、第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間が形成される。また、第2連結部10eの下側端面10e1に形成された動圧発生部Bとこれに対向する第2シール部材13の上側端面13bとの間に、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間が形成される。
また、以上の実施形態では、スリーブ状をなす芯部11を小径部10aの外周に配置した場合を説明したが、もちろんこれ以外の形状をなす芯部11を設けることも可能である。図8はその一例を示すもので、同図に示す流体軸受装置1は、主に芯部11の肉厚を円周方向で異ならした点、および流体流路12をなす貫通孔12aの断面積を軸方向で異ならせた点で、先に示した流体軸受装置1と構成を異にする。なお、この実施形態では、動圧発生部Aを、軸受部材7の側ではなくこれと対向する軸部2aの側(外周面2a1)に設けた場合を例示している。かかる動圧発生部Aの形成手段には、例えば切削加工、プレス加工(鍛造、転造等を含む)、印刷(インクジェット等を含む)等の手段が使用可能である。
詳述すると、芯部11は、相対的に肉厚の異なる複数の厚肉部14および薄肉部15を一体的かつ円周方向で交互に配した形態を有する。また、軸受部材7を軸方向に貫通する貫通孔12aは、軸方向でその断面積を異ならせた形態をなし、第1連結部10dの上側端面10d1の開口側で比較的大径(大径部12a1)に、第2連結部10eの下側端面10e1の開口側で比較的小径(小径部12a2)に形成されている。さらにこの実施形態では、小径部12a2の下端と、第2連結部10eの下側端面10e1の開口側との間に、小径部12a2よりも更に小径の極小径部12a3が形成されている。また、大径部12a1と小径部12a2との間には、大径部12a1から小径部12a2に向けて内径寸法を漸次縮小させたテーパ部12a4が設けられ、大径部12a1と小径部12a2とを連結している。
これら複数の貫通孔12aと芯部11(厚肉部14および薄肉部15)の、円周方向における配置態様を図9に示す。同図に示すように、厚肉部14と薄肉部15および貫通孔12aは何れも同数配設されており、厚肉部14と貫通孔12aとが円周方向で交互に配置されている。薄肉部15は、この図示例では何れも、貫通孔12aのうち小径部12a2の内径側にのみ位置し(図8を参照)、これにより、樹脂部10の、貫通孔12aの内周領域の肉厚が極力均一となるようにしている。また、この実施形態では、芯部11の厚肉部14は、その内周面14aおよび外周面14bを樹脂部10の小径部10aおよび外周被覆部10gによって被覆されている。
上述の如く芯部11を配設することにより、すなわち、軸方向および円周方向でその肉厚を異ならせた芯部11を使用することで、貫通孔12aを設けた箇所と設けない箇所との間で樹脂部10の肉厚差を極力小さくすることができる。そのため、肉厚差(成形時収縮量の差)に起因するラジアル軸受隙間の周方向でのばらつきを小さく抑え、高い軸受性能を発揮することができる。
また、この実施形態では、小径部12a2よりも更に小径でかつ軸方向寸法の短い極小径部12a3を、第2連結部10eの下側端面10e1の開口側に設けたので、成形時のピンの折損を極力避けつつも、スラスト軸受隙間に面する領域、特に、図4に示す動圧発生部Bの面積を外径方向に拡張することができる。これにより、スラスト方向への支持力を高めることができ、例えばディスクDの積載枚数の増加など、回転体(軸部材2やディスクハブ3)の重量が増加する場合にも、高い回転精度を安定して発揮することができる。同時に、軸受部材7に設けられた貫通孔12aのうち、圧力の逃げを考慮する必要がない側(シール部材9の側)に大径部12a1を設けることにより、大径部12a1を含む軸受内部における潤滑油の保有領域を増加させることができる。かかる構成は、この実施形態のように、軸受部材7を、内部空孔を持たない構造体で形成して、ラジアル軸受隙間やスラスト軸受隙間以外の潤滑油保有領域が比較的小さい場合に特に有効である。
図10は、他の実施形態に係る流体軸受装置1を示している。同図における流体軸受装置1は、主に、小径部10aの一端側にのみ大径部(第2大径部10c)を有し、これにより樹脂部10の上側端面10d1(に設けられた動圧発生部C)と、これに対向するディスクハブ3の円盤部3aの下側端面3a1との間に第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する点、および軸受部材7の外周上端にテーパ面10g1を設け、このテーパ面10g1と、この面に対向するディスクハブ3の筒部3bの内周面3b1との間にシール空間Sを形成している点で先の実施形態に係る流体軸受装置1(図8を参照)と構成を異にする。
芯部11は、この実施形態では、相対的に肉厚の異なる複数の厚肉部14および薄肉部15、16を一体的かつ円周方向で交互に配した形態を有する。ここで、薄肉部15は、貫通孔12aの内周側に、薄肉部16は貫通孔12aの外周側にそれぞれ位置する。ここで、薄肉部16は、上側端面10d1およびテーパ面10g1に対応した外表面形状(図10でいえば断面形状)をなし、これにより樹脂部10の、薄肉部16周辺の領域の肉厚がなるべく均一になるようにしている。また、両薄肉部15、16は共に複数の厚肉部14、14間に位置し、両厚肉部14、14を連結している。
上述の如く芯部11を配設することにより、樹脂部10の肉厚が軸方向および円周方向で一定しない場合であっても、樹脂部10の肉厚差を全体に亘って極力小さくすることができる。そのため、肉厚差(成形時収縮量の差)に起因するラジアル軸受隙間幅のばらつき、あるいはスラスト軸受隙間幅のばらつきを共に小さく抑えて高い軸受性能を発揮することができる。
また、以上の説明では、成形品(軸受部材7)における芯部11の外周面11b(あるいは厚肉部14の外周面14bなど)を樹脂部10から露出させた構成を採った場合を例示したが、これに代えて、芯部11の一端面あるいは両端面を樹脂部10から露出させた構成を採ることも可能である。図11はその一例を示すもので、芯部11の厚肉部14の一端面(上側端面)14cを樹脂部10から露出させ、かかる一端面14cにシール部材9の下側端面9bを当接配置している。また、図示は省略するが、厚肉部14の他端面も樹脂部10から露出させている。かかる構成によれば、例えば軸受部材7のインサート成形時、インサート部品となる芯部11の一端面(厚肉部14の一端面14c)あるいは両端面を、芯部11の位置決め面として使用することができる。そのため、樹脂部10の各部(小径部10aや大径部10b、10c、連結部10d、10eなど)の肉厚をより一層高精度に管理することができる。また、このようにして各厚肉部14の位置決め保持が可能であれば、例えば図9において複数の厚肉部14のみを円周方向に離隔して配置した構成、すなわち、複数の芯部11を円周方向に離隔して配置した構成を採ることも可能となる。
また、芯部11の位置決め(主に軸方向)を、ピンを用いて行うこともできる。図12はその一例を示すもので、芯部11の一端面(ここでは厚肉部14の一端面)の一部を樹脂部10から露出させた構成をなしている。この場合、樹脂部10の第1連結部10dには、厚肉部14の位置決め時に用いたピンに対応した孔10d2が開孔しており、この孔10d2を介して芯部11(厚肉部14)の端面の一部が露出している。もちろん、この場合も芯部11(厚肉部14)の両端面を開孔することができる。この際、さらに芯部11を焼結金属で形成すれば、その両端を開孔した芯部11(厚肉部14)を保油部材として使用することができ、潤滑油の保有領域をより一層増加させることが可能となる。
なお、芯部11は、インサート成形を前提に考える場合、少なくとも樹脂部10の成形材料よりも溶融温度の高い材料で形成されるものであればよく、あるいは温度変化時の変形を考慮して、樹脂部10よりも線膨張係数の小さい材料で形成されるものであればよい。そのため、上記金属材料に限らず、樹脂やセラミックスなどの材料が使用可能である。もちろん、双方の特長を備える材料で芯部11を形成するのが好ましく、例えば上述の金属材料がこれに該当する。さらにいえば、焼結金属のように加工性(あるいは成形性)に優れた材料であればなおよい。もちろん、芯部11と樹脂部10とをそれぞれ別体で形成した後、これらをアセンブリ化することも可能である。この場合、樹脂部10との間で相応の固定力が得られるのであれば、芯部11の材質は特に問わない。
また、以上の説明では、ラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させるための動圧発生部Aを、軸受部材7(樹脂部10)の内周面10a1、あるいはこれと対向する軸部2aの外周面2a1の側にも形成可能である旨記載したが、動圧発生部Aに限らず、スラスト軸受隙間に動圧作用を生じる動圧発生部B、Cについても同様に構成可能である。すなわち、動圧発生部Bは、スラスト軸受隙間を介して対向するフランジ部2bの上側端面2b1に形成してもよい。また、動圧発生部Cは、対向するフランジ部2bの下側端面2b2やシール部材9の下側端面9b、あるいはディスクハブ3の下側端面3a1の側に形成してもよい。
また、以上の説明では、ラジアル軸受部R1、R2を構成する軸受として、へリングボーン状やスパイラル状に配列された複数の動圧溝からなる動圧発生部を有する軸受を例示しているが、動圧発生部の構成はこれに限定されるものではない。
例えば、ラジアル軸受部R1、R2として、円周方向複数箇所でラジアル軸受隙間を円周方向の一方又は双方にくさび状に縮小させた形状とした、いわゆる多円弧軸受の他、軸方向に延びる動圧溝を円周方向等間隔に配した、いわゆるステップ軸受を採用しても良い。
図13は、ラジアル軸受部R1、R2の一方又は双方を多円弧軸受で構成した場合の一例を示している。この例では、軸受部材7の内周面10a1のラジアル軸受面となる領域が、3つの円弧面33で構成されている(いわゆる3円弧軸受)。3つの円弧面33の曲率中心は、それぞれ、軸受部材7(軸部2a)の軸中心Oから等距離オフセットされている。3つの円弧面33で区画される各領域において、ラジアル軸受隙間は、円周方向の両方向に対して、それぞれ楔状に漸次縮小したくさび状隙間35である。そのため、軸受部材7と軸部2aとが相対回転すると、その相対回転の方向に応じて、ラジアル軸受隙間内の潤滑油がくさび状隙間35の最小隙間側に押し込まれて、その圧力が上昇する。このような潤滑油の動圧作用によって、軸受部材7と軸部2aとが非接触支持される。なお、3つの円弧面33相互間の境界部に、分離溝と称される、一段深い軸方向溝を形成しても良い。
図14は、ラジアル軸受部R1、R2の一方又は双方を多円弧軸受で構成した場合の他の例を示している。この例においても、軸受部材7の内周面10a1のラジアル軸受面となる領域が、3つの円弧面33で構成されているが(いわゆる3円弧軸受)、3つの円弧面33で区画される各領域において、ラジアル軸受隙間は、円周方向の一方向に対して、それぞれ楔状に漸次縮小したくさび状隙間35である。このような構成の多円弧軸受は、テーパ軸受と称されることもある。また、3つの円弧面33相互間の境界部に、分離溝34と称される、一段深い軸方向溝が形成されている。そのため、軸受部材7と軸部2aとが所定方向に相対回転すると、ラジアル軸受隙間内の潤滑油がくさび状隙間35の最小隙間側に押し込まれて、その圧力が上昇する。このような潤滑油の動圧作用によって、軸受部材7と軸部2aとが非接触支持される。
図15は、ラジアル軸受部R1、R2の一方又は双方を多円弧軸受で構成した場合の他の例を示している。この例では、図14に示す構成において、3つの円弧面33の最小隙間側の所定領域θが、それぞれ、軸受部材7(軸部2a)の軸中心Oを曲率中心とする同心の円弧で構成されている。従って、各所定領域θにおいて、ラジアル軸受隙間(最小隙間)は一定になる。このような構成の多円弧軸受は、テーパ・フラット軸受と称されることもある。
以上の各例における多円弧軸受は、いわゆる3円弧軸受であるが、これに限らず、いわゆる4円弧軸受、5円弧軸受、さらに6円弧以上の数の円弧面で構成された多円弧軸受を採用しても良い。
上記のラジアル軸受部R1、R2の一方又は双方は、ステップ軸受で構成することもできる(図示省略)。ステップ軸受は、例えば軸受部材7(樹脂部10)の内周面10a1のラジアル軸受面となる領域に、複数の軸方向溝形状の動圧溝を円周方向所定間隔に設けたものである。
なお、以上の説明では、ラジアル軸受部を、ラジアル軸受部R1、R2のように、2つのラジアル軸受部を軸方向に離隔して設けた構成を例示しているが、軸方向の上下領域に亘って1つのラジアル軸受部を設けた構成としても良い。また、ラジアル軸受部を軸方向3箇所以上に離隔して設けることもできる。
ここで、多円弧面あるいはステップ面からなる動圧発生部を軸受部材7の内周に形成する場合には、本発明の構成上、上述のものと異なる方法を採用することができる。例えば図16に示すように、芯部11の内周面に複数の円弧面11a1(図示例では3円弧)を形成した場合、樹脂部10を射出成形する際に、樹脂部10の内周面を真円状に形成形する(図中、点線で示す)。このとき、樹脂部10は円周方向でその肉厚が異なる形となる。この場合、樹脂部10は固化するに伴い、その厚肉部分、すなわち円弧面同士が交わる部分で図中の白抜き矢印方向のヒケが大きくなるから、結果的に樹脂部10の内周面形状は芯部11の内周面形状に倣う形で複数の円弧面36を有する多円弧状となる。なお、このように芯部11の内周面を多円弧面とすることで、樹脂部10との回り止めとすることもできる。
また、以上の説明では、ラジアル軸受部R1、R2を動圧軸受で構成した場合を例示したが、これ以外の軸受で構成することもできる。例えば図示は省略するが、軸受部材7の内周面10a1を動圧溝や円弧面を有さない真円状内周面に形成すると共に、この内周面とラジアル軸受隙間を介して対向する軸部2aの外周面2a1を真円状外周面とすることで、いわゆる真円軸受を構成することもできる。
また、図示は省略するが、スラスト軸受部を図4に示すような動圧発生部を有する構成とする場合、スラスト軸受部T1およびT2のうち一方又は双方は、例えば、スラスト軸受面となる領域に、複数の半径方向溝形状の動圧溝を円周方向所定間隔に設けた、いわゆるステップ軸受や波型軸受(ステップ型が波型になったもの)等で構成することもできる。
さらに、以上の説明では、流体軸受装置1の内部に充満し、ラジアル軸受隙間やスラスト軸受隙間に動圧を発生させるための流体として潤滑油を例示したが、これ以外にも各軸受隙間に動圧を発生可能な流体、例えば空気等の気体や、磁性流体等の流動性を有する潤滑剤、あるいは潤滑グリース等を使用することもできる。
1 流体軸受装置
2 軸部材
2a 軸部
6 ブラケット
7 軸受部材
9 シール部材
10 樹脂部
10a 小径部
10b、10c 大径部
10d、10e 連結部
11 芯部
14 厚肉部
A、B、C 動圧発生部
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
S シール空間
2 軸部材
2a 軸部
6 ブラケット
7 軸受部材
9 シール部材
10 樹脂部
10a 小径部
10b、10c 大径部
10d、10e 連結部
11 芯部
14 厚肉部
A、B、C 動圧発生部
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
S シール空間
Claims (12)
- 軸受部材と、軸受部材の内周に挿入される軸部材と、軸受部材と軸部材との間に形成されるラジアル軸受隙間とを備え、ラジアル軸受隙間に形成された流体の潤滑膜で軸部材をラジアル方向に相対回転自在に支持する流体軸受装置において、
軸受部材が、小径部とその軸方向両側もしくは一方側に配置された大径部とを一体成形した樹脂部、および小径部の外周に配置された芯部からなり、小径部の内周面と軸部材の外周面との間でラジアル軸受隙間を形成することを特徴とする流体軸受装置。 - 芯部がスリーブ状をなす請求項1記載の流体軸受装置。
- 芯部の肉厚を円周方向で異ならせた請求項1記載の流体軸受装置。
- 軸受部材に、流体を軸方向に流通可能とするための複数の貫通孔を設けると共に、芯部の厚肉部と貫通孔とを円周方向で交互に配置した請求項3記載の流体軸受装置。
- 貫通孔の断面積を軸方向で異ならせた請求項4記載の流体軸受装置。
- 小径部と大径部とを連結する連結部の端面と、軸部材の端面との間にスラスト軸受隙間を形成した請求項1記載の流体軸受装置。
- 軸受部材が、射出成形により芯部と一体に形成された樹脂部を備える請求項1記載の流体軸受装置。
- 小径部の内周面に、ラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させるための動圧発生部を備える請求項1記載の流体軸受装置。
- 連結部の端面に、スラスト軸受隙間に流体動圧を発生させるための動圧発生部を備える請求項6記載の流体軸受装置。
- 芯部の外周面のうち全面あるいは一部を樹脂部から露出させた請求項1記載の流体軸受装置。
- 芯部の端面のうち全面あるいは一部を樹脂部から露出させた請求項1記載の流体軸受装置。
- 請求項1〜11の何れかに記載の流体軸受装置と、ロータマグネットと、ステータコイルとを有するモータ。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN105449890A (zh) * | 2014-09-17 | 2016-03-30 | 日本电产株式会社 | 马达 |
-
2006
- 2006-03-20 JP JP2006077330A patent/JP2007113778A/ja not_active Withdrawn
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