JP2007076584A - 車両の操舵制御装置 - Google Patents

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達夫 杉谷
Ryuichi Kurosawa
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Abstract

【課題】 車両の旋回状態における車体の横滑り角を走行環境に関わらず正確に計算する車両の操舵制御装置を提供すること。
【解決手段】 電子制御ユニット44は、ステップS14にて、旋回状態にある車両における目標横加速度Gdを決定する。次に、ステップS15にて、旋回に伴って車両に発生したロール角φを計算するとともに、決定した目標横加速度Gdとロール角φを用いて、コーナリングパワーKf、Krを計算する。次に、ステップS16にて、転舵角センサ33により検出した転舵角δと、計算したコーナリングパワーKf,Krとを用いてヨー角加速度dγ/dtを計算して積分し、車体の横滑り角βを計算する。次に、ステップS16にて、計算した横滑り角βとコーナリングパワーKf,Krとを用いて目標転舵角δaを計算する。これにより、横滑り角βを正確に計算でき、挙動安定性を高める目標転舵角δaが計算できる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、運転者による操舵ハンドルの回動操作に応じて、車両の転舵輪を転舵する電気アクチュエータの作動を制御する車両の操舵制御装置に関する。
近年、車両の旋回状態における運動性能の向上と挙動安定性の向上を両立させる車両の転舵制御装置の開発は、盛んに行われている。そして、例えば、下記特許文献1に示されるような4輪操舵車両の操舵制御方法を採用した車両の操舵装置においては、前輪および後輪の横滑り角を検出し、前輪および後輪の舵力または横力がそれぞれ横滑り角に比例するものとし、前輪舵角を、前輪操舵角に前輪横滑り角に比例する補正舵角を加算した値で制御し、後輪舵角を、後輪横滑り角に比例して制御するようになっている。これにより、前輪の横滑り角および後輪の横滑り角に対する比例係数すなわち前輪転舵係数および後輪転舵係数をそれぞれ別個に可変制御することができるため、操舵に対するヨーイングモーメント発生の位相遅れを防ぐことができるとともに、前後輪のコーナリングパワーのバランスを変えて、ステア特性を自由に制御できるようになっている。
特開平2−95982号公報
このように、従来の操舵制御方法においては、前後輪の横滑り角を検出することによって、前輪および後輪の舵角を制御することができる。ところで、前後輪の横滑り角(または、前後輪が一体的に組み付けられた車体の横滑り角)を検出する場合には、路面と車両の相対変位を検出する必要があり、一般的に、車体に設けた光または音響を利用した検出器を用いて相対変位を検出する。
しかしながら、このような検出器を用いた場合には、車両の走行環境、例えば、気象状況や路面状況などによって、路面と車両との間の相対変位を検出する精度が低下する可能性がある。したがって、横滑り角の検出精度が低下した場合には、前輪および後輪の舵角を適正に制御できない可能性がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車両の旋回状態における車体の横滑り角を走行環境に関わらず正確に計算する車両の操舵制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、運転者による操舵ハンドルの回動操作に応じて、車両の転舵輪を転舵する電気アクチュエータの作動を制御する車両の操舵制御装置において、車両の車速を検出する車速検出手段と、転舵輪の転舵角を検出する転舵角検出手段と、旋回状態にある車両に発生する横加速度の大きさを決定する横加速度決定手段と、前記検出した車速および前記検出した転舵角と、旋回状態にある車両の前後輪のコーナリングパワーとを用いて車両に発生するヨー角加速度を計算するとともに、同ヨー角加速度を積分してヨーレートを計算するヨーレート計算手段と、前記決定した横加速度を前記検出した車速で除算した値から前記計算したヨーレートを減算することによって車体の横滑り角速度を計算するとともに、同車体の横滑り角速度を積分して車体の横滑り角を計算する横滑り角計算手段とを備えたことにある。
これによれば、車両の走行環境に関わらず正確に検出可能な車速、転舵角および正確に決定可能な横加速度を用いて、最終的に車体の横滑り角を正確に計算することができる。これにより、車体の横滑り角を、常に、正確に計算することができる。また、一般的に車両に搭載される車速検出手段としての車速センサと、転舵角検出手段としての転舵角センサとを用いることによって、車体の横滑り角を正確に計算することができるため、横滑り角を検出する他の検出器を設ける必要がない。したがって、操舵制御装置の構成を簡略化することができるとともに、製造コストを低減することもできる。
また、この場合、前記横加速度決定手段によって決定した横加速度を用いて、車両に発生したローリングの大きさを表すロール角を計算するロール角計算手段と、前記ロール角計算手段によって計算したロール角を用いて、旋回状態における荷重移動を考慮したコーナリングパワーを計算するコーナリングパワー計算手段とを備え、前記ヨーレート計算手段は、前記コーナリングパワー計算手段により計算されたコーナリングパワーを用いてヨーレートを計算するとよい。
これによれば、例えば、車両の走行状態(より詳しくは、車両の旋回状態)に応じて変化するコーナリングパワーを考慮して、車体の横滑り角を計算することができる。これにより、車両の走行状態を良好に反映した極めて正確な車体の横滑り角を計算することができる。
また、本発明の他の特徴は、操舵制御装置が、前記横滑り角計算手段により計算した横滑り角を用いて、前記転舵輪の目標転舵角を計算する目標転舵角計算手段を備えたことにもある。また、前記電気アクチュエータは、例えば、運転者による操舵ハンドルの回動操作量と前記転舵輪の転舵角との間の比を適宜変更するものであるとよい。また、前記電気アクチュエータは、運転者による操舵ハンドルの回動操作量に応じて、アシストトルクを付与するものであるとよい。
これらによれば、旋回状態にある車両の車体に生じた横滑り角を用いて、転舵輪の目標転舵角を計算することができる。これにより、例えば、路面反力が小さい雪路や氷路などを走行する場合であっても、旋回状態にある車両の挙動を安定させるための目標転舵角を計算することができる。
この場合、例えば、可変ギア比ユニットを採用した操舵装置やステアリングバイワイヤ方式の操舵装置のように、電気アクチュエータが運転者による操舵ハンドルの回動操作量と前記転舵輪の転舵角との間の比を適宜変更するものであれば、計算した目標転舵角に転舵輪を転舵することができる。また、例えば、電動パワーステアリング装置のように、前記電気アクチュエータが運転者による操舵ハンドルの回動操作量に応じて、アシストトルクを付与するものであれば、計算した目標転舵角方向に操舵ハンドルの回動方向を案内することもできる。
このように、車両の旋回時における挙動を安定させるための目標転舵角を計算し、この目標転舵角に転舵輪を転舵させることができるため、旋回状態において車両の挙動安定性を大幅に向上させることができる。したがって、運転者は、極めて容易に、車両を旋回走行させることができる。
a.第1実施形態
以下、本発明の実施形態に係る車両の操舵制御装置について、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る車両の操舵制御装置が適用された操舵装置を概略的に示している。
この操舵装置は、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2(以下の説明においては、単に前輪ともいう)を転舵するために、運転者によって回動操作される操舵ハンドル11を備えている。操舵ハンドル11は、操舵入力軸12の上端に固定されており、操舵入力軸12の下端は、電気アクチュエータとしての可変ギア比アクチュエータ20に接続されている。可変ギア比アクチュエータ20は、電動モータ21および減速機22を備えており、操舵入力軸12の回転量(すなわち操舵角θ)に対して、減速機22に接続された転舵出力軸13の回転量(すなわち転舵角δ)を適宜相対的に変更するものである。
電動モータ21は、そのモータハウジングが操舵入力軸12と一体的に接続されており、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に従って一体的に回転するようになっている。また、電動モータ21の駆動シャフト21aは減速機22に接続されており、同電動モータ21の回転力が駆動シャフト21aを介して減速機22に伝達されるようになっている。減速機22は、所定のギア機構(例えば、遊星ギア機構など)によって構成されており、転舵出力軸13はこのギア機構に接続されている。これにより、減速機22は、電動モータ21の回転力が駆動シャフト21aを介して伝達されると、所定のギア機構によって駆動シャフト21aの回転を適宜減速して転舵出力軸13に回転を伝達することができる。
これにより、可変ギア比アクチュエータ20は、電動モータ21の駆動シャフト21aおよび減速機22を介して、操舵入力軸12と転舵出力軸13とを相対回転可能に連結しており、操舵入力軸12の操舵角θに対する転舵出力軸13の転舵角δの比、すなわち、操舵入力軸12から転舵出力軸13への回転量の伝達比Dを適宜変更することができる。したがって、転舵出力軸13の転舵角δは操舵入力軸12の操舵角θを用いて下記式1に従って表すことができる。
δ=D・θ …式1
また、この第1実施形態における操舵装置は、転舵出力軸13の下端に接続された転舵ギアユニット30を備えている。転舵ギアユニット30は、例えば、ラックアンドピニオン方式を採用したギアユニットであり、転舵出力軸13の下端に一体的に組み付けられたピニオンギア31の回転がラックバー32に伝達されるようになっている。これにより、ラックバー32は、ピニオンギア31からの回転力によって軸線方向に変位する。したがって、ラックバー32の両端に接続された左右前輪FW1,FW2は、転舵角δに転舵されるようになっている。
次に、上述した可変ギア比アクチュエータ20の作動(より詳しくは、電動モータ21の駆動)を制御する転舵制御装置としての電気制御装置について説明する。電気制御装置は、車速センサ41、操舵角センサ42および転舵角センサ43を備えている。車速センサ41は、車両の車速Vを検出して出力する。操舵角センサ42は、操舵ハンドル11の中立位置からの回転操作量すなわち操舵入力軸12の回転量を検出して操舵角θとして出力する。転舵角センサ43は、転舵出力軸13の中立位置からの回転量を検出して転舵角δ(左右前輪FW1,FW2の転舵角に対応)として出力する。なお、操舵角θおよび転舵角δは、中立位置を「0」とし、左方向の回転量を正の値で表すとともに、右方向の回転量を負の値でそれぞれ表す。
これらのセンサ41〜43は、電子制御ユニット44に接続されている。電子制御ユニット44は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするもので、プログラムの実行により可変ギア比アクチュエータ20の電動モータ21の作動を制御する。そして、電子制御ユニット44の出力側には、電動モータ21を駆動するための駆動回路45が接続されている。駆動回路45内には、電動モータ21に流れる駆動電流を検出するための電流検出器45aが設けられている。電流検出器45aによって検出された駆動電流は、電動モータ21の駆動を制御するために、電子制御ユニット44にフィードバックされる。
次に、上記のように構成した第1実施形態の動作について詳細に説明する。運転者によって図示しないイグニッションスイッチがオン状態とされると、電子制御ユニット44(より詳しくは、CPU)は、図2に示す目標転舵角計算プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。
すなわち、電子制御ユニット44は、目標転舵角計算プログラムの実行をステップS10にて開始し、ステップS11にて、車速センサ41、操舵角センサ42および転舵角センサ43によって検出された各検出値、具体的には、車速V、操舵角θおよび転舵角δを入力する。そして、電子制御ユニット44は、各センサから各検出値を入力すると、ステップS12に進む。
ステップS12においては、電子制御ユニット44は、前記ステップS11にて操舵角センサ42から入力した操舵角θの絶対値が予め設定された正の小さな操舵角θo以上であるか否かを判定する。ここで、操舵角θoは、車両の直進状態を維持できる操舵ハンドル11の回動操作範囲を決定するための所定値である。したがって、このステップS13における判定処理は、運転者によって入力された操舵ハンドル11(操舵入力軸12)の操舵角θに基づいて車両が旋回状態であるか否かを判定するものである。すなわち、入力した操舵角θの絶対値が正の操舵角θo以上であれば、運転者によって操舵ハンドル11が積極的に回動操作されていて、車両は旋回状態にある。このため、電子制御ユニット44は、「Yes」と判定して、ステップS13以降の各処理を実行する。
一方、入力した操舵角θの絶対値が正の操舵角θo未満であれば、運転者によって操舵ハンドル11が中立位置近傍で回動操作されている。このように、操舵ハンドル11が中立位置近傍で回動操作されているときには、左右前輪FW1,FW2は転舵されず、車両は直進状態にある。したがって、電子制御ユニット44は、「No」と判定してステップS21に進み、目標転舵角計算プログラムの実行を一旦終了する。そして、所定の短時間が経過すると、電子制御ユニット44は、ふたたび、目標転舵角計算プログラムの実行をステップS10にて開始する。
前記ステップS12の判定処理によって「Yes」と判定すると、電子制御ユニット44は、ステップS13にて、前記ステップS11にて車速センサ41から入力した車速Vが予め設定された所定の小さな車速Vo以上であるか否かを判定する。すなわち、このステップS13における判定処理は、現在の検出車速Vに基づいて、後述するように、転舵角δを車体に発生した横滑り角βに応じて補正すなわち目標転舵角δaを計算する必要があるか否かを判定する。ここで、車速Voは、車両の旋回状態にて車体に大きな横滑り角βが生じない車速範囲を決定する所定値である。
具体的に、電子制御ユニット44は、車速Vが所定の車速Vo以上であれば、車体の横滑り角βの影響を加味して目標転舵角δaを計算する必要があるため、「Yes」と判定してステップS14に進む。一方、電子制御ユニット44は、検出車速Vが所定の車速Vo未満であれば、目標転舵角δaを計算する必要がないため、「No」と判定してステップS21に進み、目標転舵角計算プログラムの実行を一旦終了する。そして、所定の短時間が経過すると、電子制御ユニット44は、ふたたび、目標転舵角計算プログラムの実行をステップS10にて開始する。
ステップS14においては、電子制御ユニット44は、運転者が操舵ハンドル11を回動操作して操舵角θを入力することによって見込んでいる横加速度(以下、目標横加速度Gdという)を決定する。以下、この目標横加速度Gdの決定について具体的に説明する。旋回状態にある車両に発生する横加速度を横加速度Gとすると、横加速度Gは、下記式2に示すように表すことができる。
G=V2・(1/R) …式2
ただし、前記式2中のRは左右前輪FW1,FW2の転舵角δに基づいて決定される車両の旋回半径を表しており、1/Rは旋回円の曲率(所謂、旋回曲率)を表すものである。
ここで、転舵角δと旋回曲率1/Rとの間には、下記式3に示す関係が成立する。
δ=L・(1+A・V2)・(1/R) …式3
ここで、前記式3中のLは車両のホイールベースを表す予め定められた所定値であり、Aは車両の挙動安定性を表す予め定められた所定値である。そして、前記式3を変形することにより、旋回曲率1/Rは、下記式4により表すことができる。
1/R=δ/(L・(1+A・V2)) …式4
したがって、横加速度Gは、前記式2に対して前記式4を代入することによって、下記式5により表すことができる。
G=(V2/(L・(1+A・V2)))・δ …式5
そして、前記式5において、前記式1を考慮すれば、目標横加速度Gdと操舵角θとの関係は、下記式6によって表される。
Gd=(V2・D/(L・(1+A・V2)))・θ …式6
この式6に基づき、電子制御ユニット44は、前記ステップS11にて入力した車速Vおよび操舵角θを用いて、目標横加速度Gdを計算して決定する。なお、前記式6の演算に代えて、操舵角θに対する目標横加速度Gdを記憶した図3に示すような変換テーブルを用いて、目標横加速度Gdを計算するようにしてもよい。そして、電子制御ユニット44は、目標横加速度Gdを決定すると、ステップS15に進む。
ステップS15においては、電子制御ユニット44は、前記ステップS14にて決定した目標横加速度Gdで旋回する車両における前後輪のコーナリングパワーKf,Krを下記式7,8に従って計算する。
Kf=Kfo+ξ・((Nf・φ+mf・hf・Gd)/Tr)2 …式7
Kr=Kro+ξ・((Nr・φ+mr・hr・Gd)/Tr)2 …式8
ただし、前記式7中のKfoと前記式8中のKroは、それぞれ、車両静止時における前後輪荷重(以下、静止時荷重という)に対する前輪と後輪のコーナリングパワーを表す。また、前記式7,8中のNf、Nrは、それぞれ、前輪側と後輪側のロール剛性値を表し、mf,mrは、それぞれ、前輪側と後輪側の車体質量を表し、hf,hrは、それぞれ、前輪側と後輪側における路面とロールセンタとの距離(高さ)を表す。さらに、前記式7,8中におけるξは、コーナリングパワーの荷重依存係数を表し、φは、車体のロール角を表し、Trは、前後輪のトレッド幅を表す。
次に、前記式7,8に従って計算されるコーナリングパワーKf,Krについて説明する。左右前輪FW1,FW2は、運転者が操舵ハンドル11を回動操作して操舵角θを入力すると、転舵ギアユニット30のラックバー32が軸線方向に変位し、前記式1に従って計算される転舵角δに転舵される。これにより、車両は、直進状態から旋回状態に移行し、または、旋回状態を維持する。
ここで、車両が、運転者によって入力された操舵角θすなわち左右前輪FW1,FW2の転舵角δに基づいて決定される旋回円上を、目標横加速度Gdを有して走行する場合を考える。このように、旋回円上を走行している車両においては、旋回に伴って発生する遠心力と旋回の中心方向に発生する求心力とが作用している。そして、車両に作用する求心力は、車両の前後輪(より詳しくは、前後輪に装着されたタイヤ)と路面との間にて旋回中心方向に作用する横力すなわちコーナリングフォースによって与えられる。
具体的に説明すると、旋回円上を走行している車両(以下、この車両の走行方向を進行方向という)においては、タイヤが進行方向に対して横滑りしており、この横滑りによって、車両は求心力としてのコーナリングフォースを得て旋回円上を走行することができる。このとき、旋回状態にある車体においては、進行方向と車体の前後方向との角度差で表される車体の横滑り角βを有するようになる。
このように、車体の横滑り角βを有する車両が、求心力としてのコーナリングフォース、より詳しくは、単位横滑り角βあたりのコーナリングフォースで表されるコーナリングパワーKf,Krを得て旋回円上を走行するときには、下記式9で表される車両の運動方程式が成立する。
M・Gd=2・Kf・δ+2・(Kf+Kr)・β+ε …式9
ただし、前記式9中のMは車両の質量であり、Gdは前記ステップ14にて決定される横加速度(より具体的には、求心加速度)である。
また、前記式9中の車体の横滑り角βは、転舵角δが正すなわち車両が左方向に旋回するときに車両の前後方向に対して右方向に生じ、転舵角δが負すなわち車両が右方向に旋回するときに車両の前後方向に対して左方向に生じる。このため、車体の横滑り角βを、右方向に生じる場合を正の値で表し、左方向に生じる場合を負の値で表す。また、前記式9中のεは、例えば、車両の旋回時に発生するヨーレートなどに関連して発生する極めて小さな力であるため、無視することができる。したがって、旋回状態にある車両の運動方程式は、前記式9に代えて、下記式10に示すように表すことができる。
M・Gd=2・Kf・δ+2・(Kf+Kr)・β …式10
ところで、一般的に、前後輪側(所謂、ばね下)と車体側(所謂、ばね上)とは、サスペンション装置によって、上下方向に相対変位可能に結合されている。このため、特に、旋回状態において、車両の横方向運動に伴う慣性力が車体の重心点に作用すると、車体は慣性力が作用する方向に傾く、言い換えれば、車体にローリングが発生する。このように、車体にローリングが発生している状況においては、前後輪とも、左右輪の一方は荷重が増し、他方は荷重が減少する。したがって、車両が旋回状態にあるときのコーナリングパワーKf,Krを計算する場合には、発生したローリングによる荷重移動を考慮する必要がある。
ここで、目標横加速度Gdで旋回している車両に発生するロール角を考えると、ロール角φは、下記式11により計算することができる。
φ=(m・Gd・hs)/(Nf+Nr−m・g・hs) …式11
ただし、前記式11中のmは、ばね上質量を表し、hsは、車両の重心点とロールセンタとの間の距離を表す。
そして、前後輪の左右荷重移動量は、ロール角φに依存した荷重移動と、ロールセンタに加わる横力による荷重移動との和として計算することができる。このため、静止時の前後輪の荷重をFo,Roとすれば、荷重移動後の前後輪荷重Ff,Frは、それぞれ、下記式12,13のように示すことができる。
Ff=Fo±(Nf・φ+mf・hf・Gd)/Tr …式12
Fr=Ro±(Nr・φ+mr・hr・Gd)/Tr …式13
一方、荷重Ff,Frが前後輪に作用する場合におけるコーナリングパワーKf,Krは、下記式14,15により表すことができる。
Kf=Ff・(nCp+ξ・(Ff−Fzo)) …式14
Kr=Fr・(nCp+ξ・(Fr−Fzo)) …式15
ただし、前記式14,15中のnCpは、コーナリングパワーKf,Krをある瞬間の荷重で除算することにより得られるコーナリングパワー係数であって、基準荷重時の正規化コーナリングパワー係数を表す。また、前記式14,15中のFzoは、所定の基準荷重を表す。
これにより、前記式14,15に対して、前記式12,13をそれぞれ代入するとともに、静止時荷重における前後輪のコーナリングパワーをKfo,Kroとして整理すれば、前記7,8式を導出することができる。このように、前記式7,8式に従って計算されるコーナリングパワーKf,Krは、車体に発生したロール角φを考慮しているため、車両の旋回状態を反映した適切な値として計算することができる。
前記ステップS15にて前後輪のコーナリングパワーKf,Krを計算すると、電子制御ユニット44は、ステップS16にて車体の横滑り角βを計算する。以下、車体の横滑り角βの計算について詳細に説明する。旋回状態にある車両においては、車両の重心点を通る鉛直軸線回りにヨーイング運動している。このヨーイング運動は、各輪のコーナリングフォースをYf1,Yf2,Yr1,Yr2とし、重心点におけるヨーレートをγとすると、下記式16で示すことができる。
I・(dγ/dt)=Lf・(Yf1+Yf2)−Lr・(Yr1+Yr2) …式16
ただし、前記式16中のIは、車両のヨーイング慣性モーメントを表し、Lf,Lrは、車両の重心点と前後車軸間の距離を表す定数であり、L=Lf+Lrの関係を満たす。また、dγ/dtはヨー角加速度を表す。
ここで、以下の説明を簡単にするために、前後輪とも左右のタイヤの横滑り角はそれぞれ等しいものとして前後輪の横滑り角をそれぞれβf,βrとすると、横滑り角βf,βrは幾何学的に求めることができ、車体の横滑り角βを用いて下記式17,18で示すことができる。
βf=β+Lf・γ/V−δ …式17
βr=β−Lr・γ/V …式18
なお、前記式17,18中のVは、車速センサ41によって検出された車速Vであり、δは、転舵角センサ43によって検出された転舵角δである。
この場合、前後輪の左右のタイヤ自体の特性に差がなければ、左右のタイヤに作用するコーナリングフォースにも差がないため、前後輪のコーナリングフォースをYf,Yrとすれば、下記式19,20が成立する。
2・Yf=Yf1+Yf2 …式19
2・Yr=Yr1+Yr2 …式20
したがって、前記式16は、前記式19,20を用いることにより、下記式21のように変形することができる。
I・(dγ/dt)=2・Lf・Yf−2・Lr・Yr …式21
そして、コーナリングフォースYf,Yrは、コーナリングパワーKf,Krと前記式17,18により表される横滑り角βf,βrとを用いて下記式22,23に従って計算できる。
Yf=−Kf・βf=−Kf・(β+Lf・γ/V−δ) …式22
Yr=−Kr・βr=−Kr・(β−Lr・γ/V) …式23
したがって、前記式21は、前記式22,23を用いることによって、下記式24に示すように変形できる。
I・(dγ/dt)=−2・Kf・Lf・(β+Lf・γ/V−δ)+2・Kr・Lr・(β−Lr・γ/V) …式24
この式24をさらに変形すれば、ヨーレートγのヨー角加速度dγ/dtは下記式25によって表される。
dγ/dt=(−2・(Kf・Lf−Kr・Lr)・β−2/V・(Kf・Lf2+Kr・Lr2)・γ+2・Kf・Lf・δ)/I …式25
これにより、電子制御ユニット44は、前記ステップS11にて転舵角センサ43から入力した転舵角δと、前記ステップS15にて計算したコーナリングパワーKf,Krとを用い、前記式25に従って、ヨーレートγのヨー角加速度dγ/dtを計算する。
また、目標横加速度Gd、車速V、ヨーレートγおよび車体の横滑り角βの時間微分値dβ/dt(すなわち、横滑り角速度)の間には、下記式26に示す関係が成立する
Gd=V・(γ+dβ/dt) 式26
したがって、この式26を変形することによって、下記式27に示すように、横滑り角βの横滑り角速度dβ/dtが計算できる。
dβ/dt=Gd/V−γ 式27
これにより、電子制御ユニット44は、まず、前記式25に従って計算したヨーレートγのヨー角加速度dγ/dtを積分してヨーレートγを算出する。そして、電子制御ユニット44は、この算出したヨーレートγを用いて、前記式27に従い横滑り角βの横滑り角速度dβ/dtを計算する。なお、積分によって計算されたヨーレートγは、前記式25に入力されて、次回、ヨーレートγのヨー角加速度dγ/dtを計算する際に用いられる。
そして、電子制御ユニット44は、前記計算した横滑り角βの横滑り角速度dβ/dtを積分することにより、横滑り角βを計算する。なお、積分によって計算された横滑り角βも、前記式25に入力されて、次回、ヨーレートγのヨー角加速度dγ/dtを計算する際に用いられる。
このように、ステップS16にて横滑り角βを計算すると、電子制御ユニット44は、ステップS17にて、目標転舵角δaを計算する。以下、この目標転舵角δaの計算について説明する。
前記式10によれば、車両に発生する求心力M・Gdは、左右前輪FW1,FW2の転舵角δに比例する横力(以下、この横力を転舵横力という)と、車体の横滑り角βに比例する横力(以下、この横力をすべり横力という)とが合算されて計算される。ところで、すべり横力は、前記式10からも明らかなように、車体に横滑り角βが発生する状況において必然的に発生する横力であって、運転者が操舵ハンドル11を介して直接制御することが難しい横力である。このように必然的にすべり横力が発生することによって、運転者が操舵ハンドル11の回動操作により見込んだ求心力よりも大きな求心力が車両に作用することになる。
これにより、車両は、運転者が操舵ハンドル11の回動操作によって見込んだ旋回半径で旋回できず、運転者は、見込んだ旋回半径で車両が旋回するように、操舵ハンドル11を適宜回動操作(以下、この回動操作を修正操舵という)して、転舵角δを修正する必要がある。すなわち、運転者は、車両の旋回に伴って必然的に発生するであろうすべり横力分だけ求心力M・Gdが小さくなるように、操舵ハンドル11を修正操舵する必要がある。このように、必然的に発生する車体の横滑り角βは、左右前輪FW1,FW2が転舵角δに転舵された車両の旋回状態に対して影響を与える。
したがって、電子制御ユニット44は、目標転舵角δaを、前記式10を変形した下記式28に従って計算する。
δa=(M/2・Kf)・Gd−(1+Kr/Kf)・β …式28
この式28によれば、目標転舵角δaは、目標横加速度Gdに比例する項すなわち運転者によって入力された操舵角θに起因する項から車体の横滑り角βに比例する項すなわち補正項を減ずることによって決定される。このため、上述したように、運転者の入力した操舵角θに対して車両が見込んだ旋回半径で走行しない場合においては、運転者は、前記式28に従って決定される目標転舵角δaとなるように修正操舵を行うことになる。
言い換えれば、運転者によって入力された操舵角θと所定の関係に基づいて回動する転舵出力軸13の転舵角δから車体の横滑り角βに比例する補正項を減じて目標転舵角δaを決定すれば、車両の旋回状態に対するすべり横力すなわち車体の横滑り角βの影響を排除することができ、操舵角θ言い換えれば目標横加速度Gdのみに基づいて車両を旋回させることができる。これにより、運転者による修正操舵がなくても、操舵ハンドル11の回動操作に一致して、車両は、運転者の見込む旋回半径で旋回することができる。
前記ステップS17にて目標転舵角δaを計算すると、電子制御ユニット44は、ステップS18およびステップS19を繰り返し実行して、転舵出力軸13(すなわち左右前輪FW1,FW2)が目標転舵角δaとなるまで、オーバーシュートさせることなく電動モータ21を駆動制御する。具体的に説明すると、電子制御ユニット44は、ステップS18にて、駆動回路45の電流検出器45aから可変ギア比アクチュエータ20の電動モータ21に流れる駆動電流を入力し、駆動電流が適切に電動モータ21に流れるようにフィードバック制御する。これにより、電動モータ21は、転舵出力軸13を回転させる。そして、電子制御ユニット44は、ステップS19にて、転舵角センサ43から入力した転舵出力軸13の転舵角δが目標転舵角δaに一致するまで「No」と判定し続け、転舵角δが補正目標転舵角δaと一致すると、「Yes」と判定してステップS20に進む。
ステップS20においては、電子制御ユニット44は、電動モータ21の駆動を停止させ、ステップS21にて、プログラムの実行を一旦終了する。そして、所定の短時間が経過すると、ふたたび、目標転舵角計算プログラムの実行を開始する。
以上の説明からも理解できるように、この実施形態によれば、車速センサ41、転舵角センサ43およびステップS14の決定処理により、車両の走行環境(例えば、気象状況や路面状況など)に関わらず、検出された車速V、転舵角δおよび決定された目標横加速度Gdを用いて、前記式25に従って車両のヨー角加速度dθ/dtを計算することができる。また、計算したヨー角加速度dθ/dtを積分することによりヨーレートγを計算し、このヨーレートγを用いた前記式27に従って横滑り角速度dβ/dtを計算することができる。そして、横滑り角速度dβ/dtを積分することによって、車体の横滑り角βを正確に計算することができる。このとき、計算された車体の横滑り角βは、前記式25による車両のヨー角加速度dθ/dtの計算に用いることができる。
また、車両のヨーレートγおよび車体の横滑り角βを計算するときには、車両の旋回状態に応じて変化する前後輪のコーナリングパワーKf,Krを前記式7,8に従って計算し、ヨー角加速度dθ/dt(すなわちヨーレートγ)および車体の横滑り角βを計算することができる。このため、極めて正確にヨーレートγおよび車体の横滑り角βを計算することができる。これにより、車体の横滑り角βを、常に、正確に計算することができる。また、このように車体の横滑り角βを計算することができるため、車体の横滑り角を検出する他の検出器を設ける必要がない。したがって、操舵制御装置の構成を簡略化することができるとともに、製造コストを低減することもできる。
また、旋回状態にある車両の車体に生じた横滑り角βを用いた前記式28に従って、左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δaを計算することができる。これにより、例えば、路面反力が小さい雪路や氷路などを走行する場合であっても、旋回状態にある車両の挙動を安定させるための目標転舵角δaを計算することができる。そして、電子制御ユニット44が転舵アクチュエータ21を駆動制御することにより、左右前輪FW1,FW2を目標転舵角δaに転舵することができる。これにより、車両を目標転舵角δaで旋回させることができるため、旋回状態における車両の挙動安定性を大幅に向上させることができる。したがって、運転者は、極めて容易に、車両を旋回走行させることができる。
ここで、上記第1実施形態においては、ステップS14にて、車速センサ41によって検出された車速Vと、操舵角センサ42によって検出された操舵角θとに基づいて、目標横加速度Gdを決定するように実施した。しかしながら、電子制御ユニット44に対して、図1に破線で示すように、横加速度センサ46が接続されている場合には、同センサ46によって検出された横加速度Gを目標横加速度Gdとして決定して実施することも可能である。これによれば、横加速度センサ46は、時々刻々と変化する横加速度Gを検出して出力することができるため、電子制御ユニット44は、車両の旋回状態に応じた最適な目標転舵角δaを計算することができる。
b.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態を説明する。上記第1実施形態においては、可変ギア比アクチュエータ20を介して操舵入力軸12と転舵出力軸13が連結されて操舵入力軸12と転舵出力軸13とが相対回転可能な操舵装置に、目標転舵角計算プログラムを適用して実施した。これに対して、第2実施形態においては、ステアリングバイワイヤ方式の操舵装置に上述した目標転舵角計算プログラムを適用して実施する。以下、この第2実施形態について説明するが、上記第1実施形態と同一部分に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
この第2実施形態における車両の操舵装置は、図4に示すように、操舵入力軸12と転舵出力軸13との機械的な連結が解除されたステアリングバイワイヤ方式を採用している。このため、上端に操舵ハンドル11が固定された操舵入力軸12の下端には、電動モータおよび減速機構からなる反力アクチュエータ50が接続されている。この反力アクチュエータ50は、運転者の操舵ハンドル11の回動操作に対して反力を付与するものである。
一方、転舵出力軸13の上端には、電気アクチュエータとしての転舵アクチュエータ60を備えている。この転舵アクチュエータ60は、電動モータ61および減速機構62を備えており、転舵出力軸13を回転駆動させるものである。そして、転舵出力軸13の回転は、上記第1実施形態と同様に、転舵ギアユニット30に伝達される。これにより、ラックバー32がピニオンギア31からの回転力によって軸線方向に変位することによって、左右前輪FW1,FW2は左右に転舵される。
また、この第2実施形態における電子制御ユニット44は、その出力側に、転舵アクチュエータ60の電動モータ61を駆動するための駆動回路47が接続されている。この駆動回路47内には、電動モータ61に流れる駆動電流を検出するための電流検出器47aが設けられており、同検出器47aによって検出された駆動電流は、電子制御ユニット44にフィードバックされる。
そして、このように構成された第2実施形態の操舵装置においても、電子制御ユニット44は、上記第1実施形態と同様に、図2に示した目標転舵角計算プログラムを実行することにより、車体に発生した横滑り角βの影響を低減した目標転舵角δaを計算する。すなわち、電子制御ユニット44は、ステップS14にて目標横加速度Gdを決定し、ステップS15にて、車両に発生したローリングを考慮して前後輪のコーナリングパワーKf,Krを計算する。そして、電子制御ユニット44は、ステップS16にて、計算したコーナリングパワーKf,Krを用いて車体の横滑り角βを計算し、ステップS17にて、計算した横滑り角βを用いて目標転舵角δaを計算する。そして、電子制御ユニット44は、この計算した目標転舵角δaに左右前輪FW1,FW2を転舵制御する。
したがって、この第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、車体の横滑り角βを正確に計算することができて、車体の横滑り角βの影響を低減した目標転舵角δaを計算することができる。これにより、運転者は、車両を容易に旋回走行させることができる。
ここで、この第2実施形態における操舵装置は、機械的な連結を外したステアリングバイワイヤ方式を採用している。このため、運転者は、操舵ハンドル11の回動操作によって決定した目標横加速度Gdを発生させるために転舵制御される左右前輪FW1,FW2の転舵状態を、直接的に知覚できない。このため、運転者は、車両の挙動変化に対して違和感を覚える可能性がある。
この場合には、運転者による操舵ハンドル11の回動操作量すなわち操舵角θに対して、運転者が見込む目標横加速度Gdを人間の知覚特性に合わせて変化させることにより、車両の挙動変化に対する違和感を抑制することができる。以下、このことを簡単に説明しておく。
運転者による操舵ハンドル11の回動操作に対して、人間の知覚特性に併せて目標横加速度Gdを決定することに関し、例えば、ウェーバー・ヘフナー(Weber-Fechner)の法則を適用することができる。このウェーバー・ヘフナーの法則によれば、人間の感覚量は与えられた刺激の物理量の対数に比例すると言われている。言い換えれば、人間の操作量に対して人間に与えられる刺激の物理量を指数関数的に変化させれば、操作量と物理量との関係を人間の知覚特性に合わせることができる。したがって、このウェーバー・ヘフナーの法則に従い、操舵角θ(操作量)に対して指数関数的に変化するように目標横加速度Gd(物理量)を決定すれば、運転者の知覚特性に合わせて目標転舵角δaを計算することができて左右前輪FW1,FW2を転舵制御することができる。
具体的に説明すると、電子制御ユニット44は、図2に示した目標転舵角計算プログラムのステップS14において、ステップS11にて入力した操舵角θを用いた下記式29によって目標横加速度Gdを計算して決定する。
Gd=Go・exp(J1・J2・θ) …式29
ただし、前記式29中のGoは、運転者が知覚し得る最小の感知横加速度である。また、前記式29中のJ1,J2はウェーバー比に基づいて決定される所定の定数である。ここで、ウェーバー比とは、ウェーバー・ヘフナーの法則に基づき、人間の知覚できる最小の物理量変化ΔSとその時点での物理量Sとの比ΔS/Sをいう。なお、ウェーバー比は、物理量Sの値によらず一定となる。
このように、前記式29によれば、運転者による操舵ハンドル11(操舵入力軸12)の操舵角θに対して目標横加速度Gdを指数関数的に変化させて決定することができる。そして、この目標横加速度Gdは、例えば、車内の所定部位への運転者の体の一部の接触によって運転者が知覚し得る物理量であり、ウェーバー・ヘフナーの法則に従ったものである。したがって、運転者が操舵ハンドル11の回動操作に合わせて指数関数的に変化する目標横加速度Gdを知覚することができれば、操舵ハンドル11の回動操作と左右前輪FW1,FW2の転舵制御との関係を人間の知覚特性に対応させることができる。
すなわち、電子制御ユニット44は、ステップS17にて、前記式29に従って決定された目標横加速度Gdを用いて目標転舵角δaを計算する。そして、電子制御ユニット44は、ステップS18〜ステップS20にて、この計算された目標転舵角δaとなるように左右前輪FW1,FW2を転舵制御する。これにより、操舵ハンドル11の回動操作に合った目標横加速度Gdを運転者が知覚することができ、操舵ハンドル11の回動操作と左右前輪FW1,FW2の転舵制御との関係を人間の知覚特性に対応させることができる。これにより、目標転舵角計算プログラムが適用されたステアリングバイワイヤ方式の操舵装置を利用して車両を運転した場合であっても、運転者が車両の旋回挙動に対して覚える違和感を抑制することができる。
本発明の実施にあたっては、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
例えば、上記各実施形態においては、目標転舵角計算プログラムのステップS16における横滑り角βの計算にて、転舵角センサ43によって検出された転舵角δを用い、前記式25に従ってヨーレートγのヨー角加速度dγ/dtを計算するように実施した。これに代えて、ステップS17にて計算された目標転舵角δaを用いて、ヨーレートγのヨー角加速度dγ/dtを計算するように実施することも可能である。この場合においても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、転舵角センサ43によって検出された転舵角δを用いることなく横滑り角β(より詳しく、ヨー角加速度dγ/dt)を計算することができるため、転舵角センサ43を省略することもできる。なお、このように転舵角センサ43を省略した場合においては、前記ステップS19にて、例えば、前記式1で示した転舵角δと操舵角θの関係に従い、操舵角センサ42によって検出された操舵角θから転舵角δを計算するように実施するとよい。これにより、電子制御ユニット44は、転舵出力軸13の回動量を把握することができ、転舵出力軸13(左右前輪FW1,FW2)を目標転舵角δaとなるまで、電動モータ21,61を駆動制御することができる。
また、上記各実施形態においては、目標転舵角計算プログラムのステップS14にて、検出車速Vに応じて、目標転舵角δaの計算の要否を判定するように実施したが、ステップS14を省略して実施することも可能である。この場合には、全車速域で目標転舵角δaが計算されること以外、上記各実施形態と同様に実施することができる。したがって、この場合にも、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、上記実施形態においては、転舵ギアユニット30にラックアンドピニオン式を採用して実施したが、例えば、ボールねじ機構を採用して実施してもよい。また、特に、上記第1実施形態においては、可変ギア比アクチュエータ20を電動モータ21と減速機22とから構成して実施したが、例えば、電動モータ21にステップモータを採用して減速機22を省略することも可能である。
さらに、上記各実施形態においては、車体の横滑り角βを実際に検出する横滑り角手段(例えば、光や音響を利用して車体の横滑り角βを検出する横滑り角センサなど)を設けることなく実施した。すなわち、上述した目標転舵角計算プログラムのステップS14〜ステップS16を実行することにより、走行環境によらず、極めて正確に車体の横滑り角βを計算するように実施した。
このように、車体の横滑り角βを極めて正確に計算することができるため、例えば、予め横滑り角検出手段が搭載されている車両において、同検出手段に異常が発生したときには、前記ステップS14〜ステップS16の各計算処理を別途実行し、計算した横滑り角βを用いて各種制御を実行することもできる。これにより、例えば、車体の横滑り角βを用いて車両の旋回挙動が安定する目標転舵角を計算し、この目標転舵角に操舵ハンドルを案内制御する装置(例えば、運転者による操舵ハンドルの回動操作に対してアシストトルクを付与する電動パワーステアリング装置など)において、横滑り角検出手段に異常が発生した場合であっても、極めて良好に各種制御を実行することができる。
本発明の実施形態に係る操舵制御装置を適用した車両の操舵装置の概略図である。 図1の電子制御ユニットによって実行される目標転舵角計算プログラムを示すフローチャートである。 操舵角と目標横加速度との関係を示すグラフである。 本発明の変形例に係る操舵制御装置を適用した車両の操舵装置の概略図である。
符号の説明
FW1,FW2…前輪、11…操舵ハンドル、12…操舵入力軸、13…転舵出力軸、20…可変ギア比アクチュエータ、21…電動モータ、21a…駆動シャフト、22…減速機、30…転舵ギアユニット、31…ピニオンギア、32…ラックバー、41…車速センサ、42…操舵角センサ、43…転舵角センサ、44…電子制御ユニット、45…駆動回路、46…横加速度センサ、60…転舵アクチュエータ、61…電動モータ、62…減速機構

Claims (5)

  1. 運転者による操舵ハンドルの回動操作に応じて、車両の転舵輪を転舵する電気アクチュエータの作動を制御する車両の操舵制御装置において、
    車両の車速を検出する車速検出手段と、
    転舵輪の転舵角を検出する転舵角検出手段と、
    旋回状態にある車両に発生する横加速度の大きさを決定する横加速度決定手段と、
    前記検出した車速および前記検出した転舵角と、旋回状態にある車両の前後輪のコーナリングパワーとを用いて車両に発生するヨー角加速度を計算するとともに、同ヨー角加速度を積分してヨーレートを計算するヨーレート計算手段と、
    前記決定した横加速度を前記検出した車速で除算した値から前記計算したヨーレートを減算することによって車体の横滑り角速度を計算するとともに、同車体の横滑り角速度を積分して車体の横滑り角を計算する横滑り角計算手段とを備えたことを特徴とする車両の操舵制御装置。
  2. 請求項1に記載した車両の操舵制御装置において、さらに、
    前記横加速度決定手段によって決定した横加速度を用いて、車両に発生したローリングの大きさを表すロール角を計算するロール角計算手段と、
    前記ロール角計算手段によって計算したロール角を用いて、旋回状態における荷重移動を考慮したコーナリングパワーを計算するコーナリングパワー計算手段とを備え、
    前記ヨーレート計算手段は、前記コーナリングパワー計算手段により計算されたコーナリングパワーを用いてヨーレートを計算することを特徴とする車両の操舵制御装置。
  3. 請求項1に記載した操舵制御装置において、さらに、
    前記横滑り角計算手段により計算した横滑り角を用いて、前記転舵輪の目標転舵角を計算する目標転舵角計算手段を備えたことを特徴とする操舵制御装置。
  4. 前記電気アクチュエータは、運転者による操舵ハンドルの回動操作量と前記転舵輪の転舵角との間の比を適宜変更するものである請求項1に記載した操舵制御装置。
  5. 前記電気アクチュエータは、運転者による操舵ハンドルの回動操作量に応じて、アシストトルクを付与するものである請求項1に記載した操舵制御装置。
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