JP2007107586A - 無段変速機用ベルトおよび無段変速機 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ブロックのプーリーに対する片当たりを矯正して、摩耗を防止する。
【解決手段】 複数のブロック2を環状に配列するとともにこれらのブロック2を帯状のリング3,4で結束して構成され、溝の幅を変更可能な少なくとも一対のプーリーに前記ブロック2が挟み付けられるように前記溝に巻き掛けられる無段変速機用ベルトであって、前記ブロック2と前記リング3,4との間の摩擦係数μ1,μ2が、前記溝幅方向での一方で相対的に大きく、かつ他方で相対的に小さく設定されている。
【選択図】 図1
【解決手段】 複数のブロック2を環状に配列するとともにこれらのブロック2を帯状のリング3,4で結束して構成され、溝の幅を変更可能な少なくとも一対のプーリーに前記ブロック2が挟み付けられるように前記溝に巻き掛けられる無段変速機用ベルトであって、前記ブロック2と前記リング3,4との間の摩擦係数μ1,μ2が、前記溝幅方向での一方で相対的に大きく、かつ他方で相対的に小さく設定されている。
【選択図】 図1
Description
この発明は、溝幅を変更できる少なくとも一対のプーリーに巻き掛けられてこれらのプーリーの間で動力を伝達し、かつ溝幅の変化に応じてプーリーに対する巻き掛け半径が変化して変速比を連続的に変化させる無段変速機用ベルトおよびそのベルトを使用した無段変速機に関するものである。
この種のベルトとして、多数のブロック(もしくはエレメント)と称される金属片を環状に配列し、これらのブロックを金属製のリング(もしくはフープ)と称される帯状材で結束した構成のベルトが知られている。そのブロックの左右両側面は、プーリーの溝を形成しているテーパー状の二面(コーン面)に接触するように、いわゆるV字状の傾斜面として構成されている。そして、その傾斜面がプーリーのコーン面に接触することにより、両者の間で生じる摩擦力によって動力を伝達するように構成されている。
また、その摩擦力を確保するために、プーリーによってブロックを挟み付けるように構成されており、これは、具体的には、プーリーが、固定プーリーと、これに対向する可動プーリーとによって構成され、可動プーリーを固定プーリー側に押圧することにより、これら固定プーリーと可動プーリーとの間にブロックを挟み付けるようになっている。そして、このような挟持力(もしくは挟圧力)に対抗してベルトが環状を維持するように、各ブロックがリングによって結束されている。
上記のリングは、各プーリーの間では、直線状に引っ張られるが、プーリーに巻き掛かっている部分は、その巻き掛け半径に応じた曲率で湾曲する。このような形状の変化が、無段変速機の動作中に繰り返し生じるので、従来では、薄板状の環状材を積層して前記リングを構成している。このような構成のリングでは、これを構成している薄板状の環状材同士の間で摩擦が生じ、これに加えて最内層の環状材とブロックとの間でも摩擦が生じる。それらの各部位での摩擦力が相違することによるリングの耐久性を防止するために、特許文献1の発明では、リングとブロックとの間の摩擦係数と、リングを構成している各薄板状の環状部材同士の間の摩擦力とを一致させるように構成している。
前述したように、プーリーは、巻き掛けられたベルトを挟み付けるために固定プーリーと可動プーリーとによって構成されており、その可動プーリーは、固定プーリーと一体の軸に対して軸線方向に移動自在であると同時に一体となって回転する必要があるので、可動プーリーを前記軸に対してスプラインを介して取り付けることが行われる。そのスプラインとしてボールスプラインを使用した例が、特許文献2に記載されており、この特許文献2の発明では、そのボールスプラインに作用するトルクを低減して、その耐久性を向上させるために、可動プーリーとベルトとの接触部の摩擦係数が、固定プーリーとベルトとの接触部の摩擦係数より低くなるように構成している。
特開平11−117998号公報
特開平11−82653号公報
従来のベルト式の無段変速機では、上記のように、プーリーを固定プーリーと可動プーリーとによって構成しているので、変速比を変えるために、一方のプーリーにおける可動プーリーを固定プーリー側に移動し、かつ他方のプーリーにおける可動プーリーを固定プーリーから離れる方向に移動させた場合、それぞれのプーリーにおける溝幅方向の中心位置が変動する。したがって、各プーリーにおける溝幅方向での中心位置が相対的にずれている状態では、一方のプーリーに巻き掛かっている部分でのベルトの幅方向の中心と、他方のプーリーに巻き掛かっている部分でのベルトの幅方向の中心とが、軸線方向に相対的にずれてしまい、各プーリーの間のいわゆる直線部分は、各プーリーに対して斜めに張られることになる。すなわち芯ズレが生じる。
したがって、芯ズレが生じている状態では、プーリーに対してブロックが斜めになって進入する。すなわち、ブロックが、プーリーの中心軸線を含む面に対して平行にならずに、傾斜した姿勢でプーリーの溝に進入する。そのために、ブロックの左右両端部が、プーリーのコーン面に片当たり(もしくは肩当たり)し、その結果、両者の接触面積が小さくなって、接触面圧が増大し、これが原因となって、ブロックやコーン面の摩耗が進行する可能性がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、プーリーに対するブロックの姿勢を矯正してブロックやプーリーの摩耗を抑制することのできる無段変速機用ベルトおよびそのベルトを使用した無段変速機を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、複数のブロックを環状に配列するとともにこれらのブロックを帯状のリングで結束して構成され、溝の幅を変更可能な少なくとも一対のプーリーに前記ブロックが挟み付けられるように前記溝に巻き掛けられる無段変速機用ベルトにおいて、前記ブロックと前記リングとの間の摩擦係数が、前記溝幅方向での一方で相対的に大きく、かつ他方で相対的に小さく設定されていることを特徴するベルトである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記溝幅方向での一方は、変速比が“1”より大きい状態でかつ前記ブロックがいずれかのプーリーの溝にそのプーリーの中心軸線を含む面に対して傾斜して進入する際に、そのブロックの進行方向に対して遅れる端部側であることを特徴とする無段変速機用ベルトである。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のベルトを備えた無段変速機であって、前記プーリーにおける前記溝を形成する二つの面のうちの一方の面の摩擦係数が、他方の面の摩擦係数より小さく設定されていることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記一方の面は、前記ブロックと前記リングとの間の摩擦係数が相対的に大きく設定されている前記溝幅方向での一方に近い面であることを特徴とする無段変速機である。
請求項1の発明によれば、ベルトがプーリーに巻き掛かっている部位では、ブロックとプーリーとの間で動力を受け渡す箇所すなわち接触部と、リングがブロックに接触している箇所とのプーリーの中心からの半径が異なっているから、ブロックとリングとの間に相対的な滑りが生じる。そして、このブロックとリングとの間の摩擦係数が、プーリーの溝幅方向での両側で異なっているので、摩擦係数の大きい一方の側で、この部分をベルトの走行方向の前方側に押す力が生じ、これがブロックの向きを変化させるモーメントとなる。そのため、プーリーの溝に進入するブロックの向きが、そのトルクによって是正され、その結果、ブロックのプーリーに対するいわゆる片当たりやそれに伴うブロックもしくはプーリーの摩耗を抑制もしくは防止することができる。
また、請求項2の発明によれば、いわゆる駆動側のプーリーに対する巻き掛け半径が相対的に小さく、ブロックとプーリーとの間で滑りが生じ易い状態で、ブロックのプーリーに対する傾きを是正もしくは矯正できるので、ブロックのプーリーに対するいわゆる片当たりやそれに伴うブロックもしくはプーリーの摩耗を、より確実に抑制もしくは防止することができる。
さらに、請求項3および4の発明によれば、ベルトのいわゆる芯ズレが生じている状態であっても、ベルトを構成しているブロックのプーリーに対する姿勢もしくは傾きを更に積極的に矯正して、ブロックのプーリーに対するいわゆる片当たりやそれに伴うブロックもしくはプーリーの摩耗を抑制もしくは防止し、ひいては耐久性に優れた無段変速機を得ることができる。
つぎに、この発明を図面を参照して具体的に説明する。図1にこの発明に係るベルト1の一部を示してあり、このベルト1は、多数のブロック2を、それぞれの向きを揃えて環状に配列し、これを二本のリング3,4で結束して構成されている。そのブロック2は、例えば図2に示すように、金属製の板片状の部材であって、その幅方向における左右の両側面5,6がブロック2を正面から見た状態でいわゆるV字状に傾斜した面として形成された基体(本体)部分である板部7を有し、その傾斜した左右側面5,6が動力の伝達に関与する摩擦面となっている。
その板部7の幅方向における中央部に、図2での上方に延びた首部8が形成されている。その首部8の上端部には、板部7の幅方向での両側に傘状に延びた頭部9が首部8と一体に形成されている。したがって板部7の図2での上側のエッジ部分と頭部9の図2での下側のエッジ部分との間に、図2での左右方向に開いたスリット部(溝部)10,11が形成されている。このスリット部10,11は、互いに密着して環状に配列されたブロック2を環状に結束するためのリング3,4を挿入して巻き掛けるための部分であり、したがって板部7の図2での上側のエッジ部分が、リング3,4の内周面を接触させて載せるサドル面12,13となっている。
このブロック2は、互いにほぼ密着した状態で環状に配列され、かつリング3,4によって結束されるので、ベルト1の全体として湾曲する部分で、密着状態を維持して滑らかに湾曲するようにするために、各ブロック2の図2での下側の部分(環状に配列した状態での中心寄りの部分)が薄肉化されている。すなわち、板部7の一方の面(例えば図2における正面)における前記サドル面12,13より所定寸法下がった(オフセットされた)部分から下側の部分が削り落とされた状態で次第に薄肉化されている。したがって、各ブロック2が扇形に拡がって接触する状態、言い換えると、各ブロック2が円弧状に湾曲して配列されてベルト1として湾曲する場合に、その板厚の変化する境界部分で接触する。この境界部分のエッジが、ロッキングエッジとなっている。
また、各ブロック2の頭部9には、隣接するブロック2同士の相対的な位置を決めるための凸部(ディンプル)14とその反対側の凹部(ホール)(図示せず)とが形成されている。すなわち、前述した首部8の延長位置(あるいは頭部9の中央部)に凸部14が形成され、この凸部14とは反対側の面に凹部(ホール)が形成されている。
つぎにリング3,4について説明すると、これらのリング3,4は、金属製の薄い帯状材を複数枚積層して構成されている。そして、一方のリング3が、向きを揃えて環状に配列された多数のブロック2における一方のスリット部10に挿入され、また他方のリング4が他方のスリット部11に挿入され、それぞれのリング3,4がサドル面12,13に接触している。そして、各リング3,4とブロック2との間の摩擦係数が異なっている。すなわち一方のリング3とサドル面12との摩擦係数μ1と、他方のリング4とサドル面13との間の摩擦係数μ2とが異なっている。
摩擦係数μ1,μ2をこのように異ならせているのは、リング3,4とブロック2との間に滑りが生じた場合の摩擦力を利用してブロック2に対してその姿勢(もしくは向き)を矯正するトルクを生じさせるためである。したがって、ブロック2もしくはベルト1の走行方向に対して後退している(もしくは遅れている)側端部において摩擦力が大きく、これとは反対側で摩擦力が相対的に小さくなるように構成されている。
ブロック2の姿勢を矯正する必要があるのは、前述したベルトの芯ズレが生じた場合であるが、無段変速機の変速比が“1”もしくはこれに近い値にある場合に、ベルト1の芯ズレがほぼゼロとなるように構成するのが一般的であり、したがって変速比が“1”もしくはこれに近い値より大きい場合と小さい場合とでは、芯ズレの方向が反対となり、それに伴ってブロック2の姿勢のズレも反対になる。このような構成であれば、ブロック2の姿勢を矯正する方向が反対になるが、変速比が大きい状態でのブロック2の姿勢を矯正する要請が強いので、左右いずれの側の摩擦係数μ1,μ2を大きくするかは、変速比が大きい状態でのベルト1の芯ズレの向きを考慮して決めればよい。
また、摩擦係数μ1,μ2を異ならせるためには、基本的には、互いに接触する面の状態を異ならせればよく、例えば、各リング3,4の最内層の内径面すなわちブロック2に接触する面の状態もしくは構成を異ならせればよい。具体的には、いずれか一方のリング3,4の最内層の内径面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)やタングステンあるいはTiN(窒化チタン)などのコーティング層を形成してその摩擦係数μ1,μ2を低下させ、あるいは反対にWPC(マイクロショットピーニング)や溝加工などによって摩擦係数μ1,μ2を増大させればよい。また、上記のコーティング層や面粗さを粗くする加工などは、ベルト3(もしくは4)に替えて、ブロック2のサドル面12(もしくは13)に施してもよい。
上記のベルト1が使用される無段変速機は、図3に示すように、中心軸線を互いに平行にして配置された駆動プーリー15と従動プーリー16とを備えている。これらのプーリー15,16は、軸線方向に対して固定された固定プーリー15A,16Aと、その固定プーリー15A,16Aに対して接近・離隔するように軸線方向に対して移動可能に設けられた可動プーリー15B,16Bとから構成されており、それぞれの可動プーリー15B,16Bをその背面側に設けられた油圧アクチュエータ15C,16Cによって軸線方向に移動させるようになっている。なお、一方のプーリー15,16における固定プーリー15A,16Aの半径方向で外側に、他方のプーリー16,15における可動プーリー16B,15Bが配置されている。これは、各プーリー15,16の軸線方向での中心位置が、変速比に応じてずれるいわゆる芯ズレを可及的に少なくするためである。
それぞれ対をなす固定プーリー15A,16Aと可動プーリー15B,16Bの互いに対向する側の面は、テーパー状のコーン面15D,16Dとなっており、これらのコーン面15D,16Dによって断面形状がV字状をなす溝17,18が形成されている。したがってその溝17,18の幅(各プーリー15,16の軸線方向に測った間隔)が、可動プーリー15B,16Bを軸線方向に移動させることにより変化するようになっている。
前述した各ブロック2における左右の側面5,6は、上記の溝17,18の開き角度(傾斜角度)に一致するように傾斜しており、したがってベルト1を各プーリー15,16に巻き掛けることにより、各ブロック2が溝17,18に嵌り込んでコーン面15D,16Dに面接触するように構成されている。また、その状態で、可動プーリー15B,16Bを軸線方向に押圧することにより、ベルト1の挟圧力を生じさせて、伝達トルク容量を設定するようになっている。
無段変速機での変速比は、駆動プーリー15と従動プーリー16との回転数の比であるから、駆動プーリー15の溝幅を大きくしてベルト1の巻き掛け半径を小さくするとともに、従動プーリー16の溝幅を小さくしてベルト1の巻き掛け半径を大きくすれば、変速比が大きくなる。これとは反対に、駆動プーリー15の溝幅を小さくしてベルト1の巻き掛け半径を大きくするとともに、従動プーリー16の溝幅を大きくしてベルト1の巻き掛け半径を小さくすれば、変速比が小さくなる。このようにして変速比を大小に変化させる場合、各プーリー15,16における可動プーリー15B,16Bを互いに反対方向に移動させるから、芯ズレGが生じる。その状態を図3に示してあり、この状態でベルト1が図3の矢印方向に走行しているとすると、緩み側にある各ブロック2は、従動プーリー16における溝18に傾いた状態で進入する。ここで、傾いているとは、ブロック2が、プーリー15,16の中心軸線を含む面に対して平行にならずに交差する方向を向いている状態である。
このように傾いた状態で溝18に進入したブロック2の左右両側面5,6は、その全面でコーン面16Dに接触せずに、図4の(a)に示すように、片当たり(もしくは肩当たり)する。溝18に進入したブロック2においては、コーン面16Dとの接触部位の回転半径とリング3,4が接触している箇所の回転半径とに差が生じ、その結果、リング3,4とブロック2との間に滑りが生じる。この発明に係る上記のベルト1では、ベルト1の進行方向に対して後退もしくは遅れている一方の側端部(以下、遅れ側と記すことがある。)に位置するリング3,4とブロック2との間の摩擦係数μ1(もしくはμ2)が、他方の側端部がわ(以下、進み側と記すことがある。)より大きくなっているので、リング3,4との相対的な滑りによって遅れ側にこの部分を進める方向に大きい摩擦力が生じる。その結果、ブロック2の全体としては、その傾きを矯正する方向にトルクが作用して、図4の(b)に示すように、ブロック2の姿勢が、従動プーリー16の中心軸線と平行になり、ブロック2の駆動プーリー15に対するいわゆる片当たりが是正される。なお、ブロック2の姿勢の矯正が生じるのは、上述したトルクが生じることと併せて、プーリー15,16における溝幅が、軸の変形や各プーリー15A,16A,15B,16Bの撓みなどによって入口側で広く、出口側で狭くなることが要因になっている。
この発明に係るベルト1では、リング3,4によって結束されているブロック2に対して、プーリー15,16との相対的な姿勢を是正するトルクが生じるように左右の摩擦係数μ1,μ2を異ならせているので、プーリー15,16のコーン面15D,16Dとブロック2との接触面積が狭くなることが抑制もしくは防止される。そのため、過度な摩耗が生じないので、ベルト1や無段変速機の耐久性を向上させることができる。この発明は、このような作用・効果を生じさせるものであり、したがってその作用・効果を更に促進させる構成を追加的に設けることができる。その一例は、ブロック2とその左右のコーン面15D,16Dとの間の摩擦係数μ3,μ4を、ブロック2の左右で異ならせる構成である。
具体的には、いずれか一方のコーン面15D,16Dに前述したコーティングを施して摩擦係数μ3,μ4を低下させ、あるいは前述した面粗さを粗くする加工を施して摩擦係数μ3,μ4を大きくする。また、摩擦係数μ3,μ4を大きくするためには、セラミックや異種金属を溶射してもよい。さらに、潤滑量を左右のコーン面15D,16Dが異ならせて、それぞれの摩擦係数μ3,μ4を相違させることもできる。
コーン面15D,16Dとブロック2との間の摩擦係数μ3,μ4を、左右で異ならせるのは、ブロック2の遅れ側の側端部がベルト1の進行方向に進むようにブロック2にトルクを使用させるためである。したがって、摩擦係数μ3,μ4を低下させるコーン面15D,16Dは、ブロック2の遅れ側の側端部が接触する面である。なお、前述したように、芯ズレの方向は変速比が“1”より大きい場合と小さい場合とで反対になることがあるので、変速比が“1”より大きい場合の芯ズレで遅れ側となる側端部に接触するコーン面15D,16Dの摩擦係数μ3,μ4を相対的に小さくする。言い換えれば、リング3,4とブロック2との間の摩擦係数μ1(もしくはμ2)が相対的に大きい側端部に近いコーン面15D,16Dの摩擦係数μ3,μ4を、これとは反対側のコーン面15D,16Dの摩擦係数μ4,μ3より小さくする。
これは、図3に示す例では、従動プーリー16における可動プーリー16Bにおけるコーン面16Dの摩擦係数μ3を相対的に小さくした構成である。このように構成した場合、リング3,4とブロック2との間の摩擦力がブロック2の左右で異なることに起因するトルクが生じ、そのトルクによるブロック2の姿勢の変化すなわち回動動作を阻害する、コーン面16Dとの間の摩擦力が小さくなる。そのため、ブロック2の姿勢の矯正が円滑化あるいは迅速化され、コーン面15D,16Dやブロック2の摩耗が、より効果的に抑制もしくは防止される。
なお、この発明は、上述した具体例に限定されないのであって、リングを左右に合計で二本使用するタイプのベルト以外に、一本のリングでブロックを環状に結束するタイプのベルトにも適用することができる。また、ブロックの形状は、上述した具体例で示した形状に限定されない。さらに、コーン面の摩擦係数を左右で異ならせるプーリーは、従動プーリーに替えて駆動プーリーであってもよく、あるいは両方のプーリーであってもよい。またさらに、この発明では、摩擦係数がブロックの左右で異なっていればよく、したがって一方の側端部での摩擦係数を低下させる加工もしくは処理と、他方の側端部での摩擦係数を増大させる加工もしくは処理との両方を行い、あるいは一方のみを行った構成のいずれであってもよい。
1…ベルト、 2…ブロック、 3,4…リング、 12,13…サドル面、 9…頭部、 14…ディンプル(第1の凸部)、 15…駆動プーリー、 16…従動プーリー、 15D,16D…コーン面、 17,18…溝、 G…芯ズレ。
Claims (4)
- 複数のブロックを環状に配列するとともにこれらのブロックを帯状のリングで結束して構成され、溝の幅を変更可能な少なくとも一対のプーリーに前記ブロックが挟み付けられるように前記溝に巻き掛けられる無段変速機用ベルトにおいて、
前記ブロックと前記リングとの間の摩擦係数が、前記溝幅方向での一方で相対的に大きく、かつ他方で相対的に小さく設定されていることを特徴する無段変速機用ベルト。 - 前記溝幅方向での一方は、変速比が“1”より大きい状態でかつ前記ブロックがいずれかのプーリーの溝にそのプーリーの中心軸線を含む面に対して傾斜して進入する際に、そのブロックの進行方向に対して遅れる端部側であることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機用ベルト。
- 請求項1または2に記載のベルトを備えた無段変速機であって、前記プーリーにおける前記溝を形成する二つの面のうちの一方の面の摩擦係数が、他方の面の摩擦係数より小さく設定されていることを特徴とする無段変速機。
- 前記一方の面は、前記ブロックと前記リングとの間の摩擦係数が相対的に大きく設定されている前記溝幅方向での一方に近い面であることを特徴とする請求項3に記載の無段変速機。
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Cited By (1)
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WO2011089719A1 (ja) * | 2010-01-22 | 2011-07-28 | トヨタ自動車株式会社 | Dlcコーティング方法、リングの製造方法、および伝動ベルト |
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