JP2007084411A - ガラスレンズ成形用セラミックス型 - Google Patents
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Abstract
【課題】 キャビティ表面に対する高い面精度を確保するとともに、十分な離型性(非濡れ性,非融着性及び非接着性)を確保し、加えて、造型工程のシンプル化により、製造工数及び製造コストの削減を図る。
【解決手段】 ガラスレンズを成形するキャビティ4を有する上型2と下型3を備えるセラミックスを用いたガラスレンズ成形用セラミックス型1を構成するに際して、キャビティ4を含む上型2と下型3をCr系セラミックスMにより一体に造型する。このCr系セラミックスMには、CrSi2,CrB,Cr3C2,Cr2Nから選択した一つを用いることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 ガラスレンズを成形するキャビティ4を有する上型2と下型3を備えるセラミックスを用いたガラスレンズ成形用セラミックス型1を構成するに際して、キャビティ4を含む上型2と下型3をCr系セラミックスMにより一体に造型する。このCr系セラミックスMには、CrSi2,CrB,Cr3C2,Cr2Nから選択した一つを用いることができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ガラスレンズを成形するキャビティを有する上型と下型を備えるセラミックスを用いたガラスレンズ成形用セラミックス型に関する。
従来、カメラ等の光学機器に用いるガラスレンズは、段階的な研磨工程を経る研磨製法に頼っていたが、多大な製造工数及び製造コストが強いられることから、プラスチックレンズと同様、成形型により成形する成形製法に移行しつつある。
ところで、ガラスの軟化温度は500〔℃〕以上になるため、ガラスレンズを成形する際には、成形型に高温及び高圧を付加するとともに、この状態で数分間ホールドする必要がある。したがって、ガラスレンズを成形する成形型には、耐熱性及び耐圧性を要求されるとともに、高い面精度と硬度、更には耐酸化性等が要求される。従来、このような要求に最も応え得る成形型としてセラミックス型が知られている。また、セラミックスはガラスに近い物性を有することから成形時の干渉(反応等)が問題となり、このようなガラス成形固有の問題を考慮したセラミックス型の材料として、特開平10−7425号公報に開示される材料が知られている。同公報に開示される材料は、結合金属を使用しない硬質材料からなる基材に硬質膜を設けた後、この硬質膜と、基材と硬質膜との界面に窒素イオンの注入を行って原子レベルでのミキシング層を形成し、その上にダイヤモンド・ライク・カーボン膜を形成したものであり、結合金属を含まない硬質材料には、Al2O3−TiC系材料,Al2O3−SiC系材料,WC−TiC−TaC系材料又はWC或いはWC−TiC−TaC系の化学蒸着膜を表面に有する材料が用いられるとともに、硬質膜には、炭化珪素又は窒化珪素又は炭酸化珪素又は炭窒酸化珪素又は窒化チタンアルミニウムが用いられる。
特開平10−7425号
しかし、上述した従来の材料を用いたセラミックス型は、基材に対して異なる材料を用いた硬質膜を付加するようにしたため、基材に硬質膜を設けることに伴う構造上の問題があった。
第一に、膨張係数の異なる材料を組合わせるため、長期使用などにより少なからず硬質膜に変形或いは劣化を生じる虞れがあり、ガラスレンズの成形に要求されるキャビティ表面に対する面精度の確保が保証されない。
第二に、ガラスレンズの成形において要求される固有の課題となる十分な離型性(非濡れ性,非融着性)を確保しにくい。特に、上述した硬質膜の劣化などと相互に影響し合う虞れがあり、その確保が容易でない。
第三に、セラミックスを造型する通常の造型工程の加え、基材に硬質膜を設け、基材と硬質膜との界面に窒素イオンの注入を行うとともに、更にその上にダイヤモンド・ライク・カーボン膜を形成するなど、造型工程が煩雑となり、製造工数及び製造コストの増加を強いられる。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したガラスレンズ成形用セラミックス型の提供を目的とするものである。
本発明は、上述した課題を解決するため、ガラスレンズLを成形するキャビティ4を有する上型2と下型3を備えるセラミックスを用いたガラスレンズ成形用セラミックス型1を構成するに際して、キャビティ4を含む上型2と下型3をCr(クロム)系セラミックスMにより一体に造型してなることを特徴とする。この場合、発明の好適な態様により、Cr系セラミックスMには、CrSi2,CrB,Cr3C2,Cr2Nから選択した一つを用いることができる。
Cr系セラミックスMは、比較的良好な機械的特性と導電性を有しており、また、非酸化物系セラミックスの中では最も耐酸化性に優れていることが知られている。そこで、本発明では、Cr系セラミックスMのピュア特性に着目し、望ましいガラスレンズ成形用セラミックス型1を実現する観点から、一般的な物理的特性に加え、ガラスに対する非濡れ性(非融着性)及び非接着性を検証することにより、硬質膜等のコーティングを必要としないCr系セラミックス種を選定した。
このような構成を有する本発明に係るガラスレンズ成形用セラミックス型1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) 選択したCr系セラミックスMを用いることにより、ガラスレンズLの成形に要求される耐熱性,耐圧性及び硬度等の物理的特性を確保し、また、耐酸化性等の化学的安定性を確保するようにしたため、硬質膜等のコーティングを必要としないセラミックス型1を得ることができる。したがって、長期使用などによってもキャビティ4表面に変形や劣化を生じる不具合を排除でき、ガラスレンズLの成形に要求されるキャビティ4表面に対する高い面精度を確保できる。
(2) 選択したCr系セラミックスMを用いることにより、ガラスレンズLの成形において要求される固有の課題となる十分な離型性(非濡れ性,非融着性及び非接着性)を確保することができる。
(3) 選択したCr系セラミックスMを用いることにより、硬質膜等のコーティングを必要としないセラミックス型1を得れるため、セラミックス型1の造型に際しては、基本的に、セラミックスを造型する一般的な造型工程を利用でき、造型工程のシンプル化による製造工数及び製造コストの大幅な削減を図ることができる。
(4) 好適な態様により、Cr系セラミックスMとして、CrSi2,CrB,Cr3C2,Cr2Nから選択した一つを用いれば、使用する材料の観点から、より有効性の高いセラミックス型1を確保できる。
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係るガラスレンズ成形用セラミックス型1について、図1及び図3を参照して説明する。
図1は、同セラミックス型1を示す。このセラミックス型1は、ガラスレンズLを成形するキャビティ4を有する上型2と下型3を備える。なお、図1中、仮想線で示す符号Loは、ガラスレンズLの成形に用いる球状の中間材(ガラスボール)であり、成形時には、この中間材Loがキャビティ4に装填される。また、キャビティ4を含む上型2と下型3は、Cr系セラミックスM、望ましくは、CrSi2,CrB,Cr3C2,Cr2Nから選択した一つのCr系セラミックスMにより一体に造型する。この場合、セラミックス型1は、Cr系セラミックスMのピュア特性に着目し、硬質膜等のコーティングは行わないとともに、後述するように、セラミックス型1の造型に際して、バインダ及び焼結助剤は一切使用しない。
本実施形態に係るセラミックス型1の重要な点は、成形材料(素材)をCr系セラミックスMに選定した点であり、上述したCrSi2,CrB,Cr3C2,Cr2Nから選択した一つのCr系セラミックスMを用いることができる。これらのCr系セラミックスMは、一般的な物理的特性として、融点が1400〔℃〕以上、硬度が11〔GPa〕以上、酸化開始温度が800〔℃〕以上を確保できるなど、ガラスレンズLの成形に要求される耐熱性,耐圧性及び硬度等の物理的特性を備えるとともに、耐酸化性等の化学的安定性を備え、さらに、後述する非濡れ性(非融着性)及び非接着性に係わる検証から、ガラスレンズ成形用セラミックス型1を造型する際における望ましい良好な結果を得ている。
この場合、CrSi2(クロムシリサイド)が最も良好な結果を示した。CrSi2は、密度が4980〔kg/ 〕、熱膨張係数が11.3×10-6、酸化開始温度が1000〔℃〕以上、電気伝導度が110〔kS/m〕、硬度が11.1〔GPa〕である。したがって、超硬合金並の強度(WC−Co:10GPa)を有しているも、重量は超硬合金の約1/3程度と軽く、セラミックス型1の軽量化に寄与できる。また、放電加工(型彫り等)による高能率加工が可能であり、生産コストの低減にも寄与できる。なお、放電加工は、一般に電気伝導度が100〔S/m〕以上で可能となる。さらに、ニアネットシェイプのレンズ成形と後処理の精密加工を組合わせれば、必ずしも加熱制御を必要とせず、バッチ型の多種少量生産と連続した大量生産の両生産方式にも十分対応可能と思われる。他のCrB,Cr3C2,Cr2Nも、CrSi2には及ばないものの、CrSi2と同傾向の特性を示しており、程度の差こそあれ、良好なセラミックス型1を造型可能である。
使用する具体的な材料(CrSi2)としては、日本新金属株式会社製の品番「CrSi2−F」が好適である。この材料(粉末材料)は、平均粒径が2.3〔μm〕であり、成分は、Si:51.21〔%〕,C:0.01〔%〕,O:1.06〔%〕,Fe:0.08〔%〕を含み、残りがCrである。また、他のCrB,Cr3C2,Cr2Nも、使用する材料としては、日本新金属株式会社製の品番「CrB」,「Cr3C2」,「Cr2N」を使用できる。この場合、品番「CrB」は、平均粒径が2.00〔μm〕,主成分のBは16.86〔%〕である。また、品番「Cr3C2」は、平均粒径が1.45〔μm〕,主成分のCは13.15〔%〕である。さらに、品番「Cr2N」は、平均粒径が5.82〔μm〕,主成分のNは10.45〔%〕である。
一方、本実施形態に係るセラミックス型1は、次のように造型することができる。以下、セラミックス型1の具体的な造型方法について、図3に示す工程図及び図4に成形型を参照して説明する。なお、Cr系セラミックスMはCrSi2を使用する。
まず、CrSi2の粉末材料を用意する(ステップS1)。用意した粉末材料は計量し、計量した粉末材料からスラリーを作製する(ステップS2,S3)。スラリーの作製に際しては、ボールの入ったボールミル装置のポットに所定量のエタノールを注入し、この後、計量した粉末材料を投入するとともに、さらに、エタノールを注入してポット内を満たす。これは、ポット内の空気を排除して酸化を防止するためである。そして、ボールミル装置を、概ね24時間作動させ、混合・粉砕してスラリーを作製する。なお、通常、スラリーの作製時には、適量のバインダ及び焼結助剤の添加が行われるが、今回、これらのバインダ及び焼結助剤は一切使用せず、エタノールのみである。
スラリーを作製したなら、スラリーをバットに流し入れ、概ね1週間程度自然乾燥させることにより厚膜状に固める(ステップS4)。乾燥したスラリーは乳鉢に移して細かく粉砕して造粒する(ステップS5)。なお、造粒は、スプレードドライヤ装置等の専用の造粒装置を用いてもよい。粉砕粒は篩(フィルタ)を通して分級し、粗い粉砕粒を除去して、直径70〜100〔μm〕程度の顆粒を得る(ステップS6)。
次いで、得られた顆粒から一回の成形分を計量する(ステップS7)。計量した顆粒は、図4に示す成形型30に充填し、成形及び焼結を行う(ステップS8,S9)。成形型30は、黒鉛シリンダ31に固定型32と可動型33を設けた黒鉛型(ホットプレス型)30sを使用する。なお、34は黒鉛シリンダ31に付設した加熱部である。成形に際しては、可動型33を上昇させて型開状態にし、固定型32と可動型33間のキャビティ内に、計量した顆粒を充填する。この後、可動型33を下降(矢印Fp方向)させて型締めを行う。この際、高純度のアルゴン雰囲気中で、温度1250〔℃〕,圧力28.2〔MPa〕,時間60〔分〕程度の条件を設定し、ホットプレス成形及び焼結を行う。なお、この成形条件は、CrSi2を用いた場合であり、他の材料を使用する際には、異なる条件(特に、温度)が設定される。
焼結が終了したなら、黒鉛型30sから成形及び焼結したセラミックス型1、即ち、一方の型となる上型2を取り出す。そして、取り出した上型2に対して、表面をダイヤモンドスラリーによりポリッシングするなどの仕上処理を行う(ステップS10)。これにより、上型2の造型が終了する。次いで、セラミックス型1の他方の型となる下型3を同様に造型する。なお、上述した成形と焼結は、黒鉛型30sを用いて同時に行った場合を示したが、それぞれ別工程で行ってもよい。この場合、成形型により成形を行った後、成形した上型2を取出し、別工程により焼結を行う。
ところで、本実施形態に係るセラミックス型1では、造型した上型2及び下型3に対する硬質膜等のコーティングは不要である。即ち、後述するように、造型した上型2及び下型3のみで、ガラスレンズLの成形に要求される離型性(非濡れ性,非融着性及び非接着性)を確保できる。したがって、セラミックス型1の造型に際しては、基本的に、セラミックスを造型する一般的な造型工程を利用でき、造型工程のシンプル化による製造工数及び製造コストの大幅な削減を図ることができる利点がある。
次に、本実施形態に係るセラミックス型1に用いるCr系セラミックスMのガラスに対する非濡れ性及び非接着性の検証結果について説明する。
Cr系セラミックスMを選定するに際しては、予め各種材料における非濡れ性及び非接着性を検証した。具体的には、酸化物系セラミックスとして、Al2O3,TiO2,3YZ(3mol%Y2O3−ZrO2)、非酸化物系セラミックスの単体焼結体として、CrB,Cr3C2,Cr2N,CrSi2,TiB2,B4C,ZrB2,TiN,AlN,Si3N4,TiC、非酸化物系セラミックスの複合焼結体として、(TiB2)0.6(ZrB2)0.4,(TiB2)0.6(B4C)0.4,TiB2+TiC+20mass%Ni,TiB2・TiNxCy,超硬(G4),超硬(KD20)、金属として、SUS304を対象として非濡れ性及び非接着性を検証した。
非濡れ性に係わる検証実験は次のように行った。検証実験に際しては、予め各材料に対応した検証基板を作製する。この検証基板は、図5に示すような単純形状となる平板状の検証基板41を別途造型してもよいし、図4の成形型30により成形した上型2の上面(平坦面)を利用してもよい。本例では、別途造型した検証基板41を用いた。この場合、セラミックス製の検証基板41は、図3及び図4に示した造型方法により得ることができ、造型時における成形条件、特に、焼結温度は各材料に適した温度を設定する。一方、金属製の検証基板41は、平板加工したものを利用できる。また、検証基板41の表面は、実際のセラミックス型1におけるキャビティ表面に近付けるように研磨処理を行う。
そして、検証実験は、検証基板41の上に、レンズガラス(NbSF10)の粉砕片を少量載せた後、電気炉を用いて加熱するとともに、大気中(空気中)750〔℃〕の環境下で1時間保持した後、図5に示すように、溶けて球状になったガラス部42と検証基板41間の接触角Rxを読み取った。検証基板41に、レンズガラスの粉砕片を載せた場合、粉砕片が溶け、表面張力により丸くなるため、接触角Rxを求めることが可能となり、接触角Rxが大きいほど、非濡れ性が大きい。なお、使用したレンズガラス(NbSF10)の主要特性は、屈折率1.8,ガラス転移温度627〔℃〕,ガラス軟化温度659〔℃〕,比重4.41である。
検証実験により、各材料における接触角Rxを評価した結果、CrSi2,CrB,Cr3C2,Cr2N,Si3N4の接触角Rxが大きく、良好な結果を得た。即ち、Cr系セラミックスMが全般的に良好な結果を示した。これに対して、これらCrSi2,CrB,Cr3C2,Cr2N,Si3N4を除く他の材料は、接触角Rxが小さくなり、ガラスレンズLの成形に要求される十分な非濡れ性は得られなかった。図6(a),(b)は、検証基板41とガラス部42の実際の写真であり、図6(a)は、CrSi2、図6(b)は、Cr2Nを示す。
このように、非濡れ性の確保についてはCr系セラミックスMに絞られたため、以下の検証実験、即ち、ガラスとの反応性及び非接着性の検証実験は、Cr系セラミックスMであるCrSi2,CrB,Cr3C2,Cr2Nを対象に行った。
ガラスとの反応性は、図7に示すように、上述した検証基板41の上面に、4〜5〔mm〕の立方体形状に形成したレンズガラス(NbSF10)の試料片43を載せ、大気中(空気中)1000〔℃〕で4時間保持することにより、試料片43に対する検証基板41の反応性を調べた。この結果、CrBは、試料片43との反応が認められ、Cr3C2,Cr2Nは、試料片43との僅かな反応が認められた。いずれも試料片43は溶けた状態となる。また、CrSi2は、他の検証基板41…の場合よりも試料片43の溶け方が小さく、試料片43を簡単に剥離することができた。このように、この検証結果では、CrSi2が最も良好な結果を得た。
図8に、ガラスに対する非濡れ性及び反応性に係わる検証結果を、CrSi2,CrB,Cr3C2,Cr2Nについて示した。同図は、上述したガラス反応の有無,接触角Rx,総合評価を示す。この場合、総合評価において、〇及び◎は、いずれも見込みのあることを示す。
他方、図9及び図10は、非接着性(剥離性)に係わる検証結果を示す。この検証実験は、図9に示すように、実際のセラミックス型1に近い状態を実現するため、上述した二枚の検証基板41,41を用意し、この検証基板41と41間に、上述した試料片43をサンドイッチ状に挟み、電気ルツボ炉を用いて、700〜800〔℃〕に加熱した後、大気中(空気中)でオモリ46を載せ、矢印Fa方向に49〔N〕の加重を10〔分〕間付加するとともに、この後、室温まで冷却し、試料片43と検証基板41,43の非接着性を調べた。
図10に、この検証結果をCrSi2,CrB,Cr2Nについて示した。同図は、主に剥離する際における感触と目視による外観的な評価を示したものであり、この検証結果でも、CrSi2が最も良好な結果を示した。また、CrB,Cr2Nについても見込みのあることを示した。なお、前述したCr3C2については、一方の検証基板41の形態が他方の検証基板41の形態と異質となり、正確な比較ができないことから図10の検証結果から除いた。
以上の検証結果から明らかなように、本実施形態に係るセラミックス型1は、ガラスレンズLの成形において要求される固有の課題となる十分な離型性(非濡れ性,非融着性及び非接着性)を有している。
なお、得られたセラミックス型1は、図2に示すような成形機20に取付けることによりガラスレンズLの成形を行うことができる。成形機20は、固定ブロック22と、この固定ブロック22から起立した複数本のタイバー23…と、このタイバー23…の上端に支持される駆動支持盤24と、この駆動支持盤24に支持されるプレス部25と、タイバー23…に昇降自在に装填する可動ブロック26を備え、プレス部25のプランジャ25pの先端は可動ブロック26に結合する。そして、上型2は可動盤26により支持するとともに、下型3は固定ブロック22により支持する。このように、セラミックス型1の使用に際しては、汎用的なプレス機をそのまま利用することができ、特別な周辺機器等、具体的には、従来用いられていた雰囲気ガス(窒素等)及びこれに関連した石英管チャンバ,真空排気装置,雰囲気制御系ユニットなどは不要である。なお、図2は型締時の状態を示し、Lは成形されたガラスレンズである。
よって、このような本実施形態に係るセラミックス型1によれば、選択したCr系セラミックスMを用いることにより、ガラスレンズLの成形に要求される耐熱性,耐圧性及び硬度等の物理的特性を確保し、また、耐酸化性等の化学的安定性を確保するようにしたため、硬質膜等のコーティングを必要としないセラミックス型1を得ることができる。したがって、長期使用などによってもキャビティ4表面に変形や劣化を生じる不具合を排除でき、ガラスレンズLの成形に要求されるキャビティ4表面に対する高い面精度を確保できる。特に、Cr系セラミックスMとして、CrSi2,CrB,Cr3C2,Cr2Nから選択した一つを用いれば、使用する材料の観点から、より有効性の高いセラミックス型1を確保できる。
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,手法,材料,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、Cr系セラミックスMとして、CrSi2,CrB,Cr3C2,Cr2Nから選択した一つを用いる場合を例示したが、他のCr系セラミックスMの適用を排除するものではない。また、例示は、バインダ及び焼結助剤は使用しない場合を示したが、必要に応じてバインダ及び/又は焼結助剤を使用したり、他の材料を添加する場合を排除するものではない。さらに、ガラスレンズLは、凹レンズや凸レンズ等、レンズの種類は問わないとともに、使用する用途も問わない。なお、上型2と下型3は、一方の型と他方の型を意味するものであり、例えば、左右に配置された場合であっても、上型2と下型3の概念に包含される。
1 ガラスレンズ成形用セラミックス型
2 上型
3 下型
L ガラスレンズ
4 キャビティ
M Cr系セラミックス
2 上型
3 下型
L ガラスレンズ
4 キャビティ
M Cr系セラミックス
Claims (2)
- ガラスレンズを成形するキャビティを有する上型と下型を備えるセラミックスを用いたガラスレンズ成形用セラミックス型において、前記キャビティを含む前記上型と前記下型をCr系セラミックスにより一体に造型してなることを特徴とするガラスレンズ成形用セラミックス型。
- 前記Cr系セラミックスは、CrSi2,CrB,Cr3C2,Cr2Nから選択した一つを用いることを特徴とする請求項1記載のガラスレンズ成形用セラミックス型。
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