JP2007100187A - 電気分解システム - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来技術に係る1電源電気分解に比して、その消費電力を大きく削減できる新たな構成と新たな原理に基づく電気分解システムを提供する。
【解決手段】 電解液4中に挿入され、電解液4中の負イオンを介して酸化反応を行う駆動陽極21と、 この駆動陽極21と直接対向し、且つ互いに平行に電解液4中に挿入され、電解液4中の正イオンを介して還元反応を行う駆動陰極22と、駆動陽極21から駆動陰極22に向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段(11,12)とを備える。駆動電気力線と誘導電気力線との重畳による駆動陽極21と駆動陰極22の間に生じる電位差により、酸化反応及び還元反応を開始させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、エネルギー関連分野に関わり、特に、水の電気分解による水素の製造をはじめ、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム及び酸化アルミニウムなどの電気分解による水酸化ナトリウム、マグネシウム及びアルミニウムなどの製造に用いる電気分解システムに関する。
電気分解は、世界的に莫大量の電気エネルギーを消費する大規模産業技術として位置づけられており、製造技術の革新による電力効率の改善の必要性は論を待たない。
水素製造のための水電気分解における電力効率一つ取り上げてもその抜本的改善は、将来の燃料として水素エネルギー社会の実現を左右する課題である。又、これに対してここに言う電力効率の改善とは、現在の電気分解技術の改良による所謂電気エネルギー消費量の単なる低減ではなく、電気分解システムの作動原理そのものに新規な要素を加えることによる電力消費の著しい低減であることが必要不可欠である。
本発明は、従来技術に係る電気分解に比して、その消費電力を大きく削減できる新たな構成と新たな原理に基づく電気分解システムを提供することを目的とする。
本明細書では、従来の一つの直流電源1による電気分解を「1電源電気分解」、本発明で提案する独立した2つの直流電源を併用する電気分解を「2電源電気分解」と定義する。
一般に、化合物の電気分解は、分解反応が自発的に進行し得ない物理化学的条件下にある化合物を、電気化学リアクター内で電気エネルギーを化学エネルギーへ変換することにより、分解反応を起こさせるためのエネルギー変換技術の一種である。実用的には、水や塩化ナトリウムの電気分解のように、常温付近の水溶液電気分解と、例えばアルミニウム、マグネシウム、希土類元素やウラン、トリウムなどの金属単体を、それぞれの化合物を分解して析出させる高温の溶融塩電気分解などがあり、いずれも100%電気エネルギーを用いて採取されている。まず図12〜図14を用いて、1電源電気分解の機構を説明する(図12に示すような、一つの直流電源1を陽極3aと陰極3bの一対の電極に接続する電気分解が、上記定義による1電源電気分解に対応する。)。
(ステップ1) 電気分解しようとする化合物を水又は溶融塩中に溶解して正負のイオンに解離し、これを電解液4とする。
(ステップ2) 一対の平板形状の導電体を垂直もしくは水平に対向して電解液4の中に浸漬し、一方を陽極3a、他方を陰極3bとする。それぞれの端子を直流電源1の正及び負の端子と導線2a,2bで接続する。
(ステップ3) 直流電源1の出力電圧(直流電源電圧)を0から増加して陽極3aと陰極3bの間に電位差を与えていくと、ある特定の電圧までは電極反応は起こらず、したがって電気分解回路に電流は流れない。一般に、電極反応が起こり電解液4の中の化合物の分解が起こり始める直前の閾値電圧を「分解電圧」と称すが、本明細書では、この閾値電圧を、「飽和電気二重層形成電圧E」と定義する。飽和電気二重層形成電圧Eは、分解しようとする化合物に特有の値であり、温度、圧力及び化合物の濃度などの熱力学的条件によって影響を受ける。
(ステップ4) 閾値電圧(飽和電気二重層形成電圧)Eを超えて電圧を電極間に加えると電気分解電流が流れ、1電源電気分解が開始する。実際に電気分解電流が流れているときの電圧を「電解電圧EE」、実際に電気分解電流を流すために必要となる飽和電気二重層形成電圧Eからの超過分の電圧を「過電圧ΔE」と定義する。電解液4の中では解離して存在している正負のイオンが、回路の導体中では電子が電流の担体となっている。各ステップを通して化合物の分解・析出を行う電気分解に特有の電圧―電流の関係(V−I曲線)は図13のように電圧と電流が比例しない非線形である。
ステップ3において直流電源電圧を0から立ち上げていくと、陽極3a中の電子は直流電源1の駆動力により導線2a,2bを通って陰極3bへ流れ込み、陰極3bの表面は過剰の電子により負の電荷が、陽極3aの表面は電子の欠乏した状態の正の電荷が、そのときの直流電源電圧に応じた密度(電極の表面電荷密度)で現れる。その結果、陽極3aと接する電解液4の界面には電解液4の中の負イオンが、陰極3b側には正イオンが引き付けられ、電気回路のコンデンサに類似した電気二重層が形成される。図12は電気二重層をイメージとして描いた模式図である。電気二重層の構造は実際には極めて複雑であり、その実態は現在も学術的に解明し尽くされているとは言い難いが、その実在は古くから実証されており、本発明はこの電気二重層の存在に基礎を置いている。
更に、ステップ3において、両極の間に与えられている電圧(電位差)が飽和電気二重層形成電圧Eよりも低い段階では、陽極3a表面の正電荷は近傍の電解液4の負イオンを引き付けているが、未だ両者は結合するに至らない。同様に陰極3bでも表面負電荷は正イオンを引き付けているが、両者が結合するには未だ電界強度(電気力線の本数)が足りない。電極の表面電荷と電解液4のイオンとの結合、即ち電極反応を開始させるためには、引き続き電極間に与える電圧を増加して飽和電気二重層形成電圧Eを超過しなければならない。飽和電気二重層形成電圧Eでは界面の電気二重層が飽和に達し、界面における静電的な電界強度(電気力線の本数)が極大になる。言い換えれば電極の表面電荷密度が飽和に達している。直流電源電圧を更に加えてこの飽和表面電荷密度を超えて電荷を増強しようとすると、超過分の電荷は遂にイオンと結合するようになる。これが所謂電極反応であり、分子や中性の単体が電極上に析出する。水の電気分解を例に電極反応を表せば、陽極3aでは:
OH = (1/2)O + H + 2e ・・・・・(1)
の酸化反応が起こり、陰極3bでは:
2H + 2e = H ・・・・・(2)
の還元反応となる。
以上の如く電極反応は、両極界面における飽和電気二重層の存在の上に成り立つもので、そのために直流電源1によって電極反応に必要な最小限の飽和電気二重層形成電圧E Dを両極間に加えるともに、同時に電極反応の駆動に必要な過電圧ΔEを上乗せして与えなければならない。即ち:
E = (ED + ΔE) ・・・・・(3)
が電解電圧EEと呼ばれるものであり、電気分解反応が行われているときに陽極3aと陰極3bの間に掛かっている電位差に相当する。
飽和電気二重層は陽極3aと陰極3bの間に飽和電気二重層形成電圧Eを加えることによって電極の界面に形成され、電圧を掛けている限り安定的に維持されているが、静電的に成り立っているため回路に電流は流れない。したがって、一度飽和電気二重層がセットされると直流電源1は電力を消費しない。しかし、電圧を下げると消滅していくので、実際に電極反応を起こさせるには、直流電源1の出力電圧としての如く飽和電気二重層形成電圧Eと過電圧ΔEの和即ち電解電圧EEを加えることが不可欠である。したがって、一つの直流電源1でこれを行う場合、図14に示すように飽和電気二重層形成電圧E Dに過電圧ΔEを追加すると、電気分解のための電流値としてI(A)が回路に流れて直流電源1の消費電力P1は:
1 = (E + ΔE)I ・・・・・(4)
となる。
本発明の第1の態様は、(イ)電解液中に挿入され、電解液中の負イオンを介して酸化反応を行う駆動陽極と、(ロ)この駆動陽極と直接対向し、且つ互いに平行に電解液中に挿入され、電解液中の正イオンを介して還元反応を行う駆動陰極と、(ハ)駆動陽極から駆動陰極に向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段とを備える電気分解システムであることを要旨とする。そしてこの電気分解システムでは、駆動電気力線と誘導電気力線との重畳による駆動陽極と駆動陰極の間に生じる電位差により、酸化反応及び還元反応を開始させることを特徴とする。
本発明の第1の態様は、式(3)で示したように、電解電圧EEを飽和電気二重層形成電圧EDと過電圧ΔEとに分離し、両者を独立した閉回路として駆動・制御する2電源電気分解のシステムである。2電源により分離した2つの閉回路を構成し、分離した2つの閉回路より駆動電気力線と誘導電気力線とを重畳(代数和)することにより、電解電圧EEを達成している。後述するように、一方の電源で駆動される駆動陽極と駆動陰極との間で電気分解が起こっているときは、誘導電気力線生成手段を構成する誘導陽極と駆動陽極との間、及び駆動陰極と誘導電気力線生成手段を構成する誘導陰極との間では理論的のみならず実際的にも電気分解は起こり得ない。したがって、2電源を構成する他方の電源により駆動される誘導電気力線生成手段で消費される電力を0とすることができるので、その消費電力は、従来技術に係る1電源電気分解に比して、大きく削減できる。本発明の第1の態様において適用する過電圧ΔEを小さくすればするほど2電源電気分解の消費電力は従来技術に係る1電源電気分解に比して、大きく削減できる。
本発明の第2の態様は、(イ)電解液中に挿入され、電解液中の負イオンを介して酸化反応を行う駆動陽極と、(ロ)この駆動陽極と直接対向し、且つ互いに平行に電解液中に挿入され、電解液中の正イオンを介して還元反応を行う駆動陰極と、(ハ)駆動陽極から駆動陰極に向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段とを備える電気分解ユニットを複数備える電気分解システムであることを要旨とする。そしてこの電気分解システムのそれぞれの電気分解ユニットにおいて、駆動電気力線と誘導電気力線との重畳による駆動陽極と駆動陰極の間に生じる電位差により、酸化反応及び還元反応を駆動し、且つ、それぞれの電気分解ユニットの駆動陽極と駆動陰極とからなる駆動電極ペアが、互いに電気的に直列に接続されていることを特徴とする。
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様で説明した電気分解システムを電気分解ユニットを複数個多段接続した電気分解システムに対応し、本発明の第1の態様の説明と同様に、消費電力を従来技術に係る1電源電気分解に比して、大きく削減させることができる。
本発明の第3の態様は、(イ)電解液中に挿入され、電解液中の負イオンを介して酸化反応を行う駆動陽極、この駆動陽極と直接対向し、且つ互いに平行に電解液中に挿入され、電解液中の正イオンを介して還元反応を行う駆動陰極からなる駆動電極ペアを複数、電気的に直列接続した多段駆動電極構造と、(ロ)それぞれの駆動電極ペアにおいて、駆動陽極から駆動陰極に向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段とを備える電気分解システムであることを要旨とする。そしてこの電気分解システムでは、それぞれの駆動電極ペアにおいて、駆動電気力線と誘導電気力線との重畳による駆動陽極と駆動陰極の間に生じる電位差により、酸化反応及び還元反応を開始させることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様と同様に、本発明の第1の態様で説明した電気分解システムを電気分解ユニットを複数個多段接続した電気分解システムに対応し、消費電力を従来技術に係る1電源電気分解に比して、大きく削減させることができる。
本発明によれば、従来技術に係る電気分解に比して、その消費電力を大きく削減できる新たな構成と新たな原理に基づく電気分解システムを提供することができる。
次に、図面を参照して、本発明の第1〜第3の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。又、以下に示す第1〜第3の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る電気分解システムは、図1の概念図に示すように、電解液4中に挿入され、電解液4中の負イオンを介して酸化反応を行う駆動陽極21と、この駆動陽極21と直接対向し、且つ互いに平行に電解液4中に挿入され、電解液4中の正イオンを介して還元反応を行う駆動陰極22と、駆動陽極21から駆動陰極22に向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段(11,12)とを備える。ここで、誘導電気力線生成手段(11,12)は、駆動陽極21と駆動陰極22とからなる駆動電極ペアを挟み、平行に対向して電解液4中に挿入される誘導陽極11及び誘導陰極12を備える。図1では、原理の説明の便宜上、誘導陽極11,誘導陰極12,駆動陽極21及び駆動陰極22は、電解液4を収納する電解槽6中に等間隔に設置しているが、等間隔に設置された配置に限定されるものではない。電解槽6はプラスチックやセラミック等の絶縁体で構成されている。
第1の実施の形態に係る電気分解システムにおいては、駆動電気力線と誘導電気力線との重畳による駆動陽極21と駆動陰極22の間に生じる電位差により、駆動陽極21における酸化反応及び駆動陰極22における還元反応を開始させ、更にこれらの酸化反応及び還元反応を必要時間維持する。このため、誘導陽極11にプラスの端子を接続し、誘導陰極12にマイナスの端子を接続し、誘導陽極11と誘導陰極12との間に誘導電気力線を生じさせ、駆動陽極21と駆動陰極22との間に、飽和電気二重層形成電圧を生じさせる第1直流電源PS1と、駆動陽極21にプラスの端子を接続し、駆動陰極22にマイナスの端子を接続し、飽和電気二重層が誘導された状態で、駆動陽極21と駆動陰極22の間に過電圧分の電位差を増加させる、第1直流電源PS1とは独立した第2直流電源PS2とを更に備える。
即ち、第1の実施の形態に係る電気分解システムでは、図1に示すように、電極界面に飽和電気二重層を誘導する第1直流電源PS1と電気分解反応を開始させる第2直流電源PS2の2つの直流電源PS1,PS2に分離された構造に特徴がある。図1において中央で対向する駆動陽極21と駆動陰極22は、実際に電極反応が起こる電極となり、電気分解は駆動陽極21と駆動陰極22との間のチャンネルで行われる。
駆動陽極21と駆動陰極22からなる駆動電極ペアの外側に位置する誘導陽極11と誘導陰極12は、中央の駆動陽極21と駆動陰極22の間に飽和電気二重層形成電圧Eに相当する電位差を与え、それによって飽和電気二重層を誘導し安定化させるための誘導電気力線生成手段(11,12)である。誘導陽極11と駆動陽極21との間の極間距離、及び誘導陰極12と駆動陰極22の間の極間距離は、それぞれ、その間隙に電解液4が浸入し得、且つ両者が短絡する恐れが無い限り接近させることができる。
誘導陽極11と誘導陰極12は、電極界面飽和電気二重層を誘導する第1直流電源PS1に接続されており、駆動陽極21と駆動陰極22は、電気分解反応を開始させる第2直流電源PS2に、接続されているが、それぞれの回路は電解液4を介して相互に非接触である。
本発明の第1の実施の形態に係る電気分解システムにおける電気分解の作動原理は以下のように要約される:
(ステップ1)分解せんとする化合物を水又は溶融塩中に溶解して正負のイオンに解離し、これを電解液4とする。
(ステップ2)2対の平板形状の導電体を垂直もしくは水平に対向して電解液4の中に浸漬する。外側に位置する誘導陽極11を第1直流電源PS1のプラス出力端子に、外側に位置する誘導陰極12を第1直流電源PS1をマイナス出力端子に導線で接続する。次に、中央に位置する駆動陽極21と駆動陰極22のうち、誘導陽極11に隣接する駆動陽極21を第2直流電源PS2のプラス出力端子に導線で接続し、誘導陰極12に隣接する駆動陰極22を、第2直流電源PS2のマイナス出力端子に導線で接続する。
(ステップ3) 図2(a)において、第2直流電源PS2の出力電圧を0に保ったまま、第1直流電源PS1の出力電圧を0から立ち上げ、誘導陽極11と誘導陰極12の間の誘導電気力線の本数(電界強度)を増加し、誘導陽極11と誘導陰極12の間の電位差を増加していくと、誘導陽極11と駆動陽極21との間,駆動陽極21と駆動陰極22との間,誘導陰極12と駆動陰極22との間のそれぞれの電位差も自動的に増加する。誘導陽極11,誘導陰極12,駆動陽極21及び駆動陰極22は等間隔に設置されているので、図2(b)の各電極の電位プロファイルが示すように、これらの電位差は飽和電気二重層形成電圧Eに相当する電位差で等しくなる。このとき誘導陽極11と誘導陰極12との間の電位差は3Eの値を示している。このようにして、対向する駆動陽極21と駆動陰極22が仕切るチャンネルに、電気分解反応が起こるための必要条件である飽和電気二重層が形成されたことになる。
(ステップ4) 次に、第1直流電源PS1の出力はステップ3の電圧そのままにして、第2直流電源PS2の出力電圧を0から加えていき、駆動陽極21と駆動陰極22との間の駆動電気力線の本数を増加すると、誘導電気力線と同一方向の駆動電気力線が誘導電気力線線に重畳され、図2(c)に示すように駆動陽極21と駆動陰極22の間の電位差は飽和電気二重層形成電圧Eを越えて過電圧ΔEが加わったことになり、駆動陽極21と駆動陰極22の間に電極反応が開始する。逆に、誘導陽極11と駆動陽極21との間及び誘導陰極12と駆動陰極22の間の電位差は飽和電気二重層形成電圧Eよりも低下していくために電気分解反応は起こり得ず、第2直流電源PS2の回路のみに電気分解電流が流れ始める。即ち、駆動陽極21の表面に近接する電解液4の中の負イオンが電子を駆動陽極21へ放出して分子又は単体を析出し、駆動陰極22の表面では正イオンが駆動陰極22から電子を受け取って分子又は単体として析出する。
以上のように、第1の実施の形態に係る電気分解システムでは誘導電気力線により、駆動陽極21の表面の負イオンと駆動陰極22の表面の正イオンとからなる電気二重層を、酸化反応及び還元反応が開始する直前の飽和状態にする飽和電気二重層形成電圧を、駆動陽極21と駆動陰極22との間に生じさせ、駆動電気力線が駆動陽極21と駆動陰極22との間に生じさせる過電圧を、飽和電気二重層形成電圧に重畳することにより、酸化反応及び還元反応を駆動している。
第1の実施の形態に係る電気分解システムにおいては、電極界面での電気二重層の形成は、クーロン力の働く静電界による仕事であるため、それを維持するため誘導電気力線を形成していれば良く、回路に電流を流すことを要しない。したがって、この仕事を受け持つ第1直流電源PS1は電力を消費しない。一方、出力として電気分解反応の駆動力を受け持つ第2直流電源PS2は、駆動電気力線により過電圧ΔEを与え電気分解電流が流れるので電力を消費する。この場合の電力値は:
2 = I ΔE ・・・・・(5)
で表される。
第1の実施の形態に係る電気分解システムにおける2電源電気分解で消費する電力P2を、電気分解反応にとって本質的な飽和電気二重層形成電圧E D 及び過電圧ΔEを用いて、従来の1電源電気分解に対する(4)式で示されるP1との比率で比較すると、同じ電気分解電流値に対して:
2 /P1 = ΔE / (E + ΔE) ・・・・・(6)
と書ける。飽和電気二重層形成電圧Eの値が大きい場合、過電圧ΔEを小さくすれば2電源電気分解による消費電力低減の効果は格段に顕著になる。
一般に電気分解は、分解しようとする化合物を水溶液もしくは溶融塩の形態の電解液4の中でイオンに解離させ、電解液4の中に浸漬した導電性の陽極と陰極の間に電位差を与えて単体又は分子として析出させる電気化学操作である。
本発明は、電気分解を司る駆動陽極21と駆動陰極22のそれぞれの背面に対向するように、誘導陽極11と誘導陰極12を配置し、電気分解反応の駆動用の第2直流電源PS2とは別の、第1直流電源PS1を用いて誘導陽極11と誘導陰極12に電位差を与え、電解液4を介して化合物の電解電圧EEを駆動陽極21と駆動陰極22の間に誘導する新しい電気分解の形態である。
電気分解を司る駆動陽極21と駆動陰極22に対する誘導陽極11と誘導陰極12の形状及び幾何学的配置は主として気体、液体、固体の析出物形態、それらの電解液4に対する比重並びに導電性等によって決定されるべきものである。例えば、水素製造の水電気分解やマグネシウム電気分解の場合は、析出物は水電気分解が気体分子、マグネシウム電気分解が気体と液体であるが、いずれも電解液4より軽いために析出と同時に気体は気泡、液体は液滴となって電極面から離れ、電解液4の中を上昇する。このような析出物の挙動を示す電気分解においては、誘導陽極11,誘導陰極12,駆動陽極21及び駆動陰極22は平板状をなし、電解液4の中に垂直・平行に浸漬されることが望ましい。
<2電源電気分解の実証>
図3及び図4を用いて、第1の実施の形態に係る電気分解システムにおいて、2電源電気分解が原理の通り作動していることを実証する。このため、図3に示す回路構成において、第1直流電源PS1による誘導電気力線により、駆動陽極21と駆動陰極22の間に飽和電気二重層形成電圧E=1.80Vを与え、その上に電気分解反応駆動用の第2直流電源PS2を用いて駆動電気力線に重畳し、これにより過電圧ΔEを加え駆動陽極21と駆動陰極22との間の電位差と電気分解電流を測定したとき、図4に示すように、1電源電気分解の電圧―電流曲線と一致することを説明する。
図3は、図1に示した第1の実施の形態に係る電気分解システムの概念図に対応するが、図4に示す電圧―電流曲線を得るため、より具体的に、スイッチS、直流電流計71、72及び直流電圧計82、83,84を付加した回路構成を説明するための、略図である。誘導陽極11,駆動陽極21,駆動陰極22及び誘導陰極12の4つの板状電極は電解液4への浸漬表面積が等しく7.5cm2であり、相互に垂直・平行に配置されている。したがって、電解液4は3等分に仕切られており、誘導陽極11,駆動陽極21,駆動陰極22及び誘導陰極12の各電極からの電気力線の漏洩を防止するため、各部屋間の流通はいささかも無いように、電極板の周辺は絶縁体で完全にシールされている。即ち、図3(b)に示すように、矩形で、平板状の誘導陽極11,駆動陽極21,駆動陰極22及び誘導陰極12のそれぞれが、電解液4を収納する電解槽6の底面及び対向する2つの側壁に接し、これにより、電解液4の一部を密閉して収納する3つの容器に分離されている(図3(b)では、駆動陽極21について例示しているが、誘導陽極11,駆動陰極22及び駆動陽極21についても同様であることは勿論である。)。
図3に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る電気分解システムは2つの電気回路からなっている。第1電源回路 は、第1直流電源PS1のプラス端子―直流電流計71―誘導陽極11―電解液4―駆動陽極21―電解液4―駆動陰極22−電解液4―誘導陰極12―スイッチS―第1直流電源PS1のマイナス端子の経路をなしている。一方、第2電源回路は、第2直流電源PS2のプラス端子―直流電流計72―駆動陽極21―電解液4―駆動陰極22―第2直流電源PS2のマイナス端子のサイクルをなしている。又、
誘導陽極11と駆動陽極21との間の電位差を直流電圧計82により、駆動陽極21と駆動陰極22との間の電位差を直流電圧計83により、駆動陰極22と誘導陰極12との間の電位差を直流電圧計84により測定する。電解液4は、温度25Cの10%NaOH水溶液であり、それに浸漬する誘導陽極11,駆動陽極21,駆動陰極22及び誘導陰極12は酸化防止のためニッケル(Ni)めっき鋼板を用いる。
(イ)図3に示す回路構成において、まず、スイッチSを開放して第2電源回路のみで駆動陽極21と駆動陰極22の間で通常の1電源電気分解を行い、駆動陽極21−駆動陰極22間の電位差EJと回路電流I2との関係を測定する。測定結果の1例を、白抜きの丸印で図4に示す通り、典型的な1電源電気分解の挙動が認められ、電気分解条件下で水の飽和電気二重層形成電圧Eは、1.80Vを示した。25Cにおける水の理論電解電圧Etheory=1.23Vに対して実際に電気分解反応はかなり高い電圧で起こっていることが分かる。飽和電気二重層形成電圧E以上の電位差でほぼ直線で表される領域が実際の定常状態での1電源電気分解の条件である。図4に示す電圧―電流曲線の勾配の逆数は抵抗である。この抵抗は、1電源電気分解では、ほぼ電極界面での電気二重層による抵抗(分極抵抗)と電解液4抵抗の和である。
(ロ)次に、図3における第1電源回路のスイッチSを閉じ、第2直流電源PS2の出力電圧を0にしたまま第1直流電源PS1を昇圧し、駆動陽極21と駆動陰極22との間の電位差が丁度1.80Vになる電圧に一旦保持する。又、この間第1電源回路の電流I1及び第2電源回路電流I2は0のままであった。更に、このときの各電極間の電位差を、直流電圧計82、83,84で測定したところ、誘導陽極11と誘導陰極12との間の電位差は5.44Vを、誘導陽極11と駆動陽極21との間は1.83V、駆動陰極22と誘導陰極12との間は1.80Vを示し、原理通りの電圧値であった。
(ハ)次に、第2直流電源PS2を用いて駆動電気力線に重畳し、駆動陽極21と駆動陰極22との間の初期電位差1.80Vの上に新たに電位差を加えて電気分解反応を開始させ、その都度電気分解電流I2を測定すると共に、誘導陽極11と駆動陽極21との間の電位差も測定する。そして、駆動陽極21と駆動陰極22との間の電位差と電気分解電流の関係を、図4に重ねてプロットする。
図4から明らかなように、黒塗りの丸印で示した2電源電気分解における電圧―電流の関係は、白抜きの丸印で示した1電源電気分解の電圧―電流の関係と一致している。又、電気分解反応が起こる電圧領域における誘導陽極11と駆動陽極21との間の極間電圧EAは、図5に見られるように駆動陽極21と駆動陰極22との間の極間電圧EJの増加と共に減少するので、駆動陽極21と駆動陰極22との間で電気分解が起こっているときは、誘導陽極11と駆動陽極21との間、及び駆動陰極22と誘導陰極12との間では理論的のみならず実際的にも電気分解は起こり得ず、したがって、第1電源回路の電流I1は0である。以上の測定結果を勘案するならば、第1の実施の形態に係る電気分解システムにおいて、2電源電気分解はその原理に従って機能しているものと見なして差し支えない。
<2電源電気分解の原理とその消費電力>
第1の実施の形態に係る電気分解システムにおける2電源電気分解の原理とその消費電力を、図6に示す等価回路を用いて以下に説明する。図6は第2電源回路に対する等価回路を描いたものであり、第2直流電源PS2と電気分解部よりなる。第2直流電源PS2はダイオードによる整流回路であるか又はトランジスタによる整流回路であるかは問わない。図ではダイオードで代表している。これらの整流器の特性として、順方向に電流は流れ得るが、逆方向には流れない。電気分解部の構成要素は、図1〜図3に示した駆動陽極21、駆動陰極22及び電解液4であるが、駆動陽極21と駆動陰極22には外部から化合物の飽和電気二重層形成電圧Eに相当する一定の電位差が非接触で与えられているので、電解液との界面に電気二重層が存在する。そのため界面の電気的性質には飽和電気二重層容量CDをもつコンデンサに類似した成分がある。その上に、実際に電極反応が進行している状況の下では、電極反応進行の抵抗となるファラデーインピーダンスZFと呼ばれる成分が存在するので、結局、駆動陽極21,駆動陰極22と電解液4との界面の電気的性質は、飽和電気二重層容量CDをファラデーインピーダンスZFで短絡したモデルが適当であると考えられている。ファラデーインピーダンスZFは更に、界面でのイオンの移動抵抗RSとイオン濃度勾配に基づく容量(電気分解容量)CSからなっている。これらの電気的成分に直列に電解液4自体の抵抗Rsolnが繋がっている。電気分解システムにおけるこれらの電気的性質は電気分解反応速度を律する要因であるが、図4に示したように1電源電気分解と2電源電気分解の電気分解において電圧―電流曲線に違いが無いことから、両者の電気分解そのもののメカニズムは同一であると判断される。
第2直流電源PS2の整流回路は本発明の電気分解プロセスの原理と密接な係わり合いがある。即ち、図6のようにダイオードの順方向が駆動陽極21に直結しているので、誘導陽極11と誘導陰極12との間に飽和電気二重層形成電圧Eの3倍の電位差3Eを与えると、駆動陽極21から駆動陰極22へダイオードを通って電子が流れ込み、図2(b)に示すように駆動陽極21と駆動陰極22との間に飽和電気二重層形成電圧Eに相当する電位差が生じる。もしダイオードの逆方向に接続した場合は、駆動陽極21と駆動陰極22との間に飽和電気二重層形成電圧Eは現れない。
次には、本発明の2電源電気分解が消費する電力を通常の1電源電気分解と比較すると以下のようになる。一般に電気分解で消費される電力は、第1直流電源PS1の電力効率及び第1直流電源PS1から電解槽6までの導線の抵抗、導線と電極との接触抵抗、電極そのものの抵抗などによるジュール熱損失を考慮に入れる必要がある。しかしここでは、電気分解に本質的な要素により消費される電力に限定することにする。
この場合、式(6)が1電源電気分解に対する2電源電気分解の消費電力の比P/Pであり、ここで用いている過電圧ΔEはあくまで、駆動陽極21と駆動陰極22との間に与えられ電気分解反応に寄与している電圧を指している。又、式(6)は、同じ電流値即ち水素の生産速度の比較になっている。表1は本発明の実施の形態の25Cの水電気分解において、飽和電気二重層形成電圧E=1.80Vに対する過電圧ΔEと消費電力比P/P比の理論値である。
Figure 2007100187
表1から明らかなように、適用する過電圧ΔEを小さくすればするほど2電源電気分解の消費電力は大きく削減される。又、電気分解では一般に過電圧ΔEを小さくして電流密度を低下させると電力効率が向上する。したがって、理論的には低い過電圧ΔEの電気分解がエネルギーの観点から有利である。しかし反面、小さな過電圧ΔEと電流密度は電解槽6の大型化に繋がるため、工業的には総合的に判断して適切な過電圧ΔEを採用しなければならない。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態に係る電気分解システムでは4枚の矩形の平行平板で、誘導陽極11,駆動陽極21,駆動陰極22及び誘導陰極12を構成する例を示したが、誘導陽極11,駆動陽極21,駆動陰極22及び誘導陰極12の形状は、平板に限定されるものではない。即ち、本発明の第2の実施の形態に係る電気分解システムは、図7の概念図に示すように、電解液4を収納する円筒状の側壁を有する絶縁体の電解槽6と、電解液4中に挿入され、電解液4中の負イオンを介して酸化反応を行う円筒状の駆動陽極21と、この駆動陽極21の内側に、駆動陽極21と直接対向し、且つ駆動陽極21と互いに同心円状に平行に電解液4中に挿入され、電解液4中の正イオンを介して還元反応を行う円筒状の駆動陰極22と、駆動陽極21から駆動陰極22に向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段(11,12)とを備える。ここで、誘導電気力線生成手段(11,12)は、円筒状の駆動陽極21の外側を同心円状に周回するように配置された円筒状の誘導陽極11と、円筒状の駆動陰極22の中心位置に配置された円柱状の誘導陰極12を備える。誘導陽極11と誘導陰極12とは、両側から駆動陽極21と駆動陰極22とからなる駆動電極ペアを挟むように、互いに同心円状に平行に対向し、電解液4中に挿入されている。図7では、誘導陽極11に複数のスリット11Sが設けられているが、スリット11Sが設けられた構造に限定されるものではない。
誘導陽極11に複数のスリット11Sが設けられた構造では、電解液4は円筒状の駆動陽極21及び駆動陰極22により、3等分に仕切られており、電気力線の漏洩を防止するため、各部屋間の流通はいささかも無いように、駆動陽極21及び駆動陰極22の周辺は絶縁体で完全にシールされている。即ち、図7に示すように、円筒状の駆動陽極21,駆動陰極22のそれぞれの底辺が、電解液4を収納する電解槽6の底面に接し、これにより、電解液4の一部を密閉して収納する3つの容器に分離されている。
第2の実施の形態に係る電気分解システムにおいても、第1の実施の形態に係る電気分解システムと同様に、駆動電気力線と誘導電気力線との重畳による駆動陽極21と駆動陰極22の間に生じる電位差により、駆動陽極21における酸化反応及び駆動陰極22における還元反応を開始させ、更にこれらの酸化反応及び還元反応を必要時間維持する。このため、誘導陽極11にプラスの端子を接続し、誘導陰極12にマイナスの端子を接続し、誘導陽極11と誘導陰極12との間に誘導電気力線を生じさせ、駆動陽極21と駆動陰極22との間に、飽和電気二重層形成電圧を生じさせる第1直流電源PS1と、駆動陽極21にプラスの端子を接続し、駆動陰極22にマイナスの端子を接続し、飽和電気二重層が誘導された状態で、駆動陽極21と駆動陰極22の間に過電圧分の電位差を増加させる、第1直流電源PS1とは独立した第2直流電源PS2とを更に備えている。
第2の実施の形態に係る電気分解システムにおいても、式(6)に示す1電源電気分解に対する2電源電気分解の消費電力の比P/Pの関係が成立し、第1の実施の形態の表1と同様に、駆動陽極21と駆動陰極22との間に印加する過電圧ΔEを小さくすればするほど2電源電気分解の消費電力は大きく削減される。
<第2の実施の形態の第1変形例>
本発明の第2の実施の形態の第1変形例に係る電気分解システムは、図8の概念図に示すように、電解槽を兼ねる円筒状の側壁を有する誘導陽極11と、誘導陽極11に収納された電解液4中に挿入され、電解液4中の負イオンを介して酸化反応を行う円筒状の駆動陽極21と、この駆動陽極21の内側に、駆動陽極21と直接対向し、且つ駆動陽極21と互いに同心円状に平行に電解液4中に挿入され、電解液4中の正イオンを介して還元反応を行う円筒状の駆動陰極22と、駆動陽極21から駆動陰極22に向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段(11,12)とを備える。ここで、誘導電気力線生成手段(11,12)は、円筒状の駆動陽極21の外側を同心円状に周回するように配置された円筒状の誘導陽極11と、円筒状の駆動陰極22の中心位置に配置された円柱状の誘導陰極12を備える。誘導陽極11と誘導陰極12とは、両側から駆動陽極21と駆動陰極22とからなる駆動電極ペアを挟むように、互いに同心円状に平行に対向し、電解液4中に挿入されている。
第2の実施の形態の第1変形例に係る電気分解システムにおいても、第1及び第2の実施の形態に係る電気分解システムと同様に、駆動電気力線と誘導電気力線との重畳による駆動陽極21と駆動陰極22の間に生じる電位差により、駆動陽極21における酸化反応及び駆動陰極22における還元反応を開始させ、更にこれらの酸化反応及び還元反応を必要時間維持する。このため、誘導陽極11にプラスの端子を接続し、誘導陰極12にマイナスの端子を接続し、誘導陽極11と誘導陰極12との間に誘導電気力線を生じさせ、駆動陽極21と駆動陰極22との間に、飽和電気二重層形成電圧を生じさせる第1直流電源PS1と、駆動陽極21にプラスの端子を接続し、駆動陰極22にマイナスの端子を接続し、飽和電気二重層が誘導された状態で、駆動陽極21と駆動陰極22の間に過電圧分の電位差を増加させる、第1直流電源PS1とは独立した第2直流電源PS2とを更に備えている。
図8の構造では、誘導陽極11が電解槽を兼ねているが、円筒状の側壁のみを金属で構成し、底部を絶縁体で構成すれば良い。図7と同様に、電気力線の漏洩を防止するため、各部屋間の流通はいささかも無いように、円筒状の駆動陽極21,駆動陰極22のそれぞれの底辺が、電解液4を収納する電解槽6の底面に接し、これにより、電解液4の一部を密閉して収納する3つの容器に分離されている。
第2の実施の形態の第1変形例に係る電気分解システムにおいても、式(6)に示す1電源電気分解に対する2電源電気分解の消費電力の比P/Pの関係が成立し、第1の実施の形態で説明した表1と同様に、駆動陽極21と駆動陰極22との間に印加する過電圧ΔEを小さくすればするほど2電源電気分解の消費電力は大きく削減される。
<第2の実施の形態の第2変形例>
本発明の第2の実施の形態の第2変形例に係る電気分解システムは、図8の概念図に示すように、電解槽を兼ねる円筒状の側壁を有する誘導陰極12と、誘導陰極12に収納された電解液4中に挿入され、電解液4中の正イオンを介して還元反応を行う円筒状の誘導陰極22と、この誘導陰極22の内側に、誘導陰極22と直接対向し、且つ誘導陰極22と互いに同心円状に平行に電解液4中に挿入され、電解液4中の負イオンを介して酸化反応を行う円筒状の駆動陽極21と、誘導陰極22から駆動陽極21に向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段(11,12)とを備える。ここで、誘導電気力線生成手段(11,12)は、円筒状の誘導陰極22の外側を同心円状に周回するように配置された円筒状の誘導陰極12と、円筒状の駆動陽極21の中心位置に配置された円柱状の誘導陽極11を備える。誘導陰極12と誘導陽極11とは、両側から誘導陰極22と駆動陽極21とからなる駆動電極ペアを挟むように、互いに同心円状に平行に対向し、電解液4中に挿入されている。
第2の実施の形態の第2変形例に係る電気分解システムにおいても、第1及び第2の実施の形態に係る電気分解システムと同様に、駆動電気力線と誘導電気力線との重畳により、誘導陰極22と駆動陽極21の間に生じる電位差により、誘導陰極22における酸化反応及び駆動陽極21における還元反応を開始させ、更にこれらの酸化反応及び還元反応を必要時間維持する。このため、誘導陰極12にプラスの端子を接続し、誘導陽極11にマイナスの端子を接続し、誘導陰極12と誘導陽極11との間に誘導電気力線を生じさせ、誘導陰極22と駆動陽極21との間に、飽和電気二重層形成電圧を生じさせる第1直流電源PS1と、誘導陰極22にプラスの端子を接続し、駆動陽極21にマイナスの端子を接続し、飽和電気二重層が誘導された状態で、誘導陰極22と駆動陽極21の間に過電圧分の電位差を増加させる、第1直流電源PS1とは独立した第2直流電源PS2とを更に備えている。
図9の構造は、誘導陽極11が電解槽を兼ねているが、図8の構造と同様に、円筒状の側壁のみを金属で構成し、底部を絶縁体で構成すれば良い。図7及び図8と同様に、電気力線の漏洩を防止するため、各部屋間の流通はいささかも無いように、円筒状の駆動陽極21,駆動陰極22のそれぞれの底辺が、電解液4を収納する電解槽6の底面に接し、これにより、電解液4の一部を密閉して収納する3つの容器に分離されている。
第2の実施の形態の第2変形例に係る電気分解システムにおいても、式(6)に示す1電源電気分解に対する2電源電気分解の消費電力の比P/Pの関係が成立し、第1の実施の形態で説明した表1と同様に、誘導陰極22と駆動陽極21との間に印加する過電圧ΔEを小さくすればするほど2電源電気分解の消費電力は大きく削減される。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る電気分解システムは、図10の概念図に示すように、電解液4中に挿入され、電解液4中の負イオンを介して酸化反応を行う駆動陽極21r(r=1〜2n+1)と、この駆動陽極21rと直接対向し、且つ互いに平行に電解液4中に挿入され、電解液4中の正イオンを介して還元反応を行う駆動陰極22rと、駆動陽極21rから駆動陰極22rに向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段(11s,12s:s=1〜n+1)とを備える電気分解ユニット(11s,12s;21r,22r)を複数(2n+1)個備える。ここで、nは1以上の正の整数である。それぞれの電気分解ユニット(11s,12s;21r,22r)において、駆動電気力線と誘導電気力線との重畳による駆動陽極21rと駆動陰極22rの間に生じる電位差により、酸化反応及び還元反応を駆動し、且つ、図10に示すように、それぞれの電気分解ユニット(11s,12s;21r,22r)の駆動陽極21rと駆動陰極22rとからなる駆動電極ペア(21r,22r)が、互いに電気的に直列に接続されている。ここで、それぞれの電気分解ユニット(11s,12s;21r,22r)において、誘導電気力線生成手段(11s,12s)は、電気分解ユニット(11s,12s;21r,22r)を構成する駆動電極ペア(21r,22r)を挟み、平行に対向して電解液4中に挿入される誘導陽極11s及び誘導陰極12sを備える。
別の見方をすれば、図10に示す第3の実施の形態に係る電気分解システムは、電解液4中に挿入され、電解液4中の負イオンを介して酸化反応を行う駆動陽極21p(p=1〜2n+1)この駆動陽極21pと直接対向し、且つ互いに平行に電解液4中に挿入され、電解液4中の正イオンを介して還元反応を行う駆動陰極22pからなる駆動電極ペア(21p,22p)を複数、電気的に直列接続した(2n+1)段の多段駆動電極構造と、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)において、駆動陽極21pから駆動陰極22pに向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段(11q,12q)とを備える(前述したように、nは1以上の正の整数である。)。そして、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)において、駆動電気力線と誘導電気力線との重畳による駆動陽極21pと駆動陰極22pの間に生じる電位差により、酸化反応及び還元反応を開始させる。誘導電気力線生成手段(11q,12q)は、図10に示すように、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)を挟み、平行に対向して電解液4中に挿入される誘導陽極11q(q=1〜n+1)と誘導陰極12qとからなる誘導電極ペア(11q,12q)を備え、この誘導電極ペア(11q,12q)が電気的に並列接続されている。図10では、互いに隣接する駆動電極ペア(212j-1,222j-1;212j,222j)のそれぞれの駆動陰極222j-1;222jを、誘導陰極の一つ12j-1を挟んで互いに対向させ、挟まれた誘導陰極の一つ12j-1を隣接する駆動電極ペア(212j-1,222j-1;212j,222j)に共通の誘導陰極12jとしている。例えば、図10に示すように、互いに隣接する駆動電極ペア(211,221;212,222)のそれぞれの駆動陰極221;222を、誘導陰極121を挟んで互いに対向させ、挟まれた誘導陰極121を隣接する駆動電極ペア(211,221;212,222)に共通の誘導陰極121とし、互いに隣接する駆動電極ペア(213,223;214,224)のそれぞれの駆動陰極223;224を、誘導陰極122を挟んで互いに対向させ、挟まれた誘導陰極122を隣接する駆動電極ペア(213,223;214,224)に共通の誘導陰極122としている。
又、互いに隣接する駆動電極ペア(212j,222j;212j+1,222j+1)のそれぞれの駆動陽極212j;212j+1を、誘導陽極の一つ11j+1を挟んで互いに対向させ、挟まれた誘導陽極一つ11j+1を、隣接する駆動電極ペア(21i,22i)に共通の誘導陽極11j+1としている。例えば、図10に示すように、互いに隣接する駆動電極ペア(212,222;213,223)のそれぞれの駆動陽極212;213を、誘導陽極112を挟んで互いに対向させ、挟まれた誘導陽極112を、隣接する駆動電極ペア(21i,22i)に共通の誘導陽極112とし、互いに隣接する駆動電極ペア(214,224;215,225)のそれぞれの駆動陽極214;215を、誘導陽極113を挟んで互いに対向させ、挟まれた誘導陽極113を、隣接する駆動電極ペア(21i,22i)に共通の誘導陽極113としている。
図10においては、平板状の駆動陽極21p、駆動陰極22p、誘導陽極11q及び誘導陰極12qが、それぞれ電解液4を収納する電解槽6の底面に対して垂直に配置されることにより、互いに平行となり、且つ、駆動陽極21p、駆動陰極22p、誘導陽極11q及び誘導陰極12qのそれぞれが、電解槽6の底面及び対向する2つの側壁に接し、これにより、電解液4の一部をそれぞれ密閉して収納する独立した複数の容器をなしている。電解槽6は絶縁体で構成されている。密閉して収納する独立した複数の容器を構成することにより、駆動陽極21p、駆動陰極22p、誘導陽極11q及び誘導陰極12qからの電気力線の漏洩を防止している。
第3の実施の形態に係る電気分解システムにおいても、第1及び第2の実施の形態に係る電気分解システムと同様に、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)において、駆動電気力線と誘導電気力線との重畳による駆動陽極21pと駆動陰極22pの間に生じる電位差により、駆動陽極21pにおける酸化反応及び駆動陰極22pにおける還元反応を開始させ、更にこれらの酸化反応及び還元反応を必要時間維持する。このため、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)に対応する、誘導陽極11qにプラスの端子を接続し、誘導陰極12qにマイナスの端子を接続し、誘導陽極11qと誘導陰極12qとの間に誘導電気力線を生じさせ、駆動陽極21pと駆動陰極22pとの間に、飽和電気二重層形成電圧を生じさせる第1直流電源PS1が、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)に対し並列接続されている。一方、駆動陽極21pにプラスの端子を接続し、駆動陰極22pにマイナスの端子を接続し、飽和電気二重層が誘導された状態で、駆動陽極21pと駆動陰極22pの間に過電圧分の電位差を増加させる、第1直流電源PS1とは独立した第2直流電源PS2は、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)を電気的に直列接続している閉回路に直列接続されている。
第3の実施の形態に係る電気分解システムにおいても、式(6)に示す1電源電気分解に対する2電源電気分解の消費電力の比P/Pの関係が成立し、第1の実施の形態で説明した表1と同様に、駆動陽極21pと駆動陰極22pとの間に印加する過電圧ΔEを小さくすればするほど2電源電気分解の消費電力は大きく削減される。
図10に示すように、複数の電気分解ユニットを、長さ方向のシーケンスとして配列し、多段に構成し、誘導陽極11qと誘導陰極12qは並列接続にて第1直流電源PS1へ、駆動陽極21pと駆動陰極22pを、直列接続にて第2直流電源PS2へ向かう構造とすれば、工業的生産用装置に好適な電気分解システムが提供できる。
<第3の実施の形態の変形例>
本発明の第3の実施の形態の変形例に係る電気分解システムは、図11の概念図に示すように、電解液4中に挿入され、電解液4中の負イオンを介して酸化反応を行う駆動陽極21p(p=1〜2n+1)この駆動陽極21pと直接対向し、且つ互いに平行に電解液4中に挿入され、電解液4中の正イオンを介して還元反応を行う駆動陰極22pからなる駆動電極ペア(21p,22p)を複数、電気的に直列接続した(2n+1)段の多段駆動電極構造と、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)において、駆動陽極21pから駆動陰極22pに向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段(11q,12q)とを備える(前述したように、nは1以上の正の整数である。)。そして、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)において、駆動電気力線と誘導電気力線との重畳による駆動陽極21pと駆動陰極22pの間に生じる電位差により、酸化反応及び還元反応を開始させ、更にこれらの酸化反応及び還元反応を必要時間維持する。誘導電気力線生成手段(11q,12q)は、図11に示すように、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)を挟み、平行に対向して電解液4中に挿入される誘導陽極11q(q=1〜n+1)と誘導陰極12qとからなる誘導電極ペア(11q,12q)を備え、この誘導電極ペア(11q,12q)が電気的に並列接続されている。図11では、互いに隣接する駆動電極ペア(212j-1,222j-1;212j,222j)のそれぞれの駆動陰極222j-1;222jを、誘導陰極の一つ12j-1を挟んで互いに対向させ、挟まれた誘導陰極の一つ12j-1を隣接する駆動電極ペア(212j-1,222j-1;212j,222j)に共通の誘導陰極12jとし、互いに隣接する駆動電極ペア(212j,222j;212j+1,222j+1)のそれぞれの駆動陽極212j;212j+1を、誘導陽極の一つ11j+1を挟んで互いに対向させ、挟まれた誘導陽極一つ11j+1を、隣接する駆動電極ペア(21i,22i)に共通の誘導陽極11j+1としている点では図10に示した構造と同様である。
第3の実施の形態の変形例に係る電気分解システムにおいても、第1及び第2の実施の形態に係る電気分解システムと同様に、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)において、駆動電気力線と誘導電気力線との重畳による駆動陽極21pと駆動陰極22pの間に生じる電位差により、駆動陽極21pにおける酸化反応及び駆動陰極22pにおける還元反応を開始させ、更にこれらの酸化反応及び還元反応を必要時間維持する。このため、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)に対応する、誘導陽極11qにプラスの端子を接続し、誘導陰極12qにマイナスの端子を接続し、誘導陽極11qと誘導陰極12qとの間に誘導電気力線を生じさせ、駆動陽極21pと駆動陰極22pとの間に、飽和電気二重層形成電圧を生じさせる第1直流電源PS1が、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)に対し、図10と同様に、並列接続されている。しかし、図10とは異なり、駆動陽極21pにプラスの端子を接続し、駆動陰極22pにマイナスの端子を接続し、飽和電気二重層が誘導された状態で、駆動陽極21pと駆動陰極22pの間に過電圧分の電位差を増加させる、第1直流電源PS1とは独立した第2直流電源PS2は、それぞれの駆動電極ペア(21p,22p)と並列接続している。
第3の実施の形態の変形例に係る電気分解システムにおいても、式(6)に示す1電源電気分解に対する2電源電気分解の消費電力の比P/Pの関係が成立し、第1の実施の形態で説明した表1と同様に、駆動陽極21pと駆動陰極22pとの間に印加する過電圧ΔEを小さくすればするほど2電源電気分解の消費電力は大きく削減される。
図11に示すように、複数の電気分解ユニットを、長さ方向のシーケンスとして配列し、多段に構成し、誘導陽極11qと誘導陰極12qは並列接続にて第1直流電源PS1へ、駆動陽極21pと駆動陰極22pを、並列接続にて第2直流電源PS2へ向かう構造としても、工業的生産用装置に好適な電気分解システムが提供できる。
更に、図10に示した回路構成と図11に示した回路構成を組み合わせ、複数の電気分解ユニットを、多段に構成し、誘導陽極11qと誘導陰極12qは並列接続にて第1直流電源PS1へ、駆動陽極21pと駆動陰極22pを、直列接続と並列接続とを併用して、第2直流電源PS2へ向かう構造とすれば、大型の工業的生産用装置に好適な電気分解システムが提供できる。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1〜第3の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、誘導陽極11,駆動陽極21,駆動陰極22及び誘導陰極12にNiめっき鋼板を用いる場合を例示したが、駆動陽極21には、電解液の性質に応じて、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タンタル(Ta)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)などの酸化物の薄膜で被覆(コーティング)したチタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)等の金属電極を不溶性陽極として採用可能である。誘導陽極11,駆動陰極22及び駆動陽極21にも、これらの金属酸化物の薄膜で被覆(コーティング)した金属電極を用いても良いが、水の電気分解等であれば、ステンレス鋼等を用いても良い。
又、第1〜第3の実施の形態においては、概念的な模式図で説明したが、例えば、電解槽6には攪拌装置が備えられていても良く、電解液4の温度を制御する加熱装置や温度制御装置等が含まれていても構わないことは勿論である。
又、第1の実施の形態の説明においては誘導陽極11,駆動陽極21,駆動陰極22及び誘導陰極12の各電極からの電気力線の漏洩を防止するため、各部屋間の流通はいささかも無いように、電極板の周辺は絶縁体で完全にシールされていると説明したが、誘導陽極11,駆動陽極21,駆動陰極22及び誘導陰極12にそれぞれの電極間距離の1/10以下の径の開口部があっても、静電的に電気力線の漏洩を遮蔽(シールド)可能であるので、必ずしも、完全密閉構造に限定されるものでもない。要は、各電極からの電気力線の漏洩を防止できる電極構造であれば良いのである。このことは、第2及び第3の実施の形態においても同様である。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
本発明の第1の実施の形態に係る電気分解システムの構成を示す模式図である。 本発明の第1の実施の形態に係る電気分解システムにおいて、2電源電気分解が作動した際の電極電位分布を定性的に表した図である。 本発明の第1の実施の形態に係る電気分解システムにおいて各電極間の電位を測定しながら、水の電気分解を行うための回路構成を示す模式図である。 25Cの水電気分解において電極間電圧に対して流れる電気分解電流を、1電源電気分解の場合と2電源電気分解の場合とで比較する図である。 2電源電気分解において駆動陽極と駆動陰極において、電気分解が行われているとき、誘導陽極と誘導陰極に接続される閉回路に電流は流れないことを説明するために、誘導陽極と駆動陽極との間の極間電圧EAと、駆動陽極と駆動陰極との間の極間電圧EJの関係を示す図である。 2電源電気分解における駆動陽極と駆動陰極とを含む閉回路の電気化学的な等価回路を示す図である。 本発明の第2の実施の形態に係る電気分解システムの構成を示す模式図である。 本発明の第2の実施の形態の第1変形例に係る電気分解システムの構成を示す模式図である。 本発明の第2の実施の形態の第2変形例に係る電気分解システムの構成を示す模式図である。 本発明の第3の実施の形態に係る電気分解システムの構成を示す模式図である。 本発明の第3の実施の形態の変形例に係る電気分解システムの構成を示す模式図である。 1電源電気分解の原理を説明する模式図で、化合物の分解を目的とする電気分解に特有の、電極と電解液との界面に形成される電気二重層を示している。 化合物の分解を目的とする電気分解に特有の電極間電圧と電気分解電流との関係を定性的に描いた図である。 化合物の分解を目的とする電気分解において、化合物に固有の飽和電気二重層形成電圧EDが存在し、飽和電気二重層形成電圧EDに過電圧ΔEを加えた電圧EEで初めて電気分解電流が流れ始めることを説明するための図である。
符号の説明
1…直流電源
2a,2b…導線
3a…陽極
3b…陰極
4…電解液
6…電解槽
11,11j,11q,11s…誘導陽極
11S…スリット
12,12j,12q,12s…誘導陰極
21,21p,21r…駆動陽極
22,22p,22r…駆動陰極
71,72…直流電流計
82,83,84…直流電圧計
L…負荷
S…移動抵抗
soln…抵抗
S…スイッチ
F…ファラデーインピーダンス
PS1…第1直流電源
PS2…第2直流電源

Claims (12)

  1. 電解液中に挿入され、前記電解液中の負イオンを介して酸化反応を行う駆動陽極と、
    該駆動陽極と直接対向し、且つ互いに平行に前記電解液中に挿入され、前記電解液中の正イオンを介して還元反応を行う駆動陰極と、
    前記駆動陽極から前記駆動陰極に向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を前記駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段
    とを備え、前記駆動電気力線と前記誘導電気力線との重畳による前記駆動陽極と前記駆動陰極の間に生じる電位差により、前記酸化反応及び前記還元反応を開始させることを特徴とする電気分解システム。
  2. 前記誘導電気力線により、前記駆動陽極の表面の負イオンと前記駆動陰極の表面の正イオンとからなる電気二重層を、前記酸化反応及び前記還元反応が開始する直前の飽和状態にする飽和電気二重層形成電圧を、前記駆動陽極と前記駆動陰極との間に生じさせ、
    前記駆動電気力線が前記駆動陽極と前記駆動陰極との間に生じさせる過電圧を、前記飽和電気二重層形成電圧に重畳することにより、前記酸化反応及び前記還元反応を開始させることを特徴とする請求項1に記載の電気分解システム。
  3. 前記誘導電気力線生成手段が、前記駆動陽極と前記駆動陰極とからなる駆動電極ペアを挟み、平行に対向して前記電解液中に挿入される誘導陽極及び誘導陰極を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気分解システム。
  4. 前記誘導陽極にプラスの端子を接続し、前記誘導陰極にマイナスの端子を接続し、前記誘導陽極と前記誘導陰極との間に前記誘導電気力線を生じさせ、前記駆動陽極と前記駆動陰極との間に、前記飽和電気二重層形成電圧を生じさせる第1直流電源と、
    前記駆動陽極にプラスの端子を接続し、前記駆動陰極にマイナスの端子を接続し、前記飽和電気二重層が誘導された状態で、前記駆動陽極と前記駆動陰極の間に前記過電圧分の電位差を増加させる、前記第1直流電源とは独立した第2直流電源
    とを更に備えることを特徴とする請求項3に記載の電気分解システム。
  5. 平板状の前記駆動陽極及び前記駆動陰極のそれぞれが、前記電解液を収納する電解槽の底面及び対向する2つの側壁に接し、これにより、前記電解液の一部を密閉して収納する一つの容器をなすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気分解システム。
  6. 電解液中に挿入され、前記電解液中の負イオンを介して酸化反応を行う駆動陽極と、
    該駆動陽極と直接対向し、且つ互いに平行に前記電解液中に挿入され、前記電解液中の正イオンを介して還元反応を行う駆動陰極と、
    前記駆動陽極から前記駆動陰極に向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を前記駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段
    とを備える電気分解ユニットを複数備え、
    それぞれの電気分解ユニットにおいて、前記駆動電気力線と前記誘導電気力線との重畳による前記駆動陽極と前記駆動陰極の間に生じる電位差により、前記酸化反応及び前記還元反応を駆動し、且つ、
    それぞれの電気分解ユニットの前記駆動陽極と前記駆動陰極とからなる駆動電極ペアが、互いに電気的に直列に接続されていることを特徴とする電気分解システム。
  7. それぞれの前記電気分解ユニットにおいて、前記誘導電気力線生成手段が、前記電気分解ユニットを構成する前記駆動電極ペアを挟み、平行に対向して前記電解液中に挿入される誘導陽極及び誘導陰極を備えることを特徴とする請求項6に記載の電気分解システム。
  8. 前記電解液中に挿入され、前記電解液中の負イオンを介して酸化反応を行う駆動陽極、該駆動陽極と直接対向し、且つ互いに平行に前記電解液中に挿入され、前記電解液中の正イオンを介して還元反応を行う駆動陰極からなる駆動電極ペアを複数、電気的に直列接続した多段駆動電極構造と、
    それぞれの前記駆動電極ペアにおいて、前記駆動陽極から前記駆動陰極に向かう駆動電気力線と同一方向の誘導電気力線を前記駆動電気力線に重畳する誘導電気力線生成手段
    とを備え、それぞれの前記駆動電極ペアにおいて、前記駆動電気力線と前記誘導電気力線との重畳による前記駆動陽極と前記駆動陰極の間に生じる電位差により、前記酸化反応及び前記還元反応を開始させることを特徴とする電気分解システム。
  9. 前記誘導電気力線生成手段が、それぞれの前記駆動電極ペアを挟み、平行に対向して前記電解液中に挿入される誘導陽極と誘導陰極とからなる誘導電極ペアを備え、該誘導電極ペアが電気的に並列接続されていることを特徴とする請求項8に記載の電気分解システム。
  10. 互いに隣接する駆動電極ペアのそれぞれの駆動陰極を、前記誘導陰極の1を挟んで互いに対向させ、挟まれた前記誘導陰極の1を前記隣接する駆動電極ペアに共通の誘導陰極としたことを特徴とする請求項9に記載の電気分解システム。
  11. 互いに隣接する駆動電極ペアのそれぞれの駆動陽極を、前記誘導陽極の1を挟んで互いに対向させ、挟まれた前誘導陽極の1を、前記隣接する駆動電極ペアに共通の誘導陽極としたことを特徴とする請求項9又は10に記載の電気分解システム。
  12. 平板状の前記駆動陽極、前記駆動陰極、誘導陽極及び誘導陰極が、それぞれ前記電解液を収納する電解槽の底面に対して垂直に配置されることにより、互いに平行となり、且つ、
    前記駆動陽極、前記駆動陰極、誘導陽極及び誘導陰極のそれぞれが、前記電解槽の底面及び対向する2つの側壁に接し、これにより、前記電解液の一部をそれぞれ密閉して収納する独立した複数の容器をなすことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の電気分解システム。


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