JP2007097438A - 無細胞タンパク質合成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】先端技術である無細胞タンパク質合成を手軽かつ安全に行うためのタンパク質合成操作が容易な無細胞タンパク質合成方法を提供する。
【解決手段】GFP,BFP,CFP,RFP,YFP,EDFP、ECFP、ERFP、EYFP、TMR又はルシフェラーゼのいずれか1のタンパク質の塩基配列をコードする転写鋳型を含有する無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤を用いてタンパク質を合成する。加えて、実質的に動物由来夾雑成分及びウイルスを含有しないRNAポリメラーゼ及び/又はリン酸転移酵素を上記乾燥製剤に使用する。
【選択図】なし

Description

本発明は、無細胞タンパク質合成を簡便に行うことができる無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤、無細胞タンパク質合成用キット、該キットを利用したタンパク質合成方法に関する。さらには、上記タンパク質合成をより安全に行うための、実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないRNAポリメラーゼ、及び実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないリン酸転移酵素に関する。
具体的には、無細胞タンパク質合成用細胞抽出物含有液にタンパク質合成に必要な物質、RNAポリメラーゼ、リン酸転移酵素、転写鋳型等を添加した溶液を凍結乾燥することにより製造される凍結乾燥製剤を用いて、用時タンパク質を合成させる方法に関する。加えて、実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないRNAポリメラーゼ、植物由来の無細胞タンパク質合成系により調製した実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないリン酸転移酵素を上記乾燥製剤に使用する。
細胞内で行われているタンパク質の合成反応は、まず遺伝情報をもつDNAからその情報がmRNAに転写され、そしてリボソームがそのmRNAの情報を翻訳して、タンパク質を合成するという工程で進行している。現在、この細胞内におけるタンパク質合成を試験管等の生体外で行う方法としては、例えばリボソームやその他のタンパク質合成に必要な成分を生物体から抽出し(本明細書中では、これを「無細胞タンパク質合成用細胞抽出物」と称することがある)、これらを用いた試験管内での無細胞タンパク質合成法の研究が盛んに行われている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
これらの無細胞タンパク質合成用細胞抽出物含有液、及び該抽出物含有液に、翻訳鋳型や酵素を除く翻訳反応に必要な成分を添加したタンパク質合成反応液(以下、これを「レディメイド型細胞抽出物含有液」と称することがある)は、常温では不安定であり−80℃以下の超低温でのみ安定な保存が可能であった。しかし、無細胞タンパク質合成系は、翻訳反応の正確性や速度において生細胞に匹敵する性能を保持し、かつ合成タンパク質を複雑な精製工程を実施することなく得ることができる有用な方法である。そのため該合成系をより産業上に適用するため、合成効率の上昇のみならず上記の合成用細胞抽出物含有液やレディメイド型細胞抽出物含有液を安定的に高品質を保持して提供することが必要である。
本発明者らは先にタンパク質合成用細胞抽出物含有液やレディメイド型細胞抽出物含有液を凍結乾燥により製剤化する方法を提案している(特許文献6)が、該製剤は凍結乾燥工程中に溶解等が起こり、その結果該製剤の品質の低下が見られるという問題があった。品質の低下とは、該製剤に水を添加した際、製剤が完全に溶解せず、これを用いたタンパク質合成反応における合成活性も低下するものである。
上記問題を解決するために、イノシトール等の多価アルコールを凍結保存下での安定化のために添加し、さらに潮解性物質の含有量を低下させることで保存性が向上した凍結乾燥製剤がある(特許文献7、特許文献8)。
一方、上記のような無細胞タンパク質合成用細胞抽出物含有液及び無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤を用いた無細胞タンパク質合成用無細胞タンパク質合成方法は、転写鋳型を翻訳鋳型に転写する工程が必要であり、生化学分野の実験技術を持つ技術者のみを対象としており、そのような実験技術を持たない人には無細胞タンパク質合成系によるタンパク質の発現現象を身近に体験することができなかった。しかしながら、最近の理科の実験では、このような生命の現象を積極的に取り入れようと盛んであるが、無細胞タンパク質合成操作の困難性の問題がある。
また、上記無細胞タンパク質合成系に必要なmRNA鋳型の合成には、原核生物(主として大腸菌)で生産されたファージウイルス由来のRNAポリメラーゼが一般的に利用されてきた。しかし、大腸菌で生産されたRNAポリメラーゼには、発現させるタンパク質の翻訳鋳型を分解するRNaseが夾雑している。そのために、翻訳鋳型の合成には、RNase反応を阻害するRNaseインヒビターが必須であった。しかし、RNaseインヒビターは、それ自体が高価であり、大量の無細胞タンパク質合成を行うには問題となっており、さらには市販のRNaseインヒビターは、ヒト胎盤から精製されたものであり、ヒトに感染する可能性のある微生物夾雑成分及び動物由来夾雑成分が夾雑している可能性があった。
さらには、翻訳反応にはATPおよびGTPを多く消費するため、クレアチンカイネースのようなATP生成するリン酸転位酵素が必須であった。従来は、ウサギ筋肉から精製されたクレアチンカイネースを利用していたため、従来の大腸菌で生産されたRNAポリメラーゼ同様に発現させるタンパク質の翻訳鋳型を分解するRNaseが夾雑しており、また、ヒトに感染する可能性のある微生物夾雑成分及び動物由来夾雑成分が夾雑している可能性があった。
これらの事情から、理科の実験のような完全な実験設備がないような環境では、より安全にタンパク質合成を行うために、さらには医薬品の生産の場合には、実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分が除去された無細胞タンパク質合成系が望まれていた。
特開平6−98790号公報 特開平6−225783号公報 特開平7−194号公報 特開平9−291号公報 特開平7−147992号公報 特開2000−316594号公報 特開2002−125693号公報 WO2005/015212 A1
本発明は、先端技術であるタンパク質合成を容易に行うための合成操作が簡便な特に転写操作を必要としない無細胞タンパク質合成方法を可能とする無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤、無細胞タンパク質合成用キットの提供並びに安全にタンパク質合成を行うための実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないRNAポリメラーゼ、リン酸転移酵素を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、無細胞タンパク質合成用細胞抽出物含有液にタンパク質合成に必要な物質、転写鋳型を添加した反応溶液をマイクロタイタープレートのウェル内で凍結乾燥し、該ウェルに溶解液を添加して、保温したところ、ウェル中でタンパク質が合成できることを見出した。さらには、本発明者は、RNAポリメラーゼ及びクレアチンカイネースの遺伝子クローニングを行い、RNAポリメラーゼ及びクレアチンカイネースをコムギ胚芽無細胞タンパク質合成系で発現させることに成功した。さらに、該RNAポリメラーゼ及びリン酸転移酵素では、RNaseが夾雑しておらず、従来使用していた高価なRNaseインヒビターが無細胞タンパク質合成系に不要であることを発見した。
本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
本発明は以下よりなる。
「1.植物由来の無細胞タンパク質合成系により調製した実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないRNAポリメラーゼ。
2.植物由来の無細胞タンパク質合成系により調製した実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないリン酸転移酵素。
3.植物由来の無細胞タンパク質合成系により調製した実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないRNAポリメラーゼ及び植物由来の無細胞タンパク質合成系により調製した実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないリン酸転移酵素を含む無細胞タンパク質合成液であって、RNaseが実質的に夾雑していないことを特徴とする無細胞タンパク質合成用反応液。
4.以下の要素を含み、溶解液添加及び保温によりタンパク質合成が可能となる無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤。
a:胚乳成分及び低分子のタンパク質合成阻害物質が実質的に除去された小麦胚芽抽出物からなる無細胞タンパク質合成用細胞抽出物含有液が、1又は複数の領域に区画された容器のそれぞれ異なるウェルに添加されている、
b:少なくとも、基質、RNAポリメラーゼ、ヌクレオチド、エネルギー源及びリン酸転移酵素を含むタンパク質合成に必要な物質、及び転写鋳型がaに記載のウェルに添加されている、
c:bに記載のウェル中の溶液が凍結乾燥により凍結乾燥剤化されている。
5.cに記載の凍結乾燥剤中の潮解性物質含有量が、該凍結乾燥製剤中のタンパク質1重量部に対して0.01重量部以下である前項4の無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤。
6.転写鋳型が、以下のいずれか1のタンパク質の塩基配列をコードし、かつ該タンパク質の発現が視覚により認識可能となる前項4又は5の無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤。
1)GFP、2)BFP、3)CFP、4)RFP、5)YFP、6)EGFP、7)ECFP、8)ERFP、9)EYFP、10)TMR、11)ルシフェラーゼ
7.RNAポリメラーゼが植物由来の無細胞タンパク質合成系により調製した実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないRNAポリメラーゼであること及びリン酸転移酵素が植物由来の無細胞タンパク質合成系により調製した実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないリン酸転移酵素である前項4−6のいずれか1の無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤。
8.RNaseが実質的に夾雑していないことを特徴とする前項7の無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤。
9.前項4−8のいずれか1の凍結乾燥製剤を含む無細胞タンパク質合成用キット。
10.前項4−8のいずれか1の凍結乾燥製剤を使用する無細胞タンパク質合成方法。
11.前項4−8のいずれか1の凍結乾燥製剤を使用する理科実験教材の用途。」
本発明の転写鋳型を含む無細胞タンパク質合成用反応液を凍結乾燥剤化した無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤によれば、適当な溶解液を添加して溶解し、これを適当な温度で保温するだけで、タンパク質を合成することができる。さらには、実質的に動物由来夾雑成分及び微生物由来夾雑成分を含有しないRNAポリメラーゼ及びリン酸転移酵素を用いることで、より安全にタンパク質合成を行うことができる。加えて、該RNAポリメラーゼ及びリン酸転移酵素を用いれば、高価なRNaseインヒビターを無細胞タンパク質合成系に使用する必要がない。
(1)無細胞タンパク質合成用細胞抽出物含有液の調製
本発明に用いられる無細胞タンパク質合成用細胞抽出物含有液としては、無細胞タンパク質合成系においてタンパク質合成能を有するものであれば良いが、具体的には、大腸菌、植物種子の胚芽、ウサギ網状赤血球等の細胞抽出液等が用いられる。これらは市販のものを用いることもできるし、それ自体既知の方法、具体的には、大腸菌抽出液の場合、Pratt, J. M. et al., Transcription and Translation, Hames, 179-209, B. D. & Higgins, S. J., eds), IRL Press, Oxford (1984)に記載の方法等に準じて調製することもできる。市販のタンパク質合成用細胞抽出液としては、大腸菌由来では、E.coli S30 extract system(Promega社製)やRTS 500 Rapid Translation System(Roche社製)に添付のもの等が挙げられ、ウサギ網状赤血球由来ではRabbit Reticulocyte Lysate Sytem(Promega社製)に添付のもの等、更にコムギ胚芽由来ではPROTEIOSTM(TOYOBO社製)に添付のもの等が挙げられる。このうち、動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分が夾雑しない植物種子の胚芽抽出液の系を用いることが好ましく、植物種子としては、コムギ、オオムギ、イネ、コーン等のイネ科の植物、及びホウレンソウ等の種子が好ましく、特にコムギ種子胚芽抽出液を用いたものが好適である。さらに、抽出液の調製工程において混入した胚乳成分および低分子のタンパク質合成阻害物質が実質的に除去されたコムギ種子胚芽抽出液がより好適である。ここで、無細胞タンパク質合成系とは、細胞内に備わるタンパク質翻訳装置であるリボソーム等を含む成分を生物体から抽出し、この抽出液に転写鋳型又は翻訳鋳型、基質となる核酸、アミノ酸、エネルギー源、各種イオン、緩衝液、及びその他の有効因子を加えて試験管内で行う方法である。このうち、鋳型としてRNA(翻訳鋳型)を用いるもの(これを以下「無細胞翻訳系」と称することがある)と、DNA(転写鋳型)を用い、RNAポリメラーゼ等転写に必要な酵素をさらに添加して反応を行うもの(これを以下「無細胞転写/翻訳系」と称することがある)がある。本発明における無細胞タンパク質合成系は、上記の無細胞翻訳系、無細胞転写/翻訳系のいずれをも含むが、特に転写・翻訳が一体となった無細胞転写/翻訳系を対象とする。
本発明の最適の細胞抽出液は、コムギ胚芽由来の抽出液であり、さらに混入する胚乳成分や胚芽組織細胞中のタンパク質合成阻害をもたらすグルコースなどの代謝物質が実質的に除去された抽出液であるので、これを例にとって原料の調製方法を以下説明する。
通常、胚芽の部分は非常に小さいので胚芽を効率的に取得するためには胚芽以外の部分をできるだけ除去しておくことが好ましい。通常、まずコムギ種子に機械的な力を加えることにより、胚芽、胚乳破砕物、種皮破砕物を含む混合物を得、該混合物から、胚乳破砕物、種皮破砕物等を取り除いて粗胚芽画分(胚芽を主成分とし、胚乳破砕物、種皮破砕物を含む混合物)を得る。種子に加える力は、種子から胚芽を分離することができる程度の強さであればよい。具体的には、公知の粉砕装置を用いて、種子を粉砕することにより、胚芽、胚乳破砕物、種皮破砕物を含む混合物を得る。
種子の粉砕は、通常公知の粉砕装置を用いて行うことができるが、被粉砕物に対して衝撃力を加えるタイプの粉砕装置、例えばピンミル、ハンマーミルを用いることが好ましい。粉砕の程度は、使用する種子胚芽の大きさに応じて適宜選択すればよいが、例えばコムギの場合は、通常、最大長さ4mm以下、好ましくは最大長さ2mm以下の大きさに粉砕する。また、粉砕は乾式で行うのが好ましい。
次いで、得られた種子粉砕物から、通常公知の分級装置、例えば、篩を用いて粗胚芽画分を取得する。例えば、コムギの場合、通常、メッシュサイズ0.5mm〜2.0mm、好ましくは0.7mm〜1.4mmの粗胚芽画分を取得する。さらに、必要に応じて、得られた粗胚芽画分に含まれる種皮、胚乳、ゴミ等を風力、静電気力を利用して除去してもよい。
また、胚芽と種皮、胚乳の比重の違いを利用する方法、例えば重液選別により、粗胚芽画分を得ることもできる。より多くの胚芽を含有する粗胚芽画分を得るために、上記の方法を複数組み合わせてもよい。さらに、得られた粗胚芽画分から、例えば目視や色彩選別機等を用いて胚芽を選別する。
このようにして得られた胚芽画分は、胚乳成分が付着している場合があるため、通常胚芽純化のために更に洗浄処理することが好ましい。洗浄処理としては、通常10℃以下、好ましくは4℃以下に冷却した水または水溶液もしくは界面活性剤を含有する水溶液に胚芽画分を分散・懸濁させ、洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄することが好ましい。また、通常10℃以下、好ましくは4℃以下で、界面活性剤を含有する水溶液に胚芽画分を分散・懸濁させて、洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄することがより好ましい。界面活性剤としては、非イオン性のものが好ましく、非イオン性界面活性剤であるかぎりは、広く利用ができる。具体的には、例えば、好適なものとして、ポリオキシエチレン誘導体であるブリッジ(Brij)、トリトン(Triton)、ノニデットP40(Nonidet)、ツイーン(Tween)等が例示される。なかでも、ノニデットP40(Nonidet)が最適である。これらの非イオン性界面活性剤は、胚乳成分の除去に十分且つ胚芽成分のタンパク質合成活性に悪影響を及ぼさない濃度で使用され得るが、例えば0.5%の濃度で使用することができる。水または水溶液による洗浄処理及び界面活性剤による洗浄処理は、どちらか一方でもよいし、両方実施してもよい。また、これらの洗浄処理は、超音波処理との組み合わせで実施してもよい。
上記のように種子粉砕物から選別し、洗浄して得られた発芽能を有する胚芽を好ましくは抽出溶媒の存在下に細分化した後、得られた胚芽抽出液を分離し、更に精製することにより無細胞タンパク質合成用抽出液を得る。
抽出溶媒としては、緩衝液、カリウムイオン、マグネシウムイオンおよび/またはチオール基の酸化防止剤を含む水溶液を用いることができる。また、必要に応じて、カルシウムイオン、L型アミノ酸等をさらに添加してもよい。例えば、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N'−2−エタンスルホン酸(HEPES)−KOH、酢酸カリウム、酢酸
マグネシウム、L型アミノ酸および/またはジチオスレイトールを含む溶液や、Pattersonらの方法を一部改変した溶液(HEPES−KOH、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、塩化カルシウム、L型アミノ酸および/またはジチオスレイトールを含む溶液)を抽出溶媒として使用することができる。抽出溶媒中の各成分の組成・濃度はそれ自体既知であり、無細胞タンパク質合成用の細胞抽出液の製造に用いられるものを採用すればよい。
必要量の抽出溶媒を胚芽に加え、抽出溶媒の存在下に胚芽を細分化する。抽出溶媒の量は、洗浄前の胚芽1gに対して、通常0.1ミリリットル以上、好ましくは0.5ミリリットル以上、より好ましくは1ミリリットル以上である。抽出溶媒量の上限は特に限定されないが、通常、洗浄前の胚芽1gに対して、10ミリリットル以下、好ましくは5ミリリットル以下である。また、細分化しようとする胚芽は従来のように凍結させたものを用いてもよいが、凍結させていないものを用いるのがより好ましい。
次いで、胚芽抽出液について2〜4万G、好ましくは2.5〜3.5万G、さらに好ましくは3万Gの遠心分離を行い、遠心上清を取得する。この際、沈殿助剤として無機担体をいれておくことは沈殿物と上清との分離のためにより好ましい。この沈殿物中には、グリコシダーゼなどの酵素とカルシウムの複合体が含まれている。グリコシダーゼをあらかじめ除いておくことは、澱粉からグルコースの生成を最小限に抑えることに役立つ。好適な無機担体としては、ベントナイト、活性炭素、シリカゲル、海砂等が例示される。この無機担体の導入により、沈殿物が上清へ混入することをほぼ完全に防ぐことが出来る。沈殿助剤を遠心時に加えない場合は、沈殿物の上部に不溶性スラリーが存在し、これが混入したS-30画分から調製した抽出液のタンパク質合成活性は低くなる。そこで、遠心後の遠心管からのS-30画分の回収に当たっては混入を避けるために細心の注意が必要となる。
コムギ胚芽抽出液は、ゲルろ過等によりさらに精製することができる。ゲルろ過は、例えば予め適当な溶液で平衡化しておいたゲルろ過装置を用いて行うことができる。ゲルろ過溶液中の各成分の組成・濃度はそれ自体既知であり、無細胞タンパク合成用の細胞胚芽抽出液の製造に用いられるもの(例えば、HEPES−KOH、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、ジチオスレイトールまたはL型アミノ酸を含む溶媒)を採用すればよい。
このようにして得られた胚芽細胞抽出物は、RNase活性及びホスファターゼ活性が極めて低減されたものである。
ゲルろ過後の胚芽抽出物含有液には、微生物あるいは糸状菌(カビ)などの胞子が混入していることがあるためこれら微生物などを排除しておくことが好ましい。特に長期(1日以上)の無細胞タンパク質合成反応中に微生物の繁殖が見られることがあるので、これを阻止することは重要である。微生物の排除手段は特に限定されないが、ろ過滅菌フィルターを用いるのが好ましい。フィルターのポアサイズとしては、混入の可能性のある微生物が除去可能なものであれば特に制限はないが、通常0.1〜1マイクロメーター、好ましくは0.2〜0.5マイクロメーターが適当である。ちなみに、枯草菌の胞子のサイズは0.5μmx1μmであることから、0.20マイクロメーターのフィルター(例えばSartorius製のMinisartTM等)を用いるのが胞子の除去にも有効である。ろ過に際して、まずポアサイズの大きめのフィルターでろ過し、次に混入の可能性のある微生物が除去可能であるポアサイズのフィルターを用いてろ過するのが好ましい。
このようにして得られた細胞抽出液は、原料であるコムギ自身が含有または保持するタンパク質合成機能を抑制する物質(各種RNA、翻訳タンパク質因子やリボソーム等に作用してその機能を抑制する物質。例えば各種リボヌクレアーゼ、各種プロテアーゼ、トリチン、チオニン等)が、ほぼ完全に取り除かれている。すなわち、これらの阻害物質が局在する胚乳がほぼ完全に取り除かれ純化されている。胚乳の除去の程度は、コムギ胚芽抽出液中に夾雑するトリチンの活性、すなわちリボソームを脱アデニン化する活性をモニターすることにより評価できる。リボソームが実質的に脱アデニン化されていなければ、胚芽抽出液中に夾雑する胚乳由来成分がない、すなわち胚乳がほぼ完全に取り除かれ純化されていると判断される。リボソームが実質的に脱アデニン化されていない程度とは、リボソームの脱アデニン化率が7%以下、好ましくは1%以下になっていることをいう。
このような胚芽抽出液を原料にして、さらに「胚芽組織細胞内因性の解糖系などの代謝経路や翻訳反応制御機構の排除」のために糖、リン酸化糖、糖のリン酸化酵素、糖分解酵素等を低減した無細胞タンパク質合成用の細胞抽出液調製のための処理を行うこともできる。処理工程の概要は以下である。得られた細胞抽出液、あるいはこの抽出液について、ゲルろ過による溶液の交換あるいは必要成分の添加などにより翻訳反応液としたものを、分子量10kDaカットで分子量分画し、低分子画分を排除する。あるいは、分子量10kDa以上の物質を分子量分画し、回収することも可能である。この分画処理は複数回行い、特に分子量10kDa以下の物質を実質的に除去することが好ましい。複数回の具体的回数としては、1〜10回、好ましくは2〜9回、さらに好ましくは3〜8回、最も好ましいくは4〜7回である。このように調製された細胞抽出液は、実質的に糖、リン酸化糖が1mM以下まで低減されていた(260nmにおける吸光度200 OD/mlの抽出液中のグルコース濃度として)。かくして得られたグルコース濃度が低減された抽出液は、極めて高い無細胞タンパク質合成能を保有する。
上記胚芽抽出物は、細胞抽出物含有液由来および必要に応じて別途添加されるタンパク質を含有する。その含有量は、特に限定されないが、凍結乾燥状態での保存安定性、使い易さ等の点から、凍結乾燥前の組成物おいて、当該組成物全体の好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2.5〜5重量%であり、また、凍結乾燥後の凍結乾燥組成物において、当該凍結乾燥組成物全体の好ましくは10〜90重量%、より好ましくは25〜70重量%である。なお、ここでいうタンパク質含有量は、吸光度(260,280,320 nm)を測定することにより算出されるものである。
細胞抽出物含有液からの潮解性物質の低減化
上記細胞抽出物含有液は、抽出溶媒、あるいは抽出した後に行うゲルろ過に用いる緩衝液などが酢酸カリウム、酢酸マグネシウムなどの潮解性物質を含んでいる。このため、該細胞抽出物含有液を使い反応溶液を調製し、そのまま乾燥製剤とした場合、凍結乾燥工程において溶解等が起こり、その結果該製剤の品質の低下が見られるという問題がある。品質の低下とは、該製剤に水を添加した際、製剤が完全に溶解せず、これを用いたタンパク質合成反応における合成活性も低下するものである。
そこで、該細胞抽出物含有液に含まれる潮解性物質の濃度を凍結乾燥した後に製剤の品質に影響を及ぼさない程度に低減する。潮解性物質の具体的な低減方法としては、例えば、予め潮解性物質を低減、または含まない溶液で平衡化しておいたゲル担体を用いたゲルろ過法、あるいは透析法等が挙げられる。このような方法により最終的に調製される反応溶液中の潮解性物質の終濃度として60mM以下となるまで低減する。具体的には、コムギ胚芽抽出物含有液を用いる場合、最終的に調製される反応溶液中に含まれる酢酸カリウムの濃度を60mM以下、好ましくは50mM以下に低減する。
そして、さらに凍結乾燥処理された製剤における、潮解性を示す物質(潮解性物質)は、凍結乾燥状態での保存安定性を低下させない含有量は、当該凍結乾燥製剤中に含有されるタンパク質1重量部に対して、0.01重量部以下が好ましく、特に0.005重量部以下が好ましい。
潮解性物質の低減は、細胞抽出物含有液を調製した後に行ってもよいし、細胞抽出物含有液の調製に至るいずれかの工程において行うこともできる。
さらに、細胞抽出物含有液の調製工程の何れかの段階において低分子合成阻害物質の除去工程、および/または還元剤濃度の低減工程を加えることにより特定の効果を有する無細胞タンパク質合成を行うための細胞抽出物含有液とすることができる。
細胞抽出物含有液から低分子合成阻害物質の除去方法
細胞抽出物含有液は、タンパク質合成阻害活性を有する低分子の合成阻害物質(以下、これを「低分子合成阻害物質」と称することがある)を含んでおり、これらを取り除くことにより、タンパク質合成活性の高い細胞抽出物含有液を取得することができる。具体的には、細胞抽出物含有液の構成成分から、低分子合成阻害物質を分子量の違いにより分画除去する。低分子合成阻害物質は、細胞抽出物含有液中に含まれるタンパク質合成に必要な因子のうち最も小さいもの以下の分子量を有する分子として分画することができる。具体的には、分子量50,000〜14,000以下、好ましくは14,000以下のものとして分画、除去し得る。
低分子合成阻害物質の細胞抽出物含有液からの除去方法としては、それ自体既知の通常用いられる方法が用いられるが、具体的には、透析膜を介した透析による方法、ゲルろ過法、あるいは限外ろ過法等が挙げられる。このうち、透析による方法が、透析内液に対しての物質の供給のし易さ等の点において好ましい。
透析による低分子合成阻害物質の除去操作に用いる透析膜としては、50,000〜12,000の除去分子量を有するものが挙げられる、具体的には除去分子量12,000〜14,000の再生セルロース膜(ViskaseSales,Chicago製)や、除去分子量50,000のスペクトラ/ポア6(SPECTRUM LABOTRATORIES INC.,CA,USA製)等が好ましく用いられる。このような透析膜中に適当な量の細胞抽出物含有液等を入れ常法を用いて透析を行う。透析を行う時間は、30分〜24時間程度が好ましい。
低分子合成阻害物質の除去を行う際、細胞抽出物含有液に不溶性成分が生成される場合には、この生成を阻害する(以下、これを「細胞抽出物含有液の安定化」と称することがある)ことにより、最終的に得られる細胞抽出物含有液あるいは反応溶液のタンパク質合成活性を高めることができる。細胞抽出物含有液あるいは反応溶液の安定化の具体的な方法としては、上述した低分子合成阻害物質の除去を行う際に、細胞抽出物含有液あるいは反応溶液を、少なくとも高エネルギーリン酸化合物、例えばATPまたはGTP等(以下、これを「安定化成分」と称することがある)を含む溶液として行う方法が挙げられる。高エネルギーリン酸化合物としては、ATPが好ましく用いられる。また、好ましくは、ATPとGTP、さらに好ましくはATP、GTP、及び20種類のアミノ酸を含む溶液中で行う。
これらの成分は、予め安定化成分を添加し、インキュベートした後、これを低分子阻害物質の除去工程に供してもよいし、低分子合成阻害物質の除去に透析法を用いる場合には、透析外液にも安定化成分を添加して透析を行って低分子合成阻害物質の除去を行うこともできる。透析外液にも安定化成分を添加しておけば、透析中に安定化成分が分解されても常に新しい安定化成分が供給されるのでより好ましい。このことは、ゲルろ過法や限外ろ過法を用いる場合にも適用でき、それぞれの担体を安定化成分を含むろ過用緩衝液により平衡化した後に、安定化成分を含む細胞抽出物含有液あるいは翻訳反応溶液を供し、さらに上記緩衝液を添加しながらろ過を行うことにより同様の効果を得ることができる。
安定化成分の添加量、及び安定化処理時間としては、細胞抽出物含有液の種類や調製方法により適宜選択することができる。これらの選択の方法としては、試験的に量及び種類をふった安定化成分を細胞抽出物含有液に添加し、適当な時間の後に低分子阻害物質の除去工程を行い、取得された処理後細胞抽出物含有液を遠心分離等の方法で可溶化成分と不溶化成分に分離し、そのうちの不溶性成分が少ないものを選択する方法が挙げられる。さらには、取得された処理後細胞抽出物含有液を用いて無細胞タンパク質合成を行い、タンパク質合成活性の高いものを選択する方法も好ましい。また、上述の選択方法において、細胞抽出物含有液と透析法を用いる場合、適当な安定化成分を透析外液にも添加し、これらを用いて透析を適当時間行った後、得られた細胞抽出物含有液中の不溶性成分量や、得られた細胞抽出物含有液のタンパク質合成活性等により選択する方法も挙げられる。
このようにして選択された細胞抽出物含有液の安定化条件の例として、具体的には、透析法により低分子合成阻害物質の除去工程を行う場合においては、そのコムギ胚芽抽出物含有液、及び透析外液中に、ATPとしては100μM〜0.5mM、GTPは25μM〜1mM、20種類のアミノ酸としてはそれぞれ25μM〜5mM添加して30分〜1時間以上の透析を行う方法等が挙げられる。透析を行う場合の温度は、細胞抽出物含有液のタンパク質合成活性が失われず、かつ透析が可能な温度であれば如何なるものであってもよい。具体的には、最低温度としては、溶液が凍結しない温度で、通常−10℃、好ましくは−5℃、最高温度としては透析に用いられる溶液に悪影響を与えない温度の限界である40℃、好ましくは38℃である。
また、低分子合成阻害物質の除去を細胞抽出物含有液として調製した後に行えば、上記安定化成分を細胞抽出物含有液にさらに添加する必要はない。
細胞抽出物含有液の還元剤濃度の低減方法
細胞抽出物含有液に含まれる還元剤の濃度を低減させて無細胞タンパク質合成を行うことによれば、特定タンパク質の分子内に存在するジスルフィド結合が形成された状態でタンパク質を取得することができる。細胞抽出物含有液中の還元剤の低減方法としては、細胞抽出物含有液を調製するに至る工程の何れかにおいて還元剤低減工程を行う方法が用いられる。還元剤は、最終的に調製される細胞抽出物含有液中の濃度として、該細胞抽出物含有液を用いた翻訳反応においてタンパク質が合成され得て、かつ分子内ジスルフィド結合が形成、保持され得る濃度に低減される。具体的な還元剤の濃度としては、ジチオスレイトール(以下、これを「DTT」と称することがある)の場合、細胞抽出物含有液から調製された最終的な翻訳反応溶液中の終濃度が、20〜70μM、好ましくは30〜50μMに低減される。また、2−メルカプトエタノールの場合には、翻訳反応溶液中の最終濃度が、0.1〜0.2mMに低減される。さらに、グルタチオン/酸化型グルタチオンの場合には、翻訳反応溶液中の最終の濃度が30〜50μM/1〜5μMとなるように低減される。上述した具体的な還元剤の濃度は、これら限定されるものではなく、合成しようとするタンパク質、あるいは用いる無細胞タンパク質合成系の種類により適宜変更することができる。
具体的な還元剤の低減方法としては、還元剤を含まない細胞抽出物含有液を調製し、これに無細胞タンパク質合成系に必要な成分とともに、上記の濃度範囲となるように還元剤を添加する方法や、細胞抽出物含有液由来の翻訳反応溶液から上記の濃度範囲となるように還元剤を除去する方法等が用いられる。無細胞タンパク質合成用細胞抽出物含有液はこれを抽出する際に高度の還元条件を必要とするため、抽出後にこの溶液から還元剤を取り除く方法がより簡便である。細胞抽出物含有液から還元剤を取り除く方法としては、ゲルろ過用担体を用いる方法等が挙げられる。具体的には、例えば、セファデックスG−25カラムを予め還元剤を含まない適当な緩衝液で平衡化してから、これに細胞抽出物含有液を通す方法等が挙げられる。
転写/翻訳系の反応溶液の調製
以上のように調製された細胞抽出物含有液は、これにタンパク質合成に必要な核酸分解酵素阻害剤、各種イオン、基質、リン酸転移酵素、エネルギー源等(以下、これらを「反応溶液添加物」と称することがある)、RNAポリメラーゼ、ヌクレオチド及びタンパク質をコードする転写鋳型又は翻訳鋳型、加えて所望によりイノシトール、トレハロース、マンニトールおよびスクロースーエピクロロヒドリン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含有する安定化剤を添加して反応溶液を調製する。各成分の添加濃度は、自体公知の配合比で達成可能である。
反応溶液添加物として、具体的には、基質となるアミノ酸、エネルギー源、各種イオン、緩衝液、ATP再生系(リン酸転移酵素)、核酸分解酵素阻害剤、tRNA、還元剤、ポリエチレングリコール、3',5'−cAMP、葉酸塩、抗菌剤等が挙げられる。また、それぞれ濃度は、ATPとしては100μM〜0.5mM、GTPは25μM〜1mM、20種類のアミノ酸としてはそれぞれ25μM〜5mM含まれるように添加することが好ましい。これらは、反応系に応じて適宜選択して組み合わせて用いることができる。具体的には、細胞抽出物含有液としてコムギ胚芽抽出液を用いた場合には、20mMHEPES-KOH(pH7.6)、100mM酢酸カリウム、2.65mM酢酸マグネシウム、0.380mMスペルミジン(ナカライ・テスク社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、1U/μl RNaseinhibiter、0.5μg/lクレアチンキナーゼ(Roche社製)を加え、十分溶解した後に、転写鋳型を入れたもの等が例示される。また、本発明のRNAポリメラーゼ及びクレアチンカイネースを使用すれば、無細胞タンパク質合成系にRNaseインヒビターを用いる必要がない。
ここで、転写鋳型は、塩基配列のPCR産物又はコードする塩基配列を導入したベクターであってよいが、無細胞タンパク質合成系において合成され得るタンパク質をコードするものが、適当なRNAポリメラーゼが認識する配列と、さらに翻訳を活性化する機能を有する配列の下流に連結された構造を有していれば如何なるものであってもよい。RNAポリメラーゼが認識する配列とは、T3またはT7RNAポリメラーゼプロモーター等が挙げられる。また、無細胞タンパク質合成系において翻訳活性を高める配列としてΩ配列等をコーディング配列の5'上流側に連結させた構造を有するものが好ましく用いられる。また、合成され得るタンパク質をコードする塩基配列は、好適には、発現された時に、視覚で認識可能な配列であればよい。具体的には、例えば、GFP(Green Fluorescent Protein)、BFP(Blue Fluorescent Protein)、CFP(Cyan Fluorescent Protein)、RFP(Red Fluorescent Protein)、YFP(Yellow Fluorescent Protein)、EGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein)、ECFP(Enhanced Cyan Fluorescent Protein)、ERFP(Enhanced Red Fluorescent Protein)、EYFP(Enhanced Yellow Fluorescent Protein)、TMR(TetraMethyl−Rhodamine)、ルシフェラーゼ等があるが特に限定されない。
転写・翻訳一体型無細胞タンパク質合成方法
従来の転写・翻訳一体型無細胞タンパク質合成方法は、まず転写工程を行い、転写反応が終了した後に、翻訳反応に適したマグネシウム濃度に調整する溶液を添加して翻訳工程を行い、タンパク質を合成していた(参照:WO 01/07260)。しかし、本発明の転写・翻訳一体型無細胞タンパク質合成方法では、最初に添加液又は水(MillQ)を添加して保温するのみでタンパク質合成を行うことができる。なお、添加液の組成としては、 HEPES−KOH(pH7.8)、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、スペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各L型アミノ酸20種類、ジチオスレイトール、ATP(和光純薬社製)、GTP(和光純薬社製)、クレアチンリン酸(和光純薬社製)等であるがこれに限定されない。また、本発明のRNAポリメラーゼ及びクレアチンカイネースを使用すれば、無細胞タンパク質合成系にRNaseインヒビターを用いる必要がない。
凍結乾燥方法
凍結乾燥の方法は、それ自体既知の通常用いられる方法から適宜選択することができるが、具体的には、例えば、液体窒素により急速に凍結させ、真空ポンプ等により減圧させた後、容器の温度を徐々に上昇させることにより行うことができる。通常は、市販の凍結乾燥機が用いられる。凍結乾燥温度及び時間等は、用いる凍結乾燥機の使用方法に準じることが好ましい。このようにして除水が完成して得られる本発明の凍結乾燥製剤は室温で非常に安定であり、かつこれに水などを添加した細胞抽出物含有液は超低温により保存した場合と遜色のないタンパク質合成活性を有するものである。また、保存容器中の空気を窒素ガスに置換することは、該製剤の保存方法としてさらに好適である。本発明で細胞抽出液の凍結乾燥前調製時の濃度は、0.1〜100mg/mlの濃度に調整されることが好ましく、より最適には1〜50mg/mlに調整される。凍結乾燥は、充填評品を凍乾庫内に入庫し、静置する。次に、凍乾機内を-30℃以下に冷却し充填品を凍結させる。凍結後、凍乾庫内を減圧し、充填品が融解しない温度まで上昇させて水分を昇華させて一次凍乾を行う。その後、凍乾機内を上昇させて付着水を除去することにより二次乾燥を行う。
容器は、一つの領域又は複数の領域に区画されており、それらの区画に投入した上記異なる転写鋳型を含む反応溶液が混ざり合わないものであれば特に制限はない、区画の数も特に制限はないが、10〜2000の範囲であれば良く、特に好ましくは、48個、96個、384個、1536個等規格にそった数が挙げられる。容器の材質は、特に制限はなく、市販のマイクロタイタープレート等が好ましく用いられる。
無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤の作製方法
本発明の無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤は少なくとも以下の要素を含むことによって作製できる。
a:無細胞タンパク質合成用細胞抽出物含有液をピペットマン等及び/又は自動分注器のチャンネルピペッターにより単数又は複数の領域に区画された容器のそれぞれ異なるウェルに、該ウェルの容量に適した無細胞タンパク質合成用細胞抽出物含有液を添加する。
b:タンパク質合成に必要な物質、RNAポリメラーゼ、転写鋳型及び安定化剤を含む溶液をaに記載の各ウェルにピペットマン等及び/又は自動分注器のチャンネルピペッターにより必要量添加する。
c:bで調製されたウェル中の溶液を上記凍結乾燥方法により凍結乾燥剤化する。
また、所望により以下の処理が施された成分を用いることが可能である。
凍結乾燥製剤中の潮解性物質の低減化がなされた成分。
無細胞タンパク質合成用細胞抽出物が低分子のタンパク質合成阻害物質の除去処理がされている、及び/又は還元剤濃度の低減化処理がされている。
無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤を用いたタンパク質の合成方法
上記調製された無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤は、前記で低減した潮解性物質及び水をタンパク質合成反応に適した濃度になるように調整した溶解液又は水のみで構成される溶解液を各ウェル中に添加し、乾燥製剤を溶解し、続いて、保温することによりタンパク質合成を行うことができる。
なお、具体的な溶解液の組成は、HEPES−KOH(pH7.8)、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、スペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各L型アミノ酸20種類、ジチオスレイトール、ATP(和光純薬社製)、GTP(和光純薬社製)、クレアチンリン酸(和光純薬社製)のいずれか1以上を含むことが好適である。さらには、酢酸マグネシウムの最終濃度が11nM-12nMの範囲に調整できる溶解液が好ましい。しかしながら、予め乾燥製剤中に上記溶解液の成分を含ませることにより、乾燥製剤に水のみで構成される溶解液を添加することにより、タンパク質合成を行うこともできる。
なお、保温する温度は、15〜35度、好ましくは20〜30度、より好ましくは23〜27度の範囲である。さらに、発現したタンパク質が、蛍光タンパク質の場合には、目視又は蛍光顕微鏡でウェル内の蛍光を確認することで、タンパク質の発現を確認することができる。このように、本発明の無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤を用いれば、発現したタンパク質の確認を通常の理科の実験室にある設備で容易に確認することができる。さらには、以下で述べる動物由来夾雑成分及び微生物由来夾雑成分が夾雑していないRNAポリメラーゼ、リン酸転移酵素をタンパク質合成系に使用すれば、より安全にさらに安価にタンパク質合成を行うことができる。
RNAポリメラーゼについて
転写反応はRNAポリメラーゼと呼ばれる一群のDNA(もしくはRNA)を鋳型にヌクレオチドをつなげることに相補的なmRNAを合成していくタンパク質によって引き起こされる。一般的な原核生物もしくは真核生物では、RNAポリメラーゼは、プロモーターやTATAボックスや転写開始部位から構成されるプロモーターと呼ばれる転写制御領域の特定の塩基配列を有するDNAに結合した基本転写開始因子タンパク質群が、RNAポリメラーゼをリクルートすることにより種々の転写因子が集合した転写複合体を形成して、mRNAの合成を開始する。これに対して、ウイルス由来RNAポリメラーゼは数十塩基からなるプロモーター配列を直接認識し、他の因子に依存せずプロモーターDNA配列およびRNAポリメラーゼの2種類のみでmRNAの合成を行えることを特徴としている。そのため、無細胞系などの再構築系において、容易にmRNA合成系を構築できることから有用である。
なお、本発明に用いたRNAポリメラーゼ(SP6)の核酸配列及びアミノ酸配列は、以下の通りである。
核酸配列(配列番号1)
ATGCAGGACTTGCACGCCATCCAGTTGCAGTTGGAGGAGGAGATGTTCAACGGCGGCATCCGCCGCTTCGAGGCCGACCAGCAGCGCCAGATCGCCGCCGGCTCCGAGTCCGACACCGCCTGGAACCGCCGCTTGTTGTCCGAGTTGATCGCCCCCATGGCCGAGGGCATCCAGGCCTACAAGGAGGAGTACGAGGGCAAGAAGGGCCGCGCCCCCCGCGCCTTGGCCTTCTTGCAGTGCGTCGAGAACGAGGTCGCCGCCTACATCACCATGAAGGTCGTCATGGACATGTTGAACACCGACGCCACCTTGCAGGCCATCGCCATGTCCGTCGCCGAGCGCATCGAGGACCAGGTCCGCTTCTCCAAGTTGGAGGGCCACGCCGCCAAGTACTTCGAGAAGGTCAAGAAGTCCTTGAAGGCCTCCCGCACCAAGTCCTACCGCCACGCCCACAACGTCGCCGTCGTCGCCGAGAAGTCCGTCGCCGAGAAGGACGCCGACTTCGACCGCTGGGAGGCCTGGCCCAAGGAGACCCAGTTGCAGATCGGCACCACCTTGTTGGAGATCTTGGAGGGCTCCGTCTTCTACAACGGCGAGCCCGTCTTCATGCGCGCCATGCGCACCTACGGCGGCAAGACCATCTACTACTTGCAGACCTCCGAGTCCGTCGGCCAGTGGATCTCCGCCTTCAAGGAGCACGTCGCCCAGTTGTCCCCCGCCTACGCCCCCTGCGTCATCCCCCCCCGCCCCTGGCGCACCCCCTTCAACGGCGGCTTCCACACCGAGAAGGTCGCCTCCCGCATCCGCTTGGTCAAGGGCAACCGCGAGCACGTCCGCAAGTTGACCCAGAAGCAGATGCCCAAGGTCTACAAGGCCATCAACGCCTTGCAGAACACCCAGTGGCAGATCAACAAGGACGTCTTGGCCGTCATCGAGGAGGTCATCCGCTTGGACTTGGGCTACGGCGTCCCCTCCTTCAAGCCCTTGATCGACAAGGAGAACAAGCCCGCCAACCCCGTCCCCGTCGAGTTCCAGCACTTGCGAGGCCGCGAGTTGAAGGAGATGTTGTCCCCCGAGCAGTGGCAGCAGTTCATCAACTGGAAGGGCGAGTGCGCCCGCTTGTACACCGCCGAGACCAAGCGCGGCTCCAAGTCCGCCGCCGTCGTCCGCATGGTCGGCCAGGCCCGCAAGTACTCCGCCTTCGAGTCCATCTACTTCGTCTACGCCATGGACTCCCGCTCCCGCGTCTACGTCCAGTCCTCCACCTTGTCCCCCCAGTCCAACGACTTGGGCAAGGCCTTGTTGCGCTTCACCGAGGGCCGCCCCGTCAACGGCGTCGAGGCCTTGAAGTGGTTCTGCATCAACGGCGCCAACTTGTGGGGCTGGGACAAGAAGACCTTCGACGTCCGCGTCTCCAACGTCTTGGACGAGGAGTTCCAGGACATGTGCCGCGACATCGCCGCCGACCCCTTGACCTTCACCCAGTGGGCCAAGGCCGACGCCCCCTACGAGTTCTTGGCCTGGTGCTTCGAGTACGCCCAGTACTTGGACTTGGTCGACGAGGGCCGCGCCGACGAGTTCCGCACCCACTTGCCCGTCCACCAGGACGGCTCCTGCTCCGGCATCCAGCACTACTCCGCCATGTTGCGCGACGAGGTCGGCGCCAAGGCCGTCAACTTGAAGCCCTCCGACGCCCCCCAGGACATCTACGGCGCCGTCGCCCAGGTCGTCATCAAGAAGAACGCCTTGTACATGGACGCCGACGACGCCACCACCTTCACCTCCGGCTCCGTCACCTTGTCCGGCACCGAGTTGCGCGCCATGGCCTCCGCCTGGGACTCCATCGGCATCACCCGCTCCTTGACCAAGAAGCCCGTCATGACCTTGCCCTACGGCTCCACCCGCTTGACCTGCCGCGAGTCCGTCATCGACTACATCGTCGACTTGGAGGAGAAGGAGGCCCAGAAGGCAGTCGCCGAGGGCCGCACCGCCAACAAGGTCCACCCCTTCGAGGACGACCGCCAGGACTACTTGACCCCCGGCGCCGCCTACAACTACATGACCGCCTTGATCTGGCCCTCCATCTCCGAGGTCGTCAAGGCCCCCATCGTCGCCATGAAGATGATCCGCCAGTTGGCCCGCTTCGCCGCCAAGCGCAACGAGGGCTTGATGTACACCTTGCCCACCGGCTTCATCTTGGAGCAGAAGATCATGGCCACCGAGATGTTGCGCGTCCGCACCTGCTTGATGGGCGACATCAAGATGTCCTTGCAGGTCGAGACCGACATCGTCGACGAGGCCGCCATGATGGGCGCCGCCGCCCCCAACTTCGTCCACGGCCACGACGCCTCCCACTTGATCTTGACCGTCTGCGAGTTGGTCGACAAGGGCGTCACCTCCATCGCCGTCATCCACGACTCCTTCGGCACCCACGCCGACAACACCTTGACCTTGCGCGTCGCCTTGAAGGGCCAGATGGTCGCCATGTACATCGACGGCAACGCCTTGCAGAAGTTGTTGGAGGAGCACGAGGTCCGCTGGATGGTCGACACCGGCATCGAGGTCCCCGAGCAGGGCGAGTTCGACTTGAACGAGATCATGGACTCCGAGTACGTCTTCGCCTAA
アミノ酸配列(配列番号2)
MQDLHAIQLQLEEEMFNGGIRRFEADQQRQIAAGSESDTAWNRRLLSELIAPMAEGIQAYKEEYEGKKGRAPRALAFLQCVENEVAAYITMKVVMDMLNTDATLQAIAMSVAERIEDQVRFSKLEGHAAKYFEKVKKSLKASRTKSYRHAHNVAVVAEKSVAEKDADFDRWEAWPKETQLQIGTTLLEILEGSVFYNGEPVFMRAMRTYGGKTIYYLQTSESVGQWISAFKEHVAQLSPAYAPCVIPPRPWRTPFNGGFHTEKVASRIRLVKGNREHVRKLTQKQMPKVYKAINALQNTQWQINKDVLAVIEEVIRLDLGYGVPSFKPLIDKENKPANPVPVEFQHLRGRELKEMLSPEQWQQFINWKGECARLYTAETKRGSKSAAVVRMVGQARKYSAFESIYFVYAMDSRSRVYVQSSTLSPQSNDLGKALLRFTEGRPVNGVEALKWFCINGANLWGWDKKTFDVRVSNVLDEEFQDMCRDIAADPLTFTQWAKADAPYEFLAWCFEYAQYLDLVDEGRADEFRTHLPVHQDGSCSGIQHYSAMLRDEVGAKAVNLKPSDAPQDIYGAVAQVVIKKNALYMDADDATTFTSGSVTLSGTELRAMASAWDSIGITRSLTKKPVMTLPYGSTRLTCRESVIDYIVDLEEKEAQKAVAEGRTANKVHPFEDDRQDYLTPGAAYNYMTALIWPSISEVVKAPIVAMKMIRQLARFAAKRNEGLMYTLPTGFILEQKIMATEMLRVRTCLMGDIKMSLQVETDIVDEAAMMGAAAPNFVHGHDASHLILTVCELVDKGVTSIAVIHDSFGTHADNTLTLRVALKGQMVAMYIDGNALQKLLEEHEVRWMVDTGIEVPEQGEFDLNEIMDSEYVFA
リン酸転移酵素について
クレアチンカイネースに代表されるリン酸転移酵素は、一般に高エネルギーリン酸化合物からのリン酸転移反応は大きな負の自由エネルギー変化を伴うため不可逆変化として進行しやすく、その結果生じる化合物もまた高エネルギーリン酸化合物である場合もある。ほとんどすべてのキナーゼは2価の金属イオン(Mg2+、Mn2+など)を要し、それによりドナー分子の末端リン酸基の転移を容易にする。リン酸転移酵素には様々なタイプがあるが、大きくは低分子化合物を基質とし代謝経路で機能するタイプと、タンパク質を基質としてその機能の調節を行う細胞内シグナル伝達経路で機能するタイプの2つに分けられる。反応により生成したADPやGDPを基質に、翻訳に必要なATPやGTPを効率良く合成するために用いられるのは、前者のタイプである。また、酵素の種類によりリン酸供与体はリン酸基をもつ様々な化合物が利用されるが、クレアチンリン酸は翻訳反応時のATP合成に利用されている。
なお、本発明に用いたクレアチンカイネース(ウサギ筋肉由来)の核酸配列及びアミノ酸配列は、以下の通りである。
核酸配列(配列番号3)
ATGCCCTTCGGCAACACCCACAACAAGTACAAGTTGAACTACAAGTCCGAGGAGGAGTACCCCGACTTGTCCAAGCACAACAACCACATGGCCAAGGTCTTGACCCCCGACTTGTACAAGAAGTTGCGCGACAAGGAGACCCCCTCCGGCTTCACCTTGGACGACGTCATCCAGACCGGCGTCGACAACCCCGGCCACCCCTTCATCATGACCGTCGGCTGCGTCGCCGGCGACGAGGAGTCCTACACCGTCTTCAAGGACTTGTTCGACCCCATCATCCAGGACCGCCACGGCGGCTTCAAGCCCACCGACAAGCACAAGACCGACTTGAACCACGAGAACTTGAAGGGCGGCGACGACTTGGACCCCCACTACGTCTTGTCCTCCCGCGTCCGCACCGGCCGCTCCATCAAGGGCTACACCTTGCCCCCCCACTGCTCCCGCGGCGAGCGCCGCGCCGTCGAGAAGTTGTCCGTCGAGGCCTTGAACTCCTTGACCGGCGAGTTCAAGGGCAAGTACTACCCCTTGAAGTCCATGACCGAGCAGGAGCAGCAGCAGTTGATCGACGACCACTTCTTGTTCGACAAGCCCGTCTCCCCCTTGTTGTTGGCCTCCGGCATGGCCCGCGACTGGCCCGACGCCCGCGGCATCTGGCACAACGACAACAAGTCCTTCTTGGTCTGGGTCAACGAGGAGGACCACTTGCGCGTCATCTCCATGGAGAAGGGCGGCAACATGAAGGAGGTCTTCCGCCGCTTCTGCGTCGGCTTGCAGAAGATCGAGGAGATCTTCAAGAAGGCCGGCCACCCCTTCATGTGGAACGAGCACTTGGGCTACGTCTTGACCTGCCCCTCCAACTTGGGCACCGGCTTGCGCGGCGGCGTCCACGTCAAGTTGGCCCACTTGTCCAAGCACCCCAAGTTCGAGGAGATCTTGACCCGCTTGCGCTTGCAGAAGCGCGGCACCGGCGGCGTCGACACCGCCGCCGTCGGCTCCGTCTTCGACATCTCCAACGCCGACCGCTTGGGCTCCTCCGAGGTCGAGCAGGTCCAGTTGGTCGTCGACGGCGTCAAGTTGATGGTCGAGATGGAGAAGAAGTTGGAGAAGGGCCAGTCCATCGACGACATGATCCCCGCCCAGAAGTAA
アミノ酸配列(配列番号4)
MPFGNTHNKYKLNYKSEEEYPDLSKHNNHMAKVLTPDLYKKLRDKETPSGFTLDDVIQTGVDNPGHPFIMTVGCVAGDEESYTVFKDLFDPIIQDRHGGFKPTDKHKTDLNHENLKGGDDLDPHYVLSSRVRTGRSIKGYTLPPHCSRGERRAVEKLSVEALNSLTGEFKGKYYPLKSMTEQEQQQLIDDHFLFDKPVSPLLLASGMARDWPDARGIWHNDNKSFLVWVNEEDHLRVISMEKGGNMKEVFRRFCVGLQKIEEIFKKAGHPFMWNEHLGYVLTCPSNLGTGLRGGVHVKLAHLSKHPKFEEILTRLRLQKRGTGGVDTAAVGSVFDISNADRLGSSEVEQVQLVVDGVKLMVEMEKKLEKGQSIDDMIPAQK
RNAポリメラーゼ、クレアチンカイネースの調製
本発明において、RNAポリメラーゼ及びクレアチンカイネースの調製における転写-翻訳は、好適な方法として以下のような植物由来の無細胞タンパク質合成系特にコムギ胚芽無細胞タンパク質合成手段による方法で調製されることが例示される。転写鋳型は、インビトロ転写反応の鋳型分子として使用し得るDNAをいい、適当なプロモーター配列の下流にRNAポリメラーゼ(配列番号1)又はクレアチンカイネース(配列番号3)をコードする塩基配列を少なくとも有する。適当なプロモーター配列とは、転写反応において使用されるRNAポリメラーゼが認識し得るプロモーター配列をいい、例えば、SP6プロモーター、T7プロモーター等が挙げられる。RNAポリメラーゼをコードするDNAは、所望により、タグ配列(GST)をコードするDNAも含むことができる。
転写鋳型は、プロモーター配列とタンパク質をコードする塩基配列との間に翻訳効率を制御する活性を有する塩基配列を有することが好ましく、例えば、タバコモザイクウイルス由来のΩ配列などのRNAウイルス由来の5'非翻訳領域、及び/又はコザック配列等を用いることができる。さらに、転写鋳型は、タンパク質をコードする塩基配列の下流に転写ターミネーション領域等を含む3'非翻訳領域を含むことが好ましい。3'非翻訳領域としては、終止コドンより下流の約1.0〜約3.0キロベース程度が好ましく用いられる。これらの3'非翻訳領域は必ずしも融合タンパク質をコードする遺伝子本来のものである必要はない。本発明の方法の好ましい実施態様においては、タンパク質をコードするDNAをPCR法によって増幅・合成した反応産物を精製することなくそのまま転写鋳型とすることも可能である。尚、非特異的増幅により生じる短鎖DNA(結果として目的産物の収量低下及び低分子翻訳産物ノイズを生じる)の生成を防ぐために、国際公開WO02/18586号に記載のプロモーター分断型プライマーを用いることもできる。
このようにして得られる転写鋳型DNAはクロロホルム抽出やアルコール沈殿により精製した後に転写反応に供してもよいが、PCR反応後の反応液をそのまま転写鋳型溶液として使用することが可能である。
転写反応は、自体公知の方法を用いて調製されたタンパク質をコードする転写鋳型DNA又はPCR法によって増幅・合成したDNAを精製することなく調製されたタンパク質をコードする転写鋳型DNAから、インビトロ転写反応により翻訳鋳型であるmRNAを生成させる工程を含む。当該工程は、反応系(例えば、96穴タイタープレートなどの市販の容器)に提供された転写鋳型を含む溶液、好ましくはPCR反応液と、転写鋳型中のプロモーターに適合するRNAポリメラーゼ(例えば、SP6 RNAポリメラーゼなど)やRNA合成用の基質(4種類のリボヌクレオシド3リン酸)等の転写反応に必要な成分を含む溶液(「転写反応用溶液」ともいう)とを混合した後、約20℃〜約60℃、好ましくは約30℃〜約42℃で約30分間〜約16時間、好ましくは約2時間〜約5時間該混合液をインキュベートすることにより行われる。
なお、好ましい翻訳鋳型となるmRNAは、タンパク質をコードする遺伝子DNA(Chiu, W. –L., et al., Curr. Biol. 6, 325-330 (1996))が挿入されたpEU-ベクター(Sawasaki, T. et al.,PNAS, 99 (23), 14652-7(2002))を基に、Ω配列部分をWO03/056009号公報に記載の配列番号136の塩基配列に置き換えたプラスミドDNAを鋳型として、SP6 RNApolymerase(Promega社製)を用いて転写を行うこともできる。
ついで、転写溶液は、タンパク質合成用細胞抽出液に直接添加する。翻訳反応は、調製して得られた転写溶液をタンパク質合成用細胞抽出液に直接添加し、これに基質となるアミノ酸、エネルギー源、各種イオン、緩衝液、ATP再生系、核酸分解酵素阻害剤、tRNA、還元剤、ポリエチレングリコール、3',5'−cAMP、葉酸塩、抗菌剤等の、翻訳反応に必要もしくは好適な成分を含有する溶液を添加して、翻訳反応に適した温度で適当な時間インキュベートすることにより行うことができる。
RNAポリメラーゼ、クレアチンカイネースの精製
翻訳反応によって調製された融合タンパク質であるタグ修飾タンパク質(GST修飾タンパク質)は、翻訳反応溶液の状態で、アフィニティー担体と接触させて、タグ修飾タンパク質をアフィニティー担体に捕捉され回収される。詳しくは、タンパク質合成反応が完了した後、精製用カラム例えばエッペンドルフチューブ中に、アフィニティー担体を充填・平衡化し、これに融合タンパク質を含有する例えば翻訳反応液(細胞抽出液)を展開し、さらに捕捉用緩衝液を導入し、接触反応を行う。接触により、アフィニティー担体とタグ修飾タンパク質が、タグのアフィニティー結合部位を介して結合する。その後、洗浄用緩衝液で洗浄した後、溶出用緩衝液で、アフィニティー担体とタグとの親和性を減弱させ、タグ修飾タンパク質をアフィニティー担体から遊離させ溶出する。溶出は、例えば溶出液中の濃度の変化により達成できる。また、翻訳反応によって調製された融合タンパク質であるタグ修飾タンパク質は、翻訳反応溶液の状態で、限外ろ過膜に接触させ、翻訳中に生じた低分子を取り除くことで達成できる。
加えて、本発明は、上記のような精製方法に加え、目的タンパク質からタグを分離するために、タグと目的タンパク質の間にエンドペプチダーゼのような酵素で分断可能な配列を予め導入しておけば目的タンパク質の分取は容易である。このような配列は自体公知であり、それらを広く応用可能である。導入は、例えばタグをコードするDNAの塩基配列中に、エンドペプチターゼで切断処理されるアミノ酸配列(エンドペプチターゼ認識配列)をコードする塩基配列を連結させることによって可能である。これにより、既知のさまざまなエンドペプチターゼを作用させることで目的タンパク質とタグタンパク質を分離・分取することが可能である。エンドペプチターゼは、目的タンパク質とタグタンパク質を切断できるペプチターゼであればいかなるものでも良い。例えば、プレシジョンプロテアーゼ{プレシジョンサイト(Leu-Glu-Val-Leu-Phe-Gln↓Gly-Pro)の配列を矢印の位置で選択的に切断するエンドペプチターゼ:アマシャムバイオサイエンス社製}、Thrombin 、Factor Xa 等が利用できる。
無細胞タンパク質合成用キット
本発明の無細胞タンパク質合成用キットは、上記無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤及び溶解液を少なくとも含む。さらに、本発明の無細胞タンパク質合成用キットを、理科実験教材として用いるには、実験解説書(本セットで行う実験の目的、タンパク質発現の現象の説明、本キットの応用用途等)、実験方法手順書(本セットを用いたタンパク質合成の一連の操作方法手順)も加えることができる。さらには、好適には、無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤中のRNAポリメラーゼ及びリン酸転移酵素は、本発明の実質的に動物由来夾雑成分及び微生物由来夾雑成分を含有しないRNAポリメラーゼ、リン酸転移酵素を使用する。
ここで、実質的に動物由来夾雑成分、微生物由来夾雑成分を含有しないとは、例えば、RNAポリメラーゼ及び/又はリン酸転移酵素が動物由来の遺伝子又は微生物由来の遺伝子を使ったとしても、合成培地には動物由来成分又は微生物由来成分は含有されておらずコムギ胚芽のような無細胞タンパク質合成手段によって調製されたRNAポリメラーゼ及び/又はリン酸転移酵素であるので、タンパク質特にRNase、核酸、動物由来ウイルスが夾雑していないと言う意味である。
また、RNaseが実質的に夾雑していないとは、RNaseの存在がタンパク質合成に影響を与えない程度の状態を意味する。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
(1)RNAポリメラーゼ(SP6)とクレアチンカイネースの転写鋳型、翻訳鋳型の作製
SP6遺伝子DNA(配列番号1)のみが挿入されたpEU-SP6ベクター、GST遺伝子DNA及びSP6遺伝子DNAが挿入されたpEU-GST-SP6ベクター、クレアチンカイネース(CrKinase)遺伝子DNA(配列番号3)のみが挿入されたpEU-CrKinaseベクター、GST遺伝子DNA及びクレアチンカイネース遺伝子DNAが挿入されたpEU-GST-CrKinaseベクター、GFP遺伝子DNAが挿入されたpEU-GFPベクターを転写鋳型とした。
また、上記転写鋳型をそれぞれ、転写反応溶液〔最終濃度、80mM HEPES−KOH pH7.8、16mM 酢酸マグネシウム、10mM ジチオスレイトール、2mM スペルミジン、2.5mM 4NTPs(4種類のヌクレオチド三リン酸)、1U/μl RNase阻害剤、1U/μl SP6 RNAポリメラーゼ〕に添加して、37℃で3時間反応させた。得られたものを翻訳鋳型として用いた。
(2)GSTタグ付きクレアチンカイネースの翻訳
コムギ胚芽抽出物含有液を含むタンパク質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、0.04μg/μl クレアチンカイネース(Roche社製))250μlを作製した。このタンパク質合成用反応液に、実施例1で作製した翻訳鋳型mRNA(GST-CrKinase、GST-SP6(コントロール用))を250μl加え、重層液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を5.5ml重層し、26℃で16時間インキュベートした。
(3)カラム用樹脂の平衡化
Glutathione Sepharose 4B(Amersham Pharmacia Biotech社製)を、カラム用樹脂を5倍量のMilliQ waterで洗浄し、300 g,1分間で遠心分離した。続いて、カラム用樹脂を5倍量の平衡化溶液(30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))で洗浄し、300 g1分間で遠心分離した。上記操作をさらに2回繰り返した。
(4)GSTタグ付きクレアチンカイネースの精製
エッペンドルフチューブ中に、上記(3)で平衡化したカラム用樹脂20μl(50%スラリー)、上記(2)で翻訳した各タンパク質(GST-CrKinase、GST-SP6(コントロール用))をそれぞれ450μlずつ導入し、フタをした後に、4℃で2時間攪拌(10 rpm)した。その後、Ultrafree-MC 0.45μm Filter Unit(MILLIPORE社製)に加え、300g 1分間遠心し、得られたろ液450μlを取り除いた。続いて、カラム用樹脂を1 x PBS 400μlで3回洗浄し、溶出溶液(20mM 還元型グルタチオン、50mM トリス)45μlで溶出し、溶出で得られた溶出液を試料とした。
(5)再度のGSTタグ付きクレアチンカイネースの翻訳と精製
Roche社製(ウサギ筋肉由来)クレアチンカイネースの代わりに(4)で得られたGST付きクレアチンカイネース25μlを加え、コムギ胚芽抽出物含有液を含むタンパク質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))250μlを作製した。この反応液に実施例1で作製した翻訳鋳型mRNA(GST-CrKinase、GST-SP6(コントロール用))を250μlとし、重層液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を5.5ml重層し、26℃で16時間インキュベートした。上記(4)と同様に精製を行った。
(6)クレアチンカイネースの翻訳
最初のタンパク質合成用反応液のRoche社製(ウサギ筋肉由来)クレアチンカイネースを完全に除去するために、上記(5)で得られたGSTタグ付きクレアチンカイネース25μlを加え、コムギ胚芽抽出物含有液を含むタンパク質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))250μlを作製した。この反応液に実施例1で作製した翻訳鋳型mRNA(CrKinase)を250μl加え、重層液(最終濃度で、29mM HEPES−KOH(pH7.8)、95mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、15mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を5.5ml重層し、26℃で16時間インキュベートした。得られたものをクレアチンカイネース(コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系で製造したクレアチンカイネース)として用いた。
(7)RNAポリメラーゼタンパク質の翻訳
(6)で得られたクレアチンカイネース25μlを加え、コムギ胚芽抽出物含有液を含むタンパク質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))250μlを作製した。この反応液に実施例1で作製した翻訳鋳型mRNA(SP6、GST-CrKinase(コントロール用))を250μl加え、重層液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を5.5ml重層し、26℃で16時間インキュベートした。
(8)RNAポリメラーゼタンパク質の濃縮、溶液交換
上記(7)で合成したRNAポリメラーゼタンパク質(SP6)とクレアチンカイネース(GST-CrKinase)をそれぞれAmicon Ultra-15 10,000MWCO(MILLIPORE社製)中に6mlを導入し、10℃、4000gで遠心し、200μlまで濃縮した。その後、交換溶液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))に平衡化しておいた、G25 spin column(Amersham Pharmacia Biotech社製)にのせ、遠心(800g x 2min)し溶液交換した。得られたものをSP6(コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系で製造したSP6)とGST-CrKinase(コントロール用)として用いた。また、コムギ胚芽抽出物含有液としても、再利用した。
(9)コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系により調製したリン酸転移酵素(上記(6))、およびRNAポリメラーゼ(上記(8))を用いた無細胞転写/翻訳系の作製
コムギ胚芽抽出物含有液を含むタンパク質合成用反応液と、上記(8)のRNAポリメラーゼ(SP6)含むタンパク質合成用反応液を混合したものを25μlを作製した。この反応液は、15μl:10μl (SP6 40%) , 12.5μl:12.5μl (SP6 50%) , 10μl:15μl (SP6 60%)の3種類作製した。この反応液に上記(6)で作製したリン酸転移酵素を5μl加え、さらに、それぞれ最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、酢酸マグネシウムについては、10mM、11mM、12mM、13mMとなるように試薬を加え、50μlの転写/翻訳系の反応溶液12種類を作製した。そして、-80℃で保存した。
上記反応溶液を融解し、そのうち20μl分取し、そこに実施例1で作製したpEU-GFPのプラスミド(転写鋳型)1mg/ml 4μlと4NTPs(4種類のヌクレオチド三リン酸)を各2.5mMとなるように加え、さらに、それぞれ最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、2.5mM、酢酸マグネシウムについては、10mM、11mM、12mM、13mMとなるように試薬を加え、40μlの転写・翻訳液12種類を作製した。
重層液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を200μl重層し、26℃で16時間インキュベートした(図1:レーン5−8(40%同時10mM、11mM、12mM、13mM))。
さらにSP6 60%の転写・翻訳液については、26℃で6時間インキュベート(6時間のプレインキュベート)した後、重層液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を200μl重層し、26℃で10時間インキュベートした(図1:レーン1−4(60%6時間後10mM、11mM、12mM、13mM))。
コントロールとして、上記(6)で作製したリン酸転移酵素の代わりに、クレアチンカイネース(ウサギ筋肉由来:Roche社製)を用いてタンパク質合成を行った。詳細は、以下の通りである。
コムギ胚芽抽出物含有液を含むタンパク質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、0.04μg/μl クレアチンカイネース(Roche社製))実施例1で作製した翻訳鋳型mRNA(GFP)を加え25μlの反応系を作製し、重層液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を125μl重層し、26℃で16時間インキュベートした(図1:レーン9(コントロール))。
上記タンパク質合成終了後、各反応溶液をよく攪拌した各試料を12.5%のポリアクリルアミドゲルを用いて還元条件下でSDS-PAGEを行い、CBB染色した(図1の電気泳動図)。 Typhoon9400(Amersham Pharmacia Biotech社製)による蛍光値と、BSA2500(FUJIFILM社製)によるSDS-PAGEのGFPバンドの定量値をグラフにし比較した(図1のグラフ)。
図1の結果から、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系により調製したクレアチンカイネースを用いたタンパク質合成量は、クレアチンカイネース(Roche社製)を用いてタンパク質合成量(レーン9)と比較しても同等以上であることを示した。特に、酢酸マグネシウム濃度が11nM-12nMの範囲(最終濃度)では、高いタンパク質合成量を示すことがわかった。
なお、6時間インキュベート(6時間のプレインキュベート)は、タンパク質合成量に影響を与えないことがわかった(レーン1−4)。
加えて、RNase阻害剤(RNaseインヒビター)を使用しなくても、十分にタンパク質合成が行えることがわかった。
(10)コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系により調製したリン酸転移酵素(上記(6))、およびRNAポリメラーゼ(上記(8))を用いた無細胞転写/翻訳系の作製(スペルミジンの濃度変化)
コムギ胚芽抽出物含有液を含むタンパク質合成用反応液と、上記(8)のRNAポリメラーゼ(SP6)含むタンパク質合成用反応液を25μl:25μlで混合したもの50μlを作製した。この反応液に上記(6)で作製したリン酸転移酵素を10μl加え、さらに、実施例1で作製したpEU-GFPのプラスミド1mg/mlを10μl加えた場合に、それぞれ最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、11mM酢酸マグネシウム、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、2.5mM 4NTPs(4種類のヌクレオチド三リン酸)、スペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)については、0.4mM、2mMとなるように試薬を加え、90μlの転写・翻訳液(反応溶液)(プラスミドは添加されていない)を作製した。各反応溶液(0.4mMスペルミジン、2mMスペルミジン)を18μlに分注し、-80℃保存した。
上記反応溶液を融解し、pEU-GFPのプラスミド1mg/ml 2μlを加え20μlにし、重層液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を220μl重層し、26℃で16時間インキュベートした(図1:レーン10−11(Spd0.4mM、2mM))。
図1(レーン10−11)の結果から、好適なスペルミジンの濃度は、2mMであることがわかった。すなわち、スペルミジンの濃度を調製することにより、高いタンパク質合成量が得ることができる。
(11)大腸菌で生産したSP6(Roche社製)の夾雑の確認
タンパク質合成に利用したSP6(大腸菌生産:Roche社製)が、上記(5)のリン酸転移酵素(GST-CrKinase)含むタンパク質合成用反応液に夾雑していないことを確かめるために、以下の実験を行った。
コムギ胚芽抽出物含有液を含むタンパク質合成用反応液と、上記(8)のRNAポリメラーゼ(SP6)又は上記(5)のリン酸転移酵素(GST-CrKinase)含むタンパク質合成用反応液を混合したもの50μlを作製した。この反応液は、25μl:25μl (SP6 50%), 12.5μl:37.5μl (SP6 75%), 25μl:25μl(GST-CrKinase 50%), 12.5μl:37.5μl (GST-CrKinase 75%)の4種類作製した。この反応液に上記(6)で作製したリン酸転移酵素を10μl、さらに、実施例1で作製したpEU-GFPのプラスミド1mg/mlを10μl加えた場合、それぞれ最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、12mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、2.5mM 4NTPs(4種類のヌクレオチド三リン酸)となるように試薬を加え、90μlの転写・翻訳液(反応溶液)(プラスミドは添加されていない)を作製した。各反応溶液(SP6 50%、SP6 75%、GST-CrKinase 50%、GST-CrKinase 75%)を18μlに分注し、-80℃保存した。
上記各反応溶液を融解し、pEU-GFPのプラスミド1mg/ml 2μlを加え20μlにし、重層液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を220μl重層し、26℃で16時間インキュベートした(図1:レーン20−23(SP6 50%、SP6 75%、GST-Cr-K 50%、GST-Cr-K 75%))。
図1(レーン20−23)の結果から、SP6含有画分(レーン20、21)では、タンパク質合成ができている。しかし、GST-Cr-K含有画分(レーン22、23)では、タンパク質合成ができていない。これは、GST-Cr-K含有画分には、タンパク質合成に利用したSP6(大腸菌で生産:Roche社製)が夾雑していないので、タンパク質合成ができなかったと考えられる。よって、本発明のコムギ胚芽無細胞タンパク質合成系により調製したSP6は、微生物夾雑成分を含有してないことが言える。
(12)コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系により調製したクレアチンカイネースには、RNaseが夾雑していないことの確認
実施例1で作製した翻訳鋳型mRNA(GFP)1μlに、それぞれ別にRoche社製クレアチンカイネース1μl、上記(6)で得られたクレアチンカイネース1μl、上記(5)の精製してないGSTタグ付きクレアチンカイネース1μl、上記(5)で得られたGSTタグ付きクレアチンカイネース(精製済み)1μlを加え、Milli Qで10μlにし、26℃で4時間保温した(それぞれ、レーン2、3、4、5)。同時に翻訳鋳型mRNAにMilli Qのみ加えたものも26℃で4時間保温した(レーン1)。
上記保温終了後、各試料を1%のアガロースゲルを用いて電気泳動を行い、エチブロ染色した(図2)。レーン2は、レーン1と比較して、低分子の方にスネアーになっており、mRNAの分解が起こっていること(RNaseが夾雑していること)が確認できた。また、レーン3、4には、レーン5には確認できないバンドがあるが、これはコムギ胚芽抽出液由来のものである。レーン5は、レーン1と比較しても、バンド強度の変化がないことから、mRNAの分解が起こっていないこと(RNaseが夾雑していること)が確認できる。
以上により、上記(9)のRNaseインヒビターを使用しなくても、十分にタンパク質合成が行えることができた結果と合わせて、本発明のRNAポリメラーゼ及びクレアチンカイネースは、RNaseが夾雑していないので、無細胞タンパク質合成系にRNaseインヒビターを使用する必要がないことがわかった。
(13)コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系により調製したリン酸転移酵素(上記(6))、およびRNAポリメラーゼ(上記(8))を用いた無細胞転写/翻訳系の反応溶液の凍結乾燥製剤
コムギ胚芽抽出物含有液を含むタンパク質合成用反応液と、コムギ胚芽抽出物含有液に合成した上記(8)のRNAポリメラーゼ(SP6)含むタンパク質合成用反応液を混合したもの50μlを作製した。この反応液は、30μl:20μl (SP6 40%)で作製した。
この反応液に上記(6)で作製したリン酸転移酵素を10μl、さらに、実施例1で作製したpEU-GFPのプラスミド1mg/mlを10μl加えた場合、それぞれ最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、12mM酢酸マグネシウム、2mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、2.5mM 4NTPs(4種類のヌクレオチド三リン酸)となるように試薬を加えたものを作成した(図中では、1×SAと称する:レーン3)。
また、この反応液に上記(6)で作製したリン酸転移酵素を10μl、実施例1で作製したpEU-GFPのプラスミド1mg/mlを10μl加えた時、それぞれ最終濃度で、15mM HEPES−KOH(pH7.8)、50mM酢酸カリウム、12mM酢酸マグネシウム、2mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.15mM L型アミノ酸20種類、2mMジチオスレイトール、0.6mM ATP(和光純薬社製)、0.125mM GTP(和光純薬社製)、8mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、2.5mM 4NTPs(4種類のヌクレオチド三リン酸)となるように試薬を加えたものを作製した(図中では、0.5×SAと称する:レーン4)。
上記90μlの転写・翻訳液である各反応溶液(プラスミドは添加されていない)を18μlに分注し、液体窒素で凍らし、凍結乾燥した。その後-80℃で保存した。
さらに、コントロールとして、RNAポリメラーゼ(SP6)含むタンパク質合成用反応液が40%(SP40%)と50%(SP50%)の割合の凍結乾燥をしていない転写・翻訳液である反応溶液を作製し18μlに分注し、-80℃で保存した(図中では、凍結乾燥処理なしと称する:レーン1−2)。
上記凍結乾燥した反応溶液を、それぞれMilli Q 水又は溶解液(それぞれ最終濃度で、15mM HEPES−KOH(pH7.8)、50mM酢酸カリウム、1.35mM酢酸マグネシウム、0.2mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.15mM L型アミノ酸20種類、2mMジチオスレイトール、0.6mM ATP(和光純薬社製)、0.125mM GTP(和光純薬社製)、8mMクレアチンリン酸)で融解し18μlにした。pEU-GFPのプラスミド1mg/ml 2μlを加え20μlにし、溶解液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を220μl添加し、26℃で16時間インキュベートした。コントロールにおいても、同様の操作をした。
上記タンパク質合成終了後、各反応溶液を、よく攪拌したものをTyphoon9400(Amersham Pharmacia Biotech社製)により、GFPの蛍光を測定した(図3A)。さらに、Typhoon9400による蛍光値をグラフにした(図3B)。
図3の結果から、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系により調製したリン酸転移酵素及びRNAポリメラーゼを用いた反応溶液は、凍結乾燥製剤処理によってもタンパク質合成活性が変化しないことがわかった。
加えて、凍結乾燥製剤中にRNaseインヒビターを添加しなくても、十分にタンパク質合成が行えることがわかった。
(14)転写・翻訳一体型無細胞タンパク質合成方法
本実施例では、従来の転写工程の後に、翻訳工程に適したマグネシウム濃度に調整した後に、翻訳を行わず、そのまま添加液のみを添加してタンパク質合成を行った。さらに、コントロールでは、転写鋳型ではなく、翻訳鋳型を用いてタンパク質合成を行った。詳細は、以下の通りである。
コムギ胚芽抽出物含有液を含むタンパク質合成用反応液を6.25μl、および、実施例1で作製したpEU-GFPのプラスミド(転写鋳型)25ng/μl、50ng/μl、100ng/μlのものを2.5μl加えた時、それぞれ最終濃度で、66.1mM HEPES−KOH(pH7.8)、60.25mM酢酸カリウム、11.2mM酢酸マグネシウム、1.44mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.18mM L型アミノ酸20種類、8.4mMジチオスレイトール、0.723mM ATP(和光純薬社製)、0.15mM GTP(和光純薬社製)、9.64mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、2.5mM 4NTPs(4種類のヌクレオチド三リン酸)0U/μl、0.5U/μl、1U/μl又は、2U/μl SP6 RNAポリメラーゼ(Promega社製)、1U/μl RNase阻害剤(Promega社製)、 0.04μg/μl クレアチンカイネース)となるように試薬を加えたものを25μl作製した。この反応液に添加液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を125μl添加し、26℃で16時間インキュベートした。
コントロールとして、コムギ胚芽抽出物含有液を含むタンパク質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、0.04μg/μl クレアチンカイネース(Roche社製))実施例1で作製した翻訳鋳型mRNA(GFP)(50ng/μl、100ng/μl)を加え25μlの反応系を作製し、添加液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を125μl添加し、26℃で16時間インキュベートした。
上記タンパク質合成終了後、よく攪拌した各試料をVersaDos IMAGING SYSTEM Model5000(BIO-RAD社製)により、GFPの蛍光を測定した(図4)。また、各試料を12.5%のポリアクリルアミドゲルを用いて還元条件下でSDS-PAGEを行い、CBB染色した(図4)。
図4の結果から、転写鋳型から発現したタンパク質合成量は、コントロールである翻訳鋳型から発現したタンパク質合成量と比較しても、遜色がなかった。よって、本実施例では、そのまま添加液を添加して転写・翻訳を行うことができた。
(15)転写鋳型含有凍結乾燥製剤を用いたタンパク質合成
コムギ胚芽抽出物含有液を含むタンパク質合成用反応液と、コムギ胚芽抽出物含有液に合成した上記(8)のRNAポリメラーゼ(SP6)含むタンパク質合成用反応液を混合したもの50μlを作製した。
この反応液は、30μl:20μl (SP6 40%)で作製した。この反応液に上記(6)で作製したリン酸転移酵素を10μl、さらに、実施例1で作製したpEU-GFPのプラスミド1mg/mlを10μl加えた場合、それぞれ最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、12mM酢酸マグネシウム、2mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、2.5mM 4NTPs(4種類のヌクレオチド三リン酸)となるように試薬を加えたものを作成した。
また、この反応液に上記(6)で作製したリン酸転移酵素を10μl、実施例1で作製したpEU-GFPのプラスミド1mg/mlを10μl加え、それぞれ最終濃度で、15mM HEPES−KOH(pH7.8)、50mM酢酸カリウム、12mM酢酸マグネシウム、2mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.15mM L型アミノ酸20種類、2mMジチオスレイトール、0.6mM ATP(和光純薬社製)、0.125mM GTP(和光純薬社製)、8mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、2.5mM 4NTPs(4種類のヌクレオチド三リン酸)となるように試薬を加えたものを作成した。
上記90μlの転写・翻訳液である各反応溶液(プラスミドは添加されている)を18μlに分注し、追加液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を220μl添加し、液体窒素で凍らし、凍結乾燥した。その後-80℃で保存した。
さらに、コントロールとして、RNAポリメラーゼ(SP6)含むタンパク質合成用反応液が40%と50%の割合の凍結乾燥をしていない転写・翻訳液である反応溶液を作製し、-80℃で保存した。
上記凍結乾燥した反応溶液を、それぞれMilli Q 水又は溶解液(最終濃度で、30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.3mM L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、16mMクレアチンリン酸(和光純薬社製))を220μl添加し、26℃で16時間インキュベートした。コントロールにおいても、同様の操作をした。
あらかじめ転写鋳型を含有した無細胞タンパク質合成用乾燥製剤でも、溶解液添加と保温でタンパク質合成が行うことができた。
加えて、無細胞タンパク質合成用乾燥製剤に水(MillQ)添加と保温でタンパク質合成を行うことができた。
各条件でのタンパク質合成量の比較 同時:転写鋳型及び重層液の添加を同時にしたことを意味する。 6時間後:転写鋳型を添加した6時間後に重層液を添加したことを意味する コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系により調製したクレアチンカイネースにはRNaseが夾雑していないことの確認 凍結乾燥製剤によるタンパク質合成量の比較 転写・翻訳一体型無細胞タンパク質合成方法でのタンパク質合成量の比較

Claims (11)

  1. 植物由来の無細胞タンパク質合成系により調製した実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないRNAポリメラーゼ。
  2. 植物由来の無細胞タンパク質合成系により調製した実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないリン酸転移酵素。
  3. 植物由来の無細胞タンパク質合成系により調製した実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないRNAポリメラーゼ及び植物由来の無細胞タンパク質合成系により調製した実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないリン酸転移酵素を含む無細胞タンパク質合成液であって、RNaseが実質的に夾雑していないことを特徴とする無細胞タンパク質合成用反応液。
  4. 以下の要素を含み、溶解液添加及び保温によりタンパク質合成が可能となる無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤。
    a:胚乳成分及び低分子のタンパク質合成阻害物質が実質的に除去された小麦胚芽抽出物からなる無細胞タンパク質合成用細胞抽出物含有液が、1又は複数の領域に区画された容器のそれぞれ異なるウェルに添加されている、
    b:少なくとも、基質、RNAポリメラーゼ、ヌクレオチド、エネルギー源及びリン酸転移酵素を含むタンパク質合成に必要な物質、及び転写鋳型がaに記載のウェルに添加されている、
    c:bに記載のウェル中の溶液が凍結乾燥により凍結乾燥剤化されている。
  5. cに記載の凍結乾燥剤中の潮解性物質含有量が、該凍結乾燥製剤中のタンパク質1重量部に対して0.01重量部以下である請求項4の無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤。
  6. 転写鋳型が、以下のいずれか1のタンパク質の塩基配列をコードし、かつ該タンパク質の発現が視覚により認識可能となる請求項4又は5の無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤。
    1)GFP、2)BFP、3)CFP、4)RFP、5)YFP、6)EGFP、7)ECFP、8)ERFP、9)EYFP、10)TMR、11)ルシフェラーゼ
  7. RNAポリメラーゼが植物由来の無細胞タンパク質合成系により調製した実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないRNAポリメラーゼであること及びリン酸転移酵素が植物由来の無細胞タンパク質合成系により調製した実質的に動物由来夾雑成分及び微生物夾雑成分を含有しないリン酸転移酵素である請求項4−6のいずれか1の無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤。
  8. RNaseが実質的に夾雑していないことを特徴とする請求項7の無細胞タンパク質合成用凍結乾燥製剤。
  9. 請求項4−8のいずれか1の凍結乾燥製剤を含む無細胞タンパク質合成用キット。
  10. 請求項4−8のいずれか1の凍結乾燥製剤を使用する無細胞タンパク質合成方法。
  11. 請求項4−8のいずれか1の凍結乾燥製剤を使用する理科実験教材の用途。
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