JP2007093720A - 反射型エレクトロクロミック素子及びこれを用いた物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 鏡状態から透明状態への可逆的な変化の応答速度が低下することなく、繰返し応答性に優れた反射型エレクトロクロミック素子を提供する。また、鏡状態から透明状態への可逆的な変化の応答速度が低下することなく、長寿命化を実現した反射型エレクトロクロミック素子を用いた物品を提供する。
【解決手段】 透明基板2上に、光透過性を有する第1の導電層3と、プロトン保持層4と、プロトン伝導層5と、触媒層6と、水素化金属層7と、光透過性を有する第2の導電層8とを備え、鏡状態を呈しているときに、第1の導電層3の仕事関数とプロトン保持層4の仕事関数の差をΔφ1、光透過性を有する第2の導電層8の仕事関数と水素化金属層7の仕事関数の差をΔφ2とすると、|Δφ1− Δφ2|≦0.4 eVを満たすことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、調光体、表示体、照明体、輸送機器用窓ガラス、建築用の窓ガラスなどに適用されて、鏡(ミラー)状態から透明状態へと可逆的に変化させることができる反射型エレクトロクロミック素子及びこれを用いた物品に関する。
外部刺激により色調が変化する材料として、クロミック(chromic)材料又はクロモジェニック(chromogenic)材料があり、クロミック材料を用いた調光素子、ガラスに適用した調光ガラス、スマートウィンドウなどが知られている。
クロミック材料又はクロモジェニック材料に与える外部刺激に応じて、数多くの種類があり、例えば、温度によって光透過率が変化するサーモクロミック(TC)、光によって光透過率が変化するフォトクロミック(PC)、雰囲気ガスによって光透過率が変化するガソクロミック(GC)、電気(電流・電圧)によって光透過率が変化するエレクトロクロミック(EC)などが存在する。そして、いずれの材料も、視覚的快適性、熱的快適性、太陽エネルギの有効利用(省エネ化)を実現するために研究開発が進められており、建築物や輸送機器などの窓ガラス、各種のショーウィンドウなどに適用されつつある。
エレクトロクロミック(EC)としては、酸化タングステン、酸化チタンなどの遷移金属酸化物の無機材料、あるいはビオロゲン、アントラキノン、フェナントロリンなどの有機材料が用いられている。エレクトロクロミック(EC)は、電気(電圧・電流)の外部刺激によって酸化還元反応が進行し、分子構造や電子状態の変化に伴って可逆的に色調が変化するものであり、制御が容易であるという利点を有する。例えば、酸化タングステンを用いたエレクトロクロミック素子やガラスは、透明から青色までの色調に変化することから、建築物の窓ガラスや自動車のサンルーフなどに適用されており、高価ではあるが、現在、ほぼ実用化段階に至っている。
そして、酸化タングステンを初めとしたエレクトロクロミック(以下、「エレクトロクロミック素子」と言う。)では、入射光が調光層で吸収されて熱となり、この熱がエレクトロクロミック素子の内部に吸収されてしまうという物理現象が生じていた。このため、調光層で熱の吸収が起こり、エレクトロクロミック素子によって熱を反射させることが難しかった。
そこで、Lnや Ybなどの希土類の水素化物を調光層として用いて、熱を遮蔽する技術が開示されている(非特許文献1参照)。調光層として希土類の水酸化物を用いると、希土類の水酸化物が、水素を吸着あるいは脱水素することにより、鏡状態と透明状態との変化を可逆的に起こしている。このため、調光層を鏡状態にすると、調光層によって入射光を反射させて熱を遮蔽することができる。
近年では、希土類の水酸化物の他にも、MgNi合金の水素化物が、新たな調光材料として開示されている(非特許文献2参照)。例えば、MgNi合金の水素化物を用いた全固体型クロミック調光体が報告されており(非特許文献3参照)、鏡(ミラー)状態の調光体に数ボルトの直流電圧を印加すると、調光体が透明状態となり、調光体に印加する電圧の極性を逆にすると、透明状態から鏡状態となる。このため、MgNi合金の水素化物を用いた調光体は、希土類の水酸化物に比べて材料コストが低くなり、さらに特性も向上する。
このようなMgNi合金の水素化物を用いた全固体の反射型エレクトロクロミック素子は、例えば、光透過性を有する基板上に、光透過性を有する第1の導電層、プロトン保持層、プロトン伝導層、触媒層、水素化金属層、第2の導電層を順次積層した構成を有する。ここで、基板として石英ガラス、第1の導電層及び第2の導電層としてITO(Indium Tin Oxide)、プロトン保持層としてWO3、プロトン伝導層としてTa2O5、触媒層としてPd、水素化金属層としてMgNiyHxを用いている(x、yは、化学両論値を示す)。なお、水素化金属層は、第2の導電層を兼ねた構成としても良く、水素化金属層が、第2の導電層の作用を兼ねていても良い。
上記構成の反射型エレクトロクロミック素子において、第2の導電層にマイナス(−)電圧が印加されると、第2の導電層を介して水素化金属層(MgNiyHx)に電子が注入されて、逆側の第1の導電層(ITO)からプロトン保持層(WO3)に正孔が注入されて、電荷のバランスが保たれている。これと同時に、プロトン保持層(WO3)では、カチオン(K+:ここではプロトンH+)とアニオン(A-)とが解離し、解離したカチオン(K+:ここではプロトンH+)は、水素化金属層(MgNiyHx)に移動して注入された電子と電気的に中性となり、一方のアニオン(A-)は、プロトン保持層(WO3)で正孔と電気的に中性となっている。この極性の場合、水素化金属層(MgNiyHx)ではカチオン(H+)リッチの水素化状態となり、鏡状態から透明状態に変化する。
一方、第2の導電層にプラス(+)電圧が印加されると、マイナス(−)電圧を印加した場合とは逆のキャリヤである電子、正孔とイオンの輸送過程となり、アニオン(A-)が水素化金属層(MgNiyHx)に移動して、アニオン(A-)リッチとなり、MgNiyHxのHxが脱離されて脱水素状態となるため、透明状態から鏡状態への変化が生じる。
Nature 380 (1996) 231参照 Appl. Phys. Lett.78 (2001) 3047参照 電気化学会春季発表会 予稿集1L10(2004)299参照
前述した反射型エレクトロクロミック素子では、鏡状態から透明状態に可逆的に変化させることが可能であるため、鏡状態として入射光を反射させて熱を遮蔽できるという利点を有するが、特性上、以下の2つの問題を有していた。
第1の問題としては、印加電圧の極性反転(+)(−)を繰返し行うと、全光線透過率(AMST D1003、あるいはJIS K7105)、又は反射率が最初のレベルに比べて著しく低下してしまう恐れを有していた(以下、全光線透過率を光透過率と標記する)。例えば、初期値の光透過率がT=50%であるものが、数十回の極性反転後には、その光透過率Tが半減(25%)し光透過率が低下する恐れを有していた。
第2の問題としては、所定の光透過率(又は反射率)を得るために、長時間を要するという恐れを有していた。前述した反射型エレクトロクロミック素子に、直流電圧(第2の導電層に−8Vを印加する)を印加すると、光透過率Tが50%に達するまでに、数百秒あるいはそれ以上の時間が必要となり、瞬時に光透過率を変えることが困難であった。
自動車に代表される輸送機器のフロントウィンドウとして、反射型エレクトロクロミック素子を調光体として用いた場合には、前述した2つの問題が、大きな阻害要因となる恐れがある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、すなわち、本発明の反射型エレクトロクロミック素子は、透明基板上に、順次積層された光透過性を有する第1の導電層と、プロトン保持層と、プロトン伝導層と、触媒層と、水素化金属層と、光透過性を有する第2の導電層とを備え、鏡状態を呈しているときに、第1の導電層の仕事関数とプロトン保持層の仕事関数の差をΔφ1、光透過性を有する第2の導電層の仕事関数と水素化金属層の仕事関数の差をΔφ2とすると、|Δφ1−Δφ2|≦0.4 eVを満たすことを要旨とする。
本発明の反射型エレクトロクロミック素子を用いた物品は、上記記載の反射型エレクトロクロミック素子を用いたことを要旨とする。
本発明の反射型エレクトロクロミック素子によれば、第1の導電層と第2の導電層からキャリヤの注入バランスをとることにより、鏡状態から透明状態への可逆的な変化の応答速度が低下することなく、繰返し応答性を高めることができる。
本発明の反射型エレクトロクロミック素子を用いた物品によれば、鏡状態から透明状態への可逆的な変化の応答速度が低下することなく、長寿命化を実現することができる。
以下、添付図面を参照し、本発明の実施の形態に係る反射型エレクトロクロミック素子及びこれを用いた物品について説明する。
本発明の実施の形態に係る反射型エレクトロクロミック素子の断面図を図1に示す。反射型エレクトロクロミック素子1は、光透過性を有する基板2上に、光透過性を有する第1の導電層3、プロトン保持層4、プロトン伝導層5、触媒層6、水素化金属層7、光透過性を有する第2の導電層8、を順次積層し、第1の導電層3と第2の導電層8との間に直流電圧9を印加している。
ここで、光透過性を有する第1の導電層3の仕事関数とプロトン保持層4の仕事関数の差をΔφ1、光透過性を有する第2の導電層8の仕事関数と水素化金属層7の仕事関数の差をΔφ2とすると、反射型エレクトロクロミック素子1が鏡(ミラー)状態を呈しているとき、|Δφ1−Δφ2|≦0.4 eVの関係を満たす。本発明の反射型エレクトロクロミック素子1において、|Δφ1−Δφ2|の値を規定した根拠を説明する。なお、ここでは、光透過性を有する基板2として石英ガラス、光透過性を有する第1の導電層3としてITO、プロトン保持層4としてWO3、プロトン伝導層5としてTi2O、触媒層6としてPd、水素化金属層としてMgNiyHx、光透過性を有する第2の導電層8としてAuを用いた。
図1に示す本発明の実施の形態に係る反射型エレクトロクロミック素子1における第1の導電層(ITO)3とプロトン保持層(WO3)4との界面のバンド構造を図2に示す。
第1の導電層(ITO)3とプロトン保持層(WO3)4とは、異種材料によって接合(ヘテロ接合)されるため、両層3、4の界面には電位障壁Δφが存在する。図1に示すように、第1の導電層(ITO)3にプラス(+)電圧を印加すると、キャリヤとなる正孔(図中に示す○印)は、第1の導電層(ITO)3から電位障壁Δφを越えてプロトン保持層(WO3)4に注入されるが、両層3、4の界面の電位障壁Δφが高くなると、第1の導電層(ITO)3に高電圧を印加しなければならない。
また、図2には図示しないが、水素化金属層(MgNiyHx)7と第2の(Au)8とはヘテロ接合されており、両層7、8の界面には電位障壁Δφが存在することから、第2の導電層(Au)8側でも同様の注入現象が生じている。キャリヤとなる電子は、第2の導電層(Au)8から電位障壁Δφを越えて水素化金属層(MgNiyHx)7に注入されるが、両層7、8の界面の電位障壁φが高くなると、第2の導電層8に印加する電圧を高くしなければならない。
一般に、キャリヤである正孔や電子の注入を促進するためには、ヘテロ接合された2つの層間の電位障壁Δφを小さくする必要があるが、反射型エレクトロクロミック素子1の場合には、一方の導電層側、つまり第1の導電層(ITO)3の仕事関数φITOと、プロトン保持層(WO3)4の仕事関数φWO3との差を小さくして、両層3、4の界面の電位障壁Δφを低くしても、反射型エレクトロクロミック素子1の繰返し応答性と応答速度とが低下してしまう。この理由は明確ではないが、第1の導電層3(ITO)と第2の導電層(Au)8の両側でのキャリヤの注入バランスをとることが重要であり、正孔や電子の注入バランスが良くなると、反射型エレクトロクロミック素子1の繰返し応答性と応答速度が向上することが判った。さらに、本発明の実施の形態に係る反射型エレクトロクロミック素子1においては、第1の導電層(ITO)3とプロトン保持層(WO3)4の仕事関数差をΔφ1、第2の導電層(Au)8と水素化金属層(MgNiyHx)7との仕事関数差をΔφ2としたときに、キャリヤの注入バランスを|Δφ1−Δφ2|として数値化して規定している。
実際、プロトン保持層(WO3)の仕事関数と水素化金属層(MgNiyHx)7の仕事関数とを、真空光電子分光法(XPS)によって求めると、プロトン保持層4の仕事関数φWO3 は5.0eVであり、水素化金属層7の仕事関数φMgNiyHxは4.5eVとなる。また、第1の導電層3(ITO)の仕事関数φITOは4.7eV、第2の導電層8(Au)の仕事関数φAuは4.6eVである。これらの値から、第1の導電層3の仕事関数φITOとプロトン保持層4の仕事関数φProとの差(Δφ=φITO−φPro)と、第2の導電層8の仕事関数φAuと水素化金属層7との仕事関数φMgNiyHxとの差(Δφ2=φAu−φMgNiyHx)を求めたところ、Δφ1が0.3eV、Δφ2が0.1eVとなり、さらに|Δφ1−Δφ2|は0.2eVとなり、0.4 eV以下になることが判明している。なお、この結果は、後述する図3のb点としてプロットした。
さらに、ここで、反射型エレクトロクロミック素子1が、鏡(ミラー)状態を呈しているときに、|Δφ1−Δφ2|の値を0.4eV以下とした理由を説明する。
図3は、|Δφ1−Δφ2|と繰返し回数Nとの関係を示す図である。なお、繰返し回数Nとは、反射型エレクトロクロミック素子1に電圧を印加して、印加電圧の極性を+/−に切替えたときを1回のサイクルとして、反射型エレクトロクロミック素子1に電圧を印加した場合に、初期の光透過率(T=50%)が得られるサイクル数を示したものである。ここでは、大気中での室温(27℃)を基準として、0℃、40℃の温度に変えたときの|Δφ1−Δφ2|と繰返し回数Nとの関係を調べた。図3から明らかなように、|Δφ1−Δφ2|が0.4eVになると、繰返し回数Nが急激に変化することが判明している。変曲点の目安として、曲線上に漸近線を引いたところ、各漸近線が交わる交点での|Δφ1−Δφ2|は、0.4 eVの値となっていた。そして、|Δφ1−Δφ2|が0.4eVを超えると、繰返し回数Nは急激に低下し、0.8eV以上になると繰り返し回数Nが20回以下となり、応答性が低くなりすぎて実用化が難しくなる。これに対して、|Δφ1−Δφ2|が0.4eV未満になると繰返し回数Nは103回のオーダとなり、さらに0.2eV以下になると104回のオーダとなり、繰返し回数Nが高くなることが判明している。従って、|Δφ1−Δφ2|を0.4eV以下とすることにより、反射型エレクトロクロミック素子1の繰返し回数Nが増加し、応答性が飛躍的に向上することが明らかとなった。さらに、|Δφ1−Δφ2|が0.4eV以下になると、正孔と電子との注入のバランスが良くなり、応答速度が飛躍的に向上することが判明した。なお、仕事関数は、真空光電子分光法(XPS)により測定した。
さらに、図3に示すように、温度Tを変えると、室温時に比べてT=40℃での繰返し回数Nの低下する割合が少なくことが判る。このため、少なくともT=40℃の温度までは、温度の上昇と共に電位障壁Δφの高さも小さくなると推察される。
ここで、仕事関数(work function)とは、固体内にある電子を、固体の外、正確には真空中に取り出すために必要な最小限のエネルギの大きさを意味する。より詳細には、フェルミレベルから真空準位までの高さを仕事関数と定義している。
なお、仕事関数は、金属や半導体に対して用いられ、有機材料系に対してはイオン化ポテンシャルの語が用いられるが、仕事関数とイオン化ポテンシャルとの物理的な意味は基本的に同じであることから、広義に仕事関数の語を使用する。
ところで、仕事関数は、物質固有の値であるものの、面方位、密度、結晶性、さらに測定雰囲気(他の原子や分子の吸着)に応じて異なることが知られている。例えば、物質表面の仕事関数測定の際、その表面に空気中の酸素や窒素などが吸着すると、仕事関数が変化する。このため、|Δφ1−Δφ2|の値について議論する場合には、同一条件下での測定結果に応じて判断する必要がある。
なお、代表的な金属の仕事関数を文献から引用すると、Au: 4.6eV、Ag: 4.8eV、Pd: 4.8eV、Pt: 5.3eV、Ni: 4.8eV 、Cu:4.6eV、W: 4.5eV、Al: 3.5eV、Mg: 3.9eVである。代表的な半導体の仕事関数は、Si: 5.4eV、Se: 4.7eV、Ge: 4.6eV、ITO: 4.7eVである。代表的な有機材料(π共役系材料)の仕事関数は、銅フタロシアニン(CuPc): 5.0eV、無金属フタロシアニン(H2Pc): 4.9eV、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルフォン酸(PSS)の複合物であるPEDOT-PSS:5.0eV 、PPV: 5.2 eV、C60: 6.6eVである。これらの各材料の仕事関数は、3.0 eV〜7.0eVの範囲である(参考文献:「有機薄膜仕事関数データ集」、安達・小山田・中島著、 シーエムシー出版)。
さて、前述したように、仕事関数の差を|Δφ1−Δφ2|≧0.4eVにすると、反射型エレクトロクロミック素子1の繰り返し応答性が高まり、応答速度も向上することが明らかであるが、調光体として実用化するためには、第1の導電層3と第2の導電層8の可視光領域における全光線透過率が重要になる。
本発明の実施の形態に係る反射型エレクトロクロミック素子1を鏡状態から透明状態に変化させるためには、比較的短時間で可逆的に行われることが好ましい。特に、透明状態とするためには、建築物や車両のウィンドウでの開放感を生じさせ、視認性を高めるために極めて重要であり、電極となる第1の導電層3と第2の導電層8の平均光透過率を高くすることが好ましい。第1の導電層3と第2の導電層8の平均光透過率が高くなると、光透過性の電極が得られ、幅広い用途に応用して実用化することができる。第1の導電層3と第2の導電層8の平均光透過率は、後述する表面抵抗値との兼ね合い、さらに反射型エレクトロクロミック素子1のトータルの平均光透過率との兼ね合いから決定されるべきであるが、第1の導電層3と第2の導電層8の平均光透過率は、少なくとも50%以上とすることが好ましく、さらにエレクトロクロミック素子1の表裏面での光の反射が、合計約8%発生することを考慮すると、60%以上とすることが好ましい。
前述した平均光透過率の他にも、電極の機能上、第1の導電層3と第2の導電層8の表面抵抗値を規定することが重要になる。この理由は、第1の導電層3と第2の導電層8の表面抵抗値が大きくなると、電流駆動型の反射型エレクトロクロミック素子1では、キャリヤである電子や正孔、イオンが移動し難くなり、応答速度の遅延、さらに鏡状態から着色状態を経て透明状態までの変化が、調光体の有効領域内で均一に発現しなくなるからである。このため、第1の導電層3と第2の導電層8の表面抵抗値は、100Ω/□以下、さらに10Ω/□以下とすることが好ましい。本範囲に規定することにより、低抵抗値の透明電極が得られ、キャリヤの移動が促進されて電流が流れ易くなる。
なお、第1の導電層3と第2の導電層8の厚さは、可視光領域における全光線透過率と表面抵抗との兼ね合いから決定されるべきであるが、約数十nm〜数千nmの範囲とすることが好ましい。
さらに、上記反射型エレクトロクロミック素子1の構成材料を説明する。
第1の導電層3と第2の導電層8としては、金属、酸化物半導体及びπ(パイ)共役系高分子の中から選択される材料から薄膜に形成することが好ましい。
金属としては、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Zn、Pb、Ti、Wの中から選択される元素及びこれらの元素の複合物を用いることが好ましい。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子線エピタキシー(MBE)法などを用いて金属薄膜を形成することができる。
酸化物半導体としては、酸化錫(SnO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化インジウム錫(ITO)及び酸化亜鉛(ZnO)の中から選択される酸化物及びこれらの複合物から選択されるものを用いることができ、さらにアンチモンドープ酸化錫(ATO)又はフッ素ドープ酸化錫(FTO)を用いても良い。
π共役系高分子は、共役二重結合中のπ電子の作用により、低表面抵抗化と高光透過率化を実現することができる。π共役系高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリテルロフェン、ポリチエフェンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン及びこれらの誘導体の中から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。さらに、π共役系高分子に各種のドーピング処理をすると、低表面抵抗化、高性能化及び低コスト化した電極が得られる。
例示した材料の他にも、π共役系高分子として、より可溶性の高いポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリプロピレンオキシド(PO)及びこれらの誘導体の中から選択される少なくとも一種を用いることが好ましく、これにより高性能化、低コスト化した電極が得られる。
また、π共役系高分子として、ポリ-3, 4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルフォン酸(PSS)との複合体(以下、「PEDOT-PSS」とする)を用いても良い。この結果、取扱い性が向上して印刷法の適用が容易となり、高性能化、低コスト化した電極が得られる。
さらに、光透過性を有する第1の導電層3及び第2の導電層8として、少なくとも導電性ナノ粒子とバインダ樹脂とを含む材料を用いることが好ましい。導電性ナノ粒子としては、Au, Ag, Pt, Pd, Ni, Cu, Zn, Al, Sn,Pb, C, Tiの中から選択される単一の元素、又はこれらの中から選択される一種の元素を含む化合物を用いることができる。導電性ナノ粒子の粒径は、約50nm以下にすることが好ましく、導電性ナノ粒子の粒径が、可視光領域の入射光の波長λ(380nm〜780nm)よりも小さくなると(粒子直径の約1/10以下)、光透過率が高まる。なお、導電性ナノ粒子は球状に限定されず、針状、繊維状としても良い。
第1の導電層3又は第2の導電層8として、前述したπ共役系高分子、あるいは、導電性ナノ粒子とバインダ樹脂とを含む材料を使用すると、金属又は酸化物半導体を使用した場合に比べて、電極の表面抵抗値が高くなるという欠点がある。しかし、π共役系高分子などの材料では、印刷手法を用いて電極を薄膜に形成することが可能となり、プロセス的、コスト的な利点も多く、特に、微細な電極パターンを形成した後に硬化できるため、大面積化した反射型エレクトロクロミック調光体に適用可能な材料である。従って、目的に応じた材料を選択することにより、広範囲の分野での適用が可能な調光体に代表されるエレクトロクロミック素子を得ることが可能となる。
プロトン保持層4は、キャリヤとなるプロトン(H+)を保持する役割を担う層であり、特に、全固体型の調光体の構成中に、プロトン保持層4を形成する必要がある。プロトン保持層4としては、WO3、MoO3、VO2、V2O5、NbO5、TiO2及びWO3-MoO3の中から選択される少なくとも一種の無機系酸化物(酸化物半導体)を用いることが好ましい。特に、WO3は、1969年に、そのエレクトロクロミズムの発見後に、その研究開発が進められており、反射型エレクトロクロミック素子1のプロトン保持層4として有用な酸化物半導体である。
なお、プロトン保持層4の膜質や層厚等については一義的に決定できないが、膜質としてはイオン(プロトン(H+))の移動容易性を考慮すると、緻密な結晶性とするよりは非結晶で適度にルーズな構造とすることが好ましい。プロトン保持層4の厚さは、プロトン保持性能、性能安定性の観点から、約数nm〜数百nm、さらに約50nm〜500nmとすることが好ましい。
プロトン伝導層5は、プロトン保持層4により保持されたプロトン(H+)の水素化金属層7への移動を促進する役目を担う。プロトン伝導層5としては、Ta2O5、MgF2、SiO、ZrO2、Cr2O3、LiF、MgF2、CaF2、LiAlF4、RbAg4I5及びLi3Nの中から選択される少なくとも一種の無機系酸化物を用いることが好ましい。さらに、プロトン伝導層5の厚さは約数nm〜数百nm、さらに100nm〜500nmとすることが好ましく、これによりプロトン伝導性及び調光体の性能安定性を高めることができる。
触媒層6は、後述する水素化金属層7の活性を高めることを目的として形成される。触媒層6としては、PdまたはPtのいずれかを用いることが好ましく、これにより、プロトンの輸送性能が向上する。また、触媒層6の厚さは、約数十Å〜数十nm、さらに0.1nm〜10nmとすることが好ましく、これにより水素化金属層7での水素化、脱水素化の反応を促進することができる。
水素化金属層7は、水素ガスに触れると、鏡状態から透明状態に変化して調光機能を呈する水素化金属から形成されて、水素化金属は、水素化と脱水素化の反応を可逆的に起こして、その調光機能を制御している。水素化金属としては、希土類金属、希土類金属と遷移金属との合金、遷移金属同士の合金の水素化物を挙げることができ、具体的には、YbHx、RnHx、LnMgyHx、GdMgyHx、MgNiyHx、(但し、x,yは化学量論的数値)を用いることができる。例示した水素化金属の中でも、特に、MgNiyHx系は安価な材料であり、取扱いが容易であるため、水素化金属層7の材料として有望視されている。
水素化金属層7の膜質と厚さは、一義的に決定されるものではないが、膜質としてはプロトン保持層4と同様に、イオン(例えば、プロトン)の移動容易性を考慮すると、緻密な結晶性とするよりも非晶性としてルーズな構造とすることが好ましい。水素化金属層7の厚さは、約数nm〜数百nm、さらに10nm〜100nmとすることが好ましく、本範囲の厚さに規定することにより、水素化、脱水素化の反応が促進されて、鏡状態から透明状態に容易に変化させることが可能となる。
透明基板2としては、光の散乱や吸収等による損失ができるだけ小さく、可視光線領域における全光線透過率を高くすることが好ましい。全光線透過率は、透明基板2の厚さや表面平滑性などに応じて異なるが、実用的な観点から、その全光線透過率は80%以上、さらに85%以上とすることが好ましい。例えば、可視光線領域における全光線透過率が80%以上である材料としては、ガラス、セラミックス又は高分子樹脂フィルムを挙げることができる。さらに、曲面や三次元形状体への適用が望まれる場合には、透明基板2のフレキシブル性が要求されるため、透明基板2は、高分子樹脂フィルムから形成することが好ましい。
このような性能を満たす高分子樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルサルフォン(PES)及びこれらの誘導体の中から選択される一種とすることが好ましい。なお、取扱い性を考慮すると、透明基板2の厚さは、約75μm〜500μmの範囲とすることが好ましい。
さらに、高分子樹脂フィルムの面内における屈折率の異方性(複屈折Δn)は、光の出射方向あるいは入射方向に影響を及ぼすため、0.1以下とすることが好ましい。複屈折が0.1を超えると、特定方向(角度)への出射あるいは入射がより顕著となり、反射型エレクトロクロミック調光体において、鏡状態から着色状態を経て透過状態までの各状態となる性能レベルが、見る角度に応じて異なるからである。このため、透明基板2として高分子樹脂フィルムを用いる場合には、複屈折Δnを0.1以下とすることが好ましい。これにより、建築物や車両の窓ガラス、アミューズメント用品などの表示部、他の用途に応用して適用することが可能となる。
なお、本発明の反射型エレクトロクロミック素子は、図1に示す構成に限定されるものではなく、例えば、図4に示す構成にしても良い。なお、図1に示す構成と同一箇所には、同じ符号を使う。反射型エレクトロクロミック素子10は、光透過性を有する基板2上に、光透過性を有する第2の導電層8、水素化金属層7、触媒層6、プロトン伝導層5、プロトン保持層4、光透過性を有する第1の導電層3、を順次積層し、第1の導電層3と第2の導電層8との間に直流電圧9を印加している。
また、本発明の実施の形態に係る反射型エレクトロクロミック素子1は、視覚的快適性(プライバシーの保護を含む)、熱的快適性、太陽エネルギの有効利用(省エネ化)を目的とした各分野に応用することが可能であり、特に、各種の調光体や表示体又は照明体として適用することができる。より具体的には、自動車や航空機、船舶等における輸送機器用調光窓ガラス、建築用調光窓ガラス、さらに玩具や意匠体などに適用することにより、その効果を発揮することができる。
以下、さらに具体的に実施例を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態に係る反射型エレクトロクロミック素子は、例示した実施例に限定されないことはもちろんである。
各実施例の反射型エレクトロクロミック素子を製造するにあたり、複合装置を使用した。複合装置は、多ガンのマグネトロンスパッタ装置と、光電子分光装置とが組み合わされて構成され、マグネトロンスパッタ装置と光電子分光装置との間には試料室が配置されている。
まず、マグネトロンスパッタ装置のチャンバ内部に、反射型エレクトロミック素子の基板となるガラス基板を設置し、このガラス基板上に層形成材料のターゲットとなるITO基板を試料フォルダに設置した。そして、放電してガラス基板上にITO層を形成する。なお、この時、ガラス基板上に形成されるITO層の厚さは水晶振動子によってモニタされており、予め設定した厚さになった時点で、シャッターが閉じるように設定されている。
また、ITO基板以外のターゲットとなる各基板は、予め試料室に準備されており、層形成の段階になった後、ターゲットとなる基板は、自動搬送装置により試料室からマグネトロンスパッタ装置に搬送されて、チャンバ内の試料フォルダに設置される。層形成が終了した後、ターゲットの基板は、再び試料室に格納される。なお、ターゲットとなる基板は、必要に応じて、試料室から光電子分光装置に自動搬送されて、光電子分光装置において、高真空条件下でその電子状態を測定して、仕事関数を調べる。
実施例1
まず、ガラス基板(層厚1mm)上にITO層(層厚200mm)を形成した後、さらに、ITO層上にWO3層(層厚100nm)、Ta2O5層(層厚100nm)、Pd層(層厚1nm)、MgNiy層(層厚40nm)を順次形成した。
得られたMgNiy/Pd/Ta2O5/WO3/ITO/ガラス基板をマグネトロンスパッタ装置のチャンバ内に設置した後、チャンバ内に水素を導入し、MgNiy層に水素をドープした。その後、MgNiy層上にAg層(層厚100nm)を形成し、ガラス基板上に、ITO層、WO3層、Ta2O5 層、Pd層、MgNiyHx層、Ag層が順次形成された反射型エレクトロクロミック素子とした。
実施例2
実施例2では、第2の導電層であるAg層の変わりにAu層(層厚100 nm)を形成した以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ガラス基板上に、ITO層、WO3層、Ta2O5 層、Pd層、MgNiyHx層、Au層が順次形成された反射型エレクトロクロミック素子とした。
実施例3
実施例3では、第2の導電層であるAg層の変わりにITO層(層厚100 nm)を形成した以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ガラス基板上に、ITO層、WO3層、Ta2O5 層、Pd層、MgNiyHx層、ITO層が順次形成された反射型エレクトロクロミック素子とした。
実施例4
まず、ガラス基板(層厚1mm)上にAu層(層厚100mm)を形成し、さらに、Au層上にWO3層(層厚100nm)、Ta2O5層(層厚100nm)、Pd層(層厚1nm)、MgNiy層(層厚40nm)を順次形成し、MgNiy/Pd/Ta2O5/WO3/Au/ガラス基板を得た。
得られたMgNiy/Pd/Ta2O5/WO3/Au/ガラス基板をマグネトロンスパッタ装置のチャンバ内に設置した後、チャンバ内に水素を導入し、MgNiy層に水素をドープした。その後、MgNiy層上にW層(層厚100nm)を形成し、ガラス基板上に、Au層、WO3層、Ta2O5 層、Pd層、MgNiyHx層、W層が順次形成された反射型エレクトロクロミック素子とした。
実施例5
まず、ガラス基板(層厚1mm)上にZnO層(層厚100mm)を形成し、さらに、ZnO層上にWO3層(層厚100nm)、Ta2O5層(層厚100nm)、Pd層(層厚1nm)、MgNiy層(層厚40nm)を順次形成し、MgNiy/Pd/Ta2O5/WO3/ZnO/ガラス基板を得た。
得られたMgNiy/Pd/Ta2O5/WO3/ZnO/ガラス基板をマグネトロンスパッタ装置のチャンバ内に設置した後、チャンバ内に水素を導入し、MgNiy層に水素をドープした。その後、MgNiy層上にAg層(層厚100nm)を形成し、ガラス基板上に、ZnO層、WO3層、Ta2O5 層、Pd層、MgNiyHx層、Ag層が順次形成された反射型エレクトロクロミック素子とした。
実施例6
実施例6では、第2の導電層であるAg層の変わりにAu層(層厚100nm)を形成した以外は、実施例5と同様の方法を用いて、ガラス基板上に、ZnO層、WO3層、Ta2O5 層、Pd層、MgNiyHx層、Au層が順次形成された反射型エレクトロクロミック素子とした。
実施例7
まず、ガラス基板(層厚1mm)上にIn2O3層(層厚100mm)を形成し、さらに、In2O3層上にWO3層(層厚100nm)、Ta2O5層(層厚100nm)、Pd層(層厚1nm)、MgNiy層(層厚40nm)を順次形成し、MgNiy/Pd/Ta2O5/WO3/In2O3/ガラス基板を得た。
得られたMgNiy/Pd/Ta2O5/WO3/In2O3/ガラス基板をマグネトロンスパッタ装置のチャンバ内に設置した後、チャンバ内に水素を導入し、MgNiy層に水素をドープした。その後、MgNiy層上にAg層(層厚100nm)を形成し、ガラス基板上に、In2O3層、WO3層、Ta2O5 層、Pd層、MgNiyHx層、Ag層が順次形成された反射型エレクトロクロミック素子とした。
実施例8
実施例8では、第2の導電層であるAg層の変わりにAu層(層厚100nm)を形成して、ガラス基板上に、In2O3層、WO3層、Ta2O5層、Pd層、MgNiyHx層、Au層が順次形成された反射型エレクトロクロミック素子とした。
実施例9
まず、ガラス基板(層厚1mm)上に、PEDOT:PSS層(層厚100nm)をスピンコート法により塗布した後、硬化させて第1の導電層を形成した。さらに、PEDOT:PSS層上に、WO3層(層厚100nm)、Ta2O5層(層厚100 nm)、Pd層(層厚1nm)、MgNiy層(層厚40 nm)を順次形成し、MgNiy/Pd/Ta2O5/WO3/PEDOT-PSS/ガラス基板を得た。
得られたMgNiy/Pd/Ta2O5/WO3/PEDOT-PSS/ガラス基板をマグネトロンスパッタ装置のチャンバ内に設置した後、チャンバ内に水素を導入し、MgNiy層に水素をドープした。その後、MgNiy層上にAg層(層厚100nm)を形成して第2の導電層として、ガラス基板上に、PEDOT-PSS層、WO3層、Ta2O5 層、Pd層、MgNiyHx層、Ag層が順次形成された反射型エレクトロクロミック素子とした。
実施例10
まず、ガラス基板(層厚1mm)上に、PEDOT-PSS層(層厚100nm)をスピンコート法により塗布した後、硬化させて第1の導電層を形成した。さらに、PEDOT:PSS層上に、WO3層(層厚100nm)、Ta2O5層(層厚100 nm)、Pd層(層厚1nm)、MgNiy層(層厚40 nm)を順次形成し、MgNiy/Pd/Ta2O5/WO3/PEDOT-PSS/ガラス基板を得た。
得られたMgNiy/Pd/Ta2O5/WO3/PEDOT-PSS/ガラス基板をマグネトロンスパッタ装置のチャンバ内に設置した後、チャンバ内に水素を導入し、MgNiy層に水素をドープした。その後、MgNiy層上にAg層(層厚100nm)を形成して第2の導電層として、ガラス基板上に、PEDOT-PSS層、WO3層、Ta2O5 層、Pd層、MgNiyHx層、Ag層が順次形成された反射型エレクトロクロミック素子とした。
比較例1
比較例1では、第2の導電層であるAg層の変わりに、Pt層(層厚100nm)を形成して、ガラス基板上に、In2O3層、WO3層、Ta2O5層、Pd層、MgNiyHx層、Pt層が順次形成された反射型エレクトロクロミック素子とした。
比較例2
比較例2では、第1の導電層であるITO層の変わりにAl層(層厚200nm)、そして、第2の導電層であるAg層の変わりに、Pt層(層厚100nm)を形成して、ガラス基板上に、Al層、WO3層、Ta2O5層、Pd層、MgNiyHx層、Pt層が順次形成された反射型エレクトロクロミック素子とした。
前述した実施例1〜実施例10、比較例1及び比較例2から得られた各反射型エレクトロミック素子について、第1の導電層、プロトン保持層、第2の導電層及び水素化金属層の仕事関数を測定し、これらの値から、第1の導電層とプロトン保持層との仕事関数差Δφ1、第2の導電層と水素化金属層との仕事関数差Δφ2を計算し、|Δφ1−Δφ2|の値を求めた。
また、得られた反射型エレクトロクロミック素子について、繰り返し応答性を評価した。繰り返し応答性は、反射型エレクトロクロミック素子に直流電圧(±6V)をパルスジェネレータにより印加して、この時の全光線透過率Tをモニタして、全光線透過率Tが50%を達成した時点で、直流電圧の極性が反転するように設定をした。そして、印加電圧の極性を+/−に切替えたときを1回のサイクルとして、初期の全光線透過率(T=50%)が得られる繰返し回数Nを求めたものである。ここでは、大気中、室温(27℃)下で評価した。
表1に、測定結果を示す。
Figure 2007093720
表1に示すように、比較例1と比較例2は、いずれも第1の導電層とプロトン保持層との間の仕事関数と、第2の導電層と水素化金属層との間の仕事関数との差が大きく、両側の導電層からキャリヤがスムーズに注入されずにキャリヤの注入バランスが崩れたため、繰返し回数が低下し、繰返し応答性が実用化レベルに至っていなかった。これに対して、実施例1から実施例10までは、両側の導電層での仕事関数の差が小さく、|Δφ1−Δφ2|の値も0.4eV以下の範囲内となっていた。さらに繰返し回数が大幅に上昇していることからも、両側の導電層からのキャリヤがスムーズに注入される現象が安定して継続しているものと考えられ、繰返し応答性が飛躍的に向上することが判明した。
本発明の実施の形態に係る反射型エレクトロクロミック素子の断面図である。 図1に示す反射型エレクトロクロミック素子の第1の導電層とプロトン保持層との接合界面におけるバンド構造を示す図である。 |Δφ1−Δφ2|の値と、繰返し回数Nとの関係を示す図である。 本発明における他の実施の形態に係る反射型エレクトロクロミック素子の断面図である。
符号の説明
1…反射型エレクトロクロミック素子,
2…基板,
3…第1の導電層,
4…プロトン保持層,
5…プロトン導電層,
6…触媒層,
7…水素化金属層,
8…第2の導電層,
9…直流電圧,
10…反射型エレクトロクロミック素子,

Claims (21)

  1. 透明基板上に順次積層した光透過性を有する第1の導電層と、プロトン保持層と、プロトン伝導層と、触媒層と、水素化金属層と、光透過性を有する第2の導電層と、を備え、
    鏡状態を呈しているときに、前記第1の導電層の仕事関数と前記プロトン保持層の仕事関数の差をΔφ1、前記第2の導電層の仕事関数と前記水素化金属層の仕事関数の差をΔφ2とすると、
    |Δφ1−Δφ2|≦0.4 eV
    を満たすことを特徴とする反射型エレクトロクロミック素子。
  2. 前記第1の導電層及び前記第2の導電層の可視光領域における全光線透過率が、50%以上であることを特徴とする請求項1記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  3. 前記第1の導電層及び前記第2の導電層の表面抵抗が、100Ω/□以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  4. 前記第1の導電層及び前記第2の導電層は、金属、酸化物半導体及びπ共役系高分子の中から選択される一種から形成される薄膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  5. 前記金属は、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Pt、Pd、Zn、Pb、Ti、W及びこれらの複合物の中から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項4記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  6. 前記酸化物半導体は、酸化錫(SnO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)及びこれらの複合物の中から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項4記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  7. 前記π共役系高分子は、ドーピングされたポリピロール、ドーピングされたポリアニリン、ドーピングされたポリチオフェン、ドーピングされたポリアセチレン、ドーピングされたポリイソチアナフテン及びこれらの誘導体の中から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項4記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  8. 前記π共役系高分子は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリプロピレンオキシド(PO)及びこれらの誘導体の中から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項4記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  9. 前記第1の導電層及び前記第2の導電層は、少なくとも導電性ナノ粒子とバインダ樹脂とを含む材料から形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  10. 前記プロトン保持層は、WO3、MoO3、VO2、V2O5、NbO5、TiO2 及びWO3-MoO3の中から選択される少なくとも一種から形成されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  11. 前記プロトン伝導層は、Ta2O5、MgF2、SiO、ZrO2、Cr2O3、LiF、MgF2、CaF2、LiAlF4、RbAg4I5及びLi3Nの中から選択される少なくとも一種から形成されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  12. 前記触媒層は、PdまたはPtのいずれかを含む材料から形成されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  13. 前記水素化金属層は、YbHx、RnHx、LnMgyHx、GdMgyHx及びMgNiyHx
    (但し、x, yは化学量論的数値)の中から選択される少なくとも一種から形成されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  14. 前記プロトン保持層はWO3から形成され、前記プロトン伝導層はTa2O5から形成され、前記触媒層はPdを含み、さらに、前記水素化金属層はMgNiyHxから形成されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  15. 前記透明基板は、可視光線領域における平均光透過率が80%以上であるガラス、セラミックス及び高分子樹脂フィルムの中から選択される一種であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  16. 前記高分子樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルサルフォン(PES)及びこれらの誘導体の中から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項15記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  17. 前記高分子樹脂フィルムの面内の複屈折をΔnとすると、Δn≦0.1であることを特徴とする請求項15又は16記載の反射型エレクトロクロミック素子。
  18. 請求項1乃至17のいずれか1項に記載の反射型エレクトロクロミック素子を用いた物品。
  19. 請求項1乃至17のいずれか1項に記載の反射型エレクトロクロミック素子を用いた調光体、表示体又は照明体のいずれかの物品。
  20. 請求項1乃至17のいずれか1項に記載の反射型エレクトロクロミック素子を用いた輸送機器用窓ガラス。
  21. 請求項1乃至17のいずれか1項に記載の反射型エレクトロクロミック素子を用いた建築用窓ガラス。
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JP2015528131A (ja) * 2012-07-18 2015-09-24 バレオ・エチユード・エレクトロニク 画像を形成することを目的とする光ビームを放射する装置及び方法、投影システム、並びに前記装置を使用するディスプレイ

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