<第1の参考例>
以下、第1の参考例を図1乃至図5に沿って説明する。図1は第1の参考例に係る自動変速機を示す断面展開図、図2は第1の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す断面図、図3は第1の参考例に係る自動変速機を示すスケルトン図、図4は第1の参考例に係る自動変速機の作動表、図5は第1の参考例に係る自動変速機の速度線図である。
第1の参考例に係る自動変速機11は、特にFF(フロントエンジン、フロントドライブ)車輌に用いて好適であって、図1に示すように、ハウジングケース3a及びミッションケース3bからなるケース3を有しており、該ハウジングケース3a内にトルクコンバータ12、該ミッションケース3b内に自動変速機構21、カウンタシャフト部(駆動車輪伝達機構)4、及びディファレンシャル部(駆動車輪伝達機構)5が配置されている。該トルクコンバータ12は、例えばエンジン(不図示)の出力軸10と同軸上である自動変速機構21の入力軸20を中心とした軸上に配置されており、該自動変速機構21は、該エンジンの出力軸10、即ち、該入力軸20と同軸上である中心軸30を中心とした軸上に配置されている。また、カウンタシャフト部4は、それら入力軸20及び中心軸30と平行な軸上であるカウンタシャフト52上に配置されており、ディファレンシャル部5は、該カウンタシャフト52と平行な軸上に不図示の左右車軸を有する形で配置されている。
なお、図1に示す断面展開図は、自動変速機11を平面的に展開して示しているものであって、上記入力軸20及び中心軸30と、カウンタシャフト52と、不図示の左右車軸とは、側面視くの字状の位置関係であり、特に図1における符号12’は、カウンタシャフト52に対するトルクコンバータの位置関係を示しているものである。
上記エンジンの出力軸10には、ディスク状部材11が配置されており、該ディスク状部材11の外周側がトルクコンバータ12のポンプインペラ12aに接続されている。また、トルクコンバータ12のタービンランナ12bがその内周側にて、トルク変動を吸収するダンパ装置13に接続されており、該ダンパ装置13の外周側が、上記ポンプインペラ12aに係合自在であるロックアップクラッチのピストン部材14に接続され、更に該ピストン部材14が上記自動変速機構21の入力軸20に接続されている。つまり、該ピストン部材14がポンプインペラ12aに対して係合していない状態では、トルクコンバータ12を介して上記入力軸20に不図示のエンジンのトルクが伝達され、該ピストン部材14がポンプインペラ12aに対して係合している状態では、上記出力軸10と入力軸20とが直結状態となって、エンジンのトルクが直接的に入力軸20に伝達される。
ついで、自動変速機構21について図2に沿って説明する。図2に示すように、上記入力軸20のトルクコンバータ12とは反対側の一端には、その内周側にスプライン20sが形成されており、中心軸30の一端外周側に形成されているスプライン30sに係合して、つまり入力軸20と中心軸30とが回転方向に接続されている。該中心軸30上には、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤ(減速回転出力手段、減速プラネタリギヤ)PRとを有している。該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤ(第2の回転要素、第3のサンギヤ)S2、キャリヤ(第3の回転要素、第2のキャリヤ)CR2、リングギヤ(第4の回転要素、第2のリングギヤ)R2、及びサンギヤ(第1の回転要素、第2のサンギヤ)S3を有し、該キャリヤCR2に、側板42,44に支持されてサンギヤS3及びリングギヤR2に噛合するロングピニオンPLと、側板43,44に支持されてサンギヤS2に噛合するショートピニオンPSとを、互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。また、上記プラネタリギヤPRは、キャリヤ(入力回転要素、第1のキャリヤ)CR1に、リングギヤR1(出力回転要素、第1のリングギヤ)に噛合するピニオンP1及びサンギヤ(固定要素、第1のサンギヤ)S1に噛合するピニオンP2を互いに噛合する形で有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
上記入力軸20上には、内周側に、油圧サーボ62、摩擦板72、クラッチドラム(第1のクラッチドラム)を形成するハブ部材22及びドラム状部材21、サンギヤS2に連結されるハブ部材(第2の回転要素に連結する部材)23、を有する多板式クラッチ(第1のクラッチ)C1と、その外周側に、油圧サーボ61、摩擦板71、クラッチドラム(第2のクラッチドラム)を形成するハブ部材24及びシリンダ部材61e、キャリヤCR2に連結されるハブ部材25、を有する多板式クラッチ(第2のクラッチ)C2と、が配置されている。
該油圧サーボ62は、摩擦板72を押圧するためのピストン部材(第1のピストン)62bと、シリンダ部62eを有するドラム状部材21、該ピストン部材62bと該シリンダ部62eとの間にシールリング62f,62gによってシールされて形成される油室(第1の油圧サーボ用油室)62aと、該ピストン部材62bを該油室62aの方向に付勢するリターンスプリング62cと、該リターンスプリング62cの付勢を受け止めるリターンプレート62dと、により構成されている。該油室62aは、上記入力軸20に形成されている油路20a,20bと連通しており、該油路20aは、ケース3の一端に延設され、入力軸20上にスリーブ状に設けられているボス部3cの油路91に連通している。そして、該油路91は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ62は、入力軸20上に配置されているため、ケース3のボス部3cと入力軸20との間をシールする1対のシールリング81によって、不図示の油圧制御装置から油室62aまでの油路が構成されている。
また、該油圧サーボ61は、摩擦板71を押圧するためのピストン部材(第2のピストン)61bと、シリンダ部材61e、該ピストン部材61bと該シリンダ部材61eとの間にシールリング61f,61gによってシールされて形成される油室(第2の油圧サーボ用油圧室)61aと、該ピストン部材61bを該油室61aの方向に付勢するリターンスプリング61cと、該リターンスプリング61cの付勢を受け止めるリターンプレート61dと、により構成されている。該油室61aは、上記ボス部3cの油路92に連通しており、該油路92は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ61は、ケース3のボス部3cとシリンダ部材61eとの間をシールする1対のシールリング80によって、不図示の油圧制御装置から油室61aまでの油路が構成されている。
即ち、上記入力軸20には、上記ドラム状部材21が接続されており、該ドラム状部材21の外周側には、上記ハブ部材22が接続されている。該ハブ部材22の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ62によって係合自在となっているクラッチC1がスプライン係合する形で配置されており、該クラッチC1の内周側がハブ部材23にスプライン係合する形で接続されている。そして、該ハブ部材23の内周側が、中心軸30上に回転自在に設けられたスリーブ部材(第2の回転要素に連結する部材)26の一端に接続されており、該スリーブ部材26の他端の先端部外周側に上記サンギヤS2が一体的に形成されている。
また、上記ハブ部材22の先端部外周側には、クラッチC2用油圧サーボ61により係合自在となっているクラッチC2がスプライン係合する形で配置されており、該クラッチC2の外周側には、ドラム状部材24がその内周側にてスプライン係合する形で接続されている。該ドラム状部材24の一端(図中右方側)外周側には、上記ミッションケース3bとの間にワンウェイクラッチ(第1のワンウェイクラッチ)F3が配置されており、該ドラム部材24の回転を一方向に対して規制している。また、該ドラム状部材の他端(図中左方側)の内周側には、接続部材25がスプライン係合する形で接続されており、上記キャリヤCR2の側板44に接続されている。
一方、中心軸30上には、油圧サーボ66、摩擦板76、クラッチドラム(第3のクラッチドラム)を形成するハブ部材32及びドラム状部材31、キャリヤCR1に連結されるハブ部材33、を有する多板式クラッチ(第3のクラッチ、減速回転出力手段)C3が配置されている。該油圧サーボ66は、摩擦板76を押圧するためのピストン部材66bと、シリンダ部66eを有するドラム状部材31、該ピストン部材66bと該シリンダ部66eとの間にシールリング66f,66gによってシールされて形成される油室66aと、該ピストン部材66bを該油室66aの方向に付勢するリターンスプリング66cと、該リターンスプリング66cの付勢を受け止めるリターンプレート66dと、により構成されている。なお、ハブ部材32及びドラム状部材31からなるクラッチドラムは、プラネタリギヤPRの方向に開口しており、該プラネタリギヤPRは、油圧サーボ66とプラネタリギヤユニットPUとの軸方向の間に配置されている。また、摩擦板76がプラネタリギヤPRの径方向外径側に重なる位置に配置されている。
該油室66aは、ケース3の、上記ボス部3cとは反対側の他端に延設され、中心軸30上にスリーブ状に設けられているボス部3dの油路93に連通しており、該油路93は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ66は、ケース3のボス部3dとシリンダ部66eを有するドラム状部材61との間をシールする1対のシールリング82によって、不図示の油圧制御装置から油室66aまでの油路が構成されている。
即ち、上記入力軸20に接続されている中心軸30には、該入力軸20とは反対側(図中左方側)において、ドラム状部材31が接続されており、該ドラム状部材31の外周側には、ハブ部材32が接続されている。該ハブ部材32の先端部内周側には、クラッチC3用油圧サーボ66により係合自在となっているクラッチC3がスプライン係合する形で配置されており、該クラッチC3の内周側には、上記キャリヤCR1の側板33の延設部分がスプライン係合する形で配置されている。該キャリヤCR1は、該側板33と側板34とにより支持している上記ピニオンP1及びピニオンP2を有しており、該ピニオンP2は、スリーブ状に形成されて軸上に回転自在に配置されているサンギヤS1に噛合している。該サンギヤS1の一端には、ハブ部材35が接続されており、該ハブ部材35の外周側には、ブレーキB1用油圧サーボ65及び摩擦板75を有して、該油圧サーボ65により係止自在となっている多板式ブレーキ(第1のブレーキ)B1が、その摩擦板75がスプライン係合する形で配置されている。そして、該ブレーキB1の摩擦板75の外周側は、上記ミッションケース3bの内周側に形成されているスプライン3sにスプライン係合している。
また、上記ピニオンP1は、上述のようにリングギヤR1に噛合しており、該リングギヤR1の内周側一端には、上記中心軸30上に回転自在に支持され、該リングギヤR1の回転を伝達する伝達部材(減速回転出力手段)401が接続されている。該伝達部材401のリングギヤR1に接続されている部分の反対側(図中右方側)には、その外周側にスプライン40sが形成されており、該スプライン40sには、(図中左方側において)ハブ部材46がスプライン係合していると共に、(図中右方側において)スリーブ部材411がスプライン係合している。該ハブ部材46の外周側には、ブレーキB2用油圧サーボ64及び摩擦板74を有して、該油圧サーボ64により係止自在となっているブレーキ(第2のブレーキ)B2が、その摩擦板74がスプライン係合する形で配置されており、該ブレーキB2の摩擦板74の外周側は、上記ブレーキB1と同様に、上記ミッションケース3bの内周側に形成されているスプライン3sにスプライン係合している。
上記スリーブ部材411の内周側には、上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3が一体的に形成されており、該サンギヤS1には、上述のようにキャリヤCR2の側板42及び側板44に支持されているロングピニオンPLが噛合している。また、該側板44と側板43との間には、上述のようにショートピニオンPSが支持されており、該側板43の外周側には、ハブ部材47が接続されている。該ハブ部材47の外周側には、ブレーキB4用油圧サーボ63及び摩擦板73を有して、該ブレーキB4用油圧サーボ63により係止自在となっているブレーキ(第3のブレーキ)B4が、その摩擦板73がスプライン係合する形で配置されており、該ブレーキB4の摩擦板73の外周側は、上記ブレーキB1及びブレーキB2と同様に、上記ミッションケース3bの内周側に形成されているスプライン3sにスプライン係合している。
そして、上記ロングピニオンPLには、上述のようにリングギヤR2が噛合しており、該リングギヤR2の一端には連結部材45が接続されて、該リングギヤR2が該連結部材45を介してカウンタギヤ50に連結されている。該カウンタギヤ50には、図1に示すように、上記カウンタシャフト部4のカウンタシャフト52上に固定されているギヤ51が噛合しており、該カウンタシャフト52には、外周面上に形成されているギヤ52aを介してディファレンシャル部5のギヤ53が噛合している。そして、該ギヤ53は、ハウジング54に固定されており、該ハウジング54がディファレンシャルギヤ55を介して不図示の左右車軸に接続されている。
以上説明したように、入力軸20上においてクラッチC1及びクラッチC2が配置され、中心軸30上においてカウンタギヤ50、プラネタリギヤユニットPU、プラネタリギヤPRが順に配置されており、つまり、プラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側にプラネタリギヤPRが、軸方向他方側にクラッチC1及びクラッチC2が、クラッチC1及びクラッチC2とプラネタリギヤユニットPUとの間にカウンタギヤ50が配置されている。また、クラッチC3及びブレーキB1はプラネタリギヤPRの外周側に、ブレーキB2及びブレーキB4はプラネタリギヤユニットPUの外周側に、それぞれ配置されている。また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50は、入力軸20と同軸上に設けられて構成されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機11の作用について図3、図4及び図5に沿って説明する。なお、図5に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図5中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はキャリヤCR2、リングギヤR2、サンギヤS2に対応している。
図3に示すように、上記サンギヤS2には、クラッチC1が係合することにより入力軸20の回転が入力される。上記キャリヤCR2には、クラッチC2が係合することにより入力軸20の回転が入力されると共に、該キャリヤCR2は、ブレーキB4の係止により回転が固定自在となっており、また、ワンウェイクラッチF3により一方向の回転が規制されている。
一方、上記キャリヤCR1には、クラッチC3が係合することにより入力軸20の回転が入力され、上記サンギヤS1は、ブレーキB1の係止により回転が固定自在となっている。上記リングギヤR1は、伝達部材401及びスリーブ部材411により上記サンギヤS3に接続されており、該リングギヤR1及びサンギヤS3は、ブレーキB2の係止により回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR2の回転は、上記カウンタギヤ50に出力され、該カウンタギヤ50、上記カウンタシャフト部4及びディファレンシャル部5(図1参照)を介して不図示の駆動車輪に出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進1速段では、図4に示すように、クラッチC1及びワンウェイクラッチF3が係合される。すると、図5に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2に入力軸20の回転が入力されると共に、キャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。そして、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進1速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、上記プラネタリギヤPRにおいて、サンギヤS3を介してリングギヤR1に逆転した減速回転が出力され、かつブレーキB1の係止によりサンギヤS1が固定されているが、クラッチC3が解放されているため、キャリヤCR1が空転状態であって、特にトルク伝達は行われない。また、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB4を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。
なお、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF3によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチの自動係合により滑らかに行うことができる。また、該ワンウェイクラッチF3は、サンギヤS2を介して入力軸20の回転を受け止める形であり、例えば減速回転を受け止める場合に比して作用するトルクが小さいため、該ワンウェイクラッチF3や、該ワンウェイクラッチF3とクラッチC2とを接続するドラム状部材24などを大きくする必要がない。
D(ドライブ)レンジにおける前進2速段では、図4に示すように、クラッチC1が係合され、ブレーキB2が係止される。すると、図5に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2に入力軸20の回転が入力されると共に、ブレーキB2の係止によりサンギヤS3が固定される。それにより、キャリヤCR2が僅かに減速回転し、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転が、該減速回転のキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進2速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、上記プラネタリギヤPRにおいて、サンギヤS3及びリングギヤR1は、ブレーキB2の係止により固定されており、クラッチC3が解放されているため、キャリヤCR1及びサンギヤS1は停止状態である。
D(ドライブ)レンジにおける前進3速段では、図4に示すように、クラッチC1及びクラッチC3が係合され、ブレーキB1が係止される。すると、図5に示すように、クラッチC3を介してキャリヤCR1と、クラッチC1を介してサンギヤS2と、に入力軸20の回転が入力されると共に、ブレーキB1の係止によりサンギヤS1が固定される。それにより、キャリヤCR1に入力された入力軸20の回転と、固定されたサンギヤS1とによりリングギヤR1が減速回転し、上記伝達部材401及びスリーブ部材411を介してサンギヤS3に該減速回転が出力される。すると、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転と、サンギヤS3の減速回転とによりキャリヤCR2が、該サンギヤS3の減速回転より僅かに大きな減速回転となる。そして、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転が、該減速回転のキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進3速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材401及びスリーブ部材411は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進4速段では、図4に示すように、クラッチC1及びクラッチC2が係合される。すると、図5に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2と、クラッチC2を介してキャリヤCR2とに入力軸20の回転が入力される。それにより、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転と、キャリヤCR2に入力された入力軸20の回転とにより、つまり直結回転の状態となってリングギヤR2に入力軸20の回転がそのまま出力され、前進4速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、上記プラネタリギヤPRにおいて、クラッチC3を介してキャリヤCR1に入力軸20の回転が入力され、また、リングギヤR1にサンギヤS3からの入力軸20の回転(直結回転)が入力されるが、ブレーキB1が解放されており、サンギヤS1が空転状態であって、特にトルク伝達は行われない。
D(ドライブ)レンジにおける前進5速段では、図4に示すように、クラッチC2及びクラッチC3が係合され、ブレーキB1が係止される。すると、図5に示すように、クラッチC3を介してキャリヤCR1と、クラッチC2を介してキャリヤCR2と、に入力軸20の回転が入力されると共に、ブレーキB1の係止によりサンギヤS1が固定される。それにより、キャリヤCR1に入力された入力軸20の回転と、固定されたサンギヤS1とによりリングギヤR1が減速回転し、上記伝達部材401及びスリーブ部材411を介してサンギヤS3に該減速回転が出力される。すると、サンギヤS3の減速回転と、入力軸20の回転が入力されたキャリヤCR2とにより、増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進5速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、上記前進3速段の状態と同様に、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材401及びスリーブ部材411は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進6速段では、図4に示すように、クラッチC2が係合され、ブレーキB2が係止される。すると、図5に示すように、クラッチC2を介してキャリヤCR2に入力軸20の回転が入力されると共に、ブレーキB2の係止によりサンギヤS3が固定される。それにより、キャリヤCR2に入力された入力軸20の回転と固定されたサンギヤS2とにより、(上記前進5速段よりも大きな)増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進6速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、上記プラネタリギヤPRにおいて、上記前進2速段の状態と同様に、サンギヤS3及びリングギヤR1は、ブレーキB2の係止により固定されており、クラッチC3が解放されているため、キャリヤCR1及びサンギヤS1は停止状態である。
R(リバース)レンジにおける後進1速段では、図4に示すように、クラッチC3が係合され、ブレーキB1及びブレーキB4が係止される。すると、図5に示すように、クラッチC3を介してキャリヤCR1に入力軸20の回転が入力されると共に、ブレーキB1の係止によりサンギヤS1と、ブレーキB4の係止によりキャリヤCR2とが固定される。それにより、キャリヤCR1に入力された入力軸20の回転と、固定されたサンギヤS1とによりリングギヤR1が減速回転し、上記伝達部材401及びスリーブ部材411を介してサンギヤS3に該減速回転が出力される。すると、サンギヤS3の減速回転と固定されたキャリヤCR2とにより、逆転回転としてリングギヤR2に出力され、後進1速段としての逆転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、上記前進3速段や前進5速段の状態と同様に、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材401及びスリーブ部材411は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
また、この際、ブレーキB4は、減速回転が入力されるサンギヤS3の回転を受け止める形であるが、該ブレーキB4をプラネタリギヤユニットPUの外周側において、比較的近くに配置しているので、該減速回転に基づくトルクを伝達するハブ部材47を比較的短くすることができる。
P(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、特にクラッチC1、クラッチC2及びクラッチC3が解放されており、入力軸20とカウンタギヤ50との間の動力伝達が切断状態であって、自動変速機構21全体としては空転状態(ニュートラル状態)となる。なお、サンギヤS1を固定するブレーキB1が係止されているが、これは該ブレーキB1の頻繁な係止・解放の繰り返しを防止するものであって、特に自動変速機構21内のその他の回転要素の回転状態に影響を与えるものではない。
なお、上記自動変速機11において、上記クラッチC3は、上述のように前進3速段、前進5速段、及び後進1速段の状態で係合し、入力軸20の回転をキャリヤCR1に入力しているが、これに限らず、クラッチC3をリングギヤR1とサンギヤS3との間に介在させて、キャリヤCR1を入力軸20に常時接続状態とし、上記前進3速段、前進5速段、及び後進1速段の状態で該クラッチC3を係合するようにしても、同様にプラネタリギヤPR、クラッチC3、及び伝達部材401により減速回転をサンギヤS3に出力することができ、同様に前進6速段、後進1速段を得ることができる。しかしながら、この際のクラッチC3は、減速回転を接・断するものとなり、入力軸20の回転を接・断する上記実施の形態のものよりも、大きなトルクを接・断する必要があるため、比較的大きなものにする必要がある。
以上のように、参考例に係る自動変速機11によると、減速回転出力手段としてのプラネタリギヤPR、クラッチC3、及び伝達部材401をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側(図1、図2及び図3中左方側)に配置し、クラッチC1及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側(図1、図2及び図3中右方側)に配置し、更に、出力部材としてのカウンタギヤ50をクラッチC1及びクラッチC2とプラネタリギヤユニットPUとの間に配置したので、特にプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して位置に配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材401及びスリーブ部材411の軸方向の長さを比較的短くすることができる。それにより、自動変速機11のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、伝達部材401及びスリーブ部材411の軽量化によってイナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機11の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC2は、クラッチC1の外周側を通ってキャリヤCR2に連結されるので、各回転要素の連結のための部材の錯綜を防止でき、自動変速機11をコンパクト化することができる。
更に、クラッチC1は、その外周側にクラッチC2が配置される構造であり、外周側に拡径することができないが、油圧サーボ62を入力軸20上に設けることによって、(例えばボス部3c上に設ける場合より)該油圧サーボ62、特に油圧サーボ62用油室62aの受圧面積を内周側に大きく確保することができ、クラッチC1の容量を増大させることができる。
また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50を入力軸20と同軸上に設けるので、特に自動変速機11をFF車両に搭載した場合には、(例えば減速プラネタリギヤなどを他軸上に設ける場合に比して)駆動車輪伝達機構(例えばカウンタシャフト部4など)をコンパクト化することができ、例えば車体メンバとの干渉を防止することができ、自動変速機11の車両搭載性を向上させることができる。
また、例えば特開2001−263438号公報などに開示されているように、クラッチC3を、リングギヤR1とサンギヤS3との間に介在させると、減速回転を接・断する必要があり、比較的大きなものになってしまい、かつプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間が広がってしまうが、入力軸20とキャリヤCR1との間に介在させることで、該クラッチC3による入力軸20の回転の接・断によってプラネタリギヤPRのリングギヤR1から出力される減速回転を接・断するので、クラッチC3をコンパクト化することができ、かつプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを比較的近い位置に配置することができる。それにより自動変速機11をコンパクト化することができる。
また、油圧サーボ62は入力軸20上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81で漏れ止めして入力軸20内に設けられた油路20a,20bに油を供給することで、例えば入力軸20との油圧サーボ62との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ62の油室62aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ61,66は、それぞれケース3から延設されたボス部3c,3dから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング80,82をそれぞれ設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ62,61,66には、それぞれ1対のシールリング81,80,82を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機11の効率を向上させることができる。
また、摩擦板76がプラネタリギヤPRの径方向外周側に配置されるので、自動変速機11を軸方向にコンパクト化することができる。また、プラネタリギヤPRをクラッチC3の油圧サーボ66とプラネタリギヤユニットPUとの軸方向の間に配置することによって、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを隣接して配置することができるため(クラッチC3の油圧サーボ66がプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にないため)、伝達部材401及びスリーブ部材411を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機11のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機11の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、プラネタリギヤPRは、ダブルピニオンプラネタリギヤであるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができると共に、自動変速機11のギヤ比を良好に設定したとしても、プラネタリギヤユニット、減速プラネタリギヤの各回転要素を大きくすることがなく、高回転をも抑制できるため、自動変速機11をコンパクトにすることができる。
更に、プラネタリギヤPRは、入力回転要素であるキャリヤCR1と、固定要素であるサンギヤS1と、出力回転要素であるリングギヤR1と、を有して構成されるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができる。
また、プラネタリギヤユニットPUは、サンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2により構成されるラビニヨ型プラネタリギヤであるので、例えば前進6速段、後進1速段を可能にすることができるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材401及びスリーブ部材411を比較的短くすることができる。
また、ブレーキB4と並列に配置され、キャリヤCR2の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF3を備えているので、正駆動時の前進1速段をクラッチC1とワンウェイクラッチF3の係合で達成できるため、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を滑らかに行うことができる。
更に、ブレーキB4をプラネタリギヤユニットPUの外周側に配置し、ワンウェイクラッチF3をクラッチC2に隣接させて配置するので、ワンウェイクラッチF3は前進1速段達成時に入力軸の回転を入力するクラッチC1と共に係合されるのに対し、ブレーキB4は減速回転を接・断するためのクラッチC3と共に係合することで後進1速段を達成するものであることから、ブレーキB4に作用する反力トルクは、ワンウェイクラッチF3に作用する反力トルクより大きくなる。従って、ブレーキB4をプラネタリギヤユニットPUの外周側に近接して設けることによって、減速回転に基づくトルクをブレーキB4に伝達するハブ部材47を比較的短くすることができる。更に、ワンウェイクラッチF3をプラネタリギヤユニットPUと離れたクラッチC2に近接させて設けても、クラッチC2とキャリヤCR2を連結するハブ部材25及び側板44を大きくする必要はない。また、ワンウェイクラッチF3をプラネタリギヤユニットPUの外周に配置しないことによって、ブレーキの設計自由度を増やすことができる。それにより、自動変速機11のコンパクト化、軽量化を可能にすることができる。
また、速度線図に示すように、前進6速段、後進1速段を達成できるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材401及びスリーブ部材411を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機11のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機11の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、前進6速段及び後進1速段を達成するものであって、前進4速段にクラッチC1,C2を共に係合し、つまり前進4速段において直結状態となるので、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができ、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
また、駆動車輪伝達機構として、駆動車輪に回転を出力するディファレンシャル部5と、該ディファレンシャル部5に係合するカウンタシャフト部4と、を有し、出力部材がカウンタシャフト部4に噛合するカウンタギヤであるので、自動変速機11を例えばFF車輌に搭載することができる。
<第2の参考例>
以下、第1の参考例を一部変更した第2の参考例について図6乃至図10に沿って説明する。図6は第2の参考例に係る自動変速機を示す断面展開図、図7は第2の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す断面図、図8は第2の参考例に係る自動変速機を示すスケルトン図、図9は第2の参考例に係る自動変速機の作動表、図10は第2の参考例に係る自動変速機の速度線図である。なお、第2の参考例は、一部変更を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図6に示すように、第2の参考例に係る自動変速機12は、第1の参考例の自動変速機11に対して(図1参照)、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤ(減速回転出力手段、減速プラネタリギヤ)PRとの間にワンウェイクラッチ(第2のワンウェイクラッチ)F2を配置し、該ワンウェイクラッチF2の係合を接・断するブレーキ(第4のブレーキ)B3を配置したものである。
図7に示すように、プラネタリギヤPRのリングギヤR1に接続された伝達部材402は、プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3が一体的に形成されているスリーブ部材412とスプライン係合している。また、該スリーブ部材412は、ワンウェイクラッチF2のインナーレースが一体的に形成されており、該ワンウェイクラッチF2のアウターレースがハブ部材48と一体的に形成されている。該ハブ部材48の外周側には、ブレーキB3用油圧サーボ67及び摩擦板77を有して、該ブレーキB3用油圧サーボ67により係止自在となっているブレーキ(第4のブレーキ)B3が、その摩擦板77がスプライン係合する形で配置されており、該ブレーキB3の摩擦板77の外周側は、上記ミッションケース3bの内周側に形成されているスプライン3sにスプライン係合している。なお、ブレーキB2にスプライン係合するハブ部材46は、内周側にてスリーブ部材412にスプライン係合しており、即ち、該スリーブ部材412を介して伝達部材402に接続されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機12のワンウェイクラッチF2に係る作用について図8、図9及び図10に沿って説明する。なお、上記第1の参考例と同様に、図10に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図10中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はキャリヤCR2、リングギヤR2、サンギヤS2に対応している。
図8に示すように、該ワンウェイクラッチF2は、ブレーキB2と並列に配置されており、ブレーキB3の係止により上記スリーブ部材412、つまりサンギヤS3、及び伝達部材402を介してリングギヤR1の回転を一方向(正転回転方向)に規制する。
すると、図9に示すように、D(ドライブ)レンジにおける前進2速段では、クラッチC1が係合され、ブレーキB3を係合することによってワンウェイクラッチF2が係合される。すると、図10に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2に入力軸20の回転が入力されると共に、ブレーキB3を係合することによってワンウェイクラッチF2によりサンギヤS3の回転が一方向(正転回転方向)に規制され、該サンギヤS3の逆転回転が防止される。それにより、キャリヤCR2が僅かに減速回転し、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転が、該減速回転のキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進2速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、上記プラネタリギヤPRにおいて、サンギヤS3及びリングギヤR1は、ワンウェイクラッチF2により逆転回転が防止されており、クラッチC3が解放されているため、キャリヤCR1及びサンギヤS1は停止状態である。
なお、前進1速段から前進2速段への変速は、ブレーキB3を係合し、ワンウェイクラッチF2がサンギヤS3の逆転を防止することによって、サンギヤS2は正転回転となり前進1速段で係合しているワンウェイクラッチF3により自動的に解放されるので、例えばエンジンの吹き上がりなどを防いで、滑らかに該前進2速段に変速させることができる。また、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ワンウェイクラッチF2と並列に設けられたブレーキB2を係止してサンギヤS3(及びリングギヤR1)を固定し、該サンギヤS3の正転回転を防止する形で、上記前進2速段の状態を維持する。
以上のように、参考例に係る自動変速機12によると、減速回転出力手段としてのプラネタリギヤPR、クラッチC3、及び伝達部材402をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側(図6、図7及び図8中左方側)に配置し、クラッチC1及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側(図6、図7及び図8中右方側)に配置し、更に、出力部材としてのカウンタギヤ50をクラッチC1及びクラッチC2とプラネタリギヤユニットPUとの間に配置したので、特にプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して位置に配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材402及びスリーブ部材412の軸方向の長さを比較的短くすることができる。それにより、自動変速機12のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、伝達部材402及びスリーブ部材412の軽量化によってイナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機12の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC2は、クラッチC1の外周側を通ってキャリヤCR2に連結されるので、各回転要素の連結のための部材の錯綜を防止でき、自動変速機12をコンパクト化することができる。
更に、クラッチC1は、その外周側にクラッチC2が配置される構造であり、外周側に拡径することができないが、油圧サーボ62を入力軸20上に設けることによって、(例えばボス部3c上に設ける場合より)該油圧サーボ62、特に油圧サーボ62用油室62aの受圧面積を内周側に大きく確保することができ、クラッチC1の容量を増大させることができる。
また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50を入力軸20と同軸上に設けるので、特に自動変速機12をFF車両に搭載した場合には、(例えば減速プラネタリギヤなどを他軸上に設ける場合に比して)駆動車輪伝達機構(例えばカウンタシャフト部4など)をコンパクト化することができ、例えば車体メンバとの干渉を防止することができ、自動変速機12の車両搭載性を向上させることができる。
また、第1の参考例と同様に、クラッチC3を、リングギヤR1とサンギヤS3との間に介在させると、減速回転を接・断する必要があり、比較的大きなものになってしまい、かつプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間が広がってしまうが、入力軸20とキャリヤCR1との間に介在させることで、該クラッチC3による入力軸20の回転の接・断によってプラネタリギヤPRのリングギヤR1から出力される減速回転を接・断するので、クラッチC3をコンパクト化することができ、かつプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを比較的近い位置に配置することができる。それにより自動変速機12をコンパクト化することができる。
また、油圧サーボ62は入力軸20上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81で漏れ止めして入力軸20内に設けられた油路20a,20bに油を供給することで、例えば入力軸20との油圧サーボ62との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ62の油室62aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ61,66は、それぞれケース3から延設されたボス部3c,3dから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング80,82をそれぞれ設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ62,61,66には、それぞれ1対のシールリング81,80,82を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機12の効率を向上させることができる。
また、摩擦板76がプラネタリギヤPRの径方向外周側に配置されるので、自動変速機12を軸方向にコンパクト化することができる。また、プラネタリギヤPRをクラッチC3の油圧サーボ66とプラネタリギヤユニットPUとの軸方向の間に配置することによって、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを隣接して配置することができるため(クラッチC3の油圧サーボ66がプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にないため)、伝達部材402及びスリーブ部材412を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機12のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機12の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、プラネタリギヤPRは、ダブルピニオンプラネタリギヤであるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができると共に、自動変速機12のギヤ比を良好に設定したとしても、プラネタリギヤユニット、減速プラネタリギヤの各回転要素を大きくすることがなく、高回転をも抑制できるため、自動変速機12をコンパクトにすることができる。
更に、プラネタリギヤPRは、入力回転要素であるキャリヤCR1と、固定要素であるサンギヤS1と、出力回転要素であるリングギヤR1と、を有して構成されるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができる。
また、プラネタリギヤユニットPUは、サンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2により構成されるラビニヨ型プラネタリギヤであるので、例えば前進6速段、後進1速段を可能にすることができるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材402及びスリーブ部材412を比較的短くすることができる。
また、ブレーキB4と並列に配置され、キャリヤCR2の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF3を備えているので、正駆動時の前進1速段をクラッチC1とワンウェイクラッチF3の係合で達成できるため、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を滑らかに行うことができる。
更に、ブレーキB4をプラネタリギヤユニットPUの外周側に配置し、ワンウェイクラッチF3をクラッチC2に隣接させて配置するので、ワンウェイクラッチF3は前進1速段達成時に入力軸の回転を入力するクラッチC1と共に係合されるのに対し、ブレーキB4は減速回転を接・断するためのクラッチC3と共に係合することで後進1速段を達成するものであることから、ブレーキB4に作用する反力トルクは、ワンウェイクラッチF3に作用する反力トルクより大きくなる。従って、ブレーキB4をプラネタリギヤユニットPUの外周側に近接して設けることによって、減速回転に基づくトルクをブレーキB4に伝達するハブ部材47を比較的短くすることができる。更に、ワンウェイクラッチF3をプラネタリギヤユニットPUと離れたクラッチC2に近接させて設けても、クラッチC2とキャリヤCR2を連結するハブ部材25及び側板44を大きくする必要はない。また、ワンウェイクラッチF3をプラネタリギヤユニットPUの外周に配置しないことによって、ブレーキの設計自由度を増やすことができる。それにより、自動変速機12のコンパクト化、軽量化を可能にすることができる。
また、ブレーキB2と並列に配置され、ブレーキB3の係止によりサンギヤS3の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF2を備えているので、前進2速段から前進3速段への変速を滑らかに行うことができる。
更に、ワンウェイクラッチF2のインナーレースとスリーブ部材412とを一体に形成するので、前進2速段から前進3速段への変速を滑らかに行うことができるものでありながら、自動変速機12を、特に径方向に対してコンパクト化することができる。
また、速度線図に示すように、前進6速段、後進1速段を達成できるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材402及びスリーブ部材412を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機12のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機12の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、前進6速段及び後進1速段を達成するものであって、前進4速段にクラッチC1,C2を共に係合し、つまり前進4速段において直結状態となるので、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができ、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
また、駆動車輪伝達機構として、駆動車輪に回転を出力するディファレンシャル部5と、該ディファレンシャル部5に係合するカウンタシャフト部4と、を有し、出力部材がカウンタシャフト部4に噛合するカウンタギヤであるので、自動変速機12を例えばFF車輌に搭載することができる。
<第1の実施の形態>
以下、第1及び第2の参考例を一部変更した第1の実施の形態について図11乃至図14に沿って説明する。図11は第1の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す断面図、図12は第1の実施の形態に係る自動変速機を示すスケルトン図、図13は第1の実施の形態に係る自動変速機の作動表、図14は第1の実施の形態に係る自動変速機の速度線図である。なお、第1の実施の形態は、変更部分を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図11に示すように、第1の実施の形態に係る自動変速機13は、第1及び第2の参考例の自動変速機11,12に対して(図1及び図6参照)、自動変速機構2を変更したものである。自動変速機構23は、第1及び第2の参考例の自動変速機構21,22と同様に、上記入力軸20のトルクコンバータ12(図1及び図6参照)とは反対側の一端に、その内周側にスプライン20sが形成されており、中心軸303の一端外周側に形成されているスプライン30sに係合して、つまり入力軸20と中心軸303とが回転方向に接続されている。該中心軸303上には、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤ(減速回転出力手段、減速プラネタリギヤ)PRとを有している。
該プラネタリギヤユニットPUは、第1シンプルプラネタリギヤSP2と第2シンプルプラネタリSP3とにより構成されており、4つの回転要素として、後述するスリーブ127を介して連結されているサンギヤ(第3の回転要素、第2のサンギヤ)S2及びサンギヤ(第3の回転要素、第3のサンギヤ)S3、側板143により連結されているキャリヤ(第2の回転要素、第3のキャリヤ)CR3及びリングギヤ(第2の回転要素、第2のリングギヤ)R2、リングギヤ(第1の回転要素、第3のリングギヤ)R3、キャリヤ(第4の回転要素、第2のキャリヤ)CR2を有している、いわゆるシンプソン型プラネタリギヤである。また、上記プラネタリギヤPRは、キャリヤ(入力回転要素、第1のキャリヤ)CR1に、リングギヤ(出力回転要素、第1のリングギヤ)R1に噛合するピニオンP1a及びサンギヤ(固定要素、第1のサンギヤ)S1に噛合するピニオンP1bを互いに噛合する形で有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
上記入力軸20上には、外周側に、油圧サーボ161、摩擦板172、クラッチドラム(第2のクラッチドラム)を形成するシリンダ部材161e及びドラム状部材122、スリーブ部材127に連結されるハブ部材(第3の回転要素に連結する部材)125、を有する多板式クラッチ(第2のクラッチ)C1と、その内周側に、油圧サーボ162、摩擦板171、クラッチドラム(第1のクラッチドラム)を形成するシリンダ部材162e及びドラム状部材124、スリーブ部材1263に連結されるハブ部材(第2の回転要素に連結する部材)123、を有する多板式クラッチ(第1のクラッチ)C2と、が配置されている。
該油圧サーボ161は、摩擦板172を押圧するためのピストン部材(第2のピストン)161bと、後述するシリンダ部材162eにスプライン係合して入力軸20の回転が入力されるシリンダ部材161e、該ピストン部材161bと該シリンダ部材161eとの間にシールリング161f,161gによってシールされて形成される油室(第2の油圧サーボ用油圧室)161aと、該ピストン部材161bを該油室161aの方向に付勢するリターンスプリング161cと、該リターンスプリング161cの付勢を受け止めるリターンプレート161dと、により構成されている。該油室161aは、ケース3の一端に延設され、入力軸20上にスリーブ状に設けられているボス部(第1のボス部)3cの油路192に連通しており、該油路192は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ161は、ケース3のボス部3cとシリンダ部材161eとの間をシールする1対のシールリング80によって、不図示の油圧制御装置から油室161aまでの油路が構成されている。
また、該油圧サーボ162は、摩擦板171を押圧するためのピストン部材(第1のピストン)162bと、入力軸20に固着されているシリンダ部材162e、該ピストン部材162bと該シリンダ部材162eとの間にシールリング162f,162gによってシールされて形成される油室(第1の油圧サーボ用油圧室)162aと、該ピストン部材162bを該油室162aの方向に付勢するリターンスプリング162cと、該リターンスプリング162cの付勢を受け止めるリターンプレート162dと、により構成されている。該油室162aは、上記入力軸20に形成されている油路20a,20bと連通しており、該油路20aは、上記ボス部3cの油路191に連通している。そして、該油路191は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ162は、入力軸20上に配置されているため、ケース3のボス部3cと入力軸20との間をシールする1対のシールリング81によって、不図示の油圧制御装置から油室162aまでの油路が構成されている。
即ち、上記入力軸20に、上記シリンダ部材162eを介して上記シリンダ部材161eが接続されており、該シリンダ部材161eの外周側には、上記ドラム状部材122が接続されている。該ドラム状部材122の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ161によって係合自在となっているクラッチC1の摩擦板172がスプライン係合する形で配置されており、該クラッチC1の摩擦板172の内周側がハブ部材125にスプライン係合する形で接続されている。そして、該ハブ部材125の内周側が、中心軸303上に回転自在に設けられたスリーブ部材127の一端に接続されており、該スリーブ部材127外周側に上記サンギヤS2及びサンギヤS3が一体的に形成されている。
また、上記シリンダ部材162eの外周側には、ドラム状部材124が接続されており、該ドラム状部材124の先端部内周側には、クラッチC2用油圧サーボ162によって係合自在となっているクラッチC2の摩擦板171がスプライン係合する形で配置されて、該クラッチC2の摩擦板171の内周側がハブ部材123にスプライン係合する形で接続されている。そして、該ハブ部材123の内周側が、中心軸303上に回転自在に設けられたスリーブ部材126の一端に接続されており、該スリーブ部材126の他端の先端部外周側にスプライン126sが形成されて、上記キャリヤCR3の側板1423のスプライン142sを介して該側板1423が接続されている。
一方、ケース3の、上記ボス部3cとは反対側の他端に延設され、固着されたスリーブ状部材1313を有するボス部(第2のボス部)3d3上には、油圧サーボ166、摩擦板176、シリンダ部166eを有するクラッチドラム(第3のクラッチドラム)132、を有する多板式クラッチ(減速回転出力手段、第3のクラッチ)C3が配置されている。該油圧サーボ166は、摩擦板176を押圧するためのピストン部材166bと、該ピストン部材166bと上記シリンダ部166eとの間にシールリング166f,166gによってシールされて形成される油室166aと、該ピストン部材166bを該油室166aの方向に付勢するリターンスプリング166cと、該リターンスプリング166cの付勢を受け止めるリターンプレート166dと、により構成されている。なお、クラッチドラム132は、プラネタリギヤPRの方向に開口しており、該プラネタリギヤPRは、油圧サーボ166とプラネタリギヤユニットPUとの軸方向の間に配置されている。また、摩擦板176がプラネタリギヤPRの径方向外径側に重なる位置に配置されている。
該油室166aは、ボス部3d3の油路193に連通しており、該油路193は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ166は、ケース3のボス部3d3とシリンダ部166eを有するドラム状部材132との間をシールする1対のシールリング182によって、不図示の油圧制御装置から油室166aまでの油路が構成されている。
上記クラッチC3のクラッチドラム132の内周側には、上記摩擦板176がスプライン係合しており、該摩擦板176の内周側は、リングギヤR1にスプライン係合して、つまりクラッチC3によってクラッチドラム132とリングギヤR1とが係合自在となっている。また、該クラッチドラム132の外周側には、油圧サーボ164、摩擦板174を有するブレーキ(第2のブレーキ)B2が配設されており、該摩擦板174の外周側がミッションケース3bの内周に形成されているスプライン3sにスプライン係合していると共に、該摩擦板174の内周側がクラッチドラム132の先端部外周側にスプライン係合しており、つまりブレーキB2によって、クラッチドラム132が係止自在となっている。
上記リングギヤR1には、側板1333、側板1343、及びそれら側板1333,1343に支持されたピニオンP1a、P1bを(図12参照)有しているキャリヤCR1が、該ピニオンP1aを介して噛合しており、該側板1343は、上記中間軸303に固着(入力回転が常時入力)されている。また、該キャリヤCR1は、上述のようにケース3のボス部3d3にスプライン係合して回転不能(常時固定)になっているサンギヤS1に、ピニオンP1bを介して噛合している。なお、リングギヤR1は、円盤状部材1353により中間軸303に対して回転自在に支持されている。
そして、上記クラッチドラム132の先端部内周側には、上記中心軸303上にスリーブ部材1263及びキャリヤCR3の側板1423を介して回転自在に支持され、該クラッチドラム132の回転を伝達する伝達部材(減速回転出力手段)1403が接続されている。該伝達部材1403の略々中間部分には、上記プラネタリギヤユニットPUの第2シンプルプラネタリSP3のリングギヤR3が固着されている。
該リングギヤR3の外周側には、ワンウェイクラッチ(第2のワンウェイクラッチ)F2が配設されており、該ワンウェイクラッチF2のインナーレース141が該リングギヤR3の外周側にスプライン係合している。また、該ワンウェイクラッチF2のアウターレース148の外周側には、油圧サーボ167、摩擦板177を有するブレーキ(第4のブレーキ)B3が配設されており、該摩擦板177の内周側が該アウターレース148にスプライン係合していると共に、該摩擦板177の外周側がミッションケース3bの内周に形成されているスプライン3sにスプライン係合して、つまりブレーキB3によって該アウターレース148が係止自在となっている。
また、上記リングギヤR3の内周側には、上述のようにスリーブ部材1263にスプライン係合している側板1423、側板143、及びそれら側板1423,143に支持されたピニオンP3を有しているキャリヤCR3が、該ピニオンP3を介して噛合しており、該キャリヤCR3は、該ピニオンP3を介して上記スリーブ部材127に形成されているサンギヤS3に噛合している。該キャリヤCR3の側板143は、上記プラネタリギヤユニットPUの第1シンプルプラネタリSP2のリングギヤR2にスプライン係合している。
該リングギヤR2は、それ自体がワンウェイクラッチF3のインナーレースとなる形で、該リングギヤR2の一端外周側にワンウェイクラッチ(第1のワンウェイクラッチ)F3が配設されており、該ワンウェイクラッチF3のアウターレースは、ミッションケース3bの内周に形成されているスプライン3sにスプライン係合している。また、該リングギヤR2の他端外周側には、油圧サーボ163、摩擦板173を有するブレーキ(第3のブレーキ)B4が配設されており、該摩擦板173の内周側が該リングギヤR2に固着されたハブ部材147にスプライン係合すると共に、該摩擦板173の外周側がミッションケース3bの内周に形成されているスプライン3sにスプライン係合して、つまりブレーキB4によってリングギヤR2が係止自在となっている。
また、上記リングギヤR2の内周側には、側板144、側板145、及びそれら側板144,145に支持されたピニオンP2を有しているキャリヤCR2が、該ピニオンP2を介して噛合しており、該キャリヤCR2は、該ピニオンP2を介して上記スリーブ部材127に形成されているサンギヤS2に噛合している。そして、該キャリヤCR2は、該側板145を介してカウンタギヤ50に連結されている。
該カウンタギヤ50には、例えば図1又は図6に示す自動変速機11,12と同様に、上記カウンタシャフト部4のカウンタシャフト52上に固定されているギヤ51が噛合しており、該カウンタシャフト52には、外周面上に形成されているギヤ52aを介してディファレンシャル部5のギヤ53が噛合している。そして、該ギヤ53は、ハウジング54に固定されており、該ハウジング54がディファレンシャルギヤ55を介して不図示の左右車軸に接続されている。
以上説明したように、入力軸20上においてクラッチC1及びクラッチC2が配置され、中心軸303上においてカウンタギヤ50、プラネタリギヤユニットPU、プラネタリギヤPRが順に配置されており、つまり、プラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側にプラネタリギヤPRが、軸方向他方側にクラッチC1及びクラッチC2が、クラッチC1及びクラッチC2とプラネタリギヤユニットPUとの間にカウンタギヤ50が配置されている。また、クラッチC3及びブレーキB2はプラネタリギヤPRの外周側に、ブレーキB3及びブレーキB4はプラネタリギヤユニットPUの外周側に、それぞれ配置されている。また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50は、入力軸20と同軸上に設けられて構成されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機13の作用について図12、図13及び図14に沿って説明する。なお、図14に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図14中右方側)の縦軸はリングギヤR3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR2及びキャリヤCR3、キャリヤCR2、サンギヤS2及びサンギヤS3に対応している。
図12に示すように、上記サンギヤS2及びサンギヤS3には、クラッチC1が係合することにより入力軸20の回転が入力される。上記キャリヤCR3及びリングギヤR2には、クラッチC2が係合することにより入力軸20の回転が入力されると共に、該キャリヤCR2及びリングギヤR2は、ブレーキB4の係止により回転が固定自在となっており、また、ワンウェイクラッチF3により一方向の回転が規制されている。
一方、上記キャリヤCR1には、中間軸303を介して入力軸20の回転が入力され、上記サンギヤS1は、ケース3に対して回転が固定されており、上記リングギヤR1は、該キャリヤCR1に入力される入力軸20の回転に基づき減速回転する。上記リングギヤR3には、クラッチC3が係合することにより、伝達部材1403を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。また、該リングギヤR3は、ブレーキB3の係止によって作用するワンウェイクラッチF3により一方向の回転が規制されていると共に、ブレーキB2の係止により回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR2の回転は、上記カウンタギヤ50に出力され、該カウンタギヤ50、上記カウンタシャフト部4及びディファレンシャル部5(図1又は図6参照)を介して不図示の駆動車輪に出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進1速段では、図13に示すように、クラッチC1及びワンウェイクラッチF3が係合される。すると、図5に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2及びサンギヤS3に入力軸20の回転が入力されると共に、キャリヤCR3及びリングギヤR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりリングギヤR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。そして、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転と、固定されたリングギヤR2とによりキャリヤCR2に減速回転が出力され、前進1速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、プラネタリギヤPRにおいて、入力軸20の回転が入力されるキャリヤCR1と固定されたサンギヤS1によりリングギヤR3に減速回転が出力されるが、クラッチC3が解放されているため、特に伝達部材1403にはトルク伝達が行われない。また、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB4を係止してリングギヤR2を固定し、該リングギヤR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。
なお、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF3によりリングギヤR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチF3の自動係合により滑らかに行うことができる。
D(ドライブ)レンジにおける前進2速段では、図13に示すように、クラッチC1及びワンウェイクラッチF2が係合される。すると、図14に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2及びサンギヤS3に入力軸20の回転が入力されると共に、リングギヤR3の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりリングギヤR3の逆転回転が防止されて固定された状態になる。そして、サンギヤS3に入力された入力軸20の回転と、固定されたリングギヤR3とによりキャリヤCR3及びリングギヤR2に減速回転が出力され、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転と、該リングギヤR2に入力された減速回転とによりキャリヤCR2に上記前進1速段よりも大きな減速回転が出力され、前進2速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際も、プラネタリギヤPRにおいて、入力軸20の回転が入力されるキャリヤCR1と固定されたサンギヤS1によりリングギヤR3に減速回転が出力されるが、クラッチC3が解放されているため、特に伝達部材1403にはトルク伝達が行われない。また、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB2を係止してリングギヤR3を固定し、該リングギヤR3の正転回転を防止する形で、上記前進2速段の状態を維持する。
なお、前進1速段から前進2速段への変速は、ブレーキB3を係合し、ワンウェイクラッチF2がリングギヤR3の逆転を防止することによって、キャリヤCR3及びリングギヤR2は正転回転となり前進1速段で係合しているワンウェイクラッチF3により自動的に解放されるので、例えばエンジンの吹き上がりなどを防いで、滑らかに前進2速段に変速させることができる。
D(ドライブ)レンジにおける前進3速段では、図13に示すように、クラッチC1及びクラッチC3が係合される。すると、図14に示すように、キャリヤCR1に入力軸20の回転が入力され、固定されたサンギヤS1によりリングギヤR1が減速回転する。また、クラッチC3の係合により、上記伝達部材1403を介してリングギヤR3に該リングギヤR1の減速回転が入力される。一方、サンギヤS3には、入力軸20の回転が入力され、該サンギヤS3に入力された入力軸20の回転と、リングギヤR3の減速回転とによりキャリヤCR3及びリングギヤR2に僅かに大きな減速回転が出力され、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転と、該リングギヤR2に入力された僅かに大きな減速回転とによりキャリヤCR2に上記前進2速段よりも大きな減速回転が出力され、前進3速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、リングギヤR1及びリングギヤR3は減速回転しているので、上記伝達部材1403は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進4速段では、図13に示すように、クラッチC1及びクラッチC2が係合される。すると、図14に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2及びサンギヤS3と、クラッチC2を介してキャリヤCR3及びリングギヤR2とに入力軸20の回転が入力される。それにより、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転と、リングギヤR2に入力された入力軸20の回転とにより、つまり直結回転の状態となってキャリヤCR2に入力軸20の回転がそのまま出力され、前進4速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際も、プラネタリギヤPRにおいて、入力軸20の回転が入力されるキャリヤCR1と固定されたサンギヤS1によりリングギヤR3に減速回転が出力されるが、クラッチC3が解放されているため、特に伝達部材1403にはトルク伝達が行われない。
D(ドライブ)レンジにおける前進5速段では、図13に示すように、クラッチC2及びクラッチC3が係合される。すると、図14に示すように、キャリヤCR1に入力軸20の回転が入力され、固定されたサンギヤS1によりリングギヤR1が減速回転する。また、クラッチC3の係合により、上記伝達部材1403を介してリングギヤR3に該リングギヤR1の減速回転が入力される。一方、キャリヤCR3及びリングギヤR2には、入力軸20の回転が入力され、該キャリヤCR3に入力された入力軸20の回転と、リングギヤR3の減速回転とによりサンギヤS3及びサンギヤS3に増速回転が出力され、リングギヤR2に入力された入力軸20の回転と、該サンギヤS2に入力された増速回転とによりキャリヤCR2に増速回転が出力され、前進5速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、上記前進3速段の状態と同様に、リングギヤR1及びリングギヤR3は減速回転しているので、上記伝達部材1403は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進6速段では、図13に示すように、クラッチC2が係合され、ブレーキB2が係止される。すると、図14に示すように、クラッチC2を介してキャリヤCR3及びリングギヤR2に入力軸20の回転が入力されると共に、ブレーキB2の係止によりリングギヤR3が固定される。それにより、キャリヤCR3に入力された入力軸20の回転と固定されたリングギヤR3とにより、(上記前進5速段よりも大きな)増速回転となってサンギヤS3及びサンギヤS2に出力され、リングギヤR2に入力された入力軸20の回転と、該サンギヤS2に入力された増速回転とによりキャリヤCR2に前進5速段より大きな増速回転が出力され、前進6速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際も、プラネタリギヤPRにおいて、入力軸20の回転が入力されるキャリヤCR1と固定されたサンギヤS1によりリングギヤR3に減速回転が出力されるが、クラッチC3が解放されているため、特に伝達部材1403にはトルク伝達が行われない。
R(リバース)レンジにおける後進1速段では、図13に示すように、クラッチC3が係合され、ブレーキB4が係止される。すると、図14に示すように、キャリヤCR1に入力軸20の回転が入力され、固定されたサンギヤS1によりリングギヤR1が減速回転する。また、クラッチC3の係合により、上記伝達部材1403を介してリングギヤR3に該リングギヤR1の減速回転が入力される。一方、ブレーキB4の係止によりキャリヤCR3及びリングギヤR2の回転が固定され、固定されたキャリヤCR3と、リングギヤR3の減速回転とによりサンギヤS3及びサンギヤS3に逆転回転が出力され、固定されたリングギヤR2と、該サンギヤS2に入力された逆転回転とによりキャリヤCR2に逆転回転が出力され、後進1速段としての逆転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、上記前進3速段や前進5速段の状態と同様に、リングギヤR1及びリングギヤR3は減速回転しているので、上記伝達部材1403は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
P(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、特にクラッチC1、クラッチC2及びクラッチC3が解放されており、入力軸20とカウンタギヤ50との間の動力伝達が切断状態であって、自動変速機構23全体としては空転状態(ニュートラル状態)となる。
以上のように、本発明に係る自動変速機13によると、減速回転出力手段としてのプラネタリギヤPR、クラッチC3、及び伝達部材1403をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側(図11及び図12中左方側)に配置し、クラッチC1及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側(図11及び図12中右方側)に配置し、更に、出力部材としてのカウンタギヤ50をクラッチC1及びクラッチC2とプラネタリギヤユニットPUとの間に配置したので、特にプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して位置に配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材1403の軸方向の長さを比較的短くすることができる。それにより、自動変速機13のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、伝達部材1403の軽量化によってイナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機13の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC1は、クラッチC2の外周側を通ってサンギヤS2及びサンギヤS3に連結されるので、各回転要素の連結のための部材の錯綜を防止でき、自動変速機13をコンパクト化することができる。
更に、クラッチC2は、その外周側にクラッチC1が配置される構造であり、外周側に拡径することができないが、油圧サーボ162を入力軸20上に設けることによって、(例えばボス部3c上に設ける場合より)該油圧サーボ162、特に油圧サーボ162用油室162aの受圧面積を内周側に大きく確保することができ、クラッチC1の容量を増大させることができる。
また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50を入力軸20と同軸上に設けるので、特に自動変速機13をFF車両に搭載した場合には、(例えば減速プラネタリギヤなどを他軸上に設ける場合に比して)駆動車輪伝達機構(例えばカウンタシャフト部4など)をコンパクト化することができ、例えば車体メンバとの干渉を防止することができ、自動変速機13の車両搭載性を向上させることができる。
また、クラッチC3が減速回転の出力を接・断するので、減速回転をリングギヤR3に出力自在にすることができるものでありながら、クラッチC3を解放することで、キャリヤCR1に入力される入力軸の回転をプラネタリギヤPR、特にリングギヤR1にて空転させることができる。それにより、サンギヤS1を、ブレーキを配設することなく、直接ケース3などに固定することができ、自動変速機13のコンパクト化、軽量化を可能にすることができる。また、サンギヤS1を固定するブレーキを配設しないので、リングギヤR3を係止自在にするためのブレーキB2をプラネタリギヤPRの外周側に配設することが可能となる。
また、油圧サーボ162は入力軸20上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング181で漏れ止めして入力軸20内に設けられた油路20a,20bに油を供給することで、例えば入力軸20との油圧サーボ162との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ162の油室162aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ161,166は、それぞれケース3から延設されたボス部3c,3d3から、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング180,182をそれぞれ設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ162,161,166には、それぞれ1対のシールリング181,180,182を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機13の効率を向上させることができる。
また、摩擦板176がプラネタリギヤPRの径方向外周側に配置されるので、自動変速機13を軸方向にコンパクト化することができる。また、プラネタリギヤPRをクラッチC3の油圧サーボ166とプラネタリギヤユニットPUとの軸方向の間に配置することによって、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを隣接して配置することができるため(クラッチC3の油圧サーボ166がプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にないため)、伝達部材1403を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機13のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機13の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、プラネタリギヤPRは、ダブルピニオンプラネタリギヤであるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができると共に、自動変速機13のギヤ比を良好に設定したとしても、プラネタリギヤユニット、減速プラネタリギヤの各回転要素を大きくすることがなく、高回転をも抑制できるため、自動変速機13をコンパクトにすることができる。
更に、プラネタリギヤPRは、入力回転要素であるキャリヤCR1と、固定要素であるサンギヤS1と、出力回転要素であるリングギヤR1と、を有して構成されるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができる。
また、プラネタリギヤユニットPUは、サンギヤS2、キャリヤCR2、リングギヤR2を有する第1シンプルプラネタリギヤSP2と、サンギヤS3、キャリヤCR3、リングギヤR3を有する第2シンプルプラネタリギヤSP3と、により構成されるので、例えば前進6速段、後進1速段を可能にすることができるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材1403を比較的短くすることができる。
また、ブレーキB4と並列に配置され、キャリヤCR3及びリングギヤR2の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF3を備えているので、例えば正駆動時の前進1速段をクラッチC1とワンウェイクラッチF3の係合で達成できるため、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を滑らかに行うことができる。
更に、ブレーキB4とワンウェイクラッチF3とをプラネタリギヤユニットPUの外周側に配置するので、例えばワンウェイクラッチF3をクラッチC2に隣接して(特にハブ部材123の一方向の回転を規制するために)配置した場合に比して、クラッチC1,C2が配設されている部分を軸方向にコンパクト化することができるため、カウンタギヤ50をトルクコンバータ側に近づけることができる。それにより、カウンタシャフト52のギヤ51もトルクコンバータ側に近づけることができ、カウンタシャフト部4を軸方向に対してコンパクト化することができる。
また、ワンウェイクラッチF3のインナーレースとリングギヤR2とを一体に形成しているので、カウンタシャフト部4を軸方向に対してコンパクト化することができるものでありながら、自動変速機13の自動変速機構23を径方向に対してコンパクト化することができる。
また、ブレーキB2と並列に配置され、ブレーキB3の係止によりリングギヤR3の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF2を備えているので、例えば前進2速段から前進3速段への変速を滑らかに行うことができる。
また、速度線図に示すように、前進6速段、後進1速段を達成できるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材1403を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機13のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機13の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、前進6速段及び後進1速段を達成するものであって、前進4速段にクラッチC1,C2を共に係合し、つまり前進4速段において直結状態となるので、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができ、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
また、駆動車輪伝達機構として、駆動車輪に回転を出力するディファレンシャル部5と、該ディファレンシャル部5に係合するカウンタシャフト部4と、を有し、出力部材がカウンタシャフト部4に噛合するカウンタギヤであるので、自動変速機13を例えばFF車輌に搭載することができる。
<第2の実施の形態>
以下、第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について図15乃至図18に沿って説明する。図15は第2の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す断面図、図16は第2の実施の形態に係る自動変速機を示すスケルトン図、図17は第2の実施の形態に係る自動変速機の作動表、図18は第2の実施の形態に係る自動変速機の速度線図である。なお、第2の実施の形態は、一部変更を除き、第1の実施の形態と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図15及び図16に示すように、第2の実施の形態に係る自動変速機14は、第1の実施の形態の自動変速機13に対して(図11及び図12参照)、入力軸20の回転をプラネタリギヤ(減速回転出力手段、減速プラネタリギヤ)PRのキャリヤCR1でなく、サンギヤ(入力回転要素、第1のサンギヤ)S1に入力するものである。
図15に示すように、自動変速機構24において、中間軸304の入力軸20とは反対側の一端外周側(図15中左方側)に、サンギヤS1が該中間軸30と一体的に形成されており、入力回転が常時入力される。また、固着されたスリーブ状部材1314を有するボス部3d4上には、キャリヤ(固定要素、第1のキャリヤ)CR1の側板1334が、該スリーブ状部材1314にスプライン係合すると共に該ボス部3d4上に固着(常時固定)されている。キャリヤCR1は、もう一方の側板1344によりピニオンP1a,P1b(図16参照)を支持して有しており、該ピニオンP1bが上記サンギヤS1に噛合していると共に、該ピニオンP1aがリングギヤ(出力回転要素、第1のリングギヤ)R1に噛合している。該リングギヤR1は、円盤状部材1354により上記スリーブ状部材1314に対して回転自在に支持されている。
一方、クラッチドラム(第3のクラッチドラム)132の先端部内周側には、上記中心軸304上に回転自在に支持され、該クラッチドラム132の回転を伝達する伝達部材(減速回転出力手段)1404が接続されている。そして、該伝達部材1404の略々中間部分には、プラネタリギヤユニットPUの第2シンプルプラネタリSP3のリングギヤR3が固着されている。また、該第2シンプルプラネタリSP3のキャリヤCR3の側板1424は、クラッチC2のハブ部材123にスプライン係合しているスリーブ部材1264と一体的に形成されている。なお、クラッチドラム132は、プラネタリギヤPRの方向に開口しており、該プラネタリギヤPRは、油圧サーボ166とプラネタリギヤユニットPUとの軸方向の間に配置されている。また、摩擦板176がプラネタリギヤPRの径方向外径側に重なる位置に配置されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機12のプラネタリギヤPRに係る作用について図16、図17及び図18に沿って説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様に、図18に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図18中右方側)の縦軸はリングギヤR3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR2及びキャリヤCR3、キャリヤCR2、サンギヤS2及びサンギヤS3に対応している。
図16に示すように、上記サンギヤS1には、中間軸304を介して入力軸20の回転が入力され、上記キャリヤCR1は、ケース3に対して回転が固定されており、上記リングギヤR1は、該サンギヤS1に入力される入力軸20の回転に基づき減速回転する。上記リングギヤR3には、クラッチC3が係合することにより、伝達部材1404を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、図17及び図18に示すように、前進1速段、前進2速段、前進4速段、前進6速段では、プラネタリギヤPRにおいて、入力軸20の回転が入力されるサンギヤS1と固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR3に減速回転が出力されるが、クラッチC3が解放されているため、特に伝達部材1404にはトルク伝達が行われない。一方、前進3速段、前進5速段、後進1速段では、プラネタリギヤPRにおいて、クラッチC3が係合されるため、入力軸20の回転が入力されるサンギヤS1と固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR3が減速回転し、該クラッチC3及び伝達部材1404を介してリングギヤR3に該リングギヤR1の減速回転が出力される。この際、リングギヤR1及びリングギヤR3は減速回転しているので、上記伝達部材1404は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
以上のように、本発明に係る自動変速機14によると、減速回転出力手段としてのプラネタリギヤPR、クラッチC3、及び伝達部材1404をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側(図15及び図16中左方側)に配置し、クラッチC1及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側(図15及び図16中右方側)に配置し、更に、出力部材としてのカウンタギヤ50をクラッチC1及びクラッチC2とプラネタリギヤユニットPUとの間に配置したので、特にプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して位置に配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材1404の軸方向の長さを比較的短くすることができる。それにより、自動変速機14のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、伝達部材1404の軽量化によってイナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機14の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC1は、クラッチC2の外周側を通ってサンギヤS2及びサンギヤS3に連結されるので、各回転要素の連結のための部材の錯綜を防止でき、自動変速機14をコンパクト化することができる。
更に、クラッチC2は、その外周側にクラッチC1が配置される構造であり、外周側に拡径することができないが、油圧サーボ162を入力軸20上に設けることによって、(例えばボス部3c上に設ける場合より)該油圧サーボ162、特に油圧サーボ162用油室162aの受圧面積を内周側に大きく確保することができ、クラッチC1の容量を増大させることができる。
また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50を入力軸20と同軸上に設けるので、特に自動変速機14をFF車両に搭載した場合には、(例えば減速プラネタリギヤなどを他軸上に設ける場合に比して)駆動車輪伝達機構(例えばカウンタシャフト部4など)をコンパクト化することができ、例えば車体メンバとの干渉を防止することができ、自動変速機14の車両搭載性を向上させることができる。
また、クラッチC3が減速回転の出力を接・断するので、減速回転をリングギヤR3に出力自在にすることができるものでありながら、クラッチC3を解放することで、サンギヤS1に入力される入力軸の回転をプラネタリギヤPR、特にリングギヤR1にて空転させることができる。それにより、キャリヤCR1を、ブレーキを配設することなく、直接ケース3などに固定することができ、自動変速機14のコンパクト化、軽量化を可能にすることができる。また、キャリヤCR1を固定するブレーキを配設しないので、リングギヤR3を係止自在にするためのブレーキB2をプラネタリギヤPRの外周側に配設することが可能となる。
また、油圧サーボ162は入力軸20上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング181で漏れ止めして入力軸20内に設けられた油路20a,20bに油を供給することで、例えば入力軸20との油圧サーボ162との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ162の油室162aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ161,166は、それぞれケース3から延設されたボス部3c,3dから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング180,182をそれぞれ設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ162,161,166には、それぞれ1対のシールリング181,180,182を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機14の効率を向上させることができる。
また、摩擦板176がプラネタリギヤPRの径方向外周側に配置されるので、自動変速機14を軸方向にコンパクト化することができる。また、プラネタリギヤPRをクラッチC3の油圧サーボ166とプラネタリギヤユニットPUとの軸方向の間に配置することによって、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを隣接して配置することができるため(クラッチC3の油圧サーボ166がプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にないため)、伝達部材1404を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機14のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機14の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、プラネタリギヤPRは、ダブルピニオンプラネタリギヤであるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができると共に、自動変速機14のギヤ比を良好に設定したとしても、プラネタリギヤユニット、減速プラネタリギヤの各回転要素を大きくすることがなく、高回転をも抑制できるため、自動変速機14をコンパクトにすることができる。
更に、プラネタリギヤPRは、入力回転要素であるサンギヤS1と、固定要素であるキャリヤCR1と、出力回転要素であるリングギヤR1と、を有して構成されるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができる。
また、プラネタリギヤユニットPUは、サンギヤS2、キャリヤCR2、リングギヤR2を有する第1シンプルプラネタリギヤSP2と、サンギヤS3、キャリヤCR3、リングギヤR3を有する第2シンプルプラネタリギヤSP3と、により構成されるので、例えば前進6速段、後進1速段を可能にすることができるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材1404を比較的短くすることができる。
また、ブレーキB4と並列に配置され、キャリヤCR3及びリングギヤR2の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF3を備えているので、例えば正駆動時の前進1速段をクラッチC1とワンウェイクラッチF3の係合で達成できるため、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を滑らかに行うことができる。
更に、ブレーキB4とワンウェイクラッチF3とをプラネタリギヤユニットPUの外周側に配置するので、例えばワンウェイクラッチF3をクラッチC2に隣接して(特にハブ部材123の一方向の回転を規制するために)配置した場合に比して、クラッチC1,C2が配設されている部分を軸方向にコンパクト化することができるため、カウンタギヤ50をトルクコンバータ側に近づけることができる。それにより、カウンタシャフト52のギヤ51もトルクコンバータ側に近づけることができ、カウンタシャフト部4を軸方向に対してコンパクト化することができる。
また、ワンウェイクラッチF3のインナーレースとリングギヤR2とを一体に形成しているので、カウンタシャフト部4を軸方向に対してコンパクト化することができるものでありながら、自動変速機14の自動変速機構24を径方向に対してコンパクト化することができる。
また、ブレーキB2と並列に配置され、ブレーキB3の係止によりリングギヤR3の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF2を備えているので、例えば前進2速段から前進3速段への変速を滑らかに行うことができる。
また、速度線図に示すように、前進6速段、後進1速段を達成できるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材1404を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機14のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機14の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、前進6速段及び後進1速段を達成するものであって、前進4速段にクラッチC1,C2を共に係合し、つまり前進4速段において直結状態となるので、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができ、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
また、駆動車輪伝達機構として、駆動車輪に回転を出力するディファレンシャル部5と、該ディファレンシャル部5に係合するカウンタシャフト部4と、を有し、出力部材がカウンタシャフト部4に噛合するカウンタギヤであるので、自動変速機14を例えばFF車輌に搭載することができる。
なお、以上の本発明に係る第1及び第2の実施の形態、第1及び第2の参考例において、自動変速機11〜14にトルクコンバータ12を備えているものを一例として説明しているが、これに限らず、発進時にトルク(回転)の伝達を行うような発進装置であれば何れのものであってもよい。また、駆動源としてエンジンである車輌に搭載する場合について説明したが、これに限らず、ハイブリッド車輌に搭載することも可能であり、駆動源が何れのものであってもよいことは、勿論である。更に、上記自動変速機11〜14はFF車輌に用いて好適であるが、これに限らず、FR車輌、4輪駆動車輌など、他の駆動方式の車輌に用いることも可能である。
<第3の実施の形態>
以下、第1及び第2の参考例を一部変更した第3の実施の形態について図19乃至図21に沿って説明する。図19は第3の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、図20は第3の実施の形態に係る自動変速機の作動表、図21は第3の実施の形態に係る自動変速機の速度線図である。なお、第3の実施の形態は、一部変更を除き、第1及び第2の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
まず、第3の実施の形態に係る自動変速機1の自動変速機構25について図19に沿って説明する。図19に示すように、入力軸20上には、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤ(減速回転出力手段、減速プラネタリギヤ)PRとを有している。該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤ(第2の回転要素、第3のサンギヤ)S2、キャリヤ(第3の回転要素、第2のキャリヤ)CR2、リングギヤ(第4の回転要素、第2のリングギヤ)R2、及びサンギヤ(第1の回転要素、第2のサンギヤ)S3を有し、該キャリヤCR2に、側板242,244に支持されてサンギヤS3及びリングギヤR2に噛合するロングピニオンPLと、サンギヤS2に噛合するショートピニオンPSとを、互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。また、上記プラネタリギヤPRは、キャリヤ(固定要素、第1のキャリヤ)CR1に、リングギヤ(出力回転要素、第1のリングギヤ)R1に噛合するピニオンP2及びサンギヤ(入力回転要素、第1のサンギヤ)S1に噛合するピニオンP1を互いに噛合する形で有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
上記入力軸20上には、内周側に、油圧サーボ262、摩擦板272、クラッチドラム(第1のクラッチドラム)を形成するドラム状部材222と、サンギヤS2に連結されるハブ部材(第2の回転要素に連結する部材)223、を有する多板式クラッチ(第1のクラッチ)C1と、その外周側に、油圧サーボ261、摩擦板271、クラッチドラム(第2のクラッチドラム)を形成するドラム部材224、キャリヤCR2に連結されるハブ部材(第3の回転要素に連結する部材)225、を有する多板式クラッチ(第2のクラッチ)C2と、が配置されている。
該油圧サーボ262は、摩擦板272を押圧するためのピストン部材(第1のピストン)262bと、シリンダ部262eを有するドラム状部材222と、該ピストン部材262bと該シリンダ部262eとの間にシールリング262f,262gによってシールされて形成される油室(第1の油圧サーボ用油圧室)262aと、該ピストン部材262bを該油室262aの方向に付勢するリターンスプリング262cと、該リターンスプリング262cの付勢を受け止めるリターンプレート262dと、により構成されている。該油室262aは、上記入力軸20に形成されている油路20a,20bと連通しており、該油路20aは、ケース3の一端に延設され、入力軸20上にスリーブ状に設けられているボス部3cの油路291に連通している。そして、該油路291は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ262は、入力軸20上に配置されているため、ケース3のボス部3cと入力軸20との間をシールする1対のシールリング281によって、不図示の油圧制御装置から油室262aまでの油路が構成されている。
また、該油圧サーボ261は、摩擦板271を押圧するためのピストン部材(第2のピストン)261bと、シリンダ部材261eを有するドラム状部材224と、該ピストン部材261bと該シリンダ部材261eとの間にシールリング261f,261gによってシールされて形成される油室(第2の油圧サーボ用油圧室)261aと、該ピストン部材261bを該油室261aの方向に付勢するリターンスプリング261cと、該リターンスプリング261cの付勢を受け止めるリターンプレート261dと、により構成されている。該油室261aは、上記ボス部3cの油路292に連通しており、該油路292は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ261は、ケース3のボス部3cとシリンダ部材261eとの間をシールする1対のシールリング280によって、不図示の油圧制御装置から油室261aまでの油路が構成されている。
即ち、上記入力軸20には、上記ドラム状部材222が接続されており、該ドラム状部材222の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ262によって係合自在となっているクラッチC1がスプライン係合する形で配置されて、該クラッチC1の内周側がハブ部材223にスプライン係合する形で接続されている。そして、該ハブ部材223は、上記サンギヤS2に接続されている。また、上記ドラム状部材224の先端部内周側には、クラッチC2用油圧サーボ261により係合自在となっているクラッチC2がスプライン係合する形で配置されており、該クラッチC2の内周側には、ハブ部材225がスプライン係合する形で接続されている。そして、該ハブ部材225は、上記キャリヤCR2に接続されている。
一方、入力軸20の他端上(図中左方)には、油圧サーボ265、摩擦板275、クラッチドラム(第3のクラッチドラム)を形成するドラム状部材232、リングギヤR1に連結されるハブ部材235、を有する多板式クラッチC3が配置されている。該油圧サーボ265は、摩擦板275を押圧するためのピストン部材265bと、シリンダ部265eを有するドラム状部材232と、該ピストン部材265bと該シリンダ部265eとの間にシールリング265f,265gによってシールされて形成される油室265aと、該ピストン部材265bを該油室265aの方向に付勢するリターンスプリング265cと、該リターンスプリング265cの付勢を受け止めるリターンプレート265dと、により構成されている。なお、ドラム状部材232からなるクラッチドラムは、プラネタリギヤPRの方向に開口しており、該プラネタリギヤPRは、油圧サーボ265とプラネタリギヤユニットPUとの軸方向の間に配置されている。また、摩擦板275がプラネタリギヤPRの径方向外径側に重なる位置に配置されている。
該油室265aは、ケース3の、上記ボス部3cとは反対側の他端に延設され、入力軸20上にスリーブ状に設けられているボス部3dの油路293に連通しており、該油路293は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ265は、ケース3のボス部3dとシリンダ部265eを有するドラム状部材232との間をシールする1対のシールリング282によって、不図示の油圧制御装置から油室265aまでの油路が構成されている。
また、クラッチC3の外周側で、かつケース3bの内周側には、油圧サーボ264、摩擦板274、を有する多板式ブレーキB1が配置されている。該油圧サーボ264は、摩擦板274を押圧するためのピストン部材264bと、ケース3bの一部に形成されたシリンダ部264eと、該ピストン部材264bと該シリンダ部264eとの間にシールリング264f,264gによってシールされて形成される油室264aと、該ピストン部材264bを該油室264aの方向に付勢するリターンスプリング264cと、該リターンスプリング264cの付勢を受け止めるリターンプレート264dと、により構成されている。
即ち、上記ボス部3d上には、図中左方側において、ドラム状部材232が回転自在に支持されており、該ドラム状部材232の先端部内周側には、クラッチC3用油圧サーボ265により係合自在となっているクラッチ(第3のクラッチ)C3がスプライン係合する形で配置されている。該クラッチC3の内周側には、上記リングギヤR1が形成されているハブ部材235がスプライン係合する形で配置されており、該ハブ部材235は、入力軸20に回転自在に支持されている。また、該ドラム状部材232の先端部外周側には、ブレーキB1用油圧サーボ264により係止自在となっているブレーキ(第2のブレーキ)B1がスプライン係合する形で配置されている。また、キャリヤCR1は、ピニオンP1及びピニオンP2を有しており、該ピニオンP2は上記リングギヤR1に噛合し、該ピニオンP1は、入力軸20に接続されたサンギヤS1に噛合している。該キャリヤCR1は、側板231を介してケース3bのボス部3dに固定されている。
そして、上記クラッチC3及びブレーキB1がスプライン係合しているドラム状部材232は、上記ボス部3d上に回転自在に支持され、クラッチC3が係合した際にリングギヤR1の回転を伝達する伝達部材240が接続されており、また、該伝達部材240の他方側には、上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3が接続されている。
一方、プラネタリギヤユニットPUの外周側には、油圧サーボ263、摩擦板273、ハブ部材247を有する多板式ブレーキ(第3のブレーキ)B2が配置されている。該油圧サーボ263は、摩擦板273を押圧するためのピストン部材263bと、ケース3bの一部に形成されたシリンダ部263eと、該ピストン部材263bと該シリンダ部263eとの間にシールリング263f,263gによってシールされて形成される油室263aと、該ピストン部材263bを該油室263aの方向に付勢するリターンスプリング263cと、該リターンスプリング263cの付勢を受け止めるリターンプレート263dと、により構成されている。
また、ラネタリギヤユニットPUの外周側には、ワンウェイクラッチ(第1のワンウェイクラッチ)F3が配設されており、該ワンウェイクラッチF3のアウターレースは、ミッションケース3bの内周にスプライン係合している。上記プラネタリギヤユニットPUのキャリヤCR2の側板242には、上記ブレーキB2がスプライン係合している形のハブ部材247が接続されており、該ハブ部材247にはワンウェイクラッチF3のインナーレースが接続されている。そして、該キャリヤCR2のロングピニオンPLには、上記リングギヤR2が噛合しており、該リングギヤR2の一端には連結部材245が接続されて、該リングギヤR2が該連結部材245を介してカウンタギヤ50に連結されている。
以上説明したように、プラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側にプラネタリギヤPRが、軸方向他方側にクラッチC1及びクラッチC2が、クラッチC1及びクラッチC2とプラネタリギヤユニットPUとの間にカウンタギヤ50が配置されている。また、クラッチC3及びブレーキB1はプラネタリギヤPRの外周側に、ブレーキB2はプラネタリギヤユニットPUの外周側に、それぞれ配置されている。また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50は、入力軸20と同軸上に設けられて構成されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構25の作用について図19、図20及び図21に沿って説明する。なお、図21に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図21中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はキャリヤCR2、リングギヤR2、サンギヤS2に対応している。
図19に示すように、上記サンギヤS2には、クラッチC1が係合することにより入力軸20の回転が入力される。上記キャリヤCR2には、クラッチC2が係合することにより入力軸20の回転が入力されると共に、該キャリヤCR2は、ブレーキB2の係止により回転が固定自在となっており、また、ワンウェイクラッチF3により一方向の回転が規制されている。また、サンギヤS3は、ブレーキB1の係止により回転が固定自在になっている。
一方、上記サンギヤS1は、入力軸20に接続されており、該入力軸20の回転が入力され、また、上記キャリヤCR1はケース3bに接続されて回転が固定されており、それによってリングギヤR1は減速回転する。また、クラッチC3が係合することにより、該リングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力される。
そして、上記リングギヤR2の回転は、上記カウンタギヤ50に出力され、該カウンタギヤ50、上記カウンタシャフト部4及びディファレンシャル部5(図1参照)を介して不図示の駆動車輪に出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進1速段では、図20に示すように、クラッチC1及びワンウェイクラッチF3が係合される。すると、図21に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2に入力軸20の回転が入力されると共に、キャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。そして、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進1速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB2を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。また、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF3によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチの自動係合により滑らかに行うことができる。
D(ドライブ)レンジにおける前進2速段では、図20に示すように、クラッチC1が係合され、ブレーキB1が係止される。すると、図21に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2に入力軸20の回転が入力されると共に、ブレーキB1の係止によりサンギヤS3が固定される。それにより、キャリヤCR2が僅かに減速回転し、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転が、該減速回転のキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進2速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進3速段では、図20に示すように、クラッチC1及びクラッチC3が係合される。すると、図21に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2に入力軸20の回転が入力される。また、サンギヤS1に入力された入力軸20の回転と、固定されたキャリヤCR1とによりリングギヤR1が減速回転し、該リングギヤR1の減速回転がクラッチC3、及び伝達部材240を介してサンギヤS3に出力される。すると、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転と、サンギヤS3の減速回転とによりキャリヤCR2が、該サンギヤS3の減速回転より僅かに大きな減速回転となる。そして、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転が、該減速回転のキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進3速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材240は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進4速段では、図20に示すように、クラッチC1及びクラッチC2が係合される。すると、図21に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2と、クラッチC2を介してキャリヤCR2とに入力軸20の回転が入力される。それにより、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転と、キャリヤCR2に入力された入力軸20の回転とにより、つまり直結回転の状態となってリングギヤR2に入力軸20の回転がそのまま出力され、前進4速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進5速段では、図20に示すように、クラッチC2及びクラッチC3が係合される。すると、図21に示すように、クラッチC2を介してキャリヤCR2に入力軸20の回転が入力される。また、サンギヤS1に入力された入力軸20の回転と、固定されたキャリヤCR1とによりリングギヤR1が減速回転し、該リングギヤR1の減速回転がクラッチC3、及び上記伝達部材240を介してサンギヤS3に該減速回転が出力される。すると、サンギヤS3の減速回転と、入力軸20の回転が入力されたキャリヤCR2とにより、増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進5速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、上記前進3速段の状態と同様に、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材240は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進6速段では、図20に示すように、クラッチC2が係合され、ブレーキB1が係止される。すると、図21に示すように、クラッチC2を介してキャリヤCR2に入力軸20の回転が入力されると共に、ブレーキB1の係止によりサンギヤS3が固定される。それにより、キャリヤCR2に入力された入力軸20の回転と固定されたサンギヤS3とにより、(上記前進5速段よりも大きな)増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進6速段としての正転回転がカウンタギヤ50から出力される。
R(リバース)レンジにおける後進1速段では、図20に示すように、クラッチC3が係合され、ブレーキB2が係止される。すると、図21に示すように、サンギヤS1に入力された入力軸20の回転と、固定されたキャリヤCR1とによりリングギヤR1が減速回転し、該リングギヤR1の減速回転がクラッチC3、及び上記伝達部材240を介してサンギヤS3に該減速回転が出力される。また、ブレーキB2の係止によりキャリヤCR2が固定される。すると、サンギヤS3の減速回転と固定されたキャリヤCR2とにより、逆転回転としてリングギヤR2に出力され、後進1速段としての逆転回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際、上記前進3速段や前進5速段の状態と同様に、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材240は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
P(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、特にクラッチC1、クラッチC2及びクラッチC3が解放されており、入力軸20とカウンタギヤ50との間の動力伝達が切断状態であって、自動変速機構25全体としては空転状態(ニュートラル状態)となる。
以上のように、本発明に係る自動変速機構25によると、減速回転出力手段としてのプラネタリギヤPR、クラッチC3、及び伝達部材240をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側(図19中左方側)に配置し、クラッチC1及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側(図19中右方側)に配置し、更に、出力部材としてのカウンタギヤ50をクラッチC1及びクラッチC2とプラネタリギヤユニットPUとの間に配置したので、特にプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して位置に配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材240の軸方向の長さを比較的短くすることができる。それにより、自動変速機15のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、伝達部材240の軽量化によってイナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機15の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC2は、クラッチC1の外周側を通ってキャリヤCR2に連結されるので、各回転要素の連結のための部材の錯綜を防止でき、自動変速機15をコンパクト化することができる。
更に、クラッチC1は、その外周側にクラッチC2が配置される構造であり、外周側に拡径することができないが、油圧サーボ262を入力軸20上に設けることによって、(例えばボス部3c上に設ける場合より)該油圧サーボ262、特に油圧サーボ262用油室262aの受圧面積を内周側に大きく確保することができ、クラッチC1の容量を増大させることができる。
また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50を入力軸20と同軸上に設けるので、特に自動変速機15をFF車両に搭載した場合には、(例えば減速プラネタリギヤなどを他軸上に設ける場合に比して)駆動車輪伝達機構(例えばカウンタシャフト部4など)をコンパクト化することができ、例えば車体メンバとの干渉を防止することができ、自動変速機15の車両搭載性を向上させることができる。
また、クラッチC3が減速回転の出力を接・断するので、減速回転をサンギヤS3に出力自在にすることができるものでありながら、クラッチC3を解放することで、サンギヤS1に入力される入力軸の回転をプラネタリギヤPR、特にリングギヤR1にて空転させることができる。それにより、キャリヤCR1を、ブレーキを配設することなく、直接ケース3などに固定することができ、自動変速機15のコンパクト化、軽量化を可能にすることができる。また、キャリヤCR1を固定するブレーキを配設しないので、サンギヤS3を係止自在にするためのブレーキB1をプラネタリギヤPRの外周側に配設することが可能となる。
また、油圧サーボ262は入力軸20上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング281で漏れ止めして入力軸20内に設けられた油路20a,20bに油を供給することで、例えば入力軸20との油圧サーボ262との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ262の油室262aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ261,265は、それぞれケース3から延設されたボス部3c,3dから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング280,282をそれぞれ設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ262,261,265は、それぞれ1対のシールリング281,280,282を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機15の効率を向上させることができる。
また、摩擦板275がプラネタリギヤPRの径方向外周側に配置されるので、自動変速機15を軸方向にコンパクト化することができる。また、プラネタリギヤPRをクラッチC3の油圧サーボ265とプラネタリギヤユニットPUとの軸方向の間に配置することによって、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを隣接して配置することができるため(クラッチC3の油圧サーボ265がプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にないため)、伝達部材240を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機15のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機15の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、プラネタリギヤPRは、ダブルピニオンプラネタリギヤであるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができると共に、自動変速機15のギヤ比を良好に設定したとしても、プラネタリギヤユニット、減速プラネタリギヤの各回転要素を大きくすることがなく、高回転をも抑制できるため、自動変速機15をコンパクトにすることができる。
更に、プラネタリギヤPRは、入力回転要素であるサンギヤS1と、固定要素であるキャリヤCR1と、出力回転要素であるリングギヤR1と、を有して構成されるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができる。
また、プラネタリギヤユニットPUは、サンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2により構成されるラビニヨ型プラネタリギヤであるので、例えば前進6速段、後進1速段を可能にすることができるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材240を比較的短くすることができる。
また、ブレーキB2と並列に配置され、キャリヤCR2の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF3を備えているので、例えば正駆動時の前進1速段をクラッチC1とワンウェイクラッチF3の係合で達成できるため、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を滑らかに行うことができる。
更に、ブレーキB2とワンウェイクラッチF3とをプラネタリギヤユニットPUの外周側に配置するので、例えばワンウェイクラッチF3をクラッチC2に隣接して(特にハブ部材223の一方向の回転を規制するために)配置した場合に比して、クラッチC1,C2が配設されている部分を軸方向にコンパクト化することができるため、カウンタギヤ50をトルクコンバータ側に近づけることができる。それにより、カウンタシャフト52のギヤ51もトルクコンバータ側に近づけることができ、カウンタシャフト部4を軸方向に対してコンパクト化することができる。
また、速度線図に示すように、前進6速段、後進1速段を達成できるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材240を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機15のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機15の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、前進6速段及び後進1速段を達成するものであって、前進4速段にクラッチC1,C2を共に係合し、つまり前進4速段において直結状態となるので、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができ、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
また、駆動車輪伝達機構として、駆動車輪に回転を出力するディファレンシャル部5と、該ディファレンシャル部5に係合するカウンタシャフト部4と、を有し、出力部材がカウンタシャフト部4に噛合するカウンタギヤであるので、自動変速機15を例えばFF車輌に搭載することができる。
<第4の実施の形態>
以下、第3の実施の形態を一部変更した第4の実施の形態について図22に沿って説明する。図22は第4の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第4の実施の形態は、一部変更を除き、第3の実施の形態と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図22に示すように、第4の実施の形態に係る自動変速機1の自動変速機構26は、第3の実施の形態の自動変速機構25に対して(図19参照)、入力側と出力側とを逆にしたものである。また、前進1速段乃至前進6速段、及び後進1速段において、その作用は同様のものとなる(図20及び図21参照)。
これにより第3の実施の形態と同様に、本発明に係る自動変速機構26によると、減速回転出力手段としてのプラネタリギヤPR、クラッチC3、及び伝達部材240をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側(図22中右方側)に配置し、クラッチC1及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側(図22中左方側)に配置し、更に、出力部材としてのカウンタギヤ50をクラッチC1及びクラッチC2とプラネタリギヤユニットPUとの間に配置したので、特にプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して位置に配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材240の軸方向の長さを比較的短くすることができる。それにより、自動変速機16のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、伝達部材240の軽量化によってイナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機16の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC2は、クラッチC1の外周側を通ってキャリヤCR2に連結されるので、各回転要素の連結のための部材の錯綜を防止でき、自動変速機16をコンパクト化することができる。
更に、クラッチC1は、その外周側にクラッチC2が配置される構造であり、外周側に拡径することができないが、油圧サーボ262を入力軸20上に設けることによって、(例えばボス部3c上に設ける場合より)該油圧サーボ262、特に油圧サーボ262用油室262aの受圧面積を内周側に大きく確保することができ、クラッチC1の容量を増大させることができる。
また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50を入力軸20と同軸上に設けるので、特に自動変速機16をFF車両に搭載した場合には、(例えば減速プラネタリギヤなどを他軸上に設ける場合に比して)駆動車輪伝達機構(例えばカウンタシャフト部4など)をコンパクト化することができ、例えば車体メンバとの干渉を防止することができ、自動変速機16の車両搭載性を向上させることができる。
また、クラッチC3が減速回転の出力を接・断するので、減速回転をサンギヤS3に出力自在にすることができるものでありながら、クラッチC3を解放することで、サンギヤS1に入力される入力軸の回転をプラネタリギヤPR、特にリングギヤR1にて空転させることができる。それにより、キャリヤCR1を、ブレーキを配設することなく、直接ケース3などに固定することができ、自動変速機16のコンパクト化、軽量化を可能にすることができる。また、キャリヤCR1を固定するブレーキを配設しないので、サンギヤS3を係止自在にするためのブレーキB1をプラネタリギヤPRの外周側に配設することが可能となる。
また、油圧サーボ262は入力軸20上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング281で漏れ止めして入力軸20内に設けられた油路20a,20bに油を供給することで、例えば入力軸20との油圧サーボ262との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ262の油室262aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ261,265は、それぞれケース3から延設されたボス部3c,3dから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング280,282をそれぞれ設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ262,261,265は、それぞれ1対のシールリング281,280,282を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機16の効率を向上させることができる。
また、摩擦板275がプラネタリギヤPRの径方向外周側に配置されるので、自動変速機16を軸方向にコンパクト化することができる。また、プラネタリギヤPRをクラッチC3の油圧サーボ265とプラネタリギヤユニットPUとの軸方向の間に配置することによって、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを隣接して配置することができるため(クラッチC3の油圧サーボ265がプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にないため)、伝達部材240を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機16のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機16の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、プラネタリギヤPRは、ダブルピニオンプラネタリギヤであるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができると共に、自動変速機16のギヤ比を良好に設定したとしても、プラネタリギヤユニット、減速プラネタリギヤの各回転要素を大きくすることがなく、高回転をも抑制できるため、自動変速機16をコンパクトにすることができる。
更に、プラネタリギヤPRは、入力回転要素であるサンギヤS1と、固定要素であるキャリヤCR1と、出力回転要素であるリングギヤR1と、を有して構成されるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができる。
また、プラネタリギヤユニットPUは、サンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2により構成されるラビニヨ型プラネタリギヤであるので、例えば前進6速段、後進1速段を可能にすることができるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材240を比較的短くすることができる。
また、ブレーキB2と並列に配置され、キャリヤCR2の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF3を備えているので、例えば正駆動時の前進1速段をクラッチC1とワンウェイクラッチF3の係合で達成できるため、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を滑らかに行うことができる。
更に、ブレーキB2とワンウェイクラッチF3とをプラネタリギヤユニットPUの外周側に配置するので、例えばワンウェイクラッチF3をクラッチC2に隣接して(特にハブ部材223の一方向の回転を規制するために)配置した場合に比して、クラッチC1,C2が配設されている部分を軸方向にコンパクト化することができるため、カウンタギヤ50をトルクコンバータ側に近づけることができる。それにより、カウンタシャフト52のギヤ51もトルクコンバータ側に近づけることができ、カウンタシャフト部4を軸方向に対してコンパクト化することができる。
また、速度線図に示すように、前進6速段、後進1速段を達成できるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材240を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機16のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機16の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、前進6速段及び後進1速段を達成するものであって、前進4速段にクラッチC1,C2を共に係合し、つまり前進4速段において直結状態となるので、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができ、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
また、駆動車輪伝達機構として、駆動車輪に回転を出力するディファレンシャル部5と、該ディファレンシャル部5に係合するカウンタシャフト部4と、を有し、出力部材がカウンタシャフト部4に噛合するカウンタギヤであるので、自動変速機16を例えばFF車輌に搭載することができる。
<第3の参考例>
以下、第3の実施の形態を一部変更した第3の参考例について図23乃至図25に沿って説明する。図23は第3の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、図24は第3の参考例に係る自動変速機の作動表、図25は第3の参考例に係る自動変速機の速度線図である。なお、第3の参考例は、一部変更を除き、第3の実施の形態と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図23に示すように、第3の参考例に係る自動変速機1の自動変速機構27は、第3の実施の形態の自動変速機構25に対して(図19参照)、プラネタリギヤPRと、クラッチC3との配置を変更したものである。
該自動変速機構27において、クラッチ(第3のクラッチ)C3は、プラネタリギヤ(減速回転出力手段、減速プラネタリギヤ)PRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中左方側)に配置されており、該クラッチC3のドラム状部材331の先端部内周側は、摩擦板275にスプライン係合している。また、該クラッチC3のドラム状部材331は、入力軸20に接続されている。
一方、サンギヤ(入力回転要素、第1のサンギヤ)S1は、入力軸20に回転自在に支持されていると共に、ハブ部材332に接続されており、該ハブ部材332の先端部外周側には、上記摩擦板275がスプライン係合している。また、キャリヤ(固定要素、第1のキャリヤ)CR1は、その側板に固定部材330が接続されて、ケース3bに固定支持されている。そして、リングギヤ(出力回転要素、第1のリングギヤ)R1の外周側にブレーキB1の摩擦板274がスプライン係合していると共に、該リングギヤR1には伝達部材340が接続されて、該伝達部材340を介してサンギヤS3が接続されている。
また、クラッチC3用油圧サーボ265の油室265aは、上記入力軸20に形成されている油路20c,20dと連通しており、該油路20cは、ケース3のボス部3dの油路293に連通している。そして、該油路293は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ265は、入力軸20上に配置されているため、ケース3のボス部3dと入力軸20との間をシールする1対のシールリング283によって、不図示の油圧制御装置から油室265aまでの油路が構成されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構27の作用について図23、図24及び図25に沿って説明する。なお、上記第3の実施の形態と同様に、図25に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図25中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はキャリヤCR2、リングギヤR2、サンギヤS2に対応している。
図23に示すように、クラッチC3が係合することにより上記サンギヤS1には、入力軸20の回転が入力される。また、上記キャリヤCR1は、ケース3に対して回転が固定されており、上記リングギヤR1は、該サンギヤS1に入力される入力軸20の回転に基づき減速回転する。つまりサンギヤS3には、クラッチC3が係合することにより、伝達部材340を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、図21及び図22に示すように、プラネタリギヤPRにおいて、前進3速段、前進5速段、後進1速段では、クラッチC3が係合されることにより入力軸20の回転がサンギヤS1に入力され、固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR3に減速回転が出力されて、伝達部材340を介してサンギヤS3に減速回転が入力される。この際、リングギヤR1及びサンギヤS3は減速回転しているので、上記伝達部材340は、比較的大きなトルク伝達を行っている。一方、前進1速段、前進2速段、前進4速段、前進6速段では、伝達部材340を介してサンギヤS3の回転がリングギヤR1に入力され、クラッチC3が解放されているため、図25に示すように、サンギヤS1が、該リングギヤR1のそれぞれ変速段における回転と固定されたキャリヤCR1とに基づき回転する。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第3の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
以上のように、参考例に係る自動変速機構27によると、減速回転出力手段としてのプラネタリギヤPR、クラッチC3、及び伝達部材340をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側(図23中左方側)に配置し、クラッチC1及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側(図23中右方側)に配置し、更に、出力部材としてのカウンタギヤ50をクラッチC1及びクラッチC2とプラネタリギヤユニットPUとの間に配置したので、特にプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して位置に配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材340の軸方向の長さを比較的短くすることができる。それにより、自動変速機17のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、伝達部材340の軽量化によってイナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機17の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC2は、クラッチC1の外周側を通ってキャリヤCR2に連結されるので、各回転要素の連結のための部材の錯綜を防止でき、自動変速機17をコンパクト化することができる。
更に、クラッチC1は、その外周側にクラッチC2が配置される構造であり、外周側に拡径することができないが、油圧サーボ262を入力軸20上に設けることによって、(例えばボス部3c上に設ける場合より)該油圧サーボ262、特に油圧サーボ262用油室262aの受圧面積を内周側に大きく確保することができ、クラッチC1の容量を増大させることができる。
また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50を入力軸20と同軸上に設けるので、特に自動変速機17をFF車両に搭載した場合には、(例えば減速プラネタリギヤなどを他軸上に設ける場合に比して)駆動車輪伝達機構(例えばカウンタシャフト部4など)をコンパクト化することができ、例えば車体メンバとの干渉を防止することができ、自動変速機17の車両搭載性を向上させることができる。
また、例えば特開2001−263438号公報などに開示されているように、クラッチC3を、リングギヤR1とサンギヤS3との間に介在させると、減速回転を接・断する必要があり、比較的大きなものになってしまい、かつプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間が広がってしまうが、入力軸20とサンギヤS1との間に介在させることで、該クラッチC3による入力軸20の回転の接・断によってプラネタリギヤPRのリングギヤR1から出力される減速回転を接・断するので、クラッチC3をコンパクト化することができ、かつプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを比較的近い位置に配置することができる。それにより自動変速機17をコンパクト化することができる。
また、油圧サーボ262,265は入力軸20上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング281,283で漏れ止めして入力軸20内に設けられた油路20a,20b,20c,20dに油を供給することで、例えば入力軸20との油圧サーボ262,265との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ262,265の油室262a,265aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ261は、それぞれケース3から延設されたボス部3cから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング280をそれぞれ設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ262,261,265は、それぞれ1対のシールリング281,280,283を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機17の効率を向上させることができる。さらに、入力軸20上に油圧サーボ262,265が配置されるが、それぞれ入力軸20の一端側(図23中右方側)及び他端側(図23中左方側)に分けて配置されるため、入力軸20内の油圧サーボ用の油路(例えば油路20a及び油路20c)を重ねて設ける必要がないため、入力軸20を細くすることができ、自動変速機17をコンパクトにすることができる。
また、プラネタリギヤPRは、ダブルピニオンプラネタリギヤであるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができると共に、自動変速機17のギヤ比を良好に設定したとしても、プラネタリギヤユニット、減速プラネタリギヤの各回転要素を大きくすることがなく、高回転をも抑制できるため、自動変速機17をコンパクトにすることができる。
更に、プラネタリギヤPRは、入力回転要素であるサンギヤS1と、固定要素であるキャリヤCR1と、出力回転要素であるリングギヤR1と、を有して構成されるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができる。
また、プラネタリギヤユニットPUは、サンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2により構成されるラビニヨ型プラネタリギヤであるので、例えば前進6速段、後進1速段を可能にすることができるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材340を比較的短くすることができる。
また、ブレーキB2と並列に配置され、キャリヤCR2の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF3を備えているので、例えば正駆動時の前進1速段をクラッチC1とワンウェイクラッチF3の係合で達成できるため、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を滑らかに行うことができる。
更に、ブレーキB2とワンウェイクラッチF3とをプラネタリギヤユニットPUの外周側に配置するので、例えばワンウェイクラッチF3をクラッチC2に隣接して(特にハブ部材223の一方向の回転を規制するために)配置した場合に比して、クラッチC1,C2が配設されている部分を軸方向にコンパクト化することができるため、カウンタギヤ50をトルクコンバータ側に近づけることができる。それにより、カウンタシャフト52のギヤ51もトルクコンバータ側に近づけることができ、カウンタシャフト部4を軸方向に対してコンパクト化することができる。
また、速度線図に示すように、前進6速段、後進1速段を達成できるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材340を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機17のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機17の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、前進6速段及び後進1速段を達成するものであって、前進4速段にクラッチC1,C2を共に係合し、つまり前進4速段において直結状態となるので、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができ、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
また、駆動車輪伝達機構として、駆動車輪に回転を出力するディファレンシャル部5と、該ディファレンシャル部5に係合するカウンタシャフト部4と、を有し、出力部材がカウンタシャフト部4に噛合するカウンタギヤであるので、自動変速機17を例えばFF車輌に搭載することができる。
<第4の参考例>
以下、第3の実施の形態を一部変更した第4の参考例について図26乃至図28に沿って説明する。図26は第4の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、図27は第4の参考例に係る自動変速機の作動表、図28は第4の参考例に係る自動変速機の速度線図である。なお、第4の参考例は、一部変更を除き、第3の実施の形態と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図26に示すように、第4の参考例に係る自動変速機1の自動変速機構28は、第3の実施の形態の自動変速機構25に対して(図19参照)、クラッチC3の代わりにブレーキ(第3のブレーキ)B3を配置し、プラネタリギヤPRのキャリヤ(固定要素、第1のキャリヤ)CR1をブレーキB3により固定自在にしたものである。
該自動変速機構27において、ブレーキB3は、プラネタリギヤ(減速回転出力手段、減速プラネタリギヤ)PRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中左方側)に配置されている。該ブレーキB3は、油圧サーボ266、摩擦板276、ハブ部材432を有しており、該油圧サーボ266は、摩擦板276を押圧するためのピストン部材266bと、ケース3bの一部に形成されたシリンダ部266eと、該ピストン部材266bと該シリンダ部266eとの間にシールリング266f,266gによってシールされて形成される油室266aと、該ピストン部材266bを該油室266aの方向に付勢するリターンスプリング266cと、該リターンスプリング266cの付勢を受け止めるリターンプレート266dと、により構成されている。
該ブレーキB3のハブ部材432は、キャリヤCR1の一方の側板に接続されており、該キャリヤCR1の他方の側板434は、入力軸20に回転自在に支持されている。また、サンギヤ(入力回転要素、第1のサンギヤ)S1は入力軸20に接続されている。そして、リングギヤ(出力回転要素、第1のリングギヤ)R1の外周側にブレーキB1の摩擦板274がスプライン係合していると共に、該リングギヤR1には伝達部材440が接続されて、該伝達部材440を介してサンギヤS3が接続されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構28の作用について図26、図27及び図28に沿って説明する。なお、上記第3の実施の形態と同様に、図28に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図28中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はキャリヤCR2、リングギヤR2、サンギヤS2に対応している。
図26に示すように、ブレーキB3が係止することにより上記キャリヤCR1は、ケース3bに対して固定される。また、サンギヤS1には、入力軸20の回転が入力されており、上記リングギヤR1は、該キャリヤCR1が固定されることにより、該サンギヤS1に入力される入力軸20の回転に基づき減速回転する。つまりサンギヤS3には、ブレーキB3が係合することにより、伝達部材440を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、図27及び図28に示すように、プラネタリギヤPRにおいて、前進3速段、前進5速段、後進1速段では、ブレーキB3が係止されることによりキャリヤCR1が固定され、入力軸20の回転が入力されているサンギヤS1の回転によりリングギヤR3に減速回転が出力されて、伝達部材440を介してサンギヤS3に減速回転が入力される。この際、リングギヤR1及びサンギヤS3は減速回転しているので、上記伝達部材440は、比較的大きなトルク伝達を行っている。一方、前進1速段、前進2速段、前進4速段、前進6速段では、伝達部材440を介してサンギヤS3の回転がリングギヤR1に入力され、ブレーキB3が解放されているため、図28に示すように、キャリヤCR1が、該リングギヤR1のそれぞれ変速段における回転と入力軸20の回転のサンギヤS1とに基づき回転する。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第3の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
以上のように、参考例に係る自動変速機構28によると、減速回転出力手段としてのプラネタリギヤPR、ブレーキB3、及び伝達部材440をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側(図26中左方側)に配置し、クラッチC1及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側(図26中右方側)に配置し、更に、出力部材としてのカウンタギヤ50をクラッチC1及びクラッチC2とプラネタリギヤユニットPUとの間に配置したので、特にプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して位置に配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材340の軸方向の長さを比較的短くすることができる。それにより、自動変速機18のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、伝達部材440の軽量化によってイナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機18の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC2は、クラッチC1の外周側を通ってキャリヤCR2に連結されるので、各回転要素の連結のための部材の錯綜を防止でき、自動変速機18をコンパクト化することができる。
更に、クラッチC1は、その外周側にクラッチC2が配置される構造であり、外周側に拡径することができないが、油圧サーボ262を入力軸20上に設けることによって、(例えばボス部3c上に設ける場合より)該油圧サーボ262、特に油圧サーボ262用油室262aの受圧面積を内周側に大きく確保することができ、クラッチC1の容量を増大させることができる。
また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50を入力軸20と同軸上に設けるので、特に自動変速機18をFF車両に搭載した場合には、(例えば減速プラネタリギヤなどを他軸上に設ける場合に比して)駆動車輪伝達機構(例えばカウンタシャフト部4など)をコンパクト化することができ、例えば車体メンバとの干渉を防止することができ、自動変速機18の車両搭載性を向上させることができる。
また、ブレーキB3の係合により減速回転の出力を接・断するので、例えば減速回転を接・断するクラッチに比して、ブレーキB3をコンパクト化することができ、かつプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができる。それにより自動変速機18のコンパクト化、軽量化を可能にすることができる。
また、油圧サーボ262は入力軸20上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング281で漏れ止めして入力軸20内に設けられた油路20a,20bに油を供給することで、例えば入力軸20との油圧サーボ262との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ262の油室262aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ261は、それぞれケース3から延設されたボス部3cから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング280をそれぞれ設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ262,261は、それぞれ1対のシールリング281,280を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機18の効率を向上させることができる。
また、プラネタリギヤPRは、ダブルピニオンプラネタリギヤであるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができると共に、自動変速機18のギヤ比を良好に設定したとしても、プラネタリギヤユニット、減速プラネタリギヤの各回転要素を大きくすることがなく、高回転をも抑制できるため、自動変速機18をコンパクトにすることができる。
更に、プラネタリギヤPRは、入力回転要素であるサンギヤS1と、固定要素であるキャリヤCR1と、出力回転要素であるリングギヤR1と、を有して構成されるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができる。
また、プラネタリギヤユニットPUは、サンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2により構成されるラビニヨ型プラネタリギヤであるので、例えば前進6速段、後進1速段を可能にすることができるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材440を比較的短くすることができる。
また、ブレーキB2と並列に配置され、キャリヤCR2の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF3を備えているので、例えば正駆動時の前進1速段をクラッチC1とワンウェイクラッチF3の係合で達成できるため、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を滑らかに行うことができる。
更に、ブレーキB2とワンウェイクラッチF3とをプラネタリギヤユニットPUの外周側に配置するので、例えばワンウェイクラッチF3をクラッチC2に隣接して(特にハブ部材223の一方向の回転を規制するために)配置した場合に比して、クラッチC1,C2が配設されている部分を軸方向にコンパクト化することができるため、カウンタギヤ50をトルクコンバータ側に近づけることができる。それにより、カウンタシャフト52のギヤ51もトルクコンバータ側に近づけることができ、カウンタシャフト部4を軸方向に対してコンパクト化することができる。
また、速度線図に示すように、前進6速段、後進1速段を達成できるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材440を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機18のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機18の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、前進6速段及び後進1速段を達成するものであって、前進4速段にクラッチC1,C2を共に係合し、つまり前進4速段において直結状態となるので、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができ、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
また、駆動車輪伝達機構として、駆動車輪に回転を出力するディファレンシャル部5と、該ディファレンシャル部5に係合するカウンタシャフト部4と、を有し、出力部材がカウンタシャフト部4に噛合するカウンタギヤであるので、自動変速機18を例えばFF車輌に搭載することができる。
<第5の実施の形態>
以下、第1、第2及び第3の実施の形態を一部変更した第5の実施の形態について図29乃至図31に沿って説明する。図29は第5の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、図30は第5の実施の形態に係る自動変速機の作動表、図31は第5の実施の形態に係る自動変速機の速度線図である。なお、第5の実施の形態は、一部変更を除き、第1、第2及び第3の実施の形態と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
まず、第5の実施の形態に係る自動変速機1の自動変速機構29について図29に沿って説明する。図29に示すように、入力軸20上には、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤ(減速回転出力手段、減速プラネタリギヤ)PRとを有している。該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤ(第3の回転要素、第2のサンギヤ)S2、キャリヤ(第2の回転要素、第2のキャリヤ)CR2、リングギヤ(第4の回転要素、第2のリングギヤ)R2、及びサンギヤ(第1の回転要素、第3のサンギヤ)S3を有し、該キャリヤCR2に、側板542,544に支持されてサンギヤS2及びリングギヤR2に噛合するロングピニオンPLと、サンギヤS3に噛合するショートピニオンPSとを、互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。また、上記プラネタリギヤPRは、キャリヤ(固定要素、第1のキャリヤ)CR1に、リングギヤ(出力回転要素、第1のリングギヤ)R1に噛合するピニオンP2及びサンギヤ(入力回転要素、第1のサンギヤ)S1に噛合するピニオンP1を互いに噛合する形で有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
上記入力軸20上には、内周側に、油圧サーボ565、摩擦板572、クラッチドラム(第1のクラッチドラム)を形成するドラム状部材522と、キャリヤCR2に連結されるハブ部材(第2の回転要素に連結する部材)523、を有する多板式クラッチ(第1のクラッチ)C3と、その外周側に、油圧サーボ262、摩擦板571、クラッチドラム(第2のクラッチドラム)を形成するドラム部材524、サンギヤS2に連結されるハブ部材(第3の回転要素に連結する部材)525、を有する多板式クラッチ(第2のクラッチ)C2と、が配置されている。
該油圧サーボ565は、摩擦板272を押圧するためのピストン部材(第1のピストン)565bと、シリンダ部565eを有するドラム状部材522と、該ピストン部材565bと該シリンダ部565eとの間にシールリング565f,565gによってシールされて形成される油室(第1の油圧サーボ用油圧室)565aと、該ピストン部材565bを該油室565aの方向に付勢するリターンスプリング565cと、該リターンスプリング565cの付勢を受け止めるリターンプレート565dと、により構成されている。該油室565aは、上記入力軸20に形成されている油路20a,20bと連通しており、該油路20aは、ケース3の一端に延設され、入力軸20上にスリーブ状に設けられているボス部3cの油路591に連通している。そして、該油路591は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ565は、入力軸20上に配置されているため、ケース3のボス部3cと入力軸20との間をシールする1対のシールリング581によって、不図示の油圧制御装置から油室565aまでの油路が構成されている。
また、該油圧サーボ562は、摩擦板271を押圧するためのピストン部材(第2のピストン)562bと、シリンダ部材562eを有するドラム状部材524と、該ピストン部材562bと該シリンダ部材562eとの間にシールリング562f,562gによってシールされて形成される油室(第2の油圧サーボ用油圧室)562aと、該ピストン部材562bを該油室562aの方向に付勢するリターンスプリング562cと、該リターンスプリング562cの付勢を受け止めるリターンプレート562dと、により構成されている。該油室562aは、上記ボス部3cの油路592に連通しており、該油路592は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ562は、ケース3のボス部3cとシリンダ部材562eとの間をシールする1対のシールリング580によって、不図示の油圧制御装置から油室562aまでの油路が構成されている。
また、ハブ部材525の外周側には、油圧サーボ563、摩擦板574、を有する多板式ブレーキ(第3のブレーキ)B2が配置されている。該油圧サーボ563は、摩擦板574を押圧するためのピストン部材563bと、ケース3bの一部に形成されたシリンダ部563eと、該ピストン部材563bと該シリンダ部563eとの間にシールリング563f,563gによってシールされて形成される油室563aと、該ピストン部材563bを該油室563aの方向に付勢するリターンスプリング563cと、該リターンスプリング563cの付勢を受け止めるリターンプレート563dと、により構成されている。
即ち、上記入力軸20には、上記ドラム状部材522が接続されており、該ドラム状部材522の先端部内周側には、クラッチC3用油圧サーボ565によって係合自在となっているクラッチC3がスプライン係合する形で配置されて、該クラッチC3の内周側がハブ部材523にスプライン係合する形で接続されている。そして、該ハブ部材523は、上記サンギヤS2に接続されている。また、上記ドラム状部材524の先端部内周側には、クラッチC2用油圧サーボ562により係合自在となっているクラッチC2がスプライン係合する形で配置されており、該クラッチC2の内周側には、ハブ部材525がスプライン係合する形で接続されている。また、該ドラム状部材525の外周側には、ブレーキB2用油圧サーボ563により係止自在となっているブレーキB2がスプライン係合する形で配置されている。そして、該ハブ部材525は、上記キャリヤCR2に接続されている。
一方、入力軸20の他端上(図中左方)には、油圧サーボ561、摩擦板575、クラッチドラム(第3のクラッチドラム)を形成するドラム状部材531、を有する多板式クラッチ(第3のクラッチ)C1が配置されている。該油圧サーボ561は、摩擦板575を押圧するためのピストン部材561bと、シリンダ部561eを有するドラム状部材531と、該ピストン部材561bと該シリンダ部561eとの間にシールリング561f,561gによってシールされて形成される油室561aと、該ピストン部材561bを該油室561aの方向に付勢するリターンスプリング561cと、該リターンスプリング561cの付勢を受け止めるリターンプレート561dと、により構成されている。なお、ドラム状部材531からなるクラッチドラムは、プラネタリギヤPRの方向に開口しており、該プラネタリギヤPRは、油圧サーボ561とプラネタリギヤユニットPUとの軸方向の間に配置されている。また、摩擦板575がプラネタリギヤPRの径方向外径側に重なる位置に配置されている。
該油室561aは、ケース3の、上記ボス部3cとは反対側の他端に延設され、入力軸20上にスリーブ状に設けられているボス部3dの油路593に連通しており、該油路593は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ561は、ケース3のボス部3dとシリンダ部561eを有するドラム状部材532との間をシールする1対のシールリング582によって、不図示の油圧制御装置から油室561aまでの油路が構成されている。
即ち、上記ボス部3d上には、図中左方側において、ドラム状部材531が該ボス部3dに回転自在に支持されており、該ドラム状部材561の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ561により係合自在となっているクラッチC1がスプライン係合する形で配置されている。該クラッチC1の内周側には、上記リングギヤR1が形成されているハブ部材532がスプライン係合する形で配置されており、該ハブ部材532は、ボス部3dに回転自在に支持されている。また、キャリヤCR1は、ピニオンP1及びピニオンP2を有しており、該ピニオンP2は上記リングギヤR1に噛合し、該ピニオンP1は、入力軸20に接続されたサンギヤS1に噛合している。該キャリヤCR1は、側板633を介してケース3bに固定されている。
そして、上記クラッチC1がスプライン係合しているドラム状部材531は、上記ボス部3d上に回転自在に支持され、クラッチC1が係合した際にリングギヤR1の回転を伝達する伝達部材540が接続されており、また、該伝達部材540の他方側には、上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3が接続されている。
一方、プラネタリギヤユニットPUの外周側には、油圧サーボ564、摩擦板573、ハブ部材547を有する多板式ブレーキ(第2のブレーキ)B1とワンウェイクラッチ(第1のワンウェイクラッチ)F3とが配置されている。該油圧サーボ564は、摩擦板573を押圧するためのピストン部材564bと、ケース3bの一部に形成されたシリンダ部564eと、該ピストン部材564bと該シリンダ部564eとの間にシールリング564f,564gによってシールされて形成される油室564aと、該ピストン部材564bを該油室564aの方向に付勢するリターンスプリング564cと、該リターンスプリング564cの付勢を受け止めるリターンプレート564dと、により構成されている。
即ち、上記プラネタリギヤユニットPUのキャリヤCR2の側板542には、上記ブレーキB2がスプライン係合している形のハブ部材547が接続されており、また、該ハブ部材547にはワンウェイクラッチF3のインナーレースが接続されている。そして、該キャリヤCR2のロングピニオンPLには、上記リングギヤR2が噛合しており、該リングギヤR2の一端には連結部材545が接続されて、該リングギヤR2が該連結部材545を介してカウンタギヤ50に連結されている。
以上説明したように、プラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側にプラネタリギヤPRが、軸方向他方側にクラッチC2、クラッチC3及びブレーキB1が、クラッチC2、クラッチC3及びブレーキB1とプラネタリギヤユニットPUとの間にカウンタギヤ50が配置されている。また、クラッチC1はプラネタリギヤPRの外周側に、ブレーキB2はプラネタリギヤユニットPUの外周側に、それぞれ配置されている。また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50は、入力軸20と同軸上に設けられて構成されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構29の作用について図29、図30及び図31に沿って説明する。なお、図31に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図31中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR2、キャリヤCR2、サンギヤS2に対応している。
図29に示すように、上記サンギヤS2には、クラッチC2が係合することにより入力軸20の回転が入力されると共に、該サンギヤS1は、ブレーキB1の係止により回転が固定自在となっている。上記キャリヤCR2には、クラッチC3が係合することにより入力軸20の回転が入力されると共に、該キャリヤCR2は、ブレーキB2の係止により回転が固定自在となっており、また、ワンウェイクラッチF3により一方向の回転が規制されている。
一方、上記サンギヤS1は、入力軸20に接続されており、該入力軸20の回転が入力され、また、上記キャリヤCR1はケース3bに接続されて回転が固定されており、それによってリングギヤR1は減速回転する。また、クラッチC1が係合することにより、該リングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力される。
そして、上記リングギヤR2の回転は、上記カウンタギヤ50に出力され、該カウンタギヤ50、上記カウンタシャフト部4及びディファレンシャル部5(図1参照)を介して不図示の駆動車輪に出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進1速段では、図30に示すように、クラッチC1及びワンウェイクラッチF3が係合される。すると、図31に示すように、クラッチC1、伝達部材540を介してリングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力される。また、キャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。そして、サンギヤS3に入力された減速回転と、固定されたキャリヤCR2とにより、リングギヤR2が前進1速段としての正転回転となり、その回転がカウンタギヤ50から出力される。
なお、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB1を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。また、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF3によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチの自動係合により滑らかに行うことができる。なお、この際、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材540は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進2速段では、図30に示すように、クラッチC1が係合され、ブレーキB2が係止される。すると、図31に示すように、クラッチC1、伝達部材540を介してリングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力されると共に、サンギヤS2の回転がブレーキB2により固定される。それにより、キャリヤCR2が僅かに減速回転し、サンギヤS3に入力された減速回転と、該僅かな減速回転のキャリヤCR2とにより、リングギヤR2が前進2速段としての正転回転となり、その回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際も、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材540は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進3速段では、図30に示すように、クラッチC1及びクラッチC2が係合される。すると、図31に示すように、クラッチC1、伝達部材540を介してリングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力されると共に、クラッチC2の係合によりサンギヤS2に入力軸20の回転が入力される。すると、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転と、サンギヤS3の減速回転とにより、キャリヤCR2が、該サンギヤS3の減速回転より僅かに大きな減速回転となる。そして、サンギヤS2の入力回転と、サンギヤS3の減速回転とにより、リングギヤR2が前進3速段としての正転回転となり、その回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際も、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材540は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進4速段では、図30に示すように、クラッチC1及びクラッチC3が係合される。すると、図31に示すように、クラッチC1、伝達部材540を介してリングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力されると共に、クラッチC3を介してキャリヤCR2に入力軸20の回転が入力される。そして、キャリヤCR2に入力された入力軸20の回転と、サンギヤS3の減速回転とにより、リングギヤR2が前進4速段としての正転回転となり、その回転がカウンタギヤ50から出力される。なお、この際も、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材540は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進5速段では、図30に示すように、クラッチC2及びクラッチC3が係合される。すると、図31に示すように、クラッチC3を介してキャリヤCR2に入力軸20の回転が入力されると共に、クラッチC2を介してサンギヤS2に入力軸20の回転が入力される。そして、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転と、キャリヤCR2に入力された入力軸20の回転とにより、つまりリングギヤR2が直結回転の状態となって、前進5速段として入力軸20と同回転の正転回転となり、その回転がカウンタギヤ50から出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進6速段では、図30に示すように、クラッチC3が係合され、ブレーキB2が係止される。すると、図31に示すように、クラッチC3を介してキャリヤCR2に入力軸20の回転が入力されると共に、ブレーキB2の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。そして、キャリヤCR2に入力された入力軸20の回転と、固定されたサンギヤS2とにより、リングギヤR2が前進6速段としての増速回転となり、その回転がカウンタギヤ50から出力される。
R(リバース)レンジにおける後進1速段では、図30に示すように、クラッチC2が係合され、ブレーキB1が係止される。すると、図31に示すように、クラッチC2の係合によりサンギヤS2に入力軸20の回転が入力されると共に、ブレーキB1の係止によりキャリヤCR2の回転が固定される。そして、サンギヤS2に入力された入力軸20の回転と、固定されたキャリヤCR2とにより、リングギヤR2が後進1速段としての逆転回転となり、その回転がカウンタギヤ50から出力される。
P(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、特にクラッチC1、クラッチC2及びクラッチC3が解放されており、入力軸20とカウンタギヤ50との間の動力伝達が切断状態であって、自動変速機構29全体としては空転状態(ニュートラル状態)となる。なお、キャリヤCR2を固定するブレーキB1が係止されているが、これは該ブレーキB1の頻繁な係止・解放の繰り返しを防止するものであって、特に自動変速機構29内のその他の回転要素の回転状態に影響を与えるものではない。
以上のように、本発明に係る自動変速機構29によると、減速回転出力手段としてのプラネタリギヤPR、クラッチC1、及び伝達部材540をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側(図29中左方側)に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側(図29中右方側)に配置し、更に、出力部材としてのカウンタギヤ50をクラッチC2及びクラッチC3とプラネタリギヤユニットPUとの間に配置したので、特にプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して位置に配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材540の軸方向の長さを比較的短くすることができる。それにより、自動変速機19のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、伝達部材540の軽量化によってイナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機19の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC2は、クラッチC3の外周側を通ってキャリヤCR2に連結されるので、各回転要素の連結のための部材の錯綜を防止でき、自動変速機19をコンパクト化することができる。
更に、クラッチC3は、その外周側にクラッチC2が配置される構造であり、外周側に拡径することができないが、油圧サーボ565を入力軸20上に設けることによって、(例えばボス部3c上に設ける場合より)該油圧サーボ565、特に油圧サーボ565用油室565aの受圧面積を内周側に大きく確保することができ、クラッチC3の容量を増大させることができる。
また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50を入力軸20と同軸上に設けるので、特に自動変速機19をFF車両に搭載した場合には、(例えば減速プラネタリギヤなどを他軸上に設ける場合に比して)駆動車輪伝達機構(例えばカウンタシャフト部4など)をコンパクト化することができ、例えば車体メンバとの干渉を防止することができ、自動変速機19の車両搭載性を向上させることができる。
また、クラッチC1が減速回転の出力を接・断するので、減速回転をサンギヤS3に出力自在にすることができるものでありながら、クラッチC1を解放することで、サンギヤS1に入力される入力軸の回転をプラネタリギヤPR、特にリングギヤR1にて空転させることができる。それにより、キャリヤCR1を、ブレーキを配設することなく、直接ケース3などに固定することができ、自動変速機19のコンパクト化、軽量化を可能にすることができる。
また、油圧サーボ565は入力軸20上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング281で漏れ止めして入力軸20内に設けられた油路20a,20bに油を供給することで、例えば入力軸20との油圧サーボ565との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ565の油室565aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ562,561は、それぞれケース3から延設されたボス部3c,3dから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング580,582をそれぞれ設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ565,562,561は、それぞれ1対のシールリング581,580,582を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機19の効率を向上させることができる。
また、摩擦板575がプラネタリギヤPRの径方向外周側に配置されるので、自動変速機19を軸方向にコンパクト化することができる。また、プラネタリギヤPRをクラッチC1の油圧サーボ561とプラネタリギヤユニットPUとの軸方向の間に配置することによって、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを隣接して配置することができるため(クラッチC1の油圧サーボ561がプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にないため)、伝達部材540を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機19のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機19の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、プラネタリギヤPRは、ダブルピニオンプラネタリギヤであるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができると共に、自動変速機19のギヤ比を良好に設定したとしても、プラネタリギヤユニット、減速プラネタリギヤの各回転要素を大きくすることがなく、高回転をも抑制できるため、自動変速機19をコンパクトにすることができる。
更に、プラネタリギヤPRは、入力回転要素であるサンギヤS1と、固定要素であるキャリヤCR1と、出力回転要素であるリングギヤR1と、を有して構成されるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができる。
また、プラネタリギヤユニットPUは、サンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2により構成されるラビニヨ型プラネタリギヤであるので、例えば前進6速段、後進1速段を可能にすることができるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材540を比較的短くすることができる。
また、ブレーキB1と並列に配置され、キャリヤCR2の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF3を備えているので、例えば正駆動時の前進1速段をクラッチC1とワンウェイクラッチF3の係合で達成できるため、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を滑らかに行うことができる。
更に、ブレーキB1とワンウェイクラッチF3とをプラネタリギヤユニットPUの外周側に配置するので、例えばワンウェイクラッチF3をクラッチC2に隣接して(特にハブ部材523の一方向の回転を規制するために)配置した場合に比して、クラッチC1,C2が配設されている部分を軸方向にコンパクト化することができるため、カウンタギヤ50をトルクコンバータ側に近づけることができる。それにより、カウンタシャフト52のギヤ51もトルクコンバータ側に近づけることができ、カウンタシャフト部4を軸方向に対してコンパクト化することができる。
また、速度線図に示すように、前進6速段、後進1速段を達成できるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材540を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機19のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機19の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、本自動変速機構29は、前進5速段において直結状態となり、つまり減速回転を前記1速段から前進4速段までの4段にわたって出力することができ、特に自動変速機構29を車輌に搭載した際に、車輌の低中速領域での変速を細分化することができる。それにより、特に車輌の低中速領域において、例えばエンジン等の駆動源の最良効率となる回転数領域をより多く使用することが可能となり、燃費の向上を図ることができる。更に、前進5速段の際に直結状態とするので、前進6速段のみをオーバードライブとすることができ、例えば前進4速段の際に直結状態となって前進5速段及び前進6速段がオーバードライブとなるものに比して、最終減速比を小さくすることができる。それにより、例えばディファレンシャル部5のデフリングギヤ径を小さくすることができ、入力軸20とディファレンシャル部5の軸との軸間距離を短縮することができ、特にFF車両に搭載した場合には、自動変速機19をコンパクトにすることができる。
また、駆動車輪伝達機構として、駆動車輪に回転を出力するディファレンシャル部5と、該ディファレンシャル部5に係合するカウンタシャフト部4と、を有し、出力部材がカウンタシャフト部4に噛合するカウンタギヤであるので、自動変速機19を例えばFF車輌に搭載することができる。
<第5の参考例>
以下、第5の実施の形態を一部変更した第5の参考例について図32乃至図34に沿って説明する。図32は第5の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、図33は第5の参考例に係る自動変速機の作動表、図34は第5の参考例に係る自動変速機の速度線図である。なお、第5の参考例は、一部変更を除き、第5の実施の形態と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図32に示すように、第5の参考例に係る自動変速機1の自動変速機構210は、第5の実施の形態の自動変速機構29に対して(図29参照)、プラネタリギヤ(減速回転出力手段、減速プラネタリギヤ)PRと、クラッチ(第3のクラッチ)C1との配置を変更したものである。
該自動変速機構210において、クラッチC1は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中左方側)に配置されており、該クラッチC1のドラム状部材631の先端部内周側は、摩擦板575にスプライン係合している。また、該クラッチC1のドラム状部材631は、入力軸20に接続されている。
一方、サンギヤ(入力回転要素、第1のサンギヤ)S1は、入力軸20に回転自在に支持されていると共に、ハブ部材632に接続されており、該ハブ部材632の先端部外周側には、上記摩擦板575がスプライン係合している。また、キャリヤ(固定要素、第1のキャリヤ)CR1は、その側板に固定部材633が接続されて、ケース3bに固定支持されている。そして、リングギヤ(出力回転要素、第1のリングギヤ)R1には伝達部材640が接続されて、該伝達部材640を介してサンギヤS3が接続されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構210の作用について図32、図33及び図34に沿って説明する。なお、上記第5の実施の形態と同様に、図34に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図34中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はキャリヤCR2、リングギヤR2、サンギヤS2に対応している。
図32に示すように、クラッチC1が係合することにより上記サンギヤS1には、入力軸20の回転が入力される。また、上記キャリヤCR1は、ケース3に対して回転が固定されており、上記リングギヤR1は、該サンギヤS1に入力される入力軸20の回転に基づき減速回転する。つまりサンギヤS3には、クラッチC1が係合することにより、伝達部材640を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、図33及び図34に示すように、プラネタリギヤPRにおいて、前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段では、クラッチC1が係合されることにより入力軸20の回転がサンギヤS1に入力され、固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR3に減速回転が出力されて、伝達部材640を介してサンギヤS3に減速回転が入力される。この際、リングギヤR1及びサンギヤS3は減速回転しているので、上記伝達部材640は、比較的大きなトルク伝達を行っている。一方、前進5速段、前進6速段、後進1速段では、伝達部材640を介してサンギヤS3の回転がリングギヤR1に入力され、クラッチC1が解放されているため、図34に示すように、サンギヤS1が、該リングギヤR1のそれぞれ変速段における回転と固定されたキャリヤCR1とに基づき回転する。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第5の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
以上のように、参考例に係る自動変速機構210によると、減速回転出力手段としてのプラネタリギヤPR、クラッチC1、及び伝達部材640をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側(図32中左方側)に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側(図32中右方側)に配置し、更に、出力部材としてのカウンタギヤ50をクラッチC2及びクラッチC3とプラネタリギヤユニットPUとの間に配置したので、特にプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して位置に配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材640の軸方向の長さを比較的短くすることができる。それにより、自動変速機110のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、伝達部材640の軽量化によってイナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機110の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC2は、クラッチC3の外周側を通ってキャリヤCR2に連結されるので、各回転要素の連結のための部材の錯綜を防止でき、自動変速機110をコンパクト化することができる。
更に、クラッチC3は、その外周側にクラッチC2が配置される構造であり、外周側に拡径することができないが、油圧サーボ565を入力軸20上に設けることによって、(例えばボス部3c上に設ける場合より)該油圧サーボ565、特に油圧サーボ565用油室565aの受圧面積を内周側に大きく確保することができ、クラッチC3の容量を増大させることができる。
また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50を入力軸20と同軸上に設けるので、特に自動変速機110をFF車両に搭載した場合には、(例えば減速プラネタリギヤなどを他軸上に設ける場合に比して)駆動車輪伝達機構(例えばカウンタシャフト部4など)をコンパクト化することができ、例えば車体メンバとの干渉を防止することができ、自動変速機110の車両搭載性を向上させることができる。
また、例えば特開2001−263438号公報などに開示されているように、クラッチC1を、リングギヤR1とサンギヤS3との間に介在させると、減速回転を接・断する必要があり、比較的大きなものになってしまい、かつプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間が広がってしまうが、入力軸20とサンギヤS1との間に介在させることで、該クラッチC1による入力軸20の回転の接・断によってプラネタリギヤPRのリングギヤR1から出力される減速回転を接・断するので、クラッチC1をコンパクト化することができ、かつプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを比較的近い位置に配置することができる。それにより自動変速機110をコンパクト化することができる。
また、油圧サーボ565は入力軸20上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング281で漏れ止めして入力軸20内に設けられた油路20a,20bに油を供給することで、例えば入力軸20との油圧サーボ565との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ565の油室565aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ562,561は、それぞれケース3から延設されたボス部3c,3dから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング580,582をそれぞれ設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ565,562,561は、それぞれ1対のシールリング581,580,582を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機110の効率を向上させることができる。
また、プラネタリギヤPRは、ダブルピニオンプラネタリギヤであるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができると共に、自動変速機110のギヤ比を良好に設定したとしても、プラネタリギヤユニット、減速プラネタリギヤの各回転要素を大きくすることがなく、高回転をも抑制できるため、自動変速機110をコンパクトにすることができる。
更に、プラネタリギヤPRは、入力回転要素であるサンギヤS1と、固定要素であるキャリヤCR1と、出力回転要素であるリングギヤR1と、を有して構成されるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができる。
また、プラネタリギヤユニットPUは、サンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2により構成されるラビニヨ型プラネタリギヤであるので、例えば前進6速段、後進1速段を可能にすることができるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材640を比較的短くすることができる。
また、ブレーキB1と並列に配置され、キャリヤCR2の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF3を備えているので、例えば正駆動時の前進1速段をクラッチC1とワンウェイクラッチF3の係合で達成できるため、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を滑らかに行うことができる。
更に、ブレーキB1とワンウェイクラッチF3とをプラネタリギヤユニットPUの外周側に配置するので、例えばワンウェイクラッチF3をクラッチC2に隣接して(特にハブ部材523の一方向の回転を規制するために)配置した場合に比して、クラッチC1,C2が配設されている部分を軸方向にコンパクト化することができるため、カウンタギヤ50をトルクコンバータ側に近づけることができる。それにより、カウンタシャフト52のギヤ51もトルクコンバータ側に近づけることができ、カウンタシャフト部4を軸方向に対してコンパクト化することができる。
また、速度線図に示すように、前進6速段、後進1速段を達成できるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材640を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機110のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機110の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、本自動変速機構210は、前進5速段において直結状態となり、つまり減速回転を前記1速段から前進4速段までの4段にわたって出力することができ、特に自動変速機構210を車輌に搭載した際に、車輌の低中速領域での変速を細分化することができる。それにより、特に車輌の低中速領域において、例えばエンジン等の駆動源の最良効率となる回転数領域をより多く使用することが可能となり、燃費の向上を図ることができる。更に、前進5速段の際に直結状態とするので、前進6速段のみをオーバードライブとすることができ、例えば前進4速段の際に直結状態となって前進5速段及び前進6速段がオーバードライブとなるものに比して、最終減速比を小さくすることができる。それにより、例えばディファレンシャル部5のデフリングギヤ径を小さくすることができ、入力軸20とディファレンシャル部5の軸との軸間距離を短縮することができ、特にFF車両に搭載した場合には、自動変速機110をコンパクトにすることができる。
また、駆動車輪伝達機構として、駆動車輪に回転を出力するディファレンシャル部5と、該ディファレンシャル部5に係合するカウンタシャフト部4と、を有し、出力部材がカウンタシャフト部4に噛合するカウンタギヤであるので、自動変速機110を例えばFF車輌に搭載することができる。
<第6の参考例>
以下、第5の実施の形態を一部変更した第6の参考例について図35乃至図37に沿って説明する。図35は第6の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、図36は第6の参考例に係る自動変速機の作動表、図37は第6の参考例に係る自動変速機の速度線図である。なお、第6の参考例は、一部変更を除き、第5の実施の形態と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
図35に示すように、第6の参考例に係る自動変速機1の自動変速機構211は、第5の実施の形態の自動変速機構29に対して(図29参照)、クラッチC1の代わりにブレーキ(第3のブレーキ)B3を配置し、プラネタリギヤ(減速回転出力手段、減速プラネタリギヤ)PRのキャリヤ(固定要素、第1のキャリヤ)CR1をブレーキB3により固定自在にしたものである。
該自動変速機構211において、ブレーキB3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中左方側)に配置されている。該ブレーキB3は、油圧サーボ566、摩擦板576、ハブ部材731を有しており、該油圧サーボ566は、摩擦板576を押圧するためのピストン部材566bと、ケース3bの一部に形成されたシリンダ部566eと、該ピストン部材566bと該シリンダ部566eとの間にシールリング566f,566gによってシールされて形成される油室566aと、該ピストン部材566bを該油室566aの方向に付勢するリターンスプリング566cと、該リターンスプリング566cの付勢を受け止めるリターンプレート566dと、により構成されている。
該ブレーキB3のハブ部材731は、キャリヤCR1の側板732に接続されており、該側板732は、ボス部3dに回転自在に支持されている。そして、該キャリヤCR1のピニオンP1に噛合するサンギヤ(入力回転要素、第1のサンギヤ)S1は入力軸20に接続されていると共に、該キャリヤCR1のピニオンP2に噛合するリングギヤ(出力回転要素、第1のリングギヤ)R1には伝達部材740が接続されて、該伝達部材740を介してサンギヤS3が接続されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構211の作用について図35、図36及び図37に沿って説明する。なお、上記第5の実施の形態と同様に、図37に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(図37中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR2、キャリヤCR2、サンギヤS2に対応している。
図35に示すように、ブレーキB3が係止することにより上記キャリヤCR1は、ケース3bに対して固定される。また、サンギヤS1には、入力軸20の回転が入力されており、上記リングギヤR1は、該キャリヤCR1が固定されることにより、該サンギヤS1に入力される入力軸20の回転に基づき減速回転する。つまりサンギヤS3には、ブレーキB3が係合することにより、伝達部材740を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、図36及び図37に示すように、プラネタリギヤPRにおいて、前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段では、ブレーキB3が係止されることによりキャリヤCR1が固定され、入力軸20の回転が入力されているサンギヤS1の回転によりリングギヤR3に減速回転が出力されて、伝達部材740を介してサンギヤS3に減速回転が入力される。この際、リングギヤR1及びサンギヤS3は減速回転しているので、上記伝達部材740は、比較的大きなトルク伝達を行っている。一方、前進5速段、前進6速段、後進1速段では、伝達部材740を介してサンギヤS3の回転がリングギヤR1に入力され、ブレーキB3が解放されているため、図37に示すように、キャリヤCR1が、該リングギヤR1のそれぞれ変速段における回転と入力軸20の回転のサンギヤS1とに基づき回転する。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第5の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
以上のように、参考例に係る自動変速機構211によると、減速回転出力手段としてのプラネタリギヤPR、ブレーキB3、及び伝達部材740をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側(図35中左方側)に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側(図35中右方側)に配置し、更に、出力部材としてのカウンタギヤ50をクラッチC2及びクラッチC3とプラネタリギヤユニットPUとの間に配置したので、特にプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して位置に配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材740の軸方向の長さを比較的短くすることができる。それにより、自動変速機111のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、伝達部材740の軽量化によってイナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機111の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC2は、クラッチC3の外周側を通ってキャリヤCR2に連結されるので、各回転要素の連結のための部材の錯綜を防止でき、自動変速機111をコンパクト化することができる。
更に、クラッチC3は、その外周側にクラッチC2が配置される構造であり、外周側に拡径することができないが、油圧サーボ565を入力軸20上に設けることによって、(例えばボス部3c上に設ける場合より)該油圧サーボ565、特に油圧サーボ565用油室565aの受圧面積を内周側に大きく確保することができ、クラッチC3の容量を増大させることができる。
また、プラネタリギヤPR、プラネタリギヤユニットPU、及びカウンタギヤ50を入力軸20と同軸上に設けるので、特に自動変速機111をFF車両に搭載した場合には、(例えば減速プラネタリギヤなどを他軸上に設ける場合に比して)駆動車輪伝達機構(例えばカウンタシャフト部4など)をコンパクト化することができ、例えば車体メンバとの干渉を防止することができ、自動変速機111の車両搭載性を向上させることができる。
また、ブレーキB3の係合により減速回転の出力を接・断するので、例えば減速回転を接・断するクラッチに比して、ブレーキB3をコンパクト化することができ、かつプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができる。それにより自動変速機111のコンパクト化、軽量化を可能にすることができる。
また、油圧サーボ565は入力軸20上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング581で漏れ止めして入力軸20内に設けられた油路20a,20bに油を供給することで、例えば入力軸20との油圧サーボ565との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ565の油室565aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ562は、それぞれケース3から延設されたボス部3cから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング580をそれぞれ設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ565,562は、それぞれ1対のシールリング581,580を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機111の効率を向上させることができる。
また、プラネタリギヤPRは、ダブルピニオンプラネタリギヤであるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができると共に、自動変速機111のギヤ比を良好に設定したとしても、プラネタリギヤユニット、減速プラネタリギヤの各回転要素を大きくすることがなく、高回転をも抑制できるため、自動変速機111をコンパクトにすることができる。
更に、プラネタリギヤPRは、入力回転要素であるサンギヤS1と、固定要素であるキャリヤCR1と、出力回転要素であるリングギヤR1と、を有して構成されるので、入力軸20の回転を減速回転として出力することができる。
また、プラネタリギヤユニットPUは、サンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2により構成されるラビニヨ型プラネタリギヤであるので、例えば前進6速段、後進1速段を可能にすることができるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材740を比較的短くすることができる。
また、ブレーキB1と並列に配置され、キャリヤCR2の回転を一方向に規制するワンウェイクラッチF3を備えているので、例えば正駆動時の前進1速段をクラッチC1とワンウェイクラッチF3の係合で達成できるため、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を滑らかに行うことができる。
更に、ブレーキB1とワンウェイクラッチF3とをプラネタリギヤユニットPUの外周側に配置するので、例えばワンウェイクラッチF3をクラッチC2に隣接して(特にハブ部材523の一方向の回転を規制するために)配置した場合に比して、クラッチC1,C2が配設されている部分を軸方向にコンパクト化することができるため、カウンタギヤ50をトルクコンバータ側に近づけることができる。それにより、カウンタシャフト52のギヤ51もトルクコンバータ側に近づけることができ、カウンタシャフト部4を軸方向に対してコンパクト化することができる。
また、速度線図に示すように、前進6速段、後進1速段を達成できるものでありながら、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近接して配置することができ、減速回転を伝達する伝達部材740を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機111のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機111の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、本自動変速機構211は、前進5速段において直結状態となり、つまり減速回転を前記1速段から前進4速段までの4段にわたって出力することができ、特に自動変速機構211を車輌に搭載した際に、車輌の低中速領域での変速を細分化することができる。それにより、特に車輌の低中速領域において、例えばエンジン等の駆動源の最良効率となる回転数領域をより多く使用することが可能となり、燃費の向上を図ることができる。更に、前進5速段の際に直結状態とするので、前進6速段のみをオーバードライブとすることができ、例えば前進4速段の際に直結状態となって前進5速段及び前進6速段がオーバードライブとなるものに比して、最終減速比を小さくすることができる。それにより、例えばディファレンシャル部5のデフリングギヤ径を小さくすることができ、入力軸20とディファレンシャル部5の軸との軸間距離を短縮することができ、特にFF車両に搭載した場合には、自動変速機111をコンパクトにすることができる。
また、駆動車輪伝達機構として、駆動車輪に回転を出力するディファレンシャル部5と、該ディファレンシャル部5に係合するカウンタシャフト部4と、を有し、出力部材がカウンタシャフト部4に噛合するカウンタギヤであるので、自動変速機111を例えばFF車輌に搭載することができる。
なお、以上の本発明に係る第1乃至第5の実施の形態、及び第1乃至第6の参考例において、自動変速機にトルクコンバータ12を備えているものを一例として説明しているが、これに限らず、発進時にトルク(回転)の伝達を行うような発進装置であれば何れのものであってもよい。また、駆動源としてエンジンである車輌に搭載する場合について説明したが、これに限らず、ハイブリッド車輌に搭載することも可能であり、駆動源が何れのものであってもよいことは、勿論である。更に、上記自動変速機はFF車輌に用いて好適であるが、これに限らず、FR車輌、4輪駆動車輌など、他の駆動方式の車輌に用いることも可能である。
また、以上の第1乃至第5の実施の形態、及び第1乃至第6の参考例において、減速回転出力手段の構成をそれぞれ1つのもの一例として説明しているが、それら全ての実施の形態において、入力軸と入力回転要素との間にクラッチを設けるもの、減速回転要素と第1の回転要素との間にクラッチを設けるもの、固定要素をブレーキにより固定自在にするもの、入力軸と入力回転要素との間にクラッチを設け、かつ固定要素をブレーキにより固定自在にするもの、の何れのものを適用してもよい。
更に、例えば第3の実施の形態と第4の実施の形態とにおいて、自動変速機構の入力側と出力側とを入れ替えた形のものを説明したが、これに限らず、その他の実施の形態における自動変速機構も入力側と出力側とを入れ替えた形のものを用いることが可能である。