JP2006042676A - 翻訳効率制御活性を有する核酸塩基配列及びその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、無細胞タンパク質合成系において鋳型の翻訳効率を制御する活性を有する核酸塩基配列からなるポリヌクレオチド、及びその利用方法等を提供する。
【解決手段】選抜対象とする核酸塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型によりタンパク質合成を行い、該反応液からポリリボソーム画分を取得した後、リボソームに結合している核酸塩基配列を解析することにより選抜する。
【解決手段】選抜対象とする核酸塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型によりタンパク質合成を行い、該反応液からポリリボソーム画分を取得した後、リボソームに結合している核酸塩基配列を解析することにより選抜する。
Description
本発明は、タンパク質合成系において鋳型の翻訳効率を制御する活性を有する核酸塩基配列、及び該核酸塩基配列からなるポリヌクレオチド、並びに該ポリヌクレオチドの利用等に関する。
細胞内で行われているタンパク質の合成反応は、まず遺伝情報をもつDNAからその情報がmRNAに転写され、リボソーム上でそのmRNAの情報が翻訳されてタンパク質が合成されるという工程で進行している。この細胞内におけるタンパク質合成を生体外で行う方法として、例えば細胞内に備わるタンパク質翻訳装置であるリボソーム等を含む成分を生物体から抽出し、この抽出液に転写、または翻訳鋳型、基質となる核酸、アミノ酸、エネルギー源、各種イオン、緩衝液、及びその他の有効因子を加えて試験管内で行う方法(以下、これら一連の操作を「無細胞タンパク質合成系」と称することがある)の開発が盛んに行われている(特許文献1〜5等)。
無細胞タンパク質合成系は、ペプチド合成速度と翻訳反応の正確性においては生細胞に匹敵する性能を保有しており、かつ複雑な化学反応工程や煩雑な細胞培養工程を必要としない利点を有する。また、最近ではより翻訳効率を高くするために、従来の無細胞タンパク質合成系に用いる細胞あるいは組織の抽出液中に混入している一群の核酸分解酵素、翻訳阻害タンパク質因子、タンパク質分解酵素等を不活化する(特許文献6)、これらの混入を防ぐ(特許文献7)等の開発も行われている。
一方、翻訳効率そのものを向上させる配列のタンパク質合成効率向上への利用も知られている。翻訳促進配列としては、真核生物においては、5'キャップ構造(非特許文献1)、コザック配列(非特許文献2)等があり、また原核生物においてはシャインダルガーノ配列等が知られている。更にはRNAウィルスの5'−非翻訳リーダー配列にも翻訳促進活性があることが見出されており(特許文献8)、これらの配列を用いてタンパク質合成を効率よく行う方法が開発されている(特許文献9)。しかし、これらの翻訳促進配列は、転写を行うRNAポリメラーゼとの特異性がある等タンパク質合成に利用するのに必ずしも適したものとは言い難かった。
また一方で、人工的にランダマイズされた塩基配列を含むポリヌクレオチドの群から翻訳効率制御活性を有するものを選択する方法が開発されている(特許文献10)。
特開平6−98790号公報
特開平6−225783号公報
特開平7−194号公報
特開平9−291号公報
特開平7−147992号公報
特開2000−236896号公報
特開2000−236896号公報
特許第2814433号公報
特開平10−146197号公報
国際公開WO03/056009号公報
Shatkin, Cell, 9, 645- (1976)
Kozak,Nucleic Acid. Res., 12, 857- (1984)
本発明は、人工的にランダマイズされた塩基配列を含むポリヌクレオチドの集団から、翻訳効率制御活性を有するものを選定する方法を用いて得られた、無細胞タンパク質合成系において鋳型の翻訳効率を制御する活性を有する新規なポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型、及び該翻訳鋳型を用いたタンパク質合成系によるタンパク質合成方法等を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ランダムな配列を有する20〜300merのポリヌクレオチドを含むルシフェラーゼタンパク質を合成するための翻訳鋳型を用いて、コムギ胚芽抽出液による無細胞タンパク質合成を行った後、該反応液からショ糖密度勾配遠心法によりポリリボソーム画分を回収し、該画分中の翻訳鋳型に含まれる上記ランダム配列の塩基配列解析を行い、該塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型を用いてタンパク質合成を行ったところ、翻訳効率を上昇させる新たなポリヌクレオチドを見出した。本発明はこられの知見に基づいて成し遂げられたものである。
本発明によれば、天然に存在しない人工配列であって、かつ翻訳効率を制御する活性を有する核酸塩基配列、及び該塩基配列からなるポリヌクレオチドが提供される。該ポリヌクレオチドを用いることによりタンパク質合成系において極めて高効率にタンパク質合成を行うことができる。
即ち、本発明によれば、
1.以下に示す配列を含む翻訳増強活性を有するポリヌクレオチド;
1)配列表の配列番号8で表される塩基配列からなる核酸及び/又はその相補鎖、
2)配列表の配列番号8で表される塩基配列のうち1ないし数個のヌクレオチドが、置換、欠失、挿入または付加された配列からなる塩基配列をコードする核酸及び/又はその相補鎖、
3)配列表の配列番号8で表される塩基配列と少なくとも80%以上の相同性を有する核酸及び/又はその相補鎖、
2.前項1に記載の配列とストリンジェントな条件でハイブリダイゼーションする配列を含む翻訳増強活性を有するポリヌクレオチド、またはその相補的塩基配列からなるポリヌクレオチド、
3.翻訳効率を制御する活性が、RNAウィルスの5'−非翻訳リーダー配列が有する活性と同等か、またはそれ以上であることを特徴とする前項1または2に記載のポリヌクレオチド、
4.前項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型、
5.前項4に記載の翻訳鋳型を用いることを特徴とするタンパク質合成方法、
6.前項5に記載のタンパク質合成方法により得られるタンパク質、
7.前項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
が提供される。
1.以下に示す配列を含む翻訳増強活性を有するポリヌクレオチド;
1)配列表の配列番号8で表される塩基配列からなる核酸及び/又はその相補鎖、
2)配列表の配列番号8で表される塩基配列のうち1ないし数個のヌクレオチドが、置換、欠失、挿入または付加された配列からなる塩基配列をコードする核酸及び/又はその相補鎖、
3)配列表の配列番号8で表される塩基配列と少なくとも80%以上の相同性を有する核酸及び/又はその相補鎖、
2.前項1に記載の配列とストリンジェントな条件でハイブリダイゼーションする配列を含む翻訳増強活性を有するポリヌクレオチド、またはその相補的塩基配列からなるポリヌクレオチド、
3.翻訳効率を制御する活性が、RNAウィルスの5'−非翻訳リーダー配列が有する活性と同等か、またはそれ以上であることを特徴とする前項1または2に記載のポリヌクレオチド、
4.前項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型、
5.前項4に記載の翻訳鋳型を用いることを特徴とするタンパク質合成方法、
6.前項5に記載のタンパク質合成方法により得られるタンパク質、
7.前項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
が提供される。
本発明は、人工的にランダマイズされた塩基配列を含むポリヌクレオチドの群から、特許文献10に記載された方法を用いて選定された、無細胞タンパク質合成系において鋳型の翻訳効率を制御する活性を有する新規ポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチドの利用に関するものである。。図1に特許文献10に記載された方法の概略を示した。以下、本発明について更に詳細に説明する。
(1)選抜対象とする任意の核酸塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型の作製
選抜対象とする核酸塩基配列は、翻訳効率を制御する活性があり得る配列であればいずれのものでも良いが、好ましくは3〜200merの長さのランダム配列であってスタートコドンを有さない配列が用いられる。
該配列を有するポリヌクレオチド群(以下これを、「候補ポリヌクレオチド」と称することがある)の作製方法としては、例えばランダム配列の場合には、通常のオリゴヌクレオチド合成法において、用いるカラムを、4種類の異なる塩基を有する核酸のミクスチャーを含むものにして化学合成する方法等が挙げられる。ここで、スタートコドンを含まないランダム配列にするためには、上記4種類の塩基のうち、A、T、Gのいずれか1種類以上を含まない核酸の混合物か、いずれか1種類をイノシン等に換えた核酸の混合物によって合成する方法が好ましく用いられる。また、ランダム配列を用いる場合には、該ポリヌクレオチドの塩基配列を解析したり、ポリメラーゼチェインリアクション(PCR)により増幅するためにその5'端に共通配列を付加することが好ましい。共通配列としては、スタートコドンを有さず、且つPCRのプライマーがアニールし得る配列を有するものならば特に制限はない。その鎖長としては、3〜50merの長さのものが好ましい。
選抜対象とする核酸塩基配列は、翻訳効率を制御する活性があり得る配列であればいずれのものでも良いが、好ましくは3〜200merの長さのランダム配列であってスタートコドンを有さない配列が用いられる。
該配列を有するポリヌクレオチド群(以下これを、「候補ポリヌクレオチド」と称することがある)の作製方法としては、例えばランダム配列の場合には、通常のオリゴヌクレオチド合成法において、用いるカラムを、4種類の異なる塩基を有する核酸のミクスチャーを含むものにして化学合成する方法等が挙げられる。ここで、スタートコドンを含まないランダム配列にするためには、上記4種類の塩基のうち、A、T、Gのいずれか1種類以上を含まない核酸の混合物か、いずれか1種類をイノシン等に換えた核酸の混合物によって合成する方法が好ましく用いられる。また、ランダム配列を用いる場合には、該ポリヌクレオチドの塩基配列を解析したり、ポリメラーゼチェインリアクション(PCR)により増幅するためにその5'端に共通配列を付加することが好ましい。共通配列としては、スタートコドンを有さず、且つPCRのプライマーがアニールし得る配列を有するものならば特に制限はない。その鎖長としては、3〜50merの長さのものが好ましい。
候補ポリヌクレオチドは、これを適当なプロモーター配列と、スタートコドンを有しポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(本明細書中ではこれを「コーディングポリヌクレオチド」と称することがある)との間に挟まれるように結合させて翻訳鋳型を作製する。コーディングポリヌクレオチドがコードするポリペプチドはタンパク質合成系において合成され得るものであれば如何なるものであってもよいが、該ポリペプチドの合成量が候補ポリヌクレオチドによる翻訳効率の変化の指標となるため、蛍光等の観察しやすい信号を発するものが好ましく、更には該信号量とそのタンパク質量が相関するものが好ましい。このようなポリペプチドとしてはルシフェラーゼ、GFP等が挙げられる。
コーディングポリヌクレオチドは、上記ポリペプチドのコーディング領域だけでなく、その転写ターミネーション領域等を含む3'非翻訳領域を含むことが好ましい。3'非翻訳領域としては、ストップコドンより下流の約0.1〜3.0kベース程度が好ましく用いられる。これらの3'非翻訳領域は必ずしもコーディングポリヌクレオチド自身のものである必要はない。また、プロモーターとしてはその後転写に用いるRNAポリメラーゼに特異的なものを用いることができる。具体的には、SP6プロモーター、T7プロモーター等が挙げられる。
プロモーター、及びコーディングポリヌクレオチドと候補ポリヌクレオチドの結合方法としては、それ自体既知の常法を用いることができる。具体的には、例えば、プロモーターと候補ポリヌクレオチドの結合には、候補ポリヌクレオチドを化学合成する際に5'側プロモーター配列を連続して合成する方法が用いられる。また、コーディングポリヌクレオチドとの結合方法としては、コーディングポリヌクレオチドを鋳型としたPCRにおいて、プロモーター配列を結合して合成された候補ポリヌクレオチドをセンスプライマーとし、また3'非翻訳領域の3'末端配列からなるポリヌクレオチドをアンチセンスプライマーとしてそれぞれを結合させる方法等が用いられる。
更に、転写、翻訳効率を制御する活性のある配列を挿入することも好ましい。このような配列、及び挿入位置としては、真核生物においては、5'キャップ構造(Shatkin, Cell, 9, 645- (1976))を翻訳鋳型の5'末端に、また、コザック配列(Kozak, Nucleic Acid. Res., 12, 857- (1984))を、本発明の候補ポリヌクレオチドとコーディングポリヌクレオチドとの間に挿入することが好ましく、また原核生物においてはシャインダルガーノ配列を本発明の候補ポリヌクレオチドとコーディングポリヌクレオチドとの間に挿入すること等が好ましい。
(2)翻訳鋳型を用いたタンパク質合成反応
本発明の候補ポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型は、これを必要であれば転写した後、タンパク質合成反応に供する。用いられるタンパク質合成系としては、翻訳鋳型を翻訳してタンパク質を生成し得る能力のあるものであれば如何なるものであってもよいが、具体的には、生細胞や無細胞タンパク質合成系が挙げられる。無細胞タンパク質合成系としては、大腸菌、植物種子の胚芽、ウサギ網状赤血球等の細胞抽出液等の既知のものが用いられる。これらは市販のものを用いることもできるし、それ自体既知の方法、具体的には、大腸菌抽出液は、Pratt,J. M. et al., Transcription and Tranlation, Hames, 179-209, B. D. & Higgins, S. J., eds),IRL Press, Oxford(1984)に記載の方法等に準じて調製することもできる。
本発明の候補ポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型は、これを必要であれば転写した後、タンパク質合成反応に供する。用いられるタンパク質合成系としては、翻訳鋳型を翻訳してタンパク質を生成し得る能力のあるものであれば如何なるものであってもよいが、具体的には、生細胞や無細胞タンパク質合成系が挙げられる。無細胞タンパク質合成系としては、大腸菌、植物種子の胚芽、ウサギ網状赤血球等の細胞抽出液等の既知のものが用いられる。これらは市販のものを用いることもできるし、それ自体既知の方法、具体的には、大腸菌抽出液は、Pratt,J. M. et al., Transcription and Tranlation, Hames, 179-209, B. D. & Higgins, S. J., eds),IRL Press, Oxford(1984)に記載の方法等に準じて調製することもできる。
市販の無細胞タンパク質合成系、または細胞抽出液としては、大腸菌由来のものは、E.coliS30extract system(Promega社製)とRTS 500 Rapid Translation System(Roche社製)等が挙げられ、ウサギ網状赤血球由来のものはRabbit Reticulocyte Lysate Sytem(Promega社製)等、更にコムギ胚芽由来のものはPROTEIOSTM(TOYOBO社製)等が挙げられる。このうち、植物種子の胚芽抽出液の系を用いることが好ましく、植物種子としては、コムギ、オオムギ、イネ、コーン等のイネ科の植物、及びホウレンソウ等のものが好ましい。本発明の無細胞合成系においては、ポリリボソーム形成活性の高いタンパク質合成系が好ましいため、コムギ胚芽抽出液を用いたものが好適である。
コムギ胚芽抽出液の作製法としては、例えばJohnston, F. B. et al., Nature, 179, 160-161(1957)、あるいはErickson,A. H. et al., (1996) Meth.In Enzymol.,96, 38-50等に記載の方法を用いることができる。更に、該抽出液中に含まれる翻訳阻害因子、例えばトリチン、チオニン、核酸分解酵素等を含む胚乳を取り除く等の処理(特開2000−236896公報等)や、翻訳阻害因子の活性化を抑制する処理(特開平7−203984号公報)を行うことも好ましい。このようにして得られた細胞抽出液は、従来と同様の方法によりタンパク質合成系に用いることができる。
本発明のタンパク質合成系に用いられる合成反応液の組成として、上記細胞抽出液、候補ポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型、基質となるアミノ酸、エネルギー源、各種イオン、緩衝液、ATP再生系、核酸分解酵素阻害剤、tRNA、還元剤、ポリエチレングリコール、3',5'−cAMP、葉酸塩、抗菌剤等が含まれる。また翻訳鋳型としてDNAを用いる場合には、更にRNA合成の基質、及びRNAポリメラーゼ等を含むことができる。これらは目的タンパク質や、用いるタンパク質合成系の種類によって適宜選択して調製される。
基質となるアミノ酸は、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸である。またエネルギー源としては、ATP、またはGTPが挙げられる。各種イオンは、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸アンモニウム等の酢酸塩、グルタミン酸塩等が挙げられる。緩衝液としては、Hepes−KOH、Tris−酢酸等が用いられる。またATP再生系としては、ホスホエノールピルベートとピルビン酸キナーゼの組み合わせ、またはクレアチンリン酸(クレアチンホスフェート)とクレアチンキナーゼの組み合わせが挙げられる。核酸分解酵素阻害剤としては、リボヌクレアーゼインヒビターや、ヌクレアーゼインヒビター等が挙げられる。このうち、リボヌクレアーゼインヒビターの具体例としては、ヒト胎盤由来のRNase inhibitor(TOYOBO社製等)等が用いられる。tRNAは、Moniter, R., et al., Biochim. Biophys. Acta., 43, 1 (1960)等に記載の方法により取得することができるし、市販のものを用いることもできる。還元剤としては、ジチオスレイトール等が挙げられる。抗菌剤としては、アジ化ナトリウム、アンピシリン等が挙げられる。更に、RNAポリメラーゼとしては翻訳鋳型に含まれるプロモーターに適したものが用いられる、具体的には、例えば、SP6RNAポリメラーゼやT7RNAポリメラーゼ等を用いることができる。これらの添加量は適宜選択されて合成反応液が調製される。
このようにして得られたタンパク質合成液は、それぞれ選択されたそれ自体
既知のシステム、または装置に投入され、タンパク質合成が行われる。タンパク質合成のためのシステムまたは装置としては、バッチ法(Pratt, J. M. etal., Transcription and Tranlation,Hames,179-209, B.D.& Higgins, S. J., eds), IRL Press,Oxford(1984))や、アミノ酸、エネルギー源等を連続的に反応系に供給する連続式無細胞タンパク質合成システム(Spirin,A. S. et al., Science, 242, 1162-1164(1988))、透析法(木川等、第21回日本分子生物学会、WID6)、あるいは重層法(特願2000−259186明細書)等が挙げられる。更には、合成反応系に、鋳型のRNA、アミノ酸、エネルギー源等を必要時に供給し、合成物や分解物を必要時に排出する方法(特開2000−333673公報:以下これを「不連続ゲル濾過法」と称することがある)や、合成反応槽が分子篩可能な担体によって調製され、上記の合成材料等が該担体を移動相として展開され、展開中に合成反応が実行され、結果として合成タンパク質を回収し得る方法(特開2000−316595公報)等を用いることができる。本発明で用いるタンパク質合成反応においては、翻訳反応の初期のポリリボソームの形成を目的とするため、バッチ法で充分であると考えられる。
既知のシステム、または装置に投入され、タンパク質合成が行われる。タンパク質合成のためのシステムまたは装置としては、バッチ法(Pratt, J. M. etal., Transcription and Tranlation,Hames,179-209, B.D.& Higgins, S. J., eds), IRL Press,Oxford(1984))や、アミノ酸、エネルギー源等を連続的に反応系に供給する連続式無細胞タンパク質合成システム(Spirin,A. S. et al., Science, 242, 1162-1164(1988))、透析法(木川等、第21回日本分子生物学会、WID6)、あるいは重層法(特願2000−259186明細書)等が挙げられる。更には、合成反応系に、鋳型のRNA、アミノ酸、エネルギー源等を必要時に供給し、合成物や分解物を必要時に排出する方法(特開2000−333673公報:以下これを「不連続ゲル濾過法」と称することがある)や、合成反応槽が分子篩可能な担体によって調製され、上記の合成材料等が該担体を移動相として展開され、展開中に合成反応が実行され、結果として合成タンパク質を回収し得る方法(特開2000−316595公報)等を用いることができる。本発明で用いるタンパク質合成反応においては、翻訳反応の初期のポリリボソームの形成を目的とするため、バッチ法で充分であると考えられる。
バッチ法によりタンパク質合成を行う場合には、例えば翻訳鋳型を除いた上記合成反応液に翻訳鋳型を添加してインキュベートすること等により行うことができる。コムギ胚芽抽出液を用いた場合、インキュベートは10〜40℃、好ましくは18〜30℃、更に好ましくは20〜26℃で行う。反応時間は、ポリリボソーム形成能が高い翻訳鋳型によるポリリボソーム形成のみが起こるに充分な時間だけ行えば、翻訳増強活性を有する核酸塩基配列を選抜することができる。具体的には、翻訳増強活性を有する核酸塩基配列を選抜するに好ましい反応時間としては、5分〜2時間の範囲が挙げられ、このうち30分程度が最も好ましい反応時間として挙げられる。反応時間はタンパク質合成阻害酵素の添加により反応を停止させることにより制御することができるが、反応を停止させなくても本発明の方法を行うことはできる。タンパク質合成阻害酵素としては、翻訳反応開始の阻害剤以外であればいずれの阻害剤でもよい。具体的には、例えばシクロヘキシミド、リボトキシン等が挙げられる。リボトキシンとして具体的には、α−サルシン(Endo,Y., et al., J. Biol. Chem., 258, 2662-2667(1983))、リボソーム不活化タンパク質(Endo,Y., etal., J. Biol.Chem.,262, 8128-8130(1987))等が挙げられる。これら阻害剤の添加量等は用いるタンパク質合成系において適宜選択されるが、コムギ胚芽抽出液を用いたタンパク質合成系において、シクロヘキシミドを添加する場合には、最終濃度で0.5〜10μM程度が好ましい。
透析法によりタンパク質合成を行う場合には、翻訳鋳型添加合成反応液を透析内液とし、透析外液と物質移動が可能な透析膜によって隔離される装置を用いて、タンパク質合成を行う。具体的には、例えば、翻訳鋳型を反応液に添加し、適当時間プレインキュベートした後、適当な透析容器に入れ反応内液とする。透析容器としては、底部に透析膜が付加されている容器(第一化学社製:透析カップ12,000等)や、透析用チューブ(三光純薬社製:12,000等)が挙げられる。透析膜は、10,000ダルトン以上の分子量限界を有するものが用いられるが、12,000ダルトン程度の分子量限界を有するものが好ましい。透析外液としては、上記合成反応液から翻訳鋳型を除いたものが用いられる。反応温度、及び時間は用いるタンパク質合成系において適宜選択される。
重層法を用いてタンパク質合成を行う場合には、翻訳鋳型添加合成反応液を適当な容器に入れ、該溶液上に、上記透析法に記載した透析外液を、界面を乱さないように重層することによりタンパク質合成を行う。具体的には、例えば、上記合成反応液に翻訳鋳型を添加して、適当な容器に入れ反応相とする。容器としては、例えばマイクロタイタープレート等が挙げられる。この反応相の上層に上記透析法に記載した透析外液(供給相)を、界面を乱さないように重層して反応を行う。反応温度、及び時間は用いるタンパク質合成系において適宜選択される。また、両相の界面は必ずしも重層によって水平面状に形成させる必要はなく、両相を含む混合液を遠心分離することによって、水平面を形成することも可能である。両相の円形界面の直径が7mmの場合、反応相と供給相の容量比は1:4〜1:8が適当であるが、1:5が好適である。両相からなる界面面積は大きいほど拡散による物質交換率が高く、タンパク質合成効率が上昇する。従って、両相の容量比は、両相の界面面積によって変化する。合成反応は静置条件下で、反応温度、及び時間は用いるタンパク質合成系において適宜選択される。また、大腸菌抽出液を用いると30〜37℃で行うことができる。
不連続ゲル濾過法を用いてタンパク質合成を行う場合には、翻訳鋳型添加合成反応液により合成反応を行い、合成反応が停止した時点で、鋳型のRNA、アミノ酸、エネルギー源等を供給し、合成物や分解物を排出することによりタンパク質合成を行う。具体的には、例えば、上記合成反応液に翻訳鋳型を添加して、適当な容器に入れ反応を行う。容器としては、例えばマイクロプレート等が挙げられる。この反応下では、例えば容量の48%容のコムギ胚芽抽出液を含む反応液の場合には反応1時間で合成反応は完全に停止する。このことは、アミノ酸のタンパク質への取りこみ測定やショ糖密度勾配遠心法によるポリリボソーム解析(Proc.Natl. Acad. Sci. USA.,97,559-564(2000))により確認することができる。合成反応の停止した上記反応溶液を、予め上記透析法に記載の透析外液と同様の組成の供給液により平衡化したゲル濾過カラムを通す。この濾過溶液を再度適当な反応温度に保温することにより、合成反応が再開し、タンパク質合成は数時間に渡って進行する。以下、この反応とゲル濾過操作を繰り返す。反応温度、及び時間は用いるタンパク質合成系において適宜選択される。
(3)ポリリボソーム画分の取得
本発明の候補ポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型を用いたタンパク質合成反応液は、反応後分画され、ポリリボソーム画分が分取される。分画の方法としては、遠心分離法、クロマトグラフィー法、フィルター濾過法等が挙げられるが、遠心分離法が好ましく用いられる。遠心分離法としては、密度勾配遠心法、平衡密度勾配遠心法、及び通常の分画遠心法等が挙げられるが、密度勾配遠心法が最も好ましく用いられる。
本発明の候補ポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型を用いたタンパク質合成反応液は、反応後分画され、ポリリボソーム画分が分取される。分画の方法としては、遠心分離法、クロマトグラフィー法、フィルター濾過法等が挙げられるが、遠心分離法が好ましく用いられる。遠心分離法としては、密度勾配遠心法、平衡密度勾配遠心法、及び通常の分画遠心法等が挙げられるが、密度勾配遠心法が最も好ましく用いられる。
密度勾配遠心法は、予め作製した密度勾配の上に試料溶液を重層して遠心する方法であって、それ自体既知の通常用いられている方法で行うことができる。密度勾配を作製する機器としては、安定な密度勾配を作製することができるものであれば市販のものでも、公知の方法に従って任意の装置を組み合わせたものでもよい。また、濃度の異なる溶液を重層することによっても作製することができる。密度勾配を形成する溶媒としては、ショ糖、グリセロール、重水(D2O)、無機塩類溶液等が用いられるが、このうちショ糖溶液が好ましく用いられる。
ポリリボソームの分取法を、ショ糖密度勾配遠心法によるものを例に詳細に説明する。ショ糖密度勾配遠心法によるタンパク質合成反応液の分離はProc. Natl.Acad. Sci. USA.,97,559-564(2000)に記載の方法等を用いることができる。具体的には、ショ糖の濃度勾配は、上記タンパク質合成反応液からポリリボソームを分離できる濃度の範囲であれば特に制限はなく、一般的にはその下限が5〜30%の範囲で、その上限が30%から飽和溶解度までの範囲における濃度勾配が用いられる。このうち下限が10%で上限が60%の間の濃度勾配が最も好ましく用いられる。またショ糖を溶解する緩衝液としては、ポリリボソームと翻訳鋳型の複合体を安定的に保つことができるものであれば如何なるものであってもよいが、具体的には、例えば、Tris−HCl、塩化カリウム、塩化マグネシウム、及びシクロヘキシミド等を含むものが挙げられる。
適当な遠心管等に上記のようなショ糖溶液による密度勾配を作製し、この上に反応終了後のタンパク質合成液を、必要に応じて適当な緩衝液にて希釈し、重層する。適当な緩衝液とは、ショ糖の溶解に用いたものと同様のもの等が好ましく用いられる。また希釈の程度は、共沈しない程度であれば特に制限はないが、好ましくは1〜100倍程度に希釈される。希釈したタンパク質合成反応液は、ショ糖溶液に対して1/100〜100倍程度の量を重層することができ、好ましくは1/50倍程度を重層する。これをポリリボソームを分離できる程度に遠心する。遠心の条件として具体的には、例えば、4℃で80000〜400000×gで30分〜3時間程度が挙げられる。遠心終了後、適当量ずつ分画し、各分画の核酸量を測定する等してポリリボソームが含まれる画分を同定する。具体的には、例えば、ショ糖溶液5ml、タンパク質合成反応液100μlによる密度勾配遠心を行った場合、100〜200μlずつを1画分とし、各画分についてOD260を測定する。この測定値において、例えば、真核生物由来のタンパク質合成系を用いた場合には80Sリボソームを示すピークが存在するが、それより大きな分子量側に存在する、測定値がピークを示す画分を中心とする画分等をポリリボソーム画分として取得する。このようなポリリボソーム画分としては、後述する実施例1の13〜23画分(ショ糖濃度32.5〜45%)、あるいは実施例2の13〜21画分(ショ糖濃度35〜45%)等が挙げられる。該画分はOD260の測定値のグラフで表すと、図1、及び図2の拡大されたグラフにより示される範囲である。
(4)翻訳効率を制御する活性を有する核酸塩基配列の選抜及び該塩基配列を含むポリヌクレオチドの取得
かくして取得されるポリリボソーム画分からRNAを回収し、このRNAについて逆転写反応を行ない、cDNAを取得した。更に該cDNAに含まれる候補ポリヌクレオチド部分の塩基配列を解析することによれば翻訳効率を制御する活性を有する核酸塩基配列を選抜することができる。また、上記cDNAは、翻訳効率を制御する活性を有する核酸塩基配列を含むポリヌクレオチドを含むものであり、PCR等により該配列部分を増幅すること等によれば翻訳効率を制御する活性を有する核酸塩基配列からなるポリヌクレオチドを取得することができる。
かくして取得されるポリリボソーム画分からRNAを回収し、このRNAについて逆転写反応を行ない、cDNAを取得した。更に該cDNAに含まれる候補ポリヌクレオチド部分の塩基配列を解析することによれば翻訳効率を制御する活性を有する核酸塩基配列を選抜することができる。また、上記cDNAは、翻訳効率を制御する活性を有する核酸塩基配列を含むポリヌクレオチドを含むものであり、PCR等により該配列部分を増幅すること等によれば翻訳効率を制御する活性を有する核酸塩基配列からなるポリヌクレオチドを取得することができる。
ポリリボソーム画分から、ポリリボソームに結合しているRNAを取得する方法としては、それ自体既知の方法を用いることができるが、具体的には、Acid guanidium thiocyanate-phenol-chloroform(AGPC)法(Chomczynski,P.,et al.,Anal.Biochem.,162,156-159(1987))が好ましく用いられる。ここで取得されるRNAを含む溶液中には、翻訳鋳型としてタンパク質合成系に入れられたDNAが含まれている可能性があるので、DNaseI等のDNA分解酵素処理することが好ましい。
取得されたRNA溶液は、これをフェノール/クロロホルム抽出やエタノール沈殿等の常法により精製したのち、逆転写反応に供することができる。逆転写反応は通常用いられる既知の方法を用いることができるが、cDNAの生成効率等からAMVリバーストランスクリプターゼを用いるのが好ましい。また、RNA LA PCR Kit(AMV) ver.1.1(TAKARA社製)等の市販のキットを用いることもできる。
逆転写反応によって作製したcDNAは、それ自体翻訳効率を制御する活性を有するポリヌクレオチドを含むものであるが、これをクローン化したり増幅したりすることもできる。クローン化する場合、上記で作製されたcDNAを適当なベクターに挿入してクローン化してもよいし、(1)で候補ポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型として作製する際に共通配列を付加しておいた場合、この共通配列とコーディングポリヌクレオチドの5'端の塩基配列と相同性を有するアンチセンスプライマーを用いたPCRによって増幅した後に適当なベクターに挿入してクローン化することもできる。このようにしてクローン化されたポリヌクレオチドは、これを(1)の候補ポリヌクレオチドとして同様に翻訳鋳型を作製し、該鋳型を用いたタンパク質合成を行うことによってその翻訳効率の制御活性を確認することができる。タンパク質合成量の定量方法としては、具体的には、例えば、アミノ酸のタンパク質への取りこみ測定や、SDS-ポリアクリルアミド電気泳働による分離とクマシーブリリアントブルー(CBB)による染色、オートラジオグラフィー法(Endo,Y. et al., J. Biotech., 25, 221-230(1992) ; Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,97,559-564(2000))等を用いることができる。本発明の翻訳鋳型にルシフェラーゼ、GFPのような蛍光タンパク質をコードするものを用いた場合には、該タンパク質から発せられる蛍光強度を測定する方法が好ましく用いられる。ルシフェラーゼを用いた場合、GFPよりも遺伝子の塩基長が長いため、GFPよりも数多くのリボソームがエントリーされると予想され、より大きなポリソームが形成されることによって、ポリソームを分画しやすいという効果も期待できる。また、該cDNAの塩基配列を通常用いられる方法により解析することにより、翻訳効率の制御活性を有する核酸塩基配列を特定することができる。
(5)翻訳効率を制御する活性が更に上昇した核酸塩基配列の選抜及び該塩基配列からなるポリヌクレオチドの取得方法
上記(4)に記載の方法により得られたcDNAを上記(1)の候補ポリヌクレオチドとして同様に翻訳鋳型を作製し、上記(1)〜(4)に記載の方法を繰り返すことにより、翻訳効率の制御活性が更に上昇したポリヌクレオチドを取得し、その塩基配列を同定することができる。また、上記(4)で取得されるcDNAにそれ自体既知の通常用いられる方法により変異を導入し、該変異体を用いて上記(1)〜(4)に記載の方法を繰り返すことによっても、翻訳効率の制御活性が更に上昇したポリヌクレオチドを取得し、その塩基配列を同定することができる。塩基配列に変異を入れる方法として具体的には、エラープローンPCR法、あるいはポイントミュータジェネシス法等が挙げられる。
上記(4)に記載の方法により得られたcDNAを上記(1)の候補ポリヌクレオチドとして同様に翻訳鋳型を作製し、上記(1)〜(4)に記載の方法を繰り返すことにより、翻訳効率の制御活性が更に上昇したポリヌクレオチドを取得し、その塩基配列を同定することができる。また、上記(4)で取得されるcDNAにそれ自体既知の通常用いられる方法により変異を導入し、該変異体を用いて上記(1)〜(4)に記載の方法を繰り返すことによっても、翻訳効率の制御活性が更に上昇したポリヌクレオチドを取得し、その塩基配列を同定することができる。塩基配列に変異を入れる方法として具体的には、エラープローンPCR法、あるいはポイントミュータジェネシス法等が挙げられる。
かくして得られる翻訳効率の制御活性を有するポリヌクレオチドのうち、翻訳増強活性を有するものとして、配列表の配列番号8に示す配列からなるもの等が挙げられる。このようにして選抜、取得された本発明のポリヌクレオチドは、人工的にランダマイズされた塩基配列からなるものであり、天然に存在する塩基配列を含むものではない。また、本発明のポリペプチドは、30〜200merの長さの人工的なランダム核酸塩基配列からなり、且つ翻訳効率の制御活性を有する限り、その選抜、及び取得方法は上記の方法に制限されるものではない。
本発明に係るポリヌクレオチドの態様の1つは配列番号8に記載の塩基配列または該塩基配列の相補的塩基配列を含有し、翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドである。
配列番号8に記載の塩基配列と相同性を有する塩基配列または該塩基配列の相補的塩基配列を含有し、翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドも本発明の範囲に含有される。配列相同性は、通常、塩基配列の全体で約50%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上であることが望ましい。
本発明に係るポリヌクレオチドには、配列番号8に記載の塩基配列において1個以上、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、特に好ましくは1個ないし数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加または挿入といった変異が存する塩基配列を含有し、翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドが含まれる。
変異の程度およびそれらの位置などは、該変異を有するポリヌクレオチドが上記ポリヌクレオチドと同質の生物学的機能を有するものである限り特に制限されない。かかる変異を有するポリヌクレオチドは、天然に存在するものであってもよく、また天然由来の遺伝子に基づいて変異を導入して得たものであってもよい。
変異を導入する手段は自体公知であり、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法またはPCRなどを単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。例えば成書に記載の方法(サムブルックら編、「モレキュラークローニング、アラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社)に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、ウルマーの技術(Ulmer,K.M, Science, 219, p.666-671(1983))を利用することもできる。
本発明に係るポリヌクレオチドには、上記ポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするポリヌクレオチドが挙げられる。ハイブリダイゼーションの条件は、例えば成書に記載の方法(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America, 74, p.5463-5467 (1977))に従うことができる。
(6)翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型によるタンパク質合成
本発明の翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドは、これを、プロモーター配列と目的のポリペプチドをコードするコーディングポリヌクレオチドとの間に挟まれるように結合させて翻訳鋳型を作製することができる。コーディングポリヌクレオチドは、上記ポリペプチドのコーディング領域だけでなく、その転写ターミネーション領域等を含む3'非翻訳領域を含むことが好ましい。3'非翻訳領域としては、ストップコドンより下流の約0.1〜3.0kベース程度が好ましく用いられる。また、プロモーターとしてはその後転写に用いるRNAポリメラーゼに特異的なものを用いることができる。具体的には、SP6プロモーター、T7プロモーター等が挙げられる。
本発明の翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドは、これを、プロモーター配列と目的のポリペプチドをコードするコーディングポリヌクレオチドとの間に挟まれるように結合させて翻訳鋳型を作製することができる。コーディングポリヌクレオチドは、上記ポリペプチドのコーディング領域だけでなく、その転写ターミネーション領域等を含む3'非翻訳領域を含むことが好ましい。3'非翻訳領域としては、ストップコドンより下流の約0.1〜3.0kベース程度が好ましく用いられる。また、プロモーターとしてはその後転写に用いるRNAポリメラーゼに特異的なものを用いることができる。具体的には、SP6プロモーター、T7プロモーター等が挙げられる。
プロモーター、及びコーディングポリヌクレオチドと本発明の翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドの結合方法としては、上記(1)に記載の方法、あるいはオーバーラップPCR法等を用いることができる。かくして得られる翻訳鋳型は上記(2)に記載の方法と同様にしてタンパク質合成系に供され、目的のポリペプチドを合成することができる。かくして得られたポリペプチドは、それ自体既知の方法により確認することができる。具体的には、例えば、アミノ酸のタンパク質への取りこみ測定や、SDS-ポリアクリルアミド電気泳働による分離とクマシーブリリアントブルー(CBB)による染色、オートラジオグラフィー法(Endo,Y. et al., J. Biotech., 25, 221-230(1992) ; Proc.Natl. Acad. Sci. USA.,97,559-564(2000))等を用いることができる。
また、かくして得られる反応液には、目的タンパク質を高濃度に含有しているので、該反応液を、透析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ゲル濾過等のそれ自体既知の分離、精製法により、目的ポリペプチドを取得することができる。
また、かくして得られる反応液には、目的タンパク質を高濃度に含有しているので、該反応液を、透析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ゲル濾過等のそれ自体既知の分離、精製法により、目的ポリペプチドを取得することができる。
(7)翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドを含むベクター
本発明の翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドは、これを、適当なベクターに挿入することによって、タンパク質合成のための翻訳鋳型作製用ベクターを構築することができる。用いられるベクターとしては、適当なクローニングベクターや、T7プロモーター、あるいはSP6プロモーターや、転写ターミネーション領域を含むタンパク質合成用ベクター等が挙げられる。
本発明の翻訳増強活性を有するポリヌクレオチドは、これを、適当なベクターに挿入することによって、タンパク質合成のための翻訳鋳型作製用ベクターを構築することができる。用いられるベクターとしては、適当なクローニングベクターや、T7プロモーター、あるいはSP6プロモーターや、転写ターミネーション領域を含むタンパク質合成用ベクター等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1 翻訳増強活性を有する核酸塩基配列の選抜
(1)候補ポリヌクレオチド(ランダム配列)を含むRNAの作製
Luciferase遺伝子DNA(pSP-luc+:Promega社製、カタログ番号:E1781)が挿入されたプラスミドを鋳型として、30〜200merのランダマイズ部位と、その3'側にコザック配列を付与するためのA、更にその3'側にLuciferase遺伝子DNAの5'端の配列を有し、またランダマイズ部位の5'側に共通配列12nts、更にその5'側にSP6プロモーターが連結した配列からなるセンスプライマー(配列番号1)、及びLuciferase遺伝子DNAのストップコドンから1652ベース3'下流の配列を含む アンチセンスプライマー(配列番号2)を用いてPCRを行った。得られた約3400bpのDNA断片をエタノール沈殿により精製し、これを鋳型として、SP6 RNA Polymerase(TAKARA社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをフェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿の後、NickColumn(Amersham Pharmacia Biotech社製)によって精製した。これを翻訳鋳型として以下の実験に用いた。
実施例1 翻訳増強活性を有する核酸塩基配列の選抜
(1)候補ポリヌクレオチド(ランダム配列)を含むRNAの作製
Luciferase遺伝子DNA(pSP-luc+:Promega社製、カタログ番号:E1781)が挿入されたプラスミドを鋳型として、30〜200merのランダマイズ部位と、その3'側にコザック配列を付与するためのA、更にその3'側にLuciferase遺伝子DNAの5'端の配列を有し、またランダマイズ部位の5'側に共通配列12nts、更にその5'側にSP6プロモーターが連結した配列からなるセンスプライマー(配列番号1)、及びLuciferase遺伝子DNAのストップコドンから1652ベース3'下流の配列を含む アンチセンスプライマー(配列番号2)を用いてPCRを行った。得られた約3400bpのDNA断片をエタノール沈殿により精製し、これを鋳型として、SP6 RNA Polymerase(TAKARA社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをフェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿の後、NickColumn(Amersham Pharmacia Biotech社製)によって精製した。これを翻訳鋳型として以下の実験に用いた。
(2)コムギ胚芽抽出物含有液の調製
北海道産チホクコムギ種子を1分間に100gの割合でミル(Fritsch社製:Rotor Speed Mill pulverisette14型)に添加し、回転数8,000rpmで種子を温和に粉砕した。篩いで発芽能を有する胚芽を含む画分(メッシュサイズ0.7〜1.00mm)を回収した後、四塩化炭素とシクロヘキサンの混合液(容量比=四塩化炭素:シクロヘキサン=2.4:1)を用いた浮選によって、発芽能を有する胚芽を含む浮上画分を回収し、室温乾燥によって有機溶媒を除去した後、室温送風によって混在する種皮等の不純物を除去して粗胚芽画分を得た。この粗胚芽画分から目視によってコムギ胚芽を判別し、タケ串を用いて選別した。
北海道産チホクコムギ種子を1分間に100gの割合でミル(Fritsch社製:Rotor Speed Mill pulverisette14型)に添加し、回転数8,000rpmで種子を温和に粉砕した。篩いで発芽能を有する胚芽を含む画分(メッシュサイズ0.7〜1.00mm)を回収した後、四塩化炭素とシクロヘキサンの混合液(容量比=四塩化炭素:シクロヘキサン=2.4:1)を用いた浮選によって、発芽能を有する胚芽を含む浮上画分を回収し、室温乾燥によって有機溶媒を除去した後、室温送風によって混在する種皮等の不純物を除去して粗胚芽画分を得た。この粗胚芽画分から目視によってコムギ胚芽を判別し、タケ串を用いて選別した。
得られたコムギ胚芽画分を4℃の蒸留水に懸濁し、超音波洗浄機を用いて洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄した。次いで、ノニデットP40(NonidetP40:ナカライ・テクトニクス社製)の0.5容量%溶液に懸濁し、超音波洗浄機を用いて洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄してコムギ胚芽を得た。
コムギ胚芽抽出物含有液の調製は常法(Erickson, A. H. et al., (1996) Meth.InEnzymol.,96, 38-50)に準じた。以下の操作は4℃で行った。まず液体窒素で凍結したコムギ胚芽を乳鉢中で微粉砕した。得られた粉体1g当たり1mlのPattersonらの方法を一部改変した抽出溶媒(それぞれ最終濃度として、80mM HEPES−KOH(pH7.6)、200mM酢酸カリウム、2mM酢酸マグネシウム、4mM塩化カルシウム、各0.6mM L型アミノ酸20種類、8mMジチオスレイトール)を加えて、泡が発生しないように注意しながら攪拌した。30,000×g、15分間の遠心によって得られる上清を胚芽抽出液として回収し、予め溶液(それぞれ最終濃度として40mM HEPES−KOH(pH7.6)、100mM酢酸カリウム、5mM酢酸マグネシウム、各0.3mMの L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール)で平衡化したセファデックスG−25カラム(Amersham Pharmacia Biotech社製)でゲル濾過を行った。このようにして得られたコムギ胚芽抽出物含有液の濃度は、260nmにおける光学密度(O.D.)(A260)が170〜250(A260/A280=1.5)になるように調製した。
コムギ胚芽抽出物含有液の調製は常法(Erickson, A. H. et al., (1996) Meth.InEnzymol.,96, 38-50)に準じた。以下の操作は4℃で行った。まず液体窒素で凍結したコムギ胚芽を乳鉢中で微粉砕した。得られた粉体1g当たり1mlのPattersonらの方法を一部改変した抽出溶媒(それぞれ最終濃度として、80mM HEPES−KOH(pH7.6)、200mM酢酸カリウム、2mM酢酸マグネシウム、4mM塩化カルシウム、各0.6mM L型アミノ酸20種類、8mMジチオスレイトール)を加えて、泡が発生しないように注意しながら攪拌した。30,000×g、15分間の遠心によって得られる上清を胚芽抽出液として回収し、予め溶液(それぞれ最終濃度として40mM HEPES−KOH(pH7.6)、100mM酢酸カリウム、5mM酢酸マグネシウム、各0.3mMの L型アミノ酸20種類、4mMジチオスレイトール)で平衡化したセファデックスG−25カラム(Amersham Pharmacia Biotech社製)でゲル濾過を行った。このようにして得られたコムギ胚芽抽出物含有液の濃度は、260nmにおける光学密度(O.D.)(A260)が170〜250(A260/A280=1.5)になるように調製した。
(3)コムギ胚芽抽出液による無細胞タンパク質合成系(バッチ法)によるタンパク質合成
上記(2)で調製されたコムギ胚芽抽出物含有液5.8μlを含む蛋白質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、29mM HEPES−KOH(pH7.8)、95mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.23mM L型アミノ酸20種類、2.9mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mMGTP(和光純薬社製)、15mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、0.9U/μl Rnase inhibiter(TAKARA社製)、50ng/μl tRNA(Moniter, R.,et al., Biochim.Biophys.Acta.,43, 1-(1960))、0.46μg/lクレアチンキナーゼ(Roche社製))25μlを作製した。この反応液に上記(1)で作製したランダマイズ配列を含むmRNAを8μg加え、26℃で30分間インキュベートした。30分後Cycloheximide(和光純薬社製)を最終濃度で1.5μMになるように加え、タンパク質合成を中止した。
上記(2)で調製されたコムギ胚芽抽出物含有液5.8μlを含む蛋白質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、29mM HEPES−KOH(pH7.8)、95mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.23mM L型アミノ酸20種類、2.9mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mMGTP(和光純薬社製)、15mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、0.9U/μl Rnase inhibiter(TAKARA社製)、50ng/μl tRNA(Moniter, R.,et al., Biochim.Biophys.Acta.,43, 1-(1960))、0.46μg/lクレアチンキナーゼ(Roche社製))25μlを作製した。この反応液に上記(1)で作製したランダマイズ配列を含むmRNAを8μg加え、26℃で30分間インキュベートした。30分後Cycloheximide(和光純薬社製)を最終濃度で1.5μMになるように加え、タンパク質合成を中止した。
(4)ショ糖密度勾配の作成
10%ショ糖溶液(最終濃度で、25mM Tris-HCl(pH7.6)、50mM塩化カリウム、5mM塩化マグネシウム、10%ショ糖(ナカライ・テクトニクス社製)、0.75μM Cycloheximide(和光純薬社製)、60%ショ糖溶液(最終濃度で、25mM Tris-HCl(pH7.6)、50mM塩化カリウム、5mM塩化マグネシウム、60%ショ糖(ナカライ・テクトニクス社製)、0.75μMCycloheximide(和光純薬社製)を、60%ショ糖溶液を下層に、10%ショ糖溶液を上層にして各2.5mLずつ遠心管に入れた。その後、グラジエーター(東和科学社製:BIOCOMP-GRADENT MASTER)を用いて下記の設定で密度勾配を作った。(1回目、SPEED:25RPM、ANGLE:55deg.、TIME:1mim:50sec.、2回目、SPEED:25RPM、ANGLE:83.5deg.、TIME:1mim:25sec.)作製した密度勾配溶液は4℃で3時間静置した。
10%ショ糖溶液(最終濃度で、25mM Tris-HCl(pH7.6)、50mM塩化カリウム、5mM塩化マグネシウム、10%ショ糖(ナカライ・テクトニクス社製)、0.75μM Cycloheximide(和光純薬社製)、60%ショ糖溶液(最終濃度で、25mM Tris-HCl(pH7.6)、50mM塩化カリウム、5mM塩化マグネシウム、60%ショ糖(ナカライ・テクトニクス社製)、0.75μMCycloheximide(和光純薬社製)を、60%ショ糖溶液を下層に、10%ショ糖溶液を上層にして各2.5mLずつ遠心管に入れた。その後、グラジエーター(東和科学社製:BIOCOMP-GRADENT MASTER)を用いて下記の設定で密度勾配を作った。(1回目、SPEED:25RPM、ANGLE:55deg.、TIME:1mim:50sec.、2回目、SPEED:25RPM、ANGLE:83.5deg.、TIME:1mim:25sec.)作製した密度勾配溶液は4℃で3時間静置した。
(5)ショ糖密度勾配遠心分離法によるポリリボソーム画分の分離とRNAの抽出
上記(3)のタンパク質合成中止後の反応液に希釈溶液(最終濃度で、25mM Tris-HCl(pH7.6)、50mM塩化カリウム、5mM塩化マグネシウム(ナカライ・テクトニクス社製)75μlを加え、これを上記(4)で作製したショ糖密度勾配溶液に載せ、40,000RPM、4℃で1時間遠心(HITACH社製:遠心機CP65β、ローターP55ST2)した。その後100〜120μlずつ画分を取り、各画分のO.D.260nmを計測した。この結果を図2に示す。タンパク質合成が円滑に進んでいると考えられる、ポリリボソームが見られる13〜23画分(ショ糖濃度32.5〜45%)を、AGPC法(Chomczynski,P., et al., Anal. Biochem., 162, 156-159 (1987))を用いてRNA抽出した。この抽出液全量に対しDNase I(TAKARA社製)25Uを加え、37℃で15分間インキュベートして残存DNAを分解し、その後、フェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿により精製した。
上記(3)のタンパク質合成中止後の反応液に希釈溶液(最終濃度で、25mM Tris-HCl(pH7.6)、50mM塩化カリウム、5mM塩化マグネシウム(ナカライ・テクトニクス社製)75μlを加え、これを上記(4)で作製したショ糖密度勾配溶液に載せ、40,000RPM、4℃で1時間遠心(HITACH社製:遠心機CP65β、ローターP55ST2)した。その後100〜120μlずつ画分を取り、各画分のO.D.260nmを計測した。この結果を図2に示す。タンパク質合成が円滑に進んでいると考えられる、ポリリボソームが見られる13〜23画分(ショ糖濃度32.5〜45%)を、AGPC法(Chomczynski,P., et al., Anal. Biochem., 162, 156-159 (1987))を用いてRNA抽出した。この抽出液全量に対しDNase I(TAKARA社製)25Uを加え、37℃で15分間インキュベートして残存DNAを分解し、その後、フェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿により精製した。
(6)cDNAの作成と増幅
RNA LA PCR Kit (AMV) ver1.1(TAKARA社製)を用いて逆転写反応液(それぞれ最終濃度で、5mM塩化マグネシウム、1×RNA PCR buffer、1mM dNTP mixture、1.0μM アンチセンスプライマー(配列番号2)、1U/μl RNase Inhibitor、0.25U/μl Reverse Transcriptase)を作製し、鋳型として上記(5)のRNA抽出液全量を加えて逆転写反応を行い、cDNAを作製した。このcDNAを増幅するため逆転写産物1μlを鋳型として、共通配列とその5'側にSP6プロモーターの3'端GAA配列、更にその5'側に適当な5塩基配列を結合したセンスプライマー(配列番号3)、及びLuciferase遺伝子DNAのスタートコドンのAから20ベース目の塩基配列を含むアンチセンスプライマー(配列番号4)を用いてPCRを行い約150bpのDNA断片を得た。これにExonucleaseI(USB社製)を5U加え37℃で30分間インキュベート後、80℃で30分インキュベートを行いExonucleaseIを失活させた。その後全量をGFXTM PCR DNA and GelBand Purification Kit(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いてアガロースゲルから回収した。
RNA LA PCR Kit (AMV) ver1.1(TAKARA社製)を用いて逆転写反応液(それぞれ最終濃度で、5mM塩化マグネシウム、1×RNA PCR buffer、1mM dNTP mixture、1.0μM アンチセンスプライマー(配列番号2)、1U/μl RNase Inhibitor、0.25U/μl Reverse Transcriptase)を作製し、鋳型として上記(5)のRNA抽出液全量を加えて逆転写反応を行い、cDNAを作製した。このcDNAを増幅するため逆転写産物1μlを鋳型として、共通配列とその5'側にSP6プロモーターの3'端GAA配列、更にその5'側に適当な5塩基配列を結合したセンスプライマー(配列番号3)、及びLuciferase遺伝子DNAのスタートコドンのAから20ベース目の塩基配列を含むアンチセンスプライマー(配列番号4)を用いてPCRを行い約150bpのDNA断片を得た。これにExonucleaseI(USB社製)を5U加え37℃で30分間インキュベート後、80℃で30分インキュベートを行いExonucleaseIを失活させた。その後全量をGFXTM PCR DNA and GelBand Purification Kit(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いてアガロースゲルから回収した。
実施例2 増強された翻訳増強活性を有する核酸塩基配列の選抜、及び該配列からなるポリヌクレオチドの取得
(1)2巡目における候補ポリヌクレオチド(ランダマイズ配列)を含むRNAの作製
Luciferase遺伝子DNAが挿入されたプラスミドを鋳型として、Luciferase遺伝子DNAのスタートコドンのAから20ベース目の塩基配列を含む配列番号4に記載のアンチセンスプライマーと相補的な配列を有するセンスプライマー(配列番号5)、及び配列番号2に示した配列より更に2ベース3'下流の配列を含むアンチセンスプライマー(配列番号6)を用いたPCRを行いLuciferase遺伝子DNAを部分的に含む約3200bpのDNA断片を得た。このPCR産物1μlと実施例1(6)で回収した約150bpのDNA断片の50分の1量の両DNA断片を鋳型にセンスプライマー(配列番号1)、及びアンチセンスプライマー(配列番号2)を用いて再度PCRを行い約3400bpのDNA断片を得た。この4分の3量を鋳型にSP6 RNA Polymerase(TAKARA社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをフェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿の後、Nick Column(Amersham Pharmacia Biotech社製)によって精製した。これを翻訳鋳型として以下の実験に用いた。
(1)2巡目における候補ポリヌクレオチド(ランダマイズ配列)を含むRNAの作製
Luciferase遺伝子DNAが挿入されたプラスミドを鋳型として、Luciferase遺伝子DNAのスタートコドンのAから20ベース目の塩基配列を含む配列番号4に記載のアンチセンスプライマーと相補的な配列を有するセンスプライマー(配列番号5)、及び配列番号2に示した配列より更に2ベース3'下流の配列を含むアンチセンスプライマー(配列番号6)を用いたPCRを行いLuciferase遺伝子DNAを部分的に含む約3200bpのDNA断片を得た。このPCR産物1μlと実施例1(6)で回収した約150bpのDNA断片の50分の1量の両DNA断片を鋳型にセンスプライマー(配列番号1)、及びアンチセンスプライマー(配列番号2)を用いて再度PCRを行い約3400bpのDNA断片を得た。この4分の3量を鋳型にSP6 RNA Polymerase(TAKARA社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをフェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿の後、Nick Column(Amersham Pharmacia Biotech社製)によって精製した。これを翻訳鋳型として以下の実験に用いた。
(2)2巡目におけるコムギ胚芽無細胞タンパク質合成系(バッチ法)によるタンパク質合成
実施例1(2)で調製されたコムギ胚芽抽出物含有液5.8μlを含む蛋白質合成用反応液(実施例1(3)と同条件)25μlを作製した。この反応液に実施例1(7)で作製した候補ポリヌクレオチドを含むmRNAを8μg加え、26℃で30分間インキュベートした。30分後Cycloheximide(和光純薬社製)を最終濃度で1.5μMになるように加え、タンパク質合成を中止した。
実施例1(2)で調製されたコムギ胚芽抽出物含有液5.8μlを含む蛋白質合成用反応液(実施例1(3)と同条件)25μlを作製した。この反応液に実施例1(7)で作製した候補ポリヌクレオチドを含むmRNAを8μg加え、26℃で30分間インキュベートした。30分後Cycloheximide(和光純薬社製)を最終濃度で1.5μMになるように加え、タンパク質合成を中止した。
(3)2巡目におけるショ糖密度勾配遠心分離法によるポリリボソーム画分の分離とRNAの抽出
上記(2)のタンパク質合成中止後の反応液に希釈溶液(実施例1(5)と同条件)を加え、これを実施例1(4)で作製したショ糖密度勾配溶液に載せ、40,000RPM、4℃で1時間遠心(HITACH社製:遠心機CP65β、ローターP55ST2)した。その後100〜120μlずつ画分を取り、各画分の260nmにおける光学密度(O.D.)を計測した。この結果を図2に示す。タンパク質合成が円滑に進んでいると考えられる、ポリリボソームが見られる13〜21画分(ショ糖濃度35〜45%)を、AGPC法(Chomczynski,P.,et al.,Anal.Biochem.,162, 156-159(1987))を用いてRNA抽出した。この抽出液全量に対しDNase I(TAKARA社製)25Uを加え、37℃で15分間インキュベートして残存DNAを分解し、その後、フェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿により精製した。
上記(2)のタンパク質合成中止後の反応液に希釈溶液(実施例1(5)と同条件)を加え、これを実施例1(4)で作製したショ糖密度勾配溶液に載せ、40,000RPM、4℃で1時間遠心(HITACH社製:遠心機CP65β、ローターP55ST2)した。その後100〜120μlずつ画分を取り、各画分の260nmにおける光学密度(O.D.)を計測した。この結果を図2に示す。タンパク質合成が円滑に進んでいると考えられる、ポリリボソームが見られる13〜21画分(ショ糖濃度35〜45%)を、AGPC法(Chomczynski,P.,et al.,Anal.Biochem.,162, 156-159(1987))を用いてRNA抽出した。この抽出液全量に対しDNase I(TAKARA社製)25Uを加え、37℃で15分間インキュベートして残存DNAを分解し、その後、フェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿により精製した。
(4)cDNAの作成と増幅
実施例1(6)と同条件で逆転写反応を行い、cDNAを作製した。このcDNAを更に増幅するため逆転写産物1μlを鋳型として、配列番号3、及び7に記載した配列を有するプライマーを用いてポリメラーゼチェインリアクション(PCR)を行い、約150bpのDNA断片を得た。
実施例1(6)と同条件で逆転写反応を行い、cDNAを作製した。このcDNAを更に増幅するため逆転写産物1μlを鋳型として、配列番号3、及び7に記載した配列を有するプライマーを用いてポリメラーゼチェインリアクション(PCR)を行い、約150bpのDNA断片を得た。
(5)TAクローニング及びシークエンス
pGEM-T Easy Kit(プロメガ社製)を用いて、反応液(それぞれ最終濃度で、1×Rapid Ligation Buffer、ng/μl pGEM-T Easy Vevtor)を作製しこれに上記(4)のDNA断片を加えて、14℃で4時間インキュベートして、DNA断片をpGEM-T Easy Vevtorに組み込んだ。その後、全量を用いて大腸菌JM109(TAKARA社製)にトランスフォーメーションを行い、形成されたコロニーからプラスミド抽出し、該プラスミド中の挿入配列についてシークエンスを行った。その結果、ランダマイズ部位に1種類の新規の配列(配列番号8)を確認した。
pGEM-T Easy Kit(プロメガ社製)を用いて、反応液(それぞれ最終濃度で、1×Rapid Ligation Buffer、ng/μl pGEM-T Easy Vevtor)を作製しこれに上記(4)のDNA断片を加えて、14℃で4時間インキュベートして、DNA断片をpGEM-T Easy Vevtorに組み込んだ。その後、全量を用いて大腸菌JM109(TAKARA社製)にトランスフォーメーションを行い、形成されたコロニーからプラスミド抽出し、該プラスミド中の挿入配列についてシークエンスを行った。その結果、ランダマイズ部位に1種類の新規の配列(配列番号8)を確認した。
実施例3 新規配列の翻訳促進活性の検討
(1)新規配列を含むDNA断片の作成
翻訳鋳型となるmRNAは、GFP遺伝子DNA(Chiu, W. –L.,et al., Curr. Biol. 6, 325-330 (1996))が挿入されたpEU-GFPベクター(Sawasaki, T. et al.,PNAS, 99 (23), 14652-7(2002))を基に、Ω配列部分を配列番号8に記載の塩基配列に置き換えた環状プラスミドDNAを鋳型として、SP6 RNApolymerase(Promega社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをフェノール/クロロフォルム抽出、エタノール沈殿の後、Nick Column(Amersham Pharmacia Biotech社製)により精製して用いた。また、コントロールの翻訳効率増強配列としてタバコモザイクウィルス(TMV)のオメガ(Ω)配列を5'非翻訳領域に含み、3'非翻訳領域が約1600ntsのDNA断片を転写、精製し、コントロールとして用いた。
(1)新規配列を含むDNA断片の作成
翻訳鋳型となるmRNAは、GFP遺伝子DNA(Chiu, W. –L.,et al., Curr. Biol. 6, 325-330 (1996))が挿入されたpEU-GFPベクター(Sawasaki, T. et al.,PNAS, 99 (23), 14652-7(2002))を基に、Ω配列部分を配列番号8に記載の塩基配列に置き換えた環状プラスミドDNAを鋳型として、SP6 RNApolymerase(Promega社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをフェノール/クロロフォルム抽出、エタノール沈殿の後、Nick Column(Amersham Pharmacia Biotech社製)により精製して用いた。また、コントロールの翻訳効率増強配列としてタバコモザイクウィルス(TMV)のオメガ(Ω)配列を5'非翻訳領域に含み、3'非翻訳領域が約1600ntsのDNA断片を転写、精製し、コントロールとして用いた。
(2)コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系(バッチ法)によるタンパク質合成
実施例1(2)で調製したコムギ胚芽抽出物含有液5.8μlを含む蛋白質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、29mM HEPES−KOH(pH7.8)、95mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.23mML型アミノ酸20種類、2.9mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、15mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、0.9U/μl Rnase inhibiter(TAKARA社製)、50ng/μltRNA(Moniter, R.,et al., Biochim. Biophys. Acta., 43, 1-(1960))、0.46μg/lクレアチンキナーゼ(Roche社製)、)25μlを作製した。この反応液に翻訳鋳型mRNAを8μg/μl加え、26℃でインキュベートした。
実施例1(2)で調製したコムギ胚芽抽出物含有液5.8μlを含む蛋白質合成用反応液(それぞれ最終濃度で、29mM HEPES−KOH(pH7.8)、95mM酢酸カリウム、2.7mM酢酸マグネシウム、0.4mMスペルミジン(ナカライ・テクトニクス社製)、各0.23mML型アミノ酸20種類、2.9mMジチオスレイトール、1.2mM ATP(和光純薬社製)、0.25mM GTP(和光純薬社製)、15mMクレアチンリン酸(和光純薬社製)、0.9U/μl Rnase inhibiter(TAKARA社製)、50ng/μltRNA(Moniter, R.,et al., Biochim. Biophys. Acta., 43, 1-(1960))、0.46μg/lクレアチンキナーゼ(Roche社製)、)25μlを作製した。この反応液に翻訳鋳型mRNAを8μg/μl加え、26℃でインキュベートした。
反応開始後、48時間までの反応液各1μlを100倍希釈したものを用いて、ルミノメーター(Turner Designs社製TD-360)により460nmにおける蛍光を測定した。この結果を図3に示す。
上記各合成系の反応液から48時間後に1μlを採取し、12.5%SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)で分離し、クマシーブリリアントブルー(CBB)による染色により分析した。この結果を図4に示す。配列番号8に記載の塩基配列は、Ω配列を含むRNAの場合と同等の翻訳鋳型活性を示した。
Claims (7)
- 以下から選ばれる配列を含む、翻訳増強活性を有するポリヌクレオチド;
1)配列表の配列番号8で表される塩基配列からなる核酸及び/又はその相補鎖、
2)配列表の配列番号8で表される塩基配列のうち1ないし数個のヌクレオチドが、置換、欠失、挿入または付加された配列からなる塩基配列をコードする核酸及び/又はその相補鎖、
3)配列表の配列番号8で表される塩基配列と少なくとも80%以上の相同性を有する核酸及び/又はその相補鎖。 - 請求項1に記載の配列とストリンジェントな条件でハイブリダイゼーションする配列を含む翻訳増強活性を有するポリヌクレオチド、またはその相補的塩基配列からなるポリヌクレオチド。
- 翻訳効率を制御する活性が、RNAウィルスの5'−非翻訳リーダー配列が有する活性と同等か、またはそれ以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む翻訳鋳型。
- 請求項4に記載の翻訳鋳型を用いることを特徴とするタンパク質合成方法。
- 請求項5に記載のタンパク質合成方法により得られるタンパク質。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
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