<第1の参考例>
以下、本発明に係る第1の参考例について第1図乃至第3図に沿って説明する。第1図は第1の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、第2図は第1の参考例に係る自動変速機の作動表、第3図は第1の参考例に係る自動変速機の速度線図である。
本発明の第1の参考例に係る自動変速機は、第1図に示すような自動変速機構11を有しており、特にFF(フロントエンジン、フロントドライブ)車輌に用いて好適であって、不図示のハウジングケース及びミッションケース3からなるケースを有しており、該ハウジングケース内に不図示のトルクコンバータ、該ミッションケース3内に自動変速機構11、不図示のカウンタシャフト部(駆動車輪伝達機構)及びディファレンシャル部(駆動車輪伝達機構)が配置されている。
該トルクコンバータは、例えばエンジン(不図示)の出力軸と同軸上である自動変速機構11の入力軸2を中心とした軸上に配置されており、該自動変速機構11は、該エンジンの出力軸、即ち、該入力軸2を中心とした軸上に配置されている。また、上記カウンタシャフト部は、それら入力軸2と平行な軸上であるカウンタシャフト(不図示)上に配置されており、上記ディファレンシャル部は、該カウンタシャフトと平行な軸上に不図示の左右車軸を有する形で配置されている。
ついで、第1の参考例に係る自動変速機の自動変速機構11について第1図に沿って説明する。第1図に示すように、自動変速機構11は、入力軸2上に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤ(減速回転出力手段、減速プラネタリギヤ)PRとを有している。該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2(第2の回転要素)、キャリヤCR2(第3の回転要素)、リングギヤR3(第4の回転要素)、及びサンギヤS3(第1の回転要素)を有し、該キャリヤCR2に、側板に支持されてサンギヤS2及びリングギヤR3に噛合するロングピニオンPLと、サンギヤS3に噛合するショートピニオンPSとを、互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。また、上記プラネタリギヤPRは、キャリヤCR1に、リングギヤR1に噛合するピニオンPb及びサンギヤS1に噛合するピニオンPaを互いに噛合する形で有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
上記入力軸2上には、ケース3の一端に延設され、該入力軸2上にスリーブ状に形成されているボス部3aが設けられており、該ボス部3a上には、油圧サーボ11、摩擦板71、クラッチドラムを形成するドラム状部材21と、を有する多板式クラッチC1(減速回転出力手段、第3のクラッチ)が配置されている。
該油圧サーボ11は、摩擦板71を押圧するためのピストン部材bと、シリンダ部eを有するドラム状部材21と、該ピストン部材bと該シリンダ部eとの間にシールリングf,gによってシールされて形成される油室aと、該ピストン部材bを該油室aの方向に付勢するリターンスプリングcと、該リターンスプリングcの付勢を受け止めるリターンプレートdと、により構成されている。
なお、以下の説明において、各油圧サーボは、同様に油室a、ピストン部材b、リターンスプリングc、リターンプレートd、シリンダ部材e、シールリングf,gにより構成されているものとし、その説明を省略する。
該油圧サーボ11の油室aは、ボス部3aの油路92に連通しており、該油路92は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ11は、ボス部3a上に配置されているため、該ボス部3aとドラム状部材21との間をシールする1対のシールリング80によって、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ11の油室aまでの油路が構成されている。
また、上記ボス部3a上には、上記ドラム状部材21が回転自在に支持されており、該ドラム状部材21の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ11によって係合自在となっているクラッチC1の摩擦板71がスプライン係合する形で配置されている。該クラッチC1の摩擦板71の内周側には、リングギヤR1が形成されているハブ部材31がスプライン係合する形で配置されており、該ハブ部材31は、ボス部3aに回転自在に支持されている。また、キャリヤCR1は、ピニオンPa及びピニオンPbを有しており、該ピニオンPbは上記リングギヤR1に噛合し、該ピニオンPaは、入力軸2に接続されたサンギヤS1に噛合している。該キャリヤCR1は、側板を介してケース3のボス部3aに固定されており、サンギヤS1は入力軸2に接続されている。
そして、上記クラッチC1の摩擦板71がスプライン係合しているドラム状部材21には、該クラッチC1が係合した際にリングギヤR1の回転を伝達する伝達部材(減速回転出力手段)30が接続されており、該伝達部材30の他方側には、上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3が接続されている。
一方、入力軸2の他端上(図中左方)には、油圧サーボ13、摩擦板73、クラッチドラムを形成するドラム状部材25、ハブ部材26、を有する多板式クラッチC3(第2のクラッチ)が配置されている。また、ケース3の、上記ボス部3aとは反対側の他端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3b上には、油圧サーボ12、摩擦板72、クラッチドラムを形成するドラム状部材23、ハブ部材24、を有する多板式クラッチC2(第1のクラッチ)が配置されている。更に、該クラッチC2の外周側には、少なくとも一部が油圧サーボ12に対して軸方向にオーバーラップする油圧サーボ15、摩擦板75、を有する多板式ブレーキB2が配置されている。
該油圧サーボ13の油室aは、上記入力軸2に形成されている油路2bと連通しており、該油路2bは、上記ボス部3bの油路93に連通して、該油路93は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ13は、ケース3のボス部3bと入力軸2との間をシールする1対のシールリング82によって、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ13の油室aまでの油路が構成されている。
上記油圧サーボ12の油室aは、上記ボス部3bの油路94に連通しており、該油路94は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ12に対しては、ケース3のボス部3bとドラム状部材23との間をシールする1対のシールリング83によって、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ12の油室aまでの油路が構成されている。
上記クラッチC3のドラム状部材25は、入力軸2に接続されており、該ドラム状部材25の先端内周側には、クラッチC3用油圧サーボ13によって係合自在となっているクラッチC3の摩擦板73がスプライン係合する形で配置されている。該クラッチC3の摩擦板73の内周側には、ハブ部材26がスプライン係合する形で配置されており、該ハブ部材26は、キャリヤCR2に接続されている。
上記クラッチC2のドラム状部材23は、入力軸2に接続されており、該ドラム状部材23の先端内周側には、クラッチC2用油圧サーボ12によって係合自在となっているクラッチC2の摩擦板72がスプライン係合する形で配置されている。該クラッチC2の摩擦板72の内周側には、ハブ部材24がスプライン係合する形で配置されており、該ハブ部材24の外周側には、ブレーキB2用油圧サーボ15によって係合自在となっているブレーキB2の摩擦板75がスプライン係合する形で配置されている。そして、該ハブ部材24は、サンギヤS2に接続されている。
一方、プラネタリギヤユニットPUの外周側には、油圧サーボ14、摩擦板74、ハブ部材28を有する多板式ブレーキB1が配置されている。該油圧サーボ14は、後述のカウンタギヤ5を回転自在に支持するケース3から延設された部材に設けられている。また、上記プラネタリギヤユニットPUのキャリヤCR2の側板には、上記ブレーキB1の摩擦板74がスプライン係合している形のハブ部材28が接続されており、該ハブ部材28にはワンウェイクラッチF1のインナーレースが接続されている。該キャリヤCR2のショートピニオンPSにはサンギヤS3が噛合しており、該キャリヤCR2のロングピニオンPLには、上記サンギヤS2及びリングギヤR3が噛合している。そして、該リングギヤR3の一端には連結部材27が接続されて、該リングギヤR3が該連結部材27を介してカウンタギヤ(出力部材)5に連結されている。
以上説明したように、プラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側にプラネタリギヤPR及びクラッチC1が配置されていると共に、軸方向他方側にクラッチC2及びクラッチC3が配置されている。また、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの軸方向における間には、カウンタギヤ5が配置されている。また、ブレーキB2はクラッチC2の外周側に、ブレーキB1はプラネタリギヤユニットPUの外周側に、それぞれ配置されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構11の作用について第1図、第2図及び第3図に沿って説明する。なお、第3図に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(第3図中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR3、キャリヤCR2、サンギヤS2に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤPRの部分において、横方向最端部(第3図中右方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。また、それら縦軸の間隔は、それぞれのサンギヤS1,S2,S3の歯数の逆数、及びそれぞれのリングギヤR1,R3の歯数の逆数に比例している。そして、図中横軸方向の破線は伝達部材30により回転が伝達されることを示している。
第1図に示すように、上記サンギヤS2には、クラッチC2が係合することにより入力軸2の回転が入力されると共に、該サンギヤS2は、ブレーキB2の係止により回転が固定自在となっている。上記キャリヤCR2には、クラッチC3が係合することにより入力軸2の回転が入力されると共に、該キャリヤCR2は、ブレーキB2の係止により回転が固定自在となっており、また、ワンウェイクラッチF3により一方向の回転が規制されている。
一方、上記サンギヤS1は、入力軸2に接続されており、該入力軸2の回転が入力され、また、上記キャリヤCR1はケース3に接続されて、回転が固定されており、それによってリングギヤR1は減速回転する。また、クラッチC1が係合することにより、該リングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力される。そして、上記リングギヤR3の回転は、上記カウンタギヤ5に出力され、該カウンタギヤ5、不図示のカウンタシャフト部及びディファレンシャル部を介して不図示の駆動車輪に出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進1速段では、第2図に示すように、クラッチC1及びワンウェイクラッチF1が係合される。すると、第3図に示すように、クラッチC1、伝達部材30を介してリングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力される。また、ワンウェイクラッチF1によりキャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。そして、サンギヤS3に入力された減速回転と、固定されたキャリヤCR2とにより、リングギヤR3が前進1速段としての正転回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。
なお、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB1を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。また、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF1によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチの自動係合により滑らかに行うことができる。なお、この際、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材30は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進2速段では、第2図に示すように、クラッチC1が係合され、ブレーキB2が係止される。すると、第3図に示すように、クラッチC1、伝達部材30を介してリングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力されると共に、サンギヤS2の回転がブレーキB2により固定される。それにより、キャリヤCR2が僅かに減速回転し、サンギヤS3に入力された減速回転と、該僅かな減速回転のキャリヤCR2とにより、リングギヤR3が前進2速段としての正転回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際も、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材30は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進3速段では、第2図に示すように、クラッチC1及びクラッチC2が係合される。すると、第3図に示すように、クラッチC1、伝達部材30を介してリングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力されると共に、クラッチC2の係合によりサンギヤS2に入力軸2の回転が入力される。すると、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転と、サンギヤS3の減速回転とにより、キャリヤCR2が、該サンギヤS3の減速回転より僅かに大きな減速回転となる。そして、サンギヤS2の入力回転と、サンギヤS3の減速回転とにより、リングギヤR3が前進3速段としての正転回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際も、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材30は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進4速段では、第2図に示すように、クラッチC1及びクラッチC3が係合される。すると、第3図に示すように、クラッチC1、伝達部材30を介してリングギヤR1の減速回転がサンギヤS3に入力されると共に、クラッチC3を介してキャリヤCR2に入力軸2の回転が入力される。そして、キャリヤCR2に入力された入力軸2の回転と、サンギヤS3の減速回転とにより、リングギヤR3が前進4速段としての正転回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。なお、この際も、サンギヤS3及びリングギヤR1は減速回転しているので、上記伝達部材30は、比較的大きなトルク伝達を行っている。
D(ドライブ)レンジにおける前進5速段では、第2図に示すように、クラッチC2及びクラッチC3が係合される。すると、第3図に示すように、クラッチC3を介してキャリヤCR2に入力軸2の回転が入力されると共に、クラッチC2を介してサンギヤS2に入力軸2の回転が入力される。そして、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転と、キャリヤCR2に入力された入力軸2の回転とにより、つまりリングギヤR3が直結回転の状態となって、前進5速段として入力軸2と同回転の正転回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。
D(ドライブ)レンジにおける前進6速段では、第2図に示すように、クラッチC3が係合され、ブレーキB2が係止される。すると、第3図に示すように、クラッチC3を介してキャリヤCR2に入力軸2の回転が入力されると共に、ブレーキB2の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。そして、キャリヤCR2に入力された入力軸2の回転と、固定されたサンギヤS2とにより、リングギヤR3が前進6速段としての増速回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。
R(リバース)レンジにおける後進1速段では、第2図に示すように、クラッチC2が係合され、ブレーキB1が係止される。すると、第3図に示すように、クラッチC2の係合によりサンギヤS2に入力軸2の回転が入力されると共に、ブレーキB1の係止によりキャリヤCR2の回転が固定される。そして、サンギヤS2に入力された入力軸2の回転と、固定されたキャリヤCR2とにより、リングギヤR3が後進1速段としての逆転回転となり、その回転がカウンタギヤ5から出力される。
P(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、特にクラッチC1、クラッチC2及びクラッチC3が解放されており、入力軸2とカウンタギヤ5との間の動力伝達が切断状態であって、自動変速機構11全体としては空転状態(ニュートラル状態)となる。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構11によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、前進5速段の際に、いわゆる直結状態となるような前進6速段及び後進1速段を達成する自動変速機を提供できるものでありながら、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチC2やクラッチC3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、例えば3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2b,92,93,94)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ13は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ13の油室aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ11,12は、それぞれケース3から延設されたボス部3a,3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング80,83をそれぞれ設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング82,80,83を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC2は、後進1速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC2が後進1速段で係合された際に、伝達部材30が逆転回転することになり、一方で該クラッチC2の係合により該クラッチC2とサンギヤS2とを接続するハブ部材24が入力軸2の回転と同じになる場合が生じ、伝達部材30とハブ部材24との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC2はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまり伝達部材30とハブ部材24とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、本参考例の自動変速機構11は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
<第2の参考例>
以下、第1の参考例を一部変更した第2の参考例について第4図に沿って説明する。第4図は第2の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第2の参考例は、一部変更を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第4図に示すように、第2の参考例に係る自動変速機の自動変速機構12は、第1の参考例の自動変速機構11に対して(第1図参照)、入力側と出力側とを逆にしたものである。また、前進1速段乃至前進6速段、及び後進1速段において、その作用は同様のものとなる(第2図及び第3図参照)。
これにより第1の参考例と同様に、本参考例に係る自動変速機構12によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、前進5速段の際に、いわゆる直結状態となるような前進6速段及び後進1速段を達成する自動変速機を提供できるものでありながら、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチC2やクラッチC3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、例えば3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2b,92,93,94)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ13は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ13の油室aに油を供給することができる。更に、油圧サーボ11,12は、それぞれケース3から延設されたボス部3a,3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング80,83をそれぞれ設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング82,80,83を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC2は、後進1速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC2が後進1速段で係合された際に、伝達部材30が逆転回転することになり、一方で該クラッチC2の係合により該クラッチC2とサンギヤS2とを接続するハブ部材24が入力軸2の回転と同じになる場合が生じ、伝達部材30とハブ部材24との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC2はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまり伝達部材30とハブ部材24とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、本参考例の自動変速機構12は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
<第3の実施の形態>
以下、第1の参考例を一部変更した第3の実施の形態について第5図乃至第7図に沿って説明する。第5図は第3の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、第6図は第3の実施の形態に係る自動変速機の作動表、第7図は第3の実施の形態に係る自動変速機の速度線図である。なお、第3の実施の形態は、変更部分を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第5図に示すように、第3の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構13は、第1の参考例の自動変速機構11に対して(第1図参照)、プラネタリギヤPRとクラッチC1との配置を変更し、また、クラッチC1の油圧サーボ11の油路の構成を変更したものである。
該自動変速機構13において、クラッチC1は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中右方側)に配置されている。該クラッチC1のドラム状部材21の先端部内周側は、摩擦板71にスプライン係合しており、該摩擦板71の内周側には、ハブ部材22がスプライン係合している。ドラム状部材21は、入力軸2に接続されており、ハブ部材22は、プラネタリギヤPRのサンギヤS1に接続されている。該プラネタリギヤPRのキャリヤCR1は、その側板がケース3に固定支持されている。そして、リングギヤR1には伝達部材30が接続されており、該伝達部材30がサンギヤS3に接続されている。つまり、リングギヤR1とサンギヤS3とは、その間にクラッチが介在してなく、常時接続されており、常時回転が伝達される状態となっている。
また、油圧サーボ11の油室は、入力軸2に形成されている油路2aに連通しており、該油路2aは、ケース3の一端に延設され、入力軸2上にスリーブ状に設けられているボス部3aの油路91に連通して、該油路91は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ11に対しては、ケース3のボス部3aと入力軸2との間をシールする1対のシールリング81を設けるだけで、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ11の油室までの油路が構成されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構13の作用について第5図、第6図及び第7図に沿って説明する。なお、上記第1の参考例と同様に、第7図に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(第7図中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR3、キャリヤCR2、サンギヤS2に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤPRの部分において、横方向最端部(第7図中右方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。また、それら縦軸の間隔は、それぞれのサンギヤS1,S2,S3の歯数の逆数、及びそれぞれのリングギヤR1,R3の歯数の逆数に比例している。そして、図中横軸方向の破線は伝達部材30により回転が伝達されることを示している。
第5図に示すように、クラッチC1が係合することにより上記サンギヤS1には、入力軸2の回転が入力される。また、上記キャリヤCR1は、ケース3に対して回転が固定されており、上記リングギヤR1は、該サンギヤS1に入力される入力軸2の回転に基づき減速回転する。つまりサンギヤS3には、クラッチC1が係合することにより、伝達部材30を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、第6図及び第7図に示すように、プラネタリギヤPRにおいて、前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段では、クラッチC1が係合されることにより入力軸2の回転がサンギヤS1に入力され、固定されたキャリヤCR1によりリングギヤR3に減速回転が出力されて、伝達部材30を介してサンギヤS3に減速回転が入力される。この際、リングギヤR1及びサンギヤS3は減速回転しているので、上記伝達部材30は、比較的大きなトルク伝達を行っている。一方、前進5速段、前進6速段、後進1速段では、伝達部材30を介してサンギヤS3の回転がリングギヤR1に入力され、クラッチC1が解放されているため、第7図に示すように、サンギヤS1が、該リングギヤR1のそれぞれ変速段における回転と固定されたキャリヤCR1とに基づき回転する。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第1の参考例と同様であるので(第2図及び第3図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本発明に係る自動変速機構13によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、前進5速段の際に、いわゆる直結状態となるような前進6速段及び後進1速段を達成する自動変速機を提供できるものでありながら、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチC2やクラッチC3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、例えば3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,93,94)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,13は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,13の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ12は、ケース3から延設されたボス部3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング83を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,83を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC2は、後進1速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC2が後進1速段で係合された際に、伝達部材30が逆転回転することになり、一方で該クラッチC2の係合により該クラッチC2とサンギヤS2とを接続するハブ部材24が入力軸2の回転と同じになる場合が生じ、伝達部材30とハブ部材24との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC2はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまり伝達部材30とハブ部材24とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、本実施の形態の自動変速機構13は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
ところで、上述のような問題を解決するものとして、特開平8−68456号公報に開示されたようなものが提案されている。しかしながら、該公報のものは、減速プラネタリギヤの減速回転を、プラネタリギヤユニットの回転要素に伝達する経路上にクラッチを配置した構成となっており、該減速回転を伝達する経路は大きなトルクが入力される経路であるため、該クラッチやトルク伝達する部材などをその大きなトルクに耐え得るように構成する必要がある。また、この減速回転を伝達する経路は、例えば前進6速段の際に高速回転する部分であるため、上記公報のもののように、クラッチのドラムがプラネタリギヤユニットの回転要素に連結されるような構成にすると、高速回転による遠心力により、ドラム部材が偏心して該クラッチの係合・解放の際の制御性が損なわれてしまう。そこで本実施の形態においては、プラネタリギヤユニットの回転要素の高速回転時にも、減速回転出力手段としてのクラッチの制御性を損なうことがない自動変速機を提供することを目的としている。
即ち、本実施の形態に係る自動変速機構13によると、クラッチC1が入力軸2とサンギヤS1とを係脱自在に連結するものであるので、クラッチC1が例えばリングギヤR1とサンギヤS3とを係脱自在にするものに比して、クラッチC1にかかる負荷を低減することができ、クラッチC1の制御性を損なうことを防ぐことができ、また、クラッチC1のコンパクト化も図ることができる。
また、クラッチC1のドラム状部材21を入力軸2に、ハブ部材22をプラネタリギヤPRのサンギヤS1に連結したので、ドラム状部材21よりも径の小さいハブ部材22に例えば前進6速段の際に高速回転するサンギヤS1を連結することができ、ドラム状部材にサンギヤS1を連結する場合に比して遠心力を低減することができ、クラッチC1の係合・解放時の制御性の低下を防止することができる。
<第4の実施の形態>
以下、第3の実施の形態を一部変更した第4の実施の形態について第8図に沿って説明する。第8図は第4の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第4の実施の形態は、一部変更を除き、第3の実施の形態と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第8図に示すように、第4の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構14は、第3の実施の形態の自動変速機構13に対して(第5図参照)、プラネタリギヤPRと、クラッチC1との配置を変更したものである。
該自動変速機構14において、クラッチC1は、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの軸方向における間、詳細にはプラネタリギヤPRとカウンタギヤ5との間に配置されている。
入力軸2の一端上(図中右方側)には、ドラム状部材21が接続されており、該ドラム状部材21の先端部内周側には、クラッチC1用油圧サーボ11によって係合自在となっているクラッチC1の摩擦板71がスプライン係合する形で配置されている。該クラッチC1の摩擦板71の内周側には、ハブ部材22がスプライン係合する形で配置されており、該ハブ部材22は、プラネタリギヤPRのサンギヤS1に接続されている。
該プラネタリギヤPRのキャリヤCR1は、ピニオンPa及びピニオンPbを有しており、該ピニオンPbはリングギヤR1に噛合し、該ピニオンPaは、上記ハブ部材22に接続されたサンギヤS1に噛合している。該キャリヤCR1は、側板を介してケース3に固定されており、リングギヤR1は伝達部材30が接続されている。そして、該伝達部材30の他方側には、上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3が接続されている。
また、該クラッチC1の油圧サーボ11の油室aは、入力軸2の油路2aに連通しており、該油路2aは、ボス部3aの油路91を介して不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ11は、入力軸2上に配置されているため、該ボス部3aと入力軸2との間をシールする1対のシールリング81によって、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ11の油室aまでの油路が構成されている。
以上の構成に基づく自動変速機構14の作用は、第3の実施の形態と同様であるので(第6図及び第7図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本発明に係る自動変速機構14によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、前進5速段の際に、いわゆる直結状態となるような前進6速段及び後進1速段を達成する自動変速機を提供できるものでありながら、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチC2やクラッチC3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、例えば3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,93,94)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ11,13は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング81,82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2a,2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ11,13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ11,13の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ12は、ケース3から延設されたボス部3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング83を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,83を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC2は、後進1速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC2が後進1速段で係合された際に、伝達部材30が逆転回転することになり、一方で該クラッチC2の係合により該クラッチC2とサンギヤS2とを接続するハブ部材24が入力軸2の回転と同じになる場合が生じ、伝達部材30とハブ部材24との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC2はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまり伝達部材30とハブ部材24とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、本実施の形態の自動変速機構14は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
ところで、上述のような問題を解決するものとして、特開平8−68456号公報に開示されたようなものが提案されている。しかしながら、該公報のものは、減速プラネタリギヤの減速回転を、プラネタリギヤユニットの回転要素に伝達する経路上にクラッチを配置した構成となっており、該減速回転を伝達する経路は大きなトルクが入力される経路であるため、該クラッチやトルク伝達する部材などをその大きなトルクに耐え得るように構成する必要がある。また、この減速回転を伝達する経路は、例えば前進6速段の際に高速回転する部分であるため、上記公報のもののように、クラッチのドラムがプラネタリギヤユニットの回転要素に連結されるような構成にすると、高速回転による遠心力により、ドラム部材が偏心して該クラッチの係合・解放の際の制御性が損なわれてしまう。そこで本実施の形態においては、プラネタリギヤユニットの回転要素の高速回転時にも、減速回転出力手段としてのクラッチの制御性を損なうことがない自動変速機を提供することを目的としている。
即ち、本実施の形態に係る自動変速機構14によると、クラッチC1が入力軸2とサンギヤS1とを係脱自在に連結するものであるので、クラッチC1が例えばリングギヤR1とサンギヤS3とを係脱自在にするものに比して、クラッチC1にかかる負荷を低減することができ、クラッチC1の制御性を損なうことを防ぐことができ、また、クラッチC1のコンパクト化も図ることができる。
また、クラッチC1のドラム状部材21を入力軸2に、ハブ部材22をプラネタリギヤPRのサンギヤS1に連結したので、ドラム状部材21よりも径の小さいハブ部材22に例えば前進6速段の際に高速回転するサンギヤS1を連結することができ、ドラム状部材にサンギヤS1を連結する場合に比して遠心力を低減することができ、クラッチC1の係合・解放時の制御性の低下を防止することができる。
<第5の実施の形態>
以下、第3の実施の形態を一部変更した第5の実施の形態について第9図に沿って説明する。第9図は第5の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図である。なお、第5の実施の形態は、一部変更を除き、第3の実施の形態と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第9図に示すように、第5の実施の形態に係る自動変速機の自動変速機構15は、第3の実施の形態の自動変速機構13に対して(第5図参照)、クラッチC1を、入力軸2上ではなく、ボス部3a上に配置したものである。
該自動変速機構15において、クラッチC1は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中右方側)に配置されている。該クラッチC1のドラム状部材21は、ケース3より延設されたボス部3a上に回転自在に支持されて配置されていると共に、該ドラム状部材21の内周部先端が入力軸2に接続されている。また、該クラッチC1のドラム状部材21の先端部内周側は、摩擦板71にスプライン係合しており、該摩擦板71の内周側には、プラネタリギヤPRのサンギヤS1に接続されているハブ部材22がスプライン係合している。
プラネタリギヤPRのキャリヤCR1は、ピニオンPa及びピニオンPbを有しており、該ピニオンPbはリングギヤR1に噛合し、該ピニオンPaは、上記ハブ部材22に接続されたサンギヤS1に噛合している。該キャリヤCR1は、側板を介してケース3に固定されており、リングギヤR1は伝達部材30が接続されている。そして、該伝達部材30の他方側には、上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3が接続されている。
また、該クラッチC1の油圧サーボ11の油室aは、ボス部3aの油路91に連通しており、該油路91は、不図示の油圧制御装置に連通している。即ち、上記油圧サーボ11は、ボス部3a上に配置されているため、該ボス部3aと油圧サーボ11との間をシールする1対のシールリング81によって、不図示の油圧制御装置から油圧サーボ11の油室aまでの油路が構成されている。
以上の構成に基づく自動変速機構15の作用は、第3の実施の形態と同様であるので(第6図及び第7図参照)、その説明を省略する。
以上のように、本発明に係る自動変速機構15によると、プラネタリギヤPR及びクラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、前進5速段の際に、いわゆる直結状態となるような前進6速段及び後進1速段を達成する自動変速機を提供できるものでありながら、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチC2やクラッチC3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、クラッチC1をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、例えば3つのクラッチC1,C2,C3をプラネタリギヤユニットPUの一方側に配置する場合に比して、それらクラッチC1,C2,C3の油圧サーボ11,12,13に供給する油路(例えば2a,2b,91,93,94)の構成を容易にすることができ、製造工程の簡易化、コストダウンなどを図ることができる。
また、油圧サーボ13は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ13の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ11,12は、ケース3から延設されたボス部3a,3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、それぞれ1対のシールリング81,83を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ11,12,13には、それぞれ1対のシールリング81,82,83を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC2は、後進1速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC2が後進1速段で係合された際に、伝達部材30が逆転回転することになり、一方で該クラッチC2の係合により該クラッチC2とサンギヤS2とを接続するハブ部材24が入力軸2の回転と同じになる場合が生じ、伝達部材30とハブ部材24との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC2はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまり伝達部材30とハブ部材24とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
また、本実施の形態の自動変速機構15は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
ところで、上述のような問題を解決するものとして、特開平8−68456号公報に開示されたようなものが提案されている。しかしながら、該公報のものは、減速プラネタリギヤの減速回転を、プラネタリギヤユニットの回転要素に伝達する経路上にクラッチを配置した構成となっており、該減速回転を伝達する経路は大きなトルクが入力される経路であるため、該クラッチやトルク伝達する部材などをその大きなトルクに耐え得るように構成する必要がある。また、この減速回転を伝達する経路は、例えば前進6速段の際に高速回転する部分であるため、上記公報のもののように、クラッチのドラムがプラネタリギヤユニットの回転要素に連結されるような構成にすると、高速回転による遠心力により、ドラム部材が偏心して該クラッチの係合・解放の際の制御性が損なわれてしまう。そこで本実施の形態においては、プラネタリギヤユニットの回転要素の高速回転時にも、減速回転出力手段としてのクラッチの制御性を損なうことがない自動変速機を提供することを目的としている。
即ち、本実施の形態に係る自動変速機構15によると、クラッチC1が入力軸2とサンギヤS1とを係脱自在に連結するものであるので、クラッチC1が例えばリングギヤR1とサンギヤS3とを係脱自在にするものに比して、クラッチC1にかかる負荷を低減することができ、クラッチC1の制御性を損なうことを防ぐことができ、また、クラッチC1のコンパクト化も図ることができる。
また、このクラッチC1を油圧制御装置からの油路91が形成されるボス部3a上に配置したので、例えば該クラッチC1を入力軸2上に配置した場合に比して(第5図参照)、自動変速機15を軸方向にコンパクト化することができる。
また、クラッチC1のドラム状部材21を入力軸2に、ハブ部材22をプラネタリギヤPRのサンギヤS1に連結したので、ドラム状部材21よりも径の小さいハブ部材22に例えば前進6速段の際に高速回転するサンギヤS1を連結することができ、ドラム状部材にサンギヤS1を連結する場合に比して遠心力を低減することができ、クラッチC1の係合・解放時の制御性の低下を防止することができる。
<第6の参考例>
以下、第1の参考例を一部変更した第6の参考例について第10図乃至第12図に沿って説明する。第10図は第6の参考例に係る自動変速機の自動変速機構を示す模式断面図、第11図は第6の参考例に係る自動変速機の作動表、第12図は第6の参考例に係る自動変速機の速度線図である。なお、第6の参考例は、変更部分を除き、第1の参考例と同様の部分に同符号を付して、その説明を省略する。
第10図に示すように、第6の参考例に係る自動変速機の自動変速機構16は、第1の参考例の自動変速機構11に対して(第1図参照)、クラッチC1の代わりにブレーキB3を配置し、プラネタリギヤPRのキャリヤCR1をブレーキB3により固定自在となるように変更したものである。
該自動変速機構16において、ブレーキB3は、プラネタリギヤPRの、プラネタリギヤユニットPUとは反対側(図中右方側)に配置されている。該ブレーキB3は、油圧サーボ16、摩擦板76、ハブ部材33を有している。
該ブレーキB3のハブ部材33は、キャリヤCR1の一方の側板に接続されており、該キャリヤCR1は、入力軸2又はボス部3aに回転自在に支持されている。また、サンギヤS1は入力軸2に接続されている。そして、該リングギヤR1には伝達部材30が接続されて、該伝達部材30を介してサンギヤS3が接続されている。
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構16の作用について第10図、第11図及び第12図に沿って説明する。なお、上記第1の参考例と同様に、第12図に示す速度線図において、縦軸はそれぞれの回転要素の回転数を示しており、横軸はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、横方向最端部(第12図中右方側)の縦軸はサンギヤS3に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR3、キャリヤCR2、サンギヤS2に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤPRの部分において、横方向最端部(第12図中右方側)の縦軸はサンギヤS1に、以降図中左方側へ順に縦軸はリングギヤR1、キャリヤCR1に対応している。また、それら縦軸の間隔は、それぞれのサンギヤS1,S2,S3の歯数の逆数、及びそれぞれのリングギヤR1,R3の歯数の逆数に比例している。そして、図中横軸方向の破線は伝達部材30により回転が伝達されることを示している。
第10図に示すように、ブレーキB3が係止することにより上記キャリヤCR1は、ケース3に対して固定される。また、サンギヤS1には、入力軸2の回転が入力されており、上記リングギヤR1は、該キャリヤCR1が固定されることにより、該サンギヤS1に入力される入力軸2の回転に基づき減速回転する。つまりサンギヤS3には、ブレーキB3が係合することにより、伝達部材30を介してリングギヤR1の減速回転が入力される。
すると、第11図及び第12図に示すように、プラネタリギヤPRにおいて、前進1速段、前進2速段、前進3速段、前進4速段では、ブレーキB3が係止されることによりキャリヤCR1が固定され、入力軸2の回転が入力されているサンギヤS1の回転によりリングギヤR3に減速回転が出力されて、伝達部材30を介してサンギヤS3に減速回転が入力される。この際、リングギヤR1及びサンギヤS3は減速回転しているので、上記伝達部材30は、比較的大きなトルク伝達を行っている。一方、前進5速段、前進6速段、後進1速段では、伝達部材30を介してサンギヤS3の回転がリングギヤR1に入力され、ブレーキB3が解放されているため、第12図に示すように、キャリヤCR1が、該リングギヤR1のそれぞれ変速段における回転と入力軸2の回転のサンギヤS1とに基づき回転する。
なお、上記プラネタリギヤPR以外の作用については、上述した第1の参考例と同様であるので、その説明を省略する。
以上のように、本参考例に係る自動変速機構16によると、プラネタリギヤPR及びブレーキB3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向一方側に配置し、クラッチC2及びクラッチC3をプラネタリギヤユニットPUの軸方向他方側に配置したので、前進5速段の際に、いわゆる直結状態となるような前進6速段及び後進1速段を達成する自動変速機を提供できるものでありながら、例えばプラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとの間にクラッチC2やクラッチC3を配置する場合に比して、プラネタリギヤPRとプラネタリギヤユニットPUとを近づけて配置することができ、減速回転を伝達するための伝達部材30を比較的短くすることができる。それにより、自動変速機のコンパクト化、軽量化を可能にすることができ、更に、イナーシャ(慣性力)を小さくすることができるため、自動変速機の制御性を向上させることができ、変速ショックの発生を低減することができる。
また、油圧サーボ13は入力軸2上に設けられているので、ケース3から1対のシールリング82で漏れ止めして入力軸2内に設けられた油路2bに油を供給することで、例えば入力軸2との油圧サーボ13との間にシールリングを設けることなく、油圧サーボ13の油室に油を供給することができる。更に、油圧サーボ12は、ケース3から延設されたボス部3bから、例えば他の部材を介すことなく、油を供給することができ、即ち、1対のシールリング83を設けることで、油を供給することができる。従って、油圧サーボ12,13には、それぞれ1対のシールリング82,83を設けるだけで、油を供給することができ、シールリングによる摺動抵抗を最小にすることができ、それにより、自動変速機の効率を向上させることができる。
また、クラッチC2は、後進1速段にて係合するクラッチであるので、該クラッチC2が後進1速段で係合された際に、伝達部材30が逆転回転することになり、一方で該クラッチC2の係合により該クラッチC2とサンギヤS2とを接続するハブ部材24が入力軸2の回転と同じになる場合が生じ、伝達部材30とハブ部材24との回転数差が大きくなる場合があるが、該クラッチC2はプラネタリギヤユニットPUを介してプラネタリギヤPRの反対側に位置するため、つまり伝達部材30とハブ部材24とを分離して配置することができ、例えばそれらの部材が多重軸構造で接触配置された場合に比して、それら部材間の相対回転によって生じる摩擦などに起因した自動変速機の効率低下を防ぐことができる。
更に、プラネタリギヤユニットPUとプラネタリギヤPRとの軸方向における間にカウンタギヤ5を配置するので、カウンタギヤ5を自動変速機の軸方向の略々中央に配置することができ、例えば自動変速機を車輌に搭載する際に、カウンタギヤ5を駆動車輪伝達機構に合わせて搭載するため、軸方向のどちらか(特に駆動源からの入力側を前方としたときの後方側)に肥大化することを防ぐことができる。それにより、特にFF車輌であれば前輪への干渉を少なくすることができ、例えば操舵角の増大などが可能となるなど、車輌の搭載性を向上することができる。
更に、プラネタリギヤPRからプラネタリギヤユニットPUに出力する減速回転をブレーキB3により接・断するようにしたので、例えばクラッチC1を設ける場合に比して、部品点数(例えばドラム状部材など)を削減することができる。また、ブレーキB3は、ケース3からそのまま油路を構成することができるので、例えばクラッチC1を設ける場合に比して、油路の構成を簡単にすることができる。
また、本参考例の自動変速機構16は、前進5速段において直結状態となる変速機構であり、前進1速段ないし前進4速段でのギヤ比の幅を細かく設定することができる。それにより、特に車輌に搭載された際に、低中車速で走行する車輌において、エンジンをより良い回転数で使用することができ、低中速走行での燃費の向上を図ることができる。
ところで、上述のような問題を解決するものとして、特開平8−68456号公報に開示されたようなものが提案されている。しかしながら、該公報のものは、減速プラネタリギヤの減速回転を、プラネタリギヤユニットの回転要素に伝達する経路上にクラッチを配置した構成となっており、該減速回転を伝達する経路は大きなトルクが入力される経路であるため、該クラッチやトルク伝達する部材などをその大きなトルクに耐え得るように構成する必要がある。また、この減速回転を伝達する経路は、例えば前進6速段の際に高速回転する部分であるため、上記公報のもののように、クラッチのドラムがプラネタリギヤユニットの回転要素に連結されるような構成にすると、高速回転による遠心力により、ドラム部材が偏心して該クラッチの係合・解放の際の制御性が損なわれてしまう。そこで本参考例においては、プラネタリギヤユニットの回転要素の高速回転時にも、減速回転出力手段としてのクラッチの制御性を損なうことがない自動変速機を提供することを目的としている。
即ち、本参考例に係る自動変速機構16によると、ブレーキB3がキャリヤCR1を固定自在にするものであるので、例えばリングギヤR1とサンギヤS3とを係脱自在にするクラッチに比して、ブレーキB3にかかる負荷を低減することができ、該ブレーキB3をコンパクト化することができ、自動変速機のコンパクト化も図ることができる。
なお、以上の本発明に係る第3乃至第5の実施の形態や第1、第2、及び第6の参考例において、自動変速機にトルクコンバータを備えているものに適用されるとして説明したが、これに限らず、発進時にトルク(回転)の伝達を行うような発進装置であれば何れのものであってもよい。また、駆動源としてエンジンである車輌に搭載する場合について説明したが、これに限らず、ハイブリッド車輌に搭載することも可能であり、駆動源が何れのものであってもよいことは、勿論である。更に、上記自動変速機はFF車輌に用いて好適であるが、これに限らず、FR車輌、4輪駆動車輌など、他の駆動方式の車輌に用いることも可能である。
また、以上の第3乃至第5の実施の形態や第1、第2、及び第6の参考例の減速プラネタリギヤにおいて、サンギヤに入力軸の回転を入力すると共にキャリヤを固定することでリングギヤを減速回転させるものを説明したが、これに限らず、キャリヤに入力軸の回転を入力すると共にサンギヤを固定してリングギヤを減速回転させるものであってもよい。