JP2012031469A - 深絞り性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、深絞り性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、
C:0.03%以上、0.25%以下
Si:0.001%以上、3.0%以下
Mn:0.5%以上、3.0%以下
P:0.001%以上、0.15%以下
S:0.0005%以上、0.05%以下
Al:0.01%以上、1.0%以下
Cr:0.1%以上、3.0%以下
N:0.0005%以上、0.01%以下
を満たす範囲で含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、母相がフェライト相であり、その他の金属組織がベイナイト、オーステナイト、マルテンサイト、パーライトの1種または2種以上を体積率で2%以上含有し、鋼板1/2板厚における板面の{111}、および{100}のX線ランダム強度比がそれぞれ5.0以上、および3.0以下であり、平均r値が1.3以上であることを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。
【選択図】なし

Description

本発明は、主としてプレス加工されて使用される自動車用鋼板の成形性、特に深絞り性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法に関するものである。
自動車軽量化のニーズに伴い、鋼板の高強度化が望まれている。高強度化することで板厚減少による軽量化や衝突時の安全性向上が可能である。鋼板を素材とする自動車用の車体用部品の多くは、プレス加工により成形される。このため、使用される高張力鋼板には、優れたプレス成形性を有することが必要とされ、高延性と優れた深絞り性、つまり1.3以上のr値が要求される。
高強度で成形性、特に深絞り性が優れた鋼板を得ようとすると、例えば特許文献1に開示されているように、C量を著しく減じた極低炭素鋼に、Si、Mn、Pなどを添加して固溶強化することが必須であった。C量を低減するためには、製鋼工程で真空脱ガスを行わなければならず、製造過程でCOを多量に発生することになり、地球環境保全の観点で、必ずしも最良なものではない。
そのため、深絞り用高強度冷延鋼板には、固溶強化を利用するよりも組織強化を利用した、低炭素鋼をベースとした組織強化型冷延鋼板の方が望ましいといえる。しかし、一般に複合組織型の冷延鋼板のr値は1程度と低い。
そこで、C量が比較的多く、かつ深絞り性の良好な複合組織型の冷延鋼板については、特許文献1〜3に開示されている。特許文献1、2は、箱焼鈍を前提とした昇温速度であり、生産性が低い。また、特許文献3は、平均r値が1.3未満であり、自動車外板のような、深絞りが必要とされる部位には適用できない。
特開2003−64444号公報 特開2004−137554号公報 特開2003−64443号公報
本発明はC量の比較的多い鋼において、上記のような問題を解決した高いr値を有する深絞り性に優れた複合組織型高強度冷延鋼板およびその製造方法を提案することを目的とする。
上記のような課題を解決するために鋭意検討を進めたところ、本発明者らは、C量が比較的多い複合組織鋼板においても、深絞り性が良好な鋼板を得ることが可能であることを発見した。しかも、従来のような箱焼鈍プロセスに頼る必要もない。すなわち、熱間圧延後にCrを固溶状態にしておき、冷間圧延後の焼鈍において、Cr炭化物を再結晶進行のピン止めとすることで、深絞り性向上に有効な集合組織発達が可能であることを見出したものである。
この理由は必ずしも明らかではないが、次のように考えられる。
一般に、熱間圧延時に固溶状態のCrは、冷間圧延後の焼鈍時にCr23などの炭化物として析出する。そして、ひずみエネルギーの高い{111}以外の再結晶粒は、Cr23などのCr炭化物によりピン止めされて、再結晶の進行が阻害される。この結果として、深絞り性に有利な{111}集合組織が発達したと考えられる。また、CrよりもCとの相互作用が強いTiやNbなどを添加すると、Cr炭化物が析出しないことから深絞り性に有効な集合組織は発達しない。
即ち、本発明の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板は、
(1)質量%で、
C:0.03%以上、0.25%以下
Si:0.001%以上、3.0%以下
Mn:0.5%以上、3.0%以下
P:0.001%以上、0.15%以下
S:0.0005%以上、0.05%以下
Al:0.01%以上、1.0%以下
Cr:0.1%以上、3.0%以下
N:0.0005%以上、0.01%以下
を満たす範囲で含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、母相がフェライト相であり、その他の金属組織がベイナイト、オーステナイト、マルテンサイト、パーライトの1種または2種以上を体積率で2%以上含有し、鋼板1/2板厚における板面の{111}、および{100}のX線ランダム強度比がそれぞれ5.0以上、および3.0以下であり、平均r値が1.3以上であることを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。
(2)さらに質量%で、
Ca、Mg、Zr、REM(希土類元素)の1種または2種以上を、合計で0.0005%以上、0.05%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。
(3) (1)または(2)に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板を製造する方法であって、(1)または(2)に記載の化学成分を有する鋼を熱間圧延して、仕上げ温度を850℃以上、970℃以下にて終了し、その後550℃以下の温度域まで、平均で10℃/秒以上、200℃/秒以下で冷却した後、550℃未満の温度範囲で巻取り、酸洗後、40%以上、90%以下の冷間圧延を施し、焼鈍時に400℃以上、680℃以下での加熱速度が0.5℃/秒以上、20℃/秒以下になるように加熱し、720℃以上、850℃以下で焼鈍した後に、平均で0.1℃/秒以上、100℃/秒以下の冷却速度で冷却することを特徴とする特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造。
(4) (1)または(2)に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板を製造する方法であって、(1)または(2)に記載の化学成分を有する鋼を熱間圧延して、仕上げ温度を850℃以上、970℃以下にて終了し、その後550℃以下の温度域まで、平均で10℃/秒以上、200℃/秒以下で冷却した後、550℃未満の温度範囲で巻取り、酸洗後、40%以上90%以下の冷間圧延を施し、焼鈍時に400℃以上、680℃以下での加熱速度が0.5℃/秒以上、20℃/秒以下になるように加熱し、720℃以上、850℃以下で焼鈍した後に、平均で0.1℃/秒以上、100℃/秒以下の冷却速度で350℃以上、480℃以下の温度域に冷却した後に、溶融亜鉛めっき槽に浸漬することを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
(5) (4)に記載の製造方法で、さらに、溶融亜鉛めっき槽浸漬後に500℃以上、580℃以下の範囲で、合金化処理を行うことを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。
本発明の高強度冷延鋼板は、母相であるフェライト相の集合組織を高めることにより、C量の比較的多い高強度冷延鋼板においても、深絞り性を高めることができる。
また、本発明の根元となる、冷間圧延後の昇温時のCr炭化物の析出によるフェライト相の集合組織の集積方法は、C量の比較的多い鋼板において、深絞り性を高めるのに非常に効率的かつ有効な方法であり、この技術により複合組織型の高強度鋼板において深絞り性向上が可能となる。
また、本発明は、鋳造条件により影響を受けるものではない。例えば、鋳造方法(連続鋳造かインゴット鋳造)、スラブ厚の違いによる影響は少なく、薄スラブなど特殊な鋳造−熱延方法を用いてもよい。
本発明の高強度冷延鋼板は、深絞り性を高めるべく複相鋼板において鋭意検討を重ねた結果、C量の比較的多い場合においても、冷間圧延後の焼鈍前にCrを固溶状態にしておくことで、r値向上に有利なフェライト相の集合組織を形成できることを見出したものである。
組織はフェライトを母相とし、第2相としてベイナイト、オーステナイト、マルテンサイト、パーライトのいずれか1種または2種以上を、体積分率2%以上含有することが必要である。第2相が2%未満では、十分な強度上昇が得られないので、この値を下限とする。母相となるフェライト組織は、全組織に対して、体積分率で50%以上であることが必要である。これ以下の体積分率の場合は、集合組織の集積によるr値向上の効果が得られにくい。より好ましくは80%以上である。
これらの組織の体積分率は、鋼板の板幅方向に垂直な断面において、板厚の1/4〜3/4の任意な場所を、光学顕微鏡において200〜500倍で5〜20視野観察し、点算法により求めた値と定義する。光学顕微鏡の代わりに、EBSP(電子後方散乱回折像法)を用いることも、有用である。
本発明によって得られる鋼板の平均r値は1.3以上である。また、圧延方向のr値をrL、圧延方向に対して45°方向のr値をrD、圧延方向に対して垂直な方向のr値をrCとすると、平均r値は、(rL+2×rD+rC)/4で与えられる。
r値の測定は、JIS13号B、または、JIS5号B試験片を用いた引張試験を行い、10%または15%引張後の標点間距離の変化と板幅変化から、r値の定義にしたがって算出すればよい。均一伸びが10%に満たない場合は、3%以上で均一伸び以下の引張変形を与えて評価すればよい。
本発明によって得られる鋼板は、少なくとも板厚中心における板面のX線反射面ランダム強度比が、{111}面、{100}面について、それぞれ5.0以上、3.0以下である。より好ましくは6.0以上、1.5以下である。ランダム強度比とは、ランダムサンプルのX線強度を基準としたときの相対的な強度である。
X線回折用試料の作製は、次のようにして行う。
鋼板を機械研磨や化学研磨などによって板厚方向に所定の位置まで研磨し、バフ研磨によって鏡面に仕上げた後、電解研磨や化学研磨によって歪みを除去すると同時に、1/2板厚部が測定面となるように調整する。
冷延板の場合、板厚内での集合組織変化はそれほど大きくないと考えられるが、板厚表面に近づくほど、ロールによる剪断や多少の脱炭の影響によって組織が変化している可能性があることから、1/2厚位置での測定を行うものとする。
なお、測定面を正確に1/2板厚部とすることは困難であるので、目標とする位置を中心として、板厚に対して3%の範囲内が測定面となるように試料を作製すればよい。
中心偏析がある場合には、偏析の影響が除外できる部分まで位置をずらしても構わない。また、X線回折による測定が困難な場合には、EBSP法やECP(電子チャンネリングパターン)法により、統計的に十分な数の測定を行ってもよい。
次に、本発明の高強度冷延鋼板の化学成分の限定理由を説明する。(以下、成分の割合を示す%は、質量%である。)
Cは、鋼板の強度を増加し、さらにフェライトとマルテンサイトの複合組織の形成を促進する元素であり、本発明では複合組織形成の観点から、0.03%以上、より好ましくは、0.05%以上含有する必要がある。0.25%を超えると,スポット溶接性が低下することから、0.25%を上限とした。
Siは、鋼板の延性を顕著に低下させることなく、鋼板の高強度化ができる有用な強化元素であるが、その含有量が3.0%を超えると、メッキのぬれ性を低下させるばかりか、加工性も低下させるので、3.0%を上限とする。下限を0.001%以上としたのは、0.001%未満にするのが製鋼上困難であるためである。
Mnは、鋼を強化する作用があり、さらにフェライトとマルテンサイトの複合組織から得られる臨界冷却速度を小さくして、フェライトとマルテンサイトの複合組織の形成を促進するのに有効な元素である。0.5%未満の添加では、マルテンサイトが得にくいので、0.5%を下限とする。好ましくは、1.0%以上にする必要がある。また3.0%を超えると、深絞り性および溶接性が劣化する。良好な深絞り性を得るためには、2.4%を上限とする。
Pは、鋼板の強度を上げる元素として、必要な強度レベルに応じて添加する。しかし、添加量が多いと、粒界へ偏析するために、局部延性を劣化させる。また、溶接性を劣化させる。従って、Pの上限値は0.15%とする。一方,0.001%未満では、Pの劣化効果は無視できる他、0.001%未満とするにはコストの上昇を招く。
Sは、MnSを生成することで局部延性、溶接性を劣化させる元素であり、鋼中に存在しない方が好ましい元素である。従って、上限を0.05%とする。一方、0.0005%未満にするには、コストの上昇を招く。
Alは、鋼の脱酸元素として有用であり、鋼の清浄度を上げるのに有効な元素であり、0.01%未満の添加では効果がない。一方1.0%を超えて添加してもより一層の脱酸の効果は得られず、逆に、深絞り性は低下する。
Crは、本発明において最も重要な元素であり、冷延時にr値向上に有効な集合組織を発達させるためには、0.1%以上の添加を必要とする。より好ましくは、0.2%以上である。3.0%超添加しても効果が飽和するばかりか、コスト上昇を招くので、上限とする。
Nは、固溶強化や歪時効硬化で鋼板の強度を増加させる元素であるが、0.01%を超えて含有すると、鋼中に窒化物が増加し、それにより、深絞り性が顕著に劣化する。このため、Nは0.01%以下に限定した。また、不必要にNを低減することは、製鋼工程でのコストが増大するので、通常0.0005%以上に制御することが好ましい。
鋼はさらに、質量%で、Ca、Mg、Zr、REM(希土類元素)の1種または2種以上を、単独または合計で0.0005%以上、0.05%以下、含有することができる。
Ca、Mg、Zr、REMは、硫化物や酸化物の形状を制御して、局部延性や穴拡げ性を向上させる。この目的のためには、これらの元素の1種または2種以上を、単独または合計で0.0005%以上添加する必要がある。しかし、過度の添加は加工性を劣化させるため、その上限を0.05%とした。
鋼は、以上の元素のほか、Sn、Asなどの不可避的に混入する元素を含み、残部鉄からなる。
以下に、本発明に係る高強度冷延鋼板の製造方法について説明する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明の高強度冷延鋼板を製造するに際しては、冷間圧延後の焼鈍時にCr炭化物を析出させ、再結晶したフェライト相の結晶方位の集積を高めることが、非常に重要であることを見出した。
したがって、本発明の効果を実現するために最も重要なことは、冷間圧延後の焼鈍前にCrを固溶状態にしておき、焼鈍の昇温時に、Cr炭化物を析出させることである。
つまり、熱延での巻取温度を制御することで、熱延板中で、Crを固溶状態にしておく。この熱延板を、適切な冷延率で圧下することで、所望の結晶方位を発達させ、焼鈍時にCr炭化物を析出させることで、再結晶したフェライト相の集合組織を、深絞り性に有利な方位に集積させるものである。
熱間圧延前のスラブは、連続鋳造後そのまま、または、一度室温まで冷却後再加熱する。
次いで、仕上げ温度を850℃以上、970℃以下として、スラブを熱間圧延する。
仕上げ温度が、850℃未満では(α+γ)2相域圧延となり、延性の低下をもたらすからであり、970℃を超えると、オーステナイト粒径が粗大になって、フェライト相分率が小さくなって、延性が低下するからである。
その後、550℃以下の温度域まで、平均で10℃/秒以上、200℃/秒以下で冷却した後、550℃未満の温度範囲で巻取る。この冷却速度未満、巻取温度以上ではCr炭化物を生成してしまい、固溶状態のCrを確保することが難しい。より好ましくは、巻取温度を400℃以下とする。平均冷却速度が200℃/秒を超えると、フェライト抑制効果は飽和すること、また、冷却終点温度のばらつきが大きくなり、安定した材質を確保することが難しくなる。したがって、平均冷却速度は、200℃/秒以下とする。
熱延板を酸洗後、40%以上、90%以下の冷間圧延を施す。冷延率が40%未満では、集合組織が発達しにくい。
この観点からは、冷延率は、40%以上であることが望ましい。一方、冷延率が90%超になると、冷延時に耳割れが発生しやすくなるため、90%を上限とする。
焼鈍時の加熱時には、400℃以上、680℃以下の範囲での平均加熱速度が、0.5℃/秒以上、20℃/秒以下となるように制御する。この温度範囲での加熱速度を適切に制御することにより、Cr炭化物を有効に析出させ、再結晶フェライトの集合組織が発達する。
しかし、加熱速度を0.5℃/秒未満にすると生産性が低下してしまうため、0.5℃/秒を下限とする。また、加熱速度が20℃/秒超では、Cr炭化物の析出が再結晶の進行より遅くなり、集合組織の発達が見込めないので、20℃/秒を上限とする。
焼鈍時の最高温度は、720℃以上、850℃以下とする。720℃未満では、焼鈍中に生成されるオーステナイト分率が低く、ベイナイト、マルテンサイト、オーステナイト、パーライトなどの硬質第2相が生成できず、高強度化できないため、720℃を下限とする。
一方、最高温度が850℃超となると、焼鈍中に生成されるオーステナイト分率が高く、逆変態により、再結晶化して集積した集合組織のランダム化が生じるため、850℃を上限とする。この観点からは、820℃を上限とすることが望ましい。さらに望ましくは780℃以下である。
焼鈍工程の均熱処理後の冷却において、硬質第2相を得るためには、冷却速度は速いほうがよい。ただし、0.1℃/秒未満では変態を制御できない。一方で、100℃/秒を越えても、その効果は飽和し、冷却終点温度の温度制御性を著しく劣化させる。このため、焼鈍後の冷却速度は、平均で0.1℃/秒以上、100℃/秒以下とする。残留オーステナイトを安定的に残すために、好ましくは1.0℃/秒以上、100℃/秒以下とする。
本発明は、溶融めっき鋼板においても適用が可能である。溶融めっき鋼板に適用する場合、350℃から480℃での保持後、溶融亜鉛めっき槽に浸漬する。また、本発明は、浸漬後、合金化処理を施すことも可能である。このとき、500℃以上、580℃以下の範囲でめっきの合金化処理を行う。500℃未満では合金化が不十分となり、580℃を超えると過剰に合金化が進行して、耐食性が著しく劣化する。
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
表1に示す組成を有する鋼を溶製して鋼片を製造し、鋼片を加熱して、熱間で粗圧延に続いて、仕上圧延を行った。スラブの再加熱温度はいずれも1200℃で、仕上げ温度は870℃〜920℃の間とした。650℃までの平均冷却速度を30℃/秒として冷却した後、表2に示した温度で巻き取った。
Figure 2012031469
Figure 2012031469
酸洗後、表2中に示した圧延率の冷間圧延を施したのち、表2中に示した条件で焼鈍およびめっきを施した。機械的性質の測定結果を表3に示す。なお、引張試験はJIS5号B試験片で行った。
Figure 2012031469
引張強度は板幅方向に平行な方向(C方向)に切り出した試験片の値を用いた。伸びは、全伸びの値を示す。r値の測定はJIS13号B試験片で行った。X線に供する試料は、機械研磨によって板厚中心まで減圧し、化学研磨によって仕上げることにより作製した。
表2および表3から明らかなとおり、本発明の化学成分を有する鋼を適正な条件で熱間圧延、冷間圧延、焼鈍した場合には、いずれもr値が1.3以上である高強度鋼板を得ることができた。なお、鋼No.b1はCr添加量が少なく、十分な固溶状態のCr量を冷間圧延後に確保することができなかったため、集合組織が発達しなかった。
一方、鋼No.B2は焼鈍温度が高く、α→γ逆変態により集合組織が完全にランダム化してしまった。C2は冷延率が低く、集合組織に集積が弱かったため、r値が向上しなかった。また、E2は加熱速度が速いため、Cr炭化物の析出よりも再結晶の進行の方が早かった。I2は熱延巻取時にCr炭化物が析出してしまったため、それぞれr値は向上しなかった。
本発明の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板は、自動車、家庭電気製品、建物などに使用される。本発明の高強度冷延鋼板は、表面処理をしない狭義の冷延鋼板と、防錆のために溶融Znめっき、合金化溶融Znめっき、電気めっきなどの表面処理を施した広義の冷延鋼板を含む。表面処理には、アルミ系のめっき、各種めっき鋼板の表面への有機皮膜、無機皮膜の形成、塗装、それらを組み合わせた処理も含まれる。
本発明の鋼板は、高い深絞り性を有しているので、従来の鋼板よりも複雑なプレス加工が加工であり、これまで高強度鋼板を適用することが出来なかった部品の板厚を減少させること、即ち軽量化が可能になり、地球環境保全に寄与できる。また、本発明の鋼板を成形、加工して得られた部材は、衝突エネルギー吸収特性にも優れるので、自動車の安全性の向上にも寄与する。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.03%以上、0.25%以下
    Si:0.001%以上、3.0%以下
    Mn:0.5%以上、3.0%以下
    P:0.001%以上、0.15%以下
    S:0.0005%以上、0.05%以下
    Al:0.01%以上、1.0%以下
    Cr:0.1%以上、3.0%以下
    N:0.0005%以上、0.01%以下
    を満たす範囲で含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、母相がフェライト相であり、その他の金属組織がベイナイト、オーステナイト、マルテンサイト、パーライトの1種または2種以上を体積率で2%以上含有し、鋼板1/2板厚における板面の{111}、および{100}のX線ランダム強度比がそれぞれ5.0以上、および3.0以下であり、平均r値が1.3以上であることを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。
  2. さらに質量%で、
    Ca、Mg、Zr、REM(希土類元素)の1種または2種以上を、合計で0.0005%以上、0.05%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板を製造する方法であって、請求項1または2に記載の化学成分を有する鋼を熱間圧延して、仕上げ温度を850℃以上、970℃以下にて終了し、その後、550℃以下の温度域まで、平均で10℃/秒以上、200℃/秒以下で冷却した後、550℃未満の温度範囲で巻取り、酸洗後、40%以上、90%以下の冷間圧延を施し、焼鈍時に400℃以上、680℃以下での加熱速度が0.5℃/秒以上、20℃/秒以下になるように加熱し、720℃以上、850℃以下で焼鈍した後に、平均で0.1℃/秒以上、100℃/秒以下の冷却速度で冷却することを特徴とする特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板を製造する方法であって、請求項1または2に記載の化学成分を有する鋼を熱間圧延して、仕上げ温度を850℃以上、970℃以下にて終了し、その後、550℃以下の温度域まで、平均で10℃/秒以上、200℃/秒以下で冷却した後、550℃未満の温度範囲で巻取り、酸洗後、40%以上、90%以下の冷間圧延を施し、焼鈍時に400℃以上、680℃以下での加熱速度が0.5℃/秒以上、20℃/秒以下になるように加熱し、720℃以上、850℃以下で焼鈍した後に、平均で0.1℃/秒以上、100℃/秒以下の冷却速度で350℃以上、480℃以下の温度域に冷却した後に、溶融亜鉛めっき槽に浸漬することを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
  5. 請求項4に記載の製造方法で、さらに、溶融亜鉛めっき槽浸漬後に500℃以上、580℃以下の範囲で、合金化処理を行うことを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
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