JP2007076009A - インクジェットヘッド本体およびそれを備えるインクジェットヘッド、ならびにヘッド部とノズルプレートとの接合方法および該方法を用いるインクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents

インクジェットヘッド本体およびそれを備えるインクジェットヘッド、ならびにヘッド部とノズルプレートとの接合方法および該方法を用いるインクジェットヘッドの製造方法 Download PDF

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Abstract


【課題】 ヘッド部とノズルプレートとを、ノズルプレートの波打ちおよび気泡の噛み込みなどを生じさせることなく接合することのできるインクジェットヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】 ヘッド部24の凹凸状の表面部24aを覆い、かつ該表面部24aに接する側と反対側の表面部25aが平坦になるように平坦化層25を形成してインクジェットヘッド本体21を得る。得られたインクジェットヘッド本体21の平坦化層25と、ノズルプレート22とを、接着層23で接着する。これによって、ノズルプレート22の波打ち、気泡の噛み込み、ならびに接着層23を形成する接着剤のノズル孔34およびインク室開口部33への入り込みを防止することができるので、ノズル孔34の軸線34aとインク室開口部33の軸線33aとのずれがなくインクの着弾精度に優れ、またインクの吐出安定性にも優れるインクジェットヘッド20を得ることができる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、インクジェットヘッド本体およびそれを備えるインクジェットヘッド、ならびにヘッド部とノズルプレートとの接合方法および該方法を用いるインクジェットヘッドの製造方法に関する。
インクジェットヘッドは、微小な液滴を選択的に任意のドロップ数で吐出することのできる素子である。インクジェットヘッドを用いて液滴の吐出を行なうインクジェット吐出装置は、たとえばプリンタなどの画像形成装置に使用されている。また、画像形成装置に限らず、インクジェット吐出装置は、カラーフィルタの欠陥部分を修復する際の部分的な薄膜の形成、配線の形成などにも使用されている。
インクジェットヘッドは、液滴を吐出する微小な孔であるノズル孔が複数形成されたノズルプレートと、ノズル孔よりも大きな断面積を有し、インクが流通するインク流路を形成するインク室が形成されたヘッド部とを含んで構成される。
図10は、ヘッド部1とノズルプレート4とを接合する様子を簡略化して示す断面図である。インクジェットヘッドは、たとえば、ヘッド部1とノズルプレート4とをそれぞれ作製した後、ノズルプレート4を押圧具7に保持させて、ノズル孔5の軸線とインク室2の開口部(以後、インク室開口部と称する)3の軸線とが一致するように専用の装置で位置合わせ(アライメント)し、接着剤6などの接合手段で接合することによって製造される(たとえば特許文献1および2参照)。この方法ではヘッド部1とノズルプレート4とを別工程で製造するので、以下のような数多くの利点がある。たとえば、各部材の加工毎に洗浄が可能であるので、製造されたインクジェットヘッドにおけるヘッド部1のインク室2内の清浄度(クリーン度)を保つことができる。また、ノズルプレート4にノズル孔5を一括して形成することが可能であるので、優れた生産性を実現することができる。また、ヘッド部1の大型化に容易に対応することができる。また、ヘッド部1の製造が容易であり、コストの点でメリットが大きい。
しかしながら、ヘッド部1とノズルプレート4とを接着固定する工程では、前述の図10に示すように、ヘッド部1とノズルプレート4とが局所的に当接する、すなわち片当たりするという問題がある。ヘッド部1とノズルプレート4とが局所的に当接する原因としては、ヘッド部1のノズルプレート4との接合面(以後、単にヘッド部の接合面と称する)1aの平面度、ノズルプレート4のヘッド部1との接合面(以後、単にノズルプレートの接合面と称する)4aの平面度およびノズルプレート1の接合面4aとその反対側の表面(以後、背面と称する)4bとの平行度の影響が考えられる。
たとえば、ヘッド部1の接合面1aの平面度が悪く、接合面1aが凹凸状になっていると、ノズルプレート4の接合面1aの平面度が良好であっても、ヘッド部1とノズルプレート4との局所的な当接が生じると考えられる。ノズルプレート4の接合面4aの平面度が悪い場合も同様である。また、ノズルプレート4の接合面4aと背面4bとの平行度が悪いと、ノズルプレート4の背面4bをヘッド部1の接合面1aに対して平行にしても、ノズルプレート4の接合面4aがヘッド部1の接合面1aに対して傾くので、局所的な当接が生じるものと考えられる。
ノズルプレート4は、均一な厚みに形成されたポリイミドフィルム、金属板などにノズル孔5を形成することによって作製されるので、接合面4aの平面度および接合面4aと背面4bとの平行度は、ヘッド部1との局所的な当接を生じさせない程度の問題のないレベルである。
ヘッド部1は、図11に示すように、インク室2、インク室2からインクを吐出させるための圧力を発生させる圧力発生手段8およびインク室2の内方に設けられ圧力発生手段8に電力を供給する電力供給用電極9が形成されたウエハを所望の寸法に切断した後、電力供給用電極9をインクから絶縁するための電極保護層10を形成することによって作製される。このため、ヘッド部1の接合面1aの平面度は、主に、ウエハからの切断後の平面度と、電極保護層10の形成後の平面度とによって決定される。ウエハからの切断後の平面度は、機械精度によって決定されるので、ばらつきが小さく、ヘッド部1の接合面1aの平面度に与える影響は小さい。これに対し、電極保護層形成後の平面度には問題がある。
電極保護層10としては、電力供給用電極9の露出するあらゆる表面を保護する必要があることから、絶縁性に優れ、かつ成膜時のつき周りの良いもの、たとえばポリパラキシレンなどの有機保護膜が多用されている。しかしながら、ポリパラキシレンなどの有機保護膜には凹凸が生じやすいという問題がある。たとえば、厚さd0が5μmのポリパラキシレン膜を成膜すると、その表面には約10〜15μm程度の凹凸が生じる。凹凸が生じる原因としては、成膜時に浮遊している不純物がチャンバ内に混入し、この不純物が核となって、パラキシレンが成膜されるべき面に堆積して瘤状の付着物11が生じることが考えられる。すなわち、電極保護層10としてポリパラキシレンなどの有機保護膜を形成する場合、図11に示すように、成膜時にヘッド部1の表面に高さh0が10〜15μm程度の付着物11がランダムに付着し、この付着物11によって接合面1aとなる電極保護層10の表面に凹凸が生じ、ヘッド部1の接合面1aの平面度が低下するものと考えられる。
このようにヘッド部1の接合面1aは電極保護層10の成膜時に付着する付着物11によって凹凸状になっているので、ノズルプレート4との接合時には、ノズルプレート4と局所的に当接することになる。ノズルプレート4とヘッド部1とが局所的に当接すると、図11に示すようにノズルプレート4がうねって波打った状態で接着され、ノズル孔5の軸線5aとインク室開口部3の軸線3aとがずれるので、吐出されるインクの着弾精度が低下するという問題が生じる。インクの着弾精度に関しては、カラーフィルタの欠陥部分を修復する際の部分的な薄膜の形成、配線の形成などにおいて、非常に高い精度が要求されており、着弾精度の向上が求められる。
また、ヘッド部1とノズルプレート4とを局所的に当接された状態で接着すると、ヘッド部1とノズルプレート4とが接着されていない部分が生じ、この部分に気泡が噛み込まれるという問題も発生する。気泡の噛み込みがノズル孔5付近で生じると、この気泡部分にインクが入り込み、インク室2同士およびノズル孔5同士が連通し、インクを吐出することができなくなるなど、インクの吐出安定性が悪くなる。また、気泡を押出すために接合時に押圧具7からノズルプレート4に負荷する圧力を高めると、ノズルプレート4の波打ちが顕著になる。
ヘッド部とノズルプレートとの局所的な当接を防ぐ方法としては、たとえば、ヘッド部の凹凸状の接合面が平坦化されるように接着剤の量を増やすことが考えられる。しかしながら、接着剤の量が多すぎると、ヘッド部へのノズルプレートの押圧によって図12に示すように接着剤6がインク室2およびノズル孔5に入り込みやすくなる。特に、ノズル孔5の開口部の面積はインク室開口部3の面積よりも小さいので、ノズル孔5に接着剤6が入り込むと、ノズル孔5が接着剤6で詰まり、インクを安定して吐出することができなくなるという問題が生じる。また、インク室開口部3に多量の接着剤6が入り込んだ場合にも同様にインク室開口部3の目詰まりが発生する恐れがある。また、接着剤6の塗布量にもよるけれども、接着剤6の粘度がたとえば温度25℃において10000mPa・s程度と高い場合には、接着剤6の量を増やしてヘッド部1の接合面1aの凹凸を平坦化することができたとしても、接着剤6をヘッド部1の接合面1aの凹部まで塗布することができず、気泡の噛み込みが生じることがある。逆に、接着剤6の粘度がたとえば温度25℃において500mPa・s程度と低い場合には、気泡の噛み込みは起こりにくいけれども、インク室2およびノズル孔5への接着剤6の入り込みが一層生じやすくなる。
また、先行技術の一つでは、ヘッド部のように凸部を有する基板の凸部表面にノズルプレートとなる薄膜体を平坦に撓み無く設置する方法として、支持体に薄膜体および接着材層を順次設置し、該支持体を、支持体上の薄膜体が接着剤を介して基板の凸部表面に接するように基板に設置して接着した後、支持体を除去することが提案されている(特許文献3参照)。特許文献3に開示の技術では、薄膜体および接着材層が設置された支持体を、インク室が形成された基板に対して天地を逆にして接着するので、インク室に接着剤が入り込みやすいという問題がある。また、支持体を除去した後に、エッチングによって薄膜体および接着材層を貫通するノズル孔を形成するので、製造工程が繁雑であり、またインク室開口部の軸線とノズル孔の軸線とがずれやすい。また、エッチングによって生じた残渣がインク室内に残存し、インク室の清浄度が低下するという問題もある。
特開2002−240263号公報(第3−4頁,第2図) 特開2002−361875号公報(第4頁,第1図) 特開2002−59557号公報(第3−4頁,第2図)
本発明の目的は、ヘッド部とノズルプレートとを、ノズルプレートの波打ちおよび気泡の噛み込みなどを生じさせることなく接合することのできるヘッド部とノズルプレートとの接合方法および該接合方法を用いるインクジェットヘッドの製造方法、ならびに該製造方法によって得られるインクジェットヘッドおよび該インクジェットヘッドに備わるインクジェットヘッド本体を提供することである。
本発明は、凹凸状の表面部を有し、該表面部で開口されインクを貯留するインク室が形成されたヘッド部と、
ヘッド部の凹凸状の表面部を覆うように設けられ、該表面部に接する側と反対側の表面部が平坦に形成される平坦化層とを備えることを特徴とするインクジェットヘッド本体である。
また本発明は、平坦化層は、樹脂材料で形成されることを特徴とする。
また本発明は、樹脂材料は、接着剤であることを特徴とする。
また本発明は、平坦化層は、ヘッド部の凹凸状の表面部に接する側と反対側の表面部がアッシングされていることを特徴とする。
また本発明は、平坦化層は、複数の層を含むことを特徴とする。
また本発明は、ヘッド部は、インク室からインクを吐出させるための圧力を発生させる圧力発生手段と、圧力発生手段に電力を供給する電力供給用電極と、電力供給用電極を保護する電極保護層とを含み、
ヘッド部の凹凸状の表面部は、電極保護層によって形成されることを特徴とする。
また本発明は、平坦化層の厚さは、電極保護層の厚さの3倍以上であることを特徴とする。
また本発明は、前記本発明のインクジェットヘッド本体と、
インクを吐出させるためのノズル孔が形成され、該ノズル孔とインクジェット本体のインク室とが連通するように設けられるノズルプレートと、
インクジェットヘッド本体の平坦化層とノズルプレートとの間に設けられ、インクジェットヘッド本体とノズルプレートとを接着する接着層とを備えることを特徴とするインクジェットヘッドである。
また本発明は、凹凸状の表面部を有し、該表面部で開口されインクを貯留するインク室が形成されたヘッド部と、インクを吐出させるためのノズル孔が形成されたノズルプレートとの接合方法であって、
ヘッド部の凹凸状の表面部を覆い、かつ該表面部に接する側と反対側の表面部が平坦になるように平坦化層を形成する工程と、
形成された平坦化層とノズルプレートとを、ヘッド部のインク室とノズルプレートのノズル孔とが連通するように、接着剤によって接着する工程とを含むことを特徴とするヘッド部とノズルプレートとの接合方法である。
また本発明は、前記本発明のヘッド部とノズルプレートとの接合方法によって、ヘッド部とノズルプレートとを接合する工程を含むことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法である。
本発明によれば、インクジェットヘッド本体に備わるヘッド部は、凹凸状の表面部が平坦化層によって覆われる。平坦化層は、ヘッド部の凹凸状の表面部に接する側と反対側の表面部が平坦に形成されるので、ヘッド部の凹凸状の表面部が平坦化層で平坦化されたインクジェットヘッド本体を得ることができる。このようなインクジェットヘッド本体は、たとえば、インクを吐出させるためのノズル孔が形成されたノズルプレートと接着する際に、平坦な平坦化層の部分でノズルプレートと接着することができるので、ノズルプレートとヘッド部との間への気泡の噛み込みを防ぐことができる。これによって、ノズルプレートに形成されるノズル孔同士の連通およびヘッド部に形成されるインク室同士の連通を防ぐことができるので、液滴の吐出安定性を向上させることができる。また、ノズルプレートの波打ちを防ぎ、ノズルプレートを平坦な状態で接着することができるので、ノズル孔の軸線とインク室の開口部(以後、インク室開口部と称する)の軸線とのずれを抑え、インク室から吐出される液滴の着弾精度を向上させることができる。
また本発明によれば、平坦化層は樹脂材料で形成されるので、容易に形成することができる。
また本発明によれば、平坦化層を形成する樹脂材料は接着剤であるので、ヘッド部と平坦化層とを、密着性良くかつ強固に接着することができる。
また本発明によれば、平坦化層は、ヘッド部の凹凸状の表面部に接する側と反対側の表面部がアッシングされている。このことによって、ノズルプレートと接着する際にノズルプレートとの間に介在する接着剤と平坦化層との密着性を向上させることができるので、インクジェットヘッド本体とノズルプレートとをより強固に接着することができる。
また本発明によれば、平坦化層は複数の層を含むので、ヘッド部の凹凸状の表面部に接する側と反対側の表面部を容易に平坦にすることができる。また、平坦化層の前記表面部における平坦性およびヘッド部の凹凸状の表面部を形成する凹部への平坦化層の流れ込み性を容易に調整することができるので、気泡の噛み込みおよびノズルプレートの波うちの発生を一層抑制することができる。
また本発明によれば、インクジェットヘッド本体は、電極保護層によって形成される凹凸状の表面部が平坦化層で平坦化されているので、ノズルプレートの波うちおよび気泡の噛み込みなどを生じさせることなく、ノズルプレートと接合することができる。
また本発明によれば、平坦化層の厚さは、電極保護層の厚さの3倍以上であるので、電極保護層を成膜する際に生じる凹部および凸部をより確実に平坦化することができる。
また本発明によれば、インクジェットヘッドに備わるインクジェットヘッド本体は、ヘッド部の凹凸状の表面部が平坦化層で平坦化され、該平坦化層で接着層を介してノズルプレートと接着される。このことによって、接合時のノズルプレートとヘッド部との間への気泡の噛み込み、ならびにそれによるノズル孔同士の連通およびインク室同士の連通を防ぐとともに、接着剤によるノズル孔およびインク室開口部の目詰まりを抑えることができるので、インクの吐出安定性に優れるインクジェットヘッドを得ることができる。また、ノズル孔の軸線とインク室開口部の軸線とのずれのない、液滴の着弾精度に優れるインクジェットヘッドを得ることができる。
また本発明によれば、ヘッド部とノズルプレートとは、ヘッド部の凹凸状の表面部を覆い、かつ該表面部に接する側と反対側の表面部が平坦になるように平坦化層を形成した後、形成された平坦化層とノズルプレートとを、ヘッド部のインク室とノズルプレートのノズル孔とが連通するように、接着剤で接着することによって接合される。このことによって、ノズルプレートとヘッド部との間への気泡の噛み込みを抑えることができるので、ノズル孔同士の連通およびインク室同士の連通を防ぐことができる。また、ノズルプレートの波打ちを防ぎ、ノズルプレートを平坦な状態で接着することができるので、ノズル孔の軸線とインク室の軸線とのずれを抑えることができる。また、ノズルプレートとの接着時に、ノズル孔およびインク室開口部に接着剤が入り込むことを防ぐことができるので、ノズル孔およびインク室開口部の目詰まりを防ぐことができる。
また本発明によれば、インクジェットヘッドは、前記本発明のヘッド部とノズルプレートとの接合方法によってヘッド部とノズルプレートとを接合する工程を経て製造される。このことによって、ノズルプレートとヘッド部との間への気泡の噛み込み、ならびにそれによるノズル孔同士の連通およびインク室同士の連通がなく、またノズル孔およびインク室開口部の目詰まりのないインクの吐出安定性に優れるインクジェットヘッドを得ることができる。また、ノズルプレートの波打ちを防ぎ、ノズル孔の軸線とインク室開口部の軸線とのずれを抑えることができるので、インクの着弾精度に優れるインクジェットヘッドを得ることができる。
図1は、本発明の実施の一形態であるインクジェットヘッド本体21およびインクジェットヘッド本体21を備える本発明の実施の他の形態であるインクジェットヘッド20の構成を簡略化して示す斜視図である。図2は、図1に示すインクジェットヘッド20の切断面線I−Iを含む仮想平面における断面構成を簡略化して示す断面図である。図3は、図2に示すインクジェットヘッド20を拡大して示す拡大図である。図1では、ノズルプレート22および接着層23の一部分を切り欠いた状態を示す。
インクジェットヘッド20は、インクジェットヘッド本体21と、ノズルプレート22と、インクジェットヘッド本体21とノズルプレート22との間に設けられ、インクジェットヘッド本体21とノズルプレート22とを接着する接着層23とを含んで構成される。
インクジェットヘッド本体21は、凹凸状の表面部24aを有するヘッド部24と、ヘッド部24の凹凸状の表面部24aを覆うように設けられる平坦化層25とを含む。ヘッド部24には、凹凸状の表面部24aで開口され、ヘッド部24の厚み方向に延びるインク室26が形成されており、このインク室26にインクが貯留される。平坦化層25は、ヘッド部24の凹凸状の表面部24aに接する側と反対側の表面部25aが平坦に形成されている。インクジェットヘッド本体21は、平坦化層25の平坦な表面部25aでノズルプレート22と接着されている。
ヘッド部24は、さらに、インク室26からインクを吐出させるための圧力を発生させる圧力発生手段27と、圧力発生手段27に電力を供給する電力供給用電極28と、電力供給用電極28を保護し、インクから絶縁する電極保護層29とを含む。圧力発生手段27は、本実施形態では圧電性材料で形成される複数の隔壁部27であり、隔壁部27のせん断モード変形によってインクを吐出させる圧力を発生させる。圧力発生手段27は、これに限定されず、たとえばヒータなどの加熱手段を備え、インク室26に貯留されるインクを加熱して気泡を生じさせることによってインクを吐出させる圧力を発生させる手段であってもよい。この場合、ヒータなどの加熱手段は、たとえばインク室26の壁面に設けられる。
複数の隔壁部27は、圧電性基板30の厚み方向一方側の表面部(以後、一方の表面部と称する)に、所定の間隔を空けて一方向に延びるように複数の溝部31を形成することによって形成される。本実施形態において溝部31の延びる方向(以後、延在方向とも称する)に垂直な切断面における断面形状は矩形状である。インク室26は、隔壁部27が形成された圧電性基板30と、圧電性基板30の一方の表面部のうち溝部31の内表面部を除く表面部に接合される蓋部材32と、溝部31の延在方向に一致するインク室26の軸線方向一方側の圧電性基板30および蓋部材32の表面部に接合される図示しない背面板とによって形成される。蓋部材32は本実施態様では平板矩形状である。
電力供給用電極28は、インク室26の軸線に対して交差する方向に臨む圧電性基板30の表面部、すなわち溝部31の内表面部に設けられる。本実施形態では、電力供給用電極28は、溝部31の内表面部全体にわたって設けられる。電力供給用電極28は、本実施形態では隔壁部27に電力を供給して隔壁部27を圧電駆動させるための圧電駆動用電極である。電極保護層29は、電力供給用電極28の表面部、インク室26に臨む蓋部材32の表面部、ならびに圧電性基板30および蓋部材32の背面板が接合される表面部と反対側の表面部に形成されている。この電極保護層29によってヘッド部24の凹凸状の表面部24aが形成されている。
ノズルプレート22には、厚み方向一方側から他方側に貫通するように、インクを吐出させるための複数のノズル孔34が形成されている。ノズルプレート22とインクジェットヘッド本体21とは、ノズル孔34とインク室26とが連通するように接合される。インク室26に貯留されるインクは、ノズル孔34から吐出される。
図1に示すインクジェットヘッド20は、本発明の実施の一態様であるインクジェットヘッドの製造方法によって製造される。図4は、本実施態様のインクジェットヘッドの製造方法によってインクジェットヘッド20を製造する手順を示すフローチャートである。本実施態様のインクジェットヘッドの製造方法は、少なくとも、本発明の実施の他の態様であるヘッド部とノズルプレートとの接合方法によってヘッド部24とノズルプレート22とを接合する接合工程を含む。本実施態様では、さらにヘッド部作製工程とノズルプレート作製工程とが含まれる。すなわち、本実施態様によるインクジェットヘッドの製造方法は、ヘッド部作製工程(ステップs1)と、ノズルプレート作製工程(ステップs2)と、接合工程(ステップs3)とを含む。本実施態様によるインクジェットヘッド20の製造は、ステップs0で開始され、ステップs1またはステップs2に移行する。ステップs1のヘッド部作製工程およびステップs2のノズルプレート作製工程は、いずれが先に行なわれてもよい。
ステップs1のヘッド部作製工程は、溝部形成工程(ステップs11)と、電力供給用電極形成工程(ステップs12)と、インク室形成工程(ステップs13)と、電極保護層形成工程(ステップs14)とを含む。
図5は、インク室26が形成された状態を示す斜視図である。溝部形成工程であるステップs11では、圧電性基板30に複数の溝部31を形成する。これによって、前述の図1に示すインク室26を構成する隔壁部27が形成される。複数の溝部31は、互いに平行になるように一方向に延びて形成される。圧電性基板30は、たとえば、分極処理を施したチタン酸ジルコン酸鉛(略称PZT)、チタン酸鉛(略称PT)などの圧電性セラミック材料などで形成される。溝部31は、たとえば、ダイヤモンドブレードなどを備えるダイシング装置などによって圧電性基板30を切削することによって形成される。溝部31の深さd1は、たとえば約300μmである。溝部31の延在方向に直交する方向の幅(以後、単に幅と称する)w1は、たとえば約70μmである。このようにして溝部31を形成し、ステップs12に進む。
電力供給用電極形成工程であるステップs12では、まず、ステップs11で形成された溝部31の内表面部(以後、壁面とも称する)に、電力供給用電極28となる電極膜35を形成する。本実施態様では、電極膜35は、圧電性基板30の一方の表面部のうち溝部31の内表面部を除く表面部にも形成されるように、圧電性基板30の一方の表面部全体にわたって形成される。電極膜35としては、たとえば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、金(Au)などの金属からなる金属膜などの導電性を有する膜が形成される。電極膜35は、たとえば、蒸着装置、スパッタリング装置、プラズマ化学気相成長(Chemical Vapor Deposition;略称CVD)装置などの成膜装置を用いて成膜される。また、電極膜35は、めっき処理などによって形成されてもよい。電極膜35の厚さは、たとえば約0.5μm以上1μm以下である。
次いで、形成された電極膜35のうち、不要な部分である、圧電性基板30の一方の表面部のうち溝部31の内表面部を除く表面部に形成された電極膜35を除去する。これによって、溝部31の内表面部に電力供給用電極28が形成される。電極膜35の不要な部分の除去は、たとえば、圧電性基板30の蓋部材32との接着面である隔壁部27の一方の表面部、すなわち圧電性基板30の一方の表面部のうち溝部31の内表面部を除く表面部を研磨加工して平坦化することによって行なうことができる。このようにして電力供給用電極28を形成し、ステップs13に進む。
インク室形成工程であるステップs13では、電極膜35が除去されて露出した隔壁部27の表面部に蓋部材32を接着するとともに、圧電性基板30および蓋部材32のインク室26の軸線方向一方側の表面部に図示しない背面板を接着し、インク室26を形成する。このようにしてインク室26を形成し、ステップs14に進む。
図6は、電極保護層29を形成した状態を示す断面図である。図6は、図5の切断面線II−IIを含む仮想平面における断面図に相当する。電極保護層形成工程であるステップs14では、電力供給用電極28を覆うように電極保護層29を形成する。本実施態様では、電極保護層29は、電力供給用電極28の表面部、インク室26の内方で露出する蓋部材32の表面部、ならびに圧電性基板30および蓋部材32のインク室26の軸線方向他方側の表面部に形成される。
電極保護層29としては、ポリパラキシレンなどの有機材料からなる有機保護膜が好適に用いられ、その中でもポリパラシキレン膜が特に好適に用いられる。ポリパラキシレン膜は、化学的に安定であって耐薬品性に優れるとともに、電気絶縁性にも優れる。したがって、電極保護層29としてポリパラキシレン膜を用いることによって、水性インク、金属粒子を含むインクなどの導電性を有するインクを吐出させる場合に、インクジェットヘッド20駆動時にチャンネルである隔壁部27同士間への電圧印加によってリーク電流が流れることを抑えることができるので、正規のチャンネル壁せん断モード変形が達成できなくなることを防ぎ、吐出不良を防止することができる。また、電力供給用電極28を構成する電極材料がインクによって電解腐食を起こすことを防ぐことができるので、インクジェットヘッド20の破損を防止することができる。また、有機溶媒が主成分であるインクを吐出させる場合には、インクジェットヘッド20を構成する部材および接着剤などを有機溶媒から隔離保護し、これらの部材および接着剤などの有機溶媒への溶解を防ぐことができる。また、ポリパラキシレン膜は、室温での気相成長によって形成することができるので、熱によって特性が劣化する基材に対して、熱的なダメージを与えることなく、成膜することができる。また、ポリパラシキレンは、表面形状が複雑に入り組んだ基材に対してもほぼ均一に成膜することができる。
ポリパラキシレン膜などの有機保護膜は、たとえばCVD装置などの成膜装置を用いて形成することができる。このようにして電極保護層29を形成することによってヘッド部24が形成され、ステップs1のヘッド部作製工程が終了する。ただし、電極保護層29としてポリパラキシレン膜などの有機保護膜を成膜すると、電極保護層29の表面部には、最大高さRmaxで、電極保護層29の厚さd2の約3倍の凹凸が生じる。たとえば、パラキシレンを用いて厚さd2が5μmになるように成膜して電極保護層29を形成すると、電極保護層29の表面部24aには、最大高さRmaxで約10〜15μm程度の凹凸が生じる。これは、成膜時に浮遊している不純物がチャンバ内に混入し、この不純物が核となってパラキシレンが堆積して瘤状の付着物29aが生じることが原因であると考えられる。このようにヘッド部24の最外層である電極保護層29の表面部24aには凹凸が生じているので、ヘッド部24の表面部24aは凹凸状になっている。ここで、電極保護層29の厚さd2とは、電極保護層29の隔壁部27に接する表面部から、ヘッド部24の凹凸状の表面部である電極保護層29の表面部24aまでの最短距離のことである。
ステップs2のノズルプレート作製工程では、前述の図1および図2に示すように、複数のノズル孔34が形成されたノズルプレート22を作製する。本実施態様においてノズルプレート22は、略平板形状である。ノズルプレート22には、インクジェットヘッド本体21に形成されるインク室26と同数のノズル孔34が形成される。本実施形態では、ノズル孔34は、ノズルプレート22のインクジェットヘッド本体21と接合される表面部(以後、ノズルプレート22の接合面と称する)22a側における直径が、接合面22aの反対側の表面部(以後、ノズルプレート22の背面と称する)22b側における直径よりも大きくなるようにテーパ状に形成される。ノズル孔34は、インク滴を飛翔させるために必要な電圧値、要求されるインク滴の大きさ(サイズ)などに応じた大きさに形成する必要がある。たとえば、厚さが約50μmである基板を用いてノズルプレート22を作製する場合、ノズル孔34は、接合面22a側における直径が40μmであり、背面22b側における直径が20μmであり、テーパ角度が10°程度の形状になるように形成される。
ノズルプレート22は、たとえば、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなる基板に、エキシマレーザなどを用いたレーザ加工装置などでノズル孔34を形成することによって作製される。また、ノズルプレート22は、ステンレス鋼、ニッケルなどの金属材料からなる基板を打ち抜き加工することによって作製されてもよく、またこれらの金属材料を用いて電鋳によって作製されてもよい。
ノズルプレート22の背面22bには、インクに対する撥液性に優れる材料を塗布することなどによって撥液化処理を施すことが好ましい。ノズルプレート22の背面22bに撥液化処理を施すことによって、背面22bをインクに対して撥液性の高い状態とし、インク飛翔時にノズル孔34から速やかにインクを吐出させることができるので、インクの吐出安定性を向上させることができる。
ノズルプレート22の接合面22aは、背面22bとは逆に、インクに対して親液性の高い状態である方が、インクの流れをスムーズにする上で好適である。また、ノズル孔34の壁面、すなわちノズル孔34の軸線34aに対して交差する方向に臨むノズルプレート22の表面についても、接合面22aと同様にインクに対して親液性の高い状態であることが好ましい。よって、ノズルプレート22の接合面22aおよびノズル孔34の壁面には、たとえば酸素を含むプラズマなどを用いて処理を施し、インクとして用いられるポリイミドなどの合成樹脂材料との親液性を高めることが好ましい。
以上のようにしてステップs1のヘッド部作製工程およびステップs2のノズルプレート作製工程が終了し、ステップs3の接合工程に進む。接合工程であるステップs3では、ステップs1で作製されたヘッド部24と、ステップs2で作製されたノズルプレート22とを、本発明のヘッド部とノズルプレートとの接合方法を用いて接合する。具体的には、ステップs3の接合工程は、平坦化層形成工程(ステップs31)と、接着工程(ステップs32)とを含む。
平坦化層形成工程であるステップs31では、前述の図6に示す電極保護層29のインク室26の内方に形成された部分を除く表面部、すなわちヘッド部24の凹凸状の表面部24aに平坦化層25を形成する。平坦化層25は、本実施態様では以下のようにして形成される。図7は、平坦化層25を形成する様子を簡略化して示す断面図である。
まず、図7(a)に示すように、基材36の厚み方向一方側の表面部に、バーコータ装置などを用いて樹脂材料を塗布し、平坦化層前駆体37を形成する。基材36としては、ポリイミドフィルムなどの樹脂フィルムなどが用いられる。平坦化層前駆体37を形成する樹脂材料としては、接着剤が好適に用いられる。接着剤を用いることによって、平坦化層25をヘッド部24の凹凸状の表面部24aに対して密着性良くかつ強固に接着された状態で形成することができる。接着剤としては、エポキシ系接着剤などの熱硬化性接着剤などが用いられる。樹脂材料の塗布装置は、バーコータ装置に限定されるものではなく、たとえばスピンコータ装置を用いてもよい。スピンコータ装置では、回転数と塗布時間とによって塗布厚(膜厚)を制御することができるので、所望の厚さの平坦化層前駆体37を容易に形成することができる。
次いで、形成された平坦化層前駆体37をヘッド部24の凹凸状の表面部24aにスタンプ転写する。具体的には、図7(b)に示すように、形成された平坦化層前駆体37の厚み方向一方側の表面部に、ヘッド部24の凹凸状の表面部24aが鉛直方向に臨むように配置して、ヘッド部24の凹凸状の表面部24aである電極保護層29の表面部24aを押し当てる。このときの押圧力は、たとえば約1g重/mmである。次いで、ヘッド部24と基材36とを剥離させることによって、ヘッド部24の平坦化層前駆体37に接している部分、すなわちヘッド部24の凹凸状の表面部24aに平坦化層前駆体37が転写される。このとき、平坦化層前駆体37のうち、ヘッド部24の表面部24aに接していなかった部分は基材36に残留するので、インク室開口部33には平坦化層前駆体37が塗布されない。
次いで、転写された平坦化層前駆体37を硬化させることによって、図7(c)に示すように、インク室開口部33に対応する部分で開口された均一な厚みの平坦化層25が形成される。スタンプ転写を用いることによって、平坦化層前駆体37である樹脂材料のヘッド部24の前記表面部24aへの塗布量すなわち転写される平坦化層前駆体37の厚みを一定にすることができるので、所望の厚さの平坦化層25を容易に形成することができる。ヘッド部24の凹凸状の表面部24aに転写される平坦化層前駆体37の厚さ、すなわち形成される平坦化層25の厚さd4は、たとえば、基材36表面に形成された平坦化層前駆体37の厚さd3の半分となる。たとえば、基材36の表面に形成された平坦化層前駆体37の厚さd3が50μmである場合、ヘッド部24の凹凸状の表面部24aに形成される平坦化層25の厚さd4は25μmとなる。平坦化層25の厚さd4すなわちヘッド部24の前記表面部24aに転写される平坦化層前駆体37の厚さは、基材36表面に形成された平坦化層前駆体37の厚さd3の半分に限定されるものではなく、一定の値であればよく、たとえば基材36表面に形成された平坦化層前駆体37の厚さd3の3分の1であってもよい。平坦化層25の厚さd4であるヘッド部24の前記表面部24aに転写される平坦化層前駆体37の厚さは、ヘッド部24の前記表面部24aを構成する電極保護層29の材料の種類、基材36の材料の種類、平坦化層前駆体37となる樹脂材料の種類などによって調整することができる。ここで、平坦化層25の厚さd4とは、平坦化層25の表面部25aからヘッド部24の表面部24aまでの距離の最大値のことである。平坦化層前駆体37の硬化は、たとえば樹脂材料として熱硬化性接着剤を用いる場合には加熱などによって行なうことができる。
平坦化層25は、ヘッド部24の凹凸状の表面部24aを覆い、かつ該表面部24aに接する側と反対側の表面部25aが平坦になるように形成される。ここで、「凹凸状の表面部を覆うように形成する」とは、凹凸状の表面部の最大高さRmaxよりも厚く形成することをいう。すなわち、平坦化層25は、厚さd4が、ヘッド部24の凹凸状の表面部24aの最大高さRmaxよりも大きくなる(d4>Rmax)ように形成される。平坦化層25を形成することによって、ヘッド部24の凹凸状の表面部24aを平坦化層25で平坦化し、平坦化層25の平坦な表面部25aでノズルプレート22と接合することのできるインクジェットヘッド本体21を得ることができる。
平坦化層25の前記表面部25aの算術平均粗さRaは、1.5μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましい。平坦化層25の前記表面部25aの算術平均粗さRaを1.5μm以下にすることによって、後述するステップs32の接着工程におけるノズルプレート22の波打ちおよび気泡の噛み込みをより確実に抑えることができる。平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaが1.5μmを超えると、平坦化層25の表面全体にわたって接着層23を形成することが困難になり、ノズルプレート22の波打ちおよび気泡の噛み込みが生じる恐れがある。
平坦化層25の形成に使用される接着剤などの樹脂材料の粘度、すなわち基材36に塗布される樹脂材料の粘度は、インク室開口部33への樹脂材料の入り込みを防ぐために、基材36表面に形成される平坦化層前駆体37の厚さd3に応じて適宜選択されることが好ましい。たとえば、厚さd3が25μmである平坦化層前駆体37を形成する場合、樹脂材料の25℃における粘度(以後、単に粘度とも称する)は、500mPa・s(500cP)程度に選択される。ただし、インク室開口部33への樹脂材料の入り込みをより確実に防ぐためには、樹脂材料の粘度は、50mPa・s(50cP)以上であることが好ましい。樹脂材料の粘度が50mPa・s(50cP)未満であると、特に、厚さd4が50μmを超える平坦化層25を形成する場合に、平坦化層前駆体37の転写時または転写後にインク室開口部33に樹脂材料が入り込む恐れがある。また、形成される平坦化層25の表面部25aの平坦性を考慮すると、樹脂材料の粘度は、5000mPa・s(5000cP)以下であることが好ましい。樹脂材料の粘度が5000mPa・s(5000cP)を超えると、樹脂材料の流動性が不足し、転写後の平坦化層前駆体37(樹脂材料)の表面が均一化されにくくなるので、形成される平坦化層25の算術平均粗さRaが1.5μmを超える恐れがある。
ここで、粘度とは、温度25℃において、粘度測定装置(商品名:ブルックフィールドデジタル粘度計RVDV−II+、ブルックフィールド社製)によって測定される値のことである。
平坦化層25の厚さd4は、電極保護層29の厚さd2の3倍以上であることが好ましい。平坦化層25を厚さd4が電極保護層29の厚さd2の3倍以上になるように形成することによって、平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaをより確実に1.5μm以下にすることができる。
本実施態様では、樹脂材料を用いて平坦化層前駆体37を形成し、該平坦化層前駆体37を転写することによって平坦化層25を形成するので、容易に平坦化層25を形成することができる。また、図7(b)に示すように、基材36に形成された平坦化層前駆体37に対して、平坦化層前駆体37がヘッド部24の前記表面部24aを構成する電極保護層29よりも鉛直下方に位置するように配置してヘッド部24を押し当てるので、インク室開口部33に平坦化層前駆体37を構成する接着剤などの樹脂材料が入り込むことを防ぐことができる。
また、基材36に形成された平坦化層前駆体37にヘッド部24を押し当てる際の押圧力は、小さい方が好ましく、具体的には2kg重/mm以下であることが好ましい。平坦化層前駆体37にヘッド部24を押し当てる際の押圧力が2kg重/mmを超えると、平坦化層前駆体37が押しつぶされて平坦化層前駆体37を構成する樹脂材料がヘッド部24の側面部側に逃げ、ヘッド部24への転写量が少なくなる恐れがある。また、インク室26の内方およびヘッド部24の側面部に樹脂材料が付着する恐れもある。
また、ヘッド部24の前記表面部24aに転写された平坦化層前駆体37を硬化させる際には、前記表面部24aに平坦化層前駆体37を転写させる際と同様に、平坦化層前駆体37が電極保護層29よりも鉛直下方に位置するように配置して、平坦化層前駆体37を硬化させることが好ましい。これによって、転写された平坦化層前駆体37である樹脂材料が、重力の影響によってインク室開口部33に入り込むことを防ぐことができる。
樹脂材料の入り込みをより確実に防ぐためには、平坦化層25を厚さd4が50μm以下になるように形成することが好ましい。平坦化層25を厚さd4が50μmを超えるように形成しようとすると、転写された平坦化層前駆体37(樹脂材料)がインク室26の壁面との濡れ性の影響によってインク室開口部33に入り込み、インク室開口部33が樹脂材料で埋まってしまう恐れがある。特に、樹脂材料の粘度がたとえば温度25℃において500mPa・s程度と低い場合には、樹脂材料のインク室開口部33への入り込みが生じやすいので、平坦化層25は厚さd4が50μm以下になるように形成されることが好ましい。
平坦化層25は、本実施態様では1つの層で形成されるけれども、複数の層で形成されてもよい。平坦化層25を複数の層で形成することによって、各層を粘度の異なる材料で形成することができるので、平坦化層25の表面部25aの平坦性すなわち算術平均粗さRaおよびヘッド部24の凹凸状の表面部24aへの樹脂材料の流れ込み性をより容易に調整することができる。したがって、ステップs32の接着工程におけるノズルプレート22の波打ちおよび気泡の噛み込みをより確実に抑えることができる。平坦化層25を複数の層で形成する場合、平坦化層25は、前述のスタンプ転写を複数回繰返し行なうことによって形成することができる。この場合、平坦化層25の厚さd4は、各層の厚さ、すなわち一回のスタンプ転写で転写される平坦化層前駆体37の厚さを調整することによって、所望の厚さになるように調整することができる。
以上のようにして平坦化層25を形成した後、平坦化層25の表面部25aに対してアッシングなどの親水化処理を施し、ステップs32の接着工程に進む。平坦化層25のアッシングは、たとえば酸素を含むプラズマなどを用いて行なうことができる。平坦化層25の前記表面部25aに対してアッシングなどの親水化処理を施すことによって、ステップs32の接着工程で平坦化層25の表面部25aに形成される接着層23との密着性を高めることができるので、インクジェットヘッド本体21とノズルプレート22との接着強度を向上させることができる。
接着工程であるステップs32では、前述の図2に示すように、ステップs31で形成された平坦化層25とノズルプレート22とを、ヘッド部24のインク室26とノズルプレート22のノズル孔34とが連通するように配置して、接着剤で接着する。
インクジェットヘッド本体21とノズルプレート22との接着は、たとえば以下のようにして行なうことができる。図8はインクジェットヘッド本体21とノズルプレート22とを接着する様子を簡略化して示す斜視図であり、図9は図8の切断面線III−IIIを含む仮想平面における断面図である。図9は、図8に示すインクジェットヘッド本体21およびノズルプレート22を、各ノズル孔34の軸線33aおよび各インク室開口部33の軸線33aを含む仮想平面で切断した断面図に相当する。なお図9では、図が錯綜して理解が困難になるので、図7(c)に示す電力供給用電極28および電極保護層29、ならびに図8に示すアライメントカメラ41は記載を省略する。まず、インクジェットヘッド本体21のノズルプレート22との接合面である平坦化層25の表面部25aに接着層23を形成する。
接着層23は、平坦化層25と同様にして形成することができる。すなわち、ステップs31の平坦化層形成工程と同様に、基材表面にバーコータ装置などを用いて接着剤を塗布して接着層前駆体を形成した後、形成された接着層前駆体にインクジェットヘッド本体21の接合面である平坦化層25の表面部25aを押し当ててスタンプ転写する。これによって、インク室開口部33に対応する部分で開口された均一な厚みの接着層23が形成される。基材としては、ポリイミドフィルムなどの樹脂フィルムなどが用いられる。接着剤としては、エポキシ系接着剤などの熱硬化性接着剤などが用いられる。形成される接着層23の厚さは、たとえば、基材表面に塗布される接着層前駆体の厚さの半分となる。たとえば、基材表面に塗布される接着層前駆体の厚さが4μmである場合、平坦化層25の表面部25aに形成される接着層23の厚さは2μmとなる。接着層23の厚さは、前述の平坦化層25の厚さd4と同様に、平坦化層25の種類、基材の材料の種類、接着剤の種類などによって調整することができる。
次いで、ノズルプレート接合装置38を用いて、インクジェットヘッド本体21に形成された接着層23とノズルプレート22とを接着する。具体的には、まずノズルプレート接合装置38の押圧具39のノズルプレート押し当て面40にノズルプレート22を真空吸着させる。次いで、アライメントカメラ41で相対位置を確認しながら、インクジェットヘッド本体21の各インク室開口部33の中心軸線とノズルプレート22のノズル孔34の中心軸線とが一致するように位置合わせを行い、インクジェットヘッド本体21の接合面25aに形成された接着層23に、押圧具39によってノズルプレート22を当接して押圧し、接着層23を硬化させる。接着層23の硬化は、たとえば接着層23を形成する接着剤として熱硬化性接着剤を用いる場合には、押圧具39によってインクジェットヘッド本体21の接合面23aにノズルプレート22を押圧するとともに、押圧具39に内蔵される図示しないヒータで接着層23を加熱することによって行なうことができる。また、接着層23は、押圧具39による押圧を一定時間保持することによって経時硬化させることもできる。このようにして接着層23を硬化させることによって、前述の図2に示すように、インクジェットヘッド本体21とノズルプレート22とが接着層23で接着されたインクジェットヘッド20が得られる。
本実施態様では、インクジェットヘッド本体21の接合面である平坦化層25の表面25aは平坦であるので、ノズルプレート22に波打ちを生じさせることなく、インクジェットヘッド本体21の接合面25aとノズルプレート22の接合面22aとを平行に接合することができる。したがって、インク室26の軸線33aとノズル孔34の軸線34aとのずれを防ぎ、液滴(インク)の着弾精度に優れるインクジェットヘッド20を得ることができる。
また、本実施態様では、接着剤の粘度に影響されることなく、接着層23をインクジェットヘッド本体21の接合面25aの全体にわたって形成することができるので、接着層23を構成する接着剤として、たとえば25℃における粘度が3000mPa・s(3000cP)程度という粘度の高いものを用いても、気泡の噛み込みは生じない。すなわち、本実施態様では、ノズルプレート22の波打ちおよび気泡の噛み込みを考慮する必要はないので、接着層23を形成する接着剤として前述のように粘度の高いものを用い、ノズル孔34およびインク室26への接着剤の回り込み、すなわち入り込みを防ぐことが可能である。
ノズル孔34およびインク室26への接着剤の回り込みをより確実に防ぐためには、接着層23の形成に使用される接着剤の粘度は、基材表面に形成される接着層前駆体の厚さに応じて適宜選択されることが好ましい。たとえば、接着層前駆体の厚さが2μmの場合、接着剤の温度25℃における粘度(以後、単に粘度と称する)は、1000mPa・s(1000cP)程度に選択される。ただし、インク室開口部33への接着剤の入り込みをより確実に防ぐためには、接着剤の粘度は、100mPa・s(100cP)以上であることが好ましい。接着剤の粘度が100mPa・s(100cP)未満であると、ノズル孔34およびインク室26に接着剤が入り込み、ノズル孔34およびインク室26の目詰まりが生じる可能性がある。また、接着剤の粘度の上限は、特に制限されないけれども、5000mPa・s(5000cP)以下であることが好ましい。接着剤の粘度が5000mPa・s(5000cP)を超えると、接着層23の表面が波うちやすくなり、ノズルプレート22表面のうねりの原因となる恐れがある。さらに、気泡が噛み込みやすくなり、ノズル孔34間の連通およびノズルプレート22表面のうねりの原因となる恐れがある。
以上のように、本発明のヘッド部とノズルプレートとの接合方法によれば、ノズルプレート22の波打ちを生じさせることなく、ノズルプレート22を平坦な状態でヘッド部24と接着させることができる。これによって、ノズル孔34の軸線34aと、インク室開口部33の軸線33aすなわちインク室26の軸線33aとにずれが生じることを防ぐことができる。
また、本発明のヘッド部とノズルプレートとの接合方法によれば、ノズルプレート22とヘッド部24との接合時に気泡が噛み込まれることを防ぐことができるので、ノズル孔34同士もしくはインク室26同士または連通すべきでないノズル孔34とインク室26とが気泡によって連通することを防止することができる。また、ヘッド部24とノズルプレート22との接合時に、インク室開口部33およびノズル孔34に接着剤が入り込むことを防ぐことができるので、インク室開口部33およびノズル孔34の目詰まりを防止することができる。
このような本発明のヘッド部とノズルプレートとの接合方法を用いる本発明のインクジェットヘッドの製造方法によれば、ノズル孔34の軸線34aとインク室開口部33の軸線33aとのずれがなく、すなわちノズル孔34の傾きがなく、インクを所望の位置に着弾させることのできる着弾精度に優れるインクジェットヘッド20を製造することができる。したがって、インクジェットヘッド20の製造歩留を向上させ、ひいてはインクジェットヘッド20の製造原価の低減を図ることができる。
また、本発明のインクジェットヘッドの製造方法によれば、ノズル孔34同士の連通およびインク室26同士の連通などがなく、またインク室開口部33およびノズル孔34の目詰まりのないインクジェットヘッド20を製造することができる。したがって、ノズル孔34からのインクの吐出特性を、インクジェットヘッド20に形成される複数のノズル孔34同士で略等しくし、さらに複数のインクジェットヘッド20同士においても略等しくすることができるので、高品位のインクジェットヘッド20を安定して提供することができる。
このように、本発明のインクジェットヘッドの製造方法によれば、たとえば画像情報に応じた画像を紙などに印刷するインクジェットプリンタ、カラーフィルタの欠陥部分を修復する際の部分的な薄膜の形成、配線の形成などに使用される液滴吐出装置などのインクジェット吐出装置の基幹部品であるインクジェットヘッドを、歩留良く、高品位に製造することができる。
以下に本発明の実施例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
以下において、表面粗さ(算術平均粗さRaおよび最大粗さRmax)の測定は、表面粗さ測定装置(商品名:DekTak8、DekTak社製)によって行なった。
(試験例1)
(試験例1a)
[ヘッド部作製工程]
前述の図5に示すように、圧電性基板30に、深さd1が約300μm、幅w1が約70μmの溝部31を形成した後、溝部31の内表面部に電力供給用電極28を形成し、さらに蓋部材32および背面板を接着してインク室26を形成した。次いで、前述の図6に示すように、ポリパラキシレンを厚さd2が5μmになるように成膜して電極保護層29を形成し、ヘッド部24を得た。形成された電極保護層29の表面粗さ、すなわちヘッド部24の表面部24aの表面粗さを測定したところ、最大粗さRmaxで15μmであった。
[ノズルプレート作製工程]
前述の図2に示すように、厚さ50μmの平板状基材に、接合面22a側における直径が約40μm、背面22b側における直径が約20μm、テーパ角度が約10°のノズル孔34を形成し、ノズルプレート22を得た。
[接合工程]
まず、前述の図7に示すように、基材36であるポリイミドフィルムの表面に、バーコータ装置を用いてエポキシ系接着剤(粘度500mPa・s(500cP))を塗布し、平坦化層前駆体37として、厚さd3が50μmの接着層を形成した。形成した接着層に、ヘッド部作製工程で作製したヘッド部24の表面部24aである電極保護層29の表面部24aを押し当てることによって、ヘッド部24の電極保護層29の表面部24aに、ポリイミドフィルムに形成した接着層の半分の厚さである厚さ25μmの接着剤を転写させた。転写された接着剤を温度60℃で2時間加熱することによって硬化させ、厚さd4が25μmの平坦化層25を形成した。形成された平坦化層25を、酸素を含むプラズマでアッシングし、インクジェットヘッド本体21を得た。
次いで、ポリイミドフィルムの表面に、バーコータ装置を用いてエポキシ系接着剤(粘度3000mPa・s(3000cP))を塗布し、厚さ4μmの接着層前駆体を形成した。形成した接着層前駆体に、アッシングされた平坦化層25の表面部25aを押し当てることによって、平坦化層25の表面部25aに、ポリイミドフィルムに形成した接着層前駆体の半分の厚さである厚さ2μmの接着剤を転写させて塗布し、接着層23を形成した。
次いで、前述の図8に示すノズルプレート接合装置38を用いて、インクジェットヘッド本体21に形成された接着層23に、ノズルプレート22の接合面22aを押圧具39で押圧した状態で接着層23を温度60℃で2時間加熱して硬化させ、インクジェットヘッド本体21とノズルプレート22とを接合した。以上のようにして、インクジェットヘッド20を得た。
以上の操作を繰返し行ない、5個のインクジェットヘッド20を作製した。各インクジェットヘッド20の作製過程において、それぞれ、形成された平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaを該表面部25aの5箇所で測定し、これらの平均値を求めた。求めた平均値は0.1〜0.3μmの範囲となり、いずれのインクジェットヘッド20の作製過程においても、平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaの平均値は0.3μm以下であった。
また同様に、得られた各インクジェットヘッド20について、それぞれ、ノズルプレート22の背面22bの算術平均粗さRaを5箇所で測定し、これらの平均値を求めたところ、平均値は0.4〜0.8μmの範囲となり、いずれのインクジェットヘッド20においても、ノズルプレート22の背面22bの算術平均粗さRaの平均値は0.8μm以下であった。また、ノズルプレート22の表面を目視によって観察したところ、ノズルプレート22表面には波打ちは生じていなかった。また、ノズル孔34を目視によって観察したところ、接着剤の回り込み(入り込み)は生じていなかった。
(試験例1b)
平坦化層25を形成するための接着剤として、粘度500mPa・s(500cP)のエポキシ系接着剤に代えて、粘度2500mPa・s(2500cP)のエポキシ系接着剤を用いる以外は試験例1aと同様にして、5個のインクジェットヘッド20を作製した。
試験例1aと同様にして、各インクジェットヘッド20の作製過程において、それぞれ、形成された平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaを該表面部25aの5箇所で測定し、これらの平均値を求めたところ、平均値は0.2〜0.5μmの範囲となり、いずれのインクジェットヘッド20の作製過程においても、平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaの平均値は0.5μm以下であった。
また、得られた各インクジェットヘッド20について、それぞれ、ノズルプレート22の背面22bの算術平均粗さRaを5箇所で測定し、これらの平均値を求めたところ、平均値は0.6〜1.0μmの範囲となり、いずれのインクジェットヘッド20においても、ノズルプレート22の背面22bの算術平均粗さRaの平均値は1.0μm以下であった。また、ノズルプレート22の表面を目視によって観察したところ、ノズルプレート22表面には波打ちは生じていなかった。また、ノズル孔34を目視によって観察したところ、接着剤の回り込みは生じていなかった。
(試験例1c)
平坦化層25を形成するための接着剤として、粘度500mPa・s(500cP)のエポキシ系接着剤に代えて、粘度5000mPa・s(5000cP)のエポキシ系接着剤を用いる以外は試験例1aと同様にして、5個のインクジェットヘッド20を作製した。
試験例1aと同様にして、各インクジェットヘッド20の作製過程において、それぞれ、形成された平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaを該表面部25aの5箇所で測定し、これらの平均値を求めたところ、平均値は0.9〜1.5μmの範囲となり、いずれのインクジェットヘッド20の作製過程においても、平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaの平均値は1.5μm以下であった。
また、得られた各インクジェットヘッド20について、それぞれ、ノズルプレート22の背面22bの算術平均粗さRaを5箇所で測定し、これらの平均値を求めたところ、平均値は1.5〜1.9μmの範囲となり、いずれのインクジェットヘッド20においても、ノズルプレート22の背面22bの算術平均粗さRaの平均値は1.9μm以下であった。また、ノズルプレート22の表面を目視によって観察したところ、ノズルプレート22表面は小さく波打っていた。また、ノズル孔34を目視によって観察したところ、接着剤の回り込みは生じていなかった。
(試験例1d)
平坦化層25を形成するための接着剤として、粘度500mPa・s(500cP)のエポキシ系接着剤に代えて、粘度10000mPa・s(10000cP)のエポキシ系接着剤を用いる以外は試験例1aと同様にして、5個のインクジェットヘッド20を作製した。
試験例1aと同様にして、各インクジェットヘッド20の作製過程において、それぞれ、形成された平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaを該表面部25aの5箇所で測定し、これらの平均値を求めたところ、平均値は2.3〜2.7μmの範囲となり、いずれのインクジェットヘッド20の作製過程においても、平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaの平均値は2.7μm以下であった。
また、得られた各インクジェットヘッド20について、それぞれ、ノズルプレート22の背面22bの算術平均粗さRaを5箇所で測定し、これらの平均値を求めたところ、平均値は2.4〜3.0μmの範囲となり、いずれのインクジェットヘッド20においても、ノズルプレート22の背面22bの算術平均粗さRaの平均値は3.0μm以下であった。また、ノズルプレート22の表面を目視によって観察したところ、ノズルプレート22表面は大きく波打っていた。また、ノズル孔34を目視によって観察したところ、接着剤の回り込みは生じていなかった。
以上の結果を表1に示す。なお表1では、ノズルプレート表面の平面度について、ノズルプレート表面の算術平均粗さRaの平均値がすべて1.0μm以下である場合を良好(○)と評価し、算術平均粗さRaの平均値が1.0μmを超え2.0μm未満であるものがある場合を実使用上問題なし(△)と評価し、算術平均粗さRaの平均値が2.0μmを超えるものがある場合を不良(×)と評価した。
Figure 2007076009
表1から、平坦化層25を形成するための接着剤の粘度が低いほど、波打ちを生じさせることなく、ノズルプレート22を平坦に接着できることが判る。
(試験例2)
試験例1aと同様にして、ヘッド部24を作製した。
平坦化層前駆体37としてポリイミドフィルムに形成する接着層の厚さを25μmとする以外は、試験例1aと同様にしてヘッド部24の凹凸状の表面部24aに接着剤を転写して硬化させ、厚さ12.5μmの第1の平坦化層を形成した。次いで、同様の操作を繰返して2回目の平坦化層形成を行ない、厚さ12.5μmの第2の平坦化層を形成した。このようにして第1の平坦化層および第2の平坦化層からなる平坦化層を形成した。
以上の平坦化層の形成操作を5個のヘッド部24に対して繰返し行なった。各平坦化層形成過程において、それぞれ、第1の平坦化層の表面および第2の平坦化層の表面の算術平均粗さRaを試験例1aと同様に5箇所で測定して平均値を求めた。第1の平坦化層表面の算術平均粗さRaの平均値は1.3〜1.6μmの範囲となり、いずれも1.6μm以下であった。また、第2の平坦化層表面の算術平均粗さRaの平均値は0.2〜0.3μmの範囲となり、いずれも0.3μm以下であった。
以上のことから、本試験例のように、1回目の転写による接着剤の転写量が少ない場合には、接着剤の転写を複数回繰返し行ない、平坦化層を複数の層で形成することによって、所望の転写量を確保して所望の厚さの平坦化層を形成し、ヘッド部24の表面部24の凹凸を平坦化できることが判った。
(試験例3)
(試験例3a)
平坦化層25の厚さd4を50μmに変更すること以外は試験例1aと同様にして、5個のインクジェットヘッド20を作製した。
試験例1aと同様にして、各インクジェットヘッド20の作製過程において、それぞれ、形成された平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaを該表面部25aの5箇所で測定し、これらの平均値を求めたところ、平均値は0.1〜0.3μmの範囲となり、いずれのインクジェットヘッド20の作製過程においても、平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaの平均値は0.3μm以下であった。
また、得られた各インクジェットヘッド20について、それぞれ、ノズルプレート22の背面22bの算術平均粗さRaを5箇所で測定し、これらの平均値を求めたところ、平均値は0.6〜0.9μmの範囲となり、いずれのインクジェットヘッド20においても、ノズルプレート22の背面22bの算術平均粗さRaの平均値は0.9μm以下であった。また、ノズルプレート22の表面を目視によって観察したところ、ノズルプレート22表面には波打ちは生じていなかった。また、ノズルプレート22を目視によって観察したところ、接着剤で埋まり、目詰まりしているノズル孔34が観察された。ただし、ノズルプレート22を通してインク室開口部33を目視によって観察したところ、接着剤で埋まっているインク室開口部33が観察された。
(試験例3b)
平坦化層25を形成するための接着剤として、粘度500mPa・s(500cP)のエポキシ系接着剤に代えて、粘度3000mPa・s(3000cP)のエポキシ系接着剤を用い、平坦化層25の厚さd4を50μmに変更すること以外は試験例1aと同様にして、5個のインクジェットヘッド20を作製した。
試験例1aと同様にして、各インクジェットヘッド20の作製過程において、それぞれ、形成された平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaを該表面部25aの5箇所で測定し、これらの平均値を求めたところ、平均値は0.9〜1.2μmの範囲となり、いずれのインクジェットヘッド20の作製過程においても、平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaの平均値は1.2μm以下であった。
また、得られた各インクジェットヘッド20について、それぞれ、ノズルプレート22の背面22bの算術平均粗さRaを5箇所で測定し、これらの平均値を求めたところ、平均値は1.5〜1.7μmの範囲となり、いずれのインクジェットヘッド20においても、ノズルプレート22の背面22bの算術平均粗さRaの平均値は1.7μm以下であった。また、ノズルプレート22の表面を目視によって観察したところ、ノズルプレート22表面には波打ちが多少生じていたけれども、ノズル孔34への接着剤の回り込み(入り込み)は生じていなかった。
以上のことから、平坦化層25を形成するための接着剤の粘度が低いほど、平坦化層25の表面部25aの算術平均粗さRaを小さくでき、該表面部25aの平坦度を高くすることができることが判った。また、平坦化層25を形成するための接着剤の粘度を高くすることによって、平坦化層25の厚さd4が50μmと大きい場合であっても、ノズル孔34への接着剤の入り込みを防ぐことができることが判った。
本発明の実施の一形態であるインクジェットヘッド本体21およびインクジェットヘッド20を備える本発明の実施の他の形態であるインクジェットヘッド20の構成を簡略化して示す斜視図である。 図1に示すインクジェットヘッド20の切断面線I−Iを含む仮想平面における断面構成を簡略化して示す断面図である。 図2に示すインクジェットヘッド20を拡大して示す拡大図である。 本実施態様のインクジェットヘッドの製造方法によってインクジェットヘッド20を製造する手順を示すフローチャートである。 インク室26が形成された状態を示す斜視図である。 電極保護層29を形成した状態を示す断面図である。 平坦化層25を形成する様子を簡略化して示す断面図である。 インクジェットヘッド本体21とノズルプレート22とを接着する様子を簡略化して示す斜視図である。 図8の切断面線III−IIIを含む仮想平面における断面図である。 ヘッド部1とノズルプレート4とを接合する様子を簡略化して示す断面図である。 ヘッド部1とノズルプレート4とを接合した状態を示す断面図である。 ヘッド部1とノズルプレート4とを接合した状態を示す断面図である。
符号の説明
1 ヘッド部
2 インク室
3 インク室開口部
4 ノズルプレート
5 ノズル孔
6 接着剤
7 接合装置
8 圧力発生手段
9 電力供給用電極
10 電極保護層
11 付着物
20 インクジェットヘッド
21 インクジェットヘッド本体
22 ノズルプレート
23 接着層
24 ヘッド部
25 平坦化層
26 インク室
27 圧力発生手段(隔壁部)
28 電力供給用電極
29 電極保護層
29a 付着物
30 圧電性基板
31 溝部
32 蓋部材
33 インク室開口部
34 ノズル孔
35 電極膜
36 基材
37 平坦化層前駆体
38 ノズルプレート接合装置
39 押圧具
40 ノズルプレート押し当て面
41 アライメントカメラ

Claims (10)

  1. 凹凸状の表面部を有し、該表面部で開口されインクを貯留するインク室が形成されたヘッド部と、
    ヘッド部の凹凸状の表面部を覆うように設けられ、該表面部に接する側と反対側の表面部が平坦に形成される平坦化層とを備えることを特徴とするインクジェットヘッド本体。
  2. 平坦化層は、樹脂材料で形成されることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド本体。
  3. 樹脂材料は、接着剤であることを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッド本体。
  4. 平坦化層は、ヘッド部の凹凸状の表面部に接する側と反対側の表面部がアッシングされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のインクジェットヘッド本体。
  5. 平坦化層は、複数の層を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のインクジェットヘッド本体。
  6. ヘッド部は、インク室からインクを吐出させるための圧力を発生させる圧力発生手段と、圧力発生手段に電力を供給する電力供給用電極と、電力供給用電極を保護する電極保護層とを含み、
    ヘッド部の凹凸状の表面部は、電極保護層によって形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のインクジェットヘッド本体。
  7. 平坦化層の厚さは、電極保護層の厚さの3倍以上であることを特徴とする請求項6記載のインクジェットヘッド本体。
  8. 請求項1〜7のいずれか1つに記載のインクジェットヘッド本体と、
    インクを吐出させるためのノズル孔が形成され、該ノズル孔とインクジェット本体のインク室とが連通するように設けられるノズルプレートと、
    インクジェットヘッド本体の平坦化層とノズルプレートとの間に設けられ、インクジェットヘッド本体とノズルプレートとを接着する接着層とを備えることを特徴とするインクジェットヘッド。
  9. 凹凸状の表面部を有し、該表面部で開口されインクを貯留するインク室が形成されたヘッド部と、インクを吐出させるためのノズル孔が形成されたノズルプレートとの接合方法であって、
    ヘッド部の凹凸状の表面部を覆い、かつ該表面部に接する側と反対側の表面部が平坦になるように平坦化層を形成する工程と、
    形成された平坦化層とノズルプレートとを、ヘッド部のインク室とノズルプレートのノズル孔とが連通するように、接着剤によって接着する工程とを含むことを特徴とするヘッド部とノズルプレートとの接合方法。
  10. 請求項9記載のヘッド部とノズルプレートとの接合方法によって、ヘッド部とノズルプレートとを接合する工程を含むことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
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