JP2007085295A - デュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置 - Google Patents

デュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 使用燃料として気体燃料とガソリンとを切換え可能としたデュアルフューエルエンジンを搭載した車両において、該車両の運転状態に関連する値に応じて該エンジンの使用燃料を切り換える場合に、使用燃料の切換えが頻繁に生じるのを防止する。
【解決手段】 使用燃料の切換えの実行(ステップS5,S8)から所定時間が経過するまでの間(ステップS10)、次の使用燃料の切換えの実行を制限(禁止)する(ステップS9)。
【選択図】 図5

Description

本発明は、使用燃料として気体燃料とガソリンとを切換え可能としたデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置に関する技術分野に属する。
近年、環境問題等の観点から、自動車等の車両用のエンジンとして、デュアルフューエルエンジンの開発が盛んに行われている。このデュアルフューエルエンジンは、例えば特許文献1や特許文献2に示されているように、使用燃料として天然ガス等の気体燃料とガソリンとを切換え可能とするものである。また、気体燃料として水素を用いることも知られている(例えば特許文献3参照)。
上記のようなデュアルフューエルエンジンにおいては、上記特許文献1に開示されているように、エンジン回転数のような車両の運転状態に関連する値を検出し、この検出された運転状態関連値に応じて使用燃料の切換えを実行するようにすることが知られている。すなわち、運転状態関連値が、予め設定した所定値以下の値から該所定値よりも大きい値になったとき、又は所定値よりも大きい値から該所定値以下の値になったときに使用燃料の切換えを実行するようにしている。
特開平5−98994号公報 特開平7−34915号公報 特開2005−155528号公報
しかしながら、上記のように予め設定した所定値を閾値として使用燃料を切り換えるようにすると、車両の運転状態によっては、使用燃料の切換えが頻繁に生じて、トルクショックが頻繁に生じてしまう。すなわち、上記特許文献2にも示されているように、使用燃料の切換え時には、燃料性状の違いや制御系の応答遅れ等に起因してトルクショックが発生し、このようなトルクショックは、例えば変速操作時に起こるトルクショック等とは違って、車両の乗員にとって不意に発生するため、そのようなトルクショックが頻繁に生じると、乗員に大きな違和感を与えてしまう。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のようなデュアルフューエルエンジンを搭載した車両において、該車両の運転状態に関連する値に応じて該エンジンの使用燃料を切り換える場合に、使用燃料の切換えが頻繁に生じるのを防止しようとすることにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間、次の使用燃料の切換えの実行を制限するようにした。
具体的には、請求項1の発明では、車両に搭載されかつ使用燃料として気体燃料とガソリンとを切換え可能としたデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置を対象とする。
そして、上記車両の運転状態に関連する値を検出する運転状態関連値検出手段と、上記運転状態関連値検出手段により検出された運転状態関連値に応じて使用燃料の切換えを実行する使用燃料切換手段と、上記使用燃料切換手段による使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間、該使用燃料切換手段による次の使用燃料の切換えの実行を制限する制限手段とを備えているものとする。
上記の構成により、使用燃料の切換えが実行されると、該切換えの実行から所定時間が経過するまでの間、次の切換えの実行が制限される、つまり次の切換えが実行され難くなるか、又は次の切換えの実行が禁止される。この結果、使用燃料の切換えが頻繁に生じることはなくなり、切換えによるトルクショックが頻繁に生じることはない。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記気体燃料を貯蔵する気体燃料タンクと、上記気体燃料タンクと上記気体燃料を上記エンジンの燃焼室へ供給する気体燃料供給手段とを連結する気体燃料供給路と、上記気体燃料供給路に設けられ、上記使用燃料切換手段により制御される制御弁とを備えており、上記制限手段は、上記使用燃料切換手段による気体燃料からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間のみ、該使用燃料切換手段による次のガソリンから気体燃料への使用燃料の切換えの実行を制限するように構成されているものとする。
すなわち、制御弁は、通常、気体燃料が気体燃料供給路から漏れるのを防止するために設けられるが、ガソリンから気体燃料へ切り換える際には、その制御弁の応答遅れが生じ、この応答遅れにより大きなトルクショックが生じ易くなる。その上に、使用燃料の切換えが頻繁に生じると、乗員はより一層違和感を感じ易くなる。しかし、この発明では、気体燃料からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間は、ガソリンから気体燃料への使用燃料の切換えの実行が制限されるので、トルクショックによる違和感を乗員に出来る限り感じさせないようにすることができる。一方、気体燃料からガソリンに切り換えるのは、通常、高出力や高トルクが要求されたためであるので、次の切換えが気体燃料からガソリンとなる場合には、この切換えを制限しないことで、高出力ないし高トルク要求に対して素早く対応することができるようになる。しかも、気体燃料からガソリンに切り換えられたときには、トルクショックは比較的小さく、大きな問題とはならない。
請求項3の発明では、請求項2の発明において、上記使用燃料切換手段は、上記運転状態関連値検出手段により検出された運転状態関連値が、所定値以下の値から該所定値よりも大きい値になったときには、気体燃料からガソリンへの使用燃料の切換えを実行する一方、上記所定値よりも大きい値から該所定値以下の値になったときにはガソリンから気体燃料への使用燃料の切換えを実行するように構成されており、上記制限手段は、上記使用燃料切換手段による気体燃料からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間、上記所定値を小さくすることで、該使用燃料切換手段による次のガソリンから気体燃料への使用燃料の切換えの実行を制限するように構成されているものとする。
このことにより、気体燃料からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間、所定値が小さくなってガソリンから気体燃料への切換えがなされ難くなる。よって、ガソリンから気体燃料への切換えの実行の制限を容易に行うことができる。
請求項4の発明では、請求項1又は2の発明において、上記制限手段は、上記使用燃料切換手段による次の使用燃料の切換えの実行を禁止することで制限するように構成されているものとする。
このことで、使用燃料の切換えが頻繁に生じるのをより確実に防止することができる。
請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれか1つの発明において、上記気体燃料は水素であり、上記エンジンの吸気通路に該エンジンの排気を還流する排気還流手段を備え、上記排気還流手段は、使用燃料が水素であるときにおける排気還流率を、使用燃料がガソリンであるときよりも高くするように構成されているものとする。
すなわち、気体燃料が水素である場合、水素は着火性がよいために、燃焼室内において水素濃度が或る程度高くなると、水素が点火前に自着火するという現象(この現象をプリイグニッションという)が生じる。この水素のプリイグニッションの発生を抑制するために、使用燃料が水素であるときにおける排気還流率を、使用燃料がガソリンであるときよりも高くする。一方、ガソリンから水素への切換え過渡時には、排気還流率を大きく変更しなければならなくなり、排気還流通路に設けた排気還流弁を駆動するアクチュエータ等の応答遅れが生じ、このため、排気還流率が直ぐには高くならず、その間、水素のプリイグニッションが発生し易くなって、大きなトルクショックが生じ易くなる。その上に、使用燃料の切換えが頻繁に生じると、乗員はより一層違和感を感じ易くなる。しかし、この発明では、使用燃料の切換えが頻繁に生じないようにしているので、トルクショックによる違和感を乗員に出来る限り感じさせないようにすることができる。特に請求項2の構成では、ガソリンから水素へ切り換える際には、水素のプリイグニッションの発生と相俟って、かなり大きなトルクショックが生じ易くなるが、次のガソリンから水素への切換えの実行を制限することで、トルクショックによる違和感を乗員に出来る限り感じさせないようにすることができる。
以上説明したように、本発明のデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置によると、使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間、次の使用燃料の切換えの実行を制限するようにしたことにより、使用燃料の切換えが頻繁に生じなくなり、トルクショックによる違和感を乗員に出来る限り感じさせないようにすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置の構成を概略的に示す。図1中、1はロータリーエンジンであり、このロータリーエンジン1は、自動車等の車両に搭載されたものであって、使用燃料として気体燃料(本実施形態では、水素)とガソリンとを切換え可能としたデュアルフューエルエンジンとされている。
上記ロータリーエンジン1は、トロコイド内周面を有する繭状のロータハウジングとサイドハウジングとにより囲まれてなるロータ収容室(以下、気筒という)11に概略三角形状のロータ12が収容されて構成されており、そのロータ12の外周側に3つの作動室が区画されている。このロータリーエンジン1は、図示は省略するが、2つのロータハウジングを3つのサイドハウジングの間に挟み込むようにして一体化し、その間に形成される2つの気筒11,11にそれぞれロータ12,12を収容した2ロータタイプのものであり、図1では、その2つの気筒11,11を展開した状態で図示している。
上記各ロータ12は、該ロータ12外周の3つの頂部にそれぞれ配設されたシール部が各々ロータハウジングのトロコイド内周面に当接した状態でエキセントリックシャフト13の周りを自転しながら、該エキセントリックシャフト13の軸心の周りに公転するようになっている。そして、ロータ12が1回転する間に、該ロータ12の各頂部間にそれぞれ形成された作動室が周方向に移動しながら、吸気、圧縮、膨張(燃焼)及び排気の各行程を行い、これにより発生する回転力がロータ12を介してエキセントリックシャフト13から出力される。
上記ロータリーエンジン1の各気筒11には、それぞれ2つの点火プラグ14,14が設けられており、この2つの点火プラグ14,14はそれぞれ、ロータハウジングの短軸近傍に配設されている一方、各気筒11には、後述の水素タンク31(図2参照)から供給された水素を筒内に直接噴射する2つの水素噴射用のインジェクタ4がそれぞれ設けられており(図1及び図2では各気筒11に1つのみ示す)、この各インジェクタ4は、気体燃料としての水素をエンジン1の燃焼室(作動室)へ供給する気体燃料供給手段を構成することになる。尚、各気筒11に設けられた2つのインジェクタ4はそれぞれ、ロータハウジングの長軸近傍に、エキセントリックシャフト13の軸方向に並んで配置されている。
また、上記各気筒11には、吸気行程にある作動室に連通するように吸気通路2が連通していると共に、排気行程にある作動室に連通するように排気通路3が連通している。吸気通路2は、上流側では1つであるが、下流側では、2つに分岐してそれぞれ上記各気筒11の作動室に連通している。また、排気通路3は、上流側では、各気筒11の作動室にそれぞれ連通して2つ設けられているが、下流側では、1つに合流されている。この排気通路3の該合流部よりも下流側には、排気を浄化するための排気浄化触媒としての三元触媒25が配設されている(図2参照)。
上記吸気通路2の分岐部よりも上流側には、ステッピングモータ等のアクチュエータ21により駆動されて通路2の断面積(弁開度)を調節するスロットル弁22が配設され、吸気通路2の分岐部よりも下流側には、後述のガソリンタンク41(図2参照)から供給されるガソリンを吸気通路2(分岐した部分)内に噴射するためのガソリン噴射用のインジェクタ5,5が配設されている。
そして、上記各点火プラグ14、スロットル弁22のアクチュエータ21並びに水素及びガソリン噴射用の各インジェクタ4,5は、パワートレインコントロールモジュール(以下、PCMという)6によって作動制御されるようになっている。すなわち、各点火プラグ14は、ロータ12の回転位置に応じて所定のタイミングで点火される。また、スロットル弁22のアクチュエータ21は、後述のアクセル開度センサ52の出力信号に応じてPCM6により制御されてスロットル弁22の開度を調整する。つまり、スロットル弁22の開度を、該開度を検出するスロットル弁開度センサ(本実施形態では、アクチュエータ21が兼ねている)の出力値が、アクセル開度センサ52の出力値に対応して予め決められた値になるように調整する。さらに、水素噴射用のインジェクタ4は、使用燃料が水素である場合に、ロータ12の回転位置に応じて所定のタイミングで水素を気筒11内(作動室内)に噴射し、ガソリン噴射用のインジェクタ5は、使用燃料がガソリンである場合に、ロータ12の回転位置に応じて所定のタイミングでガソリンを吸気通路2内に噴射する。
図2は、上記ロータリーエンジン1に対する吸気系及び排気系並びに燃料供給系の構成を概略的に示す。図2中、31は、内部に水素を貯蔵する気体燃料タンクとしての水素タンクであり、41は、内部にガソリンを収容するガソリンタンクである。上記水素タンク31には、元弁アクチュエータ61(図1参照)により開閉される元弁31aが設けられており、この元弁31aと上記各水素噴射用のインジェクタ4とが、気体燃料供給路を構成する水素供給管32により連結されている。また、上記ガソリンタンク41と上記各ガソリン噴射用のインジェクタ5とが、ガソリン供給管42により連結されている。尚、水素タンク31内の圧力は、本実施形態では、36MPaとされている。
上記水素タンク31の元弁31aは、使用燃料が水素であるときには開けられる一方、使用燃料がガソリンであるときには閉じられるようになっている。この元弁31aが閉じられているときには、水素タンク31から水素供給管32への水素供給がなされず、元弁31aが開けられているときには、水素タンク31から水素供給管32への水素供給がなされる。
また、上記水素供給管32におけるインジェクタ4近傍には、遮断弁アクチュエータ62(図1参照)により開閉される遮断弁33が配設されており、この遮断弁33も、上記元弁31aと同様に、使用燃料が水素であるときには開けられる一方、使用燃料がガソリンであるときには閉じられるようになっている。この遮断弁33が閉じられているときには、水素供給管32からインジェクタ4への水素供給がなされず、遮断弁33が開けられているときには、水素供給管32からインジェクタ4への水素供給がなされる。上記元弁31a及び遮断弁33は、使用燃料がガソリンであるときに、水素が水素供給管32内から漏れるのを防止するためのものである。
さらに、上記水素供給管32における上記元弁31a近傍には、レギュレータ(減圧弁)34が設けられており、このレギュレータ34により、水素を、その圧力を減圧した状態で(本実施形態では、0.6MPaに減圧する)、水素供給管32を介してインジェクタ4へ供給するようになっている。
図2に示すように(図1では図示を省略している)、上記吸気通路2における上記分岐部よりも上流側の部分と排気通路3における上記合流部よりも下流側の部分とは、EGR通路45によって接続されており、このEGR通路45により、吸気通路2に上記エンジン1の排気の一部が還流されるようになっている。このEGR通路45には、EGR弁46が配設されている。このEGR弁46の開度は、EGR弁アクチュエータ47によって調整されるようになっており、このEGR弁46の開度によって、吸気通路2へ還流される排気還流量が決まることになる。上記EGR通路45、EGR弁46及びEGR弁アクチュエータ47は、エンジン1の吸気通路2に該エンジン1の排気を還流する排気還流手段を構成する。尚、EGR弁46の開度は、EGR弁開度センサ54(本実施形態では、EGR弁アクチュエータ47が兼ねている)により検出されるようになっている。
上記PCM6には、上記各点火プラグ14、スロットル弁22のアクチュエータ21並びに水素及びガソリン噴射用の各インジェクタ4,5の作動制御に必要な信号の他に、図1に示すように、少なくとも、車両の速度を検出する車速センサ51、該車両の乗員のアクセルペダルの踏込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ52及び上記EGR弁開度センサ54の各出力信号が入力されるようになっている。
上記PCM6は、上記各点火プラグ14、スロットル弁22のアクチュエータ21並びに水素及びガソリン噴射用の各インジェクタ4,5の作動制御に加えて、後に詳細に説明するように、上記車速センサ51、アクセル開度センサ52及びEGR弁開度センサ54の各出力信号の各出力信号に基づいて、元弁アクチュエータ61及び遮断弁アクチュエータ62等を制御して、使用燃料の切換えを実行するとともに、EGR弁46の開度が、使用燃料及び乗員のエンジン1に対する要求トルクに応じた開度(後述の排気還流率に対応する開度)となるようにEGR弁アクチュエータ47を制御する。
具体的には、PCM6は、車両の運転状態に関連する値(運転状態関連値)としての、乗員のエンジン1に対する要求トルクに応じて使用燃料の切換えを実行する。すなわち、車速センサ51より検出された車速と、アクセル開度センサ52により検出されたアクセル開度とに基づいて、PCM6に記憶された図3のマップ(以下、マップAという)から要求トルクを検出する。このことで、車速センサ51、アクセル開度センサ52及びPCM6は、車両の運転状態に関連する値を検出する運転状態関連値検出手段を構成する。
上記マップAにおいて車速が大きくなるに連れてアクセル開度が小さくなる線(実線及び二点鎖線)は等要求トルク線であり、この等要求トルク線の1つ(実線)が、予め設定された切換閾値(所定値)である。そして、PCM6は、上記検出された要求トルクが切換閾値よりも大きい値であるとき(車速及びアクセル開度の座標点が切換閾値に対して右上の領域にあるとき)には、使用燃料をガソリンとし、要求トルクが切換閾値以下の値であるとき(車速及びアクセル開度の座標点が切換閾値を含めて該切換閾値に対して左下の領域にあるとき)には、使用燃料を水素とする。したがって、PCM6は、上記検出された要求トルクが切換閾値以下の値から該切換閾値よりも大きい値になったときには、水素からガソリンへの使用燃料の切換えを実行する一方、上記切換閾値よりも大きい値から該切換閾値以下の値になったときにはガソリンから水素への使用燃料の切換えを実行する。但し、PCM6は、使用燃料の切換えの実行から所定時間(例えば1分)が経過するまでの間、次の使用燃料の切換えの実行を制限する。本実施形態では、次の使用燃料の切換えの実行を禁止することで制限する。このことで、PCM6は、上記運転状態関連値検出手段により検出された運転状態関連値に応じて使用燃料の切換えを実行する使用燃料切換手段を構成するとともに、次の使用燃料の切換えの実行を制限する制限手段を構成することになる。
上記使用燃料の切換えが実行されると、ガソリン噴射用のインジェクタ5によりガソリンが吸気通路2内に噴射されていた場合には、そのガソリン噴射が停止された後、上記元弁31a及び遮断弁33が開けられて、水素噴射用のインジェクタ4により水素が気筒11内に噴射され、水素噴射用のインジェクタ4により水素が噴射されていた場合には、その水素噴射が停止された後、元弁31a及び遮断弁33が閉じられるとともに、ガソリン噴射用のインジェクタ5によりガソリンが噴射されることになる。上記元弁31a及び遮断弁33は、上記使用燃料切換手段としてのPCM6により制御される制御弁に相当する。
ここで、図4に示すように、使用燃料がガソリンであるとき(要求トルクが切換閾値よりも大きいとき)には、排気還流率(新気量及び還流排気量を合わせた全吸気量に対する還流排気量の割合;以下、EGR率という)を最大3%から要求トルクが大きくなるに連れて0%に漸近させる。一方、使用燃料が水素であるとき(要求トルクが切換閾値以下であるとき)には、EGR率を30%とする。このことで、使用燃料が水素であるときにおけるEGR率は、使用燃料がガソリンであるときよりも高いことになる。これは、使用燃料が水素であるときには、水素のプリイグニッションが発生し易いので、これを抑制するためである。
PCM6は、上記の如く設定されたEGR率になるように上記EGR弁アクチュエータ47を制御する。すなわち、EGR弁46の開度が、図4のEGR率に対応する値になるように、EGR弁開度センサ54の出力信号に基づいて、EGR弁アクチュエータ47を制御する。
次に、上記PCM6における使用燃料の切換えに関する具体的な処理動作を、図5を参照しながら説明する。
先ず、最初のステップS1では、車速センサ51及びアクセル開度センサ52の各出力値(車速及びアクセル開度)を入力し、次のステップS2で、その車速及びアクセル開度並びにマップAから検出される要求トルクが、該マップAの切換閾値以下であるか否かを判定する。このステップS2の判定がYESであるときには、ステップS3に進む一方、ステップS2の判定がNOであるときには、ステップS6に進む。
上記ステップS2の判定がYESであるときに進むステップS3では、現在の使用燃料が水素であるか否かを判定し、このステップS3の判定がYESであるときには、ステップS4に進んで、水素を継続して使用することにしてリターンする一方、ステップS3の判定がNOであるときには、ステップS5に進んで、ガソリンから水素への燃料切換えを実行し、しかる後にステップS9に進む。
一方、上記ステップS2の判定がNOであるときに進むステップS6では、現在の使用燃料がガソリンであるか否かを判定し、このステップS6の判定がYESであるときには、ステップS7に進んで、ガソリンを継続して使用することにしてリターンする一方、ステップS6の判定がNOであるときには、ステップS8に進んで、水素からガソリンへの燃料切換えを実行し、しかる後にステップS9に進む。
上記ステップS5及びS8の後に進むステップS9では、次の使用燃料の切換えを禁止し、次のステップS10で、その切換え禁止から所定時間が経過したか否かを判定する。このステップS10の判定がNOであるときには、ステップS10の処理を繰り返し、ステップS10の判定がYESになると、ステップS11に進んで、切換え禁止を解除してリターンする。
上記PCM6の処理動作により、要求トルクが切換閾値以下の値から該切換閾値よりも大きい値になったときには、使用燃料が水素からガソリンへ切り換えられ、切換閾値よりも大きい値から該切換閾値以下の値になったときにはガソリンから水素へ切り換えられる。そして、使用燃料が切り換えられてから所定時間が経過するまでの間は、要求トルクの値に関わらず、次の使用燃料の切換えは行われない。
したがって、本実施形態では、使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間、次の使用燃料の切換えの実行を禁止するようにしたので、使用燃料の切換えが頻繁に生じることはなくなり、切換えによるトルクショックが頻繁に生じることはない。この結果、使用燃料が水素であるときにおけるEGR率を、使用燃料がガソリンであるときよりも高くしていても、乗員はトルクショックによる違和感を感じ難くなる。すなわち、図4のEGR率から分かるように、使用燃料をガソリンから水素へ切り換えるときには、EGR弁46の開度の変更量は非常に大きく、このため、使用燃料をガソリンから水素へ切り換えると、EGR弁アクチュエータ47の応答遅れが生じ、これにより、EGR率が直ぐには高くならず、その間、水素のプリイグニッションが発生し易くなって、大きなトルクショックが生じ易くなる。また、ガソリンから水素へ切り換える際には、元弁アクチュエータ61及び遮断弁アクチュエータ62の応答遅れが生じ、この応答遅れによっても大きなトルクショックが生じ易くなる。これらのことに加えて、使用燃料の切換えが頻繁に生じると、乗員はかなり大きな違和感を感じ易くなる。しかし、本実施形態では、上記の如く使用燃料の切換えが頻繁に生じることはなく、特に、水素からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間、次のガソリンから水素への切換えを禁止することで、トルクショックによる違和感を乗員に出来る限り感じさせないようにすることができる。
(実施形態2)
本実施形態では、水素からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間のみ、次のガソリンから水素への使用燃料の切換えの実行を制限するようにしたものである。尚、ロータリーエンジン1や、該エンジン1に対する吸気系及び排気系並びに燃料供給系の構成は、上記実施形態1と同様である。
すなわち、本実施形態では、PCM6は、水素からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間、上記切換閾値を小さくすることで、次のガソリンから水素への使用燃料の切換えの実行を制限して、切換えの実行がなされ難いようにする。具体的には、水素からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間は、上記実施形態1におけるマップAから図6のマップ(以下、マップBという)に変更する。このマップBでは、切換閾値がマップAよりも小さくなっている。このため、使用燃料が水素からガソリンへ切り換わってから所定時間が経過するまでは、ガソリンから水素へ切り換わり難くなる。
一方、ガソリンから水素に切り換えたときには、次の水素からガソリンへの切換えの実行を制限するようなことはしない。つまり、マップBに変更しないで、マップAを継続する。したがって、PCM6は、水素からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間のみ、次のガソリンから水素への使用燃料の切換えの実行を制限する。
上記PCM6における具体的な処理動作を、図7及び図8を参照しながら説明する。尚、ステップS21〜S28は、上記実施形態1における図5のフローチャートのステップS1〜S8とそれぞれ同じであり、ステップS25及びS28の後の処理動作が上記実施形態1とは異なるので、その異なる処理動作を説明する。
すなわち、ステップS25の後はリターンする一方、ステップS28の後は、ステップS29に進んで、燃料切換え用のマップをマップBに変更し、次のステップS30で、タイマーをセットする。
次のステップS31では、車速センサ51及びアクセル開度センサ52の各出力値(車速及びアクセル開度)を入力し、次のステップS32で、その車速及びアクセル開度並びにマップBから検出される要求トルクが、該マップBの切換閾値以下であるか否かを判定する。
上記ステップS33の判定がYESであるときには、ステップS33に進んで、ガソリンから水素への燃料切換えを実行し、次のステップS34で、燃料切換え用のマップをマップAに戻し、しかる後にリターンする。
一方、上記ステップS33の判定がNOであるときには、ステップS35に進んで、ガソリンを継続して使用することにしてステップS36に進む。そして、このステップS36で、上記タイマーのセットから所定時間が経過したか否かを判定し、このステップS36の判定がNOであるときには、上記ステップS31に戻る一方、ステップS36の判定がYESであるときには、ステップS37に進んで、燃料切換え用のマップをマップAに戻し、しかる後にリターンする。
上記PCM6の処理動作により、要求トルクがマップAの切換閾値以下の値から該切換閾値よりも大きい値になったときには、使用燃料が水素からガソリンへ切り換えられ、マップAの切換閾値よりも大きい値から該切換閾値以下の値になったときにはガソリンから水素へ切り換えられる。
そして、使用燃料がガソリンから水素へ切り換えらたときには、次の水素からガソリンへの切換えは制限されず、該切換えから所定時間以内であっても、要求トルクがマップAの切換閾値以下の値から該切換閾値よりも大きい値になったときには、水素からガソリンへ切り換えられる。
一方、使用燃料が水素からガソリンへ切り換えらたときには、該切換えから所定時間の間、次のガソリンから水素への切換えが制限され、要求トルクがマップBの切換閾値よりも大きい値から該切換閾値以下の値にならないと、ガソリンから水素へ切り換えらることはない。これにより、マップBの切換閾値がマップAよりも小さいので、ガソリンから水素への切換えが起こり難くなる。そして、上記切換えから所定時間が経過すると、マップAに戻るので、切換えの制限が解除されることになる。
本実施形態では、上記実施形態1と同様に、ガソリンから水素へ切り換える際には、水素のプリイグニッションが発生し易くかつ元弁アクチュエータ61及び遮断弁アクチュエータ62の応答遅れが生じるため、大きなトルクショックが生じ易くなる。その上に、使用燃料の切換えが頻繁に生じると、乗員はかなり大きな違和感を感じ易くなる。しかし、本実施形態では、水素からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間は、ガソリンから水素への使用燃料の切換えの実行が制限されるので、上記実施形態1と同様に、トルクショックによる違和感を乗員に出来る限り感じさせないようにすることができる。
一方、ガソリンから水素へ切り換えられたときには、次の水素からガソリンへの使用燃料の切換えの実行は制限されない。すなわち、水素からガソリンへ切り換えるのは、乗員が高トルクを要求しているためであるので、この切換えを制限しないことで、高トルク要求に対して素早く対応することができるようになる。しかも、水素からガソリンに切り換えられたときには、トルクショックは比較的小さく、大きな問題とはならない。
よって、水素からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間のみ、次のガソリンから水素への使用燃料の切換えの実行を制限することにより、乗員の高トルク要求に対して素早く対応しつつ、トルクショックによる違和感を乗員に出来る限り感じさせないようにすることができる。
尚、上記実施形態2では、水素からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間のみ、次のガソリンから水素への使用燃料の切換えの実行を制限するようにしたが、ガソリンから水素への使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間も、同様にマップBに変更して、次の水素からガソリンへの使用燃料の切換えの実行を制限するようにしてもよい。
また、水素からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間のみ、次のガソリンから水素への使用燃料の切換えの実行を禁止することで制限するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態1及び2では、車両の運転状態に関連する値として乗員のエンジン1に対する要求トルクを検出するようにしたが、例えばエンジン回転数やエンジン負荷等であってもよい。
さらにまた、上記実施形態1及び2では、使用燃料として水素とガソリンとを切換え可能としたロータリーエンジン1に本発明を適用したが、天然ガス等の気体燃料とガソリンとを切換え可能としたデュアルフューエルエンジン(ロータリーエンジンに限らない)にも本発明を適用することができる。
本発明は、使用燃料として気体燃料とガソリンとを切換え可能としたデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置に有用である。
本発明の実施形態1に係るデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置を示す概略構成図である。 上記エンジンに対する吸気系及び排気系並びに燃料供給系を示す概略構成図である。 燃料切換え用のマップAを示す図である。 要求トルクと排気還流率(EGR率)との関係を示す図である。 パワートレインコントロールモジュールにおける使用燃料の切換えに関する処理動作を示すフローチャートである。 マップAに対して切換閾値を小さくしたマップBを示す図である。 実施形態2においてパワートレインコントロールモジュールにおける使用燃料の切換えに関する処理動作の前半部を示すフローチャートである。 上記使用燃料の切換えに関する処理動作の後半部を示すフローチャートである。
符号の説明
1 ロータリーエンジン(デュアルフューエルエンジン)
4 水素噴射用のインジェクタ(気体燃料供給手段)
6 パワートレインコントロールモジュール
(運転状態関連値検出手段)(使用燃料切換手段)(制限手段)
31 水素タンク(気体燃料タンク)
31a 元弁(制御弁)
32 水素供給管(気体燃料供給路)
33 遮断弁(制御弁)
45 EGR通路(排気還流手段)
46 EGR弁(排気還流手段)
47 EGR弁アクチュエータ(排気還流手段)
51 車速センサ(運転状態関連値検出手段)
52 アクセル開度センサ(運転状態関連値検出手段)

Claims (5)

  1. 車両に搭載されかつ使用燃料として気体燃料とガソリンとを切換え可能としたデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置であって、
    上記車両の運転状態に関連する値を検出する運転状態関連値検出手段と、
    上記運転状態関連値検出手段により検出された運転状態関連値に応じて使用燃料の切換えを実行する使用燃料切換手段と、
    上記使用燃料切換手段による使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間、該使用燃料切換手段による次の使用燃料の切換えの実行を制限する制限手段とを備えていることを特徴とするデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置。
  2. 請求項1記載のデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置において、
    上記気体燃料を貯蔵する気体燃料タンクと、
    上記気体燃料タンクと上記気体燃料を上記エンジンの燃焼室へ供給する気体燃料供給手段とを連結する気体燃料供給路と、
    上記気体燃料供給路に設けられ、上記使用燃料切換手段により制御される制御弁とを備えており、
    上記制限手段は、上記使用燃料切換手段による気体燃料からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間のみ、該使用燃料切換手段による次のガソリンから気体燃料への使用燃料の切換えの実行を制限するように構成されていることを特徴とするデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置。
  3. 請求項2記載のデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置において、
    上記使用燃料切換手段は、上記運転状態関連値検出手段により検出された運転状態関連値が、所定値以下の値から該所定値よりも大きい値になったときには、気体燃料からガソリンへの使用燃料の切換えを実行する一方、上記所定値よりも大きい値から該所定値以下の値になったときにはガソリンから気体燃料への使用燃料の切換えを実行するように構成されており、
    上記制限手段は、上記使用燃料切換手段による気体燃料からガソリンへの使用燃料の切換えの実行から所定時間が経過するまでの間、上記所定値を小さくすることで、該使用燃料切換手段による次のガソリンから気体燃料への使用燃料の切換えの実行を制限するように構成されていることを特徴とするデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置。
  4. 請求項1又は2記載のデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置において、
    上記制限手段は、上記使用燃料切換手段による次の使用燃料の切換えの実行を禁止することで制限するように構成されていることを特徴とするデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載のデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置において、
    上記気体燃料は水素であり、
    上記エンジンの吸気通路に該エンジンの排気を還流する排気還流手段を備え、
    上記排気還流手段は、使用燃料が水素であるときにおける排気還流率を、使用燃料がガソリンであるときよりも高くするように構成されていることを特徴とするデュアルフューエルエンジンの燃料切換制御装置。
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