以下、図面を参照して、本発明に係る車両の挙動制御装置及び車輪の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本発明を、車両に搭載される挙動制御装置に適用する。本実施の形態に係る挙動制御装置は、四輪全てのホイールのリム幅が変化し、そのリム幅の変化によって車輪の半径を変更する。そして、本実施の形態に係る挙動制御装置では、各車輪の半径を変更することによって、車両旋回、車両姿勢調整、空力抵抗低減など行う。本実施の形態には、5つの実施の形態があり、第1の実施の形態がインホイールモータ方式の四輪駆動の車両に適用し、インナホイールに対してアウタホイールをスライドさせる場合であり、第2の実施の形態がエンジンによる後輪駆動の車両に適用し、インナホイールに対してアウタホイールをスライドさせる場合であり、第3の実施の形態がエンジンによる後輪駆動の車両に適用し、インナホイールとアウタホイールの両方をスライドさせる場合であり、第4の実施の形態がエンジンによる後輪駆動の車両に適用し、インナホイールとアウタホイールの両方をスライドさせ、各車輪が車両前後方向に移動可能な場合であり、第5の実施の形態がエンジンによる後輪駆動の車両に適用し、1つのアクチュエータによってインナホイール及びアウタホイールをスライドさせる場合である。
なお、インホイールモータ方式の四輪駆動では、四輪の各ホイールにモータをそれぞれ内蔵しており、各モータの駆動を運転者のアクセル操作などに応じて制御する。インホイールモータ方式では、四輪の各モータがそれぞれ独立して駆動され、各車輪が個々の回転駆動力によって回転する。
図1〜図4を参照して、第1の実施の形態に係る挙動制御装置1について説明する。図1は、第1、第2及び第5の実施の形態に係る挙動制御装置の構成図である。図2は、第1の実施の形態に係る挙動制御装置の車輪の一部破断正面図であり、(a)が車輪径が小さい場合であり、(b)が車輪径が大きい場合である。図3は、本実施の形態に係る左右の半径差による旋回の原理図である。図4は、本実施の形態に係る車両旋回時の車両を後方から見た場合の模式図である。
挙動制御装置1では、各車輪の半径を独立して変更することによって、車両旋回など様々な車両の挙動を制御する。そのために、挙動制御装置1では、ホイールがインナホイールとアウタホイールからなり、インナホイールに対してアウタホイールがスライドすることによってホイールのリム幅を変化させ、タイヤの偏平率を変化させる。挙動制御装置1は、操舵角センサ2、車速センサ3、ストロークセンサ4、着座センサ5、右前輪6A、左前輪6B、右後輪6C、左後輪6D及びECU[Electronic Control Unit]7を備えている。
なお、第1の実施の形態では、右前輪6A、左前輪6B、右後輪6C、左後輪6Dが特許請求の範囲に記載する半径変更手段に相当し、ECU7における各処理が特許請求の範囲に記載する半径設定手段、旋回量設定手段に相当する。
操舵角センサ2は、運転者によって入力されるステアリングホイールの操舵角を検出するセンサである。操舵角センサ2では、検出した操舵角を操舵角信号としてECU7に送信する。この操舵角信号に示される操舵角には、大きさの情報と操舵方向の情報が含まれる。
車速センサ3は、車両の速度を検出するセンサである。車速センサ3では、検出した車速を車速信号としてECU7に送信する。
ストロークセンサ4は、各輪におけるサスペンションのストロークを検出するセンサである。ストロークセンサ4では、検出したストロークをストローク信号としてECU7に送信する。なお、図1には、ストロークセンサ4を1つして描いていないが、各輪にそれぞれ設けられ、ECU7には各輪のストロークセンサ4からのストローク信号がそれぞれ送信される。
着座センサ5は、各座席に人が座っているか否かを検出するセンサである。着座センサ5では、検出した着座情報を着座信号としてECU7に送信する。なお、図1には、着座センサ5を1つして描いていないが、各座席にそれぞれ設けられ、ECU7には各座席の着座センサ5からの着座信号がそれぞれ送信される。
右前輪6A、左前輪6B、右後輪6C、左後輪6Dは、同様の構成を有している。車輪6は、主なものとして、ホイール6a、タイヤ6b、アクチュエータ6cを備えている。車輪6では、アクチュエータ6cによってホイール6aのリム幅を変化させることにより、タイヤ6bの断面幅が変化し、その断面幅の変化に応じてタイヤ6bの高さが変化し(したがって、タイヤ6bの偏平率(=タイヤ高さ/タイヤ断面幅)が変化し)、タイヤ6bの外径(車輪径)が変化する。
ホイール6aは、車幅方向の内側に配置されるインナホイール6dと外側に配置されるアウタホイール6eからなる。インナホイール6dは、円形の凹形状であり、凹形状の底部の中央に円形状の孔が形成され、車幅方向の内側にリムを有している。アウタホイール6eは、インナホイール6dより径が若干大きい円形の凹形状であり、凹形状の底部の中央に円形状の孔が形成され、車幅方向の外側にリムを有している。インナホイール6dはアウタホイール6eの内側に嵌め込まれ、インナホイール6dの外周面とアウタホイール6eの内周面とはスプライン機構によって結合されている。そのため、アウタホイール6eはインナホイール6dに対して所定長さスライド可能であり、ホイール6aはリム幅(インナホイール6dのリムとアウタホイール6eのリムとの間隔)が変更可能である。また、インナホイール6dとアウタホイール6eとは、スプライン機構により一体となって同期回転する。
タイヤ6bは、両端のビードがインナホイール6dのリムとアウタホイール6eのリムにそれぞれ結合される。この結合方法としては、例えば、勘合、接着である。タイヤ6bの内部には、複数箇所(例えば、8箇所、16箇所)にその内面に沿って補強材6f,・・・が取り付けられている。補強材6f,・・・は、所定幅を有するヘアバンドのような形状であり、タイヤ6bの周方向に沿って一定間隔毎に配置される。補強材6fは、例えば、樹脂、ワイヤなどで形成される。また、タイヤ6bには、補強材6f,・・・の内側に気密用のチューブ6gが設けられている。タイヤ6bは、ホイール6aのリム幅の変化に応じてその断面幅が変化し、断面幅が広がるほどタイヤ高さが低くなり、断面幅が狭くなるほどタイヤ高さが高くなる。このタイヤ6bの形状の変化に応じて、補強材6f,・・・とチューブ6gもその形状が変化する。
アクチュエータ6cは、インナホイール6dの内側に設けられ、アウタホイール6eを移動させるアクチュエータである。アクチュエータ6cは、モータ6hを備えており、モータ6hのモータトルク(回転駆動力)によってアウタホイール6eをインナホイール6dに対してスライド移動させる。アクチュエータ6cでは、ラック・ピニオン機構(図示せず)によってモータ6hの回転駆動力を伝達している。モータ6hの回転は、各種ギアを介してピニオン(図示せず)に伝達され、ピニオンを回転させる。ピニオンの回転は、ラック(図示せず)に伝達され、ラックを車幅方向に沿って移動させる。ラックの先端にはロッド6iが取り付けられ、ラックの移動に応じてロッド6iが車幅方向の外側に向けて伸縮する。ロッド6iは、インナホイール6dの中央の孔を通ってアウタホイール6eの中央の孔まで延び、アウタホイール6eにベアリング6jを介して取り付けられている。したがって、アウタホイール6eは、ロッド6iの伸縮に応じて車幅方向に沿って移動するが、アクチュエータ6cに対して回転自在である。また、アクチュエータ6cは、その筒状の外周部6kが車幅方向の外側に向けて突出している。外周部6kは、インナホイール6dの中央の孔まで延び、インナホイール6dにベアリング6lを介して取り付けられている。したがって、インナホイール6dは、アクチュエータ6cに対して位置が移動しないが、アクチュエータ6cに対して回転自在である。
アクチュエータ6cの車幅方向の内端部には、サスペンションのアブソーバABの一端部が取り付けられるとともに、ロアアームLAの一端部が取り付けられている。アブソーバABの他端部及びロアアームLAの他端部は、車体BDに取り付けられている。したがって、アクチュエータ6c(ひいては、インナホイール6d)は、アブソーバABやロアアームLAを介して車体BDに取り付けられている。
モータ6hの回転駆動力によってロッド6iが車幅方向の外側に伸びると、アウタホイール6eがインナホイール6dに対して車幅方向の外側にスライド移動し、ホイール6aのリム幅が広がってタイヤ6bの高さが低くなる(図2(a)参照)。一方、モータ6hの回転駆動力によってロッド6iが車幅方向の内側に縮むと、アウタホイール6eがインナホイール6dに対して車幅方向の内側にスライド移動し、ホイール6aのリム幅が狭まってタイヤ6bの高さが高くなる(図2(b)参照)。
なお、この車両はインホイールモータ式なので、インナホイール6dの内側には車輪6を回転駆動するためのモータ(図示せず)が設けられている。このモータの出力軸はフレキシブルカップリング(図示せず)によってインナホイール6dに連結され(但し、ベアリング6lの外側に連結される)、モータの回転駆動力がフレキシブルカップリングを介してインナホイール6dに伝達される。インナホイール6dとアウタホイール6eとはスプライン機構によって結合しているので、インナホイール6dが回転すると、アウタホイール6eも一体となって回転し、タイヤ6bも回転する。
ECU7は、CPU[Central ProcessingUnit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、モータ駆動回路などからなる電子制御ユニットである。ECU7では、操舵角センサ2などの各種センサが接続され、一定時間毎に各種センサからの検出信号を取り入れる。そして、ECU7では、各検出信号に基づいて車両旋回制御、高速走行制御、路面状況制御、積載状況制御、モータ駆動制御などの制御を行い、車輪6A,6B,6C,6Dの各モータ6hを駆動制御する。
車両旋回制御について説明する。図3に示すように、円錐台形状(例えば、紙コップ)のものを倒して転がした場合、左右の径の差により、径が小さい方側に旋回していく。車両旋回制御では、この原理を利用し、操作角の操舵方向に応じて旋回外輪の径を旋回内輪の径より大きくし、操舵角の大きさが大きくなるほどこの左右輪の径の差が大きくなるような制御を行う。
具体的には、ECU7では、操舵角信号に示される操舵角に基づいて、直進(操舵角が0又はほぼ0)かあるいは旋回かを判定する。直進と判定した場合、ECU7では、全ての車輪6A,6B,6C,6Dの半径が同一となるリム幅を設定し、全ての車輪6A,6B,6C,6Dのリム幅が設定したリム幅となるような各モータ6hのモータトルクをそれぞれ設定する。直進時には、通常、図2(a)に示すように、比較的小さい車輪半径を設定する(比較的広いリム幅を設定する)。この車輪半径は、走行時の基準となり、旋回時には旋回内輪がこの車輪半径となる。なお、この直進時の車輪半径は車速などによって予め求められており、ECU7内に保持しているマップなどから設定する。
旋回と判定した場合、ECU7では、操舵角信号に示される操舵角から旋回方向を判定し、その旋回外輪となる前後の車輪6,6の半径を操舵角の大きさに応じて設定する。そして、ECU7では、その設定した半径となるリム幅を設定し、旋回外輪となる車輪6,6のリム幅が設定したリム幅となるような各モータ6hのモータトルクをそれぞれ設定する。旋回時には、旋回内輪のリム幅は直進時のリム幅に固定する。また、旋回外輪となる前後の車輪6,6の半径は、操舵角が大きいほど大きい値が設定される。なお、この旋回時の旋回外輪の半径は直進時のリム幅及び操舵角に応じて予め求められており、ECU7内に保持しているマップなどから設定する。
旋回外輪の径を旋回内輪の径より大きくすることによって旋回する場合、図4に示すように、車体は旋回内側に傾く理想的なロールとなり、車両が安定する。また、旋回時、タイヤを転舵させないので、スリップ角が発生しない。そのため、タイヤ接地面においてコーナリング抵抗が0かあるいはほぼ0となっている。
なお、インホイールモータ方式の四輪駆動では、直進時、旋回時に関係なく、通常、左右輪が同一の回転速度になるように制御している。
高速走行制御について説明する。高速走行時には車両の重心高を低下し、空気抵抗を低減して高速走行性能を向上させることが望ましい。そこで、高速走行制御では、高速走行時には全ての車輪6A,6B,6C,6Dの径を小さくし、車高を低くする。したがって、高速走行時には、通常の直線走行時の比較的小さい車輪半径から更に小さい車輪半径(偏平率)となる。具体的には、ECU7では、車速信号に示される車速に基づいて高速走行か否かを判定し、高速走行と判定した場合には車速に応じて全ての車輪6A,6B,6C,6Dの半径を設定する。そして、ECU7では、その設定した半径となるリム幅を設定し、全ての車輪6A,6B,6C,6Dのリム幅が設定したリム幅となるような各モータ6hのモータトルクをそれぞれ設定する。高速走行時には、車輪6A,6B,6C,6Dの半径は、車速が高くなるほど小さい値が設定される。なお、この車速に応じた車輪半径は予め求められており、ECU7内に保持しているマップなどから設定する。
路面状況制御について説明する。凹凸の多い路面では乗心地が悪化するので、乗心地を向上させることが望ましい。逆に、フラットな路面では乗心地が悪化しないので、操縦安定性や動力性を向上させることが望ましい。そこで、路面状況制御では、凹凸の多い路面では全ての車輪6A,6B,6C,6Dの径を大きくし、タイヤの偏平率を大きくし、凹凸の少ない路面では全ての車輪6A,6B,6C,6Dの径を小さくし、タイヤの偏平率を小さくする。具体的には、ECU7では、各車輪のストローク信号に示されるストロークから4つの車輪間でストロークの差が閾値以上か否かを判定し、閾値以上の差がある場合には凹凸の多い路面と判定する。凹凸の多い路面と判定した場合、ECU7では、ストロークの差に応じて偏平率を設定し、全ての車輪6A,6B,6C,6Dの半径をその設定した偏平率となるように設定する。そして、ECU7では、その設定した半径となるリム幅を設定し、全ての車輪6A,6B,6C,6Dのリム幅が設定したリム幅となるような各モータ6hのモータトルクをそれぞれ設定する。ストロークの差が閾値未満の場合には、凹凸が少ない路面なので、直進時の比較的小さい車輪半径(偏平率)に固定される。なお、この偏平率は車輪間のストロークの差などに応じて予め求められており、ECU7内に保持しているマップなどから設定する。
積載状況制御について説明する。各座席に人が座っている場合と座っていない場合には、車両姿勢が変化し、座っている位置近傍が少し沈み込む。そこで、積載状況制御では、座席に座っている位置に対応する車輪の半径を一定量大きし、車両姿勢を調整する。具体的には、ECU7では、各座席に対応する着座信号に示される着座情報から人が座っている座席に対応する車輪を判定し、その判定した車輪の半径を一定量大きくした半径に設定する。そして、ECU7では、その判定した車輪に対して設定した半径となるリム幅を設定し、その判定した車輪のリム幅が設定したリム幅となるような各モータ6hのモータトルクをそれぞれ設定する。
モータ駆動制御について説明する。各モータ6hのモータトルクを設定すると、ECU7では、それぞれ設定したモータトルクを各モータ6hで発生させるために必要な目標電流をそれぞれ設定する。そして、ECU7では、目標電流となるように、モータ駆動回路から各モータ6hに電流をそれぞれ供給する。この際、モータ6hに実際に流れるモータ電流などを検出し、設定した目標電流になるようにフィードバック制御を行ってもよい。
図1及び図2を参照して、挙動制御装置1の動作について説明する。ここでは、車両が直進から運転者のステアリング操作に応じて右旋回する場合の挙動制御装置1における動作について説明する。
直進時、挙動制御装置1では、全ての車輪6A,6B,6C,6Dに対して比較的小さい半径を設定し、その設定した半径になるために必要なリム幅に調整している(図2(a)参照)。したがって、車両は、右輪6A,6Cと左輪6B,6Dとが同一の比較的小さい半径となっており、直進走行する。このとき、運転者が、ステアリングホイールを時計周り操作する。すると、ステアリングホイールの操舵角が0から変化していく。操舵角センサ2では、ステアリングホイールの操舵角を検出し、その検出値を操舵角信号としてECU7に送信している。この検出される操舵角の大きさは、ステアリングホイールの操作量に応じて0から大きくなり、変化する。
ECU7では、一定時間毎に、操舵角センサ2からの操舵角信号を受信し、運転者の操作に応じた操舵角を取得する。そして、ECU7では、取得した操舵角に基づいて直進かあるいは旋回かを判定する。操舵角は0から大きくなっているので、ECU7では、旋回中と判定し、取得した操舵角から操舵方向を右方向と判定する。そして、ECU7では、右操舵方向から旋回内輪を右車輪6A,6C、旋回外輪を左車輪6B,6Dと判別し、その旋回外輪6B,6Dの半径を操舵角の大きさに応じて設定する。旋回中、この設定される半径は、操舵角の大きさが大きくなるのに応じて大きくなり、小さくなるに応じて小さくなる。そして、ECU7では、その設定した半径に応じてリム幅を設定し、設定したリム幅となるために必要なモータトルクを設定する。さらに、ECU7では、設定したモータトルクを各モータ6hで発生させるために必要な目標電流を設定し、目標電流となるようにモータ駆動回路から旋回外輪6B,6Dの各モータ6hに電流をそれぞれ供給する。この際、旋回内輪6A,6Cの各モータ6hには電流が供給されない。
旋回外輪6B,6Dにおける各モータ6hは、供給された電流に応じたモータトルクを発生し、回転駆動する。このモータ6hの回転は、ギアを介してピニオンに伝達され、ピニオンを回転させる。このピニオンの回転は、ラックに伝達され、ラック(ひいては、ロッド6i)を車幅方向に沿って移動させる。このラックの移動は、操舵角の大きさが大きくなっていく場合には車幅方向の内側に移動し、小さくなっていく場合には車幅方向の外側に移動する。このロッド6iの移動によって、アウタホイール6eがインナホイール6dに対してスライド移動する。このアウタホイール6eのスライド移動によって、旋回外輪6B,6Dの各ホイール6aのリム幅が直進時より狭くなり、旋回外輪6B,6Dの半径が大きくなる。旋回外輪6B,6Dの半径は、操舵角の大きさが大きいほど大きくなる。この際、旋回内輪6A,6Cの半径は、直進時の半径に固定される。
旋回外輪6B,6Dの半径が直進時より大きくなることにより、旋回内輪6A,6Cの半径と旋回外輪6B,6Dの半径とに差が生じる。この左右輪の半径の差によって、車両は旋回内輪6A,6Cの方向に旋回する。この際、左右輪の半径の差が大きくなるほど、旋回半径が小さくなる。
この挙動制御装置1によれば、インナホイール6dに対してアウタホイール6eをスライド移動させる簡単な構成によって、走行中、停止中に関係なく、ホイール6aのリム幅を任意に変更できる。これによって、タイヤ6bの高さ(偏平率)を任意に変更することができ、車輪6の径を変更することができる。この際、タイヤ6bは変形するが、補強材6fによって強度及び耐久性などが確保されている。また、インナホイール6dとアウタホイール6eとがスプライン機構で結合されているが、タイヤ6b内にチューブ6gを設けることによって気密性が確保されている。
特に、挙動制御装置1では、旋回内輪の半径と旋回外輪の半径とに差を設けることにより、車輪を転舵させずに車両を旋回させることができる。そのため、スリップ角が無くなり、タイヤ接地面におけるコーナリング抵抗が無くなるかあるいはかなり小さくなるので、走行中の旋回頻度の多さを考慮すると、大いに燃費が向上する。また、タイヤハウスにおけるタイヤの転舵分のエンジンルームやキャビンへの張り出しスペースが不要となるので、エンジンルームやキャビンの自由度が大きくなる。さらに、ステアリングホイールの回転を車輪に伝達するステアリング機構が不要となるので、そのスペースが不要となり、車両重量も軽減できる。これら不要になったスペース分を車両の縮小に利用することにより、車幅を縮小でき、空気抵抗を低減し、燃費も向上する。また、フェンダを半円状に切り欠く必要もなくなり、空気抵抗を低減し、ボディデザインの自由度も拡大する。さらに、車体は旋回内側に傾く理想的なロールとなるので、スタビライザが不要となり、サスペンションチューニングの自由度も拡大する。
また、挙動制御装置1では、高速走行時には車速に応じて車輪の半径を小さく変更することにより、高速走行時の走行性能を向上させることができる。また、挙動制御装置1では、路面状況に応じて各車輪の半径を変更することにより、凹凸路での乗心地を向上させることができるとともに、平坦路での操安性や動力性を向上させることができる。また、挙動制御装置1では、積載状況に応じて各車輪の半径を変更することにより、車両姿勢を好適に調整することができる。
図1、図5及び図6を参照して、第2の実施の形態に係る挙動制御装置11について説明する。図5は、第2の実施の形態に係る挙動制御装置の従動輪側の左右輪の一部破断正面図である。図6は、図5の右輪側の軸送出機構部の正断面図である。挙動制御装置11では、第1の実施の形態に係る挙動制御装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
挙動制御装置11では、第1の実施の形態に係る挙動制御装置1と比較すると、エンジンによる後輪駆動車に適用し、左右輪が同じ回転速度で回転する機構を有している。具体的には、挙動制御装置11は、挙動制御装置1とは構造については左右の車輪間の連結機構及びアウタホイールの移動機構だけが異なり、制御については同様の制御を行う。挙動制御装置11は、操舵角センサ2、車速センサ3、ストロークセンサ4、着座センサ5、右前輪16A、左前輪16B、右後輪16C、左後輪16D、左右の車輪間の連結機構及びECU7を備えている。なお、第2の実施の形態では、右前輪16A、左前輪16B、右後輪16C、左後輪16Dが特許請求の範囲に記載する半径変更手段に相当する。また、第2の実施の形態では、ECU7では、各検出信号に基づいて上記した各制御を行い、車輪16A,16B,16C,16Dの各モータを駆動制御する。
左右の車輪間の連結機構及びアウタホイールの移動機構について詳細に説明する。ここでは、従動輪(前輪)における機構について説明するが、駆動輪(後輪)も従動輪と同様の構成を有している。
前輪16A,16Bは、第1の実施の形態と同様のホイール6a及びタイヤ6bを備えている。右前輪16Aと左前輪16Bとは、連結軸16mによって連結されており、同じ回転速度で回転する。また、各前輪16A,16Bは、軸送出機構部16nを備えており、軸送出機構部16nによってアウタホイール6eが車幅方向に沿って移動し、ホイール6aのリム幅が変化する。
連結軸16mは、中央連結軸16o、左右の外側連結軸16p,16p及び左右の等速ジョイント16q,16qからなる。中央連結軸16o、外側連結軸16p,16p及び等速ジョイント16q,16qは、右前輪16Aと左前輪16Bとの間に、同一軸上に配置される。中央連結軸16oは、車体BDに回転自在に取り付けられ、その各端部が左右の等速ジョイント16q,16qの一端部にそれぞれ結合される。各外側連結軸16p,16pは、その一端が等速ジョイント16q,16qの他端部にそれぞれ結合される。等速ジョイント16q,16qは中央連結軸16oと外側連結軸16p,16pとを同じ回転速度で回転させるので(相対回転自由度を規制するので)、中央連結軸16oを介して左右の外側連結軸16p,16pは同じ回転速度で回転する。したがって、連結軸16mは、全域にわたって同じ回転速度で回転する。
なお、駆動輪の場合、連結軸16mがドライブシャフトに相当し、ドライブシャフトが、中央ドライブシャフト、左右の外側ドライブシャフト及び左右の等速ジョイントからなる。そして、エンジンによる駆動力がミッション及びファイナル機構などを介して中央ドライブシャフトに伝達され、中央ドライブシャフトが回転する。中央ドライブシャフトの回転に伴って、左右の等速ジョイントを介して左右の外側ドライブシャフトが同じ回転速度で回転する。したがって、ドライブシャフトは、エンジンの駆動力に応じて、全域にわたって同じ回転速度で回転する。
外側連結軸16pは、その他端がボルト形状となっている。また、アウタホイール6eの凹形状の底部の中央に、外側連結軸16pが嵌通する円形状の孔が形成されている。各外側連結軸16p,16pは、その他端が各アウタホイール6e,6eの各孔を嵌通し、各アウタホイール6e,6eにナット16r,16rによってボルト締め固定されている。したがって、左右のアウタホイール6e,6eは、連結軸16mによって連結され、同じ回転速度で回転する。また、外側連結軸16pは、軸送出機構部16nの内部を挿通し、軸送出機構部16nによって車幅方向に伸縮する。この左右の外側連結軸16p,16pの伸縮に応じて、左右のアウタホイール6e,6eは車幅方向に沿って移動する。
等速ジョイント16qは、ジョイント内のボールベアリングが伸縮方向(車幅方向)にスライドする。これによって、等速ジョイント16qでは、軸送出機構部16nによる外側連結軸16pの伸縮及び左右の車輪16A,16Bの相対距離の変化(路面外乱やボディの動きによって左右の車輪16A,16Bが動くことによる変化)を吸収する。
軸送出機構部16nは、筒状のケース16s内にベアリング16t、ラック16u、ピニオン16v、アクチュエータ16w(モータ16x、減速機構16y)を備えている。軸送出機構部16nは、インナホイール6dの内側に配置され、内部に外側連結軸16pが挿通する。軸送出機構部16nでは、外側連結軸16pを回転自在に支持するとともに、モータ16xのモータトルク(回転駆動力)によって外側連結軸16pを車幅方向の外側に向けて伸縮させ、アウタホイール6eをインナホイール6dに対してスライド移動させる。
ベアリング16tのインナレースには、外側連結軸16pが挿入され、外側連結軸16pが取り付けられる。したがって、外側連結軸16pは、回転自在である。ベアリング16tのアウタレースの一部分には、ラック16uの一面(ラックギアの面とは反対面)側が取り付けられる。したがって、外側連結軸16pは、ベアリング16tを介してラック16uに結合している。ベアリング16t及びラック16uは、ケース16s内に、車幅方向に沿って移動自在に設けられている。
ラック16uの他面側にはピニオン16vが配置され、ラックギアにピニオンギアが噛み合っている。ピニオン16vには、減速機構16yを介してモータ16xの回転駆動力が伝達される。ピニオン16v、モータ16x及び減速機構16yは、ケース16s内に、位置固定されて設けられている。
モータ16xの回転は、減速機構16yを介してピニオン16vに伝達され、ピニオン16vを回転させる。ピニオン16vの回転は、ラック16uに伝達され、ラック16uを車幅方向に沿って移動させる。このラック16uの移動に伴って、ベアリング16tが移動し、さらに、外側連結軸16pが車幅方向の外側に向けて伸縮する。
また、軸送出機構部16nのケース16sは、その外周部6kが車幅方向の外側に向けて突出している。外周部6kは、インナホイール6dの中央の孔まで延び、インナホイール6dにベアリング6lを介して取り付けられている。したがって、インナホイール6dは、軸送出機構部16nに対して位置が移動しないが、軸送出機構部16nに対して回転自在である。
軸送出機構部16nの車幅方向の内端部には、サスペンションのアブソーバABの一端部が取り付けられるとともに、ロアアームLAの一端部が取り付けられている。アブソーバABの他端部及びロアアームLAの他端部は、車体BDに取り付けられている。したがって、軸送出機構部16n(ひいては、インナホイール6d)は、アブソーバABやロアアームLAを介して車体BDに取り付けられている。
モータ16xの回転駆動力によって減速機構16y及びピニオン16vを介してラック16u及びベアリング16tが車幅方向の外側に移動すると、外側連結軸16pが車幅方向の外側に伸び、アウタホイール6eがインナホイール6dに対して車幅方向の外側にスライド移動し、ホイール6aのリム幅が広がってタイヤ6bの高さが低くなる。一方、モータ16xの回転駆動力によって減速機構16y及びピニオン16vを介してラック16u及びベアリング16tが車幅方向の内側に移動すると、外側連結軸16pが車幅方向の内側に縮み、アウタホイール6eがインナホイール6dに対して車幅方向の内側にスライド移動し、ホイール6aのリム幅が狭まってタイヤ6bの高さが高くなる。この際、外側連結軸16pの伸縮を、等速ジョイント16qが吸収する。
挙動制御装置11では、第1の実施の形態のインホイールモータ方式のように個々の車輪の回転速度を制御することができないが、従動輪側の右前輪16Aと左前輪16B及び駆動輪側の右後輪16Cと左後輪16Dとは同じ回転速度で回転する機構となっている。そのため、左右の車輪の径に差を設けることにより、車両が径が小さい方側に旋回する。
図1、図5及び図6を参照して、挙動制御装置11の動作について説明する。ここでは、車両が直進から運転者のステアリング操作に応じて右旋回する場合の挙動制御装置11における動作について説明する。
直進時、挙動制御装置11では、右輪16A,16Cと左輪16B,16Dとが同一の比較的小さい半径で、連結軸16mによって右前輪16Aと左前輪16B及びドライブシャフトによって右後輪16Cと左後輪16Dとが同じ回転速度で回転し、直進走行する。このとき、運転者がステアリングホイールを時計周り操作し、ステアリングホイールの操舵角が0から変化していく。操舵角センサ2では、ステアリングホイールの操舵角を検出し、その検出値を操舵角信号としてECU7に送信する。
ECU7では、一定時間毎に、操舵角センサ2からの操舵角信号を受信し、その操舵角から操舵方向を右方向と判定する。そして、ECU7では、右操舵方向から旋回内輪を右車輪16A,16C、旋回外輪を左車輪16B,16Dと判別し、その旋回外輪16B,16Dの半径を操舵角の大きさに応じて設定する。そして、ECU7では、その設定した半径に応じてリム幅を設定し、設定したリム幅となるために必要なモータトルクを設定する。さらに、ECU7では、設定したモータトルクを各モータ16xで発生させるために必要な目標電流を設定し、目標電流となるようにモータ駆動回路から旋回外輪16B,16Dの各モータ16xに電流をそれぞれ供給する。この際、旋回内輪16A,16Cの各モータ16xには電流が供給されない。
旋回外輪16B,16Dにおける各モータ16xは、供給された電流に応じたモータトルクを発生し、回転駆動する。このモータ16xの回転は、減速機構16yを介してピニオン16vに伝達され、ピニオン16vを回転させる。このピニオン16vの回転は、ラック16uに伝達され、ラック16uを車幅方向の内側に移動させる。このラック16uの移動に伴って、ベアリング16tも車幅方向の内側に移動する。このベアリング16tの移動に伴って、外側連結軸16p、外側ドライブシャフトが車幅方向の内側に移動し、外側連結軸16p、外側ドライブシャフトの軸長が短くなる。この外側連結軸16p、外側ドライブシャフトの軸長の変化は、等速ジョイント16qが吸収する。この外側連結軸16p、外側ドライブシャフトの移動によって、アウタホイール6eがインナホイール6dに対して車幅方向の内側へスライド移動する。
このアウタホイール6eのスライド移動によって、旋回外輪16B,16Dの各ホイール6aのリム幅が直進時より狭くなり、旋回外輪16B,16Dの半径が大きくなる。旋回外輪16B,16Dの半径は、操舵角の大きさが大きいほど大きくなる。この際、旋回内輪16A,16Cの半径は、直進時の半径に固定される。
旋回外輪16B,16Dの半径が直進時より大きくなることにより、旋回内輪16A,16Cの半径と旋回外輪16B,16Dの半径とに差が生じる。また、連結軸16mによって右輪16Aと左輪16Bとが同じ回転速度で回転するとともに、ドライブシャフトによって右輪16Cと左輪16Dとが同じ回転速度で回転している。そのため、この左右輪の半径の差と同速回転によって、車両は旋回内輪16A,16Cの方向に旋回する。この際、左右輪の半径の差が大きくなるほど、旋回半径が小さくなる。
挙動制御装置11は、第1の実施の形態に係る挙動制御装置1と同様の効果を有する上に、以下の効果も有する。挙動制御装置11では、連結軸16mやドライブシャフトで左右のアウタホイール6e,6eを連結することによって、右輪16Aと左輪16B及び右輪16Cと左輪16Dとを同じ回転速度で回転させることができる。そのため、右輪16Aと左輪16B及び右輪16Cと左輪16Dとに半径差を生じさせることにより、車両旋回が可能となる。これによって、各車輪の回転速度をインホイールモータなどによって個別に制御する必要はなく、1つのエンジンでの駆動が可能である。
挙動制御装置11では、連結軸16m、ドライブシャフトに等速ジョイント16qを設けることにより、外側連結軸16pや外側ドライブシャフトの伸縮を吸収することができる。これによって、外側連結軸16pや外側ドライブシャフトに結合するアウタホイール6eを、インナホイール6dに対してスライド移動させることができる。
図7〜図13を参照して、第3の実施の形態に係る挙動制御装置21について説明する。図7は、第3の実施の形態に係る挙動制御装置の構成図である。図8は、第3及び第5の実施の形態に係る挙動制御装置の従動輪側の左右輪の一部破断正面図である。図9は、第3の実施の形態に係る右輪側の軸送出機構部の正断面図である。図10は、第3の実施の形態に係るカーブ旋回時のトレッド不変の機構図である。図11は、第3の実施の形態に係るカーブ旋回時のトレッド可変の機構図である。図12は、第3の実施の形態に係るカーブ旋回時のトレッドと内外輪荷重との関係を示す概念図であり、(a)が従来の車両で旋回する場合であり、(b)が第3の実施の形態に係る挙動制御装置によりトレッド可変で旋回する場合である。図13は、タイヤ荷重に対するタイヤコーナリングパワーの変化を示す図である。挙動制御装置21では、第2の実施の形態に係る挙動制御装置11と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
挙動制御装置21では、第2の実施の形態に係る挙動制御装置11と比較すると、リム幅に加えてトレッドも変化可能とするために、インナホイールとアウタホイールの両方を移動させることによりリム幅を変化させる点が異なる。したがって、挙動制御装置21は、挙動制御装置11に対して、アウタホイールの移動機構に加えてインナホイールの移動機構も備え、制御についてはアウタホイールの移動制御に加えてインナホイールの移動制御も行う。挙動制御装置21は、操舵角センサ2、車速センサ3、ストロークセンサ4、着座センサ5、右前輪26A、左前輪26B、右後輪26C、左後輪26D、左右の車輪間の連結機構及びECU27を備えている。なお、第3の実施の形態では、右前輪26A、左前輪26B、右後輪26C、左後輪26Dが特許請求の範囲に記載する半径変更手段に相当する。
左右の車輪間の連結機構及びアウタホイールの移動機構について第2の実施の形態と同様なので、インナホイールの移動機構について詳細に説明する。ここでは、従動輪(前輪)における機構について説明するが、駆動輪(後輪)も従動輪と同様の構成を有している。
前輪26A,26Bは、第2の実施の形態と同様のホイール6a及びタイヤ6bを備えている。右前輪26Aと左前輪26Bとは、第2の実施の形態と同様の連結軸16mによって連結されており、同じ回転速度で回転する。また、各前輪26A,26Bは、軸送出機構部26nを備えており、軸送出機構部26nによってアウタホイール6eが車幅方向に沿って移動するとともにインナホイール6dが車幅方向に沿って移動し、ホイール6aのリム幅が変化する。
外側連結軸16pの車幅方向外側には、その外周に沿って円筒状のインナホイール制御チューブ26pが設けられる。インナホイール制御チューブ26pは、外側連結軸16pと同一軸であり、回転自在である。インナホイール制御チューブ26pは、その他端がボルト形状となっている。また、インナホイール6dの凹形状の底部の中央に、インナホイール制御チューブ26pが嵌通する円形状の孔が形成されている。各インナホイール制御チューブ26p,26pは、その他端が各インナホイール6d,6dの各孔を嵌通し、各インナホイール6d,6dにロックワッシャ26r,26rによってボルト締め固定されている。
軸送出機構部26nは、筒状のケース26s内に、第2の実施の形態と同様のアウタホイール6eを車幅方向に沿って移動させるためのベアリング16t、ラック16u、ピニオン16v、アウタ用アクチュエータ16w(モータ16x、減速機構16y)及びインナホイール6dを車幅方向に沿って移動させるためのベアリング26t、ラック26u、ピニオン26v、インナ用アクチュエータ26w(モータ26x、減速機構26y)を備えている。なお、第3の実施の形態では、アウタ用アクチュエータ16wが特許請求の範囲に記載するアウタ用アクチュエータに相当し、インナ用アクチュエータ26wが特許請求の範囲に記載するインナ用アクチュエータに相当する。
軸送出機構部26nは、インナホイール6dの内側に配置され、内部に全域にわたって外側連結軸16pが挿通するとともに車幅方向外側にインナホイール制御チューブ26pが挿通する。軸送出機構部26nでは、外側連結軸16pを回転自在に支持するとともに、モータ16xのモータトルク(回転駆動力)によって外側連結軸16pを車幅方向に沿って伸縮させ、アウタホイール6eをインナホイール6dに対してスライド移動させる。また、軸送出機構部26nでは、インナホイール制御チューブ26pを回転自在に支持するとともに、モータ26xのモータトルク(回転駆動力)によってインナホイール制御チューブ26pを車幅方向に沿って移動させ、インナホイール6dをアウタホイール6eに対してスライド移動させる。
ベアリング26t、ラック26u、ピニオン26v、インナ用アクチュエータ26wは、ベアリング16t、ラック16u、ピニオン16v、アウタ用アクチュエータ16wと同様のものであり、ラック16u、ピニオン16v、アウタ用アクチュエータ16wに対して車幅方向外側かつ上下逆方向に配置されている。ベアリング26tのインナレースには、外側連結軸16pに代わってインナホイール制御チューブ26pが挿入され、インナホイール制御チューブ26pが取り付けられる。したがって、インナホイール制御チューブ26pは、回転自在である。また、インナホイール制御チューブ26pは、ベアリング26tを介してラック26uに結合している。モータ26xの回転は、減速機構26yを介してピニオン26vに伝達され、ピニオン26vを回転させる。ピニオン26vの回転は、ラック26uに伝達され、ラック26uを車幅方向に沿って移動させる。このラック26uの移動に伴って、ベアリング26tが移動し、さらに、インナホイール制御チューブ26pが車幅方向に沿って移動する。
モータ26xの回転駆動力によって減速機構26y及びピニオン26vを介してラック26u及びベアリング26tが車幅方向の外側に移動すると、インナホイール制御チューブ26pが車幅方向の外側に移動し、インナホイール6dがアウタホイール6eに対して車幅方向の外側にスライド移動し、ホイール6aのリム幅が狭まってタイヤ6bの高さが高くなる。一方、モータ26xの回転駆動力によって減速機構26y及びピニオン26vを介してラック26u及びベアリング26tが車幅方向の内側に移動すると、インナホイール制御チューブ26pが車幅方向の内側に移動し、インナホイール6dがアウタホイール6eに対して車幅方向の内側にスライド移動し、ホイール6aのリム幅が広がってタイヤ6bの高さが低くなる。
したがって、各車輪26では、インナホイール6dとアウタホイール6eとが独立して車幅方向にスライド移動可能である。そのため、挙動制御装置21では、各車輪26において、リム幅を変化させることができるとともに、タイヤ接地中心位置を変化させることができ、トレッドの位置や幅も変化させることができる。
ECU27は、CPU、ROM、RAM、モータ駆動回路などからなる電子制御ユニットである。ECU27では、操舵角センサ2などの各種センサが接続され、一定時間毎に各種センサからの検出信号を取り入れる。そして、ECU27では、各検出信号に基づいて車両旋回制御、走行条件制御、ロール制御、積載状況制御、モータ駆動制御などの制御を行い、車輪26A,26B,26C,26Dの各モータ16x、26xを駆動制御する。車両旋回制御については、トレッド不変制御とトレッド可変制御がある。なお、積載状況制御は、第1の実施の形態と同様の制御である。
車両旋回制御について説明する。車両旋回制御では、第1の実施の形態と同様に、ECU27では、操舵角に基づいて、直進かあるいは旋回かを判定する。直進と判定した場合、ECU27では、全ての車輪26A,26B,26C,26Dの半径が同一となるリム幅を設定し、全ての車輪26A,26B,26C,26Dのリム幅が設定したリム幅となるような各モータ16x,26xのモータトルクをそれぞれ設定する。なお、この直進時の車輪半径は車速などによって予め求められており、ECU27内に保持しているマップなどから設定する。
旋回と判定した場合、ECU27では、操舵角信号に示される操舵角から旋回方向を判定し、その旋回外輪26と旋回内輪26との半径差を操舵角の大きさに応じて設定する。そして、トレッド不変制御とトレッド可変制御で制御が分かれる。このいずれの制御を行うかは、運転者が選択するようにしてもよいし、走行状況に応じて車両側で選択するようにしてもよいし、あるいは、車両によってどちらか一方の制御を行うか固定してもよい。なお、この旋回時の旋回外輪と旋回内輪との半径差は操舵角に応じて予め求められており、ECU27内に保持しているマップなどから設定する。
トレッド不変制御について説明する。旋回時に、車輪半径を変化させるためにリム幅を変化させるときに、トレッドを不変とすることにより、旋回時の車両挙動が安定化することができる。図10には、左カーブを旋回するときの一例として、右輪26Aのインナホイール6d、アウタホイール6eを変化させずに、左輪26Bのインナホイール6dを旋回外側にスライドさせるとともにアウタホイール6eを旋回内側にスライドさせ、トレッドの位置及び幅を変えないように旋回する場合を示している。旋回外輪26と旋回内輪26との半径差を設定すると、ECU27では、旋回内輪26と旋回外輪26とがその半径差になりかつトレッドの位置及び幅が変化しないように、旋回内輪26のリム幅と旋回外輪26のリム幅を設定し、更に、旋回内輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量と旋回外輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量を設定する。ここでは、半径差を発生させかつトレッドを不変とするために、旋回内輪26だけを変化させてもよい、旋回外輪26だけを変化させてもよい、あるいは、旋回内輪26と旋回外輪26の両方を変化させてもよい。そして、ECU27では、旋回内輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量と旋回外輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量に応じて、各モータ16x,26xのモータトルクをそれぞれ設定する。なお、この旋回時の旋回外輪、旋回内輪のインナホイール、アウタホイールのスライド量は旋回外輪と旋回内輪との半径差に応じて予め求められており、ECU27内に保持しているマップなどから設定する。
トレッド可変制御について説明する。旋回時に、車輪半径を変化させるためにリム幅を変化させるときに、車両重心から旋回外側のトレッドを大きく及び/又は車両重心から旋回内側のトレッドを小さくすることにより、コーナリングスピードを向上させることができる。図11には、左カーブを旋回するときの一例として、右輪26Aのインナホイール6dとアウタホイール6eを旋回外側に同量分スライドさせ、左輪26Bのインナホイール6dを旋回内側にスライドさせるとともにアウタホイール6eを変化させず、旋回外側のトレッドを大きくかつ旋回内側のトレッドを小さくして旋回する場合を示している。図12(a)には従来の車輪を転舵させる車両で旋回した場合の旋回内輪にかかるタイヤ荷重LI1と旋回外輪にかかるタイヤ荷重LO1を示しており、旋回外輪には遠心力によって大きなタイヤ荷重LO1がかかる。そのため、旋回内輪と旋回外輪との荷重差が大きく、タイヤ荷重に応じたタイヤコーナリングパワーも大きくなり(図13参照)、コーナリングの限界スピードが抑えられる。一方、図12(b)には図11に示すような旋回外側のトレッドを大きくかつ旋回内側のトレッドを小さくして旋回した場合の旋回内輪にかかるタイヤ荷重LI2と旋回外輪にかかるタイヤ荷重LO2を示しており、旋回外輪が車両重心CGから遠ざかりかつ旋回内輪が車両重心CGに近づくので、遠心力による旋回外輪のタイヤ荷重LO2が小さくなり、タイヤ荷重の限界までの余裕ができる(図13参照)。そのため、コーナリングスピードの限界スピードを上げることができる。なお、旋回外側のトレッドを大きくしかつ旋回内側のトレッドを小さくすることによって最も大きな効果が得られるが、旋回外側のトレッドを大きくするかあるいは旋回内側のトレッドを小さくするかだけでも効果が得られる。
旋回外輪26と旋回内輪26との半径差を設定すると、ECU27では、旋回内輪26と旋回外輪26とがその半径差となりかつ旋回外側のトレッドを大きく及び/又は旋回内側のトレッドを小さくなるように、旋回内輪26のリム幅と旋回外輪26のリム幅を設定し、更に、旋回内輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量と旋回外輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量を設定する。ここでは、半径差を発生させかつトレッドを可変とするために、旋回内輪26だけを変化させてもよいし、旋回外輪26だけを変化させてもよいし、あるいは、旋回内輪26と旋回外輪26の両方を変化させてもよい。旋回内輪26のインナホイール6dを旋回外側にスライドさせることによって旋回内側のトレッドを小さくでき、旋回外輪26のインナホイール6dを旋回外側にスライドさせることによって旋回外側のトレッドを大きくできる。そして、ECU27では、旋回内輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量と旋回外輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量に応じて、各モータ16x,26xのモータトルクをそれぞれ設定する。なお、この旋回時の旋回外輪、旋回内輪のインナホイール、アウタホイールのスライド量は旋回外輪と旋回内輪との半径差に応じて予め求められており、ECU27内に保持しているマップなどから設定する。
走行条件制御について説明する。トレッドとリム幅とを独立して変化させることができるので、トレッドと車輪半径(タイヤ偏平率)との関係から走行条件に応じて車両状態を設定することができ、高速走行性能、乗心地、操縦安定性などを向上させることができる。ECU27では、第1の実施の形態における高速走行制御や路面状況制御と同様に、車速、車輪のストロークから高速走行、オフロードなどを判定する。ここでは、必要に応じて、カーナビゲーションの情報なども用いて、走行路の判定を行う。例えば、高速走行の場合、ECU27では、ワイドトレッドかつ低重心(車輪半径小)となるように、各車輪26のリム幅を設定し、更に、各車輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量を設定する。一般的なオフロード走行の場合、ECU27では、ワイドトレッドかつ最低地上高アップ(車輪半径大)となるように、車輪26のリム幅を設定し、更に、各車輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量を設定する。狭小林道などのオフロード走行の場合、ECU27では、ナロートレッドかつ最低地上高アップとなるように、車輪26のリム幅を設定し、更に、各車輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量を設定する。さらに、狭小林道などのオフロード走行の場合にロールを抑制するときには、ECU27では、ナロートレッドかつ低重心となるように、車輪26のリム幅を設定し、更に、各車輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量を設定する。そして、ECU27では、各車輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量に応じて、各モータ16x,26xのモータトルクをそれぞれ設定する。なお、この各車輪のインナホイール、アウタホイールのスライド量は走行条件に応じて予め求められており、ECU27内に保持しているマップなどから設定する。
ロール制御について説明する。前後輪でトレッドを変えることができるので、前後輪のトレッドから高速走行性能向上やロール抑制することができる。高速走行性能を向上させる場合、ECU27では、前輪側ワイドトレッドかつ後輪側ワイドトレッドとなるように、各車輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量を設定する。前輪側のロールを抑制する場合、ECU27では、前輪側ワイドトレッドかつ後輪側ナロートレッドとなるように、各車輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量を設定する。後輪側のロールを抑制する場合、ECU27では、前輪側ナロートレッドかつ後輪側ワイドトレッドとなるように、各車輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量を設定する。そして、ECU27では、各車輪26のインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量に応じて、各モータ16x,26xのモータトルクをそれぞれ設定する。なお、ロールを抑制する場合、車両の旋回性能が変化するので、車両の特性、路面状況、運転者個人の好みなどを考慮しながら、調整するとよい。この各車輪のインナホイール、アウタホイールのスライド量は予め求められており、ECU27内に保持しているマップなどから設定する。
モータ駆動制御について説明する。各モータ16x、26xのモータトルクを設定すると、ECU27では、それぞれ設定したモータトルクを各モータ16x,26xで発生させるために必要な目標電流をそれぞれ設定する。そして、ECU27では、目標電流となるように、モータ駆動回路から各モータ16x,26xに電流をそれぞれ供給する。この際、モータ16x,26xに実際に流れるモータ電流などを検出し、設定した目標電流になるようにフィードバック制御を行ってもよい。
図7〜図9を参照して、挙動制御装置21の動作について説明する。ここでは、車両が直進から運転者のステアリング操作に応じて右旋回する場合のトレッド可変旋回するときの挙動制御装置21における動作について説明する。
直進時、運転者が、ステアリングホイールを時計周り操作する。すると、第1の実施の形態と同様に、ECU27では、旋回中と判定し、取得した操舵角から操舵方向を右方向と判定する。そして、ECU27では、右操舵方向から旋回内輪を右輪26A,26C、旋回外輪を左輪26B,26Dと判別し、その旋回内輪26A,26Cと旋回外輪26B,26Dとの半径差を操舵角の大きさに応じて設定する。さらに、ECU27では、旋回内輪26A,26Cと旋回外輪26B,26Dとがその半径差になりかつ旋回外側のトレッドが大きく、旋回内側のトレッドが小さくなるように、旋回内輪26A,26Cのリム幅と旋回外輪26B,26Dのリム幅を設定し、更に、旋回内輪26A,26Cのインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量と旋回外輪26B,26Dのインナホイール6dのスライド量及び/又はアウタホイール6eのスライド量を設定する。例えば、旋回外輪26B,26Dのインナホイール6dとアウタホイール6eを旋回外側に同量分スライドさせ(リム幅は変わらず、旋回外側トレッドが大きくなる)、旋回内輪26A,26Cのインナホイール6dを旋回内側にスライドさせるとともにアウタホイール6eを変化させない(リム幅を広げり、旋回内側トレッドが小さくなる)。そして、ECU27では、その設定した各スライド量に応じて必要なモータトルクを設定する。さらに、ECU27では、設定したモータトルクを各モータ16x,26xで発生させるために必要な目標電流を設定し、目標電流となるようにモータ駆動回路から各輪26のモータ16x,26xに電流をそれぞれ供給する。
各車輪26のモータ16xは、供給された電流に応じたモータトルクを発生し、回転駆動する。このモータ16xの回転は、減速機構16yを介してピニオン16vに伝達され、ピニオン16vを回転させる。このピニオン16vの回転は、ラック16uに伝達され、ラック16uを車幅方向に沿って移動させる。このラック16uの移動によって、アウタホイール6eがインナホイール6dに対してスライド移動する。
各車輪26のモータ26xは、供給された電流に応じたモータトルクを発生し、回転駆動する。このモータ26xの回転は、減速機構26yを介してピニオン26vに伝達され、ピニオン26vを回転させる。このピニオン26vの回転は、ラック26uに伝達され、ラック26uを車幅方向に沿って移動させる。このラック26uの移動によって、インナホイール6dがアウタホイール6eに対してスライド移動する。
このインナホイール6dとアウタホイール6eのスライド移動によって、例えば、旋回内輪26A、26Cではリム幅が直進時より広くなりかつタイヤ接地中心が車両重心側に近づき、旋回外輪26B、26Dではリム幅が直進時から変化せずかつタイヤ接地中心が車両重心側から遠ざかる。したがって、旋回外輪26B,26Dの半径が旋回内輪26A,26Cの半径より大きくなり、更に、旋回内側トレッドが小さくなりかつ旋回外側トレッドが大きくなる。
これによって、旋回内輪26A,26Cの半径と旋回外輪26B,26Dの半径とに差が生じ、車両は旋回内輪26A,26Cの方向に旋回する。また、旋回内側トレッドが小さくなりかつ旋回外側トレッドが大きくなるので、旋回外輪26B,26D側のタイヤ荷重が低減する。この結果、旋回外輪26B,26Dの限界荷重までの余裕ができるので、その分、コーナリングスピードを増大させることができる。
挙動制御装置21は、第1の実施の形態に係る挙動制御装置1や第2の実施の形態に係る挙動制御装置11と同様の効果を有する上に、以下の効果も有する。挙動制御装置21では、アウタホイール6eとインナホイール6dの両方を車幅方向に沿って独立してスライドさせることができるので、各車輪26のリム幅を変更できるとともにトレッドの位置や幅自体を変更することができる。
そのため、挙動制御装置21では、カーブ旋回中にトレッド不変とすることにより、車両挙動を安定化することができる。また、挙動制御装置21では、カーブ旋回中にトレッド可変とすることにより、タイヤ荷重を調整することができ、タイヤ鳴きや横滑りを防止でき、コーナリングの限界スピードを向上させることができる。また、挙動制御装置21では、トレッドとリム幅とを独立して変更することにより、走行条件に応じた車両状態を設定することができる。また、挙動制御装置21では、前後輪でトレッドを変更することにより、ロールを抑制することができる。
図14〜図16を参照して、第4の実施の形態に係る挙動制御装置31について説明する。図14は、第4の実施の形態に係る挙動制御装置の構成図である。図15は、第4の実施の形態に係る挙動制御装置の全輪の一部破断平面図である。図16は、図15の右車輪側の軸送出機構部の正断面図である。挙動制御装置31では、第3の実施の形態に係る挙動制御装置21と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
挙動制御装置31では、第3の実施の形態に係る挙動制御装置21と比較すると、カーブ旋回時に前輪と後輪で旋回中心CCを一致させるために、各車輪を車両前後方向に移動可能な点が異なる。したがって、挙動制御装置31は、挙動制御装置21に対して、機構については各車輪の車両前後方向の移動機構を備え、制御についてはカーブ旋回時に車輪の車両前後方向の移動制御も行う。挙動制御装置31は、操舵角センサ2、車速センサ3、ストロークセンサ4、着座センサ5、アウタ用ストロークセンサ32、インナ用ストロークセンサ33、前後移動用ストロークセンサ34、右前輪36A、左前輪36B、右後輪36C、左後輪36D、左右の車輪間の連結機構及びECU37を備えている。なお、第4の実施の形態では、右前輪36A、左前輪36B、右後輪36C、左後輪36Dが特許請求の範囲に記載する半径変更手段に相当する。
アウタ用ストロークセンサ32は、各輪におけるアウタホイール6eに結合する外側連結軸16pのストローク(ひいては、アウタホイール6eのスライド)を検出するセンサである。アウタ用ストロークセンサ32では、検出したストロークをアウタ用ストローク信号としてECU37に送信する。なお、図14には、アウタ用ストロークセンサ32を1つして描いていないが、各輪にそれぞれ設けられ、ECU37には各輪のアウタ用ストロークセンサ32からのアウタ用ストローク信号がそれぞれ送信される。
インナ用ストロークセンサ33は、各輪におけるインナホイール6dに結合するインナホイール制御チューブ26pのストローク(ひいては、インナホイール6dのスライド)を検出するセンサである。インナ用ストロークセンサ33では、検出したストロークをインナ用ストローク信号としてECU37に送信する。なお、図14には、インナ用ストロークセンサ33を1つして描いていないが、各輪にそれぞれ設けられ、ECU37には各輪のインナ用ストロークセンサ33からのインナ用ストローク信号がそれぞれ送信される。
前後移動用ストロークセンサ34は、各輪における軸送出機構部36nの前後移動用支持軸36a上でのストローク(ひいては、車輪36の車両前後方向のストローク)を検出するセンサである。前後移動用ストロークセンサ34では、検出したストロークを前後移動用ストローク信号としてECU37に送信する。なお、図14には、前後移動用ストロークセンサ34を1つして描いていないが、各輪にそれぞれ設けられ、ECU37には各輪の前後移動用ストロークセンサ34からの前後移動用ストローク信号がそれぞれ送信される。
アウタホイール、インナホイールの移動機構については第3の実施の形態と同様なので、車輪の車両前後方向の移動機構及び左右の車輪間の連結機構の一部について詳細に説明する。ここでは、従動輪(前輪)における機構について説明するが、駆動輪(後輪)も従動輪と同様の構成を有している。
前輪36A,36Bは、第3の実施の形態と同様のホイール6a及びタイヤ6bを備えている。右前輪36Aと左前輪36Bとは、連結軸36mによって連結されており、同じ回転速度で回転する。また、各前輪36A,36Bは、軸送出機構部36nを備えており、軸送出機構部36nによってアウタホイール6eが車幅方向に沿って移動するとともにインナホイール6dが車幅方向に沿って移動し、ホイール6aのリム幅が変化する。さらに、各前輪36A,36Bは、軸送出機構部36nによって車両前後方向に移動する。
軸送出機構部36nの車幅方向内側の端部は、前後移動用支持軸36aによって車両上下方向に回転自在かつ車両前後方向に移動自在に支持されている。前後移動用支持軸36aは、細い円柱状であり、車両前後方向に沿って配設される。前後移動用支持軸36aは、車輪36が車両前後方向に移動可能な範囲より前後に少し余裕を持った長さを有し、その一部が軸送出機構部36n内を車両前後方向に挿通する。前後移動用支持軸36aは、その前端部がサスペンションアーム36bの一端に取り付けられ、その後端部がサスペンションアーム36cに取り付けられている。サスペンションアーム36b,36cの他端は、車両上下方向に回転自在に車体に取り付けられている。
軸送出機構部36nは、筒状のケース36s内に、第3の実施の形態と同様のアウタホイール6eを車幅方向に沿って移動させるためのベアリング16t、ラック16u、ピニオン16v、アウタ用アクチュエータ16w(モータ16x、減速機構16y)とインナホイール6dを車幅方向に沿って移動させるためのベアリング26t、ラック26u、ピニオン26v、インナ用アクチュエータ26w(モータ26x、減速機構26y)及び車輪36を前後移動用支持軸36aに沿って移動させるためのラック36u、ピニオン36v、前後移動用アクチュエータ36w(モータ36x、減速機構36y)を備えている。なお、第4の実施の形態では、前後移動用支持軸36aが特許請求の範囲に記載する支持部に相当し、前後移動用アクチュエータ36wが特許請求の範囲に記載する前後移動用アクチュエータに相当する。
軸送出機構部36nは、インナホイール6dの内側に配置され、内部に車両幅方向に外側連結軸16pが挿通するとともに車幅方向外側にインナホイール制御チューブ26pが挿通し、外側連結軸16pの下方に車両前後方向に前後移動用支持軸36aが挿通する。軸送出機構部36nでは、外側連結軸16pを回転自在に支持するとともに、モータ16xのモータトルク(回転駆動力)によって外側連結軸16pを車幅方向に沿って伸縮させ、アウタホイール6eをインナホイール6dに対してスライド移動させる。また、軸送出機構部36nでは、インナホイール制御チューブ26pを回転自在に支持するとともに、モータ26xのモータトルク(回転駆動力)によってインナホイール制御チューブ26pを車幅方向に沿って移動させ、インナホイール6dをアウタホイール6eに対してスライド移動させる。さらに、軸送出機構部36nは、前後移動用支持軸36aによって車幅方向内側が車両前後方向に移動自在かつ車両上下方向に回転自在に支持され、モータ36xのモータトルク(回転駆動力)によって前後移動用支持軸36aに沿って移動する。これによって、各車輪36は、車両前後方向に移動する。なお、車輪周辺は一般的に車両幅方向より前後方向に余裕があるので、車輪周辺の前後方向のスペースを活用し、車輪を前後方向に移動させることが可能である。
ラック36uは、前後移動用支持軸36aの下面に、前後移動用支持軸36aの全域にわたって取り付けられている。したがって、ラック36uは、前後移動用支持軸36aと共に、その一部が軸送出機構部36nの内部を挿通している。
ラック36uの他面側にはピニオン36vが配置され、ラックギアにピニオンギアが噛み合っている。ピニオン36vには、減速機構36yを介してモータ36xの回転駆動力が伝達される。ピニオン36v、モータ36x及び減速機構36yは、ケース36s内に、位置固定されて設けられている。
モータ36xの回転は、減速機構36yを介してピニオン36vに伝達され、ピニオン36vを回転させる。ピニオン36vの回転によって、ピニオン36vがラック36uに沿って車両前後方向に移動する。この移動に伴って、軸送出機構部36nが車両前後方向に移動する。
カーブ旋回時に、右前輪36Aと左前輪36B及び右後輪36Cと左後輪36Dとは車両前後方向に位置が異なる位置となる。そのため、旋回時に、連結軸36mの中央連結軸36oは、車両前後方向に傾いた状態になる。そのため、等速ジョイント36qは、第2の実施の形態に係る等速ジョイント16qと同様に機能を有する上に、中央連結軸36oの全方向(少なくとも、車両前後方向)の変化を吸収する機能を有している。したがって、連結軸36mは、中央連結軸36o及び左右の等速ジョイント36q,36qを介して、全域にわたって同じ回転速度で回転する。
ECU37は、CPU、ROM、RAM、モータ駆動回路などからなる電子制御ユニットである。ECU37では、操舵角センサ2などの各種センサが接続され、一定時間毎に各種センサからの検出信号を取り入れる。そして、ECU37では、各検出信号に基づいて車両旋回制御、走行条件制御、ロール制御、積載状況制御、モータ駆動制御などの制御を行い、車輪36A,36B,36C,36Dの各モータ16x,26x,36xを駆動制御する。なお、走行条件制御、ロール制御、積載状況制御は、第3の実施の形態と同様の制御である。
車両旋回制御について説明する。車両旋回制御は、トレッド不変制御とトレッド可変制御共に、各車輪36のインナホイール6d、アウタホイール6eのスライド量を設定し、各モータ16x,26xのモータトルクをそれぞれ設定する制御については第3の実施の形態と同様の制御である。さらに、前後輪の旋回中心CCと後輪の旋回中心CCとを1点で交わらせることにより、車両の旋回性能を向上させることができる。そのために、車両旋回制御では、車輪36を車両前後方向に移動させるための制御を行う。
各モータ16x,26xのモータトルクを設定すると、ECU37では、前後輪の旋回中心CCが一致するように、前輪においては旋回内輪36が旋回外輪36に対して後方になるように旋回内輪36の軸送出機構部36nの前後方向移動量及び/又は旋回外輪36の軸送出機構部36nの前後方向移動量を設定し、後輪においては旋回内輪36が旋回外輪36に対して前方になるように旋回内輪36の軸送出機構部36nの前後方向移動量及び/又は旋回外輪36の軸送出機構部36nの前後方向移動量を設定する。ここでは、旋回中心CCが一致させるために、旋回内輪36だけを変化させてもよい、旋回外輪36だけを変化させてもよい、あるいは、旋回内輪36と旋回外輪36の両方を変化させてもよい。具体的な制御としては、ECU37では、車輪36毎に、アウタ用ストロークセンサ32からのアウタ用ストローク信号で示すアウタホイール6eのストローク及びインナ用ストロークセンサ33からのインナ用ストローク信号で示すインナホイール6dのストロークに基づいて実際の車輪の半径を演算し、実際の左右輪36,36の半径差を演算する。さらに、ECU37では、前後移動用ストロークセンサ34からの前後移動用ストローク信号で示す実際の車輪36(軸送出機構部36n)の前後移動用支持軸36aのストロークを考慮し、前後輪の各左右輪36,36の半径差に基づいて前輪側での旋回内輪36及び/又は旋回外輪36の前後方向移動量を設定するとともに後輪側での旋回内輪36及び又は旋回外輪36の前後方向移動量を設定する。そして、ECU37では、前輪側の旋回内輪36及び/又は旋回外輪36の前後方向移動量、後輪側の旋回内輪36及び/又は旋回外輪36の前後方向移動量に応じて、各モータ36xのモータトルクをそれぞれ設定する。なお、この旋回時の旋回内輪、旋回外輪の前後方向移動量は左右輪の半径差に応じて予め求められており、ECU37内に保持しているマップなどから設定する。
モータ駆動制御について説明する。モータ駆動制御は、各モータ16x、26xについての制御は第3の実施の形態と同様の制御を行う。さらに、ECU37では、各モータ36xのモータトルクを設定すると、それぞれ設定したモータトルクを各モータ36xで発生させるために必要な目標電流をそれぞれ設定する。そして、ECU37では、目標電流となるように、モータ駆動回路から各モータ36xに電流をそれぞれ供給する。この際、モータ16x,26x,36xに実際に流れるモータ電流などを検出し、設定した目標電流になるようにフィードバック制御を行ってもよいし、あるいは、各ストロークセンサ32,33,34からのストロークを用いてフィードバック制御を行ってもよい。
なお、車輪36を車両前後方向に移動させる機構としては他の機構を適用してもよい。例えば、図17に示すように、サスペンションアーム36b’,36c’に回転自在に取り付けられる前後移動用支持軸36a’(特許請求の範囲に記載する支持部に相当)が螺旋セレーション(雄ねじ)となっており、軸送出機構部36n’内に螺旋セレーションに噛み合う雌ねじ部材が設けられ、前後移動用支持軸36a’をアクチュエータ36w’(モータ、減速機構)(特許請求の範囲に記載する前後移動用アクチュエータに相当)によって回転させることによって軸送出機構部36n’(車輪36)を車両前後方向に移動させる。また、図18に示すように、サスペンションアーム36b”,36c”の各端部が水平面内で回転自在であり、前後移動用支持軸36a(特許請求の範囲に記載する支持部に相当)とサスペンションアーム36b”,36c”によってリンク機構(特許請求の範囲に記載するリンク機構に相当)が構成され、アクチュエータ36w”(モータ、減速機構)(特許請求の範囲に記載するリンク機構用アクチュエータに相当)によってサスペンションアーム36c”の一端を回転させ、リンク機構の形状を変化させることによって軸送出機構部36n”(車輪36)を車両前後方向に移動させる。
図14〜図16を参照して、挙動制御装置31の動作について説明する。ここでは、車両が直進から運転者のステアリング操作に応じて右旋回する場合の挙動制御装置31における動作について説明する。なお、インナホイール6d、アウタホイール6eをスライド移動制御するまでの動作については第3の実施の形態と同様の動作を行うので、それ以降の動作について説明する。
各モータ16x、26xのモータトルクを設定し、各輪36のモータ16x,26xに電流がそれぞれ供給されると、アウタホイール6eがインナホイール6dに対してスライド移動及び/又はインナホイール6dがアウタホイール6eに対してスライド移動する。アウタ用ストロークセンサ32では、このアウタホイール6eのストロークを検出し、このストロークを示すアウタ用ストローク信号をECU37に送信する。また、インナ用ストロークセンサ33では、このインナホイール6dのストロークを検出し、このストロークを示すアウタ用ストローク信号をECU37に送信する。また、前後移動用ストロークセンサ34では、車輪36の前後方向のストロークを検出し、このストロークを示す前後移動用ストローク信号をECU37に送信する。
ECU37では、車輪36毎に取得したインナホイール6e、アウタホイール6eの各ストロークから車輪半径を求め、左右輪36,36の半径差を求める。そして、ECU37では、前後輪の旋回中心CCが一致するように、取得した車輪36の前後方向ストロークを基準にして、前後輪の各左右輪36,36の半径差に基づいて前輪側の旋回内輪36Aの前後方向移動量及び/又は旋回外輪36Bの前後方向移動量と後輪側の旋回内輪36Cの前後方向移動量及び/又は旋回外輪36Dの前後方向移動量を設定する。例えば、前輪側で旋回内輪36Aだけを後方に移動させる前後方向移動量を設定し、後輪側で旋回内輪36Cだけを前方に移動させる前後方向移動量を設定する。そして、ECU37では、その設定した各前後方向移動量に応じて必要なモータトルクを設定する。さらに、ECU37では、設定したモータトルクを各モータ36xで発生させるために必要な目標電流を設定し、目標電流となるようにモータ駆動回路から各輪36のモータ36xに電流をそれぞれ供給する。
各車輪36のモータ36xは、供給された電流に応じたモータトルクを発生し、回転駆動する。このモータ36xの回転は、減速機構36yを介してピニオン36vに伝達され、ピニオン36vを回転させる。このピニオン36vは、回転すると、ラック36uに沿って車両前後方向移動する。このピニオン36vの移動に伴って、軸送出機構部36n(ひいては、車輪36)が車両前後方向に移動する。
この各車輪36の車両前後方向移動によって、前輪の旋回内輪36Aが旋回外輪36Bより後方に位置するとともに前輪の旋回内輪36Cが旋回外輪36Dより後方に位置する。その結果、前輪36A,36Bの旋回中心CCと後輪36C,36Dの旋回中心CCとが一致する。
挙動制御装置31は、第3の実施の形態と同様の効果を有する上に、以下の効果も有する。挙動制御装置31は、各車輪36を車両前後方向に移動させることができるので、前輪36A,36Bの旋回中心CCと後輪36C,36Dの旋回中心CCとを1点で交わらせることができ、車両旋回性能を向上させることができる。
図1、図8及び図19を参照して、第5の実施の形態に係る挙動制御装置41について説明する。図19は、第5の実施の形態に係る右車輪側の軸送出機構部の正断面図である。なお、挙動制御装置41では、第3の実施の形態に係る挙動制御装置21と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
挙動制御装置41では、第3の実施の形態に係る挙動制御装置21と比較すると、インナホイール6d及びアウタホイール6eをスライド移動させるための機構及び制御を簡単化するために、1つのアクチュエータによってインナホイール6d及びアウタホイール6eをスライドさせる点が異なる。したがって、挙動制御装置41は、挙動制御装置21に対して、機構についてはインナホイール6d及びアウタホイール6eを1つのアクチュエータでスライド移動可能な機構を備える点が異なり、制御については1つのアクチュエータに対するスライド移動制御を行う。挙動制御装置41は、操舵角センサ2、車速センサ3、ストロークセンサ4、着座センサ5、右前輪46A、左前輪46B、右後輪46C、左後輪46D、左右の車輪間の連結機構及びECU47を備えている。なお、第5の実施の形態では、右前輪46A、左前輪46B、右後輪46C、左後輪46Dが特許請求の範囲に記載する半径変更手段に相当する。
左右の車輪間の連結機構について第3の実施の形態と同様なので、アウタホイール、インナホイールの移動機構について詳細に説明する。ここでは、従動輪(前輪)における機構について説明するが、駆動輪(後輪)も従動輪と同様の構成を有している。
前輪46A,46Bは、第3の実施の形態と同様のホイール6a及びタイヤ6bを備えている。右前輪46Aと左前輪46Bとは、第3の実施の形態と同様の連結軸16mによって連結されており、同じ回転速度で回転する。また、各前輪46A,46Bは、軸送出機構部46nを備えており、軸送出機構部46nによってアウタホイール6eとインナホイール6dが共に車幅方向に沿って移動し、ホイール6aのリム幅が変化する。
軸送出機構部46nは、筒状のケース46s内に、アウタホイール6eを車幅方向に沿って移動させるためのベアリング46a、支持台46b、ラック46c、インナホイール6dを車幅方向に沿って移動させるためのベアリング46d、支持台46e、ラック46fを備え、これら2つの機構を車幅方向に駆動するためのピニオン46v,アクチュエータ46w(モータ46x、減速機構(図示せず))を備えている。なお、第5の実施の形態では、ピニオン46vが特許請求の範囲に記載するギアに相当し、アクチュエータ46wが特許請求の範囲に記載するギア用アクチュエータに相当する。
軸送出機構部46nは、インナホイール6dの内側に配置され、内部に外側連結軸16pが挿通するとともに車幅方向外側にインナホイール制御チューブ26pが挿通する。軸送出機構部46nでは、外側連結軸16p及びインナホイール制御チューブ26pを回転自在に支持するとともに、モータ46xのモータトルク(回転駆動力)によって外側連結軸16pを車幅方向に沿って伸縮させるとともにインナホイール制御チューブ26pを車幅方向に沿って移動させ、アウタホイール6eとインナホイール6dとを同時に逆方向にスライド移動させる。
ベアリング46aのインナレースには、外側連結軸16pが挿入され、外側連結軸16pが取り付けられる。ベアリング46aのアウタレースの上端部には、支持台46bを介してラック46cの一面(ラックギアの面とは同面)側が取り付けられる。したがって、外側連結軸16pは、ベアリング46a、支持台46bを介してラック46cに結合している。ベアリング46a、支持台46b及びラック46cは、ケース46s内に、車幅方向に沿って移動自在に設けられている。なお、第5の実施の形態では、外側連結軸16pが特許請求の範囲に記載するアウタ用回転軸に相当する。
ベアリング46dのインナレースには、インナホイール制御チューブ26pが挿入され、インナホイール制御チューブ26pが取り付けられる。ベアリング46dのアウタレースの下端部には、支持台46eを介してラック46fの一面(ラックギアの面とは同面)側が取り付けられる。したがって、インナホイール制御チューブ26pは、ベアリング46d、支持台46eを介してラック46fに結合している。ベアリング46d、支持台46e及びラック46fは、ケース46s内に、車幅方向に沿って移動自在に設けられている。なお、第5の実施の形態では、インナホイール制御チューブ26pが特許請求の範囲に記載するインナ用回転軸に相当する。
ベアリング46aは車幅方向の内側に配置され、ベアリング46dは車幅方向の外側に配置される。ラック46cとラック46fとは、そのラックギアが互いに向かい合っている。ラック46cは、車幅方向の内側に最も移動した場合でもラック46fと対向する部分が残るように、車幅方向の外側に十分な長さを有している。ラック46fは、車幅方向の外側に最も移動した場合でもラック46cと対向する部分が残るように、車幅方向の内側に十分な長さを有している。
ラック46cとラック46fとの間には、ピニオン46vが配置され、ラックギアにピニオンギアが噛み合っている。ピニオン46vには、減速機構を介してモータ46xの回転駆動力が伝達される。ピニオン46v、モータ46x及び減速機構は、ケース46s内に、位置固定されて設けられている。支持台46b,46eは、2つのラック46c,46f間にピニオン46vが配置されたときにラックギアとピニオンギアがうまく噛み合うように、ラック46c,46f間の間隔を調整する高さを有している。
モータ46xの回転は、減速機構を介してピニオン46vに伝達され、ピニオン46vを回転させる。ピニオン46vの回転は、2つのラック46c,46fに伝達され、2つのラック46c,46fを車幅方向に沿って移動させる。この2つのラック46c,46fの移動に伴って、ベアリング46a,46dがそれぞれ移動し、さらに、外側連結軸16pが車幅方向に移動するとともにインナホイール制御チューブ26pが車幅方向に移動する。
モータ46xが一方向(図19の例では、時計周り)に回転すると、ラック46c、ベアリング46a(ひいては、外側連結軸16p)が車幅方向の外側に移動するとともにラック46f、ベアリング46d(ひいては、インナホイール制御チューブ26p)が車幅方向の内側に移動する。これに伴って、アウタホイール6eが車幅方向の外側にスライド移動するとともにインナホイール6dが車幅方向の内側にスライド移動し、ホイール6aのリム幅が広がってタイヤ6bの高さが低くなる。
モータ46xが他方向(図19の例では、反時計周り)に回転すると、ラック46c、ベアリング46a(ひいては、外側連結軸16p)が車幅方向の内側に移動するとともにラック46f、ベアリング46d(ひいては、インナホイール制御チューブ26p)が車幅方向の外側に移動する。これに伴って、アウタホイール6eが車幅方向の内側にスライド移動するとともにインナホイール6dが車幅方向の外側にスライド移動し、ホイール6aのリム幅が狭まってタイヤ6bの高さが高くなる。
インナホイール6dとアウタホイール6eとは、スライド量としては同量であり、スライド方向としては逆方向になる。各車輪46のリム幅が変化した場合でも、車輪46のタイヤ接地中心は変化せず、トレッドは変化しない。
ECU47は、CPU、ROM、RAM、モータ駆動回路などからなる電子制御ユニットである。ECU47では、操舵角センサ2などの各種センサが接続され、一定時間毎に各種センサからの検出信号を取り入れる。そして、ECU47では、各検出信号に基づいて車両旋回制御、高速走行制御、路面状況制御、積載状況制御、モータ駆動制御などの制御を行い、車輪46A,46B,46C,46Dの各モータ6xを駆動制御する。
車両旋回制御、高速走行制御、路面状況制御、積載状況制御では、リム幅を設定するまで第1の実施の形態と同様の制御を行う。ECU47では、各車輪46のリム幅を設定すると、インナホイール6dとアウタホイール6eとが逆方向に同量分スライドすることによってそのリム幅になるように、各モータ46xのモータトルクを設定する。モータ駆動制御では、第1の実施の形態と同様の制御を行う。なお、車両旋回させる場合、旋回外輪だけをリム幅が狭くなるように制御してもよいし、旋回内輪だけをリム幅が広くなるように制御してもよいし、あるいは、旋回外輪のリム幅が狭くなるとともに旋回内輪のリム幅が狭くなるように制御してもよい。
図1、図8及び図19を参照して、挙動制御装置41の動作について説明する。ここでは、車両が直進から運転者のステアリング操作に応じて右旋回する場合の挙動制御装置41における動作について説明する。
直進時、運転者が、ステアリングホイールを時計周り操作する。すると、第1の実施の形態と同様に、ECU47では、旋回中と判定し、取得した操舵角から操舵方向を右方向と判定する。そして、ECU47では、右操舵方向から旋回内輪を右輪46A,46C、旋回外輪を左輪46B,46Dと判別し、その旋回内輪46A,46Cと旋回外輪46B,46Dとの半径差を操舵角の大きさに応じて設定する。さらに、ECU47では、旋回内輪46A,46Cと旋回外輪46B,46Dとがその半径差になるように、旋回内輪46A,46Cのリム幅及び/又は旋回外輪46B,46Dのリム幅を設定し、その設定したリム幅となるために必要なモータトルクを設定する。さらに、ECU47では、設定したモータトルクを各モータ46xで発生させるために必要な目標電流を設定し、目標電流となるようにモータ駆動回路から各輪46のモータ46xに電流をそれぞれ供給する。
ここでは、旋回外輪46B,46Dのリム幅だけを狭くする場合について説明する。旋回外輪46B,46Dにおける各モータ46xは、供給された電流に応じたモータトルクを発生し、回転駆動する。このモータ46xの回転は、減速機構を介してピニオン46vに伝達され、ピニオン46vを回転させる。このピニオン46vの回転は、2つのラック46c,46fに伝達され、ラック46cを車幅方向の内側に移動させるとともにラック46fを車幅方向の外側に移動させる。
ラック46cの移動に伴って、ベアリング46aも車幅方向の内側に移動する。このベアリング46aの移動に伴って、外側連結軸16pが車幅方向の内側に移動し、外側連結軸16pの軸長が短くなる。この外側連結軸16pの移動によって、アウタホイール6eがインナホイール6dに対して車幅方向の内側へスライド移動する。
一方、ラック46fの移動に伴って、ベアリング46dも車幅方向の外側に移動する。このベアリング46dの移動に伴って、インナホイール制御チューブ26pが車幅方向の外側に移動し、インナホイール制御チューブ26pが外側に移動する。このインナホイール制御チューブ26pの移動によって、インナホイール6dがアウタホイール6eに対して車幅方向の外側へスライド移動する。
このアウタホイール6eのスライド移動とインナホイール6dのスライド移動によって、旋回外輪46B,46Dの各ホイール6aのリム幅が直進時より狭くなり、旋回外輪46B,46Dの半径が大きくなる。この左右輪の半径の差によって、車両は旋回内輪46A,46Cの方向に旋回する。
挙動制御装置41は、第1の実施の形態に係る挙動制御装置1や第2の実施の形態に係る挙動制御装置11と同様の効果を有する上に、以下の効果も有する。挙動制御装置41では、アウタホイール6eとインナホイール6dの両方を車幅方向に沿ってスライドさせることができるので、旋回中にトレッドを不変とすることができ、車両挙動を安定化することができる。
また、挙動制御装置41では、1つのアクチュエータ46wによってアウタホイール6e及びインナホイール6dをスライド移動させる機構としているので、機構を簡素化できるとともに制御を簡単化できる。そのため、機構のガタを極力抑制することができる。また、アウタホイール6eとインナホイール6dについてのスライド量演算の誤差によるアウタホイール6eとインナホイール6dとのスライド量の不釣合いを抑制でき、その結果、リム幅不良を極力抑制することができる。さらに、部品点数を削減でき、小型、軽量化できる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、第1の実施の形態ではインホイールモータ式の四輪駆動の車両に適用する構成としたが、インホイールモータ式の二輪駆動の車両に適用してもよい。また、第2の実施の形態ではエンジンによる後輪駆動の車両に適用する構成としたが、モータによる駆動の車両に適用してもよいし、あるいは、エンジンなどによる前輪駆動又は四輪駆動の車両に適用してもよい。また、第3の実施の形態ではインナホイールとアウタホイールの両方をスライド移動させる機構をエンジンによる後輪駆動の車両に適用する構成としたが、モータによる駆動の車両に適用してもよいし、エンジンなどによる前輪駆動又は四輪駆動の車両に適用してもよいし、あるいは、インホイールモータ式の四輪駆動又は二輪駆動の車両に適用してもよい。また、第4の実施の形態では車輪を車両前後方向に移動させる機構をエンジンによる後輪駆動の車両に適用する構成としたが、モータによる駆動の車両に適用してもよいし、エンジンなどによる前輪駆動又は四輪駆動の車両に適用してもよいし、あるいは、インホイールモータ式の四輪駆動又は二輪駆動の車両に適用してもよい。また、第5の実施の形態では1つのアクチュエータによってインナホイールとアウタホイールの両方をスライド移動させる機構をエンジンによる後輪駆動の車両に適用する構成としたが、モータによる駆動の車両に適用してもよいし、エンジンなどによる前輪駆動又は四輪駆動の車両に適用してもよいし、あるいは、インホイールモータ式の四輪駆動又は二輪駆動の車両に適用してもよい。なお、インホイールモータ式のように車輪の回転を個々に制御できない場合、第2の実施の形態のように、左右輪が同一の回転速度で回転する機構が必要となる。
また、本実施の形態では車輪半径を変えることによって旋回制御以外にも、高速走行制御、路面状況制御、積載状況制御、走行条件制御やロール制御を行う挙動制御装置に適用したが、旋回のみを行う旋回装置に適用してもよいし、高速走行制御、路面状況制御、積載状況制御、走行条件制御又はロール制御のみを行う装置に適用してもよいし、あるいは、これらの以外にも、ヨーレート、横加速度、サスペンションのストロークなどに基づいて車両の挙動を判定し、挙動が安定化するような制御に適用してもよい。
また、本実施の形態では運転者のステアリング操作に応じて車両を旋回させる場合に適用したが、レーンキープによって車両を旋回させる場合、車両の挙動を安定化させるために車両の旋回量を制御する場合、あるいは、自動操舵によって車両を旋回させる場合などにも適用可能である。
また、本実施の形態では各種センサによって路面状況、積載状況、高速走行を検出し、車輪径を自動で制御する構成としたが、運転者が路面状況、積載状況、高速走行などを判断し、運転者がスイッチなどによって車輪半径の変更指示を入力し、その指示入力に応じて車輪径を変化させる構成としてもよい。
また、本実施の形態では第1の実施の形態での四輪駆動車と第2の実施の形態での後輪駆動車に同じ制御を行ったが、各駆動方式に適した制御を行ってもよい。例えば、後輪駆動車の場合、大きな駆動力を発生させるときには、空力的に有利な前のめりの車両姿勢とするために、前輪の径より後輪の径が大きくなるように制御し、前傾のピッチング方向の車両姿勢調整を行う。
また、本実施の形態では積載状況を各座席に人が着座しているか否かによって判断し、着座している位置に応じて車輪径を大きくし、車両姿勢を調整したが、サスペンションのストロークなどから積載状況を判断してもよいし、あるいは、車両の荷室の積載重量などから積載状況を判断し、これらの積載状況から車両姿勢を調整してもよい。例えば、荷室の積載重量が重い場合、後輪の径を大きくし、車両姿勢を調整する。
また、本実施の形態ではインナホイールに対してアウタホイールをスライドさせる構成又はインナホイールとアウタホイールの両方をスライドさせる構成としたが、インナホイールをスライドさせる構成としてもよい。インナホイールをスライドさせる構成の場合、インナホイールを外側にスライドさせて、左右の車輪間のトレッドを拡大することによって、ロールを抑制する効果が得られる。
また、本実施の形態ではインナホイールとアウトホイールとを備え、インナホイールに対してアウタホイールをスライド又はインナホイールとアウタホイールの両方をスライドさせることによってリム幅を可変とする構成としたが、他の機構によってリム幅を可変とする構成としてもよい。
また、本実施の形態ではタイヤにチューブを備える構成としたが、インナホイールとアウタホイールとのスライド部分に十分な気密性が確保されていれば、チューブが無くてもよい。
また、本実施の形態ではタイヤ内の複数箇所に補強材を設ける構成としたが、タイヤが変形に対して十分な耐性を有している場合には補強材が無くてもよい。
また、第2〜第5の実施の形態では外側連結軸や外側ドライブシャフトをアウタホイールに結合し、連結軸やドライブシャフトによって左右のアウタホイールを連結する構成としたが、外側連結軸や外側ドライブシャフトをインナホイールに結合し、連結軸やドライブシャフトによって左右のインナホイールを連結する構成としてもよい。
また、第4の実施の形態ではインナホイール、アウタホイールの各ストロークを検出し、各ストロークから車輪半径(左右輪の半径差)を求める構成としたが、車輪半径を直接検出する構成としてもよいし、モータ16x,26xに流れる電流を検出し、各モータ電流から車輪半径を求める構成としてもよいし、モータ16x,26xの回転方向と回転したギア数を検出し、各回転方向とギア数から車輪半径を求める構成としてもよい。また、第4の実施の形態では軸送出機構部の前後移動用支持軸に沿ったストロークから車輪の前後方向移動量を検出する構成としたが、モータ36xに流れる電流を検出し、モータ電流から車輪の前後方向移動量を求める構成としてもよいし、モータ36xの回転方向と回転したギア数を検出し、回転方向とギア数から車輪の前後方向移動量を求める構成としてもよい。
1,11,21,31,41…挙動制御装置、2…操舵角センサ、3…車速センサ、4…ストロークセンサ、5…着座センサ、6,16,26,36,46…車輪、6A,16A,26A,36A,46A…右前輪、6B,16B,26B、36B,46B…左前輪、6C,16C,26C,36C,46C…右後輪、6D,16D,26D,36D,46D…左後輪、6a…ホイール、6b…タイヤ、6c…アクチュエータ、6d…インナホイール、6e…アウタホイール、6f…補強材、6g…チューブ、6h…モータ、6i…ロッド、6j,6l…ベアリング、6k…外周部、7,27,37,47…ECU、16m,36m…連結軸、16n,26n,36n、36n’,36n”,46n…軸送出機構部、16o,36o…中央連結軸、16p…外側連結軸、16q,36q…等速ジョイント、16r…ナット、16s,26s,36s,46s…ケース、16t,26t,46a,46d…ベアリング、16u,26u,36u,46c,46f…ラック、16v,26v,36v,46v…ピニオン、16w,46w…アクチュエータ(アウタ用アクチュエータ)、16x,26x,36x,46x…モータ、16y,26y,36y…減速機構、26p…インナホイール制御チューブ、26r…ロックワッシャ、26w…インナ用アクチュエータ、32…アウタ用ストロークセンサ、33…インナ用ストロークセンサ、34…前後移動用ストロークセンサ、36a,36a’,36a”…前後移動用支持軸、36b,36c,36b’,36c’,36b”,36c”…サスペンションアーム、36w,36w’,36w”…前後移動用アクチュエータ、46b,46e…支持台