JP2005178227A - 液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド - Google Patents

液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド Download PDF

Info

Publication number
JP2005178227A
JP2005178227A JP2003423995A JP2003423995A JP2005178227A JP 2005178227 A JP2005178227 A JP 2005178227A JP 2003423995 A JP2003423995 A JP 2003423995A JP 2003423995 A JP2003423995 A JP 2003423995A JP 2005178227 A JP2005178227 A JP 2005178227A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nozzle
nozzle sheet
head
liquid discharge
liquid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003423995A
Other languages
English (en)
Inventor
Takaaki Murakami
隆昭 村上
Shigeyuki Takakura
成行 高倉
Shinji Kayaba
慎二 萱場
Masato Nakamura
正人 中村
Shinichi Horii
伸一 堀井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sony Corp filed Critical Sony Corp
Priority to JP2003423995A priority Critical patent/JP2005178227A/ja
Publication of JP2005178227A publication Critical patent/JP2005178227A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

【課題】ノズル及びノズルシートの寸法や位置を高精度に確保しつつ、インク液滴の吐出面の濡れ性が変化しないようにすることで、長期的に高精度で安定した吐出特性を有するヘッドとする。
【解決手段】母型30上に、少なくともノズル18を含む開口部に対応するレジストパターン34を形成する第1工程と、母型30上であって、レジストパターン34の周囲に、耐食金属層35を形成する第2工程と、耐食金属層35上であって、レジストパターン34の周囲に、電鋳層36を形成する第3工程と、レジストパターン34を除去する第4工程とを含む工程により、インク液滴を吐出するためのノズル18を形成したノズルシート17を作製する。
【選択図】図5

Description

本発明は、インクジェットプリンタ等に用いられる液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッドに係るものであり、詳しくは、ノズル周辺の濡れ性を均一にしつつ、高精度なノズルとすることで、液体の吐出特性を安定的に維持できるようにした技術に関するものである。
従来より、インクジェットプリンタのプリンタヘッド(液体吐出ヘッドの一種)については、種々の技術が開示されている。
例えば、特許文献1及び特許文献2では、インク液滴を吐出するためのノズルを形成したノズルシートに、支持部材としてヘッドフレームを貼り付け、ヘッドフレームの収容空間内に複数のヘッドチップを配置することで、ラインヘッドを形成する技術が開示されている。
特開2002−86736号公報 特開2002−127427号公報
上記の特許文献1及び特許文献2の技術では、電鋳によって形成されたNi(ニッケル)からなる1つのノズルシートに、多数のノズルが設けられている。そして、この1つのノズルシートに対して、複数のヘッドチップが貼り付けられている。さらに、ヘッドフレーム上には、ヘッドフレームの収容空間内に入り込んでヘッドチップと接合された流路板が設けられている。
ここで、ヘッドチップには、エネルギー発生素子として発熱抵抗体が配列されており、各発熱抵抗体と各ノズルとが対応するようになっている。また、発熱抵抗体とノズルとの間には、インク液室が設けられている。そして、流路板は、全てのインク液室と連通する共通流路を有している。
以上の構成において、流路板の共通流路を介してインクタンクから各インク液室内にインクが満たされる。そして、そのインク液室内のインクが発熱抵抗体によって加熱され、この加熱時のエネルギーによってノズルからインク液滴が吐出される。
したがって、ノズルシートに対向して配置された印画紙等の被記録媒体に向けてインク液滴を吐出することにより、被記録媒体上にインク液滴が着弾し、略円形のドットが形成される。すなわち、インク液滴を順次吐出して、0個、1個又は複数個のドットからなる画素を形成し、その画素を縦横に配列して、文字や画像を表現している。
しかし、前述の特許文献1及び特許文献2では、ノズル周辺でのインクの付着状態、つまり、インクの濡れ性により、インク液滴の吐出特性が変化するという問題について、何も開示されていない。
すなわち、前述したような従来のプリンタヘッドにおいては、ノズルシートの形成材料としてNiを使用している。そのため、使用するインクは、Niの耐性が小さい酸性のものを用いずに、弱アルカリ性から中性付近のものを用いて、ノズルシートの耐久性を保っている。
ここで、ノズルの周辺では、インク液滴の吐出を行うにしたがってインクが付着し、インク濡れが生じる。これらの濡れたインクが多くなり過ぎると、インク液滴の吐出の妨げや、吐出特性に悪影響を及ぼす恐れがある。そのため、必要に応じて、ワイピング等によるメンテナンスをすることで、濡れたインクの除去を行っている。
ところが、ワイピング等によっても、ノズル周辺の濡れたインクを完全に除去することは不可能であり、わずかにインクが残留してしまう。この残留状態は、ノズルシートとワイピング部材との当たり具合等によって微妙に異なり、ノズル周辺の場所によって不均一なものとなる。
すると、Niの化学的な安定性が十分でないことから、ノズルの変形等が起こるほどの腐食は生じないものの、ノズルシートにおけるインク液滴の吐出面が、残留インクと長期にわたって接触することに伴う反応により、Niに組成変化が生じてしまう。その結果、インク液滴の吐出面でインクの濡れ性が変化し、吐出特性が低下するのである。
このように、ノズルからインク液滴を吐出させて記録媒体上に画素を形成するインクジェットプリンタにおいては、ノズル周辺のインクの濡れ性が吐出特性に影響を及ぼす重要な因子となっており、ノズル周辺での濡れ性が不均一になると、インク液滴の吐出方向にずれが生じる一因となる。
また、前述の特許文献1及び特許文献2におけるノズルシートは、ヘッドフレームに対し、例えば熱硬化性の接着剤等を用いて、外部から、熱や圧力等といった何らかの適当な手段を加えることによって貼り付けられる。
ところが、ノズルシートは薄いものであるため取り扱いが難しく、ヘッドフレームへの貼付け時に折れる等の不良が発生することがある。また、加熱するとカールして平坦性が乱れる場合があり、ヘッドフレームへの正確な貼付けが困難になることもある。さらに、電鋳技術で形成されたノズルシートは、電鋳時の膜応力により、母型から剥離した状態での寸法が安定せず、貼付け後の寸法精度に悪影響が出ることもある。
特に、A4サイズ以上の長尺ラインヘッドとするために、幅広のノズルシートを使用する場合には、インクの濡れ性が一段と不均一になるとともに、折れやカール等の問題が発生しやすくなる。
しかも、本件出願人は、未開示の先願技術である特願2003−37343、特願2002−360408、及び特願2003−55236等により、ノズルから吐出するインク液滴の吐出方向を複数の方向に可変とすることで、高品位な印画を可能とした技術を、既に提案している。
このように、ノズルから吐出するインク液滴の吐出方向を積極的に変化させる技術を用いる場合には、その前提として特に、ノズルの形状が高精度であること、ノズルシートにおけるインク液滴の吐出面の濡れ性が経時変化しないこと、ノズルシートの平坦性が十分確保されていることが要求される。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、電鋳処理を行って作製した薄くて幅広のノズルシートを使用する場合であっても、ノズル及びノズルシートの寸法や位置を高精度に確保しつつ、インク液滴の吐出面の濡れ性が変化しないようにすることで、長期的に高精度で安定した吐出特性を有するヘッドとすることである。
本発明は、以下の解決手段によって、上述の課題を解決する。
本発明の1つである請求項1に記載の発明は、複数のエネルギー発生素子を一定間隔で一方向に配列したヘッドチップと、液滴を吐出するためのノズルを形成したノズルシートと、前記ヘッドチップの前記エネルギー発生素子の形成面と前記ノズルシートとの間に積層され、各前記エネルギー発生素子と各前記ノズルとの間に液室を形成するための液室形成部材とを備え、前記エネルギー発生素子により、前記液室内の液体を前記ノズルから吐出する液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記ノズルシートは、母型上に、少なくとも前記ノズルを含む開口部に対応するレジストパターンを形成する第1工程と、前記母型上であって、前記レジストパターンの周囲に、耐食金属層を形成する第2工程と、前記耐食金属層上であって、前記レジストパターンの周囲に、電鋳層を形成する第3工程と、前記レジストパターンを除去する第4工程とを含む工程により作製することを特徴とする。
上記の発明においては、ノズルシートを作製するに際し、母型上に、少なくともノズルを含む開口部に対応するレジストパターンを形成し、レジストパターンの周囲に耐食金属層を形成した上で、さらに電鋳層を形成する。
したがって、電鋳層の少なくとも一方の面は、耐食金属層によって保護されることとなる。また、薄くて幅広のノズルシートであっても、母型が強度保持部材及び形状保持部材となる。
また、本発明の他の1つである請求項7に記載の発明は、複数のエネルギー発生素子を一定間隔で一方向に配列したヘッドチップと、液滴を吐出するためのノズルを形成したノズルシートと、前記ヘッドチップの前記エネルギー発生素子の形成面と前記ノズルシートとの間に積層され、各前記エネルギー発生素子と各前記ノズルとの間に液室を形成するための液室形成部材とを備え、前記エネルギー発生素子により、前記液室内の液体を前記ノズルから吐出する液体吐出ヘッドであって、前記ノズルシートは、母型上に、少なくとも前記ノズルを含む開口部に対応するレジストパターンを形成する第1工程と、前記母型上であって、前記レジストパターンの周囲に、耐食金属層を形成する第2工程と、前記耐食金属層上であって、前記レジストパターンの周囲に、電鋳層を形成する第3工程と、前記レジストパターンを除去する第4工程とを含む工程により作製されたものであることを特徴とする。
ここで、請求項7に係る発明は、液体吐出ヘッドという物の発明について、ノズルシートを作製する工程を含む方法によって特定している。
このように、方法によって物の発明を特定したのは、請求項7に係る発明のノズルの断面形状について、それを構造によって表現することが必ずしも適切ではなかったからである。
すなわち、ノズルシートは、母型上に、少なくともノズルを含む開口部に対応するレジストパターンを形成し、レジストパターンの周囲に耐食金属層を形成した上で、さらに電鋳層を形成して作製され、レジストパターンを除去した部分がノズル等の開口部となる。すると、ノズルの断面形状は、レジストパターンの形状のみに支配されることとなるので、高精度のノズル得られる。
これに対し、例えばノズルを有する電鋳層に、後から耐食金属層を形成した場合には、ノズルの内壁面にまで耐食金属層が形成されたり、逆に、ノズルの周囲で耐食金属層が十分形成されないことがあり、ノズルの断面形状にばらつきが生じてしまう。
そこで、請求項7の記載は、電鋳層と耐食金属層とからなるノズルシートのノズルに関し、有意差のあるノズルの断面形状を製造方法によって特定したものであって、製造方法の如何にかかわらず、請求項7に記載の液体吐出ヘッドは、最終的に得られた、ノズルの断面形状が高精度に確保された液体吐出ヘッドを意味するものである。
本発明の液体吐出ヘッドの製造方法によれば、ノズルの形状を高精度にすることができるとともに、ノズルシートの取扱い性が改善される。また、耐食金属層により、長期間使用してもノズルシートに問題となるような化学変化は起こらず、吐出特性が安定したヘッドが得られる。
また、本発明の液体吐出ヘッドによれば、吐出特性が安定し、美麗な印字・印画能力が継続的に発揮される。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
なお、本明細書において、1つの液室と、この液室内に配置されたエネルギー発生素子と、このエネルギー発生素子の上部に配置されて液滴の吐出口となるノズルとを含む部分を「液体吐出部」と称する。すなわち、液体吐出ヘッドは、複数の液体吐出部を並設したものといえる。
また、本発明における液体吐出ヘッドは、下記実施形態ではインクジェットプリンタ用のヘッド11又はラインヘッド10に相当する。そして、液体としてインクを使用し、インクを収容する液室がインク液室12で、ノズル18から吐出される微少量(例えば数ピコリットル)のインクがインク液滴である。さらに、下記実施形態ではエネルギー発生素子として発熱抵抗体13を使用しており、この発熱抵抗体13は、インク液室12の一面(底壁部分)をも構成している。さらにまた、本発明の液室形成部材は、インク液室12の側壁となるバリア層15に相当する。そして、発熱抵抗体13によってインク液室12中のインクが急速に加熱され、気泡が発生し、インク液滴を吐出する。
図1は、本発明の方法により製造されたヘッド11を示す部分斜視図である。
図1に示すヘッド11において、基板14は、シリコン、ガラス、セラミックス等からなる半導体基板であり、その一方の面には、半導体や電子デバイス製造技術用の微細加工技術を用いて析出形成された微細な発熱抵抗体13を備えている。なお、この発熱抵抗体13は、基板14上に形成された導体部(図示せず)を介して外部回路と電気的に接続されている。
また、バリア層15は、基板14の発熱抵抗体13が形成された側の面に形成されたものである。すなわち、バリア層15は、基板14の上面全体に感光性樹脂を塗布し、しかるべき形状のパターンを描いたフォトマスクを介して、感光性樹脂を感光するに最適な波長帯の放射光を持った露光機による露光を行った後、露光した感光性樹脂層を所定の現像液で現像し、未露光部分を除去することにより、基板14上にパターニング形成されている。
さらに、ノズルシート17は、複数のノズル18が設けられたものであり、例えばNiによる電鋳技術により形成されている。そして、ノズル18の位置が発熱抵抗体13の位置と合うように、すなわちノズル18が発熱抵抗体13に対向するように精密に位置決めがなされ、バリア層15の上に貼り合わされている。
インク液室12は、発熱抵抗体13を囲むようにして、基板14とバリア層15とノズルシート17とで構成されている。すなわち、基板14及び発熱抵抗体13は、図1中、インク液室12の底壁を構成し、バリア層15は、インク液室12の側壁を構成し、ノズルシート17は、インク液室12の天壁を構成する。これにより、インク液室12は、図1中、右下方面に開口領域を有することとなり、この開口領域とインク流路(図示せず)とが連通される。
上記の1個のヘッド11には、通常100個単位の規模で、インク液室12と、各インク液室12内にそれぞれ配置された発熱抵抗体13と、各発熱抵抗体13上に位置するノズル18とから構成される液体吐出部が複数並設される。そして、プリンタの制御部からの指令によってこれら発熱抵抗体13のそれぞれを適宜選択することで、その発熱抵抗体13に対応するインク液室12内のインクを、そのインク液室12に対向するノズル18からインク液滴として吐出させることができる。
すなわち、ヘッド11と結合されたインクタンク(図示せず)からインクが供給され、インク液室12にインクが満たされる。そして、発熱抵抗体13に短時間、例えば1〜3μsecの間パルス電流を流すことにより発熱抵抗体13が急速に加熱され、その結果、発熱抵抗体13と接する部分に気相のインク気泡が発生し、そのインク気泡の膨張によってある体積のインクが押しのけられる(インクが沸騰する)。これによって、ノズル18に接する部分の上記押しのけられたインクと同等の体積のインクがインク液滴としてノズル18から吐出され、被記録媒体である印画紙上に着弾する。
さらに、複数のヘッド11を被記録媒体の幅方向に並べてラインヘッドを形成することもできる。すなわち、ヘッドの構造として、ノズル18を有するヘッド11を被記録媒体の幅方向に移動させて印画を行うシリアル方式と、多数のヘッド11を被記録媒体の幅方向に並べて配置し、印画幅分のラインヘッドを形成するライン方式とがある。
ライン方式は、印画幅分のヘッドを一体形成することが現実的でないことから、小さなヘッドの端部同士が繋がるようにヘッドを複数並設したものである。そして、それぞれのヘッドに適当な信号処理を行うことにより、被記録媒体に印画する段階で、被記録媒体の全幅にわたる記録を行うようにしたものである。
ラインヘッド10を備えるインクジェットプリンタでは、シリアル方式のものに対し、被記録媒体の幅方向に移動させる走査機構が不要となるので、走査時間が必要なくなり、印画時間の短縮を図ることができる。
図2は、このようなラインヘッド10の一実施形態を示す平面図であって、図2では、ラインヘッド10の一部である4つのヘッド11(「N−1」、「N」、「N+1」、及び「N+2」)のみを図示している。
図2に示すラインヘッド10を形成する場合、図1に示すヘッド11と異なり、ヘッド11からノズルシート17を除く部分(ヘッドチップ)を千鳥状に複数個並設する。そして、これらのヘッドチップの上部であって、全てのヘッドチップの各インク液室12に対応する位置に、ノズル18が形成された1枚のノズルシート17を貼り合わせることにより、ラインヘッド10を形成する。
ここで、各ヘッド11の配置は、隣接するヘッド11の各端部にあるノズル18同士のピッチ、すなわち、図2中のA部詳細図における、N番目のヘッド11の右端部にあるノズル18と、N+1番目のヘッド11の左端部にあるノズル18との間の間隔が、ヘッド11のノズル18間の間隔に等しくなるようにしている。
また、このようなラインヘッド10をさらに必要数だけノズル18の並び方向と直交する方向に並べてヘッド列を構成し、各ヘッド列ごとに異なる色のインクを供給することでカラー印画に対応することもできる。例えば図2に示す千鳥状のラインヘッドを4列に並べ、各ヘッド列ごとに、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、及びK(ブラック)の4色を吐出するようにするのである。
図3は、このようなカラー対応のラインヘッド10の一実施形態を示す分解斜視図である。
図3に示すカラー対応のラインヘッド10は、上記のヘッドチップ19(図1における発熱抵抗体13を配した基板14及びバリア層15)をノズル18の並び方向に複数配置し、かつ、直交方向に4列としたもので、1枚の幅広のノズルシート17に貼り合わせるようになっている。
また、ヘッドフレーム16を支持部材として、その表面にノズルシート17を貼り付けるようにしている。ここで、ヘッドフレーム16は、厚さが約5mmでノズルシート17に対応するサイズとなっている。
このヘッドフレーム16には、ヘッドチップ19の収容空間16aが4つ設けられており、収容空間16aの長さは、A4サイズの横幅に相当する長さ(約21cm)である。そして、千鳥状に配置された4列の各ヘッドチップ19は、ヘッドフレーム16の収容空間16aの内部に1列ごとに配置されるようになっている。なお、ヘッドフレーム16の収容空間16aは、個々のヘッドチップ19ごとに設けることもできる。
ところで、1個のヘッド11に並設された多数の液体吐出部は、液体吐出部ごとに、インク液滴の吐出方向等の吐出特性が不揃いになる場合がある。また、ラインヘッド10のように複数のヘッドチップ19を並設すると、ヘッドチップ19ごとの液体吐出部の吐出特性が不揃いとなる場合がある。
このような場合には、1つのインク液室12内に複数の発熱抵抗体13を設け、各発熱抵抗体13へのエネルギーの供給の仕方を変えることによって、インク液滴の吐出方向を複数の方向に可変とし、インク液滴の着弾位置を調整することができる。
しかしながら、インク液滴の吐出方向を可変とするにしても、インク液滴を所望の位置に長期間安定的に着弾させるには、その前提として、ノズル18の断面形状が高精度なものとなっていなければならない。また、インク液滴の吐出に伴ってノズルシート17に残留するインクがNiの電鋳層を組成変化させないようにする必要がある。
そこで次に、長期間使用しても吐出特性が安定したヘッド11又はラインヘッド10の製造方法の一実施形態について説明する。
まず最初に、ヘッド11又はラインヘッド10に使用するノズルシート17の作製であるが、吐出特性の安定には、ノズルシート17が高精度な断面形状のノズル18を有し、インクによって組成変化しないものでなければならない。
したがって、ノズルシート17の構造、及びそのような構造のノズルシート17を作製する手順が重要となる。
図4及び図5は、母型30を用いて電鋳処理を行うことにより、母型30上にノズルシート17を作製する手順を示す工程図である。
ここで、電鋳処理は、Niからなるノズルシート17を作製する場合の一般的な手法であり、電鋳処理によれば、選択的なノズル18の形状を形成することができる。
図4は、母型30上に、ノズル18に対応するレジストパターン34を形成する第1工程を示している。
すなわち、工程1−1においては、母型30となる金属製基板を用意する。母型30としては、その上に形成する金属層との剥離性が良く、電鋳基板として一般的なSUS(ステンレス)等が好適であり、本実施形態では、厚さが0.4mmで、大きさが400mm×400mmの導電体であるSUS304の基板を母型30としている。なお、母型30として、SUS以外の金属材料を使用することも可能である。
続く工程1−2では、母型30上に厚さ約15μmのレジスト層31を形成する。レジスト層31の材料樹脂は絶縁性の感光性樹脂で、半導体やディスプレイ製造用に多種上市されているフォトレジスト、感光性層間絶縁材料、メッキ用マスクとして上市されているドライフィルムレジスト、プリント基板用途等に上市されている各種の感光性材料、印刷用製版等に用いられる感光性材料等の様々な種類の感光性樹脂の中から最適なものを選定すればよいが、本実施形態では、環化イソプレンを主成分とし、これに感光剤や各種添加物(レベリング剤、シランカップリング剤等)を同時に適正量含有させ、これをまた適正量の溶媒等で希釈した、ネガ型レジストの感光性樹脂を使用している。
また、感光性樹脂を母型30に塗布してレジスト層31を形成する方法としては、スピンコート、バーコート、カーテンコート、メニスカスコート、スプレイコート等の各種の方法があり、その中から適宜最適なものを選択すればよい。この場合、感光性樹脂を液体状態で供給し、乾燥させるが、感光性樹脂の塗布後に、しかるべき加熱(ベーキング)方式によって母型30を加熱することにより、樹脂溶液中に含まれる溶剤を揮散させる工程を導入しても差し支えない。
工程1−3では、露光機(図示せず)による露光を行う。露光機には、フォトマスクと形成されるパターンとが1:1になるコンタクトアライナーや、ミラープロジェクションアライナー等を用いることができる。そして、ノズルの孔になる部分が選択的に残るように、ノズルに対応するパターンが形成されたフォトマスク32を介して、レジスト層31に紫外線33を照射する。なお、図4の第1工程で示す例のレジスト層31は、ネガ型レジストなので、露光部分31’が現像液に対して不溶性となる。
工程1−4では、工程1−3で露光したレジスト層31を所定の現像液で現像し、未露光部分を除去することによって露光部分31’を選択的に残し、レジストパターン34を形成する。現像液は、レジスト層31に使用する感光性樹脂によって異なるが、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)やモノエタノールアミン等の水溶液、各種有機溶剤等が一般的に使用される。なお、感光性樹脂として、上記の環化イソプレンを主成分とするものを用いた場合には、キシレン含有溶剤やイソパラフィン系炭化水素等の溶剤が現像液に使用される。
また、現像後には、必要に応じ、残留現像液の置換や表面洗浄を目的として、所定のリンス液や水(純水やイオン交換水)でリンスすることも可能である。さらにその後、母型30の表面に残った水分や溶媒を揮散させるための加熱や、スピンナーを使用した振り切り乾燥、真空チャンバーによる真空乾燥、大気中や窒素雰囲気中での自然放置を行う。
したがって、図4に示す第1工程により、レジストパターン34(レジスト層31の露光部分31’が選択的に残ったもの)が形成された母型30が完成する。ここで、レジストパターン34は、ノズル18に対応するパターンで形成されており、寸法精度の高いものとなっている。なお、ノズル18以外の開口部を同時に形成する場合には、その開口部に対応するレジストパターンも形成しておく。
図5は、第1工程の後、母型30上であって、レジストパターン34の周囲に、耐食金属層35を形成する第2工程、耐食金属層35上であって、レジストパターン34の周囲に、電鋳層36を形成する第3工程、及びレジストパターン34を除去する第4工程を示している。
すなわち、第2工程では、母型30に電極板を取り付け、薬液槽に投入し、電解メッキにより、母型30上であって、レジストパターン34の周囲に、厚さ約0.5μmの耐食金属層35(1次メッキ層)を形成する。
耐食金属層35の形成材料としては、Au(金)、Pd(パラジウム)、Ir(イリジウム)、Rh(ロジウム)、 Pt(白金)、Ru(ルテニウム)、Os(オスミウム)等の貴金属を用いることができるが、本実施形態では、Auを使用している。
また、これらの純金属だけでなく、例えばAuに対してNi、Ag(銀)、In(インジウム)、Co(コバルト)等を0.1〜8%程度共析させた硬質金メッキや、PdとNiの合金等のように、これらの貴金属を主成分とする貴金属合金を用いることもできる。この場合、その合金の主成分となる金属の純金属と比較して硬度が高いものとすることにより、ブレードによるワイピング等のメンテナンス動作において、傷の発生防止に有効となる。
さらに、Ag合金の一部を用いることもできる。すなわち、貴金属の中でAgに関しては、耐食性がそれほど良くなく、経時安定性が良くないので、そのままでは十分な効果が得られない。しかし、Au、Pd、Pt等の貴金属を約0.5〜1%程度以上含む合金とすることで、耐食性が向上して安定になるため、使用することが可能となる。
さらにまた、貴金属以外に、耐食性金属を用いることもできる。すなわち、Cr(クロム)やTi(チタン)等のように、表面に安定な不動態皮膜が形成されることによって良好な耐食性を有するものである。
なお、Auの電解メッキではなく、Auの無電解メッキによって耐食金属層35を形成することもできる。
また、SUSの母型30上にAuの耐食金属層35を形成する前に、母型30の表面の活性化のために、前処理を行っても良い。母型30の表面を活性化することにより、耐食金属層35の付き回りが良好になるからである。ここで、活性化の方法としては、酸処理による方法や、Arプラズマ処理による方法等を用いることができる。
さらに、耐食金属層35の厚さは、0.5μmよりも厚くても薄くても良い。ただし、厚さが増加すると成膜時間が長くなるので生産性の悪化を招き、また、貴金属のような高価な材料を用いる場合は経済性が悪くなる。一方、薄くなると全体的に安定した成膜ができなくなり、ピンホールによる影響も大きくなる。したがって、上記の点やサイズ等を考慮して、最適な層厚を決定するようにする。
第3工程では、第2工程と同様にして薬液槽に投入し、電解メッキにより、耐食金属層35上であって、レジストパターン34の周囲に、Niを主成分とする厚さ約12.5μmの電鋳層36(2次メッキ層)を形成する。そして、総厚で約13μmの電鋳形成物(耐食金属層35及び電鋳層36)が得られたところで電鋳処理を終了し、洗浄・乾燥等の後処理を行う。
ここで、電鋳層36の形成材料としては、純Niの他、例えばCoを10〜20%程度添加したNi−Co合金等を用いることができる。
また、無電解メッキによって電鋳層36を形成することもできるが、電解メッキの方が成膜速度が速く、生産効率上は有利である。
なお、薬液は、スルファミン酸ニッケルメッキ浴の場合には、スルファミン酸ニッケル・塩化ニッケル・ホウ酸・応力調整剤・ピット防止剤等の混合液であり、ワイズベルグニッケルメッキ浴の場合には、硫酸ニッケル・塩化ニッケル・硫酸コバルト・ホウ酸・蟻酸ニッケル・硫酸アンモニア・ホルムアルデヒド等の混合液である。
第4工程では、ノズル18に対応するレジストパターン34を除去する。すなわち、電鋳の型となっているレジストパターン34を溶剤やアルカリ溶液を用いて除去して開口部とし、続いて洗浄・乾燥を行う。すると、母型30に、Auメッキ層の耐食金属層35とNiメッキ層の電鋳層36とからなるノズルシート17が貼り付いた状態となる。
このようにして、母型30上に、ノズル18が形成されたノズルシート17が得られるが、400mm角の母型30上には、ノズルシート17を同時に5枚作製することが可能である。そのため、レジストパターン34の除去後に、例えばシャーリング等の方法で、ノズルシート17が個別の状態になるように母型30ごと切断する。そして最後に、ノズルシート17を母型30から剥離することにより、電鋳層36の一面が耐食金属層35によって保護されたノズルシート17が得られる。なお、個々のノズルシート17になるように、母型30ごと切断するのではなく、切断をしない状態のまま、母型30からノズルシート17を適宜剥離することもできる。
得られたノズルシート17は、厚さが約13μmで、約50mm×240mmのサイズのものであり、A4サイズのラインヘッド10(図3参照)に対応した大きさとなっている。そして、ノズル18の孔径は約17μm、隣り合うノズル18までのノズル間のピッチは約42.3μmであり、ノズル18列は、ヘッドチップ19(図3参照)に合わせて千鳥状に4列配置されている。したがって、A4サイズの長尺ラインヘッドに必要なノズル18が全て、1つのノズルシート17に形成されることとなる(ただし、図4及び図5では、その一部分のみを図示している)。
続いて、このノズルシート17を用いてヘッド11又はラインヘッド10を製造する。その際、耐食金属層35と電鋳層36との2層構造になっているノズルシート17の耐食金属層35側がインク液滴の吐出面となるようにする。すなわち、図1に示すヘッド11の場合には、耐食金属層35を上側とし、下側の電鋳層36をバリア層15の上に貼り合わせる。また、図3に示すラインヘッド10の場合には、耐食金属層35を下側にして、上側の電鋳層36とヘッドフレーム16とを貼り付ける。
したがって、ヘッド11及びラインヘッド10におけるノズル18の断面形状は、レジストパターン34の形状のみに支配される。そのため、ノズル18の内壁面において、耐食金属層35と電鋳層36との間に段差等が生ずることは考えられず、滑らかに連続した内壁面となるので、高精度のノズル18が得られる。
また、耐食金属層(Auメッキ層)35が残留インクと接触するので、長期間使用しても電鋳層(Niメッキ層)36に組成変化が生ずることはなく、濡れ性が変わらない。しかも、インク液滴の吐出面がAuメッキ層の耐食金属層35で被覆されるだけでなく、ノズル18の内壁面も、耐食金属層35の厚さと同等の深さまでAuメッキ層で形成されることとなるので、ノズル18の開口付近の濡れ性が均一になる。
このようにして製造された実施例1のヘッド11及びラインヘッド10について、インク液滴の吐出特性を試験したところ、安定した突出が可能であり、長期間の使用においても良好な吐出特性が得られることが確認できた。
前述の実施例1では、メッキにより耐食金属層35を形成したが、スパッタリング法やイオンプレーティング法等のPVD(Physical Vaper Deposition)法により形成することもできる。
そこで、実施例2では、耐食金属層35をAuのスパッタリングによって形成した。また、スパッタリングを行う前に、Arプラズマを用いたプラズマ処理(逆スパッタ)による前処理を行い、Auスパッタ膜の母型30への密着強度を高くした。
すなわち、一般に、スパッタリング法等のPVD法で成膜する場合には、被着体(この場合にはSUSの母型30)の清浄度が皮膜の密着性に対して重要である。そのため、通常は被着体の洗浄を行って成膜するが、洗浄の仕方等によって清浄度に差が生じる。したがって、清浄度が不十分な場合には、前処理を行うことが有効となる。なお、母型30に使用しているSUSは、表面に不動態皮膜が存在するので、皮膜は母型30から容易に剥離する。そのため、実施例2のような前処理を行ない、Auスパッタ膜の密着力を高めても、母型30から剥離できなくなるようなことはない。
実施例2のその他の工程に関しては、実施例1と全く同様であり、ノズルシート17のインク液滴の吐出面が化学的に極めて安定な耐食金属層(Auスパッタ膜)35であるため、長期間の使用によっても化学変化がほとんど起こらず、吐出面の濡れ性が経時変化しない。そのため、実施例2のヘッド11及びラインヘッド10も、長期の安定した吐出特性の維持に効果がある。
実施例3は、ラインヘッド10の製造方法において、実施例1と同様の工程(第1工程〜第4工程)で、母型30上にノズルシート17を形成し、ノズルシート17を母型30から剥離しない状態のままヘッドフレーム16と貼り合わせ、その後、ノズルシート17から母型30を剥離するようにしたものである。
すなわち、母型30から剥離させたノズルシート17であると、シリアル方式用の小さな面積のものであれば問題にならないが、ライン方式のヘッドに使用するような大きな面積の場合には、ノズルシート17が薄くて大きくなる(例えばA4サイズ用では、厚さが約13μmで、約50mm×240mmの大きさになる)ため取り扱いが難しく、折れ等が問題となる。
特に、薄くて大きなノズルシート17の片面のみに異種金属からなる耐食金属層35を形成すると、線膨張係数の違いや残留応力等により、母型30からノズルシート17を剥離した際にカールしてしまう場合があり、ヘッドフレーム16との接着が難しくなる。
そこで、実施例3では、図5に示すように、母型30に対して最初に耐食金属層35を形成し、その後で電鋳層36を形成すると、母型30を剥離しなくても電鋳層36とヘッドフレーム16とを貼り付けることができることを利用して、これらの問題に対処している。
図6及び図7は、図3に示すラインヘッド10を製造するに際し、ヘッドフレーム16を支持部材として、図4及び図5のようにして作製したノズルシート17を貼り付ける工程(第5工程〜第8工程)を示す工程図である。
図6及び図7に示すように、ノズルシート17は、母型30に貼り付いた状態のままで使用する。
図6に示す第5工程においては、平坦な面を有するベース治具37を作業台とし、その上に、母型30付きのノズルシート17を設置する。この際、母型30を剥離させた後のノズルシート17を設置すると、残留応力によってノズルシート17が伸びたり縮んだりしてしまうが、第5工程では母型30付きの状態であるため、ノズルシート17の寸法精度が高い状態で保持されることとなる。
図6及び図7に示す第6工程では、接着剤を用いて、約150℃の高温状態でノズルシート17にヘッドフレーム16を貼り合わせる。すなわち、ベース治具37側(下側)を母型30としておき、表面側の電鋳層36に対して、上側からヘッドフレーム16を貼り付ける。ここで、ノズルシート17は、縦横のサイズに対して厚さが薄いために取扱いが難しいが、第6工程の段階でも母型30付きの状態であるため、ノズルシート17が折れたりカールしたりすることがなく、平坦性が乱れない。そのため、ヘッドフレーム16を正確に貼り合わせることができる。
また、ノズルシート17及び母型30の線膨張係数は、支持部材となるヘッドフレーム16の線膨張係数よりも大きく、全工程の最高温度に設定されている。そのため、約150℃の高温状態で、熱硬化型シート接着剤、例えばエポキシ系のシート接着剤を使用して貼合わせを行うと、接着剤の硬化時には、ノズルシート17及びヘッドフレーム16がそれぞれの線膨張係数に応じて伸びている。ただし、第6工程の段階では、Niのノズルシート17はSUSの母型30の線膨張係数にしたがう。
図6に示す第7工程では、加熱された母型30、ノズルシート17、及びヘッドフレーム16を徐々に冷却して室温に戻した後、ベース治具37から取り外す。第7工程の段階でもノズルシート17は母型30に貼り付いた状態なので、ノズルシート17は母型30の線膨張係数にしたがって推移し、隣り合うノズル18までのノズル間ピッチ等は、母型30によって高い寸法精度が維持されている。また、ノズルシート17とヘッドフレーム16とは、正確な位置で貼り合わせられている。
室温になると、線膨張係数に応じて伸びていたものが元に戻るが、伸びた状態で接着剤が硬化しているので、母型30とノズルシート17の方がヘッドフレーム16より大きく収縮しようとする。そのため、十分な剛性を有するヘッドフレーム16によって母型30及びノズルシート17にテンションが付加されることとなる結果、ノズルシート17の平坦性が確保される。
図6及び図7に示す第8工程では、ノズルシート17から母型30を剥離させる。剥離は簡単に行うことができ、この段階では、ノズルシート17がヘッドフレーム16に固着されているので、母型30を剥離させてもノズルシート17が変形等することはない。
これにより、ノズルシート17とヘッドフレーム16との貼付けが完了となり、インク液滴の吐出面側が耐食金属層35となるが、母型30が取り除かれた後も、ノズルシート17にはヘッドフレーム16によってテンションが付加される点に変わりはない。また、ヘッドフレーム16によってノズル間ピッチ等の高い寸法精度が維持される点も変わりはない。
このようにしてノズルシート17とヘッドフレーム16とを固着した後は、ノズルシート17にヘッドチップ19を貼り付ける。すなわち、図3に示したように、ヘッドフレーム16の収容空間16aの内部にヘッドチップ19(図1における発熱抵抗体13を配した基板14及びバリア層15)を配置し、1枚の幅広のノズルシート17に対して複数のヘッドチップ19を貼り合わせる。なお、図3において、ヘッドフレーム16からノズルシート17が離れているのは分解斜視図だからであり、ヘッドチップ19を貼り合わせる際は、現実にはノズルシート17とヘッドフレーム16とが固着している。
各ヘッドチップ19のノズルシート17への貼付けは、約105℃の温度で行う。この貼付けは、ヘッドチップ19のバリア層15(図1参照)を熱硬化させて行うため、貼付け温度はバリア層15を構成する感光性樹脂によっても異なるが、上記したノズルシート17とヘッドフレーム16との貼付け温度よりも低く設定する。
すなわち、前述したように、ノズルシート17とヘッドフレーム16との貼付けを製造工程中の最高温度とすることで、貼付け後のノズルシート17に対し常にテンションを付加した状態としておく。そして、ノズルシート17とヘッドフレーム16との貼付け温度である約150℃よりも低い温度(約105℃)で、各ヘッドチップ19をノズルシート17に貼り付ける。すると、ノズルシート17が熱膨張してもヘッドフレーム16によるテンションは有効に作用し、その結果、ノズルシート17にシワ等が発生することはなく平坦性が維持される。
ところで、ヘッドチップ19の線膨張係数は基板14(図1参照)にしたがうが、この基板14の線膨張係数とヘッドフレーム16の線膨張係数とは同等に設定されている。例えば基板14として、シリコンからなる半導体基板を使用する場合には、ヘッドフレーム16には窒化珪素やインバー合金等が使用される。また、基板14がガラス系の場合には、ヘッドフレーム16として石英等を、基板14がセラミックス系であれば、ヘッドフレーム16としてアルミナ、ムライト、窒化アルミ、炭化珪素等を、基板14が金属であれば、ヘッドフレーム16には同種の金属材等がそれぞれ使用される。
そのため、図3に示すヘッドチップ19の発熱抵抗体13(図1参照)の間隔は、ヘッドフレーム16の線膨張係数にしたがって推移することとなる。また、上記したように、ノズルシート17はヘッドフレーム16によってテンションが付加されているから、ノズルシート17におけるノズル18間のピッチも、ヘッドフレーム16の線膨張係数にしたがって推移することとなる。
すると、同じ温度の下では、ノズル18の間隔と発熱抵抗体13の間隔とが一致することとなり、常にノズル18と発熱抵抗体13との位置が合うようになる。
また、図3に示すようにヘッドチップ19を貼り付けた後は、ヘッドチップ19の背面に流路板(図示せず)を取り付ける。流路板は、4色のインクに対応して4個あり、容易に変形しない剛性を有し、耐インク性を備える材料で形成する。そして、各流路板をヘッドフレーム16の収容空間16aに嵌め合わせることにより、各ヘッド列におけるヘッドチップ19の千鳥状の中間部に共通のインク流路を形成し、1つの流路板でインクを供給する。
このようにしてカラー対応のラインヘッド10を製造すると、ノズルシート17の取扱い性が改善され、ノズル18の位置が恒常的に安定する。また、ノズル18が高精度なものとなり、ノズル18周辺の濡れ性が均一になるので、画像が乱れることなく、美麗な印字・印画能力が継続的に発揮される。
なお、カラー対応のラインヘッド10だけでなく、モノクロ用でも同様の効果が得られる。また、カラー対応であっても、4色一体型に限るものではなく、一色一色独立した構成のものにも適用できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、以下のような種々の変形等が可能である。すなわち、
(1)本実施形態は、エネルギー発生素子として発熱抵抗体を用いたサーマル方式としたが、発熱抵抗体等の発熱素子に代えて、振動板と、この振動板の下側に空気層を介した2つの電極を設け、両電極間に電圧を印加して振動板をたわませた後、静電気力を開放して振動板を元に戻し、その際の弾性力を利用してインク液滴を吐出させる静電吐出方式にも適用可能である。また、両面に電極を有するピエゾ素子と振動板との積層体を用い、圧電効果によって振動板を変形させてインク液滴を吐出させるピエゾ方式にも適用可能である。
(2)本実施形態で使用したノズルシートは、耐食金属層と電鋳層との2層構造のものであるが、第3工程で形成した電鋳層の上に、さらに第2工程と同様にして耐食金属層を形成することで、電鋳層の両面を耐食金属層で被覆した3層構造のノズルシートを用いることもできる。
本発明の液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッドは、インクジェットプリンタに適用して特に好適なものであるが、被記録媒体は印画紙に限ることなく、例えば染め物に対して染料を吐出するヘッド等に適用することもできる。
また、生体試料を検出するためのDNA含有溶液を吐出するためのヘッド等に適用することも可能である。
本発明の方法により製造されたヘッド11を示す部分斜視図である。 ラインヘッドの一実施形態を示す平面図である。 カラー対応のラインヘッドの一実施形態を示す分解斜視図である。 母型を用いて電鋳処理を行うことにより、母型上にノズルシートを作製する手順を示す工程図であり、その第1工程の詳細を示すものである。 母型を用いて電鋳処理を行うことにより、母型上にノズルシートを作製する手順を示す工程図であり、その第1工程〜第4工程を示すものである。 ラインヘッドを製造するに際し、ヘッドフレームを支持部材として、ノズルシートを貼り付ける第5工程〜第8工程を示すものである。 ラインヘッドを製造するに際し、ヘッドフレームを支持部材として、ノズルシートを貼り付ける第6工程、第8工程を示すものである。
符号の説明
10 ラインヘッド(液体吐出ヘッド)
11 ヘッド(液体吐出ヘッド)
12 インク液室(液室)
13 発熱抵抗体(エネルギー発生素子)
15 液室形成部材(バリア層)
16 ヘッドフレーム(支持部材)
17 ノズルシート
18 ノズル
19 ヘッドチップ
30 母型
34 レジストパターン
35 耐食金属層
36 電鋳層

Claims (11)

  1. 複数のエネルギー発生素子を一定間隔で一方向に配列したヘッドチップと、
    液滴を吐出するためのノズルを形成したノズルシートと、
    前記ヘッドチップの前記エネルギー発生素子の形成面と前記ノズルシートとの間に積層され、各前記エネルギー発生素子と各前記ノズルとの間に液室を形成するための液室形成部材と
    を備え、
    前記エネルギー発生素子により、前記液室内の液体を前記ノズルから吐出する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
    前記ノズルシートは、
    母型上に、少なくとも前記ノズルを含む開口部に対応するレジストパターンを形成する第1工程と、
    前記母型上であって、前記レジストパターンの周囲に、耐食金属層を形成する第2工程と、
    前記耐食金属層上であって、前記レジストパターンの周囲に、電鋳層を形成する第3工程と、
    前記レジストパターンを除去する第4工程と
    を含む工程により作製する
    ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  2. 請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法において、
    前記ノズルシートの前記電鋳層に、前記液室形成部材を積層する
    ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  3. 請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法において、
    前記ノズルシートを支持し、前記ヘッドチップを内部に配置するための収容空間が形成された支持部材を、前記ノズルシートの前記電鋳層に貼り合わせる
    ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  4. 請求項3に記載の液体吐出ヘッドの製造方法において、
    前記ノズルシートを前記母型から剥離しない状態のままで前記支持部材と貼り合わせ、その後、前記ノズルシートから前記母型を剥離する
    ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  5. 請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法において、
    前記耐食金属層は、貴金属、貴金属合金、銀合金、クロム、又はチタンのいずれかから形成される
    ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  6. 請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法において、
    前記電鋳層は、ニッケルを含む材料から形成される
    ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  7. 複数のエネルギー発生素子を一定間隔で一方向に配列したヘッドチップと、
    液滴を吐出するためのノズルを形成したノズルシートと、
    前記ヘッドチップの前記エネルギー発生素子の形成面と前記ノズルシートとの間に積層され、各前記エネルギー発生素子と各前記ノズルとの間に液室を形成するための液室形成部材と
    を備え、
    前記エネルギー発生素子により、前記液室内の液体を前記ノズルから吐出する液体吐出ヘッドであって、
    前記ノズルシートは、
    母型上に、少なくとも前記ノズルを含む開口部に対応するレジストパターンを形成する第1工程と、
    前記母型上であって、前記レジストパターンの周囲に、耐食金属層を形成する第2工程と、
    前記耐食金属層上であって、前記レジストパターンの周囲に、電鋳層を形成する第3工程と、
    前記レジストパターンを除去する第4工程と
    を含む工程により作製されたものである
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  8. 請求項7に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    前記ノズルシートの前記電鋳層に、前記液室形成部材が積層されている
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  9. 請求項7に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    前記ノズルシートを支持し、前記ヘッドチップを内部に配置するための収容空間が形成された支持部材は、前記ノズルシートの前記電鋳層に貼り合わせられている
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  10. 請求項9に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    前記ヘッドチップの線膨張係数は、前記支持部材の線膨張係数と同等である
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  11. 請求項9に記載の液体吐出装置において、
    前記ノズルシートの線膨張係数は、前記支持部材の線膨張係数よりも大きい
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
JP2003423995A 2003-12-22 2003-12-22 液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド Pending JP2005178227A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003423995A JP2005178227A (ja) 2003-12-22 2003-12-22 液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003423995A JP2005178227A (ja) 2003-12-22 2003-12-22 液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005178227A true JP2005178227A (ja) 2005-07-07

Family

ID=34784300

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003423995A Pending JP2005178227A (ja) 2003-12-22 2003-12-22 液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005178227A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100708165B1 (ko) * 2005-07-20 2007-04-17 삼성전자주식회사 어레이 잉크젯 헤드 및 이를 적용한 잉크젯 화상형성장치
US7658477B2 (en) 2005-11-11 2010-02-09 Ricoh Company, Ltd. Liquid ejecting head, imaging forming apparatus, device for ejecting a liquid drop, and recording method
JP2017094676A (ja) * 2015-11-27 2017-06-01 京セラ株式会社 ノズルプレート、およびそれを用いた液体吐出ヘッド、ならびに記録装置

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100708165B1 (ko) * 2005-07-20 2007-04-17 삼성전자주식회사 어레이 잉크젯 헤드 및 이를 적용한 잉크젯 화상형성장치
US7658477B2 (en) 2005-11-11 2010-02-09 Ricoh Company, Ltd. Liquid ejecting head, imaging forming apparatus, device for ejecting a liquid drop, and recording method
JP2017094676A (ja) * 2015-11-27 2017-06-01 京セラ株式会社 ノズルプレート、およびそれを用いた液体吐出ヘッド、ならびに記録装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6019907A (en) Forming refill for monolithic inkjet printhead
JP3213624B2 (ja) プリントヘッド
US6145963A (en) Reduced size printhead for an inkjet printer
JP4834426B2 (ja) インクジェット記録ヘッドの製造方法
JP2006192622A (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出装置、及び液体吐出ヘッドの製造方法
TW589253B (en) Method for producing nozzle plate of ink-jet print head by photolithography
JP3045180B2 (ja) インクジェットヘッド及びその製造方法
US7293359B2 (en) Method for manufacturing a fluid ejection device
JP2005178227A (ja) 液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド
JP2000015820A (ja) オリフィスプレートおよび液体吐出ヘッドの製造方法
JP2006137065A (ja) 液体吐出ヘッドの製造方法
JP3387871B2 (ja) 微細形状部品及びその製造方法
JP5069186B2 (ja) 液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置
JP2005131949A (ja) 液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出装置
JP3495218B2 (ja) ノズル形成部材の製造方法
JP2006175678A (ja) ノズルシートの製造方法、ノズルシートの表面処理方法、ノズルシート、液体吐出ヘッドの製造方法、及び液体吐出ヘッド
JP6546666B2 (ja) ノズルプレート、およびそれを用いた液体吐出ヘッド、ならびに記録装置
JP2006103343A (ja) 液体吐出装置、プリンタ及び液体吐出装置の製造方法
JP4241605B2 (ja) 液体吐出ヘッドの製造方法
JP7327474B2 (ja) インクジェットヘッドおよびその製造方法、ならびに画像形成装置
JP2002160369A (ja) インクジェット記録ヘッドおよびその製造方法
JPH1158747A (ja) ノズル形成部材及びその製造方法並びにインクジェットヘッド
JP2006175677A (ja) ノズルシートの製造方法、ノズルシートの表面処理方法、ノズルシート、液体吐出ヘッドの製造方法、及び液体吐出ヘッド
JP2006315307A (ja) 液体吐出ヘッドの製造方法、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
WO2007032350A1 (ja) 液体吐出ヘッド

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Effective date: 20060718

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090904

A131 Notification of reasons for refusal

Effective date: 20090908

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

A02 Decision of refusal

Effective date: 20100112

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02