JP5988000B1 - 高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高強度鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5988000B1
JP5988000B1 JP2015561798A JP2015561798A JP5988000B1 JP 5988000 B1 JP5988000 B1 JP 5988000B1 JP 2015561798 A JP2015561798 A JP 2015561798A JP 2015561798 A JP2015561798 A JP 2015561798A JP 5988000 B1 JP5988000 B1 JP 5988000B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel sheet
area ratio
phase
strength steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015561798A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2016157257A1 (ja
Inventor
河村 健二
健二 河村
典晃 ▲高▼坂
典晃 ▲高▼坂
康弘 西村
康弘 西村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority claimed from PCT/JP2015/004178 external-priority patent/WO2016157257A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5988000B1 publication Critical patent/JP5988000B1/ja
Publication of JPWO2016157257A1 publication Critical patent/JPWO2016157257A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract

打抜き加工性に優れたTSが780MPa以上の高強度鋼板およびその製造方法を提供する。特定の成分組成と、フェライト相、マルテンサイト相およびベイナイト相からなり、マルテンサイト相の面積率が20%以上50%以下であり、マルテンサイト相のうち平均結晶粒径が1.0μm未満の結晶粒の割合が面積率で5〜30%であり、平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒の割合が面積率で70〜95%であり、平均結晶粒径が4.0μm超えの結晶粒の割合が面積率で5%未満である鋼組織と、を備え、引張強度が780MPa以上である高強度鋼板とする。

Description

本発明は、自動車車体の骨格部材用途への適用に好適な、打抜き加工性(punchability)に優れる、引張強度(TS)が780MPa以上の高強度鋼板およびその製造方法に関する。
自動車車体の軽量化のため、自動車部品の素材として高強度鋼板が積極的に使用されている。自動車の構造部材や補強部材に適用される鋼板として、引張強度(TS)780MPa以上の鋼板が主流になっている。鋼板の高強度化には組織強化の活用が有効であり、軟質なフェライトと硬質なマルテンサイトからなる複合組織とする方法がある。この複合組織を有する鋼板は、一般に延性が良好で優れた強度−延性バランス(両立性)を有しており、プレス成形性が比較的良好である。しかしながら、この複合組織を有する鋼板は、通常の連続焼鈍ラインでの製造時に生じる焼鈍温度等の条件変化に対して、引張強度(TS)などの材質変動が大きく、そのためコイル長手方向で材質が変動しやすい。
また、自動車部品の素材に用いられる高強度鋼板は、打抜き加工により成形されるため、打ち抜き加工性が要求される。要求される打抜き加工性には、打抜きパンチおよびダイスの摩耗が少ないこと、つまり連続打ち抜き性に優れることのほか、連続打抜き時に打抜き端面およびその近傍部のプレス成形性の変動が小さいことがある。
実際の部品の製造工程における打抜きでは、金型の取付け精度等の問題からクリアランス(ポンチとダイスの間のクリアランス)を一定に管理することは難しく、上記クリアランスは5〜20%の範囲で変動している。そのため、コイル内およびコイル間での材質変動が大きい場合、打抜き加工での打抜き端面およびその近傍部のプレス成形性が大きく変動することになる。そのため、自動車の連続プレスラインにおいて、安定的にプレス成形を行うことが困難となる。安定的にプレス成形を行うことが困難になる場合、作業性が大きく低下することが懸念される。
これに対し、特許文献1に記載の高加工性高強度冷延鋼板では、SiとAlを一定量添加することで、焼鈍条件変動による組織変化を小さくして、伸びおよび伸びフランジ性等の機械特性のばらつきを小さくする。
また、特許文献2には、鋼板中のTi系窒化物の含有量を低減することで打抜き加工性の劣化を抑制した熱延鋼板が開示されている。
特許第4640130号公報 特開2003−342683号公報
特許文献1に記載の技術では、いくら鋼板側の材質変動を低減したとしても、連続プレスラインにおける打抜きでは、打抜き回数の増加とともに打抜きポンチとダイスが損傷し、また、ポンチとダイスの間のクリアランスも変動することは避けられない。そのため、打抜き端面およびその近傍部の成形性を一定に保つことは難しく、時にプレス成形割れが発生することが問題となっている。特に、780MPa以上の高強度鋼板においては、590MPa以下の鋼板に比べて割れに対する感受性が高いため、780MPa以上の高強度鋼板の場合、打抜き端面およびその近傍部の成形性が変動することは、プレス成形割れに直結する。TSが780MPa以上の高強度鋼板では、高強度化のために鋼組織に硬質なマルテンサイトが含まれている。このため、上記高強度鋼板を打抜く際にマルテンサイトとフェライトの界面にボイドが発生し、その後のプレス成形性が低下する。打抜き時のクリアランスが一定であれば、打抜き端面およびその近傍の成形性は安定しているが、クリアランスが変動すると打抜き端面の鋼板の損傷も変動し、安定した連続プレスすることが難しいという課題がある。
特許文献2の熱延鋼板では、フェライトを主体とするフェライト・ベイナイトからなる組織を推奨している。したがって、特許文献2の技術では、鋼組織がフェライトとマルテンサイトを主組織とした二相組織鋼の場合に生じる、マルテンサイト−フェライト界面の上記問題に取り組んではいない。さらに、特許文献2に記載の評価は、一定のクリアランスでの打抜きによる評価のみであって、クリアランスが変動した場合の打抜き端面の成形性を安定化するものではない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、打抜き加工性に優れたTSが780MPa以上の高強度鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、連続打抜きした際の打抜き端面およびその近傍の成形性変動の各種要因について鋭意検討した。その結果、鋼組織をフェライト相とマルテンサイト相およびベイナイト相の3相組織とし、マルテンサイト相における結晶粒の平均結晶粒径をきめ細かく制御することにより、TSが780MPa以上で、打抜き加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られることを知見した。本発明の要旨は以下の通りである。
[1]質量%で、C:0.07%以上0.15%以下、Si:0.01%以上0.50%以下、Mn:2.0%以上3.0%以下、P:0.001%以上0.050%以下、S:0.0005%以上0.010%以下、sol.Al:0.005%以上0.100%以下、N:0.0001%以上0.0060%以下、Ti:0.01%以上0.10%以下、Nb:0.01%以上0.10%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、フェライト相、マルテンサイト相およびベイナイト相を含み、マルテンサイト相の面積率が20%以上50%以下であり、マルテンサイト相のうち平均結晶粒径が1.0μm未満の結晶粒の割合が面積率で5〜30%であり、平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒の割合が面積率で70〜95%であり、平均結晶粒径が4.0μm超えの結晶粒の割合が面積率で5%未満である鋼組織と、を備え、引張強度が780MPa以上である打抜き加工性に優れた高強度鋼板。
[2]マルテンサイト相における平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒のうち、長径が1.0〜3.0μmの結晶粒の割合が面積率で20%未満であり、長径が3.0μm超えの結晶粒の割合が面積率で80%以上であることを特徴とする[1]記載の高強度鋼板。
[3]前記成分組成は、さらに、質量%で、Mo:0.05%以上1.00%以下、Cr:0.05%以上1.00%以下、V:0.02%以上0.50%以下、Zr:0.02%以上0.20%以下、B:0.0001%以上0.0030%以下、Cu:0.05%以上1.00%以下、Ni:0.05%以上1.00%以下から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の高強度鋼板。
[4]前記成分組成は、さらに、質量%で、Ca:0.001%以上0.005%以下、Sb:0.0030%以上0.0100%以下、REM:0.001%以上0.005%以下から選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の高強度鋼板。
[5][1]、[3]又は[4]に記載の成分組成からなる鋼スラブを熱間圧延し、冷間圧延し、1次焼鈍し、2次焼鈍して、[1]〜[4]のいずれかに記載の高強度鋼板を製造する方法であって、前記1次焼鈍において、1次焼鈍温度がAc3点以上Ac3点+60℃以下であり、前記1次焼鈍温度で保持する時間である1次焼鈍時間が10秒以上200秒以下であり、前記2次焼鈍において、焼鈍温度がAc3点以下を満たすとともに、(1次焼鈍温度−80℃)〜(1次焼鈍温度−30℃)を満たし、前記2次焼鈍温度で保持する時間である2次焼鈍時間が10秒以上100秒以下であり、前記2次焼鈍における冷却は、冷却停止温度が400〜550℃であり、鋼板が400〜550℃にある滞留時間が20秒以上100秒以下であることを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
[6]前記2次焼鈍後に冷却し、該冷却後に亜鉛めっきを施すことを特徴とする[5]に記載の高強度鋼板の製造方法。
[7]前記亜鉛めっきを施した後、合金化処理を施すことを特徴とする[6]に記載の高強度鋼板の製造方法。
本発明によれば、引張強度が780MPa以上の高強度で、打抜き加工性に優れる高強度鋼板が得られる。本発明の高強度鋼板を自動車車体の骨格部材に適用した場合は、衝突安全性の向上や軽量化に大きく貢献できる。
なお、本発明において「打抜き加工性に優れる」とは、実施例に記載の方法で導出するΔλが10以下、かつ、λ/aveλ5−20が0.90以上1.20以下であることを意味する。好ましくは、Δλが8以下であり、λ/aveλ5−20が1.00以上1.15以下である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
<高強度鋼板>
先ず、本発明の高強度鋼板の成分組成について説明する。以下の説明において、成分の含有量を表す「%」は「質量%」を意味する。
本発明の高強度鋼板は、質量%で、C:0.07%以上0.15%以下、Si:0.01%以上0.50%以下、Mn:2.0%以上3.0%以下、P:0.001%以上0.050%以下、S:0.0005%以上0.010%以下、sol.Al:0.005%以上0.100%以下、N:0.0001%以上0.0060%以下、Ti:0.01%以上0.10%以下、Nb:0.01%以上0.10%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する。
C:0.07%以上0.15%以下
Cは鋼板の高強度化に有効な元素であり、マルテンサイトを形成することで高強度化に寄与する。また、CはNbやTiといった炭化物形成元素と微細な炭化物、あるいは、炭窒化物を形成することで高強度化に寄与する。これらの効果を得るためには、C含有量は0.07%以上とすることが必要である。一方、C含有量が0.15%超えではスポット溶接性が著しく劣化する。またC含有量が0.15%超えではマルテンサイト相の増加により鋼板が硬質化し、プレス成形性が低下する場合がある。したがって、C含有量は0.07%以上0.15%以下とする。780MPa以上のTSを安定的に確保する観点からは、C含有量を0.08%以上とすることが好ましく、打抜き後の打抜き端面およびその近傍の成形性を安定的に確保する観点からは、0.12%以下とすることがより好ましい。
Si:0.01%以上0.50%以下
Siの添加は、赤スケール等の発生により表面性状の劣化や、めっき付着・密着性の劣化を引き起こす。したがって、Si含有量は0.50%以下とする。溶融亜鉛めっき鋼板においては、0.20%以下が好ましい。一方で、Siは延性を改善するとともに強度向上に寄与する元素である。これらの効果を得るためにはSi含有量を0.01%以上とすることが必要である。以上より、Si含有量は0.01%以上0.50%以下とする。
Mn:2.0%以上3.0%以下
Mnは、鋼板の強度を向上させる上で有効な元素であり、複合組織を得るために有効に作用する元素である。また、MnはAc3変態点を低下させる元素であり、本発明において、オーステナイト単相域での焼鈍を安定的に実施するためには、Mn含有量は2.0%以上必要である。さらに、加熱焼鈍時に存在するオ−ステナイトから冷却過程において安定的に低温変態相を得て強度を確保する上でも、Mn含有量は2.0%以上が好ましい。一方、Mn含有量が3.0%を超えると、いわゆるMnバンドと呼ばれる板厚1/2部分へのMn偏析が顕著となる。この偏析部分の焼入れ性が高まることで、マルテンサイトが圧延方向に列状に多く生成してしまい、プレス成形性が大幅に低下する。したがって、Mn含有量は2.0%以上3.0%以下とする。好ましくは、2.2%以上2.8%以下である。
P:0.001%以上0.050%以下
Pは、鋼中に固溶して鋼板の高強度化に寄与する元素である。一方で、Pは、粒界への偏析により粒界の結合力を低下させ加工性を劣化させ、また鋼板表面への濃化により化成処理性、耐食性などを低下させる元素でもある。P含有量が0.050%を超えると、上記影響は顕著に現れる。しかし、P含有量の過度の低減は製造コストの増加を伴う。以上より、P含有量は0.001%以上0.050%以下とする。
S:0.0005%以上0.010%以下
Sは加工性に悪影響を及ぼす元素である。S含有量が増加すると、Sは介在物MnSとして存在し、特に材料の局部延性を低下させ、加工性を低下させる。また硫化物の存在により溶接性も悪くなる。このような悪影響はS含有量を0.010%以下とすることにより避けることができる。好ましくは、S含有量を0.005%以下とすることによりプレス加工性を顕著に改善することが可能となる。しかし、S含有量の過度の低減は製造コストの増加を伴う。以上より、S含有量は0.0005%以上0.010%以下とする。
sol.Al:0.005%以上0.100%以下
Alは、脱酸材として有効な元素であり、この効果を発揮するために、sol.Al含有量を0.005%以上とする。一方、sol.Al含有量が0.100%を超えると、原料コストの上昇を招くとともに、鋼板の表面欠陥を誘発する原因にもなる。したがって、sol.AlとしてのAl含有量は0.005%以上0.100%以下とする。
N:0.0001%以上0.0060%以下
Nは、本発明において、その含有量が少ないほど望ましい。本発明において、N含有量は0.0060%までは許容できる。また、N含有量の過度の低減は製造コストの増加を伴う。以上より、N含有量は0.0001%以上0.0060%以下とする。
Ti:0.01%以上0.10%以下
Tiの微細析出物(主として炭化物、窒化物、炭窒化物。以下炭窒化物と称す)は、強度の上昇に寄与し、さらにフェライトおよびマルテンサイトの微細化にも有利に作用する。このような作用を得るためには、Ti含有量を0.01%以上とする必要がある。好ましくは0.02%以上である。一方、多量のTiを添加しても、通常の熱間圧延工程における再加熱時においては、炭窒化物を全量固溶させることができず、粗大な炭窒化物が残る。多量のTi含有により、プレス成形性が劣化するばかりでなく、合金コストの増加も招いてしまう。したがって、Ti含有量は0.10%以下とする必要がある。以上より、Ti含有量は0.01%以上0.10%以下とする。
Nb:0.01%以上0.10%以下
Nbの微細析出物(主として炭窒化物)は、強度の上昇に寄与し、さらにフェライトおよびマルテンサイトの微細化にも有利に作用する。Nb含有によりこのような作用を得るためには、Nb含有量を0.01%以上とする必要がある。好ましくは0.02%以上である。一方、多量のNbを添加しても、通常の熱間圧延工程における再加熱時においては、炭窒化物を全量固溶させることができず、粗大な炭窒化物が残るため、プレス成形性が劣化するばかりでなく、合金コストの増加も招いてしまう。したがって、Nb含有量は0.10%以下とする必要がある。上記の通り、Nb含有量は0.01%以上0.10%以下とする。
上記成分以外に、本発明の高強度鋼板の成分組成は、さらに、質量%で、Mo:0.05%以上1.00%以下、Cr:0.05%以上1.00%以下、V:0.02%以上0.50%以下、Zr:0.02%以上0.20%以下、B:0.0001%以上0.0030%以下、Cu:0.05%以上1.00%以下、Ni:0.05%以上1.00%以下から選ばれる1種以上を含有することができる。
Mo:0.05%以上1.00%以下
Moは焼入れ性を向上させ、マルテンサイトを生成することで高強度化に寄与する元素であり、必要に応じて含有することができる。このような効果を発現させるため、Mo含有量は0.05%以上であることが好ましい。一方、Mo含有量が1.00%を超えると上記効果が飽和するだけではなく、原料コストの増加を招く。したがって、Mo含有量は0.05%以上1.00%以下が好ましい。
Cr:0.05%以上1.00%以下
Crは焼入れ性を向上させ、マルテンサイトを生成することで高強度化に寄与する元素であり、必要に応じて含有することができる。このような効果を発現させるため、Cr含有量は0.05%以上であることが好ましい。一方、Cr含有量が1.00%を超えると上記効果が飽和するだけではなく、原料コストの増加を招く。したがって、Cr含有量は0.05%以上1.00%以下が好ましい。
V:0.02%以上0.50%以下
VはNb、Tiと同様、微細な炭窒化物を形成することで、強度上昇に寄与するため、必要に応じて含有することができる。このような効果を発現させるためにはV含有量を0.02%以上とすることが好ましい。一方、V含有量が0.50%を超えると、効果が飽和するだけでなく原料コストの増加を招く。このためVの含有量は0.50%以下が好ましい。
Zr:0.02%以上0.20%以下
Zrも微細な炭窒化物を形成することで、強度を高めるのに有効であり、必要に応じて含有することができる。このような効果を発現させるためには、Zr含有量を0.02%以上にする必要がある。一方、Zr含有量が0.20%を超えると効果が飽和するだけでなく原料コストの増加を招く。したがって、Zrの含有量は0.02%以上0.20%以下とするのが望ましい。
B:0.0001%以上0.0030%以下
Bは、オーステナイト粒界からのフェライトの生成・成長を抑制する作用を有するので必要に応じて含有させることができる。その効果は、0.0001%以上で得られる。一方、B含有量が0.0030%を超えると加工性が低下する。したがって、Bを含有させる場合には、その含有量は0.0001%以上0.0030%以下の範囲とすることが好ましい。なお、Bを含有させるにあたっては、上記効果を得る上でBNの生成を抑制することが好ましく、このため、Tiと複合含有させることが好ましい。
Cu:0.05%以上1.00%以下
Cuは、鋼の焼入れ性を高めて熱延鋼板を高強度化するのに有効である。この効果を発揮するためには、Cu含有量を0.05%以上にする必要がある。しかし、Cu含有量が1.00%を超えても効果は飽和するのみならず、熱間延性が低下して表面疵の発生が顕著になり、さらには原料コストの増加も招く。したがって、Cu含有量は0.05〜1.00%とするのが望ましい。
Ni:0.05%以上1.00%以下
Niは、鋼の焼入れ性を高めて熱延鋼板を高強度化するのに有効である。この効果を発揮するためには、Ni含有量を0.05%以上にする必要がある。しかし、Ni含有量が1.00%を超えても効果は飽和するのみならず、熱間延性が低下して表面疵の発生が顕著になり、さらには原料コストの増加も招く。したがって、Ni含有量は0.05〜1.00%とするのが望ましい。
上記成分以外に、本発明の高強度鋼板の成分組成は、さらに、質量%で、Ca:0.001%以上0.005%以下、Sb:0.0030%以上0.0100%以下、REM:0.001%以上0.005%以下から選ばれる1種以上の元素を含有することができる。
Ca:0.001%以上0.005%以下
Caは、MnSなどの硫化物の形態制御により延性を向上させる効果がある。しかしながら、多量に含有させてもその効果は飽和する傾向にある。したがって、Caを含有させる場合、その含有量は0.0001%以上0.0050%以下が好ましい。
Sb:0.0030%以上0.0100%以下
Sbは、表面等に偏析する傾向が高い元素であり、吸窒や脱炭等の製造工程中での表層反応を抑制する働きがある。また、その添加により、熱間圧延工程の加熱時や焼鈍時の、高温雰囲気中に鋼材がさらされる状態でも、窒素や炭素等の成分変動しやすい元素の反応を抑制し、著しい成分変動を防止できる効果がある。そこで、Sbを含有する場合、本発明ではSb含有量が0.0030〜0.0100%であることが好ましい。なお、本発明において、さらに好ましいSb含有量は0.0060〜0.0100%である。
REM:0.001%以上0.005%以下
REMは、硫化物系介在物の形態を制御する作用を有し、これによりプレス成形性の向上に寄与する。この効果を発揮させるためには、REM含有量を0.001%以上にする必要がある。一方、REMの多量の添加は硫化物系介在物の粗大化を招き、打抜き加工性を低下させるので、上限を0.005%以下とするのが好ましい。
また、本発明の成分組成において、上記以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
また、本発明では、上記基本組成を満たすとともに、(1)式を満たすことが好ましい。なお、式中の元素記号は各元素の含有量を意味する。
0.05≦C−(12/93)Nb−(12/48)(Ti−(48/14)N−(48/32)S)≦0.12 (1)
上記の(1)式は、炭化物として固定されないC量を規定するものである。このC量が0.12%を超えて多量に存在すると、マルテンサイトの分率が増加し、延性も低下する場合がある。したがって、(1)式で算出される炭化物として固定されないC量は0.12%以下とすることが好ましい。一方、炭化物として固定されないC量が0.05%未満であると、冷間圧延後の2相域における焼鈍においてオーステナイト中のC量が減少し、ひいては冷却後に生成するマルテンサイト相が減少するため、780MPa以上の高強度化が困難となる場合がある。このため、炭化物として固定されないC量は0.05%以上とすることが好ましい。好ましくは0.07%以上である。
次に、本発明の高強度鋼板の鋼組織について説明する。本発明の高強度鋼板の鋼組織は、フェライト相、マルテンサイト相およびベイナイト相からなる。それ以外の残部組織としては、パーライト相、残留オーステナイト相および炭化物等が挙げられる。これらの含有量は合計面積率で5%以下であれば許容できる。ただし、フェライト相、マルテンサイト相以外の残部組織のうち90%以上はベイナイト相からなる。なお、板厚の表面から3/8深さ位置の鋼組織が、本発明範囲内にあれば本発明の効果が得られる。
フェライト相およびベイナイト相は、マルテンサイト相よりも軟質な相であって、それらの面積率は特に規定するものではないが、フェライト相およびベイナイト相はそれぞれ20%以上とする。強度と安定した打抜き性を確保するためには、フェライト相とベイナイト相は合計面積率で50〜80%であることが好ましく、より好ましくは60〜80%である。
マルテンサイト相は硬質相であり、変態組織強化によって鋼板の強度を増加させるのに有効である。780MPa以上のTSを安定的に確保するためには、マルテンサイト相を面積率で20%以上とする必要がある。また、マルテンサイトは硬質のため、打抜きの際に軟質なフェライト相との成形性の差からボイド発生の起点となる。安定した打抜き性を確保するためには、マルテンサイトは一定量以上存在する必要があり、この観点からもマルテンサイトの面積率20%以上が必要である。一方、マルテンサイトの面積率が50%を超えると打抜き性を低下させる懸念がある。そこで、マルテンサイトは面積率で50%以下とする。好ましくは40%以下である。
マルテンサイト相における平均結晶粒径が1.0μm未満の結晶粒の割合が面積率で5〜30%である。マルテンサイト相の平均結晶粒径とは、焼鈍時の旧オーステナイト粒径とは異なり、焼入れ時の旧オーステナイト粒径と等しいものである。本発明においては2次焼鈍後のマルテンサイト相の平均結晶粒径および形態も、打抜きの際のボイド生成に大きく影響する。マルテンサイト相の結晶粒が小さいほど、打抜き時に生成するボイドが小さくなり、適正クリアランスでの打抜き場合には特に好ましい。しかし、クリアランスが変動した場合にも、打抜き端面の加工性の変動を小さくするためには、打抜き時に適度にボイドが生成する必要がある。そのため、マルテンサイト相における平均結晶粒径が1.0μm未満の結晶粒の割合を面積率で5〜30%の範囲に抑える必要がある。なお、平均結晶粒径とは各結晶粒において、結晶粒の面積に対応する真円の直径を指すものとし、実施例に記載の方法で測定できる。
マルテンサイト相における平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒の割合が面積率で70〜95%である。平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒は、打抜きクリアランスが変動した場合であっても安定した打抜き端面の成形性を確保する上で重要であり、面積率で70〜95%の範囲にすることでその効果を享受できる。好ましくは、80%以上である。
マルテンサイト相における平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒のうち、長径が1.0〜3.0μmの結晶粒の割合が面積率で20%未満であることが打抜きクリアランスが変動した場合であっても安定した打抜き端面の成形性を確保できるという理由で好ましい。また、マルテンサイト相における平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒のうち、長径が3.0μm超えの結晶粒の割合が面積率で80%以上であることが打抜きクリアランスが変動した場合であっても安定した打抜き端面の成形性を確保できるという理由で好ましい。ここで、長径とは、実施例に記載の組織観察において、マルテンサイト相の結晶粒における最長の直線長さを意味する。
マルテンサイト相における平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒のうち、長径が1.0〜3.0μmの結晶粒の割合が面積率で20%未満であることが、打抜きクリアランスが変動した場合であっても安定した打抜き端面の成形性を確保できるという理由で好ましい。長径が1.0〜3.0μmの結晶粒の割合が面積率で20%以上の場合、打抜きクリアランスが変動した際に打抜き端面の成形性が変動するため、時にプレス成形割れが生じ問題となる。
長径が3.0μm超えの結晶粒の割合が面積率で80%以上であることが、打抜きクリアランスが変動した場合であっても安定した打抜き端面の成形性を確保できるという理由で好ましい。長径が3.0μm超えの結晶粒の割合が面積率で80%未満の場合、打抜きクリアランスが変動した際に打抜き端面の成形性が変動するため、時にプレス成形割れが生じ問題となる場合がある。
マルテンサイト相における平均結晶粒径が4.0μm超えの結晶粒の割合が面積率で5%未満である。マルテンサイト相の結晶粒が粗大な場合、打抜き時にボイドが発生しやすくなるため、小さい方が好ましい。特に、4.0μmを超える結晶粒は、打抜き加工性を顕著に低下させる傾向にあるが、その割合が面積率で5%未満であれば許容できる。
<高強度鋼板の製造方法>
次に、本発明の高強度鋼板の製造方法について説明する。本発明の高強度鋼板は、上記成分組成からなる鋼スラブを熱間圧延し、冷間圧延し、1次焼鈍し、必要に応じて軽圧下圧延し、必要に応じて酸洗し、その後2次焼鈍して製造される。以下、製造方法および条件について説明する。
鋼スラブの再加熱温度が、1200℃未満では、TiおよびNbを含む析出物が再溶解せず粗大化して析出強化能を失うだけでなく、再結晶抑制のためピン止め効果としての役割も失い、安定した打抜き性の確保が難しくなる場合がある。そのため、鋼スラブの再加熱温度は1200℃以上とすることが好ましい。上記再加熱温度の上限については、特に制限はないが、エネルギー効率、歩留まりの観点から1400℃未満が好ましい。より好ましくは1300℃以下である。
熱間圧延の仕上げ温度が、Ar3点温度以下では、表層に粗大粒が形成されるなど均一な鋼組織の作りこみが難しく、安定した打抜き性が得られない場合がある。そのため、仕上げ温度は、Ar3点以上が望ましい。また、仕上げ温度の上限は特に限定されないが、仕上げ温度は1000℃以下が望ましい。
巻取温度が500℃未満では、TiおよびNbを含む析出物の量が少なく、焼鈍時の再結晶抑制効果が十分得られない場合がある。一方、巻取温度が700℃超えの場合には、析出物が粗大となり焼鈍時の再結晶抑制効果が十分でなくなる場合がある。したがって、巻取温度は500〜700℃とすることが好ましい。より好ましくは550〜650℃である。
上記熱延鋼板は、その後、必要に応じて、常法で酸洗して脱スケールした後、冷間圧延して最終板厚の冷延鋼板とする。この冷間圧延の圧下率は40%以上とすることが好ましい。圧下率が40%に満たないと、仕上焼鈍後の鋼板組織が粗粒となり、強度−延性バランスが低下するおそれがあるので好ましくない。より好ましくは50%以上である。一方、圧下率が90%を超えると、圧延ロールの負荷が増大し、チャタリングや板破断等の圧延トラブルを引き起こすようになる。このため、冷間圧延の圧下率は90%以下が好ましい。より好ましくは、80%以下である。
上記冷間圧延した鋼板に、1次焼鈍を施す。この1次焼鈍および後述する2次焼鈍は、生産性を高める観点から、連続焼鈍とするのが好ましい。
1次焼鈍における1次焼鈍温度は、Ac3点以上Ac3点+60℃以下である。1次焼鈍温度をAc3点以上とすることで、2次焼鈍後の鋼組織が均一となり、所望の特性を得ることが可能となる。Ac3点未満の場合、2次焼鈍後でも不均一な組織となりやすく、所望の特性を得ることができない。また、1次焼鈍温度がAc3点+60℃を超える場合には、組織が粗大となり2次焼鈍後にマルテンサイト相における平均結晶粒径が4.0μm超えの結晶粒の割合が増加し、2次焼鈍後の特性が劣化するだけでなく、エネルギー効率の点からも望ましくない。したがって、1次焼鈍温度は、Ac3点以上Ac3点+60℃以下とする。
また、1次焼鈍における1次焼鈍時間は、10秒以上200秒以下である。1次焼鈍時間が10秒未満である場合には、再結晶があまり進行せず、所望の特性を有する鋼板を得ることができない。一方、1次焼鈍時間が200秒を超えると、2次焼鈍後にマルテンサイト相における平均結晶粒径が4.0μm超えの結晶粒の割合が増加し、2次焼鈍後の特性が劣化するだけでなく、消費エネルギーが多大となり、製造コストが増大する。このため、1次焼鈍時間は、10秒以上200秒以下とする。
1次焼鈍における冷却の冷却速度(平均冷却速度)は、少なくとも1次焼鈍温度から550℃までの温度範囲については、10℃/s以上とすることが好ましい。平均冷却速度が10℃/s未満の場合、パーライトが多量に生成し、フェライト、マルテンサイトおよびベイナイトを含む複合組織が得られない場合がある。冷却速度の上限は特に規定しないが、鋼板形状が悪化することがあるため。200℃/s以下とすることが好ましい。好ましくは20〜50℃/sである。
上記1次焼鈍後、鋼板を軽圧下圧延し、酸洗する。酸洗及び軽圧下圧延は必須ではないが、鋼板の形状矯正を目的に行われる。この目的のためには圧下率を0.3〜3.0%にすることが好ましい。また、酸洗は脱スケールのために行われ、一般的な条件を適宜採用すればよい。
1次焼鈍後に軽圧下圧延、酸洗された鋼板に2次焼鈍を施す。2次焼鈍における2次焼鈍温度はAc3点以下であるとともに、(1次焼鈍温度−80℃)〜(1次焼鈍温度−30℃)である。また、本発明では、2次焼鈍温度によって鋼をフェライト−オーステナイト共存域とする必要がある。最終組織の各相の分率を調整するため、1次焼鈍温度に対し、2次焼鈍温度を所定の範囲に制御する必要がある。2次焼鈍温度が、(1次焼鈍温度−80℃)より低い温度では、780MPaの引張強度を安定して確保することが難しくなる。また、(1次焼鈍温度−30℃)を超える温度では、組織が粗大となりすぎて、マルテンサイト相の平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒の割合が面積率で70%未満になりやすく、平均結晶粒径が4.0μm超えの結晶粒の割合が面積率で5%以上となって、打抜き時にボイドが過度に生成しやすくなる。そのため、2次焼鈍温度は、Ac3点以下であって、さらに、(1次焼鈍温度−80℃)〜(1次焼鈍温度−30℃)の範囲とする。
2次焼鈍における2次焼鈍時間は10秒以上100秒以下である。2次焼鈍時間が10秒未満である場合には、再結晶があまり進行せず、所望の特性を有する鋼板を得ることができない。一方、2次焼鈍時間が100秒を超えると、マルテンサイト相の平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒の割合が面積率で70%未満に、平均結晶粒径が4.0μm超えの結晶粒の割合が面積率で5%以上となりやすい。また、マルテンサイト相における平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒のうち、長径が1.0〜3.0μmの結晶粒の割合が面積率で20%以上に、長径が3.0μm超えの結晶粒の割合が面積率で80%未満になりやすい。所望のミクロ組織が得られない場合には、打抜き端面の成形性が劣位となる。さらに、消費エネルギーが多大となり、製造コストが増大する。このため、2次焼鈍時間は10秒以上100秒以下とする。
2次焼鈍における冷却の冷却速度(平均冷却速度)は、少なくとも2次焼鈍温度から550℃までの温度範囲については、10℃/s以上とすることが好ましい。平均冷却速度が10℃/s未満の場合、パーライトが多量に生成し、フェライト、マルテンサイトおよびベイナイトを含む複相組織が得られない場合がある。冷却速度の上限は特に規定しないが、鋼板形状が悪化することがあるため200℃/s以下とすることが好ましい。好ましくは20〜50℃/sである。
2次焼鈍における冷却の冷却停止温度は400〜550℃である。冷却停止温度は、ベイナイト相を生成させる上で重要である。上記冷却停止温度が400℃未満の場合、低温変態相の大半はマルテンサイト相となり、打抜き端面の成形性が劣位となる。上記冷却停止温度が550℃を超える場合には、パーライトやセメンタイトが生成し、打抜き端面の成形性が劣位となる。したがって、冷却停止温度は400〜550℃とすることが望ましい。
2次焼鈍における冷却において、鋼板が400〜550℃の状態にある時間(滞留時間(保持時間という場合がある))は20〜100秒である。上記滞留時間は、一定量のベイナイト相を生成させる上で重要である。20秒未満の場合、ベイナイト相の生成が不十分であり、打抜き端面の成形性が劣位となる。100秒を超える滞留時間の場合には、ベイナイト相の生成量が多くなりすぎて、所定のマルテンサイトを生成させることができなくなり、打抜き端面の成形性が劣位となる。したがって、上記滞留時間は20〜100秒とする。
2次焼鈍の冷却においては、上記滞留時間の経過後、平均冷却速度が10℃/s以上の条件で室温まで冷却する。平均冷却速度10℃/s未満の場合、マルテンサイト相が生成されにくく、打抜き端面の成形性が劣位となる場合がある。この冷却における平均冷却速度の上限は特に規定しないが、鋼板形状が悪化することがあるため、平均冷却速度は100℃/s以下とすることが好ましい。より好ましくは20〜50℃/sである。
以上のようにして、本発明の高強度鋼板を製造することができる。上記のようにして得た高強度鋼板は、そのまま製品としてもよいし、その後、冷却して、溶融めっきや電気めっき等のめっき処理を施して、製品としてもよい。
例えば、めっき処理として、自動車用鋼板等に広く用いられる溶融亜鉛めっきを施す場合には、連続溶融亜鉛めっきライン前段の連続焼鈍炉で、上記の均熱・冷却あるいはさらに過時効処理(2次焼鈍における冷却において、400〜550℃の状態で鋼板を一定時間滞留させる上述の処理)を行った後、溶融亜鉛めっき浴に浸漬して、鋼板表面に溶融亜鉛めっき層を形成すればよい。さらに、その後、合金化処理を施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板としてもよい。なお、上記均熱・冷却あるいはさらに過時効処理する連続焼鈍と、めっき処理を分離し、それぞれ別のラインで行ってもよい。
亜鉛めっき層は、Znを主体として含む層である。合金化亜鉛めっき層とは、合金化反応によって亜鉛めっき中に鋼中のFeが拡散してできたFe−Zn合金を主体として含む層である。
亜鉛めっき層及び合金化亜鉛めっき層には、Zn以外にFe、Al、Sb、Pb、Bi、Mg,Ca、Be、Ti、Cu、Ni、Co、Cr、Mn、P、B、Sn、Zr、Hf、Sr、V、Se、REMを本発明の効果を害さない範囲で含んでもよい。
また、上記焼鈍後の鋼板あるいはめっき処理した鋼板に対して、形状矯正や表面粗度調整、機械的特性改善等の目的で、調質圧延またはレベラー加工を施してもよい。この際の調質圧延やレベラー加工における伸び率は、合計で0.2〜3%の範囲内とするのが好ましい。0.2%未満では、形状矯正等の所期の目的が達成できず、一方、3%を超えると、顕著な延性低下を招くようになるからである。
表1に示す成分組成からなる溶鋼を転炉で溶製し、スラブ再加熱温度を1200℃で、熱間圧延仕上げ温度を880℃、巻取温度を600℃で熱間圧延を施し、酸洗し、冷間圧延の圧下率を60%で実施し、次いで、表2に示す種々の条件で、1次焼鈍のみ、または1次焼鈍と0.5%の軽圧下圧延及び酸洗と2次焼鈍を施し、板厚が1.2mmの冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)および合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)を製造した。ここで、溶融亜鉛めっき処理は付着量が片面あたり50g/m(両面めっき)となるように調整し、GA鋼板については、めっき層中のFe含有量が9〜12質量%となるように調整した。なお、1次焼鈍および2次焼鈍における冷却の平均冷却速度はそれぞれ20℃/sで実施した。
Figure 0005988000
Figure 0005988000
以上により得られた鋼板に対して、サンプルを採取し、下記の方法で組織の特定、圧延方向に対して90°方向(C方向)を引張方向とする引張試験、および穴拡げ試験を行った。具体的には、フェライト相の面積率、マルテンサイト相の面積率、マルテンサイト以外の第2相の面積率(表3中の「M以外の第2相」)、マルテンサイト相における平均結晶粒径が1.0μm未満の結晶粒の割合(表3中の「d<1.0のM」)、平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒の割合(表3中の「d=1.0−4.0のM」)、平均結晶粒径が4.0μm超えの結晶粒の割合(d>4.0のM)、平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒のうち長径が1.0〜3.0μmの結晶粒の割合(表3中の「d=1.0−4.0のMのうち長径1.0−3.0のM」)、長径が3.0μm超えの結晶粒の割合(d=1.0−4.0のMのうち長径>3.0のM)を測定した。降伏強度(YS)、引張強度(TS)、全伸び(El)および穴拡げ率(λ)を測定した。
(i)組織観察
鋼板から、組織観察用試験片を採取し、L断面(圧延方向に平行な垂直断面)を機械的に研磨し、ナイタール(nital)で腐食した後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率3000倍で撮影した、板厚の表面から3/8深さ位置の組織写真(SEM写真)から、鋼組織の特定とマルテンサイト相の面積率、フェライト相の面積率、マルテンサイト以外の第2相の面積率を測定した。なお、面積率は、透明のOHPシートに組織写真を写して色付けし、画像を取り込み後、2値化を行い、画像解析ソフトにて求めた。また、マルテンサイトの結晶粒の平均粒径は、結晶粒の面積を円換算してその直径を平均粒径として算出した。また、結晶粒の長径は、SEMを用いて倍率5000倍で撮影したSEM写真から、それぞれのマルテンサイトの結晶粒における最大長を100点以上測定し、その平均長さと定義する。
なお、表2の「M以外の第二相」はフェライト、マルテンサイト以外の相を意味し、ベイナイトが含まれることを確認した。なお、「M以外の第二相」におけるベイナイト相の面積率は90%以上であった。これは上述の方法にてフェライト相とマルテンサイト相を除く色付けした部分について、さらにベイナイト相を判別してその面積率を測定した。
(ii)引張特性
鋼板から、圧延方向に対して90°方向(C方向)を引張方向とするJIS5号引張試験片(JIS Z 2201)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠した引張試験を行い、YS、TS、Elを測定した。なお、引張試験の評価基準(良否判定基準)はTS≧780MPaとした。
(iii)伸びフランジ成形性
伸びフランジ成形性は、日本鉄鋼連盟規格JFST1001に準拠した穴拡げ試験により評価した。すなわち、得られた鋼板から、100mm×100mm角サイズのサンプルを採取し、サンプルにポンチ径10mmで打抜き穴を開け、頂角60°の円錐ポンチを用いて、バリが外側になるようにして、板厚を貫通する割れが発生するまで穴拡げ試験を行い、このときのd0:初期穴内径(mm)、d:割れ発生時の穴内径(mm)として、穴拡げ率λ(%)={(d−d0)/d0}×100を求めた。本発明における優れた打抜き性の評価基準として、下記で規定するΔλが10以下、かつ、下記で規定するλ/aveλ5−20が0.90以上1.20以下を満足することで評価した。
Δλについて
Δλは、打抜きクリアランスが5〜20%の範囲で打抜いて評価したλ値の最大値と最小値の差を表す。簡易的に、日本鉄鋼連盟規格JFST1001に準拠して測定したλとクリアランス5%および20%を狙いに測定したλ値(λ、λ20)の3つの値間での最大値と最小値の差で代用できるものとする。また、狙いのクリアランスに対し、±1%以内であればその値を用いて評価してもよいとする。
λ/aveλ5−20について
日本鉄鋼連盟規格に準拠して測定したλを打抜きクリアランスが5〜20%の範囲で打抜いて評価したλ値の平均値で除した値を表す。簡易的に、日本鉄鋼連盟規格JFST1001に準拠して測定したλとクリアランス5%および20%を狙いに測定したλ値(λ、λ20)の3つの値間での平均値で除した値を代用できるものとする。また、狙いのクリアランスに対し、±1%以内であればその値を用いて評価してもよい。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0005988000
表3より、No.1、3、4、9、10、16、17、19、20、22〜24の鋼板は、成分組成および製造方法が本発明に適合した発明例であり、TS≧780MPa以上を満足する鋼板となっている。また、打抜き性の指標である、Δλが10以下となっており、さらに、λ/aveλ5−20が0.90〜1.20を満足しており、打ち抜き後の端面の成形性に優れた鋼板となっている。
これに対して、比較例のNo.2、5〜8、11〜15、18、21、25〜30は、成分が本発明範囲外であるか、製造条件が適合していないため、所望のミクロ組織が得られておらず、所望の特性も得られていない。Δλとλ/aveλ5−20規定をともに満足しない場合には、特にλ/aveλ5−20が1.20を超える場合には、打ち抜き端面の成形性を安定確保することが難しく、実プレスでの自動車構造部材を製造時において、プレス割れ等のトラブル発生率が高まる。
本発明によれば、引張強度780MPa以上の強度を有し、打抜き加工性に優れる高強度鋼板を得ることができ、従来、高強度鋼板の適用が困難であった例えば自動車構造部材等の難成形の部材として適用することが可能となる。さらに、自動車構造部材として本発明の高強度鋼板を用いた場合、自動車の軽量化、安全性向上などに寄与し、産業上極めて有益である。

Claims (7)

  1. 質量%で、C:0.07%以上0.15%以下、Si:0.01%以上0.50%以下、Mn:2.0%以上3.0%以下、P:0.001%以上0.050%以下、S:0.0005%以上0.010%以下、sol.Al:0.005%以上0.100%以下、N:0.0001%以上0.0060%以下、Ti:0.01%以上0.10%以下、Nb:0.01%以上0.10%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、
    フェライト相、マルテンサイト相およびベイナイト相を含み、マルテンサイト相の面積率が20%以上50%以下であり、マルテンサイト相のうち平均結晶粒径が1.0μm未満の結晶粒の割合が面積率で5〜30%であり、平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒の割合が面積率で70〜95%であり、平均結晶粒径が4.0μm超えの結晶粒の割合が面積率で5%未満であり、フェライト相及びマルテンサイト相以外の残部組織のうち面積率で90%以上がベイナイト相である鋼組織と、を備え、
    引張強度が780MPa以上である打抜き加工性に優れた高強度鋼板。
  2. マルテンサイト相における平均結晶粒径が1.0〜4.0μmの結晶粒のうち、長径が1.0〜3.0μmの結晶粒の割合が面積率で20%未満であり、長径が3.0μm超えの結晶粒の割合が面積率で80%以上であることを特徴とする請求項1記載の高強度鋼板。
  3. 前記成分組成は、さらに、質量%で、Mo:0.05%以上1.00%以下、Cr:0.05%以上1.00%以下、V:0.02%以上0.50%以下、Zr:0.02%以上0.20%以下、B:0.0001%以上0.0030%以下、Cu:0.05%以上1.00%以下、Ni:0.05%以上1.00%以下から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度鋼板。
  4. 前記成分組成は、さらに、質量%で、Ca:0.001%以上0.005%以下、Sb:0.0030%以上0.0100%以下、REM:0.001%以上0.005%以下から選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高強度鋼板。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法であって、
    スラブを熱間圧延し、冷間圧延し、1次焼鈍し、2次焼鈍して、請求項1〜4のいずれかに記載の高強度鋼板を製造する方法であって、
    前記1次焼鈍において、1次焼鈍温度がAc3点以上Ac3+60℃以下であり、前記1次焼鈍温度で保持する時間である1次焼鈍時間が10秒以上200秒以下であり、
    前記2次焼鈍において、焼鈍温度がAc3点以下を満たすとともに、(1次焼鈍温度−80℃)〜(1次焼鈍温度−30℃)を満たし、前記2次焼鈍温度で保持する時間である2次焼鈍時間が10秒以上100秒以下であり、
    前記2次焼鈍における冷却は、冷却停止温度が400〜550℃であり、400〜550℃で鋼板が保持される保持時間が20秒以上100秒以下であることを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
  6. 前記2次焼鈍後に冷却し、該冷却後に亜鉛めっきを施すことを特徴とする請求項5に記載の高強度鋼板の製造方法。
  7. 前記亜鉛めっきを施した後、合金化処理を施すことを特徴とする請求項6に記載の高強度鋼板の製造方法。
JP2015561798A 2015-03-27 2015-08-20 高強度鋼板およびその製造方法 Active JP5988000B1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015066220 2015-03-27
JP2015066220 2015-03-27
PCT/JP2015/004178 WO2016157257A1 (ja) 2015-03-27 2015-08-20 高強度鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP5988000B1 true JP5988000B1 (ja) 2016-09-07
JPWO2016157257A1 JPWO2016157257A1 (ja) 2017-04-27

Family

ID=56871776

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015561798A Active JP5988000B1 (ja) 2015-03-27 2015-08-20 高強度鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5988000B1 (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008156734A (ja) * 2006-12-26 2008-07-10 Jfe Steel Kk 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP2010126747A (ja) * 2008-11-26 2010-06-10 Jfe Steel Corp 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP2011111672A (ja) * 2009-11-30 2011-06-09 Nippon Steel Corp 衝突吸収エネルギーに優れた引張最大強度900MPa以上の高強度冷延鋼板及びその製造方法、並びに、高強度亜鉛めっき鋼板及びその製造方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008156734A (ja) * 2006-12-26 2008-07-10 Jfe Steel Kk 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP2010126747A (ja) * 2008-11-26 2010-06-10 Jfe Steel Corp 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP2011111672A (ja) * 2009-11-30 2011-06-09 Nippon Steel Corp 衝突吸収エネルギーに優れた引張最大強度900MPa以上の高強度冷延鋼板及びその製造方法、並びに、高強度亜鉛めっき鋼板及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2016157257A1 (ja) 2017-04-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN107709598B (zh) 高强度冷轧钢板、高强度热浸镀锌钢板、以及高强度合金化热浸镀锌钢板
US10934600B2 (en) High-strength steel sheet and production method therefor
JP5971434B2 (ja) 伸びフランジ性、伸びフランジ性の面内安定性および曲げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板ならびにその製造方法
US10472697B2 (en) High-strength steel sheet and production method therefor
US11035019B2 (en) High-strength steel sheet and production method therefor
KR101989726B1 (ko) 고강도 강판 및 그 제조 방법
WO2013046693A1 (ja) 熱延鋼板およびその製造方法
CN108779536B (zh) 钢板、镀覆钢板和它们的制造方法
WO2017168957A1 (ja) 薄鋼板およびめっき鋼板、並びに、熱延鋼板の製造方法、冷延フルハード鋼板の製造方法、薄鋼板の製造方法およびめっき鋼板の製造方法
WO2016120914A1 (ja) 高強度めっき鋼板およびその製造方法
WO2020162562A1 (ja) 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
KR101999910B1 (ko) 고강도 강판 및 그 제조 방법
WO2018030502A1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JP6210179B2 (ja) 高強度鋼板及びその製造方法
KR101968434B1 (ko) 고강도 도금 강판 및 그 제조 방법
KR102540431B1 (ko) 고강도 강판 및 그 제조 방법
US20230349020A1 (en) Steel sheet, member, and methods for manufacturing the same
US20230349019A1 (en) Steel sheet, member, and methods for manufacturing the same
JPWO2021020439A1 (ja) 高強度鋼板、高強度部材及びそれらの製造方法
JP5988000B1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JP5987999B1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
US20230072557A1 (en) Steel sheet, member, and methods for manufacturing the same

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160712

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160725

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5988000

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250