JP2007068354A - 永久磁石型回転電機の制御装置 - Google Patents

永久磁石型回転電機の制御装置 Download PDF

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Abstract


【課題】 演算負荷が過剰に増大することを抑制しつつ永久磁石の磁石温度を精度良く推定すると共に、推定した磁石温度に基づき永久磁石型回転電機の出力を適切に制御する。
【解決手段】 磁石温度推定部38は、ステータ巻線への通電時に、先ず、基準界磁電流マップ39に格納されている複数の電源電圧毎のマップデータの中から、電圧検出器43から出力されるバッテリ13の端子電圧VBに対応するマップデータを選択する。次に、選択したマップデータに含まれる複数の所定基準磁石温度Tm毎のマップデータの中から、トルクセンサ(図示略)により検出されるモータトルクTRQおよび角度演算部37から出力されるモータ回転数NMおよび3相−dq変換部36から出力されるq軸電流Iq_sに対応するマップデータを選択し、選択したマップデータに対応する所定基準磁石温度Tmを磁石温度Tmagの推定値として設定する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、永久磁石型回転電機の制御装置に関する。
従来、例えばブラシレスDCモータ等の永久磁石を具備するモータの制御において、予め設定した所定基準温度での磁束量と、モータ運転時の磁束量の推定値とに基づき、磁石温度に応じて変化するモータの出力トルクを補正する装置が知られている(例えば、特許文献1または特許文献2または特許文献3参照)。
特開平7−212915号公報 特開平3−222686号公報 特開昭60−197181号公報
ところで、上記従来技術に係る装置において、モータ運転時の磁束量を誘起電圧から推定する際には、磁石温度に応じて変化する誘起電圧を精度良く算出する必要が生じる。
しかしながら、誘起電圧を精度良く算出するためには、膨大な演算処理が必要となる虞があると共に、モータの運転時に誘起電圧算出のために相対的に高速の演算処理を実行する必要が生じ、制御処理の演算負荷が過剰に増大してしまう虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、演算負荷が過剰に増大することを抑制しつつ永久磁石型回転電機に具備された永久磁石の磁石温度を精度良く推定することできると共に、推定した磁石温度に基づき永久磁石型回転電機の出力を適切に制御することが可能な永久磁石型回転電機の制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の永久磁石型回転電機の制御装置は、界磁電流の界磁方向を界磁軸(例えば、実施の形態でのq軸)とし、該界磁軸に直交する方向をトルク軸(例えば、実施の形態でのd軸)とする回転磁束座標を用いたベクトル制御により、永久磁石を有するロータと該ロータを回転させる回転磁界を発生するステータ巻線を有するステータとを備えた永久磁石型回転電機(例えば、実施の形態でのモータ12)を、前記ステータ巻線への通電が電源電圧(例えば、実施の形態での電源電圧VB)に応じた最大電圧(例えば、実施の形態での最大相電圧)以下となるように制御して、回転駆動させる永久磁石型回転電機の制御装置であって、前記ステータ巻線への通電時における界磁弱め電流量(例えば、実施の形態でのq軸電流Iq_s)と、前記ステータ巻線への通電状態および複数の所定基準磁石温度(例えば、実施の形態での所定基準磁石温度Tm)に応じて予め設定された界磁弱め電流量(例えば、実施の形態での界磁弱め電流Iq)とに基づき、前記通電時における前記永久磁石の磁石温度(例えば、実施の形態での磁石温度Tmag)を推定する磁石温度推定手段(例えば、実施の形態での磁石温度推定部38)を備えることを特徴としている。
上記構成の永久磁石型回転電機の制御装置によれば、磁石温度推定手段は、予めステータ巻線への通電状態および複数の所定基準磁石温度に応じて設定された界磁弱め電流量と、ステータ巻線への通電時における実際の界磁弱め電流量との大小関係(例えば、比や差等)に応じて磁石温度を推定する。つまり、永久磁石型回転電機の駆動あるいは回生作動を制御する際に用いられるパラメータである界磁弱め電流量に基づき磁石温度を推定することから、例えば誘起電圧等の新たなパラメータを算出するための演算処理を不要とし、温度推定に要する演算処理が複雑化すること、および、演算誤差が累積されることを防止し、推定精度を向上させることができる。
さらに、請求項2に記載の本発明の永久磁石型回転電機の制御装置は、前記通電状態に係る状態量である前記永久磁石型回転電機のトルク(例えば、実施の形態でのモータトルクTRQ)および回転数(例えば、実施の形態でのモータ回転数NM)および前記電源電圧と、前記複数の所定基準磁石温度(例えば、実施の形態での所定基準磁石温度Tm)とに応じて予め設定された前記界磁弱め電流量のデータを記憶するデータ記憶手段(例えば、実施の形態での基準界磁電流マップ39)を備え、前記磁石温度推定手段は、前記通電時における前記界磁弱め電流量と、前記通電時に検出された前記永久磁石型回転電機のトルクおよび回転数および前記電源電圧とに対応する前記所定基準磁石温度を前記データから検索して、前記通電時における前記永久磁石の磁石温度を推定することを特徴としている。
上記構成の永久磁石型回転電機の制御装置によれば、予め、永久磁石型回転電機のトルクおよび回転数および電源電圧と、界磁弱め電流量との対応関係を示すデータを、複数の所定基準磁石温度毎に記憶しておき、ステータ巻線への通電時に検出されたトルクおよび回転数および電源電圧と、この通電時の界磁弱め電流量とに対応する所定基準磁石温度をデータから検索して、この通電時の磁石温度として設定する。これにより、容易かつ迅速に磁石温度を推定することができる。
さらに、請求項3に記載の本発明の永久磁石型回転電機の制御装置は、界磁電流の界磁方向を界磁軸(例えば、実施の形態でのq軸)とし、該界磁軸に直交する方向をトルク軸(例えば、実施の形態でのd軸)とする回転磁束座標を用いたベクトル制御により、永久磁石を有するロータと該ロータを回転させる回転磁界を発生するステータ巻線を有するステータとを備えた永久磁石型回転電機(例えば、実施の形態でのモータ12)を、前記ステータ巻線への通電が電源電圧(例えば、実施の形態での電源電圧VB)に応じた最大電圧(例えば、実施の形態での最大相電圧)以下となるように制御して、回転駆動させる永久磁石型回転電機の制御装置であって、前記ステータ巻線への通電時におけるトルク電流量(例えば、実施の形態でのd軸電流Id_s)と、前記ステータ巻線への通電状態および複数の所定基準磁石温度(例えば、実施の形態での所定基準磁石温度Tm)に応じて予め設定されたトルク電流量(例えば、実施の形態でのトルク電流Id)とに基づき、前記通電時における前記永久磁石の磁石温度(例えば、実施の形態での磁石温度Tmag)を推定する磁石温度推定手段(例えば、実施の形態での磁石温度推定部38)を備えることを特徴としている。
上記構成の永久磁石型回転電機の制御装置によれば、磁石温度推定手段は、予めステータ巻線への通電状態および複数の所定基準磁石温度に応じて設定されたトルク電流量と、ステータ巻線への通電時における実際のトルク電流量との大小関係(例えば、比や差等)に応じて磁石温度を推定する。つまり、永久磁石型回転電機の駆動あるいは回生作動を制御する際に用いられるパラメータであるトルク電流量に基づき磁石温度を推定することから、例えば誘起電圧等の新たなパラメータを算出するための演算処理を不要とし、温度推定に要する演算処理が複雑化すること、および、演算誤差が累積されることを防止し、推定精度を向上させることができる。
さらに、請求項4に記載の本発明の永久磁石型回転電機の制御装置は、前記通電状態に係る状態量である前記永久磁石型回転電機のトルク(例えば、実施の形態でのモータトルクTRQ)および回転数(例えば、実施の形態でのモータ回転数NM)および前記電源電圧と、前記複数の所定基準磁石温度(例えば、実施の形態での所定基準磁石温度Tm)とに応じて予め設定された前記トルク電流量のデータを記憶するデータ記憶手段(例えば、実施の形態での基準トルク電流マップ49)を備え、前記磁石温度推定手段は、前記通電時における前記トルク電流量と、前記通電時に検出された前記永久磁石型回転電機のトルクおよび回転数および前記電源電圧とに対応する前記所定基準磁石温度を前記データから検索して、前記通電時における前記永久磁石の磁石温度を推定することを特徴としている。
上記構成の永久磁石型回転電機の制御装置によれば、予め、永久磁石型回転電機のトルクおよび回転数および電源電圧と、トルク電流量との対応関係を示すデータを、複数の所定基準磁石温度毎に記憶しておき、ステータ巻線への通電時に検出されたトルクおよび回転数および電源電圧と、この通電時のトルク電流量とに対応する所定基準磁石温度をデータから検索して、この通電時の磁石温度として設定する。これにより、容易かつ迅速に磁石温度を推定することができる。
さらに、請求項5に記載の本発明の永久磁石型回転電機の制御装置は、前記磁石温度推定手段により推定された前記磁石温度が所定の閾温度(例えば、実施の形態での所定閾値T0)を超えた場合には、前記永久磁石型回転電機の出力(例えば、実施の形態でのトルク指令値)が所定値以下となるように制限あるいは前記永久磁石型回転電機の運転を停止する停止手段(例えば、実施の形態での指令値設定部31)を備えることを特徴としている。
上記構成の永久磁石型回転電機の制御装置によれば、温度推定に要する演算処理が複雑化することを防止しつつ精度良く推定された磁石温度に基づき、永久磁石型回転電機の出力制限を迅速かつ的確に実行することができ、ロータの磁石温度が過度に増大して永久磁石の減磁が生じることを防止することができる。
請求項1に記載の本発明の永久磁石型回転電機の制御装置によれば、永久磁石型回転電機の駆動あるいは回生作動を制御する際に用いられるパラメータである界磁弱め電流量に基づき磁石温度を推定することから、例えば温度推定のために新たなパラメータを算出するための演算処理を不要とし、温度推定に要する演算処理が複雑化すること、および、演算誤差が累積されることを防止し、推定精度を向上させることができる。
さらに、請求項2に記載の本発明の永久磁石型回転電機の制御装置によれば、単純な演算処理により容易かつ迅速に磁石温度を推定することができる。
また、請求項3に記載の本発明の永久磁石型回転電機の制御装置によれば、永久磁石型回転電機の駆動あるいは回生作動を制御する際に用いられるパラメータであるトルク電流量に基づき磁石温度を推定することから、例えば温度推定のために新たなパラメータを算出するための演算処理を不要とし、温度推定に要する演算処理が複雑化すること、および、演算誤差が累積されることを防止し、推定精度を向上させることができる。
さらに、請求項4に記載の本発明の永久磁石型回転電機の制御装置によれば、単純な演算処理により容易かつ迅速に磁石温度を推定することができる。
さらに、請求項5に記載の本発明の永久磁石型回転電機の制御装置によれば、温度推定に要する演算処理が複雑化することを防止しつつ精度良く推定された磁石温度に基づき、永久磁石型回転電機の出力制限を迅速かつ的確に実行することができ、ロータの磁石温度が過度に増大して永久磁石の減磁が生じることを防止することができる。
以下、本発明の永久磁石型回転電機の制御装置の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
この実施形態による永久磁石型回転電機の制御装置10(以下、単に、モータ制御装置10と呼ぶ)は、例えばハイブリッド車両に内燃機関11と共に駆動源として搭載されるブラシレスDCモータ12(以下、単に、モータ12と呼ぶ)を駆動制御するものであって、このモータ12は、内燃機関11と直列に直結され、界磁に利用する永久磁石を有するロータ(図示略)と、このロータを回転させる回転磁界を発生するステータ(図示略)とを備えて構成されている。
モータ制御装置10は、例えば図1に示すように、バッテリ13を直流電源とするパワードライブユニット(PDU)21と、制御部22とを備えて構成されている。
このモータ制御装置10において、複数相(例えば、U相、V相、W相の3相)のモータ12の駆動および回生作動は制御部22から出力される制御指令を受けてパワードライブユニット(PDU)21により行われる。
PDU21は、例えばトランジスタのスイッチング素子を複数用いてブリッジ接続してなるブリッジ回路を具備するパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータを備え、モータ12と電気エネルギーの授受を行う高圧系のバッテリ13が接続されている。
PDU21は、例えばモータ12の駆動時に、制御部22から出力される指令値(U相交流電圧指令値Vu,V相交流電圧指令値Vv,W相交流電圧指令値Vw)に基づき、バッテリ13から供給される直流電力を3相交流電力に変換し、3相のモータ12のステータ巻線への通電を順次転流させることで各電圧指令値Vu,Vv,Vwに応じたU相電流Iu及びV相電流Iv及びW相電流Iwをモータ12の各相へと出力する。
制御部22は、回転直交座標をなすdq座標上で電流のフィードバック制御を行うものであり、Id指令Id_c及びIq指令Iq_cに基づいて各電圧指令値Vu_c,Vv_c,Vw_cを算出し、PDU21へパルス幅変調信号を入力すると共に、実際にPDU21からモータ12に供給される各相電流Iu,Iv,Iwをdq座標上に変換して得たd軸電流Id_s及びq軸電流Iq_sと、Id指令Id_c及びIq指令Iq_cとの各偏差がゼロとなるように制御を行う。
この制御部22は、例えば、指令値設定部31と、電流制御演算部32と、dq−3相変換部34と、相電圧制限部35と、3相−dq変換部36と、角度演算部37と、磁石温度推定部38と、基準界磁電流マップ39とを備えて構成されている。
そして、この制御部22には、モータ12の各相のステータ巻線に供給される各相電流Iu,Iv,Iwを検出する少なくとも2つの相電流検出器41,42から出力される検出値(例えば、U相電流Iu,W相電流Iw)と、バッテリ13の端子電圧(電源電圧)VBを検出する電圧検出器43から出力される検出値と、モータ12のロータの磁極位置(位相角)を検出する回転センサ44から出力される検出信号と、外部の制御装置(図示略)から出力されるトルク指令値とが入力されている。
指令値設定部31は、例えば外部の制御装置(図示略)から入力されるトルク指令値(例えば、運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作量およびモータ12の回転数N等に応じて必要とされるトルクをモータ12に発生させるためのトルク指令値)と、後述する磁石温度推定部38から入力される磁石温度Tmagとに基づき、PDU21からモータ12に供給する各相電流Iu,Iv,Iwを指定するための電流指令を演算しており、この電流指令は、回転する直交座標上でのId指令Id_c及びIq指令Iq_cとして電流制御演算部32へ出力されている。
この回転直交座標をなすdq座標は、例えばロータの永久磁石による界磁極の磁束方向をq軸(界磁軸)とし、このq軸と直交する方向をd軸(トルク軸)としており、モータ12のロータに同期して電気角速度ω(以下、単に、回転角速度ωと呼ぶ)で回転している。これにより、PDU21からモータ12の各相に供給される交流信号に対する電流指令として、直流的な信号であるId指令Id_c及びIq指令Iq_cを与えるようになっている。
なお、指令値設定部31は、例えば、後述する角度演算部37から出力されるモータ回転数NMに基づき、予め設定された所定のマップをマップ検索して界磁弱め電流指令Iqcを算出する。この界磁弱め電流指令Iqc(<0)は、モータ12の回転数Nの増大に伴う誘起電圧の増大を抑制するためにロータの界磁量を等価的に弱めるようにして電流位相を制御する界磁弱め制御での目標電流であり、例えばモータ回転数NMが所定値を超えて増大することに伴い増大傾向に変化するように設定されている。そして、指令値設定部31は、トルク指令値および磁石温度Tmagに基づき設定したIq指令Iq_c(例えば、Iq_c=0)に界磁弱め電流指令Iqcを加算して得た値を、新たに界磁弱め電流指令Iqcとして設定する(Iq_c←Iq_c+Iqc)。
電流制御演算部32は、第1減算部32aにおいてId指令Id_cとd軸電流Id_sとの偏差ΔIdを算出し、第2減算部32cにおいてIq指令Iq_cとq軸電流Iq_sとの偏差ΔIqを算出し、第1制御演算部32bにおいて、例えばPI(比例積分)動作により、偏差ΔIdを制御増幅してd軸電圧指令値Vdを算出し、第2制御演算部32dにおいて、例えばPI(比例積分)動作により、偏差ΔIqを制御増幅してq軸電圧指令値Vqを算出する。
非干渉制御部33は、指令値設定部31から出力されるId指令Id_c及びIq指令Iq_cと、後述する角度演算部37から出力されるモータ回転数NMと、予め記憶しているd軸インダクタンスLd及びq軸インダクタンスLqとに基づき、d軸とq軸との間で干渉し合う速度起電力成分を相殺してd軸及びq軸を独立して制御するためにd軸及びq軸に対する各干渉成分を相殺するd軸補償項Vdk及びq軸補償項Vqkを算出する。
そして、第1加算部33aにおいてd軸電圧指令値Vdにd軸補償項Vdkを加算して得た値を、新たにd軸電圧指令値Vdとして設定し、第2加算部33bにおいてq軸電圧指令値Vqにq軸補償項Vqkを加算して得た値を、新たにq軸電圧指令値Vqとして設定する。
dq−3相変換部34は、後述する角度演算部37から入力されるロータの回転角度θを用いて、相電圧制限部35から出力される制限指令に応じて、dq座標上でのd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを、静止座標である3相交流座標上でのU相交流電圧指令値Vu_cおよびV相交流電圧指令値Vv_cおよびW相交流電圧指令値Vw_cに変換する。そして、各電圧指令値Vu_c,Vv_c,Vw_cを、PDU21の各スイッチング素子をパルス幅変調(PWM)によりオン/オフ駆動させる各パルスからなるスイッチング指令(つまり、パルス幅変調信号)へと変換して出力する。なお、各パルスのデューティは予めdq−3相変換部34に記憶されている。
また、相電圧制限部35は、dq座標上でのd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqの合成スカラーS=(Vd+Vq(1/2)を、少なくとも電圧検出器43から出力されるバッテリ13の端子電圧VBの検出値に基づく所定の最大相電圧(例えばPDU21からモータ12へ供給可能な最大電圧や、例えば図2(a),(b)に示す電圧VB/√6等)以下に制限するための制限指令を出力する。
3相−dq変換部36は、後述する角度演算部37から入力される回転角度θを用いて、静止座標上における電流である各相電流Iu,Iv,Iwを、モータ12の回転位相による回転座標すなわちdq座標上でのd軸電流Id_sおよびq軸電流Iq_sに変換する。このため、3相−dq変換部36には、モータ12の各相のステータ巻線に供給される各相電流Iu,Iv,Iwを検出する少なくとも2つの相電流検出器41,42から出力される検出値(例えば、U相電流Iu_s,W相電流Iw_s)が入力されている。なお、ステータは3相であるため、任意の1相を流れる電流は他の2相を流れる電流によって一義的に決まり、例えばW相電流Iv={−(U相電流Iu+W相電流Iw)}となる。
角度演算部37は、回転センサ44から出力される検出信号に基づきロータの回転角度(つまり所定の基準回転位置からのロータの磁極の回転角度)θおよびモータ回転数NMを算出する。
磁石温度推定部38は、ステータ巻線への通電時における界磁弱め電流量つまり3相−dq変換部36から出力されるq軸電流Iq_sと、予め基準界磁電流マップ39に記憶されている界磁弱め電流量つまり界磁弱め電流Iqとの大小関係(例えば、比や差等)に応じて磁石温度Tmagを推定する。
すなわち、例えば図2(a),(b)に示すように、dq座標上でのd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqの合成スカラーS=(Vd+Vq(1/2)が最大相電圧となるように電流のフィードバック制御(つまりベクトル制御)が実行されているモータ12の運転時において、磁石温度Tmagが上昇すると、誘起電圧定数Keが低下傾向に変化(例えば、Ke→Ke’へ変化)することに伴い、誘起電圧定数Keにモータ12の回転数Nを乗算して得た誘起電圧(Ke・N)が減少傾向に変化(例えば、Ke・N→Ke’・Nへ変化)する。この誘起電圧(Ke・N)の減少により、最大相電圧円上における動作点B(XB,YB)が変化(例えば、B(XB,YB)→B’(XB’,YB’)へ変化)し、界磁弱め電流Iqが減少傾向に変化(例えば、Iq=I・sinα→Iq’=I’・sinα’へ変化)する。なお、位相角α>位相角α’であって、正弦値sinα>正弦値sinα’である。
このため、基準界磁電流マップ39は、例えば図3および図4に示すように、予め、モータ12から出力されるモータトルクTRQおよびモータ回転数NMおよび電源電圧VBと、界磁弱め電流Iqとの対応関係を示すデータを、複数の所定基準磁石温度Tm毎に記憶する。
これにより、磁石温度推定部38は、ステータ巻線への通電時に、先ず、例えば図3に示す複数の所定の電源電圧毎のマップデータの中から、電圧検出器43から出力されるバッテリ13の端子電圧VBに対応するマップデータを選択する。
次に、選択したマップデータに含まれる複数の所定基準磁石温度Tm(例えば、0℃,…,120℃等)毎のマップデータの中から、トルクセンサ(図示略)により検出されるモータトルクTRQおよび角度演算部37から出力されるモータ回転数NMおよび3相−dq変換部36から出力されるq軸電流Iq_sに対応するマップデータを選択し、選択したマップデータに対応する所定基準磁石温度Tmを磁石温度Tmagの推定値として設定する。
なお、複数の所定基準磁石温度Tm(例えば、0℃,…,120℃等)毎のマップデータにおいて、トルクセンサ(図示略)により検出されるモータトルクTRQおよび角度演算部37から出力されるモータ回転数NMに対応する界磁弱め電流Iqおよび複数の所定基準磁石温度Tmに対して、例えば図4に示すように、複数の所定基準磁石温度Tmを滑らかに接続して得た磁石温度の増大に伴い、所定の減少率Rqで減少傾向に変化する界磁弱め電流Iqの対応関係を得ることができる。これにより、基準界磁電流マップ39に記憶されているマップデータにおいて、3相−dq変換部36から出力されるq軸電流Iq_sと同等の界磁弱め電流Iqが存在しない場合であっても、所定基準磁石温度Tmに対する界磁弱め電流Iqとq軸電流Iq_sとの大小関係(例えば、比や差等)、および、所定の減少率Rqに基づき、3相−dq変換部36から出力されるq軸電流Iq_sに対応する磁石温度Tmagを算出することができる。
本実施形態によるモータ制御装置10は上記構成を備えており、次に、このモータ制御装置10の動作、特に、磁石温度Tmagを推定し、この推定値に応じてモータ12の出力を制限する処理について添付図面を参照しながら説明する。
先ず、例えば図5に示すステップS01においては、電圧検出器43により検出されるバッテリ13の端子電圧VBを取得する。
次に、ステップS02においては、3相−dq変換部36から出力されるq軸電流Iq_sつまり界磁弱め電流を取得する。
次に、ステップS03においては、角度演算部37により算出されるモータ回転数NMを取得する。
次に、ステップS04においては、例えばトルクセンサ(図示略)により検出されるモータトルクTRQを取得する。
そして、ステップS05においては、取得した電源電圧VBおよびq軸電流Iq_sおよびモータ回転数NMおよびモータトルクTRQに対応した磁石温度Tmagを、基準界磁電流マップ39のマップデータから検索する。
そして、ステップS06においては、推定した磁石温度Tmagが所定閾値T0よりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、外部の制御装置(図示略)から指令値設定部31に入力されたトルク指令値を所定値以下に制限して、この制限されたトルク指令値に応じてId指令Id_c及びIq指令Iq_cを設定し、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
上述したように、本実施形態による永久磁石型回転電機の制御装置10によれば、モータ12の駆動あるいは回生作動を制御する際に用いられるパラメータである界磁弱め電流つまり3相−dq変換部36から出力されるq軸電流Iq_sに基づき磁石温度Tmagaを推定することから、例えば温度推定のために新たなパラメータを算出するための演算処理を不要とし、温度推定に要する演算処理が複雑化すること、および、演算誤差が累積されることを防止し、推定精度を向上させることができる。
しかも、ステータ巻線への通電時に取得する電源電圧VBおよびq軸電流Iq_sおよびモータ回転数NMおよびモータトルクTRQに対応した磁石温度Tmagを、基準界磁電流マップ39のマップデータから検索するという単純な演算処理により容易かつ迅速に推定することができ、精度良く推定された磁石温度Tmagに基づき、モータ12の出力制限を迅速かつ的確に実行することができ、磁石温度Tmagが過剰に増大して永久磁石の減磁が生じることを防止することができる。
なお、上述した実施の形態においては、指令値設定部31は、推定した磁石温度Tmagが所定閾値T0よりも大きい場合にトルク指令値を所定値以下に制限するとしたが、これに限定されず、例えばモータ12の運転を停止させてもよい。
なお、上述した実施の形態において、磁石温度推定部38はステータ巻線への通電時における界磁弱め電流量に基づき磁石温度Tmagを推定するとしたが、これに限定されず、ステータ巻線への通電時におけるトルク電流量に基づき磁石温度Tmagを推定してもよい。この変形例において、モータ制御装置10は、上述した実施の形態での基準界磁電流マップ39の代わりに基準トルク電流マップ49を備え、基準トルク電流マップ49は、例えば図7および図8に示すように、予め、モータ12から出力されるモータトルクTRQおよびモータ回転数NMおよび電源電圧VBと、トルク電流Idとの対応関係を示すデータを、複数の所定基準磁石温度Tm毎に記憶する。
これにより、磁石温度推定部38は、ステータ巻線への通電時に、先ず、例えば図7に示す複数の所定の電源電圧毎のマップデータの中から、電圧検出器43から出力されるバッテリ13の端子電圧VBに対応するマップデータを選択する。
次に、選択したマップデータに含まれる複数の所定基準磁石温度Tm(例えば、0℃,…,120℃等)毎のマップデータの中から、トルクセンサ(図示略)により検出されるモータトルクTRQおよび角度演算部37から出力されるモータ回転数NMおよび3相−dq変換部36から出力されるd軸電流Id_sに対応するマップデータを選択し、選択したマップデータに対応する所定基準磁石温度Tmを磁石温度Tmagの推定値として設定する。
なお、複数の所定基準磁石温度Tm(例えば、0℃,…,120℃等)毎のマップデータにおいて、トルクセンサ(図示略)により検出されるモータトルクTRQおよび角度演算部37から出力されるモータ回転数NMに対応するトルク電流Idおよび複数の所定基準磁石温度Tmに対して、例えば図8に示すように、複数の所定基準磁石温度Tmを滑らかに接続して得た磁石温度の増大に伴い、所定の増加率Rdで増大傾向に変化するトルク電流Idの対応関係を得ることができる。これにより、基準トルク電流マップ49に記憶されているマップデータにおいて、3相−dq変換部36から出力されるd軸電流Id_sと同等のトルク電流Idが存在しない場合であっても、所定基準磁石温度Tmに対するトルク電流Idとd軸電流Id_sとの大小関係(例えば、比や差等)、および、所定の増加率Rdに基づき、3相−dq変換部36から出力されるd軸電流Id_sに対応する磁石温度Tmagを算出することができる。
そして、この変形例に係るモータ制御装置10の動作、特に、磁石温度Tmagを推定し、この推定値に応じてモータ12の出力を制限する処理では、例えば図9に示すように、上述した実施の形態でのステップS02の代わりにステップS12の処理を実行すると共に、上述した実施の形態でのステップS05の代わりにステップS15の処理を実行する。
すなわち、ステップS12においては、3相−dq変換部36から出力されるd軸電流Id_sつまりトルク電流を取得する。
また、ステップS15においては、取得した電源電圧VBおよびd軸電流Id_sおよびモータ回転数NMおよびモータトルクTRQに対応した磁石温度Tmagを、基準トルク電流マップ49のマップデータから検索する。
本発明の実施形態に係る永久磁石型回転電機の制御装置の構成図である。 図2(a)は磁石温度=60℃でのベクトル図の一例を示す図であり、図2(b)は磁石温度=75℃でのベクトル図の一例を示す図である。 モータトルクTRQおよびモータ回転数NMおよび電源電圧VBと、界磁弱め電流Iqとの対応関係を、複数の所定基準磁石温度Tm毎に示すデータの一例である。 界磁弱め電流Iqと磁石温度と対応関係の一例を示すグラフ図である。 本発明の実施形態に係る永久磁石型回転電機の制御装置の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施形態の変形例に係る永久磁石型回転電機の制御装置の構成図である。 モータトルクTRQおよびモータ回転数NMおよび電源電圧VBと、トルク電流Idとの対応関係を、複数の所定基準磁石温度Tm毎に示すデータの一例である。 トルク電流Idと磁石温度と対応関係の一例を示すグラフ図である。 本発明の実施形態の変形例に係る永久磁石型回転電機の制御装置の動作を示すフローチャートである。
符号の説明
10 永久磁石型回転電機の制御装置
12 モータ(永久磁石型回転電機)
31 指令値設定部(停止手段)
38 磁石温度推定部(磁石温度推定手段)
39 基準界磁電流マップ(データ記憶手段)
49 基準トルク電流マップ(データ記憶手段)

Claims (5)

  1. 界磁電流の界磁方向を界磁軸とし、該界磁軸に直交する方向をトルク軸とする回転磁束座標を用いたベクトル制御により、永久磁石を有するロータと該ロータを回転させる回転磁界を発生するステータ巻線を有するステータとを備えた永久磁石型回転電機を、前記ステータ巻線への通電が電源電圧に応じた最大電圧以下となるように制御して、回転駆動させる永久磁石型回転電機の制御装置であって、
    前記ステータ巻線への通電時における界磁弱め電流量と、前記ステータ巻線への通電状態および複数の所定基準磁石温度に応じて予め設定された界磁弱め電流量とに基づき、前記通電時における前記永久磁石の磁石温度を推定する磁石温度推定手段を備えることを特徴とする永久磁石型回転電機の制御装置。
  2. 前記通電状態に係る状態量である前記永久磁石型回転電機のトルクおよび回転数および前記電源電圧と、前記複数の所定基準磁石温度とに応じて予め設定された前記界磁弱め電流量のデータを記憶するデータ記憶手段を備え、
    前記磁石温度推定手段は、前記通電時における前記界磁弱め電流量と、前記通電時に検出された前記永久磁石型回転電機のトルクおよび回転数および前記電源電圧とに対応する前記所定基準磁石温度を前記データから検索して、前記通電時における前記永久磁石の磁石温度を推定することを特徴とする請求項1に記載の永久磁石型回転電機の制御装置。
  3. 界磁電流の界磁方向を界磁軸とし、該界磁軸に直交する方向をトルク軸とする回転磁束座標を用いたベクトル制御により、永久磁石を有するロータと該ロータを回転させる回転磁界を発生するステータ巻線を有するステータとを備えた永久磁石型回転電機を、前記ステータ巻線への通電が電源電圧に応じた最大電圧以下となるように制御して、回転駆動させる永久磁石型回転電機の制御装置であって、
    前記ステータ巻線への通電時におけるトルク電流量と、前記ステータ巻線への通電状態および複数の所定基準磁石温度に応じて予め設定されたトルク電流量とに基づき、前記通電時における前記永久磁石の磁石温度を推定する磁石温度推定手段を備えることを特徴とする永久磁石型回転電機の制御装置。
  4. 前記通電状態に係る状態量である前記永久磁石型回転電機のトルクおよび回転数および前記電源電圧と、前記複数の所定基準磁石温度とに応じて予め設定された前記トルク電流量のデータを記憶するデータ記憶手段を備え、
    前記磁石温度推定手段は、前記通電時における前記トルク電流量と、前記通電時に検出された前記永久磁石型回転電機のトルクおよび回転数および前記電源電圧とに対応する前記所定基準磁石温度を前記データから検索して、前記通電時における前記永久磁石の磁石温度を推定することを特徴とする請求項3に記載の永久磁石型回転電機の制御装置。
  5. 前記磁石温度推定手段により推定された前記磁石温度が所定の閾温度を超えた場合には、前記永久磁石型回転電機の出力が所定値以下となるように制限あるいは前記永久磁石型回転電機の運転を停止する停止手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかひとつに記載の永久磁石型回転電機の制御装置。

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