JP2007071744A - レーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システム - Google Patents
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Abstract
【課題】ナノ秒以下の分解能で高速で変化する過渡応力の時間変化を、実空間イメージとして観察することができる短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムを提供する。
【解決手段】短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムにおいて、プローブレーザー1と、このプローブレーザー1で照射される透明、または半透明な試料2と、この試料2を励起する励起レーザー3と、この励起レーザー3と前記プローブレーザー1からの照射光の時間差を制御する時間遅延発生器10とを備え、光弾性測定法を用いて、前記励起用レーザー3によって生じる前記試料2の内部の応力分布を、レーザーパルス幅の時間分解能で可視化する。
【選択図】図1
【解決手段】短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムにおいて、プローブレーザー1と、このプローブレーザー1で照射される透明、または半透明な試料2と、この試料2を励起する励起レーザー3と、この励起レーザー3と前記プローブレーザー1からの照射光の時間差を制御する時間遅延発生器10とを備え、光弾性測定法を用いて、前記励起用レーザー3によって生じる前記試料2の内部の応力分布を、レーザーパルス幅の時間分解能で可視化する。
【選択図】図1
Description
本発明は、レーザーを用いた透明または半透明の試料内部の応力の時間変化の可視化システムに関するものである。
本願発明者は、レーザー加工過程のダイナミクスの研究過程で、透明体内部の加工過程を時間分解観察する方法を開発した(下記特許文献1参照)。
その後も、この透明体内部の加工過程を時間分解観察する方法の改良を進め、光弾性イメージの時間分解測定と、それによるレーザー誘起過渡応力の観察に成功したが、図6に示すようにその画像の鮮明さは、良好とはいえなかった。
特開2002−336981号公報
また、光弾性測定法は、固体試料中の応力分布を直接観察、評価する手法としてエポキシ樹脂等で形成したモデルを対象に、広く用いられてきたが、従来は、静的な応力分布の計測が主であった。
本発明は、上記状況に鑑みて、ナノ秒以下の分解能で高速で変化する過渡応力の時間変化を、実空間イメージとして鮮明に画像化し、観察することができる短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムを提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムにおいて、プローブレーザーと、このプローブレーザーで照射される透明、または半透明な試料と、この試料を励起する励起レーザーと、この励起レーザーと前記プローブレーザーからの照射光の時間差を制御する時間遅延発生器とを備え、光弾性測定法を用いて、前記励起用レーザーによって生じる前記試料の内部の応力分布を、レーザーパルス幅の時間分解能で可視化することを特徴とする。
〔1〕短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムにおいて、プローブレーザーと、このプローブレーザーで照射される透明、または半透明な試料と、この試料を励起する励起レーザーと、この励起レーザーと前記プローブレーザーからの照射光の時間差を制御する時間遅延発生器とを備え、光弾性測定法を用いて、前記励起用レーザーによって生じる前記試料の内部の応力分布を、レーザーパルス幅の時間分解能で可視化することを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載の短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムにおいて、光弾性測定のために、少なくとも前記プローブレーザーから前記試料までの照射光の経路にビームエキスパンダーと偏光子と1/4波長板とを直列に配置するとともに、前記試料の後方に1/4波長板と検光子とを配置することを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムにおいて、水中に設置した試料を、レーザー照射することによって、鮮明な光弾性画像を取得することを特徴とする。
〔4〕上記〔1〕記載の短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムにおいて、得られた画像が3次元の現象を撮影している場合には、アーベル逆変換を用いて、得られた2次元の画像から、3次元の応力分布を推定することを特徴とする。
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
例えば、物体の衝突や、レーザーパルス照射などの過渡応力の原因となる事象の発生と、イメージを撮影するための照明用レーザーパルスとの時間差を変えながら、繰り返し同様の現象の撮影を行い、イメージを撮影時間に応じた時系列画像として取得することにより、過渡応力の時間変化を再構築し、その詳細を観察、解析することができる。
なお、時間分解能は、照明用レーザー光のパルス幅で決まるので、高価な高速度カメラは不要であり、かつ、プラズマの発生などを伴うような現象でも、レーザー波長における輝度の差により、鮮明な画像を得ることができる。
すなわち、従来は直接観察が出来なかった、レーザー超音波による非破壊検査、レーザーピーニング(衝撃硬化)、レーザークリーニング、レーザー活断やレーザー加工などの可視化法として、非常に有用である。また、レーザー以外によって発生した、応力の可視化にも適用可能である。さらに、高速度カメラとそれに同期して発光する照明用光源(レーザーに限定しないが、輝度、指向性、偏光特性を考慮すればレーザーが最適である)を用いれば、一回の事象に対して連続して画像を取得することも可能である。
本発明の短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムは、上記特許文献1に記載された透明体内部の加工過程を時間分解観察する方法における光学配置を、光弾性測定用に拡張したものである。
光弾性測定法には、直線偏光器を用いるものと、円偏光器を用いるものがあり、また、明視野と暗視野の2つの測定モードがあるが、本発明では、感度良くイメージを得るためと、プラズマの影響を最小限に抑えるために暗視野モードを選択し、さらに等傾線を除去するために、円偏光器となる光学配置を用いている。
ここでは、加工用レーザーによる過渡応力分布の測定を例としているが、過渡応力の発生の原因となる事象は、レーザーによるものに限らず、物体の衝突による衝撃や、加工用の工具の接触など、短時間に試料に衝撃を与える事象であればよい。照明用レーザー光は、時間幅が10ナノ秒程度以下であることが望ましい。レーザーパルス幅が長くなると、得られる画像はこのパルス幅中の合成画像になるが、固体中の応力波の伝播速度は通常103 ms-1のオーダーかそれより大きく、例えば100ナノ秒では100μm以上進むため、画像の分解能がこの値以上まで低下してしまい、鮮明な画像を得ることができなくなる。また、加工用レーザーの照射時間と、照明用レーザーの照射時間の時間間隔は照明用レーザーのパルス程度かそれ以上の精度で、可変で制御可能でなければならない。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示すレーザーを用いた光弾性測定のための試料内部の応力の時間変化の可視化システムの模式図、図2はその可視化システムによる時間分解の画像を示す図である。
この図において、1はプローブレーザー(照明用レーザー)(Nd:YAGレーザ)、2は試料(透明体又は半透明体)、3は励起(ポンプ)レーザー(加工用レーザー)(Nd:YAGレーザー)、4は集光レンズ、5は時間差発生装置、11はビームエキスパンダーBE、12は偏光子(ポラライザー)、13,15は1/4波長板Q1 ,Q2 、14は試料(透明体又は半透明体)、16は検光子(アナライザー)、17,18はレンズ、19はBPF(バンドパスフィルター)、20はCCDカメラである。
過渡応力の原因となる事象の発生(上記の加工用レーザー3のパルス照射)とイメージを撮影するための照明用レーザー1のパルス照射との時間差を、時間差発生装置5で変えながら、繰り返し同様の現象の撮影を行い、イメージを撮影時間に応じた時系列画像として取得することができる。これにより、過渡応力の時間変化を再構築し、その詳細を観察、解析することができる。
図3は本発明の実施例を示す光弾性測定の原理の説明図である。
光弾性は、普通は等方的な透明物質中に、応力が生じることによって複屈折性が生じる現象を利用して、試料内部の応力状態を測定する手法である。試料物質中では主応力(図3ではσ1 とσ2 )方向の各成分A1 とA2 が異なった速度で試料中を伝播するため、試料透過後の成分間に、位相差δが生じる。
図3において、21は光源(照明用レーザー)、22は偏光子、23は試料(透明体又は半透明体)、24は検光子(アナライザー)、Aは偏光子22から出射される直線偏光が、A=asinωtで示されている。試料23中では主応力(図3ではσ1 とσ2 )方向の各成分A1 とA2 が異なった速度で試料中を伝播するため、試料透過後の成分間に、位相差δが生じる。ここでA1 =Acosφ=acosφsinωt、A2 =Asinφ=asinφsinωtである。この位相差δが、試料中の主応力(図3ではσ1 とσ2 )の差に比例することから、試料22から出射される透過光はA3 =acosφsinωt、A4 =acosφsin(ωt−δ),ここで、δはリタデーション角である。入射偏光方向と直角方向の偏光成分が現れるため、検光子24でこの成分を検出すると、A5 =A3 cos〔(π/2)−φ〕=acosφsinφsinωt、A6 =A4 cosφ=asinφcosφsin(ωt−δ)である。
また、検光子24の出力光はA7 =A5 −A6 =acosφsinφsinωt−asinφcosφsin(ωt−δ)=asin2φsin(δ/2)cos〔ωt−(δ/2)〕であり、光強度は、I=a2 sin2 2φsin(δ/2)であり、I=0の条件は、等傾線(isoclinics)ではφ=0,π/2、等色線(isochromatics)ではδ=2nπ(n=0,1,2,…)である。
等傾線は直線偏光方向と主応力の方向が一致する場所で暗線(検光子後の透過光強度が0になる部分)となる。これを直線偏光器というが、等傾線のため光弾性画像が複雑になるので、1/4波長板で円偏光にして等傾線を消す方法(これを円偏光器という)を本実施例では採用している。
上記の、時間分解光弾性イメージの測定方法を、水中の試料に応用することによって、レーザー誘起応力が微小領域でも十分大きくなり、そのため鮮明な光弾性模様を撮影することができた。
図4は本発明のレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムによる光弾性画像を示す図である。
水中で試料を照射することで発生する応力が大きくなり、図4に示すように鮮明な光弾性画像が得られた。画像の縦がおよそ2mm、レーザー光(照明用レーザー光)は左から画像中央左端付近に水平に集光照射された。加工レーザー照射後1000nsにおける画像である。
これは、発生する応力が十分高ければ、応力分布を解析するのに十分な画質の光弾性イメージを取得できることを示している。
本発明によれば、例えば、物体の衝突や、レーザーパルス照射などの過渡応力の原因となる事象の発生と、イメージを撮影するための照明用レーザーパルスとの時間差を変えながら、繰り返し同様の現象の撮影を行い、イメージを撮影時間に応じた時系列画像として取得することにより、過渡応力の時間変化を再構築し、その詳細を観察、解析することができる。 なお、時間分解能は、照明用レーザー光のパルス幅で決まるので、高価な高速度カメラは不要であり、かつ、プラズマの発生などを伴うような現象でも、レーザー波長における輝度の差により、鮮明な画像を得ることができる。
すなわち、レーザー誘起過渡応力の時間変化の観察方法は、従来は直接観察が出来なかったが、レーザー超音波による非破壊検査、レーザーピーニング(衝撃硬化)、レーザークリーニング、レーザー活断やレーザー加工などの可視化法として、非常に有用である。また、レーザー以外によって発生した、応力の可視化にも適用可能である。さらに、高速度カメラとそれに同期して発光する照明用光源(レーザーに限定しないが、輝度、指向性、偏光特性を考慮すればレーザーが最適である)を用いれば、一回の事象に対して連続して画像を取得することも可能である。
次に、短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化方法において、得られた画像が3次元の現象を撮影している場合には、アーベル逆変換を用いて、得られた2次元の画像から、3次元の応力分布を推定することができる。すなわち、上記手法で得られる光弾性画像は、2次元平面応力を測定しているとみなせる場合には、主応力差(σ1-σ2 )の相対強度分布を容易に求められるが、3次元の現象を観察している場合には、得られる光弾性画像は、撮影用レーザー光の光軸に垂直な平面に射影したものになるため応力分布へ変換することは容易ではない。ただし、現象が軸対象性を有しているとみなせる場合には、この対称軸と垂直に撮影用レーザー光を照射し、光弾性画像を得ることにより、この変換が原理的には可能になる。すなわち、3次元現象では、光弾性画像に重要な2つの偏光成分の位相差δは光軸に沿って積分されたものになるが、この場合には、対称性によって積分されたδの値からもとの応力差の分布に戻すこと(数学的にはこれを逆アーベル変換という)が可能になる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明のレーザーを用いた透明体内部の応力の時間変化の可視化方法およびそのための装置は、ナノ秒以下の分解能で高速で変化する過渡応力の時間変化を、実空間イメージとして観察するのに好適である。
1 プローブレーザー(照明用レーザー)(Nd:YAGレーザー)
2,14,23 試料(透明体又は半透明体)
3 励起(ポンプ)レーザー(加工用レーザー)(Nd:YAGレーザー)
4 集光レンズ
5 時間差発生装置
11 ビームエキスパンダーBE
12,22 偏光子(ポラライザー)
13,15 1/4波長板Q1 ,Q2
16,24 検光子(アナライザー)
17,18 レンズ
19 BPF(バンドパスフィルター)
20 CCDカメラ
21 光源(照明用レーザー)
2,14,23 試料(透明体又は半透明体)
3 励起(ポンプ)レーザー(加工用レーザー)(Nd:YAGレーザー)
4 集光レンズ
5 時間差発生装置
11 ビームエキスパンダーBE
12,22 偏光子(ポラライザー)
13,15 1/4波長板Q1 ,Q2
16,24 検光子(アナライザー)
17,18 レンズ
19 BPF(バンドパスフィルター)
20 CCDカメラ
21 光源(照明用レーザー)
Claims (4)
- (a)プローブレーザーと、
(b)該プローブレーザーで照射される透明、または半透明な試料と、
(c)該試料を励起する励起レーザーと、
(d)該励起レーザーと前記プローブレーザーからの照射光の時間差を制御する時間遅延発生器とを備え、
(e)光弾性測定法を用いて、前記励起用レーザーによって生じる前記試料の内部の応力分布を、レーザーパルス幅の時間分解能で可視化することを特徴とする短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システム。 - 請求項1記載の短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムにおいて、光弾性測定のために、少なくとも前記プローブレーザーから前記試料までの照射光の経路にビームエキスパンダーと偏光子と1/4波長板とを直列に配置するとともに、前記試料の後方に1/4波長板と検光子とを配置することを特徴とする短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システム。
- 請求項1記載の短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムにおいて、水中に設置した試料を、レーザー照射することによって、鮮明な光弾性画像を取得することを特徴とする短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システム。
- 請求項1記載の短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システムにおいて、得られた画像が3次元の現象を撮影している場合には、アーベル逆変換を用いて、得られた2次元の画像から、3次元の応力分布を推定することを特徴とする短パルスレーザーを用いた試料内部の応力の時間変化の可視化システム。
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---|---|---|---|---|
JP2009019911A (ja) * | 2007-07-10 | 2009-01-29 | Gunma Univ | 音響計測装置及び音響計測方法 |
JP2013188779A (ja) * | 2012-03-14 | 2013-09-26 | Toyota Central R&D Labs Inc | レーザ加工装置 |
CN104317154A (zh) * | 2014-11-20 | 2015-01-28 | 北京理工大学 | 一种超快连续成像装置及方法 |
KR102226094B1 (ko) * | 2019-12-31 | 2021-03-11 | 한국과학기술원 | 3d 프린팅 공정 중 펨토초 레이저 빔을 이용하여 프린팅 대상물의 적층 품질을 검사하는 방법, 장치 및 이를 구비한 3d 프린팅 시스템 |
CN114486859A (zh) * | 2022-01-25 | 2022-05-13 | 中国科学院近代物理研究所 | 基于激光诱导击穿光谱技术的软物质屈服应力表征方法 |
-
2005
- 2005-09-08 JP JP2005260213A patent/JP2007071744A/ja not_active Withdrawn
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CN114486859B (zh) * | 2022-01-25 | 2023-07-21 | 中国科学院近代物理研究所 | 基于激光诱导击穿光谱技术的软物质屈服应力表征方法 |
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