JP2007081321A - 多層セラミックス基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】 多層セラミックス基板において、例えば内部導体周囲に生ずる欠陥を確実に解消する。
【解決手段】 複数のガラスセラミックス層2a〜2dが積層された多層セラミックス基板1である。各ガラスセラミックス層2a〜2dは、ガラス成分とセラミックス成分とを含むが、さらにガラス成分にはAgが溶け込んでいる。ガラスセラミックス層2a〜2dには、内部導体(ビアホール導体3及び表面導体4)が形成されており、内部導体はAgを含有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、各層がガラスセラミックスにより形成される多層セラミックス基板に関するものであり、特に、内部欠陥を防止する技術に関する。
電子機器等の分野においては、電子デバイスを実装するための基板が広く用いられているが、近年、電子機器の小型軽量化や多機能化等の要望に応え、且つ高信頼性を有する基板として、多層セラミッスク基板が提案され実用化されている。多層セラミックス基板は、複数のセラミックス層を積層することにより構成され、各セラミックス層に配線導体や電子素子等を一体に作り込むことで、高密度実装が可能となっている。中でも各セラミック層をガラス成分とセラミックス成分とを含むガラスセラミックス層とした多層セラミックス基板は、低温での焼成が可能であることから、用途の拡大が期待されている。
前記多層セラミックス基板は、複数のガラスセラミックスグリーンシートを積層して積層体を形成した後、これを焼成することにより形成される。そして、前記ガラスセラミックスグリーンシートは、この焼成工程における焼結に伴って必ず収縮し、多層セラミックス基板の寸法精度を低下する大きな要因となっている。具体的には、前記収縮に伴って収縮バラツキが発生し、最終的に得られる多層セラミックス基板においては、寸法精度は、0.5%程度に留まっている。
このような状況から、多層セラミックス基板の焼成工程において、ガラスセラミックスグリーンシートの面内方向の収縮を抑制し、厚さ方向にのみ収縮させる、いわゆる無収縮焼成方法が提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。特許文献1等にも記載されるように、前記焼成温度でも収縮しないシートをグリーンシートの積層体に貼り付け、この状態で焼成を行うと、前記面内方向の収縮が抑制され、厚さ方向にのみ収縮する。この方法によれば、多層セラミックス基板の面内方向の寸法精度を例えば0.05%程度にまで改善することが可能である。
ところで、多層セラミックス基板においては、層間接続を図るためのビアホール導体等の内部導体が形成されており、前記多層セラミックス基板の作製に際しては、例えばビアホールを形成し、ここに導体ペーストを充填して焼成することが行われる。この場合、導体ペーストとグリーンシートの熱収縮挙動の相違等により、内部導体(例えばビアホール導体)の周囲に空隙(欠陥)が発生することが知られている。このような欠陥の発生は、特に無収縮焼成方法において顕著である。
そこで、このような欠陥を解消するための技術も各方面で検討されている(例えば、特許文献2、3等を参照)。例えば、特許文献2記載の発明では、ビア孔に充填される導体組成物として、Ag等の導電性粉末と、Mo化合物またはMo金属とを含有する多層セラミック基板用導電組成物を用いることで、焼成後の電極近傍に欠陥を生じない多層セラミック基板の製造を可能としている。同様に、特許文献3記載の発明では、ビアホール導体をAgとWとから構成することで、ビアホール導体とビアホールの内壁との間に隙間が生じないようにしている。
特開平10−75060号公報 特開2003−133745号公報 特許第2732171号公報
しかしながら、本発明者らが検討を重ねたところ、前記各特許文献に掲載されるような内部導体を形成するための導電ペースト自体の収縮挙動の制御のみでは、必ずしも満足し得る結果が得られず、特に、前記無収縮焼成法により多層セラミックス基板を作製する場合等において、内部導体周囲に発生する欠陥を十分に抑えきれないことがわかった。また、例えば、特許文献2,3に記載されるようにMoやWの添加により導電ペーストの収縮を抑えようとする場合、ある程度の添加量が必要となり、内部導体の電気抵抗を上昇する原因となることも懸念される。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、多層セラミックス基板において、製造コストの上昇や内部導体の高抵抗化を引き起こすことなく内部導体周囲に生ずる欠陥を確実に解消可能とすることを目的とし、これにより信頼性の高い多層セラミックス基板を提供することを目的とする。
前述の目的を達成するために、本発明の多層セラミックス基板は、複数のガラスセラミックス層が積層されてなる多層セラミックス基板であって、前記ガラスセラミックス層は、ガラス成分とセラミックス成分とから構成され、前記ガラス成分にAgが溶け込んでいることを特徴とする。
内部導体を有する多層セラミックス基板の焼成に際しては、内部導体とガラスセラミックス層(ガラスセラミックスグリーンシート)の熱収縮の相違により欠陥が発生するものと考えられており、前記各従来技術においては、内部導体側において、前記MoやWを添加することでガラスセラミックス層との熱収縮の相違を解消するようにしている。
これに対して、本発明では、ガラスセラミック層を構成するガラス成分中にAgを溶け込ませることで、前記欠陥の発生を抑制するようにしている。ガラス成分中にAgを溶け込ませることにより欠陥の発生が抑えられる理由について、その詳細なメカニズムは不明であるが、ガラスセラミックス層側において、前記Agの添加が例えば内部導体周囲における熱収縮挙動の相違を解消する方向に働いているものと推測される。
本発明によれば、例えば内部導体周囲に生ずる欠陥を確実に解消することが可能であり、信頼性の高い多層セラミックス基板を提供することが可能である。また、本発明においては、内部導体に添加物等を加える必要がないので、内部導体の電気抵抗が低い多層セラミックス基板を提供することができ、製造コストも削減可能である。
以下、本発明を適用した多層セラミックス基板について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の多層セラミックス基板1は、図1に示すように、複数層のガラスセラミックス層(ここでは4層のガラスセラミックス層2a〜2d)を積層し、これらガラスセラミックス層2a〜2dを貫通するビアホール導体3やガラスセラミックス層2a〜2dの両面に形成された表面導体4等の内部導体を設けてなるものである。
各ガラスセラミックス層2a〜2dは、所定のガラス組成を有する複合酸化物に例えばアルミナ(Al)等を加えたものを焼成することにより形成されるものであり、ガラス成分とセラミックス成分とが混在する形で形成されている。ここで、ガラス組成を有する複合酸化物を構成する各酸化物としては、SiOやB、CaO、SrO、BaO、La、ZrO、TiO、MgO、ZnO、PbO、LiO、NaO、KO等を挙げることができ、これらを適宜組み合わせて用いればよい。多層セラミックス基板1を構成する各セラミックス層を前記ガラスセラミックス層とすることにより、低温での焼成が可能となる。
一方、内部導体のうちのビアホール導体3は、各ガラスセラミックス層2a〜2dに形成されたビアホールに導電ペーストの焼成により残存する導電材が充填形成された形で形成されており、このビアホール導体3によって各セラミックス層2a〜2dに形成された表面導体4間を電気的に接続したり、熱を伝導する等の機能を果たしている。ビアホール導体3の断面形状は、通常は概ね円形であるが、これに限らず、限られた形状スペース範囲において大きな断面積を得るために、例えば楕円形、長円形、正方形等、任意の形状とすることができる。
ここで、前記ビアホール導体3や表面導体4等の内部導体は、いずれも導体ペーストを焼成することにより形成されるが、通常は、導体ペーストに含まれる導電材料として例えば銀(Ag)が用いられている。勿論、これに限らず、Agと他の金属(例えばPd等)との合金であってもよいし、他の金属を導電材料として用いてもよい。
前述の構成を有する多層セラミックス基板においては、例えば内部導体と周囲のガラスセラミックス層との熱収縮挙動の相違により、空隙等の欠陥が生ずるという現象が発生する。そこで、本発明においては、前記ガラスセラミックス層2a〜2dを構成するガラス成分中にAgを添加し、前記欠陥を抑制することとする。
Agは、前記ガラス成分中に溶け込ませる形で添加するが、前記Agの添加量は、ガラス成分に対して0.1質量%〜10質量%とすることが好ましい。前記Agの割合が0.1質量%未満であると、十分な効果が期待できない。また、前記Agの割合が10質量%を越えた場合にも、前記欠陥を抑制する効果を十分に得ることができない。
次に、前記多層セラミックス基板1の製造方法について説明する。前述の多層セラミックス基板1を作製するには、先ず、図2(a)に示すように、焼成後に各ガラスセラミックス層となるガラスセラミックスグリーンシート21a〜21dを用意する。ガラスセラミックスグリーンシート21a〜21dは、前述の酸化物粉末(ガラス成分及びセラミックス成分)と有機ビヒクルとを混合して得られるスラリー状の誘電体ペーストを作り、これを例えばポリエチレンテレフタレート(PET)シート等の支持体上にドクターブレード法等によって成膜することにより形成する。前記有機ビヒクルとしては、公知のものがいずれも使用可能である。
ここで、本発明の多層セラミックス基板の作製においては、前記ガラス成分にAgを溶け込ませる必要がある。ガラス成分にAgを溶け込ませる方法としては、例えば、ガラス成分を作製する際に原料としてAgを加える方法を挙げることができる。この場合には、ガラス成分を構成する酸化物とAgとを原料と、これらを所定の比率で配合してガラス成分を作製する。原料として使用したAgは、ガラス成分中に溶け込む形で存在することになる。
前記ガラスセラミックスグリーンシート21a〜21dの形成後、所定の位置に貫通孔(ビアホール)を形成する。前ビアホールは、通常は円形の孔として形成され、ここに導体ペースト22を充填することによりビアホール導体が形成される。さらに、各ガラスセラミックスグリーンシート21a〜21dの表面に所定のパターンで導電ペーストを印刷し、表面導体パターン23を形成する。
前記ビアホールに充填される導体ペースト22や表面導体パターン23の形成に用いられる導体ペーストは、例えばAg、Ag−Pd合金、Cu、Ni等の各種導電性金属や合金からなる導電材料と有機ビヒクルとを混練することにより調製されるものであるが、特にAgを用いた場合に前記欠陥の問題が顕著であるので、Agを導電材料とする導体ペーストを採用した場合に、本発明の適用が有効である。
前記導体ペーストにおいて、有機ビヒクルは、バインダと溶剤を主たる成分とするものであり、導電材料との配合比等は任意であるが、通常はバインダ1〜15質量%、溶剤が10〜50質量%となるように導電材料に対して配合される。導体ペーストには、必要に応じて各種分散剤や可塑剤等から選択される添加物が添加されていてもよい。
各ガラスセラミックスグリーンシート21a〜21dに内部導体となる導体ペースト22を充填し、表面導体パターン23を形成した後、図2(b)に示すように、これらを重ねて積層体とするが、このとき、積層体の両側(最外層)に、収縮抑制用グリーンシート24を拘束層として配し、焼成を行う。
収縮抑制用グリーンシート24には、前記ガラスセラミックスグリーンシート21a〜21dの焼成温度では収縮しない材料、例えばトリジマイトやクリストバライト、さらには石英、溶融石英、アルミナ、ムライト、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素等を含む組成物が用いられ、これら収縮抑制用グリーンシート24間に積層体を挟み込み、焼成を行うことで、前記積層体の面内方向での収縮が抑えられる。
図2(b)は、いわゆる積層体の仮スタックの状態であるが、次に、図2(c)に示すようにプレスを行い、さらに図2(d)に示すように焼成を行う。焼成に際しては、ガラスセラミックスグリーンシート21a〜21dに含まれるバインダを除去する脱バインダ処理を行った後、所定の温度まで昇温して焼成を行う。焼成後には、前記ガラスセラミックスグリーンシート21a〜21dはガラスセラミックス層2a〜2dとなり、前記ビアホール内の導体ペースト23はビアホール導体3になる。同様に、表面導体パターン24も表面導体4となる。
前記焼成において、各ガラスセラミックスグリーンシート21a〜21dは、焼成に伴い収縮しているが、最も外側のガラスセラミックスグリーンシート21a,21dでは前記収縮抑制用グリーンシート24の拘束力が強く働き、ほとんど収縮していない。これに対して、積層方向の中央部分のガラスセラミックスグリーンシート21b,21cは、前記収縮抑制用グリーンシート24から離れているため、その拘束力が弱く、ある程度収縮する。したがって、内部導体の周囲、例えばビアホール導体3の周囲には空隙等の欠陥が発生し易くなるが、ガラスセラミックスグリーンシートを構成するガラス成分中にAgを添加しているので、前記空隙等の欠陥の発生が確実に抑えられる。
焼成後には、図2(e)に示すように、熱膨張の差により前記収縮抑制用グリーンシート24は自然剥離され、本発明の多層セラミックス基板1が得られる。得られる多層セラミックス基板1においては、内部導体(ビアホール導体3や表面導体4)の周囲に欠陥が生ずることがなく、信頼性の高い多層セラミックス基板を実現することが可能である。
なお、前記拡散元素の拡散による欠陥防止効果は、前述の収縮抑制用グリーンシート24を配して焼成を行う無収縮焼成とした場合に大きいが、これに限らず、収縮抑制用グリーンシートを用いない場合にも同様の効果を得ることができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
実験1
先ず、CaCO、B、SiO、Al、及びAgを原料としてガラスを作製した。ガラス中に溶け込ませたAgの量は、0質量%(比較例に相当)、0.1質量%、2質量%、5質量%、8質量%、10質量%、15質量%の7種類とした。得られたガラスとセラミックス(Al)を有機ビヒクルとともに混合し、ガラスセラミックスグリーンシートを作製した。
ガラスセラミックスグリーンシートに貫通孔を形成し、ここにビアホール導体となる導体ペーストを充填して900℃で10分間焼成を行い、多層セラミックス基板を作製した。なお、導電ペーストにおいては、導電材料としてAgを含む導体ペーストを用いた。焼成は、α石英とトリジマイトを含む収縮抑制用グリーンシート(拘束層)を配し、無収縮焼成法により行った。
実験2
BaCO、B、SiO、Al、及びAgを原料としてガラスを作製した。ガラス中に溶け込ませたAgの量は、先の実験1と同様、0質量%(比較例に相当)、0.1質量%、2質量%、5質量%、8質量%、10質量%、15質量%の7種類である。得られたガラスとセラミックス(Al)を有機ビヒクルとともに混合し、ガラスセラミックスグリーンシートを作製した。このガラスセラミックスグリーンシートを用いて、実験1と同様に焼成を行い、多層セラミックス基板を作製した。
実験3
SrCO、B、SiO、Al、及びAgを原料としてガラスを作製した。ガラス中に溶け込ませたAgの量は、先の実験1と同様、0質量%(比較例に相当)、0.1質量%、2質量%、5質量%、8質量%、10質量%、15質量%の7種類である。得られたガラスとセラミックス(Al)を有機ビヒクルとともに混合し、ガラスセラミックスグリーンシートを作製した。このガラスセラミックスグリーンシートを用いて、実験1と同様に焼成を行い、多層セラミックス基板を作製した。
実験4
先ず、CaCO、B、SiO、及びAlを原料としてガラスを作製した。得られたガラスとセラミックス(Al)、及びAgを有機ビヒクルとともに混合し、ガラスセラミックスグリーンシートを作製した。なお、Agの混合量は、ガラスセラミックスグリーンシートに含まれるガラスに対して、0質量%、0.1質量%、2質量%、5質量%、8質量%、10質量%、15質量%の7種類とした。このガラスセラミックスグリーンシートを用いて、実験1と同様に焼成を行い、多層セラミックス基板を作製した。なお、本実験で作製される多層セラミックス基板は、いずれも比較例に相当するものである。
評価
前記各実験例において作製した多層セラミックス基板について、導体近傍の構造を調べた。そして、欠陥が認められなかった場合を○、欠陥が認められた場合を×として評価した。結果を表1に示す。
Figure 2007081321
この表1から明らかな通り、ガラス成分中にAgを溶け込ませることで、欠陥を解消できることがわかる。ただし、Agの添加量が多すぎると、欠陥の発生が見られる。これに対して、Agをガラスセラミックス中に混合する形で添加した場合(実験4)には、このような効果は得られなかった。
多層セラミックス基板の一例を示す概略断面図である。 多層セラミックス基板の製造プロセスを示す模式的な断面図であり、(a)はガラスセラミックスグリーンシート及び内部導体形成工程、(b)は仮スタック工程、(c)はプレス工程、(d)は焼成工程、(e)は収縮抑制用グリーンシート剥離工程を示す。
符号の説明
1 多層セラミックス基板、2a〜2d ガラスセラミックス層、3 ビアホール導体、4 表面導体、21a〜21d ガラスセラミックスグリーンシート、22 導体ペースト、23 表面導体パターン、24 収縮抑制用グリーンシート

Claims (6)

  1. 複数のガラスセラミックス層が積層されてなる多層セラミックス基板であって、
    前記ガラスセラミックス層は、ガラス成分とセラミックス成分とから構成され、前記ガラス成分中にAgが溶け込んでいることを特徴とする多層セラミックス基板。
  2. 前記ガラス成分に含まれるAgの含有量は、ガラス成分に対して0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項1記載の多層セラミックス基板。
  3. 前記セラミックス成分としてAlを含むことを特徴とする請求項1または2記載の多層セラミックス基板。
  4. 内部導体を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の多層セラミックス基板。
  5. 前記内部導体が導電材料としてAgを含有することを特徴とする請求項4記載の多層セラミックス基板。
  6. 収縮抑制プロセスにより作製されたものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の多層セラミックス基板。
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