JP2007089406A - 重金属耐性植物細胞又は植物、及び、その作製方法 - Google Patents

重金属耐性植物細胞又は植物、及び、その作製方法 Download PDF

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【課題】本発明は、主に、新規な重金属耐性植物細胞又は植物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドで形質転換された重金属耐性植物細胞又は植物、並びに、これを作製する方法を提供する。本発明は、更に、重金属耐性植物を用いて、重金属汚染土壌を浄化する方法を提供する。本発明は、また、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドを含む植物細胞用発現プラスミドを備える重金属耐性植物細胞又は植物を作製するためのキットも提供する。
【選択図】図4

Description

本発明は、主に、重金属耐性植物細胞又は植物、及び、その作製方法に関する。本発明は、更に、重金属耐性植物を用いて、重金属汚染土壌を浄化する方法にも関する。
近年、重金属による環境中の汚染が深刻な問題となっている。
環境中に含まれる重金属としては、カドミウム、鉛、クロム、砒素、水銀等が知られており、これらの多くは生物に悪影響を与える。
カドミウムは、ウッド合金の成分材料、顔料、充電池(ニッカド電池)等さまざまな工業製品に利用されているほか、中性子を吸収する性質から原子炉の制御用材料にも使われている。体内のカルシウムが失われる骨軟化症や癌を引き起こすことが知られている。
金属クロムは極めて安定で、日用品、装飾品等に広く利用されているが、水溶性のクロム化合物になると、3価クロムは比較的低毒性であるが、6価クロムは皮膚、粘膜の腐食性が強く、長期に渡る摂取又は多量摂取は、肝臓、腎臓、脾臓等の機能低下を引き起こし、嘔吐、腹痛、けいれん等を起こし死にいたる場合もある。6価クロムを取り扱う場所としては、代表的に、メッキ工場、無機化学工場、革なめし工場等がある。
水銀に関して述べると、有機水銀は無機水銀に比べて毒性が強く、特にアルキル水銀の中枢神経への作用は特異的である。アルキル水銀の中でも特にメチル水銀の毒性が強く、その中毒事例として有機水銀農薬製造工場での曝露による中毒、工場排水から生じたメチル水銀による水俣病、メチル水銀で消毒した種子用小麦で作ったパンによる中毒(イラク)などがある。一方、アリール水銀は体内での分解が速く、無機水銀に似た挙動を示す。医薬・農薬に利用される有機水銀は、1つのアルキル基またはアリール基を有している場合が多い。日本では、酢酸フェニル水銀が農業用殺菌剤、リン酸エチル水銀と塩化メトキシエチル水銀は種子消毒としてかつて使用されていた。
このような重金属は、生体のタンパク質と結合し、変性及び/又は失活させ、生体に毒性をもたらすと考えられている。また、重金属は、概してルイス酸性が強いため、タンパク質や酵素に含まれている正常な金属を追い出して、その代わりに入り込む傾向がある。酵素などのタンパク質がつくられる過程で、正常な金属イオン(ミネラル)の代わりに重金属イオンが取り込まれ、タンパク質が失活することもある。
近年、毒性の高い重金属を、効率的且つ経済的に除去する方法が求められている。
この問題に対する解決方法として、微生物を利用して浄化する方法(バイオリメディエーション:bioremediation)や植物を利用して浄化する方法(ファイトリメディエーション:phytoremediation)が知られている。
ファイトリメディエーションは、金属を蓄積する植物を利用して浄化する方法として、1995年にSaltらによって提案された。バイオリメディエーションの実用化が進んでいる米国では、ファイトリメディエーションの市場が既に存在し、1999年の推定市場規模は3000〜4900万ドルとなっている(非特許文献1)。
ファイトリメディエーションに利用可能な重金属耐性植物を作製する方法として、重金属耐性を高める機能を有するタンパク質をコードする遺伝子で植物を形質転換し、植物の重金属耐性を高める方法が知られている。
重金属耐性を高める機能を有するタンパク質としては、酵母カドミウムファクター1(Ycf1)、メタロチオネイン、グルタチオン合成酵素、ファイトケラチン合成酵素等が知られている。Ycf1は酵母の液胞膜に発現し、グルタチオンにより抱合されたカドミウムを積極的に液胞内に輸送することにより、細胞内のカドミウム濃度を減少させ重金属耐性を付与する。メタロチオネインは、カドミウム等の重金属との抱合体を細胞内で形成することにより毒性を低下させ、細胞に重金属耐性を付与する。
一方、セリンプロテアーゼインヒビターの存在が報告されている。多くのセリンプロテアーゼは、植物の種子に高発現し、外来生物由来のトリプシンやキモトリプシンといったプロテアーゼの活性を阻害することにより、昆虫や真菌、あるいは土壌細菌に対する防御応答に関与するといった特徴を持つ。
代表的には、ボウマン・バークセリンプロテアーゼインヒビター(Bowman−Birk serine protease inhibitor:BBI)、クニッツインヒビター(Kunitz inhibitor)等が知られている。BBIは、本来のセリンプロテアーゼインヒビターとしての機能の他、ウイルス抵抗性、病原菌や昆虫による食害への防御、含硫アミノ酸の貯蔵等の機能を有することが知られている。BBIは可溶性タンパク質と考えられる。また、BBIには14個のシステイン残基が保存されており、それらがジスルフィド結合し、計7個のループを形成している。このループがトリプシン等のプロテアーゼの活性を阻害するために必要であると報告されている。Kunitz inhibitorは、セリンプロテアーゼインヒビターとしての機能が報告されている。
しかしながら、セリンプロテアーゼインヒビターが重金属耐性を高める機能を有するとの報告はなされていない。
日経バイオビジネス2001年9月号
本発明は、主に、新規な重金属耐性植物細胞又は植物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドで形質転換された植物細胞又は植物が、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドで形質転換されていない植物細胞又は植物と比べてより高い重金属耐性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の事項に関する。
〔項1〕
セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドで形質転換された、重金属耐性植物細胞又は植物。
〔項2〕
前記セリンプロテアーゼインヒビターが、ボウマン・バークセリンプロテアーゼインヒビター(Bowman−Birk serine protease inhibitor)及びクニッツインヒビター(Kunitz inhibitor)からなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載の重金属耐性植物細胞又は植物。
〔項3〕
前記ボウマン・バークセリンプロテアーゼインヒビターが、オウレン、コムギ、イネ、大豆、トウモロコシ、アルファルファ、及びピーナッツから成る群より選択される少なくとも1種に由来する、項2に記載の重金属耐性植物細胞又は植物。
〔項4〕
前記セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドが、
(I)配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド、
(II)配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、セリンプロテアーゼインヒビター活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、並びに
(III)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドと15%以上の相同性を有し且つセリンプロテアーゼインヒビター活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、
から成る群より選択される少なくとも1種のポリヌクレオチドである、項1〜3のいずれかに記載の重金属耐性植物細胞又は植物。
〔項5〕
重金属が、カドミウム、鉛、クロム、砒素、及び水銀から成る群より選択される少なくとも1種である、項1〜4のいずれかに記載の重金属耐性植物細胞又は植物。
〔項6〕
重金属が、カドミウムである、項5に記載の重金属耐性植物細胞又は植物。
〔項7〕
(1)項1〜6に記載の重金属耐性植物を重金属汚染土壌で栽培する工程、及び、
(2)工程(1)で栽培した重金属耐性植物の全体又は一部を回収する工程、
を包含する、重金属汚染土壌の浄化方法。
〔項8〕
セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドで植物細胞を形質転換する工程を包含する、重金属耐性植物細胞又は植物を作製する方法。
〔項9〕
セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドを含む植物細胞用発現プラスミド、
を備える、重金属耐性植物細胞又は植物を作製するための、キット。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の重金属耐性植物細胞又は植物は、基本的に、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドで宿主となる植物細胞を形質転換することにより得られる。
セリンプロテアーゼインヒビターとしては、セリンプロテアーゼの活性を阻害する機能を有するポリペプチドであれば特に限定されないが、代表的には、ボウマン・バークセリンプロテアーゼインヒビター(Bowman−Birk serine protease inhibitor:BBI)、クニッツインヒビター(Kunitz inhibitor)が挙げられ、特に、BBIを好適に用いることができる。
セリンプロテアーゼインヒビターは、セリンプロテアーゼインヒビター活性を有する限りにおいて1又はそれ以上のアミノ酸が置換、付加、又は欠失された改変セリンプロテアーゼインヒビターであってもよい。
セリンプロテアーゼインヒビターのアミノ酸配列は、多くの場合、生物種間で15%〜50%程度の相同性を有し、セリンプロテアーゼインヒビターの活性に必要とされる部分は、より高度に保存されている。BBIのアミノ酸配列は、通常、生物種間で20%〜60%程度の相同性を有し、1個目のシステインから14個目のシステインまでのシステインリッチな領域(図2、下線部)は、生物種間で50%〜60%程度の相同性を有し、14個のシステインは60%〜70%程度の相同性を有する。
本発明のセリンプロテアーゼインヒビターには、セリンプロテアーゼインヒビターとして同定されているセリンプロテアーゼインヒビターのみならず、セリンプロテアーゼに対する阻害作用を有し且つ同定されているセリンプロテアーゼインヒビターと遺伝子レベルで一定以上の相同性(例えば、約10%以上、好ましくは約15%以上、より好ましくは約30%以上、さらにより好ましくは約40%以上(保存領域においては、例えば、約15%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約40%以上、さらにより好ましくは約50%以上))を示すポリペプチドが含まれる。
セリンプロテアーゼインヒビターには炎症時に作用するプロテアーゼの活性を阻害することで細胞を賦活化することが知られることから、同様の機構で重金属により生じた細胞毒性を除去して耐性を付加している可能性が考えられる。
本発明の好ましい実施形態において、セリンプロテアーゼインヒビターは、システインリッチな配列を含む。システインのSH基と重金属とがキレート結合を形成することで重金属がセリンプロテアーゼインヒビターにトラップされ、結果的に、重金属が無毒化することができると考えられる。
本発明の別の好ましい実施形態において、セリンプロテアーゼインヒビターは、可溶性である。可溶性タンパク質は、膜タンパク質と異なり、細胞内での移動が制限されないため、細胞内の重金属を効率的に無毒化することができると考えられる。
セリンプロテアーゼインヒビターの由来は、特に限定されず、あらゆる植物種(酵母を含む)、微生物種、動物種が含まれる。セリンプロテアーゼインヒビターの由来は、宿主の生物種と同一であってもよいし異なっていてもよいが、タンパク質発現量やセリンプロテアーゼ阻害作用等の観点から、宿主の生物種の近縁種であることが好ましい。例えば、宿主が植物細胞である場合、セリンプロテアーゼインヒビターの由来は、好ましくは、植物(酵母を含む)又は微生物である。
セリンプロテアーゼインヒビターがBBIである場合、BBIの由来としては、例えば、オウレン、コムギ、イネ、大豆、トウモロコシ、アルファルファ、及びピーナッツが挙げられ、好ましくは、オウレン、イネ、大豆が挙げられる。
セリンプロテアーゼインヒビターがクニッツインヒビターである場合、クニッツインヒビターの由来としては、例えば、大豆、ポプラ、ジャガイモ、サツマイモ及びそら豆が挙げられ、好ましくは、大豆、ポプラが挙げられる。
本発明におけるセリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドとしては、
(I)セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチド、
(II)セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、セリンプロテアーゼインヒビター活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、並びに、
(III)セリンプロテアーゼインヒビターのポリペプチドと約10%以上、好ましくは約15%以上、より好ましくは約30%以上、さらにより好ましくは約40%以上(保存領域において、例えば、約15%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約40%以上、さらにより好ましくは約50%以上)の相同性を有し且つセリンプロテアーゼインヒビター活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、
からなる群より選択される少なくとも1種である。
セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドは、前述のセリンプロテアーゼインヒビターに翻訳され得る限りにおいて、如何なるコドンが選択されてもよい。コドンの選択は、宿主におけるコドンの使用頻度等を考慮して行われ得る。
本発明の1つの好ましい実施形態において、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドは、
(I)配列番号1又は3に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド、
(II)配列番号1又は3に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、セリンプロテアーゼインヒビター活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、並びに
(III)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドと約10%以上、好ましくは約15%以上、より好ましくは約30%以上、さらにより好ましくは約40%以上(配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドと、例えば、約15%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約40%以上、さらにより好ましくは約50%以上)の相同性を有し且つセリンプロテアーゼインヒビター活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、
からなる群より選択される少なくとも1種である。
本発明の別の実施形態において、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドは、(I’)Populus tremula又はArabidopsis thaliana由来のkunitz trypsin inhibitorの塩基配列を有するポリヌクレオチド、(II’)前記(I’)のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、セリンプロテアーゼインヒビター活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、並びに(III’)Populus tremula又はArabidopsis thaliana由来のkunitz trypsin inhibitorのアミノ酸配列を有するポリペプチドと約20%以上、好ましくは約40%以上、より好ましくは約60%以上(保存領域において、例えば、約30%以上、好ましくは約50%以上、より好ましくは約70%以上)の相同性を有し且つセリンプロテアーゼインヒビター活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、からなる群より選択される少なくとも1種である。ここで、Populus tremula由来のkunitz trypsin inhibitorのアミノ酸配列は、NCBI ACCESSION:CAI77898、塩基配列は、AJ937139より入手可能である。また、Arabidopsis thaliana由来のkunitz trypsin inhibitorのアミノ酸配列は、NCBI ACCESSION:NP_565062、塩基配列は、NM_105992より入手可能である。
ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドは、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等の方法により得られ、例えば、検出対象となるポリヌクレオチドを含むライブラリーを固定化した支持体に、プローブ(セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号1)又はその保存領域(例えば、配列番号3))を作用させ、0.7〜1.0MのNaCl存在下において42℃にて2時間プレハイブリダイゼーションを行った後、0.7〜1.0MのNaCl存在下において42℃にて12〜16時間ハイブリダイゼーションを行い、その後0.1〜2倍程度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用いて42℃でフィルターを洗浄し、スクリーニングすることによって得ることができるポリヌクレオチドである。ハイブリダイゼーションの各操作は、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed.,(Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列は、通常、プローブとして使用するポリヌクレオチドの塩基配列と一定以上の相同性を有し、その相同性は、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
セリンプロテアーゼインヒビター活性の測定方法は、プロテアーゼのトリプシンとBBIを25℃30分試験管中で反応させた後、N−tosyl−L−arginine methyl ester (TAME)と反応させ、247nmの吸光を測定しトリプシンの活性を調べることにより行う(Na Li et al., Protein Expression and Purification 15, 99−104 (1999)による)。
セリンプロテアーゼインヒビター活性を有するポリペプチドとは、前記のセリンプロテアーゼインヒビター活性の測定方法において、トリプシンの活性を阻害する結果を得たポリペプチドをいう。
相同性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な遺伝子解析ツールを用いて算出することができる。遺伝子解析ツールにおける各プログラムやマトリックスは、ソフトによって異なるが、当業者であれば、所定の指示書又は説明に従って適当に設定することができる。また、ベクター配列、制限酵素認識部位、選択マーカー、標識タグ、クローニングやPCRに用いられる配列、プロモーター配列、ターミネーター配列等のセリンプロテアーゼインヒビターに由来しない配列を含まない形態で両配列の相同性を算出することが望ましいことは、当業者に容易に理解される。市販の遺伝子解析ツールとしては、例えば、Bioedit (http://www.mbio.ncsu.edu/BioEdit/bioedit.html)を用いることができる。また、インターネットを通じて利用可能なツールとしては、NCBI(National Center for Biotechnology Information のホームページで利用可能なBLAST 2 Sequences(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、Clustal W (http://www.ebi.ac.uk/clustalw/)が例示される。例えば、BLAST 2 Sequencesを用いて2つのアミノ酸配列の相同性を算出する場合、プログラムをblastpに設定し、マトリックスをBLOSUM62に設定すればよい。
セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドを得る方法としては、当業者に用いられている種々の方法を用いることができる。例えば、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドを慣例的なPCR法によって増幅することができる。
通常のPCR法は、少なくとも、鋳型となり得るポリヌクレオチド、PCRバッファー、プライマーセット(フォワードプライマー及びリバースプライマー)、dNTP mixture(デオキシヌクレオシド三リン酸の混合物)、及びDNAポリメラーゼを含む一反応液中で、温度の上下のサイクルを繰り返すことによって実施され、フォワードプライマー及びリバースプライマーの間に挟まれた特定のポリヌクレオチドの増幅を可能にする。鋳型となり得るポリヌクレオチドとしては、セリンプロテアーゼインヒビターの由来となる生物種から作製されたゲノムDNA、ゲノムライブラリー、cDNAライブラリー等を用いることができる。フォワードプライマー及びリバースプライマーは、例えば、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドの5’末端又はその周辺及び3’末端又はその周辺に位置する任意の約10〜30bpのヌクレオチド配列に基づき設計され、自動合成等の常法により合成される。増幅させる配列が開始コドンを含んでいない場合、開始コドンをin−frameで含むようにフォワードプライマーを設計するか、後述の発現ベクターにin−frameで開始コドンを導入しておく。PCRバッファーは、使用するDNAポリメラーゼ等に応じて適宜選択され、市販品を好適に用いることができる。dNTP mixtureとしては、市販品を用いることができる。DNAポリメラーゼとしては、市販の耐熱性ポリメラーゼ、例えば、Pfu(Promega社製)、Taq(TOYOBO社製)、KOD(TOYOBO社製)、Vent(NEB社製)、ExTaq(TaKaRa社製)、PlatinumPfx(invitrogen社製)を用いることができる。PCR反応は、慣用的な手順に従うか又はDNAポリメラーゼの指示書に従って行うことができ、必要に応じて反応温度、反応時間、反応サイクル、反応組成等を変更してもよい。
次に、通常、PCRによって増幅されたポリヌクレオチドを発現ベクターへ連結し、プラスミドを構築する。
発現ベクターは、宿主において自律複製可能又は染色体中への組み込みが可能で、セリンプロテアーゼインヒビターを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられ得る。発現ベクターは、宿主となる特定の生物種においてセリンプロテアーゼインヒビターの発現を可能にするベクターであってもよいし、宿主となる特定の生物種を含む複数の生物種においてセリンプロテアーゼインヒビターの発現を可能にするベクターであってもよい。PCRによって増幅されたポリヌクレオチドの5’末端が、直接又は適当な配列(例えば、制限酵素認識部位)を介してin−frameでプロモーターの3’末端へ連結され得る。発現ベクターは、さらに、植物細胞用エンハンサー(例えば、El2エンハンサー等)、選択マーカー遺伝子、標識タグ等を含有してもよい。終止コドンは、必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に配置されることが好ましい。
酵母用発現ベクターとしては、例えば、pYES、pYC、pYI、pYL、pDR196を好適に用いることができるが、これらに限定されない。高等植物用発現ベクターとしては、例えば、pBIHyg−HSE、pBI19、pBI101、pGV3850、pABH−Hm1を好適に用いることができるが、これらに限定されない。
プロモーターとしては、宿主の細胞中でセリンプロテアーゼインヒビターの発現を促進するものであればいかなるものでもよい。酵母における高発現には、構成的発現プロモーターであるPMA1プロモーター、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、PGKプロモーター、PHO5プロモーター、GAPDHプロモーター等を用いることができるが、これらに限定されない。高等植物における高発現には、構成的発現プロモーターであるEl2プロモーター、CaMV35Sプロモーター、Cabプロモーター、RuBisCoプロモーター、PR1プロモーター、ユビキチンプロモーター等を用いることができる。また、セリンプロテアーゼインヒビターが生物の特定の器官でのみ発現するプロモーター(例えば、根部において高発現するプロモーター)が用いられてもよい。
次いで、このように構築された発現プラスミドを、宿主となる植物細胞又は植物に導入する。
植物細胞には、酵母、高等植物、コケ等の細胞が含まれる。酵母は、単細胞の植物であり、高等植物と同様に、植物細胞としての基本機能が備わっている。植物には、前述の植物細胞が分化及び生長したあらゆる生長過程の植物体が含まれ、例えば、種子、カルス、芽生え、稚苗、中苗、成苗、結実、及び、これらの一部(例えば、組織切片、根、シュート)が含まれる。
宿主として用いられる酵母としては、例えば、Saccharomyces属(例えば、Saccharomyces cerevisiae)、Schizosaccharomyces属(例えば、Schizosaccharomyces pombe)、Pichia属(例えば、Pichia pastoris)等が挙げられるが、これらに限定されない。
宿主として用いられる高等植物としては、得られる重金属耐性植物細胞又は植物の用途、植物の適応能力、生育条件等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、ナス科、アブラナ科、アオイ科、アカザ科、マメ科、ヒユ科、キク科、イネ科、ヤナギ科、モクレン科、ツゲ科、ミカン科又はユキノシタ科、セリ科、カヤツリグサ科、キンポウゲ科に属する植物が挙げられる。具体的には、タバコ(Nicotiana tabbacum)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ケナフ(Hibiscus cannabinus)、モミジアオイ(Hibiscus coccineus)、アメリカフヨウ(Hibiscus moscheutos)、ハマボウ(Hibiscus hamabo)、ブッソウゲ(Hibiscus rosa−sinensis)、カラシナ (Brassica juncea)、グンバイナズナ(Thlaspi rotundifolium)、オクラ(Abelmoschus esculentus)、トロロアオイ(Abelmoschus manihot)、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)、フダンソウ(Beta vulgaris var. vulgaris)、サトウダイコン(Beta vulgaris var. rapa)、タヌキマメ(Crotalaria sessiliflora)、ガクタヌキマメ(Crotalaria calycina)、クロタラリア(Crotalaria juncea)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、イネ(Oryza sativa)、オオムギ(Hordeum vulgare)、カラスムギ(Avena fatua)、ナタネ(Brassica napus)、ポプラ(Populus nigra)、ユリノキ(Liriodendron tulipifera)、ホンツゲ(Buxus microphylla)、ウンシュウミカン(Citrus unshiu)、レモン(Citrus lemon)、アジサイ(Hydrangea macrophylla)、オウレン(Coptis japonica)が挙げられ、このうち好ましくは、タバコ、ケナフ、カラシナ、オクラ、タヌキマメ、ポプラ、ヤナギが挙げられ、特に好ましくは、タバコが挙げられる。
宿主として用いられる植物細胞の種は、本発明により得られる重金属耐性植物細胞又は植物の用途に応じて、適宜選択され得る。
本発明により得られる重金属耐性植物を重金属汚染土壌の浄化に用いる場合、重金属汚染土壌の環境(温度、地形、湿度、栄養分等)、土壌中の重金属の濃度及び分布状況、重金属の浄化効率、植物の回収の容易さ等に応じて、植物の根部の形状、プラントマス、生育速度、生育条件の適性等が考慮され、適当な植物が選択され得る。例えば、重金属の浄化効率の観点から、ひげ根、枝状根、根茎を形成し得る植物を好適に用いることができ、植物の回収の容易さの観点から、ひげ根、枝状根、根茎を形成し得る植物を好適に用いることができる。土壌の表層部に存在している重金属を取除く場合、比較的短い根部を形成する植物であってもよいが、土壌の深い部分に分布している重金属を取除く場合、深くまで伸びる根部を形成する植物が好ましい。また、二次汚染の防止という観点から、遠方に飛ばされにくい種子を形成する植物であることが望ましい。播種及び回収の手間を考慮する場合、多年生植物であることが望ましい。回収後の処理も考慮に入れ、プラントマスの大きな林木、具体的にはポプラ、ヤナギ等が望ましい。
本発明により得られる重金属耐性植物を重金属汚染水環境の浄化に用いる場合、水生植物(例えば、藻類)を選択すればよい。水生植物としては、特に限定されないが、ウキクサ、ホテイアオイ、アシ、アサザ、ヒシ、ヨシ等が挙げられる。
本発明により得られる重金属耐性植物を動物の食物として用いる場合、食用種を選択すればよい。食用種としては、例えば、トウモロコシ、アルファルファ、エンバク、ソルガム、オ−チャ−ドグラス、大豆が挙げられるが、これらに限定されない。
また、製紙、繊維、輸送用機器、建築等の分野における工業製品の原料となる成分を含有している植物も多数存在する。本発明により得られる重金属耐性植物が含有する成分を工業原料として用いる場合、目的の原料に適した植物種を選択すればよい。例えば、デンプンを工業原料として用いる場合、デンプンを多量に含有する植物種、例えば、イモ類(ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバ等)、穀類(イネ、コムギ、トウモロコシ等)等を選択することができる。また、例えば、セルロースを工業原料として用いる場合、セルロースを多量に含有する植物種、例えば、綿、樹木、藻類等を選択することができる。
本発明において使用される植物は、慣例的な遺伝子操作及び/又は交雑によって改変された改変品種であってもよい。遺伝子操作による改変は、例えば、根の形態変化を改変し得る変異、毒性物質を化学修飾することで無毒化する変異等を導入することによって達成され得る。遺伝子操作については、慣例的な手法を用いることができる。例えば、Molecular Cloning 2nd ed.(Sambrook,J., Fritsch,E.F., Maniatis,T. Cold Spring Harvor Laboratory Press 1989)を参照のこと。交雑による改変は、例えば、根部が発達している個体、毒性物質を化学修飾することで無毒化する個体の個体間で受粉を行うことによって達成され得る。ここで、同種又は類似の性質を有する固体を交雑させてもよいし、異なる性質を有する固体を交雑させてもよい。また、交雑させる個体の品種は、同じであってもよいし、異なってもよいが、同じであることが好ましい。
宿主に前述の発現プラスミドを導入する方法としては、常法、例えば、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法、アグロバクテリウム法、遺伝子銃(パーティクルガン)法、リン酸カルシウム法、プロトプラスト法、又は、Gene,17,107(1982)、Molecular & General Genetics,168,111(1979)及びMolecular Cloning 2nd ed.(Sambrook,J., Fritsch,E.F., Maniatis,T. Cold Spring Harvor Laboratory Press 1989)、Plant Molecular Biology Manual (Stanton B. Gelvin and Robert A. Schilperoort. Kluwer Academic Publishers 1988)等の文献に記載の方法を用いることができる。
次いで、通常、発現プラスミドの導入を確認し、実際に発現プラスミドが導入されている個体を選択する。発現プラスミドの導入の確認方法としては、常法(例えば、薬物含有培地による選択、ホルモン含有培地による選択、栄養要求性による選択)を用いることができる。さらに、ゲノムPCR、RT−PCR、ノザンハイブリダイゼーション、ウェスタン解析等の常法を用いて、導入を試みた生物に目的のポリヌクレオチドが導入されているか否か、或いは、発現しているか否かを確認することができる。
このようにして、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドで形質転換された植物細胞又は植物を得ることができる。
形質転換とは、一般的に、ある細胞から単離したDNAが他の細胞に取り込まれ、細胞染色体と組換えを起こす遺伝現象をいうが(東京化学同人 生化学辞典 第2版、416ページ〜417ページ)、現在では、プラスミドやそれに結合した遺伝子なども含めてDNA分子を直接細胞に導入することを意味する(岩波 生物学辞典 第4版、380ページ〜381ページ)。本書において、形質転換とは、ある細胞に由来するDNAを、他の細胞に導入することを意味し、このとき、DNAが細胞染色体との組換えを起こしてもよいし、起こさなくてもよい。
次いで、通常、セリンプロテアーゼインヒビターで形質転換した植物細胞又は植物について、重金属耐性試験を行い、重金属耐性を示す個体を同定する。
重金属耐性試験は、所定濃度の重金属の存在下で形質転換植物細胞又は植物を生育させ、その生育能を観察することにより行うことができる。
酵母について、例えば、以下のような方法で重金属耐性を調べることができる:選択培地(SD−Uracil寒天培地)上で形質転換酵母を生育させ、生育してきたコロニーをSD−Uracil培地に植菌し約30℃で約1日培養する。その培養液のOD600を0.5に調整し、所定の濃度の重金属含有寒天培地にスポットした。セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドを挿入していない空の発現ベクターを遺伝子導入した酵母を用い、同様の操作を行いコントロールとする。コントロールに比べ、セリンプロテアーゼインヒビターを導入した酵母の方が重金属含有寒天培地において生育が良いことで耐性を確認する。
高等植物について、例えば、以下のような方法で重金属耐性を調べることができる:形質転換植物の種子を適当な選択培地(例えば、Linsmaier−Skoog(LS)寒天培地)上で発芽させる。約1〜5週間目の形質転換植物の芽生えを、所定濃度の重金属を含浸させたLS寒天培地の上に静置する。重金属の存在下で約5日間〜20日間、適温で生育させる。コントロールとして、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドを挿入していない空の発現ベクターを遺伝子導入した植物体を用い、同様の操作を行う。コントロールに較べて、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドを導入した植物の方が、重金属含有寒天培地において生育が良いことで耐性を確認する。
このようにして、本発明の重金属耐性植物細胞又は植物を得ることができる。
本発明の重金属耐性植物細胞又は植物は、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドで形質転換される前の植物細胞又は植物と比べて、重金属に対してより高い耐性を有する。ここで、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドで形質転換される前の植物細胞又は植物が、もともと、重金属耐性を有していてもよいし、重金属耐性を全く有していなくてもよい。
重金属としては、特に限定されず、例えば、カドミウム、鉛、クロム、砒素、水銀、銅、ニッケル、マンガン、セレン、から成る群より選択される少なくとも1種が挙げられ、特に、カドミウム、砒素、水銀が挙げられる。本発明における重金属は、限定されず、あらゆる形態の重金属が含まれ、例えば、重金属含有化合物、重金属イオン、重金属含有錯体も重金属に含まれる。
重金属は、植物の細胞膜上のトランスポーターにより(ある程度は、単純拡散により)輸送され、細胞の中に入る。細胞中においては、グルタチオンやファイトケラチンと抱合体を作成し、その後、液胞膜上の輸送体により液胞に輸送され蓄積される。
本発明の重金属耐性植物は、重金属土壌汚染の浄化、重金属汚染水又は水環境の浄化、動物の食物、工業原料等の種々の用途に用いられ得る。
本発明は、本発明の重金属耐性植物を用いて重金属汚染土壌を浄化する方法にも関する。本発明の重金属耐性酵母を用いたバイオリメディエーションも可能であるが、回収の容易さ、重金属の浄化効率、管理の容易さ、ランニングコスト等の観点から重金属耐性植物を用いたファイトリメディエーションが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、(1)本発明の重金属耐性植物を重金属汚染土壌で栽培する工程、及び、(2)工程(1)で栽培した重金属耐性植物の全体又は一部を回収する工程を包含する、重金属汚染土壌の浄化方法が提供される。
本発明の重金属耐性植物を栽培する方法としては、植物種に適した慣例的な方法が用いられる。例えば、本発明の重金属耐性植物を汚染土壌に播種又は移植し、植物種、植物の生長段階、気候などに応じて、水、肥料(例えば、堆肥)、汚染されていない土等を所定量補給しながら栽培することができる。本発明の植物が生長段階の初期にある(例えば、種子又は芽生えである)場合には、適当な条件下においてある程度(例えば、稚苗又は中苗になるまで)生長させた後、汚染土壌に移植することが好ましい。
土壌で栽培している重金属耐性植物を回収する方法としては、植物種に適した方法(例えば、収穫機を用いる方法)が用いられる。このとき、植物の一部のみを回収してもよいが、根部を含む植物全体を回収することが望ましい。
土壌で栽培している重金属耐性植物を回収する前に、土壌中の重金属の濃度を測定してもよい。そして、重金属の濃度が所望の値にまで低減されている場合には、植物を回収し、重金属の濃度が所望の値にまで低減されていない場合には、栽培を続けるか又は繰返し栽培をおこなえばよい。
ここで、土壌とは、地殻の最表層部分又はこれを構成する物質(例えば、土、砂、粘土質(これらの物質は、天然物であってもよいし、人工物であってもよい))を意味する。土壌における固体、液体、気体の各成分及びバランスは、本発明の重金属耐性植物が生育可能な限りにおいて如何なるものであってもよい。本発明の土壌には、水分を多く含む湿地(例えば、河川又は湖沼のほとり、湿原、沼地、海岸、水田、干潟等)や水分量の少ない乾燥地帯も含まれる。人工埋立地も、本発明が適用される土壌に含まれる。
本発明の浄化方法の適用対象となる土壌は、重金属に汚染されている又は汚染されている可能性が高い土壌である。例えば、工業用地、工業用水の流域、商業用地、農地、牧場、住宅地、及び、それらの予定地又は跡地が、本発明の浄化方法の適用対象となる。
さらに、回収後、重金属耐性植物を焼却して、灰分として重金属を回収することができる。また、重金属回収と同時に植物バイオマスとして利用することが望ましい。
本発明は、さらに、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドで植物細胞を形質転換する工程を包含する、重金属耐性植物細胞又は植物を作製する方法にも関する。
本発明は、さらに、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドを含む植物細胞用発現プラスミドを備える、重金属耐性植物細胞又は植物を作製するためのキットを提供する。
セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドを含む発現プラスミドについては、前述の通り作製することができる。
キットには、必要に応じて、遺伝子導入のための試薬、重金属耐性試験のための試薬(例えば、所定濃度の重金属試薬)、コントロールのための空の発現ベクター、培地、シャーレ等が収納される。また、指示書が収納されていてもよい。キットは、冷蔵又は冷凍状態で保存されることが望ましい。
以下、配列表の簡単な説明をする。
配列番号1は、オウレンBBIの塩基配列である。
配列番号2は、オウレンBBIの推定アミノ酸配列である。
配列番号3は、オウレンBBIのシステインリッチな領域(保存領域)の塩基配列である。
配列番号4は、オウレンBBIのシステインリッチな領域(保存領域)の推定アミノ酸配列である。
本発明により、新規な重金属耐性植物細胞又は植物が提供された。
本発明により、セリンプロテアーゼインヒビターが重金属耐性を高める機能を有していることが初めて明らかにされた。
本発明の重金属耐性植物細胞又は植物は、セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドで形質転換されていない植物細胞又は植物と比較して、有意に高い重金属耐性を示す。
さらに、本発明により、本発明の重金属耐性植物を利用した新規な重金属汚染土壌の浄化方法が提供された。
本発明の浄化方法では、プラントマスが大きい植物を用いることができるため、微生物を利用する方法と異なり、回収が極めて容易であり、また、植物の繁殖を容易にコントロールすることができるため外来種の異常繁殖を回避することができる。また、本発明の浄化方法を用いれば、界面活性剤等を利用する方法と異なり、薬物による土壌の二次汚染を回避することができる。
本発明の浄化方法は、高価な設備投資やランニングコストを必要としないため、安価な浄化方法である。
以下、本発明をより容易に理解するための実施例を示すが、かかる実施例は、本発明を何ら限定しない。
形質転換酵母の作成
YPD寒天培地にSaccharomyces cerevisiae AD12345678株を植菌し30℃、2〜4日間培養した。YPD培地(1L)の組成は、下記の通りである。なお、寒天培地は、培地1L中に20gの寒天を加えて作製した。
Figure 2007089406
次に、シングルコロニーより菌を採取し、試験管中の5ml YPD培地で30℃、200rpmにて一晩前培養を行った。50ml YPD培地を入れた300ml容マイヤーにOD600=0.1〜0.2となるよう植菌し、3〜5時間30℃でOD600=0.4〜0.8になるまで振盪培養を行った。その後、50mlファルコンチューブに培養液を全て移し、2500rpm、5分遠沈し、集菌した。培地を除き滅菌水30mlを加え、沈殿物をよく洗浄した。滅菌水を除いた後、0.1M−LiAc水溶液1mlを加え、菌をよく懸濁し、2500rpm、5分遠沈した後、上清を除き、0.1M−LiAc水溶液500μlを加えた。次いで、下記の試薬をa)→b)→c)→d)の順に加えた。
a)PEG4000(50%)水溶液 2400μl
b)1M−LiAc水溶液 360μl
c)2.0mg/mlサケ精子DNA(95℃5分熱変性後氷上で保存) 250μl
d)cDNAライブラリー溶液10μg分 500μl (ネガティブコントロール:滅菌水50μl、ポジティブコントロール: pDR196ベクター50μl)
そして、ボルテックスでよく懸濁後、30℃で10分静置した。DMSOを最終濃度10%となるように加え(400μl)、上下に2、3回撹拌した。42℃で20分、ヒートショックを行った。5分おきに撹拌した。2500rpm、5分遠沈し上清を除きYPD培地で洗浄し上清を除いた。次いで、20ml YPD培地を加え、30℃で1時間静置した。遠沈後、滅菌水に懸濁し、選択培地(SD−Uracil寒天培地)に塗布し、これを30℃2〜6日培養した。SD−Uracil培地(900ml)の組成を以下に示す。なお、寒天培地は、培地1L中に20gの寒天を加えて作製した。
Figure 2007089406
ここで、10×ドロップアウト溶液の組成は、以下のとおりである。
Figure 2007089406
Cd耐性株の1次スクリーニング
50μM CdCl含有1/2 SD−Uracil寒天培地(Cd含有寒天培地)を用意した。選択培地上で形質転換酵母が生育してきたら、ベルベット布とレプリケーターを用いたスタンプ法で、コロニーを選択培地からCd含有寒天培地に移し30℃2〜6日培養した。Cd含有寒天培地上で生育の良いコロニー(図3)について、SD−Uracil培地に植菌し、30℃2〜6日培養した。
Cd耐性株の2次スクリーニング
SD−Uracil培地で菌が増殖したら、グリセロールストックを作製した。培養液のOD600を0.5に調整し、Cd含有寒天培地(0μM・30μM・40μM・50μM・60μM・100μM)に5μlスポットした。コントロールとして、pDR196ベクターでも同様の操作を行った。コントロールに較べて、生育の良いコロニーを選び出した。
Cd耐性遺伝子の同定
実施例2において選び出した菌株を5ml SD−Uracil培地で培養し、培養液を遠心し、上清を捨てて集菌した。ここに、0.2mlの酵母溶解液を加え、よく懸濁した。0.2mlのフェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール(25:24:1)と酸で洗ったガラスビーズを加え、2分間ボルテックスミキサーで撹拌した。6,000rpmで5分間、室温で遠心した。上清を新しい遠心チューブに移した。1/10容量の3M NaOAc(pH5.2)と2.5倍容量のエタノールを加えて通常のエタノール沈殿を行った。沈殿物を70%エタノールで洗浄してから乾燥させた。乾燥したDNAを20μlのTEバッファーに溶解した。採取したプラスミドDNAをミニプレップ法で大腸菌を用いて精製した。DNAの塩基配列は、外注(秋田県立大学 生命科学研究支援センター、外注番号:5500F)により決定した。
結果
1次スクリーニングでCd耐性が認められたコロニーは60個であった。そのうち、2次スクリ−ニングでCd耐性が認められたコロニーは48個であった。この48個について塩基配列を決定した結果、2次スクリーニングでCd耐性が認められた48個のうち、46個がメタロチオネインであり、あとの2個はBBIであった。
考察
BBIで形質転換された2個は、コントロールと比較して有意に高い重金属耐性を示した。メタロチオネインの重金属耐性については、既に、多数の報告がなされているが、BBIの重金属耐性については知られていなかった。
BBIで形質転換された株は、100μMのCdに対して耐性を示した(図4)。このことから、BBIのCd耐性は、高いCd耐性を有することで知られている酵母カドミウムファクター1(Ycf1)のCd耐性に匹敵する。
BBIで形質転換された株の生育速度は、メタロチオネインで形質転換された株の生育速度と比べ、有意に速かった(図3)。
本発明の重金属耐性植物細胞又は植物は、重金属だけでなく、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属に対しても耐性を示す可能性がある。本発明の重金属耐性植物細胞又は植物がこれらの金属に対しても耐性を示す場合、本発明は、例えば、海岸周辺部で生育可能な塩分耐性植物を提供することができる。
図1は、オウレンのBBIのオープンリーディングフレーム(ORF)をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を示す。 図2は、オウレンのBBIのORFの推定ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。Mは開始コドンであるメチオニンを意味する。*は終止コドンを意味する。BBIは、14個のシステインを含有している。1個目のシステインから14個目のシステインまでのシステインリッチな領域(下線部)は、生物種間で保存されている。 図3は、実施例2におけるCd耐性株の1次スクリーニングの結果を示す。50μM CdCl含有1/2 SD−Uracil寒天培地中、生育の良いコロニーが観察された(矢印)。 図4は、実施例2におけるCd耐性株の2次スクリーニングの結果を示す。100μM CdCl含有1/2 SD−Uracil寒天培地に形質転換酵母の培養液(OD600=0.5)を5μlスポットしたところ、コントロールと比べて生育の良いコロニーが得られた。

Claims (9)

  1. セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドで形質転換された、重金属耐性植物細胞又は植物。
  2. 前記セリンプロテアーゼインヒビターが、ボウマン・バークセリンプロテアーゼインヒビター(Bowman−Birk serine protease inhibitor)及びクニッツインヒビター(Kunitz inhibitor)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の重金属耐性植物細胞又は植物。
  3. 前記ボウマン・バークセリンプロテアーゼインヒビターが、オウレン、コムギ、イネ、大豆、トウモロコシ、アルファルファ、及びピーナッツから成る群より選択される少なくとも1種に由来する、請求項2に記載の重金属耐性植物細胞又は植物。
  4. 前記セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドが、
    (I)配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド、
    (II)配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、セリンプロテアーゼインヒビター活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、並びに
    (III)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドと15%以上の相同性を有し且つセリンプロテアーゼインヒビター活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、
    から成る群より選択される少なくとも1種のポリヌクレオチドである、請求項1〜3のいずれかに記載の重金属耐性植物細胞又は植物。
  5. 重金属が、カドミウム、鉛、クロム、砒素、及び水銀から成る群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の重金属耐性植物細胞又は植物。
  6. 重金属が、カドミウムである、請求項5に記載の重金属耐性植物細胞又は植物。
  7. (1)請求項1〜6に記載の重金属耐性植物を重金属汚染土壌で栽培する工程、及び、
    (2)工程(1)で栽培した重金属耐性植物の全体又は一部を回収する工程、
    を包含する、重金属汚染土壌の浄化方法。
  8. セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドで植物細胞を形質転換する工程を包含する、重金属耐性植物細胞又は植物を作製する方法。
  9. セリンプロテアーゼインヒビターをコードするポリヌクレオチドを含む植物細胞用発現プラスミド、
    を備える、重金属耐性植物細胞又は植物を作製するための、キット。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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