JP2007077444A - 耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】重量%で、Si:0.05〜3.0%,Mn:0.1〜2.0%,P:0.04%以下,S:0.01%以下,Cr:14.0〜24.0%,C+N:0.005〜0.15%を含有し、残部がFeおよび実質的に不可避的不純物で構成され、鋼線の長手方向の表面粗度;Rmaxが10μm以下、または、Raが1.0μm以下に制御されることを特徴とする耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線である。必要に応じて、0.2%耐力が350N/mm2以上である,光輝焼鈍が施された線径(直径)が4mm以下の鋼線である。
【選択図】図1
Description
一方、フェライト系ステンレス鋼線の表面性状と耐食性の関係に関する技術は報告されていない。
ステンレス鋼線では、ばね成形性(コイリング性)のために表面処理層と共に鋼線の表面粗さを規定する技術が提案されている(特許文献3)。
(1)重量%で、Si:0.05〜3.0%,Mn:0.1〜2.0%,P:0.04%以下,S:0.01%以下,Cr:14.0〜24.0%,C+N:0.005〜0.15%を含有し、残部がFeおよび実質的に不可避的不純物で構成され、鋼線の長手方向の表面粗度;Rmaxが10μm以下、または、Raが1.0μm以下に制御されることを特徴とする耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線である。
(2)さらに、JIS Z 2241で規定される0.2%耐力が350N/mm2以上であることを特徴とする前記(1)に記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線である。
(3)さらに、製造途中に光輝焼鈍が施され、線径(直径)が4mm以下であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線である。
(4)さらに、重量%で、Nb:0.01〜1.0%,Ti:0.005〜1.0%,Zr:0.05〜1.0%,V:0.01〜1.0%,Ta:0.05〜1.0%,W;0.05〜1.0%の1種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線である。
(5)さらに、重量%で、Al:0.001〜0.1%,O:0.001〜0.01%の1種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線である。
(6)さらに、重量%で、Cu:0.01〜3.0%,Ni:0.01〜2.0%,Mo:0.01〜3.0%の1種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線である。
(7)さらに、重量%で、B:0.0001〜0.01%を含有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線である。
(8)湿式または、油性伸線用潤滑剤を用いてダイスで最終仕上げ伸線加工することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線の製造方法である。
(9)ローラーダイスまたは、冷間圧延機で伸線加工を施すことを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線の製造方法である。
更することなく加工方法で改善できるため、その手法の汎用性が高く、市場への普及率を飛躍的に高める効果を発揮する。
Siは、脱酸元素であるため、0.05%以上を添加する。しかしながら、3.0%を越えて添加すると加工が困難となり、表面性状が劣化して耐銹性が劣化することから、上限を3.0%にする。好ましい範囲は、0.1〜1.0%である。
Mnは、脱酸元素であるため、0.1%以上を添加する。しかしながら、2.0%を越えて添加すると耐銹性が劣化する。そのため、上限を2.0%にする。好ましい範囲は、0.2〜1.0%である。
Pは、粒界偏析により耐銹性に悪影響を与えるため、上限を0.04%とする。好ましい範囲は、0.01〜0.03%である。
Sは、硫化物系介在物を形成して耐銹性を劣化させるため、上限を0.01%とする。好ましい範囲は、0.0005〜0.008%である。
Crは、耐銹性に寄与する元素であるため、14%以上を添加する。一方、24%を越えて添加すると経済的でない。そのため、上限を24.0%にする。好ましい範囲は、15.5%〜20.0%である。
C+Nは、強度を付与して鋼線の表面を平滑化して耐食性を確保するために0.0
05%以上にする。しかしながら、0.15%を越えて添加するとCr炭窒化物の生成量が多くなり、逆に耐銹性が劣化する。そのため、上限を0.15%にする。好ましい範囲は、0.005〜0.06%であり、Nb,Ti等の安定化元素を添加された高純度フェライト系ステンレス鋼が望ましい。
鋼線の表面粗さは、耐銹性に大きく影響を及ぼす。特に、本発明では、フェライト系ステンレス鋼線の耐銹性はオーステナイト系ステンレス鋼線に比べて著しく表面の仕上げ(表面粗さ)の影響を受けることを見出し、本発明の表面が平滑化された鋼線を考案したものである。すなわち、図1は、17%Cr系のフェライト系ステンレス鋼線の耐銹性に及ぼす表面粗度の影響を測定したもので、鋼線長手方向の表面粗度;Rmaxが10μm以上、または、Raが1.0μm以上で急激に耐銹性が劣化しているのがわかる(通常、RaはRmaxの約1/10前後である)。そのため、鋼線の表面粗度Rmaxが10μm以下、または、Raが1.0μm以下に制御・規定する。好ましくは、表面粗度Rmaxが6μm以下、または、Raが0.6μm以下である。ここでの表面粗度とは、鋼線の長手方向の基準長さ2.5mmに対して測定された値であり、正常部を10回測定した平均値を示す。
鋼線の表面粗さを平滑化させて耐銹性を確保するためには、加工にて境界潤滑にする必要がある。鋼線の降伏応力(0.2%耐力)が350N/mm2よりも低いと鋼線とダイス,ロール間に潤滑剤が多量に入り込み、表面粗度が悪くなり、耐銹性が劣化する。そのため、鋼線の降伏応力(0.2%耐力)を350N/mm2以上に限定する。好ましくは、400N/mm2以上である。ここでの、降伏応力とは、JIS Z 2241で規定されるオフセット法にて求められる0.2%耐力の値である。
ステンレス鋼線は、主に潤滑剤を用いて伸線加工されるが、直径が約4mm以下の細線では、中間焼鈍を施し、仕上げ伸線して鋼線製品とする場合が多い。生産性を重視する場合は、中間焼鈍前の予備伸線では被膜とCa系粉末等の潤滑材を用いて超硬ダイスにて乾式伸線を実施する場合が多い。この時、表面粗度が悪いと、予備伸線で被膜と潤滑剤が表面凹部内に入り込み、脱脂、洗浄後も残存する。その後、中間焼鈍をストランドの光輝焼鈍で行うと、残存した被膜・潤滑材により不動態皮膜の劣化や浸炭による鋭敏化等が発生し、鋼線製品の耐銹性が著しく劣化する(逆に、表面粗さが低く制御すると、潤滑剤の残存もなくなり、耐銹性の劣化もない)。そのため、光輝焼鈍が施された直径4mm以下の鋼線では本発明の表面性状制御による耐銹性改善の効果が顕著となる。ここで、光輝焼鈍とは一般的に行われている水素,窒素の混合ガス等の還元性ガス雰囲気中での焼鈍であり、温度としては800〜1150℃である。800℃以下では焼鈍効果がなく、1150℃以上では組織が粗大化する。
一方、上記の中間焼鈍がバッチ焼鈍でなされた場合、焼鈍後に酸洗を付与して表面を溶解するため、細線であっても予備伸線時の表面性状の影響を受けにくく、本発明の効果があまり大きくない。
Nb,Ti,Zr,V,Ta,Wは、Cの安定化元素であり、フェライト系ステンレス鋼線に添加すると耐銹性を劣化させる粒界のCr炭窒化物の生成を抑制する。そのため、必要に応じて、Nbは0.01〜1.0%,Tiは0.005〜1.0%,Zr:0.05〜1.0、V:0.01〜1.0、Taは0.05〜1.0%,W:0.05〜1.0%の1種以上を添加する。なお、過剰に添加すると、粗大な炭窒化物が生成し、鋼線の表面粗度が劣化して逆に耐銹性が劣化するため、上限を設定する。
Alは、脱酸・脱硫に必要な元素であるため、必要に応じて、0.001%以上添
加する。しかしながら、0.1%を越えて添加してもその効果は飽和するし、逆に粗
大な酸化物系介在物が生成して、耐銹性が劣化する。そのため、上限を0.1%に限
定する。好ましい範囲は、0.001〜0.06%である。
Oは、介在物や脱硫に影響を及ぼす元素であるため、必要に応じて、含有量を制御
する。0.001%以下では、工業的に制御困難であり、0.01%以上では粗大介
在物が増加し、耐銹性が劣化する。そのため、0.001〜0.01%に限定する。
好ましい範囲は、0.002〜0.008%である。
Cu,Ni,Moは、耐銹性に有効な元素であるため、必要に応じて、それぞれ
Cu:0.01〜3.0%,Ni:0.01〜2.0%,Mo:0.01〜3.0%の1種以上を添加する。しかしながら、過剰に添加すると、その効果は飽和するし、経済的でない。そのため、上限を設定する。好ましい範囲は、それぞれ、Cu:0.01〜1.0%,Ni:0.01〜1.0%,Mo:0.01〜2.0%である。
Bは、加工割れを防止するのに有効な元素であるため、必要に応じて、0.0001%以上を添加する。しかしながら、0.01%を越えて添加するとボライドの生成により耐銹性が劣化する。そのため、上限を0.01%にする。好ましい範囲は、0.005〜0.008%である。
鋼線の表面粗度Rmaxが10μm以下、または、Raが1.0μm以下に制御するための一つの手段として、本発明では、伸線加工の最終仕上げ工程に湿式または油性伸線用潤滑剤を用いたダイス引き伸線を最低限1回以上、数回入れることが有効であることを見出した。そのため、必要に応じて、湿式または、油性伸線用潤滑剤を用いてダイスにて最終仕上げ伸線加工することに限定する。通常、高生産性の観点から乾式伸線が主流であるが、本発明では必要に応じて湿式伸線,油性伸線用潤滑剤による伸線加工を施す。湿式および油伸線用潤滑剤とは、鉱物油,動植物油,合成油を主成分として、必要に応じて、水,極圧添加剤等の添加剤が配合されている潤滑剤のことをいう。
鋼線の表面粗度Rmaxが10μm以下、または、Raが1.0μm以下に制御するための一つの手段として、本発明では、少なくとも最終仕上げ工程までに、湿式および油性潤滑剤によるローラーダイス伸線または、冷間圧延機械(2〜4ロール)による伸線加工を施すことが有効であることを見出した。そのため、必要に応じて、ローラーダイスまたは、冷間圧延機械による伸線加工を施すことに限定する。
表1に実施例の鋼の化学組成を示す。
比較例No.7,15,23は、乾式伸線ままで表面粗さが悪く、耐銹性に劣っていた。しかしながら、線径が太く、光輝焼鈍がほどこさえていないため、比較的耐銹性の劣化が少ない。
一方、比較例No.59では、C+Nが高く、Cr炭窒化物の生成量が多く、耐銹性に劣っていた。
比較例No.60では、Si量が高いため伸線加工が困難となり、表面粗さが悪くなり、耐銹性に劣っていた。
比較例No.61〜63では、それぞれ、Mn量,P量,S量が高いために耐銹性に劣っていた。
比較例No.64では、Cr量が低いために耐銹性に劣っていた。
比較例No.65,66は、それぞれ、O量,Al量が高く、粗大介在物が生成するために耐銹性に劣っていた。
比較例No.67では、B量が高く、ボライドが生成するため、耐銹性に劣っていた。
比較例No.68,69では、それぞれ、Nb量,Ti量が高く、粗大炭窒化物が生成したため、表面粗さが悪くなり、耐銹性に劣っていた。
Claims (9)
- 重量%で、Si:0.05〜3.0%,Mn:0.1〜2.0%,P:0.04%以下,S:0.01%以下,Cr:14.0〜24.0%,C+N:0.005〜0.15%を含有し、残部がFeおよび実質的に不可避的不純物で構成され、鋼線の長手方向の表面粗度;Rmaxが10μm以下、または、Raが1.0μm以下に制御されることを特徴とする耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線。
- さらに、JIS Z 2241で規定される0.2%耐力が350N/mm2以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線。
- さらに、製造途中に光輝焼鈍が施され、線径(直径)が4mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線。
- さらに、重量%で、Nb:0.01〜1.0%,Ti:0.005〜1.0%,Zr:0.05〜1.0%,V:0.01〜1.0%,Ta:0.05〜1.0%,W;0.05〜1.0%の1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線。
- さらに、重量%で、Al:0.001〜0.1%,O:0.001〜0.01%の1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線。
- さらに、重量%で、Cu:0.01〜3.0%,Ni:0.01〜2.0%,Mo:0.01〜3.0%の1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線。
- さらに、重量%で、B:0.0001〜0.01%を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線。
- 湿式または、油性伸線用潤滑剤を用いてダイスで最終仕上げ伸線加工することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線の製造方法。
- ローラーダイスまたは、冷間圧延機で伸線加工を施すことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼線の製造方法。
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