<第1の参考例>
以下、本発明に係る第1の参考例について第1図乃至第3図に沿って説明する。第1図は第1の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、第2図は第1の参考例に係る自動変速機の作動表、第3図は第1の参考例に係る自動変速機の速度線図である。
本発明の第1の参考例に係る自動変速機は、第1図に示すような自動変速機構11を有しており、特にFF(フロントエンジン、フロントドライブ)車輌に用いて好適であって、不図示のハウジングケース及びミッションケース3からなるケースを有しており、該ハウジングケース内に不図示のトルクコンバータ、該ミッションケース3内に自動変速機構11、不図示のカウンタシャフト部(駆動車輪伝達機構)及びディファレンシャル部(駆動車輪伝達機構)が配置されている。
該トルクコンバータは、例えばエンジン(不図示)の出力軸と同軸上である自動変速機構11の入力軸2を中心とした軸上に配置されており、該自動変速機構11は、該エンジンの出力軸、即ち、該入力軸2を中心とした軸上に配置されている。また、上記カウンタシャフト部は、それら入力軸2と平行な軸上であるカウンタシャフト(不図示)上に配置されており、上記ディファレンシャル部は、該カウンタシャフトと平行な軸上に不図示の左右車軸を有する形で配置されている。
ついで、第1の参考例に係る自動変速機の自動変速機構11について第1図に沿って説明する。第1図に示すように、入力軸2上には、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤ(減速回転出力手段)PRとを有している。該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤ(第2の回転要素)S2、キャリヤ(第3の回転要素)CR2、リングギヤ(第4の回転要素)R3、及びサンギヤ(第1の回転要素)S3を有し、該キャリヤCR2が、サンギヤS3及びリングギヤR3に噛合するロングピニオンPLと、サンギヤS2に噛合するショートピニオンPSとを、互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。また、上記プラネタリギヤPRは、キャリヤCR1に、リングギヤR1に噛合するピニオンPb及びサンギヤS1に噛合するピニオンPaを互いに噛合する形で有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
上記入力軸2上には、内周側に、油圧サーボ11、摩擦板71、クラッチドラムを形成するドラム状部材21と、サンギヤS2に連結されるハブ部材22、を有する多板式クラッチ(第1のクラッチ)C1と、その外周側に、油圧サーボ13、摩擦板73、クラッチドラムを形成するドラム部材25、を有する多板式クラッチ(第3のクラッチ)C3と、が配置されている。また、ドラム状部材25の外周側には、油圧サーボ14、摩擦板74、を有する多板式ブレーキ(第1のブレーキ)B1が配置されている。
該油圧サーボ11は、摩擦板71を押圧するためのピストン部材bと、シリンダ部eを有するドラム状部材21と、該ピストン部材bと該シリンダ部eとの間にシールリングf,gによってシールされて形成される油圧サーボ用油圧室(以下、単に「油室」とする。)aと、該ピストン部材bを該油室aの方向に付勢するリターンスプリングcと、該リターンスプリングcの付勢を受け止めるリターンプレートdと、により構成されている。
なお、以下の説明において、各油圧サーボは、同様に油室a、ピストン部材b、リターンスプリングc、リターンプレートd、シリンダ部材e、シールリングf,gにより構成されているものとし、その説明を省略する。
該油圧サーボ11の油室aは、上記入力軸2に形成されている油路2aと連通しており、該油路2aは、ケース3の一端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3aの油路91に連通している。そして、該油路91は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ11に対しては、入力軸2上に配置されているため、ケース3のボス部3aと入力軸2との間をシールする1対のシールリング81を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ11の油室aまでの油路が構成されている。
また、上記油圧サーボ13の油室aは、上記ボス部3aの油路92に連通しており、該油路92は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ13に対しては、ケース3のボス部3aとドラム状部材25との間をシールする1対のシールリング80を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ13の油室aまでの油路が構成されている。
上記入力軸2には、上記ドラム状部材21が接続されており、該ドラム状部材21の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ11によって係合自在となっているクラッチC1の摩擦板71がスプライン係合する形で配置されて、該クラッチC1の摩擦版71の内周側がハブ部材22にスプライン係合する形で接続されている。そして、該ハブ部材22は、上記サンギヤS2に接続されている。
また、上記ドラム状部材25は、上記ボス部3aに回転自在に支持されており、該ドラム状部材25の先端部外周側には、上記ブレーキB1用油圧サーボ14により係止自在となっているブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合する形で配置されている。該ドラム状部材25の先端部内周側には、クラッチC3用油圧サーボ13により係合自在となっているクラッチC3の摩擦板73がスプライン係合する形で配置されており、該クラッチC3の摩擦版73の内周側には、リングギヤR1がスプライン係合する形で接続されている。
また、キャリヤCR1は、ピニオンPa及びピニオンPbを有しており、該ピニオンPbは上記リングギヤR1に噛合し、該ピニオンPaは、入力軸2に接続されたサンギヤS1に噛合している。該キャリヤCR1は、側板を介してケース3のボス部3aに固定されており、該リングギヤR1は支持部材26によりボス部3aに回転自在に支持されている。
そして、上記ドラム状部材25には、クラッチC3が係合した際にリングギヤR1の回転を伝達する連結部材(以下、「伝達部材」ともいう。)30が接続されており、また、該伝達部材30の他方側には、上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3が接続されている。
一方、入力軸2の他端上(図中左方)には、油圧サーボ12、摩擦板72、クラッチドラムを形成するドラム状部材23、キャリヤCR2に連結されるハブ部材24、を有する多板式クラッチ(第2のクラッチ)C2が配置されている。
該油圧サーボ12の油室aは、上記入力軸2に形成されている油路2bと連通しており、該油路2bは、ケース3の、上記ボス部3aとは反対側の他端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3bの油路93に連通して、該油路93は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ12に対しては、入力軸2とドラム状部材23との間をシールする1対のシールリング82を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ12の油室aまでの油路が構成されている。
また、上記入力軸2上には、図中左方側において、ドラム状部材23が接続されており、該ドラム状部材23の先端部内周側には、クラッチC2用油圧サーボ12により係合自在となっているクラッチC2の摩擦板72がスプライン係合する形で配置されている。該クラッチC2の摩擦板72の内周側には、ハブ部材24がスプライン係合する形で配置されており、該ハブ部材24は、上記キャリヤCR2の側板に接続されている。
一方、プラネタリギヤユニットPUの外周側には、油圧サーボ15、摩擦板75、ハブ部材28を有する多板式ブレーキ(第2のブレーキ)B2が配置されている。該プラネタリギヤユニットPUのキャリヤCR2の側板には、上記ブレーキB2の摩擦板75がスプライン係合している形のハブ部材28が接続されており、また、該ハブ部材28にはワンウェイクラッチF1のインナーレースが接続されている。そして、該キャリヤCR2のロングピニオンPLには、上記リングギヤR3が噛合しており、該リングギヤR3の一端には連結部材27が接続されて、該リングギヤR3が該連結部材27を介してカウンタギヤ5に連結されている。
以上説明したように、プラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側にプラネタリギヤPRとクラッチC3とが配置されていると共に、クラッチC1が該軸方向一方側に配置され、軸方向他方側にクラッチC2が配置されており、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にカウンタギヤ5が配置されている。更に、クラッチC3、特にその出力を伝達する伝達部材30の内周側に位置する形でクラッチC1が配置されている。また、ブレーキB1はプラネタリギヤPRの外周側に、ブレーキB2はプラネタリギヤユニットPUの外周側に、それぞれ配置されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構11の作用について第1図、第2図及び第3図に沿って説明する。なお、第3図に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(第3図中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はキャリヤCR2、リングギヤR3、サンギヤS2に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤPRの部分において、横方向最端部(第3図中右方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。また、それら縦軸の間隔は、それぞれのサンギヤS1,S2,S3の歯数の逆数、及びそれぞれのリングギヤR1,R3の歯数の逆数に比例している。そして、図中横軸方向の破線は伝達部材30により回転が伝達されることを示している。
第1図に示すように、上記サンギヤS2には、クラッチC1が係合することにより入力軸2の回転が入力される。上記キャリヤCR2には、クラッチC2が係合することにより入力軸2の回転が入力されると共に、該キャリヤCR2は、ブレーキB2の係止により回転が固定自在となっており、また、ワンウェイクラッチF1により一方向の回転が規制されている。また、サンギヤS3は、ブレーキB1の係止により回転が固定自在になっている。
一方、上記サンギヤS1は、入力軸2に接続されており、該入力軸2の回転が入力され、また、上記キャリヤCR1はケース3に接続されて回転が固定されており、それによってリングギヤR1は減速回転する。また、クラッチC3が係合することにより、該リングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力される。
そして、上記リングギヤR3の回転は、上記カウンタギヤ5に出力され、該カウンタギヤ5、不図示のカウンタシャフト部及びディファレンシャル部を介して駆動車輪に出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進1速段では、第2図に示すように、クラッチC1及びワンウェイクラッチF1が係合される。すると、第3図に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2に入力軸2の回転が入力されると共に、キャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。そして、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、前進1速段としての正転回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB2を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。また、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF1によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチの自動係合により滑らかに行うことができる。
D(ドライブ)レンジにおける前進2速段では、第2図に示すように、クラッチC1が係合され、ブレーキB1が係止される。すると、第3図に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2に入力軸2の回転が入力されると共に、ブレーキB1の係止によりサンギヤS3が固定される。それにより、キャリヤCR2が僅かに減速回転し、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転が、該減速回転のキャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、前進2速段としての正転回転がカウンタギヤ5から出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進3速段では、第2図に示すように、クラッチC1及びクラッチC3が係合される。すると、第3図に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2に入力軸2の回転が入力される。また、サンギヤS1に入力された入力軸2の回転と、固定されたキャリヤCR1とによりリングギヤR1が減速回転し、該リングギヤR1の減速回転がクラッチC3、及び伝達部材30を介してサンギヤS3に出力される。すると、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転と、サンギヤS3の減速回転とによりキャリヤCR2が、該サンギヤS3の減速回転より僅かに大きな減速回転となる。そして、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転が、該減速回転のキャリヤCR2を介してリングギヤR3に出力され、前進3速段としての正転回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材30は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進4速段では、第2図に示すように、クラッチC1及びクラッチC2が係合される。すると、第3図に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2と、クラッチC2を介してキャリヤCR2とに入力軸2の回転が入力される。それにより、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転と、キャリヤCR2に入力された入力軸2の回転とにより、つまり直結回転の状態となってリングギヤR3に入力軸2の回転がそのまま出力され、前進4速段としての正転回転がカウンタギヤ5から出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進5速段では、第2図に示すように、クラッチC2及びクラッチC3が係合される。すると、第3図に示すように、クラッチC2を介してキャリヤCR2に入力軸2の回転が入力される。また、サンギヤS1に入力された入力軸2の回転と、固定されたキャリヤCR1とによりリングギヤR1が減速回転し、該リングギヤR1の減速回転がクラッチC3、及び上記伝達部材30を介してサンギヤS3に該減速回転が出力される。すると、サンギヤS3の減速回転と、入力軸2の回転が入力されたキャリヤCR2とにより、増速回転となってリングギヤR3に出力され、前進5速段としての正転回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際、上記前進3速段の状態と同様に、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材30は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進6速段では、第2図に示すように、クラッチC2が係合され、ブレーキB1が係止される。すると、第3図に示すように、クラッチC2を介してキャリヤCR2に入力軸2の回転が入力されると共に、ブレーキB1の係止によりサンギヤS3が固定される。それにより、キャリヤCR2に入力された入力軸2の回転と固定されたサンギヤS3とにより、(上記前進5速段よりも大きな)増速回転となってリングギヤR3に出力され、前進6速段としての正転回転がカウンタギヤ5から出力される。
R(リバース)レンジにおける後進1速段では、第2図に示すように、クラッチC3が係合され、ブレーキB2が係止される。すると、第3図に示すように、サンギヤS1に入力された入力軸2の回転と、固定されたキャリヤCR1とによりリングギヤR1が減速回転し、該リングギヤR1の減速回転がクラッチC3、及び上記伝達部材30を介してサンギヤS3に該減速回転が出力される。また、ブレーキB2の係止によりキャリヤCR2が固定される。すると、サンギヤS3の減速回転と固定されたキャリヤCR2とにより、逆転回転としてリングギヤR3に出力され、後進1速段としての逆転回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際、上記前進3速段や前進5速段の状態と同様に、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材30は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
P(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、特にクラッチC1、クラッチC2及びクラッチC3が解放されており、入力軸2とカウンタギヤ5との間の動力伝達が切断状態であって、自動変速機構11全体としては空転状態(ニュートラル状態)となる。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構11によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,92,93)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ13は、ケース3から延設されたボス部3aから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング80を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,80を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC3の内周側に、クラッチC1を配置するので、減速回転を伝達するために比較的大きなトルクを伝達しなければならないクラッチC3を外周側に配置することができ、該クラッチC3及びその油圧サーボ13を大径化することが可能となり、特に油圧サーボ13の油室aの受圧面積を大きくすることが可能となって、該クラッチC3のトルク伝達可能な容量を大きくすることができるものでありながら、クラッチC3に比してトルク伝達可能な容量が小さくてよいクラッチC1を内周側に配置することで、自動変速機のコンパクト化を図ることができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、本参考例の自動変速機構11は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
<第2の参考例>
以下、第1の参考例を一部変更した第2の参考例について第4図に沿って説明する。第4図は第2の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第2の参考例は、一部変更を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第4図に示すように、第2の参考例に係る自動変速機の自動変速機構12は、第1の参考例の自動変速機構11に対して(第1図参照)、入力側と出力側とを逆にしたものである。また、前進1速段乃至前進6速段、及び後進1速段において、その作用は同様のものとなる(第2図及び第3図参照)。
これにより第1の参考例と同様に、本参考例に係る自動変速機構12によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,92,93)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ13は、ケース3から延設されたボス部3aから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング80を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,80を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC3の内周側に、クラッチC1を配置するので、減速回転を伝達するために比較的大きなトルクを伝達しなければならないクラッチC3を外周側に配置することができ、該クラッチC3及びその油圧サーボ13を大径化することが可能となり、特に油圧サーボ13の油室の受圧面積を大きくすることが可能となって、該クラッチC3のトルク伝達可能な容量を大きくすることができるものでありながら、クラッチC3に比してトルク伝達可能な容量が小さくてよいクラッチC1を内周側に配置することで、自動変速機のコンパクト化を図ることができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、本参考例の自動変速機構12は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
<第3の実施の形態>
以下、第1の参考例を一部変更した第3の実施の形態について第5図乃至第7図に沿って説明する。第5図は第3の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、第6図は第3の実施の形態に係る自動変速機の作動表、第7図は第3の実施の形態に係る自動変速機の速度線図である。なお、第3の実施の形態は、一部変更を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第5図に示すように、第3の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構13は、第1の参考例の自動変速機構11に対して(第1図参照)、プラネタリギヤPRと、クラッチC3との配置を変更したものである。
該自動変速機構13において、クラッチC3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPU側(図中左方側)に配置されている。該クラッチC3のドラム状部材25の先端部内周側は、摩擦板73にスプライン係合しており、該摩擦板73の内周側には、ハブ部材26がスプライン係合している。また、ドラム状部材25は、入力軸2に接続されており、ハブ部材26は、サンギヤS1に接続されている。
また、キャリヤCR1は、その側板がケース3に固定支持されている。そして、リングギヤR1には伝達部材30が接続されており、該伝達部材30の外周側にはブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合していると共に、該伝達部材30がサンギヤS3に接続されている。
また、クラッチC3用油圧サーボ13の油室は、上記入力軸2に油路2aと二重構造となる形で形成されている油路2cと連通しており、該油路2cは、ケース3のボス部3aの油路92に連通している。そして、該油路92は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ11及び油圧サーボ13に対しては、入力軸2上に配置されているため、ケース3のボス部3aと入力軸2との間をシールするシールリング81を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ11及び油圧サーボ13の油室までの油路が構成されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構13の作用について第5図、第6図及び第7図に沿って説明する。なお、上記第1の参考例と同様に、第7図に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(第7図中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はキャリヤCR2、リングギヤR3、サンギヤS2に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤPRの部分において、横方向最端部(第7図中右方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。また、それら縦軸の間隔は、それぞれのサンギヤS1,S2,S3の歯数の逆数、及びそれぞれのリングギヤR1,R3の歯数の逆数に比例している。そして、図中横軸方向の破線は伝達部材30により回転が伝達されることを示している。
第5図に示すように、クラッチC3が係合することにより上記サンギヤS1には、入力軸2の回転が入力される。また、上記キャリヤCR1は、ケース3に対して回転が固定されており、上記リングギヤR1は、該サンギヤS1に入力される入力軸2の回転に基づき減速回転する。つまりサンギヤS3には、クラッチC3が係合することにより、伝達部材30を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、第6図及び第7図に示すように、プラネタリギヤPRにおいて、前進3速段、前進5速段、後進1速段では、クラッチC3が係合されることにより入力軸2の回転がサンギヤS1に入力され、固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR3に減速回転が出力されて、伝達部材30を介してサンギヤS3に減速回転が入力される。この際、リングギヤR1及びサンギヤS3は減速回転しているので、上記伝達部材30は、比較的大きなトルク伝達を行っている。一方、前進1速段、前進2速段、前進4速段、前進6速段では、伝達部材30を介してサンギヤS3の回転がリングギヤR1に入力され、また、クラッチC3が解放されているため、第7図に示すように、サンギヤS1が、該リングギヤR1のそれぞれ変速段における回転と固定されたキャリヤCR1とに基づき回転する。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第1の参考例と同様であるので(第2図及び第3図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本発明に係る自動変速機構13によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,92,93)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,12,13は入力軸2上に設けられているので、ケース3からシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2b,2cに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12,13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12,13の油室に油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれシールリング81,82を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、例えばクラッチC3をリングギヤR1とサンギヤS3との間に介在させると、減速回転を接・断する必要があり、比較的大きなものになってしまうが、入力軸2とサンギヤS1との間に介在させることで、該クラッチC3による入力軸2の回転の接・断によってプラネタリギヤPRのリングギヤR1から出力される減速回転を接・断するので、クラッチC3をコンパクト化することができ、それにより自動変速機をコンパクト化することができる。
また、本実施の形態の自動変速機構13は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
<第4の参考例>
以下、第1の参考例を一部変更した第4の参考例について第8図乃至第10図に沿って説明する。第8図は第4の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、第9図は第4の参考例に係る自動変速機の作動表、第10図は第4の参考例に係る自動変速機の速度線図である。なお、第4の参考例は、一部変更を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第8図に示すように、第4の参考例に係る自動変速機の自動変速機構14は、第1の参考例の自動変速機構11に対して(第1図参照)、クラッチC3の代わりにブレーキ(第3のブレーキ)B3を配置し、プラネタリギヤPRのキャリヤCR1をブレーキB3により固定自在にしたものである。
該自動変速機構14において、ブレーキB3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中右方側)に配置されている。該ブレーキB3は、油圧サーボ16、摩擦板76、ハブ部材33を有している。
該ブレーキB3のハブ部材33は、キャリヤCR1の一方の側板に接続されており、該キャリヤCR1は、入力軸2又はボス部3aに回転自在に支持されている。また、サンギヤS1は入力軸2に接続されている。そして、リングギヤR1の外周側にブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合していると共に、該リングギヤR1には伝達部材30が接続されて、該伝達部材30を介してサンギヤS3が接続されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構14の作用について第8図、第9図及び第10図に沿って説明する。なお、上記第1の参考例と同様に、第10図に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(第10図中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はキャリヤCR2、リングギヤR2、サンギヤS2に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤPRの部分において、横方向最端部(第10図中右方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。また、それら縦軸の間隔は、それぞれのサンギヤS1,S2,S3の歯数の逆数、及びそれぞれのリングギヤR1,R3の歯数の逆数に比例している。そして、図中横軸方向の破線は伝達部材30により回転が伝達されることを示している。
第8図に示すように、ブレーキB3が係止することにより上記キャリヤCR1は、ケース3に対して固定される。また、サンギヤS1には、入力軸2の回転が入力されており、上記リングギヤR1は、該キャリヤCR1が固定されることにより、該サンギヤS1に入力される入力軸2の回転に基づき減速回転する。つまりサンギヤS3には、ブレーキB3が係合することにより、伝達部材30を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、第9図及び第10図に示すように、プラネタリギヤPRにおいて、前進3速段、前進5速段、後進1速段では、ブレーキB3が係止されることによりキャリヤCR1が固定され、入力軸2の回転が入力されているサンギヤS1の回転によりリングギヤR3に減速回転が出力されて、伝達部材30を介してサンギヤS3に減速回転が入力される。この際、リングギヤR1及びサンギヤS3は減速回転しているので、上記伝達部材30は、比較的大きなトルク伝達を行っている。一方、前進1速段、前進2速段、前進4速段、前進6速段では、伝達部材30を介してサンギヤS3の回転がリングギヤR1に入力され、ブレーキB3が解放されているため、第10図に示すように、キャリヤCR1が、該リングギヤR1のそれぞれ変速段における回転と入力軸2の回転のサンギヤS1とに基づき回転する。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第1の参考例と同様であるので(第2図及び第3図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構1 4 によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3からシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12には、それぞれシールリング81,82を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
更に、プラネタリギヤPRからプラネタリギヤユニットPUに出力する減速回転をブレーキB3により接・断するようにしたので、例えばクラッチC3を設ける場合に比して、部品点数(例えばドラム状部材など)を削減することができる。また、ブレーキB3は、ケース3からそのまま油路を構成することができるので、例えばクラッチC3を設ける場合に比して、油路の構成を簡単にすることができる。
また、本参考例の自動変速機構14は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
<第5の参考例>
以下、第1の参考例を一部変更した第5の参考例について第11図に沿って説明する。第11図は第5の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第5の参考例は、一部変更を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第11図に示すように、第5の参考例に係る自動変速機の自動変速機構15は、第1の参考例の自動変速機構11に対して(第1図参照)、プラネタリギヤPRと、クラッチC3との配置を変更し、更にブレーキB3を配置して、プラネタリギヤPRのキャリヤCR1をブレーキB3により固定自在にしたものである。
該自動変速機構15において、クラッチC3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPU側(図中左方側)に配置されており、ブレーキB3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中右方側)に配置されている。該クラッチC3のドラム状部材25の先端部内周側は、摩擦板73にスプライン係合しており、該摩擦板73の内周側には、ハブ部材26がスプライン係合している。また、ドラム状部材25は、入力軸2に接続されており、ハブ部材26は、サンギヤS1に接続されている。
ブレーキB3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中右方側)に配置されている。該ブレーキB3は、油圧サーボ16、摩擦板76、ハブ部材33を有している。該ブレーキB3のハブ部材33の外周側には、摩擦板76がスプライン係合していると共に、該ハブ部材33はキャリヤCR1の一方の側板に接続されており、該キャリヤCR1は、入力軸2又はボス部3aに回転自在に支持されている。そして、リングギヤR1の外周側にブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合していると共に、該リングギヤR1には伝達部材30が接続されて、該伝達部材30を介してサンギヤS3が接続されている。
また、クラッチC3用油圧サーボ13の油室は、上記入力軸2に油路2aと二重構造となる形で形成されている油路2cと連通しており、該油路2cは、ケース3のボス部3aの油路92に連通している。そして、該油路92は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ11及び油圧サーボ13に対しては、入力軸2上に配置されているため、ケース3のボス部3aと入力軸2との間をシールするシールリング81を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ11及び油圧サーボ13の油室までの油路が構成されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構15の作用について第11図、第2図及び第3図に沿って説明する。なお、本第5の参考例は、第1の参考例と同様であるので、第1の参考例で説明した係合表、及び速度線図(第2図及び第3図)に基づき説明する。
第11図に示すように、クラッチC3が係合することにより上記サンギヤS1には、入力軸2の回転が入力される。また、ブレーキB3が係止することにより上記キャリヤCR1は、ケース3に対して固定される。そのため、クラッチC3が係合し、かつブレーキB3が係止されると、上記リングギヤR1は、該サンギヤS1に入力される入力軸2の回転に基づき減速回転する。つまりサンギヤS3には、クラッチC3の係合とブレーキB3の係止とにより、伝達部材30を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、第2図及び第3図に示すように、プラネタリギヤPRにおいて、前進3速段、前進5速段、後進1速段では、クラッチC3が係合されることにより入力軸2の回転がサンギヤS1に入力され、また、ブレーキB3が係止することによりキャリヤCR1が固定され、それによってリングギヤR3に減速回転が出力されて、伝達部材30を介してサンギヤS3に減速回転が入力される。この際、リングギヤR1及びサンギヤS3は減速回転しているので、上記伝達部材30は、比較的大きなトルク伝達を行っている。一方、前進1速段、前進2速段、前進4速段、前進6速段では、伝達部材30を介してサンギヤS3の回転がリングギヤR1に入力されるが、クラッチC3及びブレーキB3が解放されているため、キャリヤCR1及びサンギヤS1は自由回転状態となっている。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第1の参考例と同様であるので(第2図及び第3図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構15によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,92,93)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,12,13は入力軸2上に設けられているので、ケース3からシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2b,2cに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12,13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12,13の油室に油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれシールリング81,82を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、例えばクラッチC3をリングギヤR1とサンギヤS3との間に介在させると、減速回転を接・断する必要があり、比較的大きなものになってしまうが、入力軸2とサンギヤS1との間に介在させることで、該クラッチC3による入力軸2の回転の接・断によってプラネタリギヤPRのリングギヤR1から出力される減速回転を接・断するので、クラッチC3をコンパクト化することができ、それにより自動変速機をコンパクト化することができる。
また、本参考例の自動変速機構15は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
<第6の参考例>
以下、第1の参考例を一部変更した第6の参考例について第12図に沿って説明する。第12図は第6の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第6の参考例は、一部変更を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第12図に示すように、第6の参考例に係る自動変速機の自動変速機構16は、第1の参考例の自動変速機構11に対して(第1図参照)、クラッチC2を、プラネタリギヤユニットPUのプラネタリギヤPRが配置されている軸方向一方側に配置し、クラッチC1を軸方向他方側に配置し、つまりクラッチC1とクラッチC2との位置を入れ替えた形で配置したものである。
該自動変速機構16において、上記入力軸2上には、内周側に、油圧サーボ12、摩擦板72、クラッチドラムを形成するドラム状部材23と、サンギヤS2に連結されるハブ部材24、を有する多板式クラッチC2と、その外周側に、油圧サーボ13、摩擦板73、クラッチドラムを形成するドラム部材25、を有する多板式クラッチC3と、が配置されている。また、ドラム状部材25の外周側には、油圧サーボ14、摩擦板74、を有する多板式ブレーキB1が配置されている。
上記入力軸2には、上記ドラム状部材23が接続されており、該ドラム状部材23の先端部内周側には、クラッチC2用油圧サーボ12によって係合自在となっているクラッチC2の摩擦板72がスプライン係合する形で配置されて、該クラッチC2の摩擦版72の内周側がハブ部材24にスプライン係合する形で接続されている。そして、該ハブ部材24は、上記キャリヤCR2に接続されている。
一方、入力軸2の他端上(図中左方)には、油圧サーボ11、摩擦板71、クラッチドラムを形成するドラム状部材21、サンギヤS2に連結されるハブ部材22、を有する多板式クラッチC1が配置されている。
また、上記入力軸2上には、図中左方側において、ドラム状部材21が接続されており、該ドラム状部材21の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ11により係合自在となっているクラッチC1の摩擦板71がスプライン係合する形で配置されている。該クラッチC1の摩擦板71の内周側には、ハブ部材22がスプライン係合する形で配置されており、該ハブ部材22は、上記サンギヤS2に接続されている。
以上の構成に基づく自動変速機構16の作用は、第1の参考例と同様であるので(第2図及び第3図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構16によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,92,93)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ13は、ケース3から延設されたボス部3aから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング80を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,80を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC3の内周側に、クラッチC2を配置するので、減速回転を伝達するために比較的大きなトルクを伝達しなければならないクラッチC3を外周側に配置することができ、該クラッチC3及びその油圧サーボ13を大径化することが可能となり、特に油圧サーボ13の油室の受圧面積を大きくすることが可能となって、該クラッチC3のトルク伝達可能な容量を大きくすることができるものでありながら、クラッチC3に比してトルク伝達可能な容量が小さくてよいクラッチC2を内周側に配置することで、自動変速機のコンパクト化を図ることができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、クラッチC1は、比較的低中速段である前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC1が比較的高速段である前進5速段、前進6速段や後進1速段などで解放された際に、特に該クラッチC1とサンギヤS2とを接続するハブ部材22が比較的高回転又は逆転回転することになり(第7図参照)、一方で前進5速段や後進1速段では伝達部材30が減速回転し、前進6速段では伝達部材30が固定される場合が生じ、ハブ部材22と伝達部材30との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC1はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまりハブ部材22と伝達部材30とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
また、本参考例の自動変速機構16は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
ところで、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)は、減速されたトルクが入力されるため、それに耐え得る剛性を必要とする。例えば低中速段で係合するクラッチや減速回転を係脱するクラッチを連結部材の内周側に配置しようとした場合、それらクラッチは容量の大きいものである必要があるので、その容量に対応させるべく径方向にそれなりの大きさを必要としてしまう。したがって、連結部材がそのようなクラッチの外周側を通すタイプであると、そのクラッチの必要径方向寸法のさらに大きな径を必要として、必要以上に連結部材の径方向寸法も増大してしまう虞があり、自動変速機全体として径方向に大きくなってしまう。そこで本参考例は、径方向寸法の増大を低減し、コンパクトな自動変速機を提供することを目的としている。
本参考例では、連結部材、特に伝達部材30の内周側に容量の小さいクラッチC2を配置することで、連結部材の径方向寸法を増大することなく、全てのクラッチを配置することができる。
<第7の実施の形態>
以下、第6の参考例を一部変更した第7の実施の形態について第13図に沿って説明する。第13図は第7の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第7の実施の形態は、一部変更を除き、第6の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第13図に示すように、第7の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構17は、第6の参考例の自動変速機構16に対して(第12図参照)、プラネタリギヤPRと、クラッチC2と、クラッチC3との配置を変更したものである。
該自動変速機構17において、クラッチC2及びクラッチC3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUの反対側(図中右方側)に配置されている。該クラッチC3のドラム状部材25の先端部内周側は、摩擦板73にスプライン係合しており、該摩擦板73の内周側には、ハブ部材26がスプライン係合している。ドラム状部材25は、入力軸2に接続されており、ハブ部材26は、プラネタリギヤPRのサンギヤS1に接続されている。また、油圧サーボ12、摩擦板72、ドラム状部材23、ハブ部材24を有するクラッチC2は、上記クラッチC3の内周側、即ちハブ部材26に内包される形で配置されている。
一方、プラネタリギヤPRの外周側には、油圧サーボ14、摩擦板74、を有する多板式ブレーキB1が配置されている。該プラネタリギヤPRのキャリヤCR1は、その側板がケース3に固定支持されている。そして、リングギヤR1には伝達部材30が接続され、該伝達部材30の外周側にはブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合していると共に、該伝達部材30にはサンギヤS3が接続されている。
以上の構成に基づく自動変速機構17の作用は、第3の実施の形態と同様であるので(第6図及び第7図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本発明に係る自動変速機構17によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,92,93)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ13は、ケース3から延設されたボス部3aから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング80を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,80を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、クラッチC1は、比較的低中速段である前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC1が比較的高速段である前進5速段、前進6速段や後進1速段などで解放された際に、特に該クラッチC1とサンギヤS2とを接続するハブ部材22が比較的高回転又は逆転回転することになり(第7図参照)、一方で前進5速段や後進1速段では伝達部材30が減速回転し、前進6速段では伝達部材30が固定される場合が生じ、ハブ部材22と伝達部材30との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC1はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまりハブ部材22と伝達部材30とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
また、例えばクラッチC3をリングギヤR1とサンギヤS3との間に介在させると、減速回転を接・断する必要があり、比較的大きなものになってしまうが、入力軸2とサンギヤS1との間に介在させることで、該クラッチC3による入力軸2の回転の接・断によってプラネタリギヤPRのリングギヤR1から出力される減速回転を接・断するので、クラッチC3をコンパクト化することができ、それにより自動変速機をコンパクト化することができる。
また、本実施の形態の自動変速機構17は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
ところで、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチが配置されるとその分、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)の長さが軸方向に長くなり、該連結部材は減速回転を伝達するものであるため、それに耐え得るように部材の厚みを増す必要性があることから重量が増加してしまう。そこで本実施の形態は、減速プラネタリギヤとプラネタリギヤユニット間の長さを短くして重量の増加を低減することができる自動変速機を提供することを目的としている。
本実施の形態では、特にクラッチC2をプラネタリギヤPRに対してプラネタリギヤユニットPUの軸方向反対側に配置することで、それらプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチを設ける必要がなく、その分、連結部材、特に伝達部材30の長さを短くすることができ、それにより、自動変速機全体の重量の増加を防止することができる。
<第8の参考例>
以下、第6の参考例を一部変更した第8の参考例について第14図に沿って説明する。第14図は第8の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第8の参考例は、一部変更を除き、第6の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第14図に示すように、第8の参考例に係る自動変速機の自動変速機構18は、第6の参考例の自動変速機構16に対して(第12図参照)、クラッチC2の配置を変更し、また、クラッチC3の代わりにブレーキB3を配置し、プラネタリギヤPRのキャリヤCR1をブレーキB3により固定自在にしたものである。
該自動変速機構18において、ブレーキB3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中右方側)に配置されている。該ブレーキB3は、油圧サーボ16、摩擦板76、ハブ部材33を有している。また、油圧サーボ12、摩擦板72、ドラム状部材23、ハブ部材24を有するクラッチC2は、上記ブレーキB3の内周側、即ちハブ部材33に内包される形で配置されている。該ブレーキB3のハブ部材33は、キャリヤCR1の一方の側板に接続されており、該キャリヤCR1の他方の側板は、入力軸2に回転自在に支持されている。また、サンギヤS1はクラッチC2のドラム状部材24を介して入力軸2に接続されている。そして、リングギヤR1の外周側にブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合していると共に、該リングギヤR1には伝達部材30が接続されて、該伝達部材30を介してサンギヤS3が接続されている。
以上の構成に基づく自動変速機構18の作用は、第4の参考例と同様であるので(第9図及び第10図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構18によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3からシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12には、それぞれシールリング81,82を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、クラッチC1は、比較的低中速段である前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC1が比較的高速段である前進5速段、前進6速段や後進1速段などで解放された際に、特に該クラッチC1とサンギヤS2とを接続するハブ部材22が比較的高回転又は逆転回転することになり(第10図参照)、一方で前進5速段や後進1速段では伝達部材30が減速回転し、前進6速段では伝達部材30が固定される場合が生じ、ハブ部材22と伝達部材30との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC1はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまりハブ部材22と伝達部材30とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
更に、プラネタリギヤPRからプラネタリギヤユニットPUに出力する減速回転をブレーキB3により接・断するようにしたので、例えばクラッチC3を設ける場合に比して、部品点数(例えばドラム状部材など)を削減することができる。また、ブレーキB3は、ケース3からそのまま油路を構成することができるので、例えばクラッチC3を設ける場合に比して、油路の構成を簡単にすることができる。
また、本参考例の自動変速機構18は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
ところで、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチが配置されるとその分、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)の長さが軸方向に長くなり、該連結部材は減速回転を伝達するものであるため、それに耐え得るように部材の厚みを増す必要性があることから重量が増加してしまう。そこで本参考例は、減速プラネタリギヤとプラネタリギヤユニット間の長さを短くして重量の増加を低減することができる自動変速機を提供することを目的としている。
本参考例では、特にクラッチC2をプラネタリギヤPRに対してプラネタリギヤユニットPUの軸方向反対側に配置することで、それらプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチを設ける必要がなく、その分、連結部材、特に伝達部材30の長さを短くすることができ、それにより、自動変速機全体の重量の増加を防止することができる。
<第9の参考例>
以下、第1の参考例を一部変更した第9の参考例について第15図に沿って説明する。第15図は第9の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第9の参考例は、一部変更を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第15図に示すように、第9の参考例に係る自動変速機の自動変速機構19は、第1の参考例の自動変速機構11に対して(第1図参照)、クラッチC2を、プラネタリギヤユニットPUのプラネタリギヤPRが配置されている軸方向一方側に配置し、クラッチC1とカウンタギヤ5を軸方向他方側に配置し、つまりクラッチC1とクラッチC2との位置を入れ替え、更にプラネタリギヤPR、クラッチC3、及びブレーキB1を、プラネタリギヤユニットPUに対してカウンタギヤ5の反対側に配置したものである。
該自動変速機構19において、上記入力軸2上には、内周側に、油圧サーボ11、摩擦板71、クラッチドラムを形成するドラム状部材21と、サンギヤS2に連結されるハブ部材22、を有する多板式クラッチC1が配置されている。
該油圧サーボ11の油室は、上記入力軸2に形成されている油路2aと連通しており、該油路2aは、ケース3の一端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3aの油路91に連通している。そして、該油路91は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ11に対しては、入力軸2上に配置されているため、ケース3のボス部3aと入力軸2との間をシールする1対のシールリング81を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ11の油室までの油路が構成されている。
上記入力軸2には、上記ドラム状部材21が接続されており、該ドラム状部材21の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ11によって係合自在となっているクラッチC1の摩擦板71がスプライン係合する形で配置されて、該クラッチC1の摩擦版71の内周側がハブ部材22にスプライン係合する形で接続されている。そして、該ハブ部材22は、上記サンギヤS2に接続されている。
一方、入力軸2の他端上(図中左方)には、油圧サーボ12、摩擦板72、クラッチドラムを形成するドラム状部材23、キャリヤCR2に連結されるハブ部材24、を有する多板式クラッチC2が配置されており、その外周側に、油圧サーボ13、摩擦板73、クラッチドラムを形成するドラム部材25、を有する多板式クラッチC3が配置されている。更に、ドラム状部材25の外周側には、油圧サーボ14、摩擦板74、を有する多板式ブレーキB1が配置されている。
該油圧サーボ12の油室は、上記入力軸2に形成されている油路2bと連通しており、該油路2bは、ケース3の、上記ボス部3aとは反対側の他端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3bの油路93に連通して、該油路93は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ12に対しては、ケース3のボス部3bと入力軸2との間をシールする1対のシールリング82を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ12の油室までの油路が構成されている。
また、上記油圧サーボ13の油室は、上記ボス部3bの油路94に連通しており、該油路94は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ13に対しては、ケース3のボス部3bとドラム状部材25との間をシールする1対のシールリング84によって、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ13の油室までの油路が構成されている。
また、上記入力軸2上には、図中左方側において、ドラム状部材23が接続されており、該ドラム状部材23の先端部内周側には、クラッチC2用油圧サーボ12により係合自在となっているクラッチC2の摩擦板72がスプライン係合する形で配置されている。該クラッチC2の摩擦板72の内周側には、ハブ部材24がスプライン係合する形で配置されており、該ハブ部材24は、上記キャリヤCR2に接続されている。
上記ドラム状部材25は、上記ボス部3bに回転自在に支持されており、該ドラム状部材25の先端部外周側には、上記ブレーキB1用油圧サーボ14により係止自在となっているブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合する形で配置されている。該ドラム状部材25の先端部内周側には、クラッチC3用油圧サーボ13により係合自在となっているクラッチC3の摩擦板73がスプライン係合する形で配置されており、該クラッチC3の摩擦版73の内周側には、リングギヤR1がスプライン係合する形で接続されている。
また、キャリヤCR1は、ピニオンPa及びピニオンPbを有しており、該ピニオンPbは上記リングギヤR1に噛合し、該ピニオンPaは、入力軸2に接続されたサンギヤS1に噛合している。該キャリヤCR1は、側板を介してケース3のボス部3bに固定されており、該リングギヤR1は支持部材26によりボス部3bに回転自在に支持されている。
そして、上記ドラム状部材25には、クラッチC3が係合した際にリングギヤR1の回転を伝達する伝達部材30が接続されており、また、該伝達部材30の他方側には、上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3が接続されている。
以上の構成に基づく自動変速機構19の作用は、第1の参考例と同様であるので(第2図及び第3図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構19によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,93,94)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ13は、ケース3から延設されたボス部3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング84を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,84を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC3の内周側に、クラッチC2を配置するので、減速回転を伝達するために比較的大きなトルクを伝達しなければならないクラッチC3を外周側に配置することができ、該クラッチC3及びその油圧サーボ13を大径化することが可能となり、特に油圧サーボ13の油室の受圧面積を大きくすることが可能となって、該クラッチC3のトルク伝達可能な容量を大きくすることができるものでありながら、クラッチC3に比してトルク伝達可能な容量が小さくてよいクラッチC2を内周側に配置することで、自動変速機のコンパクト化を図ることができる。
また、クラッチC1は、比較的低中速段である前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC1が比較的高速段である前進5速段、前進6速段や後進1速段などで解放された際に、特に該クラッチC1とサンギヤS2とを接続するハブ部材22が比較的高回転又は逆転回転することになり(第3図参照)、一方で前進5速段や後進1速段では伝達部材30が減速回転し、前進6速段では伝達部材30が固定される場合が生じ、ハブ部材22と伝達部材30との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC1はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまりハブ部材22と伝達部材30とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
また、本参考例の自動変速機構19は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
ところで、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)は、減速されたトルクが入力されるため、それに耐え得る剛性を必要とする。例えば低中速段で係合するクラッチや減速回転を係脱するクラッチを連結部材の内周側に配置しようとした場合、それらクラッチは容量の大きいものである必要があるので、その容量に対応させるべく径方向にそれなりの大きさを必要としてしまう。したがって、連結部材がそのようなクラッチの外周側を通すタイプであると、そのクラッチの必要径方向寸法のさらに大きな径を必要として、必要以上に連結部材の径方向寸法も増大してしまう虞があり、自動変速機全体として径方向に大きくなってしまう。そこで本参考例は、径方向寸法の増大を低減し、コンパクトな自動変速機を提供することを目的としている。
本参考例では、連結部材、特に伝達部材30の内周側に容量の小さいクラッチC2を配置することで、連結部材の径方向寸法を増大することなく、全てのクラッチを配置することができる。
<第10の実施の形態>
以下、第9の参考例を一部変更した第10の実施の形態について第16図に沿って説明する。第16図は第10の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第10の実施の形態は、一部変更を除き、第9の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第16図に示すように、第10の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構110は、第9の参考例の自動変速機構19に対して(第15図参照)、プラネタリギヤPRと、クラッチC3との配置を変更したものである。
該自動変速機構110において、クラッチC3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUの反対側(図中左方側)に配置されている。該クラッチC3のドラム状部材25の先端部内周側は、摩擦板73にスプライン係合しており、該摩擦板73の内周側には、ハブ部材26がスプライン係合している。ドラム状部材25は、入力軸2に接続されており、ハブ部材26は、サンギヤS1に接続されている。また、油圧サーボ12、摩擦板72、ドラム状部材23、ハブ部材24を有するクラッチC2は、上記クラッチC3の内周側、即ちハブ部材26に内包される形で配置されている。
一方、プラネタリギヤPRの外周側には、油圧サーボ14、摩擦板74、を有する多板式ブレーキB1が配置されている。該プラネタリギヤPRのキャリヤCR1は、その側板がケース3に固定支持されている。そして、リングギヤR1には伝達部材30が接続されており、該伝達部材30の外周側にはブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合していると共に、該伝達部材30がサンギヤS3に接続されている。
以上の構成に基づく自動変速機構110の作用は、第3の実施の形態と同様であるので(第6図及び第7図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本発明に係る自動変速機構110によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,93,94)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ13は、ケース3から延設されたボス部3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング84を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,84を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC1は、比較的低中速段である前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC1が比較的高速段である前進5速段、前進6速段や後進1速段などで解放された際に、特に該クラッチC1とサンギヤS2とを接続するハブ部材22が比較的高回転又は逆転回転することになり(第7図参照)、一方で前進5速段や後進1速段では伝達部材30が減速回転し、前進6速段では伝達部材30が固定される場合が生じ、ハブ部材22と伝達部材30との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC1はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまりハブ部材22と伝達部材30とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
また、例えばクラッチC3をリングギヤR1とサンギヤS3との間に介在させると、減速回転を接・断する必要があり、比較的大きなものになってしまうが、入力軸2とサンギヤS1との間に介在させることで、該クラッチC3による入力軸2の回転の接・断によってプラネタリギヤPRのリングギヤR1から出力される減速回転を接・断するので、クラッチC3をコンパクト化することができ、それにより自動変速機をコンパクト化することができる。
また、本実施の形態の自動変速機構110は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
ところで、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチが配置されるとその分、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)の長さが軸方向に長くなり、該連結部材は減速回転を伝達するものであるため、それに耐え得るように部材の厚みを増す必要性があることから重量が増加してしまう。そこで本実施の形態は、減速プラネタリギヤとプラネタリギヤユニット間の長さを短くして重量の増加を低減することができる自動変速機を提供することを目的としている。
本実施の形態では、特にクラッチC2をプラネタリギヤPRに対してプラネタリギヤユニットPUの軸方向反対側に配置することで、それらプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチを設ける必要がなく、その分、連結部材、特に伝達部材30の長さを短くすることができ、それにより、自動変速機全体の重量の増加を防止することができる。
<第11の参考例>
以下、第9の参考例を一部変更した第11の参考例について第17図に沿って説明する。第17図は第11の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第11の参考例は、一部変更を除き、第9の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第17図に示すように、第11の参考例に係る自動変速機の自動変速機構111は、第9の参考例の自動変速機構19に対して(第15図参照)、クラッチC2の配置を変更し、また、クラッチC3の代わりにブレーキB3を配置し、プラネタリギヤPRのキャリヤCR1をブレーキB3により固定自在にしたものである。
該自動変速機構111において、ブレーキB3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中左方側)に配置されている。該ブレーキB3は、油圧サーボ16、摩擦板76、ハブ部材33を有している。また、油圧サーボ12、摩擦板72ドラム状部材23、ハブ部材24を有するクラッチC2は、上記ブレーキB3の内周側、即ちハブ部材33に内包される形で配置されている。該ブレーキB3のハブ部材33は、キャリヤCR1の一方の側板に接続されており、該キャリヤCR1の他方の側板は、入力軸2に回転自在に支持されている。また、サンギヤS1はクラッチC2のドラム状部材23を介して入力軸2に接続されている。そして、リングギヤR1の外周側にブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合していると共に、該リングギヤR1には伝達部材30が接続されて、該伝達部材30を介してサンギヤS3が接続されている。
以上の構成に基づく自動変速機構111の作用は、第4の参考例と同様であるので(第9図及び第10図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構111によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3からシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12には、それぞれシールリング81,82を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC1は、比較的低中速段である前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC1が比較的高速段である前進5速段、前進6速段や後進1速段などで解放された際に、特に該クラッチC1とサンギヤS2とを接続するハブ部材22が比較的高回転又は逆転回転することになり(第10図参照)、一方で前進5速段や後進1速段では伝達部材30が減速回転し、前進6速段では伝達部材30が固定される場合が生じ、ハブ部材22と伝達部材30との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC1はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまりハブ部材22と伝達部材30とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
更に、プラネタリギヤPRからプラネタリギヤユニットPUに出力する減速回転をブレーキB3により接・断するようにしたので、例えばクラッチC3を設ける場合に比して、部品点数(例えばドラム状部材など)を削減することができる。また、ブレーキB3は、ケース3からそのまま油路を構成することができるので、例えばクラッチC3を設ける場合に比して、油路の構成を簡単にすることができる。
また、本参考例の自動変速機構111は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
ところで、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチが配置されるとその分、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)の長さが軸方向に長くなり、該連結部材は減速回転を伝達するものであるため、それに耐え得るように部材の厚みを増す必要性があることから重量が増加してしまう。そこで本参考例は、減速プラネタリギヤとプラネタリギヤユニット間の長さを短くして重量の増加を低減することができる自動変速機を提供することを目的としている。
本参考例では、特にクラッチC2をプラネタリギヤPRに対してプラネタリギヤユニットPUの軸方向反対側に配置することで、それらプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチを設ける必要がなく、その分、連結部材、特に伝達部材30の長さを短くすることができ、それにより、自動変速機全体の重量の増加を防止することができる。
<第12の参考例>
以下、第1の参考例を一部変更した第12の参考例について第18図に沿って説明する。第18図は第12の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第12の参考例は、一部変更を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第18図に示すように、第12の参考例に係る自動変速機の自動変速機構112は、第1の参考例の自動変速機構11に対して(第1図参照)、プラネタリギヤPR、クラッチC3、及びブレーキB1を、プラネタリギヤユニットPUに対してカウンタギヤ5の反対側(図中左方側)に配置したものである。
該自動変速機構112において、上記入力軸2上には、内周側に、油圧サーボ12、摩擦板72、クラッチドラムを形成するドラム状部材23と、サンギヤS2に連結されるハブ部材24、を有する多板式クラッチC2が配置されている。
該油圧サーボ12の油室は、上記入力軸2に形成されている油路2aと連通しており、該油路2aは、ケース3の一端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3aの油路91に連通している。そして、該油路91は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ12に対しては、入力軸2上に配置されているため、ケース3のボス部3aと入力軸2との間をシールする1対のシールリング81を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ12の油室までの油路が構成されている。
上記入力軸2には、上記ドラム状部材23が接続されており、該ドラム状部材23の先端部内周側には、クラッチC2用油圧サーボ12によって係合自在となっているクラッチC2の摩擦板72がスプライン係合する形で配置されて、該クラッチC2の摩擦版72の内周側がハブ部材24にスプライン係合する形で接続されている。そして、該ハブ部材24は、上記キャリヤCR2に接続されている。
一方、入力軸2の他端上(図中左方)には、油圧サーボ11、摩擦板71、クラッチドラムを形成するドラム状部材21、サンギヤS2に連結されるハブ部材22、を有する多板式クラッチC1が配置されており、その外周側に、油圧サーボ13、摩擦板73、クラッチドラムを形成するドラム部材25、を有する多板式クラッチC3が配置されている。更に、ドラム状部材25の外周側には、油圧サーボ14、摩擦板74、を有する多板式ブレーキB1が配置されている。
該油圧サーボ11の油室は、上記入力軸2に形成されている油路2bと連通しており、該油路2bは、ケース3の、上記ボス部3aとは反対側の他端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3bの油路93に連通して、該油路93は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ11に対しては、ケース3のボス部3bと入力軸2との間をシールする1対のシールリング82を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ11の油室までの油路が構成されている。
また、上記油圧サーボ13の油室は、上記ボス部3bの油路94に連通しており、該油路94は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ13に対しては、ケース3のボス部3bとドラム状部材25との間をシールする1対のシールリング84によって、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ13の油室までの油路が構成されている。
また、上記入力軸2上には、図中左方側において、ドラム状部材21が接続されており、該ドラム状部材21の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ11により係合自在となっているクラッチC1の摩擦板71がスプライン係合する形で配置されている。該クラッチC1の摩擦板71の内周側には、ハブ部材22がスプライン係合する形で配置されており、該ハブ部材22は、上記サンギヤS2に接続されている。
上記ドラム状部材25は、上記ボス部3bに回転自在に支持されており、該ドラム状部材25の先端部外周側には、上記ブレーキB1用油圧サーボ14により係止自在となっているブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合する形で配置されている。該ドラム状部材25の先端部内周側には、クラッチC3用油圧サーボ13により係合自在となっているクラッチC3の摩擦板73がスプライン係合する形で配置されており、該クラッチC3の摩擦版73の内周側には、リングギヤR1がスプライン係合する形で接続されている。
また、キャリヤCR1は、ピニオンPa及びピニオンPbを有しており、該ピニオンPbは上記リングギヤR1に噛合し、該ピニオンPaは、入力軸2に接続されたサンギヤS1に噛合している。該キャリヤCR1は、側板を介してケース3のボス部3bに固定されており、該リングギヤR1は支持部材26によりボス部3bに回転自在に支持されている。
そして、上記ドラム状部材25には、クラッチC3が係合した際にリングギヤR1の回転を伝達する伝達部材30が接続されており、また、該伝達部材30の他方側には、上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3が接続されている。
以上の構成に基づく自動変速機構112の作用は、第1の参考例と同様であるので(第2図及び第3図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構112によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,93,94)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ13は、ケース3から延設されたボス部3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング84を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,84を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC3の内周側に、クラッチC1を配置するので、減速回転を伝達するために比較的大きなトルクを伝達しなければならないクラッチC3を外周側に配置することができ、該クラッチC3及びその油圧サーボ13を大径化することが可能となり、特に油圧サーボ13の油室の受圧面積を大きくすることが可能となって、該クラッチC3のトルク伝達可能な容量を大きくすることができるものでありながら、クラッチC3に比してトルク伝達可能な容量が小さくてよいクラッチC1を内周側に配置することで、自動変速機のコンパクト化を図ることができる。
また、本参考例の自動変速機構112は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
<第13の実施の形態>
以下、第12の参考例を一部変更した第13の実施の形態について第19図に沿って説明する。第19図は第13の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第13の実施の形態は、一部変更を除き、第12の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第19図に示すように、第13の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構113は、第12の参考例の自動変速機構112に対して(第18図参照)、プラネタリギヤPRと、クラッチC1と、クラッチC3との配置を変更したものである。
該自動変速機構113において、クラッチC1及びクラッチC3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUの反対側(図中左方側)に配置されている。該クラッチC3のドラム状部材25の先端部内周側は、摩擦板73にスプライン係合しており、該摩擦板73の内周側には、ハブ部材26がスプライン係合している。ドラム状部材25は、入力軸2に接続されており、ハブ部材26は、サンギヤS1に接続されている。また、油圧サーボ11、摩擦板71、ドラム状部材21、ハブ部材22を有するクラッチC1は、上記クラッチC3の内周側、即ちハブ部材26に内包される形で配置されている。
一方、プラネタリギヤPRの外周側には、油圧サーボ14、摩擦板74、を有する多板式ブレーキB1が配置されている。該プラネタリギヤPRのキャリヤCR1は、その側板がケース3に固定支持されている。そして、リングギヤR1には伝達部材30が接続されており、該伝達部材30の外周側にはブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合していると共に、該伝達部材30がサンギヤS3に接続されている。
以上の構成に基づく自動変速機構110の作用は、第3の実施の形態と同様であるので(第6図及び第7図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本発明に係る自動変速機構113によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,93,94)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ13は、ケース3から延設されたボス部3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング84を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,84を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC3の内周側に、クラッチC1を配置するので、減速回転を伝達するために比較的大きなトルクを伝達しなければならないクラッチC3を外周側に配置することができ、該クラッチC3及びその油圧サーボ13を大径化することが可能となり、特に油圧サーボ13の油室の受圧面積を大きくすることが可能となって、該クラッチC3のトルク伝達可能な容量を大きくすることができるものでありながら、クラッチC3に比してトルク伝達可能な容量が小さくてよいクラッチC1を内周側に配置することで、自動変速機のコンパクト化を図ることができる。
また、例えばクラッチC3をリングギヤR1とサンギヤS3との間に介在させると、減速回転を接・断する必要があり、比較的大きなものになってしまうが、入力軸2とサンギヤS1との間に介在させることで、該クラッチC3による入力軸2の回転の接・断によってプラネタリギヤPRのリングギヤR1から出力される減速回転を接・断するので、クラッチC3をコンパクト化することができ、それにより自動変速機をコンパクト化することができる。
また、本実施の形態の自動変速機構113は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
ところで、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチが配置されるとその分、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)の長さが軸方向に長くなり、該連結部材は減速回転を伝達するものであるため、それに耐え得るように部材の厚みを増す必要性があることから重量が増加してしまう。そこで本実施の形態は、減速プラネタリギヤとプラネタリギヤユニット間の長さを短くして重量の増加を低減することができる自動変速機を提供することを目的としている。
本実施の形態では、特にクラッチC1をプラネタリギヤPRに対してプラネタリギヤユニットPUの軸方向反対側に配置することで、それらプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチを設ける必要がなく、その分、連結部材、特に伝達部材30の長さを短くすることができ、それにより、自動変速機全体の重量の増加を防止することができる。
<第14の参考例>
以下、第12の参考例を一部変更した第14の参考例について第20図に沿って説明する。第20図は第14の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第14の参考例は、一部変更を除き、第12の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第20図に示すように、第14の参考例に係る自動変速機の自動変速機構114は、第12の参考例の自動変速機構112に対して(第18図参照)、クラッチC2の配置を変更し、また、クラッチC3の代わりにブレーキB3を配置し、プラネタリギヤPRのキャリヤCR1をブレーキB3により固定自在にしたものである。
該自動変速機構114において、ブレーキB3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中左方側)に配置されている。該ブレーキB3は、油圧サーボ16、摩擦板76、ハブ部材33を有している。また、油圧サーボ11、摩擦板71、ドラム状部材21、ハブ部材22を有するクラッチC1は、上記ブレーキB3の内周側、即ちハブ部材33に内包される形で配置されている。該ブレーキB3のハブ部材33は、キャリヤCR1の一方の側板に接続されており、該キャリヤCR1の他方の側板は、入力軸2に回転自在に支持されている。また、サンギヤS1はクラッチC1のドラム状部材21を介して入力軸2に接続されている。そして、リングギヤR1の外周側にブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合していると共に、該リングギヤR1には伝達部材30が接続されて、該伝達部材30を介してサンギヤS3が接続されている。
以上の構成に基づく自動変速機構114の作用は、第4の参考例と同様であるので(第9図及び第10図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構114によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2の油圧サーボ11,12に供給する油路(例えば2a,2b,91,93)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3からシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12には、それぞれシールリング81,82を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
更に、プラネタリギヤPRからプラネタリギヤユニットPUに出力する減速回転をブレーキB3により接・断するようにしたので、例えばクラッチC3を設ける場合に比して、部品点数(例えばドラム状部材など)を削減することができる。また、ブレーキB3は、ケース3からそのまま油路を構成することができるので、例えばクラッチC3を設ける場合に比して、油路の構成を簡単にすることができる。
また、本参考例の自動変速機構114は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
ところで、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチが配置されるとその分、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)の長さが軸方向に長くなり、該連結部材は減速回転を伝達するものであるため、それに耐え得るように部材の厚みを増す必要性があることから重量が増加してしまう。そこで本参考例は、減速プラネタリギヤとプラネタリギヤユニット間の長さを短くして重量の増加を低減することができる自動変速機を提供することを目的としている。
本参考例では、特にクラッチC1をプラネタリギヤPRに対してプラネタリギヤユニットPUの軸方向反対側に配置することで、それらプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチを設ける必要がなく、その分、連結部材、特に伝達部材30の長さを短くすることができ、それにより、自動変速機全体の重量の増加を防止することができる。
<第15の参考例>
以下、第1乃至第14の実施の形態や参考例を一部変更した第15の参考例について第21図乃至第23図に沿って説明する。第21図は第15の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、第22図は第15の参考例に係る自動変速機の作動表、第23図は第15の参考例に係る自動変速機の速度線図である。なお、第15の参考例は、変更部分を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第21図に示すように、第15の参考例に係る自動変速機の自動変速機構115は、第1の参考例の自動変速機構11と同様に、入力軸2上に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとを有している。該プラネタリギヤユニットPUは、第1シンプルプラネタリギヤSP2と第2シンプルプラネタリSP3とにより構成されており、4つの回転要素として、連結されているサンギヤS2及びサンギヤS3、連結されているキャリヤCR3及びリングギヤR2、リングギヤR3、キャリヤCR2を有している、いわゆるシンプソン型プラネタリギヤである。また、上記プラネタリギヤPRは、キャリヤCR1に、リングギヤR1に噛合するピニオンP1b及びサンギヤS1に噛合するピニオンP1aを互いに噛合する形で有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
上記入力軸2上には、油圧サーボ11、摩擦板71、クラッチドラムを形成するドラム状部材121、ハブ部材122、を有する多板式クラッチC1が配置されている。該油圧サーボ11の油室は、ケース3の一端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3aの油路91に連通しており、該油路91は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ11に対しては、ケース3のボス部3aとドラム状部材121との間をシールする1対のシールリング81を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ11の油室までの油路が構成されている。
上記入力軸2には、上記ドラム状部材121が接続されている。該ドラム状部材121の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ11によって係合自在となっているクラッチC1の摩擦板71がスプライン係合する形で配置されており、該クラッチC1の摩擦板71の内周側がハブ部材122にスプライン係合する形で接続されている。そして、該ハブ部材122は、上記サンギヤS2に接続されている。
一方、入力軸2の他端上(図中左方)には、油圧サーボ12、摩擦板72、クラッチドラムを形成するドラム状部材123、上記キャリヤCR3に接続されているハブ部材124、を有する多板式クラッチC2が配置されている。その外周側に、油圧サーボ13、摩擦板73、クラッチドラムを形成するドラム部材125、を有する多板式クラッチC3が配置されている。更に、ドラム状部材125の外周側には、油圧サーボ14、摩擦板74、を有する多板式ブレーキB1が配置されている。
該油圧サーボ12の油室は、上記入力軸2に形成されている油路2bと連通しており、該油路2bは、ケース3の、上記ボス部3aとは反対側の他端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3bの油路93に連通して、該油路93は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ12に対しては、入力軸2とドラム状部材23との間をシールする1対のシールリング82を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ12の油室までの油路が構成されている。
また、上記油圧サーボ13の油室は、上記ボス部3bの油路94に連通しており、該油路94は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ13に対しては、ケース3のボス部3bとドラム状部材125との間をシールする1対のシールリング84によって、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ13の油室までの油路が構成されている。
また、上記入力軸2上には、図中左方側において、ドラム状部材123が接続されており、該ドラム状部材123の先端部内周側には、クラッチC2用油圧サーボ12により係合自在となっているクラッチC2の摩擦板72がスプライン係合する形で配置されている。該クラッチC2の摩擦板72の内周側には、ハブ部材124がスプライン係合する形で配置されており、該ハブ部材124は、上記キャリヤCR3に接続されている。
上記ドラム状部材125は、上記ボス部3bに回転自在に支持されており、該ドラム状部材125の先端部外周側には、上記ブレーキB1用油圧サーボ14により係止自在となっているブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合する形で配置されている。該ドラム状部材125の先端部内周側には、クラッチC3用油圧サーボ13により係合自在となっているクラッチC3の摩擦板73がスプライン係合する形で配置されており、該クラッチC3の摩擦版73の内周側には、リングギヤR1がスプライン係合する形で接続されている。
また、キャリヤCR1は、ピニオンP1a及びピニオンP1bを有しており、該ピニオンP1bは上記リングギヤR1に噛合し、該ピニオンP1aは、入力軸2に接続されたサンギヤS1に噛合している。該キャリヤCR1は、側板を介してケース3のボス部3bに固定されており、該リングギヤR1は支持部材126によりボス部3bに回転自在に支持されている。
そして、上記ドラム状部材125には、クラッチC3が係合した際にリングギヤR1の回転を伝達する伝達部材130が接続されており、また、該伝達部材130の他方側には、上記プラネタリギヤユニットPUの第2シンプルプラネタリギヤSP3のリングギヤR3が接続されている。
一方、第1シンプルプラネタリギヤSP2の外周側には、ワンウェイクラッチF1が配設されており、該ワンウェイクラッチF1のインナーレースが、第1シンプルプラネタリギヤSP1のリングギヤR2に接続されているハブ部材128に接続されている。また、該リングギヤR2の外周側には、油圧サーボ15、摩擦板75を有するブレーキB2が配設されており、該摩擦板75の内周側がリングギヤR2及びハブ部材128にスプライン係合していると共に、該摩擦板75の外周側がケース3の内周側にスプライン係合して、つまりブレーキB2によって該リングギヤR2が係止自在となっている。
また、上記リングギヤR3の内周側には、側板に支持されたピニオンP3を有しているキャリヤCR3が、該ピニオンP3を介して噛合しており、該キャリヤCR3は、該ピニオンP3を介して上記サンギヤS3に噛合していると共に、リングギヤR2連結されている。更に、上記リングギヤR2の内周側には、側板に支持されたピニオンP2を有しているキャリヤCR2が、該ピニオンP2を介して噛合しており、該キャリヤCR2は、該ピニオンP2を介して上記サンギヤS2に噛合している。そして、該キャリヤCR2は、該側板127を介してカウンタギヤ5に連結されている。
以上説明したように、プラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側にプラネタリギヤPRとクラッチC3とが配置されていると共に、クラッチC2が該軸方向一方側に配置され、軸方向他方側にクラッチC1が配置されており、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中右方側)にカウンタギヤ5が配置されている。更に、クラッチC3、特にその出力を伝達する伝達部材130の内周側に位置する形でクラッチC2が配置されている。また、ブレーキB1はプラネタリギヤPRの外周側に、ブレーキB2はプラネタリギヤユニットPUの外周側に、それぞれ配置されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構115の作用について第21図、第22図及び第23図に沿って説明する。なお、第23図に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(第23図中右方側)の縦軸はリングギヤR3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR2及びキャリヤCR3、キャリヤCR2、サンギヤS2及びサンギヤS3に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤPRの部分において、横方向最端部(第23図中右方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。また、それら縦軸の間隔は、それぞれのサンギヤS1,S2,S3の歯数の逆数、及びそれぞれのリングギヤR1,R3の歯数の逆数に比例している。そして、図中横軸方向の破線は伝達部材130により回転が伝達されることを示している。
第21図に示すように、上記サンギヤS2及びサンギヤS3には、クラッチC1が係合することにより入力軸2の回転が入力される。上記キャリヤCR3及びリングギヤR2には、クラッチC2が係合することにより入力軸2の回転が入力されると共に、該キャリヤCR3及びリングギヤR2は、ブレーキB2の係止により回転が固定自在となっており、また、ワンウェイクラッチF1により一方向の回転が規制されている。
一方、上記サンギヤS1には、入力軸2の回転が入力され、上記キャリヤCR1は、ケース3に対して回転が固定されており、上記リングギヤR1は、該キャリヤCR1を介して該サンギヤS1に入力される入力軸2の回転に基づき減速回転する。上記リングギヤR3には、クラッチC3が係合することにより、伝達部材130を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。また、該リングギヤR3は、ブレーキB1の係止により回転が固定自在となっている。そして、上記キャリヤCR2の回転は、上記カウンタギヤ5に出力され、該カウンタギヤ5、不図示のカウンタシャフト部及びディファレンシャル部を介して不図示の駆動車輪に出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進1速段では、第22図に示すように、クラッチC1及びワンウェイクラッチF1が係合される。すると、第23図に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2及びサンギヤS3に入力軸2の回転が入力されると共に、キャリヤCR3及びリングギヤR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりリングギヤR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。そして、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転と、固定されたリングギヤR2とによりキャリヤCR2に減速回転が出力され、前進1速段としての正転回転がカウンタギヤ5から出力される。
なお、この際、プラネタリギヤPRにおいて、入力軸2の回転が入力されるサンギヤS1と固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR3に減速回転が出力されるが、クラッチC3が解放されているため、特に伝達部材130にはトルク伝達が行われない。また、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB2を係止してリングギヤR2を固定し、該リングギヤR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。
なお、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF1によりリングギヤR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチF1の自動係合により滑らかに行うことができる。
D(ドライブ)レンジにおける前進2速段では、第22図に示すように、クラッチC1ブレーキB1が係合される。すると、第23図に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2及びサンギヤS3に入力軸2の回転が入力されると共に、リングギヤR3の回転が固定された状態になる。そして、サンギヤS3に入力された入力軸2の回転と、固定されたリングギヤR3とによりキャリヤCR3及びリングギヤR2に減速回転が出力され、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転と、該リングギヤR2に入力された減速回転とによりキャリヤCR2に上記前進1速段よりも大きな減速回転が出力され、前進2速段としての正転回転がカウンタギヤ5から出力される。
なお、この際も、プラネタリギヤPRにおいて、入力軸2の回転が入力されるサンギヤS1と固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR3に減速回転が出力されるが、クラッチC3が解放されているため、特に伝達部材130にはトルク伝達が行われない。
D(ドライブ)レンジにおける前進3速段では、第22図に示すように、クラッチC1及びクラッチC3が係合される。すると、第23図に示すように、サンギヤS1に入力軸2の回転が入力され、固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR1が減速回転する。また、クラッチC3の係合により、上記伝達部材130を介してリングギヤR3に該リングギヤR1の減速回転が入力される。一方、サンギヤS3には、入力軸2の回転が入力され、該サンギヤS3に入力された入力軸2の回転と、リングギヤR3の減速回転とによりキャリヤCR3及びリングギヤR2に僅かに大きな減速回転が出力され、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転と、該リングギヤR2に入力された僅かに大きな減速回転とによりキャリヤCR2に上記前進2速段よりも大きな減速回転が出力され、前進3速段としての正転回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際、リングギヤR1及びリングギヤR3は減速回転しているので、上記伝達部材130は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進4速段では、第22図に示すように、クラッチC1及びクラッチC2が係合される。すると、第23図に示すように、クラッチC1を介してサンギヤS2及びサンギヤS3と、クラッチC2を介してキャリヤCR3及びリングギヤR2とに入力軸2の回転が入力される。それにより、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転と、リングギヤR2に入力された入力軸2の回転とにより、つまり直結回転の状態となってキャリヤCR2に入力軸2の回転がそのまま出力され、前進4速段としての正転回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際も、プラネタリギヤPRにおいて、入力軸2の回転が入力されるサンギヤS1と固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR3に減速回転が出力されるが、クラッチC3が解放されているため、特に伝達部材130にはトルク伝達が行われない。
D(ドライブ)レンジにおける前進5速段では、第22図に示すように、クラッチC2及びクラッチC3が係合される。すると、第23図に示すように、サンギヤS1に入力軸2の回転が入力され、固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR1が減速回転する。また、クラッチC3の係合により、上記伝達部材130を介してリングギヤR3に該リングギヤR1の減速回転が入力される。一方、キャリヤCR3及びリングギヤR2には、入力軸2の回転が入力され、該キャリヤCR3に入力された入力軸2の回転と、リングギヤR3の減速回転とによりサンギヤS3及びサンギヤS3に増速回転が出力される。そして、リングギヤR2に入力された入力軸2の回転と、該サンギヤS2に入力された増速回転とによりキャリヤCR2に増速回転が出力され、前進5速段としての正転回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際、上記前進3速段の状態と同様に、リングギヤR1及びリングギヤR3は減速回転しているので、上記伝達部材130は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進6速段では、第22図に示すように、クラッチC2が係合され、ブレーキB1が係止される。すると、第23図に示すように、クラッチC2を介してキャリヤCR3及びリングギヤR2に入力軸2の回転が入力されると共に、ブレーキB1の係止によりリングギヤR3が固定される。それにより、キャリヤCR3に入力された入力軸2の回転と固定されたリングギヤR3とにより、(上記前進5速段よりも大きな)増速回転となってサンギヤS3及びサンギヤS2に出力され、リングギヤR2に入力された入力軸2の回転と、該サンギヤS2に入力された増速回転とによりキャリヤCR2に前進5速段より大きな増速回転が出力され、前進6速段としての正転回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際も、プラネタリギヤPRにおいて、入力軸2の回転が入力されるサンギヤS1と固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR3に減速回転が出力されるが、クラッチC3が解放されているため、特に伝達部材130にはトルク伝達が行われない。
R(リバース)レンジにおける後進1速段では、第22図に示すように、クラッチC3が係合され、ブレーキB2が係止される。すると、第23図に示すように、サンギヤS1に入力軸2の回転が入力され、固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR1が減速回転する。また、クラッチC3の係合により、上記伝達部材130を介してリングギヤR3に該リングギヤR1の減速回転が入力される。一方、ブレーキB2の係止によりキャリヤCR3及びリングギヤR2の回転が固定され、固定されたキャリヤCR3と、リングギヤR3の減速回転とによりサンギヤS3及びサンギヤS3に逆転回転が出力される。そして、固定されたリングギヤR2と、該サンギヤS2に入力された逆転回転とによりキャリヤCR2に逆転回転が出力され、後進1速段としての逆転回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際、上記前進3速段や前進5速段の状態と同様に、リングギヤR1及びリングギヤR3は減速回転しているので、上記伝達部材130は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
P(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、特にクラッチC1、クラッチC2及びクラッチC3が解放されており、入力軸2とカウンタギヤ5との間の動力伝達が切断状態であって、自動変速機構115全体としては空転状態(ニュートラル状態)となる。
以上のように、本発明に係る自動変速機構115によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材130を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,93,94)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ13は、ケース3から延設されたボス部3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング84を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,84を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC3の内周側に、クラッチC2を配置するので、減速回転を伝達するために比較的大きなトルクを伝達しなければならないクラッチC3を外周側に配置することができ、該クラッチC3及びその油圧サーボ13を大径化することが可能となり、特に油圧サーボ13の油室の受圧面積を大きくすることが可能となって、該クラッチC3のトルク伝達可能な容量を大きくすることができるものでありながら、クラッチC3に比してトルク伝達可能な容量が小さくてよいクラッチC2を内周側に配置することで、自動変速機のコンパクト化を図ることができる。
また、クラッチC1は、比較的低中速段である前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC1が比較的高速段である前進5速段、前進6速段や後進1速段などで解放された際に、特に該クラッチC1とサンギヤS2とを接続するハブ部材122が比較的高回転又は逆転回転することになり(第3図参照)、一方で前進5速段や後進1速段では伝達部材130が減速回転し、前進6速段では伝達部材130が固定される場合が生じ、ハブ部材122と伝達部材130との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC1はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまりハブ部材122と伝達部材130とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
また、本参考例の自動変速機構115は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
ところで、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)は、減速されたトルクが入力されるため、それに耐え得る剛性を必要とする。例えば低中速段で係合するクラッチや減速回転を係脱するクラッチを連結部材の内周側に配置しようとした場合、それらクラッチは容量の大きいものである必要があるので、その容量に対応させるべく径方向にそれなりの大きさを必要としてしまう。したがって、連結部材がそのようなクラッチの外周側を通すタイプであると、そのクラッチの必要径方向寸法のさらに大きな径を必要として、必要以上に連結部材の径方向寸法も増大してしまう虞があり、自動変速機全体として径方向に大きくなってしまう。そこで本参考例は、径方向寸法の増大を低減し、コンパクトな自動変速機を提供することを目的としている。
本参考例では、連結部材、特に伝達部材130の内周側に容量の小さいクラッチC2を配置することで、連結部材の径方向寸法を増大することなく、全てのクラッチを配置することができる。
<第16の実施の形態>
以下、第15の参考例を一部変更した第16の実施の形態について第24図乃至第26図に沿って説明する。第24図は第16の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、第25図は第16の実施の形態に係る自動変速機の作動表、第26図は第16の実施の形態に係る自動変速機の速度線図である。なお、第16の実施の形態は、変更部分を除き、第15の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第24図に示すように、第16の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構116は、第15の参考例の自動変速機構115に対して(第21図参照)、プラネタリギヤPRと、クラッチC3との配置を変更したものである。
該自動変速機構116において、クラッチC3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUの反対側(図中左方側)に配置されている。該クラッチC3のドラム状部材125の先端部内周側は、摩擦板73にスプライン係合しており、該摩擦板73の内周側には、ハブ部材126がスプライン係合している。ドラム状部材125は、入力軸2に接続されており、ハブ部材126は、サンギヤS1に接続されている。また、油圧サーボ12、摩擦板72、ドラム状部材123、ハブ部材124を有するクラッチC2は、上記クラッチC3の内周側、即ちハブ部材126に内包される形で配置されている。
一方、プラネタリギヤPRの外周側には、油圧サーボ14、摩擦板74、を有する多板式ブレーキB1が配置されている。該プラネタリギヤPRのキャリヤCR1は、その側板がケース3に固定支持されている。そして、リングギヤR1には伝達部材130が接続されており、該伝達部材130の外周側にはブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合していると共に、該伝達部材130がリングギヤR3に接続されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構116の作用について第24図、第25図及び第26図に沿って説明する。なお、上記第1の参考例と同様に、第26図に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(第26図中右方側)の縦軸はリングギヤR3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR2及びキャリヤCR3、キャリヤCR2、サンギヤS2及びサンギヤS3に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤPRの部分において、横方向最端部(第26図中右方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。また、それら縦軸の間隔は、それぞれのサンギヤS1,S2,S3の歯数の逆数、及びそれぞれのリングギヤR1,R3の歯数の逆数に比例している。そして、図中横軸方向の破線は伝達部材130により回転が伝達されることを示している。
第24図に示すように、クラッチC3が係合することにより上記サンギヤS1には、入力軸2の回転が入力される。また、上記キャリヤCR1は、ケース3に対して回転が固定されており、上記リングギヤR1は、該サンギヤS1に入力される入力軸2の回転に基づき減速回転する。つまりリングギヤR3には、クラッチC3が係合することにより、伝達部材130を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、第25図及び第26図に示すように、プラネタリギヤPRにおいて、前進3速段、前進5速段、後進1速段では、クラッチC3が係合されることにより入力軸2の回転がサンギヤS1に入力され、固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR3に減速回転が出力されて、伝達部材130を介してリングギヤR3に減速回転が入力される。この際、リングギヤR1及びリングギヤR3は減速回転しているので、上記伝達部材130は、比較的大きなトルク伝達を行っている。一方、前進1速段、前進2速段、前進4速段、前進6速段では、伝達部材130を介してリングギヤR3の回転がリングギヤR1に入力され、また、クラッチC3が解放されているため、第7図に示すように、サンギヤS1が、該リングギヤR1のそれぞれ変速段における回転と固定されたキャリヤCR1とに基づき回転する。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第15の参考例と同様であるので(第22図及び第23図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本発明に係る自動変速機構116によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材130を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,93,94)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ13は、ケース3から延設されたボス部3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング84を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,84を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC1は、比較的低中速段である前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC1が比較的高速段である前進5速段、前進6速段や後進1速段などで解放された際に、特に該クラッチC1とサンギヤS2とを接続するハブ部材122が比較的高回転又は逆転回転することになり(第3図参照)、一方で前進5速段や後進1速段では伝達部材130が減速回転し、前進6速段では伝達部材130が固定される場合が生じ、ハブ部材122と伝達部材130との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC1はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまりハブ部材122と伝達部材130とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
また、例えばクラッチC3をリングギヤR1とサンギヤS3との間に介在させると、減速回転を接・断する必要があり、比較的大きなものになってしまうが、入力軸2とサンギヤS1との間に介在させることで、該クラッチC3による入力軸2の回転の接・断によってプラネタリギヤPRのリングギヤR1から出力される減速回転を接・断するので、クラッチC3をコンパクト化することができ、それにより自動変速機をコンパクト化することができる。
また、本実施の形態の自動変速機構116は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
ところで、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチが配置されるとその分、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)の長さが軸方向に長くなり、該連結部材は減速回転を伝達するものであるため、それに耐え得るように部材の厚みを増す必要性があることから重量が増加してしまう。そこで本実施の形態は、減速プラネタリギヤとプラネタリギヤユニット間の長さを短くして重量の増加を低減することができる自動変速機を提供することを目的としている。
本実施の形態では、特にクラッチC2をプラネタリギヤPRに対してプラネタリギヤユニットPUの軸方向反対側に配置することで、それらプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチを設ける必要がなく、その分、連結部材、特に伝達部材130の長さを短くすることができ、それにより、自動変速機全体の重量の増加を防止することができる。
<第17の参考例>
以下、第15の参考例を一部変更した第17の参考例について第27図乃至第29図に沿って説明する。第27図は第17の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、第28図は第17の参考例に係る自動変速機の作動表、第29図は第17の参考例に係る自動変速機の速度線図である。なお、第17の参考例は、変更部分を除き、第15の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第27図に示すように、第17の参考例に係る自動変速機の自動変速機構117は、第15の参考例の自動変速機構115に対して(第21図参照)、クラッチC2の配置を変更し、また、クラッチC3の代わりにブレーキB3を配置し、プラネタリギヤPRのキャリヤCR1をブレーキB3により固定自在にしたものである。
該自動変速機構117において、ブレーキB3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中左方側)に配置されている。該ブレーキB3は、油圧サーボ16、摩擦板76、ハブ部材133を有している。また、油圧サーボ12、摩擦板72、ドラム状部材123、ハブ部材124を有するクラッチC2は、上記ブレーキB3の内周側、即ちハブ部材133に内包される形で配置されている。該ブレーキB3のハブ部材133は、キャリヤCR1の一方の側板に接続されており、該キャリヤCR1の他方の側板は、入力軸2に回転自在に支持されている。また、サンギヤS1はクラッチC2のドラム状部材123を介して入力軸2に接続されている。そして、リングギヤR1の外周側にブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合していると共に、該リングギヤR1には伝達部材130が接続されて、該伝達部材130を介してリングギヤR3が接続されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構117の作用について第27図、第28図及び第29図に沿って説明する。なお、上記第1の参考例と同様に、第29図に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(第29図中右方側)の縦軸はリングギヤR3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR2及びキャリヤCR3、キャリヤCR2、サンギヤS2及びサンギヤS3に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤPRの部分において、横方向最端部(第29図中右方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。また、それら縦軸の間隔は、それぞれのサンギヤS1,S2,S3の歯数の逆数、及びそれぞれのリングギヤR1,R3の歯数の逆数に比例している。そして、図中横軸方向の破線は伝達部材130により回転が伝達されることを示している。
第27図に示すように、ブレーキB3が係止することにより上記キャリヤCR1は、ケース3に対して固定される。また、サンギヤS1には、入力軸2の回転が入力されており、上記リングギヤR1は、該キャリヤCR1が固定されることにより、該サンギヤS1に入力される入力軸2の回転に基づき減速回転する。つまりリングギヤR3には、ブレーキB3が係合することにより、伝達部材130を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、第28図及び第29図に示すように、プラネタリギヤPRにおいて、前進3速段、前進5速段、後進1速段では、ブレーキB3が係止されることによりキャリヤCR1が固定され、入力軸2の回転が入力されているサンギヤS1の回転によりリングギヤR3に減速回転が出力されて、伝達部材130を介してリングギヤR3に減速回転が入力される。この際、リングギヤR1及びリングギヤR3は減速回転しているので、上記伝達部材130は、比較的大きなトルク伝達を行っている。一方、前進1速段、前進2速段、前進4速段、前進6速段では、伝達部材130を介してリングギヤR3の回転がリングギヤR1に入力され、ブレーキB3が解放されているため、第29図に示すように、キャリヤCR1が、該リングギヤR1のそれぞれ変速段における回転と入力軸2の回転のサンギヤS1とに基づき回転する。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第15の参考例と同様であるので(第22図及び第23図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構117によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC1,C2を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材130を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、油圧サーボ11,12は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,12との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,12の油室に油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12には、それぞれ1対のシールリング81,82を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC1は、比較的低中速段である前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC1が比較的高速段である前進5速段、前進6速段や後進1速段などで解放された際に、特に該クラッチC1とサンギヤS2とを接続するハブ部材122が比較的高回転又は逆転回転することになり(第3図参照)、一方で前進5速段や後進1速段では伝達部材130が減速回転し、前進6速段では伝達部材130が固定される場合が生じ、ハブ部材122と伝達部材130との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC1はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまりハブ部材122と伝達部材130とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
更に、プラネタリギヤPRからプラネタリギヤユニットPUに出力する減速回転をブレーキB3により接・断するようにしたので、例えばクラッチC3を設ける場合に比して、部品点数(例えばドラム状部材など)を削減することができる。また、ブレーキB3は、ケース3からそのまま油路を構成することができるので、例えばクラッチC3を設ける場合に比して、油路の構成を簡単にすることができる。
また、本参考例の自動変速機構117は、前進4速段において直結状態となる変速機構であり、前進5速段及び前進6速段でのギヤ比を高く設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、高車速で走行する車輌において、エンジン回転数を低くすることができ、高速走行での車輌の静粛性に寄与することができる。
ところで、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチが配置されるとその分、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)の長さが軸方向に長くなり、該連結部材は減速回転を伝達するものであるため、それに耐え得るように部材の厚みを増す必要性があることから重量が増加してしまう。そこで本参考例は、減速プラネタリギヤとプラネタリギヤユニット間の長さを短くして重量の増加を低減することができる自動変速機を提供することを目的としている。
本参考例では、特にクラッチC2をプラネタリギヤPRに対してプラネタリギヤユニットPUの軸方向反対側に配置することで、それらプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチを設ける必要がなく、その分、連結部材、特に伝達部材130の長さを短くすることができ、それにより、自動変速機全体の重量の増加を防止することができる。
<第18の参考例>
以下、第1乃至第17の実施の形態や参考例を一部変更した第18の参考例について第30図乃至第32図に沿って説明する。第30図は第18の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、第31図は第18の参考例に係る自動変速機の作動表、第32図は第18の参考例に係る自動変速機の速度線図である。なお、第18の参考例は、変更部分を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第30図に示すように、自動変速機構118は、入力軸2上に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとを有している。該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、キャリヤCR2、リングギヤR2、及びサンギヤS3を有し、該キャリヤCR2に、側板に支持されてサンギヤS2及びリングギヤR2に噛合するロングピニオンPLと、サンギヤS3に噛合するショートピニオンPSとを、互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。また、上記プラネタリギヤPRは、キャリヤCR1に、リングギヤR1に噛合するピニオンPb及びサンギヤS1に噛合するピニオンPaを互いに噛合する形で有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
上記入力軸2上には、内周側に、油圧サーボ12、摩擦板72、クラッチドラムを形成するドラム状部材223と、サンギヤS2に連結されるハブ部材224、を有する多板式クラッチ(第2のクラッチ)C2と、その外周側に、油圧サーボ15、上記ハブ部材224にスプライン係合している摩擦板75、を有する多板式ブレーキB2と、が配置されている。
該油圧サーボ12の油室は、ケース3の一端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3aの油路91に連通している。そして、該油路91は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ12は、ボス部3a上に配置されているため、該ボス部3aとドラム状部材223との間をシールする1対のシールリング81によって、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ12の油室までの油路が構成されている。
また、上記入力軸2には、上記ドラム状部材223が接続されており、該ドラム状部材223の先端部内周側には、クラッチC2用油圧サーボ12によって係合自在となっているクラッチC2の摩擦板72がスプライン係合する形で配置されて、該クラッチC2の摩擦板72の内周側がハブ部材224にスプライン係合する形で接続されている。そして、該ハブ部材224は、上記サンギヤS2に接続されている。また、上記ドラム状部材224の外周側には、ブレーキB2用油圧サーボ15により係合自在となっているブレーキB2がスプライン係合する形で配置されている。
一方、入力軸2の他端上(図中左方)には、油圧サーボ13、摩擦板73、クラッチドラムを形成するドラム状部材225、ハブ部材226、を有する多板式クラッチ(第1のクラッチ)C3が配置されている。該クラッチC3のドラム状部材225の先端内周側には摩擦板73がスプライン係合しており、該摩擦板73はハブ部材226の先端外周側にスプライン係合して、該ハブ部材226がキャリヤCR2に接続されている。
該油圧サーボ13の油室は、上記入力軸2に形成されている油路2bと連通しており、該油路2bは、ケース3の、上記ボス部3aとは反対側の他端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3bの油路93に連通して、該油路93は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ13は、ケース3のボス部3bとドラム状部材225との間をシールする1対のシールリング82によって、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ13の油室までの油路が構成されている。
また、ボス部3b上には、油圧サーボ11、摩擦板71、ドラム状部材221、を有する多板式クラッチ(第3のクラッチ)C1が配置されている。上記油圧サーボ11の油室は、上記ボス部3bの油路94に連通しており、該油路94は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ11に対しては、ケース3のボス部3bとドラム状部材221との間をシールする1対のシールリング84によって、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ11の油室までの油路が構成されている。
また、上記ボス部3b上には、図中左方側において、ドラム状部材221が回転自在に支持されており、該ドラム状部材221の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ11により係合自在となっているクラッチC1の摩擦板71がスプライン係合する形で配置されている。該クラッチC1の内周側には、上記リングギヤR1が形成されているハブ部材222がスプライン係合する形で配置されており、該ハブ部材222は、入力軸2に回転自在に支持されている。また、キャリヤCR1は、ピニオンPa及びピニオンPbを有しており、該ピニオンPbは上記リングギヤR1に噛合し、該ピニオンPaは、入力軸2に接続されたサンギヤS1に噛合している。該キャリヤCR1は、側板を介してケース3のボス部3bに固定されている。
そして、上記クラッチC1がスプライン係合しているドラム状部材221は、上記ボス部3b上に回転自在に支持され、クラッチC1が係合した際にリングギヤR1の回転を伝達する伝達部材230が接続されており、また、該伝達部材230の他方側には、上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3が接続されている。
一方、プラネタリギヤユニットPUの外周側には、油圧サーボ14、摩擦板74、ハブ部材228を有する多板式ブレーキB1が配置されている。上記プラネタリギヤユニットPUのキャリヤCR2の側板には、上記ブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合している形のハブ部材228が接続されており、また、該ハブ部材228にはワンウェイクラッチF1のインナーレースが接続されている。該キャリヤCR2のショートピニオンPSにはサンギヤS3が噛合している。そして、該キャリヤCR2のロングピニオンPLには、上記サンギヤS2及びリングギヤR2が噛合しており、該リングギヤR2の一端には連結部材227が接続されて、該リングギヤR2が該連結部材227を介してカウンタギヤ5に連結されている。
以上説明したように、プラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側にプラネタリギヤPRとクラッチC3とが配置されていると共に、クラッチC1が該軸方向一方側に配置され、軸方向他方側にクラッチC2が配置されており、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中右方側)にカウンタギヤ5が配置されている。更に、クラッチC1、特にその出力を伝達する伝達部材230の内周側に位置する形でクラッチC3が配置されている。また、ブレーキB2はクラッチC2の外周側に、ブレーキB1はプラネタリギヤユニットPUの外周側に、それぞれ配置されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構118の作用について第30図、第31図及び第32図に沿って説明する。なお、第32図に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(第32図中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR2、キャリヤCR2、サンギヤS2に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤPRの部分において、横方向最端部(第32図中右方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。また、それら縦軸の間隔は、それぞれのサンギヤS1,S2,S3の歯数の逆数、及びそれぞれのリングギヤR1,R3の歯数の逆数に比例している。そして、図中横軸方向の破線は伝達部材230により回転が伝達されることを示している。
第30図に示すように、上記サンギヤS2には、クラッチC2が係合することにより入力軸2の回転が入力されると共に、該サンギヤS2は、ブレーキB2の係止により回転が固定自在となっている。上記キャリヤCR2には、クラッチC3が係合することにより入力軸2の回転が入力されると共に、該キャリヤCR2は、ブレーキB2の係止により回転が固定自在となっており、また、ワンウェイクラッチF1により一方向の回転が規制されている。
一方、上記サンギヤS1は、入力軸2に接続されており、該入力軸2の回転が入力され、また、上記キャリヤCR1はケース3に接続されて、回転が固定されており、それによってリングギヤR1は減速回転する。また、クラッチC1が係合することにより、該リングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力される。そして、上記リングギヤR2の回転は、上記カウンタギヤ5に出力され、該カウンタギヤ5、不図示のカウンタシャフト部及びディファレンシャル部を介して不図示の駆動車輪に出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進1速段では、第31図に示すように、クラッチC1及びワンウェイクラッチF1が係合される。すると、第32図に示すように、クラッチC1、伝達部材230を介してリングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力される。また、ワンウィイクラッチF1によりキャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。そして、サンギヤS3に入力された減速回転と、固定されたキャリヤCR2とにより、リングギヤR2が前進1速段としての正転回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。
なお、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB1を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。また、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF1によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチの自動係合により滑らかに行うことができる。なお、この際、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材230は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進2速段では、第31図に示すように、クラッチC1が係合され、ブレーキB2が係止される。すると、第32図に示すように、クラッチC1、伝達部材230を介してリングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力されると共に、サンギヤS2の回転がブレーキB2により固定される。それにより、キャリヤCR2が僅かに減速回転し、サンギヤS3に入力された減速回転と、該僅かな減速回転のキャリヤCR2とにより、リングギヤR2が前進2速段としての正転回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際も、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材230は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進3速段では、第31図に示すように、クラッチC1及びクラッチC2が係合される。すると、第32図に示すように、クラッチC1、伝達部材230を介してリングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力されると共に、クラッチC2の係合によりサンギヤS2に入力軸2の回転が入力される。すると、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転と、サンギヤS3の減速回転とにより、キャリヤCR2が、該サンギヤS3の減速回転より僅かに大きな減速回転となる。そして、サンギヤS2の入力回転と、サンギヤS3の減速回転とにより、リングギヤR2が前進3速段としての正転回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際も、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材230は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進4速段では、第31図に示すように、クラッチC1及びクラッチC3が係合される。すると、第32図に示すように、クラッチC1、伝達部材230を介してリングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力されると共に、クラッチC3を介してキャリヤCR2に入力軸2の回転が入力される。そして、キャリヤCR2に入力された入力軸2の回転と、サンギヤS3の減速回転とにより、リングギヤR2が前進4速段としての正転回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際も、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材230は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進5速段では、第31図に示すように、クラッチC2及びクラッチC3が係合される。すると、第32図に示すように、クラッチC3を介してキャリヤCR2に入力軸2の回転が入力されると共に、クラッチC2を介してサンギヤS2に入力軸2の回転が入力される。そして、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転と、キャリヤCR2に入力された入力軸2の回転とにより、つまりリングギヤR2が直結回転の状態となって、前進5速段として入力軸2と同回転の正転回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進6速段では、第31図に示すように、クラッチC3が係合され、ブレーキB2が係止される。すると、第32図に示すように、クラッチC3を介してキャリヤCR2に入力軸2の回転が入力されると共に、ブレーキB2の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。そして、キャリヤCR2に入力された入力軸2の回転と、固定されたサンギヤS2とにより、リングギヤR2が前進6速段としての増速回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。
R(リバース)レンジにおける後進1速段では、第31図に示すように、クラッチC2が係合され、ブレーキB1が係止される。すると、第32図に示すように、クラッチC2の係合によりサンギヤS2に入力軸2の回転が入力されると共に、ブレーキB1の係止によりキャリヤCR2の回転が固定される。そして、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転と、固定されたキャリヤCR2とにより、リングギヤR2が後進1速段としての逆転回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。
P(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、特にクラッチC1、クラッチC2及びクラッチC3が解放されており、入力軸2とカウンタギヤ5との間の動力伝達が切断状態であって、自動変速機構118全体としては空転状態(ニュートラル状態)となる。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構118によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC2,C3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材230を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2b,91,93,94)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ13は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ13の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ11,12は、ケース3から延設されたボス部3a,3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング81,84を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,84を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC1の内周側に、クラッチC3を配置するので、減速回転を伝達するために比較的大きなトルクを伝達しなければならないクラッチC1を外周側に配置することができ、該クラッチC1及びその油圧サーボ11を大径化することが可能となり、特に油圧サーボ11の油室の受圧面積を大きくすることが可能となって、該クラッチC1のトルク伝達可能な容量を大きくすることができるものでありながら、クラッチC1に比してトルク伝達可能な容量が小さくてよいクラッチC3を内周側に配置することで、自動変速機のコンパクト化を図ることができる。
また、クラッチC2は、後進1速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC2が後進1速段で係合された際に、該クラッチC2の係合により該クラッチC2とサンギヤS2とを接続するハブ部材224が入力軸2の回転と同じになり、一方で伝達部材230が逆転回転することになる場合が生じ、伝達部材230とハブ部材224との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC2はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまり伝達部材230とハブ部材224とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
また、本参考例の自動変速機構118は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
ところで、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)は、減速されたトルクが入力されるため、それに耐え得る剛性を必要とする。例えば低中速段で係合するクラッチや減速回転を係脱するクラッチを連結部材の内周側に配置しようとした場合、それらクラッチは容量の大きいものである必要があるので、その容量に対応させるべく径方向にそれなりの大きさを必要としてしまう。したがって、連結部材がそのようなクラッチの外周側を通すタイプであると、そのクラッチの必要径方向寸法のさらに大きな径を必要として、必要以上に連結部材の径方向寸法も増大してしまう虞があり、自動変速機全体として径方向に大きくなってしまう。そこで本参考例は、径方向寸法の増大を低減し、コンパクトな自動変速機を提供することを目的としている。
本参考例では、連結部材、特に伝達部材230の内周側に容量の小さいクラッチC3を配置することで、連結部材の径方向寸法を増大することなく、全てのクラッチを配置することができる。
<第19の実施の形態>
以下、第18の参考例を一部変更した第19の実施の形態について第33図乃至第35図に沿って説明する。第33図は第19の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、第34図は第19の実施の形態に係る自動変速機の作動表、第35図は第19の実施の形態に係る自動変速機の速度線図である。なお、第19の実施の形態は、変更部分を除き、第18の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第33図に示すように、第19の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構119は、第18の参考例の自動変速機構118に対して(第30図参照)、クラッチC1の配置を変更し、また、クラッチC2の油圧サーボ12の油路の構成を変更したものである。
該自動変速機構119において、クラッチC1は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUの反対側(図中左方側)に配置されている。該クラッチC1のドラム状部材221の先端部内周側は、摩擦板71にスプライン係合しており、該摩擦板71の内周側には、ハブ部材222がスプライン係合している。ドラム状部材221は、入力軸2に接続されており、ハブ部材222は、プラネタリギヤPRのサンギヤS1に接続されている。該プラネタリギヤPRのキャリヤCR1は、その側板がケース3に固定支持されている。そして、リングギヤR1には伝達部材230が接続されており、該伝達部材230がサンギヤS3に接続されている。また、油圧サーボ13、摩擦板73、ドラム状部材225、ハブ部材226を有するクラッチC3は、該伝達部材230に内包される形で配置されている。
また、油圧サーボ12の油室は、入力軸2に形成されている油路2aに連通しており、該油路2aは、ケース3の一端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3aの油路91に連通して、該油路91は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ12に対しては、ケース3のボス部3aと入力軸2との間をシールする1対のシールリング81を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ12の油室までの油路が構成されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構119の作用について第33図、第34図及び第35図に沿って説明する。なお、上記第1の参考例と同様に、第35図に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(第35図中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR2、キャリヤCR2、サンギヤS2に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤPRの部分において、横方向最端部(第35図中右方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。また、それら縦軸の間隔は、それぞれのサンギヤS1,S2,S3の歯数の逆数、及びそれぞれのリングギヤR1,R3の歯数の逆数に比例している。そして、図中横軸方向の破線は伝達部材230により回転が伝達されることを示している。
第33図に示すように、クラッチC1が係合することにより上記サンギヤS1には、入力軸2の回転が入力される。また、上記キャリヤCR1は、ケース3に対して回転が固定されており、上記リングギヤR1は、該サンギヤS1に入力される入力軸2の回転に基づき減速回転する。つまりサンギヤS3には、クラッチC1が係合することにより、伝達部材230を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、第34図及び第35図に示すように、プラネタリギヤPRにおいて、前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段では、クラッチC1が係合されることにより入力軸2の回転がサンギヤS1に入力され、固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR3に減速回転が出力されて、伝達部材230を介してサンギヤS3に減速回転が入力される。この際、リングギヤR1及びサンギヤS3は減速回転しているので、上記伝達部材230は、比較的大きなトルク伝達を行っている。一方、前進5速段、前進6速段、後進1速段では、伝達部材230を介してサンギヤS3の回転がリングギヤR1に入力され、クラッチC1が解放されているため、第35図に示すように、サンギヤS1が、該リングギヤR1のそれぞれ変速段における回転と固定されたキャリヤCR1とに基づき回転する。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第18の参考例と同様であるので(第31図及び第32図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本発明に係る自動変速機構119によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC2,C3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材230を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,93,94)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ12,13は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ12,13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ12,13の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ11は、ケース3から延設されたボス部3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング84を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,84を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC2は、後進1速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC2が後進1速段で係合された際に、該クラッチC2の係合により該クラッチC2とサンギヤS2とを接続するハブ部材224が入力軸2の回転と同じになり、一方で伝達部材230が逆転回転することになる場合が生じ、伝達部材230とハブ部材224との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC2はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまり伝達部材230とハブ部材224とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
また、例えばクラッチC1をリングギヤR1とサンギヤS3との間に介在させると、減速回転を接・断する必要があり、比較的大きなものになってしまうが、入力軸2とサンギヤS1との間に介在させることで、該クラッチC1による入力軸2の回転の接・断によってプラネタリギヤPRのリングギヤR1から出力される減速回転を接・断するので、クラッチC1をコンパクト化することができ、それにより自動変速機をコンパクト化することができる。
また、本実施の形態の自動変速機構119は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
ところで、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)は、減速されたトルクが入力されるため、それに耐え得る剛性を必要とする。例えば低中速段で係合するクラッチや減速回転を係脱するクラッチを連結部材の内周側に配置しようとした場合、それらクラッチは容量の大きいものである必要があるので、その容量に対応させるべく径方向にそれなりの大きさを必要としてしまう。したがって、連結部材がそのようなクラッチの外周側を通すタイプであると、そのクラッチの必要径方向寸法のさらに大きな径を必要として、必要以上に連結部材の径方向寸法も増大してしまう虞があり、自動変速機全体として径方向に大きくなってしまう。そこで本実施の形態は、径方向寸法の増大を低減し、コンパクトな自動変速機を提供することを目的としている。
本実施の形態では、連結部材、特に伝達部材230の内周側に容量の小さいクラッチC3を配置することで、連結部材の径方向寸法を増大することなく、全てのクラッチを配置することができる。
<第20の参考例>
以下、第18の参考例を一部変更した第20の参考例について第36図乃至第38図に沿って説明する。第36図は第20の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、第37図は第20の参考例に係る自動変速機の作動表、第38図は第20の参考例に係る自動変速機の速度線図である。なお、第20の参考例は、変更部分を除き、第18の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第36図に示すように、第20の参考例に係る自動変速機の自動変速機構120は、第18の参考例の自動変速機構118に対して(第30図参照)、クラッチC1の代わりにブレーキB3を配置し、プラネタリギヤPRのキャリヤCR1をブレーキB3により固定自在にしたものであり、また、クラッチC2の油圧サーボ12の油路の構成を変更したものである。
該自動変速機構120において、ブレーキB3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中左方側)に配置されている。該ブレーキB3は、油圧サーボ16、摩擦板76、ハブ部材233を有している。
該ブレーキB3のハブ部材233は、キャリヤCR1の一方の側板に接続されており、該キャリヤCR1は、入力軸2又はボス部3aに回転自在に支持されている。また、サンギヤS1は入力軸2に接続されている。そして、該リングギヤR1には伝達部材230が接続されて、該伝達部材230を介してサンギヤS3が接続されている。
また、油圧サーボ12の油室は、入力軸2に形成されている油路2aに連通しており、該油路2aは、ケース3の一端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3aの油路91に連通して、該油路91は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ11に対しては、ケース3のボス部3aと入力軸2との間をシールする1対のシールリング81を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ12の油室までの油路が構成されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構120の作用について第36図、第37図及び第38図に沿って説明する。なお、上記第1の参考例と同様に、第38図に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(第38図中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR2、キャリヤCR2、サンギヤS2に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤPRの部分において、横方向最端部(第38図中右方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。また、それら縦軸の間隔は、それぞれのサンギヤS1,S2,S3の歯数の逆数、及びそれぞれのリングギヤR1,R3の歯数の逆数に比例している。そして、図中横軸方向の破線は伝達部材230により回転が伝達されることを示している。
第36図に示すように、ブレーキB3が係止することにより上記キャリヤCR1は、ケース3に対して固定される。また、サンギヤS1には、入力軸2の回転が入力されており、上記リングギヤR1は、該キャリヤCR1が固定されることにより、該サンギヤS1に入力される入力軸2の回転に基づき減速回転する。つまりサンギヤS3には、ブレーキB3が係合することにより、伝達部材230を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、第37図及び第38図に示すように、プラネタリギヤPRにおいて、前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段では、ブレーキB3が係止されることによりキャリヤCR1が固定され、入力軸2の回転が入力されているサンギヤS1の回転によりリングギヤR3に減速回転が出力されて、伝達部材230を介してサンギヤS3に減速回転が入力される。この際、リングギヤR1及びサンギヤS3は減速回転しているので、上記伝達部材230は、比較的大きなトルク伝達を行っている。一方、前進5速段、前進6速段、後進1速段では、伝達部材230を介してサンギヤS3の回転がリングギヤR1に入力され、ブレーキB3が解放されているため、第38図に示すように、キャリヤCR1が、該リングギヤR1のそれぞれ変速段における回転と入力軸2の回転のサンギヤS1とに基づき回転する。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第18の参考例と同様であるので、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構120によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC2,C3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材230を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、油圧サーボ12,13は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ12,13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ12,13の油室に油を供給することができる。従って、油圧サーボ12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC2は、後進1速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC2が後進1速段で係合された際に、該クラッチC2の係合により該クラッチC2とサンギヤS2とを接続するハブ部材224が入力軸2の回転と同じになり、一方で伝達部材230が逆転回転することになる場合が生じ、伝達部材230とハブ部材224との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC2はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまり伝達部材230とハブ部材224とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
更に、プラネタリギヤPRからプラネタリギヤユニットPUに出力する減速回転をブレーキB3により接・断するようにしたので、例えばクラッチC1を設ける場合に比して、部品点数(例えばドラム状部材など)を削減することができる。また、ブレーキB3は、ケース3からそのまま油路を構成することができるので、例えばクラッチC1を設ける場合に比して、油路の構成を簡単にすることができる。
また、本参考例の自動変速機構120は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
ところで、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)は、減速されたトルクが入力されるため、それに耐え得る剛性を必要とする。例えば低中速段で係合するクラッチや減速回転を係脱するクラッチを連結部材の内周側に配置しようとした場合、それらクラッチは容量の大きいものである必要があるので、その容量に対応させるべく径方向にそれなりの大きさを必要としてしまう。したがって、連結部材がそのようなクラッチの外周側を通すタイプであると、そのクラッチの必要径方向寸法のさらに大きな径を必要として、必要以上に連結部材の径方向寸法も増大してしまう虞があり、自動変速機全体として径方向に大きくなってしまう。そこで本参考例は、径方向寸法の増大を低減し、コンパクトな自動変速機を提供することを目的としている。
本参考例では、連結部材、特に伝達部材230の内周側に容量の小さいクラッチC3を配置することで、連結部材の径方向寸法を増大することなく、全てのクラッチを配置することができる。
<第21の参考例>
以下、第18の参考例を一部変更した第21の参考例について第39図に沿って説明する。第39図は第21の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第21の参考例は、一部変更を除き、第18の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第39図に示すように、第21の参考例に係る自動変速機の自動変速機構121は、第18の参考例の自動変速機構118に対して(第30図参照)、クラッチC1及びプラネタリギヤPRの配置を変更したもの(即ち、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの図中右方側に配置し、カウンタギヤ5を該プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に配置したもの)である。
該自動変速機構121において、上記入力軸2上には、内周側に、油圧サーボ11、摩擦板71、クラッチドラムを形成するドラム状部材221と、サンギヤS3に連結されるハブ部材222、を有する多板式クラッチC1と、その外周側に、油圧サーボ12、摩擦板72、クラッチドラムを形成するドラム部材223、ハブ部材224を有する多板式クラッチC2と、が配置されている。また、ハブ部材224の外周側には、油圧サーボ15、摩擦板75、を有する多板式ブレーキB2が配置されている。
上記入力軸2には、上記ドラム状部材221が回転自在に支持されており、該ドラム状部材221の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ11によって係合自在となっているクラッチC1の摩擦板71がスプライン係合する形で配置されて、該クラッチC1の摩擦版71の内周側がハブ部材222にスプライン係合する形で接続されている。
また、上記ボス部3aには、サンギヤS1が固定支持されており、キャリヤCR1は、側板を介して入力軸2に接続されている。リングギヤR1は、ボス部3aに回転自在に支持されていると共に、上記ドラム状部材221に接続されている。そして、上記ハブ部材222には、伝達部材230が接続され、該伝達部材230は、上記サンギヤS3に接続されている。
なお、油圧サーボ11の油室は、上記入力軸2に形成されている油路2aと連通しており、該油路2aは、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3aの油路91に連通して、該油路91は、不図示の油圧制御装置に連通している。該油圧サーボ11は、ケース3のボス部3bと入力軸2との間をシールする1対のシールリング81と、入力軸2とドラム状部材221との間をシールする1対のシールリング85とによって、つまり、2対のシールリングを有して、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ11の油室までの油路が構成されている。
一方、入力軸2の他端上(図中左方)には、油圧サーボ13、摩擦板73、クラッチドラムを形成するドラム状部材225、ハブ部材226、を有する多板式クラッチC3が配置されている。該クラッチC3のドラム状部材225の先端内周側には摩擦板73がスプライン係合しており、該摩擦板73はハブ部材226の先端外周側にスプライン係合して、該ハブ部材226がキャリヤCR2の側板に接続されている。
該油圧サーボ13の油室は、上記入力軸2に形成されている油路2bと連通しており、該油路2bは、ケース3の、上記ボス部3aとは反対側の他端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3bの油路93に連通して、該油路93は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ13は、ケース3のボス部3bとドラム状部材225との間をシールする1対のシールリング82によって、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ13の油室までの油路が構成されている。
一方、プラネタリギヤユニットPUの外周側には、油圧サーボ14、摩擦板74、ハブ部材228を有する多板式ブレーキB1が配置されている。上記プラネタリギヤユニットPUのキャリヤCR2の側板には、上記ブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合している形のハブ部材228が接続されており、また、該ハブ部材228にはワンウェイクラッチF1のインナーレースが接続されている。該キャリヤCR2のショートピニオンPSにはサンギヤS3が噛合している。そして、該キャリヤCR2のロングピニオンPLには、上記サンギヤS2及びリングギヤR2が噛合しており、該リングギヤR2の一端には連結部材227が接続されて、該リングギヤR2が該連結部材227を介してカウンタギヤ5に連結されている。
以上の構成に基づく自動変速機構121の作用は、プラネタリギヤPRの部分においてキャリヤCR1とサンギヤS1とが入れ替わった形で、つまりサンギヤS1が固定され、キャリヤCR1に入力軸2の回転が入力されるようになっているが、その他の部分は、第18の参考例と同様であるので(第31図及び第32図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構121によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC2,C3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材230を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,92,93)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、本参考例の自動変速機構121は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
<第22の参考例>
以下、第21の参考例を一部変更した第22の参考例について第40図に沿って説明する。第40図は第22の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第22の参考例は、一部変更を除き、第21の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第40図に示すように、第22の参考例に係る自動変速機の自動変速機構122は、第21の参考例の自動変速機構121に対して(第39図参照)、プラネタリギヤPR及びクラッチC2の配置を変更し、また、クラッチC1の代わりにブレーキB3を配置し、プラネタリギヤPRのキャリヤCR1をブレーキB3により固定自在にしたものである。
該自動変速機構122において、ブレーキB3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中右方側)に配置されている。該ブレーキB3は、油圧サーボ16、摩擦板76、ハブ部材233を有しており、該ハブ部材233は、ボス部3aに回転自在に支持される形でサンギヤS1に接続されている。また、油圧サーボ12、摩擦板72、ドラム状部材223、ハブ部材224、を有するクラッチC2は、該ブレーキB3のハブ部材233の外周側に配置されている。該クラッチC2のドラム状部材223は、キャリヤCR1の一方の側板に接続されており、該キャリヤCR1の他方の側板は、入力軸2に接続されている。そして、リングギヤR1には伝達部材230が接続されて、該伝達部材230を介してサンギヤS3が接続されている。
なお、油圧サーボ12の油室は、ハブ部材233に形成されている油孔(不図示)を介して、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3aの油路91に連通して、該油路91は、不図示の油圧制御装置に連通している。該油圧サーボ11は、ケース3のボス部3aとハブ部材233との間をシールする1対のシールリング80と、該ハブ部材233とドラム状部材223との間をシールする1対のシールリング86とによって、つまり、2対のシールリングを有して、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ12の油室までの油路が構成されている。
以上の構成に基づく自動変速機構122の作用は、プラネタリギヤPRの部分においてキャリヤCR1とサンギヤS1とが入れ替わった形で、つまりキャリヤCR1に入力軸2の回転が入力され、サンギヤS1がブレーキB3により固定自在となっているが、その他の部分は、第20の参考例と同様であるので(第37図及び第38図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構122によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC2,C3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材230を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
更に、プラネタリギヤPRからプラネタリギヤユニットPUに出力する減速回転をブレーキB3により接・断するようにしたので、例えばクラッチC1を設ける場合に比して、部品点数(例えばドラム状部材など)を削減することができる。また、ブレーキB3は、ケース3からそのまま油路を構成することができるので、例えばクラッチC1を設ける場合に比して、油路の構成を簡単にすることができる。
また、本参考例の自動変速機構122は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
ところで、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチが配置されるとその分、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)の長さが軸方向に長くなり、該連結部材は減速回転を伝達するものであるため、それに耐え得るように部材の厚みを増す必要性があることから重量が増加してしまう。そこで本参考例は、減速プラネタリギヤとプラネタリギヤユニット間の長さを短くして重量の増加を低減することができる自動変速機を提供することを目的としている。
本参考例では、特にクラッチC2をプラネタリギヤPRに対してプラネタリギヤユニットPUの軸方向反対側に配置することで、それらプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチを設ける必要がなく、その分、連結部材、特に伝達部材230の長さを短くすることができ、それにより、自動変速機全体の重量の増加を防止することができる。
<第23の参考例>
以下、第18の参考例を一部変更した第23の参考例について第41図に沿って説明する。第41図は第23の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第23の参考例は、一部変更を除き、第23の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第41図に示すように、第23の参考例に係る自動変速機の自動変速機構123は、第18の参考例の自動変速機構118に対して(第30図参照)、クラッチC1及びプラネタリギヤPRの配置を変更したもの(即ち、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの図中右方側に配置し、カウンタギヤ5を該プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に配置したもの)であり、更にクラッチC2及びブレーキB2とクラッチC3とを入れ替える形で配置したものである。
該自動変速機構123において、上記入力軸2上には、内周側に、油圧サーボ13、摩擦板73、クラッチドラムを形成するドラム状部材225と、サンギヤS2に連結されるハブ部材226、を有する多板式クラッチC3と、その外周側に、油圧サーボ11、摩擦板71、クラッチドラムを形成するドラム部材221、ハブ部材222を有する多板式クラッチC1と、が配置されている。
該油圧サーボ13の油室は、上記入力軸2に形成されている油路2aと連通しており、該油路2aは、ケース3の一端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3aの油路91に連通している。そして、該油路91は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ13に対しては、入力軸2上に配置されているため、ケース3のボス部3aと入力軸2との間をシールする1対のシールリング81を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ13の油室までの油路が構成されている。
また、上記油圧サーボ11の油室は、上記ボス部3aの油路92に連通しており、該油路92は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ11に対しては、ケース3のボス部3aとドラム状部材221との間をシールする1対のシールリング80を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ11の油室までの油路が構成されている。
上記入力軸2には、クラッチC3のドラム状部材225が接続されており、該ドラム状部材225の先端内周側には、クラッチC3用油圧サーボ13によって係合自在となっている摩擦板73がスプライン係合する形で配置されている。該摩擦板73の内周側には、ハブ部材226がスプライン係合しており、該ハブ部材226は、サンギヤS2に接続されている。
また、上記入力軸2には、上記ドラム状部材221が回転自在に支持されており、該ドラム状部材221の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ11によって係合自在となっているクラッチC1の摩擦板71がスプライン係合する形で配置されて、該クラッチC1の摩擦版71の内周側が、リングギヤR1に接続されているハブ部材222にスプライン係合する形で接続されている。該リングギヤR1は、該ハブ部材222を介してボス部3aに回転自在に支持されている。また、上記入力軸2には、サンギヤS1が接続されており、キャリヤCR1は、側板を介してボス部3aに固定支持されている。そして、上記ドラム状部材221には、伝達部材230が接続され、該伝達部材230は、上記サンギヤS3に接続されている。
一方、ケース3の、上記ボス部3aとは反対側の他端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3b上(図中左方)には、油圧サーボ12、摩擦板72、クラッチドラムを形成するドラム状部材223、ハブ部材224、を有する多板式クラッチC2が配置されている。該油圧サーボ12の油室は、ボス部3bの油路93に連通して、該油路93は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ12は、ケース3のボス部3bとドラム状部材223との間をシールする1対のシールリング84によって、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ12の油室までの油路が構成されている。
また、該クラッチC2のドラム状部材223の先端内周側にはクラッチC2用油圧サーボ12によって係合自在な摩擦板72がスプライン係合しており、該摩擦板72はハブ部材224の先端外周側にスプライン係合している。また、クラッチC2の外周側には、油圧サーボ15、摩擦板75、を有する多板式ブレーキB2が配置されており、該ハブ部材224の外周側に、ブレーキB2用油圧サーボ15によって係止自在となっている摩擦板75がスプライン係合すると共に、該ハブ部材224がサンギヤS2に接続されている。
一方、プラネタリギヤユニットPUの外周側には、油圧サーボ14、摩擦板74、ハブ部材228を有する多板式ブレーキB1が配置されている。上記プラネタリギヤユニットPUのキャリヤCR2の側板には、上記ブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合している形のハブ部材228が接続されており、また、該ハブ部材228にはワンウェイクラッチF1のインナーレースが接続されている。該キャリヤCR2のショートピニオンPSにはサンギヤS3が噛合している。そして、該キャリヤCR2のロングピニオンPLには、上記サンギヤS2及びリングギヤR2が噛合しており、該リングギヤR2の一端には連結部材227が接続されて、該リングギヤR2が該連結部材227を介してカウンタギヤ5に連結されている。
以上の構成に基づく自動変速機構123の作用は、第18の参考例と同様であるので(第31図及び第32図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構123によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC2,C3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材230を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,91,92,93)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ13は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2aに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ13の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ11,12は、ケース3から延設されたボス部3a,3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング80,84を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,80,84を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC1の内周側に、クラッチC3を配置するので、減速回転を伝達するために比較的大きなトルクを伝達しなければならないクラッチC1を外周側に配置することができ、該クラッチC1及びその油圧サーボ11を大径化することが可能となり、特に油圧サーボ11の油室の受圧面積を大きくすることが可能となって、該クラッチC1のトルク伝達可能な容量を大きくすることができるものでありながら、クラッチC1に比してトルク伝達可能な容量が小さくてよいクラッチC3を内周側に配置することで、自動変速機のコンパクト化を図ることができる。
また、クラッチC2は、後進1速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC2が後進1速段で係合された際に、伝達部材230が逆転回転することになり、一方で該クラッチC2の係合により該クラッチC2とサンギヤS2とを接続するハブ部材224が入力軸2の回転と同じになる場合が生じ、伝達部材230とハブ部材224との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC2はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまり伝達部材230とハブ部材224とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、本参考例の自動変速機構123は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
ところで、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)は、減速されたトルクが入力されるため、それに耐え得る剛性を必要とする。例えば低中速段で係合するクラッチや減速回転を係脱するクラッチを連結部材の内周側に配置しようとした場合、それらクラッチは容量の大きいものである必要があるので、その容量に対応させるべく径方向にそれなりの大きさを必要としてしまう。したがって、連結部材がそのようなクラッチの外周側を通すタイプであると、そのクラッチの必要径方向寸法のさらに大きな径を必要として、必要以上に連結部材の径方向寸法も増大してしまう虞があり、自動変速機全体として径方向に大きくなってしまう。そこで本参考例は、径方向寸法の増大を低減し、コンパクトな自動変速機を提供することを目的としている。
本参考例では、連結部材、特に伝達部材230の内周側に容量の小さいクラッチC3を配置することで、連結部材の径方向寸法を増大することなく、全てのクラッチを配置することができる。
<第24の実施の形態>
以下、第23の参考例を一部変更した第24の実施の形態について第42図に沿って説明する。第42図は第42の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第24の実施の形態は、一部変更を除き、第23の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第42図に示すように、第24の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構124は、第23の参考例の自動変速機構123に対して(第41図参照)、クラッチC1の配置を変更したものである。
該自動変速機構124において、クラッチC1は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUの反対側(図中右方側)に配置されている。クラッチC1のドラム状部材221は、入力軸2に接続されている。該クラッチC1のドラム状部材221の先端部内周側は、摩擦板71にスプライン係合しており、該摩擦板71の内周側には、ハブ部材222がスプライン係合している。ハブ部材222は、プラネタリギヤPRのサンギヤS1に接続されている。
また、プラネタリギヤPRのキャリヤCR1は、その側板がケース3に固定支持されている。そして、リングギヤR1には伝達部材230が接続され、該伝達部材230にはサンギヤS3が接続されている。なお、油圧サーボ13、摩擦板73,ドラム状部材225、ハブ部材226を有するクラッチC3は、上記伝達部材230の内周側、即ち該伝達部材230に内包される形で配置されている。
以上の構成に基づく自動変速機構124の作用は、第19の実施の形態と同様であるので(第34図及び第35図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本発明に係る自動変速機構124によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC2,C3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材230を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。また、3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,91,92,93)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ13は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2aに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ13の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ11,12は、ケース3から延設されたボス部3a,3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング80,84を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,80,84を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC2は、後進1速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC2が後進1速段で係合された際に、伝達部材230が逆転回転することになり、一方で該クラッチC2の係合により該クラッチC2とサンギヤS2とを接続するハブ部材224が入力軸2の回転と同じになる場合が生じ、伝達部材230とハブ部材224との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC2はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまり伝達部材230とハブ部材224とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、例えばクラッチC1をリングギヤR1とサンギヤS3との間に介在させると、減速回転を接・断する必要があり、比較的大きなものになってしまうが、入力軸2とサンギヤS1との間に介在させることで、該クラッチC1による入力軸2の回転の接・断によってプラネタリギヤPRのリングギヤR1から出力される減速回転を接・断するので、クラッチC1をコンパクト化することができ、それにより自動変速機をコンパクト化することができる。
また、本実施の形態の自動変速機構124は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
ところで、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)は、減速されたトルクが入力されるため、それに耐え得る剛性を必要とする。例えば低中速段で係合するクラッチや減速回転を係脱するクラッチを連結部材の内周側に配置しようとした場合、それらクラッチは容量の大きいものである必要があるので、その容量に対応させるべく径方向にそれなりの大きさを必要としてしまう。したがって、連結部材がそのようなクラッチの外周側を通すタイプであると、そのクラッチの必要径方向寸法のさらに大きな径を必要として、必要以上に連結部材の径方向寸法も増大してしまう虞があり、自動変速機全体として径方向に大きくなってしまう。そこで本実施の形態は、径方向寸法の増大を低減し、コンパクトな自動変速機を提供することを目的としている。
本実施の形態では、連結部材、特に伝達部材230の内周側に容量の小さいクラッチC3を配置することで、連結部材の径方向寸法を増大することなく、全てのクラッチを配置することができる。
<第25の参考例>
以下、第23の参考例を一部変更した第25の参考例について第43図に沿って説明する。第43図は第25の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第25の参考例は、一部変更を除き、第23の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第43図に示すように、第25の参考例に係る自動変速機の自動変速機構125は、第23の参考例の自動変速機構123に対して(第41図参照)、クラッチC3の代わりにブレーキB3を配置し、プラネタリギヤPRのキャリヤCR1をブレーキB3により固定自在にしたものである。
該自動変速機構125において、ブレーキB3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中右方側)に配置されている。該ブレーキB3は、油圧サーボ16、摩擦板76、ハブ部材233を有している。該ブレーキB3のハブ部材233は、キャリヤCR1に接続されており、該キャリヤCR1は、入力軸2に回転自在に支持されている。また、サンギヤS1は入力軸2に接続されている。そして、リングギヤR1には伝達部材230が接続されて、該伝達部材230を介してサンギヤS3が接続されている。なお、油圧サーボ13、摩擦板73、ドラム状部材225、ハブ部材226を有するクラッチC3は、上記伝達部材230の内周側、即ち該伝達部材230に内包される形で配置されている。
以上の構成に基づく自動変速機構125の作用は、第20の参考例と同様であるので(第37図及び第38図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本発明に係る自動変速機構125によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間に例えば2つのクラッチC2,C3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材230を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、油圧サーボ13は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2aに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ13の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ12は、ケース3から延設されたボス部3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング84を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ12,13には、それぞれ1対のシールリング81,84を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC2は、後進1速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC2が後進1速段で係合された際に、伝達部材230が逆転回転することになり、一方で該クラッチC2の係合により該クラッチC2とサンギヤS2とを接続するハブ部材224が入力軸2の回転と同じになる場合が生じ、伝達部材230とハブ部材224との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC2はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまり伝達部材230とハブ部材224とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
更に、プラネタリギヤPRからプラネタリギヤユニットPUに出力する減速回転をブレーキB3により接・断するようにしたので、例えばクラッチC1を設ける場合に比して、部品点数(例えばドラム状部材など)を削減することができる。また、ブレーキB3は、ケース3からそのまま油路を構成することができるので、例えばクラッチC1を設ける場合に比して、油路の構成を簡単にすることができる。
また、本参考例の自動変速機構125は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
ところで、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを連結する連結部材(特に伝達部材)は、減速されたトルクが入力されるため、それに耐え得る剛性を必要とする。例えば低中速段で係合するクラッチや減速回転を係脱するクラッチを連結部材の内周側に配置しようとした場合、それらクラッチは容量の大きいものである必要があるので、その容量に対応させるべく径方向にそれなりの大きさを必要としてしまう。したがって、連結部材がそのようなクラッチの外周側を通すタイプであると、そのクラッチの必要径方向寸法のさらに大きな径を必要として、必要以上に連結部材の径方向寸法も増大してしまう虞があり、自動変速機全体として径方向に大きくなってしまう。そこで本参考例は、径方向寸法の増大を低減し、コンパクトな自動変速機を提供することを目的としている。
本参考例では、連結部材、特に伝達部材230の内周側に容量の小さいクラッチC3を配置することで、連結部材の径方向寸法を増大することなく、全てのクラッチを配置することができる。
なお、以上の本発明に係る第1乃至第25の実施の形態や参考例において、自動変速機にトルクコンバータを備えているものに適用されるとして説明したが、これに限らず、発進時にトルク(回転)の伝達を行うような発進装置であれば何れのものであってもよい。また、駆動源としてエンジンである車輌に搭載する場合について説明したが、これに限らず、ハイブリッド車輌に搭載することも可能であり、駆動源が何れのものであってもよいことは、勿論である。更に、上記自動変速機はFF車輌に用いて好適であるが、これに限らず、FR車輌、4輪駆動車輌など、他の駆動方式の車輌に用いることも可能である。
また、以上の第1乃至第25の実施の形態や参考例において、減速回転出力手段としてのプラネタリギヤPRが、ダブルピニオンプラネタリギヤであるものについて説明したが、これに限らず、シングルピニオンプラネタリギヤを用いてもよい。
また、以上の第1乃至第20の実施の形態や参考例、及び第23乃至第25の実施の形態や参考例において、該プラネタリギヤPRのサンギヤS1に入力軸2の回転を入力し、キャリヤCR1の回転を固定することで、リングギヤR1を減速回転させるものについて説明したが、サンギヤS1の回転を固定し、キャリヤCRに入力軸2の回転を入力してリングギヤR1を減速回転させるものであってもよい。
更に、例えば第1の参考例と第2の参考例とにおいて、自動変速機構の入力側と出力側とを入れ替えた形のものを説明したが、これに限らず、その他の実施の形態や参考例における自動変速機構も入力側と出力側とを入れ替えた形のものを用いることが可能である。