JP2007105693A - 触媒体とこれを用いた空気処理装置 - Google Patents

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邦弘 鶴田
Hironao Numamoto
浩直 沼本
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幸生 野村
Akihiro Umeda
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Abstract

【課題】簡単な製法を用いて基材に触媒を強固に形成できる高性能の触媒体とこれを用いた空気処理装置を提供する。
【解決手段】触媒体は、基材5と、基材5に形成された金属酸化物の単独もしくは金属酸化物と貴金属を併用した触媒成分6を主成分として酸化ビスマス7を含有する触媒層8を少なくとも備えている。酸化ビスマス7は、融点820℃近辺で加熱すると、大きく体積膨張して多孔質になるとともに、他材料に強固に密着する性質を有する。このため、触媒層8は、ステンレスなどの基材5に前処理を施すことなく塗布して融点近辺で焼成するだけで、多孔質で密着性に優れた層として簡単に形成することができる。また、多孔質となった触媒層8の表面は、触媒成分6の量が多くなってその露出状態が良くなり、酸素や反応ガスの拡散性が向上して高い触媒特性が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、簡単な製法を用いて基材に触媒を強固に形成できる高性能の触媒体とこれを用いた空気処理装置に関する。
基材に触媒を形成した従来の触媒体は、図10に記載したように、クロム酸化物からなる加熱不動態化皮膜1を有する金属基材2と、金属基材2の加熱不動態化皮膜1の表面に形成されたセリウムやバリウムやアルミウムを含有する焼結酸化物のアンダーコート層3と、このアンダーコート層3の上に形成された貴金属触媒層4を有する構成となっている(例えば、特許文献1参照)。この触媒体は、酸素濃度を0.05〜0.2%容積%含有するガス中で予め加熱焼鈍処理して加熱不動態化皮膜1を形成した金属基材2に、セリウムやバリウムやアルミウムを含有する焼結酸化物をコロイド状アルミナやコロイド状シリカに混合して調合した混合水分散スラリーを塗布して乾燥焼成してアンダーコート層3を形成したのち、貴金属硝酸塩水溶液を塗布含浸して貴金属触媒層4を形成する製法で得ており、炭化水素の酸化分解反応に効果を発揮する。
また、基材に酸化ビスマスを用いて触媒を形成する従来の触媒体として、光触媒を基材に形成した光触媒機能を有する多機能材が有る(例えば、特許文献2参照)。この光触媒機能を有する多機能材は、基材表面にバインダー層を形成する工程と、バインダー層の上に平均粒径が0.3μm未満の光触媒粒子とこの光触媒粒子粒径の4/5以下とした酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ビスマスのいずれかの粒子の混合物からなる層を形成する工程と、焼成する工程を具備する製造方法で得ている。多機能材は、光触媒粒子の上層部が外気と接するようにするため、バイダー層から露出させて触媒性能が充分に発揮できるように製造されており、さらに光触媒粒子の下層部の一部がバインダー層内に埋設されて剥離しにくい様に製造されている。酸化ビスマスなどの混合物は、光触媒粒子の間隙に充填して結合させる粒子として使用されており、その蒸気圧が光触媒粒子より高い性質を利用して焼結助剤として機能させて焼結温度を低下させる。
一方、酸化ビスマスを用いた触媒として、稀土類元素を含有するペロブスカイト型複合酸化物と稀土類酸化物と酸化アルミニウムと酸化ビスマスと酸化鉄、および貴金属のうち一種以上からなる組成物がある(例えば、特許文献3参照)。この触媒は、ペロブスカイト型複合酸化物と稀土類酸化物の酸化セリウムと酸化アルミニウムと酸化ビスマスと酸化鉄と貴金属のパラジウムを所定量混合した組成物を実施例として挙げ、500℃以上の高温還元性雰囲気において貴金属の粒成長やペロブスカイト型複合酸化物への拡散が抑制できる効果があるとしている。そして、触媒組成物は、そのスラリーをコージェネライト製のハニカム担体に浸漬し、乾燥後に650℃で1時間焼成して得ている。
またさらに同種の酸化ビスマスを用いた触媒として、酸化モリブテンー酸化ビスマス複合酸化物と、少量の銀などを担持した多孔質な無機酸化物の混合物がある(例えば、特許文献4参照)。この触媒は、窒素酸化物と酸素と炭化水素が含有する燃料排ガスにおいて、窒素酸化物を効果的に除去できる効果がある。またさらに同種の酸化ビスマスを用いた触媒として、セリウムージルコニウム複合酸化物に酸化ビスマスを固溶させた触媒がある(例えば、特許文献5参照)。この触媒は、300℃以下の低温において高い酸化還元能力を有する効果がある。
さて、発明者らは、酸化ビスマスを用いた酸素分解作用を有する触媒体として、基材として酸素イオン導電性固体電解質板を用い、この両面に酸化ビスマスと白金と酸素イオン
導電性固体電解質を混合した電極を形成した構成を提案した(例えば、特許文献6参照)。また、これ以外に、酸化ビスマスと白金からなる電極を酸素イオン導電性固体電解質板の両面に形成した構成も有る。これら構成は、電極に直流電圧を印加すると、電極の触媒作用により酸素の電気分解反応が起こる。
また同種内容の、基材として酸素イオン導電性固体電解質板を用いた窒素酸化物分解作用を有する触媒体として、酸素イオン導電性固体電解質体板の表面に、窒素酸化物吸収性もしくは吸着性を有する酸素欠陥性構造もしくはペロブスカイト構造の複属酸化物と貴金属を混合した電極を、形成した構成を既に提案した(例えば、特許文献7参照)。この構成は、電極に直流電圧を印加すると、電極の触媒作用により窒素酸化物の電気分解反応が起こる。またさらに同種内容の、基材として酸素イオン導電性固体電解質を用いた酸素分解作用を有する触媒体として、酸素イオン導電性固体電解質板の表面に、酸素分解能を有する酸素欠陥性構造の複合酸化物からなる酸化物電極と、貴金属からなる金属材料と酸化物材料を混合した混合電極を、積層した積層電極を形成した構成品が有る(例えば、特許文献8参照)。この触媒体は、必要に応じて混合電極の上部に金属電極をさらに積層する構造とすることで、酸素の分解反応をさらに高めている。
特許第3327164号公報 特開2002−119865号公報 特開平05−038437号公報 特許第3357904号公報 特開2003−238159号公報 特許第3018925号公報 特許第2970290号公報 特開2003−288904号公報
しかしながら、従来例1の触媒体の金属基材2は、アンダーコート層3に密着させるために、金属材料を酸素濃度が0.05〜0.2%容積%含有するガス中において1000℃近辺温度で加熱焼鈍処理して、予め加熱不動態化皮膜1を形成するという、複雑な製法を必要とする課題があった。また、アンダーコート層3は、多孔質にするために、硝酸セリウムなどの金属塩を焼成して得た焼結酸化物に、アルミナやシリカに稀硝酸を微量混合して長時間攪拌して調合したコロイド状アルミナやシリカを混合し、両者をさらに混合して長時間攪拌して水分散スラリーを得るという、複雑な製法を必要とする課題があった。
また、従来例2の光触媒機能を有する多機能材は、基材表面に密着した光触媒層を得るために、光触媒粒子は0.3μm未満とし、酸化ビスマス等粒子は光触媒粒子の粒径の4/5以下にするという、粒子品質の厳密な管理が必要である課題があった。
また、従来例2〜5の触媒は、触媒特性を向上させるために酸化ビスマスを使用しているので、このままでは基材に形成できない。また仮に基材に形成するために融点付近で焼成しても、触媒特性や多孔質性、密着性が不足している課題があった。
一方、従来例6の酸素イオン導電性固体電解質と酸化ビスマスと白金を混合した電極は、酸化ビスマスの優れた多孔質形成力と密着力により多孔質な膜が酸素イオン導電性固体電解質板に形成されるが、電極に触媒作用が無い酸素イオン導電性固体電解質が多く混合されているため、酸素分解に関する触媒特性や多孔質性が不足している課題があった。
また、従来例7の窒素酸化物吸収性もしくは吸着性を有する酸素欠陥性構造もしくはペロブスカイト構造の複属酸化物と貴金属を混合した電極は、酸化ビスマスが混合されてい
ないため、触媒特性や多孔質性、密着性が不足している課題があった。
またさらに、従来例8の酸素分解能を有する酸素欠陥性構造の複合酸化物からなる酸化物電極と、貴金属からなる金属材料と酸化物材料を混合した混合電極を積層した積層電極も、酸化ビスマスが混合されていないため、触媒特性や多孔質性、密着性が不足している課題があった。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、簡単な製法および品質管理を用いて基材に触媒を強固に形成できしかもその膜が多孔質であるため触媒特性に優れている触媒体と、この触媒体を用いた空気処理装置を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の触媒体は、基材と、基材に形成されており金属酸化物の単独もしくは金属酸化物と貴金属を併用した触媒成分を主成分として酸化ビスマスを含有する触媒層と、を少なくとも備えた構成とした。
酸化ビスマスは、融点が820℃であり、溶融温度近辺で加熱すると大きく体積膨張する性質がある。これにより、本発明の触媒体は、触媒層が触媒成分と酸化ビスマスを含有させた材料であるとしたため、多孔質で密着性に優れた触媒層が基材の表面に簡単な製法で形成され、触媒の活性が高まる効果が得られる。
また、本発明の触媒体は、基材と、基材に形成されておりシリカまたはアルミナの担体成分を主成分として酸化ビスマスを含有するコート層と、コート層の上に配置された貴金属系触媒を少なくとも備えた構成とした。
酸化ビスマスは、融点が820℃であり、溶融温度近辺で加熱すると大きく体積膨張する性質がある。これにより、本発明の触媒体は、酸化ビスマスを含有したコート層を基材に塗布して溶融温度近辺で加熱すると、多孔質で密着性に優れたコート層が基材の表面に簡単に形成される。しかも、コート層は、シリカまたはアルミナを主成分とさらに酸化ビスマスを含有させた材料であるとしているため、多孔質で密着性に優れた高表面積のコート層が基材の表面に簡単な製法で形成され、これに担持した貴金属系触媒の活性が高まる効果が得られる。
本発明は、簡単な製法および品質管理を用いて基材に触媒を強固に形成でき、しかもその膜が多孔質であるため触媒特性に優れている触媒体と、この触媒体を用いた空気浄化性能に優れた空気処理装置を提供できる。
第1の発明の触媒体は、基材と、前記基材に形成されており金属酸化物の単独もしくは前記金属酸化物と貴金属を併用した触媒成分を主成分として酸化ビスマスを含有する触媒層と、を少なくとも備える構成とした。酸化ビスマスは、融点が820℃であり、溶融温度近辺で加熱すると大きく体積膨張する性質がある。このため、本発明の触媒体は、触媒層が触媒成分と酸化ビスマスを含有させた材料であるとしたため、多孔質で密着性に優れた触媒層が基材の表面に簡単な製法で形成され、触媒の活性が高まる効果が得られる。
第2の発明の触媒体は、基材と、前記基材に形成されておりシリカまたはアルミナの担体成分を主成分として酸化ビスマスを含有するコート層と、前記コート層の上に配置された貴金属系触媒を少なくとも備えた構成とした。酸化ビスマスは、融点が820℃であり、溶融温度近辺で加熱すると大きく体積膨張する性質がある。このため、本発明の触媒体
は、酸化ビスマスを含有したコート層を基材に塗布して溶融温度近辺で加熱すると、多孔質で密着性に優れたコート層が基材の表面に簡単に形成される。しかも、コート層は、シリカまたはアルミナを主成分とさらに酸化ビスマスを含有させた材料であるとしているため、多孔質で密着性に優れた高表面積のコート層が基材の表面に簡単な製法で形成され、これに担持した貴金属系触媒の活性が高まる効果が得られる。
第3の発明の触媒体は、第1の発明に用いる触媒成分の金属酸化物が、酸素欠陥性構造またはペロブスカイト構造の単独もしくは複合の酸化物であるとした。触媒成分が酸素欠陥性構造もしくはペロブスカイト構造の単独もしくは複合の酸化物であると、触媒特性が一層高く多孔質で密着性に優れた触媒層が、基材の表面に焼成するだけで簡単に形成できる。
第4の発明の触媒体は、第1の発明に用いる触媒層または第1の発明に用いるコート層が、酸化セリウムを少量含有する構成とした。酸素濃度の少ない環境下で触媒特性が一層高く、多孔質で密着性に優れた触媒層およびコート層が、基材の表面に焼成するだけで簡単に形成できる
第5の発明の触媒体は、第1の発明に用いる触媒層または第1の発明に用いるコート層が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウムのいずれかのアルカリ土類金属系酸化物を少量含有する構成とした。水分の多い環境下で触媒特性が一層高く、多孔質で密着性に優れた触媒層およびコート層が、基材の表面に焼成するだけで簡単に形成できる
第6の発明の空気処理装置は、第1〜5発明のいずれかに用いる触媒体を、食品加熱油煙ガスもしくは燃焼排ガスが通過する排気ガス流路に配置して、前記ガスに含有した炭化水素類を酸化反応で分解浄化処理する構成とした。
本発明の触媒体は、酸化ビスマスの優れた酸素供給性により、酸素が関与する反応速度を高めて酸化反応を活発におこなうことができるため、水分が多く酸素濃度が少なく少量の炭化水素が共存する食品加熱油煙や点火消火時の燃焼排ガスにおいて、炭化水素類を酸化して分解浄化処理する触媒反応を効果的におこなうことができる。また、触媒成分または貴金属系触媒が、酸化ビスマスと共存することにより、これら環境に微小共存するアルコール系炭化水素類を中途半端に酸化してアルデヒド類や酸に変化させることを抑制して、一気に炭酸ガスと水に変化させて完全酸化できる効果が有る。そのため、これら環境である食品加熱油煙もしくは点火消火時の燃焼排ガスが通過する排気ガス流路に触媒体を配置した空気処理装置は、低温でも良好に分解浄化処理できるため、触媒体の加熱に要する電力などを低減できる利点がある。
第7の発明の触媒体は、第1の発明において、基材が金属酸化物系の酸素イオン導電性固体電解質体であり、触媒層が、酸素欠陥性構造またはペロブスカイト構造の単独もしくは複合の金属酸化物触媒成分を主成分とする金属酸化物触媒層と、貴金属触媒成分を主成分として酸化ビスマスが含有された貴金属触媒層との積層電極であり、前記酸素イオン導電性固体電解質体の両面に前記積層電極を形成した構成を少なくとも備えたとした。
本発明の触媒体は、外部直流電源で積層電極の両側に電圧を印加すると、酸素分子が陰極側で酸素イオンに変化して酸素イオン導電性固体電解質体を経由して陽極側に移動して再び酸素分子に変化する触媒反応を活発に起こす。この高い触媒活性により、触媒体は低温で動作できるようになり、触媒体の加熱に要する電力を低減できる利点が有る。また、本発明の触媒体は、陰極側で水蒸気を分解して水素と酸素を生成する触媒反応が起こり難く、一般環境で使用しても水蒸気の影響を受けにくい利点も有る。
第8の発明の空気処理装置は、第7発明の触媒体を、酸素を含有するガスが通過するガス流路に配置して、前記ガスを電気化学的に分解して出口側ガスの酸素の濃度を高める処
理をおこなう構成とした。本発明の空気処理装置は、触媒体が酸素分子の関与する化学反応をその触媒作用によって活発におこなわせるので、濃度100%の酸素を供給する酸素富加機能として使用できる利点がある。また、この空気処理装置は、水蒸気を分解して水素と酸素を生成する触媒反応が起こり難いので、一般環境で安心して使用できる利点が有る。
第9の発明の空気処理装置は、第7発明の触媒体を、積層電極の片側周囲上部に酸素拡散孔を有する酸素拡散制限体を配置した構造の限界電流式酸素センサとして用いて酸素雰囲気下に配置し酸素濃度の計測をおこない、計測酸素濃度の電気信号に基づいて予め記憶された処理をおこなうとした。触媒体の発生電流が大きいので、これを用いた限界電流式酸素センサは、限界電流値を大きくできこのことで酸素濃度計測の精度が向上する。また、限界電流式酸素センサは、陰極側で水蒸気を分解して水素と酸素を生成する触媒反応が起こり難いので水蒸気の影響を受けにくく、多湿環境で使用しても酸素濃度計測の精度が向上する。このため、このセンサを用いた空気処理装置は、酸素濃度の微小なる変化を精度よく検知して、きめ細かな処理をおこなうことができる。
本発明の目的は、第1の発明から第9の発明の要部を実施の形態とすることにより達成できるので、以下、各請求項に対応する実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は本実施の形態により限定されるものではない。また、本実施の形態の説明において、同一構成並びに作用効果を奏するところには同一符号を付して説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における触媒体の構成図である。触媒体は、基材5と、基材5に形成された金属酸化物の単独もしくは前記金属酸化物と貴金属を併用した触媒成分6を主成分として酸化ビスマス7を含有する触媒層8を少なくとも備えている。本発明で使用する材料について説明する。基材5は、ステンレスなどの金属、コージライトなどのセラミック、ガラスである。触媒成分6は、金属酸化物の単独、もしくは金属酸化物と貴金属とのを併用品である。金属酸化物は、酸化コバルトや酸化スズなどである。貴金属は、白金、金、パラジウム、銀、ロジウム、イリジウム、ルテニウムの単独成分もしくは複数成分である。触媒層8は、基材5の片面もしくは両面に形成されている。
基材5に触媒層8を形成するための良好な焼成温度は、770〜1200℃である。これは、770℃以上で焼成すると多孔質で密着性に優れた触媒層8が基材5の表面に形成できるためであり、この焼成下限温度770℃は、酸化ビスマス7の融点が820℃であるため、この温度に近づくと酸化ビスマス7の溶融が徐々に起こり始めるためと思われる。また、焼成上限温度の1200℃は、この温度を超えると触媒成分6との化学反応性が増加してその触媒特性が生かせにくくなるためである。また特に、790〜1000℃は、触媒成分6の露出状態が良く酸素や反応ガスの拡散性が向上した多孔質高密着の触媒層8が形成できた。そこで、以後の検討は、最適な920℃で焼成して触媒層8を得た。
実施例で説明する。基材5は、ステンレスである。触媒層8は、金属酸化物の単独もしくは金属酸化物と貴金属を併用した触媒成分6に少量の酸化ビスマス7を混合させた材料であり、水を加えて調合したスラリーを基材5に塗布して920℃焼成して形成した。
得られた触媒体は、ガス浄化率と多孔質度と基材への密着性を評価した。触媒成分の種別と酸化ビスマス混合量を変化させた際の特性を(表1)に示す。ガス浄化率は、400℃に加熱した触媒体に、酸素を21%含んだ乾燥空気にプロパンガスを1000ppm混合したガスを通風し、出口濃度を入口濃度で除して求めた値である。多孔質度は、触媒体を顕微鏡で拡大して観察し、その外観の多孔質度から多孔質、やや多孔質、やや緻密の3段階で表現した。基材への密着性は、触媒体に貼った高粘着性ガムテープを急激に剥離し
た際に基材5に残存する触媒層8の量から判断しており、ほとんどの触媒層8が基材5に残存すると優れると判断し、7〜8割が残存すると良好と判断し、約5割が残存すると悪いの3段階で判断している。
Figure 2007105693
(表1)の結果より、本発明の触媒体は、ガス浄化率が高く多孔質で密着性に優れた触媒層8が、基材5の表面に焼成するだけで簡単に形成できることがわかる。また、この優れた効果は、酸化ビスマス7が1〜30wt%混合された範囲において観察された。
この優れた効果は、酸化ビスマス7の性質に起因する。酸化ビスマス7は、融点820℃近辺で加熱すると、大きく体積膨張して多孔質になるとともに、他材料に強固に密着する性質を有する。このため、酸化ビスマス7を混合した触媒層8は、ステンレスの基材5に前処理を施すことなく塗布して820℃近辺で焼成するだけで、多孔質で密着性に優れた層として簡単に形成することができる。また、酸化ビスマス7は、他材料とともに焼成すると両材料の特性を生かしつつ偏析する性質を有しているため、触媒層8において沈降して基材5の方に多く偏析して表面にはその量が少なくなっている。このため、多孔質となった触媒層8の表面は、触媒成分6の量が多くなってその露出状態が良くなり、これを用いた触媒体は、酸素や反応ガスの拡散性が向上して高い触媒活性が得られることとなる。これに加えて、酸化ビスマス7は、酸素イオンイオン欠陥を持つホタル石型結晶構造の半導体材料であり、酸素が酸素イオンとなってその内部を通過する高い酸素イオン導電性と、高い電子伝導を有しているので、触媒反応に大きく関与する酸素や電子が移動し易くなっている。このため、触媒層8において混合された触媒成分6は、酸化ビスマス7から酸素分子や電子を多く伝達され、これを用いた触媒体は、酸素の拡散性がさらに向上して一層高い触媒活性が得られることとなる。なお、本発明の触媒体は、その動作温度が250〜700℃、好ましくは300〜650℃において良好なガス浄化率を示した。
なお、実施例は基材5が、ステンレスとしたが、銅などの溶融温度が約900℃以上の金属やガラス、コージライトなどのセラミックでも同様な効果がある。また、基材5として耐熱性に優れる酸素イオン導電性固体電解質体や水素イオン導電性固体電解質体を使用し、その両面に触媒層8を電極として形成した構成品でも同様な触媒効果や密着効果がある。これは、例えば、酸素イオン導電性固体電解質体の場合、片面側では酸素分子が酸素イオンに変化する触媒反応、他面側では酸素イオンが酸素分子に変化する触媒反応が起こるためである。
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における触媒体の構成図である。触媒体は、基材5と、基材5に形成されており少量の酸化ビスマス7に多量のシリカまたはアルミナの担体成分
9を混合させたコート層10と、コート層8の上に配置された貴金属系触媒11を少なくとも備えている。本発明で使用する材料について説明する。基材5は、ステンレスなどの金属、コージライトなどのセラミック、ガラスであり、その片側面もしくは両面に担体成分7を形成している。担体成分9は、シリカ単独または、アルミナ単独または、シリカとアルミナからなりいずれかの成分が多い混合物もしくは複合物、を主成分としており、必要によりアルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物さらには遷移金属酸化物が少量混合もしくは複合された高表面積の耐熱性金属酸化物系材料である。貴金属系触媒11は、白金、金、パラジウム、銀、ロジウム、イリジウム、ルテニウムの単独成分もしくは複数成分であり、担体成分9に混合もしくは担持している。
基材5にコート層10を形成するための良好な焼成温度は、770〜1250℃である。
これは、770℃以上で焼成すると多孔質で密着性に優れたコート層10が基材5の表面に形成できるためであり、この焼成下限温度770℃は、酸化ビスマス7の融点が820℃であるため、この温度に近づくと酸化ビスマス7の溶融が徐々に起こり始めるためと思われる。また、焼成上限温度の1250℃は、この温度を超えると担体成分9との化学反応性が増加してその担体特性が生かせにくくなるためである。また特に、790〜1100℃は、コート層10の露出状態が良く酸素や反応ガスの拡散性が向上した多孔質高密着のコート層10が形成できた。そこで、以後の検討は、最適な920℃で焼成してコート層10を得た。
実施例で説明する。基材5は、ステンレスであり、前処理することなくそのまま使用している。コート層10は、シリカやアルミナの担体成分9に酸化ビスマス7を少量含有させた混合物であり、これら混合物に水を加えて調合したスラリーを基材5に塗布して920℃焼成して得た。貴金属系触媒11は、白金やパラジウムであり、硝酸塩の水溶液をコート層10に塗布して600℃焼成して得た。
得られた触媒体は、ガス浄化率と多孔質度と基材への密着性を評価した。触媒成分の種別と酸化ビスマス混合量を変化させた際の特性を(表2)に示す。特性の評価方法は、前述と同じである。
Figure 2007105693
(表2)の結果より、本発明の触媒体は、ガス浄化率が高く多孔質で密着性に優れたコート層10が、基材5の表面に焼成するだけで簡単に形成できることがわかる。この優れた効果は、酸化ビスマス7が2〜40wt%混合された範囲において観察された。
この優れた効果は、酸化ビスマス7の性質に起因する。酸化ビスマス7は、融点820℃近辺で加熱すると、大きく体積膨張して多孔質になるとともに、他材料に強固に密着す
る性質を有する。このため、酸化ビスマス7を混合したコート層10は、ステンレスの基材5に前処理を施すことなく塗布して820℃近辺で焼成するだけで、多孔質で密着性に優れた層として簡単に形成することができる。また、酸化ビスマス7は、他材料とともに焼成すると両材料の特性を生かしつつ偏析する性質を有しているため、コート層10において沈降して基材5の方に多く偏析して表面にはその量が少なくなっている。このため、コート層10の表面は、担体成分9の量が多くなっており、その上に担持した貴金属系触媒11の露出状態が良くなって、これを用いた触媒体は、酸素や反応ガスの拡散性が向上して高い触媒活性が得られることとなる。これに加えて、酸化ビスマス7は、酸素イオンイオン欠陥を持つホタル石型結晶構造の半導体材料であり、酸素が酸素イオンとなってその内部を通過する高い酸素イオン導電性と、高い電子伝導を有しているので、触媒反応に大きく関与する酸素や電子が移動し易くなっている。このため、コート層10においてその上に担持した貴金属系触媒11は、酸化ビスマス7から酸素分子や電子を多く伝達され、これを用いた触媒体は、酸素の拡散性がさらに向上して一層高い触媒活性が得られることとなる。なお、本発明の触媒体は、その動作温度が250〜700℃、好ましくは300〜650℃において良好なガス浄化率を示した。
(実施の形態3)
実施の形態3は、一層高い活性を示す触媒体を得る目的で、実施の形態1の触媒成分6に用いる金属酸化物の材質について検討した。検討した触媒成分6の種別と特性を(表3)に示す。触媒体の製法は、酸化ビスマス7の混合量を10wt%とした以外は、前述の実施の形態1と同じである。特性評価方法も前述の実施の形態1と同じである。
Figure 2007105693
(表3)の結果より、本発明の触媒体は、触媒成分6が酸素欠陥性構造もしくはペロブスカイト構造の複合酸化物であると、ガス浄化率が一層高く多孔質で密着性に優れた触媒層8が、基材5の表面に焼成するだけで簡単に形成できることがわかる。
ガス浄化率が一層高い理由は、次のためと思われる。酸素欠陥性構造の金属酸化物は、酸素欠陥性を有するため触媒反応に大きく関与する酸素や電子が移動し易くなっている。この移動性は、酸素ビスマスの優れた酸素や電子の移動性との相乗効果により一層向上し、ガス浄化率が一層高くなると思われる。また、ペロブスカイト構造の複合酸化物は、金属Aと金属Bとの複合酸化物でありその分子式はABOで表わされが、実際に製造して得られる複合酸化物は、この理想的な立方晶構造からわずかに歪んだ構造をしている。このペロブスカイト構造複合酸化物は、この適度な歪、いわゆる構造の非対称性により、その表面では触媒反応に大きく関与する酸素や電子が移動し易くなっている。この移動性は、酸素ビスマスの優れた酸素や電子の移動性との相乗効果により一層向上し、ガス浄化率が一層高くなると思われる。酸素欠陥性構造もしくはペロブスカイト構造の複合酸化物は
、実施例以外に、SmSrCox―δ、(La0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O、(Sr0.10Ce0.01)Zr0.89、La1−xSrxCoO3―δなどを使用しても、ガス浄化率が一層高く多孔質で密着性に優れた触媒層8が形成できた。
(実施の形態4)
実施の形態4は、酸素濃度の少ない環境下で一層高い活性を示す触媒体を得る目的で、実施の形態1の触媒層8または実施の形態2のコート層10に酸化セリウム12を混合した。その実施例を図1および図2に示す。
図1の実施例で検討した触媒成分6の種別と酸化セリウム12の混合量、その特性を(表4)に示す。また、図2の実施例で検討した担体成分9の種別と酸化セリウム12の混合量、その特性を(表5)に示す。触媒体の製法は、酸化ビスマス7の混合量を10wt%としたことと酸化セリウム12を混合した以外は、前述の実施の形態1および実施の形態2と同じである。特性評価方法は、酸素濃度を2%とした乾燥ガスを使用した以外は、前述の実施の形態1と同じである。
Figure 2007105693
Figure 2007105693
(表4)と(表5)の結果より、本発明の触媒体は、酸素濃度の少ない環境下でガス浄化率が一層高く、多孔質で密着性に優れた触媒層8およびコート層10が、基材5の表面に焼成するだけで簡単に形成できることがわかる。また、酸化セリウム12の混合量は、(表4)記載の触媒成分6との共存では1〜10wt%、(表5)記載の担体成分9との
共存では2〜20wt%が最適であった。
この優れた効果は、酸化セリウム12と酸化ビスマス7の相乗効果に起因する。酸化セリウム12は、これを構成するセリウムイオンの酸化数が可逆的に変化して、酸素の貯蔵と放出が活発に起こる材料として知られている。この効果は、酸化セリウム12が酸素欠陥セリウムと酸素を生成して酸素を放出する化学反応と、その逆反応によって酸素を酸化セリウムとして貯蔵する化学反応が、交互に起こる性質に基づく効果である。また、酸化セリウム12は、酸素イオンイオン欠陥を持つホタル石型結晶構造であり、酸素が酸素イオンとなってその内部を通過する酸素イオン導電性を有しているので、触媒反応に大きく関与する酸素が移動し易くなっている。
これら優れた効果を持つ酸化セリウム12に、酸化ビスマス7を混合して溶融すると、酸化ビスマス7が溶融して酸化セリウム12に固溶し、酸素欠陥をさらに多く持つ複合酸化物が生成する。これは、4価のセリウムの酸化物に3価のビスマスの酸化物を固溶させたことに起因しており、このことで単独の各酸化物より酸素欠陥を多く持つ複合酸化物が生成している。このため、触媒反応に関与する酸素分子の貯蔵放出特性が一層向上して酸素がその表面をさらに自由に動ける効果が生じ、これを用いた触媒体は、酸素の拡散性がさらに向上して酸素濃度の少ない環境下でも一層高い触媒活性が得られると思われる。なお、酸化セリウム12と酸化ビスマス7は、セリウムージルコニウム複合酸化物に酸化ビスマスを固溶させた材料として用いても同様な効果が得られた。
(実施の形態5)
実施の形態5は、水分の多い環境下で一層高い活性を示す触媒体を得る目的で、図1の触媒層8、または図2のコート層10に混合するアルカリ土類金属系酸化物13を混合した。その実施例を図1および図2に示す。
検討した触媒成分6およびアルカリ土類金属系酸化物13の種別と混合量、その特性を(表6)に示す。また、検討した担体成分9とアルカリ土類金属系酸化物13の種別と混合量、その特性を(表7)に示すに示す。触媒体の製法は、酸化ビスマス7の混合量を10wt%としたこととアルカリ土類金属系酸化物13を混合した以外は、前述の実施の形態1および実施の形態2と同じである。特性評価方法は、水分を2%混合して酸素濃度を19%に減じた空気を使用した以外は、前述の実施の形態1と同じである。
Figure 2007105693
Figure 2007105693
(表6)と(表7)の結果より、本発明の触媒体は、水分の多い環境下でガス浄化率が一層高く、多孔質で密着性に優れた触媒層8およびコート層10が、基材5の表面に焼成するだけで簡単に形成できることがわかる。また、アルカリ土類金属系酸化物13の混合量は、(表6)記載の触媒成分6との共存では1〜10wt%、(表7)記載の担体成分9との共存では2〜20wt%が最適であった。
この優れた効果は、アルカリ土類金属系酸化物13と酸化ビスマス7の相乗効果に起因する。酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウムのアルカリ土類金属系酸化物13は、高湿度環境において酸素吸着性に優れた材料である。これらのアルカリ土類金属系酸化物13に、酸化ビスマス7を混合して溶融すると、酸化ビスマス7が溶融してアルカリ土類金属系酸化物13に固溶し、酸素欠陥を持つ複合酸化物が生成する。これは、酸化ビスマス7は他材料とともに焼成しても両材料の特性を生かしつつ強固に密着する性質を有することに起因しており、このことで酸化ビスマス7の持つ酸素欠陥性とアルカリ土類金属系酸化物13の持つ高湿度環境における酸素吸着性が共存する複合酸化物が生成している。このため、高湿度環境において触媒反応に関与する酸素が多く供給される様になり、これを用いた触媒体は、水分の多い環境下で酸素の拡散性がさらに向上して一層高い触媒活性が得られると思われる。
(実施の形態6)
実施の形態6は、実施の形態1〜5の触媒体を効果的に使用できる、空気処理装置の種別や配置形態さらに動作温度について検討した。
酸化ビスマス7は、これを少量含有する触媒層8またはコート層10と基材5との密着力を高めて多孔質な膜を形成するとともに、高い酸素イオン導電性により酸素分子がその表面を自由に移動して触媒成分6または貴金属系触媒11に酸素を供給する能力に優れる。本発明の触媒体は、この優れた酸素供給性により、酸素が関与する酸化反応速度を高めて酸化反応を活発におこなうことができ、特に水分が多く酸素濃度が少なく少量の炭化水素が共存する食品加熱油煙や点火消火時の燃焼排ガスにおいて、炭化水素を酸化して分解浄化処理する触媒反応に有利である。また、酸化ビスマス7は、弱アルカリ性であるため、これが少量含有される触媒層8またはコート層10を弱アルカリ性にする。このため、共存する触媒成分6または貴金属系触媒11が、これら環境に微小共存するアルコール系炭化水素類を中途半端に酸化されてアルデヒド類や酸に変化させることを抑制して、一気に炭酸ガスと水に変化させて完全酸化する利点が有る。
本発明の触媒体は、これら環境である食品加熱油煙もしくは点火消火時の燃焼排ガスが通過する排気ガス流路に配置すると、低温で良好に分解浄化処理できるため、触媒体の加熱に要する電力などを低減できる利点が有る。また、多湿環境でも基材に密着する利点も
有る。触媒体を搭載した空気処理装置を、具体例に基づき詳細に説明する。
図3は、加熱調理機器の排気ガス流路に触媒体を配置して、食品から発生する調理油煙を酸化して無臭ガスに処理する気体処理装置とした実施例であり、(a)はこの気体処理装置の構成図、(b)は触媒体の構成図である。この気体処理装置は、庫内14に収納した調理物15が交流電源などの加熱熱源16で加熱調理されることで発生する調理油煙を、触媒体17を配置した排気ガス流路18を通過させて無臭ガスに処理する装置である。
触媒体17は、ヒータ管19とその周囲の螺旋型フィン板20からなるステンレス材料が基材になっており、その表面にコート層10とその上部に担持させた貴金属系触媒11が積層された構造である。ヒータ管19は、ステンレス製のパイプ21と、その内部空間に配置したニクロムの発熱線22とこれを外包する酸化マグネシウム製の絶縁粒子23とからなり、電源24により発熱線22を通電することで発熱して触媒体17を加熱する。螺旋型フィン板20は、ヒータ管19のパイプ21に螺旋型形状に溶接されたステンレス板であり、調理油煙がその周囲を螺旋型に通過するように工夫されている。コート層10は、図2記載のように、酸化ビスマス7を含有しておりシリカまたはアルミナの担体成分9を主成分としており、その上に貴金属系触媒11が担持により配置された構造である。この構成の触媒体17を約400℃に加熱して調理油煙を通過させ、その効果の判定をおこなった。調理油煙は、数千ppmの炭化水素と僅かなアルコール類が数%の水分と数%の酸素が混合されたガス組成であったが、触媒体17で酸化分解させることで炭化水素を大幅に低減させた浄化ガスとなった。また、触媒体17を通過した浄化ガスからは、アルコール類が検出されず、副産物のアルデヒド類や酸も検出されなかった。
一方、酸化ビスマスを含有していない従来の触媒体は、本発明の触媒体17と比較して同じ特性を得るためには、寸法を2倍大きくするとともに加熱電力が1.5倍も大きくしなければならなかった。また、従来の触媒体は、本発明の触媒体17と比較して基材と同じ密着性を得るためには、複雑な製法を厳密な品質管理を必要とした。これらのより、本触媒体17を搭載した空気処理装置は、従来の触媒体を搭載した空気処理装置と比較して、小型で低消費電力、低価格化となった。
触媒体17に用いるコート層10の成分と、調理油煙の浄化効果について検討した。調理油煙の浄化効果は、表2記載のシリカまたはアルミナの担体成分9、担体成分9にさらに酸化セリウム12を混合した表5記載の組成物、担体成分9にさらにアルカリ土類金属系酸化物13を混合した表7記載の組成物、担体成分9にさらに酸化セリウム12とアルカリ土類金属系酸化物13を混合した表5記載と表7記載の複合組成物、の順番に段々と除去率が高くなる傾向であった。
なお、これ以外の実施例として、触媒を図1記載の金属酸化物の単独もしくは金属酸化物と貴金属を併用した触媒成分6を主成分として酸化ビスマス7を含有する触媒層8としても、同様な効果が得られた。この触媒の調理油煙浄化効果は、表1記載と表3記載の金属酸化物の単独もしくは金属酸化物と貴金属を併用した触媒成分6、触媒成分6にさらに酸化セリウム12を混合した表4記載の組成物、触媒成分6にさらにアルカリ土類金属系酸化物13を混合した表6記載の組成物、触媒成分6にさらに酸化セリウム12とアルカリ土類金属系酸化物13を混合した表4記載と表6記載の複合組成物、の順番に段々と除去率が高くなる傾向であった。
図4は、換気扇の換気流路に触媒体を配置して、食品から発生する調理油煙を酸化して無臭ガスに処理する気体処理装置とした実施例であり、(a)はこの気体処理装置の構成図、(b)は触媒体の構成図である。この気体処理装置は、送風器25を有する排気ガス流路18に触媒体17を配置して、別設の交流電源や燃焼バーナなどによって加熱された
鍋に配置した調理物15から発生する食品加熱油煙を、無臭ガスに処理する装置である。調理油煙は、数百ppmの酸素元素含有炭化水素が1%弱の水分と20%弱の酸素が混合されたガス組成であり、触媒体17に配置された酸化ビスマスが触媒に効果的に作用するガス組成である。
触媒体17は、開口部26を多数有するステンレス製のラス網27が基材となり、その表面に触媒層8を形成された構成である。ラス網27は、電源24により通電されることで発熱して触媒体17を加熱する。触媒層11は、図1記載のように、金属酸化物の単独もしくは金属酸化物と貴金属を併用した触媒成分6を主成分として、酸化ビスマス7を含有する構成である。
この構成の触媒体17を約400℃に加熱し、調理油煙を通過させると、調理油煙が効果的に除去された。触媒体17の成分および調理油煙の浄化効果は、前述の通りである。
図5は、排気ガス流路18に触媒体17を配置して、燃焼バーナ28から発生する未燃炭化水素や一酸化炭素を酸化して二酸化炭素と水に転換処理する気体処理装置とした実施例であり、(a)はこの気体処理装置の構成図、(b)は触媒体の構成図である。
燃焼排ガスは、数百ppmの炭化水素が数%の水分と数%の酸素が混合されたガス組成であり、触媒体17に配置された酸化ビスマスが触媒に効果的に作用するガス組成である。触媒体17は、通気穴29を多数するセラミックのハニカム形状体30が基材になっており、その表面にコート層10と貴金属系触媒11を積層された構造である。コート層10は、図1記載のように、酸化ビスマス7を含有しておりシリカまたはアルミナの担体成分9を主成分としており、その上に貴金属系触媒11が担持により配置された構造である。なお、ハニカム形状体30は、ステンレスを用いても良い。
この構成の触媒体17を約400℃に加熱し、点火消火時の燃焼排ガス煙を通過させると、燃焼排ガスが効果的に除去された。触媒体17の成分および燃焼排ガスの浄化効果は、前述の通りである。
(実施の形態7)
実施の形態7は、実施の形態1における基材を酸素イオン導電性固体電解質体としその両面に電極を形成して、酸素イオンが関与する電気化学反応を電極の触媒作用によりおこなう触媒体について検討した。図6は、その構成図であり、金属酸化物系の酸素イオン導電性固体電解質体33を基材としておりその両面に、酸素欠陥性構造もしくはペロブスカイト構造金属酸化物の触媒成分を主成分とする金属酸化物触媒層34、35と、貴金属の触媒成分6を主成分として酸化ビスマス7が少量含有された貴金属触媒層36、37との積層電極38、39を触媒層とした構成である。
実施例で説明する。基材として用いた金属酸化物系の酸素イオン導電性固体電解質体33は、(La0.8Sr0.2)(Ga0.8Mg0.15Co0.05)O3− δのランタンガレード系複合金属酸化物である。この両面に、酸素欠陥性構造もしくはペロブスカイト構造金属酸化物の触媒成分を1150℃で焼成して金属酸化物触媒層34、35を形成した。この下層の上に上層として、貴金属の触媒成分に酸化ビスマス7が3wt%含有された混合物を820℃で焼成して貴金属触媒層36、37を形成した。この工法で、積層電極38、39が得られ、白金などのリード線を取り付けて完成である。
電極として用いた触媒成分の種別を変化させて試作した触媒体の特性を(表8)に示す。発生電流は、450℃に加熱した触媒体に電圧1.0Vを印加した状態で、酸素を21%含んだ空気を通風した際に得られる電流値であり、この値が大きいほど酸素イオンが関
与する電気化学反応が電極の触媒作用により活発におこっていることを表わす。多孔質度、基材への密着性は、前述の通リである。
Figure 2007105693
本発明の触媒体は、外部直流電源で積層電極38、39の両側に電圧を印加すると、酸素分子が陰極側の積層電極38で酸素イオンに変化して酸素イオン導電性固体電解質体33を経由して陽極側の積層電極39に移動して再び酸素分子に変化する触媒反応が活発におこり、この反応に起因する発生電流が大きくなる効果があることがわかる。そのため、低温でも高い触媒活性を示し、触媒体の加熱に要する電力を低減できる利点が有る。本発明の触媒体は、発生電流が高く多孔質で密着性に優れた触媒層が、形成できており、この優れた効果は、酸化ビスマス7が1〜7wt%混合された範囲において観察された。
また、本発明の触媒体は、陰極側の積層電極38で水蒸気を電気分解して水素と酸素を生成する触媒反応が0.9Vで起こり始め、電圧を上昇させても水分解電流が小さかった。一方、従来例は、発生電流が小さいうえに、水分解が0.7Vから起こり始めて、電圧を上昇させると水分解電流が大きくなった。この理由は、本発明の触媒体は、材料組成と構成を従来例と異ならせることで、水分子の吸着や脱離さらに表面拡散や電子の受け渡しなどが、起こりにくくなっておりこのことで、水の電気分解が起こりにくくなっているためと思われる。このため、一般環境で使用しても水蒸気の影響を受けにくくなる利点があり、調理場などの比較的水分の多い場所でも安心して使用できる。なお、本発明の触媒体は、その動作温度が350〜700℃、好ましくは400〜650℃において良好な触媒特性を示した。また、積層電極38、39は、下層の金属酸化物触媒層34、35を上層の貴金属触媒層36、37より高温で焼成して、触媒特性や多孔質性、密着性に優れた触媒層体が得られるようにした。
上記以外の触媒作用として、本発明の触媒体は、酸素が微量存在する環境において、陰極側の積層電極38で一酸化窒素を分解して窒素と酸素イオンに分解し、生成した酸素イオンを陽極側の積層電極39まで移動させ再び酸素に戻す触媒反応を有する。また、陰極側の積層電極38に存在する一酸化炭素を、陽極側の積層電極39に存在しており酸素イオン導電性固体電解質体33を経由して陰極側の積層電極38まで移動した酸素で酸化させて二酸化炭素に変化させる触媒反応も有する。この様に、本発明の触媒体は、有害な窒素酸化物や一酸化炭素などを無害な窒素や酸素さらに二酸化炭素に変化させる触媒反応を有する効果があった。
触媒体で使用する材料を説明する。酸素イオン導電性固体電解質体33は、ZrOの97〜85モル%にYやCaOなどを3〜15モル%固溶させたジルコニア系複合金属酸化物、(La0.8Sr0.2)(Ga0.8Mg0.15Co0.05)O3−
δやLaGaO等のランタンガレード系複合金属酸化物、(Ba、Sr、La)(In1−xYx)の欠陥ペロブスカイト型複合酸化物を使用する。
金属酸化物触媒層34、35で使用する金属酸化物の触媒成分は、化学量論的にみて酸素分子の個数が不足した化学式である酸素欠陥性構造金属酸化物または、A金属とB金属と酸素とからなりその化学式がABOと表現されるペロブスカイト構造金属酸化物または、これら両材料の複合金属酸化物である。具体的には、LaCo、SmSrCox、(La0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O、(Sr0.10Ce0.01)Zr0.89、(La0.6Sr0.4)MnO3―δ、(La1−xSrx)CoO3―δを使用する。貴金属の触媒成分10は、白金、パラジウム、金、銀、銀、ロジウム、イリジウム、ルテニウムの単独成分もしくは複数成分である。
金属酸化物触媒層34、35は、酸素欠陥性構造もしくはペロブスカイト構造の金属酸化物を主成分とするため、酸素分子がその表面を自由に移動する酸素可動性があり、酸素イオンが関与する化学反応を低温で活発におこなう触媒作用を有する利点が有る。また、金属酸化物系の酸素イオン導電性固体電解質体33とも強固に密着する利点も有る。しかも、その上部には、貴金属触媒層36、37が積層されており、貴金属の触媒成分を主成分として酸化ビスマスが含有されているため、酸素イオンが関与する化学反応を低温で活発におこなう触媒作用を有する利点が有る。これらの効果により、本発明の触媒体は、低温で高い触媒特性を示すと思われる。
(実施の形態8)
実施の形態8は、実施の形態7に記載した酸素イオン導電性固体電解質体の両面に電極を形成した触媒体のもつ、酸素分子のみを選択的に通過させ触媒反応を、効果的に使用した酸素富加機能を有する空気処理装置について検討した。
この空気処理装置は、触媒体がその触媒作用によって酸素分子のみを選択的に通過させ化学反応を活発におこなわせるので、濃度100%の酸素を供給する酸素富加装置として使用できる。また、水蒸気を分解して水素と酸素を生成する触媒反応が起こり難いので、多湿環境で使用しても発生水素量が低減して一般環境で安心して使用できる利点が有る。
図7は、酸素イオン導電性固体電解質体の両面に電極を形成した触媒体40をガス流路41に配置して、一般大気から高濃度の酸素を精製する酸素富加機能を有するようにした空気処理装置の構成図である。触媒体40は、図6に記載したような、酸素イオン導電性固体電解質体の両面に電極を形成した構成品であり、併設した直流電源42によって電圧を印加され、下側に配置したヒータ43で約600℃に加熱されて使用される。
酸素を約21%含有する一般大気は、上部に配置した大気用送風器44により吸引されて空気取入口45から流入し、熱交換器(冷熱側)46、通気性断熱材(上部側)47を順順に通過して、触媒体40と接触する。その後、酸素は、触媒体40の上部側に有る陰極側の積層電極(記載せず)で酸素イオンに変化した後、酸素イオン導電性固体電解質体(記載せず)を経由して移動し、下部側に有る陽極側の積層電極(記載せず)で再び酸素分子に変化する。100%濃度となった酸素は、通気性断熱材(下部側)48、通気性の有るヒータ43、通気性断熱材(ヒータ遮熱用)49、を順順に通過して、酸素用送風器50によって酸素排出口51から排出される。一方、触媒体40の上部側に有る陰極側の積層電極(記載せず)において、酸素を除去された窒素主成分のガスは、熱交換器(高熱側)52を経由して出口53から排出される。高温の触媒体40から得た熱は、窒素主成分のガスとともに上昇するが、熱交換器(高熱側)52において熱交換器(冷熱側)46に伝達され、一般大気を加熱することに使用される。
この構成にすることで、触媒体40は、酸素イオンが関与する化学反応をその触媒作用
によって活発におこなわせて、濃度100%の酸素を供給する酸素富加機能を有する効果が得られる。また、陰極側の積層電極(記載せず)においては、二酸化窒素を分解して一酸化窒素と酸素を生成する触媒反応が活発に起こすが、水蒸気を分解して水素と酸素を生成する触媒反応が起こり難い利点が有る。
(実施の形態9)
実施の形態9は、実施の形態7に記載した酸素イオン導電性固体電解質体の両面に電極を形成した触媒体を一層効果的に使用できる限界電流式酸素センサ構成と、この触媒デバイスを応用した空気処理装置についてさらに検討した。
酸素イオン導電性固体電解質体の両面に電極を形成した触媒体は、発生電流が大きい。そのため、これを用いた限界電流式酸素センサは、限界電流値を大きくできこのことで酸素濃度計測の精度が向上する。また、限界電流式酸素センサは、陰極側で水蒸気を分解して水素と酸素を生成する触媒反応が起こり難いので水蒸気の影響を受けにくく、多湿環境で使用しても酸素濃度計測の精度が向上する。このため、このセンサを用いた空気処理装置は、酸素濃度の微小なる変化を精度よく検知して、きめ細かな処理をおこなうことができる。
図8(a)は、触媒体を応用した酸素濃度計測用の限界電流式酸素センサで構成図であり、図8(b)は、これを酸素雰囲気下に配置して酸素濃度の計測をおこない計測酸素濃度の電気信号に基づいて予め記憶された処理をおこなう空気処理装置の構成図である。
限界電流式酸素センサは、酸素拡散孔55を有する酸素拡散制限体56が、片側の積層電極38の周囲上部に配置された構成である。酸素拡散制限体56は、ガラス膜58とその上部に配置したシール板59とで構成されており、ガラス膜58を片側の積層電極38を囲むように酸素イオン導電性固体電解質体33の上面周辺に螺旋形状に塗布し、その上部にセラミック製のシール板59を積層し焼成して得た。酸素拡散孔55は、酸素イオン導電性固体電解質体33とシール板59と螺旋形状のガラス膜58で形成される螺旋形状の空間であり、ガラス膜58の焼成で形成される。また、酸素拡散制限体56の上部には、加熱体57が併設されており、センサの温度を350〜700℃に保持する役割をしている。
なお、この構造の限界電流式酸素センサは、酸素拡散制限体56を、ガラス膜58とその上部に配置したシール板59とで構成している。そのため、ガラス膜58は、片側の積層電極38に電圧を印加する電圧印加端子部(記載せず)を上部から被う構成となる。本発明で使用する積層電極38の材料は、ガラス膜58との馴染みが良いため、電圧印加端子部に材料に積層電極38の材料と同じ材料を使用することが可能であり、このことで製造工程の簡素化がはかれる利点があった。また、積層電極38の材料とガラス膜58との馴染みは、良好な限界電流特性が得られる利点ともなった。なお、ガラス膜58やシール板59は、その熱膨張係数が酸素イオン導電性固体電解質体33とともにお互いに±10%以下の材料を使用している。
空気処理装置60は、限界電流式酸素センサ61を部屋の室内側に配置して酸素濃度の計測をおこない、制御部62において計測酸素濃度の電気信号に基づいて換気処理をおこなうようにしたエアコンである。例えば、限界電流式酸素センサ61が室内酸素濃度の減少を検知すると、換気用排気口63に配置された送風器64は運転を開始して汚れた室内空気を室外に排出する。すると、酸素濃度21%の室外空気が、換気用給気口65を経由して室内に流入し、室内に流入した新鮮な空気は、冷暖房送風部66によって室内を循環する。この繰り返しで室内酸素濃度の徐々に増加し、限界電流式酸素センサ61が室内酸素濃度の安全濃度20%まで回復したことを検知すると、これら換気処理が停止する。これら換気処理は、計測酸素濃度の電気信号に基づいて予め記憶された通りに制御部62が
制御指令を発しておこなうが、換気にともなう熱ロスを防止するため、換気用排気口63に配置された熱回収器(高熱側)67で回収した熱を換気用給気口65に配置した熱回収器(冷熱側)68に伝達して、給気空気を加温するようにしている。
制御部62は、限界電流式酸素センサ61の加熱体57に直流電圧を印加して加熱させ、その温度を350〜700℃に保持するとともに、積層電極38、39に直流電圧を印加して酸素ポンピング動作をおこなわせ、得られる発生電流から前述の予め記憶された換気処理をおこなう機能を有する。限界電流式酸素センサ61で発生する電流は、酸素濃度と比例関係があるため、電流値を計測すれば、酸素濃度が判明する。
(実施の形態10)
実施の形態10は、実施の形態7に記載した酸素イオン導電性固体電解質体の両面に電極を形成した触媒体を一層効果的に使用できる限界電流式酸素センサを用いて、酸素濃度の計測をおこなう空気処理装置についてさらに検討した。
図9は、実施の形態10に用いる限界電流式酸素センサの一部破断斜視図である。限界電流式酸素センサは、積層電極38、39(記載せず)を両面に形成した酸素イオン導電性固体電解質体33と、片側に有る積層電極38を囲んで形成される螺旋型形状のガラス膜58と、ガラス膜58の上部に積層したシール板59と構成されており、これら部材で螺旋型形状の酸素拡散孔55が形成されている。また、シール板59には、加熱体57が形成されている。
使用する材料について説明する。酸素イオン導電性固体電解質体33は、ZrOの97〜85モル%にYやCaOなどを3〜15モル%固溶させたジルコニア系複合金属酸化物、(La0.8Sr0.2)(Ga0.8Mg0.15Co0.05)O3− δやLaGaO等のランタンガレード系複合金属酸化物、(Ba、Sr、La)(In1−xYx)の欠陥ペロブスカイト型複合酸化物を使用する。
積層電極38、39(記載せず)は、酸素欠陥性構造またはペロブスカイト構造の単独もしくは複合の金属酸化物触媒成分を主成分とする金属酸化物触媒層と、貴金属触媒成分を主成分として酸化ビスマスが含有された貴金属触媒層との積層電極である。
金属酸化物触媒層で使用する金属酸化物の触媒成分は、化学量論的にみて酸素分子の個数が不足した化学式である酸素欠陥性構造金属酸化物または、A金属とB金属と酸素とからなりその化学式がABOと表現されるペロブスカイト構造金属酸化物または、これら両材料の複合金属酸化物である。具体的には、LaCo、SmSrCox、(La0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O、(Sr0.10Ce0.01)Zr0.89、(La0.6Sr0.4)MnO3―δ、(La1−xSrx)CoO3―δを使用する。金属酸化物触媒層は、酸素欠陥性構造もしくはペロブスカイト構造の金属酸化物を主成分とするため、酸素分子がその表面を自由に移動する酸素可動性があり、酸素イオンが関与する化学反応を低温で活発におこなう触媒作用を有する利点が有る。また、金属酸化物系の酸素イオン導電性固体電解質体33とも強固に密着する利点も有る。
貴金属の触媒成分は、白金、パラジウム、金、銀、銀、ロジウム、イリジウム、ルテニウムの単独成分もしくは複数成分であり、特に白金や金は優れた電流特性が得られるため積極的に使用した。この積層電極は、金属酸化物触媒層の上部に、貴金属の触媒成分を主成分として酸化ビスマスが含有された貴金属触媒層が積層されているため、酸素イオンが関与する化学反応を低温で活発におこなう触媒作用を有する利点が有る。
ガラス膜58は、溶融作業温度が750〜1100℃で、その熱膨張係数が酸素イオン
導電性固体電解質体33に対して±10%以下にあり、限界電流式酸素センサの動作温度350〜700℃において熱変形が起こらないガラスを主材料としている。ガラス膜58は、この主成分のガラスの他に、前述の溶融作業によっても溶解しない所定寸法のセラミック球や高融点ガラス球が微小混合されており、溶融作業によって酸素拡散孔55を形成する際に歩留まり良く所定寸法の高さが確保できるようにした。
シール板59は、フォルステライトなどのセラミックが主材料であり、熱膨張係数が酸素イオン導電性固体電解質体33に対して±10%以下の材料である。また、シール板59は、ガラス膜58と接合する面側に、ガラス膜58と同じ材質のガラスを酸素拡散孔55の入口を除いてほぼ全面にわたって塗布して、ガラス膜58との密着性向上、酸素拡散孔55形成に関する作業歩留まり向上、センサの連続および間欠使用における耐久信頼性向上を図った。また、シール板59には、他面側に白金や酸化ルテニウムからなる加熱体57が予め厚膜印刷法により形成されている。
製法について説明する。予め焼結した酸素イオン導電性固体電解質体33の両面にまず、酸素欠陥性構造もしくはペロブスカイト構造金属酸化物の触媒成分を厚膜印刷し、770〜1250℃で焼成して金属酸化物触媒層を形成した。次にこの上に、貴金属の触媒成分に酸化ビスマスが1〜7wt%含有された混合物を厚膜印刷し、770〜1100℃で焼成して貴金属触媒層を形成した。この製法で、積層電極38、39(記載せず)が得られた。その後、片側に有る積層電極38を囲んで螺旋型形状のガラス膜58を厚膜印刷しこの上に、一部を除いてほぼ全面に厚膜印刷したガラスを予め薄く形成しているセラミック製のシール板59を積層し、750〜1100℃で焼成して酸素拡散孔55を形成した。最後に白金や金などのリード線を取り付けて完成である。
得られた限界電流式酸素センサは、その周囲を断熱材で外包して通気性ケースに収納し、積層電極38、39(記載せず)に電圧を印加する直流電源と、加熱体57に電圧を印加してセンサ温度を350〜700℃に加熱保持するもう一つの直流電源を電気的に接続して、酸素濃度の計測をおこなう空気処理装置とした。
限界電流式酸素センサは、酸素イオン導電性固体電解質体33の両面に形成した積層電極38、39(記載せず)に、電圧を印加することで得られる酸素イオン伝導に関する電流(この電流を以下、電流と称す)を、酸素拡散孔55によって供給酸素量を制限することで、酸素濃度に比例した電流(この電流を以下、限界電流と称す)が得られる。一般に、積層電極38、39(記載せず)に電圧を印加すると、印加電圧に概ね比例した電流が得られる。しかしながら、限界電流式酸素センサは、酸素拡散孔55を片側に配置して供給酸素量を制限しているため、印加電圧が数100mV以上となると電圧に関わらず電流が一定値となる性質がある。この電圧に関わらず一定値となる電流が限界電流であり、酸素濃度に比例している。
限界電流は、酸素拡散孔55の長さをその穴断面積で除した値に比例した電流が得られる。この構成の酸素拡散孔55は、積層電極38を囲むように形成できるため、長さを長くでき、穴断面積を大きくできる。このため、限界電流式酸素センサは、大きな寸法の空気通過孔となるため、空気中に浮遊してゴミ等の粉塵が目詰まりしにくく、粉塵に対する耐久信頼性が優れる。また、ガラス膜58は、片側の積層電極38の1部分である電圧印加部分を上部から被う構成となるのだが、積層電極38の材質はガラス膜との馴染みが良いので熱膨張や空気洩れに対して強く、長期間使用してもこの接合部分からの剥離が起こらず良好な限界電流特性が得られる。
一方、積層電極38、39(記載せず)は、発生電流が大きい。そのため、これを用いた限界電流式酸素センサは、限界電流値をさらに大きくできこのことで酸素濃度計測の精
度が向上する。また、限界電流式酸素センサは、陰極側38で水蒸気を分解して水素と酸素を生成する触媒反応が起こり難いので水蒸気の影響を受けにくく、多湿環境で使用しても酸素濃度計測の精度が向上する。このため、このセンサを用いた空気処理装置は、酸素濃度の微小なる変化を精度よく検知できる。
しかも、この構成にすると、積層電極とともにガラス膜が厚膜印刷法を用いて形成できるため、簡単な製法と品質管理で製造できて生産性に優れる利点がある。これに加えて、複数個の積層電極およびガラス膜を1個の酸素イオン導電性固体電解質体の表面に厚膜印刷法を用いて形成し、この上部に1個のシール板を積層して焼成することで複数個の酸素拡散孔を形成できるため、1個の酸素センサの中に複数個の限界電流式酸素センサに改良できる。この複数個の限界電流式酸素センサの酸素濃度に関する複数個の電気信号を使用すると、センサ劣化が起こっていないか否かの劣化自己診断が1個の酸素センサ内でおこなうことができ、信頼性がさらに優れた酸素センサが得られる。また、複数個の電気信号を合計して酸素濃度に関する総合電気信号として使用すると、少々のセンサ劣化が仮に起こっても酸素濃度計測に対しての影響が少なく、信頼性をさらに一層高めた酸素センサが得られる。
以上のように、本発明の触媒体は、食品加熱油煙や点火消火時の燃焼排ガスが通過する排気ガス流路に配置すると、排出される炭化水素類を低温で良好に分解浄化処理できる加熱調理機器や換気扇、燃焼機器を提供できる。また、触媒体は、酸素イオン導電性固体電解質体の両面に電極を形成した構成にできるため、酸素富加装置や限界電流式酸素センサに応用できる。
本発明の実施の形態1、3、4、5における触媒体の構成図 本発明の実施の形態2、4、5における触媒体の構成図 (a)本発明の実施の形態6における第1の気体処理装置の構成図(b)同気体処理装置に用いる触媒体の構成図 (a)本発明の実施の形態6における第2の気体処理装置の構成図(b)同気体処理装置に用いる触媒体の構成図 (a)本発明の実施の形態6における第3の気体処理装置の構成図(b)同気体処理装置に用いる触媒体の構成図 本発明の実施の形態7における触媒体の構成図 本発明の実施の形態8における気体処理装置の構成図 (a)本発明の実施の形態9における限界電流式酸素センサの構成図(b)同限界電流式酸素センサを応用した気体処理装置の構成図 本発明の実施の形態10に用いる限界電流式酸素センサの一部切り欠き斜視図 従来の触媒体の構成図
符号の説明
5 基材
6 触媒成分
7 酸化ビスマス
8 触媒層
9 担体成分
10 コート層
11 貴金属系触媒
12 酸化セリウム
13 アルカリ土類金属系酸化物
17 触媒体
18 排気ガス流路
19 ヒータ管
33 酸素イオン導電性固体電解質体
34、35 金属酸化物触媒層
36、37 貴金属触媒層
38、39 積層電極
40 触媒体
55 酸素拡散孔
56 酸素拡散制限体
58 ガラス膜
59 シール板
60 空気処理装置
61 限界電流式酸素センサ

Claims (9)

  1. 基材と、前記基材に形成されており金属酸化物の単独もしくは前記金属酸化物と貴金属を併用した触媒成分を主成分として酸化ビスマスを含有する触媒層とを有する触媒体。
  2. 基材と、前記基材に形成されておりシリカまたはアルミナの担体成分を主成分として酸化ビスマスを含有するコート層と、前記コート層の上に配置された貴金属系触媒とを有する触媒体。
  3. 触媒成分に用いる金属酸化物が、酸素欠陥性構造またはペロブスカイト構造の単独もしくは複合の酸化物である請求項1記載の触媒体。
  4. コート層が、酸化セリウムを少量含有する請求項1または2記載の触媒体。
  5. コート層が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウムのいずれかのアルカリ土類金属系酸化物を含有する請求項1または2記載の触媒体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒体を、食品加熱油煙ガスもしくは燃焼排ガスが通過する排気ガス流路に配置して、前記ガスに含有した炭化水素類を酸化反応で分解浄化処理する空気処理装置。
  7. 基材が金属酸化物系の酸素イオン導電性固体電解質体であり、触媒層が、酸素欠陥性構造またはペロブスカイト構造の単独もしくは複合の金属酸化物触媒成分を主成分とする金属酸化物触媒層と、貴金属触媒成分を主成分として酸化ビスマスが含有された貴金属触媒層との積層電極であり、前記酸素イオン導電性固体電解質体の両面に前記積層電極を形成した請求項1記載の触媒体。
  8. 請求項7記載の触媒体を、酸素を含有するガスが通過するガス流路に配置して、前記ガスを電気化学的に分解して出口側ガスの酸素濃度を高める処理をおこなう空気処理装置。
  9. 請求項7記載の触媒体を、積層電極の片側周囲上部に酸素拡散孔を有する酸素拡散制限体を配置した構造の限界電流式酸素センサとして用いて、酸素雰囲気下に配置し酸素濃度の計測をおこない、計測酸素濃度の電気信号に基づいて予め記憶された処理をおこなう空気処理装置。
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CN113299930A (zh) * 2021-04-28 2021-08-24 湖南源达新材料有限公司 含氧化铋催化剂的空气电极及其制备方法

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