本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る移動体通信システム1のシステム構成を示す図である。同図に示すように、移動体通信システム1は、複数の移動局装置10と、複数の基地局装置20と、通信ネットワーク30と、を含んで構成される。
移動局装置10は、CPU、メモリ、及び通信インターフェイスを備えたコンピュータである。CPUは、移動局装置10の各部を制御し、音声通信、パケット通信などの通信に関わる処理を実行する。メモリは、CPUのワークメモリとして動作するとともに、CPUによって行われる各種処理に関わるプログラムやパラメータを保持している。
通信インターフェイスは、アンテナを備えており、基地局装置20から送信される通信信号や制御信号を受信しCPUに出力する処理や、CPUの指示に従い、通信信号や制御信号を無線区間に電波として送出する処理を行う。
基地局装置20も、CPU、メモリ、及び通信インターフェイスを備えたコンピュータである。CPUは、基地局装置20の各部を制御し、音声通信、パケット通信などの通信に関わる処理を実行する。メモリは、CPUのワークメモリとして動作するとともに、CPUによって行われる各種処理に関わるプログラムやパラメータを保持している。
基地局装置20は、通信インターフェイスとして、アンテナを備えた無線通信インターフェイスと、有線インターフェイスとを有している。無線通信インターフェイスは、移動局装置10から送信される通信信号や制御信号を受信しCPUに出力する処理や、CPUの指示に従い、通信信号や制御信号を無線区間に電波として送出する処理を行う。有線インターフェイスは、通信ネットワーク30に含まれる他のコンピュータから送信される通信信号や制御信号を受信しCPUに出力する処理や、CPUの指示に従い、通信信号や制御信号を通信ネットワーク30に送信する処理を行う。
基地局装置20に備えられる無線通信インターフェイスは、空間分割多重を行うことができるよう構成される。すなわち、この無線通信インターフェイスは複数本のアンテナを備えてアダプティブアレイアンテナを構成しており、移動局装置10から各アンテナで受信される電波の受信電力に基づき、各アンテナから送信する電波の送信電力を制御する。基地局装置20は、この制御により移動局装置10の存在する方向に送信電波の指向性を向けることによって、空間分割多重を実現している。
複数の基地局装置20は、上述の空間分割多重の他、時分割多重、周波数分割多重、及び時分割多重複信により多重しつつ、複数の移動局装置10との通信を行う。
通信ネットワーク30は、交換ネットワークやTCP/IPネットワークである。この通信ネットワーク30には複数のコンピュータが接続されており(不図示)、通信ネットワーク30は、これら相互間の通信を中継する。
移動体通信システム1では、周波数ごとにフレームが設定されている。各フレームは、4つの上りタイムスロット(移動局装置10から基地局装置20へ送信される信号を含めるタイムスロット)と4つの下りタイムスロット(基地局装置20から移動局装置10へ送信される信号を含めるタイムスロット)とをこの順で含んで構成される。各フレーム内においてn番目(n=1乃至4)の上りタイムスロットと、n番目の下りタイムスロットとは対応しており、1つの通信の上り(Rx)用及び下り(Tx)用として使用される。以下では、この互いに対応する上りタイムスロット及び下りタイムスロットの組み合わせをタイムスロットセットと称する。
以下、図2を参照しながら、タイムスロットの使用方法について概説する。
基地局装置20が移動局装置10と行う通信は、フレームを構成する複数のタイムスロットのうち少なくとも1つを利用して行われる。そこで基地局装置20は、移動局装置10との通信を開始するにあたり、通常は、まずタイムスロットセットの空き状況を確認し、空いているタイムスロットセット(通信に使用されていないタイムスロットセット)を移動局装置10に割り当てる。図2(a)はこのようにしてタイムスロットセットが割り当てられた状態である。同図では、4つの移動局装置10に対し、それぞれ1つずつのタイムスロットセットが割り当てられている。
通信を開始した後も、基地局装置20はタイムスロットセットの空き状況を常に確認しており、フレーム内の全てのタイムスロットセットのうち、ある通信に使用されているタイムスロットセット以外のタイムスロットセットに空きが生じた場合、基地局装置20はまず引き続き使用されている該通信の通信種別(パケット通信か音声通信か)を判断する。この判断の結果、該通信がパケット通信であれば、基地局装置20は該通信のデータ量に応じて、空きとなったタイムスロットセットをさらに割り当て、通信レートを上げるようにする。一方、該通信が音声通信であれば、基地局装置20は空きとなったタイムスロットセットをさらに割り当てる処理は行わない。音声通信については、通信レートを上げる必要性が低いからである。図2(b)はこのようにしてタイムスロットセットが割り当てられた状態である。同図では、(Rx1,Tx1)がパケット通信、(Rx2,Tx2)が音声通信である。同図では1フレーム内で2つの移動局装置10しか通信をしておらず、基地局装置20は、余った2つのタイムスロットセットを、パケット通信(Rx1,Tx1)を行っている移動局装置10に割り当てている。
次に、フレーム内の全てのタイムスロットセットのうち、ある通信に使用されているタイムスロットセット以外の全てのタイムスロットセットが空きとなった場合、基地局装置20は、該通信がパケット通信であれば、4つのタイムスロットセットを、上りと下りでそれぞれ連結して使用するようにする。この連結に際しては、基地局装置20は、上述のように、本来各タイムスロットに含まれる情報のうち、同じ移動局装置10について同じフレーム内では1度送信すれば足りる情報(タイムスロット共通情報)を共通化する。連結されたタイムスロットにはタイムスロット共通情報が1タイムスロット分しか含まれていないために、基地局装置20及び移動局装置10において、連結されたタイムスロットは1つのタイムスロットとして取り扱われるようになるものの、移動局装置10の通信レートのさらなる高速化が実現される。
図2(c)は、この連結タイムスロットを使用する状態である。同図では、下りタイムスロットのみが連結されている。すなわち、下りのデータ量のみが多く上りのデータ量が少ない場合には、上りのタイムスロットまで連結する必要性がないので、基地局装置20は下りタイムスロットのみを連結する。
なお、あるフレームで連結タイムスロットが使用されているときに、このフレームで新たな通信を開始しようとする移動局装置10が発生すると、基地局装置20は連結タイムスロットを解除し、連結タイムスロットを利用していた通信の使用するタイムスロット数を減ずることにより、新たな通信を行うためのタイムスロットを確保する。
次に、通信数が多くなってきた場合、基地局装置20は、複数の通信を空間分割多重により多重化することを試みる。すなわち、基地局装置20は、アダプティブアレイアンテナを構成する各アンテナにおいて、各移動局装置10から受信している電波をそれぞれ受信することにより、各移動局装置の位置する方向を取得する。基地局装置20は、このようにして取得した位置に基づき、空間分割多重可能な通信の組み合わせを判定し、空間分割多重を実施する。図2(d)及び図2(e)は空間分割多重を実施している状態を示している。図2(d)は、連結タイムスロットを使用していない場合に実施される空間分割多重を示している。同図に示すように、この空間分割多重は、タイムスロットセットごとに実施される。一方、図2(e)は、連結タイムスロットを使用している場合に実施される空間分割多重を示している。同図に示すように、連結タイムスロットを使用している場合の空間分割多重は、連結タイムスロットごとに実施される。
本実施の形態では、以上のようにしてタイムスロットを使用する移動体通信システム1において、ある移動局装置10が行う通信が、連結タイムスロットを利用することにより高速通信している他の移動局装置10の通信レートに影響を与えないようにする。実施形態1では、このための処理を主として基地局装置20が行う。一方、実施形態2では、このための処理を主として移動局装置10が行う。
[実施形態1]
図3は、実施形態1に係る基地局装置20aの機能ブロックを示す図である。同図に示すように、基地局装置20aは機能的に、デュプレクサ21、送受信部22、データ処理部23、通信処理部24a、連結タイムスロット利用有無判断部25、空間分割多重可否判断部26を含んで構成される。このうち、送受信部22は受信部221及び送信部222を、通信処理部24aはハンドオーバ指示部241、フレーム使用開始指示部242a、通信開始要求受付部243a、空間分割多重実施部244、及び連結タイムスロット利用可否判断部245を、それぞれ含んで構成される。なお、図3に基づく以下の説明では、簡単のため、1つの基地局装置20aにフレームが1つのみ用意されているという前提で説明を進める。
デュプレクサ21は、切替スイッチを有し、フレームの送受信時において、上りタイムスロットと下りタイムスロットと、で該切替スイッチを切り替える。これにより、デュプレクサ21は、アダプティブアレイアンテナで受信された上りタイムスロットを含む無線信号を受信部221に出力し、送信部222から出力された下りタイムスロットを含む無線信号をアダプティブアレイアンテナから無線区間に送出することを実現する。すなわち、デュプレクサ21は、時分割多重複信を実現する。
送受信部22は、無線信号(無線周波数の信号)とベースバンド信号(ベースバンド周波数の信号)の相互変換や、増幅処理を行う。具体的には、受信部221は、デュプレクサ21から出力された無線信号の周波数をベースバンド周波数に変換する。受信部221は、この変換によりベースバンド信号を取得し、データ処理部23に出力する。また、送信部222は、データ処理部23から出力されたベースバンド信号の周波数を無線周波数に変換する。送信部222は、この変換により無線信号を取得し、デュプレクサ21に出力する。
データ処理部23は、ベースバンド信号から、通信内容、すなわち通信信号や制御信号を取得し、通信ネットワーク30に送信する。また、データ処理部23は、通信ネットワーク30から通信信号や制御信号を受信し、ベースバンド信号を生成して送信部222に出力する。
通信処理部24aは、データ処理部23により取得される制御信号に基づき、通信処理を行う。また、必要に応じ制御信号をデータ処理部23に出力し、移動局装置10や通信ネットワーク30に対して送信させる。
通信開始要求受付部243aは、移動局装置10が送信した制御信号のうち通信開始要求を受け付け、該通信開始要求に応じて通信開始処理を開始する。この通信開始処理の詳細については後述する。
ハンドオーバ指示部241は、移動局装置10に対し、ハンドオーバを指示するための制御信号を生成し、データ処理部23に出力する。
フレーム使用開始指示部242aは、通信開始要求受付部243aにより行われる通信開始処理が完了すると、その結果に従って、通信開始要求を送信した移動局装置10に対し、フレームの使用開始を指示するための制御信号を生成し、データ処理部23に出力する。詳細は後述する。
空間分割多重実施部244は空間分割多重を実施する。すなわち、空間分割多重実施部244は、上述のように、1つのタイムスロット又は連結タイムスロットにおいて、同時に複数の移動局装置10が通信できるようにする。
連結タイムスロット利用可否判断部245は、移動局装置10が行う通信が、連結タイムスロットを使用することができる通信であるかどうかを判断する。すなわち、移動局装置10が行う通信がパケット通信である場合、連結タイムスロット利用可否判断部245は、移動局装置10が行う通信が、連結タイムスロットを使用することができる通信であると判断する。一方、移動局装置10が行う通信が音声通信である場合、連結タイムスロット利用可否判断部245は、移動局装置10が行う通信が、連結タイムスロットを使用することができない通信であると判断する。
連結タイムスロット利用有無判断部25は、現在行われている通信が、連結タイムスロットを利用しているか否かを判断する。
空間分割多重可否判断部26は、通信処理部24aが指定した移動局装置10が行う通信と、現在行われている通信と、が空間分割多重可能か否かを判断する。
以下、通信開始要求受付部243aが行う通信開始処理について、詳細に説明する。
通信開始要求受付部243aは、まず連結タイムスロット利用可否判断部245に、通信開始要求を送信した移動局装置10の行おうとする通信が、連結タイムスロットを使用することができる通信であるかどうかを判断させる。
また、通信開始要求受付部243aは、現在連結タイムスロット通信が行われているか否か、を連結タイムスロット利用有無判断部25に判断させる。
さらに、通信開始要求受付部243aは、通信開始要求を送信した移動局装置10を指定し、空間分割多重可否判断部26に現在行われている通信との空間分割多重が可能か否かを判断するよう、指示する。
空間分割多重可否判断部26は、通信開始要求受付部243aによる指示を受け、連結タイムスロット利用可否判断部245に、指定された移動局装置10の行おうとする通信が、連結タイムスロットを使用することができる通信であるかどうかを問い合わせる。また、連結タイムスロット利用有無判断部25に現在連結タイムスロット通信が行われているか否かを問い合わせる。
その結果、指定された移動局装置10の行おうとする通信が、連結タイムスロットを使用することができる通信である場合であって、現在連結タイムスロット通信が行われている場合には、空間分割多重可否判断部26は、各移動局装置10から送信されている信号の受信電力に基づき空間分割多重の可否を判断する。
一方、指定された移動局装置10の行おうとする通信が、連結タイムスロットを使用することができる通信である場合であって、現在連結タイムスロット通信が行われていない場合には、空間分割多重可否判断部26は、空間分割多重は不可能であると判断する。
さらに、指定された移動局装置10の行おうとする通信が、連結タイムスロットを使用することができない通信である場合であって、現在連結タイムスロット通信が行われている場合には、空間分割多重可否判断部26は、空間分割多重は不可能であると判断する。
また、指定された移動局装置10の行おうとする通信が、連結タイムスロットを使用することができない通信である場合であって、現在連結タイムスロット通信が行われていない場合には、空間分割多重可否判断部26は、各移動局装置10から送信されている信号の受信電力に基づき空間分割多重の可否を判断する。
通信開始要求受付部243aは、以上の各部の判断結果に基づき、通信開始要求を送信した移動局装置10が行おうとする通信が、タイムスロット連結を解除することとなる通信であるかどうかを判断する。
具体的には、通信開始要求受付部243aは、通信開始要求を送信した移動局装置10が行おうとする通信が、以下のいずれかに該当する場合に、連結タイムスロットを解除することとなる通信と判断する。1つは、連結タイムスロット利用可否判断部245の判断結果により連結タイムスロットを利用不可能な通信であることが示された場合である。他の1つは、連結タイムスロットを利用可能な通信であることが示された場合であって、空間分割多重可否判断部26により空間分割多重が不可能な通信であることが示された場合である。
通信開始要求受付部243aは、通信開始要求を送信した移動局装置10が行おうとする通信がタイムスロット連結を解除することとなる通信であると判断した場合であって、さらに連結タイムスロット利用有無判断部25により現在連結タイムスロット通信が行われていると判断された場合に、通信開始要求を送信した移動局装置10の通信開始を制限する。より具体的には、通信開始要求受付部243aは、ハンドオーバ指示部241に対し、移動局装置10に対して他の基地局装置20aへのハンドオーバを指示するよう、指示する。
また、通信開始要求受付部243aは、連結タイムスロット利用有無判断部25により現在連結タイムスロット通信が行われていないと判断された場合には、通信開始要求を送信した移動局装置10が連結タイムスロットを利用して通信を開始することを制限する。すなわち、通信開始要求受付部243aは、通信開始要求を送信した移動局装置10に対し連結タイムスロットを割り当てないことを決定する。
フレーム使用開始指示部242aは、通信開始要求受付部243aにより行われる通信開始処理が完了すると、その結果に従って、フレームの使用開始を指示するための制御信号を生成する。すなわち、フレーム使用開始指示部242aは、通信開始が制限された場合には、フレームの使用開始を指示するための制御信号を生成しない。また、フレーム使用開始指示部242aは、連結タイムスロットを利用して通信を開始することが制限された場合には、連結タイムスロットでない通常のタイムスロットを使用してフレームの使用を開始するよう、移動局装置10に指示するための制御信号を生成する。一方、フレーム使用開始指示部242aは、通信開始及び連結タイムスロットを利用して通信を開始することが制限されていない場合には、連結タイムスロットを使用してフレームの使用を開始するよう、移動局装置10に指示するための制御信号を生成する。
移動局装置10は、フレーム使用開始指示部242aの指示或いはハンドオーバ指示部241の指示に従い、通信を開始する。
以上説明した基地局装置20aの処理について、その処理フロー図を参照しながら、再度より詳細に説明する。
図4は、基地局装置20aの処理フローを示す図である。なおここでは、各移動局装置10が行う通信を呼と称する。同図に示すように、基地局装置20aは、まず各フレームの通信状態を取得する(S1)。すなわち、基地局装置20aは、まず各フレームにおいてパケット呼及び音声呼が通信中であるかどうかについての情報を取得する。
次に、基地局装置20aは、通信開始要求を送信した移動局装置10(以下、注目移動局装置10と称する。)が開始しようとする呼の呼種別(音声呼又はパケット呼)を判断する(S2)。音声呼であると判断した場合には、基地局装置20aは、通信中呼が音声呼のみであるかどうかを判断する(S3)。音声呼のみでなければ、基地局装置20aは、注目移動局装置10をハンドオーバさせる(S8)。一方、音声呼のみであれば、空きタイムスロットがあれば、基地局装置20aは、注目移動局装置10にそのタイムスロットのうちの1つを割り当てる(S7)。
次に、S2においてパケット呼であると判断した場合には、基地局装置20aは、通信中呼がパケット呼のみであるかどうかを判断する(S4)。パケット呼のみでなければ、基地局装置20aは、注目移動局装置10をハンドオーバさせる(S8)。一方、パケット呼のみであれば、基地局装置20aは、通信中呼が連結タイムスロットを利用しているか否かを判断する(S5)。利用していると判断した場合、次に基地局装置20aは、該連結タイムスロットを利用するパケット呼と、通信開始要求を送信した移動局装置10が開始しようとするパケット呼と、を空間分割多重できるか否かを判断する(S6)。この判断の結果、空間分割多重できると判断した場合には、基地局装置20aは、連結タイムスロットを注目移動局装置10に割り当てるとともに、空間分割多重を実施する(S9)。
S5において利用していないと判断した場合や、S6において空間分割多重できないと判断した場合には、空きタイムスロットがあれば、基地局装置20aは、注目移動局装置10にそのタイムスロットのうちの少なくとも1つを割り当てる(S10)。
以上説明したように、移動体通信システム1では、通信開始要求を送信した移動局装置10が連結タイムスロットを解除することとなる通信を開始することを制限できるので、該移動局装置10の通信が、連結タイムスロットを利用することにより高速通信している他の移動局装置10の通信レートに影響を与えないようにすることが実現される。
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係る基地局装置20bの機能ブロックを示す図である。また、図6は、実施形態2に係る移動局装置10の機能ブロックを示す図である。なお、図5及び図6に基づく以下の説明では、簡単のため、1つの基地局装置20bにフレームが1つのみ用意されているという前提で説明を進める。
図5に示すように、基地局装置20bは機能的に、デュプレクサ21、送受信部22、データ処理部23、通信処理部24b、空間分割多重可否判断部26、通信状態取得部27を含んで構成される。このうち、送受信部22は受信部221及び送信部222を、通信処理部24bはフレーム使用開始指示部242b、通信開始要求受付部243b、空間分割多重実施部244、及び空間多重可能性情報取得部246を、それぞれ含んで構成される。
なお、デュプレクサ21、送受信部22、データ処理部23、空間分割多重可否判断部26、空間分割多重実施部244の各機能は実施形態1におけるものと同様であるので、以下での説明を省略する。
また、図6に示すように、移動局装置10は機能的に、デュプレクサ11、送受信部12、データ処理部13、通信処理部14を含んで構成される。このうち、送受信部12は受信部121及び送信部122を含んで構成される。また、通信処理部14は、受信電力取得部141、通信状態情報取得部142、空間分割可能性情報取得部143、基地局装置選択優先度決定部145、基地局装置優先度記憶部146、通信開始要求生成部148を含んで構成される。このうち、基地局装置選択優先度決定部145は解除可能性判断部147を含んで構成される。
以下、まず基地局装置20bについて説明する。
通信状態取得部27は、送受信部22の通信状態を取得する。ここで取得する通信状態は、連結タイムスロット通信が行われているか否かに関する通信状態である。通信状態取得部27は、取得した通信状態を示す通信状態情報を生成し、通信処理部24bに出力する。
通信処理部24bは、通信処理部24aと同様、データ処理部23により取得される制御信号に基づき、通信処理を行う。また、必要に応じ制御信号をデータ処理部23に出力し、移動局装置10や通信ネットワーク30に対して送信させる。通信処理部24bは、通信状態取得部27から入力された通信状態情報を制御信号に含め、データ処理部23に、移動局装置10に対して送信させる。なお、通信処理部24bは、この通信状態情報を含む制御信号を、基地局装置20bの送信電波が受信できる範囲(地理的範囲)内に存在する全ての移動局装置10に対する一斉同報信号として送信するようにすることが好適である。
空間分割可能性情報取得部246は、後述する通信開始要求受付部243bが指定した移動局装置10が行おうとする通信と、現に行っている通信と、の空間分割多重の可能性を示す空間分割多重可能性情報を取得する。具体的には、空間分割可能性情報取得部246は、空間分割多重可否判断部26にこの可能性を問い合わせ、その結果を空間分割多重可能性情報としている。
空間分割多重可否判断部26は、指定された移動局装置10の行おうとする通信が、連結タイムスロットを使用することができる通信であるかどうかを示す情報を取得するとともに、及び現在連結タイムスロット通信が行われているか否かを示す情報を取得する。そしてこれらの取得した情報に基づき、実施形態1と同様に、通信開始要求受付部243bが指定した移動局装置10が行おうとする通信と、現に行っている通信と、の空間分割多重の可能性を判断する。
通信開始要求受付部243bは、移動局装置10が送信した制御信号のうち通信開始要求を受け付け、該通信開始要求に応じて通信開始処理を開始する。
この通信開始処理では、通信開始要求受付部243bは、まず空間分割可能性情報取得部246に、通信開始要求を送信した移動局装置10を指定して、その空間分割多重の可能性を示す空間分割多重可能性情報を取得させる。通信開始要求受付部243bは、取得した空間分割多重可能性情報を制御信号に含め、データ処理部23に、移動局装置10に対して送信させる。なお、通信開始要求受付部243bは、この空間分割多重可能性情報を含む制御信号を、基地局装置20bの送信電波が受信できる範囲(地理的範囲)内に存在する全ての移動局装置10に対する一斉同報信号として送信するようにすることが好適である。
その後、再度移動局装置10から通信開始要求を受け付けた場合、通信開始要求受付部243bは、該再度の通信開始要求を送信した移動局装置10に対し通信を許可することを決定する。
フレーム使用開始指示部242bは、通信開始要求受付部243bが通信を許可した移動局装置10に対し、フレームの使用開始を指示するための制御信号を生成し、データ処理部23に出力する。
次に、移動局装置10について説明する。
デュプレクサ11は、切替スイッチを有し、フレームの送受信時において、上りタイムスロットと下りタイムスロットと、で該切替スイッチを切り替える。これにより、デュプレクサ11は、アンテナで受信された上りタイムスロットを含む無線信号を受信部121に出力し、送信部122から出力された下りタイムスロットを含む無線信号をアンテナから無線区間に送出することを実現する。すなわち、デュプレクサ11は、デュプレクサ21とともに時分割多重複信を実現する。
送受信部12は、無線信号(無線周波数の信号)とベースバンド信号(ベースバンド周波数の信号)の相互変換や、増幅処理を行う。具体的には、受信部121は、デュプレクサ11から出力された無線信号の周波数をベースバンド周波数に変換する。受信部121は、この変換によりベースバンド信号を取得し、データ処理部13に出力する。また、送信部122は、データ処理部13から出力されたベースバンド信号の周波数を無線周波数に変換する。送信部122は、この変換により無線信号を取得し、デュプレクサ11に出力する。
データ処理部13は、ベースバンド信号から、通信内容、すなわち通信信号や制御信号を取得し、所定のフォーマットに変換し、入出力ポートに出力する。この入出力ポートには、例えばスピーカ、ディスプレイ、マイク、ダイヤルキーなどの入出力手段が接続される。また、データ処理部13は、入出力ポートから入力された信号を通信信号や制御信号に変換し、ベースバンド信号を生成して送信部122に出力する。
通信処理部14は、データ処理部13により取得される制御信号に基づき、通信処理を行う。また、必要に応じ制御信号をデータ処理部13に出力し、移動局装置10や通信ネットワーク30に対して送信させる。さらに、通信処理部14は、パケット通信又は音声通信を開始することを決定し、基地局装置選択優先度決定部145に通信相手となる基地局装置20bを選択させる。以下、この選択のための構成及び選択された場合の通信開始処理について、具体的に説明する。
受信電力取得部141は、受信部121が各基地局装置20bから送信された制御信号を受信する際の受信電力を取得し、該受信電力を示す受信電力情報を基地局装置選択優先度決定部145に出力する。
通信状態情報取得部142は、各基地局装置20bから送信された制御信号に含まれる上記通信状態情報を取得し、基地局装置選択優先度決定部145に出力する。
基地局装置選択優先度決定部145は、これらの各部から入力された情報に基づき、当該移動局装置10が通信を開始する基地局装置20bの選択優先度を決定する。以下、この選択について、詳細に説明する。
解除可能性判断部147は、各基地局装置20bのそれぞれから受信した通信状態情報に基づき、該各基地局装置20bのそれぞれと当該移動局装置10とが通信を開始することにより、連結タイムスロット通信のタイムスロット連結が解除される可能性を判断する。基地局装置選択優先度決定部145は、この判断結果に基づいて、通信を開始する基地局装置20bの選択優先度を決定する。
具体的には、解除可能性判断部147は、当該移動局装置10が開始しようとする通信が連結タイムスロットを利用不可能な通信(例えば音声通信)である場合に、連結タイムスロットを利用可能な通信である場合に比べ、連結タイムスロット通信のタイムスロット連結が解除される可能性が高いと判断する。
また、基地局装置選択優先度決定部145は、各基地局装置20bそれぞれについての受信電力にさらに基づいて、通信を開始する基地局装置20bの選択優先度を決定する。
そして、基地局装置選択優先度決定部145は、基地局装置20bの選択優先度が高い順に、各基地局装置20bの中から1つの基地局装置20bを選択し、通信開始要求生成部148に、該選択した基地局装置20bに対して通信開始要求を送信するよう、指示する。
ここまでで説明した基地局装置選択優先度決定部145における処理を、より具体的な例により説明する。この例では、基地局装置選択優先度決定部145は、基地局装置優先度記憶部146に記憶される下記の各テーブルを使用する。
基地局装置優先度記憶部146は、通信状態テーブル、受信感度テーブル、及び基地局装置優先度テーブルを記憶する。
図7は通信状態テーブルの例である。同図に示すように、通信状態テーブルは、基地局装置20bの通信状態(連結タイムスロット通信が行われているか否か)と、点数と、を対応付けて記憶している。なお、通信状態テーブルは、当該移動局装置10が行おうとする通信が連結タイムスロットを利用する通信である場合とない場合とで異なる点数を記憶している。
図8は受信感度テーブルの例である。同図に示すように、受信感度テーブルは、基地局装置20bからの信号の受信感度(優良可の3段階)と、点数と、を対応付けて記憶している。
基地局装置選択優先度決定部145は、通信状態情報取得部142より入力された通信状態情報により示される通信状態と、当該移動局装置10がこれから行おうとする通信が連結タイムスロットを利用する通信であるか否かに基づいて、通信状態テーブルから点数を読み出す。
また、基地局装置選択優先度決定部145は、受信電力取得部141より入力された受信電力情報により示される受信電力を優良可の3段階に分類してなる受信感度に基づいて、受信感度テーブルから点数を読み出す。
そして、基地局装置選択優先度決定部145は、各基地局装置20bについての合計点数を算出し、基地局装置優先度テーブルを作成する。図9は、この基地局装置優先度テーブルの例である。図9では、基地局装置20bAの通信状態は「連結タイムスロットを利用している」であるので、通信状態テーブルに基づき、連結タイムスロットを利用する場合には3点、連結タイムスロットを利用しない場合には1点となる。また、基地局装置20bAの受信感度は「優」であるので、受信感度テーブルに基づき、3点となる。そこで、基地局装置選択優先度決定部145は、これらの合計を算出し、基地局装置20bAの合計点数としている。基地局装置選択優先度決定部145は、他の基地局装置20bについても同様に合計点数を算出する。
基地局装置選択優先度決定部145は、基地局装置優先度テーブルに示される各基地局装置20bについての合計点数を、当該移動局装置10が通信を開始する基地局装置20bの選択優先度とする。すなわち、基地局装置選択優先度決定部145は、合計点数が高い基地局装置20bから順に、選択の対象とする。
以上の基地局装置選択優先度決定部145による処理を、処理のフロー図を参照しながら、再度より詳細に説明する。
図10は、基地局装置選択優先度決定部145の処理のフローを示す図である。同図に示すように、基地局装置選択優先度決定部145はまず各基地局装置20bの通信状態を取得する(S20)。次に、基地局装置選択優先度決定部145は、各基地局装置20bから受信される制御信号の受信感度を取得する(S21)。そしてこれら取得した通信状態及び受信感度に基づき、基地局装置選択優先度決定部145は、基地局装置優先度テーブルを作成する(S22)。
次に、基地局装置選択優先度決定部145は、当該移動局装置10が行おうとする通信が、連結タイムスロットを利用する通信であるか否かを判断する(S23)。この判断結果と、S22で作成した基地局装置優先度テーブルとに基づき、基地局装置選択優先度決定部145は基地局装置20bを選択する(S24)。最後に、基地局装置選択優先度決定部145は、通信開始要求生成部148に、ここで選択された基地局装置20bに対し、通信開始要求を送信させる(S25)。
基地局装置選択優先度決定部145は、このようにして各基地局装置20bの中から1つの基地局装置20bを選択し、通信開始要求生成部148に、該選択した基地局装置20bに対して通信開始要求を送信するよう、指示する。
通信開始要求生成部148は、この指示に基づいて通信開始要求を生成し、データ処理部13に、指示された基地局装置20bに対して送信させる。
このようにして送信された通信開始要求を受信した基地局装置20bは、上述のように空間分割可能性情報を返送する。
空間分割可能性情報取得部143は、こうして返送された制御信号に含まれる上記空間分割可能性情報を取得し、基地局装置選択優先度決定部145に出力する。
解除可能性判断部147は、入力された空間分割多重可能性情報にさらに基づき、該空間分割多重可能性情報を送信した基地局装置20bと当該移動局装置10とが通信を開始することにより、連結タイムスロット通信のタイムスロット連結が解除される可能性を判断する。
すなわち、空間分割多重可能性情報により空間分割多重ができる可能性が高いことが示される場合には、解除可能性判断部147は、該基地局装置20bと当該移動局装置10とが通信を開始することにより、連結タイムスロット通信のタイムスロット連結が解除される可能性が低いと判断する。
より具体的には、解除可能性判断部147は、当該移動局装置10が開始しようとする通信が連結タイムスロットを利用可能な通信である場合に、空間分割多重可能性情報により示される空間分割多重の可能性が高いほど、連結タイムスロット通信のタイムスロット連結が解除される可能性が低いと判断する。
そして、基地局装置選択優先度決定部145は、解除される可能性が所定値よりも低いと判断すると、通信開始要求生成部148に、空間分割多重可能性情報を送信した基地局装置20bに対して通信開始要求を再度送信するよう、指示する。
通信開始要求生成部148は、この指示に基づいて再度通信開始要求を生成し、データ処理部13に、指示された基地局装置20bに対して送信させる。
このようにして再度送信された通信開始要求を受信した基地局装置20bは、上述のように、移動局装置10に対しフレームの使用開始を指示するための制御信号を送信する。これを受けた通信処理部14は、基地局装置20bとの間で通信を開始する。
通信処理部14は、以上説明したようにして、基地局装置を選択し、選択した基地局装置20bとの通信を開始する。
以上説明したように、移動体通信システム1では、これから通信を開始しようとする移動局装置10は、各基地局装置20bで既に行われている連結タイムスロット通信の通信状況及び各基地局装置20bから送信されている信号の受信電力に基づいて、自身が通信を開始することにより基地局装置20bで既に行われている連結タイムスロット通信を解除してしまう可能性を取得し、該可能性に基づいて通信を開始する基地局装置20bを選択するので、該移動局装置10の通信が、連結タイムスロットを利用することにより高速通信している他の移動局装置10の通信レートに影響を与えないようにすることが実現される。
さらに、移動局装置10は、空間分割多重の可能性にも基づいて、連結タイムスロット通信を解除してしまう可能性を取得しているので、より適切に、連結タイムスロットを利用することにより高速通信している他の移動局装置10の通信レートに影響を与えないようにすることが実現される。
1 移動体通信システム、10 移動局装置、11 デュプレクサ、12 送受信部、13 データ処理部、14 通信処理部、20 基地局装置、21 デュプレクサ、22 送受信部、23 データ処理部、24 通信処理部、25 連結タイムスロット利用有無判断部、26 空間分割多重可否判断部、27 通信状態取得部、30 通信ネットワーク、121 受信部、122 送信部、141 受信電力取得部、142 通信状態情報取得部、143 空間分割可能性情報取得部、145 基地局装置選択優先度決定部、146 基地局装置優先度記憶部、147 解除可能性判断部、148 通信開始要求生成部、221 受信部、222 送信部、241 ハンドオーバ指示部、242 フレーム使用開始指示部、243 通信開始要求受付部、244 空間分割多重実施部、245 連結タイムスロット利用可否判断部、246 空間多重可能性情報取得部。