JP2007081246A - 磁性膜及び磁気デバイス - Google Patents

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勝裕 佐藤
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研 高橋
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【課題】高周波数領域で透磁率が高く、磁気ヒステリシス損失が小さい磁性膜及び該磁性膜を有する磁気デバイスを提供する。
【解決手段】磁性膜は、コバルト及びイリジウムを含有する合金からなる磁性粒子を含有し、コバルト及びイリジウムを含有する合金の磁気異方性定数は、負である。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁性膜及び磁気デバイスに関する。
近年、個人用携帯機器や移動通信の発展に伴い、これらの機器に用いられる磁気デバイスの小型化、低価格化、高帯域化が求められており、高周波用の軟磁性材料の開発が望まれている。
高周波用の軟磁性材料は、高周波数領域において、透磁率が高いことが必要であるが、一般に、透磁率μが高いもの程、低い周波数で共鳴を起こしてμが低下することが知られている。この関係は、Snoekの限界と呼ばれる線で示される(図5参照)。なお、図5には、μの周波数特性と共に、損失tanδ/μの周波数特性が示されており、A、B、Cは、Mn−Zn系フェライト、D、Eは、Ni−Zn系フェライト、Fは、フェロクスプレーナーを示す。図5より、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライトを使用することが可能な周波数領域は、数MHzから数百MHz程度であることがわかる。しかしながら、携帯電話等の各種通信機器に用いられる周波数は、1GHz前後となっているため、これらを使用することはできない。
また、フェロックスプレーナは、Snoekの限界を超えるが、特殊な構造のフェライトであるため、薄膜化等の加工プロセスが困難であり、実用性に乏しい。また、透磁率も不十分である。
特許文献1に、強磁性を有する中心核と、めっき法によって形成された強磁性層を有する磁性多層微粒子が分散されている磁性多層微粒子分散媒体が開示されている。これにより、複素透磁率は向上するが、高周波数領域における複素透磁率は、不十分である。
さらに、従来の軟磁性材料は、磁気ヒステリシス損失が大きいため、1GHz前後の周波数で使用することができない。
特開2002−93607号公報
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、高周波数領域で透磁率が高く、磁気ヒステリシス損失が小さい磁性膜及び該磁性膜を有する磁気デバイスを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、磁性膜において、コバルト及びイリジウムを含有する合金からなる磁性粒子を含有し、該合金の磁気異方性定数は、負であることを特徴とする。これにより、高周波数領域で透磁率が高く、磁気ヒステリシス損失が小さい磁性膜を提供することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の磁性膜において、前記コバルト及び前記イリジウムの総原子数に対する前記イリジウムの原子数の比は、3%以上30%以下であることを特徴とする。これにより、高周波数領域で透磁率が高く、磁気ヒステリシス損失が小さい磁性膜が得られる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の磁性膜において、前記合金は、アルミニウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金及び金からなる群より選択される元素をさらに含有することを特徴とする。これにより、磁性膜の磁気特性や耐食性を向上させることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁性膜において、誘電体をさらに含有することを特徴とする。これにより、磁性膜の渦電流損失を減少させることができる。
請求項5に記載の発明は、磁気デバイスにおいて、基板上に、少なくとも、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の磁性膜が形成されていることを特徴とする。これにより、高周波数領域で透磁率が高く、磁気ヒステリシス損失が小さい磁気デバイスを提供することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の磁気デバイスにおいて、前記基板上に、下地膜がさらに形成されていることを特徴とする。これにより、高周波数領域で透磁率がさらに高い磁気デバイスが得られる。
本発明によれば、高周波数領域で透磁率が高く、磁気ヒステリシス損失が小さい磁性膜及び該磁性膜を有する磁気デバイスを提供することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
まず、磁気異方性定数が負である磁性体が有する効果について、以下説明する。
従来の強磁性体は、磁気ヒステリシス損失が大きいため、高周波数領域で使用することができない。そこで、強磁性体の粒子径を小さくして、超常磁性体とすることが考えられる。これにより、磁気ヒステリシス損失は、生じない。このとき、超常磁性体とするためには、自然共鳴周波数fが使用周波数fより大きいこと(条件1)及び超常磁性を示すこと(条件2)を満たす必要がある。強磁性体として、磁気異方性定数Kuが正である超常磁性体を用いる場合、ジャイロ磁気定数をγ(=1.105×10g[m/A・s](g=2))、飽和磁化をMsとすると、条件1から、
=γKu/(πMs)>f
となる。また、ボルツマン定数をk、温度をT、磁性体の体積をV、特性緩和周波数をfとすると、条件2から、
f<fexp(−KuV/(kT))
となる。また、Kuが正であるので、磁化率χは、
χ=VMs/(3kT)
となる。これらを整理すると、
χ<(γMs/(3πf))ln(f/f)
となる。ここで、T=300[K]、f=1[GHz]、f=1010[Hz]、Ms=1400[emu/cc]とすると、磁化率の最大値χmaxは、6となり、比透磁率の最大値μmaxは、76となる。
一方、Kuが負である磁性体の場合、磁化が特定の結晶面(六方晶構造(hcp)では、c面)に束縛されるため、超常磁性と強磁性の間で、磁化がある結晶面のみで二次元的に自由に回転する状態(条件3)が存在する。なお、このような磁性体となるためには、上記の条件1を同時に満たす必要がある。この場合、c面内の磁気異方性定数をKとすると、条件1から、
=γ(18|Ku|K1/2/(πMs)
となる。また、条件3から、
2KV<<kT<<|Ku|V
となり、これより、
f<fexp(−2KV/(kT))
となる。また、Kuが負であるので、磁化率χは、
χ=VMs/(2kT)
となる。これらを整理すると、
χ<(9γ|Ku|/(2π))ln(f/f)
となる。ここで、T=300[K]、f=1[GHz]、f=1010[Hz]、Ms=1000[emu/cc]、Ku=−5×10[erg/cc]とすると、磁化率の最大値χmaxは、1626となり、比透磁率の最大値μmaxは、20434となる。
以上のように、強磁性体として、Kuが負である磁性体を用いた場合に、Kuが正である超常磁性体を用いた場合と比較して大きいμが得られることがわかる。
本発明の磁性膜は、Co及びIrを含有する合金からなる磁性粒子を含有し、Co及びIrを含有する合金の磁気異方性定数は、負である。これにより、高周波数領域で透磁率が高く、磁気ヒステリシス損失が小さい磁性膜を得ることができる。
本発明の磁性膜において、Co及びIrの総原子数に対するIrの原子数の比は、3〜30%であることが好ましく、5〜30%がさらに好ましく、7〜30%が特に好ましい。図1に、Co−Ir合金のIr含有量と結晶磁気異方性定数Kugrainの関係を示す。このとき、Co−Ir合金粒子の結晶磁気異方性定数Kugrainは、直接評価することができない。このため、Co−Ir合金の結晶磁気異方性定数Kugrainは、Co−Ir合金の球状単結晶(六方晶構造)をブリッジマン法(1500℃)で作製し、半径6mmの球体に研磨加工したものを、TM−TR2050−HGC(玉川製作所社製)を用いて、飽和トルク法により、測定した。
また、前述したように、
f<fexp(−2KV/(kT))
であるため、磁性体の体積Vは、
V<(−kT/2K)ln(f/f
となる。ここで、k=1.38×10−16[erg/K]、f=1[GHz]、f=1010[Hz]、K〜10[erg/cc]、T=300[K]とすると、
V<4.766×10−17[cc]
となる。磁性体を直径R[nm]の球とすると、
R<45[nm]
となる。
また、前述したように、
χ=VMs/(2kT)
である。ここで、磁性体を直径R[nm]の球とし、Ms=1000[emu/cc]、k=1.38×10−16[erg/K]、T=300[K]とすると、
χ=6.32×10−3
となる。透磁率μは、
μ=4πχ+μ(μは、真空の透磁率;μ=1)
であるため、R=1[nm]のとき、
μ=1.079
となり、R=2[nm]のとき、
μ=1.63
となり、R=3[nm]のとき、
μ=3.14
となる。透磁率μは、真空の透磁率μより十分大きい必要があるため、磁性体の直径R[nm]は、
R≧2[nm]
であることが好ましい。
本発明の磁性膜において、磁性粒子の平均粒子径は、2〜50nmであることが好ましく、2〜20nmがさらに好ましい。磁性粒子の平均粒子径が2nm未満になると、高周波数領域で透磁率が高い磁気デバイスを形成することができなくなることがある。一方、磁性粒子の平均粒子径が50nmを超えると、高周波数領域で磁気ヒステリシス損失が大きくなることがある。なお、磁性粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡等を用いて測定することができる。
本発明の磁性膜において、Co及びIrを含有する合金は、B、C、N及びOからなる群より選択される一種以上の元素をさらに含有してもよい。これにより、粒子径の微細化及び磁気特性の改善をすることができる。
本発明の磁性膜において、Co及びIrを含有する合金は、Al、Ti、V、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Pt及びAuからなる群より選択される元素をさらに含有することが好ましい。中でも、Co及びIrを含有する合金は、Feを含有することが好ましい。なお、合金中の、Al、Ti、V、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Pt及びAuからなる群より選択される元素の組成比は、0〜5%であることが好ましい。これにより、磁性膜の磁気特性や耐食性を向上させることができる。
本発明の磁性膜は、誘電体をさらに含有することが好ましい。これにより、グラニュラー膜を形成することができる。誘電体としては、SiO、Al等のセラミックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリイミド、エポキシ樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
本発明の磁気デバイスは、基板上に、少なくとも、本発明の磁性膜が形成されている。このとき、基板上には、下地膜がさらに形成されていることが好ましい。下地膜上に本発明の磁性膜を形成することにより、磁性膜に含まれるCo及びIrを含有する合金からなる磁性粒子の結晶構造を制御することができる。例えば、磁性粒子として、Co−Ir合金粒子を用いる場合には、下地膜として、面心立方格子(fcc)の(111)面又は体心立方格子(bcc)の(001)面を膜面とする金属膜を形成すると、Co−Ir合金粒子の六方晶構造(hcp)のc面が膜面に平行に配向している磁性膜を形成することができる。これにより、高周波数領域における透磁率を向上させることができる。
また、本発明の磁気デバイスは、磁性膜上に保護膜がさらに形成されていてもよい。保護層としては、Ta、Hf、Si、Au、Pt、Ag、Ti、Cr、Al、Siの窒化物、Siの酸化物、Alの酸化物、Alの窒化物、SiC、C、ダイヤモンドライクカーボン、これらの混合物若しくはこれらの合金からなる単層膜又は多層膜を用いることができる。これにより、磁性膜を大気から遮断することができ、磁性膜の耐食性が向上する。
本発明の磁性膜は、スパッタリング法、真空蒸着法等を用いて形成することができる。
以下、本発明の磁性膜の形成方法の一例として、スパッタリング法を用いて、Co−Ir合金粒子を含有する磁性膜(図2及び図3参照)を形成する方法について説明する。
まず、基板1上に、スパッタ条件を適宜選択して、Ta膜2、Pt膜3及びRu膜4を順次積層する。このような積層構造とすることにより、六方格子(hcp)の(001)面を膜面とするRu膜4を形成することができ、Ru膜4と基板との接着性を向上させることができる。このとき、Ta膜2、Pt膜3及びRu膜4の膜厚は、それぞれ独立に、1〜100nmであることが好ましい。さらに、Ru膜4上に、スパッタ条件を適宜選択して、Co−Ir合金粒子を含有する磁性膜5を形成することにより、本発明の磁気デバイスを得ることができる。なお、図2では、Co−Ir合金粒子5a及びSiO(マトリックス)5bからなる磁性膜(グラニュラー膜)5、図3では、Co−Ir合金粒子からなる磁性膜5が形成されている。
また、本発明の磁性膜は、ポリオール法により合成されたCo及びIrを含有する合金からなる磁性粒子を用いて形成することができる。
以下、本発明の磁性膜の形成方法の他の例として、ポリオール法により合成されたCo−Ir合金からなる磁性粒子を用いて、Co−Ir合金粒子を含有する磁性膜を形成する方法について説明する。
Co−Ir合金からなる磁性粒子は、Co−Ir合金粒子を構成するCo及びIrの前駆体を溶媒中に分散し、加熱することにより合成することができる。Coの前駆体としては、Co(CO)、Co(acac)、Co(acac)、CoCl等を用いることができる。また、Irの前駆体としては、IrCl、IrCl、Ir(acac)、HIrCl等を用いることができる。溶媒としては、トリメチレングリコール(TMEG)、テトラエチレングリコール(TEG)、プロピレングリコール(PG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)等を用いることができる。また、加熱温度は、80〜350℃であることが好ましく、加熱時間は、10分〜5時間であることが好ましい。なお、加熱時には、Co及びIrの前駆体が溶解し、それぞれCo(0)及びIr(0)に還元されることにより、磁性粒子の核が形成され、その後、粒子が成長する。
このようにして合成された磁性粒子は、アルコール等を用いて洗浄した後、遠心分離することにより、単離することができる。なお、遠心分離の際に、分級することもできる。また、単離された磁性粒子は、溶媒中で再分散することができる。このとき、界面活性剤を添加して再分散してもよい。
このようにして再分散された磁性粒子を、単独又は誘電体と共に分散させた分散液を固形化することにより、磁性膜を形成することができる。
(実施例1)
スパッタガスとして、Arを用い、表1に示すスパッタ条件で、基板1上に、膜厚5nmのTa膜2、膜厚6nmのPt膜3及び膜厚50nmのRu膜4を順次積層した(図2参照)。
Figure 2007081246
RIX2100(リガク社製)を用いて、X線回折(XRD)により、Ru膜4の構造を解析したところ、六方格子(hcp)の(001)面を膜面とするRu膜4が形成されていることがわかった。さらに、スパッタガスとして、Arを用い、Co−SiOターゲット及びIrターゲットを用いて、表1に示すスパッタ条件で、Ru膜4上に、Co−Ir合金粒子5a及びSiO(マトリックス)5bからなる膜厚10nmの磁性膜(グラニュラー膜)5を形成し、磁気デバイスを作製した。
RIX2100(リガク社製)を用いて、X線回折(XRD)により、Co−Ir合金粒子5aの構造を解析したところ、六方晶構造(hcp)であった。
Co−Ir合金粒子5aの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡JEM−3010型(日本電子社製)を用いて、300kVの加速電圧で明視野像を観測することにより、測定した。その結果、Co−Ir合金粒子5aの平均粒子径は、5nmであった。
振動試料型磁力計(VSM)BHV−50HM(理研電子社製)を用いて、磁性膜(グラニュラー膜)5の磁気ヒステリシスを測定したところ、磁気ヒステリシス損失が無いことがわかった(図4参照)。
TM−TR2050−HGC(玉川製作所社製)を用いて、飽和トルク法により、磁性膜(グラニュラー膜)5の結晶磁気異方性定数を測定したところ、結晶磁気異方性定数Kugrainは、−5×10erg/ccであった。
透磁率計PMM−9G1(凌和電子社製)を用いて、磁性膜(グラニュラー膜)5の透磁率を測定した。
Co−Ir合金のIr含有量とKugrainの関係を示す図である。 本発明の磁気デバイスの一例を示す図である。 本発明の磁気デバイスの他の例を示す図である。 実施例1の磁性膜(グラニュラー膜)の磁化曲線を示す図である。 従来の軟磁性材料の透磁率の周波数特性を示す図である。
符号の説明
1 基板
2 Ta膜
3 Pt膜
4 Ru膜
5 磁性膜
5a Co−Ir合金粒子
5b SiO

Claims (6)

  1. コバルト及びイリジウムを含有する合金からなる磁性粒子を含有し、
    該合金の磁気異方性定数は、負であることを特徴とする磁性膜。
  2. 前記コバルト及び前記イリジウムの総原子数に対する前記イリジウムの原子数の比は、3%以上30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁性膜。
  3. 前記合金は、アルミニウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金及び金からなる群より選択される元素をさらに含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁性膜。
  4. 誘電体をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁性膜。
  5. 基板上に、少なくとも、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の磁性膜が形成されていることを特徴とする磁気デバイス。
  6. 前記基板上に、下地膜がさらに形成されていることを特徴とする請求項5に記載の磁気デバイス。
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