上記のように、入力ペン90に例示される従来の入力ペンは、ボールペン等の通常の筆記具と同様のサイズであり、据え置き型のデスクトップコンピュータ等に特に好適である。一方、最近では、PDA(Personal Digital Assistant)と呼ばれる携帯型の電子機器が普及するなど、電子機器の小型化が進んでいる。このため、小型の電子機器に使用するための入力装置についても、小型化が望まれている。しかしながら、上記従来の入力ペンの構造を変えずに大幅な小型化を実現するのは難しいという問題があった。
上記の入力ペン90を例にとれば、小型化に際しては、単に短小にするだけでなく細型のものにしなければならないので、フェライトコア94及び芯体92を細くする必要がある。しかし、芯体92はフェライトチップ93を内蔵しているため、芯体92を細くすると、フェライトチップ93が内蔵される部分の壁面は肉薄になってしまう。一般に、芯体92のような部材は樹脂製であることが多いので、肉薄になることで強度が不足し、操作時の荷重により塑性変形する恐れがある。そして、フェライトコア94の内部で芯体92が変形した場合、フェライトコア94の内壁に芯体92が当たってしまい、芯体92が移動しなくなる恐れがある。この状態では、入力ペン90による入力操作は行えない。従って、芯体92を細くすることは困難である。
一方、フェライトコア94は芯体92が挿入される貫通孔を有するので、フェライトコア94を細くするためには、貫通孔を細くし、かつ、肉薄にしなければならない。しかし、芯体92の細型化が難しい上、フェライトは構造材としては脆いものであり、限度を超えて肉薄にしてしまうと強度不足から割れを生じる恐れがある。
例えば、入力ペン90の製造過程において、フェライトコア94にコイル95の巻線を行う工程ではフェライトコア94に線材の張力が加わる。また、該工程はフェライトコア94を固定して行われるが、線材の張力によってフェライトコア94の固定部分には応力が集中するので、フェライトコア94には相応の堅牢性が求められる。さらに、輸送時の振動や製品としての落下衝撃試験を考慮すれば、フェライトコア94に要求される強度は決して小さくない。
そして、フェライトコア94が割れてしまうとコイル95のインダクタンスが当初の値よりも低下し、同調回路99の同調周波数がずれてしまうので、入力装置としての使用に耐えられない可能性がある。
従って、上記入力ペン90の例では、芯体92及びフェライトコア94は一定以上の強度を確保する必要があり、入力ペン90の構成をそのまま小型化することは困難であった。
さらに、電子機器が小型化されると、携帯性の向上がもたらされる一方で、入力操作時における操作性の低下が懸念される。このため、小型で、かつ操作性の良い入力装置が求められていた。
そこで、本発明は、位置を測定するタブレット等の位置検出装置に対し、その測定すべき位置を指示するとともに、操作者の操作を通知するペン型座標指示器において、より細型の構成を実現することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、細型のペン型座標指示器において、良好な操作性を確保することにある。
本発明は、このような課題を解決するために、次のような特徴を備えている。なお、次に示す説明中、括弧書きにより実施の形態に対応する構成を一例として示す。符号等は、後述する図面参照符号等である。
請求項1記載の発明に係るペン型座標指示器は、位置を測定する位置検出装置に対し、その測定すべき位置を指示するとともに操作者の操作を通知するペン型座標指示器(例えば、図1に示す入力ペン10)であって、開口部の無い端面を有する円柱形状のコア(例えば、図1に示すフェライトコア104)に巻回されたコイル(図1の105)と、このコイルの軸線に沿って、前記コアと離隔し操作者の操作に応じて接近する、前記コアの端面に対向して配設される円柱形状の磁性体(例えば、図1に示すフェライトチップ102)と、前記コアの端面と前記磁性体との間に介設される弾性体(図1に示す103)と、を備え、前記弾性体は、前記コアの端面において、該端面の一部においてのみ接触し、かつ前記磁性体の面のうち前記コアの端面に対向する対向面において、該対向面の一部においてのみ接触しており、前記コアの端面の一部と前記磁性体の対向面の一部である前記弾性体を介さずに対向する部分のいずれか一方または両方に突出部が形成されており、該突出部は、前記弾性体の外側面に沿った内面を有する円筒形状になっており、前記突出部の高さは、前記弾性体の厚みよりも小さい高さになっていることを特徴とする。
ここで、上記位置検出装置としては、例えば、平板形状のケース内に複数のループコイルを備え、これらのループコイルから所定の発振周波数の電波を発信し、該電波によりペン型座標指示器内のコイルに誘起される電圧をもとにペン型座標指示器の位置を検出するものが挙げられるが、液晶表示パネル等の表示画面と一体となって構成されるものとしても良く、また、形状は平板以外であっても良い。また、上記磁性体としては、例えばソフトフェライトが挙げられる。さらに、上記コアとしては、例えばソフトフェライト等の磁性体やその他の各種金属を用いた部材が挙げられる。
請求項1記載の発明によれば、位置を測定する位置検出装置に対し、その測定すべき位置を指示するとともに操作者の操作を通知するペン型座標指示器において、開口部の無い端面を有するコアに巻回されたコイルと、このコイルの軸線に沿ってコアの端面に対向して配設される磁性体とを備え、コアと磁性体とは離隔して配設されており、操作者の操作に応じて接近する。また、コアの端面には開口部が無く、磁性体とコアとが接近しても磁性体がコイルの内側に進入することはない。
従って、本発明に係るペン型座標指示器においては、磁性体がコイルのコアに接近することによってコイルのインダクタンスを変化させ、位置を測定する位置検出装置に対し、操作者の操作を通知することができる。また、コアの端面には開口部を設ける必要が無いので、コアを細くしてもコアの強度不足等を招く恐れがない。これにより、コアを細く形成し、コアと磁性体とをコイルの軸線に沿って配設することで、非常に細いペン型座標指示器を実現できる。
また、操作者による操作の際には、コアと磁性体が接近するので、コイルのインダクタンスは増大する方向へ変化する。位置検出装置とともに使用される座標指示器には、操作を検知するために加圧時に容量が変化する可変コンデンサを用いたLC共振回路を採用することがある。このような座標指示器は、操作者による操作が加わると可変コンデンサの容量が増大し、結果的にLC共振回路の共振周波数が低い方へシフトするもので、感度が良い一方で構造が複雑であり、高価である。本発明に係るペン型座標指示器は、操作時にコイルのインダクタンスが増大するので、該コイルを含むLC共振回路を構成すれば、操作時に共振周波数が低い方へシフトする。従って、可変コンデンサを用いた座標指示器と同様の動作を行うペン型座標指示器を、より簡単な構成により、安価で実現できる。さらに、操作時におけるコイルのインダクタンス変化は、コイルと磁性体とが近接しているほど顕著である。このため、初期状態におけるコイルと磁性体との間の所定の距離を短くすれば、より確実に操作を検知できる上、より小型のペン型座標指示器を実現できる。
また、コアの端面と磁性体との間に介設される弾性体により、操作が無い初期状態ではコアと磁性体とが互いに離隔した状態で保持され、操作によってコアと磁性体が接近した場合はコアと磁性体とが互いに離隔する方向へ付勢され、操作後は初期状態が復元される。
従って、操作後の復元動作がスムーズに行われるので、操作性の良いペン型座標指示器を実現できる。即ち、操作時の応答が良好で、かつ速やかに復元する機構を簡単な構成によって実現するものであり、容易に小型化でき、かつ、低コスト化が可能である。また、一般に、弾性体に力が加わる場合の変形量は加わった力の大きさに対応するので、コイルのインダクタンスの変化量から弾性体の変形量を求め、操作時に加えられた力を求めることも可能である。
また、弾性体は、例えば貫通孔を有する平板形状や環状、或いは球体等に構成され、コアの端面の一部においては該端面の一部においてのみ接触し、磁性体においてコアの端面に対向する対向面においては該対向面の一部においてのみ接触している。即ち、弾性体はコアの端面の全体を覆うものではなく、磁性体の対向面全面を覆うものでもない。そして、コアの端面と磁性体の対向面とは、その一部において、間に弾性体を介しないで対向しており、この部分においては、コアと磁性体との間における磁気的な相互作用が弾性体によって阻害されない。
従って、コアの端面或いは磁性体の対向面の全面が弾性体で覆われた場合に比べて、操作時にコイルのインダクタンスが顕著に変化する。さらに、操作時に、弾性体の弾力に比較して大きい力が加わった場合には、コアと磁性体とが非常に近接し、或いは接触して、コイルのインダクタンスがより大きく変化する。これにより、操作者による操作が鋭敏に、かつ確実に検知されるので、応答が良好で操作性の良いペン型座標指示器を実現できる。
また、コアの端面と、磁性体においてコアの端面に対向する対向面との少なくともいずれか一方には、弾性体を取り囲むように、弾性体の厚みよりも低い突出部が形成されており、コアと磁性体とが対向する部分では、突出部と面、もしくは突出部どうしが対向する。つまり、突出部が無い場合と比較して、初期状態でコアと磁性体とがより近接しており、操作時にはコアと磁性体とがさらに接近する。また、突出部の高さは弾性体の厚みよりも低く、初期状態においてコアと磁性体とは接触しない。
コイルのインダクタンスに対する磁性体の影響はコイルと磁性体との間の距離の2乗に反比例するので、コアと磁性体とが近接しているほど操作時にコイルのインダクタンスが急激に変化する。本発明に係るペン型座標指示器は突出部を備えるので、初期状態における弾性体とコアの間隔を小さくし、操作時に、コアと磁性体とを速やかに接近させることができる。さらに、突出部の高さは弾性体の厚みよりも低いので、非操作時にコアと磁性体とを離隔させておくための構成としては弾性体を挟んでおけば良いので、構造の複雑化を避けられる。従って、操作時にコイルのインダクタンスが鋭敏に変化し、位置検出装置側において操作者の操作を確実に検知できるので、良好な応答を示し、操作性の良いペン型座標指示器を実現できる。
なお、弾性体は、コア及び磁性体に対して線接触する部材であり、コアと磁性体とが接近する際には容易に弾性変形するものである。環状部材であってもよいが、必ずしも環状になっている必要はなくボール上のものであってもよい。また、突出部は、弾性体の外側面に沿った内面を有する円筒形状になっており、この円筒形状の内部に弾性体が入るようになっている。この弾性体の外周面と突出部の内周面とが当接することで弾性体は支持される。
従って、より弱い力で操作しても、確実に弾性体が変形してコアと磁性体とが接近するので、操作時の抵抗が小さく、比較的弱い力で操作可能なペン型座標指示器を実現できる。また、突出部が弾性体を支持するので、使用に際してコア、磁性体及び弾性体の相対位置のずれを防止でき、より信頼性の高いペン型座標指示器を実現できる。さらに、コアと磁性体とをコアの軸線に沿って配置し、コアと磁性体との間に弾性体を配設する際の位置合わせが容易である。
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載のペン型座標指示器において、ペン型のケース内にコア及び磁性体を収容して構成され、該ケースの先端には該ケース内外に挿通する芯(101)を備えており、磁性体が芯の基端部に連結されることを特徴とする。
請求項3記載の発明によれば、操作者の操作によって芯がケース内に押し込まれると、芯とともに磁性体が移動してコアに接近し、コイルのインダクタンスを変化させる。
従って、操作者の操作に対して確実に磁性体が移動し、例えば操作者がケースを傾けて操作した場合のように、操作による力が伝達されにくい場合であっても、磁性体がコアに接近する。これにより、操作者の操作に確実に応答し、操作性の良いペン型座標指示器を実現できる。また、磁性体は芯の外側にあるので、芯の内部に磁性体を収容する空間等を設ける必要がなく、芯を細くすることができる。即ち、芯に磁性体を収容するために芯の内部に空間を形成すると、この空間の壁部は肉薄になってしまうので、使用に耐えうる強度を確保するためには芯を太くせざるを得ない。
しかしながら、本発明に係るペン型座標指示器では、芯は磁性体を内蔵しないので、芯を細くしても強度が不足する恐れがない。このため、芯を細く形成して、より細型のペン型座標指示器を実現できる。また、芯を細くすると芯を挿通させるためのケース先端の孔が小さくて済むため、ケースの細型化が容易である他、ペン先として機能する芯を細くすることで、細かな操作を行う際の操作性が向上する。さらに、例えば、芯、磁性体、弾性体及びコアをコアの軸線に沿って直列に配置した場合、ケースを非常に細くすることが可能であり、より細型のペン型座標指示器を実現できる。
請求項4記載の発明は、請求項3記載のペン型座標指示器において、前記コア及び前記磁性体を収容する前記ケースの中空部には、前記ケースの先端側において、前記中空部の内径が狭まる段部(例えば、図11に示す段部B)が形成され、前記コアの前記磁性体に対向する端面が前記中空部に形成された段部に当接するように配置されることを特徴とする。
請求項4記載の発明によれば、コアは、ケースの中空部から外側へ移動しないように段によって支持されている。これにより、本発明のペン型座標指示器の使用中等にコアが動くことが無く、がたつきの無い安定した操作感を実現することができる。また、コアを固定するために接着のような手法を用いる必要がなく、本発明を適用したペン型座標指示器は少ない工数で容易に製造可能である。
請求項5記載の発明は、請求項3または4記載のペン型座標指示器において、前記コアの前記磁性体に対向しない側の端面と、前記ケースの中空部における基端部との間に介設される第2の弾性体(例えば、図10に示す緩衝部材707)を備えることを特徴とする。
請求項5記載の発明によれば、コアの磁性体に対向しない側の端面と、ケースの中空部における基端部との間に第2の弾性体が介設されるので、第2の弾性体の弾性によってコアを支持することができる。また、コアの長手方向のサイズに公差が生じた場合であっても、この公差を第2の弾性体の弾性によって吸収することが可能となり、コアの公差に関わらずコアを確実に支持することができるので、安定した操作感を実現できる。また、本発明を適用したペン型座標指示器は、コアの公差を補正する必要がないため、少ない工数で容易に製造可能である。
請求項6記載の発明は、請求項5記載のペン型座標指示器において、前記コアの前記磁性体に対向しない側の端面と、前記第2の弾性体との間に介設される支持部材(例えば、図10に示す基板ホルダー703)をさらに備え、前記支持部材は、前記コアの端面に向かって突出するコア保持突起(例えば、図11に示すコア保持突起721)を備え、前記コアの前記支持部材に接する端面には、前記コア保持突起と嵌合する凹部が形成されてなることを特徴とする。
請求項6記載の発明によれば、コア保持突起とコアの凹部とが嵌合し、さらに第2の弾性体と支持部材とによってコアが支持されることで、コアを確実に支持することができる。これにより、本発明のペン型座標指示器の使用中等にコアが動くことが無く、がたつきの無い安定した操作感を実現することができる。また、コアを固定するために接着のような手法を用いる必要がなく、本発明を適用したペン型座標指示器は少ない工数で容易に製造可能である。
請求項7記載の発明は、請求項3から6のいずれかに記載のペン型座標指示器において、前記コア及び前記磁性体を収容する前記ケースの中空部には、前記ケースの先端側において、該中空部の内径が更に狭まる第2の段部(例えば、図11に示す段部C)が形成され、前記芯の基端部には前記ケースの横断面に平行な平面部が形成されてなり、前記芯は、前記ケースの中空部に形成された第2の段部に前記平面部が接するように配置されることを特徴とする。
請求項7記載の発明によれば、第2の段部によって、芯がケースの外側へ移動しないように保持される。これにより、芯がケースの外側へ動くことが無いので、がたつきの無い安定した操作感を実現することができる。また、芯を固定するために芯と磁性体を接着する等の手法を用いる必要がなく、本発明を適用したペン型座標指示器は少ない工数で容易に製造可能である。
請求項8記載の発明は、請求項7記載のペン型座標指示器において、前記芯の基端部に形成された平面部には、さらに前記磁性体の端面に向かって突出する磁性体保持突起(例えば、図11に示すチップ保持突起722)が形成され、前記磁性体の前記芯に接する端面には、前記磁性体保持突起と嵌合する凹部が形成されてなることを特徴とする。
請求項8記載の発明によれば、磁性体保持突起と磁性体の凹部とが嵌合することで磁性体と芯が互いに一体となった状態で支持される。これにより、芯がケースの外側へ向かって移動したり、ケースの横断面方向に動いたりすることがなく、がたつきの無い安定した操作感を実現することができる。また、芯を固定するために芯と磁性体を接着する等の手法を用いる必要がなく、本発明を適用したペン型座標指示器は少ない工数で容易に製造可能である。
なお、以上の説明において括弧書きにより示した符号は、あくまで一例として、請求項記載の構成要件に対応する図面参照符号を示すものであり、請求項記載の構成要件を具体的に限定するものでは無い。
以上説明したように、本願請求項1または2に記載の発明によれば、コアの端面には開口部を設ける必要が無いので、コアを細く形成して、非常に細いペン型座標指示器を実現することができる。また、操作時にコイルのインダクタンスが増大して、該コイルを含むLC共振回路の共振周波数が低い方へシフトするので、可変コンデンサを用いた座標指示器と同様の動作を行うペン型座標指示器を、より簡単な構成により、安価で実現できる。
また、弾性体により操作後の復元動作がスムーズに行われるので、操作性の良いペン型座標指示器を簡単な構成によって実現できる。また、コイルのインダクタンスの変化量から弾性体の変形量を求め、操作時に加えられた力を求めることも可能である。
さらに、操作時にコイルのインダクタンスが顕著に変化し、弾性体の弾力に比較して大きい力が加わった場合にはコアと磁性体とが非常に近接し、或いは接触して、コイルのインダクタンスがより大きく変化するので、応答が良好で操作性の良いペン型座標指示器を実現できる。
また、初期状態における弾性体とコアの間隔を小さくし、操作時にコアと磁性体とを速やかに接近させることで、応答が良好で操作性の良いペン型座標指示器を実現できる。さらに、非操作時にコアと磁性体とを離隔させておくための構成としては弾性体を挟んでおけば良いので、構造の複雑化を避けられる。しかも、比較的小さい力で弾性体が変形するので、操作時の抵抗が小さく、軽い力で操作可能なペン型座標指示器を実現できる。
さらに、操作時の抵抗が小さく、比較的弱い力で操作可能なペン型座標指示器を実現できる。また、突出部により弾性体を支持させて、コア、磁性体及び弾性体の相対位置のずれを防止し、より信頼性の高いペン型座標指示器を実現できる。さらに、コアと磁性体との間に弾性体を配設する際の位置合わせが容易である。
請求項3記載の発明によれば、操作者の操作に対して確実に磁性体が移動し、例えば操作者がケースを傾けて操作した場合のように、操作による力が伝達されにくい場合であっても、操作者の操作に確実に応答し、操作性の良いペン型座標指示器を実現できる。また、芯を細くすることにより、ケースの細型化と操作性の向上を図ることができる。
請求項4記載の発明によれば、コアがケースの中空部から外側へ移動しないように段部によって支持されているので、本発明のペン型座標指示器の使用中等にコアが動くことが無く、がたつきの無い安定した操作感を実現することができる。また、コアを固定するために接着のような手法を用いる必要がなく、本発明を適用したペン型座標指示器は少ない工数で容易に製造可能である。
請求項5記載の発明によれば、第2の弾性体の弾性によってコアを支持することができる上、コアの長手方向のサイズに公差が生じた場合であっても、この公差を第2の弾性体の弾性によって吸収することが可能となり、コアの公差に関わらずコアを確実に支持することができ、安定した操作感を実現できる。また、本発明を適用したペン型座標指示器は、コアの公差を補正する必要がないため、少ない工数で容易に製造可能である。
請求項6記載の発明によれば、コア保持突起とコアの凹部とが嵌合し、さらに第2の弾性体と支持部材とによってコアが支持されることで、コアを確実に支持することができる。これにより、本発明のペン型座標指示器の使用中等にコアが動くことが無く、がたつきの無い安定した操作感を実現することができる。また、コアを固定するために接着のような手法を用いる必要がなく、本発明を適用したペン型座標指示器は少ない工数で容易に製造可能である。
請求項7記載の発明によれば、第2の段部によって芯がケースの外側へ移動しないように保持されるので、がたつきの無い安定した操作感を実現することができる。また、芯を固定するために芯と磁性体を接着する等の手法を用いる必要がなく、本発明を適用したペン型座標指示器は少ない工数で容易に製造可能である。
請求項8記載の発明によれば、磁性体保持突起と磁性体の凹部とが嵌合することで磁性体と芯が互いに一体となって支持されるので、芯がケースの外側へ向かって移動したりケースの横断面方向に動くことがなく、がたつきの無い安定した操作感を実現することができる。また、芯を固定するために芯と磁性体を接着する等の手法を用いる必要がなく、本発明を適用したペン型座標指示器は少ない工数で容易に製造可能である。
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図1から図13の各図に基づき説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る入力ペン10の構成を示す断面図である。同図において、11はケース、12は基板ホルダー、13は基板、14はコンデンサ、15は同調回路、101は芯、102はフェライトチップ、103は弾性部材、104はフェライトコア、105はコイルであり、102aは、フェライトチップ102に設けられた突起である。なお、図1には、非操作状態における入力ペン10を示す。
ケース11は、ボールペンやシャープペンシル等の一般的な筆記具を模して、より小型に形成されたABS樹脂等の合成樹脂あるいは金属製の筐体であって、中空となっている。ケース11の先端には、ケース11の内外に挿通する棒状の芯101が配設され、芯101の基端部にはフェライトチップ102が固定されている。フェライトチップ102は、例えばソフトフェライト等のフェライト磁石の片体であって、可撓性の弾性部材103を介してフェライトコア104の先端に対向している。
フェライトコア104は、断面が円形や方形に形成された棒状のフェライトであり、先端面がフェライトチップ102に対向するように配設され、基端部は基板13に固定されている。また、フェライトコア104の側面にはコイル105が巻回されている。
基板13は、コンデンサ14等が実装されたプリント基板等であり、基板ホルダー12を介してケース11に固定されている。なお、コンデンサ14は公知の素子である。そして、基板13上に実装されたコンデンサ14等の素子と、コイル105とを含んで同調回路15が構成される。
ここで、フェライトコア104の先端面はほぼ平滑に形成され、フェライトチップ102の、フェライトコア104の先端面に対向する面の周縁部に、例えば円筒形状の突起102aが形成されている。
また、弾性部材103は、合成樹脂や合成ゴム等からなり、その形状は環状の構造でもよいが、ボールのような形状であってもよい。フェライトチップ102の円筒形状の突起102aの内周面側に嵌入されるようになっている。
従って、この弾性部材103を介して、フェライトコア104の端面と突起102aとが対向する構成となっている。また、弾性部材103は、フェライトチップ102とフェライトコア104とを離隔させて保持するとともに、フェライトチップ102とフェライトコア104とを接近させる方向の押圧力が加わった場合には弾性変形する。
なお、弾性部材103は、例えばシリコンゴムのような弾性体により構成され、押圧力が加わった後の初期状態への回復性を考慮すれば、好ましくは純シリコン製であり、より好ましくはゴム硬度30度の純シリコンである。また、芯101は、摺動時の摩擦に対する耐性を考慮して、ポリアセタール樹脂(ジュラコン)等の合成樹脂製であることが好ましい。
入力ペン10は、略平板状のタブレット20(図2)の上で操作される。操作時には、入力ペン10は通常の筆記具と同じくケース11の先端を下方に向けて保持され、芯101をタブレット(図2)に押しつけるように操作される。
従って、入力ペン10の操作時には芯101がケース11の内部に押し込まれることにより、芯101とともにフェライトチップ102がフェライトコア104側へ押圧され、弾性部材103が弾性変形して、フェライトチップ102がフェライトコア104に接近する。
そして、フェライトチップ102がフェライトコア104に接近することにより、フェライトコア104に巻回されたコイル105のインダクタンスが変化する。即ち、入力ペン10においては、操作時にコイル105のインダクタンスが変化する。
次いで、入力ペン10を含む座標入力装置1について説明する。図2は、座標入力装置1の構成を示す回路図である。図中、20はタブレット、30は制御回路、31は信号発生回路、32,33はX方向及びY方向の選択回路、34,35は送受切替回路、36はXY切替回路、37は受信タイミング切替回路、38は帯域フィルタ(BPF:Band Pass Filter)、39は検波器、40は低域フィルタ(LPF:Low Pass Filter)、41,42は位相検波器(PSD:Phase Shift Detector)、43,44は低域フィルタ(LPF)、45,46は駆動回路、47,48は増幅器、49は電子機器、50は表示装置、51は出力装置である。
なお、電子機器49としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等によってなる表示装置50を一体として、若しくは外部に具備したパーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、無線通信機能を有する携帯端末装置等が挙げられる。また、出力装置51としては、電子機器49に一体として、若しくは外部接続された印刷装置、無線通信装置、各種ディスクドライブ、各種半導体メモリデバイス等が挙げられる。
図3は、図2に示すタブレット20の要部構成を示す分解斜視図であり、詳細には、タブレット20を構成するX方向のループコイル群21及びY方向のループコイル群22の配置状態を示す図である。図3に示すように、タブレット20は、図中符号Xで示す方向へ延びるX方向のループコイル群21と、図中符号Yで示す方向へ延びるY方向のループコイル群22とを備えて構成される。なお、図中符号X,Yで示す方向は互いに直交する。
X方向のループコイル群21は、X方向に沿って互いに平行で且つ重なり合う如く配置された多数のループコイル、例えば48本のループコイル21−1,21−2,…21−48からなる。また、Y方向のループコイル群22は、Y方向に沿って互いに平行で且つ重なり合う如く配置された多数のループコイル、例えば上記と同じく48本のループコイル22−1,22−2,…22−48からなるものである。
X方向のループコイル群21とY方向のループコイル群22とは、互いに密接して重ね合わされ、さらに図示しない非金属素材からなるケースに収容されている。なお、図3では理解の便宜を図るため、ループコイル群21とループコイル群22とを離して図示している。また、符号21−1〜21−48,22−1〜22−48で示す各ループコイルは1ターンで構成されるものとして図示しているが、必要に応じて複数ターンをなす構成としても良い。
次に、座標入力装置1の構成及び動作を説明する。まず、入力ペン10とタブレット20との間における電波の送受信と、その際に得られる信号について、上記図2、3及び図4に示すタイミングチャートに従って説明する。なお、図4のタイミングチャートにおいて、後述するように実質的に同一の信号については、符号を併記して一個のチャートのみを図示する。
図2に示す制御回路30は周知のマイクロプロセッサ等により構成され、信号発生回路31を制御するとともに、後述する図5のフローチャートに従って選択回路32,33を介してタブレット20の各ループコイルの切り替えを制御する。また、制御回路30は、XY切替回路36及び受信タイミング切替回路37に対し、座標検出方向の切り替えを制御する。さらに制御回路30は、低域フィルタ40,43,44からの出力値をアナログ・ディジタル(A/D)変換し、後述する演算処理を実行して入力ペン10による指示位置の座標値を求めるとともに、受信信号の位相を検出して、これらを電子機器49に送出する。
選択回路32は、X方向(図3参照)のループコイル群21から一のループコイルを順次選択するものである。また、選択回路33はY方向(図3参照)のループコイル群22より一のループコイルを順次選択するものである。これら選択回路32,33は、それぞれ制御回路30からの情報に従って動作する。送受切替回路34は、選択回路32により選択されたX方向の一のループコイルを駆動回路45並びに増幅器47に交互に接続するものである。また、送受切替回路35は、選択回路33により選択されたY方向の一のループコイルを駆動回路46並びに増幅器48に交互に接続するものであって、送受切替回路34,35は後述する送受切替信号Cに従って動作する。
信号発生回路31は、所定の周波数f0、例えば500kHz(キロヘルツ)の矩形波信号A、該矩形波信号Aの位相を90゜(度:Degree)遅らせた信号B、所定の周波数fk、例えば16.625kHzの送受切替信号C、及び、受信タイミング信号Dを発生して出力する。
信号発生回路31から出力された矩形波信号Aは、そのまま位相検波器41に送出されるとともに、図示しない低域フィルタにより正弦波信号Eに変換され、さらにXY切替回路36を介して駆動回路45,46のいずれか一方へ送出される。また、信号発生回路31から出力される矩形波信号Bは位相検波器42へ送出され、送受切替信号Cは送受切替回路34,35に送出され、さらに、受信タイミング信号Dは受信タイミング切替回路37に送出される。
制御回路30からX方向を選択する情報が出力され、XY切替回路36及び受信タイミング切替回路37に入力されている状態では、信号発生回路31から出力される正弦波信号Eは駆動回路45に送出されて平衡信号に変換され、さらに送受切替回路34に送出される。ここで、送受切替回路34は、送受切替信号Cに基づいて駆動回路45又は増幅器47のいずれか一方を切り替えて接続するので、送受切替回路34から選択回路32に出力される信号は、時間T(=1/2fk)毎、上記例によれば32μsec(マイクロ秒)毎に、500kHzの信号の出力/停止が繰り返される信号Fとなる。そして、送受切替回路34から出力される信号Fは、選択回路32を介してタブレット20のX方向の一のループコイル21−i(i=1,2,…48)に送出され、該ループコイル21−iにおいては信号Fに基づく電波が発生する。
ここで、信号Fに信号が出力されている期間を送信期間とし、信号Fに信号が出力されていない期間を受信期間とする。図4のタイミングチャートに示すように、送信期間と受信期間とは上記時間T毎に、交互に繰り返される。
タブレット20上において、入力ペン10が略直立状態、即ち使用状態に保持されると、ループコイル21−iから発生した電波によって入力ペン10のコイル105(図1)が励振され、同調回路15(図1)において、信号Fに同期した誘導電圧Gが発生する。
その後、送受切替回路34の動作によって信号Fにおいて信号無しの期間、即ち受信期間に入るとともにループコイル21−iが増幅器47側に切り替えられると、該ループコイル21−iからの電波は直ちに消滅するが、入力ペン10の同調回路15に生じた誘導電圧Gは、同調回路15内の損失に応じて徐々に減衰する。
そして、誘導電圧Gに基づいて同調回路15を流れる電流により、コイル105から電波が発信される。コイル105から発信された電波によって、増幅器47に接続されたループコイル群21−iが励振され、該ループコイル群21−iにはコイル105からの電波による誘導電圧が発生する。この誘導電圧は、受信期間の間のみ送受切替回路34から増幅器47に送出され、増幅されて受信信号Hとなって受信タイミング切替回路37に送出される。
受信タイミング切替回路37には、X方向又はY方向の選択情報のいずれか一方、ここではX方向の選択情報と、実質的に送受切替信号Cの反転信号である受信タイミング信号Dとが入力されている。受信タイミング切替回路37は、信号Dが‘Hi’レベルの期間は受信信号Hを出力し、‘Lo’レベルの期間は何も出力しないため、実質的に受信信号Hと同一の信号Iを出力する。
信号Iは帯域フィルタ38に送出される。帯域フィルタ38は、周波数f0を固有の振動数とするセラミックフィルタであり、信号I中の周波数f0成分のエネルギーに応じた振幅を有する信号Jを検波器39及び位相検波器41,42に送出する。厳密には、帯域フィルタ38は、数個の信号Iが帯域フィルタ38に入力され収束した状態において、これらの信号Jを検波器39及び位相検波器41,42に送出する。
検波器39に入力された信号Jは検波・整流され、信号Kとされた後、さらに遮断周波数の充分低い低域フィルタ40によって振幅のほぼ1/2に対応する電圧値、例えばVxを有する直流信号Lに変換され、制御回路30に送出される。
信号Lの電圧値Vxは、ループコイル21−iに誘起される誘導電圧に基づくものであり、入力ペン10とループコイル21−iとの間の距離に依存した値、ここではほぼ距離の4乗に反比例した値を示す。このため、ループコイル21−iが異なるループコイルに切り替えられると、信号Lの電圧値Vxは異なる値となる。
従って、制御回路30において、各ループコイル毎に得られる電圧値Vxをディジタル値に変換し、これらに後述する演算処理を実行することにより、各ループコイルと入力ペン10との位置関係を求めることにより、入力ペン10による指示位置のX方向の座標値が求められる。なお、入力ペン10による指示位置のY方向の座標値についても同様にして求められる。
一方、位相検波器41には、信号発生回路31により発生された矩形波信号Aが検波信号として入力され、位相検波器42には、矩形波信号Aと位相が90°遅れた矩形波信号Bが検波信号として入力されている。そして、信号Jの位相が矩形波信号Aの位相とほぼ一致している場合は、位相検波器41はちょうど信号Jを正側に反転した信号M1を出力し、また、位相検波器42は正側及び負側に対称な波形を有する信号M2を出力する。なお、位相検波器41から出力される信号M1は実質的に信号Kと同一である。
信号M1は、上記の信号Kと同様に、低域フィルタ43によって信号Jの振幅のほぼ1/2に対応する電圧値、即ちVxを有する直流信号N1に変換され制御回路30に送出される。ここで、直流信号N1は実質的に信号Lと同一である。また、信号M2は、同様に低域フィルタ44によって直流信号N2に変換され、制御回路30に送出されるが、図4に示す例では位相検波器42からの信号M2において正側及び負側の成分が同一であるため、低域フィルタ44の出力の電圧値は0[V]となる。
制御回路30は、低域フィルタ43,44の出力値、ここでは信号N1,N2をディジタル値に変換し、得られたディジタル値を用いて下記式(1)で示される演算処理を実行することにより、位相検波器41,42に加わった信号、ここでは信号Jと矩形波信号Aとの位相差θを求める。
〔数1〕
θ=−tan−1(VQ/VP)…(1)
前記式(1)で、VPは低域フィルタ43の出力に対応するディジタル値を、また、VQは低域フィルタ44の出力に対応するディジタル値を示す。例えば、前述した信号Jの場合、信号N1の電圧値はVxであるが、信号N2の電圧値は0[V]、即ちVQ=0であるから位相差θ=0゜となる。
ところで、信号Jの位相は、入力ペン10の同調回路15における同調周波数に対応して変化する。即ち、同調回路15における同調周波数が所定の周波数f0と一致している場合、同調回路15には信号の送信期間及び受信期間とも周波数f0の誘導電圧が発生し、また、これに同期した誘導電流が流れるため、受信信号H(又はI)の周波数及び位相は矩形波信号Aと一致することになり、信号Jの位相も矩形波信号Aと一致する。
一方、同調回路15における同調周波数が所定の周波数f0と一致していない場合、例えば周波数f0よりわずかに低い周波数f1の場合は、送信期間において同調回路15には周波数f0の誘導電圧が発生するが、この誘導電圧により同調回路15には位相遅れを伴う誘導電流が流れる。そして、受信期間においてはほぼ周波数f1の誘導電圧が生じ、これに同期した誘導電流が流れるため、受信信号H(又はI)の周波数は矩形波信号Aの周波数よりわずかに低く、また、その位相もやや遅れたものとなる。
前述したように、帯域フィルタ38は周波数f0のみを固有の振動数とするものであるから、その入力信号の低い方への周波数のずれは位相遅れとして出力されることになり、従って、信号Jの位相は受信信号H(又はI)よりさらに遅れたものとなる。
また、逆に同調回路15における同調周波数が所定の周波数f0よりわずかに高い場合、例えば周波数f2の場合、送信期間において同調回路15には周波数f0の誘導電圧が発生し、同調回路15には位相進みを伴う誘導電流が流れる。また、受信期間においてはほぼ周波数f2の誘導電圧及びこれに同期した誘導電流が流れるため、受信信号H(又はI)の周波数は矩形波信号Aの周波数よりわずかに高く、また、その位相もやや進んだものとなる。帯域フィルタ38において、その入力信号の高い方への周波数のずれは、前述した場合とは逆に位相進みとして出力されることになり、従って、信号Jの位相は受信信号H(又はI)よりさらに進んだものとなる。
前述のように、入力ペン10においては、操作時にフェライトチップ102がフェライトコア104に接近する。従って、入力ペン10の操作時にはコイル105のインダクタンスが増大し、同調回路15の同調周波数は低い周波数に変化する。この同調周波数の変化は、コイル105のインダクタンスの変化量、即ち、Oリング103の変形量に対応する。従って、制御回路30によって前記式(1)で示される演算処理により得られた位相差θの値をもとに、Oリング103の変形量、即ち入力ペン10の操作時に加わった力を検出することができる。
次に、図5及び図6に従って、入力ペン10により指示された座標検出動作及び位相検出動作について詳細に説明する。図5は制御回路30の動作を示すフローチャートである。また、図6は、タブレット20における信号検出動作を示すタイミングチャートであり、図中、(a)はタブレット20のループコイルへ送出される正弦波信号を示し、(b)は送信期間と受信期間の切替状態を示し、(c)はタブレット20のループコイルにおける検出電圧を示す。
まず、座標入力装置1全体の電源が投入され、測定開始状態になると、制御回路30(図2)は、X方向を選択する情報をXY切替回路36及び受信タイミング切替回路37に送出するとともに、タブレット20が有するX方向のループコイル21−1〜21−48(図3)のうち、最初のループコイル21−1を選択する情報を選択回路32に送り、該ループコイル21−1を送受切替回路34に接続する。
続いて、送受切替回路34は、信号発生回路31から出力された送受切替信号Cに基づいて、ループコイル21−1を駆動回路45並びに増幅器47に交互に接続する。このとき、駆動回路45は、32μsecの送信期間において、図6(a)に示すような500 kHzの16個の正弦波信号を該ループコイル21−1へ出力する。
上記の送受切替回路34,35による送信及び受信の切り替えは、図6(b)に示すように一のループコイル、ここでは21−1に対して7回繰返される。この7回の送信及び受信の繰返し期間が、一のループコイルの選択期間(448μsec)に相当する。
この448μsecの選択期間には、一のループコイルに対して7回の受信期間が含まれ、増幅器47の出力としては受信期間毎に誘導電圧が得られる。ここで得られる誘導電圧は、前述したように受信タイミング切替回路37を介して帯域フィルタ38に送出されて平均化され、検波器39、位相検波器41,42及び低域フィルタ40,43,44を経て制御回路30に送出される。
そして、制御回路30は、低域フィルタ40の出力値をA/D変換して入力し、入力ペン10とループコイル21−1との距離に依存した検出電圧、例えばVx1として一時記憶する。
次いで、制御回路30は、ループコイル21−2を選択する情報を選択回路32へ送出し、該ループコイル21−2を送受切替回路34に接続させる。そして、入力ペン10とループコイル21−2との距離に比例した検出電圧Vx2を得てこれを記憶し、以後、同様にループコイル21−3〜21−48を順次、送受切替回路34に接続させて、図6(c)に示すような各ループコイル毎の入力ペン10とのX方向の距離に依存した検出電圧Vx1〜Vx48(但し、図6(c)にはその一部のみをアナログ的な表現で示す。)を記憶する(以上、図5:ステップS1)。
実際には、全てのループコイルで検出電圧を得る動作には時間がかかり非効率的であるため、入力ペン10が置かれた位置(xp)に最も近いループコイルを中心として、その前後の数本のループコイルのみについて検出電圧が得られる。なお、これら数本のループコイル以外のループコイルにおける検出電圧は無視できるほど小さい値である。
制御回路30は、上記ステップS1における処理により記憶した検出電圧の電圧値が一定の検出レベル以上であるか否かをチェックし(ステップS2)、一定の検出レベルより下であれば(ステップS3;No)、再度、X方向の各ループコイルの選択及び電圧検出を繰返す。また、一定の検出レベル以上であれば(ステップS3;Yes)、次の処理へ移行する。
なお、ステップS2で実行されるレベルチェックにおいて、制御回路30は、検出電圧の最大値が検出レベルに達しているか否か、及び、最大値の検出電圧を有するループコイルがどのループコイルであるかをチェックし、検出レベルに達していなければ以後の座標計算等を停止し、或いは、次回の座標検出動作及び位相検出動作において選択するループコイルの中心を設定する処理を行う。
続いて、制御回路30は、XY切替回路36及び受信タイミング切替回路37に対してY方向の選択情報を送出し、上記ステップS1の処理と同様にして選択回路33及び送受切替回路35に切り替えを実行させ、電波を送受信した時の低域フィルタ40の出力値をA/D変換して得られる入力ペン10とY方向の各ループコイル22−1〜22−48との距離に依存した検出電圧を一時記憶する(ステップS4)。
この後、制御回路30は、記憶した検出電圧のレベルチェックを実行し(ステップS5)、一定の検出レベルより下であれば(ステップS6;No)、再度、X方向の各ループコイルの選択及び電圧検出へ戻る。また、一定の検出レベル以上であれば(ステップS6;Yes)、記憶した電圧値から入力ペン10による指示位置のX方向及びY方向の座標値を算出する(ステップS7)。
ここで、ステップS7における処理の例について説明する。X方向又はY方向の座標値、例えば前記座標値xpを求める算出方法の一つとして、前記検出電圧Vx1〜Vx48の極大値付近の波形を適当な関数で近似し、その関数の極大値の座標を求める方法がある。
例えば図6(c)に示す最大値の検出電圧Vx3と、その両側の検出電圧Vx2及びVx4を2次関数で近似すると、次のようにして算出することができる。なお、下記式(2)〜(7)においては、各ループコイル21−1〜21−48の中心位置の座標値をx1〜x48とし、その間隔をΔxとする。
まず、各検出電圧と座標値については、下記式(2),(3),(4)が成り立つ。なお、下記式(2)〜(4)においてa,bは定数(a<0)である。
〔数2〕
Vx2=a(x2−xp)2+b …(2)
Vx3=a(x3−xp)2+b …(3)
Vx4=a(x4−xp)2+b …(4)
また、各ループコイルの中心位置の座標値については、下記式(5),(6)が成り立つ。
〔数3〕
x3−x2=Δx …(5)
x4−x2=2Δx …(6)
ここで、前記式(5),(6)を前記式(3),(4)に代入して整理すると、下記式(7)が導かれる。
〔数4〕
xp=x2+Δx/2{(3Vx2−4Vx3+Vx4)/(Vx2−2Vx3+Vx4)} …(7)
このように、各ループコイルからの検出電圧Vx1〜Vx48から、ステップS2のレベルチェックの際に求められた最大値の検出電圧と、その前後の検出電圧を抽出し、これらと該最大値の検出電圧が得られたループコイルの1つ前のループコイルの座標値(既知)とをもとにして、前記式(7)に相当する演算を行なうことにより、入力ペン10の座標値xpを算出できる。
その後、制御回路30は、X方向のループコイル21−1〜21−48(又はY方向のループコイル22−1〜22−48)のうち、最大の検出電圧が得られたループコイル(ピークコイル)を選択する情報を選択回路32(又は33)に送出し(ステップS8)、入力ペン10に対する電波の送受信を複数回、例えば7回繰返させ、低域フィルタ43,44から得られた出力値をA/D変換し(ステップS9)、前述のように位相差θを算出する(ステップS10)。
得られた位相差θは、制御回路30によって、例えば40゜加算する等の処理により調整され、筆圧を表す位相情報に変換されて、ステップS7で求められた入力ペン10による指示位置の座標値とともに、電子機器49へ出力される(ステップS11)。
以上のステップS1〜11に示す処理によって第1回目の座標検出動作及び位相検出動作が終了すると、制御回路30は、第2回目以降の座標検出動作として、X方向のループコイル21−1〜21−48のうち、最大の検出電圧が得られたループコイルを中心として、その前後の一定数、例えば10本のループコイルのみを選択する情報を選択回路32に送出し、同様に、Y方向のループコイル22−1〜22−48のうち、最大の検出電圧が得られたループコイルを中心として、その前後の一定数、例えば10本のループコイルのみを選択する情報を選択回路33に送出する。そして、同様に出力値を得て入力ペン10による指示位置のX方向及びY方向の座標検出動作並びに位相検出動作を行ない、得られた座標値及び位相情報を電子機器49に転送し、以下、これら一連の処理を繰返す。これにより、随時、入力ペン10による指示位置の座標と、操作時の筆圧に係る情報とを取得できる。
続いて、上記のように座標入力装置1で使用される入力ペン10の構成について詳述する。図7は、フェライトチップ102に形成された突起102aの高さと、座標入力装置1における検知状態の一例を示す図であり、(a)は入力ペン10に加わる荷重と座標入力装置1により検知される筆圧とに関する試験結果を示すグラフであり、(b)は同図(a)に示す試験の条件を示す図である。
なお、図7(a)に示す試験は、次の条件下で行われたものである。
・フェライトコア104としては、L6材(TDK製)を用い、外径φ2.5mm(ミリメートル)、長さ20mmの構成とした。
・コイル105は、φ0.07mmの線材による7芯、46ターンの構成とした。
・Oリング103は、硬度30度のシリコンゴム製とし、外径φ2mm、内径φ1mm、線形0.5mmの構成とした。
・フェライトチップ102としては、L6材(TDK製)を用い、外径φ2.5mm、長さ1mmの構成とした。
また、図7(a)中に示す(1)〜(3)の各試験において、図7(b)に示す突起102aは下記の構成とした。なお、突起102aの高さは、図7(b)中符号Xで示す高さであり、突起102aの断面は円形である。また、下記の値は入力ペン10の非操作状態における値を示す。
・条件(1)…外径φ0.8mm,高さ0.3mm。
・条件(2)…外径φ0.8mm,高さ0.1mm。
・条件(3)…突起102aは無し。
図7(a)に示すグラフにおいて、横軸は入力ペン10に対して加えられる荷重を、縦軸は座標入力装置1により検知される筆圧レベルを示す。タブレット20により検知される筆圧レベルの変化は、前述のように、コイル105のインダクタンスの変化に基づくものである。従って、グラフの縦軸方向の変化は、間接的にコイル105のインダクタンスの変化を示すものである。
図7(a)に示すように、(3)の条件下、即ち突起102aが存在せず、フェライトチップ102の端面が平滑である場合は、入力ペン10に加わる荷重の増加に伴って、座標入力装置1により検知される筆圧レベルも緩やかに上昇している。
また、(2)の条件下、即ち高さ0.1mmの突起102aを有する場合は、同図(3)に示す場合に比べて荷重の増加とともに筆圧レベルが速やかに上昇し、グラフが速やかに立ち上がっている。
さらに、(1)の条件下、即ち突起102aの高さが0.3mmの場合には、荷重の増大に応じて、より速やかに筆圧レベルが上昇しており、グラフの立ち上がりは非常に早い。
なお、(1)及び(2)のグラフにおいて、入力ペン10に対する荷重が所定の値を超えると筆圧レベルがほぼ一定になっているが、この状態は、弾性部材103の変形によって突起102aとフェライトコア104とが当接したことを示している。
このように、図7(a)に示す結果から、入力ペン10に加わる荷重に対する筆圧レベルの変化は、非操作状態において突起102aとフェライトコア104の端面とが近接しているほど、鋭敏であるといえる。また、突起102aの有無は筆圧レベルの応答に大きく影響し、突起102aの高さがわずか0.1mmであっても、突起102aが無い場合とは明らかに異なる結果が得られている。さらに突起102aの高さが0.3mmの場合は、その差が顕著である。従って、フェライトチップ102の端面に突起102aを設けて、非操作状態でフェライトチップ102とフェライトコア104とが近接する構成とすれば、入力ペン10への荷重が小さい場合でも、検知される筆圧レベルは鋭敏に応答し、一定以上の筆圧レベルを検知できる。これにより、弱い力でも確実に動作し、操作性の良い入力ペン10を実現できる。
本実施の形態においては、フェライトチップ102とフェライトコア104との間にOリングからなる弾性部材103を介設することにより、フェライトチップ102及びフェライトコア104を同一軸線上に配設して、ケース11の細型化を図っている。この場合、フェライトチップ102とフェライトコア104とは弾性部材103の分だけ離隔されてしまうが、フェライトチップ102側に突起102aを形成し、突起102aがOリング103の中央に嵌入する構成とすれば、フェライトチップ102とフェライトコア104とをより近接させることができる。
従って、図7(a)に示す結果から、フェライトチップ102の突起102aの高さは、0.1mm以上であることが好ましく、さらに0.3mm以上であればより好ましく、最適な値としては0.4mmが挙げられる。
なお、ここで、フェライトチップ102およびフェライトコア104に用いられる磁性材料の特性について、説明する。上述のように、図7(a)に示す試験においては、フェライトチップ102とフェライトコア104とはL6材(TDK製)により構成されるものとした。
しかしながら、フェライトチップ102は芯101に近接する部材であって、操作者により力が加わりやすいことから、より強度の高い材料を用いて構成しても良い。例えば、フェライトチップ102をL9G材(TDK製)により構成した場合、L6材の曲げ強度が、一般的なニッケル系フェライトの強度である1.0E+07(kg/m2)程度であるのに対し、L9G材の曲げ強度は1.8E+07(kg/m2)であるから、曲げ強度が約1.8倍まで高められる。なお、L6材とL9G材との特性の違いから、L6材に代えてL9G材を用いた場合に座標入力装置1の動作に影響を与える可能性がある。例えば、フェライトコア104をL9G材で構成した場合、コイル105のインダクタンスの変化が鈍くなる可能性がある。しかし、フェライトチップ102はフェライトコア104に比べて微小な部材であるから、フェライトチップ102をL9G材で構成した場合の影響はごく軽微であり、座標入力装置1を使用する上で問題は無い。そこで、フェライトチップ102をL9G材(TDK製)により構成し、フェライトコア104をL6材(TDK製)により構成すると、コイル105における特性と強度の両面から、非常に好ましい。
なお実際に、フェライトチップ102にL9G材(TDK製)を用い、フェライトコア104にL6材(TDK製)を用いて構成した入力ペン10について、芯101に荷重を加えて耐久性を調べる試験を行ったところ、300gの荷重を3回/秒の頻度で加えた場合に、1000万回以上の荷重に耐えうることが明らかになった。
また、さらにフェライトコア104の径をより太くすることで、フェライトコア104の耐久性を高めることも可能であり、フェライトコア104の径が2.5mm以上であれば、入力ペン10に衝撃が加わった場合にも耐えうる高い耐久性が得られるが、3.0mm以上であれば、より高い耐久性が得られる。
なお、図7に示した試験では、Oリングからなら弾性部材103とフェライトチップ102の突起部102aとの関係は図示のように、Oリングの内部に突起部102aが篏入するものであるが、図9に示すような構造の突起部611a、615a、616a、617aを用いても、図7(a)と同様な結果をもたらすことができると推定される。
すなわち、図8は、入力ペン10におけるフェライトチップ102及びフェライトコア104の構成例を示す図であり、(a)はフェライトチップ611及びフェライトコア612を用いた構成を示す断面図であり、(b)はフェライトチップ614及びフェライトコア615を用いた構成を示す断面図であり、(c)はフェライトチップ616及びフェライトコア617を用いた構成を示す断面図である。
図8(a)に示すように、端面の外縁に外周突起611aを有するフェライトチップ611を用い、弾性部材613は、円筒状の外周突起611a内に収容可能なOリング等の弾性部材である。フェライトコア612は、ほぼ平滑な端面を有する構成とすることも可能である。
ここで、フェライトチップ611は、図9(a)に示すように、略円柱状の部材であって、上面の外縁部分のみが突出して外周突起611aをなしており、外周突起611aの内側は陥没している。外周突起611aの内部には、弾性部材613が収容される。そして、弾性部材613の厚みと外周突起611aの高さを調整し、図8(a)に示すように、入力ペン10の非操作状態において外周突起611aがフェライトコア612の端面に接触しないように構成する。
また、図8(b)に示すように、外周突起611aと同様の外周突起615aを有するフェライトコア615を、図8(a)のフェライトコア612に代えて用い、フェライトチップ611に代えてほぼ平滑な端面を有するフェライトチップ614を用いる構成とすることも可能である。そして、図8(b)に示すように、入力ペン10の非操作状態において外周突起615aがフェライトチップ614の端面に接触しないように構成する。
さらに、図8(c)に示すように、外周突起611aと同様の外周突起616aを有するフェライトチップ616を、図8(a)のフェライトチップ611に代えて用い、外周突起611aと同様の外周突起617aを有するフェライトコア617をフェライトコア612に代えて用いる構成とすることも可能である。この場合、図8(c)に示すように、入力ペン10の非操作状態において外周突起616aと外周突起617aが互いに接触しない構成とする。
また、外周突起611a,615a,616a,617aは、図9(a)に示す構成だけでなく、図9(b)に示すフェライトチップ618のように、切欠部618aを備える構成としても良い。この場合、切欠部618aの数や形状については任意である。
さらに、例えば図8(a)に示すフェライトチップ611とフェライトコア612とを同一軸線上に保持し、横方向へずれない構成とすれば、リング状の弾性部材613に代えて、可撓性の球を用いることも可能である。つまり、図1の弾性部材103、図8の弾性部材613のいずれも、入力ペン10の非操作状態においてフェライトチップとフェライトコアとを離隔させて保持し、入力ペン10の操作時に弾性変形するものであれば良いので、環状の弾性部材613に代えて複数の球を用いることも可能である。
以上のように、入力ペン10においては、フェライトコア104には開口部や中空部が形成されないので、フェライトコア104を細型にしても強度不足を招く恐れがない。また、芯101及びフェライトチップ102についても、容易に細型化が可能であり、非常に細型のケース11内に各部を収容して、小型の入力ペン10とすることができる。また、入力ペン10においては、操作時にコイル105のインダクタンスが増大するので、高価な可変コンデンサを用いた座標指示器と同様の動作を行うペン型座標指示器と同様の動作をさせることができる。即ち、位置検出装置とともに使用される座標指示器には、操作を検知するために加圧時に容量が変化する可変コンデンサを用いたLC共振回路を採用することがある。このような座標指示器は、操作者による操作が加わると可変コンデンサの容量が増大し、結果的にLC共振回路の共振周波数が低い方へシフトするもので、感度が良い一方で構造が複雑であり、高価である。入力ペン10においては、操作時にコイル105のインダクタンスが増大するので、操作時に同調回路15の共振周波数が低い方へシフトする。従って、可変コンデンサを用いた座標指示器と同様の動作を行うペン型座標指示器を、より簡単な構成により、安価で実現できる。
また、フェライトチップ102とフェライトコア104との間に弾性部材103が介設されるので、操作後の復元動作がスムーズに行われ、良好な操作性が得られる。さらに、コイル105のインダクタンスの変化量から弾性部材103の変形量を求めることで、操作時に加えられた力を求めることも可能である。
また、Oリング103はフェライトチップ102とフェライトコア104の端面の全面を覆わないように形成されているので、フェライトチップ102とフェライトコア104とが直接対向する部分が存在するので、操作時にはコイル105のインダクタンスが鋭敏に変化し、操作が確実に検知されるので、入力ペン10の応答を良好にし、良好な操作性を確保できる。
また、フェライトチップ102に突起102aを設けることにより、初期状態におけるフェライトチップ102とフェライトコア104の間隔を小さくし、操作時にフェライトチップ102とフェライトコア104とを速やかに接近させることができる。さらに、突起102aの高さはOリング103の厚みよりも低いので、非操作時にフェライトチップ102とフェライトコア104とを離隔させておくための構成としては弾性体を挟んでおけば良いので、構造の複雑化を避けられる。
さらに、フェライトチップ102とフェライトコア104との間の弾性体としてOリング103を用いるので、比較的弱い力で操作してもフェライトチップ102とフェライトコア104とを容易に接近させることができる。このため、入力ペン10は、操作時の抵抗が小さく、比較的弱い力で操作可能である。
なお、上記第1の実施の形態においては、フェライトチップ102とフェライトコア104とは円柱形状として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、フェライトコア104はコイル105を巻回すことが可能な形状であれば良いし、フェライトチップ102は、芯101に固定可能な形状であれば良い。また、Oリング103の構成は、上述したものの他、例えば複数の直方体等の可撓性部材をフェライトチップ102に張り付けして代えることも可能である。さらに、ケース11の形状は筆記具を模した形状に限られず、フェライトチップ102、Oリング103、フェライトコア104、基板ホルダー12、基板13、コンデンサ14、同調回路15等を内蔵できる構成であれば特に限定されず、その他の細部構成についても、特許請求の範囲に記載した技術思想の範囲内において種々の変更が可能なのはいうまでもない。
また、上記第1の実施の形態では、フェライトチップ102、Oリング103、及びフェライトコア104をケース11の先端側に設ける構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ケース11の後端側に設けても良い。以下、この場合について、図12を参照し、変形例として説明する。
[第2の実施の形態]
続いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。図10は、本第2の実施の形態における入力ペン70の構成を示す断面図である。なお、図10に示す入力ペン70を構成する各部の材料については、上記第1の実施の形態における入力ペン10の各部と共通である。
図10に示す入力ペン70は、入力ペン10と同様に座標入力装置1において座標を指示する目的で操作者により操作されるペン型の座標指示器である。入力ペン70は、後尾が開口した中空のケース701と、ケース701の後尾開口部に嵌め込まれて該開口部を塞ぐキャップ702、ケース701の中空部に収納される基板ホルダー703、基板ホルダー703に固定される基板704、基板704上に実装されるコンデンサ705、コンデンサ705を含んで構成される同調回路706、基板ホルダー703に当接して配置されたフェライトコア708、フェライトコア708に巻回されたコイル709、フェライトコア708の先端面と弾性部材711を介して対向するように配置されたフェライトチップ710、および、フェライトチップ710に接して配置され、先端がケース701の先端から外へ突出する芯712等の各部を備えて構成される。さらに、入力ペン70においては、基板ホルダー703の基端部とキャップ702との間には緩衝部材707が介設される。なお、以下において、入力ペン70が備える各部についてはケース701の先端側を「先端部」、ケース701の後尾側を「基端部」と称して説明する。
なお、基板704、コンデンサ705、同調回路706およびコイル709の各部は、上記第1の実施の形態における基板13、コンデンサ14、同調回路15およびコイル105と同様に構成され、同等の機能を有するものであるから、ここでは説明を省略する。
入力ペン70の先端においてはケース701が開口しており、この開口部からケース701の先端が突出する。ケース701は、円盤状の基端部と、この基端部に立設された棒状部とで構成され、基端部はフェライトチップ710に接している。フェライトチップ710は、弾性部材711を挟んでフェライトコア708に対向する。なお、フェライトチップ710は、上記第1の実施の形態におけるフェライトチップ102の突起102aと同様の突起を有している。さらにフェライトコア708は、フェライトチップ710と基板ホルダー703とに挟まれるように配置され、基板ホルダー703の基端部は、緩衝部材707を介してキャップ702に接している。そして、芯712、フェライトチップ710、弾性部材711、フェライトコア708、基板ホルダー703、キャップ702およびケース701は同一軸線上に配置されている。緩衝部材707は、発泡ウレタンやゴム等の弾性体により構成されたものである。
ここで、入力ペン70の先端部の構成について詳細に説明する。図11は、入力ペン70の先端部を拡大して示す要部拡大図である。図11に示すように、ケース701の内側に設けられた中空部の内径は、入力ペン70の先端部に向かって3段階に細くなり、入力ペン70の基端部側から順に図中符号A,B,Cで示す段部が形成されている。このうち、段部Aとケース701の基端部との間において、ケース701の中空部には基板ホルダー703等の各部が収容される。フェライトコア708の先端は段部Bに接し、基端部分が基板ホルダー703の先端に当接する。また、芯712の基端部は段部Cに接し、段部Cと段部Bとの間において、芯712の基端部、フェライトチップ710および弾性部材711が収容された構成となっている。
基板ホルダー703の先端には、ケース701の先端側へ向かって突出するコア保持突起721が形成されており、コア保持突起721は、フェライトコア708の基板ホルダー703側に穿設された穴と嵌合する。これにより、フェライトコア708と基板ホルダー703とは、入力ペン70の横断面方向へずれないように固定される。
さらに、芯712の基端部の円盤状部分には、ケース701の基端部側へ向かって突出するチップ保持突起722が形成され、チップ保持突起722は、フェライトチップ710の芯712側に穿設された穴と嵌合する。これにより、フェライトチップ710と芯712とは、入力ペン70の横断面方向へずれないよう固定される。
以上のように構成される入力ペン70において、ケース701の中空部に収容された基板ホルダー703とフェライトコア708は、先端側は段部Bにより固定され、基端部側は緩衝部材707を介してキャップ702によって固定される。このため、基板ホルダー703とフェライトコア708は、緩衝部材707の弾性力によって固定される。また、フェライトチップ710および芯712は、先端側は段部Cにより固定され、基端部側は弾性部材711を介してフェライトコア708により固定されている。このため、フェライトチップ710および芯712は、弾性部材711が屈曲可能な範囲において、入力ペン70の基端部側へ移動することが可能となる。
入力ペン70の操作時には、入力ペン70の先端がタブレット20(図2)表面に押しつけられることにより、芯712がケース701の内部側へ押し込まれ、芯712とともにフェライトチップ710がケース701の基端部側へ移動する。これにより、フェライトコア708に巻回されたコイル709のインダクタンスが変化することにより、座標入力装置1によって入力ペン70の操作を検出できる。
そして、入力ペン70においては、基板ホルダー703とフェライトコア708が緩衝部材707の弾性力によって固定され、さらに、フェライトチップ710と芯712とが段部Cと弾性部材711に挟まれた構成となっているので、入力ペン70の非操作時に芯712がケース701の外側へ脱落することも、フェライトコア708や芯712が遊動することも無いので、座標入力装置1の使用感をより快適なものとすることができる。
また、基板ホルダー703とフェライトコア708とはコア保持突起721により固定され、芯712とフェライトチップ710とはチップ保持突起722によって固定されるので、基板ホルダー703とフェライトコア708、或いは芯712とフェライトチップ710とを接着する必要がない。一般に、摺動時の耐久性を有する樹脂に対して接着剤を用いた場合、強固な接着力を得ることが難しい。入力ペン70によれば、芯712や基板ホルダー703を、接着剤を用いることなく固定することができるので、耐久性に優れた入力ペン70を実現できる上、製造時の工数と作業負担を削減することで、容易に低コストで製造できる。
さらに、フェライトコア708の製造時における公差により、フェライトコア708の長手方向のサイズが、設計上のサイズからずれてしまうことがある。入力ペン70においては、公差によってフェライトコア708の長手方向のサイズが違っても、緩衝部材707の弾性によって公差を吸収することが可能である。これにより、製造時の工数と作業負担をさらに削減し、より一層低コストで容易に製造できる。
また、入力ペン70に衝撃が加わった場合、この衝撃を弾性部材711とともに緩衝部材707によって吸収することができるので、より耐久性に優れた入力ペン70を実現できる上、良好な操作性を永く保つことができる。そして、耐久性に優れることから入力ペン70をさらに細く構成することもできる。
なお、本第2の実施の形態において、フェライトコア708の製造上の公差による長手方向のずれが明らかな場合、リング状に形成された樹脂片等を用いて公差を補正することもできる。図12は、図11と同様に入力ペン70の要部を拡大して示す断面図である。
前述のように、基板ホルダー703の先端部とフェライトコア708の基端部とはコア保持突起721により固定されている。そこで、リング状に形成されたリング型フィルム723を、コア保持突起721に嵌め込むように装着し、基板ホルダー703とフェライトコア708との間にリング型フィルム723が介在する構成とすることができる。リング型フィルム723は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂製のフィルムであって、その厚さは、例えば0.1mmである。また、リング型フィルム723は中央に孔を有し、孔の径はコア保持突起721の外径と同程度またはそれ以上である。
例えばフェライトコア708の長手方向のサイズが、設計上のサイズより0.3mm短いことが明らかな場合、0.1mm厚のリング型フィルム723をコア保持突起721に3枚嵌め込むことにより、基板ホルダー703とフェライトコア708とが0.3mm離隔される。これにより、フェライトコア708が設計上のサイズ通りに形成された場合と同様に、入力ペン70を組み立てることができる。
なお、同様に、リング型フィルム723と同様のフィルムを、チップ保持突起722に嵌め込むように装着することにより、フェライトチップ710の長手方向のサイズが設計上のサイズとずれた場合に、ずれを補正することが可能となる。
また、リング型フィルム723はフェライトコア708の公差を補正して基板ホルダー703とフェライトコア708とを固定する目的で設けられるものであるから、リング型フィルム723を用いずに緩衝部材707のみによって基板ホルダー703とフェライトコア708とを固定することも可能である。しかしながら、入力ペン70にスイッチを設けた場合、リング型フィルム723を用いることが好ましい。以下、入力ペン70にスイッチを設けた場合について説明する。
図13は、図10に示す入力ペン70にスイッチ73を設けてなる入力ペン71の構成を示す断面図である。なお、入力ペン71において、入力ペン70と同一の構成によってなる部分については、同符号を付して説明を省略する。
図13中に破線で示すように、入力ペン71の側面には、操作者により押圧操作されるスイッチ73が設けられている。スイッチ73はケース701の外装に組み付けられるスイッチであり、基板704上には、スイッチ73の押圧操作を検知するための検知部(図示略)が設けられている。ケース701およびスイッチ73はいずれも合成樹脂等により構成されるので、製造上の公差は無視できる程度であり、ケース701におけるスイッチ73の位置はほぼ一定である。
ここで、フェライトコア708の製造上の公差を緩衝部材707の弾性により吸収しようとすると、基板ホルダー703の位置、すなわち基板704の位置が、入力ペン71の軸方向に沿って移動することになる。基板704が移動すると、スイッチ73の位置と、スイッチ73の押圧操作を検知する検知部(図示略)の位置がずれる可能性があるため、好ましいとは言えない。一方、フェライトコア708の製造上の公差をリング型フィルム723によって吸収する構成とすれば、フェライトコア708のサイズに関係なく基板ホルダー703の位置すなわち基板704の位置は一定である。このため、スイッチ73の位置と、スイッチ73の押圧操作を検知する検知部(図示略)の位置がずれる恐れが無い。
なお、基板ホルダー703とフェライトコア708との間に介設されるリング状の部材は、リング型フィルム723に限らず、フェライトコア708の公差に応じたサイズで所定の弾性を有する部材であれば良い。この弾性部材は、例えば線径0.4mm、外径2.2mm、内径1.4mmのサイズに構成すると、入力ペン71のサイズからみて好適であるが、外径及び内径は入力ペン71のサイズに応じて変化させても良く、線径はフェライトコア708の公差により変更させても良い。また、弾性部材の材質としては、例えば硬度70のNBR(ニトリルゴム)が好適である。フェライトコア708の公差として0.4mmの公差を吸収するためには、0.1mm厚のリング型フィルム723を用いると4枚のリング型フィルム723を重ねることとなるが、線径0.4mmのOリングを用いれば、部品点数が1個で済む。このため、フェライトコア708の公差が微細な値に収まらない場合、上記Oリングをコア保持突起721に嵌め込むように装着し、フェライトコア708の公差を吸収させれば、作業工程を複雑化することなく確実に公差を補正できる。
なお、以上の第2の実施の形態における入力ペン70,71の構成は、あくまで好適な一例を示すものであり、例えばリング型フィルム723や緩衝部材707を省いて構成するようにしても良く、その他、各部を構成する材料等の具体的な細部構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて任意に変更可能である。
1・・・座標入力装置、10,70,71・・・入力ペン、11,701・・・ケース、12,703・・・基板ホルダー、13,704・・・基板、14,705・・・コンデンサ、15,706・・・同調回路、101,712・・・芯、102,710・・・フェライトチップ、102a・・・突起部、103,711・・・弾性部材、104,708・・・フェライトコア、105,709・・・コイル、707・・・緩衝部材、721・・・コア保持突起、722・・・チップ保持突起、723・・・リング型フィルム、73・・・スイッチ、A,B,C・・・段部、20・・・タブレット