JP2007090862A - ノズル板の製造方法、液体吐出ヘッドの製造方法、および、ノズル板製造用の母型構造 - Google Patents

ノズル板の製造方法、液体吐出ヘッドの製造方法、および、ノズル板製造用の母型構造 Download PDF

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Abstract

【課題】 複数のノズル孔が形成されるノズル板の面内でノズル長を均一にして、吐出性能を良くすること。
【解決手段】 平面を有する母型基板70上に、形成しようとするノズル孔51の径に対応するとともにノズル孔51の長さに対応する厚さを有するレジストパターン71を形成する工程(b)と、レジストパターン71上に、平面を有するノズル長規制部材80を、ノズル長規制部材80の平面と母型基板70の平面とが対向するように載せる工程(c)と、母型基板70の平面とノズル長規制部材80の平面との間に、レジストパターン71に基づいて、めっきによりノズル板501を形成する工程(d)を含む。
【選択図】 図3

Description

本発明はノズル板の製造方法、液体吐出ヘッドの製造方法、および、ノズル板製造用の母型構造に係り、特に、めっきにより製造するノズル板の製造方法、液体吐出ヘッドの製造方法、および、ノズル板製造用の母型構造に関する。
複数のノズル孔を有するノズル板を、めっきにより製造する方法が知られている。一般に、基板上にレジストをパターニングし、このパターニングされたレジスト(レジストパターン)に基づいて、めっきを行う。
めっきとしては、一般に、外部から与えた電気エネルギーによってめっき溶液中の金属を析出させる電鋳(電解めっき)、あるいは、化学反応によってめっき溶液中の金属を析出させる無電解めっきが行われる。電鋳の場合には電流で、無電解めっきの場合には時間で、それぞれ金属膜の成長が制御される。
特許文献1には、2段に分けて、レジストのパターニングおよび電鋳を行うことが記載されている。具体的には、1段目のレジストパターンに基づいて絞り部分(ノズル穴)が電鋳により形成され、2段目のレジストパターンに基づいて絞り部分に連なる流路部分(ストレート長さ部)が電鋳により形成される。
特許文献2には、円筒形状の平行部と、インクを導入するラッパ形状のアール部からなるノズル孔を有するノズル板(ヘッド基体)の製造方法が記載されている。例えば、ノズル板の全体の厚さを100μmとした場合、液滴の大きさを決定する円筒形状の平行部の長さは十分に小さい(10〜15μm)。すなわち、吐出性能を左右する円筒形状に対応するレジストは薄い。このような薄いレジストがパターニングされた後、電鋳が行われ、ノズル板が形成される。
特開平8−132625号公報(特に図1) 特開平10−16236号公報(特に図4〜図11)
画像形成の高速化のため、ノズル板に形成されるノズル数が増加すると、これに伴って、ノズル板の面積が大きくなる。一方で、高画質化のため、吐出性能を左右するノズル孔の長さ(ノズル長)には、高精度が求められている。
電鋳によりノズル板を形成する場合、一般に電流量で金属膜の成長が制御されるが、電鋳により形成されるノズル板の板厚の均一性が良くないという問題がある。すなわち、ノズル長がノズル板の面内でばらついてしまう。
具体的には、図21に示すように、基板70上のレジストパターン71に基づいて電鋳を行うが、基板70上のノズル板501としての金属膜の成長にばらつきが生じる。特に、大面積でめっきを行う場合、電流量による制御では、面内での金属膜の成長の均一性を保つことが難しい。
すなわち、多数のノズル孔を有するノズル板501を形成する場合には、ノズル長の精度を確保することが困難であり、ノズル長にばらつきが生じることにより、吐出量にばらつきが生じ、画質が劣化することになる。
このようにノズル長にばらつきが生じてしまうので、ノズル長を均一にするためには、電鋳後に研磨工程が必要になる。しかしながら、このような研磨を行うとノズル孔のエッジ部の形状が劣化してしまい、結局、画質が劣化してしまうという問題もある。
特許文献1に記載の方法では、1段目の絞り部分(ノズル穴)および2段目の流路部分(ストレート長さ部)ともに、長さは、一般に電鋳における電流量によって制御されるので、面内の均一性は良くないことになる。
特許文献2に記載の方法においても、ノズル板全体の厚さと比較して、吐出性能を左右する円筒形状の長さは、その長さの大小に関係なく、一般に電鋳における電流量によって制御されることにかわりはなく、結局、面内でばらつきが生じることになる。
また、1段目のレジストのパターニングと、2段目のレジストのパターニングとが別工程になっているため、レジストパターンの位置あわせが困難である。すなわち、ノズル孔の形状が軸対象にならないという問題もある。一般に、数μm程度の位置ずれが生じる。
また、無電解めっきによりノズル板を製造する場合においても、電鋳により製造する場合と同様の問題が生じる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、複数のノズル孔が形成されるノズル板の面内でノズル長を均一にすることができ、もって吐出性能を良くすることができるノズル板の製造方法、液体吐出ヘッドの製造方法、および、ノズル板製造用の母型構造を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、平面を有する母型上に、形成しようとするノズル孔の径に対応するとともに、前記ノズル孔の長さに対応する厚さを有するレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターン上に、平面を有するノズル長規制部材を、該ノズル長規制部材の前記平面と前記母型の前記平面とが対向するように載せる工程と、前記母型の前記平面と前記ノズル長規制部材の前記平面との間に、前記レジストパターンに基づいて、めっきによりノズル板を形成する工程を含むノズル板の製造方法を提供する。
この発明によれば、母型の平面とノズル長規制部材の平面との間隔が一定に保たれ、母型の平面とノズル長規制部材の平面との間にめっきによりノズル板が形成されるので、ノズル板の面内でノズル長が均一となり、吐出性能が向上することになる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ノズル長規制部材は、開口部を有することを特徴とするノズル板の製造方法を提供する。
この発明によれば、めっき時に、ノズル長規制部材の開口部を介してめっき液が循環することになる。また、ノズル板に凸部を容易に形成することができ、このようなノズル板の凸部により、ノズル板のワイピング時にワイピング用のブレードなどからノズル孔が受けるダメージを減少させることもできる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記ノズル長規制部材および/または前記レジストパターンの少なくとも前記ノズル孔の周囲に対応する部分に対して、めっきにより析出する金属を成長させるための電極が形成されていることを特徴とするノズル板の製造方法を提供する。
この発明によれば、ノズル長規制部材および/またはレジストパターンのノズル孔の周囲に対応する部分に形成された、金属の成長のための電極により、ノズル孔の周囲に選択的に金属が成長するので、ボイドなどの異常の発生を防止することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記ノズル長規制部材および/または前記レジストパターンの少なくとも前記ノズル孔の周囲に対応する部分に対して、めっきにより析出する金属を成長させるための触媒化を行う工程を含むことを特徴とするノズル板の製造方法を提供する。
この発明によれば、ノズル長規制部材および/またはレジストパターンのノズル孔の周囲に対応する部分に施された、金属の成長のための触媒化により、ノズル孔の周囲に選択的に金属が成長するので、ボイドなどの異常の発生を防止することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記レジストパターン上に前記ノズル長規制部材を載せる工程よりも前に、前記母型と前記ノズル長規制部材との間に、形成しようとする前記ノズル孔の長さと同じ厚さを有するスペーサ部材を設置することを特徴とするノズル板の製造方法を提供する。
この発明によれば、ノズル長規制部材の母型に対する接近や浮きを防止し得ることになり、ノズル板全体のノズル長をさらに確実に均一にすることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記レジストパターンの形成時に、拡散光を用いた露光、及び、前記母型の前記平面に対して斜め方向から光を照射する露光のうちいずれか一方の露光を行うことを特徴とするノズル板の製造方法を提供する。
この発明によれば、テーパ形状のノズル孔が形成されるので、吐出性能が向上する。
請求項7に記載の発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記請求項1乃至6のいずれかに記載のノズル板の製造方法によって製造されたノズル板を、該ノズル板の複数のノズル孔に連通させる流路又は液室が形成されている構造体と接合する工程を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載のノズル板の製造方法によって製造されたノズル板と、該ノズル板の複数のノズル孔に連通させる流路または液室が形成されている構造体とが接合されて構成されたことを特徴とする液体吐出ヘッドを提供する。
請求項9に記載の発明は、平面を有する母型上に、形成しようとするノズル孔の径に対応するとともに、前記ノズル孔の長さに対応する厚さを有するレジストパターンが形成され、前記レジストパターン上に、平面を有するノズル長規制部材が、該ノズル長規制部材の前記平面と前記母型の前記平面とを対向させるように載せられていることを特徴とするノズル板製造用の母型構造を提供する。
本発明によれば、複数のノズル孔が形成されるノズル板の面内でノズル長を均一にすることができ、もって吐出性能を良くすることができる。
以下、添付図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
図1は、液体吐出ヘッドの全体構造の一例について概略を示す平面透視図である。
図1において、液体吐出ヘッド50は、紙などの記録媒体に向けてインクを吐出するノズル孔51(吐出口)と、ノズル孔51に連通する圧力室52と、圧力室52内にインクが供給される開口部としてのインク供給口53とを含んでなる多数の圧力室ユニット54が、2次元配列されて構成されている。なお、図1では、図示の便宜上、一部の圧力室ユニット54が省略して描かれている。
複数のノズル孔51は、主走査方向(本実施形態では記録媒体の搬送方向と略直交する方向である)と、主走査方向に対して所定の角度θをなす斜め方向との2方向に沿って、2次元マトリクス状に配列されている。具体的には、主走査方向に対して角度θをなす斜め方向に沿ってノズル孔51が一定のピッチdで複数配列されていることにより、ノズル孔51が主走査方向に沿った一直線上に所定のピッチ「d×cosθ」で配列されたものと等価に取り扱うことができる。このようなノズル配列によれば、主走査方向に沿って例えば1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)に及ぶような高密度のノズル配列と実質的に同等の構成にできる。すなわち、液体吐出ヘッド50の長手方向(主走査方向)に沿った直線上に並べられるように投影される実質的なノズル孔の間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化が達成される。図1に示すように2方向に沿ったノズル配列を、2次元マトリクス状のノズル配列と呼ぶことにする。
図1に示すようなノズル配列によって、主走査方向(記録媒体の搬送方向と略直交する方向)に記録媒体の全幅に対応する長さにわたるノズル列を備えるフルライン型の液体吐出ヘッドを構成することができる。
なお、本発明の実施に際して、ノズル孔51等の配置構造は、図1に示した例に特に限定されない。例えば、複数のノズル孔51が2次元的に配列された短尺の液体吐出ヘッドブロックを千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有する液体吐出ヘッドを構成してもよい。
図2は、液体吐出ヘッド50の内部構造例を示す断面図である。
図2において、液体吐出ヘッド50は、主として、インクを吐出するノズル孔51、ノズル孔51に連通する圧力室52、圧力室52の容積を変化させて、圧力室52内の液体に圧力を付与する圧力発生手段としてのアクチュエータ58、圧力室52に連通する共通液室55を含んで構成されている。
なお、図2におけるノズル孔51、圧力室52、および、圧力室52のインク供給口53は、図1に示したものと同一である。ノズル孔51、圧力室52、アクチュエータ58は、実際には、複数設けられている。
また、液体吐出ヘッド50は、ノズル孔51が形成されているノズル板501、圧力室52からノズル孔51に至るノズル流路521の一部が形成されているノズル連通板502、共通液室55とノズル流路521の一部とが形成されている共通液室形成板503、圧力室52のインク供給口53とノズル流路521の一部とが形成されているインク供給口形成板504、圧力室52が形成されている圧力室形成板505、および、圧力室52の上壁面(振動面)を構成している振動板56が、積層されて、構成されている。
振動板56には圧力室52が形成されている側とは反対側に圧電体58aが固着され、この圧電体58aを振動板56と挟むようにして個別電極57が形成されている。圧電体58aは、例えばピエゾからなり、個別電極57に所定の電気信号(駆動信号)が与えられると変位(歪み)が発生し、振動板56を介して圧力室52の容積を変化させる。これらの振動板56、圧電体58aおよび個別電極57によって圧力発生手段としてのアクチュエータ58が構成されている。
なお、本実施形態における振動板56は、複数の圧力室52に共通のものとし1枚のプレートで形成されているが、このような場合に特に限定されず、圧力室52ごとに形成されている場合もある。
共通液室55は、その上流の図示を省略したインクタンクから供給されたインクを、圧力室52に対して、インク供給口53を介して供給する。
図3は、第1実施形態のノズル板の製造方法の一例の説明に用いる説明図である。
まず、図3(a)に示すように、その上面が平面である母型基板70の上に、形成しようとするノズル孔51の長さに対応する厚みとなるように、レジスト710を塗布し、図示を省略したマスクを用いた露光および現像により、レジスト710をパターニングする。
そうすると、図3(b)に示すように、母型基板70上に、形成しようとするノズル孔51の径に対応するとともに、ノズル孔51の長さと同じ厚さを有する、凸形状のレジストパターン71が形成される。
次に、図3(c)に示すように、レジストパターン71上に、その下面が平面である板状のノズル長規制部材80を接合して載せる。ここで、母型基板70の平面(上面)とノズル長規制部材80の平面(下面)とが対向するようにして、レジストパターン71上にノズル長規制部材80が載せられる。すなわち、母型基板70の上面とノズル長規制部材80の下面との間隔は、形成しようとするノズル孔51の長さと同一になる。
次に、図3(d)に示すように、母型基板70の上面とノズル長規制部材80の下面との間に、めっき(電鋳または無電解めっき)により、ノズル板501を形成する。
なお、電鋳でノズル板501を形成する場合には、予めその上面に電極層が形成されている母型基板70を用いる。
その後、図3(e)に示すように、めっきにより形成されたノズル板501を、ノズル長規制部材80、レジストパターン71、および、母型基板70から剥離する。
例えば、ノズル孔51の間隔(ノズルピッチ)が500μm、ノズル孔51の直径(ノズル径)が20μm、ノズル孔51の長さ(ノズル長)が20μmであるノズル板501が形成される。
複数のノズル孔51の長さ(ノズル長)は、ノズル長規制部材80によって物理的に一定に決められるため、従来のように電流量や時間で制御する場合と比較して、ノズル長の面内均一性が良くなる。
ノズル長の精度は、母型基板70に塗布したレジスト710の厚さの精度にも因るが、一般に、電鋳などのめっきによる厚さの精度が±10%程度であるのに対して、レジスト710の厚さの精度は±5%もしくはそれ以下なので、無視できる。
また、レジストパターン71の上にノズル長規制部材80を載せた状態でめっきを行うので、金属膜の異常成長によりノズル孔51が塞がってしまうことを防止できる。
ノズル長規制部材80としては、例えば、ポリイミド等などの樹脂からなるシートや、金属からなる板状部材を用いる。
ノズル長規制部材80とレジストパターン71との接合は、例えば、接着剤による接着で行う。接着剤を用いないで、ノズル長規制部材80をレジストパターン71に対して圧接する方法もある。
ところで、ノズル長規制部材80とレジストパターン71との密着が良くないと、図4(a)に示すように、ノズル長規制部材80とレジストパターン71との間に隙間911ができる。そうすると、図4(b)に示すように、析出した金属が隙間に成長してノズル板501のノズル孔51にバリ912が発生してしまうことになる。このような場合には、ノズル板501の形成後に、電解研磨などにより、バリの除去を行うことにより、図4(c)に示すように、バリのないノズル板501が得られることになる。なお、ノズル長規制部材80とレジストパターン71との隙間に成長する成分は僅かなので、ノズル51の径に影響を与えることなく、バリの除去が可能である。
図5は、開口部82を有するノズル長規制部材80の一例を示す平面図である。このような開口部82を有するノズル長規制部材80を用いた第2実施形態のノズル板の製造方法の一例について、図5の6―6線に沿った断面を示す図6を用いて説明する。
図5に示す開口部82を有するノズル長規制部材80を、レジストパターン71上に接合して載せた状態で、図6(a)に示すように、母型基板70とノズル長規制部材80との間にめっきによりノズル板501を形成する。
このめっきにおいて、ノズル長規制部材80に形成されている開口部82により、新鮮なめっき液が容易に循環することになり、めっきにおいて析出する金属の成長が順調になる。
また、図6(a)に示すように、開口部82の中にまで入り込むように金属を成長させることで、ノズル板501のノズル面50aに凸部5012が形成されることになる。
その後、図6(b)に示すように、めっきにより形成されたノズル板51を、ノズル長規制部材80、レジストパターン71、および、母型基板70から剥離する。
ノズル面50aに形成された凸部5012は、ノズル面50aのワイピング時に、ノズル孔51を保護する。詳細には、ノズル面50aをブレードが摺動することによりノズル面50aがワイピングされるとき、ノズル孔51がブレードによって受けるダメージを低減する役目を果たす。
なお、ノズル長がノズル面50a内において均一になることは、第1実施形態と同じである。ここで、ノズル長は、ノズル孔51の長さであって、本例において、ノズル長規制部材80の開口部82によってノズル板501に形成された凸部の高さは含まれない。すなわち、ノズル長は、ノズル板501のノズル孔51の近傍の厚さと同一である。
図7は、各種の開口部を有するノズル長規制部材の代表例を示す平面図である。
図7(a)のノズル長規制部材80aは、大面積の開口部82aが形成されており、めっき液の循環がよい。具体的には、開口部82aの幅Whは、ノズル孔51の間隔Pnの1/2よりも大きい。
図7(b)のノズル長規制部材80bおよび図7(c)のノズル長規制部材80cは、幅狭なスリット形状の開口部82b、82cが形成されており、図7(a)のノズル長規制部材80aと比較して、剛性が高い。具体的には、開口部82(82b、82c)の幅Whは、ノズル孔51の間隔Pnの1/2よりも小さい。
なお、開口部の形状は、ワイピング時のノズル孔51の保護とノズル長規制部材80の剛性との釣り合いを考え、最適な形状とする。
図7(c)のノズル長規制部材80cは、ノズル孔51に対応するレジストパターン71の凸部の間をまたぐようにV字形状の開口部82cが形成されている。
ところで、図8に示すように、ノズル板501を母型基板70上で形成する電鋳時に、電鋳の環境(例えばめっき液の供給の安定性など)によっては、ノズル孔51の周囲(近傍)に、局所的な異常成長部931(出っ張り)やボイド932(欠け)が生じてしまう場合がある。
このような局所的な異常成長部931やボイド932の発生を防止することが可能な第3実施形態のノズル板の製造方法の一例について、図9を用いて説明する。
図9(a)に示すように、電鋳における選択的な成長のための電極84を有するノズル長規制部材80を用意する。このノズル長規制部材80は、具体的には、少なくともノズル孔51の周囲(近傍)に対応する部分に、電鋳により析出する金属を成長させるための電極84を有している。
このような電極84が母型基板70上のレジストパターン71のノズル孔51に対応する部分(凸部)に接合されるように、ノズル長規制部材80をレジストパターン71上に載せる。この状態で、すなわち、少なくともレジストパターン71の凸部の周囲に電極84が配置されている状態で、図9(b)に示すように、レジストパターン71に基づいて、電鋳により母型基板70とノズル長規制部材80との間にノズル板501を形成する。
そうすると、レジストパターン71のノズル孔51の周囲(近傍)に対応する部分には、ノズル規制部材80の電極84によって、電鋳時、選択的に金属が成長する部分5013(選択成長部)が生じる。すなわち、図8に示すような局所的な異常成長部931やボイド932の発生が防止されることになる。
なお、ノズル長規制部材80の平面に形成されている電極84は、母型基板70の平面に形成されている電極74と同じ極性にして、電鋳が行われる。
図10は、選択成長部5013を形成するための電極84を有するノズル長規制部材80の製造処理の一例を示す説明図である。
まず、図10(a)に示すように、ノズル長規制部材80の上面の全部にわたって、スパッタあるいは蒸着により、金属膜からなる導電層840を形成する。
次に、図10(b)に示すように、導電層840の上に、レジストを塗布し、露光および現像によりパターニングして、電極用のレジストパターン841を形成する。
次に、図10(c)に示すように、電極用のレジストパターン841を用いて、導電層840をエッチングによりパターニングし、電極用のレジストパターン841を除去すると、ノズル孔51およびその近傍(周囲)に対応した電極84を有するノズル長規制部材80が形成される。
このようにして形成されたノズル長規制部材80を、ひっくり返して、図9(a)に示すように、母型基板70上のレジストパターン71に載せる。このとき、ノズル長規制部材80の電極84と、ノズル孔51に対応するレジストパターン71の凸部とを、位置合わせする。
図10を用いて、ノズル長規制部材80に選択成長部5013を形成するための電極84を設けた場合について説明したが、図11に示すように、母型基板70上のレジストパターン71のノズル孔51およびその周囲(近傍)に対応する部分に、選択成長部5013を形成するための電極744を設けてもよい。
図12は、母型基板70上のレジストパターン71に電極744を形成するノズル板の製造方法の一例の説明に用いる説明図である。
図12(a)に示すように、母型基板70上にレジストパターン71を形成した後に、図12(b)に示すように、レジストパターン71および母型基板70の上に、全面にわたって、スパッタあるいは蒸着により、電極744としての金属膜を成膜する。そして、電極744を形成した後、図12(c)に示すように、母型基板70上のレジストパターン71に、ノズル長規制部材80を載せる。
このようなレジストパターン71に選択的な成長のための電極を形成する方法によれば、前述のノズル長規制部材80に選択的な成長のための電極を形成する方法と比較して、位置合わせが不要となり簡単である。
なお、図9および図10を用いてノズル長規制部材80に選択的な成長のための電極を形成する場合について説明し、図11および図12を用いてレジストパターン71に選択的な成長のための電極を形成する場合について説明したが、ノズル長規制部材80とレジストパターン71の両方に選択的な成長のための電極を形成してもよい。
以上、電鋳によりノズル板501を形成する場合について説明したが、無電解めっきによりノズル板501を形成する場合には、ノズル長規制部材80および/またはレジストパターン71の少なくともノズル孔51の周囲(近傍)に対応する部分に対して、無電解めっきにより析出する金属を選択的に成長させるための触媒化の工程を経て、無電解めっきを行う。
触媒化工程は、簡単に言うと、無電解めっき前の表面に触媒を種づけする工程である。一例として、塩化第一スズ、塩化パラジウム、及び、塩酸の混合溶液を用いる。温度は30〜40度、時間は1〜3分、めっきしたい物を混合溶液につけ、表面にパラジウムを析出させる。
ノズル孔51の周囲に対応する部分に選択的に触媒を付与する方法には、各種ある。第1に、付けたくないところをマスクして、混合溶液に浸け、あとでマスクを除去する方法がある。第2に、ディスペンサを用いて、必要な部分にのみ混合溶液を付ける方法がある。第3に、混合溶液をスクリーン印刷する方法がある。なお、第2及び第3の方法において、1回で触媒化できない場合には繰り返し行うようにしてもよい。
図13は、スペーサ86を用いるノズル板の製造方法における母型構造の一例を示す平面図である。また、図13の14−14線に沿った断面図を図14に示し、図13の15−15線に沿った断面図を図15に示す。
図14および図15に示すように、形成しようとするノズル孔51の長さ(ノズル長)と同一の厚さを有するスペーサ86を、母型基板70とノズル長規制部材80との間に挟む。すなわち、ノズル51に対応するレジストパターン71以外にも、ノズル51間の位置において、スペーサ86によって、母型基板70とノズル長規制部材80との間隔を一定に保つ。こうしてスペーサ86を設置した後に、レジストパターン71上のノズル長規制部材80を載せる。
このようなスペーサ86によって、ノズル長規制部材80の母型基板70への接近および浮きが防止されて、母型基板70とノズル長規制部材80との間隔が確実に一定となるので、ノズル長を確実に一定にすることができる。
スペーサ86の形成方法の一例としては、ノズル51に対応したレジストパターン71を形成する時に、同時に形成する。詳細には、図3(a)に示すように母型基板70上にレジスト710を塗布した後、露光および現像により、ノズル孔51に対応するレジストパターン71とともに母型基板70の上にスペーサ86を形成する。
また、レジストパターン71の形成後に、スペーサを形成するようにしてもよい。
例えば、ビーズをスペーサとして用いてもよい。このビーズは、ノズル板501に残る。
また、ノズル長規制部材80の側にスペーサ86を形成するようにしてもよい。
以上のようにしてスペーサ86を母型基板70とノズル長規制部材80との間に挟んでノズル板501を形成すると、一般に、ノズル板501には、スペーサ86が挟まれていた位置に開口部が形成されることになる。このような開口部は、流路が形成されている構造体にノズル板501を接着する時、接着剤の逃げ場となり得る。
図16は、テーパ形状のノズル孔を有するノズル板の製造方法における母型構造の一例を示す断面図である。
図16において、図6に示す母型構造と同じ構成要素には同じ符号を付してあり、既に説明したので説明を省略する。
本例では、図16に示すように、テーパ形状のレジストパターン711を形成する。このようなテーパ形状のレジストパターン711に基づいてめっきにより形成されるノズル板501は、テーパ形状のノズル孔51を有することになる。
例えば 図17(a)に示すように、マスク761の開口部762から母型基板70上のレジスト710の内部に拡散していく拡散光を用いて、レジスト710の露光を行う。そうすると、図17(b)に示すように、母型基板上70に、テーパ形状のレジストパターン711が形成される。
図18に示すように、レジストパターン711の凸部をテーパ形状にするとともに、レジストパターン711に電極744を形成すれば、レジストパターン711の凸部の根元にも成膜しやすいので、電極744の形成が容易になる。
また、母型基板70にレジスト710を塗布した後、図19(a)に示すように、母型基板70のレジスト710が塗布された面の法線に対して角度θを成す斜め方向から平行光108をマスク76を介して照射する露光、すなわち入射角θを維持したままで母型基板70の平面に直交する回転軸1080を中心として光軸を才差運動させながら平行光を照射する露光を行うことにより、図17(b)に示すテーパ形状のレジストパターン711を形成するようにしてもよい。
また、母型基板70にレジスト710を塗布した後、図19(b)に示すように、水平方向に対して角度θで傾けた母型基板70を回転させながら、マスク76を介して、母型基板70上のレジスト710に対して入射角θで光108を照射して露光を行うことにより、図17(b)に示すテーパ形状のレジストパターン711を形成するようにしてもよい。
以上のようにして製造されたノズル板501は、図20に示すように、圧力室52、インク供給口53、共通流路55、振動板56(共通電極を兼ねる)、個別電極57、圧電体58aなどが形成されている構造体500に接合され、図1および図2に示す液体吐出ヘッド50が構成される。言い換えると、ノズル板501を、ノズル板501の複数のノズル孔51に連通させる流路および/または液室が形成されている構造体と接合して、液体吐出ヘッドを製造する。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、本明細書において説明した例や図面に図示された例には限定されず、また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってよいのはもちろんである。
液体吐出ヘッドの全体構造の一例を示す平面透視図である。 液体吐出ヘッドの内部構造の一例を示す断面図である。 ノズル長規制部材を用いるノズル板の製造方法の一例の説明に用いる説明図である。 バリの発生および除去の説明に用いる説明図である。 開口部を有するノズル長規制部材の一例を示す平面図である。 開口部を有するノズル長規制部材を用いるノズル板の製造方法の一例の説明に用いる説明図である。 代表的な形状の開口部を有するノズル長規制部材の例を示す平面図である。 電鋳における局所的な異常成長の説明に用いる説明図である。 電鋳における選択的な成長のための電極を用いるノズル板の製造方法の一例の説明に用いる説明図である。 ノズル長規制部材に電極を形成する処理の一例の説明に用いる説明図である。 レジストパターンに電極を形成するノズル板の製造方法における母型構造の一例を示す断面図である。 レジストパターンに電極を形成するノズル板の製造方法の一例の説明に用いる説明図である。 スペーサを用いるノズル板の製造方法における母型構造の一例を示す平面図である。 図13の14−14線に沿った断面図である。 図13の15−15線に沿った断面図である。 テーパ形状のノズルを有するノズル板の製造方法における母型構造の一例を示す断面図である。 テーパ形状のノズル孔に対応するレジストパターンを形成する工程の一例の説明に用いる説明図である。 テーパ形状のノズル孔に対応するレジストパターンに電極を形成する工程の説明に用いる説明図である。 斜め方向から露光する一例を示す説明図である。 ノズル板を構造体に接合する工程の説明に用いる説明図である。 従来のノズル板の製造方法におけるノズル長のばらつきの説明に用いる説明図である。
符号の説明
50…液体吐出ヘッド、51…ノズル孔、52…圧力室、53…インク供給口、55…共通液室、56…振動板、58…アクチュエータ、58a…圧電体、70…母型基板、71、711…レジストパターン、80…ノズル長規制部材、82…ノズル長規制部材の開口部、74、84、744…電極、86…スペーサ、501…ノズル板、502…ノズル連通板、503…圧力室形成板、504…インク供給口形成板、505…共通液室形成板

Claims (9)

  1. 平面を有する母型上に、形成しようとするノズル孔の径に対応するとともに、前記ノズル孔の長さに対応する厚さを有するレジストパターンを形成する工程と、
    前記レジストパターン上に、平面を有するノズル長規制部材を、該ノズル長規制部材の前記平面と前記母型の前記平面とが対向するように載せる工程と、
    前記母型の前記平面と前記ノズル長規制部材の前記平面との間に、前記レジストパターンに基づいて、めっきによりノズル板を形成する工程と、
    を含むことを特徴とするノズル板の製造方法。
  2. 前記ノズル長規制部材は、開口部を有することを特徴とする請求項1に記載のノズル板の製造方法。
  3. 前記ノズル長規制部材および/または前記レジストパターンの少なくとも前記ノズル孔の周囲に対応する部分に対して、めっきにより析出する金属を成長させるための電極が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のノズル板の製造方法。
  4. 前記ノズル長規制部材および/または前記レジストパターンの少なくとも前記ノズル孔の周囲に対応する部分に対して、めっきにより析出する金属を成長させるための触媒化を行う工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のノズル板の製造方法。
  5. 前記レジストパターン上に前記ノズル長規制部材を載せる工程よりも前に、
    前記母型と前記ノズル長規制部材との間に、形成しようとする前記ノズル孔の長さと同じ厚さを有するスペーサ部材を設置することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のノズル板の製造方法。
  6. 前記レジストパターンの形成時に、拡散光を用いた露光、及び、前記母型の前記平面に対して斜め方向から光を照射する露光のうちいずれか一方の露光を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のノズル板の製造方法。
  7. 液体を吐出する液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記請求項1乃至6のいずれかに記載のノズル板の製造方法によって製造されたノズル板を、該ノズル板の複数のノズル孔に連通させる流路または液室が形成されている構造体と接合する工程を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  8. 請求項1乃至6のいずれかに記載のノズル板の製造方法によって製造されたノズル板と、該ノズル板の複数のノズル孔に連通させる流路または液室が形成されている構造体とが接合されて構成されたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  9. 平面を有する母型上に、形成しようとするノズル孔の径に対応するとともに、前記ノズル孔の長さに対応する厚さを有するレジストパターンが形成され、
    前記レジストパターン上に、平面を有するノズル長規制部材が、該ノズル長規制部材の前記平面と前記母型の前記平面とを対向させるように載せられていることを特徴とするノズル板製造用の母型構造。
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